説明

抗体グリコシル化変異型

Fc領域内にグリコシル化変異を有する抗体及び他のFc含有分子は、ペプシン、プラスミン、トリプシン、キモトリプシン、マトリックスメタロプロテイナーゼ、セリンエンドペプチダーゼ、及びシステインプロテアーゼ等のプロテアーゼに対して増大した耐性を示す。本Fc含有分子は、様々な疾患及び障害の治療において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体及び他のFc含有分子のFc配列を評価することに関し、より具体的には、プロテアーゼに対する感受性を変更するように、抗体調製物及び他のFc含有分子を調整、変更、及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Fcドメイン内のアミノ酸修飾は、アロステリック効果と考えられるものを有し、つまり、遠くからFc高次構造に影響を及ぼし得る。特に、CH3ドメイン内のアミノ酸置換は、CH2ドメインでもある重鎖(下部ヒンジ領域)間の鎖間ジスルフィド結合よりも下で抗体を結合する、Fc−γ受容体への結合に影響することが示されている(Shieldsら(2001)J Biol Chem 276:6591、Stavenhagenら(2007)Cancer Res 67:8882)。
【0003】
成熟した抗体においては、Asn297に付着した2つの複雑な二分岐オリゴ糖は、CH2ドメインの間に埋め込まれ、ポリペプチド骨格との広範な接触を形成する。それらの存在は、抗体がADCC等のエフェクター機能を仲介するために必須であることが分かった(Lifely,M.R.ら、Glycobiology 5:813〜822(1995)、Jefferis,R.ら、Immunol Rev.163:59〜76(1998)、Wright,A.及びMorrison,S.L.,supra)。他者及び本出願人(国際特許公開第WO2007005786号)による研究は、Fc領域におけるこれらの自然に付着したグリカンのオリゴ糖組成物が、ポリペプチド鎖の様々な非隣接部位におけるFc受容体結合親和性及びプロテアーゼ感受性も変更することを更に示した(Raju,S.T.2008 Curr Op Immunol 20:471〜478、国際特許公開第WO2007024743号)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、抗体分子の様々な高次構造の態様に関する理解が進み、モデリング及びタンパク質工学技術がより洗練されるにつれて、治療的抗体候補内の領域を修飾のための標的として、特定用途又は適応について所望のスペクトルのインビボ相互作用と合致させることが今や可能である。そのような修飾は、維持された安全性を有する改善された抗体治療薬を提供し得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、抗体又は抗体様治療薬の設計に有用な修飾されたグリコシル化免疫グロブリン定常ドメインの組成物、例えば、1つ以上の操作されたAsn結合グリコシル化部位(「N−グリコシル化」)を有するFc領域を含むものを提供する。
【0006】
本発明の一実施形態において、361位の突然変異から生じる359位のN−グリコシル化部位、及び/又は421位の突然変異から生じる419位のN−グリコシル化部位がある。更に、天然Fcグリコシル化がAsn297位に存在し、別の実施形態では、天然Fcグリコシル化が存在しなくてもよい。抗体由来の構造物は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4配列から派生する、又はそれらを含む二量体タンパク質構造である。一態様において、構造物は、ヒンジ領域内の228、234、又は235位(Kabat EU番号付け)にアミノ酸置換を含有する。
【0007】
本発明の別の目的は、類似の非修飾免疫グロブリン定常領域を有する化合物と比較して、プロテアーゼ感受性、血清半減期、及びFc受容体結合を含むが、これらに限定されない改善された特性を有する修飾グリコシル化免疫グロブリン定常領域に基づく化合物を含む。
【0008】
本発明の更なる目的は、グリコシル化抗体調製物がプロテアーゼによる開裂に抵抗する能力を強化するための組成物及び方法を提供することであり、したがって、癌等のプロテアーゼの上昇レベルの存在に随伴する病的状態を治療するための抗体調製物を提供することである。方法の更に別の実施形態において、グリコシル化Fc含有タンパク質は、抗体であり、好ましくは治療的モノクローナル抗体である。その開裂活性が抵抗の対象となるプロテアーゼは、宿主又は寄生生物、バクテリア、又はウイルスであり得る病原体から生じる、ペプシン、プラスミン、トリプシン、キモトリプシン、マトリックスメタロプロテイナーゼ、セリンエンドペプチダーゼ、及びシステインプロテアーゼからなる群から選択される。特定の実施形態において、プロテアーゼは、ゼラチナーゼA(MMP2)、ゼラチナーゼB(MMP−9)、マトリックスメタロプロテイナーゼ−7(MMP−7)、ストロメライシン(MMP−3)、及びマクロファージエラスターゼ(MMP−12)からなる群から選択されるマトリックスメタロプロテイナーゼである。これらの修飾は、抗体配列に導入され得る。開示される修飾構造物は、生理学的に関連するプロテアーゼに対して優れた耐性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】番号がKabatのEU抗体番号に基づくIgG4系変異型のヒンジ及びFcドメインのアミノ酸配列の整列。図示される配列は、コアヒンジ(残基227)で始まり、FcドメインのC末端(残基447)で終了して、Thrの代わりに359位にAsn(N)を有し、Asnの代わりに361位にThr(T)を有することによって、CNTO 5303及びCNTO 7363が、それぞれCNTO 530及びCNTO 736とは異なり、結果としてグリコシル化モチーフの形成をもたらし、Asn359位においてグリコシル化されるタンパク質を生じることを示す。変異型CNTO 5304及びCNTO 7364は、Asnで置換された299位にThrを有し、それによってAsn297位におけるモチーフ及びグリコシル化を除去することによって、CNTO 5303及びCNTO 7363とは異なる。NEM 3052配列は、419位及び421位のアミノ酸を変更することによって、419位においてグリコシル化モチーフ及びグリコシル化をもたらす。グリコシル化モチーフ位置の形成について図示される別の部位は、図面において(「可能な変異型)として示される382と384との間である。点は、アミノ酸が野生型配列において見られるものと同一であることを示す。
【図2】両方の重鎖上で強調される新しいグリコシル化部位のFc断片残基359の構造。
【図3】CNTO 530及びSDS−PAGEゲル(非還元)を通して分割されるその変異型。
【図4】2つのMIMETIBODY(商標)構造物変異型が、ヒトFcRnに結合するために、いかに良好にビオチニル化mAbと競合するかについてのAlphaScreen系分析。
【図5A】ヒトMMP−3又はヒト好中球エラスターゼ(NE)とのインキュベート時の正常なFc構造物の消失率の長期間にわたるMALDI−TOF−MS追跡のために得られたデータを示し、A〜D)MMP−3又はNEとのインキュベーション時のCNTO 5303〜CNTO 530、及びCNTO 7363とCNTO 736との比較、E、F)2つのプロテアーゼとインキュベートした場合のCNTO 5304及びCNTO 7364を含む、すべての試料。
【図5B】ヒトMMP−3又はヒト好中球エラスターゼ(NE)とのインキュベート時の正常なFc構造物の消失率の長期間にわたるMALDI−TOF−MS追跡のために得られたデータを示し、A〜D)MMP−3又はNEとのインキュベーション時のCNTO 5303〜CNTO 530、及びCNTO 7363とCNTO 736との比較、E、F)2つのプロテアーゼとインキュベートした場合のCNTO 5304及びCNTO 7364を含む、すべての試料。
【図5C】ヒトMMP−3又はヒト好中球エラスターゼ(NE)とのインキュベート時の正常なFc構造物の消失率の長期間にわたるMALDI−TOF−MS追跡のために得られたデータを示し、A〜D)MMP−3又はNEとのインキュベーション時のCNTO 5303〜CNTO 530、及びCNTO 7363とCNTO 736との比較、E、F)2つのプロテアーゼとインキュベートした場合のCNTO 5304及びCNTO 7364を含む、すべての試料。
【図5D】ヒトMMP−3又はヒト好中球エラスターゼ(NE)とのインキュベート時の正常なFc構造物の消失率の長期間にわたるMALDI−TOF−MS追跡のために得られたデータを示し、A〜D)MMP−3又はNEとのインキュベーション時のCNTO 5303〜CNTO 530、及びCNTO 7363とCNTO 736との比較、E、F)2つのプロテアーゼとインキュベートした場合のCNTO 5304及びCNTO 7364を含む、すべての試料。
【図5E】ヒトMMP−3又はヒト好中球エラスターゼ(NE)とのインキュベート時の正常なFc構造物の消失率の長期間にわたるMALDI−TOF−MS追跡のために得られたデータを示し、A〜D)MMP−3又はNEとのインキュベーション時のCNTO 5303〜CNTO 530、及びCNTO 7363とCNTO 736との比較、E、F)2つのプロテアーゼとインキュベートした場合のCNTO 5304及びCNTO 7364を含む、すべての試料。
【図5F】ヒトMMP−3又はヒト好中球エラスターゼ(NE)とのインキュベート時の正常なFc構造物の消失率の長期間にわたるMALDI−TOF−MS追跡のために得られたデータを示し、A〜D)MMP−3又はNEとのインキュベーション時のCNTO 5303〜CNTO 530、及びCNTO 7363とCNTO 736との比較、E、F)2つのプロテアーゼとインキュベートした場合のCNTO 5304及びCNTO 7364を含む、すべての試料。
【図6】図1において見られるようなIgG1系変異型のヒンジ及びFcドメインのアミノ酸配列。
【図7】両方の分子を注入されたマウスの血液中のCNTO 530とCNTO 5303の血清持続性を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
略語
AA=アントラニル酸、α1,3GT=α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ、ARD=急性呼吸困難、β1,4GT=β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ、α2,3ST=α−2,3−シアリルトランスフェラーゼ、ADCC=抗体依存性細胞毒性、CDC=補体依存性細胞毒性、CMP−Sia=シチジンリン酸N−アセチルノイラミン酸、FBS=ウシ胎児血清、IgG=免疫グロブリンG、MALDI−TOF−MS=マトリックス支援レーザー/脱着イオン化時間のフライト質量分析、NANA=シアル酸のN−アセチルノイラミン酸異性体、NGNA=シアル酸のN−グリコノイラミン酸異性体、OA=変形性関節症、PNGase F=ペプチドN−グリコシダーゼF、HPLC=逆相高性能液体クロマトグラフィー、RA=関節リウマチ、SA=シナピン酸、Sia=シアル酸、SDHB=塩化ナトリウムを含有するジヒドロキシ安息香酸、UDP−Gal=ウリジン二リン酸ガラクトース、UDP−GlcNAc=ウリジン二リン酸N−アセチルグルコサミン。
【0011】
定義&用語の説明
本明細書で使用するとき、「Fc」、「Fc含有タンパク質」又は「Fc含有分子」という用語は、少なくとも免疫グロブリンCH2及びCH3ドメインを有する単量体、二量体、又はヘテロ二量体タンパク質を指す。CH2及びCH3ドメインは、タンパク質/分子(例えば、抗体)の二量体領域の少なくとも一部を形成することができる。
【0012】
用語「抗体」は、抗体、その消化断片、特定部分及び変異型を含むことを意図し、これには抗体模倣薬が非限定的に挙げられ、又は抗体の構造及び/若しくは機能を模倣する抗体の部分若しくはその特定断片若しくは一部を含み、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、小体、及びその断片が非限定的に挙げられる。機能的断片は、関心対象の標的抗原に結合する、抗原結合断片を含む。例えば、Fab(例えば、パパイン消化による)、Fab’(例えば、ペプシン消化及び部分的還元による)、及びF(ab’)2(例えば、ペプシン消化による)、facb(例えば、プラスミン消化による)、pFc’(例えば、ペプシン又はプラスミン消化による)、Fd(例えば、ペプシン消化、部分的還元、及び再集合による)、Fv又はscFv(例えば、分子生物学的技術による)断片が挙げられるが、これらに限定されない、標的抗原又はその一部に結合できる抗体断片が、用語「抗体」に含まれる(例えば、上記のColligan,Immunologyを参照のこと)。
【0013】
本明細書で使用されるところの「モノクローナル抗体」という用語は、動物抗体の少なくとも1つの種の重鎖又は軽鎖抗体可変ドメインのうちの少なくとも1つに対して実質的に相同性を保持する少なくとも1つのリガンド結合ドメインを含む、Fc含有融合タンパク質の特定の形態である。
【0014】
概論
本発明は、PEG化のためのFcドメイン上の新しい部位を識別することにおける関心により促進された。修飾のための特定標的部位を提供する、PEG部分のタンパク質のグリカンへの接合のための技術が知られていることから、Asn297位での天然グリカンの使用が試みられたが、Fc二量体構造の三級及び四級構造に起因して、天然Fcグリカンは、大きいPEG構造の接合を可能にするために十分にはアクセス可能でないことが示された。
【0015】
したがって、Fcドメイン上の位置は、代替的又付加的なN−結合グリコシル化部位が、真核細胞の小胞体におけるグリコシルトランスフェラーゼの認識部位として知られる、モチーフ配列Asn−Xxx−Ser/Thrにおける工学によって導入されることができると考えられた。2つの異なるFc含有構造物、CNTO 530(EPO MIMETIBODY(商標)構造物)及びCNTO 736(GLP−1 MIMETIBODY(商標)構造物)のそのようなグリカン変異型を作製する際に、非PEG化グリカン変異型が、タンパク質分解酵素に対して著しく高い耐性を予想外に示したことが観察された。
【0016】
体は、タンパク質の消化及びリモデリングのためのプロテアーゼを自然に生成し、治療的タンパク質もこの影響を受ける。RA及び他の炎症性疾患等の非病原体駆動疾患状態、並びに癌におけるある範囲のタンパク質分解酵素が上昇することがよく知られている。また、ヒトプロテアーゼは、炎症性、増殖性、転位性、及び感染性疾患に関連することもよく知られている。循環する免疫グロブリン、及び特にIgGクラスのそれらの抗体は、主要な血清タンパク質である。ヒトプロテアーゼ、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs)、及び好中球エラスターゼは、グルタミルエンドペプチダーゼ(Staph.aureus)又は連鎖球菌(Strep.pyogenes)の免疫グロブリン分解酵素等の細菌プロテアーゼに類似する、各プロテアーゼに固有の残基におけるIgG重鎖ポリペプチドを開裂することが知られている。重鎖における開裂部位は、2つの重鎖の鎖間ジスルフィド結合が起こる、ヒンジドメインと呼ばれる領域の周りに集約される。ヒンジの下の領域は、Fc領域を構成し、IgGのエフェクター機能に関与する結合部位を含む。微生物の場合、プロテアーゼ発現は潜在的な補助毒性経路であり、ヒンジの下の開裂によるFcドメインのタンパク質分解放出が、そうでなければその病的細胞の標的及び致死に至らしめる作用を効果的に中和する限りにおいて、有機体がオプソニン化を回避するのを可能にする(Rooijakkers et al.Microbes and Infection 7:476〜484,2005)。したがって、特定プロテアーゼの綿密さは、癌、炎症、及び感染性疾患を含む、無数の疾患状態の代表であり得る。IgG分解が病理学的インビボ環境において強化されることは、開裂したヒンジドメインに結合する、天然IgG自己抗体の存在によって更に明らかにされる(Knightら、1995,Nasuら、1980,Persselin及びStevens、1985,Ternessら、1995 J Imunol.154:6446〜6452)。したがって、生理学的に関連するプロテアーゼに対する高い耐性は、特にプロテアーゼに富む環境における治療的Fc含有分子の長期のインビボ半減期をもたらすことができ、有効性を強化し、及び/又は投与回数の減少を可能にすることができる。
【0017】
同一出願人が所有する特許出願第WO2009/023457号は、癌、炎症、及び感染等の疾患又は病的状態に関連する、IgGを分解することができるプロテアーゼを開示する。情報は、表1(以下に再現される)に要約され、「凝固プロテイナーゼ」は、F.XIIa、FIXa、F.Xa、トロンビン、及び活性タンパク質Cを含み、プラスミンは、プラスミノゲン活性剤であるtPA、ストレプトキナーゼ、及びスタフィロキナーゼと共インキュベートされたプラスミノゲンであり、「プラスミノゲン活性剤単独」とは、プラスミノゲンを含まず、MMPは、活性形態又はプロ酵素のいずれかとして得られる組み換えプロテイナーゼであり、「無し」は、24時間以内に検出可能な開裂がないことを示す。指示される場合を除き、すべての酵素はヒトであった。残基の指定は、完全な成熟IgG1抗体重鎖のEU番号付けシステム用である。
【0018】
【表1−1】

【0019】
【表1−2】

(1)Barrett A.J.、Rawlings N.D.及びWoessner J.F.(編)、Handbook of Proteolytic Enzymes Vol.1,Elsevier,Amsterdam,2004。
(2)Barrett A.J.、Rawlings N.D.及びWoessner J.F.(編)、Handbook of Proteolytic Enzymes Vol.2,Elsevier,Amsterdam,2004。
(3)Powers,JC.、「Proteolytic Enzymes and Disease Treatment」1982.In:Feeney及びWhitaker(編)、Modification of Proteins:Food,Nutritional,and Pharmacological Aspects.Advances in Chemistry Series 198.ACS,Washington,D.C.1982 pp 347〜367。
(4)Tchetverikovl.、Ronday H.K.、van ElB.、Kiers G.H.、Verzijl N.、TeKoppele J.M.、Huizinga T.W.J.、DeGroot J.及びHannermaaijer R.、2004.MMP Profile in paired serum and synovial fluid samples of patients with rheumatoid arthritis.Ann:Rheum.Dis.63,881〜883。
(5)Vincents B.、von Pawel−Rammingen U.、Bjorck L.及びAbrahamson M.、2004.Enzymatic characterization of the streptococcal endopeptidase,IdeS,reveals that it is a cysteine protease with strict specificity for IgG cleavage due to exosite binding.Biochemistry 43,15540〜15549。
(6)Sun H.、Ringdahl U.、Homeister J.W.、Fay W.P.、Engleberg N.C.、Yang A.Y.、Rozek L.S.、Wang X.、Sjobring U.、Ginsburg D.、2004.Plasminogen is a critical host pathogenicity factor for group A streptococcal infection.Science.305,1283〜1286。
【0020】
オリゴ糖機能
細胞からの輸送のための信号配列によって指定されたタンパク質の通常処理として、真核細胞の小胞体内で起こるグリコシル化の結果として、分泌されたタンパク質上に特定のオリゴ糖が存在する。タンパク質に付着したオリゴ糖組成物は、タンパク質の性質、細胞の起源の種、培養状態、及び細胞外環境等の因子によって影響を受ける。種による、又は更には個人による「グライコーム」の性質は、抗原エピトープ、例えば、ヒト血液基の源として長く認識されている。したがって、タンパク質表面グリコシル化は、特定のグリカン構造又は末端サッカリドの特異的又は非特異的受容体を標的することによって、タンパク質の認識を変更する方法を表す。哺乳類受容体のオリゴ糖又はリガンドは、セレクチン等のレクチン、例えば、マンノース結合タンパク質、L−セレクチン、及びP−セレクチンに類似する。
【0021】
哺乳類IgG分子内のCH2ドメインのAsn297に正常に付着したグリカンは、CH2ドメインの周囲のヒンジ領域における2つのCH3ドメインの非共有結合性会合によって共有結合されたFc、2つのポリペプチド鎖の三級構造を提供するように作用する。グリコシル化IgGは、Fc受容体を結合しないか、ADCC若しくはCDCのエフェクター機能を呈しないか、又は補体C1qを結合しない。最近の研究(Kaneko、2006 Science 313:670〜673、Shieldsら、2002 J Biol.Chem.277:30 26733〜26740)は、Asn297連結グリカン含有物もまた、IgG分子のFc(γ)受容体への結合の親和性にも影響を及ぼし得ることを示している。
【0022】
IVIGとして知られるヒトγグロブリンの調製は、一般的な抗炎症治療として長く使用されてきた。高投与量のヒトIVIGを用いる治療が関節炎を抑制する、マウス血清誘導性関節炎モデルにおける最近の研究は、先のIVIGの酵素脱シアリル化が、その治療効果を無効にするが、IVIGのシアリル化分留は、その抗炎症効果を強化することを示した(Kaneko、2006 Science 313:670〜673)。
【0023】
抗炎症特性は、IVIGのFc部分によって決定されることは長く知られていた。後次の研究は、マウス関節炎モデルにおける関節炎症を抑制することに主に関与するIVIG分子の断片が、α2,3連結においてシアル酸を有するものに対向して、ガラクトースを有するα2,6連結においてFcシアル酸を有するものである(Anthonyら、(2008)Science 320:373)ことを示した。脾臓マクロファージの表面上に発現するマウスレクチンSIGN−R1は、ヒトレクチンと同様に、α2,5シアリル化Fc断片の受容体であり、DC−SIGNは、ヒト樹状細胞上で発現する(Anthonyら、Proc Natl Acad Sci USA.2008 Dec 16;105(50):19571〜8)。
【0024】
したがって、本発明のタンパク質組成物を使用して、特定のオリゴ糖構造、末端、又は含有物を有するタンパク質組成物は、宿主細胞の操作及び糖工学を介して合成することができるか、又はプレ若しくはポストタンパク質精製処理、例えば、レクチン親和性クロマトグラフィー若しくは酵素処理又は幾つかの方法の組み合わせを使用する断片によって調製することができる。そのような方法は、本明細書に教示されるように、当業者に周知であるか、又は遺伝子工学、酵素学、タンパク質断片等において周知の方法を使用して開発されているか、若しくは開発することができる。これらの調製を使用して、それらが選択した細胞型、組織、又は器官上で起こる時に、特定の受容体を標的とすることができる。
【0025】
タンパク質のグリコシル化又はハイパーグリコシル化は、タンパク質の水和量を増加させ、シアル酸残基の存在に起因して、負電荷を付加することができる。これらの変更によって、タンパク質が受ける腎臓濾過によるクリアランスの影響が減少する。したがって、Fc断片が循環血液中のタンパク質半減期を強化する手段としてのFcRn結合に加えて、タンパク質の周辺の増加は、付加されたグリコシル化がFcRn結合を減少させないことを前提として、付加的効果をもたらす。
【0026】
変更Fc含有分子を作製する方法
付加的なグリコシル化の部位は、Fc構造又は機能に影響することなく、Asn連結グリカンを付加するという要望に基づいて選択された。IgG4 Fc構造(1adq)(Corperら(1997)Nat Struct Biol.4:374)を分析して、修飾の潜在的部位を分析した。下部ヒンジにおいてFc(γ)R結合部位から遠位にあり、及びCH2−CH3接合領域においてFcRn結合部位から遠位にある、CH3ドメインのループ領域が標的とされた。359−TKNQVS−364、382−ESNGQP−387、及び419−EGNVFS−424ループは、修飾の影響を受けやすいと思われる残基を含有する。これらのループ内で、残基359、382、及び419は、曝露される表面に基づいて、及び得られるグリコシル化によるAsn置換は、構造的に適合性があるという予測に基づいて、グリコシル化を導入するために魅力的な部位として同定された。次に、多数のN−グリコシル化配列モチーフ(NXS/T)が、これらの位置にコンピュータ的に作られ、及び配列をNetNGlycサーバ(www.cbs.dtu.dk/services/NetNGlyc)に提出することによってグリコシル化に対するそれらの可能性を推定した。スコアが0.5以下のモチーフは末梢された。試験分子への導入のために選択されたモチーフは、359NKT及び419NGTであった(図1)。382部位は、新しいグリカンがFcRn結合を干渉する方向を指し得ることを考慮して、遂行されなかった。しかしながら、残基382におけるグリコシル化部位の導入は、完全に機能的なFcドメインを産出することが可能である。
【0027】
Fc含有タンパク質の酵素修飾
特定のグリカン構造又は特定のオリゴ糖含有量を有するFc含有タンパク質を調製するための一方法は、Fc含有タンパク質調製物をサッカラーゼ、例えば、フコシダーゼ又はシアリダーゼ酵素で処理することにより、それによって、特定の糖残基、例えば、フコース又はシアル酸を除去する。糖をFc領域に付加することは、インビトログリコシル化方法を使用して達成することもできる。
【0028】
グリコシルトランスフェラーゼは、オリゴ糖を合成するように自然に機能する。それらは、優れた立体化学及び位置化学形状を有する特定の生成物を生成する。グリコシル残基の移動は、オリゴ糖又は多糖類の伸長又は合成をもたらす。シアリルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ等を含む、多数のグリコシルトランスフェラーゼ型が説明されている。
【0029】
本発明において有用なグリコシルトランスフェラーゼには、例えば、α−シアリルトランスフェラーゼ、α−グルコシルトランスフェラーゼ、α−ガラクトシルトランスフェラーゼ、α−フコシル−トランスフェラーゼ、α−マンノシルトランスフェラーゼ、α−キシロシルトランスフェラーゼ、α−N−アセチルヘキソサミニルトランスフェラーゼ、β−シアリルトランスフェラーゼ、β−グルコシルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシルトランスフェラーゼ、β−フコシルトランスフェラーゼ、β−マンノシルトランスフェラーゼ、β−キシロシルトランスフェラーゼ、及びβ−N−アセチルヘキソサミニルトランスフェラーゼ、例えば、ナイセリア髄膜炎菌又は他の細菌源に由来するもの、及びラット、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、ヒト、ならびに昆虫及びウイルス源に由来するものが挙げられる。好ましくは、グリコシルトランスフェラーゼは、膜結合ドメインが削除されたグリコシルトランスフェラーゼ酵素の切断変異型である。
【0030】
典型的なガラクトシルトランスフェラーゼは、α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ(E.C.No.2.4.1.151、例えば、Dabkowskiら、Transplant Proc.25:2921(1993)及びYamamotoら、Nature 345:229〜233(1990))及びα(1,4)ガラクトシルトランスフェラーゼ(E.C.No.2.4.1.38)を含む。他のグリコシルトランスフェラーゼ、例えば、シアリルトランスフェラーゼを使用することができる。
【0031】
シアリルトランスフェラーゼと呼ばれる場合が多い、α(2,3)シアリルトランスフェラーゼは、シアリルラクトース又は高次構造の生成において使用することができる。この酵素は、シアル酸(NeuAc)をCMP−シアル酸からGal残基に移動させ、2つの糖の間にα連結の形成を伴う。糖の間の結合(連結)は、NeuAcの2位とGalの3位の間にある。α(2,3)シアリルトランスフェラーゼ(EC.2.4.99.6)と呼ばれる例示的なα(2,3)シアリルトランスフェラーゼは、シアル酸をGalβ1の非還元末端Galから3Glc二糖又はグリコシドに移動させる。Van den Eijndenら、J.Biol.Chem.,256:3159(1981)、Weinsteinら、J.Biol.Chem.,257:13845(1982)、及びWenら、J.Biol.Chem.,267:21011(1992)を参照されたい。別の例示的なα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ(EC.2.4.99.4)は、シアル酸を二糖又はグリコシドの非還元末端Galに移動させる。Rearickら、J.Biol.Chem.,254:4444(1974)及びGillespieら、J.Biol.Chem.,267:21004(1992)を参照されたい。更に例示的な酵素は、Gal−β−1,4−GlcNAc α−2,6シアリルトランスフェラーゼ(Kurosawaら、Eur.J.Biochem.219:375〜381(1994)を参照)を含む。
【0032】
本発明のオリゴ糖を調製する時に特に有用な他のグリコシルトランスフェラーゼは、α(1,2)マンノシルトランスフェラーゼ、α(1,3)マンノシルトランスフェラーゼ、β(1,4)マンノシルトランスフェラーゼ、Dol−P−Manシンターゼ、OCh1、及びPmt1を含むマンノシルトランスフェラーゼである。
【0033】
更に他のグルコシルトランスフェラーゼには、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼが挙げられ、α(1,3)N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、β(1,4)N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(Nagataら、J.Biol.Chem.267:12082〜12089(1992)及びSmithら、J.Biol Chem.269:15162(1994))、及びポリペプチドN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(Homaら、J.Biol Chem.268:12609(1993))が挙げられる。好適なN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼには、GnTI(2.4.1.101、Hullら、BBRC 176:608(1991))、GnTII、及びGnTIII(Iharaら、J.Biolchem.113:692(1993))、GnTV(Shoreibanら、J.Biol.Chem.268:15381(1993))が挙げられる。
【0034】
この方法が商業規模で実践されるそれらの実施形態の場合、グリコシルトランスフェラーゼを支持体上に不動化することが有利であり得る。この不動化は、生成物のバッチからの酵素の除去を促進し、後次の酵素の再利用を促進する。グリコシルトランスフェラーゼの不動化は、例えば、トランスフェラーゼからその膜結合ドメインを除去し、その場所にセルロース結合ドメインを付着させることによって達成することができる。当業者は、不動化の他の方法を使用することもでき、それらの方法は、入手可能な文献に記載されていることを理解するであろう。
【0035】
受容体基質は、本質的に、特定のグリコシルトランスフェラーゼが特異性を呈する末端糖残基を有するあらゆる単糖類又はオリゴ糖であり得ることから、基質は、その非還元末端の位置で置換されてもよい。したがって、グリコシド受容体は、単糖類、オリゴ糖、蛍光標識糖、又は糖誘導体、例えば、アミノグリコシド抗生物質、ガングリオシド、又は抗体及び他のFc含有タンパク質を含む糖タンパク質であってもよい。好ましい実施形態の一群において、グリコシド受容体は、オリゴ糖であり、好ましくは、Galβ(1〜3)GlcNac、Galβ(1〜4)GlcNac、Galβ(1〜3)GalNAc、Galβ(1〜4)GalNAc、Man α(1,3)Man、Man α(1,6)Man、又はGalNAcβ(1〜4)マンノースである。特定の好ましい実施形態において、オリゴ糖受容体は、Fc含有タンパク質のCH2ドメインに付着される。
【0036】
活性化糖基質、すなわち、糖−ヌクレオシドリン酸塩の使用は、グリコトランスフェラーゼ反応(再利用システムとしても知られる)と同時に、再生反応を使用することによって回避することができる。例えば、米国特許第6,030,815号において教示されるように、CMP−シアル酸再利用システムは、α(2,3)シアリルトランスフェラーゼの存在下で、シアリルトランスフェラーゼ受容体と反応して、シアリル糖を形成すると、CMP−シアル酸シンセターゼを利用して、CMP−シアル酸(CMP−NeuAc)を補充する。本発明に有用なCMP−シアル酸再生システムは、シチジン一リン酸塩(CMP)、ヌクレオシド三リン酸塩(例えば、アデノシン三リン酸塩(ATP))、リン酸塩ドナー(例えば、ホスホエノールピルビン酸塩又はアセチルリン酸塩)、リン酸塩ドナーからリン酸塩をヌクレオシド二リン酸塩に移行することができるキナーゼ(例えば、ピルビン酸キナーゼ又は酢酸キナーゼ)、及びヌクレオシド三リン酸塩からCMPに末端リン酸塩を移行させることができるヌクレオシド一リン酸キナーゼ(例えば、ミオキナーゼ)を含む。α(2,3)シアリルトランスフェラーゼ及びCMP−シアリル酸シンセターゼは、活性化シアリル酸の除去が順速度の合成を維持するように機能するため、CMP−シアル酸再生システムの一部として見ることもできる。修飾されたCMP−シアリル酸シンセターゼ酵素の遺伝子を含むファージミドを使用する、シアリル化手順におけるシアリル酸化合物の合成及び使用は、1992年10月1日に発行された国際出願第WO 92/16640号に開示される。
【0037】
オリゴ糖を調整する代替方法は、グリコシルトランスフェラーゼ及び活性化グリコシル誘導体をドナー糖として使用することにより、米国特許第5,952,203号において教示されるように、ドナー糖としての糖ヌクレオチドの必要性を回避する。活性化グリコシル誘導体は、高価な糖ヌクレオチド、通常、ヌクレオチド二リン酸糖又はヌクレオチド一リン酸糖である、自然発生する基質に対する代替として作用し、ヌクレオチドリン酸塩は、糖の1位にα結合する。
【0038】
有用な活性化グリコシド誘導体には、活性化脱離基、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、トシレートエステル、メシレートエステル、トリフレートエステル等が挙げられる。活性化グリコシド誘導体の好ましい実施形態には、グリコシルフッ化物及びグリコシルメシル酸塩が挙げられ、及びグリコシルフッ化物が特に好ましい。グリコシルフッ化物の中で、α−ガラクトシルフッ化物、α−マンノシルフッ化物、α−グルコシルフッ化物、α−フコシルフッ化物、α−キシロシルフッ化物、α−シアリルフッ化物、α−N−アセチルグルコサミニルフッ化物、α−N−アセチルガラクトサミニルフッ化物、β−ガラクトシルフッ化物、β−マンノシルフッ化物、β−グルコシルフッ化物、β−フコシルフッ化物、β−キシロシルフッ化物、β−シアリルフッ化物、β−N−アセチルグルコサミニルフッ化物、及びβ−N−アセチルガラクトサミニルフッ化物が最も好ましい。
【0039】
グリコシルフッ化物は、最初に糖をアセチル化した後、それをHF−ピリジンで処理することによって、遊離糖から調製することができる。アセチル化グリコシルフッ化物は、メタノール(例えば、NaOMe/MeOH)中の軽度の(触媒)塩基との反応によって脱保護されてもよい。更に、多くのグリコシルフッ化物は、商業的に入手可能である。他の活性化グリコシル誘導体は、当業者に知られている従来の方法を使用して調製することができる。例えば、グリコシルメシレートは、糖の完全にベンジル化したヘミアセタール形態を塩化メシルで処理した後、触媒水素化によってベンジル基を除去して調製することができる。
【0040】
反応の更なる構成成分は、触媒量のヌクレオシドリン酸塩又はその類似体である。本発明において使用するために適したヌクレオシド一リン酸塩には、例えば、アデノシン一リン酸塩(AMP)、シチジン一リン酸塩(CMP)、ウリジン一リン酸塩(UMP)、グアノシン一リン酸塩(GMP)、イノシン一リン酸塩(IMP)、及びチミジン一リン酸塩(TMP)が挙げられる。本発明に従って使用するために適したヌクレオシド三リン酸塩には、アデノシン三リン酸塩(ATP)、シチジン三リン酸塩(CTP)、ウルジン三リン酸塩(UTP)、グアノシン三リン酸塩(GTP)、イノシン三リン酸塩(ITP)、及びチミジン三リン酸塩(TTP)が挙げられる。好適なヌクレオシド三リン酸塩は、UTPである。好ましくは、ヌクレオシドリン酸塩は、ヌクレオシド二リン酸塩、例えば、アデノシン二リン酸塩(ADP)、シチジン二リン酸塩(CDP)、ウリジン二リン酸塩(UDP)、グアノシン二リン酸塩(GDP)、イノシン二リン酸塩(IDP)、及びチミジン二リン酸塩(TDP)である。好適なヌクレオシド二リン酸塩は、UDPである。上記のとおり、本発明はまた、ヌクレオシドリン酸塩の類似体を用いて実践することもできる。適した類似体は、例えば、ヌクレオシド硫酸塩及びスルホン酸塩を含む。更に他の類似体は、単純リン酸塩、例えば、ピロリン酸塩を含む。
【0041】
例えば、シアル酸のヒドロキシル化形態が優位である(NGNA)マウス細胞において生成された組み換えタンパク質を修飾するための一手順は、タンパク質をシアリダーゼで処理すること、NGNA型シアル酸を除去することに続いて、試薬UDP−Gal及びβ1,4ガルトランスフェラーゼを使用する酵素ガラクトシル化により高均質G2糖型を生成することである。次に、調整は、所望により試薬CMP−NANA及びα−2,3シアリルトランスフェラーゼで処理して、高均質G2S2糖型を得ることができる。
【0042】
本発明の目的で、糖型の実質的に均質とは、その糖型の約85%以上、好ましくは約95%以上を意味する。
【0043】
抗体のプロテアーゼ及びプロテアーゼ感受性
ペプシンは、食後に胃の内腔に分泌される胃液の通常構成成分であるため、自己活性化され、及び低pHで活性である。低レベルの前駆体酵素ペプシノゲンは、血清中で認めることができるが、活性化及び活性は酸依存であるため、循環する抗体に生理学的に関連しない。ペプシンは、下部ヒンジにおいてロイシン234とロイシン235の間のヒトIgG1を開裂する。この開裂部位は、抗原結合に対して二価である、F(ab’)2分子を形成するジスルフィド結合を介して、2つの重鎖を連結する、2つのシステイン残基を含有するヒンジコア(−C−P−P−C−)から下流にある。
【0044】
CH2領域の下部ヒンジ及び開始部、P−A−P−E−F/L−L−G−G−P−S−V−F(配列番号1及び2の残基5〜16)は、マトリックスメタロプロテイナーゼ、MMP−3及びMMP−12の開裂部位を含む。ペプシン及びMMP−7はまた、この領域(P−A−P−E−L*L−G)においても開裂する。更に、生理学的に関連する酵素群、好中球エラスターゼ(HNE)、ストロメライシン(MMP−3)、及びマクロファージエラスターゼ(MMP−12)は、幾つかの位置でIgGを開裂し、わずかに異なるF(ab’)2、Fab、及びFc断片を生成する(表1を参照)。
【0045】
糖型変異型の生物学的特性化
Fc含有タンパク質は、幾つかのよく知られているインビトロアッセイによって、機能性について比較することができる。特に、Fcv受容体のFcγRI、FcγRII、及びFcγRIII群のメンバーに対する親和性が関心対象である。これらの測定値は、受容体の組み換え可溶型又は受容体の細胞結合型を使用して形成することができる。更に、FcRnに対する親和性、IgGの延長された循環半減期に応答可能な受容体は、組み換え可溶型FcRnを使用して、例えば、BIAcoreによって測定することができる。ADCCアッセイ及びCDCアッセイ等の細胞ベースの機能性アッセイは、特定の変異型構造の可能な機能性の結果に関する見識を提供する。一実施形態において、ADCCアッセイは、主要なエフェクター細胞であるNK細胞を有するように構成され、それによって、FcγRIIIA受容体上で機能的効果を反映させる。過酸化又は炎症媒介放出等の細胞応答を測定できるように、食作用アッセイを使用して、異なる変異型の免疫エフェクター機能を比較することもできる。インビボモデルも同様に、例えば、抗CD3抗体の変異型を使用して、マウスにおけるT細胞活性を測定する場合に使用することができ、活性は、Fcγ受容体等の特定リガンドを係合するFcドメインに依存する。
【0046】
タンパク質生成プロセス
Fc含有タンパク質の生成に関与する異なるプロセスは、Fcオリゴ糖構造に影響を及ぼし得る。一例では、Fc含有タンパク質を分泌する宿主細胞は、以前には、高い熱処理(例えば、56℃で30分間)に供されていなかった血清、例えば、ウシ胎児血清(FBS)の存在下で培養される。これは、それらの細胞から分泌されたFc含有タンパク質からシアル酸を除去することができる、活性シアリダーゼ酵素の血清中に自然に存在することに起因して、シアル酸を含有しないか、又は極めて少量を含有するFc含有タンパク質をもたらし得る。別の実施形態において、Fc含有タンパク質を分泌する細胞は、上昇した熱処理に供され、それによってシアリダーゼ酵素を不活性化する血清の存在下、又はシアリダーゼ酵素を含有し得る血清若しくは他の媒質構成成分の非存在下のいずれかで培養され、Fc含有タンパク質が、より高いか又は低いレベルのグリコシル化若しくはグリコシル化変異型を有するようにする。
【0047】
別の実施形態において、Fc含有タンパク質を精製し、更に処理するために使用される状態が確立され、最適なグリカン含有物を優先する。一実施形態において、状態は最大又は最小オリゴ糖含有物を生成するか、又は優勢な糖型において発現したFc含有ポリペプチドの形質転換を引き起こす。例えば、シアル酸は酸に不安定な、低pH環境に長期間曝露されることから、例えば、タンパク質Aクロマトグラフィーカラムからの溶出又はウイルス不活性化努力に続いて、シアル酸含有物の還元につながり得る。別の実施形態において、グリコシル化材料は、特定の糖又はオリゴ糖複合体を表示するタンパク質の経路を選択的に結合又は遅延させる、レクチン固定された支持体材料を使用するクロマトグラフィーに供される。不動化レクチンカラムの場合、非結合フロースルー(T、スルー)又はカラム非結合断片は、結合断片(B、結合)から分離することができ、後者は、溶出緩衝液をカラムに通しながら収集される。例えば、カラムをオリジナル試料緩衝液で連続洗浄する間に溶出するFc含有タンパク質を収集することによって、結合の弱い断片又はカラム遅延断片(R、遅延)を個別に収集することも可能であり得る。シアリル化又はアシアリル化Fc含有タンパク質に対して強化し得るレクチンの例は、オリゴ糖を末端シアル酸と特異的に結合する、Maackia amurensis(MAA)からのレクチン、及びオリゴ糖を末端シアル酸又は末端N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)のいずれかと特異的に結合する、レクチン小麦胚アグルチニン(WGA)である。別の実施例は、オリゴ糖を末端ガラクトースと結合する、レクチンリシンI(RCA)である。後者の実施例において、非結合フロースルー断片は、シアリル化Fc含有分子に対して強化されてもよい。当該技術分野において既知の他のレクチンは、Vectorラボ及びEYラボによって提供されるものを含む。
【0048】
宿主細胞選択又は宿主細胞工学
本明細書に記載されるように、組み換えFc含有タンパク質又はモノクローナル抗体の発現に対して選択される宿主細胞は、最終組成物に対する重要な寄与因子であり、免疫グロブリンCH2ドメインにおいてタンパク質を修飾するオリゴ糖部分の組成物における変異を含むが、これに限定されない。したがって、本発明の一態様は、所望の治療的タンパク質を発現する生成細胞の使用及び/開発に適切な宿主細胞の選択を伴う。
【0049】
抗体又はFc融合のシアル酸含有物が消滅する一実施形態において、宿主細胞は、シアリルトランスフェラーゼが自然に不足しているか、又は欠いている細胞である。別の実施形態において、宿主細胞は、シアリルトランスフェラーゼを欠くように遺伝子的に修飾される。更なる実施形態において、宿主細胞は、減少レベル又は検出不可能なレベルのシアリルトランスフェラーゼを発現するように選択される誘導体宿主細胞株である。更に別の実施形態において、宿主細胞は、シアル酸を抗体に移動させるように、シアリルトランスフェラーゼによって使用されるシアル酸の源である、CMP−シアル酸の形成を触媒する酵素である、CMP−シアル酸シンセターゼを自然に欠いているか、又は欠くように遺伝子的に修飾される。関連実施形態において、宿主細胞は、ピルビン酸からシアル酸を形成する酵素である、ピルビン酸シンセターゼを自然に欠き得るか、又は欠くように遺伝子的に修飾される。
【0050】
付加的な実施形態において、宿主細胞は、当該細胞において発現した抗体がガラクトースを欠くように、ガラクトシルトランスフェラーゼを自然に欠き得るか、又は欠くように遺伝子的に修飾される。ガラクトース無しに、シアル酸は付着されない。個別の実施形態において、宿主細胞は、生成中にシアル酸を抗体から除去するシアリダーゼ酵素を自然に過剰発現し得るか、又は過剰発現するように遺伝子的に修飾されてもよい。そのようなシアリダーゼ酵素は、抗体が培養媒質中に分泌されるか、又は分泌されることになる前に細胞内で抗体に作用し、また媒質中に既に分泌された抗体に作用し得、ガラクターゼを更に含有し得る。変更されたグリコシラーゼを有し、変更した炭水化物組成物を有する糖タンパク質を発現する細胞株を選択する方法は、説明されている(Ripka及びStanley、1986.Somatic Cell Mol Gen 12:51〜62、米国特許出願第US2004/0132140号)。変更されたグリコシル化パターンを有する抗体を生成し、ADCCの強化をもたらすように宿主細胞を設計する方法は、例えば、米国特許第6,602,864号において教示されており、宿主細胞は、少なくとも1つの糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ、特に、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)をコードする核酸を含む。
【0051】
宿主細胞グリコシルトランスフェラーゼの操作を通して宿主細胞のグリコシル化特性を遺伝子的に設計する他のアプローチは、欧州特許第EP1,176,195号に教示されるように、特にα1,6フコシルトランスフェラーゼ(FUT8遺伝子生成物)の活性を排除又は抑制することを伴う。上記の特定の実施例以外で宿主細胞を設計する方法を実践することは、当業者に既知であろう。更に、設計された宿主細胞は、哺乳類起源であり得るか、又はCOS−1、COS−7、HEK293、BHK21、CHO、BSC−1、Hep G2、653、SP2/0、293、HeLa、骨髄腫、リンパ腫、酵母、昆虫若しくは植物細胞、又はそのあらゆる誘導体不動化若しくは形質転換細胞から選択されてもよい。
【0052】
別の実施形態において、オリゴ糖付着に必要な酵素の活性を抑制又は排除する方法は、siRNAの使用等による遺伝子サイレンシング、遺伝子ノックアウト、又はその酵素活性を結合及び遮断する酵素に特異的な細胞内抗体若しくはペプチドの共発現等による酵素阻害剤の添加、及び他の既知の遺伝子工学技術からなる群から選択されてもよい。別の実施形態において、糖付着を遮断する酵素、又は既に付着している糖を除去する糖酵素の発現若しくは活性を強化する方法は、組み換え酵素遺伝子による形質転換、酵素RNA合成を強化する転写因子の形質転換、及び酵素RNAの安定性を強化する遺伝子修飾からなる群から選択されてもよく、すべてがシアリダーゼ等の酵素活性の強化につながり、結果として精製された生成物中のシアル酸のレベルが低下する。別の実施形態において、特定の酵素阻害剤が、細胞培養媒質に添加されてもよい。あるいは、別の方法としては、宿主細胞は、ポリペプチドのグリコシル化が不可能である種又は有機体、例えば、原核細胞又は有機体、及び天然又は工学的大腸菌spp、クレブシェラspp、又はシュードモナスsppから選択されてもよい。
【0053】
抗体
本出願に記載される抗体は、あらゆる哺乳類、例えば、非限定的にヒト、マウス、ウサギ、ラット、げっ歯類、霊長類、ヤギ、若しくはそれらの組み合わせを含むか、又はそれらに由来することができ、単離されたヒト、霊長類、げっ歯類、哺乳類、キメラ、ヒト化及び/又はCDR移植された抗体、免疫グロブリン、開裂生成物、及び他の特定部分、ならびにそれらの変異型を含む。
【0054】
本明細書に記載される抗体、Fc含有タンパク質、又はFc断片は、当該技術分野において周知の幾つかの方法で派生し得る。一態様において、抗体は、マウス又は他の動物を標的ペプチド、細胞、又は組織抽出物で免疫付与することによって調製されたハイブリドーマから便宜的に得られる。したがって、抗体は、当該技術分野において周知であるハイブリドーマ技術のうちのいずれかを使用して得ることができ、例えば、それぞれ参照することにより本明細書に組み込まれる、Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY(1987〜2001);Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,NY(1989);Harlow及びLane、Antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY(1989);Colliganら編、Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,Inc.,NY(1994〜2001);Colliganら、Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY(1997〜2001)を参照する。
【0055】
抗体若しくはFc融合タンパク質又はその成分及びドメインは、そのようなドメイン又は成分のライブラリ、例えば、ファージライブラリから選択することにより得られてもよい。ファージライブラリは、ランダムオリゴヌクレオチドのライブラリ又は関心の配列を含有するポリヌクレオチドのライブラリを挿入することによって、例えば、免疫付与した動物又はヒトのB細胞から形成することができる。(Smith,G.P.1985.Science 228:1315〜1317)。抗体ファージライブラリは、1つのファージに重鎖(H)及び軽鎖(L)可変領域対を含有し、単鎖Fv断片又はFab断片の発現を可能にする(Hoogenboomら、2000,Immunol.Today 21(8)371〜8)。ファージミドライブラリの多様性を操作して、ライブラリのモノクローナル抗体の免疫特異性を増加及び/又は変更し、付加的な望ましいヒトモノクローナル抗体を生成した後、同定することができる。例えば、重鎖(H)及び軽鎖(L)免疫グロブリン分子コード遺伝子をランダムに混合して(シャッフルして)、組み立てられた免疫グロブリン分子において、新しいHL対を形成することができる。付加として、H及びL鎖コード遺伝子のいずれか、又は両方は、免疫グロブリンポリペプチドの可変領域の相補的決定領域(CDR)において突然変異を起こさせることができ、後次に望ましい親和性及び中和能力についてスクリーニングすることができる。抗体ライブラリは、1つ以上のヒトフレームワーク配列を選択し、ヒト抗体レパートリーに由来するCDRカセットの集合を導入するか、又は設計された変異によって合成的に形成することもできる(Kretzschmar and von Ruden 2000,Current Opinion in Biotechnology,13:598〜602)。多様性の位置は、CDRに限定されないが、可変領域のフレームワークセグメントも含むことができるか、又はペプチド等の抗体変数領域以外を含んでもよい。
【0056】
抗体変数領域以外を含み得る標的結合成分の他のライブラリは、リボソーム表示、酵母表示、及び細菌表示である。リボソーム表示は、タンパク質のRNAへの付着を保持しながら、mRNAをそれらの同種タンパク質に転換する方法である。核酸コード配列は、RT−PCRによって回復される(Mattheakis,L.Cら、1994.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,9022)。酵母表示は、膜関連αアグルチニン酵母接着受容体、aga1及びaga2、噛合型システムの一部の、融合タンパク質の構成に基づく(Broderら、1997.Nature Biotechnology,15:553〜7)。細菌表示は、細胞膜又は細胞壁に関連する排出された細菌タンパク質への標的の融合に基づく(Chen及びGeorgiou 2002.Biotechnol Bioeng,79:496〜503)。
【0057】
ハイブリドーマ技術と比較して、ファージ及び他の抗体表示は、抗原に対する宿主作用又はその逆の可能性を制限することなく、抗原標的に対する選択をインビトロで操作する機会を付与する。
【0058】
本発明は、組成物又はその定方向突然変異の真核、原核、又はフィラメントファージ発現、分泌、及び/又は表示と適合性のあるベクターを含む、単離されたポリヌクレオチドとして、又は発現ベクターの一部として、本発明の組成物をコードする核酸も提供する。
【0059】
Fc含有分子の使用
上述される方法のいずれかによって生成される組成物(抗体、Fc融合、Fc断片)を使用して、細胞、組織、器官、流体、又は一般的に宿主において、ヒト疾患又は特定病理を診断、治療、検出、又は調節してもよい。本明細書で教示されるように、抗体のFc部分、Fc融合タンパク質、又はFc断片のグリコシル化を修飾して、治療の標的である流体、区画、組織、又は器官中に存在することが知られているプロテアーゼによるタンパク質分解消化に対する耐性を使用して、治療的分子を生成することができ、これらの分子は、それらの元の標的特性を維持してもよく、これらのプロテアーゼによる分解を起こす傾向が低下する。
【0060】
その開裂活性が抵抗の対象となるプロテアーゼは、宿主、又は寄生生物、バクテリア、若しくはウイルスであり得る病原体から生じる、ペプシン、プラスミン、トリプシン、キモトリプシン、マトリックスメタロプロテイナーゼ、セリンエンドペプチダーゼ、及びシステインプロテアーゼからなる群から選択される。特定の実施形態において、プロテアーゼは、ゼラチナーゼA(MMP2)、ゼラチナーゼB(MMP−9)、マトリックスメタロプロテイナーゼ−7(MMP−7)、ストロメライシン(MMP−3)、及びマクロファージエラスターゼ(MMP−12)からなる群から選択されるマトリックスメタロプロテイナーゼである。分子又はFc分子のFc部分のグリコシル化の変更に対する修飾(EU番号付けを使用する)は、CH2ドメインにおけるグリコシル化部位の除去(Asn297の置換)、CH3ドメインにおいて359位のAsn及び361位のThrを置換することによるN−結合グリコシル化部位の付加、CH3ドメインにおいて382位のAsn及び384位のThrを置換することによるN−結合グリコシル化部位の付加、ならびにCH3ドメインにおいて419位のAsn及び421位のThrを置換することによるN−結合グリコシル化部位の付加から選択することができる。グリコシル化部位をCH3ドメインに付加することは、得られる分子の水和量を増加し、体内の持続性を高めると予想される。
【0061】
本発明によって提供される組成物を使用する治療の影響を受けやすい疾患又は病理には、これらに限定されないが、癌又は増殖性疾患、炎症性又はリウマチ疾患、自己免疫疾患、神経障害、線維症、心臓血管疾患、皮膚病及び感染症、及び火傷又は傷害に起因する状態が挙げられる。
【0062】
本発明の組成物による治療の影響を受けやすい癌又は増殖性疾患は、固体腫瘍、転移性腫瘍、液体腫瘍、及び両性腫瘍、例えば、リンパ腫、リンパ芽球性又は骨髄性白血病、(ALL)、B細胞、T細胞又はFAB ALL、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、毛様細胞白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、リンパ増殖性疾患、ホジキンス病、キャッスルマン病、悪性リンパ種、非ホジキンスリンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、カポジ肉腫、結腸直腸癌、膵臓癌、腎細胞癌、乳癌、鼻咽頭癌、悪性組織球増殖症、腺癌、扁平上皮癌、肉腫、悪性黒色腫、特定の転移性黒色腫、及び血管腫から選択される。
【0063】
本発明の組成物による治療の影響を受けやすい炎症又は免疫系媒介疾患は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身発症若年性関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊柱炎、胃潰瘍、関節症及び関節鏡プラーク、変形性関節症、炎症性腸疾患、海洋性大腸炎、全身ループスエリテマトーシス、抗リン脂質症候群、ブドウ膜炎、視神経炎、特発性肺線維症、全身性血管炎、ウェグナー肉芽腫症、サルコイドーシス、精巣炎、アレルギー及びアトピー性疾患、ぜんそく及びアトピー性ぜんそく、アレルギー性鼻炎、湿疹、アレルギー性接触皮膚炎、アレルギー性結膜炎、過敏症肺炎、臓器移植の拒絶反応、移植片対宿主疾患、及び全身性炎症反応症候群から選択される。
【0064】
本発明の組成物による治療の影響を受けやすい他の疾患又は状態は、天疱瘡、強皮症、慢性閉塞性肺疾患、グラム陰性又はグラム陽性細菌の感染、インフルエンザ及びHIV等のウイルス感染、マラリア又はリーシュマニア症等の寄生虫による感染、ハンセン病、脳炎、カンジダ症、アミロイド症、アルツハイマー病、心筋梗塞、うっ血性心不全、脳卒中、虚血性脳卒中、及び出血である。
【0065】
本明細書において特異的に例示されるように、Fc領域のCH3ドメインにおいてN−結合グリカンを付加することによって(359位のAsn残基及び361位のThr残基を置換することによって(EU番号付け))、ペプチドFc融合タンパク質である化合物が、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP−3)及びセリンエンドペプチダーゼ(NE)に対して感受性が低くなる一方、分子のFcRn結合親和性及びADCC/CDC活性を維持する。
【0066】
本発明は一般論として記述されてきているが、本発明の実施形態は、「特許請求の範囲」を限定するように解釈されるべきではない以下の実施例で更に開示される。
【実施例】
【0067】
実施例1.Fcグリコシル化変異型の構成
米国特許第7,393,662号において、EPO MIMETIBODY(商標)構造物(Fc融合)として記載されるEMP−1Fc融合(CNTO530)、及び国際特許第WO/05097175号に記載されるGLP−1 MIMETIBODY(商標)構造物(Fc融合)(CNTO736)に関して実験を行った。両方の構造物は、図1に示されるように、ヒトIgG4抗体に由来するFc領域を含有する。
【0068】
CNTO 530変異体
プラスミドコード化CNTO530、p2630を出発物質として使用し、標準組み換えPCR及びクローニング方法を使用して、NEM2631を調製した。T359N/N361T置換をEPO MIMETIBODY(商標)構造物CNTO 530に導入するために、CH3コード化制限断片を、NEM 2631 T359N/N361Tプラスミドp3051から単離し、プラスミドp2630コード化CNTO 530において対応する断片の代わりにクローン化した。得られるプラスミド、p3201は、タンパク質CNTO 530 T359N/N361Tをコード化し、本明細書において、CNTO 5303と称される(図2及び表1を参照)。
【0069】
同一のT359N/N361T置換を有するが、297位の天然Fcグリコシル化を欠失するCNTO 530変異型を調製するために、プラスミドp3201の適切な部分を、突然変異誘発オリゴヌクレオチドでPCR増幅させ、クローン化して、T299Nコドン置換を得た(すなわち、297NST299〜297NSN299に変更)。得られるプラスミドは、タンパク質CNTO 530 T359N/N361T/T299Nをコード化するp3565であり、本明細書においてCNTO 5304と称される。
【0070】
CNTO 736変異体
T359N/N361T置換をCNTO 736に導入するために、CH3コード化制限断片を、NEM 2631 T359N/N361Tプラスミドp3051から単離し、プラスミドp2538コード化CNTO 736において対応する断片の代わりにクローン化した。得られるプラスミドは、CNTO 736 T359N/N361Tをコード化するp3349であり、本明細書においてCNTO 7363と称される(表1)。
【0071】
同一のT359N/N361T置換を有するが、297位の天然Fcグリコシル化を欠失するCNTO 736変異型を調製するために、プラスミドp3349の適切な部分をPCR増幅させ、クローン化して、T299Nコドン置換を得た。得られるプラスミドは、タンパク質CNTO 736 T359N/N361T/T299Nをコード化するp3577であり、本明細書においてCNTO 7364と称される。
【0072】
【表2】

* 形質転換した細胞から観察された生成レベル
【0073】
発現及び精製CHO−K1SV細胞(C1013A)は、CNTO 5303をコードするp3201プラスミドで安定して形質転換され、結果として、CNTO 5303生成細胞株C1514Aの単離をもたらす。マウスNS0細胞は、CNTO 5304、CNTO 7363、及びCNTO 7364をコードする上記プラスミドで安定して形質転換され、結果として、それぞれ形質転換された細胞株C1670A、C1528A、及びC1671Aの単離をもたらす(表1)。4つのMIMETIBODY(商標)構造物変異型のすべては、標準タンパク質Aクロマトグラフィーによって形質転換された細胞上清から精製された。タンパク質A及びFcRnは、いずれもFcドメインのCH2−CH3接合において結合するため、タンパク質Aカラムを使用する良好な精製は、新しいグリコシル化部位がFcRnへの結合に影響を及ぼし得ないことを示唆した(以下を参照)。
【0074】
実施例2.Fcグリコシル化変異体の特性化
一連の分析的な生物物理学的な生物活性試験は、実施例1の発現構造物に関して行った。
【0075】
MALDI−TOF−MS分析を行って、MIMETIBODY(商標)構造物変異体のグリカン構造を特性化し、新しい部位において重鎖がグリコシル化した割合を確立した。
【0076】
正常なMIMETIBODY(商標)構造物のMALDI−TOF−MS分析は、CNTO 5303、CNTO 5304、CNTO 7363、及びCNTO 7364試料が、新しい部位において75〜95%がグリカンで占められることを示した。これらの試料のグリカン分析は、それらがCNTO 530及びCNTO 736 MIMETIBODY(商標)構造物グリカンよりも不均質であり、バイ、トリ、及びテトラ触覚構造を含有する359位にグリカンを伴うことを示した。CNTO 5303及びCNTO 7363における297位の天然Fcグリカンは、それぞれCNTO 530及びCNTO 736における天然Fcグリカンと同一の構造であり、オリジナルのMIMETIBODY(商標)構造物においてガラクトシル化がいくらか優れているという差異が観察されたに過ぎない(例えば、CNTO 530の場合約50%、CNTO 5303の場合約70%)。
【0077】
寸法及び移動度は、SDS−PAGEにより分析された。
精製したCNTO 530、CNTO 5303、及びCNTO 5304は、SDS−PAGEによって、非還元条件下、1.0mm厚のBisTris 4〜12%勾配ゲルに1μg/レーンを負荷し、MOPS SDSランニング緩衝液中の分留を200Vで50分間実行することによって分析された。ゲルは、クマシーG250(SimplyBlue Safe Stain,Invitrogen)で染色し、得られた画像は、Alphalmager 2200撮像システム(Alpha Innotech)を使用して捕捉した(図4)。
【0078】
SDSゲル中で観察された移行は予想と一致し、すなわち、合計4つのN−グリコシル化部位を有するCNTO 5303は、更にゆっくり移行し、明らかな分子量は、2つのN−グリコシル化部位を有するCNTO 530及びCNTO 5304よりも3〜4kDaだけ増加した。同一数のグリコシル化部位を有するにもかかわらず、CNTO 5304は、CNTO 530よりもゆっくり移行するように見える。これは、CNTO 530上の自然なグリコシル化に対して、優れたレベルのガラクトシル化及びシアリル化を有するCNTO 5304上の新しいグリコシル化部位、ならびにより多くのトリ触覚及びテトラ触覚構造に起因する。分子量の推定値は、CNTO 530、CNTO 5303、及びCNTO 5304について、それぞれ57.5、61.5、及び59.5kDaである。
【0079】
FcRn結合分析によって評価された生物活性
新しいグリコシル化を導入する場所の選択における1つの要因は、FcRn結合領域を回避するという要請であり、CNTO 5303によるFcRnへの結合は、AlphaScreenを使用してCNTO 530と比較した。2つのMIMETIBODY(商標)構造物試料は、パッケージの指示書のとおり、Slide−A−Lyzer MINI透析ユニット(10K MWCO、Thermo Scientific(Pierce))を使用して、pH 6.0アッセイ緩衝液(0.05M MES、0.025% BSA、0.001% Tween 20、pH 6.0)中、4℃で一晩透析した。抗体濃度は、OD280によって決定した。次に、96ウェル、半領域、平底、非結合、白色ポリスチレンアッセイプレートにおいて室温で1時間混合しながら以下の成分を共インキュベートした:ビオチニル化ヒトIgG1 mAb(CNTO 6234、最終濃度4μg/mL)、連続希釈した試験試料、ポリヒスチジンタグ付けされたヒトFcRn(最終濃度8μg/mL)、AlphaScreenニッケルキレート受容体ビーズ(最終濃度100μg/mL)、及びAlphaScreenストレプトアビジンコーティングされたドナービーズ(最終希釈1:250)。すべての材料は、上述されるように、アッセイ緩衝液を使用して希釈した。インキュベーション後、プレートは、AlphaAcreenプロトコルを使用して、EnVision器具上で読み取った。結果(図5)は、CNTO 5303が、類似する親和性(KD CNTO 530よりもわずか2倍弱い)を有するFcRnと結合したことを示し、FcRn結合がCNTO 5303において保存されたことを示す。
【0080】
プロテアーゼ感受性評価
次に、精製したMIMETIBODY(商標)分子は、2つのヒトプロテアーゼ、組み換えマトリックスメタロプロテイナーゼ−3(MMP−3)及び好中球エラスターゼ(NE)に対するそれらの相対感受性について評価した。下部ヒンジにおける228SCPAP配列後に開裂すると考えられるMMP−3は、ポリHisタグ付プロMMP−3としてHEK細胞内の一時発現、Talon親和性カラムによる精製、及びアリコート中の凍結によって、Centocorにおいて調製された。通常、220CDKT上部ヒンジ配列後に主に開裂するが、下部ヒンジにおける二次部位で開裂することもできる(以下参照)ヒトNEは、Athens Research and Technologies(Athens,GA)から得られた。
【0081】
プロテアーゼ感受性
MMP−3.凍結MMP−3を融解した後、MMP−3消化を行う前に、55℃で25分間インキュベートすることによって活性化した。最大1mg/mLの精製MIMETIBODY(商標)構造物試料は、2mM塩化カルシウムを含有するpH 7.0の20mMトリスHCl緩衝液中の活性化MMP3(1:50、w/w)を用いて37℃で処理した。アリコート(最大2μl)を固定した時間間隔(0、0.5、1、2、4、6、8、及び24時間)で採取し、2μlのマトリックス溶液で即時に混合した(マトリックス溶液は、0.1%トリフルオロ酢酸を含有する水中の1.0mL 50%アセトニトリルに10mgのシナピン酸を溶解することによって調製した)。2μlのこの溶液をMALDI標的プレート上に装填し、以下に記述される質量スペクトル解析の前に空気乾燥させた。
【0082】
好中性エラスターゼMIMETIBODY(商標)構造物のN末端ペプチド部分は、NE消化に対して極めて敏感であり(それによって、正常な分子の定量を複雑化し、ヒンジFc耐性に対する焦点を干渉する)、二次NE開裂部位が下部ヒンジ領域内のどこかに存在することが観察されたため、特に非グリコシル化IgGにおいてパパイン生成Fc断片を、各MIMETIBODY(商標)構造物試料から最初に調製した。各MIMETIBODY(商標)構造物からのそれらのFc断片は、最大1mg/mLの濃度で、pH 7.0の20mMトリス−HCl緩衝液中、NE(1:50、w/w)を用いて、37℃で処理した。アリコート(最大2μl)を固定した時間間隔(0、0.5、1、2、4、6、8、及び24時間)で採取し、2μlのマトリックス溶液で即時に混合した(マトリックス溶液は、0.1%トリフルオロ酢酸を含有する水中の1.0mL 50%アセトニトリルに10mgのシナピン酸を溶解することによって調製した)。2μlのこの溶液をMALDI標的プレート上に装填し、質量スペクトル解析の前に空気乾燥させた。
【0083】
タンパク質分解消化におけるIgG及びIgG断片は、MALDI−TOF−MS解析を使用して分析した。MALDI−TOF−MS解析は、Voyager DE Biospectrometryワークステーション(Applied BioSystems,Foster City,CA)を使用して、遅延抽出を伴う線状又はリフレクトロン陽イオン([M+H]+)モードで行った。器具は、タンパク質較正キット(Sigma)を用いて、外的に較正された。結果は、Asn359位のN−結合グリコシル化の存在が、MMP−3(図5A、5C、5E)及びNE(図5B、5D、5F)の両方に対して優れた耐性を明らかに付与したことを示し、2つのプロテアーゼは、下部ヒンジ領域においてこれらの基質を開裂する。MMP−3による8時間のインキュベーション後、オリジナルCNTO 530の20%未満が正常なままであったが、CNTO 5303の60%超が正常なままであった。CNTO 7363及びCNTO 736について、類似の結果が認められた。NEによる8時間のインキュベーション後、CNTO 530 Fcの10%未満が正常であったが、CNTO 5303 Fcの50%が正常であり、CNTO 7363及びCNTO 736からのFc断片について、再び類似の結果が認められた。359位に新しいグリコシル化を有するが、297位において天然Fcグリコシル化を欠失するCNTO 5304及びCNTO 7364変異体は、MMP−3に対して中度の感受性を示したが(図5E)、NEに対して著しく優れた感受性を示した(図5F)。NE感受性が、天然Fcグリコシル化の欠失によって直接影響される程度、又は天然グリコシル化の非存在下で得られる上部Fcドメインの誤折り畳みによって間接的に影響される程度は、これから決定されるべきことである。MMP−3及びNEは双方とも、MIMETIBODY(商標)構造物ヒンジ領域の付近で開裂することから、開裂部位から離れて導入された新しいグリコシル化部位は(図2を参照)、幾つかのアミノ酸置換とともに認められるように、タンパク質高次構造に対して明らかにアロステリック効果を有する。しかしながら、T359N又はN361T置換は、それ自体がそのようなアロステリック効果をもたらし得ることを無視することはできない。
【0084】
実施例3.Fcグリコシル化変異体のインビボ挙動
この研究において、CNTO 530のグリコシル化変異体の薬物動態を、マウスにおいて比較した。Charles Rivers Laboratories(Raleigh,NC)からの通常の健康な雌Balb/cマウス、8〜12週齢(約18〜22g)を、体重別にランダム化し、プラスチックフィルターで蓋をしたケージに群で収容し(4匹/ケージ)、市販のげっ歯類食餌及び酸性化水を不断供給した。マウス(4匹/試験物品)に、1mg/kgの投与量を達成するために、Dulbecco PBS中0.1mg/mLで製剤された10mL/kg投与量のCNTO 530又はCNTO 5303のいずれかを腹腔内注入した。
【0085】
2、7、16、26、及び35日目に、連続逆行軌道出血によって、最初の26日間、各CO2麻酔下マウスから血液試料を採取した。末端血液試料は、35日目に心臓穿孔によってCO2麻酔下マウスから採取した。すべての試料は、経時分析が各個別の動物に関して行われ得るように、それが由来する動物に関してマークされた。
【0086】
すべての血液試料は、室温で少なくとも30分間〜1時間未満の間放置し、3500rpmで15分間遠心分離して、血清を分離した。血清試料は、研究が終了するまで、すべての試料が一緒に分析される時まで−20℃で保管した。
【0087】
すべてのマウスから採取した血清試料は、96ウェルEIAプレートをポリクローナルヤギ抗ヒトIgG Fc断片でコーティングすることと、血清試料の可変希釈をインキュベートすることと、HRP複合ポリクローナルヤギ抗ヒトIgGと結合されたヒトIgGを検出した後、適切な着色基質を添加することを伴う、標準ELISAによってヒトFcについて分析した。通常血清にスパイクされた滴定量の試験物品を使用して、定量目的の標準曲線を確立した。
【0088】
各血清試料について決定されたヒトFcの濃度は、2日目の血清レベルに標準化し、グラフ化した。結果は、CNTO 5303グリコシル化変異型の薬物動態プロファイルは、本質的に、CNTO 530のそれと区別できないことを明らかにし、新規のグリカンが、通常の健康なマウスにおける半減期に対して有害な作用を有しないことを示した(図7)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループ構造の末端においてN−グリコシル化部位を有する抗体Fcドメインを含むプロテアーゼに対する増大した耐性を有するFc含有分子。
【請求項2】
FcドメインがIgG4であり、前記N−グリコシル化部位がCH3ドメイン内にある、請求項1に記載のFc含有分子。
【請求項3】
前記N−グリコシル化部位が、タンパク質分解開裂部位から遠位にある、請求項1に記載のFc含有分子。
【請求項4】
前記Fcドメインが、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4分子のうちのいずれかに由来する、請求項1に記載のFc含有分子。
【請求項5】
前記Fc含有分子が、抗体又はFc融合タンパク質である、請求項1に記載のFc含有分子。
【請求項6】
前記プロテアーゼが、ペプシン、プラスミン、トリプシン、キモトリプシン、マトリックスメタロプロテイナーゼ、セリンエンドペプチダーゼ、及びシステインプロテアーゼからなる群から選択される、請求項1に記載のFc含有分子。
【請求項7】
前記プロテアーゼが、ゼラチナーゼA(MMP2)、ゼラチナーゼB(MMP−9)、マトリックスメタロプロテイナーゼ−7(MMP−7)、ストロメライシン(MMP−3)、及びマクロファージエラスターゼ(MMP−12)からなる群から選択されるマトリックスメタロプロテイナーゼである、請求項6に記載のFc含有分子。
【請求項8】
前記Fcドメインが、残基359、382、及び419のうちの少なくとも1つにおけるEU番号付けに相関するN−グリコシル化部位を呈する、請求項1に記載のFc含有分子。
【請求項9】
前記Fcドメインが、前記Fcドメインの残基359、382、及び419におけるEU番号付けに相関するN−グリコシル化部位を呈する、請求項8に記載のFc含有分子。
【請求項10】
前記Fcドメインが、前記Fcドメインの残基359、382、及び419におけるEU番号付けに相関するN−グリコシル化部位を呈し、前記Fcドメインの残基297におけるN−グリコシル化部位が除去される、請求項8に記載のFc含有分子。
【請求項11】
残基299がThrからAsnに変更され、残基359がThrからAsnに変更され、残基361がAsnからThrに変更され、残基419がThrからAsnに変更され、及び残基421がAsnからThrに変更される、請求項10に記載のFc含有分子。
【請求項12】
前記Fcドメインが、残基359、361、419、及び421のうちの少なくとも1つにおいて、野生型からの変更を有する、請求項8に記載のFc含有分子。
【請求項13】
残基359がThrからAsnに変更され、及び残基361がAsnからThrに変更され、及び/又は残基419がThrからAsnに変更され、及び残基421がAsnからThrに変更される、請求項12に記載のFc含有分子。
【請求項14】
前記Fcドメインが、残基359、361、419、及び421において、野生型からの変更を有する、請求項12に記載のFc含有分子。
【請求項15】
残基359がThrからAsnに変更され、残基361がAsnからThrに変更され、残基419がThrからAsnに変更され、及び残基421がAsnからThrに変更される、請求項14に記載のFc含有分子。
【請求項16】
EU番号付けに相関して、ヒンジ領域内の残基228、234、及び235のうちの少なくとも1つが変更される、請求項1に記載のFc含有分子。
【請求項17】
プロテアーゼに対して増大した耐性を有するFc含有分子であって、抗体Fcドメインの残基359、382、及び419におけるEU番号付けに相関するN−グリコシル化部位を有する前記Fcドメインを含み、前記Fcドメインの残基297におけるN−グリコシル化部位が除去され、前記Fcドメインが、残基299、359、361、419、及び421において、野生型からの変更を有する、Fc含有分子。
【請求項18】
EU番号付けに相関して、ヒンジ領域内の残基228、234、及び235のうちの少なくとも1つが変更される、請求項17に記載のFc含有分子。
【請求項19】
プロテアーゼの放出を特徴とする疾患を治療するための方法であって、対象又は患者にグリコシル化Fc含有タンパク質調製物を投与する工程を含み、前記抗体調製物が、野生型から変更された残基を有し、前記残基が、下部ヒンジ内のFcγR結合部位から遠位にあるか又はCH2〜CH3接合領域においてFcRn結合領域から遠位にある、方法。
【請求項20】
プロテアーゼによる開裂に対するFc含有タンパク質の耐性を増大させる方法であって、359位、382位、及び419位のうちの少なくとも1つにおけるEU番号付けに相関するN−グリコシル化部位を前記Fc含有タンパク質に付加する工程を含む、方法。
【請求項21】
359位、382位、及び419位におけるEU番号付けに相関するN−グリコシル化部位を前記Fc含有タンパク質に付加する工程を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
297位におけるEU番号付けに相関する前記N−グリコシル化部位を除去する工程を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
プロテアーゼによる開裂に対するFc含有タンパク質の感受性を変更する方法であって、残基359、382、及び419におけるEU番号付けに相関する前記Fc含有タンパク質配列のN−グリコシル化部位を変更する工程を含む、方法。
【請求項24】
359位、382位、及び419位におけるEU番号付けに相関するN−グリコシル化部位を前記Fc含有タンパク質に付加する工程を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
297位におけるEU番号付けに相関する前記N−グリコシル化部位を除去する工程を更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
EU番号付けに相関して、ヒンジ領域内の残基228、234、及び235のうちの少なくとも1つを、野生型から変更する工程を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
本明細書に記載されたいずれかの発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−509415(P2013−509415A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536923(P2012−536923)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/053948
【国際公開番号】WO2011/059684
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(509087759)ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド (77)
【Fターム(参考)】