説明

抗モルヒネ抗体、抗モルヒネ抗体を用いたモルヒネの測定方法、および抗モルヒネ抗体を含むモルヒネ測定キット

【課題】モルヒネを特異的に認識し、かつヘロイン、コデイン、コカイン、ケタミンへの認識能が低い、優れた抗モルヒネ抗体を提供し、試料中のモルヒネ測定を容易にする。
【解決手段】モルヒネを特異的に認識し、かつヘロイン、コデイン、コカイン、ケタミンへの認識能が低い、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗モルヒネ抗体分子であって、一本鎖抗体(scFv)、Fab断片、F(ab')2断片、Fv断片、および完全型抗体からなる群より選択され、重鎖可変領域において、該重鎖可変領域において、a)CDR-H1として配列表の配列番号1の31位から35位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-H2として配列番号1の50位から65位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-H3として配列番号1の98位から110位に記載のアミノ酸配列を有し、かつ/または該軽鎖可変領域において、a)CDR-L1として配列表の配列番号1の160位から174位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-L2として配列番号1の190位から196位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-L3として配列番号1の229位から237位に記載のアミノ酸配列を有する、抗モルヒネ抗体を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗モルヒネ抗体、モルヒネの測定方法、および抗モルヒネ抗体を含むモルヒネ測定キットに関する。より詳細には、本発明は、ヘロイン、コカイン、コデイン、ケタミンへの認識能が低く、モルヒネを特異的に認識する抗体、それを用いたモルヒネの測定方法、およびそれを含むモルヒネ測定キットに関する。
【背景技術】
【0002】
医療の目的に用いられる処法薬を、医療目的以外の用法用量で使用したり、医薬ではない薬物を不正に使用したりする不正薬物使用が、陶酔感や高揚感を得る目的でなされ、社会問題化しつつある。
【0003】
このような不正薬物には、アンフェタミン、メタンフェタミン、コカイン、ケタミン、モルヒネ、コデイン、LSD、大麻などが含まれる。これらの薬物には向精神作用があり、幻覚、妄想を起こし、依存性があるという問題がある。
【0004】
また、モルヒネは、処法薬でもあり、末期癌患者の緩和療法の1つとして、投与する方法がある。この方法においては、投与量と血中濃度の調整により、効果と副作用のバランスを取ることが必要になる。
【0005】
モルヒネを認識する素子として、免疫学的反応性を有するポリクローナル抗体が作成されている(非特許文献1)。また、モルヒネに対して免疫学的反応性を有するモノクローナル抗体を用いた免疫化学測定法(非特許文献2、特許文献1)が知られてはいるが、モルヒネに対する特異性の高いものを安定的に得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−86794号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】European Journal of Pharmacology,38巻,149〜156頁,1976年
【非特許文献2】Molecular Immunology,25巻,937〜943頁,1988年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、モルヒネを特異的に認識し、類似物質であるコデイン、コカイン、ケタミン、ヘロインなどの物質に対する反応性が低い抗モルヒネ抗体を提供することにある。
【0009】
さらに本発明の目的は、このような抗モルヒネ抗体を用いた試料中のモルヒネの測定方法、モルヒネの測定キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成することを企図し、鋭意検討を重ねた結果、新規な抗モルヒネ抗体断片の作成に成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、モルヒネを特異的に認識し、かつヘロイン、コデイン、コカイン、ケタミンへの認識能が低い、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗モルヒネ抗体分子であって、Fab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、一本鎖抗体(scFv)、2量体化可変領域(V領域)断片(Diabody)、ジスルフィド安定化V領域断片(dsFv)および相補性決定領域(CDR)を含むペプチドから選ばれる抗体断片、および完全型抗体からなる群より選択され、該重鎖可変領域において、a)CDR-H1として配列表の配列番号1の31位から35位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-H2として配列番号1の50位から65位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-H3として配列番号1の98位から110位に記載のアミノ酸配列を有する、抗モルヒネ抗体、に関する。
【0011】
本発明はまた、モルヒネを特異的に認識し、かつヘロイン、コデイン、コカイン、ケタミンへの認識能が低い、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗モルヒネ抗体分子であって、Fab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、一本鎖抗体(scFv)、2量体化可変領域(V領域)断片、ジスルフィド安定化V領域断片(dsFv)および相補性決定領域(CDR)を含むペプチドから選ばれる抗体断片、および完全型抗体からなる群より選択され、該軽鎖可変領域において、a)CDR-L1として配列表の配列番号1の160位から174位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-L2として配列番号1の190位から196位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-L3として配列番号1の229位から237位に記載のアミノ酸配列を有する、抗モルヒネ抗体、に関する。
【0012】
上記抗モルヒネ抗体は、モルヒネを特異的に認識し、かつヘロイン、コデイン、コカイン、ケタミンへの認識能が低い、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗モルヒネ抗体分子であって、Fab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、一本鎖抗体(scFv)、2量体化可変領域(V領域)断片、ジスルフィド安定化V領域断片(dsFv)および相補性決定領域(CDR)を含むペプチドから選ばれる抗体断片、および完全型抗体からなる群より選択され、該重鎖可変領域において、a)CDR-H1として配列表の配列番号1の31位から35位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-H2として配列番号1の50位から65位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-H3として配列番号1の98位から110位に記載のアミノ酸配列を有し、該軽鎖可変領域において、a)CDR-L1として配列表の配列番号1の160位から174位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-L2として配列番号1の190位から196位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-L3として配列番号1の229位から 237位に記載のアミノ酸配列を有することが好ましい。
【0013】
上記重鎖可変領域は、配列表の配列番号1の1位〜121位で表わされるポリペプチド及びこの配列中の1ないし数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加、挿入されたポリペプチド、からなる群から選択されるポリペプチドであり、上記軽鎖可変領域は、配列表の配列番号1の137位〜248位で表わされるポリペプチド及びこの配列中の1ないし数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加、挿入されたポリペプチド、からなる群から選択されるポリペプチドであることが好ましい。
【0014】
上記抗モルヒネ抗体は、重鎖可変領域−リンカー配列−軽鎖可変領域を含む一本鎖抗体であり得る。
【0015】
上記抗モルヒネ一本鎖抗体は、配列表の配列番号1で表わされるポリペプチド及びこの配列中の1ないし数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加、挿入されたポリペプチド、からなる群から選択されるポリペプチドを含み得る。
【0016】
本発明はまた、上記抗モルヒネ一本鎖抗体を提示することができるバクテリオファージを保持し、受領番号FERM ABP-11378で、独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センターに寄託してある大腸菌、に関する。
【0017】
本発明はまた、上記大腸菌が保持するバクテリオファージにより産生される抗モルヒネ一本鎖抗体、に関する。
【0018】
本発明はまた、モルヒネを特異的に認識し、かつヘロイン、コデイン、コカイン、ケタミンへの認識能が低い抗体様分子であって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、該重鎖可変領域において、a)CDR-H1として配列表の配列番号1の31位から35位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-H2として配列番号1の50位から65位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-H3として配列番号1の98位から110位に記載のアミノ酸配列を有し、該軽鎖可変領域において、a)CDR-L1として配列表の配列番号1の160位から174位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-L2として配列番号1の190位から196位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-L3として配列番号1の229位から 237位に記載のアミノ酸配列を有し、さらに、別の機能性ペプチドに連結している、抗体様分子、に関する。
【0019】
上記抗体様分子において、重鎖可変領域は、配列表の配列番号1の1位〜121位 で表わされるポリペプチド及びこの配列中の1ないし数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加、挿入されたポリペプチド、からなる群から選択されるポリペプチドであり、上記軽鎖可変領域は、配列表の配列番号1の137位〜248位で表わされるポリペプチド及びこの配列中の1ないし数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加、挿入されたポリペプチド、からなる群から選択されるポリペプチドであり得る。
【0020】
本発明はまた、モルヒネを特異的に認識し、かつヘロイン、コデイン、コカイン、ケタミンへの認識能が低い、重鎖可変領域−リンカー配列−軽鎖可変領域を含む、抗モルヒネ一本鎖抗体、に関する。
【0021】
本発明はまた、上記いずれかの抗モルヒネ抗体または抗体様分子を含んでなるモルヒネ測定キット、に関する。
【0022】
本発明はまた、上記いずれかの抗モルヒネ抗体または抗体様分子を試料に接触させる工程を含むモルヒネの測定方法、に関する。
【0023】
本発明はまた、上記いずれかに記載の抗モルヒネ抗体を調製する方法であって、
(a)動物をモルヒネと特定のタンパク質との複合体で免疫する工程;
(b)該免疫動物の脾臓細胞から、該特定のタンパク質とは別のタンパク質とモルヒネとの複合体を用いて、該複合体との結合により目的の細胞を選別し、ファージ抗体ライブラリを作成する工程;および
(c)工程(a)の特定のタンパク質とは別のタンパク質とモルヒネとの複合体を用いて、該複合体との結合により、該ファージ抗体ライブラリから目的の抗体を有するファージを選別する工程、を含む、調製方法、に関する。ここで、工程(b)と(c)とで用いるタンパク質は同じ種類であっても異なる種類であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の抗モルヒネ抗体または抗モルヒネ抗体様分子を用いることにより、モルヒネのみを特異的に検出することができ、迅速かつ正確なモルヒネの測定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一例の抗モルヒネ一本鎖抗体について、モルヒネに対する結合性およびケタミン、コカイン、ヘロイン、コデイン、サイロクロブリンに対する結合性を表わす図である。
【図2】本発明の一例の抗モルヒネ一本鎖抗体について、モルヒネ一本鎖抗体の濃度に応じて、モルヒネ−Tgに反応することを示す図である。
【図3】本発明の一例の抗モルヒネ一本鎖抗体について、モルヒネ一本鎖抗体の濃度依存的な結合が、モルヒネに対してのみ示されることを表わす図である。
【図4】本発明の一例の抗モルヒネ一本鎖抗体について、モルヒネ濃度に依存的な結合が示されることを表わす図である。
【図5】本発明の一例の抗モルヒネ一本鎖抗体について、様々な物質に対する結合性を、他社製品あるいはハイブリドーマ法によるモノクローナル抗体と比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明でいう抗モルヒネ抗体は、モルヒネを特異的に認識し、ヘロイン、コカイン、コデイン、およびケタミンへの認識能が低い抗体であって、Fab、Fab'、F(ab')2、一本鎖抗体(scFv)、2量体化可変領域(V領域)断片(Diabody)、ジスルフィド安定化V領域断片(dsFv)および相補性決定領域(CDR)を含むペプチドから選ばれる抗体断片を含む分子、および完全型抗体分子のすべての形態を含む。
【0027】
ここで、モルヒネとは、(5α,6α)−7,8−ジデヒドロ−4,5−エポキシ−17−メチルモルヒナン−3,6ージオール(CAS番号57−27−2)であり、以下の化学式で表わされる。
【化1】

【0028】
ヘロインは、(5α,6α)−7,8−ジデヒドロ−4,5−エポキシ−17−メチルモルヒナン−3,6ージオール二酢酸塩であり、コカインは、(1R,2R,3S,5S)-3- (ベンゾイロキシ)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1] オクタン-2-カルボン酸メチル、コデインは、(5R,6S)-7,8-ジデヒドロ-4,5-エポキシ-3-メトキシ-N-メチルモルフィナン-6-オール、ケタミンは、(RS)-2-(2-クロロフェニル)-2-メチルアミノ-シクロヘキサン-1-オンである。
【0029】
また、ここで、「モルヒネを特異的に認識する」とは、モルヒネに対する結合能が、他の化合物に対する結合能より有意に高く、好ましくは、モルヒネに対してのKdが、10−8以下であるような性質をいう。「認識能が低い」とは、他の化合物に対する結合能との差異が2倍以内であり、かつ好ましくは、その化合物に対するKdが10−5以上である。
【0030】
さらに、重鎖可変領域および軽鎖可変領域と他の機能性ポリペプチドを連結させた抗体様分子も本発明において、抗モルヒネ抗体の等価物として、用いられる。
【0031】
ここで、完全分子型モノクローナル抗体は、2本の同一H鎖と2本の同一L鎖の 計4本のポリペプチド鎖を含む抗体をいい、通常、重鎖と軽鎖が、Y字型に配置しており、ジスルフィド結合(S-S結合)で結合している。重鎖可変領域および軽鎖可変領域と免疫グロブリン定常領域とを融合することで得ることができる。
【0032】
本明細書で重鎖可変領域および軽鎖可変領域というときには、アミノ酸配列の類似性が、他の分子と比較した場合に低い可変部位(variable region:VH/VL)、すなわち、モルヒネに特異的に結合する部位をいう。
【0033】
本明細書で、重鎖可変領域−リンカー配列−軽鎖可変領域という時には、このような重鎖可変領域と軽鎖可変領域とが、リンカー配列で結合した状態を指し、リンカーとしては特に限定されず、いずれの10個〜25個程度のアミノ酸残基の配列でもよい。
【0034】
前記重鎖可変領域は、a)CDR-H1として配列表の配列番号1の31位から35位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-H2として配列番号1の50位から65位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-H3として配列番号1の98位から110位に記載のアミノ酸配列を有することが好ましい。
【0035】
前記軽鎖可変領域は、a)CDR-L1として配列表の配列番号1の160位から174位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-L2として配列番号1の190位から196位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-L3として配列番号1の229位から237位に記載のアミノ酸配列を有することが好ましい。
【0036】
より好ましくは、前記重鎖可変領域は、配列表の配列番号1の1位〜121位で表わされるポリペプチド及びこの配列中の1ないし数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加、挿入されたポリペプチド、からなる群から選択されるポリペプチドであり、
前記軽鎖可変領域は、配列表の配列番号1の137位〜248位で表わされるポリペプチド及びこの配列中の1ないし数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加、挿入されたポリペプチド、からなる群から選択されるポリペプチドであり得る。
【0037】
本発明の重鎖可変領域−リンカー配列−軽鎖可変領域は、配列表の配列番号1で表わされるポリペプチド及びこの配列中の1ないし数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加、挿入されたポリペプチド、からなる群から選択されるポリペプチドであることが特に好ましいが、これに限定されない。
本発明の重鎖可変領域−リンカー配列−軽鎖可変領域は、限定はされないが、特に好ましくは、配列表の配列番号2で表わされる核酸配列でコードされるポリペプチドである。
【0038】
本発明において、抗体様分子が提供される場合、連結される機能的ポリペプチドとして、限定はされないが、例えば、g3p、CFP(cyan fluorescent protein)、YFP(yellow fluorescent protein)、GFP、BFP(blue fluorescent protein)等の蛍光タンパク質、Qdot等の蛍光色素、His-Tag、E-Tag、HA-Tag、myc-Tag、FLAG−Tag等のTag、アルカリフォスファターゼ(ALP)、ペルオキシダーゼ(HRP)等の酵素タンパク質等が例示される。
【0039】
本発明の抗モルヒネ抗体は、好ましくは、ファージディスプレイ法で製造することができる。ファージディスプレイ法は、生物学的に機能性のタンパク質分子をその表面に発現し表示するバクテリオファージの能力を利用して、抗体断片の大きなライブラリーを作成するのに広く利用されている。バクテリオファージ抗体表示ライブラリーとラムダファージ発現ライブラリーが種々提案されている。
【0040】
本発明においては、予めモルヒネを含む抗原で免疫された動物の脾臓細胞由来の抗体遺伝子を基に構築される抗体ファージライブラリーの他、そのままのナイーブライブラリー、合成ライブラリーなど、いずれのライブラリーを用いることも可能である。モルヒネを含む抗原で免疫された動物の脾臓細胞由来の抗体遺伝子を基に構築される抗体ファージライブラリーの場合、細胞の選択を、免疫抗原と同じタンパク質を用いたモルヒネとの複合体で行うことができるが、免疫抗原とは異なるタンパク質を用いたモルヒネとの複合体で行うことも好ましい。
【0041】
ライブラリーの構築にあたっては、特異的なプライマーを設計し、VH領域とVL領域を別個に増幅させることも好ましい。この時、限定はされないが、例えば、VH断片のフォワードプライマーは19本(配列表の配列番号3〜21)、リバースプライマーは4本(配列表の配列番号22〜25)、VL断片のフォワードプライマーは18本(配列表の配列番号26〜43)、リバースプライマーは4本(配列表の配列番号44〜47)が好ましく用いられる。抗体遺伝子を、M13またはfdファージベクターまたはファージミドベクターに挿入することにより作成する。目的遺伝子は、例えば遺伝子3産物(ファージのコートタンパク質の1種)のN末端で発現される。
【0042】
この結果、所望の抗モルヒネ抗体の可変領域に相当するペプチドを含有するペプチドライブラリーを構築することができる。次にファージライブラリーは、固定化された抗原を用いてスクリーニングされ、特異的に結合したファージ粒子が回収され、大腸菌宿主細胞中への感染により増幅される。この時用いられる抗原は、免疫抗原とは異なるタンパク質を用いたモルヒネとの複合体であることが好ましい。目的の抗モルヒネ抗体分子は、固定化抗原により反応性ファージ粒子が濃縮されるか、および/またはプラークもしくはコロニーリフトのスクリーニングのために標識される。
【0043】
本発明においては、特に好ましくは、抗モルヒネ一本鎖抗体を提示することができるバクテリオファージを保持し、受領番号FERM ABP-11378で、独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センターに寄託してある大腸菌が例示される。
【0044】
本発明の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを、ヒト由来定常領域と結合させ、キメラ分子を作成することが可能である。
【0045】
さらに、本発明の相補性決定領域(complementarity−determiningregion: CDR)、すなわち、a)CDR-H1として配列表の配列番号1の31位から35位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-H2として配列番号1の50位から65位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-H3として配列番号1の98位から110位に記載のアミノ酸配列、および/またはa)CDR-L1として配列表の配列番号1の160位から174位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-L2として配列番号1の190位から196位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-L3として配列番号1の229位から237位に記載のアミノ酸配列とを、ヒト由来フレームワーク領域と融合させて、ヒト化抗体を作成することも可能である。
【0046】
このようなキメラ分子あるいはヒト化抗体を作成するにあたっては、キメラ分子の断片をコードする組換えDNA、例えば抗モルヒネ抗体のFab, Fab' またはFv断片をコードする組換えDNA、抗体または断片の接合体、抗体の軽鎖可変領域または重鎖可変領域を含んで成るタンパク質をコードする組換えDNAを作成し、適当な発現系において発現させることでなし得る。
【0047】
本発明の抗モルヒネ抗体または抗モルヒネ抗体様分子は、試料中のモルヒネの定性的または定量的測定に好ましく用いられ得る。ここで、試料とは、血液、唾液、組織、脳脊髄液、涙液、精液、尿、便、膿汁、皮膚または粘膜分泌物であり得る。
【0048】
本発明においては、このようにして得られる抗モルヒネ抗体または抗モルヒネ抗体様分子を用いて、モルヒネを簡便に検出することができ、モルヒネの測定方法に好適に使用することができる。さらに、抗モルヒネ抗体または抗モルヒネ抗体様分子を、測定法に応じて、標識された二次抗体もしくは標識されたモルヒネのハプテン化合物、緩衝液、検出試薬および/またはモルヒネの標準溶液等を含むキットに含めることもできる。好ましいキットは、ELISA法やその他の標識を用いた測定法に用いられうるものであり、直接競合阻害ELISA法を用いる場合、固相化された抗モルヒネ抗体または抗モルヒネ抗体様分子、抗体を保持する担体、酵素、金コロイド、その他の手段で標識された抗原および検出試薬などを含む。
【0049】
モルヒネの測定方法としては、通常の抗原−抗体反応を利用する方法であれば特に制限されず、放射性同位元素免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA)、蛍光もしくは発光検出法、凝集法、イムノブロット法、イムノクロマト法等(Meth. Enzymol., 92, 147-523 (1983), Antibodies Vol. II IRL Press Oxford (1989))が挙げられる。標識の手段としては、酵素、金コロイド、放射性同位元素、蛍光物質、発光物質などがある。放射性同位元素としては、特に限定されるものではないが、例えば[125I]、[131I]、[3H]、[14C]などが好ましい。酵素としては、特に限定されるものではないが、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えばβ−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリホスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが挙げられる。蛍光物質としては、特に限定されるものではないが、例えばフルオレスカミン、フルオレセインイソチオシアネートなどが挙げられる。発光物質としては、特に限定されるものではないが、例えばルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが挙げられる。これらのうち、特に感度や簡便性等の点から、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリホスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素を用いるELISA、あるいは金コロイドを用いたイムノクロマトが好ましい。
【0050】
代表的なELISAによる検出法は、間接競合阻害ELISAまたは直接競合阻害ELISAなどが挙げられる。例えば以下に述べるような本発明の抗モルヒネ抗体または抗モルヒネ抗体様分子を用いた直接競合阻害ELISAによってモルヒネの検出を行うことができる。
【0051】
(1)本発明の抗モルヒネ抗体または抗モルヒネ抗体様分子を、担体に固相化する。用いる担体は、96穴、48穴、192穴等のマイクロタイタープレートが好ましい。固相化は、例えば、固相化用抗体を含む緩衝液を担体上に載せ、インキュベーションすればよい。
【0052】
(2)担体の固相表面へのタンパク質の非特異的吸着を防止するため、固相化用抗体が吸着していない固相表面部分を、抗体と無関係なタンパク質等によりブロッキングする。ブロッキング剤としては、BSAもしくはスキムミルク溶液等を使用することができる。
【0053】
(3)各種濃度のモルヒネを含む試料に、モルヒネのハプテン化合物と酵素を結合させた酵素結合ハプテンを加えた混合物を調製する。酵素結合ハプテンの調製は、モルヒネのハプテン化合物を酵素に結合する方法であれば特に制限なく、いかなる方法で行ってもよい。
【0054】
工程(3)の混合物を工程(2)で得られた抗体固相化担体と反応させる。モルヒネと酵素結合ハプテンとの競合阻害反応により、これらと固相化担体との複合体が生成する。モルヒネは、水溶性であるため、反応溶液として水溶液を用いることができる。反応終了後、緩衝液で担体を洗浄し、固相化抗体と結合しなかった酵素結合ハプテンを除去する。固相化抗体−酵素結合ハプテン複合体の量を検出することにより、予め作成した検量線から試料中のモルヒネの量を決定する。
【0055】
(5)担体に結合した標識酵素と反応する発色基質溶液を加え、吸光度を検出することによって検量線からモルヒネの量を算出することができる。標識酵素としてペルオキシダーゼを使用する場合には、例えば、過酸化水素と、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンまたはo−フェニレンジアミンを含む発色基質溶液を使用することができる。通常、発色基質溶液を加えて室温で約10分程度反応させた後、硫酸を加えることにより酵素反応を停止させる。3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンを使用する場合、450nmの吸光度を検出する。o−フェニレンジアミンを使用する場合、492nmの吸光度を検出する。なお、バックグランド値を補正するため、630nmの吸光度も同時に検出することが望ましい。
【0056】
標識酵素としてアルカリホスファターゼを使用する場合には、例えばp−ニトロフェニルリン酸を基質として発色させ、NaOH溶液を加えて酵素反応を止め、415nmでの吸光度を検出する方法があげられる。
【0057】
モルヒネを添加しない反応溶液の吸光度に対して、モルヒネを添加して抗体と反応させた溶液の吸光度の減少率を阻害率として計算する。既知の濃度のモルヒネを添加した反応液の阻害率により予め作成しておいた検量線を用いて、試料中のモルヒネの濃度を算出することができる。
【0058】
別の態様としてモルヒネの検出は間接競合阻害ELISAによって行うこともできる。
前記本発明の検出方法においては、検出対象物に応じた前処理をして試料とした後、直接競合阻害ELISAの工程または間接競合阻害ELISAに供することができる。ほとんどの試料の場合、モルヒネが抽出できる全ての方法を用いることができる。モルヒネを含む試料は、そのままあるいは緩衝液で希釈後、調製できる。
【0059】
本発明のモルヒネ測定用キットは、このような測定方法を好適に行い得るように、本発明の抗モルヒネ抗体あるいは抗モルヒネ抗体様分子の他、所望により、標識酵素、二次抗体、緩衝液、指示書等を含む。
【0060】
さらに、本発明の抗モルヒネ抗体または抗モルヒネ抗体様分子を担持した親和性カラムを用いてモルヒネの検出を行うこともできる。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の%は0.1% Tween 20、10%ジエタノールアミンを除きいずれも重量基準である。
【0062】
(実施例1)
薬物(モルヒネ・ヘロイン・コデイン・コカイン・ケタミン)のBSA複合体体及びサイログロブリン(Tg)複合体体は以下の3つの方法を用いて作製した。
【0063】
モルヒネについて、Imject PharmaLink Immunogen Kit(Thermo Fisher Scientific) を用い、モルヒネと活性化BSAの混合物にホルムアルデヒドを加えることで合成した。その後、スピンカラムによって不純物を除去し、ハプテン−タンパク質複合体体を得た。
【0064】
別途モルヒネについて、モルヒネとアミンの混合物にホルムアルデヒドを加えてアミノメチル基(CH2-NRH)を導入し、これにブロム酢酸ベンジルエステルを反応させた。触媒をろ過で除き、溶媒を減圧下留去し目的のカルボン酸体(ハプテン-COOH)を得た。カルボン酸体を少量のDMFに溶解し、NHSとEDCを加えて3時間攪拌した。これをリン酸バッファーで溶解したタンパク質溶液に加え、一晩攪拌した。混合溶液からスピンカラムによって不純物を除去し、ハプテン−タンパク質複合体体を得た。
【0065】
ヘロインについて、モルヒネとアミンの混合物にホルムアルデヒドを加えてアミノメチル基(CH2-NRH)を導入し、これにブロム酢酸ベンジルエステルを反応させた。OH基に無水酢酸でアセチル基を導入しヘロイン誘導体に変換した後、接触水素還元でベンジル基を切断した。触媒をろ過で除き、溶媒を減圧下留去し目的のカルボン酸体(ハプテン-COOH)を得た。カルボン酸体を少量のDMFに溶解し、NHSとEDCを加えて3時間攪拌した。これをリン酸バッファーで溶解したタンパク質溶液に加え、一晩攪拌した。混合溶液からスピンカラムによって不純物を除去し、ハプテン−タンパク質複合体体を得た。
【0066】
コデインについて、モルヒネとアミンの混合物にホルムアルデヒドを加えてアミノメチル基(CH2-NRH)を導入し、これにブロム酢酸ベンジルエステルを反応させた。OH基にメチル化試薬でメチル基を導入しコデイン誘導体に変換した後、接触水素還元でベンジル基を切断した。触媒をろ過で除き、溶媒を減圧下留去し目的のカルボン酸体(ハプテン-COOH)を得た。カルボン酸体を少量のDMFに溶解し、NHSとEDCを加えて3時間攪拌した。これをリン酸バッファーで溶解したタンパク質溶液に加え、一晩攪拌した。混合溶液からスピンカラムによって不純物を除去し、ハプテン−タンパク質複合体体を得た。
【0067】
モルヒネについて、モルヒネを1-chloroethyl chloroformate反応後メタノール中加熱することによってN-CH3をN-Hに変換(脱Nメチル化)した。次にブロム酢酸ベンジルエステルを反応させた後、接触水素還元でベンジル基を切断した。触媒をろ過で除き、溶媒を減圧下留去し目的のカルボン酸体(ハプテン-COOH)を得た。カルボン酸体を少量のDMFに溶解し、NHSとEDCを加えて3時間攪拌した。これをリン酸バッファーで溶解したタンパク質溶液に加え、一晩攪拌した。混合溶液からスピンカラムによって不純物を除去し、ハプテン−タンパク質複合体体を得た。
【0068】
ヘロインについて、モルヒネを1-chloroethyl chloroformate反応後メタノール中加熱することによってN-CH3をN-Hに変換(脱Nメチル化)した。次にブロム酢酸ベンジルエステルを反応させた後、OH基に無水酢酸でアセチル基を導入しヘロイン誘導体に変換し、接触水素還元でベンジル基を切断した。触媒をろ過で除き、溶媒を減圧下留去し目的のカルボン酸体(ハプテン-COOH)を得た。カルボン酸体を少量のDMFに溶解し、NHSとEDCを加えて3時間攪拌した。これをリン酸バッファーで溶解したタンパク質溶液に加え、一晩攪拌した。混合溶液からスピンカラムによって不純物を除去し、ハプテン−タンパク質複合体体を得た。
【0069】
コデインを1-chloroethyl chloroformate反応後メタノール中加熱することによってN-CH3をN-Hに変換(脱Nメチル化)した後、ブロム酢酸ベンジルエステルと反応させ、接触水素還元でベンジル基を切断した。触媒をろ過で除き、溶媒を減圧下留去し目的のカルボン酸体(ハプテン-COOH)を得た。カルボン酸体を少量のDMFに溶解し、NHSとEDCを加えて3時間攪拌した。これをリン酸バッファーで溶解したタンパク質溶液に加え、一晩攪拌した。混合溶液からスピンカラムによって不純物を除去し、ハプテン−タンパク質複合体体を得た。
【0070】
ケタミンをブロム酢酸ベンジルエステルとともに1,2-ジクロロエタンに溶解し、炭酸ナトリウム存在下、一昼夜加熱還流した。反応溶液に水を加えて有機層を分離し、水洗後無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒留去した。結晶性残渣をエチルアルコールに溶かし、パラジウム炭素を触媒とし、水素雰囲気下一晩室温で攪拌し、ベンジル基を還元的に切断した。触媒をろ過で除き、溶媒を減圧下留去し目的のカルボン酸体(ハプテン-COOH)を得た。カルボン酸体を少量のDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)に溶解し、NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)とEDC(水溶性カルボジイミド)を加えて3時間攪拌した。これをリン酸バッファーで溶解したタンパク質溶液に加え、一晩攪拌した。混合溶液からスピンカラムによって不純物を除去し、ハプテン−タンパク質複合体体を得た。
【0071】
コカインを1-chloroethyl chloroformate反応後メタノール中加熱することによってN-CH3をN-Hに変換(脱Nメチル化)した。その後、ブロム酢酸ベンジルエステルとともに1,2-ジクロロエタンに溶解し、炭酸ナトリウム存在下、一昼夜加熱還流した。反応溶液に水を加えて有機層を分離し、水洗後無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒留去した。結晶性残渣をエチルアルコールに溶かし、パラジウム炭素を触媒とし、水素雰囲気下一晩室温で攪拌し、ベンジル基を還元的に切断した。触媒をろ過で除き、溶媒を減圧下留去し目的のカルボン酸体(ハプテン-COOH)を得た。カルボン酸体を少量のDMFに溶解し、NHSとEDCを加えて3時間攪拌した。これをリン酸バッファーで溶解したタンパク質溶液に加え、一晩攪拌した。混合溶液からスピンカラムによって不純物を除去し、ハプテン−タンパク質複合体体を得た。
【0072】
(実施例2)
実施例1で得られたすべてのハプテン−タンパク質複合体体を別々にBALB/cCrlCrlj、メス、7週令に免疫を行った。初回免疫にはAdjuvant, Complete(Freund)(DIFCO)とハプテン−タンパク質複合体体との混合物を腹腔に投与、2回目以降の免疫にはAdjuvant, Incomplete(Freund)(DIFCO)とハプテン−タンパク質複合体体との混合物を腹腔に投与した。おおよそ2週間から3週間の間隔で抗体価が十分に上昇するまで免疫を行った。抗体価はELISAにより測定した。
【0073】
ELISA プレートに免疫原として使用しなかったタンパク質を複合体したハプテンを (1ng/μl) 50μl アプライし一晩で反応させた。洗浄後、200μlの1% ブロックエース(DSファーマバイオメディカル株式会社)で2時間ブロッキングを行った。洗浄後、50μlの段階希釈した血清サンプルを2時間反応させた。洗浄後、50μlのHRP-anti mouse IgG(Santa Cruz)を30分反応させた。洗浄後、100μlのo-phenylenediamine dihydrochloride(Sigma FAST)50set (sigma)を30分反応させ、50μlの2M (10%) H2SO4により反応を停止し、490nmで測定した。
【0074】
(実施例3)
次に、マウスscFv libraryの構築(scFv :single chain variable fragment)を行った。
【0075】
モルヒネとタンパク質との複合体体で免疫したBALB/cCrlCrljの脾臓より脾臓細胞を回収し、20μgのモルヒネ−Tgを固定化していたdishに30分反応させ、モルヒネ−Tgに結合する細胞を選択し、EPICS XL(BECKMAN COULTER)により解析を行った。
【0076】
ここで、免疫に用いたモルヒネとタンパク質との複合体体は、実施例1で得られた複合体体のうち、Imject PharmaLink Immunogen Kit(Thermo Fisher Scientific) を用い、モルヒネと活性化BSAの混合物にホルムアルデヒドを加えることで合成し、その後、スピンカラムによって不純物を除去して得られたものである。
【0077】
固定化に用いたモルヒネ−Tgは、実施例1において得られたモルヒネ−Tg複合体である。すなわち、まず、モルヒネとアミンの混合物にホルムアルデヒドを加えてアミノメチル基(CH2-NRH)を導入し、これにブロム酢酸ベンジルエステルを反応させた。触媒をろ過で除き、溶媒を減圧下留去し目的のカルボン酸体(ハプテン-COOH)を得た。カルボン酸体を少量のDMFに溶解し、NHSとEDCを加えて3時間攪拌した。これをリン酸バッファーで溶解したタンパク質溶液に加え、一晩攪拌した。混合溶液からスピンカラムによって不純物を除去し、ハプテン−タンパク質複合体を得た。
【0078】
選択したモルヒネ−Tgに結合する細胞からRNAを抽出し、cDNAを作製した。選択したモルヒネ−Tgに結合する細胞よりISOGEN(ニッポンジーン)によりRNAを抽出し、First-Strand cDNA Synthesis Kit(GE Healthcare)によりcDNAを作製した。これよりマウス抗体遺伝子特異的プライマーによりVH断片・VL断片の作製を行った。プライマーはJOrg Burmester等より発表されているプライマー設計を基本として制限酵素部位をはじめ数カ所の変更を行ったものを使用した。VH断片のフォワードプライマーは19本(配列表の配列番号3〜21)、リバースプライマーは4本(配列表の配列番号22〜25)、VL断片のフォワードプライマーは18本(配列表の配列番号26〜43)、リバースプライマーは4本(配列表の配列番号44〜47)である。
【0079】
次に、VH断片・VL断片を、電気泳動のゲルより目的断片を切り出し、DEAE ペーパーで精製を行うことで調製した。なお、VH断片作製時のリバースプライマー、VL断片作製時のフォワードプライマーにリンカ−の一部分を組み込んでおり、(Gly)3Serの繰り返し配列3個分のうち中央の1個部分でアニーリングするように作成されている。精製したVH、VL断片を、制限酵素サイトsfiI、speIを取り付け、フォワードプライマーとして、5'-c tat gcg gcc cag ccg gcc(配列表の配列番号3の1位〜19位)、リバースプライマーとして5'-gtg gtg act agt gcc acc ac(配列表の配列番号44の1位〜20位)を用い、PCRにより連結させscFvとした。scFvとpCANTAB5Eファージミドベクターとを50〜100unitのsfiI(NEB)、50℃、8時間、 50unitのspeI(NEB)、37℃、一晩で制限酵素消化後、電気泳動のゲルより目的断片を切り出し、DEAE ペーパーで精製を行い制限酵素消化済みの断片を調製した。scFvとpCANTAB5Eファージミドベクターとをモル比で3:1の割合で200unitのT4 DNA ligase(NEB)により16℃、一晩反応でライゲーションした。ライゲーション産物を精製後、大腸菌TG1 Electrocompetent Cells(Lucigen)に、2.0mm cuvette、25μF、200Ω、25KVの条件でBIO-RAD GENE PULSERRIIによりエレクトロポレーションした。400mLの2TYAG(Bacto Tryptone 1.6%、Bacto Yeast Extract 1.0%、NaCl 0.5%、Glucose 2.0%、Ampicillin 0.01%)培地で一晩培養し、ライブラリとした。結果として、1.1X108 diversityのライブラリが構築できた。
【0080】
(実施例4)
scFvを提示しているファージをレスキューするため、おおよそ109-1010 cfuのグリセロールライブラリストックを10mlの2TYAGに感染させ37℃で培養した。OD600=0.4-0.5になるまで培養し、1011 cfuのM13 KO7 helper phageを感染させた。感染後、2TYAK(kanamycin 0.005%)培地に交換し一晩培養した。
【0081】
(実施例5)
次に、パンニングを行った。1μgのモルヒネ−Tg/0.1M NaHCO3をイムノチューブに4℃で一晩反応させて固定化した。次いで、1.0%ブロックエースで2時間ブロッキングした後、0.1%Tween20-PBS(以下PBSTと省略する)で3回洗浄した。これに、マウス由来の抗体ファージライブラリー(1本鎖可変領域断片(scFv)提示ファージ液)を0.55mL(1.2×1012cfu/1%Tg, 1%BSA溶液)加え、反応させた。
【0082】
次に、この反応液を、PBSTで10回、PBSで5回洗浄した後、0.5mLのグリシン緩衝液(pH2.2)を加え、モルヒネ−Tgと結合するscFv提示ファージを溶出した。溶出したファージに、1M Tris (hydroxymethyl)aminomethane-HCl,(pH9.0)を加えてpHを調製した後、対数増殖期の大腸菌TG1に感染させた。感染後の少量のTG1を2TYAGプレートに播き、30℃で一晩培養した(1st パンニング) 。残りのTG1を2TYAGで30℃、一晩培養し、1stパンニング済みのライブラリとし、2ndパンニング、3rdパンニングと、上記操作を繰り返した。
前述のモルヒネ−Tg固定化プレートを用いてパンニングを計3回行った。2回目、3回目のパンニング後に、2TYAGプレートから任意にクローンを抽出し、scFvの発現の確認及びモルヒネ−Tgに対するELISAによる特異性の確認(スクリーニング)と塩基配列の解析とを行った。パンニングの回数とともにモルヒネ−Tgに反応するscFv提示ファージが濃縮されていることが示された。
【0083】
(実施例6)
分離したクローンをスクリーニングするためのELISAは、モルヒネ−TgをELISAプレートに固定化して行った。具体的には、50ng/50μlのモルヒネ−Tg、もしくはTgをELISAプレート(Nunc)に入れ、室温で一晩静置し、固定化した。固定化プレートは、1.0%ブロックエース溶液200μL/wellをELISAプレートに入れ、室温で2時間静置し、ブロッキングを行った。次に、このELISAプレートに、scFv提示ファージを含む試料液50μL/wellを入れて反応させた後、試料液を捨て洗浄液で5回洗った。続いて、この固定化されたscFvファージに、50μlの1:1000希釈した抗M13モノクローナル抗体を加え1時間反応させ、50μlの1:1000希釈したアルカリフォスファターゼ(AP)標識した抗マウスIgG抗体(CALTAG lab)を二次抗体として30分反応させた。この反応液を洗浄液で5回洗った後、発色基質液(1g/mL p-nitrophenyl phosphate(Wako)、10%ジエタノールアミン(Wako)を含む溶液)を50μL/well入れ、遮光し、室温で発色させた。EnSpire 2300 Multilabel Readerト(PerkinElmer)で405nmの吸光度を測定した結果、6個のモルヒネ−Tgに特異的なクローンが得られた。
【0084】
(実施例7)
モルヒネ−Tgに反応するscFvクローンのファージを大腸菌HB1251に感染させた。SOBAG-Nプレート(Bacto Tryptone 2%、Bacto Yeast Extract 0.5%、NaCl 0.05%、KCl 終濃度2.5mM、MgCl2 終濃度10mM、Glucose 2.0%、Ampicillin 0.01%、NaI 終濃度125μg/ml、Agar 1.5% )に播きこれらの大腸菌を30℃で一晩培養後、シングルコロニーを2TYAG培地で30℃、一晩前培養した。この前培養の一部を2TYAGに移植し、37℃でOD600=0.4-0.5になるまで培養した。これを遠心後2TYAI培地(終濃度1mM IPTG、0.01%のアンピシリン)に交換して更に12時間培養してscFvの発現誘導を行った。培養終了後、遠心を行い培養上清画分と菌体画分とをそれぞれ回収した。菌体画分は1mM EDTAを含むPBSに懸濁して氷中に30分菌体を放置した。次いで15000×rpmで10分間遠心し、上清を回収して0.45μmフィルターろ過後、ペリプラズム画分からscFvを精製するための出発材料とした。さらに沈殿物に対してはPBSで懸濁後5分間ボイルし15000Xrpm, 5分遠心した後の上清を細胞質画分とした。それぞれの画分の発現量をドットブロットにて解析した。ドットブロットは培養上清画分、ペリプラズム画分、細胞質画分をImmobilon-P(Millipore Corporation)にブロッティングし、1%ブロックエースでブロッキング後、5μg/mlの抗E-tag モノクローナル抗体(ABNOVA)、二次抗体として1:2000希釈のペルオキシダーゼ(HRP)標識ヒツジポリクローナル抗マウスIgG(H+L)抗体を反応させた。検出試薬はECL(NACALAI TESQUE.INC)を使用し、LAS1000(FUJIFILM)で検出した。その結果解析した全てのクローンにおいてscFvはペリプラズム画分に多く発現していたことを確認した。
【0085】
(実施例8)
次に、単離したクローンのscFv遺伝子のVH鎖及びVL鎖遺伝子のDNA塩基配列をBigDye Terminator v3.1/1.1 Cycle Sequencing kit (Applied Biosystems)を用いて決定した。ELISA及び配列分析の結果、単離したクローンは全て同一のクローンであった。遺伝子配列とアミノ酸配列を示す(配列表の配列番号2および1)。
【0086】
(実施例9)
scFvの精製
このようにして調製した精製のためのクローンを、Ni−column(GE Healthcare)を用いて、常法に従って精製した。溶出は20mM Na-phosphate, 500mM NaCl, 500mM imidazole, pH7.4で行った。PBSで透析後、SDS-PAGEで確認を行った。ペリプラズム画分・培養上清画分・培養上清画分のうち透析中に析出した画分のサンプルを用いた。SDS-PAGEは15%ゲル、20mM、1時間、非還元条件のもとで行った。染色はSimplyBlue SafeStain(Invitrogen)を使用した。
【0087】
(実施例10)
精製scFvのモルヒネ−Tgに対する結合性
次に、精製scFvのモルヒネ−Tgに対する結合性をELISA法で測定した。50ng/50μlのモルヒネ−Tg、コントロールとしてケタミン−Tg、コカイン−Tg、ヘロイン−Tg、コデイン−Tg、Tgを固相化した96穴プレート(NUNC. MAXISORP)に、1%ブロックエースで室温で2時間ブロッキング後、精製scFvを50μL加えて室温で2時間反応させた。PBSTで5回洗浄後、50μlの1:1000希釈した抗E-tagポリクローナル抗体を室温で1時間反応させ、二次抗体として50μlの1:1000希釈したアルカリフォスファターゼ(AP)標識ヒツジポリクローナル抗ラビットIgGを室温で30分反応させた。
PBSTで5回洗浄後、発色基質液(1g/mL p-nitrophenyl phosphate(Wako)、10%ジエタノールアミン(Wako)を含む溶液)を50μL/well入れ、遮光し、室温で発色させた。EnSpire 2300 Multilabel Readerト(PerkinElmer)で405nmの吸光度を測定した結果、ペリプラズム画分の透析前・透析後(EDTA除去のため)のサンプル、精製済みのサンプル、または培養上清から精製した画分、いずれにおいてもモルヒネ−Tgに対して高い反応性を持っていた。またその他のケタミン、コカイン、ヘロイン、コデイン、サイログロブリンに対しては低い活性であった(図1)。図1において、pur/peri_5μlは、ペリプラズム画分から精製したサンプル5μlを表わし、sup/pur_5μlは、培養上清画分から精製したサンプル5μlを表わし、(-)dialysis_50μlは、ペリプラズム画分透析前のサンプル50μlを表わし、(+)dialysis_50μlは、ペリプラズム画分透析後のサンプル50μlを表わし、MMTは、モルヒネ−Tgのことであり、K-Tは、ケタミン−Tgであり、Cc-Tは、コカイン−Tgであり、Cd-Tは、コデイン−Tgであり、Tgは、サイログロブリンである。図中の数字は実験上のサンプル通し番号を表わし、抗原−M−Tgは、モルヒネを出発原料として芳香環の炭素原子にリンカ−を結合させたものを示す。
【0088】
精製scFvのモルヒネ−Tgに対する動図リスポンス
50ng/50μlのモルヒネ−Tg、コントロールとしてTgを固相化した96穴プレート(NUNC. MAXISORP)に、1%ブロックエースで室温で2時間ブロッキング後、様々な濃度の精製scFvを50μL加えて室温で2時間反応させた。PBSTで5回洗浄後、scFvの場合は50μlの1:1000希釈した抗E-tagポリクローナル抗体を室温で1時間反応させ、二次抗体として50μlの1:1000希釈したペルオキシダーゼ(HRP)標識ヒツジポリクローナル抗ラビットIgGを室温で30分反応させた。PBSTで5回洗浄、100μlのo-phenylenediamine dihydrochloride(Sigma FAST)50set (sigma)を30分反応させ、50μlの2M (10%) H2SO4により反応を停止し、490nmで測定した。その結果、精製scFvは濃度依存的にモルヒネ−Tgに反応することが示された(図2)。
【0089】
精製scFvの交差反応性の評価
50ng/50μlのモルヒネ−Tg、コントロールとしてケタミン−Tg、コカイン−Tg、ヘロイン−Tg、コデイン−Tg、Tgを固相化した96穴プレート(NUNC. MA
XISORP)に、1%ブロックエースで室温で2時間ブロッキング後、様々な濃度の精製scFvを50μL加えて室温で2時間反応させた。PBSTで5回洗浄後、50μlの1:1000希釈した抗E-tagポリクローナル抗体を室温で1時間反応させ、二次抗体として50μlの1:1000希釈したペルオキシダーゼ(HRP)標識ヒツジポリクローナル抗ラビットIgGを室温で30分反応させた。PBSTで5回洗浄、100μlのo-phenylenediamine dihydrochloride(Sigma FAST)50set (sigma)を30分反応させ、50μlの2M (10%) H2SO4により反応を停止し、490nmで測定した。その結果、モルヒネ−Tg対してのみ精製scFvの濃度依存的は結合性が示された。コントロール薬物に対してはほとんど結合性を示さなかった(図3)。
【0090】
精製scFvの薬物濃度依存的結合活性
様々な濃度のモルヒネ−Tgを固相化した96穴プレート(NUNC. MAXISORP)に、1%ブロックエースで室温で2時間ブロッキング後、3つの異なる一定濃度の精製scFvを50μL加えて室温で2時間反応させた。PBSTで5回洗浄後、50μlの1:1000希釈した抗E-tagポリクローナル抗体を室温で1時間反応させ、二次抗体として50μlの1:1000希釈したペルオキシダーゼ(HRP)標識ヒツジポリクローナル抗ラビットIgGを室温で30分反応させた。PBSTで5回洗浄、100μlのo-phenylenediamine dihydrochloride(Sigma FAST)50set (sigma)を30分反応させ、50μlの2M (10%) H2SO4により反応を停止し、490nmで測定した。その結果、精製scFvはモルヒネ−Tgの濃度依存的な結合性を示した(図4)。
【0091】
ハイブリドーマや他社製品との比較
50ng/50μlのモルヒネ−Tg、コントロールとしてケタミン−Tg、コカイン−Tg、ヘロイン−Tg、コデイン−Tg、BSA、Tgを固相化した96穴プレート(NUNC. MA
XISORP)に、1%ブロックエースで室温で2時間ブロッキング後、精製scFv、ハイブリドーマ法により作製した抗体、他社製品を50μL加えて室温で2時間反応させた。PBSTで5回洗浄後、50μlの1:1000希釈した抗E-tagポリクローナル抗体を室温で1時間反応させ、二次抗体として50μlの1:1000希釈したペルオキシダーゼ(HRP)標識ヒツジポリクローナル抗ラビットIgGを室温で30分反応させた。anti-Morphine Ab・product Bの場合は50μlのHRP-anti mouse IgG(Santa Cruz)を室温で30分反応させた。PBSTで5回洗浄、100μlのo-phenylenediamine dihydrochloride(Sigma FAST)50set (sigma)を30分反応させ、50μlの2M (10%) H2SO4により反応を停止し、490nmで測定した。その結果、scFvのみがモルヒネ−Tgに特異的に反応することが示された(図5)。図5において、略語は、図1と同じである。Newは、追加合成した抗原を指し、性能は、newと付していない物質と同じである。
【0092】
精製scFvのSPRによる速度論的パラメーターの算出
CM5 sensor chip(Amersham Biosciences)にモルヒネ−Tgを固定化した。62.5ng/ml、125ng/ml、250ng/ml、500ng/ml、1000ng/mlの精製scFvを反応させ、解析を行った。その結果、ka値=3.72X105(1/Ms)、kd値=5.84X10-4(1/s)、Kd値=1.47X10-9(M)となった。
【0093】
分子モデリングによる構造解析
PyMolにより分子モデリングを行った結果、抗モルヒネscFvは長いCDR H3領域により、低分子化合物に対する抗体の構造的な特徴であるキャビティを形成することが予測された。(CDR H1: cyan, CDR H2: magenta, CDR H3: yellow, CDR L1: blue, CDR L2: Red, CDR L3: orange )
【0094】
本実施例で得られた抗モルヒネ一本鎖抗体について、IMGT/V−QUESTによるデータベースホモロジー検索によりgerm-line usageを決定した。その結果、重鎖のV遺伝子は、IGHV5(IMGTサブグループ)から構成されており、軽鎖のV遺伝子は、IGKV3(IMGTサブグループ)から構成されていた。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の抗モルヒネ抗体は、モルヒネを特異的に認識し、ヘロイン、コデイン、コカイン、ケタミンといった類似物質への反応性が低く、さらに誘導体調製が容易であり、モルヒネの測定やモルヒネの検出用途に非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルヒネを特異的に認識し、かつヘロイン、コデイン、コカイン、ケタミンへの認識能が低い、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗モルヒネ抗体分子であって、Fab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、一本鎖抗体(scFv)、2量体化可変領域(V領域)断片(Diabody)、ジスルフィド安定化V領域断片(dsFv)および相補性決定領域(CDR)を含むペプチドから選ばれる抗体断片、および完全型抗体からなる群より選択され、
該重鎖可変領域において、a)CDR-H1として配列表の配列番号1の31位から35位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-H2として配列番号1の50位から65位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-H3として配列番号1の98位から110位に記載のアミノ酸配列を有する、抗モルヒネ抗体。
【請求項2】
モルヒネを特異的に認識し、かつヘロイン、コデイン、コカイン、ケタミンへの認識能が低い、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗モルヒネ抗体分子であって、Fab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、一本鎖抗体(scFv)、2量体化可変領域(V領域)断片(Diabody)、ジスルフィド安定化V領域断片(dsFv)および相補性決定領域(CDR)を含むペプチドから選ばれる抗体断片、および完全型抗体からなる群より選択され、
該軽鎖可変領域において、a)CDR-L1として配列表の配列番号1の160位から174位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-L2として配列番号1の190位から196位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-L3として配列番号1の229位から237位に記載のアミノ酸配列を有する、抗モルヒネ抗体。
【請求項3】
モルヒネを特異的に認識し、かつヘロイン、コデイン、コカイン、ケタミンへの認識能が低い、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗モルヒネ抗体分子であって、Fab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、一本鎖抗体(scFv)、2量体化可変領域(V領域)断片(Diabody)、ジスルフィド安定化V領域断片(dsFv)および相補性決定領域(CDR)を含むペプチドから選ばれる抗体断片、および完全型抗体からなる群より選択され、
該重鎖可変領域において、a)CDR-H1として配列表の配列番号1の31位から35位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-H2として配列番号1の50位から65位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-H3として配列番号1の98位から110位に記載のアミノ酸配列を有し、
該軽鎖可変領域において、a)CDR-L1として配列表の配列番号1の160位から174位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-L2として配列番号1の190位から196位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-L3として配列番号1の229位から237位に記載のアミノ酸配列を有する、請求項1または2記載の抗モルヒネ抗体。
【請求項4】
前記重鎖可変領域が、配列表の配列番号の1位〜121位で表わされるポリペプチド及びこの配列中の1ないし数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加、挿入されたポリペプチド、からなる群から選択されるポリペプチドであり、
前記軽鎖可変領域が、配列表の配列番号1の137位〜248位で表わされるポリペプチド及びこの配列中の1ないし数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加、挿入されたポリペプチド、からなる群から選択されるポリペプチドである、
請求項1から3までのいずれか1項記載の抗モルヒネ抗体。
【請求項5】
重鎖可変領域−リンカー配列−軽鎖可変領域を含む一本鎖抗体である、請求項1から4までのいずれか1項記載の抗モルヒネ一本鎖抗体。
【請求項6】
配列表の配列番号1で表わされるポリペプチド及びこの配列中の1ないし数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加、挿入されたポリペプチド、からなる群から選択されるポリペプチドを含む請求項5項記載の抗モルヒネ一本鎖抗体。
【請求項7】
請求項5または6記載の抗モルヒネ一本鎖抗体を提示することができるバクテリオファージを保持し、受領番号FERM ABP-11378である大腸菌。
【請求項8】
請求項7の大腸菌が保持するバクテリオファージにより産生される抗モルヒネ一本鎖抗体。
【請求項9】
モルヒネを特異的に認識し、かつヘロイン、コデイン、コカイン、ケタミンへの認識能が低い抗体様分子であって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、該重鎖可変領域において、a)CDR-H1として配列表の配列番号1の31位から35位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-H2として配列番号1の50位から65位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-H3として配列番号1の98位から110位に記載のアミノ酸配列を有し、該軽鎖可変領域において、a)CDR-L1として配列表の配列番号1の160位から174位に記載のアミノ酸配列、b)CDR-L2として配列番号1の190位から196位に記載のアミノ酸配列、およびc)CDR-L3として配列番号1の229位から237位に記載のアミノ酸配列を有し、
さらに、別の機能性ペプチドに連結している、抗体様分子。
【請求項10】
前記重鎖可変領域が、配列表の配列番号1の1位〜121位で表わされるポリペプチド及びこの配列中の1ないし数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加、挿入されたポリペプチド、からなる群から選択されるポリペプチドであり、
前記軽鎖可変領域が、配列表の配列番号1の137位〜248位で表わされるポリペプチド及びこの配列中の1ないし数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加、挿入されたポリペプチド、からなる群から選択されるポリペプチドである、
請求項9記載の抗体様分子。
【請求項11】
モルヒネを特異的に認識し、かつヘロイン、コデイン、コカイン、ケタミンへの認識能が低い、重鎖可変領域−リンカー配列−軽鎖可変領域を含む、抗モルヒネ一本鎖抗体。
【請求項12】
請求項1〜6および8〜11のいずれか1項記載の抗モルヒネ抗体または抗体様分子を含んでなるモルヒネ測定キット。
【請求項13】
請求項1〜6および8〜11のいずれか1項記載の抗モルヒネ抗体または抗体様分子を試料に接触させる工程を含むモルヒネの測定方法。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれかに記載の抗モルヒネ抗体を調製する方法であって、
(a)動物をモルヒネと特定のタンパク質との複合体で免疫する工程;
(b)該免疫動物の脾臓細胞から、該特定のタンパク質とは別のタンパク質とモルヒネとの複合体を用いて、該複合体との結合により目的の細胞を選別し、ファージ抗体ライブラリを作成する工程;および
(c)工程(a)の特定のタンパク質とは別のタンパク質とモルヒネとの複合体を用いて、該複合体との結合により、該ファージ抗体ライブラリから目的の抗体を有するファージを選別する工程、を含む、調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−232948(P2012−232948A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103593(P2011−103593)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第5回国際ペプチドシンポジウム、日本ペプチド学会主催、2010年12月4日〜9日
【出願人】(504258527)国立大学法人 鹿児島大学 (284)
【出願人】(304056486)株式会社ジーンネット (4)
【Fターム(参考)】