説明

抗ヘルペスウイルス組成物及び抗ヘルペスウイルス作用を有する発酵モモタマナ抽出物の製造方法

【課題】 天然植物に由来する安全で、副作用の少ない抗ヘルペスウイルス組成物の開発を目的とし、ヘルペスウイルスに対して抗ウイルス作用を有する抗ヘルペスウイルス組成物及びかかる抗ヘルペスウイルス組成物を含有するヘルペスウイルス感染症予防・治療剤や、抗ヘルペスウイルス作用を有する発酵モモタマナ抽出物の製造方法を提供すること。
【解決手段】 モモタマナ(Termnalia catappa)を発酵し、得られた発酵モモタマナの抽出物を有効成分として含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵モモタマナの抽出物を有効成分とする抗ヘルペスウイルス組成物及びヘルペスウイルス感染症予防・治療剤や、抗ヘルペスウイルス作用を有する発酵モモタマナ抽出物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モモタマナ(Terminalia catappa)はシクンシ科(Combretaceae)に属し、熱帯から亜熱帯にかけて植生する高木で、種子は海流によって散布され、沖縄では街路樹として広く利用されている。モモタマナの種子は、アーモンドに似た風味であり食用されているが、種子以外の部分、例えば、25cm程度にもなる葉は皮革質であり食用には用いられてはいない。モモタマナは、抗菌活性、抗酸化活性、大腸癌予防効果などの機能を有することが知られており、具体的には、モモタマナ又はそれより得られる搾汁若しくは水抽出物若しくは有機溶媒抽出物が、ヘリコバクター・ピロリ菌に対し、抗菌あるいは除菌効果を有することや(例えば、特許文献1参照)、モモタマナの葉の抽出物が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌等に対し、殺菌効果を有することや(例えば、特許文献2参照)、モモタマナ又はその処理物が、大腸癌に対する抗腫瘍活性を有すること(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
【0003】
一方、ヘルペスウイルスには、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、水痘・帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型等の種類があり、単純ヘルペスウイルス(HSV)は、DNAウイルスで、1型(HSV−1)と2型(HSV‐2)の2亜型に分けられている。ヘルペスウイルスの特徴は、初感染後体内に持続感染(潜伏感染)することである。初感染の多くは不顕性感染で、顕性、不顕性を問わず初感染後は三叉神経節、仙骨神経節に潜伏感染し、疲労、妊娠、怪我、熱性疾患その他の原因によってウイルスが再活性化されると、口唇周辺や陰部など特定の皮膚部位に水疱を生じる(回帰性ヘルペス)。一般的に、ウイルス感染症には抗生物質が作用せず、ウイルス感染症の治療薬としての抗ウイルス組成物の開発は、進んでいないのが現状である。特に、天然物質由来の人体に安全で、かつ副作用の少ない抗ウイルス組成物の開発が求められており、このような、抗ウイルス組成物として、例えば、月見草種子抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗ウイルス組成物(例えば、特許文献4参照)や、レプトスペルムム・ペテルソニ(Leptospermum petersonii)の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗ウイルス組成物(例えば、特許文献5参照)などが知られている。
【0004】
しかし、これまで発酵モモタマナ抽出物に抗ヘルペスウイルス作用が存在することは知られていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−342190号公報
【特許文献2】特開2004−115453号公報
【特許文献3】特開2004−262836号公報
【特許文献4】特開2004−83487号公報
【特許文献5】特開2004−83525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、天然植物に由来する、安全で副作用の少ない抗ヘルペスウイルス組成物や、かかる抗ヘルペスウイルス組成物を含有するヘルペスウイルス感染症予防・治療剤や、抗ヘルペスウイルス作用を有する発酵モモタマナ抽出物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
沖縄は長寿国として知られており、多種類の薬草が樹生している。琉球王国の時代から人々はこれらの薬草を健康維持、病気や怪我の治療に利用してきた。しかし、これらの薬草の薬効に関する科学的な調査・検討はいまだ不充分であった。本発明者らは、以前に、アミラーゼ活性が保持されたモモタマナの葉を発酵して得られ、ケルセチンが含有される発酵処理物に優れた抗酸化活性や血糖値上昇抑制効果や肥満抑制効果や、生体内NO産生抑制活性を有することを見い出しており(特開2004−141163号公報参照)、モモタマナの発酵処理物に抗菌活性、抗酸化活性があることから、ウイルスに対する効果を鋭意研究したところ、発酵モモタマナを抽出した抽出物に抗ヘルペスウイルス作用があることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、(1)発酵モモタマナ抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗ヘルペスウイルス組成物や、(2)抗ヘルペスウイルス作用が、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、水痘・帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型に対する抗ヘルペスウイルス作用であることを特徴とする前記(1)に記載の抗ヘルペスウイルス組成物や、(3)発酵モモタマナ抽出物が、モモタマナの葉を発酵させて得られることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の抗ヘルペスウイルス組成物や、(4)発酵モモタマナ抽出物が、乳酸菌、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌により発酵させて得られることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の抗ヘルペスウイルス組成物や、(5)発酵モモタマナ抽出物が、抽出溶媒として、水、有機溶媒又はこれらの混合物を用いて得られることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の抗ヘルペスウイルス組成物や、(6)有機溶媒が、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、t−ブチルアルコール、ブタンジオール、プロパンジオール、グリセリンより選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする前記(5)記載の抗ヘルペスウイルス組成物や、(7)抽出溶媒が、70〜100度の熱水であることを特徴とする前記(5)記載の抗ヘルペスウイルス組成物に関する。
【0009】
また本発明は、(8)0.1〜3mmの粒径に粉砕したモモタマナの乾燥葉に、水、糖蜜、米ぬかを添加した発酵基質に、ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスの各々の菌の等量混合物を、乾燥モモタマナの葉100重量部に対して10重量部の割合で添加し、静置培養により発酵させ、発酵物を熱水抽出することにより得られることを特徴とする抗ヘルペスウイルス組成物や、(9)前記(1)〜(8)のいずれかに記載の抗ヘルペスウイルス組成物を含有することを特徴とするヘルペスウイルス感染症予防・治療剤に関する。
【0010】
さらに本発明は、(10)モモタマナを発酵させ、溶媒により抽出することを特徴とする抗ヘルペスウイルス作用を有する発酵モモタマナ抽出物の製造方法や、(11)抗ヘルペスウイルス作用が、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、水痘・帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型に対する抗ヘルペスウイルス作用であることを特徴とする前記(10)に記載の発酵モモタマナ抽出物の製造方法や、(12)モモタマナの葉を発酵させて得られることを特徴とする前記(10)又は(11)に記載の発酵モモタマナ抽出物の製造方法や、(13)乳酸菌、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌により発酵させて得られることを特徴とする前記(10)〜(12)のいずれかに記載の発酵モモタマナ抽出物の製造方法や、(14)抽出溶媒が、水、有機溶媒又はこれらの混合物であることを特徴とする前記(10)〜(13)記載のいずれかに記載の発酵モモタマナ抽出物の製造方法や、(15)有機溶媒が、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、t−ブチルアルコール、ブタンジオール、プロパンジオール、グリセリンより選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする前記(14)記載の発酵モモタマナ抽出物の製造方法や、(16)70〜100度の熱水を用いて得られることを特徴とする前記(14)記載の発酵モモタマナ抽出物の製造方法や、(17)0.1〜3mmの粒径に粉砕したモモタマナの乾燥葉に、水、糖蜜、米ぬかを添加した発酵基質に、ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスの各々の菌の等量混合物を、乾燥モモタマナの葉100重量部に対して10重量部の割合で添加し、静置培養により発酵させ、発酵物を熱水抽出することを特徴とする発酵モモタマナ抽出物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、発酵モモタマナの抽出物に由来する、安全で副作用の少ない、抗ヘルペスウイルス組成物や、かかる抗ヘルペスウイルス組成物を含有するヘルペスウイルス感染症予防・治療剤や、抗ヘルペスウイルス作用を有する発酵モモタマナ抽出物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の抗ヘルペスウイルス組成物としては、発酵モモタマナの抽出物を有効成分とするものであれば特に制限されるものではなく、また、本発明の抗ヘルペスウイルス作用を有する発酵モモタマナ抽出物の製造方法としては、モモタマナを発酵させ、溶媒により抽出する方法であれば特に制限されず、上記モモタマナの発酵処理の対象となる部分としては、葉、種子、果皮等いずれであってもよいが、抗ヘルペスウイルス活性の点において、葉を好適に例示することができ、生体であっても、乾燥体であってもよい。
【0013】
本発明の発酵モモタマナの抽出溶媒としては、水、有機溶媒又はこれらの混合物を用いることができる。抽出溶媒として用いられる水には、熱水、イオン交換水、精製水、生理食塩水等を含み、熱水を用いることが好ましい。熱水の抽出温度は、70〜100℃の範囲であればよく、75〜90℃が好ましい。抽出方法は、特に制限されず、常法により行うことができる。また、有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコールや、アセトン等の脂肪族ケトンや、ブタンジオール、プロパンジオール、グリセリン等の多価アルコールが挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせたものを使用することもでき、これらのうちメチルアルコール、エチルアルコールを用いることが好ましい。なお、2種以上の混合物を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整できる。
【0014】
本発明の発酵モモタマナ抽出物は、抽出終了後、乾燥機により水分値を10%以下となるように乾燥させることが好ましく、乾燥方法としては、例えば、加熱乾燥や、凍結乾燥を挙げることができ、凍結乾燥により行うことが好ましい。
【0015】
本発明のモモタマナの発酵処理用微生物は、モモタマナ植物を発酵させる方法であれば特に制限されるものではないが、発酵処理するために使用される微生物としては、乳酸菌、酵母、枯草菌を挙げることができ、これらを単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することもでき、これらのうち乳酸菌を用いることが好ましく、乳酸菌単独、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌等の組み合わせとして使用することができる。
【0016】
本発明の発酵モモタマナの発酵処理に用いられる乳酸菌としては、ストレプトコッカス属(Storeptococcus)、ラクトバシルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)又はテトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)のいずれかに属する菌が好ましく、特にラクトバシルス属が好ましい。上記ストレプトコッカス属に属する菌としては、ストレプトコッカス・サーモフィルス(S. thermophilus)であることが好ましく、ストレプトコッカス・サーモフィルスIFO13957菌株を具体的に例示することができる。また、ラクトバシリルス属に属する菌としては、ラクトバシルス・プランタリム(L. plantrum)、ラクトバシルス・デルブリッキ(L. delbruckii)、ラクトバシルス・ペントサス(L. pentosus)又はラクトバシルス・カセイ(L. casei)のいずれかに属する菌であることが好ましく、これらの菌のうち、特にラクトバシルス・プランタリムが好ましい。かかるラクトバシルス・プランタリムとしてIFO14712菌株やIFO14713菌株を、ラクトバシルス・デルブリッキとしてIFO13953菌株を、ラクトバシルス・ペントサスとしてIFO12011菌株を、ラクトバシルス・カセイとしてIFO15883菌株を、それぞれ具体的に例示することができる。また、テトラジェノコッカス属に属する菌としては、テトラジェノ・ハロフィルス(T. halophilus)であることが好ましく、テトラジェノ・ハロフィルスIFO12172菌株を具体的に例示することができる。
【0017】
また、本発明の発酵処理に用いられる酵母としては、カンジダ属(Candida)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属する菌が好ましい。かかるカンジダ属に属する菌として、カンジダ・ビルサチルス(Candida versatilis)であることが好ましく、カンジダ・ビルサチルスとしてIFO10038菌株を具体的に例示することができる。サッカロマイセス属に属する菌として、サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)であることが好ましく、サッカロマイセス・セレビシアエとしてIFO0555菌株を具体的に例示することができる。
【0018】
更に、本発明の発酵処理において用いられる枯草菌としては、バシルス・ズブチルス(B. subtilis)IFO3013菌株を具体的に例示することができる。
【0019】
本発明における発酵モモタマナの発酵条件は、20〜50℃の範囲であれば特に制限されず、40℃において行われるのが好ましい。発酵時間は、pHや、菌数等の条件による発酵の進行状況等により、適宜選択することができ、例えば、pH4〜5、菌数10以上であれば、約72時間とすることが好ましい。発酵処理時、必要に応じてエアレーションや脱酸素処理を行なうことができるが、脱酸素処理後に静置培養において発酵させることができる。発酵形式は、液体培養でなく固体培養が好ましい。
【0020】
本発明の発酵モモタマナ抽出物は、ヘルペスウイルスに対して抗ヘルペスウイルス作用を有するものであり、ヘルペスウイルスとしては、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、水痘・帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型等を具体的に例示することができる。
【0021】
また、本発明の抗ヘルペスウイルス作用を有する発酵モモタマナ抽出物の製造方法として、具体的には、0.1〜3mmの粒径に粉砕したモモタマナの乾燥葉に、水、糖蜜、米ぬかを添加した発酵基質に、ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスの各々の菌の等量(菌数1:1:1)混合物を、乾燥モモタマナの葉100重量部に対して10重量部の割合で添加し、静置培養により発酵させ、発酵物を熱水抽出することを特徴とする発酵モモタマナ抽出物の製造方法を好適に挙げることができる。
【0022】
本発明の抗ウイルス組成物の有効成分である発酵モモタマナ抽出物のヘルペスウイルスに対する有効濃度は、モモタマナ抽出物の濃度とプラーク形成抑制率の関係から、EC50(50%プラーク形成抑制濃度)として算出したところ、ヘルペスウイルスに対して、45μg/mlであった。また、発酵モモタマナ抽出物を、ヘルペスウイルス感染症予防・治療剤として用いることもでき、製剤化する場合、製剤中の発酵モモタマナ抽出物の含有量は、0.1〜100重量%であり、好ましくは0.1〜70重量%であり、より好ましくは、0.1〜50重量%であり、特に好ましくは、0.1〜20重量%である。さらに、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。また、これら予防若しくは治療剤は、経口的又は非経口的に投与することができる。すなわち通常用いられる投与形態、例えば、粉末、顆粒、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型で経口的に投与することができ、あるいは、例えば、溶液、乳剤、懸濁液等の剤型にしたものを注射の型で非経口投与することもできる他、スプレー剤の型で鼻孔内投与することもできる。
【0023】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
(発酵モモタマナの調製)
乾燥したモモタマナの葉30gを0.1〜3mmの粒径に粉砕し容器に入れた。モモタマナを入れた容器に水150g、糖蜜0.9g、米ぬか0.9gを添加した。かかる粉砕モモタマナを収納した容器に、ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスの各々の菌を培養後、菌数1:1:1の割合で混合し、モモタマナの重量に対し、10重量%を添加し、容器を密閉し、静置培養により発酵を行った。発酵温度は40℃、発酵時間は72時間とした。その後、乾燥機により水分値が10重量%以下になるまで60℃で乾燥した後、滅菌処理(130℃蒸気、5〜15秒)を行い、発酵モモタマナ乾燥物30gを得た。その後、この乾燥物を粉砕して粉末状とした。
【0025】
(発酵モモタマナ熱水抽出凍結乾燥物)
発酵モモタマナ粉末100gに80℃の熱水1リットル(L)を加え、静置で20分室温抽出し、ろ過した。ろ過残渣に再度、80℃の熱水1リットル(L)を加えて同様に抽出を行った。抽出液を濃縮後、凍結乾燥を行い22.65gの発酵モモタマナ熱水抽出凍結乾燥物を得た。
【0026】
(モモタマナの濃度調整)
1mg/mlの濃度になるよう、モモタマナの熱水抽出凍結乾燥物10mgを10%FBS添加イーグルMEM培地10mlに溶解し、フィルターにて濾過滅菌後、遮光し、4℃にて保存した。
【0027】
(モモタマナ熱水抽出凍結乾燥物の細胞毒性)
モモタマナ熱水抽出物の毒性試験は、WST−8(2-(2-methoxy-4-nitrophenyl)-5-(2,4-disulfophnyl)-2H-tetrazolium,monosodium salt)を発色基質として用いるWST−8法により行った。ベロ(Vero)細胞を、96穴プレートにまき、1×10cell/wellに濃度調整後、0.1ml/wellずつ分注し(1×10cell/well)、37℃に設定したCOインキュベーター中で1日培養した。培養液に、200〜0.32μg/mlの濃度になるよう調整したモモタマナ熱水抽出凍結乾燥物0.1mlを加え、37℃に設定したCOインキュベーター中で24時間、48時間、72時間まで培養した。その後、所定時間培養した培養液に還元型試薬として、(株)同仁化学研究所製のセル・カウンティング・キット−8を各ウェル(well)に5μlずつ加え、37℃に設定したCOインキュベーター中で4時間呈色反応を行い、450nmにおける吸光度(O.D.)を測定した。図1に示すように、吸光度の変化から72時間までの培養で、モモタマナ熱水抽出物はVero細胞に明らかな細胞毒性を示さなかった。
【0028】
(モモタマナ熱水抽出凍結乾燥物によるHSV−1の増殖抑制効果)
[吸着阻害]
HSV−1(12×10pfu/ml)と、濃度を200〜0.02μg/mlに調整したモモタマナ熱水抽出凍結乾燥物(終濃度100〜0.01μg/ml)とを等量混合し、1時間程室温に静置した。その後、前記混合物を10倍階段希釈し、各段階の希釈液を試料とした。前記試料0.5ml/wellを細胞密度が1.0×10cell/well(6穴プレート)程度になるよう事前に調整したVero細胞に接種し、1時間吸着させた。1ml/wellの10%FBS添加イーグルMEM培地で3回洗浄後、3ml/wellのメインテナンス培地(0.5% methyl cellulose, 10% FBS 添加EMEM)を加え、37℃に設定したCOインキュベーター中で3日間培養した。
[固定]
培養液に、メタノールを一度入れて捨て、再びメタノールを満たして5分間、室温にて静置させた。
[染色]
メタノールを捨て、0.2%クリスタルバイオレットを含む50%メタノール溶液(0.2% crystalvaiolet in 50% methanol)を細胞が浸るくらい満たし、室温に静置させた。5分後に水道水で3回洗浄後、乾燥させてプラークを数えた。
【0029】
図2に示すように、ヘルペスウイルス感染細胞における、ウイルス増殖に対する抑制効果は、モモタマナ抽出物の濃度とプラーク形成抑制率の関係から、EC50(50%プラーク形成抑制濃度)として算出したところ、ヘルペスウイルスに対して、45μg/mlであった。これらの結果から、発酵モモタマナ抽出物のヘルペスウイルスに対するウイルス増殖抑制作用の有効濃度は、45μg/ml以上であり、特に100μg/mlでプラーク形成を完全に抑制した。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のモモタマナ熱抽出物をWST−8法により、細胞毒性を測定した結果を示す図である。
【図2】本発明のモモタマナ熱抽出物が、HSV−1の感染を濃度依存的に阻止することを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵モモタマナ抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗ヘルペスウイルス組成物。
【請求項2】
抗ヘルペスウイルス作用が、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、水痘・帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型に対する抗ヘルペスウイルス作用であることを特徴とする請求項1に記載の抗ヘルペスウイルス組成物。
【請求項3】
発酵モモタマナ抽出物が、モモタマナの葉を発酵させて得られることを特徴とする請求項1又は2記載の抗ヘルペスウイルス組成物。
【請求項4】
発酵モモタマナ抽出物が、乳酸菌、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌により発酵させて得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抗ヘルペスウイルス組成物。
【請求項5】
発酵モモタマナ抽出物が、抽出溶媒として、水、有機溶媒又はこれらの混合物を用いて得られることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の抗ヘルペスウイルス組成物。
【請求項6】
有機溶媒が、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、t−ブチルアルコール、ブタンジオール、プロパンジオール、グリセリンより選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項5記載の抗ヘルペスウイルス組成物。
【請求項7】
抽出溶媒が、70〜100度の熱水であることを特徴とする請求項5記載の抗ヘルペスウイルス組成物。
【請求項8】
0.1〜3mmの粒径に粉砕したモモタマナの乾燥葉に、水、糖蜜、米ぬかを添加した発酵基質に、ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスの各々の菌の等量混合物を、乾燥モモタマナの葉100重量部に対して10重量部の割合で添加し、静置培養により発酵させ、発酵物を熱水抽出することにより得られることを特徴とする抗ヘルペスウイルス組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の抗ヘルペスウイルス組成物を含有することを特徴とするヘルペスウイルス感染症予防・治療剤
【請求項10】
モモタマナを発酵させ、溶媒により抽出することを特徴とする抗ヘルペスウイルス作用を有する発酵モモタマナ抽出物の製造方法。
【請求項11】
抗ヘルペスウイルス作用が、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、水痘・帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型に対する抗ヘルペスウイルス作用であることを特徴とする請求項10に記載の発酵モモタマナ抽出物の製造方法。
【請求項12】
モモタマナの葉を発酵させて得られることを特徴とする請求項10又は11に記載の発酵モモタマナ抽出物の製造方法。
【請求項13】
乳酸菌、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌により発酵させて得られることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の発酵モモタマナ抽出物の製造方法。
【請求項14】
抽出溶媒が、水、有機溶媒又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項10〜13記載のいずれかに記載の発酵モモタマナ抽出物の製造方法。
【請求項15】
有機溶媒が、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、t−ブチルアルコール、ブタンジオール、プロパンジオール、グリセリンより選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項14記載の発酵モモタマナ抽出物の製造方法。
【請求項16】
70〜100度の熱水を用いて得られることを特徴とする請求項14記載の発酵モモタマナ抽出物の製造方法。
【請求項17】
0.1〜3mmの粒径に粉砕したモモタマナの乾燥葉に、水、糖蜜、米ぬかを添加した発酵基質に、ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスの各々の菌の等量混合物を、乾燥モモタマナの葉100重量部に対して10重量部の割合で添加し、静置培養により発酵させ、発酵物を熱水抽出することを特徴とする発酵モモタマナ抽出物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−219460(P2006−219460A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36603(P2005−36603)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(397031784)株式会社琉球バイオリソース開発 (21)
【Fターム(参考)】