説明

抗体コンジュゲート

ヘテロ二官能性ポリアルキレングリコールリンカーを介してシグナル発生部分に共有結合された抗体を含む抗体/シグナル発生部分コンジュゲートが開示される。開示されるコンジュゲートは、組織切片および細胞学的サンプルの免疫組織化学およびin situハイブリダイゼーションアッセイに抜群のシグナル発生を表す。1つの態様では、ハプテン標識プローブを持つ核酸配列の酵素−金属組織学的検出が、増幅せずに1次抗体として開示するコンジュゲートを使用して達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本出願は2005年4月28日に出願された特許文献1の利益を主張し、この出願は引用により本明細書に編入する。
【発明の背景】
【0002】
発明の背景
1.分野
本発明は、生物学的サンプル中の目的分子を検出するための試薬および方法に関する。より詳細には、本発明は抗体コンジュゲートおよび組織切片のような生物学的サンプル中の目的分子を検出するためのそのようなコンジュゲートの使用法に関する。
2.背景
抗体およびシグナル発生部分の共有コンジュゲートは、生物学的サンプル中の特異的な標的分子を検出するためのイムノアッセイに使用することができる。そのようなコンジュゲートの抗体部分は、サンプル中の標的に特異的に結合し、そしてシグナル発生部分を利用して標的の存在/およびまたは場所を示す検出可能なシグナルを提供する。広く使用されるようになったコンジュゲートの1つの型、特に免疫組織化学的分析用のコンジュゲートは、抗体と酵素とのコンジュゲートである(抗体−酵素コンジュゲート)。検出可能なシグナルは、基質をサンプルに加え、そしてコンジュゲートの酵素部分が基質を、抗体部分がその標的に結合した部位で例えば着色、蛍光または発光生成物に転換することにより生成される。
【0003】
抗体−酵素コンジュゲートは、典型的には少なくとも2つの反応性基を有することを特徴とする多官能性(多くは二官能性)カップリング試薬を使用して調製され、その1つは抗体上の官能基と反応し、そしてもう1つは酵素上の官能基と反応する。しかし立体的効果により、あるいはカップリング試薬が抗体および酵素の機能または特異性に重要な酵素または抗体の一部に位置する官能基と反応するので、カップリングは抗体および酵素のいずれかまたは両方の不活性化を導く恐れがある。
【0004】
抗体の特異性および酵素活性の損失を最少にするための取り組みは、それらの機能とは関係しない抗体および酵素のいずれか、もしくは両方の特定のアミノ酸残基に対して特異的なカップリングスキームを使用することである。この取り組みは、引用により本明細書に編入する特許文献2に記載されたFc−特異的結合に関する方法により例示される。この方法では、スルフヒドリル基(チオール基)が抗体のFc部分のグリコシル化領域に特異的に導入され、そしてリンカー分子と一緒に使用されて酵素を抗体に共有的に結合する。Fc部分は抗体の特異的結合特性に関与しないので、そのようなコンジュゲートはより大きな特異性を保持し、これが目的の特定の標的分子に関する検出可能なシグナルを増し、そして非特異的結合によるバックグラウンドを下げる。
【0005】
部位特異的結合は、重要な官能基の損失による抗体の特異性および酵素活性の損失を最少にするための手助けとして使用することができるが、そのような方法は、多数のコンジュゲートの凝集により、およびコンジュゲート中の抗体と酵素(1もしくは複数)との間の相互作用からのような立体効果から生じる抗体の特異性および酵素活性の損失に取り組んではいない。有害な立体効果は、コンジュゲート組成物の調製中に起こる複数の酵素、抗体および/またはコンジュゲート間の意図せぬ架橋結合から生じる可能性もある。
【0006】
立体効果による抗体の特異性および酵素活性の損失を最少にする1つの取り組みは、抗体と酵素をより長い距離で分けるために、カップリング試薬の長さを増すことである。この取り組みは特許文献3に開示された方法および結合試薬により例示される。この方法では、抗体を酵素(1もしくは複数)にカップリングするために延長されたアルキル、シクロアルキル、アルキル−シクロアルキルおよび芳香族部分を有するヘテロ官能性リンカーが使用される。そのようなリンカーはより多くの原子を含み、そして抗体と酵素(1もしくは複数)との間により大きな分離を提供するはずであるが、そのようなリンカーの疎水的性質が疎水的効果により水溶液中でコンジュゲートの有害な凝集を上昇させると考えられる。さらにそのようなリンカーは、コンジュゲートが疎水的効果によりそれ自体で内外から崩壊してそのサイズが最小になる時、抗体と酵素(1もしくは複数)との間の有害なコンジュゲート内相互作用が可能になるほど十分に柔軟である。
【0007】
コンジュゲート間の有害な凝集を最少とする試みは特許文献4に記載され、これは抗体−酵素コンジュゲートを調製するためにホモ−二官能性、ビス−マレイミドポリアルキレングリコールリンカーの使用を記載する。しかしそのようなホモ−二官能性リンカーの使用は、コンジュゲートの調製中に抗体、酵素および/またはコンジュゲートの架橋結合を導くことができる。架橋結合は平均サイズを上げ、そしてグリコールリンカーを使用することにより付与される水溶性の上昇をある程度、中和する。さらに架橋結合はコンジュゲート組成における単分散性を下げることを導き、これは特にコンジュゲートを用いた標的の検出が細胞膜を介する拡散に限定され得る組織および細胞サンプルにおいて、結果の一貫性に有害な効果を有する恐れがある。
【0008】
いくつかのヘテロ二官能性ポリエチレングリコールリンカーが知られているが、それらを抗体−酵素コンジュゲートを形成するためのカップリング試薬として使用するための試みは知られていない。むしろChen et al(非特許文献1:タンパク質のカップリングおよびコラーゲンマトリックスの架橋結合のための二官能性ポリエチレングリコール誘導体の使用:The use of bifunctional polyethylene glycol derivatives for coupling of proteins to and cross−linking of collagen matrices)に開示されているように、そのような試薬は、活性なタンパク質が組織工学の目的で連結される分解性マトリックスを調製するために使用されてきた。
【0009】
所定の抗体コンジュゲートにより生成されるシグナル増加の観点から、多数の酵素を単一抗体に結合することが望ましい。しかし単一の抗体に連結する酵素の数が上がると、単一抗体の回りに多数の酵素が込み合うことによる立体的理由によりコンジュゲートの機能が損なわれる見込みも上昇する。込み合う酵素を最少にする1つの取り組みは、酵素間および酵素と抗体または抗体フラグメントとの間の分離を提供するためのスカフォールドを使用することである。例えば特許文献5および特許文献6は、酵素間の分離を増すと同時に、特異的結合成分[特異的なF(ab’)フラグメント]あたりの酵素分子の数も効果的に上げるためのポリリシンまたはデキストランスカフォールドの使用を記載する。これらの特許では、この取り組みが特異的結合成分あたりのシグナル発生部分の平均数を上げるが、ポリマー性スカフォールド(典型的には低い単分散性の)の使用がバックグラウンドを上げ、そして再現性を下げることを記載する。そのような構築物の高分子量(典型的には>1MDaより大きい)が、拡散を妨害し、そして組織/細胞透過性を減らし、これによりシグナルが低下する。
【0010】
したがって必要とされているのは、少なくとも記載されている従来技術の限定された取り組みを克服する抗体/シグナル発生コンジュゲート組成物である。特に小さいながらも、より大きなスカフォールドコンジュゲートの高いシグナル発生能を保持する酵素の抗体コンジュゲート(およびその作成法)が望まれている。
【参考文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許仮出願第60/675,759号明細書
【特許文献2】米国特許第5,191,066号明細書
【特許文献3】米国特許第5,053,520号明細書
【特許文献4】米国特許第4,810,638号明細書
【特許文献5】米国特許第6,252,053号明細書
【特許文献6】米国特許第6,613,564号明細書
【非特許文献1】Chen et al.,J.Mater.Sci.Mater.Med.,13:1029−1035,2002
【発明の開示】
【0012】
発明の要約
シグナル発生部分を持つ抗体コンジュゲートが開示され、このコンジュゲートの作成および使用法も開示される。開示する抗体コンジュゲートは、生物学的サンプル中の目的分子の検出、特に組織切片および細胞学サンプル中のそのような分子の検出に優れた性能を現す。特に開示する抗体−酵素コンジュゲートは、高量の抗体特異性および酵素活性を保持し、そしてこれにより生物学的サンプル中の抗原の検出に現在使用されているコンジュゲートよりも強力な染色を低いバックグラウンドで提供する。
【0013】
1つの観点では、ヘテロ二官能性ポリエチレングリコール(PEG)リンカーのようなヘテロ二官能性ポリアルキレングリコールリンカーを介してシグナル発生部分と共有結合された抗体を含むコンジュゲートが開示される。1つの態様では、開示されるコンジュゲートは、抗体、およびカルボニル反応性基、アミン反応性基、チオール反応性基および光反応性基から選択される2つの異なる反応性基の組み合わせを含むヘテロ二官能性PEGリンカーにより共有結合されたシグナル発生部分を含む。特定の態様では、PEGリンカーはチオール反応性基およびアミン反応性基の組み合わせ、またはカルボニル反応性基およびチオール反応性基の組み合わせを含む。より詳細な態様では、チオール反応性基はマレイミド基を含み、アミン反応性基は活性エステルを含み、そしてカルボニル反応性基はヒドラジン誘導体を含む。
【0014】
さらに一層詳細な態様では、開示するコンジュゲートは、一般式:
【0015】
【化1】

【0016】
式中、Abは抗体であり、SMはシグナル発生部分であり(例えば酵素)、そしてn=1〜50(n=2〜30、n=2〜20またはn=4〜12のような)、そしてs=1〜10(s=2〜6またはs=3〜4のような)である、
を有する。
【0017】
さらに別の一層詳細な態様では、開示するコンジュゲートは式:
【0018】
【化2】

【0019】
式中、Abは抗体であり、SMはシグナル発生部分であり(酵素のような)、m=1〜50(m=2〜30、m=2〜20またはm=4〜12のような)、そしてt=1〜10(t=2〜6またはt=3〜4のような)である、
を有する。場合によりPEGリンカーのヒドラジド基は抗体のグリコシル化部分に形成されたアルデヒド基の炭素に酸化により結合される。
【0020】
別の観点では、開示するコンジュゲートの作成法が提供される。1つの態様では、抗体コンジュゲートの作成法は抗体からチオール化抗体を形成し;アミン基を有するシグナル発生部分をPEGマレイミド/活性エステル二官能性リンカーと反応させて、活性化シグナル発生部分を形成し;そしてチオール化抗体を活性化シグナル発生部分と反応させて、抗体およびシグナル発生部分のコンジュゲートを形成することを含む。チオール化抗体は、抗体に固有のシステイン架橋の還元剤による還元により形成され得るか、または抗体を、チオールを抗体に導入する試薬と反応させることにより形成され得る。
【0021】
別の態様では、開示する抗体コンジュゲートの作成法には、抗体をオキシダントと反応させて、アルデヒドを持つ抗体を形成し;アルデヒドを持つ抗体をPEGマレイミド/ヒドラジド二官能性リンカーと反応させてチオール反応性抗体を形成し;そしてチオール反応性抗体をチオール化シグナル発生部分と反応させて抗体−シグナル発生部分コンジュゲートを形成することを含む。特定の態様では、抗体をオキシダントと反応させてアルデヒドを持つ抗体を形成することは、抗体のグリコシル化領域を酸化して(過ヨウ素酸塩、臭素またはヨウ素を用いるような)、アルデヒドを持つ抗体を形成することを含む。
【0022】
別の観点では、開示する方法に使用して、開示するコンジュゲートを提供することができるPEGマレイミド/ヒドラジド二官能性リンカーが開示される。さらに別の観点では、開示するコンジュゲートを使用して生物学的サンプル中の分子を検出するための方法が開示される。開示のこれらのおよびさらなる観点、態様および特徴は、以下の詳細な説明および実施例から明らかとなるだろう。
【0023】
幾つかの具体的態様の詳細な説明
本発明のさらなる観点は、以下の非限定的例により具体的に説明され、これは以下に定義する略号および用語について始める。
I.略号
2−ME 2−メルカプトエタノール
2−MEA 2−メルカプトエチルアミン
Ab 抗体
ALP アルカリホスファターゼ
BSA ウシ血清アルブミン
DTE ジチオエリスリトール(シス−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジチオ
ールブタン)
DTT ジチオスレイトール(トランス−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジチ
オールブタン)
EGFR 上皮増殖因子受容体
ER エストロゲン受容体
HRP 西洋ワサビペルオキシダーゼ
IHC 免疫組織化学
ISH in situハイブリダイゼーション
MAL マレイミド
NHS N−ヒドロキシ−スクシンイミド
PEG ポリエチレングリコール
PR プロゲステロン受容体
SAMSA S−アセチルメルカプトコハク酸
SATA N−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート
SATP スクシンイミジル アセチル−チオプロピオネート
SM シグナル発生部分
SMPT スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジル
ジチオ)トルエン
SPDP N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート
TCEP トリス(カルボキシエチル)ホスフィン
【0024】
II.用語
用語「a」、「an」および「the」は、内容が明確に他を示さない限り、単数および複数の両方の指示対称を含む。
【0025】
用語「抗体」は、集合的に免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様分子(IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、その組み合わせ、および任意の脊椎動物例えばヒト、ヤギ、ラット、ウサギおよびマウスのような哺乳動物における免疫応答中に生産される類似分子を含む)、および目的分子(または目的分子に高度に類似性の群)に、他の分子(例えば生物学的サンプル中の他の分子の結合定数よりも少なくとも10−1より大きい、10−1より大きく、または10−1より大きい目的分子への結合定数を有する抗体および抗体フラグメント)の結合を実質的に排除する程度まで、特異的に結合する抗体フラグメントを含む。抗体フラグメントにはタンパク質分解抗体フラグメント[当該技術分野で知られているF(ab’)フラグメント、Fab’フラグメント、Fab’−SHフラグメントおよびFabフラグメントのような]、組換え抗体フラグメント(当該技術分野で知られているsFvフラグメント、dsFvフラグメント、二重特異性sFvフラグメント、二重特異性dsFvフラグメント、ダイアボディ(diabodies)およびトリアボディ(triabodies)のような)、および特許請求されている抗体(例えば米国特許第6,015,695号;同第6,005,079号;同第5,874,541号;同第5,840,526号;同第5,800,988号;および同第5,759,808号明細書を参照にされたい)を含む。
【0026】
「目的分子」という句は、存在、場所および/または濃度が測定される分子を指す。目的分子の例には、ハプテンで標識されたタンパク質および核酸配列を含む。
III.概説
1つの観点では、以下に表す一般構造
【0027】
【化3】

【0028】
式中、AおよびBは異なる反応性基を含み、xは2〜10の整数であり(2、3もしくは4のような)、そしてyは3〜20または4〜12のような1〜50の整数、例えば2〜30である、
を有するヘテロ二官能ポリアルキレングリコールリンカーを介してシグナル発生部分に共有結合された抗体を含む抗体/シグナル発生部分コンジュゲートが開示される。1または複数の水素原子は、ヒドロキシル基、アルコキシ基(メトキシおよびエトキシのような)、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、スルファト基およびアミノ基(ジアルキルアミノ基のようなモノ−およびジ−置換アミノ基を含む)のようなさらなる官能基に置換され得る。
【0029】
リンカーのAおよびBは、独立してカルボニル反応性基、アミン反応性基、チオール反応性基、または光反応性基を含むことができるが、同じではない。カルボニル反応性基の例にはヒドラジン誘導体およびアミンのようなアルデヒドおよびケトン反応性基を含む。アミン反応性基の例には、NHSまたはスルホ−NHS、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、スルホニルクロライド、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、カーボネート、アリールハライド、イミドエステル、無水物等のような活性エステルを含む。チオール反応性基の例には、非重合性ミハエル受容体、ハロアセチル基(ヨードアセチルのような)、アルキルハライド、マレイミド、アジリジン、アクリロイル基、ビニルスルホン、ベンゾキノン、フルオロベンゼン基(テトラおよびペンタフルオロベンゼン基のような)のような求核性置換を受けることができる芳香族基、およびピリジルジスルフィド基のようなジスルフィド基およびエルマン試薬で活性化されるチオールがある。光活性基の例には、アリールアジドおよびハロゲン化アリールアジドを含む。このような各種類の基のさらなる例は、当業者には明らかである。反応条件および1つの種類の反応性基の別の反応性基への交換法に関するさらなる例および情報は、Hermanson、「生物コンジュゲート技術(Bioconjugate Techniques)」、アカデミックプレス(Academic Press)、サンディエゴ、1996に提供されており、これは引用により本明細書に編入する。特定の態様では、チオール反応性基はビニルスルホン以外である。
【0030】
幾つかの態様では、ヘテロ二官能性リンカーのチオール反応性基は、抗体に共有結合され、そしてヘテロ二官能性リンカーのアミン反応性基がシグナル発生部分に共有結合されているか、またはその逆である。例えばヘテロ二官能性リンカーのチオール反応性基は、抗体のシステイン残基(システイン架橋の還元により形成されるような)に共有結合されることができ、あるいはヘテロ二官能性リンカーのチオール反応性基は、抗体に導入されたチオール基に共有結合されることができ、そしてアミン反応性基はシグナル発生部分に共有結合される。
【0031】
あるいはヘテロ官能性リンカーのアルデヒド反応性基は、抗体に共有結合されることができ、そしてヘテロ官能性リンカーのアミン反応性基は、シグナル発生部分に共有結合されることができ、あるいはその逆であることもできる。特定の態様では、ヘテロ官能性リンカーのアルデヒド反応性基は、抗体のグリコシル化部分上に形成されたアルデヒドに共有結合されることができ、そしてアミン反応性基はシグナル発生部分に共有結合される。
【0032】
さらに別の態様では、ヘテロ二官能性リンカーのアルデヒド反応性基は抗体に共有結合され、そしてヘテロ官能性リンカーのチオール反応性基は、シグナル発生部分に共有結合されるか、あるいはその逆である。
【0033】
シグナル発生部分の例には酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼまたはβ−ラクタマーゼのような)、蛍光分子(フルオレセイン、クマリン、BODIPY色素、レゾルフィンおよびローダミン:さらなる例は、ハンドブック−蛍光プローブおよび標識化技術のガイド(Handbook−A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologie
s)、インビトロジェン コーポレーション(Invitrogen Corporation)、ユージーン、オレゴン州に見いだすことができる)、検出可能な構築物(量子ドットのような蛍光構築物、これは例えばインビトロジェンコーポレーション、ユージーン、オレゴン州から得ることができる;例えば米国特許第6,815,064号、同第6,682,596号および同第6,649,138号明細書を参照にされたい。これら特許のそれぞれは、引用により本明細書に編入する)、金属キレート(Gd3+のような放射活性または常磁性金属イオンのDOTAおよびDPTAキレートのような)、およびリポソーム(蛍光分子を封鎖するリポソームのような)を含む。
【0034】
シグナル発生部分が酵素を含む場合、発色化合物、蛍光化合物または発光化合物を酵素と組み合わせて使用して、検出可能なシグナルを生成する(広い様々な種類のそのような化合物が、例えばモレキュラープローブ社(Molecular Probes,Inc.)、ユージーン、オレゴン州から入手可能である)。発色化合物の特定の例には、ジ−アミノベンジジン(DAB)、4−ニトロフェニルホスフェート(pNPP)、ファーストレッド、ブロモクロロインドリルホスフェート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、BCIP/NBT、ファーストレッド、APオレンジ、APブルー、テトラメチルベンジジン(TMB)、2,2’−アジノ−ジ−[3−エチルベンゾチアゾリンスルホネート](ABTS)、o−ジアニシジン、4−クロロナフトール(4−CN)、ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)、o−フェニレンジアミン(OPD)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−Gal)、メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトピラノシド(MU−Gal)、p−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシド(PNP)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド(X−Gluc)、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)、フクシン、ヨードニトロテトラゾリウム(INT)、テトラゾリウムブルーおよびテトラゾリウムバイオレットがある。
【0035】
特定の態様では、コンジュゲートのヘテロ二官能性リンカーは式:
【0036】
【化4】

【0037】
を有し、
式中、AおよびBは前のような異なる反応性基を含み、xおよびyは前の通りであり、そしてXおよびYはスペーサー基、例えば1と6との間の炭素、または1と4との間の炭素のような1と10との間の炭素を有するスペーサー基であり、そして場合により1もしくは複数のアミド連結、エーテル連結、エステル連結等を含んでよい。スペーサーXおよびYは同じか、または異なることができ、そして直鎖、分岐または環式(例えば脂肪族もしくは芳香族環式構造)であることができ、そして非置換または置換されることができる。スペーサー上の置換基であることができる官能基には、カルボニル基、ヒドロキシル基、ハロゲン(F、Cl、BrおよびI)原子、アルコキシ基(メトキシおよびエトキシのような)、ニトロ基およびスルファト基がある。
【0038】
別の特定の態様では、ヘテロ二官能性リンカーは式:
【0039】
【化5】

【0040】
式中、n=1〜50、例えばn=3〜20またはn=4〜12のようなn=2〜30である、
を有するヘテロ二官能性ポリエチレングリコールリンカーである。さらに詳細な態様では、このリンカーのスクシンイミド基のカルボニルはシグナル発生部分のアミン基に共有結合され、そしてリンカーのマレイミド基は抗体のチオール基に共有結合されるか、あるいはその逆である。さらに他の特定の態様では、平均約1から約10の間のシグナル部分が抗体に共有結合している。
【0041】
幾つかの特定の態様では、ヘテロ二官能性リンカーは式:
【0042】
【化6】

【0043】
式中、m=1〜50、例えばm=3〜20または4〜12のようなm=2〜30である、
を有する。幾つかのさらに詳細な態様では、このリンカーのヒドラジド基は抗体のアルデヒド基に共有結合され、そしてリンカーのマレイミド基はシグナル発生部分のチオール基に共有結合されるか、あるいはその逆である。さらに一層詳細な態様では、抗体のアルデヒド基は、抗体のFc部分のグリコシル化領域の酸化により抗体のFc部分に形成されたアルデヒド基である。さらに別の詳細な態様では、平均約1から約10の間のシグナル発生部分が抗体に共有結合されており、そのようなシグナル発生部分は、酵素、量子ドットおよびリポソームを含む。
【0044】
他の特定の態様では、ヘテロ二官能性PEG−連結抗体−シグナル発生部分コンジュゲートは、式:
【0045】
【化7】

【0046】
式中、Abは抗体であり、SMはシグナル発生部分であり、そしてn=1〜50(n=2〜30、n=2〜20またはn=4〜12のような)、そしてs=1〜10(s=2〜6またはs=3〜4のような)である、
を有するコンジュゲートを含んでなる。
【0047】
さらに別の態様では、ヘテロ二官能性PEG−連結抗体−シグナル発生部分コンジュゲ
ートは、式:
【0048】
【化8】

【0049】
式中、Abは抗体であり、SMはシグナル発生部分であり、m=1〜50(m=2〜30、m=2〜20またはm=4〜12のような)、そしてt=1〜10(t=2〜6またはt=3〜4のような)である、
を有するコンジュゲートを含んでなる。
【0050】
開示されるコンジュゲートに使用する抗体は、任意の特定の分子または高度に類似の分子の特定の基に特異的に結合することができるが、特定の態様では、抗体は抗−ハプテン抗体(これは目的の核酸配列に向けられたハプテン−標識化プローブ配列を検出するために使用され得る)、またはサンプル中に存在し得る特定のタンパク質または特定のタンパク質の形態(タンパク質のリン酸化形態のような)に特異的に結合する抗体を含んでなる。ハプテンは、抗体により特異的に結合される低有機分子であるが、それら自体では動物に免疫応答を誘導せず、そして免疫応答を生じるためには最初にタンパク質またはポリ−核酸のような大きいキャリアー分子に連結されなければならない。ハプテンの例には、ジ−ニトロフェノール、ビオチンおよびジゴキシゲニンがある。さらに別の特定の態様では、抗体はイムノアッセイで2次抗体として使用することができる抗−抗体抗体を含んでなる。例えば抗体は、抗−マウスIgG抗体、抗−ウサギIgG抗体または抗−ヤギIgG抗体のような抗−IgG抗体を含んでなることができる。
【0051】
開示する抗体コンジュゲートは、免疫組織化学的結合アッセイを含め任意の種類の結合イムノアッセイで目的分子を検出するために利用することができる。1つの態様では、開示するコンジュゲートはイムノアッセイにおける標識化1次抗体、例えば特定分子またはハプテン標識化分子に向けられた1次抗体として使用される。あるいは目的分子がマルチエピトープ性である場合、複数のエピトープに向けられたコンジュゲートの混合物を使用することができる。別の態様では、開示するコンジュゲートはイムノアッセイにおける2次抗体として使用される(例えば目的の分子に結合する1次抗体に向けられる;目的分子はマルチエピトープ性である場合、サンドイッチ型のアッセイにおいて2つの1次抗体により結合され得る)。さらに別の態様では、1次抗体により結合された目的分子によるシグナルのさらなる増幅を提供するために、開示するコンジュゲートの混合物が使用される(目的分子はサンドイッチ型のアッセイでは2つの1次抗体により結合され得る)。例えば混合物中の第1コンジュゲートは、目的分子に結合する1次抗体に向けられ、そして第2コンジュゲートは第1コンジュゲートの抗体部分に向けられ、これにより目的分子の部位により多くのシグナル発生部分が局在する。開示するコンジュゲートを使用することができる他の型のアッセイは、当業者には直ちに明白である。
【0052】
別の観点では、式:
【0053】
【化9】

【0054】
式中、m=1〜50、例えばm=3〜20またはm=4〜12のようなm=2〜30である、
を有するヘテロ二官能性リンカーが開示される。
【0055】
さらに別の観点では、抗体−シグナル発生部分コンジュゲートを調製する方法が開示され、この方法は抗体からチオール化抗体を形成し;アミン基を有するシグナル発生部分をPEGマレイミド/活性エステル二官能性リンカーと反応させて、活性化シグナル発生部分を形成し;そしてチオール化抗体を活性化シグナル発生部分と反応させて、抗体−シグナル発生部分コンジュゲートを形成することを含む。チオール化抗体は、抗体を還元剤と反応させてチオール化抗体を形成することにより形成することができ、例えば抗体を還元剤と反応させて、抗体あたり約1から約10の間の平均チオール数を有するチオール化抗体を形成する。抗体あたりのチオールの平均数は滴定により決定することができる。還元剤の例には2−メルカプトエタノール、2−メルカプトエチルアミン、DTT、DTEおよびTCEPおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される還元剤を含む。特定の態様では、還元剤はDTTおよびDTEおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、そして約1mMから約40mMの間の濃度で使用される。
【0056】
あるいはチオール化抗体を形成することは、チオール基を抗体に導入することを含む。例えばチオール基は、2−イミノチオラン、SATA、SATP、SPDP、N−アセチルホモシステインチオラクトン、SAMSAおよびシスタミンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される試薬を用いた反応により抗体に導入することができる(例えば、Hermanson、「生物コンジュゲート技術(Bioconjugate Techniques)」、アカデミックプレス、サンディエゴ、1996を参照にされたい。これは引用により本明細書に編入する)。さらに詳細な態様では、チオール基を抗体に導入することは、抗体をオキシダント(過ヨウ素酸塩、I、Brまたはそれらの組み合わせ)と反応させて抗体の糖部分をアルデヒド基に変換し、そして次にアルデヒド基をシスタミンと反応させることを含む。
【0057】
別の詳細な態様では、シグナル発生部分をPEGマレイミド/活性エステル二官能性リンカーと反応させて、活性化シグナル発生部分を形成することは、シグナル発生部分を式:
【0058】
【化10】

【0059】
式中、n=1〜50、例えばn=3〜20またはn=4〜12のようなn=2〜30である、
を有するPEGマレイミド/活性エステルと反応させることを含む。シグナル発生部分は、例えば酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼのような)であることができる。
【0060】
さらなる観点では、抗体−シグナル発生部分コンジュゲートを調製する方法が開示され、この方法は抗体をオキシダントと反応させてアルデヒドを持つ抗体を形成し;アルデヒドを持つ抗体をPEGマレイミド/ヒドラジド二官能性リンカーとを反応させて、チオール反応性抗体を形成し;そしてチオール反応性抗体を、チオール化シグナル発生部分を反応させて、抗体−シグナル発生部分コンジュゲートを形成することを含む。特定の態様では、抗体をオキシダントと反応させてアルデヒドを持つ抗体を形成することは、抗体のグリコシル化領域を酸化して(例えば過ヨウ素酸塩を用いるような)アルデヒドを持つ抗体を形成することを含む。さらに詳細な態様では、抗体をオキシダントと反応させてアルデヒドを持つ抗体を形成することは、抗体あたり平均約1から約10の間のアルデヒド基を導入することを含む。別のより詳細な態様では、この方法に使用されるPEGマレイミド/ヒドラジド二官能性リンカーは、式:
【0061】
【化11】

【0062】
式中、m=1〜50、例えばm=3〜20またはm=4〜12のようなm=2〜30である、
を有する。
【0063】
チオール化シグナル発生部分は、シグナル発生部分(酵素のような)を還元剤(2−メルカプトエタノール、2−メルカプトエチルアミン、DTT、DTEおよびTCEPおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される還元剤のような)と反応させてチオール化シグナル発生部分を形成するか、あるいはチオール基を導入すること(例えばシグナル発生部分を、2−イミノチオラン、SATA、SATP、SPDP、N−アセチルホモシステインチオラクトン、SAMSAおよびシスタミンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される試薬と反応させることによる)により形成することができる。
【0064】
さらに別の観点では、生物学的サンプル中の目的分子を検出する方法が開示され、この方法は生物学的サンプルを、ヘテロ二官能性PEG連結抗体−シグナル発生部分コンジュゲートと接触させ;そして抗体−シグナル発生部分コンジュゲートにより生成されるシグナルを検出することを含む。生物学的サンプルは生体分子(タンパク質、核酸、脂質、ホルモン等)を含有する任意のサンプルであることができるが、特定の態様では、生物学的サンプルは組織切片(生検から得られるような)、または細胞学サンプル(Papスミアまたは血液スミアのような)を含む。特定の態様では、ヘテロ二官能性PEG連結抗体−シグナル発生部分コンジュゲートは、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼのような酵素に共有結合した抗体を含む。別の特定の態様では、ヘテロ二官能性PEG連結抗体−シグナル発生部分コンジュゲートは、検出可能な構築物またはリポソームに共有結合された抗体を含む。
【0065】
さらに詳細な方法では、シグナル発生部分はアルカリホスファターゼのような酵素を含んでなり、そして方法はさらに生物学的サンプルを水溶性金属イオン、および酵素によりレドックス−活性剤に転換される酵素のレドックス−不活性基質と接触させることを含んでなり、このレドックス−活性剤は金属イオンを還元してそれを沈殿させる(例えば2004年12月20日に出願された同時継続出願である米国特許出願第11/015,646号明細書、国際特許出願公開第2005/003777号パンフレット、および米国特許出願公開第2004/0265922号明細書を参照にされたい:これらの各々は引用により本明細書に編入する)。別の特定の態様では、シグナル発生部分が酸化還元酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼのような)を含んでなり、そして方法がさらに生物学的サンプルを水溶性金属イオン、酸化剤および還元剤と接触させることを含んでなる(例えば引用により本明細書に編入する米国特許第6,670,113号明細書を参照にされたい)。
【実施例】
【0066】
IV.実施例
以下の非限定的な実施例は、本発明の特定の観点をさらに具体的に説明するために提供される。
【0067】
A.マレイミドPEG活性エステルを使用した抗体−シグナル発生部分コンジュゲートの調製
1つの態様では、開示するシグナル発生部分コンジュゲートは以下のスキーム1〜3に記載する方法に従い調製され、ここでヘテロ二官能性ポリアルキレングリコールリンカーは、アミン−反応性基(活性エステル)およびチオール−反応性基(マレイミド)を有するポリエチレングリコールリンカーである。スキーム1に示すように、1もしくは複数の利用可能なアミン基を有するシグナル発生部分(酵素または量子ドットのような)を、過剰なリンカーと反応させて活性化シグナル発生部分を形成する。
【0068】
【化12】

【0069】
チオール基は、スキーム2に示すように抗体をDTTのような還元剤で処理することにより抗体に導入される。DTEまたはDTTのような穏やかな還元剤については、限定された数のチオール(約2から約6の間のような)を抗体に導入すると同時に、抗体を完全なまま維持するために(これはサイズ排除クロマトグラフィーにより測定することができる)、約1mMから約40mMの間の濃度(例えば約5mMから約30mMの間、または約15mMから約25mMの間の濃度)が使用される。
【0070】
【化13】

【0071】
スキーム1および2に従い生成された成分は、次いで合わせてスキーム3に示すコンジュゲートを与える。
【0072】
【化14】

【0073】
スキーム1〜3はマレイミドPEG活性エステルに関する最適な方法を具体的に説明するが(ここでシグナル発生部分は、最初にアミン基をリンカーの活性エステルと反応させて、活性化シグナル発生部分を形成することにより活性化される)、抗体上のアミンもしくはチオールのいずれかをリンカーと反応させることにより最初に抗体を活性化し、次いで活性化抗体をシグナル発生部分と反応させすることも可能である[チオールもしくはアミンを適切なリンカー上の残る反応性基と反応させる]。さらにスキーム3では3つのシグナル発生部分が示されているが、複数の抗体をシグナル発生部分に、または任意の数のシグナル発生部分を単一の抗体に連結することも可能である。
【0074】
別の態様では、抗体が結合のために活性化され、次いで以下のスキーム4および5に示すようにシグナル発生部分に結合される。スキーム4では、抗体がスキーム1に示すようなシグナル発生部分の代わりに活性化される。スキーム4の特定の態様では、糖部分(抗体のFc部分のグリコシル化領域に位置するような)が最初に酸化されてアルデヒド基を提供し、次いでこれをリンカーのアルデヒド反応性基(具体的に説明するマレイミド/ヒドラジドPEGリンカーのヒドラジド基のような)と反応させる。
【0075】
【化15】

【0076】
次にスキーム5に示すように、活性化された抗体のリンカー部分のチオール反応性基
(具体的に説明するようにマレイミド基のような)を、シグナル発生部分のチオール基と反応させる。ここでも方法を逆転することができ、ここでリンカーは最初にシグナル発生部分上のアルデヒド基(例えば糖部分の酸化により形成された)と反応させて、活性化シグナル発生部分を形成し、次いで活性化シグナル発生部分を抗体上のチオール基と反応させることができる。さらにスキーム4および5は、単一抗体と単一のシグナル発生部分を連結する単一のリンカーのみを示しているが、複数のシグナル発生部分を単一の抗体に連結するか、または幾つかの抗体を単一のシグナル発生部分に連結することも可能であると考えられる。
【0077】
【化16】

【0078】
B.抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートの調製
HRPの活性化
HRPは、例えばマレイミド基および活性エステル基(例えばクウォンタ バイオデザイン(Quanta Biodesign)、ポーウェル、オハイオ州から入手可能なMAL−PEG−NHS、MAL−PEG−NHSまたはMAL−PEG12−NHSリンカー)を有する100倍モル過剰の二官能性PEGリンカーを用いて、周囲温度(23〜25℃)で60分間処理することにより結合のために活性化され得る。Superdex200 10/300GLカラムを通す精製の後、過剰なリンカーを含まないHRP(多くは5〜7個のマレイミドを有する)を100倍モル過剰で得る。MAL−PEG−NHSリンカーを使用したHRP抗体コンジュゲートの生産のための例示の手順を以下に概略する。活性化HRP上のマレイミド基の数は、実施例Dに詳細に記載する方法により測定できる。
【0079】
HRP−PEG−マレイミド(1):4mLの琥珀色のバイアルに、78.8mg(100当量)のMAL−dPEG(商標)NHSエステル(クウォンタ バイオデザイン、ポーウェル、オハイオ州、F.W.=513.50)を加え、続いて2.46mL(61.5mg、1.53μM)のHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ、ピアス(Pierce)、ロックフォード、イリノイ州、Lot FJ925901)を0.1Mのリン酸ナトリウム、pH7.5中の25mg/mLとして加えた。次いでバイアルを暗中、周囲温度(23〜25℃)で自動回転機に置き、そして1時間アミド結合形成反応を進めた。次いで400μlのアリコートを精製のために取り出し、そして溶液の残りを4℃に一時的に保管した。次いで純粋なHRP−PEG−マレイミドは、Superdex 10/300カラム(アマシャム、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)に充填したAkta Purifierでサンプルを分画し、0.1Mリン酸ナトリウム、pH7.5にて1.0mL/分で溶出することにより得た。HRPを含有する画分をプールして、1%溶液(pH6.5)で6.52の280nmでの吸光係数を使用してUV/VIS分光光度計により測定した時、HRP−PEG−マレイミドの2.0mlの4.52mg/mL溶液を得た(90%収率)。
【0080】
チオールの抗体への導入
結合用の抗体、例えば抗−マウスIgGまたは抗−ウサギIgG抗体を活性化するために、抗体を25ミリモルのDTTと周囲温度(23〜25℃)で25分間インキュベーションした。PD−10SEカラムを通す精製後、DTTを含まない抗体、典型的には2〜6個の遊離チオールを持つ抗体を得る(スキーム2)。ヤギ抗−マウスIgGチオールを調製するために概略した例示の手順は、一般に他の抗体にも応用可能である。抗体あたりのチオール数は、実施例Dに記載するチオールアッセイにより測定することができる。
【0081】
ヤギ抗−マウスIgG−チオール(2):8mLの琥珀色のバイアルに、4.11mLのヤギ−抗マウスIgG(ベチルモンゴメリー(Bethyl Montgomery)、テキサス州)を0.1Mリン酸ナトリウム、1.0mM EDAT、pH6.5中の3.01mg/mL溶液として加えた。この溶液に、216μLの新たに調製した500mMの還元剤DTT(1,4−ジチオスレイトール、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、セントルイス、モンタナ州)溶液を加えた。バイアルを暗中で自動回転台に置き、そしてジスルフィド還元を25分間進めた。反応溶液を4つの等しい容量に分け(使用する脱塩カラムの能力の限界により)、そして過剰なDTTは各画分をPD−10脱塩カラムに通し、0.1Mリン酸ナトリウム、1.0mM EDAT、pH6.5で溶出すことにより除去した。抗体を含有する画分を合わせて、pH6.5の1%溶液で14の280nmでの吸光係数を使用してUV/分光光度計により測定した時、8.0mLの1.22mg/mLのDTTを含まないヤギ−抗−マウスIgG−SHを得た(78%収率)。
【0082】
HRP−抗体結合
チオール化抗体(抗−マウスIgG−チオールまたは抗−ウサギIgG−チオールのように)に、3倍モル過剰のHRP−PEG−マレイミドを加える。次いで反応物を周囲温度(23〜25℃)で16時間インキュベーションする。Superdex200 10/300GL SEカラムを通す精製後、典型的には抗体あたり平均2もしくは3個のHRPを持つ抗体が得られる。抗体あたりのHRPの数は、コンジュゲートの吸収を280/403nmの比率で測定し、そして実施例Dの章に概略する計算を行うことにより決定する。例示的手順を以下に概略する。
【0083】
HRP−PEG−ヤギ−抗−マウスIgG(3):8mLの琥珀色のバイアルに、4.0mLのヤギ−抗マウスIgG−チオール溶液(1当量、4.88mg、0.0326マイクロモル)および864μLのHRP−PEG−マレイミド溶液(1)(3当量、3.91mg、0.0976マイクロモル)を加えた。次いでバイアルを周囲温度(23〜25℃)で暗中にて自動回転台に置き、そしてミハエル添加を16時間進めた。次いで遊離抗体および遊離HRPを含まないHRP−PEG−ヤギ−抗−マウスIgGコンジュゲートは、サンプルをSuperdex 10/300カラム(アマシャム、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)に充填したAkta purifierで分画し、0.1Mリン酸ナトリウム、p7.5で0.9mL/分で溶出することにより得た。画分をプールして、コンジュゲートの9.73mLの1.04mg/mL溶液を、実施例Cに記載するピアスのCoomasie Plusタンパク質アッセイにより測定するように得た。次いでコンジュゲートを使用するまで4℃で冷室に保存した。
【0084】
C.抗体/酵素コンジュゲートのMW特性決定
開示したコンジュゲートの優れた単分散性を具体的に説明するために、開示したコンジュゲートの全12例のMWプロファイル(具体的には、8種のHRP−抗−マウスIgGコンジュゲートおよび4種のHRP−抗−ウサギIgGコンジュゲート)を、サイズ排除クロマトグラフィーにより、Superdex200 10/300GLカラム(アマシャム、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)に充填したAkta purifierで、0.1Mリン酸ナトリウムバッファーpH7.5で0.5〜1.0mL/分で溶出することにより決定した。分子量のキャリブレーション標準には:アルドラーゼ(158kDa)、カタラーゼ(232kDa)、フェリチン(440kDa)、チログロビン(669kDa)、リボヌクレアーゼA(13.7kDa)、キモトリプシノーゲン(25kDa)、卵白アルブミン(43kDa)およびアルブミン(67kDa)を含んだ。調査したコンジュゲートは、約230から約330kDaの間の平均MWを有し、与えられたコンジュゲートのMWの全体的範囲は約190〜550kDaであった。精製したコンジュゲートの再注入では、コンジュゲートが非結合化HRPおよび抗体を含まないことが示された。
【0085】
D.コンジュゲートを測定するための分析手順
以下の代表的方法は、マレイミドおよびチオール含量ならびにコンジュゲートあたりのHRP分子の数を測定するために使用することができる。
全タンパク質マイクロプレート法(ピアス)
【0086】
装置および材料
BSA ピアス(ロックフォード、イリノイ州)
Coomasie Plus(商標)試薬 ピアス(ロックフォード、イリノイ州)
マイクロタイタープレート BIO−TEK Synergy HT
プレートリーダー
【0087】
手順
1.プレートリーダーをつけ、そして少なくとも30分間、595nmでウォームアップする。
2.脱イオン水中に1組のBSA標準(1.0、0.5、0.25および0.125mg/mL)を調製する。
3.3連で、15mLのブランク、および各標準または未知を適切なマイクロプレートウェルにピペットで入れる。
4.300mlのCoomasie Plus(商標)試薬を各ウェルに加え、そしてプレートシェーカーで30秒間、混合する。
5.シェーカーからプレートを取り出す。最高に合致した結果のために、プレートを10分間、室温でインキュベーションする。
6.プレートリーダーで595nmの吸収を測定する。
7.ブランクレプリカに関する595nmの平均測定値を、すべての他の個別標準および未知サンプルレプリカの595nmの測定から差し引く(プレートリーダーにより自動的に行われた)。
8.各BSA標準に関してブランク−補正した595nmの測定の平均を、そのμg/mLの濃度に対してプロットすることにより標準曲線を準備する。各未知サンプルのタンパク質濃度を決定するために標準曲線を使用する(プレートリーダーにより行なわれる)。
【0088】
Ab−チオールおよびHRP−PEG−マレイミド含量の測定
装置および材料
メルカプトエタノール J.T.Baker,フィリップスバーグ、
ニュージャージー州
エルマン試薬 ピアス、ロックフォード、イリノイ州
リン酸ナトリウム
EDTA
【0089】
材料の調製
・反応バッファー:0.1Mリン酸ナトリウム;1mM EDTA、pH8.0。
・メルカプトエタノール(BME):M.W.=78.3、d=1.114g/ml。
【0090】
手順
1.プレートリーダーをつけ、そして少なくとも30分間、412nmでウォームアップする。
2.作業ストックを調製する:7μlのBMEを5mlの反応バッファーに
3.3連で、以下のような1組のBME標準を調製する。
【0091】
【表1】

【0092】
4.HRP−PEG−MALをアッセイする場合、160μlのサンプルを160μlの標準1に加え、30分間インキュベーションする。この混合物をHRP−PEG−MALサンプル用の未知として使用する。100μlのこの未知を適切なウェルに工程5に記載するように加える。
5.100μlの各標準または未知をマイクロタイタープレートの適切なウェルに加える(鋳型を取り付ける)。
6.エルマン試薬溶液を調製する。
【0093】
エルマン試薬溶液:8mgのエルマンを2mlの反応バッファーに溶解する。
7.20μlのエルマン試薬を、標準または未知を含む各ウェルに加える。
8.混合し、そして室温で15分間インキュベーションする。
9.プレートリーダーを使用して412nmで吸収を測定する。
10.生データのみを使用する場合、標準について得た値をプロットして標準曲線を作成する。
【0094】
分析
実験の濃度(mMチオール)は、標準曲線から決定し、ここで標準曲線は式:Y=mX+b、式中、Y=OD412nm、X=mMチオール、m=傾斜(標準曲線の式から得た
)、およびb=x軸切片(標準曲線の式から得た)を与える。
【0095】
各サンプルについて、mMでのタンパク質濃度はmg/mlでのタンパク質濃度(全タンパク質アッセイから得た)をサンプルのFWで割り、そして100を掛けることにより決定する。次いで抗体分子あたりのチオール数を、上から得たmMチオール実験濃度を、前段階から得たmMでのタンパク質濃度で割ることにより得る。西洋ワサビペルオキシダーゼ分子あたりのマレイミド数は、最初に上で得た実験のmMチオール濃度を0.5mMから差し引き、次いでこの差異に2を掛け、そしてmMでのタンパク質濃度で割ることにより決定する。
【0096】
抗体のチオール化の典型的範囲は、抗体分子あたり約1から約10チオールの間であり、例えば約2から約4の間のような約2から約6の間である。HRP分子あたりに取り込まれるマレイミド基の数の典型的範囲は、約1から約10の間であり、例えば約5から約7の間のような約3から約8の間である。
【0097】
抗体あたりのHRP数の決定
係数
・HRP分子量=40,000Da
・抗体分子量=150,000Da
・1パーセント溶液(1mg/mL)のHRPの280nm吸光係数=6.52
・1パーセント溶液(1mg/mL)の抗体の280nm吸光係数=14
・403nmでのHRP吸収/280での吸収=2.90(この値はHRPの各異なるロットについて測定する)
【0098】
計算
1)HRPによるコンジュゲートに起因する280nmでの吸収を、403nmでのコンジュゲートの吸収を測定し、そして式:403nmでのHRP吸収/2.90=280nmでのHRP吸収
に適用することにより決定する。
2)1で得た値から、HRPの量を式:280nmでのHRP吸収/6.52=mg/mlでの[HRP]に適用することにより決定する。
3)mMHRPの数は、mg/mlでのタンパク質濃度(2から得た)をFW(40,000)で割り、そして1000を掛けることにより決定する。
4)2次抗体によるコンジュゲートに起因する280nmの吸収は、280nmでのコンジュゲートの吸収を測定し、そして1で決定したHRPによる吸収(contribution)を差し引くことにより決定する。
5)4で得た値から、mg/mlでのHRPの量を、式:280nmでの抗体の吸収/14=mg/mlでの[抗体]に適用することにより決定する。
6)mM抗体の数は、mg/mlでの抗体濃度をFW(150,000)で割り、そして1000を掛けることにより決定する。
7)2次抗体あたりのHRPの数は、mMoleのHRP(3で決定した)を2次抗体のmMole数(6で決定した)により割ることにより算出する。
【0099】
1パーセント溶液のHRP−抗体コンジュゲートの280nmでの吸光係数の決定
1パーセント溶液(1mg/mL)のHRP−抗体コンジュゲートの280nmでの吸光係数の決定は、コンジュゲートのタンパク質濃度を確認し、次いで280nmでの吸収を測定することにより決定される。タンパク質濃度は、上記のピアスのクーマシーアッセイに従い測定することができる。
【0100】
E.免疫組織化学的分析におけるコンジュゲートの安定性
ヤギ抗−マウスおよびヤギ抗−ウサギHRPコンジュゲートのIHC中のカクテルの45℃での安定性を、B5ブロッカー(ベンタナ メディカル システム(Ventana Medical Systems)社、タゥーソン、アリゾナ州)で希釈したアビジン中で測定し、そして結果を図1A〜Dに示す。固定したパラフィン包埋ヒト扁桃組織切片を、CD20/L26(マウス)1次抗体を使用してプローブで釣り、続いてBenchMark(商標)XT自動染色機(ベンタナ メディカル システム社、タゥーソン、アリゾナ州)の標準自動化プロトコールに従いHRPコンジュゲートのカクテルを用いてDAB検出を行った。すべてのスライドは3連で行った。図1Aは試験0日目の典型的な結果を示す;図1Bは試験1日目の典型的な結果を示す;図1Cは試験3日目の典型的な結果を示す;そして図1Dは試験7日目の典型的な結果を示す。たとえ45℃の高温でも、開示したコンジュゲートは7日までに完全に分解せず(染色強度の30〜40%の損失)、開示したコンジュゲートが高度に安定であることを示す。
【0101】
より長期間にわたる類似試験を2〜8℃、27℃および37℃(データは示さず)の保存について行い、そしてさらに開示したコンジュゲートの優れた安定性を証明した。まとめると、2〜8℃では0日から2週間の間に観察された染色強度に変化は無かった。CD20について、27℃で0日から2週間の間で観察された染色強度の変化はほとんど無かった。CD20およびPSAの両方について37℃で、1週間にわたり染色強度に〜約25%の損失が、そして2週間後に染色強度に30〜50%の損失が観察された。CD20およびPSAの両方について、2週間で染色強度には30〜50%の損失がある。
【0102】
F.異なる1次抗体に対する2次抗体として、コンジュゲートのIHC性能の評価
MAL−PEG−NHSリンカーで作成されたヤギ抗−マウスIgGコンジュゲート、同じリンカーで作成されたヤギ抗−ウサギIgGコンジュゲート、またはウサギ抗−マウスIgGおよび2つのコンジュゲートの混合物(「増幅」)を、以下に掲げる1次抗体(ベンタナ メディカル システム社、タゥーソン、アリゾナ州から入手可能)の組織抗原への結合を検出する2次抗体試薬として使用した。適切な保管組織切片をこれらのコンジュゲートで処理し、そして自動化染色機(BenchMark(商標)XT、ベンタナ メディカル システム社、タゥーソン、アリゾナ州)でHRPシグナル発生(DABの添加による)に関する標準プロトコールを使用して発色した。典型的な自動化プロトコールには、脱パラフィン化、数回のすすぎ工程、反応バッファーの添加、1次抗体の添加、2次抗体の添加、DABおよび過酸化水素の添加、そしてカウンター染色の添加を含む。
【0103】
比較可能な(隣接)組織切片は、開示したコンジュゲートおよび2次抗体試薬として使用するポリリシン−スカフォールド化HRP/F(ab’)コンジュゲート(今後、「スカフォールドコンジュゲート」と呼ぶ)で染色した。スカフォールドコンジュゲートは、第2世代のスカフォールドコンジュゲート(サイズ排除クロマトグラフィーにより測定される、より小さい、より均一な)、または第1世代(サイズ排除クロマトグラフィーにより測定されるより大きな、より均一性が低い)のいずれかであった。スカフォールドコンジュゲートに関するさらに詳細な説明は、米国特許第6,613,564号および同第6,252,053号明細書を参照にされたい。
【0104】
抗体
抗−bcl−2(クローン100/D5) 抗−CD57(クローンNK−1)
抗−CD15(クローンMMA) 抗−CD23(クローン1B12)
抗−CD20(クローンL26) 抗−ER(クローン6F11)
抗−PR(クローン16) 抗−p53(クローンD07)
抗−EGFR(クローン31G7) 抗−サイクリン−d1(クローンP2D
11F11)
抗−c−erbB−2(クローンCB11) 抗−PSA
*注記:ウサギ抗体であるPSAを除き、すべてはマウス抗体であった。
【0105】
図2は、開示したコンジュゲート(図2A)および第2世代スカフォールドコンジュゲート(図2B)のbcl−2検出に関する染色結果を表す。結果は、より高い強度の染色が比較できる組織切片中、開示したコンジュゲートで達成されることを示す。
【0106】
図3は、開示したコンジュゲート(図3A)および第2世代スカフォールドコンジュゲート(図3B)を使用したCD−15検出に関する染色結果を表す。結果は、より高い強度の染色が比較できる組織切片中、開示したコンジュゲートで達成されることを示す。
【0107】
図4は、開示したコンジュゲート(増幅を使用した、図4A)および第2世代スカフォールドコンジュゲート(図4B)を使用したCD−20検出に関する染色結果を表す。結果は、より高い強度の染色が比較できる組織切片中、開示したコンジュゲートで達成されることを示す。
【0108】
図5は、開示したコンジュゲート(図5A)、第2世代スカフォールドコンジュゲート(図5B)、および第1世代スカフォールドコンジュゲート(図5C)を使用したCD−23検出に関する染色結果を表す。結果は、両方スカフォールドコンジュゲートよりも高い強度の染色が、比較できる組織切片中、開示したコンジュゲートで達成されることを示す。
【0109】
図6は、開示したコンジュゲート(図6A)および第2世代スカフォールドコンジュゲート(図6B)を使用したCD57検出に関する染色結果を表す。結果は、より高い強度の染色が比較できる組織切片中、開示したコンジュゲートで達成されることを示す。
【0110】
図7は、開示したコンジュゲート(図7A)、第2世代スカフォールドコンジュゲート(図7B)、および第1世代スカフォールドコンジュゲート(図7C)を使用したcerb−B2/CB11検出に関する染色結果を表す。結果は、両方スカフォールドコンジュゲートで見られるよりも高い強度の染色が、比較できる組織切片中、開示したコンジュゲートで達成されることを示す。
【0111】
図8は、開示したコンジュゲート(図8A)および第2世代スカフォールドコンジュゲート(図8B)を使用したサイクリンCD1検出に関する染色結果を表す。結果は、より高い強度の染色が比較できる組織切片中、開示したコンジュゲートで達成されることを示す。
【0112】
図9は、開示したコンジュゲート(図9A)、第2世代スカフォールドコンジュゲート(図9B)、および第1世代スカフォールドコンジュゲート(図9C)を使用したEGFR検出に関する染色結果を表す。結果は、両方スカフォールドコンジュゲートで見られるよりも高い強度の染色が、比較できる組織切片中、開示したコンジュゲートで達成されることを示す。
【0113】
図10は、開示したコンジュゲート(図10A)および第2世代スカフォールドコンジュゲート(図10B)を使用したER検出に関する染色結果を表す。結果は、より高い強度の染色が比較できる組織切片中、開示したコンジュゲートで達成されることを示す。
【0114】
図11は、開示したコンジュゲート(図11A)および第2世代スカフォールドコンジュゲート(図11B)を使用したp53検出に関する染色結果を表す。結果は、比較可能な染色が比較可能な組織切片中、開示するコンジュゲートおよびスカフォールドコンジュゲートの間で達成されることを示す。
【0115】
図12は、開示したコンジュゲート(図12A)および第2世代スカフォールドコンジュゲート(図12B)を使用したPR検出に関する染色結果を表す。結果は、より高い強度の染色が比較できる組織切片中、開示したコンジュゲートで達成されることを示す。
【0116】
図13は、開示したコンジュゲート(図13A)および第2世代スカフォールドコンジュゲート(図13B)を使用したPSA検出に関する染色結果を表す。結果は、より高い強度の染色が比較できる組織切片中、開示したコンジュゲートで達成されることを示す。
【0117】
結論すると、開示するコンジュゲートの検出組成物の組織試験の結果は、開示するコンジュゲートがスカフォールドコンジュゲートよりも有意に良い組織染色を達成することを証明した。
【0118】
G.核酸配列の酵素金属組織学的検出のための37℃および45℃でのコンジュゲートの安定性
実験は45℃および37℃でヤギ抗−ウザキIgG抗体−HRP(PEG4)コンジュゲートの経時的安定性を評価するために行った。この場合、コンジュゲートの安定性は核酸配列の酵素金属組織学的検出(EnzMet、ナノプローブ(Nanoprobe)社、ヤップハンク、ニューヨーク州)が関与するアッセイで評価した。図14に具体的に説明するように、ビオチン−標識プローブDNAを抗−ビオチンウサギコンジュゲートおよび抗−ウサギIgGコンジュゲートの組み合わせを用いて検出した。コンジュゲートの混合物は希釈剤としてStabilzyme Select(スーモディックス(Surmodics)、エデン プレーリー、ミネソタ州)で保存した。上記実施例Dで検討した第2世代のスカフォールドコンジュゲートの安定性も、同じ期間にわたり調査した。
【0119】
図15Aは0日に開示したコンジュゲートで染色した組織を示し、これは図15Bで0日目にスカフォールドコンジュゲートで染色した組織と比べることができる。図15Cは、37℃で7日間保存した後、7日目に開示したコンジュゲートで染色した組織を示し、これは図15Dで37℃で7日間保存した後、7日目にスカフォールドコンジュゲートで染色した組織と比べることができる。図15Eは、45℃で7日間保存した後、7日目に開示したコンジュゲートで染色した組織を示し、これは図15Fで45℃で7日間保存した後、7日目にスカフォールドコンジュゲートで染色した組織と比べることができる。図に示す組織染色強度は、7日間にわたり両温度での開示されたコンジュゲートの優れた安定性を示し、スカフォールドコンジュゲートは、より高温で7日後に染色能力の完全な損失を示した。
【0120】
標的DNA配列の単一コピーの検出および複数のコピーの検出について、開示したコンジュゲートとスカフォールドコンジュゲートの経時的な相対的安定性を、図16A(37℃)および図16B(45℃)でグラフ形で示す。このグラフはスカフォールドコンジュゲートが単一のおよび複数のコピー標的の両方の酵素金属組織学にどれほど効果が無いか、いかにスカフォールドコンジュゲートが単一の検出に完全に効果がないと同時に、開示するコンジュゲートが高温で多くの日数の後でも単一コピーの検出に効果的であったか、ならびにいかに開示したコンジュゲートが両温度で経時的に複数のコピーを検出するその能力を維持すると同時に、スカフォールドコンジュゲートが両温度で遺伝子シグナルを増幅するその能力を急速に失うかを具体的に説明している。
【0121】
H.コンジュゲート組成に及ぼす反応条件の効果
十分に定められた抗体−HRPコンジュゲートが作成できる再現性は、抗体のDTT還元時間の効果、リンカーの長さならびに種類、加えたリンカーの立体化学、カップリング反応中のHRP濃度、および抗体に対するHRPのモル比を見ることにより調査した。Superdex 10/300 200GLカラムに充填したAKTA Purifie
r LC(アマシャム、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)でのサイズ排除クロマトグラフィーを使用して、最初の比較を行った。使用した移動相は、リン酸緩衝化生理食塩水、pH=7.5で1ml/分の流速であった。
【0122】
DTT還元時間の変化
実施例Bですでに概略したコンジュゲートに関する合成プロトコールに続いて、DTT(25mM)でのインキュベーション時間を変える一連の反応を設定した。以下の時点を試験した:15分、25分、35分および60分。抗体とマレイミド誘導化HRPとの間のカップリング反応を行った後、図17で具体的に説明するサイズ排除クロマトグラフィーを行った。DTT処理の時間を変えることにより、コンジュゲートの組成が有意に改変しないことが明らかとなった。これらのコンジュゲートを用いて組織に関して得た染色(扁桃、Ki−67)は、染色特異性または強度に有意な変化を示さなかったが、15分のDTT処理は残りの処理よりもわずかに良かった。しかし他の3つの時点では組織に関して同一の染色が得られ、この実験が開示した方法による再現性のある活性コンジュゲートの生産に、DTT還元の時間感受性がそれほど重要ではないことを示す。
【0123】
リンカーの長さ/種類の変化
実施例Bの手順に続き、リンカーの種類およびサイズを変えて一連の反応を設定した。以下のリンカーを使用した:LC−SMCC(16原子の疎水性リンカー、ピアス、ロックフォード、イリノイ州)、MAL−dPEG−NHSエステル(34原子の親水性リンカー、クウォンタ バイオデザイン社、ポーウェル、オハイオ州)、MAL−dPEG12−NHSエステル(46原子の親水性リンカー、クウォンタ バイオデザイン社、ポーウェル、オハイオ州)、ならびに推薦されるMAL−dPEG−NHSエステル(22原子の親水性リンカー、クウォンタ バイオデザイン社、ポーウェル、オハイオ州)。これら各リンカーは、バッファー中(0.1Mリン酸ナトリウム、pH=7.5)にて100倍過剰で1時間使用した。LC−SMCCはジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、そしてHRPに加えたが、バッファー中で全DMF容量の10%を越えなかった。DTT処理抗体にカップリングした後、サイズ排除クロマトグム(図18)を精製で得た。3つの各PEGリンカーは、保持容量に基づき、比較的良い性能であったが、LC−SMCCリンカーは、HRPへの少ない結合を示し(〜16分で大きなピーク)、そして全体的に小さいコンジュゲートを示した。
【0124】
異なるコンジュゲートにより提供される免疫組織化学的組織染色の強度における差異(扁桃組織についてのKi−67 1次抗体/コンジュゲート2次抗体、増幅した)は明らかであり、そしてLC−SMCCコンジュゲートは最も明るい染色量を与えた。各染色は均等な280nmの吸収(A280=0.075)でコンジュゲートを用いて行い、したがってデータを直接的に比較できるようにした。3つのPEG誘導化コンジュゲートは、LC−SMCC(図19A)よりも驚くほど良く機能し、そしてそれらの各々により提供される染色強度に差異があった。図からPEG12(図19D)が全体的に最も暗い染色を有し、PEG(図19C)そして次にPEG(図19D)が続いたことは明らかである。in situハイブリダイゼーションアッセイに関して以下でさらに検討するように、より長いリンカーで調製されたコンジュゲートで得られる強い染色は、驚くべきことに染色中の増幅工程の必要性を省くことができる。
【0125】
リンカーの立体化学の変化
HRP−IgGコンジュゲートの合成は、実施例Bの結合手順に従い行ったが、HRP量よりもモル過剰のMAL−PEG−NHSエステルリンカーは、5倍過剰から500倍過剰まで変動させた。コンジュゲートの分析(500x、250x、100x、50x、25x、10xおよび5x)は、DTTで還元したAbとの反応後、この実施例の直前に記載したようなサイズ排除クロマトグラフィーを介して行い、より過剰なリンカーを使用して合成したコンジュゲートが小さく、狭いサイズ排除範囲を有することが示された(図20)。しかし5x〜100xの範囲のコンジュゲートに関して、全体的なサイズ分布に大きな差異は無いようだった。これら各コンジュゲートに関する組織染色(扁桃、Ki−67、示さず)は大体等価であり、5xが他の量よりもわずかに暗いだけであった。
【0126】
リンカーカップリング反応におけるHRP濃度の変化
実施例Bですでに概略した合成法に従い、初期の誘導化工程中のHRP濃度の効果を調査した。以下の濃度でHRPのストック溶液:元のプロトコール(25mg/ml)濃度と一緒に5mg/ml、15mg/ml、20mg/mlおよび50mg/mlを反応に使用した。DTTで還元した抗体を用いたカップリング工程の後、合成したコンジュゲートに関する全体的なサイズ排除クロマトグラムに差異は無かった(図21)。組織に関して合成したコンジュゲートの活性をアッセイすると(扁桃、Ki−67)、染色特異性および強度は5、10、15、20および25mg/mlのHRP濃度を使用して合成したコンジュゲートについて同一であったことに注目した。しかし染色強度は、開始HRP濃度を50mg/mlに上げた時、低下した。開始HRP濃度は、生産レベルのスケールアップについては10〜25mg/mlの間に留めるべきである。
【0127】
HRP/Abモル比の変化
HRP/IgGコンジュゲートは実施例Bに概略したプロトコールを使用して合成したが、マレイミド誘導化HRPに対してDTTで還元した抗体の比を変動させた。以下の比(抗体/HRP)を試験した:3:1、1:3、1:2、1:4、1:5、1:10,1:20ならびに推薦される1:3。サイズ排除クロマトグラムのプロファイルは(図22)、HRPの相対的量が減少すると、コンジュゲートの全体的サイズが減少し、1:20(Ab:HRP)が最大のコンジュゲートを、そして3:1(Ab/HRP)が最小のコンジュゲートを生じたことを示す。これらコンジュゲートの各々が組織(扁桃、Ki−67)で十分機能し、3:1(Ab:HRP)が最も明るい量の染色を生じた。1:3(Ab:HRP)は良好な染色の中間点であり、そしてHRPに関して比較的高い収量を生産する。
【0128】
I.ウサギ抗−ビオチン−HRP−PEG12コンジュゲートの調製およびその酵素金属組織学的in situハイブリダイゼーションでの使用
HRP−PEG12−マレイミド(4):4mLの琥珀色のバイアルに、18.4mg(100当量)のMAL−dPEG12(商標)NHSエステル(クウォンタ バイオデザイン、ポーウェル、オハイオ州、F.W.=865.92)を加え、続いて341μL(8.52mg、0.213μM)のHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ、ピアス、ロックフォード、イリノイ州)を0.1Mのリン酸ナトリウム、pH7.5中の25mg/mL溶液として加えた。次いでバイアルを暗中、周囲温度(23〜25℃)で自動回転機に置き、そして1時間アミド結合形成反応を進めた。次いで340μlのアリコートを精製のために取り出した。(使用したAkta Purifier注入ループの容量は500μlであった)。次いで純粋なHRP−PEG12−マレイミドは、Superdex 10/300カラムに充填したAkta Purifierでサンプルを分画し、0.1Mリン酸ナトリウム、p7.5で1.0mL/分で溶出することにより得た。HRPを含有する画分(F15〜17)をプールして、1%溶液(pH7.5)で6.52の280nmでの吸光係数を使用してUV/VIS分光光度計により測定した時、HRP−PEG12−マレイミドの1.5mlの4.75mg/mL溶液を得た(83.6%収率)。
【0129】
ウサギ抗−ビオチンチオール(5):4mLの琥珀色のバイアルに、2.0mlのウサギ抗−ビオチン(ベチル モンゴメリー、テキサス州)を1.0mg/ml溶液として加えた。この溶液に、105.2μLの新たに調製した還元剤DTT(1,4−ジチオスレイトールの500mM)溶液を加えた。バイアルを暗中で自動回転台に置き、そしてジスル
フィド還元を25分間進めた。反応溶液を2つの等しい容量に分け(脱塩カラムの能力の限界により)、そして過剰なDTTは画分をPD−10脱塩カラムに通し、0.1Mリン酸ナトリウム、1.0mM EDAT、pH6.5で溶出すことにより除去した。抗体を含有する画分(F4〜5)を合わせて、pH6.5の1%溶液で14の280nmの吸光係数を使用してAgilent8453UV/分光計により測定した時、DTTを含まないウサギ−抗−ビオチン−SHの4.0mLの0.436mg/mL溶液(87.5%収率)を得た。
【0130】
HRP−抗体結合(6):ウサギ抗−ビオチン−IgG−チオール(5)に、3倍モル過剰のHRP−PEG12−マレイミド(4)を加えた。次いで反応物を周囲温度(23〜25℃)で一晩インキュベーションした。Superdex200 10/300GL SEカラムを通す精製後、395kDの平均M.W.を持つ875mgのコンジュゲートを得た。
【0131】
実施例Gに概略した酵素金属組織学的手順を、1次抗体(すなわち増幅なし)としてPEG12抗−ビオチンコンジュゲートを使用して繰り返し、そして増幅無しでも驚くほど強い染色が生じた。これらの結果は、開示したコンジュゲートを調製するために、長いヘテロ二官能性PEGリンカー(PEG12以上のようなPEG以上)の使用が、驚くべきことに組織切片についてのIHCおよびISH応用に、増殖スキームの必要性を排除する。
【0132】
J.マレイミド/ヒドラジドPEG−リンカーの合成
スキーム6はマレイミド/ヒドラジドヘテロ二官能性PEGリンカーの一般的調製法を示す。簡単に説明すると、マレイミド/活性エステルPEGリンカー(クウォンタ バイオデザインから得られるような)を保護されたヒドラジド誘導体と反応させ、次いで酸と反応させてマレイミド/ヒドラジドPEGリンカーを得た。
【0133】
【化17】

【0134】
マレイミド/ヒドラジドPEGリンカーの具体的合成は、以下のスキーム7に概説する。活性エステル7(116mg、1.0当量)(5mlの乾燥ジオキサン中)に、30mg(1.0当量)のBoc保護ヒドラジド8(5mlの乾燥ジオキサン中)に1時間にわたって加えた。次いで反応物を周囲温度で乾燥窒素下にて16時間撹拌した。反応混合物は、2996光−ダイオードアレイ検出器およびPhenomenex luna 10μ、C18(2)、100A、250x30mmカラムを備えたウォーターズ(Waters)のDelta600HPLCを使用してHPLCにより分画した。カラムは30〜60%のACN/水で30分間にわたり12mL/分の流速で溶出した。所望するBoc保護−PEG−マレイミド9は38分に溶出し、50mgの濃い黄色の油が高真空下で乾燥した後に得られた。最後の脱保護したヒドラジド10は、次いで残渣を6mlの無水2N HCL/ジオキサンで乾燥窒素下で45分間撹拌することにより得た。ロータリーエバポレーションを介した濃縮で、55mgのヒドラジド−PEG−マレイミドHCl塩を得た。
【0135】
【化18】

【0136】
本発明の原理を幾つかの態様を参考にして記載するが、当業者には態様の詳細がそのような原理から逸脱することなく修飾できることが明らかなはずである。特許請求の範囲および精神に入るので、本発明はすべてのその修飾、変更および等価物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】45℃で7日間保存する前、および後の両方について、スカフォールドコンジュゲートと比較して開示したコンジュゲートを用いたKi67の免疫組織化学的に染色した組織切片の一連の画像である。
【図2】bcl−2の免疫組織化学的染色について、開示したコンジュゲートとスカフォールドコンジュゲートの染色強度を比較する一対の画像である。
【図3】CD15の免疫組織化学的染色について、開示したコンジュゲートとスカフォールドコンジュゲートの染色強度を比較する一対の画像である。
【図4】CD20の免疫組織化学的染色について、開示したコンジュゲートとスカフォールドコンジュゲートの染色強度を比較する一対の画像である。
【図5】CD23の免疫組織化学的染色について、開示したコンジュゲートと2つスカフォールドコンジュゲートの染色強度を比較する一連の画像である。
【図6】CD57の免疫組織化学的染色について、開示したコンジュゲートとのスカフォールドコンジュゲートの染色強度を比較するの一対の画像である。
【図7】cerbB2の免疫組織化学的染色について、開示したコンジュゲートと2つのスカフォールドコンジュゲートの染色強度を比較する一連の画像である。
【図8】サイクリンD1の免疫組織化学的染色について、開示したコンジュゲートとスカフォールドコンジュゲートの染色強度を比較する一対の画像である。
【図9】EGFRの免疫組織化学的染色について、開示したコンジュゲートと2つのスカフォールドコンジュゲートの染色強度を比較する一連の画像である。
【図10】ERの免疫組織化学的染色について、開示したコンジュゲートとスカフォールドコンジュゲートの染色強度を比較する一対の画像である。
【図11】p53の免疫組織化学的染色について、開示したコンジュゲートとスカフォールドコンジュゲートの染色強度を比較する一対の画像である。
【図12】PRの免疫組織化学的染色について、開示したコンジュゲートとスカフォールドコンジュゲートの染色強度を比較する一対の画像である。
【図13】PSAの免疫組織化学的染色について、開示したコンジュゲートとスカフォールドコンジュゲートの染色強度を比較する一対の画像である。
【図14】ハプテン−標識核酸プローブの標的核酸配列への結合の、開示した抗体−酵素コンジュゲートを利用する酵素金属組織学的検出に関するスキームを概略する図解である。
【図15】37℃で7日間、および45℃で7日間の両方で保存する前と後で、開示したコンジュゲートとスカフォールドコンジュゲートを使用した核酸配列の酵素金属組織学的ISH検出に関して試験した組織切片の一連の画像である。
【図16】酵素金属組織学的検出スキームにおいて、開示したコンジュゲートとスカフォールドコンジュゲートの安定性を比較する一対のグラフである。
【図17】開示したコンジュゲートのMWプロファイルに及ぼす抗体還元時間の変動効果を比較するサイズ排除クロマトグラムである。
【図18】開示したコンジュゲートのMWプロファイルに及ぼすリンカーのサイズおよび種類の変動効果を比較するサイズ排除クロマトグラムである。
【図19】延長した長さの非PEGリンカーを用いて調製したコンジュゲートと比較して、幾つかの開示したコンジュゲートの染色強度の比較する一連の画像である。
【図20】開示したコンジュゲートのMWプロファイルに及ぼす過剰なリンカーの変動効果を比較するサイズ排除クロマトグラムである。
【図21】開示したコンジュゲートのMWプロファイルに及ぼす西洋ワサビペルオキシダーゼ濃度の変動効果を比較するサイズ排除クロマトグラムである。
【図22】開示したコンジュゲートのMWプロファイルに及ぼす西洋ワサビペルオキシダーゼに対する抗体の比の変動効果を比較するサイズ排除クロマトグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロ二官能性PEGリンカーを介してシグナル発生部分と共有結合された抗体を含んでなる抗体−シグナル発生部分コンジュゲート。
【請求項2】
リンカーのチオール−反応性基が抗体に共有結合され、そしてヘテロ二官能性リンカーのアミン反応性基がシグナル発生部分と共有結合されている、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
リンカーのチオール−反応性基が抗体のシステイン残基に共有結合されている、請求項2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
リンカーのチオール−反応性基が、抗体に導入されたチオール基に共有結合されている、請求項2に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
リンカーのアルデヒド−反応性基が抗体に共有結合され、そしてリンカーのチオール反応性基がシグナル発生部分に共有結合されている、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
リンカーのアルデヒド−反応性基が、抗体のグリコシル化部分上に形成されたアルデヒドに共有結合されている、請求項5に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
リンカーが式:
【化1】

式中、n=1〜50;あるいは
【化2】

式中、mは1〜50である、
を有する請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
コンジュゲートが式:
【化3】

式中、Abは抗体であり、SMはシグナル発生部分であり、n=1〜50、そしてs=1〜10である、
を有する請求項7に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
シグナル発生部分が酵素を含んでなる請求項8に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
酵素が西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼを含んでなる請求項9に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
s=2〜6の請求項8に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
n=4〜12の請求項8に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
コンジュゲートが式:
【化4】

式中、Abは抗体、SMはシグナル発生部分、m=1〜50、そしてt=1〜10である、
を有する請求項7に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
シグナル発生部分が酵素を含んでなる請求項13に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
酵素が西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼを含んでなる請求項14に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
t=2〜6の請求項13に記載のコンジュゲート。
【請求項17】
m=4〜12の請求項13に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
式:
【化5】

式中、m=1〜50である、
を有するヘテロ二官能性リンカー。
【請求項19】
m=2〜30の請求項18に記載のリンカー。
【請求項20】
m=3〜20の請求項18に記載のリンカー。
【請求項21】
m=4〜12の請求項18に記載のリンカー。
【請求項22】
抗体−シグナル発生部分コンジュゲートを調製する方法であって:
抗体からチオール化抗体を形成し;
アミン基を有するシグナル発生部分をPEGマレイミド/活性エステル二官能性リンカ
ーと反応させて、活性化シグナル発生部分を形成し;そして
チオール抗体を活性化シグナル発生部分と反応させて、抗体−シグナル発生部分コンジュゲートを形成する、
ことを含んでなる上記方法。
【請求項23】
チオール化抗体を形成することが、抗体と還元剤を反応させてチオール化抗体を形成することを含んでなる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
抗体と還元剤を反応させてチオール化抗体を形成することが、抗体あたり約1から約10の間の平均チオール数をもつ抗体を形成することを含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
抗体を還元剤と反応させることが、抗体を2−メルカプトエタノール、2−メルカプトエチルアミン、DTT、DTEおよびTCEPおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される還元剤と反応させることを含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
抗体を還元剤と反応させることが、抗体をDTTおよびDTEおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される還元剤と反応させることを含んでなる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
抗体を還元剤と反応させることが、抗体を約1mMから約40mMの間の濃度の還元剤と反応させることを含んでなる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
チオール化抗体を形成することが、チオール基を抗体に導入することを含んでなる、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
チオール基を抗体に導入することが、抗体を2−イミノチオラン、SATA、SATP、SPDP、N−アセチルホモシステインチオラクトン、SAMSAおよびシスタミンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される試薬と反応させることを含んでなる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
チオール基を抗体に導入することが、抗体をオキシダントと反応させて抗体の糖部分をアルデヒド基に変換し、そしてアルデヒド基をシスタミンと反応させることを含んでなる、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
オキシダントが過ヨウ素酸塩イオン、I、Brまたはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
シグナル発生部分をPEGマレイミド/活性エステル二官能性リンカーと反応させて活性化シグナル発生部分を形成することが、シグナル発生部分と式:
【化6】

式中、n=1〜50である、
を有するPEGマレイミド/活性エステルとを反応させることを含んでなる、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
シグナル発生部分が酵素を含んでなる請求項22に記載の方法。
【請求項34】
酵素が西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼを含んでなる請求項33に記載の方法。
【請求項35】
抗体−シグナル発生部分コンジュゲートを調製する方法であって:
抗体をオキシダントと反応させてアルデヒドを持つ抗体を形成し;
アルデヒドを持つ抗体をPEGマレイミド/ヒドラジド二官能性リンカーと反応させて、チオール−反応性抗体を形成し;そして
チオール−反応性抗体を、チオール化シグナル発生部分を反応させて、抗体−シグナル発生部分コンジュゲートを形成する、
ことを含んでなる、上記方法。
【請求項36】
抗体をオキシダントと反応させてアルデヒドを持つ抗体を形成することが、抗体のグリコシル化領域を酸化してアルデヒドを持つ抗体を形成することを含んでなる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
抗体のグリコシル化領域を酸化することが、抗体を過ヨウ素酸塩、I、Brまたはそれらの組み合わせで処理することを含んでなる請求項35に記載の方法。
【請求項38】
さらにチオール化シグナル発生部分をシグナル発生部分から形成することを含んでなる、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
チオール化シグナル発生部分を形成することが、シグナル発生部分を還元剤と反応させてチオール化シグナル発生部分を形成することを含んでなる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
還元剤が2−メルカプトエタノール、2−メルカプトエチルアミン、DTT、DTEおよびTCEPおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
チオール化シグナル発生部分を形成することが、チオール基をシグナル発生部分に導入することを含んでなる、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
チオール基をシグナル発生部分に導入することが、シグナル発生部分を2−イミノチオラン、SATA、SATP、SPDP、N−アセチルホモシステインチオラクトン、SAMSAおよびシスタミンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される試薬と反応させることを含んでなる、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
アルデヒドを持つ抗体をPEGマレイミド/ヒドラジド二官能性リンカーと反応させて、チオール−反応性抗体を形成することが、アルデヒドを持つ抗体を式:
【化7】

式中、m=1〜50である、
を有するリンカーを持つアルデヒドを持つ抗体と反応させることを含んでなる、請求項57に記載の方法。
【請求項44】
チオール化シグナル発生部分が酵素を含んでなる請求項35に記載の方法。
【請求項45】
酵素が西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼを含んでなる請求項44に記載の方法。
【請求項46】
生物学的サンプル中の目的分子の検出方法であって:
生物学的サンプルを、ヘテロ二官能性PEGリンカーを介してシグナル発生部分に共有結合された抗体を含んでなる抗体−シグナル発生部分コンジュゲートと接触させ;そして
サンプル中の目的分子の存在を示す抗体−シグナル発生部分コンジュゲートにより生成されるシグナルを検出する、
ことを含んでなる、上記検出方法。
【請求項47】
生物学的サンプルが組織切片または細胞学サンプルを含んでなる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
コンジュゲートが酵素に共有結合した抗体を含んでなる請求項46に記載の方法。
【請求項49】
酵素が西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼを含んでなる請求項48に記載の方法。
【請求項50】
コンジュゲートが式:
【化8】

式中、Abは抗体であり、SMはシグナル発生部分であり、n=1〜50、そしてs=1〜10である、
を有する請求項46に記載の方法。
【請求項51】
コンジュゲートが式:
【化9】

式中、Abは抗体であり、SMはシグナル発生部分であり、m=1〜50、そしてt=1〜10である、
を有する請求項46に記載の方法。
【請求項52】
方法がさらに、生物学的サンプルを水溶性金属イオン、および酵素によりレドックス−活性剤に転換される酵素のレドックス−不活性基質と接触させることを含んでなり、このレドックス−活性剤は金属イオンを還元してその沈殿を生じる、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
酵素がアルカリホスファターゼを含んでなる請求項52に記載の方法。
【請求項54】
シグナル発生部分がオキシド−レダクターゼ酵素を含んでなり、そして方法がさらに生物学的サンプルを水溶性金属イオン、酸化剤および還元剤と接触させることを含んでなる、請求項48に記載の方法。
【請求項55】
オキシド−レダクターゼ酵素が西洋ワサビペルオキシダーゼを含んでなる、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
抗体が抗−抗体抗体を含んでなる、請求項46に記載の方法。
【請求項57】
抗体が抗−ハプテン抗体を含んでなり、そして方法がさらにサンプルをハプテン−標識化抗体またはハプテン−標識化核酸配列と接触させることを含んでなる請求項46に記載の方法。
【請求項57】
シグナル発生部分が酵素を含んでなり、そして方法がさらに生物学的サンプルを発色性、蛍光性および/または発光性化合物と接触させることを含んでなる、請求項46に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2008−539270(P2008−539270A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509141(P2008−509141)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/016087
【国際公開番号】WO2006/116628
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(599075070)ベンタナ・メデイカル・システムズ・インコーポレーテツド (31)
【Fターム(参考)】