説明

抗体を選別するためのベクター

【課題】抗原非存在下でのVHとVLの相互作用が小さく、抗原存在下で会合定数が大きく変化するようなVHとVLを選択することを目的として、VHとVLを発現・精製することなく簡便かつ効率的にVH/VL間の相互作用を調べる方法を提供すること。
【解決手段】宿主細胞に導入した際には、抗体可変領域のVH断片又はVL断片の一方を含むタンパク質を宿主細胞外に分泌することができ、抗体可変領域のVH断片又はVL断片の他方を提示するファージを宿主細胞外に分泌することができることを特徴とする、ベクター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンサンドイッチ免疫測定に適した抗体を選別するためのベクター、上記ベクターの製造方法、上記ベクターを用いたオープンサンドイッチ免疫測定に適した抗体の選別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オープンサンドイッチ法とは、抗原を特異的に認識する抗体のVH領域ポリペプチドおよびVL領域ポリペプチドを調製し、一方のポリペプチドをレポーター分子で標識して標識化ポリペプチドとし、他方のポリペプチドを固相に固定して固定化ポリペプチドとし、抗原含有試料および標識化ポリペプチドを固相に接触させ、固定化ポリペプチドに結合した標識化ポリペプチドのレポーター分子の量を測定する方法である。オープンサンドイッチ法は、VHとVLが抗原存在下において会合定数が増加する現象を利用した免疫測定法であるため、抗原非存在下でのVHとVLの相互作用が小さく、抗原存在下で会合定数が大きく変化することが必須条件となる。
【0003】
従来、VH/VL間の相互作用を調べる方法としては、VHとVLを別々に発現後、各々のタンパク質を精製し、ELISAやゲルろ過により解析する手法(非特許文献1)や、scFvのCDスペクトルから推測する手法(非特許文献2)や、同様にscFvを発現・精製後、scFvの熱安定性、変性剤耐性、抗原結合kinetics、発現量などから推測する手法(非特許文献3−6)が報告されている。しかし、これらはタンパク質の発現・精製が必要であり、手間と時間のかかる方法であった。
【0004】
VHとVLを発現・精製する事なくVH/VL間の相互作用を調べる方法として最近、split-Fvを呼ばれる方法が報告されている(特許文献1)。この方法は、発現ベクター中に含まれるアンバー(終止)コドンをアンバーサプレッサー機能を示さない大腸菌と示す大腸菌とを使い分けることにより、VH、VLをファージのコートタンパクp VIIとpIXの各々に融合タンパク質として発現させる方法と、VHまたはVLの片方をファージのコートタンパクp VIIまたはpIXの融合タンパク質として、残りのVHまたはVLを分泌発現させる方法とを使い分けるものである。この方法は、同一ベクターで大腸菌の種類を変えることにより、VH/VL複合体の抗原に対する親和性評価と抗原非存在下でのVH/VL間相互作用評価が可能である。しかしこの方法は、ファージの2つのコートタンパクを利用するためファージが不安定になり、VH/VLがファージ上に安定に発現されなかったり、コートタンパクp VIIとpIX の融合タンパク質として発現したVH/VL間の距離が相互作用するのに充分でなく抗原に対する親和性が低下するといった問題点を有していた。
【0005】
【非特許文献1】Y. Chen et al, The Journal of Immunology, 163巻, 4663-4670 (1999)
【非特許文献2】C. Horne et al, The Journal of Immunology, 129巻, 660-664 (1982)
【非特許文献3】A. Wo¨rn et al, Biochemistry, 37巻, 13120-13127 (1998)
【非特許文献4】P. H. Tan et al, Biophysical Journal, 75巻, 1473-1482 (1998)
【非特許文献5】M. B. Khalifa et al, Journal of Molecular Recognition, 13巻, 127-139 (2000)
【非特許文献6】J. Chatellier et al, Journal of Molecular Biology, 264巻, 1-6 (1996)
【特許文献1】国際公開WO2004 / 016782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、抗原非存在下でのVHとVLの相互作用が小さく、抗原存在下で会合定数が大きく変化するようなVHとVLを選択することを目的として、VHとVLを発現・精製することなく簡便かつ効率的にVH/VL間の相互作用を調べる方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、宿主細胞に導入した際には、抗体可変領域のVH断片又はVL断片の一方を含むタンパク質を宿主細胞外に分泌することができ、抗体可変領域のVH断片又はVL断片の他方を提示するファージを宿主細胞外に分泌することができることを特徴とするベクターを構築することによって、VHとVLを発現・精製することなく簡便かつ効率的にVH/VL間の相互作用を調べることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、(1)下記(2)及び(3)のDNA配列によりコードされるポリペプチドを細胞外に分泌するためのDNA配列、(2)抗体可変領域のVH断片又はVL断片の一方をコードするDNA配列及び(3)タグタンパク質をコードするDNA配列、を含むDNA領域、並びに(4)下記(5)のDNA配列によりコードされるポリペプチドをファージ上に提示するための蛋白質をコードするDNA配列、(5)抗体可変領域のVH断片又はVL断片の他方をコードするDNA配列、及び(6)ファージのコートタンパク質をコードするDNA配列、を含むDNA領域を含むベクターであって、当該ベクターを宿主細胞に導入した際には、抗体可変領域のVH断片又はVL断片の一方を含むタンパク質を宿主細胞外に分泌することができ、抗体可変領域のVH断片又はVL断片の他方を提示するファージを宿主細胞外に分泌することができることを特徴とする、ベクターが提供される。
【0009】
好ましくは、前記ベクターは大腸菌のファージベクター又はファージミドベクターである。
好ましくは、上記(1)のDNA配列が、リボソーム結合部位及びgIIIシグナル配列をコードするDNA配列である。
好ましくは、上記(2)のDNA配列は、抗体可変領域のVL断片をコードするDNA配列であり、上記(5)のDNA配列が、抗体可変領域のVH断片をコードするDNA配列である。
【0010】
好ましくは、上記(3)のDNA配列が、マルトース結合性タンパク質をコードするDNA配列である。
好ましくは、上記(4)のDNA配列が、リボソーム結合部位及びOmpAシグナル配列をコードするDNA配列である。
好ましくは、上記(6)のDNA配列が、gIIIタンパク質をコードするDNA配列である。
【0011】
本発明によればさらに、(A)抗体の抗体可変領域のVH断片及びVL断片を含むポリペプチドを細胞外に分泌またはファージのコートタンパクの融合タンパク質として発現可能なDNA配列、及びVH断片をコードするDNA配列とVL断片をコードするDNA配列の間に挿入されている一対の組換え酵素の認識配列を含む第一ベクターと、(B)一対の組換え酵素の認識配列、及び上記一対の組換え酵素の認識配列の間に挿入された終止コドンを含む第二ベクターとに組換え酵素を作用させて、第一ベクターと第二ベクターとの間で遺伝子組み換えを起こさせることを含む、宿主細胞に導入した際に、抗体可変領域のVH断片又はVL断片の一方を含むタンパク質を宿主細胞外に分泌することができ、抗体可変領域のVH断片又はVL断片の他方を提示するファージを宿主細胞外に分泌することができるベクターの製造方法が提供される。
【0012】
好ましくは、第一ベクターが、一本鎖可変領域(scFv)ポリペプチドを分泌発現可能な配列を含んでいる。
好ましくは、第一ベクターが、一本鎖可変領域(scFv)をファージのコートタンパクの融合タンパク質として発現可能な配列を含んでいる。
好ましくは、第一ベクターが、Fabポリペプチドを分泌発現可能な配列を含んでいる。
好ましくは、第一ベクターが、Fabをファージのコートタンパクの融合タンパク質として発現可能な配列を含んでいる。
【0013】
好ましくは、第一ベクターが、F(ab')2ポリペプチドを分泌発現可能な配列を含んでいる。
好ましくは、第一ベクターが、IgGポリペプチドを分泌発現可能な配列を含んでいる。
好ましくは、第一ベクターが、(1)VLポリペプチド配列、(2)組換えサイト配列、(3)VHポリペプチド配列、(4)ファージのコートタンパク配列を、(1)−(2)−(2)−(3)−(4)または(3)−(2)−(2)−(1)−(4)の順に含んでいる。
【0014】
好ましくは、第二のベクターが、タグタンパク質をコードするDNA配列を含んでいる。
好ましくは、組換え酵素がCre recombinaseである。
好ましくは、組換えがloxPサイト間で起こる。
【0015】
本発明によればさらに、(i)上記した本発明のベクター、又は上記の本発明の方法で製造されたベクターを宿主細胞に導入する工程、(ii)宿主細胞外に分泌された抗体可変領域のVH断片又はVL断片の一方を含むタンパク質及び抗体可変領域のVH断片又はVL断片の他方を提示するファージを回収する工程、(iii)(ii)で回収された抗体可変領域のVH断片又はVL断片の一方を含むタンパク質及び抗体可変領域のVH断片又はVL断片の他方を提示するファージに抗原を接触させて、VH断片、VL断片及び抗原の複合体を検出する工程を含む、VHポリペプチドとVLポリペプチド間の相互作用を評価する方法が提供される。
【0016】
好ましくは、抗原が存在することによりVH断片とVL断片の間の相互作用が変化する抗体可変領域を選択する。
好ましくは、scFvの混合物中から相互作用の少ないVHポリペプチドとVLポリペプチドを選択する。
好ましくは、scFvの混合物中から目的抗原に対する親和性の高いscFv混合物を選択した後に、相互作用の少ないVHポリペプチドとVLポリペプチドを選択する。
好ましくは、標識された抗ファージ抗体を用いた免疫測定法によりVH断片、VL断片及び抗原の複合体を検出する。
【発明の効果】
【0017】
オープンサンドイッチ法とは、VHとVLが抗原存在下において会合定数が増加する現象を利用した免疫測定法である。例えば、VL鎖を固定化したプレートに酵素標識したVHと抗原を加えることで、VL/VH/抗原から成る三者複合体が、抗原濃度に依存して形成されることから、ELISAが可能となる。オープンサンドイッチ法によるアッセイ系を構築するためには、抗原の有無でVH/VL間相互作用が大きく変化する抗体が必要となる。これまで抗体可変領域ドメインであるVH/VL間相互作用を調べるには、抗体産生細胞よりVHおよびVL遺伝子を単離して、発現ベクターに組みこみ、VHおよびVL蛋白質を発現、精製する必要があり、大変手間と時間(数ヶ月)がかかっていた。また、これまでにsplitFv法と呼ばれる方法が提案されているが、この方法はファージの2つのコートタンパクを利用するためファージが不安定になり、VH/VLがファージ上に安定に発現されなかったり、コートタンパクp VIIとpIX の融合タンパク質として発現したVH/VL間の距離が相互作用するのに充分でなく抗原に対する親和性が低下するといった問題点を有していた。これらに対し、本発明によれば、ファージ上への発現低下の問題を回避し、scFvからVL-MBPおよびVH提示ファージの共発現系への簡便な変換が可能となり、VH/VL相互作用を迅速に調べることができる。本発明の方法によれば、オープンサンドイッチELISA法に用いる目的により適した抗体の選択が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明のベクターは、(1)下記(2)及び(3)のDNA配列によりコードされるペプチドを細胞外に分泌するためのDNA配列、(2)抗体可変領域のVH断片又はVL断片の一方をコードするDNA配列及び(3)タグタンパク質をコードするDNA配列、を含むDNA領域、並びに(4)下記(5)のDNA配列によりコードされるペプチドをファージ上に提示するための蛋白質をコードするDNA配列、(5)抗体可変領域のVH断片又はVL断片の他方をコードするDNA配列、及び(6)ファージのコートタンパク質をコードするDNA配列、を含むDNA領域を含むベクターであって、当該ベクターを宿主細胞に導入した際には、抗体可変領域のVH断片又はVL断片の一方を含むタンパク質を宿主細胞外に分泌することができ、抗体可変領域のVH断片又はVL断片の他方を提示するファージを宿主細胞外に分泌することができることを特徴とするベクターである。
【0019】
上記(1)のDNA配列は、ペプチドを細胞外に分泌するためのDNA配列であれば特に限定されないが、例えば、リボソーム結合部位及びgIIIシグナル配列、
リボソーム結合部位及びOmpAシグナル配列,
リボソーム結合部位及びpelBシグナル配列
などをコードするDNA配列を挙げることができる。
【0020】
上記(3)におけるタグタンパク質としては、大腸菌において分泌生産が可能で蛋白質の安定化に寄与し,かつある所定の物質と親和性を有するタンパク質が好ましく、例えば、マルトース結合性タンパク質、カルモジュリン、抗体軽鎖定常領域(CL)などを挙げることができる。
【0021】
上記(4)のDNA配列は、ペプチドをファージ上に提示するための蛋白質をコードするDNA配列であれば特に限定されないが、例えば、リボソーム結合部位及びOmpAシグナル配列、リボソーム結合部位及びpelBシグナル配列、リボソーム結合部位及びgIIIシグナル配列などをコードするDNA配列を挙げることができる。
【0022】
上記(6)におけるファージのコートタンパク質は特に限定されないが、例えば、gIIIタンパク質、gIIIタンパク質のC末ドメイン(D3)、gIXタンパク質などを挙げることができる。
【0023】
上記した本発明のベクターは、具体的には、(A)抗体の抗体可変領域のVH断片及びVL断片を含むポリペプチドを細胞外に分泌またはファージのコートタンパクの融合タンパク質として発現可能なDNA配列、及びVH断片をコードするDNA配列とVL断片をコードするDNA配列の間に挿入されている一対の組換え酵素の認識配列を含む第一ベクターと、(B)一対の組換え酵素の認識配列、及び上記一対の組換え酵素の認識配列の間に挿入された終止コドンを含む第二ベクターとに組換え酵素を作用させて、第一ベクターと第二ベクターとの間で遺伝子組み換えを起こさせることによって構築することができる。
【0024】
第一ベクターが含むことができる配列としては、一本鎖可変領域(scFv)ペプチドを分泌発現可能な配列、一本鎖可変領域(scFv)をファージのコートタンパクの融合タンパク質として発現可能な配列、Fabペプチドを分泌発現可能な配列、Fabをファージのコートタンパクの融合タンパク質として発現可能な配列、F(ab')2ペプチドを分泌発現可能な配列、IgGペプチドを分泌発現可能な配列などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。第一ベクターの構成としては、(1)VLペプチド配列、(2)組換えサイト配列、(3)VHペプチド配列、(4)ファージのコートタンパク配列を、(1)−(2)−(2)−(3)−(4)または(3)−(2)−(2)−(1)−(4)の順に含むことができる、
【0025】
本発明においては、ファージミドベクターを使用することは好適である。ファージミドベクターは繊維状ファージゲノムの一部を含むようにして作製されたプラスミドであるために、ファージミドベクターを用いて大腸菌を形質転換した後、更にヘルパーファージに感染させる必要がある。これによって粒子形成のためのコート蛋白質が供給されて、ヘルパーファージ粒子とファージミド粒子が混合したファージが得られる。またより簡便な方法として、必要なDNA配列を含むファージベクターを利用することもまた可能である。ファージベクターの場合には、当該ファージベクターを大腸菌に感染させることによって直接ファージを得ることが可能であり、ヘルパーファージを使用する必要はない。
【0026】
本発明においては、上記した本発明のベクターを宿主細胞に導入し、宿主細胞外に分泌された抗体可変領域のVH断片又はVL断片の一方を含むタンパク質及び抗体可変領域のVH断片又はVL断片の他方を提示するファージを回収し、回収された抗体可変領域のVH断片又はVL断片の一方を含むタンパク質及び抗体可変領域のVH断片又はVL断片の他方を提示するファージに抗原を接触させて、VH断片、VL断片及び抗原の複合体を検出することによって、VHポリペプチドとVLポリペプチド間の相互作用を評価することができる。VH断片、VL断片及び抗原の複合体検出は、以下に説明するオープンサンドイッチイムノアッセイで行われる。
【0027】
蛋白質性の抗原は、サンドイッチ法と呼ばれる2種類の抗体を使う方法で測定されることが一般的である。サンドイッチ法は、抗原に同時に結合できる2種類の抗体を用意する必要があるが、特異性と感度が高いという利点を有している。しかし、分子量1000以下の小分子は小さすぎて、二種類の抗体でサンドイッチすることが困難である。即ち、分子量1000以下の小分子は抗原決定基が一つしかない単価抗原であるため、二種類の抗体でサンドイッチすることが困難となる。そのためこのような小分子は通常、競合法と呼ばれる方法で測定される。しかし競合法は、条件設定が難しく、感度が低い、測定操作にかなりの注意深さが必要、といった難点を有している。
【0028】
このような欠点のない、小分子でも非競合的に測定できる方法として、本発明者らは、オープンサンドイッチイムノアッセイという免疫測定法を報告している。この方法は基本的に、「抗体の可変領域(抗原結合部位)は抗原がないと不安定だが、抗原が結合すると安定化される」という原理を利用した方法である。抗体はH鎖とL鎖の2本の鎖で構成されるが、それぞれの抗原結合部位は VH, VLと呼ばれこれらが抗原を認識できる最小単位である可変領域Fvを構成する。最近ではファージ提示法などを用いて容易にVHとVLをコードする遺伝子断片をクローニングすることができるが、VHとVLの間の結合は非共有的で多くの場合不安定であり、これらをペプチドで結んで一本鎖抗体(scFv)として使われる場合がほとんどである。
【0029】
本発明者らは、この不安定なFvが、抗原が結合すると安定化する場合があり、それを利用すれば抗原濃度を簡便かつ迅速に、さらに感度よく測定できることを見出した。すなわち、VL断片をプレートに固定化しておき、これにVH断片にファージあるいはアルカリフォスファターゼを結合させたものと抗原を含むサンプルとを混ぜて一回洗浄した後にプレートに固定化されたファージあるいは酵素の量を測定すれば、それば抗原量と非常によい相関を示すことを見いだしたのである(UEDA, H. et al. Nature Biotechnol. 14, 1714-1718(1996))。
【0030】
さらに、本発明者らは、手持ちの抗体がサープンサンドイッチ法に向いているか向いていないかを簡便に調べるための方法を開発した(Aburatani, T. et al., Anal. Chem. 75,
4057-4064 (2003);上田 宏. 小分子を非競合的に測定可能な新しい免疫測定法 Bio Medical Quick Review Nets No.027 (2004);及び上田 宏. "競合法によらない小分子の免疫測定". 生化学, 76(7), 670-674 (2004))。市販のファージ抗体システムに良く似たこの方法(split Fvシステム)を用いれば、手持ちのハイブリドーマの抗体可変領域の抗原結合能とVH/VL相互作用の強弱の両方を、ファージを作る大腸菌を変えることで手軽に調べることができ、またより良い性質の抗体の選択ができる。
【0031】
本発明においては、抗体可変領域のVH断片又はVL断片の一方を含むタンパク質及び抗体可変領域のVH断片又はVL断片の他方を提示するファージに抗原を接触させて、VH断片、VL断片及び抗原の複合体を検出することによって、VHポリペプチドとVLポリペプチド間の相互作用を評価することができる。これにより、抗原によってVH/VL間の相互作用が大きく変化するクローンを迅速にスクリーニングすることができる。VH/VL間の相互作用が弱い抗体断片においては、担体上に固定化されたVL断片(又はVH断片)とファージ上に提示されたVH断片(又はVL断片)が直接に結合することは少なく、そのために担体上ファージが結合することはほとんどない。しかし、一部の抗体では抗原が存在する場合にはVH断片とVL断片が共に抗原と結合し、複合体が安定化するために、抗原を介してファージが担体に結合することができる。よって、担体に結合しているファージの量を、例えば抗ファージ抗体を用いて定量することにより、抗原の存在によりファージ結合量が大きく変化する抗体断片を選択することができる。その様な抗体断片はVH/VL間の相互作用が抗原の結合により大きく変化すると考えられ、オープンサンドイッチELISAを行うのに際して好適である。なお、抗原の存在により抗体可変領域のVH断片とVL断片の間の相互作用が2倍以上変化するならば、そのような抗体断片は本目的のために使用することが可能である。
【0032】
本発明の方法によって得られた、抗原非存在下でVH/VL相互作用が弱く、かつ抗原存在下でVH/VL相互作用が強い抗体を用いて、例えば以下のような測定キットを作製することが可能である。
(1)VL断片をビオチン・アビジン相互作用を利用して、または物理的吸着を利用してチューブあるいはマイクロプレートに固定化する。
(2)VH断片とレポーター酵素(例えばアルカリフォスファターゼ)との融合蛋白質を作製しておき、これをサンプルと共にVLを固定化した固相と一定時間接触させる。
(3)洗浄後、固相化された酵素活性を測定し、サンプル中の抗原濃度の指標とする。
【0033】
また、以下の測定キットを作製することも可能である。
(1)VH断片とVL断片を互いに吸収・蛍光スペクトル重なる二種類の蛍光色素(例えばフルオレセインとローダミン)で標識しておく。
(2)これらをサンプルと混合し、5分程度おいて短波長側の蛍光色素のみを励起光で励起する。二種類の蛍光色素由来の蛍光強度を測定することで、VH/VLの会合による蛍光エネルギー移動現象を検出することができる。二つの蛍光強度の比をサンプル中の抗原濃度の指標とする。この方法では前の方法に比べて、短時間で洗浄操作なしに抗原濃度が測定できる。
【0034】
また、以下の測定キットを作製することもまた可能である。
(1)VH断片とVL断片を、それぞれ単体では活性がないか、低いが近接させると活性の増大する二種類の酵素断片(例えばLacZ△αおよびLacZ△ω)との融合蛋白質として大腸菌で発現させ、精製しておく。
(2)二種類の融合蛋白質とサンプルを混合し、一定時間おいたのち基質(例えば発光基質Galacton Plus)と混合し、融合蛋白質複合体の活性を測定することでサンプル中の抗原濃度の指標とする。この方法では、前の2つの方法に比べてはるかに高感度に抗原濃度を測定することが可能であり、また洗浄操作を含まない(Yokozeki et al.,Anal.Chem.74(11),2500−2504,2002)。
【0035】
上記方法によって測定する対象としては、第一に臨床検査における血清中の特定蛋白質、ペプチド、各種ホルモン、麻薬あるいは治療用薬物等が考えられる。また、環境水中のダイオキシン、ビスフェノールA、ノニルフェノール等の毒性が疑われる化学物資や農薬類もまた本発明によって測定される対象となる。
【0036】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
すべての実験において、milliQ (ミリポア)にて精製した水を用いた。以下、milliQ水を表記する。通常の試薬は特に表記のあるもの以外は、シグマ(St. Louis, MO, USA)、ナカライテスク(京都)、和光純薬(大阪)、関東化学(東京)のものを使用した。オリゴDNAはテキサスジェノミクスジャパン(東京)、またはINVITROGENにて合成した。
Polymerase chain reaction (PCR)には、T3000 thermocycler (Biometra,Goettingen, Germany)を、DNA配列決定には、CEQTM 8000 Genetic Analysis System (BECKMAN COULTER, 東京)を使用した。
【0038】
大腸菌TG-1, XL10-Goldを使用した。その遺伝子型は以下の通り。
TG-1: supE, hsd (5, thi, ( (lac-proAB)/F' [traD36, proAB+, lacIq, lacZ ( M15]
XL10-Gold: Tetr, ((mcrA)183, ((mcrCB-hsdSMR-mrr)173, endA1, supE44, thi-1, recA1, gyrA96, relA1, lac, The, [F', proAB, laclqZ(M15, Tn10(Tetr), Tn5(Kanr), Amy]
【0039】
大腸菌の培養には適切な抗生物質を含むYT、2YT、LB培地を用いた。これらの組成を以下に示す。
YT培地: (1 Lあたり) 8 g bacto trypton, 5 g bacto yeast extract, 5 g NaCl
2YT培地: (1 Lあたり) 16 g bacto trypton, 10 g bacto yeast extract, 5 g NaCl
LB培地: (1 Lあたり) 10 g bacto trypton, 5 g bacto yeast extract, 10 g NaCl
SOC培地: (1 Lあたり) 20 g bacto trypton, 5g bacto yeast extract, 0.5 g NaCl, 0.2 mi 5N NaOH, 20 ml 1 M Glucose, 10 ml 1 M MgCl2, 10 ml 1 M MgSO4
【0040】
実施例1:scFv(HyHEL10)/pMKの作製
従来のscFvでは15アミノ酸残基の(G4S)3リンカーが用いられることが多いのに対し、本発明で用いるscFv/pMK(図1)は組換えのためのloxPサイトを2つ含むため、45アミノ酸残基と長い上に、含まれるアミノ酸の種類も多い。よってこのloxPリンカーによって抗原結合能が失われることがないかどうかを確認する必要がある。また、作製したscFv/pMKとOS/pMI間で目的通りの組換えが起き、さらにその組換え産物を用いてOS-ELISAが可能であることを確認しなければならない。これらを確かめるため、scFv/pMKにOS-ELISAに適した抗リゾチーム抗体(HyHEL-10)のVH,VL遺伝子をコードするscFv(HyHEL10)/pMKを以下の通り作製した(図1)。また、scFv(HyHEL10)/pMKのVHをOS-ELISAに適さない抗リゾチーム抗体(D1.3)のVH遺伝子と置き換えたscFv(D13HyHEL)/pMKQCを参照実験用に作製した(1.5)。
【0041】
(1.1)loxP-linkerの作製
以下の合成オリゴDNAをアニーリングさせて、loxPリンカー配列(図2)を作製した。
Lox-rev: 5'-CACAGTGCACAGGTCCAAGCGGCCGCGataacttcgtatagtatacattatacgaagttatCCGGTGGAGGCAATTTAAATGGCGGT-3'(配列番号1)
(下線部は5'端から順にApaLIサイト、NotIサイト、SwaIサイト。小文字はloxP 511サイト)
lox-for:
5'-CCATGGCCGGCTGGGCCGataacttcgtataatgtatgctatacgaagttatGCTGCCACCGCCATTTAAATTGCCTCCA-3' (配列番号2)
(下線部は5'端から順にSfiIサイト、SwaIサイト。小文字はloxP WTサイト)
【0042】
100 pmolずつのlox-rev, lox-for、0.2 mM dNTPs、10μl Ex-Taq Buffer(宝バイオ)、5 unit Ex-Taq(宝バイオ)を混合して100μlの反応溶液とし、95℃、5分の後に、95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 30秒を30サイクル繰り返した後、72℃で5分間反応させた。このPCR反応溶液を1μg/mlのエチジウムブロマイド(EtBr)を含む 1.5%アガロースゲルを用いTAE buffer(40 mM Tris, 40 mM CH3COOH, 1 mM EDTA)中にて電気泳動を行った。目的サイズのバンドを切り出し、QIAquick gel extraction kit(QIAGEN)にて精製してloxP-linkerを作製した。
【0043】
loxP-linker 2μgを1μl ApaLI(New England Biolbs)、5μl NEBuffer2 (New England Biolbs)、1 mg/ml BSA 5μlと混合してmilliQ水で50μlにし、37℃で2時間反応させた。その後、SfiI 1μlを足して50℃にて一晩静置し、制限酵素処理をおこなった。これを再び1.5%アガロースゲルにて電気泳動を行い、目的サイズのバンドを切り出し、QIAGEN gel extraction kitにて精製した。
【0044】
(1.2)loxP-linkerのベクターへの組み込み
いくつかの制限酵素サイト等が挿入されたpCANTAB3由来ファージミドベクターpCGJ(C. G. Jakobsen et al., Molecular Immunology, 41, 941-953, 2004)のApaLI/SfiIサイト間にloxP-linkerを挿入した。上記と同様の方法でApaLI/SfiI処理、精製を行ったpCGJ 4μl、loxP-linker 4μlを1μl T4 DNA ligase、1μl T4 DNA ligase Bufferと混合し、16℃ にて30 分間ライゲーションを行った。このライゲーション溶液からエタノール沈殿によりDNAを回収し、5μl milliQ水にて再懸濁し、エレクトロポレーション法により大腸菌TG-1を形質転換させた。形質転換株を100μg/ml アンピシリン(Amp)、1%グルコース(Glu)を含むYT寒天培地にて37℃一晩培養し、生成したコロニーについてM13RVとM13back-115の2種類のプライマーでコロニーPCRを行い、インサート断片の挿入を確認した。M13RVとM13back-115の配列は以下の通り。
【0045】
M13RV: 5'-CAGGAAACAGCTATGAC-3' (配列番号3)
M13back-115: 5'-TGAATTTTCTGTATGAGGTTTTG-3' (配列番号4)
【0046】
20 pmolずつのM13RV、M13back-115、0.2 mM dNTPs、2μl Ex-Taq Buffer、1 unit Ex-Taqを混合して20μlの反応溶液とし、95℃、5分の後に、95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 1分を30サイクル繰り返した後、72℃で5分間反応させた。このPCR反応溶液5μlに1μl NotI、1μl NEBuffer3、1 mg/ml BSA 1μl、milliQ水 1μlを加え、37℃で反応させた。目的インサートが増幅された場合のみNotIでの切断が確認される。1μg/mlのエチジウムブロマイド(EtBr)を含む 1.5%アガロースゲルにて電気泳動を行い、目的のバンドパターンを示したクローンを100μg/ml Amp、1% Gluを含むYT培地(YTAG) 4 mlに植菌した。37℃にて一晩培養した菌体よりQIAquick miniprep kit(QIAGEN)にてプラスミドDNAを抽出し、DNA配列を確認し、loxP-linker/pMKとした。
【0047】
(1.3)loxP-linker/pMKへのHyHEL10遺伝子の組み込み
以下のプライマーを用いてHyHEL10のVH, VL各断片を増幅した。
MVK-BACK12: 5'-CTCCTGTGCACTTGACATTGWGCTSACYCARTCT-3'(配列番号5)
(下線部はApaLIサイト)
MVL-FOR2: 5'-GATGTGCGGCCGCMCSTWBNABHKYCAVYYTDG-3'(配列番号6)
(下線部はNotIサイト)
VH36-60back1: 5'-GAGGTGCAGGAGTCAGGACCTAGCCTC-3'(配列番号7)
VH36backSfi: 5'-CGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCGAGGTGCAGGAGTC-3'(配列番号8)
(下線部はSfiIサイト)
JH-3SgrA1: 5'-ATGACACCGGTGGCCGCTCTCGCTCGAGACAGTGACCAGAGTCCC-3'(配列番号9)
(下線部はSgrAIサイト)
【0048】
まずはHyHEL10のVH断片を増幅した。50 pmolずつのVH36-60back1, JH-3SgrA1、鋳型であるHyHEL10/pCANTAB 100 ng、0.2 mM dNTPs、10μl Ex-Taq Buffer、5 unit Ex-Taqを混合して100μlの反応溶液とし、95℃、5分の後に、95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 30秒を30サイクル繰り返した後、72℃で5分間反応させた。VHフラグメントの5'末端にSfiIサイトを付加するため、このPCR反応溶液1μlを鋳型としVH38backSfi, JH-3SgrA1を用いて同様にPCR反応を行った。1.5%アガロースゲルにて電気泳動を行い、目的サイズのバンドを切り出し、QIAquick gel extraction kitにて精製してVH (HyHEL10)を作製した。このDNA断片約1μgを1μl SgrAI(New England Biolbs)、5μl NEBuffer4 (New England Biolbs)、1 mg/ml BSA 5μlと混合してmilliQ水で50μlにし、37℃で2時間反応させた。その後、SfiI 1μlを足して50℃にて一晩静置し、制限酵素処理をおこなった。これを再び1.5%アガロースゲルにて電気泳動を行い、目的サイズのバンドを切り出し、QIAquick gel extraction kitにて精製した。このインサート溶液5μl、同様にSgrAI/ SfiI処理したloxP-linker/pMK 5μlを10μl ligation high ver2 (Toyobo)と混合し、16℃ 30分間ライゲーション反応を行った。エタノール沈殿を行って脱塩した後、エレクトロポレーション法によりTG-1を形質転換した。形質転換株を100μg/ml Amp、1% Gluを含むYT寒天培地にて37℃一晩培養し、生成したコロニーについてM13RVとpHENseqの2種類のプライマーでのコロニーPCRによりインサート断片の挿入を確認した。pHENseqの配列は以下の通り。
pHENseq: 5'-CTATGCGGCCCCATTCA-3' (配列番号10)
【0049】
10 pmolずつのM13RV、pHENseq、0.2 mM dNTPs、1μl Ex-Taq Buffer、0.5 unit Ex-Taqを混合して10μlの反応溶液とし、95℃、5分の後に、95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 1分を30サイクル繰り返した後、72℃で5分間反応させた。このPCR反応溶液を1μg/ml EtBrを含む 1.5%アガロースゲルにて電気泳動を行い、目的のバンドパターンを示したクローンをYTAG 4 mlに植菌した。37℃にて一晩培養した菌体よりQIAquick miniprep kitにてプラスミドDNAを抽出し、VH (HyHEL10)/pMKを得た。
【0050】
VL断片についても同様にして作製した。MVK-BACK12とMVL-FOR2プライマーを用い、プライマー以外は上記と同条件でVL (HyHEL10)を増幅、精製した。このVL (HyHEL10)とVH (HyHEL10)/pMKをApaLI/NotIにて制限酵素処理し、同様にライゲーション、TG-1の形質転換を行い、VL (HyHEL10)断片が挿入されたクローンをコロニーPCRによって選択した。選択されたクローンを培養後、抽出したプラスミドのDNA配列を確認して、scFv(HyHEL10)/pMKを得た。
【0051】
(1.4)scFv(HyHEL10)/pMKのSgrA Iサイト近傍配列の修復
scFv(HyHEL10)/pMKのSgrAIサイト由来のアミノ酸にはCys残基が含まれるために、抗体のフォールディングを妨げる懸念がある。そこで、クイックチェンジ法によってアミノ酸変異をおこなった。
15 pmolずつの2種類のプライマー、1 ng scFv(HyHEL10)/pMK、0.2 mM dNTPs、2.5 unit PfuUltra High-Fidelity DNA Polymerase (ストラタジーン)、5μl 10×PfuUltra reaction Buffer(ストラタジーン)を混合して50μlの反応溶液とし95℃、1分の後に、95℃ 30秒、55 ℃ 30秒、68℃ 7分を18サイクル繰り返した。用いたプライマーの配列は以下に示す。
SgrA1(TGA)rev: 5'-TCGAGCGAGAGCGGCGCCACCGGTGCCCATCATCATCACCAT-3' (配列番号11)
SgrA1(TGA)for: 5'-ATGGTGATGATGATGGGCACCGGTGGCGCCGCTCTCGCTCGA-3' (配列番号12)
【0052】
この反応液に1μl DpnIを加え、37℃で1時間処理してメチル化された鋳型DNAを分解し、5μlを用いてXL-10 Gold 100μlを形質転換した。これをYTAG寒天培地にて37℃で一晩培養し、翌日生成したコロニーを竹串でつついて2YTAG 4 mlに植菌し、37℃で一晩培養した。培養液からプラスミドを抽出した後、DNA配列を確認してscFv(HyHEL10)/pMKQCを得た。
【0053】
(1.5)scFv(D13HyHEL)/pMKQCの作製
OS-ELISAに適した性質を持つVH/VLペアを有するscFv(HyHEL10)/pMKQCに対して、参照用実験としてOS-ELISAに適していない性質を持つVH/VLペアを有するscFv(D13HyHEL)/pMKQCを作製した。
以下のプライマーを用いてD1.3のVH及びHyHEL10のVL断片を増幅した。
【0054】
VH3: CTTTCTATGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCCAGGTRCAGCTGAAGGAGTC(配列番号13)
(下線部はSfiIサイト)
JH2: ACTGCTCGAGACTGTGAGAGTGGTGCC(配列番号14)
(下線部はXhoIサイト)
MVK-BACK12: 5'-CTCCTGTGCACTTGACATTGWGCTSACYCARTCT-3' (配列番号15)
(下線部はApaLIサイト)
JK1/2: 5'-TTTCTCGTGCGGCCGCACGTTTKATTTCCAGCTTGG-3' (配列番号16)
(下線部はNotIサイト)
【0055】
25 pmolずつのVH3, JH2、鋳型であるpKST2/D1.3 100 ng、0.2 mM dNTPs、10μl Ex-Taq Buffer、5 unit Ex-Taqを混合して50μlの反応溶液とし、95℃、1分の後に、95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 30秒を25サイクル繰り返した後、72℃で2分間反応させた。このPCR反応溶液から、WizardR SV Gel and PCR Clean-Up System (Promega)にて精製してD1.3 VH遺伝子を得た。
【0056】
HyHEL10 VHの一部とVL全長を欠損したpMKQC(dummy)のSfiI/XhoIサイト間にD1.3 VH遺伝子を挿入した。上記と同様の方法でSfiI/XhoI処理、精製を行ったpMKQCと、D1.3 VH遺伝子のライゲーション反応をRapid DNA Dephos & Ligation kit (Roche)により行った。このライゲーション溶液1μl を用いてケミカルコンピテントセルXL10-Goldを形質転換させた。形質転換株を100μg/ml アンピシリン(Amp)、1% グルコース(Glu)を含むYT寒天培地にて37℃一晩培養し、生成したコロニーについてM13RVとpHENseqの2種類のプライマーでコロニーPCRを行い、インサート断片の挿入を確認した。M13RVとpHENseqの配列は以下の通り。
【0057】
M13RV: 5'-CAGGAAACAGCTATGAC-3' (配列番号17)
pHENseq: 5'- CTATGCGGCCCCATTCA -3' (配列番号18)
【0058】
7.5 pmolずつのM13RV、pHENseq、7.5μl Premix Taq(Ex TaqTM Version)(宝バイオ)を混合して15μlの反応溶液とし、95℃、1分の後に、95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 1分を25サイクル繰り返した後、72℃で1分間反応させた。このPCR反応溶液は、1μg/mlのエチジウムブロマイド(EtBr)を含む 1.5%アガロースゲルを用いた電気泳動による分析を行った。目的のバンドパターンを示したクローンを100μg/ml Amp、1% Gluを含むYT培地(YTAG) 4 mlに植菌した。37℃にて一晩培養した菌体よりWizardR Plus Minipreps DNA Purification kit (Promega)にてプラスミドDNAを抽出し、DNA配列を確認し、D13VH/pMKとした。
【0059】
D13VH/pMK 約2μgを1μl ApaLI(New England Biolbs)、5μl NEBuffer2 (New England Biolbs)、1 mg/ml BSA 5μlと混合してmilliQ水で50μlにし、37℃で2時間反応させた。その後、SfiI 1μlを足して50℃にて一晩静置し、制限酵素処理をおこなった。これを再び1.5%アガロースゲルにて電気泳動を行い、目的サイズのバンドを切り出し、WizardR Plus Minipreps DNA Purification kitにて精製した。
【0060】
続いて、D13VH/pMKに挿入するHyHEL10のVL遺伝子を以下のように作製した。 25 pmolずつのMVK-BACK12, JK1/2、鋳型であるHyHEL10/pCANTAB 100 ng、0.2 mM dNTPs、10μl Ex-Taq Buffer、5 unit Ex-Taqを混合して50μlの反応溶液とし、95℃、1分の後に、95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 30秒を25サイクル繰り返した後、72℃で2分間反応させた。このPCR反応溶液から、WizardR SV Gel and PCR Clean-Up Systemにて精製してHyHEL10 VL遺伝子を得た。
【0061】
D13VH/pMKのSfiI/XhoIサイト間にHyHEL10 VL遺伝子を挿入した。上記と同様の方法でSfiI/XhoI処理、精製を行ったD13VH/pMKと、HyHEL10 VL遺伝子のライゲーション反応をRapid DNA Dephos & Ligation kit (Roche)により行った。このライゲーション溶液1μl を用いてケミカルコンピテントセルXL10-Goldを形質転換させた。形質転換株を100μg/ml アンピシリン(Amp)、1% グルコース(Glu)を含むYT寒天培地にて37℃一晩培養し、生成したコロニーについてM13RVとpHENseqの2種類のプライマーでコロニーPCRを行い、インサート断片の挿入を上記と同様に確認した。目的のバンドパターンを示したクローンを100μg/ml Amp、1% Gluを含むYT培地(YTAG) 4 mlに植菌した。37℃にて一晩培養した菌体よりWizardR Plus Minipreps DNA Purification kitにてプラスミドDNAを抽出し、DNA配列を確認し、scFv(D13HyHEL)/pMKQCとした。
【0062】
実施例2:OS/pMIの作製
scFv/pMKと異なる抗生物質耐性(クロラムフェニコール(Cm)耐性)をもち、pUCおよびpBR等のベクターと同一菌内での共存が可能なpACYC複製起点をもつベクターpSTV28(宝バイオ)を基にして、2つのloxPサイト間にMBP、RBSおよび開始コドン、OmpAシグナルを持つドナーベクターOS/pMIを作製した。作製方法の流れを図3に示す。
【0063】
まず、lacZ (遺伝子の上流にSfi IとNot IサイトをPCRで導入した。Sfi I およびSwa I, loxP 511配列を含むリバースプライマーとNot Iを含むフォワードプライマーで増幅したMBP遺伝子を、Sfi IとNot Iサイトを利用してpSTV28に組み込んだ。その後、lacZ (遺伝子の下流にハイブリダイズし、それぞれ上流方向と下流方向に伸長する2つのプライマーを用いて、ベクター全長を増幅した。上流方向へのプライマーにはRBSおよび開始コドン、OmpAシグナル配列が含まれ、下流方向へのプライマーにはloxP WT配列が含まれている。増幅した直鎖状ベクターをセルフライゲーションすることでOS/pMIを得た。
【0064】
(2.1)pSTV28へのSfiI, NotIサイトの導入
末端にSfiI, NotIサイトをそれぞれ含むプライマーを用いてベクター全長をPCR法にて増幅することにより、lacZ遺伝子の上流にSfi IとNot Iサイトを導入した。使用したプライマー配列は以下の通りである。
【0065】
pSTV-Not1: 5'-AAAAAAAGCGGCCGCTTACACAGGAAACAGCTATGACC-3' (配列番号19)
(下線部はNotIサイト)
pSTV-Sfi1: 5'-AAAAAAAAGGCCCACACGGCCGCCTGGGGTGCCTAATGAGTG-3' (配列番号20)
(下線部はSfiIサイト)
【0066】
15 pmolずつのpSTV-Not1, pSTV-Sfi1、鋳型であるpSTV28 50 ng、0.2 mM dNTPs、5μl 10(Buffer for Pfu(Stratagene)、1 unit Pfu turbo(Stratagene)を混合して50μlの反応溶液とし、94℃、30秒の後に、98℃ 10秒、68℃ 30秒、72℃ 10分を20サイクル繰り返した。このPCR産物に1μl DpnI(Promega)を加えて37℃で1時間反応後、WizardR SV Gel and PCR Clean-Up Systemにて精製した。このDNA断片約1μgを1μl NotI、5μl NEBuffer3、1 mg/ml BSA 5μlと混合してmilliQ水で50μlにし、37℃で2時間反応後、精製を行った。その後さらにSfiI 1μl、5μl NEBuffer3、1 mg/ml BSA 5μlと混合してmilliQ水で50μlの系で50℃にて一晩反応後、アガロースゲルにて電気泳動、目的サイズのバンドの精製を行った。
【0067】
(2.2)MBPインサートの作製とベクターへの組み込み
マルトース結合タンパク質(MBP)遺伝子の作製とベクターへの組み込みを行った。pMAL-p2 (New England Biolbs)を鋳型として、MBP-N、MBP-Cの2種類のプライマーを用いてMBP遺伝子を作製した。その際、MBP-Nの5'末端にloxP 511, SwaI, SfiIサイトを、MBP-Cの5'末端にNotIサイト、Stop codon、Avi tagを付加することにより、MBPの両末端にこれらの配列が挿入された遺伝子を作製した。
【0068】
MBP-N: 5'-AAAAAAAAGGCCGTGTGGGCCTTTATTTAAATTTTataacttcgtatagtatacattatacgaagttatCCAAAATCGAAGAAGGTAAACTG-3' (配列番号21)
(下線部は5'末端から順にSfiI, SwaIサイト。小文字はloxP 511サイト)
MBP-C:
5'-AAAAAAAGCGGCCGCAAAttattcatgccattcaatcttctgagcttcaaaaatatcattaagaccAGTCTGCGCGTCTTTCAGGGC-3' (配列番号22)
(下線部はNotIサイト。小文字はAvi tag, stop codonの相補鎖)
【0069】
50 pmolずつのMBP-N, MBP-C、鋳型であるpMAL-p2 100 ng、0.2 mM dNTPs、10μl Ex-Taq Buffer、5 unit Ex-Taqを混合して100μlの反応溶液とし、95℃、30秒の後に、95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 60秒を30サイクル繰り返した後、72℃で2分間反応させた。これを(2.1)と同様に精製、NotI/SfiI処理、再度精製を行った。
このMBP遺伝子と(2.1)にて作製したベクターDNAを Ligation high ver2によってつなぎ、XL10-Goldケミカルコンピテントセルを形質転換した。形質転換株を34μg/ml Cm を含むYT寒天培地にて37℃一晩培養し、シングルコロニーを34μg/ml Cm を含むYT培地(YTC) 4 mlにてさらに一晩培養した菌体よりWizardR Plus Minipreps DNA Purification kitにてプラスミドDNAを抽出し、MBP/pSTV28を得た。
【0070】
(2.3)loxP WTとOmpA signal配列の組み込み
最後にMBP/pSTV28をpSTV-loxWT, pSTV-Signal1, pSTV-Signal2にて増幅した直鎖状DNAをセルフライゲーションさせることにより、MBP/pSTV28のlacZ (遺伝子下流にOmpA signal, loxP WTが挿入されたOS/pMIを作製した。今回挿入するOmpA signal配列は長いため、pSTV-Signal1, pSTV-Signal2を用いて2回PCRを行うことにより作製した。
【0071】
pSTV-loxWT: 5'-p-ATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTTATGCTGTCAAACATGAGAATTACAAC-3'
(配列番号23)
(下線部はloxP WT、pは5'リン酸化を表す)
pSTV-Signal1
5'-CACTGCAATCGCGATAGCTGTCTTTTTCATATGATAtctcctGTGTGAAATTATCATCGATAAGCTCATTCGCC-3' (配列番号24)
(下線部はOmpA signalの前半部分の相補鎖、小文字はRBSの相補鎖)
pSTV-Signal2
5'-p-TTTGTCATCGTCGTCCTTGTAGTCAGCTTGCGCAACGGTAGCGAAACCAGCCAGTGCCACTGCAATCGCGATAGCTGT-3' (配列番号25)
(すべてOmpA signal配列の相補鎖、pは5'リン酸化を表す)
【0072】
15 pmolずつのpSTV-loxWT, pSTV-Signal1、鋳型であるMBP/pSTV28 50 ng、0.2 mM dNTPs、5μl 10(Buffer for Pfu、1 unit Pfu turboを混合して50μlの反応溶液とし、94℃、30秒の後に、98℃ 10秒、68℃ 30秒、72℃ 10分を20サイクル繰り返した。このPCR反応溶液1μlを鋳型とし、pSTV-loxWT, pSTV-Signal2を用いて上記の条件で再度PCRを行い、完全長のOmpA Signal配列の付加された直鎖状ベクターを得た。PCR反応液は、1μl DpnI(Promega)を加えて37℃で1時間インキュベーションした後、WizardR SV Gel and PCR Clean-Up Systemにて精製した。さらに直鎖状ベクター約1μgに、T4 DNA polymerase 1μl(New England Biolbs)を作用させて、16℃ 30分間のライゲーションを行った後、XL10-Goldケミカルコンピテントセルを形質転換した。形質転換株を34μg/ml Cm を含むYT寒天培地にて37℃一晩培養し、シングルコロニーをYTC 4 mlにてさらに一晩培養した。この菌体よりWizardR Plus Minipreps DNA Purification kitにてプラスミドDNAを抽出し、DNA配列を確認してOS/pMIを得た。
【0073】
実施例3:scFv(HyHEL10)/pMKおよびscFv(D13HyHEL10)/pMKQCによるELISA
scFv(HyHEL10)/pMK及びscFv(D13HEL)/pMKQCにて通常より長いloxPリンカーを持つscFv提示ファージを調製し、HELに対する結合能を確認した。
【0074】
(3.1)scFv(HyHEL10)/pMKによるファージの調製
10 ngのscFv(HyHEL10)/pMK を用いて100μlのTG-1をエレクトロポレーション法により形質転換し、1%のグルコースと100μg/mlのアンピシリンを含むYT寒天培地(YTAG)プレートにて37℃で一晩培養することにより、scFv(HyHEL10)提示pIII発現株(scFv(HyHEL10)/pMK/TG-1)を作製した。
【0075】
一晩培養した上記YTAG寒天培地プレートに生じたコロニーを竹串でつつき、1%のグルコースと100μg/mlのアンピシリンを含む2YT液体培地(2YTAG)4mlに植菌し、37℃でO.D.600が0.5に達するまで培養した。この培養液に3×1010cfuのヘルパーファージKM13を加え、30℃に30分静置して感染させた。これを3300 gにて10分間遠心して上清を廃棄し、0.1%グルコース、100μg/mlアンピシリン、50μg/mlのカナマイシンを含む2YT液体培地(2YTAK) 4 mlにて再懸濁し、30℃にて一晩培養した。
【0076】
培養液を3300 gにて30分遠心して回収した上清に800μlのPEG/NaCl (20% Polyethylene glycol 6000, 2.5 M NaCl)を加え、氷上に1時間静置した。これを3300 gにて30分遠心して上清を廃棄し、200μlのTE(10 mM Tris-HCl pH 8.0, 1 mM EDTA)にて懸濁し、さらに11,600 gにて10分間遠心して上清を回収した。比較のため、scFv(D13HyHEL)/pMKQCと、(G4S)3リンカーを持つscFvをコードするscFv(HyHEL10)/pCANTABからも同様にしてファージを調製した。また、調製したファージ溶液を希釈して対数増殖期のTG-1に感染させ、ファージのタイター(ファージ1 mlあたりのコロニー形成能:cfu/ml)を測定した。
【0077】
(3.2)調製したファージによるELISA
10μg/mlのHELを含む50 mM NaHCO3溶液 (pH 9.6)または10μg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBS溶液(1Lあたり 5.84 g NaCl, 4.72 g Na2HPO4, 2.64 g NaH2PO4・2H2O, pH7.2)をFalcon 3912マイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で16時間静置した。マイクロプレートから溶液を廃棄した後、2%スキムミルクを含むPBSを200μl加え、室温で2時間置いてブロッキングを行った。次いで、マイクロプレートを0.1% Tween-20を含むPBS(PBS-T)で洗浄した後、上記で得られた108cfuファージと2%スキムミルクを含むPBSを100μl加え室温で、90分間静置した。ここまでの操作で固相化されたscFv提示ファージを検出するために、マイクロプレートをPBS-T洗浄後、2%スキムミルクを含むPBSで1/5000に希釈したHRP/anti-M13 Monoclonal Conjugate(Amersham)を加え室温で1時間静置した。その後マイクロプレートをPBS-Tで三回洗浄した後、あらかじめ調製した酵素反応溶液(50 ml 100 mM 酢酸ナトリウム pH6.0、500μl 10 mg/ml TMBZ(in DMSO)、10μl H2O2)を各wellへ100μlずつ添加して反応を開始した。暗所で5分間反応させた後、3.2 N H2SO4を50μlずつ添加して反応を止め、プレートリーダーで吸光度を測定した(450 nm、対照は655 nm)。
【0078】
図4に示したように、scFv(HyHEL10)/pMKから調製したscFv提示ファージは、scFv(HyHEL10)/pCANTAB由来のファージと同様に、ブランクであるBSAと比較して抗原(HEL)に対し有意な結合能を示した。また、scFv(D13HyHEL)/pMKQCについても同様の実験を行い、有意なHEL結合を確認できた。
【0079】
実施例4:モデルパニング
scFv(HyHEL10)/pMKQC由来ファージをHEL結合能のない抗体遺伝子を持つscFv(9-3)/pMKQC由来ファージと1:5000の割合で混合したモデルライブラリを作製し、HELに対するパニングによってscFv(HyHEL10)/pMKQCを選択するモデルパニングを行った。
【0080】
(4.1)scFv(9-3)/pMKQCファージのHEL結合能と抗体提示率
9-3遺伝子はHEL免疫マウス脾臓細胞由来のmRNAを鋳型として(1.3)と同様の手法で増幅した。loxP-linker/pMKへ組み込んだ後に(1.4)と同様にしてSgrAIサイトの変異導入を行いscFv(9-3)/pMKQCを得た。これを用いてファージを調製し、HEL固定化プレート (抗原固定化条件は(3.2)と同じ)に対するELISAから、抗原結合能について評価した。今回は大量に調製するため、20倍のスケールでファージを調製した。さらに抗体提示率を上げるため、KM13感染後に1 mM IPTGを加えて培養した。
【0081】
(4.2)モデルライブラリからのパニング
2.5(1012 cfuのscFv(9-3)/pMKQC由来ファージと5.0(108 cfuのscFv(HEL10)/pMKQC由来ファージを混合し、モデルライブラリとした。
Nunc Maxisorp immuno test tube (Nunc)に50μg/mlのHELを含む50 mM NaHCO3溶液 (pH 9.6) 3.6 mlを入れ、4℃で一晩静置して抗原を固定化した。PBSにて3回洗浄した後に2%スキムミルクを含むPBS (MPBS) 3.6 mlを注ぎ、室温にて2時間ブロッキングした。PBSにて3回洗浄した後に1.0(1012 cfuのモデルライブラリファージを含むMPBS 3.6 mlを注ぎ、室温にて1時間回転、1時間静置してファージを固相化した。ファージ溶液を廃棄後、PBS-Tにて20回洗浄を行った後、500μlのTrypsin-PBS (10 mg/ml trypsin stock 50μl, 450μl PBS)を加え、室温にて10分間反転させて溶出を行った(Trypsin stock: 10 mg/ml tripsin, 50 mM Tris-HCl pH7.4, 1 mM CaCl2, -20℃にて保存)。このファージ溶出液250μlを対数増殖期のTG-1.75 mlに加え、37℃ 30分静置してファージを感染させた。この溶液を1/100, 1/10,000希釈したもの10μlをYTAG寒天培地にスポットして37℃ 一晩培養して溶出されたファージのタイターを測定した。また、残りの溶液は10 ml 2YTAG液体培地に植え継ぎ、37℃にてO.D.600が0.4に達するまで培養後、5(1010 cfu KM13を加え、37℃ 30分静置してヘルパーファージの感染を行った。3,000 g 10分間遠心して上清廃棄後、1 mMのIPTGを含む2YTAK 50 mlにて再懸濁し、30℃で一晩培養した。これを3,300 g 15分遠心して回収した上清40 mlにPEG/NaCl 10 mlを加え、氷上で1時間静置後、3,300 g 30分遠心してPEG/NaClを廃棄した。ペレットを2 ml TEにて懸濁し、11,600 g 10分遠心して大腸菌の破片を取り除き、上清を回収した。
【0082】
(4.3)Polyclonal phage ELISA
10μg/mlのHELを含む50 mM NaHCO3溶液 (pH 9.6)、10μg/mlのBSAを含むPBS溶液、PBSにて1/1000希釈した抗Myc抗体、PBSをそれぞれFalcon 3912マイクロプレートに1ウェルあたり100μlずつ分注し、4℃で16時間静置した。このプレートにパニング前と後それぞれのファージを1ウェルあたり5(109 cfuのファージ溶液を反応させて、(3.2)と同条件でELISAを行った。その結果、図5に示したように、パニング後ではHELに対するシグナルの著しい増加が観測された。このことから、HEL結合能の高いscFv(9-3)/pMKQC由来ファージが濃縮されたことが明らかとなった。
【0083】
(4.4)Monoclonal phage ELISA
パニング後に得られたファージをモノクローン化して、それぞれの抗原結合能を測定した。
タイター測定時に作製したコロニー30個を96 well plate (Corning)に分注した100μl 2YTAGに植え継ぎ、250 rpm 37℃にて一晩培養した。この前培養液約2μlを新しい2YTAG 200μlに植え継ぎ、250 rpm 37℃ 2時間培養後、109 cfu KM13を含む2YTAG 25μlを加え、250 rpm 37℃ 1時間反応させてヘルパーファージの感染を行った。1,800 g 10分間遠心して上清を廃棄した後、1 mM IPTGを含む2YTAK 200μlにて再懸濁し、30℃一晩培養した。翌日、1,800 g 10分間遠心して回収した上清を用いてmonoclonal phage ELISAをおこなった。
【0084】
10μg/mlのHELを含む50 mM NaHCO3溶液 (pH 9.6)、10μg/mlのBSAを含むPBS溶液、PBSにて1/1000希釈した抗Myc抗体、PBSをそれぞれFalcon 3912マイクロプレートに1ウェルあたり100μlずつ分注し、4℃で16時間静置した。(3.2)と同様にしてブロッキング後、1ウェルに4%スキムミルクを含むPBS 50μlと上記で調製したモノクローナルファージ溶液50μlを混合して加え、室温にて1.5時間反応させた。以降は(3.2)と同条件で結合したファージの検出を行った。その結果、図6に示すように多数のクローンが特異的なHEL結合能を有することが明らかとなった。抗Myc抗体固定化プレートにおけるシグナルは、ファージ上のscFv提示率に比例すると考えられるために、同一クローンでのHEL固定化プレートのシグナルから抗Myc抗体固定化プレートにおけるシグナルを割ることで、scFvの結合能をより正確に見積もることができると考えられる。図7に示すように、抗Myc抗体に対するシグナル強度(提示率)で補正を行った結果、多数のクローン(30クローン中21)がHELに対する有意なシグナルを示すことが明らかとなった。
【0085】
(4.5)XhoI切断パターンによる解析
scFv(HyHEL10)/pMKのVHフラグメント中にXhoIサイトが存在することを利用し、M13RV, pHENseqを用いたコロニーPCRにて増幅したDNA断片のXhoI切断パターンにてscFv(HyHEl10)/pMKQCの割合を見積もった。
【0086】
5 pmolずつのM13RV, pHENseq、5μl GoTaq mix(Promega)、 milliQ水5μlの混合溶液中にモノクローナルファージELISAで用いたコロニーを竹串でつついて浸した。この溶液を95℃、5分の後に、95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 2分を25サイクル繰り返した後、72℃で5分間反応させてDNA断片を増幅した。これに10(NEBuffer2 1μl, 1 mg/ml BSA 1μl, 2 unit XhoIを加え、37℃ 4時間切断を行った。1.5%アガロースゲルにて電気泳動を行い、バンドパターンを確認した。図8に示すように、多数のクローンがscFv(HyHEL10)/pMKであることを示すパターンを示し、さらにそれらは図7でHELに対して有意なシグナルを与えたクローンと完全に一致していた(表1)。また、scFv遺伝子の欠損したクローンは全く観測されなかった。これらのことから、scFv/pMKはパニングに利用可能な実用的なファージディスプレーシステムであると結論できた。
【0087】
【表1】

【0088】
実施例5:Cre recombinaseによる相同組換え
アクセプターとしてSwaI処理した直鎖状ベクターscFv(HyHEL10)/pMK及びscFv(D13HEL)/pMK、ドナーとして環状プラスミドOS/pMIと、OS/pMIのうち2つのloxPサイトに挟まれる配列を含むDNAフラグメントOS-fragmentを用い、図9に示すように、Cre recombinase (Novagen)を用いて組換えを行った。組換え反応液を鋳型としたPCRとシーケンスにより、目的の組換えが起こっているかどうかを確認した。
【0089】
(5.1)Cre recombinaseによるscFv(HyHEL10)/pMKとOS/pMIの組換え
組換え効率を上げるため、SwaI処理したlinear-scFv(HyHEL10)/pMKをアクセプターとして用いた。調製方法は、約2μgのscFv(HyHEL10)/pMKを5μl NEBuffer 3, 10 unit SwaI, 5μl 1mg/ml BSAを混合してmilliQ水で50μlにし、25℃にて2時間処理後、アガロースゲル電気泳動、精製を行った。
【0090】
ドナーとしては、OS/pMIと、OS/pMI中のloxP 511やMBP、開始コドン、ompA配列、loxP WTなどを含むOS-fragmentの2種類を用いた。OS-fragmentはloxP 511の上流にアニールするpSTV-Proと、loxP WTの下流にアニールするpSTV-p15Aの2種類のプライマーを用いてPCRにより作製した(図10)。
pSTV-Pro: 5'-AGGTTTCCCGACTGGAAAGCG-3' (配列番号26)
pSTV-p15A: 5'-TACGCGCAGACCAAAACG-3' (配列番号27)
【0091】
50 pmolずつのpSTV-Pro, pSTV-p15A、鋳型として100 ng OS/pMI、0.2 mM dNTPs、10μl Ex-Taq Buffer、5 unit Ex-Taqを混合して100μlの反応溶液とし、95℃、5分の後に、95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 2分を25サイクル繰り返した後、72℃で5分間反応させた。アガロースゲル電気泳動後、目的サイズのバンドを切り出し、精製してOS-fragmentを作製した。
【0092】
このようにして作製したアクセプター、ドナーを用いて、組換え反応を行った。
linear-scFv(HyHEL10)/pMK 0.25μgとOS/pMI またはOS-fragment 0.25μgに1 unit Cre recombinase (Novagen)を加えて合計30μlの反応液(50 mM Tris-HCl pH7.5, 33 mM NaCl, 10 mM MgCl2)とし、37℃1時間反応させた後、70℃ 5分で失活、室温に10分放置して冷却した。
同様にして、scFv(D13HyHEL)/pMKQCについても組換え実験を行った。
【0093】
(5.2)組換え産物の確認
scFv(HyHEL10)/pMKの組換え反応の進行は、反応液のPCRとシーケンスによって確認した。まず、反応液をテンプレートとして、MBP配列中にアニールするプライマーOS3revとgIIIにアニールするpHENseqを用いたPCR反応を行った(図11)。
OS3rev: 5'-GCTGTTGAAGCGTTATCG-3' (配列番号28)
【0094】
5 pmolずつのOS3rev, pHENseq、1μl 組換え反応液、5μl GoTaq mixを混合してmilliQ水で10μlの反応溶液とし、95℃、5分の後に、95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 2分を25サイクル繰り返した後、72℃で5分間反応させた。1.5%アガロースゲル電気泳動により目的サイズのDNA断片の増幅を確認した。
【0095】
この組換え反応液1μlを用いてTG-1の形質転換を行い、YTAG寒天培地にて37℃一晩培養した。得られたクローンについて上記の条件でコロニーPCRを行い、OS(HyHEL10)/pMKを保持している思われるクローンを選択し、2YTAG 4mlに植菌した。37℃ 一晩培養した菌体からプラスミドを抽出し、設計通りのDNA配列を確認した。
同様にして、scFv(D13HyHEL)/pMKQCの組換え産物であるOS(D13HEL)/pMKを得た。
【0096】
実施例6:OS(HyHEL10)/pMK及びOS(D13HEL)/pMKによるOS-ELISA
Cre/lox systemにより作製したOS/pMKを用いてVL提示MBPならびにVH提示ファージを作製し、実際にOS-ELISAへの応用が可能であるかを確認した。
10 ngのOS(HyHEL10)/pMKを用いて100μlのTG-1をエレクトロポレーション法により形質転換し、YTAG寒天培地プレートにて37℃で一晩培養することにより、VL-MBP/VH-pIII発現株(OS(HyHEL10)/pMK/TG-1)を作製した。一晩培養した上記YTAG寒天培地プレートに生じたコロニーを竹串でつつき、2YTAG液体培地4 mlに植菌し、37℃でO.D.600が0.5に達するまで培養した。この培養液に3×1010cfuのヘルパーファージKM13を加え、30℃に30分静置して感染させた。これを3300 gにて10分間遠心して上清を廃棄し、2YTAK液体培地4 mlにて再懸濁し、30℃にて一晩培養した。培養液を3300 gにて30分遠心して回収した上清に800μlのPEG/NaClを加え、氷上に1時間静置した。これを3300 gにて30分遠心して上清を廃棄し、200μlのTEにて懸濁し、さらに11,600 gにて10分間遠心してVL-MBPとVH-phageが含まれる上清を回収した。
同様にして、OS(D13HEL)/pMKを用いて、VL-MBPとVH-phageが含まれる上清を回収した。
【0097】
0.9μg/mlのMonoclonal Anti-maltose binding protein (Sigma)を含むPBS溶液をFalcon3912マイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で16時間静置した。マイクロプレートから溶液を廃棄した後、そこに2%スキムミルクを含むPBSを200μl加え、室温で2時間置いてブロッキングを行った。次いで、マイクロプレートをPBS-Tで洗浄した後、上記で調製したVL-MBP/VH-phage溶液50μlと、2%スキムミルクおよび0-200μg/mlの抗原(HEL)を含むPBS 50μlを混合して加え、室温で90分間静置した。ここまでの操作で固相化されたVH提示ファージを検出するために、マイクロプレートをPBS-T洗浄後、2%スキムミルクを含むPBSで1/5000に希釈したHRP/anti-M13 Monoclonal Conjugate(Amersham)を加え室温で1時間静置した。その後マイクロプレートをPBS-Tで三回洗浄した後、あらかじめ調製した酵素反応溶液(100 mM 酢酸ナトリウム pH 6.0 50 ml、10 mg/ml TMBZ(in DMSO)500μl、H2O2 10μl)を各ウェルへ100μlずつ添加して反応を開始した。暗所で5分間反応させた後、3.2 N H2SO4を50μlずつ添加して反応を止め、プレートリーダーで吸光度を測定した(450 nm、対照は655 nm)。
【0098】
図12に示すように、OS(HyHEL10)/pMK由来のVH提示ファージ及びMBP-VLを用いたOS-ELISAでは、抗原(HEL)濃度の増加に伴いELISAシグナルが上昇することが確認され、OSアッセイが可能であることが示された。しかしOS(D13HyHEL)/pMK由来のVH提示ファージ及びMBP-VLを用いたOS-ELISAでは、抗原の非存在下においても強いシグナルが観測され、HEL濃度の増加に伴うシグナル上昇がほとんど観測されなかった。よって、OS/pMKに変換することでOSアッセイに適した一本鎖抗体を容易に識別することができた。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は、scFv/pMKの作製スキームを示す。
【図2】図2は、loxP-linkerの配列を示す。
【図3】図3は、OS/pMIの作製スキームを示す。
【図4】図4は、scFv(anti-HEL)-phageの抗原結合能を示す。
【図5】図5は、Polyclonal ELISAを示す。
【図6】図6は、Monoclonal ELISA 1を示す。
【図7】図7は、抗c-myc抗体に対するシグナルで補正したELISAシグナルを示す。
【図8】図8は、パニングによって得られたクローンの遺伝子解析を示す。
【図9】図9は、Cre recombinaseによるscFv/pMKとOS/pMIの組換え反応を示す。
【図10】図10は、pSTV-Pro and pSTV-p15Aのアニールサイトを示す。
【図11】図11は、OS3rev and pHENseqのアニールサイトを示す。
【図12】図12は、OS/pMK/TG-1 培養上清を用いたOS-ELISAの結果を示す。1は OS(HyHEL10)/pMKとKM13によって形質転換されたTG-1の培養上清;2はコントロール実験 (形質転換されていないTG-1の培養上清);3はOS(D13HyHEL)/pMKとKM13によって形質転換されたTG-1の培養上清、4はコントロール実験(形質転換されていないTG-1の培養上清)を示す。
【図13】図13は、本発明の方法によるscFvからVL-MBPおよびVH提示ファージの共発現系への変換の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)下記(2)及び(3)のDNA配列によりコードされるペプチドを細胞外に分泌するためのDNA配列、(2)抗体可変領域のVH断片又はVL断片の一方をコードするDNA配列及び(3)タグタンパク質をコードするDNA配列、を含むDNA領域、並びに(4)下記(5)のDNA配列によりコードされるペプチドをファージ上に提示するための蛋白質をコードするDNA配列、(5)抗体可変領域のVH断片又はVL断片の他方をコードするDNA配列、及び(6)ファージのコートタンパク質をコードするDNA配列、を含むDNA領域を含むベクターであって、当該ベクターを宿主細胞に導入した際には、抗体可変領域のVH断片又はVL断片の一方を含むタンパク質を宿主細胞外に分泌することができ、抗体可変領域のVH断片又はVL断片の他方を提示するファージを宿主細胞外に分泌することができることを特徴とする、ベクター。
【請求項2】
前記ベクターが大腸菌のファージベクター又はファージミドベクターである、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
上記(1)のDNA配列が、リボソーム結合部位及びgIIIシグナル配列をコードするDNA配列である、請求項1又は2に記載のベクター。
【請求項4】
上記(2)のDNA配列が、抗体可変領域のVL断片をコードするDNA配列であり、上記(5)のDNA配列が、抗体可変領域のVH断片をコードするDNA配列である、請求項1から3の何れかに記載のベクター。
【請求項5】
上記(3)のDNA配列が、マルトース結合性タンパク質をコードするDNA配列である、請求項1から4の何れかに記載のベクター。
【請求項6】
上記(4)のDNA配列が、リボソーム結合部位及びOmpAシグナル配列をコードするDNA配列である、請求項1から5の何れかに記載のベクター。
【請求項7】
上記(6)のDNA配列が、gIIIタンパク質をコードするDNA配列である、請求項1から6の何れかに記載のベクター。
【請求項8】
(A)抗体の抗体可変領域のVH断片及びVL断片を含むポリペプチドを細胞外に分泌またはファージのコートタンパクの融合タンパク質として発現可能なDNA配列、及びVH断片をコードするDNA配列とVL断片をコードするDNA配列の間に挿入されている一対の組換え酵素の認識配列を含む第一ベクターと、(B)一対の組換え酵素の認識配列、及び上記一対の組換え酵素の認識配列の間に挿入された終止コドンを含む第二ベクターとに組換え酵素を作用させて、第一ベクターと第二ベクターとの間で遺伝子組み換えを起こさせることを含む、宿主細胞に導入した際に、抗体可変領域のVH断片又はVL断片の一方を含むタンパク質を宿主細胞外に分泌することができ、抗体可変領域のVH断片又はVL断片の他方を提示するファージを宿主細胞外に分泌することができるベクターの製造方法。
【請求項9】
第一ベクターが、一本鎖可変領域(scFv)ポリペプチドを分泌発現可能な配列を含んでいる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第一ベクターが、一本鎖可変領域(scFv)をファージのコートタンパクの融合タンパク質として発現可能な配列を含んでいる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
第一ベクターが、Fabポリペプチドを分泌発現可能な配列を含んでいる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
第一ベクターが、Fabをファージのコートタンパクの融合タンパク質として発現可能な配列を含んでいる、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
第一ベクターが、F(ab')2ポリペプチドを分泌発現可能な配列を含んでいる、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
第一ベクターが、IgGポリペプチドを分泌発現可能な配列を含んでいる、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
第一ベクターが、(1)VLポリペプチド配列、(2)組換えサイト配列、(3)VHポリペプチド配列、(4)ファージのコートタンパク配列を、(1)−(2)−(2)−(3)−(4)または(3)−(2)−(2)−(1)−(4)の順に含んでいる、請求項8から14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
第二のベクターが、タグタンパク質をコードするDNA配列を含んでいる、請求項8から15の何れかに記載の方法。
【請求項17】
組換え酵素がCre recombinaseである、請求項8から16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
組換えがloxPサイト間で起こる、請求項8から17の何れか記載の方法。
【請求項19】
(i)請求項1から7の何れかに記載のベクター、又は請求項8から18の何れか記載の方法で製造されたベクターを宿主細胞に導入する工程、(ii)宿主細胞外に分泌された抗体可変領域のVH断片又はVL断片の一方を含むタンパク質及び抗体可変領域のVH断片又はVL断片の他方を提示するファージを回収する工程、(iii)(ii)で回収された抗体可変領域のVH断片又はVL断片の一方を含むタンパク質及び抗体可変領域のVH断片又はVL断片の他方を提示するファージに抗原を接触させて、VH断片、VL断片及び抗原の複合体を検出する工程を含む、VHポリペプチドとVLポリペプチド間の相互作用を評価する方法。
【請求項20】
抗原が存在することによりVH断片とVL断片の間の相互作用が変化する抗体可変領域を選択することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
scFvの混合物中から相互作用の少ないVHポリペプチドとVLポリペプチドを選択することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
scFvの混合物中から目的抗原に対する親和性の高いscFv混合物を選択した後に、相互作用の少ないVHポリペプチドとVLポリペプチドを選択することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
標識された抗ファージ抗体を用いた免疫測定法によりVH断片、VL断片及び抗原の複合体を検出する、請求項19から22の何れかに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−30428(P2011−30428A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32941(P2008−32941)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(508046823)オーフス ユニヴァーシティー (1)
【Fターム(参考)】