説明

抗バイオフィルム糖ペプチド

本発明は、抗バイオフィルム特性を有するペプチド及び組成物に関する。特に、本発明のペプチド及び組成物を、齲蝕、歯肉炎、歯周炎、口腔粘膜炎、口渇及び口内乾燥を含む様々な病態の治療又は予防に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗バイオフィルム特性を有するペプチド及び組成物に関する。特に、本発明のペプチド及び組成物を、齲蝕、歯肉炎、歯周炎、口腔粘膜炎、口渇及び口内乾燥を含む様々な病態の治療又は予防に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
口腔は、多種多様な明らかに異なる微細環境を与える広範な硬組織及び軟組織の表面を有する、細菌の成長に適した環境である。特に歯の特有の非剥離性硬表面は、500種を超える細菌種が同定されている歯垢として知られる厚く複雑な構造化された多菌性バイオフィルムの付着を可能にしている。口腔微生物バイオフィルムの安定性には、種間の広範な相乗的相互作用及び拮抗的相互作用と、これらが作り出す環境とによる動的バランスが必要とされる。口腔環境における微調整がこれらの自然バランスに影響を与える可能性があり、これにより潜在的に生態シフト及び口腔微生物バイオフィルムの種組成の変化がもたらされる。日和見種が微生物群において優勢になると、種組成のこれらの変化により、より病原性の高い歯肉縁上及び歯肉縁下の歯垢が発生する可能性がある。例えば多くの場合、食事による炭水化物の消費の増大(これらの炭水化物の細菌発酵により歯表面での流体の酸性化につながる)により、齲蝕の発生率の上昇が引き起こされる。食事による単糖類及び二糖類の消費は、これらの基質を急速に発酵させることができる口腔連鎖球菌(oral streptococci)、例えばストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)に有利に働く。結果として生じる酸性環境は耐酸性種、例えばストレプトコッカス・ミュータンス(S. mutans)及び乳酸菌(lactobacilli)の増殖を更に促進する。特に過剰な遊離炭水化物の非存在下で歯垢のpHが中性近くに維持される場合、ラクトバチルス・カセイ(Lactobacillus casei)及びストレプトコッカス・ミュータンス等の酸産生口腔細菌は低いレベルに維持されるが、アクチノマイセス属(Actinomyces spp.)及びストレプトコッカス・サンギス(Streptococcus sanguis)等のより片利共生的な種の割合は相対的に高い。
【0003】
細菌バイオフィルムは本来どこにでも存在し、通常互いに及び/又は表面若しくは界面に付着したマトリクスに囲まれた細菌集団として定義される。細菌バイオフィルムの形成は様々な産業分野、医療分野及び環境分野において多大な経済的影響を伴う極めて一般的な現象である。バイオフィルムは単一種又は複数種を含むことができ、様々な非生物的及び生物的な表面及び界面上で形成され得る。多菌性バイオフィルムがほとんどの状況下で優勢であるが、単一種のバイオフィルムが或る特定の状況下で生じる場合があり、医療用インプラントの表面上において深刻化している問題である。バイオフィルムとしての成長が、プランクトン様の成長に優る細菌に対する数多くの重要な利点を与えるが、中でも特筆すべきは表面への接着であり、細菌が自身を有利な環境下に局在させることを可能にする。多菌性バイオフィルムでは、代謝活性を統合することができ、多種多様な種の存在により、代謝活性及び異化活性の柔軟性を大きくすることができるが、これは種の多様性が増大するにつれてバイオフィルム集団の「ゲノム」が増大するためである。疾病予防管理センターはヒトの細菌感染の65%がバイオフィルムに関するものであると推定している。バイオフィルムは多くの場合、細菌を免疫系から保護すること、抗生物質の有効性を低減すること、及び浮遊細胞を、再感染を補助し得る遠位部位に分散させることにより慢性感染症の治療を複雑にしている。バイオフィルム内の細菌細胞は、浮遊細胞に比べて或る特定の抗微生物剤に対して最大で500倍耐性であることが分かっており、これは一部の抗微生物剤のバイオフィルムマトリクスへの浸透を遅らせること、バイオフィルムのより深部の層において細菌の成長速度を遅らせること、及び一部の抗微生物剤と細胞外ポリマーとを結合させ、これにより有効濃度を低減させることを含む数多くのプロセスにより達成される。加えて、微生物バイオフィルムは、物質移動を可能にしながらせん断応力から保護するトポグラフィーを有する微生物ランドスケープ(microbial landscapes)として説明されている。最も重要なことには、口腔において接着し、バイオフィルムとして成長させなければ、迅速にクリアランスがもたらされる。
【0004】
多くの連鎖球菌がバイオフィルムを形成することが知られているが、病原状態とバイオフィルム形態の成長との間の関係性は、口腔連鎖球菌(歯肉縁上の歯垢のバイオフィルム環境で生存する場合に齲蝕を起こすことが知られている)で最も明確に確立されている。連鎖球菌はヒトの偏在性の寄生生物である。連鎖球菌の中には、齲蝕等の日和見感染に関与する常在微生物叢の一部であるものもあれば、軽度の呼吸器疾患又は皮膚疾患から肺炎、敗血症性ショック及び壊疽性筋膜炎等の命にかかわる病態までに及ぶ感染症を引き起こす外因性病原菌であるものもある。
【0005】
慢性歯周炎は、歯肉縁下の歯垢のバイオフィルムから歯肉下部組織へと広がる細菌構成要素に対する宿主応答を伴う炎症病態である。特定の歯周病原菌は歯肉縁下の歯垢のバイオフィルム内に定着する可能性があり、これらの種は疾患の進行に強く関連する。これらの病原性種の例としては、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、タネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)、トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)及びアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)が挙げられる。宿主の免疫系がバイオフィルムを除去することができないこと(バイオフィルムが組織の外側にあり、非剥離性の歯根表面上に融合するため)が連続的な外部刺激をもたらすと考えられ、このことが慢性的な炎症状態につながる。この慢性的な炎症が、宿主系の応答の細胞及び分子により引き起こされる骨吸収を含む歯周組織の損傷につながる。該疾患は社会全体における重大な公衆衛生問題であり、成人集団の最大で15%が罹患しており、5%〜6%が重症型に罹患していると推定される。
【0006】
カチオン性抗微生物剤クロルヘキシジンは歯垢防止のために市販の洗口液に一般的に使用されており、5.5〜7.0の範囲の弱酸性のpHで最適に働く。
【0007】
非グリコシル化リン酸化形態のウシのカゼイノマクロペプチド(CMP)及びCMP断片は、浮遊状態にあるグラム陰性及びグラム陽性の口腔細菌の両方に対してin vitroで抗菌活性を有することが示されている(特許文献1)。二価カチオンと非グリコシル化リン酸化形態のウシCMP断片とを含む組成物も浮遊状態にある細菌に対して抗菌活性を示した(特許文献2)。これらのペプチドは細菌の生存率を低減させる。バイオフィルムの形成及び発生を防ぐことにより、また存在するバイオフィルムの分散を引き起こすことにより、バイオフィルムの病理的結果を軽減するのに現在使用されているものに対するより良好な又は代替的な組成物が必要とされている。
【0008】
本明細書中の任意の従来技術に対する言及は、この従来技術がオーストラリア又は任意の他の管轄において共通の一般知識の一部をなすこと、又はこの従来技術が当業者によって確認され、理解され、関連があるとみなされることを合理的に期待することができることへの承認又は任意の形での示唆ではなく、またそのようなものとして解釈されないものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第1999/026971号
【特許文献2】国際公開第2005/058344号
【発明の概要】
【0010】
一態様では、本発明は、グリコシル化したアミノ酸を少なくとも1つ有するとともに、カゼイン若しくはカゼイン断片の、又はカゼイン若しくはカゼイン断片に機能的に類似したアミノ酸配列を有するペプチドをバイオフィルム形成又はバイオフィルム成長を阻害又は低減するのに有効な量で提供する。好ましくは、カゼインはκ−カゼイン(カッパ−カゼイン)である。カゼインはウシ起源であり得るが、他の動物由来のカゼインも含まれる。加えて、ペプチドはカゼイン又はκ−カゼインの遺伝的変異体由来であり得る。好ましい実施の形態では、ペプチドはリン酸化したアミノ酸を少なくとも1つ有する。
【0011】
カゼイン断片は10アミノ酸長を超え、好ましくは20アミノ酸長を超え、自然発生的なカゼインの一部分と少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する。好ましくは、カゼインはウシカゼインであり、好ましくはカゼイン断片はウシカゼインの106〜169(ウシκ−カゼインA(配列番号11)のように番号が付される)の中から選び出される。一実施の形態では、断片はκ−カゼインのトリプシン消化又はキモシン消化により生成される。換言すると、本発明のペプチドはκ−カゼイン106〜169又はその断片、特にトリプシン又はキモシンにより生成された断片である。一実施の形態では、カゼイン断片は、100アミノ酸長、90アミノ酸長、80アミノ酸長、70アミノ酸長、60アミノ酸長、50アミノ酸長、40アミノ酸長又は30アミノ酸長未満である。
【0012】
好ましくは、ペプチドはカチオンを更に含む組成物中にある。好ましくは、カチオンは二価カチオンである。二価カチオンは好ましくは、Zn2+、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Sn2+及びMn2+からなる群から選択される。加えて、カチオンはイオン対SnF、CuF及びCaFであり得る。好ましくは、二価カチオンはZn2+又はCa2+である。最も好ましくは、二価カチオンはZn2+である。一実施の形態では、カチオンは該カチオンが与えられる塩形態で水溶性である。
【0013】
幾つかの報告書により、一部のカチオンはそれ自体が関連活性を有することが示されている。一実施の形態では、ペプチド及びカチオンが相乗的な又は相加的な殺菌活性、抗バイオフィルム活性又はバイオフィルム破壊活性を示すのに有効な量で組成物中に存在する。別の実施の形態では、本発明のペプチドとカチオンとを含む組成物は、ペプチド又はカチオン単独で示される活性よりも大きい殺菌活性、抗バイオフィルム活性又はバイオフィルム破壊活性を有する。
【0014】
好ましくは、カチオンはペプチドに結合する。本発明の糖ペプチドは、細菌バイオフィルムの形成又は発生を阻害、低減又は予防し、バイオフィルムの分散を引き起こすことができるが、糖ペプチドが負電荷であるために、糖ペプチドは負に荷電した細菌及び負に荷電したバイオフィルムと反発する可能性がある。任意の理論に束縛されるものではないが、カチオン、特に亜鉛イオンの付加により、糖ペプチドとバイオフィルムとの相互作用が高まり、それにより活性が大幅に高まると考えられる。
【0015】
或る特定の実施の形態では、組成物は、非グリコシル化しており、リン酸化しているアミノ酸を少なくとも1つ有するとともに、カゼイン若しくはカゼイン断片、好ましくはκ−カゼインの、又はカゼイン若しくはカゼイン断片、好ましくはκ−カゼインに機能的に類似したアミノ酸配列を有するペプチドを更に含む。
【0016】
或る特定の実施の形態では、本発明の組成物のペプチドはグリコシル化ペプチドから本質的になる。これらの「グリコシル化ペプチド」(以下で更に規定される)は、グリコシル化したアミノ酸を少なくとも1つ有する。好ましくは、組成物におけるペプチドの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%がグリコシル化している。
【0017】
一態様では、本発明は、カチオン(上記のような)と、グリコシル化したアミノ酸を少なくとも1つ有するとともに、カゼイン若しくはカゼイン断片の、又はカゼイン若しくはカゼイン断片に機能的に類似した配列を有するペプチドとから本質的になる組成物であって、バイオフィルム形成を低減又は阻害するのに有効な量のペプチドを有する、組成物を提供する。カゼインはウシ起源であり得るが、他の動物由来のカゼインも含まれる。加えて、ペプチドはカゼイン又はκ−カゼインの遺伝的変異体由来であり得る。好ましい実施の形態では、ペプチドはリン酸化アミノ酸を少なくとも1つ有する。
【0018】
この実施の形態の組成物では、組成物におけるペプチドは、グリコシル化アミノ酸を少なくとも1つ有するグリコシル化ペプチドであり、そのため該組成物は検出可能な量の非グリコシル化ペプチドを全く含有しない。検出は独立してHPLC、質量分析法、又は炭水化物の染色によるものであり得る(すなわちいずれかの方法を単独で使用することができる)。
【0019】
一実施の形態では、グリコシル化ペプチドは、アミノ酸106〜169(ウシκ−カゼインA(配列番号11)のように番号が付される)の中からのカゼインのアミノ酸配列断片を含む。別の実施の形態では、グリコシル化ペプチドは、
Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Ala Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu(配列番号1)、
Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Asp Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu(配列番号2)、及び
それらの保存的置換
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0020】
更なる実施の形態では、グリコシル化ペプチドは、
Met Ala Ile Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Ile Glu Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Ala Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu Ile Asn Thr Val Gln Val Thr Ser Thr Ala Val(配列番号3);
Met Ala Ile Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser(P) Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Ile Glu Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Ala Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu Ile Asn Thr Val Gln Val Thr Ser Thr Ala Val(配列番号4);
Met Ala Ile Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Asp Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu Ile Asn Thr Val Gln Val Thr Ser Thr Ala Val(配列番号5);
Met Ala Ile Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser(P) Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Asp Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu Ile Asn Thr Val Gln Val Thr Ser Thr Ala Val(配列番号6);
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Ile Glu Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Ala Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu Ile Asn Thr Val Gln Val Thr Ser Thr Ala Val(配列番号7);
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser(P) Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Ile Glu Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Ala Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu Ile Asn Thr Val Gln Val Thr Ser Thr Ala Val(配列番号8);
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Asp Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu Ile Asn Thr Val Gln Val Thr Ser Thr Ala Val(配列番号9);及び
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser(P) Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Asp Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu Ile Asn Thr Val Gln Val Thr Ser Thr Ala Val(配列番号10)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0021】
(P)は先行するアミノ酸がリン酸化していることを示す。すなわちSer(P)はリン酸化したセリンアミノ酸である。非リン酸化型の上に挙げられたペプチドも本発明の範囲内である。本発明の範囲内において本発明のペプチドがグリコシル化したアミノ酸を少なくとも1つ有する要件に対する主題は、上記のような配列を有し、また本明細書中の他の場所では任意の他の翻訳後修飾を有する又は有しないペプチドである。
【0022】
一実施の形態では、グリコシル化ペプチドは、配列番号1〜配列番号10のいずれか1つと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一性であるアミノ酸配列を含む。
【0023】
更なる実施の形態では、グリコシル化ペプチドは、
Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Ala Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu(配列番号1);
Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Asp Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu(配列番号2);
Met Ala Ile Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Ile Glu Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Ala Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu Ile Asn Thr Val Gln Val Thr Ser Thr Ala Val(配列番号3);
Met Ala Ile Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser(P) Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Ile Glu Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Ala Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu Ile Asn Thr Val Gln Val Thr Ser Thr Ala Val(配列番号4);
Met Ala Ile Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Asp Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu Ile Asn Thr Val Gln Val Thr Ser Thr Ala Val(配列番号5);
Met Ala Ile Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser(P) Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Asp Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu Ile Asn Thr Val Gln Val Thr Ser Thr Ala Val(配列番号6);
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Ile Glu Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Ala Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu Ile Asn Thr Val Gln Val Thr Ser Thr Ala Val(配列番号7);
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser(P) Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Ile Glu Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Ala Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu Ile Asn Thr Val Gln Val Thr Ser Thr Ala Val(配列番号8);
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Asp Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu Ile Asn Thr Val Gln Val Thr Ser Thr Ala Val(配列番号9);及び
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser(P) Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu Ala Val Glu Ser Thr Val Ala Thr Leu Glu Asp Ser(P) Pro Glu Val Ile Glu Ser Pro Pro Glu Ile Asn Thr Val Gln Val Thr Ser Thr Ala Val(配列番号10)
からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる。
【0024】
(P)は先行するアミノ酸がリン酸化していることを示す。すなわちSer(P)はリン酸化したセリンアミノ酸である。非リン酸化型の上に挙げられたペプチドも本発明の範囲内である。本発明の範囲内において本発明のペプチドがグリコシル化したアミノ酸を少なくとも1つ有する要件に対する主題は、上記のような配列を有し、また本明細書中の他の場所では任意の他の翻訳後修飾を有する又は有しないペプチドである。
【0025】
本発明のペプチドは単離しても、精製しても、濃縮しても、合成によるものであっても、又は組換えによるものであってもよい。一実施の形態では、ペプチドはミルク、好ましくはウシのミルク、又はミルク抽出物由来である。
【0026】
本発明の組成物は、配列番号1〜配列番号10に示される1つ又は複数のアミノ酸配列、又は本明細書に記載される配列番号1〜配列番号10のアミノ酸配列の任意の断片若しくは変異体を有する1つ又は複数のペプチドを含み得る、これから本質的になり得る、又はこれからなり得る。
【0027】
一実施の形態では、バイオフィルムを処置するための治療用組成物であって、各々が、ミルクから単離可能なグリコシル化κ−カゼイン断片のトリプシン消化物若しくはキモシン消化物であるか、又はミルクから単離可能なグリコシル化κ−カゼイン断片のトリプシン消化物若しくはキモシン消化物と機能的に同等な配列を有するペプチドを治療的に有効な量含む、バイオフィルムを処置するための治療用組成物が提供される。
【0028】
別の実施の形態では、バイオフィルムを処置するための治療用組成物であって、各々がグリコシル化したアミノ酸を少なくとも1つ有するとともに、各々がカゼイン若しくはカゼイン断片の、又はカゼイン若しくはカゼイン断片に機能的に類似したアミノ酸配列を有するペプチドと、薬学的に許容される担体とから本質的になる、バイオフィルムを処置するための治療用組成物が提供される。好ましくはペプチドの少なくとも1つのアミノ酸残基がリン酸化している。通常、カゼインはκ−カゼインである。或る特定の実施の形態では、組成物は二価カチオンを更に含む。
【0029】
二価カチオンとペプチドとのモル比が、0.5:1.0〜15.0:1.0の範囲、好ましくは0.5:1.0〜4.0:1.0の範囲にあるのが更に好ましい。二価カチオンとペプチドとのモル比が、1.0:1.0〜4.0:1.0、好ましくは1.0:1.0〜2.0:1.0の範囲にあるのが更に好ましい。
【0030】
一実施の形態では、本発明は、バイオフィルムの形成及び/又は発生を予防、阻害又は低減するための組成物であって、カチオン、及び少なくとも1つのグリコシル化アミノ酸と、少なくとも1つのリン酸化アミノ酸とを有するとともに、カゼイン若しくはカゼイン断片(上で規定のような)の、又はカゼイン若しくはカゼイン断片(上で規定のような)に機能的に類似したアミノ酸配列を有するペプチドから本質的になる、バイオフィルムの形成及び/又は発生を予防、阻害又は低減するための組成物を提供する。
【0031】
一実施の形態では、歯垢、歯肉炎、歯周病、齲蝕、口渇又は口内乾燥の予防又は治療のための組成物であって、カチオン、及び少なくとも1つのグリコシル化アミノ酸と、少なくとも1つのリン酸化アミノ酸とを有するとともに、カゼイン若しくはカゼイン断片(上で規定のような)の、又はカゼイン若しくはカゼイン断片(上で規定のような)に機能的に類似したアミノ酸配列を有するペプチドからなる、歯垢、歯肉炎、歯周病、齲蝕、口渇又は口内乾燥の予防又は治療のための組成物が提供される。
【0032】
別の態様では、本発明は、歯周病の治療又は予防のための薬剤の調製における本発明の組成物の使用を提供する。治療又は予防に好適な他の病態は歯垢、歯肉炎、歯周炎、齲蝕、口腔粘膜炎、口渇及び口内乾燥である。
【0033】
別の態様では、本発明は、歯周病原菌を含むか又は歯周病原菌からなるバイオフィルムの形成又は成長を予防又は阻害するための本発明の組成物の使用を提供する。通常、歯周病原菌には、ポルフィロモナス・ジンジバリス、タネレラ・フォーサイシア、トレポネーマ・デンティコラ及びアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンスが含まれる。バイオフィルムは任意の自然発生的な表面又は埋め込まれた表面上を含む被験体の身体のどこにでも生じる可能性がある。バイオフィルムは歯周病原菌を含み、多くの兆候に寄与し得るか又は多くの兆候を引き起こし得る。
【0034】
本発明は、歯周病に関連する全身性疾患の治療又は予防のための薬剤の調製における本発明の組成物の使用も提供する。通常、歯周病又は関連する全身性疾患は、ポルフィロモナス・ジンジバリス、タネレラ・フォーサイシア、トレポネーマ・デンティコラ及びアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンスのうちの1つ又は複数を含むバイオフィルムにより引き起こされ得る。
【0035】
一実施の形態では、本発明は、歯周病原菌に関連する疾患を予防又は治療する方法であって、それを必要とする被験体に、本発明の組成物を投与することを含む、歯周病原菌に関連する疾患を予防又は治療する方法を提供する。通常、疾患は細菌、特にバイオフィルム中の細菌が寄与するか、又は細菌、特にバイオフィルム中の細菌により引き起こされ、このバイオフィルムの破壊又は形成若しくは成長の阻害が疾患を治療するか又は疾患の治療の助けとなる。
【0036】
別の態様では、本発明は、歯根管上のバイオフィルムの処置又は歯根管上のバイオフィルムの形成若しくは成長に関連する歯内治療の失敗の予防のための薬剤の調製における本発明の組成物の使用を提供する。歯内治療の失敗は、バイオフィルムの形成及び/又は成長をもたらす1つ又は複数の細菌による感染又は再感染により起こり得る。通常、細菌は大便連鎖球菌(Enterococcus faecalis)である。
【0037】
一実施の形態では、歯内治療の失敗を予防又は歯内治療の失敗に対処する方法であって、これを必要とする被験体に本発明の組成物を投与することを含む、歯内治療の失敗を予防又は歯内治療の失敗に対処する方法が提供される。
【0038】
別の態様では、本発明は、口腔潤滑剤、代用唾液として、又は人工唾液としての本発明の組成物の使用を提供する。
【0039】
別の態様では、本発明は、本発明のペプチド又は組成物を含む、口腔潤滑剤、代用唾液又は人工唾液を提供する。
【0040】
一実施の形態では、本発明は、各々がカゼイン若しくはカゼイン断片の、又はカゼイン若しくはカゼイン断片に機能的に類似したアミノ酸配列から本質的になるとともに、各々がグリコシル化したアミノ酸を少なくとも1つ有するペプチドを治療的に有効な量有する代用唾液、口腔潤滑剤又は人工唾液を提供する。
【0041】
別の実施の形態では、本発明は、本発明のペプチド又は組成物から本質的になる活性成分を治療的に有効な量含む代用唾液、口腔潤滑剤又は人工唾液を提供する。
【0042】
別の態様では、本発明は、口渇又は口内乾燥を治療する方法であって、1つ又は複数の本発明のペプチド又は組成物を投与することを含む、口渇又は口内乾燥を治療する方法を提供する。
【0043】
別の態様では、本発明は、口渇又は口内乾燥を治療する方法であって、本発明のペプチド又は組成物を1つ又は複数含む口腔潤滑剤、代用唾液又は人工唾液を投与することを含む、口渇又は口内乾燥を治療する方法を提供する。
【0044】
別の態様では、本発明は、口渇又は口内乾燥に関連する症状、疾患又は病態を治療する方法であって、1つ若しくは複数の本発明のペプチド若しくは組成物、又は本発明のペプチド若しくは組成物を1つ若しくは複数含む口腔潤滑剤、代用唾液若しくは人工唾液を投与することを含む、口渇又は口内乾燥に関連する症状、疾患又は病態を治療する方法を提供する。
【0045】
別の実施の形態では、本発明は、カチオンの活性成分、及び少なくとも1つのグリコシル化アミノ酸と、少なくとも1つのリン酸化アミノ酸とを有するとともに、カゼイン若しくはカゼイン断片(上で規定のような)の、又はカゼイン若しくはカゼイン断片(上で規定のような)に機能的に類似したアミノ酸配列を有するペプチドからなる、歯周病(及び/又は治療に好適であるとして本明細書中で同定された他の病態)の治療又は予防のための組成物を提供する。
【0046】
別の実施の形態では、本発明は、歯周病(及び/又は治療に好適であるとして本明細書中で同定された他の病態)の治療又は予防における使用のためのカチオン、及び少なくとも1つのグリコシル化アミノ酸と、少なくとも1つのリン酸化アミノ酸とを有するとともに、カゼイン若しくはカゼイン断片(上で規定のような)の、又はカゼイン若しくはカゼイン断片(上で規定のような)に機能的に類似したアミノ酸配列を有するペプチドを含む組成物を提供する。
【0047】
別の実施の形態では、本発明は、薬剤としての使用のためのカチオン、及び少なくとも1つのグリコシル化アミノ酸と、少なくとも1つのリン酸化アミノ酸とを有するとともに、カゼイン若しくはカゼイン断片(上で規定のような)の、又はカゼイン若しくはカゼイン断片(上で規定のような)に機能的に類似したアミノ酸配列を有するペプチドから本質的になる組成物を提供する。
【0048】
本発明は、本発明の組成物と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤とを含む、歯周病(及び/又は治療に好適であるとして本明細書中で同定された他の病態)の治療又は予防のための医薬組成物も提供する。組成物は抗炎症剤及び抗生物質からなる群から選択される作用物質を更に含み得る。抗生物質はアモキシシリン、ドキシサイクリン及びメトロニダゾールからなる群から選択され得る。
【0049】
別の実施の形態では、本発明は主成分として本発明のペプチド又は組成物を有効量含む医薬組成物を提供する。
【0050】
別の実施の形態では、本発明は、本発明のペプチド又は組成物から本質的になる活性成分を治療的に有効な量含む医薬組成物を提供する。
【0051】
更なる態様では、本発明は、歯周病を予防又は治療する方法であって、被験体に本明細書で記載されるような本発明の組成物を投与する工程を含む、歯周病を予防又は治療する方法を提供する。治療又は予防に好適な他の病態は歯垢、歯肉炎、歯周炎、齲蝕、口渇及び口内乾燥である。歯周病を予防するための本発明の方法の場合、被験体は歯周病を発症する危険性があるとして同定された被験体であり得る。
【0052】
一実施の形態では、本発明の組成物を被験体の歯茎及び/又は歯周ポケットに直接投与する。組成物は練り歯磨き、歯磨き粉及び歯磨き液を含む歯磨き剤、洗口剤、トローチ、チューイングガム、歯科用軟膏、歯肉マッサージクリーム、口内洗浄錠、乳製品及び他の食品等の口腔に適用可能な組成物の一部であり得る。
【0053】
歯周病の治療を必要とする、又は歯周病を発症する危険性がある被験体は動物である。好ましくは、被験体はヒト又はイヌである。
【0054】
別の実施の形態では、本発明の方法は、抗炎症剤及び抗生物質からなる群から選択される作用物質を投与する工程を更に含む。抗生物質はアモキシシリン、ドキシサイクリン及びメトロニダゾールからなる群から選択され得る。抗炎症剤には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が含まれる。NSAIDの例としては、シクロオキシゲナーゼを阻害する化合物が挙げられる。NSAIDの具体例としては、アスピリン、イブプロフェン及びナプロキセンが挙げられる。
【0055】
別の実施の形態では、本発明は、バイオフィルムの厚さを低減する方法であって、バイオフィルムに本発明の組成物を投与することを含む、バイオフィルムの厚さを低減する方法を提供する。
【0056】
別の実施の形態では、本発明は、バイオフィルムを破壊する方法であって、バイオフィルムに本発明の組成物を投与することを含む、バイオフィルムを破壊する方法を提供する。
【0057】
別の実施の形態では、本発明は、バイオフィルム中の細菌の殺菌剤に対する感受性を増大させる方法であって、該バイオフィルムに本発明の組成物を投与することを含む、バイオフィルム中の細菌の殺菌剤に対する感受性を増大させる方法を提供する。好ましくは、該方法は殺菌剤を投与する続く更なる工程を含む。
【0058】
別の実施の形態では、本発明は、殺菌剤の有効性を増大させる方法であって、該殺菌剤の投与と併せて又は該殺菌剤の投与の前にバイオフィルムに本発明の組成物を投与することを含む、殺菌剤の有効性を増大させる方法を提供する。
【0059】
別の実施の形態では、本発明は、バイオフィルムの表面粗度を増大させる方法であって、該バイオフィルムに本発明の組成物を投与することを含む、バイオフィルムの表面粗度を増大させる方法を提供する。
【0060】
別の実施の形態では、本発明は、バイオフィルムの表面対菌体体積の比を増大させる方法であって、該バイオフィルムに本発明の組成物を投与することを含む、バイオフィルムの表面対菌体体積の比を増大させる方法を提供する。
【0061】
本発明は、記載されるような方法における本明細書で記載されるような組成物の使用に及ぶ。
【0062】
本発明の一態様では、本発明の組成物を製造する方法であって、
(a)カゼインをキモシンで加水分解して、カゼイン断片を形成する、加水分解する工程と、
(b)カゼイン断片を濃縮する工程と、
(c)カゼイン断片を精製する工程と、
(d)所定量のカチオンを精製したカゼイン断片に添加する工程と
を含む、本発明の組成物を製造する方法が提供される。
【0063】
或る特定の実施の形態では、本発明は、
(a)カゼインをキモシンで加水分解して、カゼイン断片を形成する、加水分解する工程と、
(b)カゼイン断片を濃縮する工程と、
(c)カゼイン断片を精製する工程と、
(d)所定量のカチオンを精製されたカゼイン断片に添加する工程と
を含む方法により調製される組成物を提供する。
【0064】
一実施の形態では、工程(a)におけるカゼインの加水分解はカゼイン溶液へのレンネットの添加によるものである。
【0065】
一実施の形態では、工程(b)におけるカゼイン断片の濃縮がパラカゼイン及び非グリコシル化形態のカゼインの沈殿によるものである。別の実施の形態では、該濃縮は血液透析濾過により行われる。
【0066】
一実施の形態では、工程(c)におけるカゼイン断片の精製が分離(例えばHPLCを用いる)、遠心分離又は濾過によるものである。
【0067】
一実施の形態では、工程(d)における精製されたカゼイン断片へのカチオンの添加は中和及び上清(濾液)の噴霧(凍結)乾燥、又は中和、カチオンイオン、好ましくは亜鉛の添加、及び上清(濾液)の噴霧(凍結)乾燥によるものである。
【0068】
保存的置換の概念は当業者により十分理解されているが、明確にすると、保存的置換は以下に挙げられるものである。
Gly、Ala、Val、Ile、Leu、Met;
Asp、Glu、リン酸化Ser;
Asn、Gln;
Ser、Thr;
Lys、Arg、His;
Phe、Tyr、Trp、His;及び
Pro、Nα−アルキルアミノ酸。
【0069】
本明細書で使用される場合、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という用語、及びその用語の変化形、例えば「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含まれる(comprised)」は、更なる添加物、構成要素、整数又は工程を排除するものとは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】KCG(精製されたκ−カゼイン糖ペプチド断片106〜169)、KCGPZ(f106〜169)(抗バイオフィルム亜鉛糖ペプチド)、亜鉛(20mM)又はクロルヘキシジン(0.1%)による単一処置の影響を示す16時間のストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルムの5つの典型的な三次元共焦点顕微鏡画像を示す図である。
【図2】多菌性バイオフィルムの個々の種の生存率に対する18日目〜25日目(枠内)のKCGPZ(f106〜169)処置の効果を示す図である。グラフに示された各CFU数はサンプリングした3つのプラグの平均である。各パン上のプラグを6日目、11日目、12日目及び13日目(KCGPZ(f106〜169)処置前)、19日目、20日目、21日目及び25日目(18日目〜25日目のKCGPZ(f106〜169)処置)、並びに26日目、27日目、28日目、32日目及び33日目(KCGPZ(f106〜169)処置後)にサンプリングした。CFUを選択寒天培地上での培養分析により求めた。細菌全体(■)、アクチノマイセス・ネスランディイ(A. naeslundii)(●)、ベイヨネラ・ディスパー(V. dispar)及びフソバクテリウム・ヌクレアタム(F. nucleatum)(▲)、ラクトバチルス・カセイ(L. casei)(○)、ストレプトコッカス・ミュータンス(◆)、ストレプトコッカス・サンギス(S. sanguis)(□)。
【図3】静的アッセイにおいて24時間のインキュベーション後に求めた大便連鎖球菌(E. faecalis)のバイオフィルム形成に対するKCGP(f106〜169)及びKCP(f106〜169)の効果を示す図である。□=陽性対照、□(四角内部は、ドットである。)=陰性対照、□(四角内部は、斜線である。)=10mg/mLのNaOCl、■=KCGP(f106〜169)又はKCP(f106〜169)、陽性対照及び陰性対照と比較した統計的に有意な差異(p<0.05)。
【図4】グリコシル化形態及び非グリコシル化形態のκ−カゼイン(106〜169)の分離を示すKCGP(f106〜169)のRP−HPLCクロマトグラムを示す図である。グリコシル化形態は18分〜23分の間で溶出した。非グリコシル化κ−カゼインA(106〜169)は27分で溶出し、非グリコシル化κ−カゼインB(106〜169)は30.9分で溶出した。ペプチドをこれまでに記載されたような質量分析により同定した(Dashper et al. 2005)。
【図5】KCG、KCGPZ(f106〜169)及びクロルヘキシジンによる処置の効果を示すBacLight Live/Dead染色により染色した16時間のストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルムの典型的なCLSM画像を示す図である。左側の画像は無処置の細胞膜に不浸透性のヨウ化プロピジウムによる細胞の染色を示す。中央の画像はすべての細胞を検出するSyto9による染色であり、右側の画像はヨウ化プロピジウム及びSyto9の両方による染色の組み合わせを示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明者らは、カゼイン若しくはカゼイン断片、特にκ−カゼインの、又はカゼイン若しくはカゼイン断片、特にκ−カゼインに機能的に類似したアミノ酸配列を有するとともに、グリコシル化しているアミノ酸を少なくとも1つ有するペプチドが、バイオフィルムを予防、阻害する、又はバイオフィルムの測定可能なパラメータを低減することができることを見出している。加えて、本発明者らは、二価カチオンと、少なくとも1つのグリコシル化しているアミノ酸、好ましくは少なくとも1つのリン酸化しているアミノ酸を有するとともに、カゼイン若しくはカゼイン断片のアミノ酸配列を有するペプチドとを含む組成物がバイオフィルムを予防、阻害する、又はバイオフィルムの測定可能なパラメータを低減することができることを見出している。好ましくは、カゼインはκ−カゼイン(カッパ−カゼイン)である。カゼインはウシ起源のものであり得るが、他の動物、例えばヤギ又はヒツジ由来のカゼインも考慮される。ペプチドを合成により生成することができる。加えて、ペプチドは抗バイオフィルム特性を有し得るカゼイン又はκ−カゼインの遺伝的変異体由来であり得る。
【0072】
本発明は、バイオフィルム中の非酸産生細菌と比べたバイオフィルム中の酸産生細菌の割合を低減させる組成物も提供する。酸産生細菌はストレプトコッカス・ミュータンスであり得る。
【0073】
これまでの分子モデリング及びPlowman et al. 1997は、非グリコシル化カッパ−カゼインペプチドが両親媒性ヘリックスを形成し、この二次構造がペプチドの抗菌効果に重要であると考えられることを示唆していた。モデリングはグリコシル化がこのヘリックス構造を破壊することも示唆しており、そのため抗菌活性が失われると予測される。予想外のことに、本明細書での結果により、グリコシル化が抗バイオフィルム効果を促進することが示される。
【0074】
本明細書で使用する場合、「抗バイオフィルム」組成物、作用物質若しくはペプチド、又は組成物、作用物質若しくはペプチドの「抗バイオフィルム」特徴は、バイオフィルムを予防、阻害する、又はバイオフィルムの測定可能なパラメータを低減する能力を表す。バイオフィルムの測定可能なパラメータの非限定的な例は、バイオフィルムの総菌体量、平均厚、表面対菌体体積の比、粗度係数又は細菌組成、及びそれらの生存率であり得る。組成物、作用物質又はペプチドは必ずしもバイオフィルム内の細胞の生存率を低減することによりバイオフィルムの測定可能なパラメータに影響を及ぼす必要はない。
【0075】
「殺菌性」は、細菌がバイオフィルム中にあるか又は浮遊状態であるかにかかわらず、細菌の生存率を直接低減する組成物、作用物質、化合物、ペプチド模倣薬又はペプチドの特性を説明するために本明細書で使用される。
【0076】
「バイオフィルム破壊活性」は、バイオフィルムからの生存細菌及び/又は死滅細菌の放出を引き起こす組成物、作用物質、化合物、ペプチド模倣薬又はペプチドの特性を説明するために本明細書で使用される。この組成物、作用物質、化合物、ペプチド模倣薬又はペプチドは、バイオフィルム中の細菌の生存率を低減する、又は細胞外の粘性マトリクスを破壊することもできるが、必ずしもそうである必要はない。バイオフィルムからの細菌の「放出」には、浮遊状態になるバイオフィルム中の細菌の数を増大すること、及び殺菌剤に対するバイオフィルム中の細菌の感受性を増大することが含まれる。
【0077】
したがって、いかなる理論又は作用機序にも束縛されるものではないが、非グリコシル化ペプチドが細菌の生存率を低減することにより抗菌効果又は抗微生物効果を示す一方で、本発明のグリコシル化ペプチドはバイオフィルム中の細菌の生存率を低減しないが、その代わりにバイオフィルム破壊活性を示し、細菌細胞をバイオフィルムから放出させると考えられる。或る特定の実施形態では、グリコシル化ペプチドはバイオフィルム中のより多くの細菌を浮遊状態にさせることができる。他の実施形態では、本発明のペプチド又は組成物はバイオフィルムの形成を阻害又は低減することができる。或る特定の実施形態では、本発明のペプチド又は組成物はバイオフィルムの成長を阻害又は低減することができる。他の実施形態では、本発明のペプチド又は組成物は被験体において疾患又は病態を発症又は促進させるバイオフィルムが示す任意の特徴を阻害又は低減することができる。或る特定の実施形態では、ペプチド又は組成物はバイオフィルム中の細菌を死滅させることなく、被験体における疾患又は病態を発症又は促進させるバイオフィルムが示す任意の特徴を阻害又は低減することができる。
【0078】
カゼイン又はカゼイン断片に「機能的に類似した」ペプチド又はペプチド模倣薬は様々な構造、すなわちアミノ酸配列、長さ又は翻訳後修飾を有し得るが、依然としてカゼイン又はカゼイン断片の機能を保持している。機能的に類似したペプチド又はペプチド模倣薬は、例えばエキソペプチダーゼを用いてアミノ酸配列を短くし、又はより短い長さのアミノ酸配列を合成し、その後抗バイオフィルム特性に関して試験することにより決定することができる。
【0079】
「ペプチド模倣薬」は、本明細書で更に説明される本発明のペプチドと実質的に同じ構造及び/又は機能的特徴を有する合成による化学化合物である。通常、ペプチド模倣薬は本発明のペプチドと同じ又は同様の構造、例えばカゼイン由来であり、グリコシル化したペプチドと同じ又は同様の配列を有する。ペプチド模倣薬は一般的に自然には合成されない残基を少なくとも1つ含有する。ペプチド模倣薬化合物の非天然構成要素は、a)天然のアミド結合(「ペプチド結合」)連鎖以外の残基連鎖基、b)自然発生的なアミノ酸残基に代わる非天然残基、又はc)二次構造の模倣を誘導する、すなわち二次構造、例えばβターン、γターン、βシート、αヘリックスの構造を誘導又は安定化する残基等のうちの1つ又は複数に従うものであり得る。
【0080】
「浮遊細菌」は、表面に接着する細菌に対して流体環境中で浮遊又は成長している細菌である。
【0081】
「治療的に有効な量」は本明細書で使用する場合、所望の治療結果を達成するのに必要とされる投与量及び期間で有効な量を表す。所望の治療結果には、バイオフィルム、歯垢、歯肉炎、歯周炎、齲蝕、口腔粘膜炎、口渇若しくは口内乾燥を含む、疾患若しくは病態、若しくはそれらに関連する症状の重症度、発生率、進行、又は疾患若しくは病態、若しくはそれらに関連する症状を発症する危険性の低減又は阻害が含まれる。本発明の化合物、ペプチド、ペプチド模倣薬又は組成物の治療的に有効な量は当業者が決定することができ、重症度及び進行段階を含む疾患状態、個体の年齢、性別及び体重、並びに本発明の化合物、ペプチド、ペプチド模倣薬又は組成物の個体において所望の応答を誘発する能力等の因子に応じて変えることができる。治療的に有効な量は、治療的に有益な効果が本発明の化合物、ペプチド、ペプチド模倣薬又は組成物の任意の毒性効果又は有害効果を上回るものでもある。
【0082】
κ−カゼインは、N末端、スレオニン121、スレオニン131、スレオニン133、スレオニン136(ウシ変異体Bにはない)、スレオニン142及びスレオニン165(ウシκ−カゼインA(配列番号11)と同じようにナンバリングされている)を含む様々な残基でグリコシル化させることができる。四糖類、例えばNeuAc(α2−3)Gal(β1−3)[NeuAc(α2−6)]GalNAc、単糖類、例えばGalNAc、二糖類、例えばGal(β1−3)GalNAc、及び三糖類、例えばNeuAc(α2−3)Gal(β1−3)GalNAc又はGal(β1−3)[NeuAc(α2−6)]GalNAcを含む幾つかのグリカン形態は、関連残基に接着することができる。好ましい一実施形態はN−アセチルノイラミン酸を含むグリカンである。
【0083】
本発明の組成物におけるペプチドは少なくとも1つのアミノ酸上でリン酸化させることができる。リン酸化し得るアミノ酸はセリン127及び/又はセリン149(ウシκ−カゼインA(配列番号11)と同じようにナンバリングされている)である。ペプチドはキナーゼによりin vivo又はin vitroのいずれかでリン酸化することが可能な任意の他のアミノ酸上でリン酸化されていてもよい。
【0084】
本明細書で使用する場合、「グリコシル化したペプチド」、「糖ペプチド」又は「グリコシル化ペプチド」という言及には、ペプチド1分子当たり少なくともグリカン1分子を含有するペプチドが含まれる。一実施形態では、本発明のペプチドのグリコシル化状態は、標準的な分離技法を用いてウシκ−カゼインから誘導する場合の最も一般的な形態のκ−カゼイン(106〜169)のグリコシル化状態である。別の実施形態では、本発明のペプチドのグリコシル化状態は、ウシのミルクからκ−カゼインを抽出する標準的なプロセスにより精製されたペプチドのグリコシル化状態である。
【0085】
これらの修飾を説明すると、以下のようにウシカゼインの多くの遺伝的変異体が知られている:
κ−カゼイン類
1. κ−カゼインX−2P(遺伝的変異体−A、B、C、E、F、F、G、G、H、I及びJ)
2. κ−カゼインX−2P(f106〜169)(遺伝的変異体−A、B、E、F、F、G、G及びJ)
3. κ−カゼインX−2P(f117〜169)(遺伝的変異体−A、B、E、F、F、G、G及びJ)
Xは遺伝的変異体を示し、遺伝的変異体は続く括弧内で述べられた変異体のいずれか1つであり得る。
【0086】
上記の名称はカゼインの既知の変異体を示している。例えばκ−カゼインB−2P(f106〜169)は、該タンパク質がκ−ファミリーのカゼインの一部であり、B遺伝的変異体であり、リン酸化したアミノ酸残基を2つ含有し、残基106〜残基169のκ−カゼインタンパク質の断片であることを示す。どのアミノ酸がこれらのタンパク質においてリン酸化を受けやすいかは既知である。カゼイン変異体の名称及び更なる説明は、Farrell et al. Nomenclature of Proteins of Cow's Milk - Sixth Revision. Journal of Dairy Science (2004)87:1641-1674に記載されている。したがって、配列番号1〜配列番号10のアミノ酸配列に対応するこれらの配列の断片は変異体であり、開示される本発明の一部を形成する。他の種由来のκ−カゼインも本発明の範囲内であり、本発明のペプチドが由来し得る種の非限定的な例は、ヒト、ウシ、ヤギ及びヒツジである。例えば、本発明のペプチドはウシκ−カゼインA(配列番号11)又はウシκ−カゼインB(配列番号12)に由来し得る。
【0087】
ウシκ−カゼインA(配列番号11)
QEQNQEQPIRCEKDERFFSDKIAKYIPIQYVLSRYPSYGLNYYQQKPVALINNQFLPYPYYAKPAAVRSPAQILQWQVLSNTVPAKSCQAQPTTMARHPHPHLSFMAIPPKKNQDKTEIPTINTIASGEPTSTPTTEAVESTVATLEDSPEVIESPPEINTVQVTSTAV169
【0088】
ウシκ−カゼインB(ウシκ−カゼインAに対するアミノ酸置換は下線処置をしている)(配列番号12)
QEQNQEQPIRCEKDERFFSDKIAKYIPIQYVLSRYPSYGLNYYQQKPVALINNQFLPYPYYAKPAAVRSPAQILQWQVLSNTVPAKSCQAQPTTMARHPHPHLSFMAIPPKKNQDKTEIPTINTIASGEPTSTPTEAVESTVATLESPEVIESPPEINTVQVTSTAV169
【0089】
本明細書で使用される場合、
KCP(f106〜169)=κ−カゼインペプチド断片106〜169
KCGP(f106〜169)=実施例1に記載のように調製されたκ−カゼイン糖ペプチド調製物断片106〜169。
KCGPZ(f106〜169)=実施例1に記載のように調製されたκ−カゼイン糖ペプチド調製物断片106〜169 + Zn2+(KCGPの亜鉛錯体とも称され得る)。
KCG又はKCG(f106〜169)=実施例1に記載のように調製された精製κ−カゼイン糖ペプチド断片106〜169。
【0090】
本明細書では、KCGPZ(f106〜169)の有効性が、一定膜厚発酵槽(constant-depth film fermenter)(CDFF)内で培養した多種口腔バイオフィルム上で、及び共焦点レーザー走査顕微鏡(CSLM)分析によるフローセルモデルにおいて培養したストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルム上で示されている。KCGPZ(f106〜169)の有効性及び作用をクロルヘキシジン及び亜鉛イオン単独のものと比較した。KCGPZ(f106〜169)は、クロルヘキシジンよりも16時間のストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルムに対して有効であり、そのためクロルヘキシジン処置又は亜鉛処置のいずれかで得られるよりも極めて高い表面積対体積比がもたらされた。総括すると、KCGPZ(f106〜169)は酸産生ストレプトコッカス・ミュータンスの16時間のバイオフィルムに対する有効性を示しており、これらのバイオフィルムの回復を抑制する。KCGPZ(f106〜169)の同様の観察結果が、CDFF内で培養した多種口腔バイオフィルム上で試験した場合の酸産生種の抑制において示された。
【0091】
本発明の或る特定の実施形態では、本発明のペプチドをベースとするペプチド模倣薬を記載の治療組成物又は治療方法に使用することができる。
【0092】
本発明は、配列番号1〜配列番号10のアミノ酸配列の機能断片も含む。機能断片は配列番号1〜配列番号10のいずれか一つに対応するアミノ酸配列よりも短い又は長いアミノ酸配列であるが、依然として配列番号1〜配列番号10に対応するアミノ酸配列の機能を保持している。機能断片は、例えばエキソペプチダーゼを用いてアミノ酸配列を短くし若しくは長くし、又はより短い若しくはより長い長さのアミノ酸配列を合成し、その後任意の活性、例えば抗バイオフィルム活性に関して試験することにより容易に決定することができる。
【0093】
オーソロガス配列又はパラロガス配列に対応する配列番号1〜配列番号10のアミノ酸配列の変異体も本発明の範囲内である。
【0094】
本発明のペプチド、ペプチド模倣薬又は組成物を、歯周病の治療又は予防を必要とする被験体の歯又は歯茎に、例えば遠心頬側部位、中間頬側(mid-buccal)部位、近心頬側部位、近心口蓋部位、中間口蓋部位及び遠心口蓋部位、並びに遠心舌側部位、中間舌側部位及び近心舌側部位に直接投与することができる。本発明の組成物の局所投与が好ましいが、化合物、ペプチド、ペプチド模倣薬又は組成物を非経口で、例えば静脈内、腹腔内、筋肉内、髄腔内又は皮下への注射により投与することもできることが当業者により理解されるであろう。
【0095】
本発明はヒトに適用されるが、本発明は獣医学的目的にも有用である。本発明は、ウシ、ヒツジ、ウマ及びトリ等の家畜に、ネコ及びイヌ等のペットに、並びに動物園の動物に有用である。
【0096】
治療を必要とする被験体は、齲蝕、歯肉炎、歯周炎、口腔粘膜炎、歯周病、口渇又は口内乾燥の亜臨床症状又は臨床症状を示す被験体であり得る。一実施形態では、治療を必要とする被験体が齲蝕、歯肉炎、歯周炎、口腔粘膜炎、歯周病、口渇又は口内乾燥の亜臨床症状又は臨床症状を示すとして同定されている。
【0097】
歯周病の亜臨床兆候又は臨床兆候は、歯肉の急性又は慢性の炎症を含む。血漿及び白血球の血液から損傷組織への移動の増大を含む急性炎症の特質が存在し得る。発赤(紅化)、発熱(熱上昇)、腫瘍(腫脹)、痛み(疼痛)及び機能喪失(機能低下)を含む歯肉の急性感染の臨床徴候も存在し得る。慢性炎症は白血球細胞(単球、マクロファージ、リンパ球、血漿細胞)の浸潤を特徴とし得る。組織及び骨量の減少が観察される場合もある。治療を必要とする被験体は、歯周部位に存在するポルフィロモナス・ジンジバリス細菌レベルが、歯周病ではない個体で観察される正常な範囲を超えて増大していることも特徴とし得る。
【0098】
投与経路は、投与するペプチド、ペプチド模倣薬又は組成物の性質、及び被験体の病態の重症度を含む多くの因子に応じて異なり得る。本発明の化合物、ペプチド、ペプチド模倣薬、又は組成物の投与頻度、及び本発明の化合物、ペプチド、ペプチド模倣薬、又は組成物の投与量は、特に被験体における歯周病の発症又は進行の段階に応じて被験体ごとに異なり得ることが理解される。投与頻度は臨床医が決定することができる。
【0099】
バイオフィルムの結果として起こる、又はバイオフィルムに関連する任意の疾患、病態又は症候群を本発明のペプチド、ペプチド模倣薬又は組成物により予防又は治療することができることも考慮される。加えて、本発明のペプチド、ペプチド模倣薬若しくは組成物により、バイオフィルムの結果として起こる、又はバイオフィルムに関連する疾患、病態若しくは症候群の症状の重症度又は発生率を低減することができる。さらに、歯周病の結果として起こる、若しくはそれに関連する他の疾患、病態若しくは症候群も治療することができるか、又はこれらの疾患、病態若しくは症候群を発症する危険性を低減することができる。例えば、歯周病は個体が心疾患を発症する危険性を増大させ得る。この心疾患を発症する危険性の増大は、歯周病の個体に本発明のペプチド、ペプチド模倣薬又は組成物を投与することにより歯周病を治療することによって低減させることができる。
【0100】
本明細書で述べられるように、本発明のペプチド、ペプチド模倣薬又は組成物を口腔潤滑剤、代用唾液又は人工唾液として使用することができる。口腔潤滑剤は口に潤いを与え、口腔の表面を滑らかにすることが可能である。口腔潤滑剤は唾液に加えて、唾液と相乗的に、又は唾液の非存在下に代用唾液として作用し得る。口腔潤滑剤は唾液腺を実質的に又は完全に欠損し(defective)(すなわち欠き)、そのため唾液をほとんど又は全く産生しない患者に特に有用である。一実施形態では、本発明のペプチド、ペプチド模倣薬又は組成物は、唾液腺を刺激し、より多くの唾液を生成する唾液分泌促進薬、例えばピロカルピンを更に含み得る。口腔潤滑剤、代用唾液又は人工唾液を必要とする患者は、ショーグレン症候群、管理不良の糖尿病、ランバート・イートン症候群、放射線療法又は化学療法の結果として口渇又は口内乾燥を患う患者であり得る。
【0101】
通常、天然唾液中に見出される任意の構成要素は本発明の組成物の構成要素でもあり得る。一態様では、唾液構成素は、ナトリウム、カリウム、塩化物、フッ化物、リン酸塩、重炭酸塩、酸素、二酸化炭素、尿素、プチアリン、マルターゼ及びアミラーゼ等の酵素、並びにムチン、グロブリン、卵白タンパク質及びスタセリン等のタンパク質からなる群から選択される。
【0102】
口腔潤滑剤、代用唾液として、又は人工唾液として使用されるペプチド、ペプチド模倣薬又は組成物の機能には、天然唾液の機能、例えば食物残渣及び歯垢を歯から洗い流し、齲蝕の予防を助けること;虫歯、口臭(口気悪臭)及び他の口腔感染症を引き起こす細菌の成長を制限すること;歯を浸漬させ、歯構造を再石灰化させるカルシウム及びリン酸塩等のミネラルを供給すること;より容易に嚥下することができるように食物を滑らかにすること;咀嚼及び会話がより容易になるように、口の内側に潤いを与えること;消化を助け、「テイスティング」プロセスを補助することにより食事の楽しみを増やす酵素を提供することが含まれる。
【0103】
ペプチド配列又はポリペプチド配列、すなわち本明細書で規定の本発明のペプチドに対する「アミノ酸配列の同一性のパーセント(%)」又は「パーセント(%)同一な」は、最大の配列同一性パーセントを達成するために配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入した後に、特定のペプチド配列又はポリペプチド配列、すなわち本発明のペプチドにおけるアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の百分率と定義される(配列同一性の一部としてはいずれの保存的置換も考慮しない)。
【0104】
当業者は、比較対象の配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するのに必要となる任意のアルゴリズム(非限定的な例が以下に記載される)を含む、アラインメントを測定するのに適切なパラメータを求めることができる。アミノ酸配列をアラインメントする場合、所定のアミノ酸配列Bに対する所定のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性パーセント(代替的には所定のアミノ酸配列Bに対して或る特定のアミノ酸配列同一性パーセントを有する又は含む所定のアミノ酸配列Aと表すことができる)は、アミノ酸配列同一性パーセント=X/Y×100(式中、XはA及びBの配列アラインメントプログラム又はアルゴリズムのアラインメントにより完全な一致としてスコア付けされたアミノ酸残基の数であり、YはBにおけるアミノ酸残基の総数である)として算出することができる。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性パーセントは、Aに対するBのアミノ酸配列同一性パーセントと等しくない。
【0105】
同一性パーセントを算出する際には、通常正確な一致数をカウントする。数学アルゴリズムを用いて2つの配列間の同一性パーセントの測定を達成することができる。2つの配列の比較に利用される数学アルゴリズムの非限定的な例は、Karlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264のアルゴリズム(Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877に記載のように修正)である。このようなアルゴリズムをAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403のBLASTNプログラム及びBLASTXプログラムに組み込む。比較目的でギャップのあるアラインメントを得るために、Gapped BLAST(BLAST 2.0)をAltschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389に記載のように利用することができる。代替的に、PSI−Blastを、分子間の距離関係を検出する反復サーチ(iterated search)を行うのに使用することができる。上記のAltschul et al. (1997)を参照されたい。BLASTプログラム、Gapped BLASTプログラム、及びPSI−Blastプログラムを利用する場合、各プログラム(例えばBLASTX及びBLASTN)のデフォルトパラメータを使用することができる。アラインメントを手検測(manually by inspection)により行うこともできる。配列の比較に利用される数学アルゴリズムの別の非限定的な例はClustalWアルゴリズム(Higgins et al. (1994) Nucleic Acids Res. 22:4673-4680)である。ClustalWは配列を比較し、アミノ酸配列又はDNA配列全体をアライメントすることにより、アミノ酸配列全体の配列保存に関するデータを提供することができる。ClustalWアルゴリズムを幾つかの市販のDNA/アミノ酸分析ソフトウェアパッケージ、例えばVector NTI Program Suite(Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA)のALIGNXモジュールに使用する。ClustalWによるアミノ酸配列のアラインメントの後、アミノ酸同一性パーセントを評価することができる。ClustalWアラインメントの分析に有用なソフトウェアプログラムの非限定的な例はGENEDOC(商標)である。GENEDOC(商標)により、多数のタンパク質間のアミノ酸(又はDNA)の類似性及び同一性の評価が可能になる。配列の比較に利用される数学アルゴリズムの別の非限定的な例は、Myers and Miller (1988) CABIOS 4:11-17のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムを、GCG Wisconsin Geneticsソフトウェアパッケージ、バージョン10(Accelrys, Inc., 9685 Scranton Rd., San Diego, CA, USAから入手可能)の一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込む。アミノ酸配列の比較にALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重量残基表(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを使用することができる。ペプチド配列又はポリペプチド配列、すなわち本明細書で規定の本発明のペプチドに対する「アミノ酸配列の同一性のパーセント(%)」又は「パーセント(%)同一な」は、最大の配列同一性パーセントを達成するために配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入した後に、特定のペプチド配列又はポリペプチド配列、すなわち本発明のペプチドにおけるアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の百分率と定義される(配列同一性の一部としてはいずれの保存的置換も考慮しない)。
【0106】
同一性パーセントを算出する際には、通常正確な一致数をカウントする。数学アルゴリズムを用いて2つの配列間の同一性パーセントの測定を達成することができる。2つの配列の比較に利用される数学アルゴリズムの非限定的な例は、Karlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. ScL USA87:2264のアルゴリズム(Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. ScL USA90:5873-5877に記載のように修正)である。このようなアルゴリズムをAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403のBLASTNプログラム及びBLASTXプログラムに組み込む。比較目的でギャップのあるアラインメントを得るために、Gapped BLAST(BLAST 2.0)をAltschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389に記載のように利用することができる。代替的に、PSI−Blastを、分子間の距離関係を検出する反復サーチを行うのに使用することができる。上記のAltschul et al. (1997)を参照されたい。BLASTプログラム、Gapped BLASTプログラム、及びPSI−Blastプログラムを利用する場合、各プログラム(例えばBLASTX及びBLASTN)のデフォルトパラメータを使用することができる。アラインメントを手検測により行うこともできる。配列の比較に利用される数学アルゴリズムの別の非限定的な例はClustalWアルゴリズム(Higgins et al. (1994) Nucleic Acids Res. 22:4673-4680)である。ClustalWは配列を比較し、アミノ酸配列又はDNA配列全体をアライメントすることにより、アミノ酸配列全体の配列保存に関するデータを提供することができる。ClustalWアルゴリズムを幾つかの市販のDNA/アミノ酸分析ソフトウェアパッケージ、例えばVector NTI Program Suite(Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA)のALIGNXモジュールに使用する。ClustalWによるアミノ酸配列のアラインメントの後、アミノ酸同一性パーセントを評価することができる。ClustalWアラインメントの分析に有用なソフトウェアプログラムの非限定的な例はGENEDOC(商標)である。GENEDOC(商標)により、多数のタンパク質間のアミノ酸(又はDNA)の類似性及び同一性の評価が可能になる。配列の比較に利用される数学アルゴリズムの別の非限定的な例は、Myers and Miller (1988) CABIOS 4:11-17のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムを、GCG Wisconsin Geneticsソフトウェアパッケージ、バージョン10(Accelrys, Inc., 9685 Scranton Rd., San Diego, CA, USAから入手可能)の一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込む。アミノ酸配列の比較にALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重量残基表、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを使用することができる。
【0107】
上述の医薬組成物を含有する本発明の口腔組成物を、練り歯磨き、歯磨き粉及び歯磨き液を含む歯磨き剤、洗口剤、口腔潤滑剤、代用唾液、人工唾液、トローチ、チューイングガム、歯科用ペースト、歯肉マッサージクリーム、口内洗浄錠、乳製品、並びに他の食品等の口に適用可能な様々な形態で調製及び使用することができる。本発明による口腔組成物は特定の口腔組成物の種類及び形態に応じて更なる既知の成分を更に含んでいてもよい。
【0108】
任意で組成物は、グラム陰性の嫌気性細菌にとって毒性であるか、又はグラム陰性の嫌気性細菌の増殖を阻害する1つ又は複数の抗生物質を更に含んでいてもよい。潜在的に任意の静菌性又は殺菌性の抗生物質を本発明の組成物に使用することができる。好ましくは、好適な抗生物質には、アモキシシリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン又はメトロニダゾールが含まれる。
【0109】
本発明の或る特定の好ましい形態において、口腔組成物は性質が実質的に液体のもの、例えば洗口剤又は洗口液であり得る。このような調製物において、ビヒクルは通常、望ましくは以下に記載のような保湿剤を含む水−アルコール混合物である。一般的に、水対アルコールの重量比は約1:1〜約20:1の範囲である。この種の調製物における水−アルコール混合物の総量は通常、調製物の約70重量%〜約99.9重量%の範囲である。アルコールは通常、エタノール又はイソプロパノールである。エタノールが好ましい。
【0110】
本発明のこのような液体及び他の調製物のpHは概して、約5〜約9、通常約5.0〜7.0の範囲である。pHを酸(例えばクエン酸又は安息香酸)若しくは塩基(例えば水酸化ナトリウム)で制御することができるか、又は(例えばクエン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等を用いて)緩衝させることができる。
【0111】
本発明の他の望ましい形態において、組成物は、性質が実質的に固体又はペースト状のもの、例えば歯磨き粉、歯垢検出剤(dental tablet)又は練り歯磨き(歯科用クリーム)又はゲル歯磨き剤であり得る。このような固体又はペースト状の経口調製物のビヒクルは一般的に、歯科的に許容される研磨材料を含有する。
【0112】
練り歯磨きにおいて、液体ビヒクルは、通常調製物の約10重量%〜約80重量%の範囲の量で水及び保湿剤を含み得る。好適な保湿剤/担体としてグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール及びポリプロピレングリコールが例示される。水と、グリセリンと、ソルビトールとの液体混合物も有益である。屈折率が考慮すべき重要なものである透明なゲルにおいて、約2.5%(w/w)〜30%(w/w)の水、0%(w/w)〜約70%(w/w)のグリセリン、及び約20%(w/w)〜80%(w/w)のソルビトールを用いるのが好ましい。
【0113】
練り歯磨き、クリーム及びゲルは通常、約0.1%(w/w)〜約10%(w/w)、好ましくは約0.5%(w/w)〜約5%(w/w)の割合で天然型又は合成型の増粘剤又はゲル化剤を含有する。好適な増粘剤は、例えばLaporte Industries Limitedから市販されているLaponite(例えばCP、SP2002、D)として利用可能な合成コロイドマグネシウムアルカリ金属シリケート複合体粘土である合成ヘクトライトである。Laponite Dはおよそ58.00重量%のSiO、25.40重量%のMgO、3.05重量%のNaO、0.98重量%のLiO、並びに幾らかの水及び微量金属である。その真比重は2.53であり、湿度8%で1.0g/mlの見掛けのかさ密度を有する。
【0114】
他の好適な増粘剤には、アイリッシュモス、イオタカラギーナン、トラガカントゴム、デンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(例えばNatrosolとして利用可能)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び微砕Syloid(例えば244)等のコロイドシリカが含まれる。可溶化剤、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びヘキシレングリコール等の湿潤ポリオール、メチルセロソルブ及びエチルセロソルブ等のセロソルブ、オリーブ油、ヒマシ油及びワセリン等の直鎖に少なくとも約12個の炭素を含有する植物油及びワックス、並びに酢酸アミル、酢酸エチル及び安息香酸ベンジル等のエステルも含まれ得る。
【0115】
従来通り口腔調製物は通常、好適なラベル付きパッケージで販売又はそうでなくとも流通していると理解される。このため、洗口液のボトルはそれを実際に洗口液又は洗口剤として記載し、その用法を説明しているラベルを有しており、練り歯磨き、クリーム又はゲルは通常、それを練り歯磨き、ゲル又は歯科用クリームとして記載しているラベルを有する、押し出しチューブ(通常アルミニウム、裏打ちされた鉛、若しくはプラスチック製の)、又は内容物を量り出すための他の圧搾式ディスペンサー、ポンプ式ディスペンサー若しくは加圧式ディスペンサーに入っている。
【0116】
治療作用又は予防作用の増大を達成するために、口腔全体への活性剤の徹底的かつ完全な分散を達成するのを助けるために、及び本組成物をより化粧品として許容可能にするために有機界面活性剤を本発明の組成物に使用することができる。有機界面活性材料は本質的にアニオン性、非イオン性又は両性であるのが好ましく、活性剤と相互作用しないのが好ましい。組成物に洗浄性及び発泡性を与える洗浄材料を界面活性剤として利用するのが好ましい。アニオン性界面活性剤の好適な例は、高級脂肪酸モノ硫酸モノグリセリドの水溶性塩、例えば硬化ヤシ油脂肪酸のモノ硫酸モノグリセリドのナトリウム塩、高級アルキル硫酸塩、例えばラウリル硫酸ナトリウム、アルキルアリールスルホン酸塩、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、高級アルキルスルホ酢酸塩、スルホン酸1,2−ジヒドロキシプロパンの高級脂肪酸エステル、及び低級脂肪族アミノカルボン酸化合物の実質的に飽和した高級脂肪族アシルアミド、例えば脂肪酸、アルキルラジカル又はアシルラジカルに12個〜16個の炭素を有するもの等である。最後に言及されたアミドの例は、N−ラウロイルサルコシン、並びにセッケン又は同様の高級脂肪酸材料を実質的に含まないとされるN−ラウロイルサルコシン、N−ミリストイルサルコシン又はN−パルミトイルサルコシンのナトリウム塩、カリウム塩及びエタノールアミン塩である。本発明の口腔組成物におけるこれらのサルコナイト(sarconite)化合物の使用は、これらの材料が酸溶液中での歯のエナメル質の溶解性を或る程度低減させることに加えて、炭水化物分解による口腔での酸形成の阻害における長期にわたる顕著な効果を示すために特に有益である。使用に好適な水溶性の非イオン性界面活性剤の例は、エチレンオキシドと、疎水性の長鎖(例えば約12個〜20個の炭素原子の脂肪族鎖)を有し、エチレンオキシドと反応性を有する様々な反応性水素含有化合物との縮合生成物(該縮合生成物(「エトキサマー(ethoxamers)」)は親水性ポリオキシエチレン部分を含有する)、例えばポリ(エチレンオキシド)と脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪アミド、多価アルコール(例えばモノステアリン酸ソルビタン)及びポリプロピレンオキシド(例えばプルロニック材料)との縮合生成物である。
【0117】
界面活性剤は通常、約0.1重量%〜5重量%の量で存在する。界面活性剤が本発明の活性剤の溶解を助け、それにより必要となる可溶化保湿剤の量を減らすことができることは注目に値する。
【0118】
増白剤、保存料、シリコーン、クロロフィル化合物及び/又は尿素、リン酸二アンモニウム等のアンモニア化材料、並びにそれらの混合物等の様々な他の材料を本発明の口腔調製物に組み込むことができる。これらのアジュバントは存在する場合、所望の特性及び特徴に実質的に悪影響を及ぼすことのない量で調製物に組み込まれる。
【0119】
任意の好適な香味材料又は甘味材料も利用することができる。好適な香味構成素の例は香味油、例えばスペアミント、ペパーミント、ウィンターグリーン、サッサフラス、チョウジ、セージ、ユーカリ、マジョラム、シナモン、レモン及びオレンジの油、並びにサリチル酸メチルである。好適な甘味剤には、スクロース、ラクトース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、シクラミン酸ナトリウム、ペリラルチン、AMP(アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル)、サッカリン等が含まれる。好適には香味剤及び甘味剤はそれぞれ又は合わせて、調製物の約0.1%〜5%以上含み得る。
【0120】
本発明の組成物を、例えば加温したガム基剤中に混ぜ込むこと又はガム基剤の外面をコーティングすることによりロゼンジに、又はチューイングガム若しくは他の製品に組み込むこともできる。ガム基剤の例は、望ましくは従来の可塑剤若しくは柔軟剤、糖類、又は例えばグルコース、ソルビトール等の他の甘味料を含むジェルトン、ゴム乳液、ビニライト樹脂等である。
【0121】
更なる態様では、本発明は、(a)本発明の組成物と、(b)薬学的に許容される担体とを備える部品のキットを提供する。望ましくは該キットは、このような治療を必要とする患者における歯周病の治療又は予防に使用するための取扱説明書を更に備える。
【0122】
口腔使用を目的とする組成物を医薬組成物の製造に関して当該技術分野で既知の任意の方法に従って調製することができ、このような組成物は薬学的に有効な口当たりのよい調製物を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤及び保存剤からなる群から選択される作用物質を1つ又は複数含有し得る。錠剤は錠剤の製造に好適な非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合された活性成分を含有する。これらの賦形剤は例えば不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム;造粒剤及び崩壊剤、例えばコーンスターチ又はアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン又はアカシア、並びに滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであり得る。錠剤はコーティングされていなくてもよく、又は錠剤を胃腸管での崩壊及び吸収を遅らせ、それによってより長期にわたり作用が持続するように既知の技法でコーティングしてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリル等の時間遅延材料を利用することができる。
【0123】
口腔使用のための製剤を、硬ゼラチンカプセルとして(その中で活性成分は不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリンと混合される)、又は軟ゼラチンカプセルとして(その中で活性成分は水又は油媒体、例えば落花生油、液体パラフィン若しくはオリーブ油と混合される)提示することができる。
【0124】
水性懸濁液は水性懸濁液の製造に好適な賦形剤と混合された活性材料を含有する。このような賦形剤は懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアカシアゴムである。分散剤又は湿潤剤は、自然発生的なホスファチド、例えばレシチン、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、又はエチレンオキシドと脂肪酸及び無水ヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであり得る。
【0125】
水性懸濁液は1つ又は複数の保存料、例えばベンゾエート、例えばエチルp−ヒドロキシベンゾエート又はn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート、1つ又は複数の着色剤、1つ又は複数の香味剤、及び1つ又は複数の甘味剤、例えばスクロース又はサッカリンも含有し得る。
【0126】
油性懸濁液を、植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油若しくはヤシ油、又は液体パラフィン等の鉱物油中に活性成分を懸濁することにより配合することができる。油性懸濁液は増粘剤、例えば蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールを含有し得る。上記で記載されるような甘味剤、及び香味剤を口当たりのよい口腔調製物を提供するために添加してもよい。これらの組成物をアスコルビン酸等の抗酸化剤の添加により保存することができる。
【0127】
本発明の性質をより容易に理解することができるように、これより本発明の形態を以下の非限定的な実施例を参照して説明する。これらの実施例では、「KCGPZ(f106〜169)」又は「抗バイオフィルム亜鉛糖ペプチド」は、実施例1に例示のように調製され、実施例2及び実施例3に記載の研究に使用されるカッパ(κ)カゼイン糖ペプチド断片106〜169 + Zn2+(すなわち亜鉛錯体)を有する組成物を表す。「KCG」又は「KCG(f106〜169)」は、実施例1に記載のように調製され、実施例2及び実施例3に記載の研究に使用される精製κ−カゼイン糖ペプチド断片106〜169を表す。「KCGP(f106〜169)」は、実施例1に記載のように調製され、実施例2及び実施例3に記載の研究に使用されるκ−カゼイン糖ペプチド調製物断片106〜169を表す。「KCP(f106〜169)」は、実施例2及び実施例3に記載の研究に使用される非グリコシル化κ−カゼインペプチド断片106〜169を表す。
【0128】
本明細書に開示及び規定される本発明は、明細書若しくは図面で言及される又は明細書若しくは図面から明らかである個々の特徴の2つ以上の代替的な組み合わせすべてにまで及ぶことが理解されるであろう。これらの異なる組み合わせすべてが本発明の様々な代替的な態様を構成する。
【実施例】
【0129】
実施例1
KCGP(f106〜169)及びKCGPZ(f106〜169)の調製
カゼイン−HClを最終濃度が21.5g/Lになるまで50℃で脱イオン水に溶解し、pHを1MのNaOHの添加により8.0に維持した。それから温度を37℃まで低下させ、カゼインの沈殿を避けるためにpHを1MのHClの添加により6.3に調整した。カゼインを加水分解するために、レンネット(90%キモシン;EC 3.4.23.4;145国際凝乳単位[IMCU]/mL;単一濃度;Chr. Hanson)を最終濃度が1.2 IMCU/g(カゼイン)になるまで添加し、溶液を37℃で1時間撹拌した。加水分解をトリクロロ酢酸を4%の最終濃度まで添加することにより停止させ、沈殿したタンパク質を遠心分離(5000g、15分、4℃)により塊にした。κ−カゼイン(106〜169)カゼイノマクロペプチド(CMP)を含有する上清を濃縮し、3000Daカットオフ膜(S10Y3、Amicon/Millipore)による透析濾過を用いてHOで洗浄し、KCGP(f106〜169)を生成した。残余分を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)及び質量分析により分析した。KCGPZ(f106〜169)を20mMのZnClを10mg/mLのKCGP(f106〜169)調製物に添加することにより調製した。この溶液がバイオフィルムアッセイに使用したKCGPZ(f106〜169)溶液であった。
【0130】
グリコシル化κ−カゼイン(106〜169)−KCGの調製
上記のように調製されたKCGP(f106〜169)を0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)の水溶液(溶媒A)に溶解し、Agilent 110 HPLCシステムに取り付けられたC18半分取RPカラム(250×10mm、Vydac)に適用した。ペプチドを開始流速0.1mL/分(最初の1分で3.5mL/分まで増大させる)で5%溶媒Bを用いて溶出させた。次の1分で溶媒Bの勾配を15%まで、その後10分で溶媒Bの勾配を15%から30%まで、24分で溶媒Bの勾配を30%から48%まで、2分で溶媒Bの勾配を48%から100%まで増大させた。溶媒Bは0.085%(v/v)TFAを含有する20%水とともに80%アセトニトリルを含有していた。溶出液を215nmの主波長を用いてモニタリングした。18分〜23分の溶出で回収した画分を回収し、プールして、凍結乾燥した。KCGの算出収率はKCGP(f106〜169)の24%であった。
【0131】
タンパク質調製物の分析。
上記のように調製した際のKCGP(f106〜169)は43%非グリコシル化κ−カゼイン(106〜169)と、24%グリコシル化κ−カゼイン(106〜169)とを含有していた。この材料を逆相HPLCにより更に精製し、グリコシル化形態のκ−カゼイン(106〜169)を非グリコシル化形態と分離した(図4)。18分〜23分で溶出したグリコシル化形態のκ−カゼイン(106〜169)を回収し、ここではKCGと称した。
【0132】
実施例2
単一特異性バイオフィルムのフローセル培養及びCSLM分析
フローセルにおけるストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルム培養は、幾つかの修正点があるが、Wen et al. (2006)により記載されたものと同様のものであった。3チャネルフローセルシステム(Stovall Life Science, Greensboro, North Carolina, USA)を細菌バイオフィルムの接種、検査及び染色用の止め栓を用いて改良した。すべてのパーツを組み立て、0.5%次亜塩素酸ナトリウムをポンプにより投入し、一晩そのままにした。それから滅菌水(200mL)を用いて、システムを洗い流した後、成長培地を添加した。システムに1×10細胞/mLの細胞密度まで希釈した1mLの対数増殖期のストレプトコッカス・ミュータンスIngbritt株の培養物を接種した。システムを1時間インキュベートした後、2.5mMのDTT及び0.5g/Lのスクロースを添加した25% ASM(ASM;2.5g/LのII型ブタ胃ムチン、2.0g/Lの細菌性ペプトン、2.0g/Lのトリプトン、1.0g/Lの酵母エキス、0.35g/LのNaCl、0.2g/LのKCl、0.2g/LのCaCl及び1mg/Lのヘミン(pH7.0))を一定速度で流した(0.2mL/分)。16時間後、1mLの精製グリコシル化κ−カゼイン(106〜169)(KCG);KCGP(f106〜169);KCGPZ(f106〜169)(KCGPZ(f106〜169);10mg/mL KCGP(f106〜169)及び20mMのZnCl);20mMのZnCl;0.1%ジグルコン酸クロルヘキシジン又は滅菌水をシステムの各チャネルに注入し、10分間インキュベートした後、25% ASM流を10分間再開し、その後染色した。初期段階のバイオフィルムに対する処置の効果を求めるために、システムを接種後6時間インキュベートして、1mLの試験溶液で10分間処置して、25% ASM流を更に16時間再開して、バイオフィルムの回復を観察した。それからBacLight LIVE/DEAD染色(Molecular Probes)を用いて、in situでバイオフィルムを染色した。
【0133】
細菌バイオフィルムの共焦点レーザー走査顕微鏡検査(CLSM)を倒立型ステージを備えるMeta 510共焦点顕微鏡(Zeiss)で行った。水平(xy)光デジタルセクション(各々、バイオフィルムの厚さ全体にわたって2μm厚(z))を、512×512ピクセル(1ピクセル当たり0.28μm)で(それぞれのフレームは143.86μm(x)×143.86μm(y)である)63倍の対物レンズを用いて画像化した。バイオフィルムに関する再現性を求めるために、無作為の位置で5つの画像を488nm及び568nmの波長でそれぞれのチャネルで取得し、3つの生物学的反復試料(biological replicates)を使用した。取得した画像はすべてComstatソフトウェアを用いて分析した(Heydorn et al., 2000)。
【0134】
データ処置及び統計分析。
生体測定データを、定着したバイオフィルムに対するKCGP(f106〜169)、KCG、KCGPZ(f106〜169)、亜鉛及びクロルヘキシジンの効果を研究するために、固定要因として含まれる処置と、無作為遮断因子として実験とを有する2要因の分散分析(ANOVA)モデルを用いて分析した。処置差が有意であった場合、処置差の事後比較を、チューキー事後検査を用いて行った。モデルの適合を残差プロットで確認し、正規性を正規確率プロット及びコルモゴルフ・スミルノフ検定を用いて調べ、誤差分散の均一性を、ルビーン検定を用いて検査した。誤差分散が不均一であった場合、データの自然対数変換を用いて、処置群の分散を安定化させた。それから変換したデータに対してANOVAを用いて処置を比較した。6時間のストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルムに対するKCGPZ(f106〜169)の効果を調べる実験から得られた生体測定データを、対応のあるサンプルのT検定を用いて分析した。すべての分析を、SPSS統計ソフトウェア(バージョン17.0、SPSS Inc., Chicago, IL)を用いて実施した。
【0135】
ムチンを含有する低濃度の人工唾液媒体により16時間フローセル内で成長させた場合、ストレプトコッカス・ミュータンスは7.37μmの平均厚と、底質1μm当たり3.88μmの菌体体積とを有する高濃度の構造化されたバイオフィルムを産生した(表1)。すべての処置が、ストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルム構造(平均厚及び菌体体積を含む)に対して明確な影響を与えていた(図1及び表1)。2.4mg/mL及び10mg/mLの濃度での精製KCGによる単一処置により、それぞれバイオフィルムの平均厚の69%及び86%の有意な低減と、それぞれ菌体体積の59%及び78%の低減とを伴い、ストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルムの用量依存的な破壊がもたらされた(表1)。10mg/mLのKCGP(f106〜169)(2.4mg/mLのKCGを含有していた)によるこれらのバイオフィルムの処置により、2.4mg/mLの精製KCGと同じ結果が生じた(表1)。粗度係数は、KCG(10mg/mL)及びKCGPZ(f106〜169)処置により顕著に増大し、バイオフィルム構造の著しい破壊が示された。
【0136】
10mg/mLのKCGP(f106〜169)と20mMのZnClとの組み合わせであるKCGPZ(f106〜169)によるストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルムの処置により、10mg/mLのKCGP(f106〜169)又は20mMのZnCl単独による処置よりもバイオフィルムの有意により良好な破壊が生じた(表1)。クロルヘキシジン処置は、総菌体量及び平均厚をそれぞれ53%及び59%低減したが、ZnCl、2.4mg/mLの精製KCG又は10mg/mLのKCGP(f106〜169)により生じたものとは有意に異ならない結果を生じた(表1)。クロルヘキシジンで処置したバイオフィルムはヨウ化プロピジウムによる染色により求められるように、KCG又はKCGPZ(f106〜169)と比較して定性的により大量の死滅したストレプトコッカス・ミュータンス細胞を呈した(図5)。換言すると、KCG(図5の第1列目、上から2番目のパネル)又はKCGPZ(f106〜169)(図5の第1列目、上から4番目のパネル)のいずれよりもクロルヘキシジン(図5の第1列目、上から3番目のパネル)による処置後により多くの細胞がヨウ化プロピジウムによる染色を呈した。上述のように、図5では、左側の画像(第1列目)は無処置の細胞膜に不透過性のヨウ化プロピジウムによる細胞の染色を示す。中央の画像(真ん中の列)はすべての細胞を検出するSyto9染色であり、右側の画像(右側の列)はヨウ化プロピジウムとSyto9との両方の組み合わせによる染色を示す。
【0137】
【表1】

【0138】
同じ上付き文字の欄内の数字は有意には異なっていなかった(p<0.05)。誤差分散における有意な不均一性が総菌体量(p<0.001)及び平均厚(p<0.001)の測定値の両方で見出されたため、データを分析前に対数変換した。対数変換した測定値に関する誤差分散は均一であり、残差は正規分布した。
【0139】
フローセルにおいて6時間培養した場合、ストレプトコッカス・ミュータンスが、底質1μm当たり0.25±0.9μmの平均菌体体積、0.32±0.31μmの平均厚、2.91±0.63μm/μmの表面対菌体体積の比、及び1.90±0.07の粗度係数で初期段階のバイオフィルムを形成した。これらの初期段階のバイオフィルムにKCGPZ(f106〜169)又はクロルヘキシジンのいずれかによる1回の10分間の処置を行い、16時間回復させ、その時点でバイオフィルムをCSLMにより画像化し、バイオフィルムの生物測定パラメータを求めた。KCGPZ(f106〜169)による処置により、対照と比較して平均して総菌体体積の75%及び平均厚の73%の低減、並びに表面対菌体体積の比及び粗度係数の増大がもたらされた(表2)。クロルヘキシジンはこれらの初期ストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルムに対してより有効であり、バイオフィルムを大幅に低減し、バイオフィルムは16時間後でも回復しなかった(表2)。
【0140】
【表2】

【0141】
実施例3
複数種の口腔バイオフィルム培養物
それから、KCGPZ(f106〜169)を、一般的に齲蝕の発症及び進行に関連する日和見病原菌を含む、歯肉縁上の歯垢の主要種を表すために選択された6つの細菌種からなる多菌性バイオフィルムに対して試験した。バイオフィルムの細菌成長培地(ASM)を、唾液の高糖タンパク質組成を模倣するように設計し、食事摂取を模倣するために炭水化物とタンパク質との混合物をCDFFに1日に4回加えた。
【0142】
歯肉縁上の歯垢をモデル化するための6つの口腔細菌種は、ストレプトコッカス・サンギス(NCTC 7863)、ストレプトコッカス・ミュータンスIngbritt株、アクチノマイセス・ネスランディイ(Actinomyces naeslundii)(NCTC 10301)、ベイヨネラ・ディスパー(Veillonella dispar)(ATCC 17745)、ラクトバチルス・カセイ(NCDO 161)及びフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)(ATCC 10953)であり、N中での5% COの1L/時間の一定流量により維持された嫌気性条件下、37℃で一定膜厚発酵槽(CDFF;Cardiff University, Cardiff, United Kingdom;(Dashper et al. 2005; Shu et al., 2003; Wilson, 1996; Wimpenny et al., 1989))内で多菌性バイオフィルムとして培養した。CDFFは、3rpmの一定速度で回転した循環型プラットフォーム上に15個の取り外し可能なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のパンを備えていた。バイオフィルムをそれぞれのPTFE製のパン中の5つのプラグ上で成長させたが、該プラグは30mL/時間の一定流速で2.5g/Lのムチン(ブタ、胃、II型)、2.0g/Lの細菌性ペプトン、2.0g/Lのトリプトン、1.0g/Lの酵母エキス、0.35g/LのNaCl、0.2g/LのKCl、0.2g/LのCaCl及び1mg/Lのヘミン(McBain et al., 2003b;Pratten et al., 1998)を含有する人工唾液培地(ASM)(pH7.0)を用いて300μmの深さに置いた。これに20mL/時間の流速で30分間、1日4回の5g/Lの可溶性デンプン、2g/Lのスクロース、3g/Lのカゼイン、3g/Lの細菌性ペプトン、2.5g/Lの酵母エキス、4.5g/LのNaCl、0.2g/LのKHPO、0.4g/LのCaCl、0.2g/LのNaHCOの混合物の添加を追加し(McBain et al., 2003a; b)、食事摂取をシミュレートした。接種前、CDFFのプラグ表面を10mL/時間の流速でASMにより24時間馴化させた(McBain et al., 2003b)。それぞれの細菌種をブレインハートインフージョン(37g/L)の入ったバッチ培養物中で40時間個々に成長させた。それからそれぞれの培養物の試料(10ml)を等量のASMと穏やかに混合し、6時間の期間にわたって20mL/時間の流速でCDFFに接種した。
【0143】
指定のサンプリング時間で、それぞれのパンをCDFFから無菌状態で取り出し、3つのプラグをパンから引き出し、浮遊細胞を100μLのASMで穏やかに洗浄することにより除去した。それからそれぞれのプラグを1mLの培地に入れ、60秒間ボルテックスし、プラグ上のバイオフィルムを破壊した。その後、上清を10倍から10倍まで段階希釈し、100μLのそれぞれの希釈液をコロニー形成単位(CFU)のカウントのために広範な選択培地上にプレーティングした。選択培地はウイルキンス・チャルグレン寒天(嫌気性菌全般);グラム陰性添加物を有するウイルキンス・チャルグレン寒天(グラム陰性の嫌気性菌全般);フッ化カドミウム亜テルル酸アクリフラビン寒天(歯の放線菌類);ミティス・サリバリウス寒天(ストレプトコッカス属);0.1ユニット/mLのバシトラシンを有するミティス・サリバリウス寒天(ストレプトコッカス・ミュータンス);ロゴーサ寒天(ラクトバチルス属全般)(McBain et al., 2003b)であった。これらの寒天を最大5日間、嫌気性チャンバ内で37℃でインキュベートした。形態学的に異なる細菌コロニーをカウントし、細菌をグラム染色して、純度及び細胞形態を求めた。バイオフィルムを安定化させた後、1.67mLのKCGPZ(f106〜169)を20mL/時間の流速で各栄養供給の5分後に1日4回、7日間添加した。
【0144】
多菌性バイオフィルムは接種の13日後、42%のストレプトコッカス・ミュータンス、33%のストレプトコッカス・サンギス、7%のアクチノマイセス・ネスランディイ、2%のラクトバチルス・カセイ、16%のフソバクテリウム・ヌクレアタム及びベイヨネラ・ディスパーの両方で構成されていた(表3)。KCGPZ(f106〜169)の最初の5分の適用により、バイオフィルムの細菌細胞の総数が顕著に低減し、7日間の試験期間にわたる反復適用により細菌細胞の数が低減し続けた(図2)。KCGPZ(f106〜169)処置期間の終了時では、細菌細胞の総数はこの処置前の14%であった。KCGPZ(f106〜169)処置の終了時では、生きているストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・サンギス、アクチノマイセス・ネスランディイ、ラクトバチルス・カセイ、フソバクテリウム・ヌクレアタム及びベイヨネラ・ディスパーの両方がそれぞれ87%、95%、55%、51%及び98%低減していた。バイオフィルムの細菌細胞の総数がKCGPZ(f106〜169)処置から回復するのにおよそ3日かかった(図2)。
【0145】
フソバクテリウム・ヌクレアタム及びベイヨネラ・ディスパーの生存率がKCGPZ(f106〜169)処置により低減したが、アクチノマイセス・ネスランディイとともに生菌集団全体に占める百分率としてのそれらの割合は処置の前後で変化がなかった(表3)。しかしながら、KCGPZ(f106〜169)処置はストレプトコッカス・ミュータンスの回復を有意に抑制し、集団全体に占めるその百分率を51%から9%へと低下させた。同様に、細菌集団全体に占める百分率としての酸産生ラクトバチルス・カセイの割合が2%から0.3%へと低減したのに対し、ストレプトコッカス・サンギスの百分率は集団全体の21%から69%へと増大した(表3)。興味深いことに、連鎖球菌の割合は全体として処置の前後でかなり安定した状態を維持していた。
【0146】
【表3】

【0147】
口腔における抗微生物剤の臨床的有効性は歯表面に融合する多菌性バイオフィルム(歯垢)に浸透するか又はこれを破壊し、これらのバイオフィルムを構成する細菌を死滅させるそれらの能力に強く依存する。殺菌性の洗口液の構成要素として使用される際の抗微生物剤の臨床的有効性は、特に接触時間が長い場合、浮遊細菌細胞に対するその効果から予測することは難しい。この再現性のあるバイオフィルムを受けて、抗微生物剤を検査するためのモデルが開発されている。例えば、Guggenheim et al., 2001は、歯肉縁上の歯垢を代表する4種の口腔細菌種、アクチノマイセス・ネスランディイ、ベイヨネラ・ディスパー、フソバクテリウム・ヌクレアタム及びストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)を有した静的なin vitroでの多菌性バイオフィルムのアッセイを開発した。これらを処置唾液の入った24ウェルプレート内のヒドロキシアパタイトディスク上で成長させた。in vivo条件をより良好に模倣するために、幾つかのバイオフィルムモデルを新鮮培地、改変培地又は人工唾液培地の一定供給を用いて設計している。CDFFシステムを、口腔細菌によるバイオフィルムの成長を調べ、抗微生物剤を検査するために広範に使用している。
【0148】
0.1%又は0.2%のクロルヘキシジンが口腔ケアにおける至適基準となる抗菌剤と考えられ、遊離型の口腔細菌細胞に有効であることが示されているが、口腔バイオフィルムに対しては様々な結果をもたらしている。これまでの実験により、0.2%(w/v)ジグルコン酸クロルヘキシジンへの5分間の暴露後にCDFF内でバイオフィルムとして成長したストレプトコッカス・サンギスの生細胞のおよそ2log10の低減が示されている。しかしながら、これまでのグループは連鎖球菌が多数を占める、本発明者らと同様の6種の口腔バイオフィルムを培養するのに、CDFFと、ムチンを含有する複合成長培地とを使用している。これらのバイオフィルムを様々な期間、0.2%(w/v)ジグルコン酸クロルヘキシジンで処置し、1分及び5分の暴露後に有意差がなかったことを求めた。洗口液としてクロルヘキシジンを用いた臨床試験により、0.1%及び0.2%のジグルコン酸クロルヘキシジンにより達成される結果には差異がなく、0.12%のジグルコン酸クロルヘキシジンの洗口液が12週にわたって歯垢の蓄積を28%及び歯肉炎を25%低減したことが示された。
【0149】
二価金属イオンである亜鉛が、細菌酵素上でスルフヒドリル基と相互作用し、それらの活性を阻害することにより口腔細菌の成長及び代謝を低減する。ホスホエノールピルビン酸・糖ホスホトランスフェラーゼ系及びプロトン輸送型ATPアーゼは亜鉛による阻害に特に感受性であり、この阻害は糖輸送及び耐酸性を低減する。亜鉛は主として静菌性であるが、非常に高濃度で殺菌効果を有し得る。その適用は、高濃度で使用するその必要性、並びに口腔用途で消すことが困難なその不快な風味及び金属的な後味により制限されている。
【0150】
本明細書では、KCG及びKCGPZ(f106〜169)がストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルム(biofilms)を阻害するのに亜鉛イオン及びクロルヘキシジンよりも優れていることが示されている。
【0151】
細菌バイオフィルムに対する抗微生物剤の効果を定量化するための従来の培養分析に加えて、COMSTAT分析によるCSLM画像化が、in vitroでのバイオフィルムを可視化及び定量化するのに使用されている。本明細書で示されるように、マルチトラックフローセルシステムを、ストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルムを、再現性を持って培養し、画像化するために使用し、これらのバイオフィルムに対するKCG、KCGP(f106〜169)、KCGPZ(f106〜169)、ジグルコン酸クロルヘキシジン及び塩化亜鉛の効果を比較した。これらの結果は、2.4mg/mLのKCG処置が、2.4mg/mLのKCGを含有する10mg/mLのKCGPZ(f106〜169)と同様のバイオフィルムに対する阻害効果を生じたことから、観察されたバイオフィルム破壊効果が、グリコシル化形態のκ−カゼイン(106〜169)に直接起因し得ることを示す(表1)。10mg/mLとより高濃度のKCGにより、バイオフィルム厚及び菌体体積の有意に大きな低減、並びに粗度係数の増大が生じた(表1)。この方法を用いて、KCGPZ(f106〜169)がストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルムの菌体量及び厚さを低減し、これにより表面積の増大を伴うより薄くかつより粗いバイオフィルムが生じたことから、ストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルムに対するKCGPZ(f106〜169)の特有の効果(KCGPZ(f106〜169)がバイオフィルムを物理的に破壊したことを示す)(図1)も実証された。バイオフィルムの菌体量及び厚さの有意な低減は、20mMのZnCl及び0.1%ジグルコン酸クロルヘキシジンによる処置でも検出された(表1)。しかしながら、全体としての結果は、KCGPZ(f106〜169)による成熟した16時間のストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルムの低減が0.1%ジグルコン酸クロルヘキシジン及び特に20mMのZnClと区別されることを示している。
【0152】
バイオフィルム構造に関して、より高濃度のKCGで処置したストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルムだけが、表面対菌体体積の比において対照と比較して有意差を示し、本明細書に示されたデータは、KCG及びKCGPZ(f106〜169)がバイオフィルムに対する破壊効果を有することを示している。一方、0.1%クロルヘキシジン及び20mMのZnClで処置したバイオフィルムにおける表面対菌体体積の比において有意ではない差異が、これらがバイオフィルムに対する破壊効果を有していないことを示している。
【0153】
表2に開示された結果は、KCGPZ(f106〜169)が、処置及びその後の培地流の後にバイオフィルムをより小さい小片にする破壊手段によりバイオフィルムの菌体量を低減することを示唆している。6時間のバイオフィルムのKCGPZ(f106〜169)処置は、直接的な抗菌作用ではなく更なるストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルム発生を遅らせるその能力(表2)を示している。
【0154】
ストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルムに対する有効性を考慮して、それからKCGPZ(f106〜169)を歯肉縁上の歯垢様の多種CDFFバイオフィルム培養物で検査し、この結果は、KCGPZ(f106〜169)処置が、処置を中断した7日後には明らかになったより少ない酸産生種に有利に働くバイオフィルムの種組成の変動を引き起こしたことを示した(表3)。
【0155】
バイオフィルムマトリクス内のほとんどの菌体外多糖類は、比較的可溶性であり、粘度が高い水溶液を形成する一般的特徴を示す。幾つかのイオンは、これらの菌体外多糖類の露出したカルボン酸基との結合又は相互作用に競合し、それによりバイオフィルムの特徴を変え得る。特に、任意の理論又は作用機序に束縛されるものではないが、亜鉛イオンはその正の電荷により、N−アセチルノイラミン酸を有する糖ペプチドとストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルムとの結合を高めることができる。
【0156】
本明細書で示されるように、ストレプトコッカス・ミュータンスの急速に発生する(すなわち未成熟な)単一特異性のバイオフィルムはジグルコン酸クロルヘキシジンによる処置に対する感受性が高く、より成熟したバイオフィルムはより制限された応答を有する。異なるモデルシステムがバイオフィルム発生において異なる時点での抗微生物剤の効果を調べているため、このことが口腔バイオフィルムに対するジグルコン酸クロルヘキシジンの効果に関する文献における様々な報告の説明の助けとなり得る。同様に本明細書で示されるように、KCG及びKCGPZ(f106〜169)は、成熟した単一特異性及び多菌性のバイオフィルム構造を破壊し、この点においてクロルヘキシジンよりも優れている。
【0157】
グリコシル化κ−カゼイン(106〜169)ペプチドは成熟した単一特異性のストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルム構造を破壊する。比較的低い濃度で、これらのペプチドは亜鉛イオンとの相乗効果を有し、同時にこれらのペプチドは多菌性の口腔細菌バイオフィルムを破壊し、ストレプトコッカス・ミュータンスの回復を抑制する。
【0158】
実施例4
KCGP(f106〜169)とKCP(f106〜169)との抗バイオフィルム有効性の比較
KCGP(f106〜169)[GP]及び非グリコシル化κ−カゼイン(106〜169)[KCP(f106〜169)]を、カゼイン塩のキモシンによる加水分解、及び実施例1に記載されたような逆相HPLCにより、並びにMalkoski et al (2001)及びDashper et al (2005)によりこれまでのように調製した。調製物の純度をマトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析法を用いて確認した(Malkoski et al, 2001)。
【0159】
バイオフィルムアッセイ
大便連鎖球菌ATCC 15036株を−20℃で保存した。バイオフィルムの抗菌アッセイを、滅菌96ウェルマイクロタイタープレート(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ, USA)において実施した。滅菌したブレインハートインフージョン培地(BHI:37g/L;Oxoid Ltd., Cambridge, UK)をすべての実験で成長培地として使用した。BHI寒天プレート上の細菌をコロニー形成単位(CFU)として計数した。
【0160】
バイオフィルムアッセイを、細かい修正点はあるが、Malkoski et al (2001)に記載のように行った。200μL容量のBHIを、40μLの実験溶液(ZnCl、GP、KCP(f106〜169)又はNaOCl)及び10μLの1×10個の大便連鎖球菌細胞の入った96ウェルマイクロプレートの各ウェルに添加した。マイクロプレートを37℃で24時間インキュベートし、マイクロプレート光度計を使用してOD630を15分ごとに測定した。24時間のインキュベーション期間の終了時、及び接着していない細菌細胞の除去後、1%クリスタルバイオレット溶液を使用して、バイオフィルムを染色し(Wen and Bume, 2002;Loo et al, 2000)、これをOD620でVictor 3(商標)1420 Multilabel Counter(Perkin Elmer, Inc., Waltham, MA, USA)を使用する比色分析により定量化した。すべての実験を3重で行った。得られた各実験群での比色による測定値を、p<0.05での一要因ANOVAを用いて統計的に分析した。
【0161】
すべての試験濃度でのKCGP(f106〜169)及びKCP(f106〜169)は、対照培養物と比較して大便連鎖球菌のバイオフィルム形成を有意に阻害した(p<0.05)(図3)。バイオフィルム阻害の有効性の用量依存的な増大は、KCGP(f106〜169)及びKCP(f106〜169)で顕著であった(図3)。KCGP(f106〜169)は、1.6mg/mLの濃度でのバイオフィルム形成の阻害においてKCP(f106〜169)よりも有意に(p<0.05)良好であった。さらに1.6mg/mL〜9.6mg/mLのGPは大便連鎖球菌のバイオフィルム形成の阻害において10mg/mLのNaOClよりも有意に良好であった。
【0162】
本実施例では、本発明者らは、カゼイン糖ペプチドであるKCGP(f106〜169)が、非グリコシル化カゼインペプチドであるKCP(f106〜169)及び大便連鎖球菌のバイオフィルムを処置するための至適基準であるNaOClと比較して細菌のバイオフィルムを阻害するのに優れていることを示している。
【0163】
組成物及び製剤
治療又は予防を目的とする本発明の態様を具体化する組成物の例示を助けるために、以下の試料製剤を提供する。以下の製剤に使用する場合、「本発明の組成物又はペプチド」という語句は、カチオンを有する又は有しないペプチドを含む上述の本発明の実施形態を包含する。
【0164】
以下は練り歯磨き製剤の一例である。
成分 %(w/w)
リン酸二カルシウム二水和物 50.0
グリセロール 20.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
ナトリウムラウロイルサルコニセート 0.5
香味料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
デキストラナーゼ 0.01
本発明の組成物又はペプチド 0.2
水 残り
【0165】
以下は更なる練り歯磨き製剤の一例である。
成分 %(w/w)
リン酸二カルシウム二水和物 50.0
ソルビトール 10.0
グリセロール 10.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
ラウロイルジエタノールアミド 1.0
モノラウリン酸スクロース 2.0
香味料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
デキストラナーゼ 0.01
本発明の組成物又はペプチド 0.1
水 残り
【0166】
以下は更なる練り歯磨き製剤の一例である。
成分 %(w/w)
ソルビトール 22.0
アイリッシュモス 1.0
水酸化ナトリウム(50%) 1.0
Gantrez 19.0
水(脱イオン水) 2.69
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.76
サッカリンナトリウム 0.3
ピロホスフェート 2.0
アルミナ水和物 48.0
香味油 0.95
本発明の組成物又はペプチド 0.3
ラウリル硫酸ナトリウム 2.00
【0167】
以下は液体練り歯磨き製剤の一例である。
成分 %(w/w)
ポリアクリル酸ナトリウム 50.0
ソルビトール 10.0
グリセロール 20.0
香味料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
エタノール 3.0
本発明の組成物又はペプチド 0.2
リノール酸 0.05
水 残り
【0168】
以下は洗口液製剤の一例である。
成分 %(w/w)
エタノール 10.0
香味料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
ラウロイルジエタノールアミド 0.3
本発明の組成物又はペプチド 0.2
水 残り
【0169】
以下は口腔潤滑剤、代用唾液として、又は人工唾液として有用な更なる洗口液製剤の一例である。
成分 %(w/w)
Gantrez(商標)S−97 2.5
グリセリン 10.0
香味油 0.4
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.05
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
ラウロイルジエタノールアミド 0.2
本発明の組成物又はペプチド 0.3
水 残り
【0170】
以下はロゼンジ製剤の一例である。
成分 %(w/w)
糖 75〜80
トウモロコシシロップ 1〜20
香味油 1〜2
NaF 0.01〜0.05
本発明の組成物又はペプチド 0.3
ステアリン酸Mg 1〜5
水 残り
【0171】
以下は歯肉マッサージクリーム製剤の一例である。
成分 %(w/w)
白色ワセリン 8.0
プロピレングリコール 4.0
ステアリルアルコール 8.0
ポリエチレングリコール4000 25.0
ポリエチレングリコール400 37.0
モノステアリン酸スクロース 0.5
グルコン酸クロルヘキシジン 0.1
本発明の組成物又はペプチド 0.3
水 残り
【0172】
以下は歯周ゲル製剤の一例である。
成分 %(w/w)
Pluronic F127(BASF製) 20.0
ステアリルアルコール 8.0
本発明の組成物又はペプチド 3.0
コロイド二酸化ケイ素(例えばAerosil(商標)200(商標)) 1.0
グルコン酸クロルヘキシジン 0.1
水 残り
【0173】
以下はチューイングガム製剤の一例である。
成分 %(w/w)
ガム基剤 30.0
炭酸カルシウム 2.0
結晶性ソルビトール 53.0
グリセリン 0.5
香味油 0.1
本発明の組成物又はペプチド 0.3
水 残り
【0174】
本明細書に開示及び規定される本発明は、明細書若しくは図面で言及される又は明細書若しくは図面から明らかである個々の特徴の2つ以上の代替的な組み合わせすべてにまで及ぶことが理解されるであろう。これらの異なる組み合わせすべてが本発明の様々な代替的な態様を構成する。
【0175】
【表4】

【0176】
【表5】

【配列表フリーテキスト】
【0177】
配列番号1:Xaaはリン酸化されたセリン
配列番号2:Xaaはリン酸化されたセリン
配列番号3:Xaaはリン酸化されたセリン
配列番号4:Xaaはリン酸化されたセリン
配列番号5:Xaaはリン酸化されたセリン
配列番号6:Xaaはリン酸化されたセリン
配列番号7:Xaaはリン酸化されたセリン
配列番号8:Xaaはリン酸化されたセリン
配列番号9:Xaaはリン酸化されたセリン
配列番号10:Xaaはリン酸化されたセリン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオフィルムを処置するための治療用組成物であって、
各々がグリコシル化したアミノ酸を少なくとも1つ有するとともに、各々がカゼイン若しくはカゼイン断片の、又はカゼイン若しくはカゼイン断片に機能的に類似したアミノ酸配列を有するペプチドと、
薬学的に許容される担体と、
から本質的になる、バイオフィルムを処置するための治療用組成物。
【請求項2】
前記ペプチドの少なくとも1つのアミノ酸残基がリン酸化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カゼインがκ−カゼインである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
二価カチオンを更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記カチオンがZn2+、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Sn2+及びMn2+からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記カチオンがZn2+である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ペプチドが配列番号1〜配列番号10のいずれか1つによるアミノ酸配列を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
バイオフィルムを処置するための治療用組成物であって、各々が、ミルクから単離可能なグリコシル化κ−カゼイン断片のトリプシン消化物若しくはキモシン消化物であるか、又はミルクから単離可能なグリコシル化κ−カゼイン断片のトリプシン消化物若しくはキモシン消化物と機能的に同等な配列を有するペプチドを治療的に有効な量含む、バイオフィルムを処置するための治療用組成物。
【請求項9】
各々がカゼイン若しくはカゼイン断片の、又はカゼイン若しくはカゼイン断片に機能的に類似したアミノ酸配列から本質的になるとともに、各々がグリコシル化したアミノ酸を少なくとも1つ有する、治療的に有効な量のペプチドと、
薬学的に許容される担体と、
を有する代用唾液。
【請求項10】
二価カチオンを更に含む、請求項9に記載の代用唾液。
【請求項11】
必要とする被験体を治療する方法であって、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物又は請求項9若しくは10に記載の代用唾液を前記被験体に投与することを含む、必要とする被験体を治療する方法。
【請求項12】
前記被験体が歯垢、歯肉炎、歯周炎、齲蝕、口腔粘膜炎、口渇又は口内乾燥を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
バイオフィルムの阻害、低減又は予防のための薬剤の調製における請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
バイオフィルム破壊のための薬剤の調製における請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−510799(P2013−510799A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538143(P2012−538143)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001506
【国際公開番号】WO2011/057336
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(510007610)オーラル ヘルス オーストラリア ピーティーワイ リミテッド (6)
【Fターム(参考)】