説明

抗ヒスタミン性ピペリジン誘導体およびその製造方法

【課題】形態Iの抗ヒスタミン性ピペリジン誘導体を提供する。
【解決手段】196〜201℃の明視化された融点(毛細管)、示差走査熱量測定法による測定での195〜199℃の補外開始を伴う融解吸熱および本質的に下に示されるようなX線粉末回折パターンをもつ形態Iの無水の4−[4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル]−1−ヒドロキシブチル]−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩。
D−面間隔、オングストローム 強度、I/I0、%
11.8 30
7.3 30
6.3 65
5.9 35
5.0 45
4.8 100
4.4 45
3.9 60
3.8 75
3.7 30

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤および気管支拡張剤として有用なピペリジン誘導体の無水形態および水和形態、すなわちそれらの多形態および擬似形態の新規製法に関する〔米国特許第4,254,129号(1981年3月3日付)、米国特許第4,254,130号(1981年3月3日付)および米国特許第4,285,958号(1981年4月25日付)参照〕。
【0002】
(発明の概要)
本発明はその対応する水和された薬学的に許容し得る酸付加塩を共沸蒸留に付すことからなる、式
【化1】

〔式中、
1は水素またはヒドロキシを示し、
2は水素を示し、または
1とR2は一緒になってR1およびR2を担持している炭素原子間に第2の結合を形成し、
nは1〜5の整数であり、
3は−CH2OH、−COOHまたは−COOアルキル(ここでアルキル部分は炭素原子1〜6個を有し、直鎖または分枝鎖状である)であり、
Aのそれぞれは水素またはヒドロキシである〕
で表されるピペリジン誘導体の無水の薬学的に許容し得る酸付加塩および薬学的に許容し得る塩並びにその個々の光学異性体を製造する方法を提供する。
【0003】
さらに、本発明はまたその対応する水和された薬学的に許容し得る酸付加塩を水最小化再結晶に付すことからなる、式
【化2】

〔式中、
1は水素またはヒドロキシを示し、
2は水素を示し、または
1とR2は一緒になってR1およびR2を担持している炭素原子間に第2の結合を形成し、
nは1〜5の整数であり、
3は−CH2OH、−COOHまたは−COOアルキル(ここでアルキル部分は炭素原子1〜6個を有し、直鎖または分枝鎖状である)であり、
Aのそれぞれは水素またはヒドロキシである〕
で表されるピペリジン誘導体の無水の薬学的に許容し得る酸付加塩および薬学的に許容し得る塩並びにその個々の光学異性体を製造する方法をも提供する。
【0004】
さらに、本発明はその対応する無水の薬学的に許容し得る酸付加塩を水性再結晶に付すことからなる、式
【化3】

〔式中、
1は水素またはヒドロキシを示し、
2は水素を示し、または
1とR2は一緒になってR1およびR2を担持している炭素原子間に第2の結合を形成し、
nは1〜5の整数であり、
3は−CH2OH、−COOHまたは−COOアルキル(ここでアルキル部分は炭素原子1〜6個を有し、直鎖または分枝鎖状である)であり、
Aのそれぞれは水素またはヒドロキシである〕
で表されるピペリジン誘導体の水和された薬学的に許容し得る酸付加塩および薬学的に許容し得る塩並びにその個々の光学異性体を製造する方法を提供する。
【0005】
さらに、本発明は以下、形態Iおよび形態IIIと称する無水の4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の多形態の製造方法および以下、形態IIおよび形態IVと称する水和された4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の擬似形態の製造方法を提供する。
【0006】
形態Iの多形態は約196〜201℃の明視化された融点(毛細管)、示差走査熱量測定法による測定で約195〜199℃の補外開始を伴う融解吸熱および本質的に表1に示されるようなX線粉末回折パターン(ここでXRPDパターンはCoX線管線源を具備した粉末回折計を使用して測定した)の各特性により同定され得る。試料をCoKα1放射線で照射し、XRPDデータを5〜55゜2θにおいて集めた(強度はより好ましい配向により徹底的に変化することがある)。
【0007】
表 1
D−面間隔、オングストローム 強度、I/I0、%
11.8 30
7.3 30
6.3 65
5.9 35
5.0 45
4.8 100
4.4 45
3.9 60
3.8 75
3.7 30
【0008】
形態IIIの多形態は約166〜171℃の明視化された融点(毛細管)、約90℃以下での広範囲の吸熱、示差走査熱量測定法による測定での補外法による融解吸熱約166℃および本質的に表2に示されるようなX線粉末回折パターン(ここでXRPDパターンはCoX線管線源を具備した粉末回折計を使用して測定した)の各特性により同定され得る。試料をCoKα1放射線で照射し、XRPDデータを5〜55°2θにおいて集めた(強度はより好ましい配向により徹底的に変化することがある)。
【0009】
表 2
D−面間隔、オングストローム 強度、I/I0、%
9.0 95
4.9 100
4.8 35
4.6 25
4.5 25
3.7 25
【0010】
形態IIの擬似形態は約100〜105℃の明視化された融点(毛細管)、約100℃以下での広範囲の吸熱、示差走査熱量測定法による測定での約124〜126℃の補外法による小さな吸熱ピーク(約2ジュール/グラム)および本質的に表3に示されるようなX線粉末回折パターン(ここでXRPDパターンはCoX線管線源を具備した粉末回折計を使用して測定した)の各特性により同定され得る。試料をCoKα1放射線で照射し、XRPDデータを5〜55゜2θにおいて集めた(強度はより好ましい配向により徹底的に変化することがある)。
【0011】
表 3
D−面間隔、オングストローム 強度、I/I0、%
7.8 45
6.4 44
5.2 85
4.9 60
4.7 80
4.4 55
4.2 50
4.1 60
3.7 75
3.6 60
3.5 50
【0012】
形態IVの擬似形態は約113〜118℃の明視化された融点(毛細管)、約100℃以下での2つの広範囲な重複する吸熱、示差走査熱量測定法による測定での約146℃の補外法によるさらに別の吸熱および本質的に表4に示されるようなX線粉末回折パターン(ここでXRPDパターンはCoX線管線源を具備した粉末回折計を使用して測定した)の各特性により同定され得る。試料をCoKα1放射線で照射し、XRPDデータを5〜55゜2θにおいて集めた(強度はより好ましい配向により徹底的に変化することがある)。
【0013】
表 4
D−面間隔、オングストローム 強度、I/I0、%
10.4 60
7.0 45
6.4 50
5.3 100
5.2 55
4.3 75
4.1 50
4.0 45
3.8 60
3.5 55
【0014】
(発明の詳述)
無水および水和状双方の式(I)および式(II)の化合物の薬学的に許容し得る酸付加塩はいずれか適当な無機酸または有機酸の塩である。適当な無機酸としては例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸を挙げることができる。適当な有機酸の例としてはカルボン酸例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シクラミン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸およびジヒドロキシマレイン酸、安息香酸、フェニル酢酸、4−アミノ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、アントラニル酸、ケイヒ酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、マンデル酸、スルホン酸例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸およびβ−ヒドロキシエタンスルホン酸を挙げることができる。
【0015】
本明細書中で使用される用語“水和物”は式(I)または(II)の化合物と水との組み合わせを意味し、ここでその水は水としてその分子状態を保持しかつ式(I)または(II)の基質分子の結晶格子内に吸収され、吸着されまたは含有されている。
【0016】
本明細書中で使用される用語“吸着され”は、式(I)および(II)のピペリジン誘導体の水和された薬学的に許容し得る酸付加塩内の水分子がその固形の式(I)および(II)のピペリジン誘導体の水和された薬学的に許容し得る酸付加塩の表面に分配されているような物理学的状態を意味する。
【0017】
本明細書中で使用される用語“吸収され”は、式(I)および(II)のピペリジン誘導体の水和された薬学的に許容し得る酸付加塩内の水分子がその固形の式(I)および(II)のピペリジン誘導体の水和された薬学的に許容し得る酸付加塩本体に分配されているような物理学的状態を意味する。
【0018】
式(I)および(II)の化合物の水和された薬学的に許容し得る酸付加塩は、式(I)または(II)の基質塩のモル当たり本質的には0.10〜5モルの水からなる水和物である。
【0019】
本明細書中で使用される用語“共沸混合物”は、液体の部分蒸発により生ずる蒸気がその液体と同一の組成を有するという点で単一物質のようにふるまう2種以上の物質の液体混合物を意味する。その一定の沸騰混合物は同一物質の他の混合物の沸点と比較して最高または最低のいずれか一方の沸点を示す。
本明細書中で使用される用語“共沸蒸留”は、初期混合物成分の1種以上を有する共沸混合物を得るために分離すべき混合物に1つの物質を加える蒸留の1つのタイプを意味する。こうして得られた共沸混合物は初期混合物の沸点とは異なる沸点を有する。ここで使用する用語“共沸蒸留”はまた共蒸留とも称する。
【0020】
本明細書中で使用される用語“水最小化再結晶”は、無水溶剤対基質水和物の比率において存在する水の百分率が最小化される比率であり、それにより基質の無水形態の沈殿が得られる再結晶を意味する。
【0021】
本明細書中で使用される用語“水性再結晶”は、1)溶解させるに十分な量の水または水/有機溶剤の混合物中に固形物質を溶解し次いで溶剤の蒸発によりその固形物質を回収するか、2)溶解させるには十分でない最小量の水または水/有機溶剤の混合物で固形物質を処理し、加熱して溶解させ次いで冷却して結晶化させるか、または3)溶解させるに十分な量の水または水/有機溶剤の混合物中に固形物質を溶解し次いで溶剤を部分的に蒸発させて飽和溶液を得、結晶化させるかのいずれかの方法を意味する。
【0022】
本明細書中で使用される用語“結晶温浸”は、溶解させるに十分でない最小量の水または水/有機溶剤の混合物で固形物質を処理し次いで加熱または周囲温度での撹拌のいずれかにより所望の変換を遂行する方法を意味する。
【0023】
本明細書中で使用される用語“反溶剤”は、その物質の溶液に加えた場合にその物質を沈殿させるような該物質に対して良好でない溶剤を意味する。
本明細書中で使用される用語“適当な温度”は、溶解させ次に反溶剤の添加後または共沸蒸留による共溶剤の除去後のいずれかに所望の物質を沈殿させるに十分な温度を意味する。
【0024】
式(I)および(II)のピぺリジン誘導体の無水の薬学的に許容し得る酸付加塩は対応する水和された酸付加塩から、それを共沸蒸留に付すことにより製造するすることができる。
【0025】
例えば、最初に式(I)および(II)のピぺリジン誘導体の適当に水和された薬学的に許容し得る酸付加塩を、溶解させるに十分な量の適当な溶剤または溶剤混合物中に溶解する。この溶剤の例としては水、C1〜C5アルカノール例えばメタノール、エタノール等、ケトン溶剤例えばアセトン、メチルエチルケトン等、脂肪族エステル溶媒例えば酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、イソプロピルアセテート等およびこれら溶剤の水性混合物例えばアセトン/水、メチルエチルケトン/水、水/アセトンおよび水/アセトン/酢酸エチルを挙げることができる。次いで溶解させるのに使用する同一溶剤または第2の適当な無水反溶剤をこの溶液に加え、それを水および他の低沸点成分を共沸蒸留除去するのに適当な沸点に加熱する。共沸蒸留用の適当な無水反溶剤の例としてはケトン溶媒例えばアセトン、メチルエチルケトン等、脂肪族エステル溶剤例えば酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、イソプロピルアセテート等、C5〜C8脂肪族溶剤例えばペンタン、ヘキサン等、脂肪族ニトリル例えばアセトニトリルおよびこれら溶剤の混合物例えばアセトン/酢酸エチル等を挙げることができる。水と溶剤の共沸混合物をその共沸混合物が完全に除去されていることを示す温度変化が得られるまで蒸留により除去する。反応混合物を冷却し、対応する式(I)および(II)のピぺリジン誘導体の無水の薬学的に許容し得る酸付加塩を例えばろ過により反応帯から回収する。
【0026】
さらに、式(I)および(II)のピぺリジン誘導体の無水の薬学的に許容し得る酸付加塩は対応する水和された酸付加塩から、それを水最小化再結晶に付すことにより製造することができる。
【0027】
例えば、式(I)および(II)のピぺリジン誘導体の適当に水和された薬学的に許容し得る酸付加塩を、溶解させるのに十分な量の適当な無水溶剤または溶剤混合物中に溶解し加熱還流する。この溶剤の例としては水、C1〜C5アルカノール例えばメタノール、エタノール等、ケトン溶剤例えばアセトン、メチルエチルケトン等、脂肪族エステル溶剤例えば酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、イソプロピルアセテート等およびこれら溶剤の水性混合物例えばアセトン/水、メチルエチルケトン/水、水/アセトンおよび水/アセトン/酢酸エチルを挙げることができる。次いで溶解させるのに使用する同一溶剤または第2の適当な無水反溶剤を、式(I)および(II)のピぺリジン誘導体の無水の薬学的に許容し得る酸付加塩の沈殿を生起させるに十分な量で加える。適当な無水反溶剤の例としてはケトン溶剤例えばアセトン、メチルエチルケトン等、脂肪族エステル溶剤例えば酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、イソプロピルアセテート等、ケトン溶剤と脂肪族溶剤との混合物例えばアセトン/酢酸エチル等、C5〜C8脂肪族溶剤例えばペンタン、ヘキサン等、脂肪族ニトリル例えばアセトニトリルおよびこれら溶剤の混合物例えばアセトン/酢酸エチル等並びに水とケトン溶剤との混合物例えばアセトン/水等および水、ケトン溶剤および脂肪族エステル溶剤の混合物例えばアセトン/水/酢酸エチルを挙げることができる。この反応混合物を冷却し、対応する式(I)および(II)のピぺリジン誘導体の無水の薬学的に許容し得る酸付加塩を例えばろ過により反応帯から回収する。
【0028】
無水の4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の多形態(形態IおよびIII)は以下に詳述する多数の方法により製造することができる。
【0029】
形態IIIから形態Iへ
例えば無水の4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態I)は、無水の4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態III)からそれ(形態III)を前述の結晶温浸に付すことにより製造することができる。
【0030】
形態IIから形態IIIへ
さらに無水の4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態III)は、水和された4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態II)からそれ(形態II)を前述の水最小化再結晶に付すことにより製造することができる。
【0031】
形態IIから形態Iへ
さらに無水の4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態I)は、水和された4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態II)からそれ(形態II)を前述の水最小化再結晶に付すかまたはそれ(形態II)を共沸蒸留に付すことにより製造することができる。
【0032】
形態IVから形態Iへ
さらに無水の4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態I)は、水和された4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態IV)からそれ(形態IV)を前述の水最小化再結晶または共沸蒸留に付すことにより製造することができる。
【0033】
式(I)のピペリジン誘導体の水和された薬学的に許容し得る酸付加塩はR3が−COOアルキルである式(II)の対応する化合物からそれを適当な溶媒例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールもしくはn−ブタノール、それらの水性混合物またはそれらの塩基性溶液中で適当な還元剤例えば水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化シアノホウ素ナトリウムまたは水素化ホウ素テトラメチルアンモニウムを使用して約0℃から溶媒の還流温度において還元に付すことにより製造することができる。その反応時間は約1/2時間〜8時間である。急冷し次いで例えば塩酸のような適当な酸で酸性化した後に、式(I)のピペリジン誘導体の水和された薬学的に許容し得る酸付加塩を結晶化およびろ過により反応帯から回収する。
【0034】
さらに式(I)および(II)のピペリジン誘導体の水和された薬学的に許容し得る酸付加塩は、式(I)および(II)のピペリジン誘導体の対応する無水の薬学的に許容し得る酸付加塩からそれらを水性再結晶に付すことにより製造することができる。
【0035】
例えば式(I)および(II)のピペリジン誘導体の適当な無水の薬学的に許容し得る酸付加塩を、溶解させるには十分でない最小量の水または水/有機溶媒の適当な混合物で処理し次いで加熱還流する。反応混合物を冷却し、式(I)および(II)のピペリジン誘導体の対応する水和された薬学的に許容し得る酸付加塩を例えばろ過により反応帯から回収する。別法として、式(I)および(II)のピペリジン誘導体の適当な無水の薬学的に許容し得る酸付加塩を、溶解させるに十分な量の水または水/有機溶媒の適当な混合物で処理し、次いで式(I)および(II)のピペリジン誘導体の水和された薬学的に許容し得る酸付加塩の結晶化を生起させる量までその水または水/有機溶媒の混合物を部分的または完全に蒸発させる。前記再結晶用に適当な溶剤は水、アセトン/水、エタノール/水、メチルエチルケトン/水性メタノール、メチルエチルケトン/水等である。
【0036】
水和された4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の擬似形態(形態IIおよびIV)は以下に詳述する多数の方法により製造することができる。
【0037】
エチルエステル/ケトンから形態IIへ
水和された4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態II)は、4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−オキソブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸エチル塩酸塩または遊離塩基から、約−20℃〜50℃で1〜45分間かけて水を迅速に加える以外はR3が−COOアルキルである式(II)の対応する化合物からの式(I)のピペリジン誘導体の水和された薬学的に許容し得る酸付加塩の一般的製法に関して前述したようにして、水和された4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態II)を沈殿させることにより製造することができる。
【0038】
エチルエステル/ケトンから形態IVへ
水和された4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態IV)は、4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−オキソブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸エチル塩酸塩または遊離塩基から、場合により種晶を入れながら約0℃〜50℃で約30分〜24時間かけて水をゆっくり加える以外はR3が−COOアルキルである式(II)の対応する化合物からの式(I)のピペリジン誘導体の水和された薬学的に許容し得る酸付加塩の一般的製法に関して前述したようにして、水和された4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態IV)を沈殿させることにより製造することができる。
【0039】
形態Iから形態IIへ
水和された4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態II)は、無水の4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態I)を前述の水性再結晶に付すことにより製造することができる。
【0040】
本発明で使用する出発物質は当業者ならば容易に入手することができる。例えば、4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−オキソブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸エチル塩酸塩は1981年3月3日付け米国特許第4,254,129号に記載されている。
【0041】
以下に実施例により式(I)および(II)のピペリジン誘導体の無水および水和された薬学的に許容し得る酸付加塩、それらの多形態および擬似形態の代表的な製造方法を提供する。これらの実施例は単に説明のためであって、決して本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。実施例中で使用する用語“g”はグラムを意味し、“mol”はモルを意味し、“mmol”はミリモルを意味し、“mL”はミリリットルを意味し、“bp”は沸点を意味し、“mp”は融点を意味し、“℃”は摂氏の度を意味し、“mmHg”は水銀のミリメートルを意味し、“μL”はミクロリットルを意味し、“μg”はミクログラムを意味しそして“μM”はミクロモルを意味する。
【0042】
示差走査熱量測定による分析は開いたアルミニウムパンを具備したTA2910DSCを使用して実施した。試料は50mL/分の窒素パージで5℃/分の速度で240℃に加熱した。
【0043】
X線粉末回折分析は次のようにして実施した。
試料をXRPDパターン測定のために石英(0散乱)の試料ホールダーに入れた。CoX線管源、第1ビームモノクロメーターおよび位置検出器(PSD)を具備した粉末回折計を使用してXRPDパターンを測定した。入射ビームを1゜発散スリットを使用して平行にした。PSD上の活性面積は約5゜2θの範囲にあった。そのX線管源を35kVおよび30mAに設定し、CoKα1放射線を試料に照射した。XRPDデータを5〜55゜2θにおいて0.25゜2θ/分の速度および0.02゜2θのステップ幅で集めた。内目盛り器を添加せずにXRPDパターンを測定した。
【0044】
最も顕著な特徴に関するピークの位置および強度をダブル−デリバティブピーク(double-derivative peak)採取法を使用して測定した。20%より大きいI/I0を有するX線ピークが記録された。カットオフは任意に選択した。強度は最も近い5%に集められる。ある種のピークはクリスタライト形態学上の変化により生起される好ましい配置に不安定であるらしい。このためにI/I0値に大きな変化が生じる。
【0045】
実施例1−形態IIの製造
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩
方法A
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−オキソブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸エチル塩酸塩(101.92g,0.1807mol)およびメタノール(510mL)を混合し次いで撹拌する。50%水酸化ナトリウム(72.27g,0.903mol)を迅速に加え、水(61mL)で洗浄する。2時間加熱還流し、そのまま35℃に冷却させ、水素化ホウ素ナトリウム(3.42g,0.0903mol)で処理する。水(100mL)を加え、35℃で10時間保持する。37%塩酸(53.0g)を加えてpHを11.5に調整する。アセトン(26.5mL)および水(102mL)を加える。35℃で2時間保持し、37%塩酸(44.69g)でpH2.5に調整する。水(408mL)で希釈し、−15℃に冷却し、1.5時間加熱し次いで真空ろ過により沈殿を集める。フィルターケークを脱イオン水(3×100mL)で洗浄し、真空乾燥して4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩水和物(97.10g)を得る。
【0046】
方法B
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−オキソブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸エチル塩酸塩(60.01g,0.106mol)を1L三つ口丸底フラスコ中に入れ、そのフラスコに機械的撹拌機、クライゼンヘッド、温度計およびトップに窒素バブラーのある還流冷却器を付ける。メタノール(300mL)を加え次いで撹拌機を回す。スラリーを水(60mL)で希釈し、15〜20分かけて52〜54℃に加熱する。2時間52℃に保持し次いで50%水酸化ナトリウム(42.54g,0.532mol)を加える。約1時間45分の間73℃に加熱し、水浴を用いて35℃以下に冷却し次いで水素化ホウ素ナトリウム(2.02g,0.0534mol)を加える。一夜35℃で撹拌し、アセトン(15.5mL)で処理し次いで35℃で2時間撹拌する。混
合物を28%塩酸(75.72g)で酸性化してpH1.85にし、水(282mL)で希釈し、約30分撹拌し次いで約2時間かけて−15℃に冷却する。固形物をろ過し、水(2×75mL)および酢酸エチル(2×75mL)で洗浄する。固形物を真空乾燥し次いで2日間放置して4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩水和物(形態II)(57.97g,91.5%)を微細粉末として得る。
【0047】
方法C
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−オキソブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸エチル(56.12g,0.1064mol)を1L三つ口丸底フラスコ中に入れ、そのフラスコに機械的撹拌機、クライゼンヘッド、温度計およびトップに窒素バブラーのある還流冷却器を付ける。メタノール(300mL)を加え次いで撹拌機を回す。スラリーを水(60mL)で希釈し、Therm-0-Watchにより制御される加熱マントルを使用して加熱還流する。混合物が約35℃に達した時、50%水酸化ナトリウム(34.05g,0.4256mol)で処理し次いで水(42mL)ですすぐ。2時間15分還流下で撹拌し、1時間かけて35℃に冷却し次いで水素化ホウ素ナトリウム(2.02g,0.0534mol)で処理する。7.5時間撹拌し次いで撹拌しないで1.75日間室温に放置する。混合物を35℃に加温し、アセトン(15.5mL,0.21mol)で急冷し次いで2時間撹拌する。水(60mL)を加え、32%塩酸(65.22g)でpH2.5に調整する。40℃に冷却し、そのpHプローブを水(25mL)ですすぐ。約30分かけて水(192mL)を加え、温度を10分間33℃に保持し次いで数個の種結晶を加える。スラリーを約45分かけて−12℃に冷却し、ろ過により固形物を単離する。水(2×100mL)次に酢酸エチル(100mL,あらかじめ約−10℃に冷却)で洗浄する。一夜(1mmHg,50℃)真空乾燥して4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩水和物(形態II)(58.86g,98%)を白色固形物として得る。
【0048】
実施例2−形態IVの製造
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態IV)
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−オキソブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸エチル(56.12g,0.1064mol)を1L三つ口丸底フラスコ中に入れ、そのフラスコに機械的撹拌機、クライゼンヘッド、温度計およびトップに窒素バブラーのある還流冷却器を付ける。メタノール(300mL)を加え次いで撹拌機を回す。スラリーを水(60mL)で希釈し、Therm-0-Watchにより制御される加熱マントルを使用して加熱還流する。混合物が約35℃に達した時、50%水酸化ナトリウム(34.05g,0.4256mol)で処理し次いで水(42mL)ですすぐ。2時間15分還流下で撹拌し、1時間かけて35℃に冷却し次いで水素化ホウ素ナトリウム(2.02g,0.0534mol)で処理する。7.5時間撹拌し次いで撹拌しないで1.75日間室温に放置する。混合物を35℃に加温し、アセトン(15.5mL,0.21mol)で急冷し次いで2時間撹拌する。水(60mL)を加え、32%塩酸(65.22g)でpHを2.5に調整する。40℃に冷却し、そのpHプローブを水(25mL)ですすぐ。温度を10分間33℃に保持し次いで数個の種結晶を加え次いで水(192mL)を35℃で約4時間かけて加える。スラリーを約45分かけて−12℃に冷却し、ろ過により固形物を単離する(586.2g)。水(2×100mL)次に酢酸エチル(100mL,あらかじめ約−10℃に冷却)で洗浄する。一夜(1mmHg,50℃)真空乾燥して4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩水和物(形態IV)を得る。mp115〜116℃(分解)。
【0049】
XRPD:表5
表 5
D−面間隔、オングストローム 強度、I/I0、%
10.38 60
6.97 45
6.41 50
5.55 30
5.32 100
5.23 55
5.11 35
4.98 25
4.64 30
4.32 35
4.28 75
4.12 50
4.02 45
3.83 60
3.65 20
3.51 55
3.46 25
2.83 20
【0050】
実施例3−形態IIの形態Iへの変換
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態I)
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩水和物(形態II)(20.0g,0.0355mol)を脱イオン水(2g)で処理し、撹拌下で数分かけてアセトン(60mL)を少しずつ加える。フィルター助剤でろ過し、フィルターケークをアセトン(30mL)で洗浄する。フィルターケークをアセトン(22mL)で洗浄し、ろ液を還流し次いで混合物を還流下に保持しながら酢酸エチル(32mL,15分かけて)を徐々に加える。10分間還流し、さらに別の酢酸エチル(23mL,10分かけて)を徐々に加えさらに15分還流する。さらに別の酢酸エチル(60mL,5〜10分かけて)を加え、還流を15分続ける。氷浴中で約8℃に冷却し、固形物をろ過し次いで酢酸エチル(85mL)で洗浄する。55℃で1.5時間真空乾燥して標記化合物(18.16g,95%)を得る。
【0051】
実施例4−形態IIの形態Iへの変換
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩
方法A
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩水和物(形態II)(5.00g,0.0083mol)をメチルエチルケトン(130mL)で処理する。水(0.4mL)を徐々に加え、フィルター助剤でろ過し、フィルターケークをメチルエチルケトン(20mL)で洗浄する。加熱還流し、溶媒75mLを留去し、−15℃に冷却し次いで真空ろ過により集める。メチルエチルケトン(2×10mL)で洗浄し、60℃で真空乾燥して標記化合物(4.33g,97%)を得る。mp196〜198℃。
【0052】
方法B
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩水和物(形態II)(1.4g)をアセトン(60mL)で処理し、加熱還流する。容量を約35mLに減少して、沸騰する全ての水を共沸混合物(88/12:アセトン/水)として除去する。溶液を冷却し、標記化合物を結晶性固形物として集める。
【0053】
方法C
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩水和物(形態II)(53.88g,0.100mol)を混合し、水(4.79g)およびメチルエチルケトン(240mL)を加える。固形物がスラリー状になるまで撹拌し、さらに別のメチルエチルケトン(1L)を加える。0.5時間撹拌し、フィルター助剤のパッドでろ過し、フィルターケークをメチルエチルケトン(100mL)で洗浄し、ろ液および洗液を温度計、機械的撹拌機および蒸留ヘッドで具備した2Lの三つ口フラスコに移す。総量72mLのメチルエチルケトンを留去し、冷却し次いで1時間かけて40℃に撹拌する。−15℃に冷却し、10分間保持する。固形物を真空ろ過により集め、フィルターケークをメチルエチルケトン(2×65mL)で洗浄し次いで一夜55℃で真空乾燥して標記化合物(52.76g,97.9%)を得る。mp197.5〜200℃。
【0054】
方法D
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩水和物(形態II)(40.0g,0.0696mol,93.6%純度で存在する水は0.89gと分析され、そして35.1g,0.0575mol,88.0%純度で存在する水は2.47gと分析される)を水(8.30g,この量は水和された塩中の水を考慮して、存在する水の重量を4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩水和物の無水重量の17%にするのに計算される量である)で処理する。メチルエチルケトン(約500mL)を加え、固形物の大部分が溶解するまで撹拌する。さらに別のメチルエチルケトン(700mL)を約10分かけて少しずつ加え、1/2時間撹拌し続ける。フィルター助剤の薄いパッドでろ過し、フィルターケークおよびフラスコをさらに別のメチルエチルケトン(100mL)で洗浄し次いで温度計、機械的撹拌機、加熱マントル、12−プレートOldershaw(真空で覆われた)蒸留カラムおよび大ざっぱなやり方で還流比を調節することができる蒸留ヘッドを具備した沸騰フラスコに移し、さらに別のメチルエチルケトン(100mL)で洗浄する。溶媒450mLを留去し、−15℃に冷却し次いで固形物をろ過する。メチルエチルケトン(2×100mL)で洗浄し次いで乾燥して標記化合物(68.3g,99.9%)を得る。mp197〜199℃。
【0055】
方法E
メチルエチルケトン(4mL)を煮沸し、4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(500mg)を加える。トップ層を傾写し、水性層にメチルエチルケトン(3mL)を加える。その溶液を温度が79℃に達するまで煮沸し、容量を25%減少させ、加熱を外し次いでアルミニウムホイルで覆う。溶液を冷却させ、得られた結晶をろ過し次いで乾燥して標記化合物を得る。
【0056】
実施例5−形態Iの形態IIへの変換
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩水和物
方法A
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態I)(2.0g)をエタノール(4mL)および脱イオン水(20mL)で処理する。80℃で加熱して溶液を得、次いで室温で23時間撹拌する。得られたスラリーをろ過し、水(2×10mL)で洗浄し次いで一夜35℃で真空乾燥して標記化合物(1.88g)を得る。mp100〜105℃。
【0057】
XRPD:表6
表 6
D−面間隔、オングストローム 強度、I/I0、%
11.41 20
7.98 20
7.83 45
6.58 45
6.42 60
5.66 20
5.52 45
5.39 30
5.23 65
5.14 45
4.86 65
4.72 100
4.45 65
4.40 45
4.32 45
4.18 45
4.06 65
4.02 55
3.85 25
3.79 75
3.74 95
3.61 80
3.56 25
3.47 65
3.41 20
2.74 20
【0058】
方法B
水(35.5mL)、メタノール(26.3mL)および塩化ナトリウム(2.59g)を混合する。4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態I)(4.77g)を加える。溶解するまで蒸気浴上で加熱還流し、−10℃に冷却する。得られた固形物をろ過し、水(2×25mL)で洗浄し次いで一夜真空乾燥して標記化合物(4.80g)を得る。
【0059】
実施例6−形態IIの形態IIIへの変換
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態III)
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩水和物(形態II)(55.56g,0.0929mol,水10%を有する)を圧力瓶中に水(2.96g)およびアセトン(38.1g)とともに加える。その瓶をしっかり密閉し、約80℃に加熱する。約50℃に冷却し、粗半融ガラス漏斗中でろ過助剤に通してろ過し次いでアセトン(90g)で希釈する。機械的撹拌機、温度計および還流冷却器を具備した1Lフラスコに移す。混合物を加熱還流し、そのままで冷却させ次いで週末にかけて撹拌する。−15℃に冷却し、粗半融ガラス漏斗上でろ過し、酢酸エチル(2×50mL)で洗浄し次いで50℃で真空乾燥する。
得られた大部分の固形物(45.24g)を機械的撹拌機、温度計および還流冷却器を具備した500mL三つ口フラスコ中に入れる。アセトン(240mL)および水(4.82g)を加え、混合物を一夜還流する。スラリーを35℃に冷却させ、氷水浴中に入れ次いで5℃以下に冷却する。固形物を粗半融ガラス漏斗上でろ過し、酢酸エチル(50mL)で洗浄し、50℃で数時間真空乾燥して標記化合物(43.83g,97%)を白色結晶性粉末として得る。mp166.5〜170.5℃。
【0060】
XRPD:表7
表 7
D−面間隔、オングストローム 強度、I/I0、%
8.95 95
4.99 20
4.88 100
4.75 35
4.57 25
4.47 25
4.46 20
3.67 20
3.65 25
【0061】
実施例7−形態IIIの形態Iへの変換
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態I)
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態III)(酢酸エチル湿潤ケークとして40.0g,乾燥基準で27.9g)を機械的撹拌機、温度計および還流冷却器を具備した1L三つ口フラスコ中に入れる。アセトン(240mL)を加え、混合物を約20時間加熱還流する。スラリーを−15℃に冷却し、粗半融ガラスフリット漏斗上でのろ過により固形物を単離する。酢酸エチル(50mL)で洗浄し次いで一夜真空乾燥して標記化合物(26.1g,93.7%)を得る。mp197.5〜199.5℃。
【0062】
XRPD:表8
表 8
D−面間隔、オングストローム 強度、I/I0、%
11.75 35
7.23 35
6.24 60
5.89 40
5.02 20
4.94 30
4.83 100
4.44 30
3.93 75
3.83 20
3.77 85
3.71 25
3.62 30
3.32 25
3.31 20
【0063】
実施例8−形態IVの形態Iへの変換
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(形態I)
4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩水和物(形態IV)(54.35g,0.0970mol,水4%を有する)を圧力瓶中に水(4.16g)およびアセトン(38.1g)とともに入れる。その瓶をしっかり密閉し、約80℃に加熱する。60℃以下に冷却し、粗半融ガラス漏斗中でろ過助剤に通してろ過し次いでろ過ケークをアセトン(32.4g)ですすぐ。機械的撹拌機、温度計および還流冷却器を具備した1L三つ口フラスコ中に、少量の形態Iの結晶を含有させてアセトン(215g)を入れ次いで加熱還流する。その還流アセトンに約10分かけて4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸
塩水和物(形態IV)(47.65g)のアセトン/水の溶液の一部分を加える。酢酸エチル(157.5g)を45分かけて徐々に加え次いで4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩水和物(形態IV)のアセトン/水の溶液の残りの部分を加え、約20mLのアセトンですすぐ。さらに別の酢酸エチル(157.5g)を45分〜1時間かけて加え、スラリーを還流下に保持する。15分撹拌し、−15℃に冷却し、白色固形物を350mL粗半融ガラス漏斗上で真空ろ過する。固形物を酢酸エチル(2×50mL)で洗浄し次いで一夜真空乾燥して標記化合物(50.36g,97%)を得る。mp198〜199.5℃。
【0064】
XRPD:表9
表 9
D−面間隔、オングストローム 強度、I/I0、%
14.89 20
11.85 20
7.30 20
6.28 70
5.91 25
5.55 20
5.05 25
4.96 55
4.85 100
4.57 45
4.45 55
3.94 45
3.89 20
3.84 20
3.78 60
3.72 35
3.63 20
3.07 20
3.04 20
2.45 20
【0065】
本発明の多形態および擬似形態の4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩化合物は抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤および気管支拡張剤として有用であり、単独でまたは適当な製薬担体とともに投与され、固形物または液体の形態例えば錠剤、カプセル剤、粉剤、溶液、懸濁液または乳液であることができる。
【0066】
本発明の多形態および擬似形態の4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩化合物は経口的に、非経口的に例えば皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内投与により、噴霧形態または乾燥粉末形態で本発明化合物の小粒子を含有するエーロゾルスプレーでの鼻内滴下または例えば鼻、喉および気管の粘膜のような粘膜への適用により投与することができる。
【0067】
多形態および擬似形態の4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩化合物の投与量は患者および投与方法により変わるが、いずれかの有効な量であることができる。多形態および擬似形態の4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩化合物の投与量は所望の効果を得るために1日当たり患者の体重1kgにつき約0.01〜20mgの有効量を単位投与量に提供するような広範囲において変更させてもよい。例えば抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤および気管支拡張剤の所望の効果は、単位剤形例えば本発明の多形態およびプソイド形態の4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩化合物1〜500mgを含有する錠剤を1日当たり1〜4回服用することにより得ることができる。
【0068】
固形の単位剤形は慣用の型であることができる。すなわち、固形形態は本発明の多形態および擬似形態の4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩化合物並びに担体例えば潤滑剤および不活性充填剤例えばラクトース、スクロースまたはコーンスターチを含有する通常のゼラチン型であるカプセル剤であることができる。別の態様では多形態および擬似形態の4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩化合物を慣用の錠剤基剤例えばラクトース、スクロース、コーンスターチもしくはゼラチン、崩壊剤例えばコーンスターチ、馬鈴薯デンプンもしくはアルギン酸または潤滑剤例えばステアリン酸もしくはステアリン酸マグネシウムを用いて錠剤化する。
【0069】
本発明の多形態および擬似形態の4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩化合物はまた、界面活性剤および他の製薬的に許容し得る補助剤を添加するかまた添加しないで、例えば水および油のような滅菌性液体である製薬担体とともに生理学的に許容し得る希釈剤中に溶解または懸濁した該化合物の溶液または懸濁液による注射投与で投与してもよい。油の例としては石油、動物、植物または合成による油例えば落花生油、大豆油もしくは鉱油を挙げることができる。一般に、水、塩水、水性デキストロースないし類似の糖溶液およびグリコール類例えばプロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールが特に注射液用に好ましい液体担体である。
【0070】
エーロゾルとして使用するには、溶液または懸濁液状態の本発明化合物を例えばネブライザーまたはアトマイザーのような非加圧形態で投与され得るような通常の補助剤とともに適当な噴射剤例えばプロパン、ブタンまたはイソブタンのような炭化水素噴射剤と一緒にして加圧エーロゾル容器中に包装することができる。
【0071】
本明細書で使用する用語“患者”は温血動物、鳥類、哺乳類例えばヒト、ネコ、イヌ、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ラム、ラット、マウスおよびモルモットを意味するものと解釈する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形態Iの無水4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩。
【請求項2】
形態IIの水和された4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩。
【請求項3】
形態IIIの4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩。
【請求項4】
形態IVの水和された4−〔4−〔4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル〕−1−ヒドロキシブチル〕−α,α−ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩。
【請求項5】
請求項1記載の化合物を含有する医薬組成物。
【請求項6】
請求項2記載の化合物を含有する医薬組成物。
【請求項7】
請求項3記載の化合物を含有する医薬組成物。
【請求項8】
請求項4記載の化合物を含有する医薬組成物。

【公開番号】特開2010−120969(P2010−120969A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38971(P2010−38971)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【分割の表示】特願2002−55432(P2002−55432)の分割
【原出願日】平成7年4月28日(1995.4.28)
【出願人】(309024066)アベンティス・ホールディングス・インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】