説明

抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸およびそれらの組合せ品による治療法

1つまたは複数の抗不整脈薬とオメガ−3脂肪酸の混合物との組合せ、そのような組合せの投与方法および単位投薬量のそのような組合せ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下の状態:高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、冠状動脈性心疾患(CHD)、心不全、心臓不整脈、心房細動、発作性心房細動、虚血性認知症、凝固に関係する障害、腎症、認知障害、炎症性疾患、メタボリックシンドローム、血管性疾患、アテローム硬化性疾患および関係する状態、異脂肪血症および関係する状態、腎疾患、総コレステロール(総C)上昇、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)上昇、アポリポタンパク質(Apo B)上昇、低い高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)、コレステロール関連の良性および悪性の腫瘍、心臓の事象および/もしくは心血管系の事象および/もしくは血管の事象および/もしくは症状の治療および/もしくは予防および/もしくは軽減、ならびにコレステロールおよびトリグリセリドレベルの低下、ならびに/またはそのような組合せによる治療が有益である任意の他の状態の1つまたは複数を有する患者の治療のために、1つまたは複数の抗不整脈薬と、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)を含むオメガ−3脂肪酸の混合物、好ましくはLOVAZA(商標)オメガ−3脂肪酸との、単回投与または単位投薬量の組合せを利用する方法に関する。本発明は、1つまたは複数の抗不整脈薬と、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)を含むオメガ−3脂肪酸の混合物、好ましくはLOVAZA(商標)オメガ−3脂肪酸との単回投与組合せ品にも関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトにおいて、コレステロールおよびトリグリセリドは血流中のリポタンパク複合体の一部であり、超遠心を通して高密度リポタンパク質(HDL)、中間密度リポタンパク質(IDL)、低密度リポタンパク質(LDL)および超低密度リポタンパク質(VLDL)分画に分離することができる。コレステロールおよびトリグリセリドは、肝臓で合成され、VLDLに組み込まれ、血漿中に放出される。高レベルの総コレステロール(総C)、LDL−Cおよびアポリポタンパク質B(LDL−Cの膜複合体)は、ヒトのアテローム硬化、ならびにアテローム硬化の疾患過程と関連するHDL−Cおよびその輸送複合体、アポリポタンパク質Aのレベルの低下を促進する。さらに、ヒトにおける心血管系の罹患率および死亡率は、総CおよびLDL−Cのレベルに比例して変動し、HDL−Cのレベルに反比例して変動し得る。異脂肪血症の状態または脂質異常は、ヒトにおいて、不整脈などの心臓系の急性もしくは慢性の電気的障害を起こし得る、病態生理学的事象の発生の素因となる。さらに、不整脈が起こると、未処置のまま放置した場合に異脂肪血症の状態が継続し、個体における後の事象のリスクを高める素因となる。
【0003】
抗不整脈薬は、心臓不整脈、例えば心房細動、心房性粗動、頻脈、徐脈、心室細動、心室性不整脈および期外収縮を治療するために用いられる薬剤群である。
【0004】
抗不整脈薬には、5つの主要なクラスがある。
【0005】
クラスI抗不整脈薬は、Naチャネル活性をブロックまたは調節する働きをすると考えられている、ナトリウムチャネル遮断薬であり、それらは3つのサブクラスに一般に分割される。クラスIaには、例えば、キニジン(例えば、QUINIDEX(登録商標))、プロカインアミド(例えば、PRONESTYL(登録商標))およびジソピラミド(例えば、NORPACE(登録商標))を含めることができる。クラスIbには、例えば、リドカイン(例えば、XYLOCAINE(登録商標))、メキシレチン(例えば、MEXITIL(登録商標))、トカイニド(例えば、TONOCARD(登録商標))およびフェニトインを含めることができる。クラスIcには、例えば、エンカイニド(例えば、ENKAID(登録商標))、フレカイニド(例えば、TABOCOR(登録商標))、モリシジンおよびプロパフェノン(例えば、Rhythmol(登録商標))を含めることができる。
【0006】
クラスII抗不整脈薬は、抗交感神経剤として作用すると考えられている、すなわち、心臓への神経シグナルの伝達を阻害すると考えられているβ遮断薬であり、その例には、例えば、エスモロール(例えば、BREVIBLOC(登録商標))、プロプラノロール(例えば、INDERAL(登録商標))、アセブトロール(例えば、SECTRAL(登録商標))、ソタロール(例えば、BETAPACE(登録商標))およびメトプロロール(例えば、TOPROL−XL(登録商標)またはLOPRESSOR(登録商標))を含めることができる。
【0007】
クラスIII抗不整脈薬はカリウムチャネル遮断薬であり、その例には、例えば、アミオダロン(例えば、CORDARONE(登録商標))、アジミリド、ブレチリウム、クロフィリウム、ドフェチリド、テジサミル、イブチリド、セマチリド、ドロナデロン、RSD−1235およびソタロール(例えば、BETAPACE(登録商標))を含めることができる。
【0008】
クラスIV抗不整脈薬は緩効性カルシウムチャネル遮断薬であり、その例としては、例えば、ベラパミル(例えば、CALAN(登録商標)またはISOPTIN(登録商標))、ミベフラジル(例えば、POSICOR(登録商標))およびジルチアゼム(例えば、CARDIZEM(登録商標))を含めることができる。
【0009】
クラスV抗不整脈薬は他のまたは未知の機構によって作用し、その例には、例えば、アデノシン(例えば、ADENOCARD(登録商標))およびジゴキシン(例えば、LANOXIN(登録商標))を含めることができる。
【0010】
他の抗不整脈薬には、GYKI−16638、CPU−86017、EGIS−7229、KCB−328、L−768673、RWJ−28810、NIP−151、NS−1643、KB−R7943、ATI−2001、AL−275、Cardiostem、KMUP−880708、SLV−316、TY−10835、AZD−1305、CLN−93、PQ−1006、SAR−114646、S−2646、XEN−501、CVT−3619、TRC−30X、AVE−1231、DL−017、PJ−875、ピルメノール、モラシジン、ピルジカイニド、ニフェカラント、デクスソタロール、ランジオロール、ニフェジピン、ATI−2042、AVE−0118、ニベンタン、ストバジン、YM−758、SSR−149744、ロチガプチド、テジサミルおよびテカデノソンが含まれる。
【0011】
一部の抗不整脈薬は1つまたは複数の機構によって作用することができ、したがって、複数のクラスに属するものと特徴づけることができる点に留意する必要がある。
【0012】
一般に魚油と呼ばれる海産油は、2つのオメガ−3脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)の良い供給源であり、それらは脂質代謝を調節することがわかっている。オメガ−3脂肪酸は、心血管の疾患のリスク因子に有益な影響を及ぼすこと、ならびに軽度の高血圧症、高トリグリセリド血症、および凝固第VII因子リン脂質複合体活性に特に良い影響を及ぼすことがわかっている。オメガ−3脂肪酸は血清HDLコレステロールを増加させ、血清トリグリセリドを低下させ、血清LDLコレステロールの粒径パターンを変化させ、収縮期および拡張期の血圧、ならびに脈拍数を低下させ、血液凝固VII因子−リン脂質複合体の活性を低下させる。さらに、オメガ−3脂肪酸は、重大な副作用を引き起こすことなく、良好な耐容性を示す。
【0013】
オメガ−3脂肪酸の1つの形は、DHAおよびEPAを含有する魚油由来の、オメガ−3、長鎖多価不飽和脂肪酸濃縮物であり、商標OMACOR(登録商標)の下で販売され、現在はLOVAZA(商標)の名称で知られている。オメガ−3脂肪酸のそのような形は、例えば、米国特許第5,502,077号、第5,656,667号および第5,698,594号によって記載され、それぞれは参照により本明細書にその全体が組み込まれている。
【0014】
国際出願PCT/IE99/00031号は、水溶液で希釈すると水中油ミクロエマルジョンまたはエマルジョンを形成することができる、自己乳化前濃縮物医薬組成物を開示する。請求されている組成物は以下を含む:水に貧溶性の治療剤の治療有効量;低HLB油成分の薬学的に有効な量;および、約10から20のHLBを有する少なくとも1つの界面活性剤からなる界面活性系。治療剤にはシクロスポリン、ニフェジピンまたはインドメタシンを、低HLB油成分にはEPAまたはDHAを含めることができる。抗不整脈薬は、強力な治療剤として開示されていない。
【0015】
参照により本明細書にその全体が組み込まれている米国特許出願公開第2006/0034815号は、オメガ−3油および1つまたは複数のスタチンの塩を含み、スタチンの少なくとも約80重量%が不均質な懸濁液中に固体粒子として存在する医薬組成物を開示している。別の実施形態では、公開明細書は、オメガ−3油および1つまたは複数のスタチンの塩を含み、スタチンの量の最大15重量%は溶液であるが、スタチンの残りの量は不均質な懸濁液中に存在する医薬組成物を提供する。抗不整脈薬は、潜在的な活性剤、すなわちスタチンのリストの中に開示されていない。
【0016】
Gillisらは、単離され、潅流されたウサギ心臓において、プロパフェノンの薬力学に対する食物脂肪の影響を調査した。Gillisら、Circulation、85(4):1501〜1509(1992)。この研究は、オメガ−3脂肪酸含有量が魚油群で最高であり、魚油群における心室伝導時間の変化が、プロパフェノン投与の間、ラードおよびサフラワー油群間の中間であることを証明した。
【0017】
過去の研究は、脂肪酸を用いてアミオダロンの毒作用を低下させることができることを示している。例えば、EPA前処置と続くEPAおよびアミオダロンによる同時処置は、アミオダロンによって誘発される細胞傷害から保護することが示された。Futamura、J.Pharmacol.、69:335〜341(1995)。同様に、アミオダロンによって誘発される細胞傷害は、DHAによる前処置と続くDHAおよびアミオダロンによる同時処置によって軽減することもできる。Futamura、J.Toxicol.Sci.、21:253〜267(1996)。
【0018】
Kangらは、メキシリチンなどのクラスI抗不整脈薬の投与が、心臓のNaチャネル発現の上方制御をもたらすことができることを示した。しかし、EPA補充、またはEPAおよびメキシリチンの併用療法は、メキシリチンによって誘発される心臓ナトリウムチャネル発現の増加を減少させることがわかった。Kangら、Proc.Natl.Acad.Sci.Pharmacol.、94:2724〜2728(1997)。
【0019】
最後に、致死性の心臓不整脈を予防するオメガ−3脂肪酸の能力は、クラスI抗不整脈薬リドカインによってもたらされるものに類似することがわかった。Kangら、Proc.Natl.Acad.Sci.Physiol.、91:9886〜9890(1994)。オメガ−3脂肪酸のクラスI様およびクラスIII様抗不整脈的および電気生理学的影響を開示する、Dheinら、Naunyn−SchmiedebergのArch Pharmacol、371:202〜211(2005)も参照されたい。1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸の投与は、開示されていない。
【0020】
先行技術は、本発明で開示されるような1つまたは複数の抗不整脈薬とオメガ−3脂肪酸、好ましくはLOVAZA(商標)オメガ−3脂肪酸との併用療法を開示していない。さらに、先行技術は、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、冠状動脈性心疾患(CHD)、心不全、心臓不整脈、心房細動、発作性心房細動、虚血性認知症、凝固に関係する障害、腎症、認知障害、炎症性疾患、メタボリックシンドローム、血管性疾患、アテローム硬化性疾患および関係する状態、異脂肪血症および関係する状態、腎疾患、総コレステロール(総C)上昇、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)上昇、アポリポタンパク質(ApoB)上昇、低い高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)、コレステロール関連の良性および悪性の腫瘍、心臓の事象および/もしくは心血管系の事象および/もしくは血管の事象および/もしくは症状の治療および/もしくは予防および/もしくは軽減、ならびにコレステロールおよびトリグリセリドレベルの低下、ならびに/またはそのような組合せによる治療が有益である任意の他の状態の1つまたは複数のための、新規でより効率的な医薬品治療を可能にする、1つまたは複数の抗不整脈薬とオメガ−3脂肪酸、好ましくはLOVAZA(商標)オメガ−3脂肪酸との、単回投与または単位投薬量の組合せを開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第5,502,077号
【特許文献2】米国特許第5,656,667号
【特許文献3】米国特許第5,698,594号
【特許文献4】国際出願PCT/IE99/00031号
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/0034815号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Gillisら、Circulation、85(4):1501〜1509(1992)
【非特許文献2】Futamura、J.Pharmacol.、69:335〜341(1995)
【非特許文献3】Futamura、J.Toxicol.Sci.、21:253〜267(1996)
【非特許文献4】Kangら、Proc.Natl.Acad.Sci.Pharmacol.、94:2724〜2728(1997)
【非特許文献5】Kangら、Proc.Natl.Acad.Sci.Physiol.、91:9886〜9890(1994)
【非特許文献6】Dheinら、Naunyn−SchmiedebergのArch Pharmacol、371:202〜211(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
当技術分野において、1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸の組合せ品に対する満たされていない必要性がある。詳細には、当技術分野において、特定の治療特性をもたらす単位投薬量で、オメガ−3脂肪酸(例えば、LOVAZA(商標)オメガ−3酸)および、例えば1つまたは複数の抗不整脈薬の単回投与をもたらす組合せ品に対する満たされていない必要性がある。
【0024】
当技術分野において、単回投与または単位投薬量の製品の投与の方法に対する満たされていない必要性もある。さらに、当技術分野において、1つまたは複数の抗不整脈薬をオメガ−3脂肪酸と組み合わせて特定の治療特性をもたらす、1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸(例えば、LOVAZA(商標)オメガ−3酸)を含む単回投与または単位投薬量の製品に対する満たされていない必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、以下状態:高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、冠状動脈性心疾患(CHD)、心不全、心臓不整脈、心房細動、発作性心房細動、虚血性認知症、凝固に関係する障害、腎症、認知障害、炎症性疾患、メタボリックシンドローム、血管性疾患、アテローム硬化性疾患および関係する状態、異脂肪血症および関係する状態、腎疾患、総コレステロール(総C)上昇、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)上昇、アポリポタンパク質(ApoB)上昇、低い高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)、コレステロール関連の良性および悪性の腫瘍、心臓の事象および/もしくは心血管系の事象および/もしくは血管の事象および/もしくは症状の治療および/もしくは予防および/もしくは軽減、ならびにコレステロールおよびトリグリセリドレベルの低下、ならびに/またはそのような組合せによる治療が有益である任意の他の状態の1つまたは複数の有効な医薬品治療をもたらすことができる1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸の単位投薬量を共投与または投与することによって、当技術分野の満たされていない必要性ならびに他の必要性を満たす。
【0026】
本発明の一部の実施形態は、以下の状態:高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、冠状動脈性心疾患(CHD)、心不全、心臓不整脈、心房細動、発作性心房細動、虚血性認知症、凝固に関係する障害、腎症、認知障害、炎症性疾患、メタボリックシンドローム、血管性疾患、アテローム硬化性疾患および関係する状態、異脂肪血症および関係する状態、腎疾患、総コレステロール(総C)上昇、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)上昇、アポリポタンパク質(Apo B)上昇、低い高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)、コレステロール関連の良性および悪性の腫瘍、心臓の事象および/もしくは心血管系の事象および/もしくは血管の事象および/もしくは症状の治療および/もしくは予防および/もしくは軽減、ならびにコレステロールおよびトリグリセリドレベルの低下、ならびに/またはそのような組合せによる治療が有益である任意の他の状態の1つまたは複数において1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸の組合せを利用する方法を提供する。
【0027】
本発明の他の実施形態は、1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸を含む組合せ品、例えば単位投薬量を目的とする。実施形態の一態様では、組合せ品は、以下の状態:高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、冠状動脈性心疾患(CHD)、心不全、心臓不整脈、心房細動、発作性心房細動、虚血性認知症、凝固に関係する障害、腎症、認知障害、炎症性疾患、メタボリックシンドローム、血管性疾患、アテローム硬化性疾患および関係する状態、異脂肪血症および関係する状態、腎疾患、総コレステロール(総C)上昇、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)上昇、アポリポタンパク質(Apo B)上昇、低い高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)、コレステロール関連の良性および悪性の腫瘍、心臓の事象および/もしくは心血管系の事象および/もしくは血管の事象および/もしくは症状の治療および/もしくは予防および/もしくは軽減、ならびにコレステロールおよびトリグリセリドレベルの低下、ならびに/またはそのような組合せによる治療が有益である任意の他の状態の1つまたは複数の治療で用いられる。
【0028】
本発明のさらに他の実施形態は、以下の状態:高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、冠状動脈性心疾患(CHD)、心不全、心臓不整脈、心房細動、発作性心房細動、虚血性認知症、凝固に関係する障害、腎症、認知障害、炎症性疾患、メタボリックシンドローム、血管性疾患、アテローム硬化性疾患および関係する状態、異脂肪血症および関係する状態、腎疾患、総コレステロール(総C)上昇、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)上昇、アポリポタンパク質(Apo B)上昇、低い高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)、コレステロール関連の良性および悪性の腫瘍、心臓の事象および/もしくは心血管系の事象および/もしくは血管の事象および/もしくは症状の治療および/もしくは予防および/もしくは軽減、ならびにコレステロールおよびトリグリセリドレベルの低下、ならびに/またはそのような組合せによる治療が有益である任意の他の状態の1つまたは複数の治療のための方法であって、1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸、好ましくは特定製品LOVAZA(商標)オメガ−3酸の併用投与を含む方法である。
【0029】
本発明の他の特徴および利点は、以下のものの精査により、または本発明の実施によって学ぶことにより、当業者に明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、以下の状態:高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、冠状動脈性心疾患(CHD)、心不全、心臓不整脈、心房細動、発作性心房細動、虚血性認知症、凝固に関係する障害、腎症、認知障害、炎症性疾患、メタボリックシンドローム、血管性疾患、アテローム硬化性疾患および関係する状態、異脂肪血症および関係する状態、腎疾患、総コレステロール(総C)上昇、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)上昇、アポリポタンパク質(Apo B)上昇、低い高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)、コレステロール関連の良性および悪性の腫瘍、心臓の事象および/もしくは心血管系の事象および/もしくは血管の事象および/もしくは症状の治療および/もしくは予防および/もしくは軽減、ならびにコレステロールおよびトリグリセリドレベルの低下、ならびに/またはそのような組合せによる治療が有益である任意の他の状態の1つまたは複数の治療のための、1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸、好ましくはLOVAZA(商標)オメガ−3脂肪酸、ならびに1つまたは複数の抗不整脈薬および1つまたは複数のオメガ−3脂肪酸を含む組合せ品または単位投薬量の利用を目的とする。
【0031】
一部の実施形態では、本発明は以下の状態:高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、冠状動脈性心疾患(CHD)、心不全、心臓不整脈、心房細動、発作性心房細動、虚血性認知症、凝固に関係する障害、腎症、認知障害、炎症性疾患、メタボリックシンドローム、血管性疾患、アテローム硬化性疾患および関係する状態、異脂肪血症および関係する状態、腎疾患、総コレステロール(総C)上昇、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)上昇、アポリポタンパク質(Apo B)上昇、低い高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)、コレステロール関連の良性および悪性の腫瘍、心臓の事象および/もしくは心血管系の事象および/もしくは血管の事象および/もしくは症状の治療および/もしくは予防および/もしくは軽減、ならびにコレステロールおよびトリグリセリドレベルの低下、ならびに/またはそのような組合せによる治療が有益である任意の他の状態の1つまたは複数の治療のための新規組合せ品であって、患者への組合せ品の投与を含む組合せ品を提供する。好ましい実施形態では、投与は、好ましくはLOVAZA(商標)オメガ−3酸の形態のオメガ−3脂肪酸、および1つまたは複数の抗不整脈薬を含み、LOVAZA(商標)オメガ−3酸は1つまたは複数の抗不整脈薬の投与と同時に投与される。
【0032】
他の好ましい実施形態では、投与は、好ましくはLOVAZA(商標)オメガ−3酸の形態のオメガ−3脂肪酸、および1つまたは複数の抗不整脈薬を含み、LOVAZA(商標)オメガ−3酸は1つまたは複数の抗不整脈薬の投与とは別に投与される。例えば、1つまたは複数の抗不整脈薬を1週間に1回投与し(例えば、パッチによって)、オメガ−3脂肪酸(例えば、LOVAZA(商標)カプセル)を毎日摂取させてもよい。本開示の利益を受ける当業者は、LOVAZA(商標)オメガ−3酸および1つまたは複数の抗不整脈薬の投与のための正確な投薬量およびスケジュールが、例えば投与経路および病状の重大性などの多数の因子によって異なることを理解するであろう。
【0033】
本発明は、現在公知であるか将来公知である抗不整脈薬を、安全と一般に認識される量で組み込むことができる。例えば、抗不整脈薬には、以下を含めることができる。クラスIa抗不整脈薬(例えば、キニジン(例えば、QUINIDEX(登録商標))、プロカインアミド(例えば、PRONESTYL(登録商標))およびジソピラミド(例えば、NORPACE(登録商標)));クラスIb抗不整脈薬(例えば、リドカイン(例えば、XYLOCAINE(登録商標))、メキシレチン(例えば、MEXITIL(登録商標))、トカイニド(例えば、TONOCARD(登録商標))およびフェニトイン);クラスIc抗不整脈薬(例えば、エンカイニド(例えば、ENKAID(登録商標))、フレカイニド(例えば、TABOCOR(登録商標))、モリシジンおよびプロパフェノン(例えば、RHYTHMOL(登録商標)));クラスII抗不整脈薬(例えば、エスモロール(例えば、BREVIBLOC(登録商標))、プロプラノロール(例えば、INDERAL(登録商標))、アセブトロール(例えば、SECTRAL(登録商標))、ソタロール(例えば、BETAPACE(登録商標))およびメトプロロール(例えば、TOPROL−XL(登録商標)またはLOPRESSOR(登録商標)));クラスIII抗不整脈薬(例えば、アミオダロン(例えば、CORDARONE(登録商標))、アジミリド、ブレチリウム、クロフィリウム、ドフェチリド、テジサミル、イブチリド、セマチリド、ドロナデロン、RSD−1235およびソタロール(例えば、BETAPACE(登録商標)));クラスIV抗不整脈薬(例えば、ベラパミル(例えば、CALAN(登録商標)またはISOPTIN(登録商標))、ミベフラジル(例えば、POSICOR(登録商標))およびジルチアゼム(例えば、CARDIZEM(登録商標)));クラスV抗不整脈薬(例えば、アデノシン(例えば、ADENOCARD(登録商標))およびジゴキシン(例えば、LANOXIN(登録商標)))。他の可能性のある抗不整脈薬には、GYKI−16638、CPU−86017、EGIS−7229、KCB−328、L−768673、RWJ−28810、NIP−151、NS−1643、KB−R7943、ATI−2001、AL−275、Cardiostem、KMUP−880708、SLV−316、TY−10835、AZD−1305、CLN−93、PQ−1006、SAR−114646、S−2646、XEN−501、CVT−3619、TRC−30X、AVE−1231、DL−017、PJ−875、ピルメノール、モラシジン、ピルジカイニド、ニフェカラント、デクスソタロール、ランジオロール、ニフェジピン、ATI−2042、AVE−0118、ニベンタン、ストバジン、YM−758、SSR−149744、ロチガプチド、テジサミルおよびテカデノソンを含めることができる。好ましい実施形態では、1つまたは複数の抗不整脈薬には、分類群Ic、好ましくはプロパフェノンおよび/もしくはフレカイニド、ならびに/またはクラスIII抗不整脈薬、好ましくはアミオダロン、アジリミリド、ドロナデロン、RSD−1235、ソタロール、イブチリド、ドフェチリド、ならびに/または、ATI−2042、AVE−0118、ニベンタン、ストバジン、YM−758、SSR−149744、ロチガプチド、テジサミルおよび/もしくはテカデノソンなどの他の抗不整脈薬が含まれる。
【0034】
1つまたは複数の抗不整脈薬を含む本発明の組合せ品は、互いに異なる。一部の実施形態では、1つまたは複数の抗不整脈薬の複数の形を、オメガ−3脂肪酸の量と組み合わせる。
【0035】
本明細書で用いるように、用語「オメガ−3脂肪酸」には、天然もしくは合成のオメガ−3脂肪酸、またはその薬学的に許容されるエステル、誘導体、コンジュゲート体(それぞれ参照により本明細書に組み込まれているZalogaら、米国特許出願公開第2004/0254357号、およびHorrobinら、米国特許第6,245,811号を参照)、その前駆体または塩、およびその混合物が含まれる。オメガ−3脂肪酸油の例には、それらに限定されないが、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)およびα−リノレン酸などのオメガ−3多価不飽和長鎖脂肪酸;モノ、ジおよびトリグリセリドなどのオメガ−3脂肪酸とグリセロールとのエステル;ならびに、脂肪酸メチルエステルおよび脂肪酸エチルエステルなどのオメガ−3脂肪酸と第一、第二または第三アルコールとのエステルが含まれる。好ましいオメガ−3脂肪酸油は、EPAまたはDHAなどの長鎖脂肪酸、それらのトリグリセリド、それらのエチルエステルおよびそれらの混合物である。オメガ−3脂肪酸、またはそれらのエステル、誘導体、コンジュゲート体、前駆体、塩およびそれらの混合物は、それらの純粋な形態で、または、魚油、好ましくは高度精製魚油濃縮物などの油の成分として用いることができる。本発明での使用に適するオメガ−3脂肪酸の市販例には、Incromega F2250、F2628、E2251、F2573、TG2162、TG2779、TG2928、TG3525およびE5015(Croda International PLC社、Yorkshire、England)およびEPAX6000FA、EPAX5000TG、EPAX451OTG、EPAX205OTG、K85TG、K85EE、K80EEおよびEPAX7010EE(EPAX A.S.社、1326 Lysaker、Norway)が含まれる。
【0036】
オメガ−3脂肪酸の好ましい形態は、ここに参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許第5,502,077号、第5,656,667号および第5,698,694号に挙げられている。
【0037】
別の好ましい組成物は、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%、またはさらには少なくとも90重量%の濃度で存在するオメガ−3脂肪酸を含む。好ましくは、オメガ−3脂肪酸は、EPAおよびDHAを少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%、例えば約84重量%を含む。好ましくは、オメガ−3脂肪酸は約5から約100重量%、より好ましくは約25から約75重量%、より好ましくは約40から約55重量%、最も好ましくは約46重量%のEPAを含む。好ましくは、オメガ−3脂肪酸は約5から約100重量%、より好ましくは約25から約75重量%、より好ましくは約30から約60重量%、最も好ましくは約38重量%のDHAを含む。特に明記しない限り、上の全ての百分率は、組成物中の総脂肪酸含有量と重量で比較したものである。重量百分率は遊離の酸またはエステルの形態に基づき得るが、たとえ他の形態が本発明に従って利用される場合でも、オメガ−3脂肪酸のエチルエステル形態に基づくことが好ましい。
【0038】
EPA:DHA比は99:1から1:99、好ましくは4:1から1:4、より好ましくは3:1から1:3、最も好ましくは2:1から1:2であることができる。オメガ−3脂肪酸は、純粋なEPAまたは純粋なDHAを含むことができる。
【0039】
所望によりオメガ−3脂肪酸油は、αトコフェロールなどの化学抗酸化剤、ダイズ油および部分水素化植物油などの油、ならびに分画ヤシ油、レシチンおよびその混合物などの滑沢剤を含む。
【0040】
オメガ−3脂肪酸の最も好ましい形態はLOVAZA(商標)オメガ−3酸(K85EE、Pronova Biocare A.S.社、Lysaker、Norway)であり、好ましくは以下の特性を有する(剤形別):
【0041】
【表1】

【0042】
1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸、好ましくはLOVAZA(商標)オメガ−3酸の組合せ品は、当技術分野で公知である任意の手段によって投与することができる。そのような様式には、経口、経直腸、経鼻、局所(口内および舌下を含む)または非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)投与が含まれる。これらの組成物は、好ましくは経口投与される。
【0043】
本発明の組成物中の有効成分の投薬量は、変更することができる。しかし、有効成分の量は、適する剤形が得られるようなものであることを必要とする。選択される投薬量は、所望の治療効果、投与経路および治療期間に依存する。基本的に本発明の一部の実施形態の組成物は、1つまたは複数の抗不整脈薬の有効量、薬学的に有効な量または治療有効量を含む。
【0044】
当技術分野で公知であるように、1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸の組合せ品は、カプセル、錠剤、飲料中に分散させることができる粉末、液剤、軟質ゲルカプセル、または他の都合のよい剤形、例えばカプセル内の経口用液剤で投与することができる。一部の実施形態では、カプセルは硬質ゼラチンで形成される。組合せ品は、注射または注入に適する液体に含めることもできる。
【0045】
本発明の有効成分、1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸は、1つまたは複数の不活性医薬成分(本明細書で一般に「賦形剤」としても知られる)の組合せと一緒に投与することもできる。不活性成分は、有効成分を、例えば、安全で、便利で、その他の形で使用が許容される、適用性のある有効な調製物に可溶化、懸濁、粘凋化、希釈、乳状化、安定化、保存、保護、着色、風味付けおよび成形する役目を果たす。したがって、不活性成分には、コロイド状二酸化ケイ素、クロスポピドン、ラクトース一水和物、レシチン、微結晶性セルロース、ポリビニルアルコール、ポビドン、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、タルク、二酸化チタンおよびキサンタム(xanthum)ガムを含めることができる。
【0046】
ほとんどの実施形態では、賦形剤には主に、プロピレングリコールモノカプリレート、グリセロールおよび長鎖脂肪酸のポリエチレングリコールエステルの混合物、ポリエトキシル化ヒマシ油、グリセロールエステル、オレオイルマクロゴールグリセリド、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート、ポリエチレン−ポリプロピレングリコール共重合体およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートなどの界面活性剤、エタノール、グリセロール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールなどの助溶剤、ならびにココナッツ、オリーブまたはサフラワー油などの油が含まれる。界面活性剤、助溶剤、油またはそれらの組合せの使用は医薬分野では一般に公知であり、当業者ならば理解するように、任意の適する界面活性剤を本発明およびその実施形態と一緒に用いることができる。
【0047】
オメガ−3脂肪酸は、1日の量が約0.1gから約10g、より好ましくは、約0.5gから約8g、最も好ましくは約0.75gから約4gで投与することができる。好ましくは、単位剤形では、オメガ−3脂肪酸は、約0.1gから約2g、好ましくは約0.5gから約1.5g、より好ましくは約1gの量で存在する。
【0048】
本発明の一実施形態では、1つまたは複数の抗不整脈薬は、そのような抗不整脈薬の選択次第で、約0.5mgから約1000mg、好ましくは約1mgから約750mg、より好ましくは約2.5mgから約500mgの量で一般に存在することができる。
【0049】
本発明の一部の変形形態では、1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸(例えば、LOVAZA(商標)オメガ−3酸)の組合せは、単回投与または単位投薬量に製剤化される。
【0050】
1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸の日用量は、1回から10回の投薬量で一緒に投与することができ、好ましい投薬回数は1日につき1回から4回である。投与は好ましくは経口投与であるが、1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸の単位投薬量を提供する他の様式の投与を用いることができる。
【0051】
一部の好ましい実施形態では、軟質ゼラチンカプセルが用いられる。軟質ゼラチンカプセルの製造は、当業者に一般に公知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Ebert(1978)、「軟質弾性ゼラチンカプセル:独特な剤形(Soft Elastic Gelatin Capsules:A Unique Dosage Form)」、Pharmaceutical Technology 1(5)を参照。一部の実施形態では、1つまたは複数の抗不整脈薬および/またはオメガ−3脂肪酸は、軟質ゼラチンカプセル中に含まれる。ある実施形態では、軟質ゼラチンカプセル中の有効成分を、可溶化剤と組み合わせる。可溶化剤には、界面活性剤、親水性もしくは疎水性の溶媒、油またはそれらの組合せが含まれる。
【0052】
用いることができる可溶化剤の1つの型は、ビタミンE物質である。この群の可溶化剤には、α−、β−、γ−、δ−、ζ1−、ζ2−およびη−トコフェロール、それらのdl、dおよびl型ならびにトコトリエノールなどのそれらの構造類似体;有機酸で生成される対応する誘導体、例えばエステル;ならびにそれらの混合物の群に属する物質が含まれる。好ましいビタミンE物質可溶化剤には、トコフェロール、トコトリエノール、ならびに酢酸、プロピオン酸、胆汁酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、ポリエチレングリコールコハク酸およびサリチル酸などの有機酸とのトコフェロール誘導体が含まれる。特に好ましいビタミンE物質可溶化剤には、α−トコフェロール、α−酢酸トコフェリル、α−コハク酸トコフェリル酸、α−コハク酸トコフェリルポリエチレングリコール1000およびそれらの混合物が含まれる。
【0053】
可溶化剤の別の群は、有機酸の一価アルコールエステルである。一価アルコールは、例えば、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、脂肪族アルコール、フェノール、クレゾール、ベンジルアルコールまたはシクロアルキルアルコールであることができる。有機酸は、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、6〜22個の炭素原子の脂肪酸、胆汁酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸およびサリチル酸であることができる。この群の中の好ましい可溶化剤には、クエン酸トリアルキル、低級アルコール脂肪酸エステルおよびラクトンが含まれる。好ましいクエン酸トリアルキルには、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチルおよびそれらの混合物が含まれ、クエン酸トリエチルが特に好ましい。特に好ましい低級アルコール脂肪酸エステルには、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、カプリル酸エチル、カプリン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピルおよびそれらの混合物が含まれる。ラクトンも、可溶化剤の役目を果たすことができる。例には、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、それらの異性体およびそれらの混合物が含まれる。
【0054】
可溶化剤は、窒素含有溶媒であってもよい。好ましい窒素含有溶媒には、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−アルキルピロリドン、N−ヒドロキシアルキルピロリドン、N−アルキルピペリドン、N−アルキルカプロラクタムおよびそれらの混合物が含まれ、アルキルはC1〜12分枝鎖または直鎖のアルキルである。特に好ましい窒素含有溶媒には、N−メチル2−ピロリドン、N−エチル2−ピロリドンまたはそれらの混合物が含まれる。あるいは、窒素含有溶媒は、ポリビニルピロリドンなどの重合体の形であってもよい。
【0055】
可溶化剤の別の群には、リン脂質が含まれる。好ましいリン脂質には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、レシチン、リゾレシチン、リゾホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール化(glycolated)リン脂質/リゾリン脂質、レシチン/リゾレシチンおよびそれらの混合物が含まれる。
【0056】
好ましい可溶化剤の別の群は、酢酸グリセロールおよびアセチル化グリセロール脂肪酸エステルである。好ましい酢酸グリセロールには、アセチン、ジアセチン、トリアセチンおよびそれらの混合物が含まれ、トリアセチンが特に好ましい。好ましいアセチル化グリセロール脂肪酸エステルには、アセチル化モノグリセリド、アセチル化ジグリセリドおよびそれらの混合物が含まれる。
【0057】
さらに、可溶化剤はグリセロール脂肪酸エステルでもよい。脂肪酸成分は、炭素原子数が約6〜22個である。グリセロール脂肪酸エステルは、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドまたはそれらの混合物でよい。好ましいグリセロール脂肪酸エステルには、約6〜12個の炭素を有する脂肪酸を有するモノグリセリド、ジグリセリド、中鎖トリグリセリドおよびそれらの混合物が含まれる。特に好ましいグリセロール脂肪酸エステルには、約6〜12個の炭素を有する脂肪酸を有する中鎖モノグリセリド、約6〜12個の炭素を有する脂肪酸を有する中鎖ジグリセリド、およびそれらの混合物が含まれる。
【0058】
可溶化剤は、プロピレングリコールエステルであってもよい。好ましいプロピレングリコールエステルには、炭酸プロピレン、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アセチル化プロピレングリコール脂肪酸エステル、およびそれらの混合物が含まれる。あるいは、プロピレングリコール脂肪酸エステルは、プロピレングリコール脂肪酸モノエステル、プロピレングリコール脂肪酸ジエステルまたはそれらの混合物であってもよい。脂肪酸は、約6〜22個の炭素原子を有する。プロピレングリコールエステルがプロピレングリコールモノカプリレート(CAPRYOL(登録商標))であるのが特に好ましい。他の好ましいプロピレングリコールエステルには、プロピレングリコールジカプリレート、プロピレングリコールジカプレート、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート、およびそれらの混合物が含まれる。
【0059】
可溶化剤の別の群は、エチレングリコールエステルである。エチレングリコールエステルには、モノエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコールエステルおよびそれらの混合物が含まれる。追加の例には、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコール脂肪酸モノエステル、エチレングリコール脂肪酸ジエステルおよびそれらの混合物が含まれる。あるいは、エチレングリコールエステルは、ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステル、ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステルまたはその混合物であってもよい。上と同じく、脂肪酸成分は約6〜22個の炭素原子を含む。特に好ましいエチレングリコールエステルは、LABRAFIL(登録商標)およびLABRASOL(登録商標)の名称の下で市販されているものである。
【0060】
例えば4から25個のアルキレン部分のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベートとも呼ばれる)、例えば、公知の、かつ商品名TWEEN(登録商標)の下で市販されている種類であるモノ−およびトリ−ラウリル、パルミチル、ステアリルおよびオレイルエステルも、界面活性剤として適する。
【0061】
用いることができる親水性溶媒には、水混和性アルコール、例えば無水エタノール、またはグリセロールなどのアルコールが含まれる。他のアルコールには、グリコール、例えばエチレンオキシドなどのオキシドから得られる任意のグリコール、例えば1,2−プロピレングリコールが含まれる。他の例は、ポリオール、例えばポリアルキレングリコール、例えばポリ(C2〜3)アルキレングリコールである。典型的な例は、ポリエチレングリコールである。あるいは、親水性成分は、好ましくは、N−アルキルピロリドン、例えばN−(C1〜14アルキル)ピロリドン、例えばN−メチルピロリドン、トリ(C1〜4アルキル)シトレート、例えばトリエチルシトレート、ジメチルイソソルビド、(C〜C13)アルカノン酸、例えばカプリル酸または炭酸プロピレンを含むことができる。
【0062】
親水性溶媒は、主であるか唯一の成分、例えばアルコール、例えばC1〜4−アルコール、例えばエタノール、あるいは、例えば部分低級エーテルまたは低級アルカノールから選択することができる共成分を含むことができる。好ましい部分エーテルは、例えば、TRANSCUTOL(登録商標)(式C−[O−(CH−OHを有する)、GLYCOFUROL(登録商標)(別名テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)、またはエタノールなどの低級アルカノールである。
【0063】
1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸の組合せ品は、オメガ−3脂肪酸油中での1つまたは複数の抗不整脈薬の溶解性によって助けられている。本発明の一部の実施形態では、単位剤形の医薬組成物は、天然もしくは合成のオメガ−3脂肪酸または薬学的に許容されるそのエステル、誘導体、コンジュゲート体、前駆体もしくは塩、またはそれらの混合物を含む溶媒系に本質的に溶解する1つまたは複数の抗不整脈薬を含む本質的に均質な溶液を含み、1つまたは複数の抗不整脈薬の約10%未満は溶媒系に溶解しない。1つまたは複数の抗不整脈薬をオメガ−3脂肪酸油に実質的に溶解して、実質的に均質な組成物を提供する。好ましくは、本発明のこの態様は、1つまたは複数の抗不整脈薬を溶解するための、多量の可溶化剤を含まない。好ましくは、1つまたは複数の抗不整脈薬は、多量の可溶化剤(オメガ−3脂肪酸以外の)を使わずに医薬組成物中に含有され、実質的に溶解される(すなわち、10%未満、好ましくは5%未満は溶媒系に未溶解のままである)。
【0064】
好ましい実施形態では、1つまたは複数の抗不整脈薬は、完全に溶解する。好ましい実施形態では、それが存在する場合は、オメガ−3脂肪酸以外の可溶化剤は、剤形中の溶媒系の総重量に基づき、50重量%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下の量で存在する。一部の実施形態では、溶媒系は、オメガ−3脂肪酸以外の可溶化剤を含まない。本明細書で用いるように、「溶媒系」は一般に油の形のオメガ−3脂肪酸を含む。他の好ましい実施形態では、他の可溶化剤に対するオメガ−3脂肪酸の重量比は少なくとも0.5対1、より好ましくは少なくとも1対1、より好ましくは少なくとも5対1、最も好ましくは少なくとも10対1である。
【0065】
好ましい実施形態では、オメガ−3脂肪酸は剤形中の溶媒系の総重量に基づき、少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%の量で存在する。ある実施形態では、量は少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%でよい。
【0066】
本質的に均質な溶液を含む剤形は、室温(約23℃から27℃、好ましくは約25℃)および60%相対湿度で少なくとも1カ月間、好ましくは少なくとも6カ月間、より好ましくは少なくとも1年間、最も好ましくは少なくとも2年間安定であるべきである。「安定」により、出願人は、可溶化された1つまたは複数の抗不整脈薬において、例えば10%未満、好ましくは5%未満の量が溶液から沈殿しないこと、および評価可能な程度に化学修飾されないことを意味する。
【0067】
さらに、本質的に均質な溶液を含む剤形は、1つまたは複数の抗不整脈薬を分解から保護するべきである。一部の実施形態は、最初の測定時間(t)における剤形中の1つまたは複数の抗不整脈薬の初期量の少なくとも90%が、室温および60%相対湿度の中で1カ月間保存された後でも維持されるべきである、1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸の単位剤形を含む。
【0068】
組合せ品は、1つまたは複数の抗不整脈薬を、オメガ−3脂肪酸、および所望により親水性溶媒、界面活性剤、他の可溶化剤および/または他の賦形剤と組み合わせることによって、当業者に公知である任意の方法によって製造することができる。
【0069】
本発明の他の実施形態は、オメガ−3脂肪酸中の1つまたは複数の抗不整脈薬の懸濁液を目的とする。一部の実施形態では、懸濁液は、オメガ−3脂肪酸中の1つまたは複数の抗不整脈薬の不活性固体結晶粒子、不活性固体非晶質粒子、またはそれらの混合物を含む。他の実施形態は、オメガ−3脂肪酸中の1つまたは複数の抗不整脈薬の懸濁液を含む医薬組成物を含み、1つまたは複数の抗不整脈薬の一部は、オメガ−3脂肪酸に、または組成物の別の成分に溶解している。例えば、一部の実施形態では、本発明は、オメガ−3脂肪酸および1つまたは複数の抗不整脈薬を含む医薬組成物を提供し、1つまたは複数の抗不整脈薬の約1〜15重量%は溶液中にあり、1つまたは複数の抗不整脈薬の残りの量は懸濁液中に存在する。
【0070】
他の実施形態では、本発明はオメガ−3脂肪酸および1つまたは複数の抗不整脈薬を含む医薬組成物を提供し、1つまたは複数の抗不整脈薬の少なくとも約80重量%、好ましくは約85%、より好ましくは約90%、より好ましくは約95%、最も好ましくは約99%は、懸濁液中の固体粒子として存在する。
【0071】
本発明の別の実施形態は、1つまたは複数の抗不整脈薬でコーティングされた軟質ゼラチンカプセルを目的とする。そのような実施形態では、軟質ゼラチンカプセルの外側に塗布される少なくとも1つのコーティングは、1つまたは複数の抗不整脈薬、ならびに、膜形成材および/または結合剤を、また所望により他の従来の添加剤、例えば滑沢剤、充填剤および抗接着剤などのコーティング材を含む。好ましいコーティング材には、抗酸化剤、可溶化剤、キレート化剤および/または吸収促進剤が含まれる。界面活性剤は、可溶化剤および吸収促進剤の両方の働きをすることができる。
【0072】
コーティングは、パンコーティング、流動床コーティングまたはスプレーコーティングなどの任意の従来の技術によって塗布することができる。コーティングは、懸濁液、スプレー、ダストまたは粉末として塗布することができる。コーティングは、当技術分野で公知の方法に従って、第二の医薬活性物質の即時放出、遅延型/腸溶性放出または持続的放出用に製剤化することができる。従来のコーティング技術は、例えば参照により本明細書に組み込まれている、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(1990)に記載される。
【0073】
即時放出コーティングは、製品の品を向上させるために、ならびに水分障壁、風味、および匂いのマスキングのために通常用いられる。胃媒体中での膜の急速な分解は重要であり、有効な崩壊および溶解に至る。EUDRAGIT RD100(Rohm社)は、そのようなコーティングの例である。それは、水溶性セルロースエーテルとの水不溶性カチオン性メタクリレート共重合体の組合せである。粉末形態では、それは、乾燥して平滑な膜を残す、スプレーが容易な懸濁液中に容易に分散できる。そのような膜は、水性媒体中では、pHおよび膜厚とは無関係な速度で速やかに崩壊する。
【0074】
保護コーティング層(すなわち、シールコート)は、所望により、水または適する有機溶媒中の重合体溶液を用いるパンコーティングもしくは流動床コーティングなどの従来のコーティング技術によって、または水性重合体分散液を用いることによって塗布することができる。保護層に適する材料には、セルロース誘導体、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、エチルセルロース水性分散液などが含まれる。保護コーティング層は、抗酸化剤、キレート剤、着色剤または色素を含むことができる。
【0075】
腸溶コーティング層は、水または適する有機溶媒中の重合体溶液を用いるパンコーティングもしくは流動床コーティングなどの従来のコーティング技術によって、または水性重合体分散液を用いることによって、シールコーティングの有無に関係なくコアに塗布することができる。全ての市販のpH感受性重合体が含まれる。医薬活性物質は、約pH4.5未満の酸性胃環境では放出されないが、この値に限定されるものではない。医薬活性物質は、pH感受性層がより高いpHで溶解するとき;ある遅延時間の経過後;またはユニットが胃を通過した後に利用可能にならなければならない。好ましい遅延時間は、1時間から6時間の範囲である。
【0076】
腸溶性重合体には、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、共重合メタクリル酸/メタクリル酸メチルエステル、例えば、商品名EUDRAGIT L12.5、L100、もしくはEUDRAGIT S12.5、S100で知られる物質、または腸溶コーティングを得るために用いられる類似化合物が含まれる。水性コロイド状重合体の分散液または再分散液を塗布することもでき、その例には、EUDRAGIT L 30D−55、EUDRAGIT L100−55、EUDRAGIT S100、EUDRAGIT調製物4110D(Rohm Pharma社);AQUATERIC、AQUACOAT CPD 30(FMC社);KOLLICOAT MAE 30Dおよび30DP(BASF社);EASTACRYL 30D(Eastman Chemical社)が含まれる。
【0077】
持続的放出膜コートは、ワックスもしくはワックス様物質、脂肪族アルコール、シェラック、ゼイン、水素化植物油、水不溶性セルロース、アクリル酸および/もしくはメタクリル酸の重合体、ならびに当技術分野で公知である消化または分散が遅い任意の他の固体などの水不溶性物質を含むことができる。疎水性コーティング材のための溶媒は、有機または水性でよい。好ましくは、疎水性の重合体は、(i)アルキルセルロース、好ましくはエチルセルロースなどの水不溶性セルロースの重合体;(ii)アクリル重合体;または(iii)それらの混合物から選択される。本発明の他の好ましい実施形態では、制御放出コーティングを含む疎水性物質は、アクリル重合体である。薬学的に許容される任意のアクリル重合体を、本発明のために用いることができる。アクリル重合体は、カチオン性、アニオン性または非イオン性重合体であってもよく、メタクリル酸またはメタクリル酸エステルで形成されるアクリレート、メタクリレートであることができる。適するアクリル重合体の例には、それらに限定されないが、アクリル酸およびメタクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸シアノエチル、メタクリル酸メチル、共重合体、メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸共重合体、メタクリル酸アミノアルキル共重合体、メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミン共重合体、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸)(無水物)、メタクリル酸メチル、ポリメタクリレート、メタクリル酸メチル共重合体、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)共重合体、ポリアクリルアミド、メタクリル酸アミノアルキル共重合体、ポリ(メタクリル酸無水物)、およびメタクリル酸グリシジル共重合体が含まれる。
【0078】
外側コートと軟質ゼラチンシェルとの間に、バリアコートが含まれてもよい。バリアコートは、腸溶性/遅延型放出コート(上のような)、またはバリア(非機能的)層で構成することができ、それは、シェルから外側の医薬活性物質成分へのリーチング、またはその逆を阻止する保護膜の役目を果たす。
【0079】
本発明の一実施形態では、オメガ−3脂肪酸を有する1つまたは複数の抗不整脈薬は、第一および第二の部分に分けられ、1つの部分はコーティング上に置かれ、第二の部分は軟質ゼラチンカプセル内に置かれる。剤形には、例えばバリア層として提供される腸溶コーティングによって、第一の部分の投与と第二の部分の投与との間にラグタイムがもたらされる。他の実施形態では、第一の部分の即時放出があり、その後、第二の部分の遅延型または持続型放出が続く。さらなる実施形態では、第一の部分の遅延型放出があり、その後、第二の部分のボーラスが続く。
【0080】
医薬品産業では、例えば単一の剤形への機能的もしくは非機能的コートの塗布のために、および糖ビーズ上へのAPIの沈着のためにコーティング技術が広く用いられるが、軟質ゼラチンカプセルのコーティングの過程ではいくつかの難題に遭遇することがある。これらの難題は、ゼラチンおよび剤形の特性にしばしば起因する。軟質ゼラチンカプセルは、一般に、油または親水性液体(充填液)に溶解または分散する医薬を含む。軟質ゼラチンカプセルの固有の柔軟性は、カプセルシェル中の可塑剤の存在および残留水分による。したがって、軟質ゼラチンカプセルは、従来の錠剤または硬質ゼラチンカプセルよりも動的な系である。大気水分が、カプセルシェル内または充填液中に浸透することがある。薬剤または充填液はカプセルシェル内へ移動することがあるが、可塑剤または残留水ゼラチンは、充填液中に移動する可能性がある。軟質ゼラチンカプセル中の揮発性成分は、大気中に流出することができる。
【0081】
上記のように、重合体のコーティングは水ベースの溶液、有機ベースの溶液または分散液として一般に塗布され、その場合、重合体を含有する液滴が空気で霧化され、基質上にスプレーされる。溶媒の蒸発および膜形成を促進するために、熱を塗布装置に加えることができる。軟質ゼラチンカプセルの場合、スプレー速度および床温の処理パラメータを制御しなければならない。ゼラチンは水溶性であるので、水ベースの重合物質を速い速度でスプレーすることは、ゼラチンの可溶化およびカプセルの凝集をもたらすことがある。高い床温はカプセルシェルからの残留水の蒸発を引き起こし、カプセルがもろくなる原因になることがある。したがって、本発明は、これらの結果が回避される、軟質ゼラチンカプセルのコーティング法を含む。
【0082】
さらに、軟質ゼラチンカプセルの表面に低薬量の1つまたは複数の抗不整脈薬を高精度で沈着させることには、いくつかの因子が影響を及ぼし得る。沈着精度は、コーティング済みカプセルの質量分散およびコーティングされた1つまたは複数の抗不整脈薬の含有量の分散を含む、コーティング均質性を評価することによって証明する必要がある。
【0083】
本発明は、オメガ−3脂肪酸の混合物を含む軟質ゼラチンカプセルを、コーティング材および1つまたは複数の抗不整脈薬を含むコーティングでコーティングする方法を提供し、その方法は、軟質ゼラチンカプセル上へのコーティング沈着速度を制御することと、コーティング過程の温度を制御して、物理的および化学的に安定しているコーティングされた軟質ゼラチンカプセルを生成することとを含む。
【0084】
他の実施形態では、本発明のコーティングは、硬質ゼラチンカプセルまたは錠剤に塗布することもできる。硬質ゼラチンカプセルは、液体の代わりに、粉末、ビーズまたはマイクロタブレット(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,681,588号と類似した系)を含むことができる。
【0085】
本発明の他の実施形態は、最初の測定時間(t)における剤形中の1つまたは複数の抗不整脈薬の初期量の少なくとも90%が、室温および60%相対湿度の中で1カ月間保存された後でも維持されるはずである、1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸の単位剤形を含む。
【0086】
一部の実施形態では、本発明の製剤は、1つまたは両方が従来の定力価用量で投与される場合、各有効成分の有効性の向上を可能にする。他の実施形態では、本発明の製剤は、各有効成分の有効性を維持しつつまたは向上さえしながら、先行技術の製剤と比較して、1つまたは複数の抗不整脈薬および/またはオメガ−3脂肪酸の投薬量の低減を可能にすることができる。
【0087】
1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸の本組合せは、2つの薬剤だけの任意の予想される組合せ効果または付加効果よりも大きな効果を可能にすることができる。したがって、2つの有効成分の、別々の投与による、または本発明の新規組合せ品を通しての併用治療は、標準の投薬量による有効性の増加を可能にするか、2つの有効成分の低下させた投薬量で有効性の維持を可能にする、有効成分の効果の予想外の増加をもたらすことができる。現実には、薬剤または他の有効成分の改善された生物学的利用率または有効性は、日用量の適宜削減を可能にすることがよく認識されている。いかなる望ましくない副作用も、より低い投薬量および賦形剤(例えば、界面活性剤)の減少の結果として減らすこともできる。
【0088】
本明細書で引用した全ての文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.オメガ−3脂肪酸および適宜可溶化剤を含む単位剤形と、
b.単位剤形上の1つまたは複数の外側のコーティングであって、少なくとも1つの外側コーティングが1つまたは複数の抗不整脈薬を含むコーティングと、
c.適宜、単位剤形と1つまたは複数の外側コーティングとの間の1つまたは複数のバリアコーティングと、
d.適宜、単位剤形上のシールコーティングと
を含む医薬組成物。
【請求項2】
1つまたは複数の外側コーティングが、1つまたは複数の抗不整脈薬の即時放出、遅延型/腸溶性放出または持続的放出用に製剤化される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
1つまたは複数のバリアコーティングが、オメガ−3脂肪酸の腸溶性/遅延型放出用に、または非機能的保護層として製剤化される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
単位剤形が軟質ゼラチンカプセル、硬質ゼラチンカプセルまたは錠剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
1つまたは複数の抗不整脈薬が、キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、リドカイン、メキシレチン、トカイニド、フェニトイン、エンカイニド、フレカイニド、モリシジン、プロパフェノン、エスモロール、プロプラノロール、アセブトロール、ソタロール、メトプロロール、アミオダロン、アジミリド、ブレチリウム、クロフィリウム、ドフェチリド、テジサミル、イブチリド、セマチリド、ドロナデロン、RSD−1235、ソタロール、ベラパミル、ミベフラジル、ジルチアゼム、アデノシン、ジゴキシン、GYKI−16638、CPU−86017、EGIS−7229、KCB−328、L−768673、RWJ−28810、NIP−151、NS−1643、KB−R7943、ATI−2001、AL−275、Cardiostem、KMUP−880708、SLV−316、TY−10835、AZD−1305、CLN−93、PQ−1006、SAR−114646、S−2646、XEN−501、CVT−3619、TRC−30X、AVE−1231、DL−017、PJ−875、ピルメノール、モラシジン、ピルジカイニド、ニフェカラント、デクスソタロール、ランジオロール、ニフェジピン、ATI−2042、AVE−0118、ニベンタン、ストバジン、YM−758、SSR−149744、ロチガプチド、テジサミルおよびテカデノソンから選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
1つまたは複数の抗不整脈薬が、プロパフェノン、フレカイニド、アミオダロン、アジミリド、ドロナデロン、RSD−1235、ソタロール、イブチリド、ドフェチリド、ATI−2042、AVE−0118、ニベンタン、ストバジン、YM−758、SSR−149744、ロチガプチド、テジサミルおよびテカデノソンから選択される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
約0.5mgから約1000mgの1つまたは複数の抗不整脈薬を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
オメガ−3脂肪酸が少なくとも約70%のEPAおよびDHAを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
約0.1gから約10gのオメガ−3脂肪酸を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
コーティング沈着の速度を制御し、コーティング過程の温度を制御しながら1つまたは複数の抗不整脈薬を含む少なくとも1つの外側コーティングを単位剤形上にスプレーして、物理的および化学的に安定しているコーティングされた単位剤形を生成する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
オメガ−3脂肪酸を含む溶媒系中に、1つまたは複数の抗不整脈薬の不均質な懸濁液または本質的に均質な溶液を含む、単位剤形中の医薬組成物。
【請求項12】
オメガ−3脂肪酸が少なくとも約70%のEPAおよびDHAを含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
1つまたは複数の抗不整脈薬を含む本質的に不活性の粒子の不均質な懸濁液を含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
1つまたは複数の抗不整脈薬の少なくとも約80%が懸濁液中に固体粒子として存在する、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
本質的に均質な溶液を含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項16】
1つまたは複数の抗不整脈薬の約10%未満が溶媒系に溶解しない、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
溶媒系が溶媒系の総重量に基づき50重量%以下の量の少なくとも1つの可溶化剤をさらに含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
医薬組成物を室温および60%相対湿度で少なくとも1カ月間保存するときに、溶解している1つまたは複数の抗不整脈薬の10%以下が本質的に均質な溶液から沈殿する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項19】
高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、冠状動脈性心疾患(CHD)、心不全、心臓不整脈、心房細動、発作性心房細動、虚血性認知症、凝固に関係する障害、腎症、認知障害、炎症性疾患、メタボリックシンドローム、血管性疾患、アテローム硬化性疾患および関係する状態、異脂肪血症および関係する状態、腎疾患、総コレステロール(総C)上昇、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)上昇、アポリポタンパク質(Apo B)上昇、低い高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)、コレステロール関連の良性および悪性の腫瘍、心臓の事象および/もしくは心血管系の事象および/もしくは血管の事象および/もしくは症状の治療および/もしくは予防および/もしくは軽減、ならびにコレステロールおよびトリグリセリドレベルの低下、ならびに/またはそのような組合せによる治療が有益である任意の他の状態からなる群から選択される1つまたは複数の状態を有する対象を治療する方法であって、対象に1つまたは複数の抗不整脈薬およびオメガ−3脂肪酸の有効量を投与することを含む方法。

【公表番号】特表2010−506841(P2010−506841A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532459(P2009−532459)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/021963
【国際公開番号】WO2008/063323
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(506219731)リライアント・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】RELIANT PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】