説明

抗体の測定方法

HTLV−1関連疾患の発症ならびに無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定するための試薬が求められている。本発明により、抗gp46−197抗体の測定方法ならびに測定試薬、HTLV−1関連疾患の発症、並びに無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定するための該試薬が提供される。また、本発明により抗gp46−197抗体の測定試薬と公知のHTLV−1に結合する抗体の測定試薬とを組み合わせてなる、HTLV−1関連疾患の発症ならびにHTLV−1感染と、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定するためのキットが提供される。さらに本発明は抗gp46−197抗体の有無を検出するHTLV−1関連疾患の診断薬および発症の有無の判定方法、並びに無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の診断薬および発症の有無の判定方法が提供される。また、本発明により抗gp46−197抗体の測定に用いられる固相が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ヒトTリンパ球好性ウィルス1(以下、HTLV−1と記す)外被の糖蛋白質gp46のAsp197−Leu216の領域に相当するペプチド(以下、gp46−197と記す)を用いることを特徴とする、HTLV−1関連疾患の発症の有無を判定するための、検体中のgp46−197に結合する抗体(以下、抗gp46−197抗体と記す)の測定方法および測定試薬、並びに無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定するための、検体中の抗gp46−197抗体の測定方法ならびに測定試薬に関する。また、本発明は抗gp46−197抗体の測定試薬とHTLV−1に結合する抗体の測定試薬と含有する、HTLV−1関連疾患の発症の有無を判定するためのキット、並びに無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定するためのキットに関する。さらに、本発明は検体中の抗gp46−197抗体を検出することを特徴とする、HTLV−1関連疾患の診断薬および疾患の有無の判定方法、並びに検体中の抗gp46−197抗体を検出することを特徴とする、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の診断薬および疾患の有無の判定方法に関する。また、本発明は、gp46−197が固定化され、HSC70を含まない物質によるブロッキングがなされた固相に関する。
【背景技術】
ヒトTリンパ球好性ウィルス(以下、HTLVと記す)は、レトロウィルスの1種であり、1型と2型の2つの型が存在する。このうち、HTLV−1は、1981年に日沼らによって成人T細胞白血病/リンパ腫(以下、ATLLと記す)の原因ウィルスとして同定された[Proceeding of the National Academy of Sciences of the United States of America,78,6476(1981)、Proceeding of the National Academy of Sciences of the United States of America,79,2031(1982)、Sciences,219,856(1983)]。ヒトにおけるHTLV−1感染は、主に母から子への垂直感染ならびに夫から妻への水平感染であるが、輸血による医原性感染も知られていた。輸血による医原性感染は、1986年から開始された抗HTLV−1(または2)抗体を検査することにより防止された。輸血による医原性感染の疫学的研究から、HTLV−1感染は血球細胞成分が介在していることが知られている。
ウィルス感染において、ウィルスの標的となる血球細胞の受容体の認識およびウィルスと当該受容体との結合に関わる機能は、ウィルスの外被の糖蛋白質に備わっている。HTLV−1外被の糖蛋白質は、61kDaの前駆体糖蛋白質として生合成され、細胞性プロテアーゼにより、Met1−Arg312からなるN末端側の膜表在糖蛋白質gp46と、Ala313−Leu488からなるC末端側の膜貫通糖蛋白質gp21に切断される。gp46とgp21は非共有結合により複合体を形成し、gp21がgp46のアンカー蛋白質となってウィルス表面に存在している。その後、gp46上のLys111−Asp138に該当する領域、gp46上のAsp197−Leu216に該当する領域およびgp21上のCys400−Leu429に該当する領域の3領域がHTLV−1感染に関与する領域であることが解明された[Journal of Virology,70,1564(1996)]。
HTLV−1が関与する疾患(以下、HTLV−1関連疾患と記す)として、ATLL以外に、HTLV−1関連脊髄症(HAM/TSP)、ブドウ膜炎(HU)などが知られている。HTLV−1に感染すると、生体中に抗HTLV−1抗体が生成してくるので、抗HTLV−1抗体を測定することにより、HTLV−1の感染を知ることができる。抗HTLV−1抗体を測定する方法としては、免疫学的手法を用いた測定方法が知られており、ゼラチン粒子凝集法(PA法)、蛍光抗体法(FA法)、間接蛍光抗体法(IF法)、酵素免疫法(ELISA法)、ウェスタンブロット法(WB法)などが知られている。PA法は、操作が簡便で多数の検体を測定できるため、一次スクリーニングにはPA法が用いられる。しかしながら、PA法は血清中の抗体価が低いことによる偽陽性あるいは非特異反応などの問題があり、また、従来のELISA法においては、自己抗体による非特異反応などの問題がある。このような非特異反応は、抗体検出に用いる抗原がHTLV−1感染細胞株の培養物由来の単一ではない抗原を使用していることが原因と考えられている。単一の抗原を使用するELISA法としては、gp46上のPhe175からIle199の領域に相当するペプチド(以下、gp46−175と記す)を用いた酵素免疫学的測定法が報告されており[平成2年度厚生省成人T細胞白血病(ATL)の母子感染防止に関する研究,174]、該方法では、HTLV−1感染献血者の90%以上でgp46−175と反応する抗体が検出可能であるが、全てのHTLV−1感染献血者から該抗体を検出できる方法ではない。
単独の方法でのHTLV−1感染の判定は確実ではなく、一次スクリーニングで陽性と判断された場合でも、FA法、WB法といった二次スクリーニングを行う必要がある。さらに当該被験者がHTLV−1に感染しているという診断を最終的に下すためには、末梢血またはリンパ節細胞のリンパ球ゲノムにHTLV−1プロウィルスDNAが組み込まれていることをサザンブロット法あるいはPCR法を用いて遺伝子的に証明する必要がある。
現在のところ、HTLV−1関連疾患の発症の有無を判定する方法は、臨床的所見に因る方法が主に用いられている。リンパ球ゲノムにHTLV−1プロウィルスDNAが組み込まれていることを検出するPCR法では、無発症のHTLV−1キャリアとHTLV−1関連疾患を発症した患者の電気永動での染色像が異なることから、PCR法はHTLV−1関連疾患の発症の有無を判定するための指標となる可能性があるが、PCR法は煩雑な操作を伴う。
これまでにも、簡便な方法により、HTLV−1関連疾患発症の判定に使用できる因子は広く探索されたが、生体内ウィルス量や家族内発症歴などで傍証が得られているのみでHTLV−1関連疾患発症の判定に使用できる因子は同定されていない。
また、HTLV−1に感染した患者はウィルス感染症、カビによる感染症、カリニ原虫による肺炎、糞線虫症など、健康な人にはほとんどみられない特殊な日和見感染症を発症し易く、HTLV−1以外の感染症との重複感染の危険性が高くなる[Journal of Infectious Disease,184,1114(2001)]。
【発明の開示】
本発明の目的は、gp46−197を用いることを特徴とする、HTLV−1関連疾患の発症の有無を判定するための、検体中の抗gp46−197抗体の測定方法および測定試薬、並びに無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定するための、検体中の抗gp46−197抗体の測定方法ならびに測定試薬を提供することにある。また、本発明の目的は、抗gp46−197抗体の測定試薬とHTLV−1に結合する抗体の測定試薬と含有する、HTLV−1関連疾患の発症の有無を判定するためのキット、並びに無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定するためのキットを提供することにある。さらに、本発明の目的は、検体中の抗gp46−197抗体を検出することを特徴とする、HTLV−1関連疾患の診断薬および発症の有無の判定方法、並びに検体中の抗gp46−197抗体を検出することを特徴とする、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の診断薬および発症の有無の判定方法を提供することにある。また、本発明の目的は、gp46−197が固定化され、HSC70を含まない物質によるブロッキングがなされた固相を提供することにある。
本発明は、下記(1)〜(27)に関する。
(1)HTLV−1外被の糖蛋白質gp46のAsp197−Leu216の領域に相当するペプチド(以下、gp46−197と記す)を用いることを特徴とする、HTLV−1関連疾患の発症の有無を判定するための、検体中のgp46−197に結合する抗体(以下、抗gp46−197抗体と記す)の測定方法。
(2)gp46−197を用いることを特徴とする、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定するための、検体中の抗gp46−197抗体の測定方法。
(3)HTLV−1以外の感染症が、C型肝炎ウィルス(以下、HCVと記す)感染症である(2)に記載の方法。
(4)gp46−197が配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドまたは配列番号1に示されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、付加または置換され、抗gp46−197抗体と結合できるペプチドである(1)〜(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5)抗体の測定方法が免疫学的測定法である(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法。
(6)免疫学的測定法が、gp46−197が固定化された固相を用いる方法である(5)に記載の方法。
(7)免疫学的測定法が、gp46−197が固定化され、71kDaの熱ショック類似蛋白質(以下、HSC70と記す)を含まない物質によるブロッキングがなされた固相を用いる方法である(5)または(6)に記載の方法。
(8)HSC70を含まない物質が合成高分子である(7)に記載の方法。
(9)合成高分子が界面活性剤である(8)に記載の方法。
(10)免疫学的測定法が酵素免疫学的測定法(ELISA法)である(5)〜(9)のいずれか1項に記載の方法。
(11)以下の工程を含むことを特徴とする、(10)に記載の測定方法。
(a)gp46−197を担体に固定化させてgp46−197が固定化された固相を作製する工程
(b)検体と固相上に固定化されたgp46−197とを反応させる工程(1次反応工程)
(c)固相上に固定化されたgp46−197と該ペプチドに結合した抗gp46−197抗体とからなる複合体に、標識化二次抗体を反応させる工程(2次反応工程)
(d)固相上に固定化されたgp46−197と該ペプチドに結合した抗gp46−197抗体とからなる複合体に結合した標識化二次抗体の標識量を測定する工程
(e)抗gp46−197抗体を含有する標準物質を用いて作成した抗gp46−197抗体濃度と標識量との関係を表す検量線と、(d)で測定した測定値とから、検体中の抗gp46−197抗体濃度を決定する工程
(12)gp46−197を用いることを特徴とする、HTLV−1関連疾患の発症の有無を判定するための、検体中の抗gp46−197抗体の測定試薬。
(13)gp46−197を用いることを特徴とする、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定するための、検体中の抗gp46−197抗体の測定試薬。
(14)HTLV−1以外の感染症が、HCV感染症である(13)に記載の試薬。
(15)gp46−197が配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドまたは配列番号1に示されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、付加または置換され、抗gp46−197抗体と結合できるペプチドである(12)〜(14)のいずれか1項に記載の試薬。
(16)抗体の測定法が免疫学的測定法である(12)〜(15)のいずれか1項に記載の試薬。
(17)免疫学的測定法が、gp46−197が固定化された固相を用いる方法である(16)に記載の試薬。
(18)免疫学的測定法が、gp46−197が固定化され、HSC70を含まない物質によるブロッキングがなされた固相を用いる方法である(16)または(17)に記載の試薬。
(19)HSC70を含まない物質が合成高分子である(18)に記載の試薬。
(20)合成高分子が界面活性剤である(18)に記載の試薬。
(21)免疫学的測定法が酵素免疫学的測定法(ELISA法)である(16)〜(20)のいずれか1項に記載の試薬。
(22)標準物質として、抗gp46−197ヒト抗体を含む(12)〜(21)のいずれか1項に記載の抗体の測定試薬。
(23)HTLV−1に結合する抗体の測定試薬と、(12)〜(22)のいずれか1項に記載の試薬とを組み合わせてなる、HTLV−1関連疾患の発症の有無を判定するためのキット。
(24)HTLV−1に結合する抗体の測定試薬と、(12)〜(22)のいずれか1項に記載の試薬とを組み合わせてなる、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定するためのキット。
(25)HTLV−1以外の感染症が、HCV感染症である(24)に記載のキット。
(26)HTLV−1に結合する抗体が、HTLV−1外被の糖蛋白質gp46のPhe175−Ile199の領域に相当するペプチド(以下、gp46−175と記す)に結合する抗体(以下、抗gp46−175抗体と記す)である(23)〜(25)のいずれか1項に記載のキット。
(27)gp46−175が配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドまたは、配列番号1に示されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、付加または置換され、抗gp46−175抗体と結合できるペプチドである(26)に記載の試薬。
(28)gp46−197が固定化され、HSC70を含まない物質によるブロッキングがなされた固相。
(29)HSC70を含まない物質が合成高分子である(28)に記載の固相。
(30)合成高分子が界面活性剤である(29)に記載の固相。
(31)検体中の抗gp46−197抗体を検出することを特徴とする、HTLV−1関連疾患の診断薬。
(32)検体中の抗gp46−197抗体を検出することを特徴とする、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の診断薬。
(33)HTLV−1以外の感染症が、HCV感染症である(32)に記載の診断薬。
(34)検体中の抗gp46−197抗体を検出することを特徴とする、HTLV−1関連疾患の発症の有無の判定方法。
(35)検体中の抗gp46−197抗体を検出することを特徴とする、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無の判定方法。
(36)HTLV−1以外の感染症が、HCV感染症である(35)に記載の判定方法。
以下、本発明を詳細に説明する。本願は、2004年2月6日に出願された日本国特許出願2004−31431号の優先権を主張するものであり、当該特許出願の明細書及び図面に記載される内容を包含する。
本発明は、gp46−197を用いることを特徴とする、HTLV−1関連疾患の発症の有無を判定するための、検体中の抗gp46−197抗体の測定方法、並びに無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定するための、検体中の抗gp46−197抗体の測定方法に関する。
gp46−197は、HTLV−1外被の糖蛋白質gp46のAsp197−Leu216に相当するペプチドであって、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する。
本発明において、配列番号1に示されるアミノ酸配列の1以上のアミノ酸が欠失、付加または置換され、抗gp46−197抗体と結合できる活性を有するペプチドも本発明のgp46−197に包含される。抗gp46−197抗体とは、gp46−197に結合する抗体をいう。
欠失、付加または置換されるアミノ酸の数は1個以上でありその数は特に限定されないが、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci USA,82,488(1985)など)に記載の部位特異的変異導入法などの周知の技術により、欠失、付加または置換できる程度の数であり、例えば、1〜数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
アミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基が欠失、付加または置換されたとは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、付加または置換があることを意味し、欠失、付加または置換が同時に生じてもよく、欠失、付加または置換されるアミノ酸残基は天然型と非天然型とを問わない。天然型アミノ酸残基としては、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、L−システインなどがあげられる。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の好ましい例を示す。以下の同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
本発明で用いられるgp46−197は、該ペプチドのアミノ酸配列をコードするcDNAを含む発現ベクターを大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などに導入、発現させ、組換え型ペプチドとして取得することができる。あるいは、該配列を有する合成ペプチドを用いることもできる。
合成ペプチドにはキャリア蛋白質と架橋するために、システインを末端に付加することもできる。また、合成ペプチドは必要に応じペプチドのN末端はアセチル化、C末端はアミド化する場合もある。
合成ペプチドは一般的な液相、固相ペプチド合成法およびそれらを適宜組み合わせる方法、またはそれらに準じる方法によって合成することができる(The Peptides,Analysis,Synthesis,Biology,Vol.1,1979;Vol.2,1980;Vol.3,1981,Academic Press;ペプチド合成の基礎と実験、丸善、1985;続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、廣川書店、1991;International Journal of Peptide & Protein Research,35,161−214,1990)。
また、合成ペプチドは自動ペプチド合成機を用いて合成できる。ペプチド合成機によるペプチドの合成は、島津製作所製ペプチド合成機、Applied Biosystems,Inc.社(以下、ABI社と表記する)製ペプチド合成機、Advanced ChemTech Inc.社(以下、ACT社と表記する)製ペプチド合成機などの市販のペプチド合成機上で、適当に側鎖を保護したNα−Fmoc−アミノ酸あるいはNα−Boc−アミノ酸などを用い、それぞれの合成プログラムに従って実施することができる。
原料となる保護アミノ酸および担体樹脂は、ABI社、島津製作所、国産化学(株)、Nova Biochem社、渡辺化学(株)、ACT社またはペプチド研究所(株)などから入手することができる。また、原料となる保護アミノ酸、保護有機酸、保護有機アミンは報告されている合成法に従って、あるいはそれに準じて合成することができる(The Peptides,Analysis,Synthesis,Biology,Vol.1,1979;Vol.2,1980;Vol.3,1981,Academic Press;ペプチド合成の基礎と実験、丸善、1985;続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、廣川書店、1991;International Journal of Peptide & Protein Research,35,161−214,1990)。
抗gp46−197抗体は、HTLV−1関連疾患が発症した患者、並びに無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症が発症した患者に特異的に出現が認められるため、検体中の抗gp46−197抗体を測定することはHTLV−1関連疾患の発症の有無の判定、並びに無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定などに有効である。
本発明の検体としては、抗gp46−197抗体を含む可能性がある被験者由来の生体試料であればいかなるものも使用することができる。例えば血液、血漿、血清、唾液、羊水、尿、汗、膵液、精液、母乳などが挙げられ、血漿、血清が好適に用いられる。
本発明の、検体中の抗gp46−197抗体の測定方法としては、gp64−197を用いる測定法であればいかなる方法でもよいが、免疫学的測定法が好ましく用いられる。
免疫学的測定法としては、任意の公知の免疫学的測定方法があげられ、例えば、放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(EIAまたはELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、間接蛍光抗体法(Indirect Fluorescence assay)、発光免疫測定法(Luminescent immunoassay)、物理化学的測定法(TIA、LAPIA、PCIA)、ウェスタンブロッティング法などがあげられるが、ELISA法が好ましく用いられる[単クローン抗体実験マニュアル(講談社サイエンティフィック、1987)、続生化学実験講座5免疫生化学研究法(東京化学同人、1986)]。
放射免疫測定法(RIA)で用いる標識体としては、生化学実験で一般的に用いられる放射性同位元素があげられる。例えば、14C、32P、125Iなどがあげられる。
酵素免疫測定法で用いる標識体としては、任意の公知(石川榮次ら編、酵素免疫測定法、医学書院)の酵素標識を用いることができる。例えば、アルカリフォスファターゼ標識、ペルオキシダーゼ標識、ルシフェラーゼ標識などを用いることができる。
蛍光免疫測定法または間接蛍光抗体法で用いる標識体としては、任意の公知(川生明著、蛍光抗体法、ソフトサイエンス社)の蛍光標識を用いることができる。例えば、FITC標識、RITC標識などを用いることができる。
発光免疫測定法で用いる標識体としては、任意の公知[今井一洋編、生物発光と化学発光、廣川書店;臨床検査42(1998)]の発光体標識を用いることができる。例えば、アクリジニウムエステル標識、ロフィン標識などを用いることができる。
物理化学的測定法(TIA、LAPIA、PCIA)とは、抗原抗体反応により形成した免疫複合体を濁度の上昇などにより検出する方法である。具体的には、抗原と結合する抗体を用いて、抗原と抗体とを結合させることにより形成される凝集体を検出することにより行う。この他の物理化学的測定法としては、毛細管法、一次元免疫拡散法、免疫比濁法あるいはラテックス免疫比濁法などで測定する方法があげられる[臨床検査法提要、金原出版、499(1998)]。
ラテックス免疫比濁法では、例えば、抗体または抗原を感作させた粒径0.1〜1μm程度のポリスチレンラテックスなどの担体を用い、対応する抗原あるいは抗体により抗原抗体反応を起こさせると、反応液中の散乱光は増加し、透過光は減少する。この変化を吸光度あるいは積分球濁度として検出することにより抗原または抗体の量を測定することができる。
本発明の抗gp46−197抗体の免疫学的測定方法としては、固相上での抗原抗体反応を用いる免疫学的測定方法が用いられ、具体的には、固相にgp46−197を公知の方法で担体に固定化させ、固相に固定化させた該ペプチドと検体とを反応させて、固相上に結合した抗gp46−197抗体を任意の方法で検出する方法を用いることができるが、好ましくはELISA法が用いられる。
ELISA法とは、固相に固定化した抗原と抗体とを反応させ、さらに抗原に結合した抗体にペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼなどの酵素標識などを施した二次抗体を反応させた後、酵素標識を適当な方法で測定する方法であり、例えば、競合法、サンドイッチ法[免疫学イラストレイテッド 第5版(南光堂)]があげられる。
サンドイッチ法は、固相に第一の抗原を固定させた後、抗体をトラップさせ、標識した第二の抗体を反応させる方法などがあげられる。
競合法は、例えば上記のサンドイッチ法の抗体と同時に第一の抗原と同じ抗原を添加、反応させる方法であり、抗原の添加時と非添加時の測定値と比較して、抗体を測定する方法である。
以下に、ELISA法による測定を例にあげ、本発明の抗gp46−197抗体の測定方法および該測定方法の利用を詳細に説明する。
1.検体中の抗gp46−197抗体の測定方法
検体中の抗gp46−197抗体の測定は、gp46−197を用いて、以下に示すサンドイッチ法あるいは競合法などにより行うことができる。
測定方法1(サンドイッチ法)
(1)gp46−197を担体に固定化させてgp46−197が固定化された固相を作製する工程;
(2)検体と固相上に固定化されたgp46−197とを反応させる工程(1次反応工程);
(3)固相上に固定化されたgp46−197と該ペプチドに結合した抗gp46−197抗体とからなる複合体に、標識化二次抗体を反応させる工程(2次反応工程);
(4)固相上に固定化されたgp46−197と該ペプチドに結合した抗gp46−197抗体とからなる複合体に結合した標識化二次抗体の標識量を測定する工程;
(5)抗gp46−197抗体を含有する標準物質を用いて作成した抗gp46−197抗体濃度と標識量との関係を表す検量線と、(4)で測定した測定値とから、検体中の抗gp46−197抗体濃度を決定する工程;
からなる測定方法。
測定方法2(競合法−1)
(1)gp46−197を担体に固定化させてgp46−197が固定化された固相を作製する工程;
(2)検体および標識化抗gp46−197抗体と固相上に固定化されたgp46−197とを反応させる工程(一次反応工程);
(3)固相上に固定化されたgp46−197と該ペプチドに結合した標識化抗gp46−197抗体中の標識量を測定する工程;
(4)抗gp46−197抗体を含有する標準物質を用いて作成した抗gp46−197抗体濃度と標識量との関係を表す検量線と、(3)で測定した測定値とから、検体中の抗gp46−197抗体濃度を決定する工程;
からなる測定方法。
測定方法3(競合法−2)
(1)抗gp46−197抗体を担体に固定化させて抗gp46−197抗体が固定化された固相を作製する工程;
(2)検体、標識化gp46−197および固相上に固定化された抗gp46−197抗体を反応させる工程(一次反応工程);
(3)固相上に固定化された抗gp46−197抗体と該抗体に結合した標識化gp46−197とからなる複合体中の標識量を測定する工程;
(4)抗gp46−197抗体を含有する標準物質を用いて作成した抗gp46−197抗体濃度と標識量との関係を表す検量線と、(3)で測定した測定値とから、検体中の抗gp46−197抗体濃度を決定する工程;
からなる測定方法。
上記の測定方法1〜3において用いられる、gp46−197が固定化された固相は、以下の工程を含有する方法により、作製することができる。
(1)担体にgp46−197を固定化する工程;
(2)gp46−197が固定化された担体の表面を、ブロッキングする工程;
(3)ブロッキング後の担体を洗浄する工程。
上記の固相の作製方法において、工程(2)および(3)は、洗浄に使用する洗浄液にブロッキングに用いる物質を含む洗浄液を用いて同時に行ってもよい。
担体としては、gp46−197または抗gp46−197抗体を結合させて保持できるものであればいかなるものも包含されるが、各種高分子素材を用途に合うように成形した素材が用いられる。
具体的には、担体の形状としてはチューブ、ビーズ、プレート、ラテックスなどの微粒子、スティックなどがあげられ、素材としてはポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ゼラチン、アガロース、セルロース、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子素材、ガラス、セラミックス、磁性粒子や金属などがあげられる。
gp46−197または抗gp46−197抗体の固相化の方法としては物理的方法と化学的方法またはこれらの併用などの公知の方法が用いられる。物理的結合としては、例えば物理吸着などがあげられる。化学的結合としては、例えば共有結合、非共有結合などがあげられる。非共有結合としては、例えば静電的結合、水素結合、疎水結合、配位結合などがあげられる。例えば、ポリスチレン製96ウェルの免疫測定用マイクロタープレートにペプチドなどを疎水固相化したものがあげられる。
固定化させるgp46−197または抗gp46−197抗体は、直接gp46−197または抗gp46−197抗体を固相に固定化しても良いし、gp46−197または抗gp46−197抗体を一旦蛋白質などのキャリア物質に結合させてから、固相に固定化しでも良い。gp46−197または抗gp46−197抗体を結合させるキャリア物質としては、例えば、ウシ血清由来アルブミン(以下、BSAと記す)やキーホールリンペットヘモシアン(以下、KLHと記す)などが用いられる。
上記測定法1または3において固定化させる抗gp46−197抗体または測定法2において標識化抗gp46−197抗体の作製に用いられる抗gp46−197抗体としては、gp46−197に結合できる抗体であれば、いかなる抗体でも用いることができ、該抗体はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体、あるいはFab、Fab’、F(ab’)、一本鎖抗体およびジスルフィド安定化抗体などを用いることができる。
上記のgp46−197または抗gp46−197抗体を固定化させた固相は、ブロッキングにより、担体上に残存する官能基を保護する。ブロッキングに用いられる物質としては、通常蛋白質、界面活性剤および市販のブロッキング試薬などが用いられるが、HSC70[Nucleic Acids Res.15(13),5181−5197(1987).]を含まない物質が好ましく用いられる。HSC70を含まない物質としては、例えば、合成高分子があげられ、合成高分子としては、例えば、界面活性剤があげられる。界面活性剤としては、例えば非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などがあげられるが、非イオン性界面活性剤が好適に用いられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、酸アミド型、ポリオキシエチレン誘導体型、脂肪酸エステル型などがあげられる。ポリオキシエチレン誘導体型界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルアミン型、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンアリールエーテル型、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン混合型などがあげられる。脂肪酸エステル型界面活性剤としては、例えば、脂肪酸のポリオキシエチレンエステル型、脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル型などがあげられる。本発明のブロッキングに用いられる物質としては、脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル型の脂肪酸エステル型界面活性剤が好適に用いられ、具体的には、Tween20TMがあげられる。
ブロッキングは、例えば、4〜37℃にて30分間以上反応させることにより行うことができる。
本発明の検体中の抗gp46−197抗体の測定方法において、一次反応工程または二次反応工程における反応条件としては、通常の抗原−抗体反応がなされる条件であればよい。反応温度は抗体の反応性が変化しない範囲であればよく、例えば、4℃〜40℃などの範囲で自由に設定することができる。反応時間は反応温度にしたがって設定することができ、例えば、反応温度が4℃の場合には反応時間は1時間以上であり、反応温度が室温の場合には反応時間は10分〜8時間であることが好ましい。
上記の測定方法において、検体はそのまま用いられるが、検体希釈液などにより希釈されて用いられてもよい。
検出に用いる二次抗体としては、ヒト抗体に結合できる抗体であれば、いかなる抗体でも用いることができ、該抗体はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体、あるいはFab、Fab’、F(ab’)、一本鎖抗体およびジスルフィド安定化抗体などを用いることができる。好ましくはポリクローナル抗体が好ましく用いられる。
検出に用いられる二次抗体、抗gp46−197抗体またはgp46−197は、検出のために標識化して使用される。該ペプチド、該抗体あるいは抗体断片を標識する物質としては、任意の公知(石川榮次ら編、酵素免疫測定法、医学書院)の酵素標識、発光標識、蛍光標識あるいは放射性同位元素などを用いることができ、アビジン、ストレプトアビジンまたはビオチンなども用いることができる。例えば、酵素標識であればアルカリフォスファターゼ標識、ペルオキシダーゼ標識、ルシフェラーゼ標識などを、発光標識であればアクリジニウムエステル標識、ロフィン標識を、蛍光標識であればグリーンフルオレセンスプロテイン標識、レッドフルオレセンスプロテイン標識、フルオレセンス4−イソシアネート(FITC)標識などを、放射性同位元素であれば14C、32P、125Iの放射性同位元素などが用いられる。
検出に用いられる二次抗体、抗gp46−197抗体またはgp46−197を上記の標識により標識化する方法としては、遺伝子工学的に結合させる方法や、化学的に結合させる方法が用いられる。遺伝子工学的に結合させる方法は、文献[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93,974(1996);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93,7826(1996)]記載の方法に従って行うことができる。化学的に結合させる方法は、文献[Science,261,212(1993)]記載の方法に従って行うことができる。また、放射性同位元素を化学的に結合させる方法は、文献[Antibody Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals,3,60(1990);Anticancer Research,11,2003(1991)]記載の方法に従って行うことができる。
上記の測定方法において、反応中の固相は操作の途中で必要に応じて洗浄し、未反応のgp46−197、抗gp46−197、検体、標識化gp46−197および標識化抗gp46−197抗体などを除去してもよい。洗浄は、後述する洗浄液を用いて、公知の免疫学的反応における洗浄方法により行われる。例えば、固相に96穴プレートを使用した場合には、市販のプレート洗浄機などを用いることができる。
標識量を測定する方法としては、吸光度法(比色法)、蛍光法、発光法、放射活性法などがあげられる。標識が酵素である場合、酵素の基質を当該酵素と反応させ、生成した物質を測定することにより、標識量を測定することができる。酵素の基質と当該酵素との反応条件としては、標識に用いた酵素毎に設定することができる。反応温度は当該酵素の反応性が変化しない範囲であればよく、4℃以上の範囲で自由に設定することができる。反応時間は反応温度にしたがって設定することができ、例えば、反応温度が4℃の場合には反応時間は1時間以上であり、反応温度が室温の場合には反応時間は10分〜8時間が好ましい。
酵素がペルオキシダーゼである場合には、例えば吸光度法、蛍光法などによりペルオキシダーゼ量を測定することができる。吸光度法によりペルオキシダーゼ量を測定する方法としては、例えばペルオキシダーゼとその基質である過酸化水素および酸化発色型色原体の組み合わせとを反応させ、反応液の吸光度を分光光度計などで測定する方法などがあげられる。酸化発色型色原体としては、例えばロイコ型色原体、酸化カップリング発色型色原体などがあげられる。
ロイコ型色原体は、過酸化水素およびペルオキシダーゼなどの過酸化活性物質の存在下、単独で色素へ変換される物質である。具体的には、o−フェニレンジアミン、10−N−カルボキシメチルカルバモイル−3,7−ビス(ジメチルアミノ)−10H−フェノチアジン(CCAP)、10−N−メチルカルバモイル−3,7−ビス(ジメチルアミノ)−10H−フェノチアジン(MCDP)、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミンナトリウム塩(DA−64)、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン、ビス〔3−ビス(4−クロロフェニル)メチル−4−ジメチルアミノフェニル〕アミン(BCMA)などがあげられる。
酸化カップリング発色型色原体は、過酸化水素およびペルオキシダーゼなどの過酸化活性物質の存在下、2つの化合物が酸化的カップリングして色素を生成する物質である。2つの化合物の組み合わせとしては、カプラーとアニリン類(トリンダー試薬)との組み合わせ、カプラーとフェノール類との組み合わせなどがあげられる。カプラーとしては、例えば4−アミノアンチピリン(4−AA)、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラジンなどがあげられる。アニリン類としては、N−(3−スルホプロピル)アニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン(TOOS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン(MAOS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(DAOS)、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン(TOPS)、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(HDAOS)、N,N−ジメチル−3−メチルアニリン、N,N−ジ(3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)アニリン、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−(3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アニリン、N−エチル−N−(3−メチルフェニル)−N’−サクシニルエチレンジアミン(EMSE)、N−エチル−N−(3−メチルフェニル)−N’−アセチルエチレンジアミン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−4−フルオロ−3,5−ジメトキシアニリン(F−DAOS)などがあげられる。フェノール類としては、フェノール、4−クロロフェノール、3−メチルフェノール、3−ヒドロキシ−2,4,6−トリヨード安息香酸(HTIB)などがあげられる。
蛍光法によりペルオキシダーゼ量を測定する方法としては、例えばペルオキシダーゼとその基質である過酸化水素および蛍光物質の組み合わせとを反応させ、生成した蛍光の強度を測定する方法などがあげられる。当該蛍光物質としては、例えば4−ヒドロキシフェニル酢酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、クマリンなどがあげられる。
酵素がアルカリ性ホスファターゼである場合には、例えば発光法などによりアルカリ性ホスファターゼ量を測定することができる。発光法によりアルカリ性ホスファターゼ量を測定する方法としては、例えばアルカリ性ホスファターゼとその基質とを反応させ、生成した発光の発光強度を発光強度計などで測定する方法などがあげられる。アルカリ性ホスファターゼの基質としては、例えば3−(2’−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3’−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキセタン・二ナトリウム塩(AMPPD)、2−クロロ−5−{4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]−4−イル}フェニルホスフェート・二ナトリウム塩(CDP−StarTM)、3−{4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]−4−イル}フェニル ホスフェート・二ナトリウム塩(CSPDTM)、[10−メチル−9(10H)−アクリジニルイデン]フェノキシメチルリン酸・二ナトリウム塩(LumigenTM APS−5)などがあげられる。
酵素がβ−D−ガラクトシダーゼである場合には、例えば吸光度法(比色法)などによりβ−D−ガラクトシダーゼ量を測定することかできる。吸光度法(比色法)によりβ−D−ガラクトシダーゼ量を測定する方法としては、例えばβ−D−ガラクトシダーゼとその基質とを反応させ、反応液の吸光度を分光光度計などで測定する方法などがあげられる。β−D−ガラクトシダーゼの基質としては、例えば2−クロロ−4−ニトロフェニルβ−D−ガラクトシドなどがあげられる。
標識に放射性同位元素を用いるRIAで上記測定を行う場合には、放射性同位元素の量は、放射活性をシンチレーションカウンターなどにより測定することにより決定することができる。
検量線は、標準物質として濃度既知の抗gp46−197抗体溶液を数点段階希釈したものを準備し、上記の測定方法を行うことにより得られる。
2.抗gp46−197抗体の測定試薬
本発明の抗gp46−197抗体の測定試薬は、上記の測定方法に用いられ、該方法が実施できる構成要素を含む該抗体の測定試薬の各構成要素と本質的に同一、またはその一部と本質的に同一な物質が含まれていれば、構成または形態が異なっていても、本発明の試薬に包含される。
構成要素としては、gp46−197または抗gp46−197抗体が固定化された固相、並びに検出に用いられる識された二次抗体またはその抗体断片、抗gp46−197抗体またはgp46−197などがあげられ、また必要に応じ、上記の測定方法に用いられる検体の希釈液、反応緩衝液、洗浄液、標識体の検出用試薬、抗gp46−197ヒト抗体の標準物質なども含まれる。
検体の希釈液としては、界面活性剤、緩衝剤などに安定化剤を含む水溶液などがあげられる。検体として全血を用いる場合には、水性溶液は、赤血球などの血球の膨張や収縮による血清中の成分濃度の変化を防止する目的で、塩類、糖類などを含み、緩衝剤などにより等張液に調製されたものであることが好ましい。塩類としては、特に制限はないが、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウムなどのハロゲン化アルカリ金属塩などがあげられる。糖類としては、特に制限はないが、例えば、マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコールなどがあげられる。
反応緩衝液としては、抗原−抗体反応の溶媒条件を提供するものであればいかなるものであってもよい。また、必要に応じて、界面活性剤、緩衝剤、防腐剤、安定化剤、酵素活性調節剤あるいは酵素安定化剤などを添加してもよい。
洗浄液としては、未反応の物質を除去、洗浄でき、抗原−抗体反応に影響を与えなければ、いかなるものも使用することができる。また、必要に応じて、緩衝剤、界面活性剤、防腐剤あるいは安定化剤などを添加してもよい。例えば、0.05%のTween20TMを含むリン酸緩衝液生理食塩水(以下PBSと表す)などが通常使用される。
緩衝剤としては、緩衝能を有するものならば特に限定されないが、pH1〜11の例えば乳酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、フタル酸緩衝剤、リン酸緩衝剤(但し、標識がアルカリ性ホスファターゼである場合を除く)、トリエタノールアミン緩衝剤、ジエタノールアミン緩衝剤、リジン緩衝剤、バルビツール緩衝剤、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝剤、イミダゾール緩衝剤、リンゴ酸緩衝剤、シュウ酸緩衝剤、グリシン緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、グリシン緩衝剤、グッド緩衝剤などがあげられる。グッド緩衝剤としては、例えばMES(2−モルホリノエタンスルホン酸)緩衝剤、ビス−トリス[ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン]緩衝剤、ADA[N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸]緩衝剤、PIPES[ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)]緩衝剤、ACES{2−[N−(2−アセトアミド)アミノ]エタンスルホン酸}緩衝剤、MOPSO(3−モルホリノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)緩衝剤、BES{2−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エタンスルホン酸}緩衝剤、MOPS(3−モルホリノプロパンスルホン酸)緩衝剤、TES〈2−{N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸〉緩衝剤、HEPES[N−(2−ヒドロキシエチル)−N’−(2−スルホエチル)ピペラジン]緩衝剤、DIPSO{3−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸}緩衝剤、TAPSO〈2−ヒドロキシ−3−{[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパンスルホン酸〉緩衝剤、POPSO[ピペラジン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロパン−3−スルホン酸)]緩衝剤、HEPPSO[N−(2−ヒドロキシエチル)−N’−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)ピペラジン]緩衝剤、EPPS[N−(2−ヒドロキシエチル)−N’−(3−スルホプロピル)ピペラジン]緩衝剤、トリシン[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン]緩衝剤、ビシン[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン]緩衝剤、TAPS{3−[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノプロパンスルホン酸}緩衝剤、CHES[2−(N−シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸]緩衝剤、CAPSO[3−(N−シクロヘキシルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸]緩衝剤、CAPS[3−(N−シクロヘキシルアミノ)プロパンスルホン酸]緩衝剤などがあげられる。
界面活性剤としては、上記1.に記載の界面活性剤があげられる。
安定化剤としては、例えば、BSA、ゼラチン、ガゼインなどの蛋白質があげられる。
酵素活性調節剤、酵素安定化剤としては、例えばマグネシウムイオン、マンガンイオン、亜鉛イオンなどの金属イオンがあげられる。試薬中のこれらの金属イオンの含量としては、測定において、酵素が安定化される含量であれば特に制限はない。
防腐剤としては、例えばアジ化ナトリウム、抗生物質などがあげられる。試薬中のこれらの防腐剤の含量としては、測定において、検体中の被測定物質が適切に測定されるような含量であれば特に制限はない。
標識体の検出用試薬としては、上記1.に記載の標識用酵素に応じた発色用基質を含み、該酵素が反応できればいかなるものでもよく、必要に応じて、界面活性剤、緩衝剤、防腐剤、安定化剤、反応促進剤、酵素活性調節剤あるいは酵素安定化剤などを添加してもよい。
抗gp46−197抗体の標準物質としては、HTLV−1関連疾患に発症した患者血清、該患者血清などの生体試料から取得された抗gp46−197ヒト抗体が既知濃度で含まれていればよい。標準物質に用いられる抗体は、該患者血清から、通常の蛋白質の精製方法を組み合わせて取得する方法、gp46−197を用いたアフィニティクロマトグラフィーにより精製して取得する方法、また通常の抗体作製法によりモノクローン化した抗体産生細胞から取得する方法により取得することができる。
3.抗gp46−197抗体の測定方法の利用
本発明の抗gp46−197抗体の測定方法は、HTLV−1関連疾患が発症した患者に特異的に出現が認められる抗gp46−197抗体を測定することができるため、HTLV−1関連疾患の発症の有無を判定するために使用することができる。
また、本発明の抗gp46−197抗体の測定方法は、HTLV−1関連疾患を発症していない無発症HTLV−1キャリアであって、重複感染したHTLV−1以外の感染症を発症した患者に特異的に出現が認められる抗gp46−197体を測定することができるため、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定することができる。
HTLV−1関連疾患としては、HTLV−1感染細胞が感染者に引き起こした疾患であればいかなる疾患も包含される。HTLV−1関連疾患としては、具体的には、血流内やリンパ器官内で発症した成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)、脊髄内で発症したHTLV−1関連脊髄症(HAM/TSP)あるいは眼球内で発症したブドウ膜炎(HU)などがあげられる。
本発明において発症とは、HTLV−1感染細胞が感染者に病状を引き起こすことをいい、臨床的所見は認められていても、認めらていなくてもよい。HTLV−1感染細胞は、患者体内の各所で病状を引き起こす。
HTLV−1以外の感染症としては、具体的にはMRSAなどの黄色ブドウ球菌、緑膿菌、病原性大腸菌、カンジダ菌感染症、サイトメガロウィルス、ヘルペスウィルス、ヒト後天性免疫不全ウィルス、EBウィルスまたはC型肝炎ウィルス(以下、HCVと記す)などのウィルス感染症、カリニ肺炎またはトキソプラズマ原虫などの原虫感染症などがあげられる。
本発明の抗gp46−197抗体の測定試薬は、HTLV−1感染者のスクリーニングに用いられる、HTLV−1に結合する抗体の測定試薬と組み合わせて、キットとして使用することができる。このようなキットは、HTLV−1感染の有無と同時に、HTLV−1関連疾患の発症の有無あるいはHTLV−1と重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定するためにも使用することができる。すなわち、HTLV−1に結合する抗体の測定試薬でHTLV−1に結合する抗体が検出され、抗gp46−197抗体の測定試薬で抗gp46−197抗体が検出されなかった場合、無発症HTLV−1キャリアであると判定される。HTLV−1に結合する抗体の測定試薬でHTLV−1に結合する抗体が検出され、かつ、抗gp46−197抗体の測定試薬で抗gp46−197抗体が検出された場合、HTLV−1関連疾患が発症していると判定されるか、または無発症HTLV−1キャリアがHTLV−1以外の感染症を発症していると判定される。
HTLV−1に結合する抗体の測定試薬としては、HTLV−1に結合する抗体を測定できるいずれの試薬でもよいが、好ましくは免疫学的手法を用いる試薬が用いられる。具体的には、セロディアHTLV−1(富士レビオ社製)、エイテスト(エーザイ社製)、gp46のPhe175−Ile199の領域に相当するペプチド(以下、gp46−175と記す)に結合する抗体(以下、以下、gp46−175抗体と記す)を検出する試薬[平成2年度厚生省成人T細胞白血病(ATL)の母子感染防止に関する研究、174頁]などがあげられる。
本発明のキットに用いられるHTLV−1に結合する抗体の測定試薬として、抗gp46−175抗体の測定試薬を使用する場合には、当該試薬による測定は、上記1.に記載の抗gp46−197抗体の測定方法と同様に行うことができる。
gp46−175は、gp46のN末端から数えて175番目のPhe〜199番目のIleまでに相当するアミノ酸配列を有するペプチドてあり、具体的には配列番号2で示されるアミノ酸配列で示されるペプチドである。
gp46−175の代わりに配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、付加または置換され、gp46−175に結合する抗体と結合できるペプチドを用いることもできる。
欠失、付加または置換されるアミノ酸の数は1個以上でありその数は特に限定されないが、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci USA,82,488(1985)など)に記載の部位特異的変異導入法などの周知の技術により、欠失、付加または置換できる程度の数であり、例えば、1〜数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
本発明のキットとしては、HTLV−1に結合する抗体の測定試薬および本発明の抗gp46−197抗体の測定試薬が各々独立したキットを組み合わせてもよいし、同一のキットに含めたものでもよい。また、同一のキットに含めたものにおいて、各々の測定試薬のうち共通する試薬は共用することができる。共通する試薬としては、例えば、本発明の抗gp46−197抗体の測定試薬に含まれる生体試料の希釈液、反応緩衝液、洗浄液、標識された二次抗体またはその抗体断片、標識体の検出用試薬などがあげられる。また本発明の抗gp46−197抗体の測定試薬などに、測定に適した機器を組み合わせて、キットとしてもよい。
4.HTLV−1関連疾患の診断薬および発症の有無の判定方法、並びに無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の診断薬および発症の有無の判定方法
本発明において、抗gp46−197抗体は、HTLV−1関連疾患が発症した患者で特異的に検出される抗体であるため、該抗体を測定、検出することで、HTLV−1関連疾患の診断薬として使用することができる。
また、抗gp46−197抗体は、無発症HTLV−1キャリアであって、重複感染したHTLV−1以外の感染症を発症した患者で特異的に検出される抗体であるため、該抗体を測定または検出することで、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の診断薬として使用することができる。
HTLV−1関連疾患の診断薬として使用する場合、例えば(1)被験者由来の検体に含まれる抗gp46−197抗体の濃度を測定し、(2)当該濃度がある一定の基準値を超えているか否かを決定することにより、被験者が、臨床的所見が得られていないHTLV−1感染者であっても、HTLV−1関連疾患を発症していると判定することができる。
さらに、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定する場合、例えば(1)被験者由来の検体に含まれる抗gp46−197抗体の濃度を測定し、(2)当該濃度がある一定の基準値を超えているか否かを決定することにより、被験者が、臨床的所見が得られていない無発症HTLV−1キャリアであっても、重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定することができる。
これらの基準値は同一物質を測定している場合であっても、判定する疾患毎に異なっていてもよい。基準値は統計学的に算定することもでき、例えば、健常人などの陰性コントロールでの抗gp46−197抗体濃度の測定値を二倍にした値などが用いられる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を何ら限定するものではない。尚、本実施例においては、下記の試薬類を使用した。また、gp46−197に相当するアミノ酸配列を有するペプチド(gp46−197相当ペプチド)については、自動ペプチド合成磯431A peptide synthesizer(ABIアプライドバイオシステムズ社製)により合成したペプチドを使用した。
炭酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、炭酸水素ナトリウム(相光純薬工業社製)、96穴プレートMaxisorp Immunomodule(Nunc社製)、Tween20(片山化学社製)、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体(MBL社製)、o−フェニレンジアミン(シグマ社製)、クエン酸(和光純薬工業社製)、過酸化水素水(和光純薬工業社製)、硫酸(和光純薬工業社製)
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
gp46−197固定化プレートの作製
以下のようにして、gp46−197が固定化されたプレートを作製した。
凍結乾燥したgp46−197を10mmol/L NaCO−NaHCO緩衝液(pH 9.55)に溶解し、gp46−197の5μg/mL溶液を調製した。当該溶液を、96穴プレートMaxisorp Immunomoduleに、1ウェル当たり100μL分注して4℃にて一晩静置した。各ウェル中の溶液を除去した後、リン酸緩衝化生理食塩水(0.15mol/L 塩化ナトリウムを含有するpH7.2 10mmol/L リン酸緩衝液;以下、PBSと記す)にTween20TMを0.05%含有させた洗浄液(以下、Tween−PBSと記す)を用いてウェルを洗浄した。この洗浄操作は計4回繰り返した。
【実施例2】
検体中の抗gp46−197抗体の測定
検体中の抗gp46−197抗体の測定は以下のように行った。
実施例1で作製したプレートの各ウェルに、50μg/mLのgp46−197を含むPBSで100倍に希釈した血清試料100μLを添加し、37℃にて1時間静置して反応させた(以下、gp46−197存在下での吸収試験と記す)。この時、同時にgp46−197を含まないPBSで100倍に希釈した血清試料100μLをプレートの各ウェルに添加し、37℃にて1時間静置して反応させた基本反応試験を行った(以下、gp46−197非存在下での反応試験と記す)。反応後、Tween−PBSでの洗浄操作を4回繰り返し、各ウェルに残っていた水分を完全に除去した。次に、1μg/mLの西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体および5%ブロックエース(大日本製薬社製)を含むPBS溶液を、各ウェルへ100μL添加し、37℃にて45分間静置した。反応後、Tween−PBSでの洗浄操作を4回繰り返し、各ウェルに残っていた水分を完全に除去した。次に、0.7mg/mLのo−フェニレンジアミンの0.1mmol/L クエン酸緩衝液溶液に1/2容量の0.5%過酸化水素水を添加した発色試薬を1ウェル当たり150μL添加して37℃にて10分間静置した後、発色停止液(2.5mml/L 硫酸)を1ウェル当たり50μL添加し、492nmにおける吸光度を測定した。
【実施例3】
被験者のHTLV−1関連疾患の発症の判定
検体として、(1)無発症HTLV−1キャリア由来の血清、(2)成人T細胞白血病(ATLL)患者由来の血清、(3)HTLV−1関連脊髄症(HAM)患者由来の血清、(4)無発症HTLV−1/HCVキャリア由来の血清および(5)無発症HCVキャリア由来の血清を用いて、実施例2と同様の方法により各検体中の抗gp46−197抗体を測定した。各検体は以下の通りである。
(1)無発症HTLV−1キャリア由来の血清
HTLV−1関連疾患を発症していない被験者の献血により得られた血液の血清について、セロディアHTLV−1(富士レビオ社製)およびHTLV−1感染細胞株による間接蛍光抗体法(indirect fluorescence assay)により陽性を示した検体85例を無発症HTLV−1キャリアとした。
(2)ATLL患者由来の血清
ATLL患者より採取した血清47例を用いた。
(3)HAM患者由来の血清
HAM患者より採取した血清32例を用いた。
(4)無発症HTLV−1キャリア/HCVキャリア由来の血清
C型肝炎発症者の献血により得られた血液の血清について、セロディアHTLV−1(富士レビオ社製)において陽性を示した検体20例を用いた。
(5)無発症HCVキャリア由来の血清
HCV関連疾患を発症していない被験者の献血により得られた血液の血清について、HCV・PHA(ダイナボット社製)において陽性を示した検体70例を用いた。
基本反応試験での吸光度が0.300よりも大きく、さらに、基本反応試験における吸光度に対して吸収反応試験における吸光度が30%以上減少した検体を陽性と判定した。また、各検体における抗gp46−197抗体価については、検体を各倍率に希釈して調製した各希釈検体の吸光度から、吸光度0.5を示す希釈倍率を算出し、その逆数を抗体価とした。なお、抗体保有率(%)は陽性献体数/全体献体数である。
その結果を第1表および第2表に示した。


第1表に示した結果より、ほとんどすべてのHTLV−1関連疾患発症患者において抗gp46−197抗体が見出されることから、抗gp46−197抗体の有無を測定することにより、HTLV−1関連疾患の発症の有無を判定することが可能である。
さらに、第1表の無発症HTLV−1キャリア群と、第2表の無発症HCVキャリアで示されるHCV単独感染群において、それそれ抗gp46−197抗体の保有率が非常に低いのに対して、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHCV発症群においては本抗体の保有率は95%と極めて高い。従って、検体中の抗gp46−197抗体の測定により、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の発症の有無を判定することが可能となる。
また、HTLV−1非感染でHCVが発症した患者では、96例が陰性と判定された。このことから、抗gp46−197抗体を測定する方法はHTLV−1感染に特異性が高く、HTLV−1以外のウィルスのみに感染した患者をHTLV−1感染と判定することがない方法であることが示された。
【実施例4】
抗gp46−197抗体と抗gp46−175抗体との比較
(1)無発症HTLV−1キャリア由来の血清、(2)成人T細胞白血病(ATLL)患者由来の血清、(3)HTLV−1関連脊髄症(HAM/TSP)患者由来の血清中の抗gp46−197抗体および抗gp46−175抗体の抗体の保有率および抗体価を、実施例2および実施例3と同様の方法により算出した。
その結果を第3表に示した。

第3表に示されるように、ATLL患者由来の血清、および、HAM/TSP患者由来の血清中では、抗gp46−197抗体の抗体保有率が高いが、無発症HTLV−1キャリア由来の血清中の抗gp46−197抗体の抗体保有率は低い。従って、抗gp46−197抗体を測定することにより、HTLV−1関連疾患の発症の有無を判定できる。
更に、無発症HTLV−1キャリアおよびATLL患者の血清中における抗gp46−197抗体および抗gp46−175抗体の抗体保有率を比較した結果、無発症HTLV−1キャリアでは、抗gp46−175抗体は陽性であり、抗gp46−197抗体は陰性であった。一方、ATLL患者では抗gp46−175抗体および抗gp46−197抗体は陽性であった。従って、血清における上記の二種類の抗体の有無から被験者を、1.HTLV−1に非感染である、2.無発症HTLV−1キャリアである、および3.HTLV−1関連疾患を発症しているという3つの分類に分類することが可能となる。
また、HTLV−1に感染していない96例の健常人の血清を用いて、同様の検討を行ったところ、いずれの血清でも抗gp46−197抗体は検出されなかった。
【実施例5】
抗gp46−197抗体測定法の検証
実施例1で作製した96穴プレートの洗浄後に通常のELISA法で利用される蛋白質によるブロッキングを試みた。
洗浄後の96穴プレートに0.5%ミルクカゼイン、0.05%Tween20、10%非働化ヤギ血清を含むブロッキング試薬を1ウェル当たり100μL分注し、室温で放置して、ブロッキング操作を行った。実施例1に記載の洗浄操作を行った後、実施例2に記載の方法で陰性コントロールである健常人の血清、および抗gp46−197抗体を含有することが実施例3において確認されたATLL患者由来の血清を測定した。その結果、両検体ともに発色が認められなかった。また、ブロッキング試薬としてウシ血清アルブミン、ゼラチンなどの通常用いられるウシ由来の物質を用いてブロッキングを行ったが、発色は認められなかった。このように通常用いられるブロッキング操作を加えた方法では、抗gp46−197抗体を測定することはできず、実施例1〜4に記載のTween−PBSでの洗浄操作のみを行った96穴プレートにおいてのみ、抗gp46−197抗体を測定することができた。
gp46−197とHSC70蛋白質は結合できる[Journal of Virology,72,535(1998)]ため、ブロッキング試薬に含まれるHSC70がATLL患者由来の血清における発色喪失の原因であると考えられた。そこで、精製標品のHSC70を用いて、HSC70が抗gp46−197抗体の測定に及ぼす影響を調べるため、以下の検討を行った。
実施例1で作製した96穴プレートに精製標品のHSC70の希釈系列を反応させ、添加し、37℃にて1時間ウェルを静置した。Tween−PBSでの洗浄操作を4回繰り返し、各ウェルに残っていた水分を完全に除去した。次に、0.5μg/mLのラット抗HSC70抗体(Stress Gen社製)を含むPBS溶液を、各ウェルへ100μL添加し、37℃にて1時間静置した。反応後、Tween−PBSでの洗浄操作を4回繰り返し、各ウェルに残っていた水分を完全に除去した。次に、0.5μg/mLの西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗ラットIgG抗体および10%ブロックエース(大日本製薬社製)を含むPBS溶液を、各ウェルへ100μL添加し、37℃にて1時間静置した。反応後、Tween−PBSでの洗浄操作を4回繰り返し、各ウェルに残っていた水分を完全に除去した。次に、0.7mg/mLのo−フェニレンジアミンの0.1mmol/L クエン酸緩衝液溶液に1/2容量の0.5%過酸化水素水を添加した発色試薬を1ウェル当たり150μL添加して37℃にて10分間静置した後、発色停止液(2.5mmol/L 硫酸)を1ウェル当たり50μL添加し、492nmにおける吸光度を測定した。
上記の操作により、HSC70の濃度依存的な発色が確認されたことから、本ELISA法により、HSC70が抗gp46−197抗体の測定に影響を与えることが明らかとなった。従って、抗gp46−197抗体の測定において、固相のブロッキング溶液または洗浄液、並びにgp46−197と抗gp46−197抗体との反応時に用いられる反応緩衝液には、HSC70を含むと考えられる、通常用いられるウシ由来のウシ血清アルブミン、ゼラチンまたはミルクカゼインなどを用いることができないことが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HTLV−1外被の糖蛋白質gp46のAsp197−Leu216の領域に相当するペプチド(以下、gp46−197と記す)を用いることを特徴とする、HTLV−1関連疾患の発症の有無を判定するための、検体中のgp46−197に結合する抗体(以下、抗gp46−197抗体と記す)の測定方法。
【請求項2】
gp46−197を用いることを特徴とする、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定するための、検体中の抗gp46−197抗体の測定方法。
【請求項3】
HTLV−1以外の感染症が、C型肝炎ウィルス(以下、HCVと記す)感染症である請求の範囲2に記載の方法。
【請求項4】
gp46−197が配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドまたは配列番号1に示されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、付加または置換され、抗gp46−197抗体と結合できるペプチドである請求の範囲1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
抗体の測定方法が免疫学的測定法である請求の範囲1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
免疫学的測定法が、gp46−197が固定化された固相を用いる方法である請求の範囲5に記載の方法。
【請求項7】
免疫学的測定法が、gp46−197が固定化され、71kDaの熱ショック類似蛋白質(以下、HSC70と記す)を含まない物質によるブロッキングがなされた固相を用いる方法である請求の範囲5または6に記載の方法。
【請求項8】
HSC70を含まない物質が合成高分子である請求の範囲7に記載の方法。
【請求項9】
合成高分子が界面活性剤である請求の範囲8に記載の方法。
【請求項10】
免疫学的測定法が酵素免疫学的測定法(ELISA法)である請求の範囲5〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
以下の工程を含むことを特徴とする、請求の範囲10に記載の測定方法。
(a)gp46−197を担体に固定化させてgp46−197が固定化された固相を作製する工程
(b)検体と固相上に固定化されたgp46−197とを反応させる工程(1次反応工程)
(c)固相上に固定化されたgp46−197と該ペプチドに結合した抗gp46−197抗体とからなる複合体に、標識化二次抗体を反応させる工程(2次反応工程)
(d)固相上に固定化されたgp46−197と該ペプチドに結合した抗gp46−197抗体とからなる複合体に結合した標識化二次抗体の標識量を測定する工程
(e)抗gp46−197抗体を含有する標準物質を用いて作成した抗gp46−197抗体濃度と標識量との関係を表す検量線と、(d)で測定した測定値とから、検体中の抗gp46−197抗体濃度を決定する工程
【請求項12】
gp46−197を用いることを特徴とする、HTLV−1関連疾患の発症の有無を判定するための、検体中の抗gp46−197抗体の測定試薬。
【請求項13】
gp46−197を用いることを特徴とする、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定するための、検体中の抗gp46−197抗体の測定試薬。
【請求項14】
HTLV−1以外の感染症が、HCV感染症である請求の範囲13に記載の試薬。
【請求項15】
gp46−197が配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドまたは配列番号1に示されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、付加または置換され、抗gp46−197抗体と結合できるペプチドである請求の範囲12〜14のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項16】
抗体の測定法が免疫学的測定法である請求の範囲12〜15のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項17】
免疫学的測定法が、gp46−197が固定化された固相を用いる方法である請求の範囲16に記載の試薬。
【請求項18】
免疫学的測定法が、gp46−197が固定化され、HSC70を含まない物質によるブロッキングがなされた固相を用いる方法である請求の範囲16または17に記載の試薬。
【請求項19】
HSC70を含まない物質が合成高分子である請求の範囲18に記載の試薬。
【請求項20】
合成高分子が界面活性剤である請求の範囲18に記載の試薬。
【請求項21】
免疫学的測定法が酵素免疫学的測定法(ELISA法)である請求の範囲16〜20のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項22】
標準物質として、抗gp46−197ヒト抗体を含む請求の範囲12〜21のいずれか1項に記載の抗体の測定試薬。
【請求項23】
HTLV−1に結合する抗体の測定試薬と、請求の範囲12〜22のいずれか1項に記載の試薬とを組み合わせてなる、HTLV−1関連疾患の発症の有無を判定するためのキット。
【請求項24】
HTLV−1に結合する抗体の測定試薬と、請求の範囲12〜22のいずれか1項に記載の試薬とを組み合わせてなる、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無を判定するためのキット。
【請求項25】
HTLV−1以外の感染症が、HCV感染症である請求の範囲24に記載のキット。
【請求項26】
HTLV−1に結合する抗体が、HTLV−1外被の糖蛋白質gp46のPhe175−Ile199の領域に相当するペプチド(以下、gp46−175と記す)に結合する抗体(以下、抗gp46−175抗体と記す)である請求の範囲23〜25のいずれか1項に記載のキット。
【請求項27】
gp46−175が配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドまたは、配列番号1に示されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、付加または置換され、抗gp46−175抗体と結合できるペプチドである請求の範囲26に記載の試薬。
【請求項28】
gp46−197が固定化され、HSC70を含まない物質によるブロッキングがなされた固相。
【請求項29】
HSC70を含まない物質が合成高分子である請求の範囲28に記載の固相。
【請求項30】
合成高分子が界面活性剤である請求の範囲29に記載の固相。
【請求項31】
検体中の抗gp46−197抗体を検出することを特徴とする、HTLV−1関連疾患の診断薬。
【請求項32】
検体中の抗gp46−197抗体を検出することを特徴とする、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の診断薬。
【請求項33】
HTLV−1以外の感染症が、HCV感染症である請求の範囲32に記載の診断薬。
【請求項34】
検体中の抗gp46−197抗体を検出することを特徴とする、HTLV−1関連疾患の発症の有無の判定方法。
【請求項35】
検体中の抗gp46−197抗体を検出することを特徴とする、無発症HTLV−1キャリアが重複感染したHTLV−1以外の感染症の発症の有無の判定方法。
【請求項36】
HTLV−1以外の感染症が、HCV感染症である請求の範囲35に記載の判定方法。

【国際公開番号】WO2005/076002
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517833(P2005−517833)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002103
【国際出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000162478)協和メデックス株式会社 (42)
【出願人】(503161109)
【Fターム(参考)】