抗体代替κ軽鎖配列を含む構築物及びライブラリー
本発明は、抗体代替Κ軽鎖配列を含む、構築物及びライブラリーに関する。特に、本発明は、例えば抗体重鎖及び/又は軽鎖ドメイン配列などの別のポリペプチドと場合によっては組み合わされた抗体代替Κ軽鎖配列を含む構築物、並びにそれを含むライブラリーに関する。一態様においては、本発明は、Vκ様及び/又はJCκ配列を含む、κ様代替軽鎖(SLC)構築物に関する。種々の実施形態においては、κ様SLC構築物は、Vκ様配列、又はJCκ配列、又はVκ様配列とJCκ配列の両方を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、抗体代替κ軽鎖配列を含む、構築物及びライブラリーに関する。特に、本発明は、例えば抗体重鎖及び/又は軽鎖ドメイン配列などの別のポリペプチドと場合によっては組み合わされた抗体代替(antibody surrogate)κ軽鎖配列を含む構築物、並びにそれを含むライブラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
Bリンパ球によって産生される抗体(Ig)分子は、重(H)鎖と軽(L)鎖で構成される。H鎖及びL鎖のアミノ末端ドメインのアミノ酸配列は、特に抗原結合部位を形成する3つの超可変領域(CDR1、CDR2、CDR3)において、可変である(VH及びVL)。H鎖とL鎖の会合体は、L鎖の定常領域(CL)と重鎖の第1定常領域(CH1)とのジスルフィド結合及びVHドメインとVLドメインの非共有結合性相互作用によって安定化される。
【0003】
Bリンパ球発生の様々な段階は、Ig遺伝子座の再配列状態によって特徴づけられる(例えば、非特許文献1参照)。ヒト及びマウスなどの多数の動物においては、抗体H鎖及びL鎖をコードする遺伝子は、V領域の一部をコードする遺伝子断片の段階的な体細胞再配列によって明確な秩序のある様式で組み立てられ、μ重鎖がκ及びλ軽鎖に先行する(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。
【0004】
軽鎖(LC)再配列は、λ5及びVpreB分子で構成される2本の共有結合した代替軽鎖(SLC)と併せて2本のμ重鎖(μHC)によって形成されるプレB細胞受容体(プレBCR)を介して駆動されるシグナルによって惹起されることが知られている。すなわち、B細胞の前駆体(プレB細胞)は、μ重鎖を産生するリンパ球として骨髄中で特定されたが、十分に発達した軽鎖の代わりに、それぞれVpreB(1−3)及びλ5と呼ばれる1組のB系譜特異的遺伝子を発現する。
【0005】
ヒトVpreB1(CAG30495)の主アイソフォームは、145aa長鎖ポリペプチドである。145aa長鎖ポリペプチドは、IgVドメイン様構造を有するが、典型的なVドメインの最後のβ鎖(β7)を欠き、他のいかなるタンパク質とも配列相同性を示さないカルボキシ末端を有する。VpreB2は、142アミノ酸マウスVpreB2ポリペプチド(P13373)及びマウスVpreB2配列の171アミノ酸長スプライスバリアント(CAA01964l)を含めて、幾つかのアイソフォームを有する。VpreB1及びVpreB2配列は、特許文献1及び特許文献2、非特許文献5、及び非特許文献6に開示されている。ヒトVpreB3の主アイソフォームは、非特許文献5に開示された123aa長鎖タンパク質(CAG30496)である。
【0006】
VpreB(1−3)は、別のタンパク質λ5と非共有結合している。ヒトλ5は、抗体軽鎖と高い相同性を有するIgCドメイン様構造と、そのアミノ末端方向に2つの機能的に異なる領域とを有する、209アミノ酸ポリペプチド(CAA01962)である。2つの機能的に異なる領域の一方は、Vλドメインのβ7鎖と高い相同性を示す。ヒトλ5様タンパク質は、213個のアミノ酸を有し(NP_064455)、抗体λ軽鎖定常領域と約84%の配列相同性を示す。
【0007】
更なる詳細については、以下の総説を参照されたい。Karasuyamaら、Adv.Immunol.63:1−41(1996)、Melchersら、Immunology Today 14:60−68(1993)、及びMelchers,Proc.Natl.Acad.Sci.USA96:2571−2573(1999)。
【0008】
VpreBとλ5ポリペプチドは一緒に、代替軽鎖又は偽軽鎖と呼ばれる非共有結合されたIg軽鎖様構造を形成する。初期のプレB細胞の表面では、代替軽鎖は、シグナル伝達物質CD79a/CD79bヘテロ二量体に付随して膜結合性Igμ重鎖とジスルフィド結合して、B細胞受容体様構造であるプレB細胞受容体(pre−BCR)を形成する。
【0009】
興味深いことに、B細胞前駆体の成熟、細胞表面発現及びμ重鎖のシグナル伝達(λHC)は、λ5発現の非存在下でさえも認められた。すなわち、代替軽鎖欠失マウス及び代替軽鎖ノックアウトマウスは、依然として抗体を産生できることが報告され、B細胞発生の代替経路が示唆された(例えば、Kitamuraら、Cell 69:823−31(1992);Rolinkら、Eur J Immunol 23:1284−8(1993);Schuhら、J Immunol 171:3343−7(2003);Martenssonら、Int Immunol 11:453−60(1999);Mundtら、J Exp Med 193:435−45(1991);Shimizuら、J Immunol 168:6286−93(2002)参照)。
【0010】
κ様B細胞受容体(κ様BCR)は、κ様代替軽鎖(κ様SLC)を利用して、特定された(Francesら、EMBO J 13:5937−43(1994);Thompsonら、Immunogenetics 48:305−11(1998);Rangelら、J Biol Chem 280:17807−14(2005))。
【0011】
Rangelら、J Biol Chem 280(18):17807−17814(2005)は、非再配列Vκ遺伝子の産物であるVκ様タンパク質の特定及び分子特性解析を報告し、Thompsonら、Immunogenetics 48:305−311(1998)によって以前に報告されたcDNA配列と同一であることが判明した。一方、Francesら、EMBO J 13:5937−43(1994)は、B細胞前駆体表面でμ重鎖に結合する能力を有し、それによってB細胞発生のλ5経路の代替経路をもたらす、再配列生殖系列JCkの特定及び分子特性解析を報告した。
【0012】
κ様pre−BCRとλ様pre−BCRは協調して働き、軽鎖再配列を促進し、B細胞前駆体を確実に成熟させることが提案された。総説については、McKeller and Martinez−Valdez Seminars in Immunology 18:4043(2006)を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0269127号明細書
【特許文献2】米国特許第5,182,205号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Melchers,F.&Rolink,A.,B−Lymphocyte Development and Biology,Paul,W.E.,ed.,1999,Lippincott,Philadephia
【非特許文献2】Burrows PD and Cooper MD,Curr Opin Immunol(1997)9:239〜44
【非特許文献3】Altら、Immunol Today(1992)13:306〜14
【非特許文献4】Bassingら、Cell(2002)109 Suppl.:S45〜55
【非特許文献5】Collinsら、Genome Biol.(2004)5(10):R84
【非特許文献6】Hollinsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1989)86(14):5552〜5556
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様においては、本発明は、Vκ様及び/又はJCκ配列を含む、κ様代替軽鎖(SLC)構築物に関する。
【0016】
種々の実施形態においては、κ様SLC構築物は、Vκ様配列、又はJCκ配列、又はVκ様配列とJCκ配列の両方を含む。
【0017】
すべての実施形態においては、κ様SLC構築物は、標的に特異的に結合する能力を有し得る。
【0018】
種々の更なる実施形態においては、κ様SLC構築物において、Vκ様配列は、シグナル配列を有する若しくは有さないかつC末端部(C−terminal tail)を有する若しくは有さない配列番号2又はその断片を含み、又は配列番号2のN末端シグナルペプチド(アミノ酸1〜20)を含み、配列番号2内からのC末端部の少なくとも一部を更に含み得る。
【0019】
特定の一実施形態においては、Vκ様配列は、シグナル配列を有する若しくは有さないかつC末端部を有する若しくは有さない配列番号7〜18又はその断片を含む群より選択される。
【0020】
別の実施形態においては、本明細書に記載のκ様SLC構築物において、JCκ配列は、N末端伸長部を有する若しくは有さない配列番号4又はその断片を含み、又はN末端伸長部を有する若しくは有さない配列番号19〜23又はその断片からなる群より選択される配列を含む。
【0021】
すべての実施形態において、κ様SLC構築物は、抗体重鎖配列に結合し得る。
【0022】
別の実施形態においては、κ様SLC構築物において、Vκ様配列はC末端部を含む。
【0023】
更なる実施形態においては、κ様SLC構築物において、JCκ配列はN末端伸長部を含む。
【0024】
更に別の一実施形態においては、本明細書に記載のκ様SLC構築物において、Vκ様配列はC末端部を含み、JCκ配列はN末端伸長部を含む。
【0025】
異なる一実施形態においては、Vκ様配列はC末端部を欠き、JCκ配列はN末端伸長部を欠く。
【0026】
すべての実施形態においては、構築物が抗体重鎖配列に結合又は連結される場合、抗体重鎖配列は完全長抗体重鎖又はその断片であり得る。
【0027】
一実施形態においては、κ様SLC構築物において、Vκ様配列とJCκ配列は、直接融合()、及び異種リンカーを介した結合を含めて、ただしそれだけに限定されないが、互いに共有結合している。異種リンカーは、例えば、未変性(native)ポリペプチドの配列又はその断片、かかる治療用ポリペプチドの配列又はその断片を含み得る。
【0028】
別の一実施形態においては、異種リンカーは、抗体重鎖及び/又は軽鎖の可変及び/又は定常領域配列を含み得る抗体配列を含む。
【0029】
特定の一実施形態においては、抗体の軽鎖配列及び重鎖配列は、存在するときには、前記構築物が結合する標的と同じでも異なってもよい抗原に結合することができる。
【0030】
したがって、例えば、本明細書に記載の構築物は、二機能性、三機能性又は一般に多機能性であり得る。
【0031】
別の実施形態においては、Vκ様配列はC末端部を含み、JCκ配列はN末端伸長部を含み、その一方又は両方は、例えばペプチド、ポリペプチドなどの異種分子に結合していてもよい。
【0032】
すべての実施形態においては、κ様SLC構築物は、同じ定性的結合特異性を有する抗体よりも改善された薬物動態プロファイル及び/又は効力、及び/又は他の改善された機能的諸性質を有し得る。
【0033】
別の一態様においては、本発明は、本明細書に記載のκ様SLC構築物のコレクションを含むライブラリーに関する。
【0034】
ライブラリーは、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、DNAディスプレイ、哺乳動物細胞上のディスプレイ、胞子ディスプレイ、ウイルスディスプレイ、タンパク質−DNA結合に基づくディスプレイ、マイクロビーズディスプレイなどのディスプレイの形であり得る。
【0035】
さらに、ライブラリーは、抗体重鎖及び/又は軽鎖配列などの抗体配列のコレクションを含み得る。
【0036】
別の実施形態においては、ライブラリーはVκ様配列のコレクションを含み、Vκ様配列コレクションは、そのCDR配列及び/又はC末端配列が異なるVκ様配列変異体を含み得る。
【0037】
更なる実施形態においては、ライブラリーはJCκ配列のコレクションを含むことができ、JCκ配列コレクションは、そのN末端伸長部が異なるJCκ配列変異体を含み得る。
【0038】
すべての実施形態においては、可変領域配列を含む抗体重鎖が存在するとき、本発明のポリペプチド、及び抗体重鎖可変領域配列は、同じ又は異なる標的に結合し得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】VpreB1ドメインのCDR類似領域及びC末端部がかなりの距離に及ぶことを示す図である。薄灰色:CDR残基;濃灰色:フレームワーク残基。
【図2】ヒトVκ様核酸のヌクレオチド配列(配列番号1)及びコードされたタンパク質のアミノ酸配列(配列番号2)を示す図である。
【図3】ヒトJCκ核酸のヌクレオチド配列(配列番号3)及びコードされたタンパク質のアミノ酸配列(配列番号4)を示す図である。
【図4】κ様代替軽鎖(AJ004956Vκ様、配列番号2及びAAB32987ヒトJCκ、配列番号4)とヒトIg可変及び定常κ軽鎖(VκIV_B3、配列番号5;定常カッパ、配列番号6)とのアラインメントを示す図である。Vκ様は、非再配列VκIV遺伝子ファミリーメンバーであるが、独特のC末端伸長部を有する。JCκは、カッパJ及び定常領域と同一性(identity)を共有するが、独特のN末端を有する。CDR1及びCDR2は保存されているが、CDR3は分断されている。
【図5】種々のヘテロ二量体代替κ軽鎖欠失変異体の略図である。「完全長」構築物においては、Vκ様とJCκ配列の両方は、それぞれC及びN末端伸長部(尾部)を保持する。dJ変異体においては、JCκのN末端伸長部は欠失している。dVκ尾部変異体においては、Vκ様配列のC末端伸長部は除去されているが、JCκのN末端伸長部は保持されている。「短鎖カッパ」変異体においては、Vκ様配列のC末端部とJCκ配列のN末端伸長部の両方が保持されている。
【図6】個々に、又は抗体重鎖若しくはその断片などの別のタンパク質と一緒に、使用することができるκ様軽鎖欠失及び単鎖構築物を示す図である。
【図7】コンビナトリアル機能的多様性をκ様代替軽鎖構築物に組み入れた図である。赤線は、ペプチドライブラリーなどの付加された多様性を示す。
【図8】軽鎖が遺伝子再配列及びRNAプロセシングの産物であることを示す図である。
【図9】Vκ様タンパク質が非再配列VκIV遺伝子転写及び翻訳に由来することを示す図である。VκIVは、71種類のVL生殖細胞遺伝子の一つである。Vκ様タンパク質を産生する能力を有するさらに70種類のVL生殖細胞遺伝子が存在するので、さらに39種類のκV遺伝子及びさらに31種類のλV遺伝子が存在する。
【図10】AJ004956Vκ様原型配列(配列番号2)と整列された異なる長さの伸長部(配列番号7〜18)を各々が有する、すべてのVκファミリーから考えられるVκ様タンパク質の予測アミノ酸配列を示す図である。
【図11】JCκが非再配列J及びC生殖系列由来のプロセシングされたRNAの産物であることを示す図である。JCκは、45種類のJC生殖系列組合せの一つである。JCκ様タンパク質を産生する能力を有するさらに44種類のVL生殖細胞遺伝子が存在する(Cκと組み合わせられるさらに4種類のJκ遺伝子、及び10種類のCλ遺伝子と組み合わせられる4種類のJλ遺伝子(合計40種類))。
【図12】残留カッパJ定常領域再配列由来の予測JCκ様(J1−J5Cκ)(配列番号19〜23)を示す図である。
【図13】κ様代替軽鎖成分に機能性を付加する模式図である。二機能性及び三機能性構造を示す。A:scFv束縛融合、B:Vκ様scFv融合、C:JCκscFv融合、D:SLC二重融合。
【図14】説明のための代替軽鎖機能的尾部伸長部タイプを示す図である。
【図15】説明のための代替軽鎖GLP−1融合体を示す図である。
【図16】説明のためのκ様及びλ様代替軽鎖機能的キメラを示す図である。
【図17】ヒトVpreB1(配列番号30)、マウスVpreB2(配列番号31)、ヒトVpreB3(配列番号33)、ヒトλ5配列(配列番号34)及びヒトλ5様配列(配列番号35)のアミノ酸配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
A.定義
特に断らない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley&Sons(New York,NY 1994)は、本願で使用する用語の多くに対する一般的指針を当業者に提供する。
【0041】
当業者は、本発明の実施において使用することができる、本明細書に記載の方法及び材料と類似した、又は等価である、多数の方法及び材料を認識するであろう。実際、本発明は、記載の方法及び材料に決して限定されない。本発明では、下記の用語を以下で定義する。
【0042】
「κ様代替軽鎖可変ドメイン」、「Vκ様SLC」及び「Vκ様」という用語は、区別なく使用され、非再配列Vκ遺伝子の産物である任意の未変性配列ポリペプチド、及びその変異体を指す。未変性配列「Vκ様」ポリペプチドとしては、具体的に、図2に示すヒトκ様ポリペプチドAJ004956(配列番号2)、及び図10に示すヒトVκ様ポリペプチド(配列番号7〜18)、並びに非ヒト哺乳動物種における、特に、げっ歯類、例えばマウス及びラット、非ヒト高等霊長類など、ヒトのように、主に遺伝子再配列及び/又は超変異によって抗体多様性を生じる種における、ホモログが挙げられるが、それだけに限定されない。一実施形態においては、未変性配列Vκ様ポリペプチドの変異体は、抗体κ軽鎖配列に対するC末端伸長部(尾部)を含む。特定の一実施形態においては、未変性配列Vκ様ポリペプチドの変異体は、Vκ様ポリペプチドを対応する抗体κ軽鎖から識別する独特のC末端伸長部(尾部)の少なくとも一部、好ましくは全部を保持する。別の一実施形態においては、変異体Vκ様ポリペプチドのC末端部は、配列の残部に天然には付随しない配列である。後者の実施形態においては、未変性Vκ様配列中に天然に存在するC末端部と変異体配列との相違は、1個以上のアミノ酸変化(置換、挿入、欠失及び/又は付加)から生じ得、又はC末端部は、異なるVκ様タンパク質中に天然に存在する尾部と同一であり得る。したがって、例えば、図10に記載のVκ様タンパク質(配列番号2及び7〜18)のいずれかにおいては、(図10において「翻訳伸長部」と称する)C末端伸長部は、別のVκ様タンパク質のC末端伸長部で置換することができ、及び/又は任意の天然のC末端伸長部配列とは異なるように改変し得る。その代わりに、又はそれに加えて、未変性配列Vκ様ポリペプチドの変異体は、未変性抗体κ可変ドメイン配列と同一である配列の一部に、特にかかる配列の相補性決定領域(CDR)及び/又はフレームワーク残基の1個以上に、1個以上のアミノ酸変化を含み得る。したがって、Vκ様ポリペプチドは、抗体κ軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列の1個以上に対応する領域にアミノ酸変化を含み得る。すべての場合において、変異体は、未変性抗体κ軽鎖可変領域配列に対して少なくとも4、又は少なくとも5、又は少なくとも6、又は少なくとも7、又は少なくとも8、又は少なくとも9、又は少なくとも10個のアミノ酸、好ましくは4〜100、又は4〜90、又は4〜80、又は4〜70、又は4〜60、又は4〜50、又は4〜45、又は4〜40、又は4〜35、又は4〜30、又は4〜25、又は4〜20、又は4〜15、又は4〜10個のアミノ酸残基のC末端伸長部を含むことができ、好ましくは含む。本明細書に定義するように、Vκ様ポリペプチド変異体は、未変性抗体κ若しくはλ軽鎖配列又はその断片とは異なり、好ましくは、未変性配列Vκポリペプチドと少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約98%の配列相同性を保持する。別の好ましい一実施形態においては、Vκ様ポリペプチド変異体は、そのアミノ酸配列において、未変性抗体λ又はκ軽鎖配列と95%未満、又は90%未満、又は85%未満、又は80%未満、又は75%未満、又は70%未満、又は65%未満、又は60%未満、又は55%未満、又は50%未満、又は45%未満、又は40%未満同一である。別の実施形態においては、配列相同性は、約40%から約95%、又は約45%から約90%、又は約50%から約85%、又は約55%から約80%、又は約60%から約75%、又は約60%から約80%、又は約65%から約85%、又は約65%から約90%、又は約65%から約95%である。すべての実施形態においては、好ましくは、Vκ様ポリペプチドは標的に結合する能力を有する。
【0043】
「JCκ」と「JCκ様」という用語は、区別なく使用され、未変性配列κJ定常(C)領域セグメントと同一である部分と独特のN末端伸長部(尾部)とを含む未変性配列ポリペプチド、及びその変異体を指す。未変性配列JCκ様ポリペプチドとしては、図3及び4に示すAAB32987ヒトJCκポリペプチド(配列番号4)、及び図12に示すJCκ様ポリペプチド(配列番号19〜23)、並びに非ヒト哺乳動物種における、特に、げっ歯類、例えばマウス及びラット、非ヒト高等霊長類など、ヒトのように、主に遺伝子再配列及び/又は超変異によって抗体多様性を生じる種における、ホモログが挙げられるが、それだけに限定されない。一実施形態においては、未変性配列JCκ様ポリペプチドの変異体は、該変異体を抗体JCセグメントから識別するN末端伸長部(尾部)を含む。特定の一実施形態においては、未変性配列JCκ様ポリペプチドの変異体は、JCκ様ポリペプチドを対応する抗体κ軽鎖JCセグメントから識別する独特のN末端伸長部(尾部)の少なくとも一部、好ましくは全部を保持する。別の一実施形態においては、変異体JCκ様ポリペプチドのN末端部は、配列の残部に天然には付随しない配列である。後者の実施形態においては、未変性JCκ様配列中に天然に存在するN末端部と変異体配列との相違は、1個以上のアミノ酸変化(置換、挿入、欠失及び/又は付加)から生じ得、又はN末端部は、異なるJCκ様タンパク質中に天然に存在する末端部と同一であり得る。したがって、例えば、図12に記載のJCκ様タンパク質のいずれかにおいては、N末端伸長部は、別のJCκ様タンパク質のN末端伸長部で置換することができ、及び/又は任意の天然のN末端伸長部配列とは異なるように改変し得る。その代わりに、又はそれに加えて、未変性配列JCκ様ポリペプチドの変異体は、未変性抗体κ可変ドメインJC配列と同一である配列の一部に、1個以上のアミノ酸変化を含み得る。すべての場合において、変異体は、未変性抗体κ軽鎖JC配列に対して少なくとも4、又は少なくとも5、又は少なくとも6、又は少なくとも7、又は少なくとも8、又は少なくとも9、又は少なくとも10個のアミノ酸、好ましくは4〜100、又は4〜90、又は4〜80、又は4〜70、又は4〜60、又は4〜50、又は4〜45、又は4〜40、又は4〜35、又は4〜30、又は4〜25、又は4〜20、又は4〜15、又は4〜10個のアミノ酸残基のN末端伸長部(独特のN末端)を含むことができ、好ましくは含む。本明細書で定義するJCκ様ポリペプチド変異体は、未変性抗体λ若しくはκ軽鎖JC配列又はその断片とは異なり、好ましくは、未変性配列JCポリペプチドと少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約98%の配列相同性を保持する。別の好ましい一実施形態においては、JCκ様ポリペプチド変異体は、そのアミノ酸配列において、未変性抗体λ又はκ軽鎖JC配列と95%未満、又は90%未満、又は85%未満、又は80%未満、又は75%未満、又は70%未満、又は65%未満、又は60%未満同一である。別の実施形態においては、配列相同性は、約40%から約95%、又は約45%から約90%、又は約50%から約85%、又は約55%から約80%、又は約60%から約75%、又は約60%から約80%、又は約65%から約85%、又は約65%から約90%、又は約65%から約95%である。
【0044】
アミノ酸配列相同率は、配列比較プログラムNCBI−BLAST2(Altschulら、Nucleic Acids Res.25:3389−3402(1997))を用いて決定することができる。NCBI−BLAST2配列比較プログラムは、http://www.ncbi.nlm.nih.govからダウンロードすることができ、又はNational Institute of Health、Bethesda、MDから入手することができる。NCBI−BLAST2は、幾つかの検索パラメータを使用し、検索パラメータのすべては、例えば、unmask=yes、strand=all、expected occurrences=10、minimum low complexity length=15/5、multi−pass e−value=0.01、constant for multi−pass=25、dropoff for final gapped alignment=25、及びscoring matrix=BLOSUM62を含めて、デフォルト値に設定される。
【0045】
「κ様」代替軽鎖配列は、場合によっては、異種アミノ酸配列又は任意の他の異種成分と複合化して、本明細書に記載の「κ様代替軽鎖構築物」を形成し得る。したがって、「κ様代替軽鎖構築物」という用語は、最も広い意味で使用され、κ様代替軽鎖配列と複合化される異種アミノ酸配列、核酸及び他の分子を含めて、任意のすべての追加の異種成分を含む。ここで、「複合化」は後で定義する。好ましい一実施形態においては、「κ様代替軽鎖配列」は、標的に結合する能力を有する。好ましい一実施形態においては、「κ様」代替軽鎖配列は、JCκ様配列及び/又は抗体重鎖配列又はその断片と非共有結合又は共有結合する。共有結合は、直接融合だけでなく、リンカーを介した連結も含む。したがって、例えば、Vκ様及びJCκ様配列は、抗体軽鎖及び/又は重鎖可変領域配列を介して連結し得る。
【0046】
「VpreB」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、任意の未変性配列又は変異体VpreBポリペプチドを指し、具体的には、配列番号30のヒトVpreB1、配列番号31及び32のマウスVpreB2、配列番号33のヒトVpreB3、スプライスバリアント及び翻訳後修飾によって形成される変異体を含めたアイソフォーム、その別の哺乳動物の相同体、特にヒトのように主に遺伝子再配列及び/又は超変異によって抗体多様性を生じる、げっ歯類、例えばマウス及びラットなどの哺乳動物における相同体、並びにかかる未変性配列ポリペプチドの変異体が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0047】
「λ5」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、任意の未変性配列又は変異体λ5ポリペプチドを指し、具体的には、配列番号34のヒトλ5、配列番号35のヒトλ5様タンパク質、スプライスバリアント及び翻訳後修飾によって形成される変異体を含めたそのアイソフォーム、その別の哺乳動物の相同体、特にヒトのように主に遺伝子再配列及び/又は超変異によって抗体多様性を生じる、げっ歯類、例えばマウス及びラットなどの哺乳動物における相同体、並びにかかる未変性配列ポリペプチドの変異体が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0048】
本発明のポリペプチドに関連して、第1のアミノ酸配列に対する「異種アミノ酸配列」という用語は、第1のアミノ酸配列に天然には付随しない、少なくとも本明細書に記載のκ様代替軽鎖構築物中に存在する形ではない、アミノ酸配列を指すのに使用される。したがって、Vκ様ポリペプチドに対する「異種アミノ酸配列」は、Vκ様配列と一緒にアミノ酸配列変異体、例えば短縮及び/又は誘導体化配列などのκ様代替軽鎖を形成するJCκ配列とは異なるJCκ配列を含めて、ただしそれだけに限定されない、その自然環境において未変性Vκ様ポリペプチドに付随しない任意のアミノ酸配列である。Vκ様ポリペプチドに対する「異種アミノ酸配列」は、その自然環境においては、VκIVとJCκ配列が互いに共有結合、例えば融合していないので、未変性配列JCκを含むVκ様ポリペプチドに共有結合した、例えば融合した、JCκ配列も含む。さらに、JCκ配列に対する「異種アミノ酸配列」は、JCκ配列がその自然環境では結合しない任意のVκ様ポリペプチド配列であり得る。Vκ様とJCκ配列の両方に対する更なる代表的な「異種アミノ酸配列」としては、未変性及び変異体のVpreB及びλ5配列、並びに抗体軽鎖及び重鎖の可変及び定常領域配列が挙げられる。一般に、本発明は、古典的な軽鎖アミノ酸配列とは異なる異種アミノ酸配列を提供する。例えば、異種アミノ酸配列は、古典的な軽鎖のV−J結合を含まない。
【0049】
「複合体」、「複合型」及び「複合化」という用語は、共有又は非共有結合の任意及びすべての形態を指し、直接の遺伝子又は化学融合、リンカー又は架橋剤を介したカップリング、及び例えばファンデルワールス力を介した、又はロイシンジッパーを用いた、非共有結合を含むが、それだけに限定されない。
【0050】
「融合」という用語は、1本のポリペプチド鎖中の異なる起源のアミノ酸配列の、それらのコードヌクレオチド配列のインフレームの組合せによる、組合せを指すのに本明細書では使用される。「融合」という用語は、その末端の1つとの融合に加えて、内部の融合、すなわち、ポリペプチド鎖内の異なる起源の配列の挿入を明示的に包含する。
【0051】
本明細書では「標的」という用語は、本明細書に記載のポリペプチドと相互作用する物質である。本明細書で定義する標的としては、本発明のVκIV又はJCκ含有構築物が相互作用する抗原が具体的に挙げられる。好ましくは、相互作用は直接結合によって生じる。
【0052】
本明細書では「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語はすべて、共有結合性「ペプチド結合」によって連結されたアミノ酸の一次配列を指す。一般に、ペプチドは、少数のアミノ酸、典型的には約2から約50個のアミノ酸からなり、タンパク質よりも短い。本明細書では「ポリペプチド」という用語は、ペプチド及びタンパク質を包含する。
【0053】
「アミノ酸」又は「アミノ酸残基」という用語は、典型的には、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リシン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)及びバリン(Val)からなる群より選択されるアミノ酸など、その分野で認められた定義を有するアミノ酸を指す。ただし、修飾、合成又は希少アミノ酸を所望のとおりに使用することができる。したがって、37CFR1.822(b)(4)に記載の修飾及び異常アミノ酸は、この定義に具体的に含まれ、参照により本明細書に明確に援用される。アミノ酸は、種々の亜群に細分することができる。すなわち、アミノ酸は、非極性側鎖(例えば、Ala、Cys、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Val)、負に帯電した側鎖(例えば、Asp、Glu)、正に帯電した側鎖(例えば、Arg、His、Lys)、又は無電荷の極性側鎖(例えば、Asn、Cys、Gln、Gly、His、Met、Phe、Ser、Thr、Trp及びTyr)を有するとして分類することができる。アミノ酸は、低分子アミノ酸(Gly、Ala)、求核性アミノ酸(Ser、His、Thr、Cys)、疎水性アミノ酸(Val、Leu、Ile、Met、Pro)、芳香族アミノ酸(Phe、Tyr、Trp、Asp、Glu)、アミド(Asp、Glu)及び塩基性アミノ酸(Lys、Arg)として分類することもできる。
【0054】
「ポリヌクレオチド(単数又は複数)」という用語は、DNA分子、RNA分子、その類似体(例えば、ヌクレオチド類似体又は核酸化学反応を用いて作製される、DNA又はRNA)などの核酸を指す。所望のとおりに、ポリヌクレオチドは、例えば当分野で認められた核酸化学反応を用いて、合成的に作製することができ、又は例えばポリメラーゼを用いて、酵素的に作製することができ、必要に応じて修飾することができる。典型的な修飾としては、メチル化、ビオチン化、及び当分野で公知の他の修飾が挙げられる。また、核酸分子は、一本鎖でも二本鎖でもよく、所望であれば、検出可能な成分と連結することができる。
【0055】
基準ポリペプチドに対する「変異体」という用語は、未変性ポリペプチドに比べて少なくとも1個のアミノ酸変異又は修飾(すなわち、改変)を有するポリペプチドを指す。「アミノ酸修飾」によって生成される変異体は、例えば、未変性アミノ酸配列中の少なくとも1個のアミノ酸を置換、欠失、挿入及び/又は化学修飾することによって作製することができる。
【0056】
「アミノ酸修飾」とは、所定のアミノ酸配列のアミノ酸配列変化を指す。例示的な修飾としては、アミノ酸置換、挿入及び/又は欠失が挙げられる。
【0057】
「指定位置におけるアミノ酸修飾」とは、指定残基の置換若しくは欠失、又は指定残基に隣接した少なくとも1個のアミノ酸残基の挿入を指す。指定残基に「隣接した」挿入とは、その1から2個の残基内の挿入を意味する。挿入は、指定残基のN末端でもC末端でもよい。
【0058】
「アミノ酸置換」とは、所定のアミノ酸配列における別の異なる「置換」アミノ酸残基による少なくとも1個の既存アミノ酸残基の置換を指す。置換残基(単数又は複数)は、「天然アミノ酸残基」(すなわち、遺伝コードによってコードされる)とすることができ、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リシン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)及びバリン(Val)からなる群より選択される。1個以上の非天然アミノ酸残基による置換は、本明細書に記載のアミノ酸置換の定義によっても包含される。
【0059】
「非天然アミノ酸残基」とは、ポリペプチド鎖中の隣接アミノ酸残基(単数又は複数)に共有結合することができる、上記天然アミノ酸残基以外の残基を指す。非天然アミノ酸残基の例としては、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、及びEllmanら、Meth.Enzym.202:301 336(1991)に記載のものなどの他のアミノ酸残基類似体が挙げられる。かかる非天然アミノ酸残基を作製するために、Norenら、Science244:182(1989)及びEllmanら、(上掲)の手順を使用することができる。手短に述べると、これらの手順は、非天然アミノ酸残基によってサプレッサーtRNAを化学的に活性化し、続いてRNAをin vitroで転写及び翻訳することを含む。
【0060】
「アミノ酸挿入」とは、所定のアミノ酸配列中への少なくとも1個のアミノ酸の組み込みを指す。挿入は、通常、1又は2個のアミノ酸残基の挿入からなるが、本願は、より大きい「ペプチド挿入」、例えば、約3から約5個、さらには最高約10個のアミノ酸残基の挿入を企図する。挿入された残基(単数又は複数)は、上記天然又は非天然とすることができる。
【0061】
「アミノ酸欠失」とは、所定のアミノ酸配列からの少なくとも1個のアミノ酸残基の除去を指す。
【0062】
「変異誘発」という用語は、別段の記載がない限り、ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列を変更する当分野で認められた任意の技術を指す。変異誘発の好ましいタイプとしては、誤りがちなPCR変異誘発、飽和変異誘発、又は他の部位特異的変異誘発が挙げられる。
【0063】
「部位特異的変異誘発」は、当分野では標準的な技術であり、所望の変異に相当する限定されたミスマッチ以外は、変異誘発しようとする一本鎖ファージDNAに相補的である合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて実施される。手短に述べると、合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、一本鎖ファージDNAに相補的である鎖の合成を誘導し、ファージを支持する宿主細菌に生成した二本鎖DNAを転換する。形質転換細菌の培養物を上層寒天に蒔き、ファージを宿す単細胞からプラークを形成させる。理論的には、新しいプラークの50%は一本鎖として変異型を有するファージを含み、50%は元の配列を有することになる。目的とするプラークは、完全一致のハイブリダイゼーションを可能にする温度であるが、元の鎖とのミスマッチがハイブリダイゼーションの阻止に十分である温度で、キナーゼ処理合成プライマーとハイブリッド形成することによって選択される。次いで、プローブとハイブリッド形成したプラークを選択し、配列を決定し、培養し、DNAを回収する。
【0064】
本発明の状況において「抗体」(Ab)という用語は、V(D)J遺伝子組換えに由来する古典的に組み換えられた重鎖とやはりVJ遺伝子組換えに由来する古典的に組み換えられた軽鎖とに由来する未変性抗体、又はその断片を指すのに使用される。
【0065】
「未変性抗体」は、2本の同一軽(L)鎖と2本の同一重(H)鎖で構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、共有結合性ジスルフィド結合によって重鎖に連結され、ジスルフィド結合数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変動する。各重鎖及び軽鎖は、規則的に間隔をおいた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、可変ドメイン(VH)とそれに続く幾つかの定常ドメインを一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を有し、その他端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと並び、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと並ぶ。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの界面を形成すると考えられる(Chothiaら、J.Mol.Biol.186:651(1985)、Novotny and Haber,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82:4592(1985))。
【0066】
抗体鎖に関連した「可変」という用語は、抗体間で配列が大きく異なり、その特定の抗原に対する特定の各抗体の結合及び特異性に関与する、抗体鎖の部分を指すのに使用される。かかる可変性は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの両方の超可変領域と称する3個のセグメントに集中する。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と称される。未変性重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、4個のFR(それぞれFR1、FR2、FR3及びFR4)を各々含み、4個のFRは、主としてβシート形状をとり、3個の超可変領域によって連結される。3個の超可変領域は、βシート構造を連結するループを形成し、場合によってはβシート構造の一部を形成するループを形成する。各鎖の超可変領域は、FRによって近位に共に保持され、他方の鎖の超可変領域と一緒に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991),647−669頁参照)。定常ドメインは、抗体と抗原の結合に直接関与しないが、抗体依存性の細胞毒性における抗体の関与などの種々のエフェクター機能を示す。
【0067】
本明細書では「超可変領域」という用語は、抗原結合性を担う、抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」、すなわち「CDR」由来のアミノ酸残基を含む(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基30〜36(L1)、46〜55(L2)及び86〜96(L3)、並びに重鎖可変ドメイン中の30〜35(H1)、47〜58(H2)及び93〜101(H3)(MacCallumら、J Mol Biol.262(5):732−45(1996))。
【0068】
「フレームワーク領域」という用語は、より異なるCDR領域間に存在する、抗体可変領域の当分野で認められた部分を指す。かかるフレームワーク領域は、典型的には、フレームワーク1から4(FR1、FR2、FR3及びFR4)と称され、CDRが抗原結合性表面を形成できるように、重鎖又は軽鎖抗体可変領域中に存在する3個のCDRを3次元空間に保持する足場を提供する。
【0069】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体を種々のクラスに帰属させることができる。5つの主要な抗体クラスIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、その幾つかはサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に更に分割することができる。
【0070】
異なる免疫グロブリンクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。
【0071】
任意の脊椎動物種に由来する抗体の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に異なるタイプの1つに帰属させることができる。本明細書に記載の抗体軽鎖という表記は常にκとλ軽鎖の両方を含む。
【0072】
「抗体断片」は、完全長抗体の一部、一般に抗原結合又はその可変ドメインを含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、(scFv)2、dAb及び相補性決定領域(CDR)断片、抗体断片から形成される線状抗体、単鎖抗体分子、ミニボディ、二重特異性抗体、多重特異性抗体、並びに一般に、ポリペプチドに特異的抗原結合性を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチドが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0073】
「単鎖Fv」、すなわち「sFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖中に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成できるようにする、VHドメインとVLドメインの間のポリペプチドリンカーを更に含む。sFvの総説については、Plueckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい。単鎖抗体は、例えば、国際公開第88/06630号及び同92/01047号に開示されている。
【0074】
二重特異性抗体は、VHドメインとVLドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、短かすぎて同じ鎖上でこれら2個のドメインの対形成が不可能であるリンカーを用いることによって、これらのドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成させ、2個の抗原結合部位を生成させた、二価の二重特異的な抗体である(例えば、Holliger,P.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444 6448(1993)、及びPoljak,R.J.,et al.,Structure 2:1121 1123(1994)参照)。
【0075】
「ミニボディ」という用語は、80kDaの二価の二量体(scFv−CH3)2に自己組織化するscFv−CH3融合タンパク質を指すのに使用される。
【0076】
「アプタマー」という用語は、タンパク質標的に高い特異性及び親和性で結合する合成核酸リガンドを指すのに本明細書では使用する。アプタマーは、タンパク質機能の強力な阻害剤として知られる。
【0077】
「Affibody」という用語は、ブドウ球菌性プロテインAに由来するZドメインの3ヘリックス足場に典型的には基づく、操作された標的特異的非免疫グロブリン結合タンパク質を指すのに使用される。58アミノ酸Zドメインは、Staphylococcus aureusプロテインA(SPA)中の5個の相同ドメイン中の1個(Bドメイン)に由来する。SPAは、免疫グロブリンのFc領域に強く結合する。Zは、IgG含有樹脂を用いることによって組換えタンパク質の親和性精製のための安定化遺伝子融合相手として最初は開発された。SPAのBドメインとFc断片の複合物の構造によれば、結合性表面はヘリックス1及び2上に露出した残基からなるのに対して、ヘリックス3は結合に直接関与しない。Affibodyは、通常、典型的にはヘリックス1及び2のFc結合性表面における13個の残基が無作為化された、コンビナトリアルライブラリーから選択される。次いで、タンパク質を標的にした特異的結合剤は、所望の標的に対するファージディスプレイライブラリーのバイオパニングによって特定される。かかるAffibodyは、種々の生化学アッセイ及び臨床応用において、免疫グロブリンの代替として使用することができる。
【0078】
dAb断片(Wardら、Nature341:544 546(1989))は、VHドメイン又はVLドメインからなる。
【0079】
本明細書では「抗体結合領域」という用語は、抗原(単数又は複数)に結合可能である、免疫グロブリン又は抗体可変領域の1個以上の部分を指す。典型的には、抗体結合領域は、例えば、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン、単鎖抗体(scFv)などの抗体軽鎖(VL)(又はその可変領域)、抗体重鎖(VH)(又はその可変領域)、重鎖Fd領域、組合せ抗体軽鎖及び重鎖(又はその可変領域)、又は完全長抗体、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE若しくはIgM抗体である。
【0080】
本明細書では「エピトープ」という用語は、配列に応じて生成される抗体に単独で、又はより大きい配列の一部として、結合する配列を規定する、少なくとも約3から5、好ましくは少なくとも約5から10、又は少なくとも約5から15個のアミノ酸、典型的には約500個以下、又は約1,000個のアミノ酸の配列を指す。エピトープは、エピトープが由来する親タンパク質の部分と同一である配列を有するポリペプチドに限定されない。実際、ウイルスゲノムは、常時変化した状態にあり、単離体間で比較的高度の可変性を示す。すなわち、「エピトープ」という用語は、未変性配列と同一である配列、並びに未変性配列における欠失、置換及び/又は挿入などの修飾を包含する。一般に、かかる修飾は、本質的に保存的であるが、非保存的修飾も企図される。この用語は、具体的には、「ミモトープ」、すなわち連続線状未変性配列を識別しないが、又は未変性タンパク質中に必ずしも存在しないが、未変性タンパク質上のエピトープを機能的に模倣する配列を含む。「エピトープ」という用語は、具体的には、線状及び配座エピトープを含む。
【0081】
「ベクター」という用語は、細胞中で自己複製可能であり、DNAセグメント、例えば遺伝子又はポリヌクレオチドが、付着したセグメントが複製されるように作用可能に結合することができる、rDNA分子を指すのに使用される。1個以上のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を誘導可能なベクターを本明細書では「発現ベクター」と称する。「制御配列」という用語は、特定の宿主生物において作動可能に結合したコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。例えば、原核生物に適切な制御配列としては、プロモーターが挙げられ、場合によってはオペレーター配列及びリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
【0082】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれたときに、「作動可能に結合」している。例えば、プレ配列又は分泌リーダー用のDNAは、ポリペプチドの分泌に関与する前タンパク質として発現される場合には、ポリペプチド用のDNAに作動可能に結合している。また、プロモーター又はエンハンサーは、コード配列の転写に影響を及ぼす場合には、コード配列に作動可能に結合している。あるいは、リボソーム結合部位は、翻訳を促進するように位置する場合には、コード配列に作動可能に結合している。一般に、「作動可能に結合した」とは、結合されたDNA配列が近接していること、また、分泌リーダーの場合、近接し、読み相(reading phase)にあることを意味する。しかし、エンハンサーは近接していなくてもよい。結合は、好都合な制限酵素切断部位におけるライゲーションによって行われる。かかる部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーを慣例的実務に従って使用する。
【0083】
「ファージディスプレイライブラリー」は、クローン化タンパク質配列のコレクションをファージコートタンパク質との融合体として発現するタンパク質発現ライブラリーである。したがって、「ファージディスプレイライブラリー」という句は、本明細書では、ファージ(例えば、繊維状ファージ)のコレクションを指し、ファージは外部(典型的には異種)タンパク質を発現する。外部タンパク質は、ファージが接触する別の部分と自由に相互作用(結合)することができる。外部タンパク質をディスプレイする各ファージは、ファージディスプレイライブラリーの「メンバー」である。
【0084】
「繊維状ファージ」という用語は、その表面の異種ポリペプチドをディスプレイする能力を有するウイルス粒子を指し、f1、fd、Pf1及びM13を含むが、それだけに限定されない。繊維状ファージは、テトラサイクリンなどの選択マーカーを含むことができる(例えば、「fd−tet」)。種々の繊維状ファージディスプレイ系が当業者に周知である(例えば、Zacherら、Gene9:127−140(1980),Smithら、Science228:1315−1317(1985)及びParmley and Smith Gene73:305−318(1988)参照)。
【0085】
「パニング」という用語は、抗体などの化合物を有するファージを、標的に対して高い親和性及び特異性で特定及び単離する、複数回のスクリーニングプロセスを指すのに使用される。
【0086】
「ドミナントネガティブ」という用語は、本明細書では、親又は関連タンパク質の少なくとも幾つかの生物学的特性の拮抗物質として作用するポリペプチド変異体又はポリペプチド断片を指すのに使用される。
【0087】
B.詳細な説明
本発明の方法を実施するための技術は当分野で周知であり、例えば、Ausubelら、Current Protocols of Molecular Biology,John Wiley and Sons(1997)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,J.Sambrook and D.W.Russell,eds.,Cold Spring Harbor,New York,USA,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001、O’Brianら、Analytical Chemistry of Bacillus Thuringiensis,Hickle and Fitch,eds.,Am.Chem.Soc.,1990、Bacillus thuringiensis:biology,ecology and safety,T.R.Glare and M.O’Callaghan,eds.,John Wiley,2000、Antibody Phage Display,Methods and Protocols,Humana Press,2001、及びAntibodies,G.Subramanian,ed.,Kluwer Academic,2004を含めて、標準の実験室の教科書に記載されている。変異誘発は、例えば、部位特異的変異誘発によって実施することができる(Kunkelら、Proc.Natl.Acad.Sci USA82:488−492(1985))。PCR増幅法は、米国特許第4,683,192号、同4,683,202号、同4,800,159号及び同4,965,188号、並びに”PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification”,H.Erlich,ed.,Stockton Press,New York(1989)、及びPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innisら、eds.,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)を含めて、幾つかの教科書に記載されている。
【0088】
本発明は、抗体代替軽鎖配列を含む、構築物及びライブラリーに関する。
【0089】
Κ様代替軽鎖構築物
代替軽鎖(SLC)は、発生途上のB細胞受容体の新生重鎖に自然に結合する発生的に制御されたポリペプチドである。重鎖及び代替軽鎖の研究は、時には、それらが自己抗原に結合し得ることを示すことがある。代替軽鎖を含むB細胞は耐容性が良好であり、通常条件下で循環しているのを見つけることができることは十分に証明されている。伸長によって、治療用VH代替軽鎖ヘテロメリックタンパク質は、より容易に自己抗原に結合することができ、治療薬として耐容性が良好であり得る。重要な特徴は、代替軽鎖が抗体軽鎖ではないことである。代替軽鎖は、2種類の分離したポリペプチドで明確に構成され、これらはその発現に対して古典的な軽鎖VJ再配列を行わないが、それでも依然として古典的な抗体重鎖に結合する。
【0090】
十分に記述されたラムダ様代替軽鎖が存在するが、更に別のSLC、具体的には代替カッパ様軽鎖の概念を支持する証拠も多数ある。これは、代替軽鎖ノックアウトマウスにおいて裏付けられている。代替軽鎖ノックアウトマウスは、依然として抗体産生能力を有し、それによってB細胞発生の代替経路が示唆される。一代替軽鎖候補はκ様軽鎖である。κ様軽鎖は、JCκ融合遺伝子と組み合わされた生殖系列VκIV遺伝子である。これらの遺伝子の各々においては、ペプチド性伸長部が、CDR3に類似した部位の周囲に存在する。これら2種類のタンパク質は、ゲノムレベルでは再結合しないように見えるので、重鎖とそれらの結合は互いに相容れず、λ様代替軽鎖に対して記述される結合に類似している可能性がある。重要なことには、これらの遺伝子に見られるペプチド伸長部は、更なる多様性又は機能性を組み入れる機会を与える。
【0091】
Vκ様遺伝子とJCκ様遺伝子は、互いに独立に代替軽鎖として機能することができるタンパク質をコードするので、本発明のκ様代替軽鎖構築物は、具体的に、JCκ様配列なしにVκ様配列、及びVκ様配列なしにJCκ様配列を含む構築物を含む。
【0092】
一態様においては、本発明は、Vκ様及び/又はJCκ配列を含み、標的に結合する能力を有する、構築物を提供する。標的は、例えば、Vκ様及び/又はJCκ配列の結合相手である任意のペプチド若しくはポリペプチド、又はかかる配列(単数又は複数)を含む構築物であり得る。標的は、具体的には、抗体結合に関連して「抗原」と一般に称されるすべてのタイプの標的を含む。
【0093】
本発明のκ様代替軽鎖構築物がVκ様とJCκ配列の両方を含むときには、2個の配列は、典型的には互いに融合しない独立したポリペプチドであるが、非共有結合することもでき、又はペプチドリンカー及び/又は抗体配列を含むリンカーなどの共有結合性リンカーによって互いに連結することもできる。
【0094】
本発明の構築物は、VκIV及び/又はJCκ配列と異種アミノ酸配列との複合体を含むが、それだけに限定されない。異種アミノ酸配列との結合は、共有結合でも非共有結合でもよく、直接的でも、ペプチドリンカーを含めたリンカーを介してでもよい。
【0095】
その変異体及び断片を含めたVκ様及び/又はJCκ配列の自由末端は、かかる配列のライブラリーに更なる多様性を組み入れるのに利用可能である。例えば、無作為ペプチドライブラリーを、これらの自由末端の1つに付加又は置換することができ、特定の標的との特異的結合に対してパニングすることができる。所望の結合特異性を有することが確認された代替軽鎖を同じ標的に対する重鎖又は重鎖断片と組み合わせることによって、2つの異なる場所の同起源の標的に結合する能力を有する分子を作製することができる。このタンデム結合又は「キレート」効果は、二量体免疫グロブリンで見られる結合活性効果と同様に、単一の標的への結合を強力に強化する。異なる標的に結合する成分を使用することも可能である。したがって、例えば、所望の結合特異性を有する代替軽鎖成分を、異なる標的に結合する抗体重鎖又は重鎖断片と組み合わせることができる。例えば、代替軽鎖成分を腫よう抗原に結合させ、抗体重鎖又は重鎖断片を効果細胞に結合させることができる。こうして、ターゲティング及び抗腫よう活性を有する単一体を作製することができる。特定の一実施形態においては、Vκ様及び/又はJCκ配列を連結する付加物(appendage)又はポリペプチドは、抗体又はFab、scFv断片などの抗体断片とすることができる。抗体配列の組み込みは、「キレート」効果を生じるだけでなく、二重特異性抗体で見られるものなどの第2の独立した腕を必要とせずに、単一の分子において二重特異性をもたらすこともできる。2つの特異性は、同じ標的の異なる部分、異なる標的、又は標的抗体複合物に対するものであり得る。
【0096】
本明細書に記載のポリペプチド構築物の具体例としては、Vκ様及び/又はJCκ配列が抗体重鎖に結合したポリペプチド、又はその断片が挙げられる。Vκ様とJCκ配列の両方を含む具体的ヘテロ二量体構築物を図5に示す。図5に示すように、本発明のκ様代替軽鎖構築物においては、Vκ様ポリペプチド及び/又はJCκポリペプチドは、類似の抗体配列には存在しない、それぞれC及びN末端伸長部を含み得る。あるいは、伸長部(単数又は複数)の一部又は全体を本明細書に記載のκ様代替軽鎖構築物から除去することができる。
【0097】
個々に使用することができる、又は更に誘導体化することができる、及び/又は完全長抗体重鎖若しくはその断片などの抗体重鎖配列などの追加の異種配列に結合することができる、他のκ様代替軽鎖構築物。
【0098】
Vκ様ポリペプチド及び/又はJCκポリペプチドのC及びN末端伸長部は、本発明の構築物中に存在する必要はないが、かかる付加物の少なくとも1個の少なくとも一部を保持することが有利である。というのは、図7に示すように、スクリーニングループライブラリーの結果として、線状伸長部又は、例えば、束縛された多様性の形で、それらがコンビナトリアル機能的多様性をもたらす独特の機会を提供するからである。さらに、Vκ様ポリペプチド及び/又はJCκポリペプチドの「尾部」部分は、別のペプチド及び/又はポリペプチドと融合して、例えば、強化された結合、更なる結合特異性、増大されたpK、改善された半減期、短縮された半減期、細胞表面係留(cell surface anchoring)、細胞トランスロケーションの増大、ドミナントネガティブ活性など種々の所望の性質に備えることができる。具体的な機能的尾部伸長部を図14に記載する。
【0099】
必要に応じて、本発明の構築物は、例えば、公知の治療用抗体を含めた抗体のCDR1、CDR2及び/又はCDR3領域由来の公知の配列又は配列モチーフをκ様代替軽鎖配列のCDR1、CDR2及び/又はCDR3類似領域に組み入れる又は付加することによって、操作することができる。これによって、抗体ではないが、公知の抗体医薬と類似した又はそれよりも優れた結合特異性及び親和性を示すであろう分子を作製することができる。
【0100】
ある実施形態においては、異種アミノ酸配列は、1つ以上の追加の機能性を本発明の構築物に追加することができる。所望の結合特異性を有する抗体可変領域配列を含む、追加の機能性を有するかかる構築物を図13に示す。特に、図13は、上記Vκ様及びJCκポリペプチド配列を含む種々の二機能性及び三機能性構築物を示す。
【0101】
本発明の構築物を特定の実施形態を参照して説明したが、当業者は、代替軽鎖及び抗体配列の様々な並べ換えによって得られる多数の更なる実施形態が可能であり、本発明の範囲内であることを理解するであろう。本発明は、代替軽鎖配列を含み所望の標的に結合する能力を有するすべての構築物を含む。ある実施形態においては、構築物は、抗体重鎖可変領域配列に結合する能力も有する。
【0102】
本発明の構築物を使用して、代替軽鎖配列のライブラリーを構築することができ、そのライブラリーは、抗体ライブラリーと同様に、所望の結合特異性及び親和性を有する構築物の選択を含めて、種々の目的で使用することができる。
【0103】
Vκ様及びJCκ遺伝子は、独立したタンパク質として機能することができ代替軽鎖として機能することができるポリペプチドをコードするので、代替様軽鎖を真の軽鎖から操作することができ、操作された真の代替軽鎖に対して提案された以前のあらゆる用途に使用することができる。これは、VpreB又はVκ様遺伝子に類似したペプチド性伸長部を含むように可変軽鎖領域を発現させることによって果たすことができる。同様に、定常領域は、ラムダ5又はJCκ遺伝子及びそのペプチド性伸長部に類似するように操作することができる。さらに、任意のキメラ又はヘテロ二量体との組合せも本明細書の範囲内である。
【0104】
κ様代替軽鎖構築物の調製
本発明のκ様代替軽鎖構築物は、組換えDNA技術の周知技術を含めて、当分野で公知の方法によって調製することができる。
【0105】
κ様代替軽鎖ポリペプチドをコードする核酸は、自然源、例えば発生途上のB細胞から単離することができ、及び/又は合成若しくは半合成方法によって得ることができる。このDNAが特定されて、単離されると、又は産生されると、更なるクローニングのために、又は発現のために、複製可能なベクター中にそれを連結することができる。
【0106】
本明細書に記載のポリペプチドのコード配列を発現するのに使用することができるクローニング及び発現ベクターは、当分野で周知であり、市販されている。ベクター成分としては、一般に、以下、すなわち、シグナル配列、複製開始点、1個以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター及び転写終結配列のうちの1個以上が挙げられるが、それだけに限定されない。本明細書に記載のベクターにおいて代替軽鎖構築物をコードするDNAのクローニング又は発現に適切な宿主細胞は、原核生物、酵母又は高等真核生物(哺乳動物)細胞であり、哺乳動物細胞が好ましい。
【0107】
適切な哺乳動物宿主細胞系の例としては、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1系(COS−7、ATCC CRL1651)、懸濁培養増殖用にサブクローニングされたヒト胚性腎臓系293(293細胞)(Graham et al,J.Gen Virol.36:59(1977))、ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:4216(1980))、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980))、サル腎細胞(CV1 ATCC CCL70)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587)、ヒト頚癌細胞(HELA、ATCC CCL2)、イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL34)、スイギュウラット肝細胞(BRL3A、ATCC CRL1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75)、ヒト肝細胞(Hep G2、HB8065)、マウス乳房腫よう(MMT060562、ATCC CCL51)、TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982))、及びMRC5細胞、FS4細胞が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0108】
哺乳動物細胞用に、発現ベクターに対する制御機能がウイルス性材料によってもたらされることが多い。したがって、一般に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、レトロウイルス、サイトメガロウイルス及びシミアンウイルス40(SV40)のゲノムに由来し得る。βアクチンプロトマーなどの別のプロモーターは、異種の供給源から生ずる。適切なプロモーターの例としては、SV40ウイルスの初期及び後期プロモーター(Fiersら、Nature,273:113(1978))、ヒトサイトメガロウイルスの前初期プロモーター(Greenawayら、Gene,18:355−360(1982))、及び所望の遺伝子配列に通常は付随するプロモーター及び/又は制御配列が挙げられるが、それだけに限定されない。ただし、かかる制御配列は、宿主細胞系に適合したものである。
【0109】
高等真核細胞による所望の異種ポリペプチドをコードするDNAの転写は、エンハンサー配列をベクターに挿入することによって増加する。エンハンサーは、プロモーターに作用してその転写開始活性を増大させる、通常約10から300bpの、DNAのシス作用要素である。エンハンサーは、配向及び位置に比較的無関係であるが、好ましくは、発現ベクター中に存在するプロモーター配列の上流に位置する。エンハンサーは、例えば、真核細胞ウイルス由来など、プロモーターと同じ供給源に由来し得る(例えば、複製開始点の後期側のSV40エンハンサー(bp100〜270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後期側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサー)。
【0110】
哺乳動物宿主細胞に使用される発現ベクターは、例えばSV40(初期及び後期)、HBVなどのウイルスに由来するものなどのポリアデニル化部位も含む。
【0111】
複製開始点は、SV40又は別のウイルス(例えば、ポリオーマ、アデノ、VSV、BPV)源に由来し得るなど、外来性開始点を含むようにベクターを構築することによって用意することができ、又は宿主細胞によって用意することができる。
【0112】
発現ベクターは、通常、ベクターで形質転換された宿主細胞の生存又は成長に必要なタンパク質をコードする選択マーカーを含む。哺乳動物細胞用の適切な選択マーカーの例としては、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)及びネオマイシンが挙げられる。
【0113】
形質転換された宿主細胞は、種々の培地中で培養することができる。市販培地としては、ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、ダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などが挙げられる。また、Hamら、Meth.Enz.58:44(1979)及びBarnesら、Anal.Biochem.102:255(1980)に記載の培地のいずれかを宿主細胞用培地として使用することができる。温度、pHなどの培養条件は、発現用に選択された宿主細胞で以前に使用された条件であり、製造者の指示に含まれ、又は当業者に明らかである。
【0114】
ライブラリーは、κ様代替軽鎖配列を含む。
【0115】
本発明は、さらに、κ様代替軽鎖配列及びかかる配列を含む構築物の種々のライブラリーにも関する。すなわち、かかるライブラリーは、上で又は実施例で具体的に記述したものを含めて、ただしそれだけに限定されない、本発明のVκ様及び/又はJCκ含有構築物などの、κ様代替軽鎖配列のディスプレイを含むことができ、該ディスプレイから本質的になることができ、又は該ディスプレイからなることができる。
【0116】
本発明のライブラリーは、好ましくはディスプレイの形である。抗体及び他のポリペプチドを含めて、異種タンパク質をディスプレイする系は、当分野で周知である。抗体断片は、抗体遺伝子をコードする繊維状ファージの表面にディスプレイされる(Hoogenboom and Winter J.Mol.Biol.,222:381 388(1992)、McCaffertyら、Nature348(6301):552 554(1990)、Griffithsら、EMBO J.,13(14):3245−3260(1994))。抗体ライブラリーを選択及びスクリーニングする技術の総説については、例えば、Hoogenboom,Nature Biotechnol.23(9):1105−1116(2005)を参照されたい。また、Escherichia coli(Agterbergら、Gene 88:37−45(1990)、Charbitら、Gene 70:181−189(1988)、Franciscoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:2713−2717(1992))、及びSaccharomyces cerevisiaeなどの酵母(Boder and Wittrup,Nat.Biotechnol.15:553−557(1997)、Kiekeら、Protein Eng.10:1303−1310(1997))の表面での異種タンパク質及びその断片のディスプレイのための当分野で公知の系がある。他の公知のディスプレイ技術としては、リボソーム又はmRNAディスプレイ(Mattheakisら、Proc.Natl.Acad Sci.USA91:9022−9026(1994)、Hanes and Pluckthun,Proc.Natl.Acad.Sci.USA94:4937−4942(1997))、DNAディスプレイ(Yonezawaら、Nucl.Acid Res.31(19):e118(2003))、細菌ディスプレイなどの微生物細胞ディスプレイ(Georgiouら、Nature Biotech.15:29−34(1997))、哺乳動物細胞上のディスプレイ、胞子ディスプレイ(Isticatoら、J.Bacteriol.183:6294−6301(2001)、Chengら、Appl.Environ.Microbiol.71:3337−3341(2005)、レトロウイルスディスプレイなどのウイルスディスプレイ(Urbanら、Nucleic Acids Res.33:e35(2005)、タンパク質−DNA結合に基づくディスプレイ(Odegripら、Proc.Acad.Natl.Sci.USA101:2806−2810(2004)、Reiersenら、Nucleic Acids Res.33:e10(2005))、ミクロビーズディスプレイ(Seppら、FEBS Lett.532:455−458(2002))などが挙げられる。
【0117】
本発明では、代替軽鎖含有ライブラリーは、有利には、ファージディスプレイ及び胞子ディスプレイを含めて、任意のディスプレイ技術を使用してディスプレイすることができる。
【0118】
ファージディスプレイにおいては、代替軽鎖ポリペプチドなどの異種タンパク質はファージ粒子のコートタンパク質に結合するが、それが発現されたDNA配列はファージ外被内に収められる。ファージディスプレイ法の詳細は、例えば、非免疫ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからのヒト抗体及び抗体断片のin vitroでの生成を記述したMcCaffertyら、Nature348,552−553(1990))に見いだすことができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、M13、fdなどの糸状バクテリオファージの主要な又は少数のコートタンパク質遺伝子中にインフレームでクローン化され、ファージ粒子表面で機能的抗体断片としてディスプレイされる。糸状粒子はファージゲノムの一本鎖DNA複製物を含むので、抗体を機能的性質に基づいて選択すると、その性質を示す抗体をコードする遺伝子も選択される。したがって、ファージは、B細胞の諸性質の一部を模倣する。ファージディスプレイは、種々の形式で実施することができる。その総説については、例えば、Johnson,Kevin S.and Chiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology3,564−571(1993)を参照されたい。幾つかのV遺伝子セグメント源をファージディスプレイに使用することができる。Clacksonら、Nature352,624−628(1991)は、免疫マウスのひ臓に由来するV遺伝子の小規模無作為コンビナトリアルライブラリーから多様な抗オキサゾロン抗体を単離した。Marksら、J.Mol.Biol.222,581−597(1991)又はGriffithら、EMBO J.12,725−734(1993)に記載の技術に基本的に従って、非免疫ヒトドナー由来のV遺伝子レパートリーを構築することができ、(自己抗原を含めて)多様な抗原に対する抗体を単離することができる。自然な免疫応答においては、抗体遺伝子は、変異を高率で蓄積する(体細胞超変異)。導入された変化の一部はより高い親和性を与え、それに続く抗原曝露中に、高親和性表面免疫グロブリンを示すB細胞が優先的に複製され、分化する。この自然プロセスは、「鎖シャフリング」として知られる技術を使用することによって模倣することができる(Marksら、Bio/Technol.10,779−783(1992))。この方法では、ファージディスプレイによって得られる「一次」ヒト抗体の親和性は、重鎖及び軽鎖のV領域遺伝子を、非免疫ドナーから得られたVドメイン遺伝子の天然変異体(レパートリー)のレパートリーで逐次置換することによって改善することができる。この技術によって、nM範囲の親和性を有する抗体及び抗体断片を作製することができる。極めて大きなファージ抗体レパートリーを作製する戦略は、Waterhouseら、Nucl.Acids Res.21,2265−2266(1993)によって記述された。これら及び当分野で公知の他の技術は、代替軽鎖配列を含むポリペプチド及び別の構築物を含めて、任意のポリペプチドのディスプレイに適合させることができる。
【0119】
Bacillus subtilis胞子殻(CotB)及びBacillus thuringiensis(Bt)胞子ディスプレイの成分を使用した表面ディスプレイ系を含めて、胞子ディスプレイは、その開示全体を参照により本明細書に明示的に援用する、Isticatoら、J.Bacteriol.183:6294−6301(2001)、Chengら、Appl.Environ.Microbiol.71:3337−3341(2005)に記載されている。別の胞子ディスプレイ系は、米国特許出願公開第20020150594号、同20030165538号、同20040180348号、同20040171065号及び同20040254364号に開示されている。
【0120】
κ様代替軽鎖配列、それを含む構築物及びライブラリーの使用
本発明のライブラリーを使用して、κ様代替軽鎖配列を特定することができ、代替軽鎖配列を含む融合体など、所望の諸性質を有するκ様代替軽鎖構築物を特定することができる。例えば、本明細書に記載のライブラリーのin vitro又はin vivoスクリーニングによって、高い結合特異性及び親和性で所望の標的に結合するκ様代替軽鎖配列を含むポリペプチドを生成することができる。したがって、本明細書に記載のライブラリーを使用して、腫ようマーカー又は治療的介入の別の分子標的に結合する代替軽鎖配列を含むポリペプチドなどの、治療及び診断のための分子を特定することができる。さらに、上記技術によって、同じ標的に結合するポリペプチドのコレクションを含むライブラリー、異なる標的に結合するポリペプチドのライブラリー、複数の特異性を有するポリペプチドのライブラリーなどを含めて、代替軽鎖ポリペプチドの極めて多様なライブラリーを設計することができる。
【0121】
本発明の更なる詳細を以下の非限定的実施例に記載する。
【実施例】
【0122】
実施例1
結合ドメインタンパク質としてのκ様SLC成分、Vκ様又はJCκ
Vκ様結合ドメインを作製するために、図2及び4(配列番号2)に示す単一タンパク質を組換え作製する。代替軽鎖(SLC)結合ドメインタンパク質構築物は、予測される配列番号2の分泌Vκ様タンパク質に由来するアミノ酸21から180(これは3〜6個のアミノ酸ほどの短さであり得る)で構成される。必要に応じて、新規の特異的結合能力を得るために、構造又は配列上の証拠に従って分子を再設計する。再設計は、例えば、無作為又は合理的に設計された変異誘発手段による、CDR及び/又はC末端部内の多様化を含み得る。それに加えて、又はその代わりに、変異体のコレクションは、Vκ様タンパク質の全長に沿って、例えば誤りがちなPCRによって、無作為に、又はアミノ酸のコレクションを用いた単一若しくは多部位特異的変異誘発によって直接的に、作製される。次いで、生成したクローン又はコレクションを、ファージ又はファージミドディスプレイ用のpIIIを用いてインフレームでクローン化することができる。次いで、このファージミド構築物をTG1細胞に転換し、50μg/mlアンピシリン及び2%グルコースを補充したLuria培地(LB)中でOD600が約0.3になるまで増殖させ、振とうせずにMK307ヘルパーファージに37℃で30分間感染させる。細胞をペレット化し、次いで50μg/mlアンピシリン及び75μg/mlカナマイシンを含むLBに再懸濁させ、激しく曝気しながら30℃で終夜増殖させる。翌日、ファージミドによって発現されたVκ様タンパク質を含む上清を、一般に容認されたパニング法に従ってヒトTNF−αに対してパニングする。TNF−αに結合した特定のVκ様クローンを、選択及び増幅を繰り返して濃縮し、次いでやはり一般に容認されたm13ファージ評価法を利用して個々に結合を評価することができる。m13ファージ評価法は、典型的には、ファージELISA、又はE.coli中で産生された分泌タンパク質の粗製若しくは精製周辺質溶解物の試験を含む。
【0123】
上の記述は、Vκ様結合タンパク質の調製に関するが、Vκ様タンパク質は、共通標的を認識する別の異種配列と組換えによって再結合させ、ライブラリーとしてスクリーニングすることもできる。さらに、このVκ様結合タンパク質を、以前に選択された抗体重鎖コレクションと組み合わせ、目的とする同じ標的又は目的とする第2の標的に対して直接スクリーニングして、二重特異性分子を作製することができる。あるいは、この強化された結合、すなわち二重特異的結合は、重鎖の非選択コレクションと組み合わせたスクリーニングによって発見することができる。
【0124】
この実施例は抗体重鎖に言及したが、完全な重鎖は不要であることを理解すべきである。重鎖定常領域の非存在下での重鎖可変領域配列を含む組合せ、又は完全な重鎖定常領域も同様に作製することができ、この実施例の範囲内である。
【0125】
最後に、N末端伸長部、非CDRループ中に、又はJCκタンパク質の全長にわたって、単独で又は上記組合せで多様化を組み入れることができる以外は、JCκを同様に作製し、使用することができる。
【0126】
実施例2
カッパSLC構築
(「SURROBODY(商標)変異体」とも称する)図5に示すヘテロ二量体SLC欠失変異体のカッパ代替軽鎖成分のコード配列を、CHO−K1細胞(ATCC CCL−61)に、完全長IgG1抗体重鎖と同時導入して、生化学分析用の代替軽鎖構築物を過渡的に作製することができる。
【0127】
例えば、完全長Vκ様(配列番号2)及びJCκ(配列番号4)を哺乳動物発現ベクターpCI(Promega、Madison WI)に別々にクローン化する。これらのタンパク質の両方について、その予測される非構造的尾部の一部を削除する。Vκ様の場合、このC末端部は、Kabat類似残基#95又は配列番号2の残基122〜146に続き、JCκの場合、これは、配列番号4のJ領域N末端アミノ酸1〜28を含む。具体的には、JCκの場合、残基1〜28は、カッパJ領域の予測される開始から終わりまでである。Vκ様構築物は、未変性の予測される分泌シグナルを含み、Vκ様の場合には、この予測されるシグナルペプチドは配列番号2のアミノ酸1〜20である。しかし、JCκは、正準のシグナル配列を有するようには見えない。Francesらは、JCκが表面の露出した重鎖に結合することができることを示し、翻訳されたタンパク質が細胞外表面に輸送又は移行する能力を有することを示唆した。しかし、過剰発現目的では、SURROBODY(商標)タンパク質産生を改善するJCκタンパク質のアミノ末端又は任意の尾部欠失変異体に付加した正準の哺乳動物軽鎖シグナル配列を含む1セットの変異体も作製される。この短縮されたJCκ配列の配列は配列番号24で示され、重鎖及び完全長Vκ様と組み合わせると図5で「dJ」と命名されるSLC欠失変異体を形成する。短縮されたVκ様配列の配列は配列番号25で示され、重鎖及び完全長JCκと組み合わせると図5で「dVκ尾部」と命名されるSLC欠失変異体を形成する。短縮JCκ配列と短縮Vκ様タンパク質の両方を重鎖と組み合わせたとき、SLC欠失変異体は、図5で「短鎖カッパ」と命名される。
【0128】
実施例3
哺乳動物細胞におけるカッパ代替軽鎖構築物(SURROBODY(商標))の発現及び精製
図5の4種類のコンビナトリアルカッパ代替軽鎖候補の各々は、C末端ヘキサヒスチジン(His6)タグ(配列番号26)を含む公知のヒト抗インフルエンザウイルス重鎖を同時導入し、低血清培地中で製造者の提言(Invitrogen、Carlsbad CA)に従って発現させることができる。3日後、上清を収集し、ろ過し、ニッケルキレートクロマトグラフィー(Qiagen、Germany)によって精製する。次いで、精製タンパク質を、抗ペプチドウサギ血清(Vκ様及びJCκ)又は抗ヒスチジン抗体(Serotec、Raleigh NC)を用いたウエスタンブロット分析によって検査する。タンパク質の検出は、抗ウサギHRP(Vκ様及びJCκ)又は抗マウスHRP(重鎖)及びTMB基質を用いた発色に従って可視化される。
【0129】
コンビナトリアルカッパ代替軽鎖変異体の各々を、抗インフルエンザ重鎖に関連した同種抗原に結合する能力について試験する。これは、精製タンパク質又は浄化された移入上清を用いて実施することができる。いずれの場合も、96ウェルELISAプレートのウェルを、Kashyapら、Proc.Natl.Acad.Sci.105:5986−5991(2008)によって記述されたように、H5N1赤血球凝集素(Vietnam 1203)で被覆し、ブロックする。次に、SURROBODIES(商標)を添加し、室温で1時間抗原に結合させる。PBS+0.05%Tweenを用いた洗浄段階後、抗ヒトFc−HRP抗体、及び450nmにおける吸光度の読みを記録するTMB基質比色検出によって、結合を定量的に検出する。
【0130】
実施例4
カッパSLC成分への機能性付加
カッパSLCは2種類の独立したポリペプチドで構成されるので、これは、第2の機能性を付加する、又は埋め込む、自然な機会を創出する。本実施例においては、まず、抗VEGF scFvを挿入して、Vκ様、又はdVκ尾部及びJCκ若しくはdJを連結する融合タンパク質を作製する(図13A)。生成した操作されたカッパSLC束縛scFvを抗TNF−α抗体の重鎖と組み合わせる。所望のタンパク質は、個々の束縛融合体をC末端ヘキサヒスチジン(His6)タグ(配列番号27)を含む完全長重鎖と同時導入し、低血清培地中で製造者の提言(Invitrogen、Carlsbad CA)に従ってタンパク質を発現させることによって産生される。3日後、分泌されたSURROBODIES(商標)を培地から収集し、ろ過し、ニッケルキレートクロマトグラフィー(Qiagen、Germany)によって精製する。
【0131】
生成したタンパク質をELISAに使用して、標的結合を決定する。手短に述べると、ELISAでは、ELISAプレートをヒトTNF−α又はヒトVEGFで被覆、ブロッキングし、続いてカッパSLC SURROBODIES(商標)を4℃で2時間インキュベートし、PBS−Tween−20(0.05%)で洗浄し、抗ヒト重鎖−HRP抗体を直接検出する。
【0132】
あるいは、抗VEGF scFvとVκ様のC末端(図13B)又はJCκのN末端(図13C)を融合させ、生成したタンパク質複合構築物を上記surrobody ELISAと同様に評価することができる。
【0133】
最後に、抗VEGF scFvとVκ様のC末端及び抗卵白アルブミンscFvの融合体をJCκのアミノ末端に融合し、三連タンパク質複合物をVEGF、TNF−α及び卵白アルブミンとの結合について試験する(図13D)。
【0134】
記述scFvにおいては、異種標的に対して組み入れられるが、機能性結合剤を同じ標的に結合させて、タンデム「スーパー結合剤」を作製することができる。このタンデム結合剤は、強化された結合、さらに場合によっては架橋機能さえもたらすことができる。Fab架橋は、抗体全体が望ましくない長期の架橋をもたらす場合に有益であろう。例えば、インスリン代用物として作用して血清クリアランスに3〜4週間を要するインスリン受容体抗体は、免疫グロブリン全体には望ましくない場合がある。インスリンは、通常、数分の半減期を有するので、Fabは、この規模の半減期とより同調し、タンデム機能性は、この適用に適切に対処することができる。
【0135】
上の記述は、抗体のみを第2の機能性グループとして記述したが、関連するペプチド(例えば、エリスロポイエチン模倣物)、受容体(例えば、TNF−RI)、ドミナントネガティブ全タンパク質(例えば、DN−TNF、Steedら、Science.301:1895−1898(2003))拮抗断片又はドメイン(例えば、HGFに基づくNK1又はNK4ドメイン)、及び結合タンパク質(例えば、IL−1ra)も付加及び束縛された構築物に同様に組み入れて、類似機能の分子を作製することができる。さらに、2個の部位を利用して、第2のFab様分子を作製する重鎖と軽鎖などのヘテロ二量体タンパク質を組み入れることもできる。
【0136】
実施例5
カッパSLCライブラリー
上述したように、Vκ様及びJCκドメインは、単一の結合体として使用することができるが、それらを重鎖と組み合わせて、抗原に対するパニングのためのコンビナトリアルライブラリーを作製することもできる。重鎖は、無処置又は過免疫のリンパ球由来のコレクション又は合成コレクションであり得る。カッパSLCライブラリーと併用される前もって濃縮された抗体ライブラリー由来の重鎖コレクションを有することが有益な場合もある。いずれにしても、カッパSLC SURROBODIES(商標)の十分に多様なコレクションは、実施例1で上述した適切な選択及び設計のもとで、各カッパSLC成分中の独立した結合要素を介して複数の抗原選択性をもたらすことができ、又は標的に対してVκ様及びJCκ尾部を介して、古典的な抗体には存在しない追加の結合を介した結合を増強することができる。
【0137】
具体的には、本発明者らは、H5N1トリインフルエンザ生存物の骨髄から調製されたコンビナトリアル抗体ライブラリーを用いた反復手法を使用する。これらのライブラリーを2回の選択のためにH5N1ウイルス赤血球凝集素タンパク質に対してスクリーニングする。次に、ファージミドプラスミドを増幅し、精製し、このプラスミド調製物から制限消化によって重鎖可変領域を単離する。次いで、これらの重鎖を定常重鎖ドメイン1とインフレームでクローン化して、ファージミドディスプレイ用のm13遺伝子IIIコートタンパク質との組換え融合体を形成する。
【0138】
パニング後、濃縮クローンをHB2151 E.coli系統に移行させて、可溶性SURROBODY(商標)タンパク質を産生させることによって、すべての適切な回数の選択からのクローン抗原結合ファージ及びライブラリーに対して、ELISA試験を実施する。手短に述べると、HB2151クローンを増殖させ、可溶性SURROBODIES(商標)を産生させる。具体的には、100mcg/mlアンピシリン及び200マイクロモルIPTGを補充した2−YT培地中でコロニーを終夜30度で培養し、上述したように、周辺質溶解物を基本的に以前に概説したようにELISAによって試験する。
【0139】
実施例6
既存の軽鎖V遺伝子及び軽鎖定常遺伝子由来のSLC様分子の操作
カッパSLCの成分は、非再配列軽鎖V遺伝子及び再配列軽鎖JC遺伝子から代替機能をもたらすので、すべての残留カッパ及びラムダ軽鎖V遺伝子からの類似の翻訳されたタンパク質を操作して、Vκ様分子(図9及び10)及び残留カッパJC再配列物の全組合せ(4種類のJCκ様)(図11及び12)及びラムダJC再配列物(4「J」×10「定常」=40種類のJCλ様)(図11)を作製することができる。これらの操作された分子の各々は、Vκ様及びJCκを用いたもの、並びに2007年3月28日に出願された同時係属中のPCT出願番号PCT/US2008/058283にVpreB及びλ5と一緒に含まれるもの、並びにその組合せ及びキメラと類似の目的を果たすことができる(図16)。
【0140】
実施例7
血清中半減期を延長するカッパ代替軽鎖融合
in vivoでの抗体断片の半減期は、抗体断片が、安定な抗原結合性断片を形成するのに必要なものだけでなくすべての重鎖定常ドメインを含む無処置の完全な重鎖との融合体の一部であるときに、かなり延長される。IgGの場合には、これは、ドメインCH1、CH2及び場合によってはCH3の含有を意味する。特に、CH2及びCH3がin vivoでこの効果の大部分を与えることは十分に証明されている。実際、これらのCH2及びCH3ドメインと異種タンパク質の融合は、典型的には、親分子と比較してこれらのキメラ分子の効力及びPK/PDを改善するのに十分である。同様に、Vκ様とJCκの一方又は両方との機能的融合体は、重鎖の定常ドメインとのこの結合によって利点を得る。
【0141】
II型糖尿病の治療の場合、グルカゴン様ペプチド1(すなわちGLP−1)の投与は、すい臓におけるグルコース依存性インスリン分泌を誘発し、それによって患者のグルコース管理を改善して、個々を利するものである。しかし、持続性GLP−1ペプチドが望ましい目標である。カッパ代替軽鎖の尾部は、独特で利用可能であるので、この目標は、活性GLP−1部分をVκ様尾部(配列番号28)のC末端又はJCκ(配列番号29)のN末端部に組換え融合することによって達成することができる。JCκ融合体の場合には、発現は、図15に示すように、Vκ様の存在下でも非存在下でも、さらには可変重鎖ドメインの存在下及び非存在下でさえも、実施することができる。同様に、Vκ様との融合体は、JCκの存在下でも非存在下でも、恐らくは重鎖のCH1ドメインを用いても用いなくても、実施することができる。同様に、他の有益な成長因子、サイトカイン、受容体及び酵素融合体を作製することができる。これらの場合のすべてにおいて、結合は、代替軽鎖又はSURROBODY(商標)成分の必要条件ではなく、全体的に又は主に異種代替軽鎖融合要素によって与えられ得る。
【0142】
上記記述においては、本発明を特定の実施形態に関連して説明したが、本発明はそのようには限定されない。実際、本明細書に示し、記載するものに加えて、本発明の種々の改変が、上記記述から当業者に明らかになるはずであり、添付の特許請求の範囲に包含される。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、抗体代替κ軽鎖配列を含む、構築物及びライブラリーに関する。特に、本発明は、例えば抗体重鎖及び/又は軽鎖ドメイン配列などの別のポリペプチドと場合によっては組み合わされた抗体代替(antibody surrogate)κ軽鎖配列を含む構築物、並びにそれを含むライブラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
Bリンパ球によって産生される抗体(Ig)分子は、重(H)鎖と軽(L)鎖で構成される。H鎖及びL鎖のアミノ末端ドメインのアミノ酸配列は、特に抗原結合部位を形成する3つの超可変領域(CDR1、CDR2、CDR3)において、可変である(VH及びVL)。H鎖とL鎖の会合体は、L鎖の定常領域(CL)と重鎖の第1定常領域(CH1)とのジスルフィド結合及びVHドメインとVLドメインの非共有結合性相互作用によって安定化される。
【0003】
Bリンパ球発生の様々な段階は、Ig遺伝子座の再配列状態によって特徴づけられる(例えば、非特許文献1参照)。ヒト及びマウスなどの多数の動物においては、抗体H鎖及びL鎖をコードする遺伝子は、V領域の一部をコードする遺伝子断片の段階的な体細胞再配列によって明確な秩序のある様式で組み立てられ、μ重鎖がκ及びλ軽鎖に先行する(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。
【0004】
軽鎖(LC)再配列は、λ5及びVpreB分子で構成される2本の共有結合した代替軽鎖(SLC)と併せて2本のμ重鎖(μHC)によって形成されるプレB細胞受容体(プレBCR)を介して駆動されるシグナルによって惹起されることが知られている。すなわち、B細胞の前駆体(プレB細胞)は、μ重鎖を産生するリンパ球として骨髄中で特定されたが、十分に発達した軽鎖の代わりに、それぞれVpreB(1−3)及びλ5と呼ばれる1組のB系譜特異的遺伝子を発現する。
【0005】
ヒトVpreB1(CAG30495)の主アイソフォームは、145aa長鎖ポリペプチドである。145aa長鎖ポリペプチドは、IgVドメイン様構造を有するが、典型的なVドメインの最後のβ鎖(β7)を欠き、他のいかなるタンパク質とも配列相同性を示さないカルボキシ末端を有する。VpreB2は、142アミノ酸マウスVpreB2ポリペプチド(P13373)及びマウスVpreB2配列の171アミノ酸長スプライスバリアント(CAA01964l)を含めて、幾つかのアイソフォームを有する。VpreB1及びVpreB2配列は、特許文献1及び特許文献2、非特許文献5、及び非特許文献6に開示されている。ヒトVpreB3の主アイソフォームは、非特許文献5に開示された123aa長鎖タンパク質(CAG30496)である。
【0006】
VpreB(1−3)は、別のタンパク質λ5と非共有結合している。ヒトλ5は、抗体軽鎖と高い相同性を有するIgCドメイン様構造と、そのアミノ末端方向に2つの機能的に異なる領域とを有する、209アミノ酸ポリペプチド(CAA01962)である。2つの機能的に異なる領域の一方は、Vλドメインのβ7鎖と高い相同性を示す。ヒトλ5様タンパク質は、213個のアミノ酸を有し(NP_064455)、抗体λ軽鎖定常領域と約84%の配列相同性を示す。
【0007】
更なる詳細については、以下の総説を参照されたい。Karasuyamaら、Adv.Immunol.63:1−41(1996)、Melchersら、Immunology Today 14:60−68(1993)、及びMelchers,Proc.Natl.Acad.Sci.USA96:2571−2573(1999)。
【0008】
VpreBとλ5ポリペプチドは一緒に、代替軽鎖又は偽軽鎖と呼ばれる非共有結合されたIg軽鎖様構造を形成する。初期のプレB細胞の表面では、代替軽鎖は、シグナル伝達物質CD79a/CD79bヘテロ二量体に付随して膜結合性Igμ重鎖とジスルフィド結合して、B細胞受容体様構造であるプレB細胞受容体(pre−BCR)を形成する。
【0009】
興味深いことに、B細胞前駆体の成熟、細胞表面発現及びμ重鎖のシグナル伝達(λHC)は、λ5発現の非存在下でさえも認められた。すなわち、代替軽鎖欠失マウス及び代替軽鎖ノックアウトマウスは、依然として抗体を産生できることが報告され、B細胞発生の代替経路が示唆された(例えば、Kitamuraら、Cell 69:823−31(1992);Rolinkら、Eur J Immunol 23:1284−8(1993);Schuhら、J Immunol 171:3343−7(2003);Martenssonら、Int Immunol 11:453−60(1999);Mundtら、J Exp Med 193:435−45(1991);Shimizuら、J Immunol 168:6286−93(2002)参照)。
【0010】
κ様B細胞受容体(κ様BCR)は、κ様代替軽鎖(κ様SLC)を利用して、特定された(Francesら、EMBO J 13:5937−43(1994);Thompsonら、Immunogenetics 48:305−11(1998);Rangelら、J Biol Chem 280:17807−14(2005))。
【0011】
Rangelら、J Biol Chem 280(18):17807−17814(2005)は、非再配列Vκ遺伝子の産物であるVκ様タンパク質の特定及び分子特性解析を報告し、Thompsonら、Immunogenetics 48:305−311(1998)によって以前に報告されたcDNA配列と同一であることが判明した。一方、Francesら、EMBO J 13:5937−43(1994)は、B細胞前駆体表面でμ重鎖に結合する能力を有し、それによってB細胞発生のλ5経路の代替経路をもたらす、再配列生殖系列JCkの特定及び分子特性解析を報告した。
【0012】
κ様pre−BCRとλ様pre−BCRは協調して働き、軽鎖再配列を促進し、B細胞前駆体を確実に成熟させることが提案された。総説については、McKeller and Martinez−Valdez Seminars in Immunology 18:4043(2006)を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0269127号明細書
【特許文献2】米国特許第5,182,205号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Melchers,F.&Rolink,A.,B−Lymphocyte Development and Biology,Paul,W.E.,ed.,1999,Lippincott,Philadephia
【非特許文献2】Burrows PD and Cooper MD,Curr Opin Immunol(1997)9:239〜44
【非特許文献3】Altら、Immunol Today(1992)13:306〜14
【非特許文献4】Bassingら、Cell(2002)109 Suppl.:S45〜55
【非特許文献5】Collinsら、Genome Biol.(2004)5(10):R84
【非特許文献6】Hollinsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1989)86(14):5552〜5556
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様においては、本発明は、Vκ様及び/又はJCκ配列を含む、κ様代替軽鎖(SLC)構築物に関する。
【0016】
種々の実施形態においては、κ様SLC構築物は、Vκ様配列、又はJCκ配列、又はVκ様配列とJCκ配列の両方を含む。
【0017】
すべての実施形態においては、κ様SLC構築物は、標的に特異的に結合する能力を有し得る。
【0018】
種々の更なる実施形態においては、κ様SLC構築物において、Vκ様配列は、シグナル配列を有する若しくは有さないかつC末端部(C−terminal tail)を有する若しくは有さない配列番号2又はその断片を含み、又は配列番号2のN末端シグナルペプチド(アミノ酸1〜20)を含み、配列番号2内からのC末端部の少なくとも一部を更に含み得る。
【0019】
特定の一実施形態においては、Vκ様配列は、シグナル配列を有する若しくは有さないかつC末端部を有する若しくは有さない配列番号7〜18又はその断片を含む群より選択される。
【0020】
別の実施形態においては、本明細書に記載のκ様SLC構築物において、JCκ配列は、N末端伸長部を有する若しくは有さない配列番号4又はその断片を含み、又はN末端伸長部を有する若しくは有さない配列番号19〜23又はその断片からなる群より選択される配列を含む。
【0021】
すべての実施形態において、κ様SLC構築物は、抗体重鎖配列に結合し得る。
【0022】
別の実施形態においては、κ様SLC構築物において、Vκ様配列はC末端部を含む。
【0023】
更なる実施形態においては、κ様SLC構築物において、JCκ配列はN末端伸長部を含む。
【0024】
更に別の一実施形態においては、本明細書に記載のκ様SLC構築物において、Vκ様配列はC末端部を含み、JCκ配列はN末端伸長部を含む。
【0025】
異なる一実施形態においては、Vκ様配列はC末端部を欠き、JCκ配列はN末端伸長部を欠く。
【0026】
すべての実施形態においては、構築物が抗体重鎖配列に結合又は連結される場合、抗体重鎖配列は完全長抗体重鎖又はその断片であり得る。
【0027】
一実施形態においては、κ様SLC構築物において、Vκ様配列とJCκ配列は、直接融合()、及び異種リンカーを介した結合を含めて、ただしそれだけに限定されないが、互いに共有結合している。異種リンカーは、例えば、未変性(native)ポリペプチドの配列又はその断片、かかる治療用ポリペプチドの配列又はその断片を含み得る。
【0028】
別の一実施形態においては、異種リンカーは、抗体重鎖及び/又は軽鎖の可変及び/又は定常領域配列を含み得る抗体配列を含む。
【0029】
特定の一実施形態においては、抗体の軽鎖配列及び重鎖配列は、存在するときには、前記構築物が結合する標的と同じでも異なってもよい抗原に結合することができる。
【0030】
したがって、例えば、本明細書に記載の構築物は、二機能性、三機能性又は一般に多機能性であり得る。
【0031】
別の実施形態においては、Vκ様配列はC末端部を含み、JCκ配列はN末端伸長部を含み、その一方又は両方は、例えばペプチド、ポリペプチドなどの異種分子に結合していてもよい。
【0032】
すべての実施形態においては、κ様SLC構築物は、同じ定性的結合特異性を有する抗体よりも改善された薬物動態プロファイル及び/又は効力、及び/又は他の改善された機能的諸性質を有し得る。
【0033】
別の一態様においては、本発明は、本明細書に記載のκ様SLC構築物のコレクションを含むライブラリーに関する。
【0034】
ライブラリーは、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、DNAディスプレイ、哺乳動物細胞上のディスプレイ、胞子ディスプレイ、ウイルスディスプレイ、タンパク質−DNA結合に基づくディスプレイ、マイクロビーズディスプレイなどのディスプレイの形であり得る。
【0035】
さらに、ライブラリーは、抗体重鎖及び/又は軽鎖配列などの抗体配列のコレクションを含み得る。
【0036】
別の実施形態においては、ライブラリーはVκ様配列のコレクションを含み、Vκ様配列コレクションは、そのCDR配列及び/又はC末端配列が異なるVκ様配列変異体を含み得る。
【0037】
更なる実施形態においては、ライブラリーはJCκ配列のコレクションを含むことができ、JCκ配列コレクションは、そのN末端伸長部が異なるJCκ配列変異体を含み得る。
【0038】
すべての実施形態においては、可変領域配列を含む抗体重鎖が存在するとき、本発明のポリペプチド、及び抗体重鎖可変領域配列は、同じ又は異なる標的に結合し得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】VpreB1ドメインのCDR類似領域及びC末端部がかなりの距離に及ぶことを示す図である。薄灰色:CDR残基;濃灰色:フレームワーク残基。
【図2】ヒトVκ様核酸のヌクレオチド配列(配列番号1)及びコードされたタンパク質のアミノ酸配列(配列番号2)を示す図である。
【図3】ヒトJCκ核酸のヌクレオチド配列(配列番号3)及びコードされたタンパク質のアミノ酸配列(配列番号4)を示す図である。
【図4】κ様代替軽鎖(AJ004956Vκ様、配列番号2及びAAB32987ヒトJCκ、配列番号4)とヒトIg可変及び定常κ軽鎖(VκIV_B3、配列番号5;定常カッパ、配列番号6)とのアラインメントを示す図である。Vκ様は、非再配列VκIV遺伝子ファミリーメンバーであるが、独特のC末端伸長部を有する。JCκは、カッパJ及び定常領域と同一性(identity)を共有するが、独特のN末端を有する。CDR1及びCDR2は保存されているが、CDR3は分断されている。
【図5】種々のヘテロ二量体代替κ軽鎖欠失変異体の略図である。「完全長」構築物においては、Vκ様とJCκ配列の両方は、それぞれC及びN末端伸長部(尾部)を保持する。dJ変異体においては、JCκのN末端伸長部は欠失している。dVκ尾部変異体においては、Vκ様配列のC末端伸長部は除去されているが、JCκのN末端伸長部は保持されている。「短鎖カッパ」変異体においては、Vκ様配列のC末端部とJCκ配列のN末端伸長部の両方が保持されている。
【図6】個々に、又は抗体重鎖若しくはその断片などの別のタンパク質と一緒に、使用することができるκ様軽鎖欠失及び単鎖構築物を示す図である。
【図7】コンビナトリアル機能的多様性をκ様代替軽鎖構築物に組み入れた図である。赤線は、ペプチドライブラリーなどの付加された多様性を示す。
【図8】軽鎖が遺伝子再配列及びRNAプロセシングの産物であることを示す図である。
【図9】Vκ様タンパク質が非再配列VκIV遺伝子転写及び翻訳に由来することを示す図である。VκIVは、71種類のVL生殖細胞遺伝子の一つである。Vκ様タンパク質を産生する能力を有するさらに70種類のVL生殖細胞遺伝子が存在するので、さらに39種類のκV遺伝子及びさらに31種類のλV遺伝子が存在する。
【図10】AJ004956Vκ様原型配列(配列番号2)と整列された異なる長さの伸長部(配列番号7〜18)を各々が有する、すべてのVκファミリーから考えられるVκ様タンパク質の予測アミノ酸配列を示す図である。
【図11】JCκが非再配列J及びC生殖系列由来のプロセシングされたRNAの産物であることを示す図である。JCκは、45種類のJC生殖系列組合せの一つである。JCκ様タンパク質を産生する能力を有するさらに44種類のVL生殖細胞遺伝子が存在する(Cκと組み合わせられるさらに4種類のJκ遺伝子、及び10種類のCλ遺伝子と組み合わせられる4種類のJλ遺伝子(合計40種類))。
【図12】残留カッパJ定常領域再配列由来の予測JCκ様(J1−J5Cκ)(配列番号19〜23)を示す図である。
【図13】κ様代替軽鎖成分に機能性を付加する模式図である。二機能性及び三機能性構造を示す。A:scFv束縛融合、B:Vκ様scFv融合、C:JCκscFv融合、D:SLC二重融合。
【図14】説明のための代替軽鎖機能的尾部伸長部タイプを示す図である。
【図15】説明のための代替軽鎖GLP−1融合体を示す図である。
【図16】説明のためのκ様及びλ様代替軽鎖機能的キメラを示す図である。
【図17】ヒトVpreB1(配列番号30)、マウスVpreB2(配列番号31)、ヒトVpreB3(配列番号33)、ヒトλ5配列(配列番号34)及びヒトλ5様配列(配列番号35)のアミノ酸配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
A.定義
特に断らない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley&Sons(New York,NY 1994)は、本願で使用する用語の多くに対する一般的指針を当業者に提供する。
【0041】
当業者は、本発明の実施において使用することができる、本明細書に記載の方法及び材料と類似した、又は等価である、多数の方法及び材料を認識するであろう。実際、本発明は、記載の方法及び材料に決して限定されない。本発明では、下記の用語を以下で定義する。
【0042】
「κ様代替軽鎖可変ドメイン」、「Vκ様SLC」及び「Vκ様」という用語は、区別なく使用され、非再配列Vκ遺伝子の産物である任意の未変性配列ポリペプチド、及びその変異体を指す。未変性配列「Vκ様」ポリペプチドとしては、具体的に、図2に示すヒトκ様ポリペプチドAJ004956(配列番号2)、及び図10に示すヒトVκ様ポリペプチド(配列番号7〜18)、並びに非ヒト哺乳動物種における、特に、げっ歯類、例えばマウス及びラット、非ヒト高等霊長類など、ヒトのように、主に遺伝子再配列及び/又は超変異によって抗体多様性を生じる種における、ホモログが挙げられるが、それだけに限定されない。一実施形態においては、未変性配列Vκ様ポリペプチドの変異体は、抗体κ軽鎖配列に対するC末端伸長部(尾部)を含む。特定の一実施形態においては、未変性配列Vκ様ポリペプチドの変異体は、Vκ様ポリペプチドを対応する抗体κ軽鎖から識別する独特のC末端伸長部(尾部)の少なくとも一部、好ましくは全部を保持する。別の一実施形態においては、変異体Vκ様ポリペプチドのC末端部は、配列の残部に天然には付随しない配列である。後者の実施形態においては、未変性Vκ様配列中に天然に存在するC末端部と変異体配列との相違は、1個以上のアミノ酸変化(置換、挿入、欠失及び/又は付加)から生じ得、又はC末端部は、異なるVκ様タンパク質中に天然に存在する尾部と同一であり得る。したがって、例えば、図10に記載のVκ様タンパク質(配列番号2及び7〜18)のいずれかにおいては、(図10において「翻訳伸長部」と称する)C末端伸長部は、別のVκ様タンパク質のC末端伸長部で置換することができ、及び/又は任意の天然のC末端伸長部配列とは異なるように改変し得る。その代わりに、又はそれに加えて、未変性配列Vκ様ポリペプチドの変異体は、未変性抗体κ可変ドメイン配列と同一である配列の一部に、特にかかる配列の相補性決定領域(CDR)及び/又はフレームワーク残基の1個以上に、1個以上のアミノ酸変化を含み得る。したがって、Vκ様ポリペプチドは、抗体κ軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列の1個以上に対応する領域にアミノ酸変化を含み得る。すべての場合において、変異体は、未変性抗体κ軽鎖可変領域配列に対して少なくとも4、又は少なくとも5、又は少なくとも6、又は少なくとも7、又は少なくとも8、又は少なくとも9、又は少なくとも10個のアミノ酸、好ましくは4〜100、又は4〜90、又は4〜80、又は4〜70、又は4〜60、又は4〜50、又は4〜45、又は4〜40、又は4〜35、又は4〜30、又は4〜25、又は4〜20、又は4〜15、又は4〜10個のアミノ酸残基のC末端伸長部を含むことができ、好ましくは含む。本明細書に定義するように、Vκ様ポリペプチド変異体は、未変性抗体κ若しくはλ軽鎖配列又はその断片とは異なり、好ましくは、未変性配列Vκポリペプチドと少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約98%の配列相同性を保持する。別の好ましい一実施形態においては、Vκ様ポリペプチド変異体は、そのアミノ酸配列において、未変性抗体λ又はκ軽鎖配列と95%未満、又は90%未満、又は85%未満、又は80%未満、又は75%未満、又は70%未満、又は65%未満、又は60%未満、又は55%未満、又は50%未満、又は45%未満、又は40%未満同一である。別の実施形態においては、配列相同性は、約40%から約95%、又は約45%から約90%、又は約50%から約85%、又は約55%から約80%、又は約60%から約75%、又は約60%から約80%、又は約65%から約85%、又は約65%から約90%、又は約65%から約95%である。すべての実施形態においては、好ましくは、Vκ様ポリペプチドは標的に結合する能力を有する。
【0043】
「JCκ」と「JCκ様」という用語は、区別なく使用され、未変性配列κJ定常(C)領域セグメントと同一である部分と独特のN末端伸長部(尾部)とを含む未変性配列ポリペプチド、及びその変異体を指す。未変性配列JCκ様ポリペプチドとしては、図3及び4に示すAAB32987ヒトJCκポリペプチド(配列番号4)、及び図12に示すJCκ様ポリペプチド(配列番号19〜23)、並びに非ヒト哺乳動物種における、特に、げっ歯類、例えばマウス及びラット、非ヒト高等霊長類など、ヒトのように、主に遺伝子再配列及び/又は超変異によって抗体多様性を生じる種における、ホモログが挙げられるが、それだけに限定されない。一実施形態においては、未変性配列JCκ様ポリペプチドの変異体は、該変異体を抗体JCセグメントから識別するN末端伸長部(尾部)を含む。特定の一実施形態においては、未変性配列JCκ様ポリペプチドの変異体は、JCκ様ポリペプチドを対応する抗体κ軽鎖JCセグメントから識別する独特のN末端伸長部(尾部)の少なくとも一部、好ましくは全部を保持する。別の一実施形態においては、変異体JCκ様ポリペプチドのN末端部は、配列の残部に天然には付随しない配列である。後者の実施形態においては、未変性JCκ様配列中に天然に存在するN末端部と変異体配列との相違は、1個以上のアミノ酸変化(置換、挿入、欠失及び/又は付加)から生じ得、又はN末端部は、異なるJCκ様タンパク質中に天然に存在する末端部と同一であり得る。したがって、例えば、図12に記載のJCκ様タンパク質のいずれかにおいては、N末端伸長部は、別のJCκ様タンパク質のN末端伸長部で置換することができ、及び/又は任意の天然のN末端伸長部配列とは異なるように改変し得る。その代わりに、又はそれに加えて、未変性配列JCκ様ポリペプチドの変異体は、未変性抗体κ可変ドメインJC配列と同一である配列の一部に、1個以上のアミノ酸変化を含み得る。すべての場合において、変異体は、未変性抗体κ軽鎖JC配列に対して少なくとも4、又は少なくとも5、又は少なくとも6、又は少なくとも7、又は少なくとも8、又は少なくとも9、又は少なくとも10個のアミノ酸、好ましくは4〜100、又は4〜90、又は4〜80、又は4〜70、又は4〜60、又は4〜50、又は4〜45、又は4〜40、又は4〜35、又は4〜30、又は4〜25、又は4〜20、又は4〜15、又は4〜10個のアミノ酸残基のN末端伸長部(独特のN末端)を含むことができ、好ましくは含む。本明細書で定義するJCκ様ポリペプチド変異体は、未変性抗体λ若しくはκ軽鎖JC配列又はその断片とは異なり、好ましくは、未変性配列JCポリペプチドと少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約98%の配列相同性を保持する。別の好ましい一実施形態においては、JCκ様ポリペプチド変異体は、そのアミノ酸配列において、未変性抗体λ又はκ軽鎖JC配列と95%未満、又は90%未満、又は85%未満、又は80%未満、又は75%未満、又は70%未満、又は65%未満、又は60%未満同一である。別の実施形態においては、配列相同性は、約40%から約95%、又は約45%から約90%、又は約50%から約85%、又は約55%から約80%、又は約60%から約75%、又は約60%から約80%、又は約65%から約85%、又は約65%から約90%、又は約65%から約95%である。
【0044】
アミノ酸配列相同率は、配列比較プログラムNCBI−BLAST2(Altschulら、Nucleic Acids Res.25:3389−3402(1997))を用いて決定することができる。NCBI−BLAST2配列比較プログラムは、http://www.ncbi.nlm.nih.govからダウンロードすることができ、又はNational Institute of Health、Bethesda、MDから入手することができる。NCBI−BLAST2は、幾つかの検索パラメータを使用し、検索パラメータのすべては、例えば、unmask=yes、strand=all、expected occurrences=10、minimum low complexity length=15/5、multi−pass e−value=0.01、constant for multi−pass=25、dropoff for final gapped alignment=25、及びscoring matrix=BLOSUM62を含めて、デフォルト値に設定される。
【0045】
「κ様」代替軽鎖配列は、場合によっては、異種アミノ酸配列又は任意の他の異種成分と複合化して、本明細書に記載の「κ様代替軽鎖構築物」を形成し得る。したがって、「κ様代替軽鎖構築物」という用語は、最も広い意味で使用され、κ様代替軽鎖配列と複合化される異種アミノ酸配列、核酸及び他の分子を含めて、任意のすべての追加の異種成分を含む。ここで、「複合化」は後で定義する。好ましい一実施形態においては、「κ様代替軽鎖配列」は、標的に結合する能力を有する。好ましい一実施形態においては、「κ様」代替軽鎖配列は、JCκ様配列及び/又は抗体重鎖配列又はその断片と非共有結合又は共有結合する。共有結合は、直接融合だけでなく、リンカーを介した連結も含む。したがって、例えば、Vκ様及びJCκ様配列は、抗体軽鎖及び/又は重鎖可変領域配列を介して連結し得る。
【0046】
「VpreB」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、任意の未変性配列又は変異体VpreBポリペプチドを指し、具体的には、配列番号30のヒトVpreB1、配列番号31及び32のマウスVpreB2、配列番号33のヒトVpreB3、スプライスバリアント及び翻訳後修飾によって形成される変異体を含めたアイソフォーム、その別の哺乳動物の相同体、特にヒトのように主に遺伝子再配列及び/又は超変異によって抗体多様性を生じる、げっ歯類、例えばマウス及びラットなどの哺乳動物における相同体、並びにかかる未変性配列ポリペプチドの変異体が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0047】
「λ5」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、任意の未変性配列又は変異体λ5ポリペプチドを指し、具体的には、配列番号34のヒトλ5、配列番号35のヒトλ5様タンパク質、スプライスバリアント及び翻訳後修飾によって形成される変異体を含めたそのアイソフォーム、その別の哺乳動物の相同体、特にヒトのように主に遺伝子再配列及び/又は超変異によって抗体多様性を生じる、げっ歯類、例えばマウス及びラットなどの哺乳動物における相同体、並びにかかる未変性配列ポリペプチドの変異体が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0048】
本発明のポリペプチドに関連して、第1のアミノ酸配列に対する「異種アミノ酸配列」という用語は、第1のアミノ酸配列に天然には付随しない、少なくとも本明細書に記載のκ様代替軽鎖構築物中に存在する形ではない、アミノ酸配列を指すのに使用される。したがって、Vκ様ポリペプチドに対する「異種アミノ酸配列」は、Vκ様配列と一緒にアミノ酸配列変異体、例えば短縮及び/又は誘導体化配列などのκ様代替軽鎖を形成するJCκ配列とは異なるJCκ配列を含めて、ただしそれだけに限定されない、その自然環境において未変性Vκ様ポリペプチドに付随しない任意のアミノ酸配列である。Vκ様ポリペプチドに対する「異種アミノ酸配列」は、その自然環境においては、VκIVとJCκ配列が互いに共有結合、例えば融合していないので、未変性配列JCκを含むVκ様ポリペプチドに共有結合した、例えば融合した、JCκ配列も含む。さらに、JCκ配列に対する「異種アミノ酸配列」は、JCκ配列がその自然環境では結合しない任意のVκ様ポリペプチド配列であり得る。Vκ様とJCκ配列の両方に対する更なる代表的な「異種アミノ酸配列」としては、未変性及び変異体のVpreB及びλ5配列、並びに抗体軽鎖及び重鎖の可変及び定常領域配列が挙げられる。一般に、本発明は、古典的な軽鎖アミノ酸配列とは異なる異種アミノ酸配列を提供する。例えば、異種アミノ酸配列は、古典的な軽鎖のV−J結合を含まない。
【0049】
「複合体」、「複合型」及び「複合化」という用語は、共有又は非共有結合の任意及びすべての形態を指し、直接の遺伝子又は化学融合、リンカー又は架橋剤を介したカップリング、及び例えばファンデルワールス力を介した、又はロイシンジッパーを用いた、非共有結合を含むが、それだけに限定されない。
【0050】
「融合」という用語は、1本のポリペプチド鎖中の異なる起源のアミノ酸配列の、それらのコードヌクレオチド配列のインフレームの組合せによる、組合せを指すのに本明細書では使用される。「融合」という用語は、その末端の1つとの融合に加えて、内部の融合、すなわち、ポリペプチド鎖内の異なる起源の配列の挿入を明示的に包含する。
【0051】
本明細書では「標的」という用語は、本明細書に記載のポリペプチドと相互作用する物質である。本明細書で定義する標的としては、本発明のVκIV又はJCκ含有構築物が相互作用する抗原が具体的に挙げられる。好ましくは、相互作用は直接結合によって生じる。
【0052】
本明細書では「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語はすべて、共有結合性「ペプチド結合」によって連結されたアミノ酸の一次配列を指す。一般に、ペプチドは、少数のアミノ酸、典型的には約2から約50個のアミノ酸からなり、タンパク質よりも短い。本明細書では「ポリペプチド」という用語は、ペプチド及びタンパク質を包含する。
【0053】
「アミノ酸」又は「アミノ酸残基」という用語は、典型的には、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リシン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)及びバリン(Val)からなる群より選択されるアミノ酸など、その分野で認められた定義を有するアミノ酸を指す。ただし、修飾、合成又は希少アミノ酸を所望のとおりに使用することができる。したがって、37CFR1.822(b)(4)に記載の修飾及び異常アミノ酸は、この定義に具体的に含まれ、参照により本明細書に明確に援用される。アミノ酸は、種々の亜群に細分することができる。すなわち、アミノ酸は、非極性側鎖(例えば、Ala、Cys、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Val)、負に帯電した側鎖(例えば、Asp、Glu)、正に帯電した側鎖(例えば、Arg、His、Lys)、又は無電荷の極性側鎖(例えば、Asn、Cys、Gln、Gly、His、Met、Phe、Ser、Thr、Trp及びTyr)を有するとして分類することができる。アミノ酸は、低分子アミノ酸(Gly、Ala)、求核性アミノ酸(Ser、His、Thr、Cys)、疎水性アミノ酸(Val、Leu、Ile、Met、Pro)、芳香族アミノ酸(Phe、Tyr、Trp、Asp、Glu)、アミド(Asp、Glu)及び塩基性アミノ酸(Lys、Arg)として分類することもできる。
【0054】
「ポリヌクレオチド(単数又は複数)」という用語は、DNA分子、RNA分子、その類似体(例えば、ヌクレオチド類似体又は核酸化学反応を用いて作製される、DNA又はRNA)などの核酸を指す。所望のとおりに、ポリヌクレオチドは、例えば当分野で認められた核酸化学反応を用いて、合成的に作製することができ、又は例えばポリメラーゼを用いて、酵素的に作製することができ、必要に応じて修飾することができる。典型的な修飾としては、メチル化、ビオチン化、及び当分野で公知の他の修飾が挙げられる。また、核酸分子は、一本鎖でも二本鎖でもよく、所望であれば、検出可能な成分と連結することができる。
【0055】
基準ポリペプチドに対する「変異体」という用語は、未変性ポリペプチドに比べて少なくとも1個のアミノ酸変異又は修飾(すなわち、改変)を有するポリペプチドを指す。「アミノ酸修飾」によって生成される変異体は、例えば、未変性アミノ酸配列中の少なくとも1個のアミノ酸を置換、欠失、挿入及び/又は化学修飾することによって作製することができる。
【0056】
「アミノ酸修飾」とは、所定のアミノ酸配列のアミノ酸配列変化を指す。例示的な修飾としては、アミノ酸置換、挿入及び/又は欠失が挙げられる。
【0057】
「指定位置におけるアミノ酸修飾」とは、指定残基の置換若しくは欠失、又は指定残基に隣接した少なくとも1個のアミノ酸残基の挿入を指す。指定残基に「隣接した」挿入とは、その1から2個の残基内の挿入を意味する。挿入は、指定残基のN末端でもC末端でもよい。
【0058】
「アミノ酸置換」とは、所定のアミノ酸配列における別の異なる「置換」アミノ酸残基による少なくとも1個の既存アミノ酸残基の置換を指す。置換残基(単数又は複数)は、「天然アミノ酸残基」(すなわち、遺伝コードによってコードされる)とすることができ、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リシン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)及びバリン(Val)からなる群より選択される。1個以上の非天然アミノ酸残基による置換は、本明細書に記載のアミノ酸置換の定義によっても包含される。
【0059】
「非天然アミノ酸残基」とは、ポリペプチド鎖中の隣接アミノ酸残基(単数又は複数)に共有結合することができる、上記天然アミノ酸残基以外の残基を指す。非天然アミノ酸残基の例としては、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、及びEllmanら、Meth.Enzym.202:301 336(1991)に記載のものなどの他のアミノ酸残基類似体が挙げられる。かかる非天然アミノ酸残基を作製するために、Norenら、Science244:182(1989)及びEllmanら、(上掲)の手順を使用することができる。手短に述べると、これらの手順は、非天然アミノ酸残基によってサプレッサーtRNAを化学的に活性化し、続いてRNAをin vitroで転写及び翻訳することを含む。
【0060】
「アミノ酸挿入」とは、所定のアミノ酸配列中への少なくとも1個のアミノ酸の組み込みを指す。挿入は、通常、1又は2個のアミノ酸残基の挿入からなるが、本願は、より大きい「ペプチド挿入」、例えば、約3から約5個、さらには最高約10個のアミノ酸残基の挿入を企図する。挿入された残基(単数又は複数)は、上記天然又は非天然とすることができる。
【0061】
「アミノ酸欠失」とは、所定のアミノ酸配列からの少なくとも1個のアミノ酸残基の除去を指す。
【0062】
「変異誘発」という用語は、別段の記載がない限り、ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列を変更する当分野で認められた任意の技術を指す。変異誘発の好ましいタイプとしては、誤りがちなPCR変異誘発、飽和変異誘発、又は他の部位特異的変異誘発が挙げられる。
【0063】
「部位特異的変異誘発」は、当分野では標準的な技術であり、所望の変異に相当する限定されたミスマッチ以外は、変異誘発しようとする一本鎖ファージDNAに相補的である合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて実施される。手短に述べると、合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、一本鎖ファージDNAに相補的である鎖の合成を誘導し、ファージを支持する宿主細菌に生成した二本鎖DNAを転換する。形質転換細菌の培養物を上層寒天に蒔き、ファージを宿す単細胞からプラークを形成させる。理論的には、新しいプラークの50%は一本鎖として変異型を有するファージを含み、50%は元の配列を有することになる。目的とするプラークは、完全一致のハイブリダイゼーションを可能にする温度であるが、元の鎖とのミスマッチがハイブリダイゼーションの阻止に十分である温度で、キナーゼ処理合成プライマーとハイブリッド形成することによって選択される。次いで、プローブとハイブリッド形成したプラークを選択し、配列を決定し、培養し、DNAを回収する。
【0064】
本発明の状況において「抗体」(Ab)という用語は、V(D)J遺伝子組換えに由来する古典的に組み換えられた重鎖とやはりVJ遺伝子組換えに由来する古典的に組み換えられた軽鎖とに由来する未変性抗体、又はその断片を指すのに使用される。
【0065】
「未変性抗体」は、2本の同一軽(L)鎖と2本の同一重(H)鎖で構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、共有結合性ジスルフィド結合によって重鎖に連結され、ジスルフィド結合数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変動する。各重鎖及び軽鎖は、規則的に間隔をおいた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、可変ドメイン(VH)とそれに続く幾つかの定常ドメインを一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を有し、その他端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと並び、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと並ぶ。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの界面を形成すると考えられる(Chothiaら、J.Mol.Biol.186:651(1985)、Novotny and Haber,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82:4592(1985))。
【0066】
抗体鎖に関連した「可変」という用語は、抗体間で配列が大きく異なり、その特定の抗原に対する特定の各抗体の結合及び特異性に関与する、抗体鎖の部分を指すのに使用される。かかる可変性は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの両方の超可変領域と称する3個のセグメントに集中する。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と称される。未変性重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、4個のFR(それぞれFR1、FR2、FR3及びFR4)を各々含み、4個のFRは、主としてβシート形状をとり、3個の超可変領域によって連結される。3個の超可変領域は、βシート構造を連結するループを形成し、場合によってはβシート構造の一部を形成するループを形成する。各鎖の超可変領域は、FRによって近位に共に保持され、他方の鎖の超可変領域と一緒に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991),647−669頁参照)。定常ドメインは、抗体と抗原の結合に直接関与しないが、抗体依存性の細胞毒性における抗体の関与などの種々のエフェクター機能を示す。
【0067】
本明細書では「超可変領域」という用語は、抗原結合性を担う、抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」、すなわち「CDR」由来のアミノ酸残基を含む(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基30〜36(L1)、46〜55(L2)及び86〜96(L3)、並びに重鎖可変ドメイン中の30〜35(H1)、47〜58(H2)及び93〜101(H3)(MacCallumら、J Mol Biol.262(5):732−45(1996))。
【0068】
「フレームワーク領域」という用語は、より異なるCDR領域間に存在する、抗体可変領域の当分野で認められた部分を指す。かかるフレームワーク領域は、典型的には、フレームワーク1から4(FR1、FR2、FR3及びFR4)と称され、CDRが抗原結合性表面を形成できるように、重鎖又は軽鎖抗体可変領域中に存在する3個のCDRを3次元空間に保持する足場を提供する。
【0069】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体を種々のクラスに帰属させることができる。5つの主要な抗体クラスIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、その幾つかはサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に更に分割することができる。
【0070】
異なる免疫グロブリンクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。
【0071】
任意の脊椎動物種に由来する抗体の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に異なるタイプの1つに帰属させることができる。本明細書に記載の抗体軽鎖という表記は常にκとλ軽鎖の両方を含む。
【0072】
「抗体断片」は、完全長抗体の一部、一般に抗原結合又はその可変ドメインを含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、(scFv)2、dAb及び相補性決定領域(CDR)断片、抗体断片から形成される線状抗体、単鎖抗体分子、ミニボディ、二重特異性抗体、多重特異性抗体、並びに一般に、ポリペプチドに特異的抗原結合性を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチドが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0073】
「単鎖Fv」、すなわち「sFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖中に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成できるようにする、VHドメインとVLドメインの間のポリペプチドリンカーを更に含む。sFvの総説については、Plueckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい。単鎖抗体は、例えば、国際公開第88/06630号及び同92/01047号に開示されている。
【0074】
二重特異性抗体は、VHドメインとVLドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、短かすぎて同じ鎖上でこれら2個のドメインの対形成が不可能であるリンカーを用いることによって、これらのドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成させ、2個の抗原結合部位を生成させた、二価の二重特異的な抗体である(例えば、Holliger,P.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444 6448(1993)、及びPoljak,R.J.,et al.,Structure 2:1121 1123(1994)参照)。
【0075】
「ミニボディ」という用語は、80kDaの二価の二量体(scFv−CH3)2に自己組織化するscFv−CH3融合タンパク質を指すのに使用される。
【0076】
「アプタマー」という用語は、タンパク質標的に高い特異性及び親和性で結合する合成核酸リガンドを指すのに本明細書では使用する。アプタマーは、タンパク質機能の強力な阻害剤として知られる。
【0077】
「Affibody」という用語は、ブドウ球菌性プロテインAに由来するZドメインの3ヘリックス足場に典型的には基づく、操作された標的特異的非免疫グロブリン結合タンパク質を指すのに使用される。58アミノ酸Zドメインは、Staphylococcus aureusプロテインA(SPA)中の5個の相同ドメイン中の1個(Bドメイン)に由来する。SPAは、免疫グロブリンのFc領域に強く結合する。Zは、IgG含有樹脂を用いることによって組換えタンパク質の親和性精製のための安定化遺伝子融合相手として最初は開発された。SPAのBドメインとFc断片の複合物の構造によれば、結合性表面はヘリックス1及び2上に露出した残基からなるのに対して、ヘリックス3は結合に直接関与しない。Affibodyは、通常、典型的にはヘリックス1及び2のFc結合性表面における13個の残基が無作為化された、コンビナトリアルライブラリーから選択される。次いで、タンパク質を標的にした特異的結合剤は、所望の標的に対するファージディスプレイライブラリーのバイオパニングによって特定される。かかるAffibodyは、種々の生化学アッセイ及び臨床応用において、免疫グロブリンの代替として使用することができる。
【0078】
dAb断片(Wardら、Nature341:544 546(1989))は、VHドメイン又はVLドメインからなる。
【0079】
本明細書では「抗体結合領域」という用語は、抗原(単数又は複数)に結合可能である、免疫グロブリン又は抗体可変領域の1個以上の部分を指す。典型的には、抗体結合領域は、例えば、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン、単鎖抗体(scFv)などの抗体軽鎖(VL)(又はその可変領域)、抗体重鎖(VH)(又はその可変領域)、重鎖Fd領域、組合せ抗体軽鎖及び重鎖(又はその可変領域)、又は完全長抗体、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE若しくはIgM抗体である。
【0080】
本明細書では「エピトープ」という用語は、配列に応じて生成される抗体に単独で、又はより大きい配列の一部として、結合する配列を規定する、少なくとも約3から5、好ましくは少なくとも約5から10、又は少なくとも約5から15個のアミノ酸、典型的には約500個以下、又は約1,000個のアミノ酸の配列を指す。エピトープは、エピトープが由来する親タンパク質の部分と同一である配列を有するポリペプチドに限定されない。実際、ウイルスゲノムは、常時変化した状態にあり、単離体間で比較的高度の可変性を示す。すなわち、「エピトープ」という用語は、未変性配列と同一である配列、並びに未変性配列における欠失、置換及び/又は挿入などの修飾を包含する。一般に、かかる修飾は、本質的に保存的であるが、非保存的修飾も企図される。この用語は、具体的には、「ミモトープ」、すなわち連続線状未変性配列を識別しないが、又は未変性タンパク質中に必ずしも存在しないが、未変性タンパク質上のエピトープを機能的に模倣する配列を含む。「エピトープ」という用語は、具体的には、線状及び配座エピトープを含む。
【0081】
「ベクター」という用語は、細胞中で自己複製可能であり、DNAセグメント、例えば遺伝子又はポリヌクレオチドが、付着したセグメントが複製されるように作用可能に結合することができる、rDNA分子を指すのに使用される。1個以上のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を誘導可能なベクターを本明細書では「発現ベクター」と称する。「制御配列」という用語は、特定の宿主生物において作動可能に結合したコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。例えば、原核生物に適切な制御配列としては、プロモーターが挙げられ、場合によってはオペレーター配列及びリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
【0082】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれたときに、「作動可能に結合」している。例えば、プレ配列又は分泌リーダー用のDNAは、ポリペプチドの分泌に関与する前タンパク質として発現される場合には、ポリペプチド用のDNAに作動可能に結合している。また、プロモーター又はエンハンサーは、コード配列の転写に影響を及ぼす場合には、コード配列に作動可能に結合している。あるいは、リボソーム結合部位は、翻訳を促進するように位置する場合には、コード配列に作動可能に結合している。一般に、「作動可能に結合した」とは、結合されたDNA配列が近接していること、また、分泌リーダーの場合、近接し、読み相(reading phase)にあることを意味する。しかし、エンハンサーは近接していなくてもよい。結合は、好都合な制限酵素切断部位におけるライゲーションによって行われる。かかる部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーを慣例的実務に従って使用する。
【0083】
「ファージディスプレイライブラリー」は、クローン化タンパク質配列のコレクションをファージコートタンパク質との融合体として発現するタンパク質発現ライブラリーである。したがって、「ファージディスプレイライブラリー」という句は、本明細書では、ファージ(例えば、繊維状ファージ)のコレクションを指し、ファージは外部(典型的には異種)タンパク質を発現する。外部タンパク質は、ファージが接触する別の部分と自由に相互作用(結合)することができる。外部タンパク質をディスプレイする各ファージは、ファージディスプレイライブラリーの「メンバー」である。
【0084】
「繊維状ファージ」という用語は、その表面の異種ポリペプチドをディスプレイする能力を有するウイルス粒子を指し、f1、fd、Pf1及びM13を含むが、それだけに限定されない。繊維状ファージは、テトラサイクリンなどの選択マーカーを含むことができる(例えば、「fd−tet」)。種々の繊維状ファージディスプレイ系が当業者に周知である(例えば、Zacherら、Gene9:127−140(1980),Smithら、Science228:1315−1317(1985)及びParmley and Smith Gene73:305−318(1988)参照)。
【0085】
「パニング」という用語は、抗体などの化合物を有するファージを、標的に対して高い親和性及び特異性で特定及び単離する、複数回のスクリーニングプロセスを指すのに使用される。
【0086】
「ドミナントネガティブ」という用語は、本明細書では、親又は関連タンパク質の少なくとも幾つかの生物学的特性の拮抗物質として作用するポリペプチド変異体又はポリペプチド断片を指すのに使用される。
【0087】
B.詳細な説明
本発明の方法を実施するための技術は当分野で周知であり、例えば、Ausubelら、Current Protocols of Molecular Biology,John Wiley and Sons(1997)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,J.Sambrook and D.W.Russell,eds.,Cold Spring Harbor,New York,USA,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001、O’Brianら、Analytical Chemistry of Bacillus Thuringiensis,Hickle and Fitch,eds.,Am.Chem.Soc.,1990、Bacillus thuringiensis:biology,ecology and safety,T.R.Glare and M.O’Callaghan,eds.,John Wiley,2000、Antibody Phage Display,Methods and Protocols,Humana Press,2001、及びAntibodies,G.Subramanian,ed.,Kluwer Academic,2004を含めて、標準の実験室の教科書に記載されている。変異誘発は、例えば、部位特異的変異誘発によって実施することができる(Kunkelら、Proc.Natl.Acad.Sci USA82:488−492(1985))。PCR増幅法は、米国特許第4,683,192号、同4,683,202号、同4,800,159号及び同4,965,188号、並びに”PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification”,H.Erlich,ed.,Stockton Press,New York(1989)、及びPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innisら、eds.,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)を含めて、幾つかの教科書に記載されている。
【0088】
本発明は、抗体代替軽鎖配列を含む、構築物及びライブラリーに関する。
【0089】
Κ様代替軽鎖構築物
代替軽鎖(SLC)は、発生途上のB細胞受容体の新生重鎖に自然に結合する発生的に制御されたポリペプチドである。重鎖及び代替軽鎖の研究は、時には、それらが自己抗原に結合し得ることを示すことがある。代替軽鎖を含むB細胞は耐容性が良好であり、通常条件下で循環しているのを見つけることができることは十分に証明されている。伸長によって、治療用VH代替軽鎖ヘテロメリックタンパク質は、より容易に自己抗原に結合することができ、治療薬として耐容性が良好であり得る。重要な特徴は、代替軽鎖が抗体軽鎖ではないことである。代替軽鎖は、2種類の分離したポリペプチドで明確に構成され、これらはその発現に対して古典的な軽鎖VJ再配列を行わないが、それでも依然として古典的な抗体重鎖に結合する。
【0090】
十分に記述されたラムダ様代替軽鎖が存在するが、更に別のSLC、具体的には代替カッパ様軽鎖の概念を支持する証拠も多数ある。これは、代替軽鎖ノックアウトマウスにおいて裏付けられている。代替軽鎖ノックアウトマウスは、依然として抗体産生能力を有し、それによってB細胞発生の代替経路が示唆される。一代替軽鎖候補はκ様軽鎖である。κ様軽鎖は、JCκ融合遺伝子と組み合わされた生殖系列VκIV遺伝子である。これらの遺伝子の各々においては、ペプチド性伸長部が、CDR3に類似した部位の周囲に存在する。これら2種類のタンパク質は、ゲノムレベルでは再結合しないように見えるので、重鎖とそれらの結合は互いに相容れず、λ様代替軽鎖に対して記述される結合に類似している可能性がある。重要なことには、これらの遺伝子に見られるペプチド伸長部は、更なる多様性又は機能性を組み入れる機会を与える。
【0091】
Vκ様遺伝子とJCκ様遺伝子は、互いに独立に代替軽鎖として機能することができるタンパク質をコードするので、本発明のκ様代替軽鎖構築物は、具体的に、JCκ様配列なしにVκ様配列、及びVκ様配列なしにJCκ様配列を含む構築物を含む。
【0092】
一態様においては、本発明は、Vκ様及び/又はJCκ配列を含み、標的に結合する能力を有する、構築物を提供する。標的は、例えば、Vκ様及び/又はJCκ配列の結合相手である任意のペプチド若しくはポリペプチド、又はかかる配列(単数又は複数)を含む構築物であり得る。標的は、具体的には、抗体結合に関連して「抗原」と一般に称されるすべてのタイプの標的を含む。
【0093】
本発明のκ様代替軽鎖構築物がVκ様とJCκ配列の両方を含むときには、2個の配列は、典型的には互いに融合しない独立したポリペプチドであるが、非共有結合することもでき、又はペプチドリンカー及び/又は抗体配列を含むリンカーなどの共有結合性リンカーによって互いに連結することもできる。
【0094】
本発明の構築物は、VκIV及び/又はJCκ配列と異種アミノ酸配列との複合体を含むが、それだけに限定されない。異種アミノ酸配列との結合は、共有結合でも非共有結合でもよく、直接的でも、ペプチドリンカーを含めたリンカーを介してでもよい。
【0095】
その変異体及び断片を含めたVκ様及び/又はJCκ配列の自由末端は、かかる配列のライブラリーに更なる多様性を組み入れるのに利用可能である。例えば、無作為ペプチドライブラリーを、これらの自由末端の1つに付加又は置換することができ、特定の標的との特異的結合に対してパニングすることができる。所望の結合特異性を有することが確認された代替軽鎖を同じ標的に対する重鎖又は重鎖断片と組み合わせることによって、2つの異なる場所の同起源の標的に結合する能力を有する分子を作製することができる。このタンデム結合又は「キレート」効果は、二量体免疫グロブリンで見られる結合活性効果と同様に、単一の標的への結合を強力に強化する。異なる標的に結合する成分を使用することも可能である。したがって、例えば、所望の結合特異性を有する代替軽鎖成分を、異なる標的に結合する抗体重鎖又は重鎖断片と組み合わせることができる。例えば、代替軽鎖成分を腫よう抗原に結合させ、抗体重鎖又は重鎖断片を効果細胞に結合させることができる。こうして、ターゲティング及び抗腫よう活性を有する単一体を作製することができる。特定の一実施形態においては、Vκ様及び/又はJCκ配列を連結する付加物(appendage)又はポリペプチドは、抗体又はFab、scFv断片などの抗体断片とすることができる。抗体配列の組み込みは、「キレート」効果を生じるだけでなく、二重特異性抗体で見られるものなどの第2の独立した腕を必要とせずに、単一の分子において二重特異性をもたらすこともできる。2つの特異性は、同じ標的の異なる部分、異なる標的、又は標的抗体複合物に対するものであり得る。
【0096】
本明細書に記載のポリペプチド構築物の具体例としては、Vκ様及び/又はJCκ配列が抗体重鎖に結合したポリペプチド、又はその断片が挙げられる。Vκ様とJCκ配列の両方を含む具体的ヘテロ二量体構築物を図5に示す。図5に示すように、本発明のκ様代替軽鎖構築物においては、Vκ様ポリペプチド及び/又はJCκポリペプチドは、類似の抗体配列には存在しない、それぞれC及びN末端伸長部を含み得る。あるいは、伸長部(単数又は複数)の一部又は全体を本明細書に記載のκ様代替軽鎖構築物から除去することができる。
【0097】
個々に使用することができる、又は更に誘導体化することができる、及び/又は完全長抗体重鎖若しくはその断片などの抗体重鎖配列などの追加の異種配列に結合することができる、他のκ様代替軽鎖構築物。
【0098】
Vκ様ポリペプチド及び/又はJCκポリペプチドのC及びN末端伸長部は、本発明の構築物中に存在する必要はないが、かかる付加物の少なくとも1個の少なくとも一部を保持することが有利である。というのは、図7に示すように、スクリーニングループライブラリーの結果として、線状伸長部又は、例えば、束縛された多様性の形で、それらがコンビナトリアル機能的多様性をもたらす独特の機会を提供するからである。さらに、Vκ様ポリペプチド及び/又はJCκポリペプチドの「尾部」部分は、別のペプチド及び/又はポリペプチドと融合して、例えば、強化された結合、更なる結合特異性、増大されたpK、改善された半減期、短縮された半減期、細胞表面係留(cell surface anchoring)、細胞トランスロケーションの増大、ドミナントネガティブ活性など種々の所望の性質に備えることができる。具体的な機能的尾部伸長部を図14に記載する。
【0099】
必要に応じて、本発明の構築物は、例えば、公知の治療用抗体を含めた抗体のCDR1、CDR2及び/又はCDR3領域由来の公知の配列又は配列モチーフをκ様代替軽鎖配列のCDR1、CDR2及び/又はCDR3類似領域に組み入れる又は付加することによって、操作することができる。これによって、抗体ではないが、公知の抗体医薬と類似した又はそれよりも優れた結合特異性及び親和性を示すであろう分子を作製することができる。
【0100】
ある実施形態においては、異種アミノ酸配列は、1つ以上の追加の機能性を本発明の構築物に追加することができる。所望の結合特異性を有する抗体可変領域配列を含む、追加の機能性を有するかかる構築物を図13に示す。特に、図13は、上記Vκ様及びJCκポリペプチド配列を含む種々の二機能性及び三機能性構築物を示す。
【0101】
本発明の構築物を特定の実施形態を参照して説明したが、当業者は、代替軽鎖及び抗体配列の様々な並べ換えによって得られる多数の更なる実施形態が可能であり、本発明の範囲内であることを理解するであろう。本発明は、代替軽鎖配列を含み所望の標的に結合する能力を有するすべての構築物を含む。ある実施形態においては、構築物は、抗体重鎖可変領域配列に結合する能力も有する。
【0102】
本発明の構築物を使用して、代替軽鎖配列のライブラリーを構築することができ、そのライブラリーは、抗体ライブラリーと同様に、所望の結合特異性及び親和性を有する構築物の選択を含めて、種々の目的で使用することができる。
【0103】
Vκ様及びJCκ遺伝子は、独立したタンパク質として機能することができ代替軽鎖として機能することができるポリペプチドをコードするので、代替様軽鎖を真の軽鎖から操作することができ、操作された真の代替軽鎖に対して提案された以前のあらゆる用途に使用することができる。これは、VpreB又はVκ様遺伝子に類似したペプチド性伸長部を含むように可変軽鎖領域を発現させることによって果たすことができる。同様に、定常領域は、ラムダ5又はJCκ遺伝子及びそのペプチド性伸長部に類似するように操作することができる。さらに、任意のキメラ又はヘテロ二量体との組合せも本明細書の範囲内である。
【0104】
κ様代替軽鎖構築物の調製
本発明のκ様代替軽鎖構築物は、組換えDNA技術の周知技術を含めて、当分野で公知の方法によって調製することができる。
【0105】
κ様代替軽鎖ポリペプチドをコードする核酸は、自然源、例えば発生途上のB細胞から単離することができ、及び/又は合成若しくは半合成方法によって得ることができる。このDNAが特定されて、単離されると、又は産生されると、更なるクローニングのために、又は発現のために、複製可能なベクター中にそれを連結することができる。
【0106】
本明細書に記載のポリペプチドのコード配列を発現するのに使用することができるクローニング及び発現ベクターは、当分野で周知であり、市販されている。ベクター成分としては、一般に、以下、すなわち、シグナル配列、複製開始点、1個以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター及び転写終結配列のうちの1個以上が挙げられるが、それだけに限定されない。本明細書に記載のベクターにおいて代替軽鎖構築物をコードするDNAのクローニング又は発現に適切な宿主細胞は、原核生物、酵母又は高等真核生物(哺乳動物)細胞であり、哺乳動物細胞が好ましい。
【0107】
適切な哺乳動物宿主細胞系の例としては、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1系(COS−7、ATCC CRL1651)、懸濁培養増殖用にサブクローニングされたヒト胚性腎臓系293(293細胞)(Graham et al,J.Gen Virol.36:59(1977))、ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:4216(1980))、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980))、サル腎細胞(CV1 ATCC CCL70)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587)、ヒト頚癌細胞(HELA、ATCC CCL2)、イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL34)、スイギュウラット肝細胞(BRL3A、ATCC CRL1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75)、ヒト肝細胞(Hep G2、HB8065)、マウス乳房腫よう(MMT060562、ATCC CCL51)、TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982))、及びMRC5細胞、FS4細胞が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0108】
哺乳動物細胞用に、発現ベクターに対する制御機能がウイルス性材料によってもたらされることが多い。したがって、一般に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、レトロウイルス、サイトメガロウイルス及びシミアンウイルス40(SV40)のゲノムに由来し得る。βアクチンプロトマーなどの別のプロモーターは、異種の供給源から生ずる。適切なプロモーターの例としては、SV40ウイルスの初期及び後期プロモーター(Fiersら、Nature,273:113(1978))、ヒトサイトメガロウイルスの前初期プロモーター(Greenawayら、Gene,18:355−360(1982))、及び所望の遺伝子配列に通常は付随するプロモーター及び/又は制御配列が挙げられるが、それだけに限定されない。ただし、かかる制御配列は、宿主細胞系に適合したものである。
【0109】
高等真核細胞による所望の異種ポリペプチドをコードするDNAの転写は、エンハンサー配列をベクターに挿入することによって増加する。エンハンサーは、プロモーターに作用してその転写開始活性を増大させる、通常約10から300bpの、DNAのシス作用要素である。エンハンサーは、配向及び位置に比較的無関係であるが、好ましくは、発現ベクター中に存在するプロモーター配列の上流に位置する。エンハンサーは、例えば、真核細胞ウイルス由来など、プロモーターと同じ供給源に由来し得る(例えば、複製開始点の後期側のSV40エンハンサー(bp100〜270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後期側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサー)。
【0110】
哺乳動物宿主細胞に使用される発現ベクターは、例えばSV40(初期及び後期)、HBVなどのウイルスに由来するものなどのポリアデニル化部位も含む。
【0111】
複製開始点は、SV40又は別のウイルス(例えば、ポリオーマ、アデノ、VSV、BPV)源に由来し得るなど、外来性開始点を含むようにベクターを構築することによって用意することができ、又は宿主細胞によって用意することができる。
【0112】
発現ベクターは、通常、ベクターで形質転換された宿主細胞の生存又は成長に必要なタンパク質をコードする選択マーカーを含む。哺乳動物細胞用の適切な選択マーカーの例としては、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)及びネオマイシンが挙げられる。
【0113】
形質転換された宿主細胞は、種々の培地中で培養することができる。市販培地としては、ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、ダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などが挙げられる。また、Hamら、Meth.Enz.58:44(1979)及びBarnesら、Anal.Biochem.102:255(1980)に記載の培地のいずれかを宿主細胞用培地として使用することができる。温度、pHなどの培養条件は、発現用に選択された宿主細胞で以前に使用された条件であり、製造者の指示に含まれ、又は当業者に明らかである。
【0114】
ライブラリーは、κ様代替軽鎖配列を含む。
【0115】
本発明は、さらに、κ様代替軽鎖配列及びかかる配列を含む構築物の種々のライブラリーにも関する。すなわち、かかるライブラリーは、上で又は実施例で具体的に記述したものを含めて、ただしそれだけに限定されない、本発明のVκ様及び/又はJCκ含有構築物などの、κ様代替軽鎖配列のディスプレイを含むことができ、該ディスプレイから本質的になることができ、又は該ディスプレイからなることができる。
【0116】
本発明のライブラリーは、好ましくはディスプレイの形である。抗体及び他のポリペプチドを含めて、異種タンパク質をディスプレイする系は、当分野で周知である。抗体断片は、抗体遺伝子をコードする繊維状ファージの表面にディスプレイされる(Hoogenboom and Winter J.Mol.Biol.,222:381 388(1992)、McCaffertyら、Nature348(6301):552 554(1990)、Griffithsら、EMBO J.,13(14):3245−3260(1994))。抗体ライブラリーを選択及びスクリーニングする技術の総説については、例えば、Hoogenboom,Nature Biotechnol.23(9):1105−1116(2005)を参照されたい。また、Escherichia coli(Agterbergら、Gene 88:37−45(1990)、Charbitら、Gene 70:181−189(1988)、Franciscoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:2713−2717(1992))、及びSaccharomyces cerevisiaeなどの酵母(Boder and Wittrup,Nat.Biotechnol.15:553−557(1997)、Kiekeら、Protein Eng.10:1303−1310(1997))の表面での異種タンパク質及びその断片のディスプレイのための当分野で公知の系がある。他の公知のディスプレイ技術としては、リボソーム又はmRNAディスプレイ(Mattheakisら、Proc.Natl.Acad Sci.USA91:9022−9026(1994)、Hanes and Pluckthun,Proc.Natl.Acad.Sci.USA94:4937−4942(1997))、DNAディスプレイ(Yonezawaら、Nucl.Acid Res.31(19):e118(2003))、細菌ディスプレイなどの微生物細胞ディスプレイ(Georgiouら、Nature Biotech.15:29−34(1997))、哺乳動物細胞上のディスプレイ、胞子ディスプレイ(Isticatoら、J.Bacteriol.183:6294−6301(2001)、Chengら、Appl.Environ.Microbiol.71:3337−3341(2005)、レトロウイルスディスプレイなどのウイルスディスプレイ(Urbanら、Nucleic Acids Res.33:e35(2005)、タンパク質−DNA結合に基づくディスプレイ(Odegripら、Proc.Acad.Natl.Sci.USA101:2806−2810(2004)、Reiersenら、Nucleic Acids Res.33:e10(2005))、ミクロビーズディスプレイ(Seppら、FEBS Lett.532:455−458(2002))などが挙げられる。
【0117】
本発明では、代替軽鎖含有ライブラリーは、有利には、ファージディスプレイ及び胞子ディスプレイを含めて、任意のディスプレイ技術を使用してディスプレイすることができる。
【0118】
ファージディスプレイにおいては、代替軽鎖ポリペプチドなどの異種タンパク質はファージ粒子のコートタンパク質に結合するが、それが発現されたDNA配列はファージ外被内に収められる。ファージディスプレイ法の詳細は、例えば、非免疫ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからのヒト抗体及び抗体断片のin vitroでの生成を記述したMcCaffertyら、Nature348,552−553(1990))に見いだすことができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、M13、fdなどの糸状バクテリオファージの主要な又は少数のコートタンパク質遺伝子中にインフレームでクローン化され、ファージ粒子表面で機能的抗体断片としてディスプレイされる。糸状粒子はファージゲノムの一本鎖DNA複製物を含むので、抗体を機能的性質に基づいて選択すると、その性質を示す抗体をコードする遺伝子も選択される。したがって、ファージは、B細胞の諸性質の一部を模倣する。ファージディスプレイは、種々の形式で実施することができる。その総説については、例えば、Johnson,Kevin S.and Chiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology3,564−571(1993)を参照されたい。幾つかのV遺伝子セグメント源をファージディスプレイに使用することができる。Clacksonら、Nature352,624−628(1991)は、免疫マウスのひ臓に由来するV遺伝子の小規模無作為コンビナトリアルライブラリーから多様な抗オキサゾロン抗体を単離した。Marksら、J.Mol.Biol.222,581−597(1991)又はGriffithら、EMBO J.12,725−734(1993)に記載の技術に基本的に従って、非免疫ヒトドナー由来のV遺伝子レパートリーを構築することができ、(自己抗原を含めて)多様な抗原に対する抗体を単離することができる。自然な免疫応答においては、抗体遺伝子は、変異を高率で蓄積する(体細胞超変異)。導入された変化の一部はより高い親和性を与え、それに続く抗原曝露中に、高親和性表面免疫グロブリンを示すB細胞が優先的に複製され、分化する。この自然プロセスは、「鎖シャフリング」として知られる技術を使用することによって模倣することができる(Marksら、Bio/Technol.10,779−783(1992))。この方法では、ファージディスプレイによって得られる「一次」ヒト抗体の親和性は、重鎖及び軽鎖のV領域遺伝子を、非免疫ドナーから得られたVドメイン遺伝子の天然変異体(レパートリー)のレパートリーで逐次置換することによって改善することができる。この技術によって、nM範囲の親和性を有する抗体及び抗体断片を作製することができる。極めて大きなファージ抗体レパートリーを作製する戦略は、Waterhouseら、Nucl.Acids Res.21,2265−2266(1993)によって記述された。これら及び当分野で公知の他の技術は、代替軽鎖配列を含むポリペプチド及び別の構築物を含めて、任意のポリペプチドのディスプレイに適合させることができる。
【0119】
Bacillus subtilis胞子殻(CotB)及びBacillus thuringiensis(Bt)胞子ディスプレイの成分を使用した表面ディスプレイ系を含めて、胞子ディスプレイは、その開示全体を参照により本明細書に明示的に援用する、Isticatoら、J.Bacteriol.183:6294−6301(2001)、Chengら、Appl.Environ.Microbiol.71:3337−3341(2005)に記載されている。別の胞子ディスプレイ系は、米国特許出願公開第20020150594号、同20030165538号、同20040180348号、同20040171065号及び同20040254364号に開示されている。
【0120】
κ様代替軽鎖配列、それを含む構築物及びライブラリーの使用
本発明のライブラリーを使用して、κ様代替軽鎖配列を特定することができ、代替軽鎖配列を含む融合体など、所望の諸性質を有するκ様代替軽鎖構築物を特定することができる。例えば、本明細書に記載のライブラリーのin vitro又はin vivoスクリーニングによって、高い結合特異性及び親和性で所望の標的に結合するκ様代替軽鎖配列を含むポリペプチドを生成することができる。したがって、本明細書に記載のライブラリーを使用して、腫ようマーカー又は治療的介入の別の分子標的に結合する代替軽鎖配列を含むポリペプチドなどの、治療及び診断のための分子を特定することができる。さらに、上記技術によって、同じ標的に結合するポリペプチドのコレクションを含むライブラリー、異なる標的に結合するポリペプチドのライブラリー、複数の特異性を有するポリペプチドのライブラリーなどを含めて、代替軽鎖ポリペプチドの極めて多様なライブラリーを設計することができる。
【0121】
本発明の更なる詳細を以下の非限定的実施例に記載する。
【実施例】
【0122】
実施例1
結合ドメインタンパク質としてのκ様SLC成分、Vκ様又はJCκ
Vκ様結合ドメインを作製するために、図2及び4(配列番号2)に示す単一タンパク質を組換え作製する。代替軽鎖(SLC)結合ドメインタンパク質構築物は、予測される配列番号2の分泌Vκ様タンパク質に由来するアミノ酸21から180(これは3〜6個のアミノ酸ほどの短さであり得る)で構成される。必要に応じて、新規の特異的結合能力を得るために、構造又は配列上の証拠に従って分子を再設計する。再設計は、例えば、無作為又は合理的に設計された変異誘発手段による、CDR及び/又はC末端部内の多様化を含み得る。それに加えて、又はその代わりに、変異体のコレクションは、Vκ様タンパク質の全長に沿って、例えば誤りがちなPCRによって、無作為に、又はアミノ酸のコレクションを用いた単一若しくは多部位特異的変異誘発によって直接的に、作製される。次いで、生成したクローン又はコレクションを、ファージ又はファージミドディスプレイ用のpIIIを用いてインフレームでクローン化することができる。次いで、このファージミド構築物をTG1細胞に転換し、50μg/mlアンピシリン及び2%グルコースを補充したLuria培地(LB)中でOD600が約0.3になるまで増殖させ、振とうせずにMK307ヘルパーファージに37℃で30分間感染させる。細胞をペレット化し、次いで50μg/mlアンピシリン及び75μg/mlカナマイシンを含むLBに再懸濁させ、激しく曝気しながら30℃で終夜増殖させる。翌日、ファージミドによって発現されたVκ様タンパク質を含む上清を、一般に容認されたパニング法に従ってヒトTNF−αに対してパニングする。TNF−αに結合した特定のVκ様クローンを、選択及び増幅を繰り返して濃縮し、次いでやはり一般に容認されたm13ファージ評価法を利用して個々に結合を評価することができる。m13ファージ評価法は、典型的には、ファージELISA、又はE.coli中で産生された分泌タンパク質の粗製若しくは精製周辺質溶解物の試験を含む。
【0123】
上の記述は、Vκ様結合タンパク質の調製に関するが、Vκ様タンパク質は、共通標的を認識する別の異種配列と組換えによって再結合させ、ライブラリーとしてスクリーニングすることもできる。さらに、このVκ様結合タンパク質を、以前に選択された抗体重鎖コレクションと組み合わせ、目的とする同じ標的又は目的とする第2の標的に対して直接スクリーニングして、二重特異性分子を作製することができる。あるいは、この強化された結合、すなわち二重特異的結合は、重鎖の非選択コレクションと組み合わせたスクリーニングによって発見することができる。
【0124】
この実施例は抗体重鎖に言及したが、完全な重鎖は不要であることを理解すべきである。重鎖定常領域の非存在下での重鎖可変領域配列を含む組合せ、又は完全な重鎖定常領域も同様に作製することができ、この実施例の範囲内である。
【0125】
最後に、N末端伸長部、非CDRループ中に、又はJCκタンパク質の全長にわたって、単独で又は上記組合せで多様化を組み入れることができる以外は、JCκを同様に作製し、使用することができる。
【0126】
実施例2
カッパSLC構築
(「SURROBODY(商標)変異体」とも称する)図5に示すヘテロ二量体SLC欠失変異体のカッパ代替軽鎖成分のコード配列を、CHO−K1細胞(ATCC CCL−61)に、完全長IgG1抗体重鎖と同時導入して、生化学分析用の代替軽鎖構築物を過渡的に作製することができる。
【0127】
例えば、完全長Vκ様(配列番号2)及びJCκ(配列番号4)を哺乳動物発現ベクターpCI(Promega、Madison WI)に別々にクローン化する。これらのタンパク質の両方について、その予測される非構造的尾部の一部を削除する。Vκ様の場合、このC末端部は、Kabat類似残基#95又は配列番号2の残基122〜146に続き、JCκの場合、これは、配列番号4のJ領域N末端アミノ酸1〜28を含む。具体的には、JCκの場合、残基1〜28は、カッパJ領域の予測される開始から終わりまでである。Vκ様構築物は、未変性の予測される分泌シグナルを含み、Vκ様の場合には、この予測されるシグナルペプチドは配列番号2のアミノ酸1〜20である。しかし、JCκは、正準のシグナル配列を有するようには見えない。Francesらは、JCκが表面の露出した重鎖に結合することができることを示し、翻訳されたタンパク質が細胞外表面に輸送又は移行する能力を有することを示唆した。しかし、過剰発現目的では、SURROBODY(商標)タンパク質産生を改善するJCκタンパク質のアミノ末端又は任意の尾部欠失変異体に付加した正準の哺乳動物軽鎖シグナル配列を含む1セットの変異体も作製される。この短縮されたJCκ配列の配列は配列番号24で示され、重鎖及び完全長Vκ様と組み合わせると図5で「dJ」と命名されるSLC欠失変異体を形成する。短縮されたVκ様配列の配列は配列番号25で示され、重鎖及び完全長JCκと組み合わせると図5で「dVκ尾部」と命名されるSLC欠失変異体を形成する。短縮JCκ配列と短縮Vκ様タンパク質の両方を重鎖と組み合わせたとき、SLC欠失変異体は、図5で「短鎖カッパ」と命名される。
【0128】
実施例3
哺乳動物細胞におけるカッパ代替軽鎖構築物(SURROBODY(商標))の発現及び精製
図5の4種類のコンビナトリアルカッパ代替軽鎖候補の各々は、C末端ヘキサヒスチジン(His6)タグ(配列番号26)を含む公知のヒト抗インフルエンザウイルス重鎖を同時導入し、低血清培地中で製造者の提言(Invitrogen、Carlsbad CA)に従って発現させることができる。3日後、上清を収集し、ろ過し、ニッケルキレートクロマトグラフィー(Qiagen、Germany)によって精製する。次いで、精製タンパク質を、抗ペプチドウサギ血清(Vκ様及びJCκ)又は抗ヒスチジン抗体(Serotec、Raleigh NC)を用いたウエスタンブロット分析によって検査する。タンパク質の検出は、抗ウサギHRP(Vκ様及びJCκ)又は抗マウスHRP(重鎖)及びTMB基質を用いた発色に従って可視化される。
【0129】
コンビナトリアルカッパ代替軽鎖変異体の各々を、抗インフルエンザ重鎖に関連した同種抗原に結合する能力について試験する。これは、精製タンパク質又は浄化された移入上清を用いて実施することができる。いずれの場合も、96ウェルELISAプレートのウェルを、Kashyapら、Proc.Natl.Acad.Sci.105:5986−5991(2008)によって記述されたように、H5N1赤血球凝集素(Vietnam 1203)で被覆し、ブロックする。次に、SURROBODIES(商標)を添加し、室温で1時間抗原に結合させる。PBS+0.05%Tweenを用いた洗浄段階後、抗ヒトFc−HRP抗体、及び450nmにおける吸光度の読みを記録するTMB基質比色検出によって、結合を定量的に検出する。
【0130】
実施例4
カッパSLC成分への機能性付加
カッパSLCは2種類の独立したポリペプチドで構成されるので、これは、第2の機能性を付加する、又は埋め込む、自然な機会を創出する。本実施例においては、まず、抗VEGF scFvを挿入して、Vκ様、又はdVκ尾部及びJCκ若しくはdJを連結する融合タンパク質を作製する(図13A)。生成した操作されたカッパSLC束縛scFvを抗TNF−α抗体の重鎖と組み合わせる。所望のタンパク質は、個々の束縛融合体をC末端ヘキサヒスチジン(His6)タグ(配列番号27)を含む完全長重鎖と同時導入し、低血清培地中で製造者の提言(Invitrogen、Carlsbad CA)に従ってタンパク質を発現させることによって産生される。3日後、分泌されたSURROBODIES(商標)を培地から収集し、ろ過し、ニッケルキレートクロマトグラフィー(Qiagen、Germany)によって精製する。
【0131】
生成したタンパク質をELISAに使用して、標的結合を決定する。手短に述べると、ELISAでは、ELISAプレートをヒトTNF−α又はヒトVEGFで被覆、ブロッキングし、続いてカッパSLC SURROBODIES(商標)を4℃で2時間インキュベートし、PBS−Tween−20(0.05%)で洗浄し、抗ヒト重鎖−HRP抗体を直接検出する。
【0132】
あるいは、抗VEGF scFvとVκ様のC末端(図13B)又はJCκのN末端(図13C)を融合させ、生成したタンパク質複合構築物を上記surrobody ELISAと同様に評価することができる。
【0133】
最後に、抗VEGF scFvとVκ様のC末端及び抗卵白アルブミンscFvの融合体をJCκのアミノ末端に融合し、三連タンパク質複合物をVEGF、TNF−α及び卵白アルブミンとの結合について試験する(図13D)。
【0134】
記述scFvにおいては、異種標的に対して組み入れられるが、機能性結合剤を同じ標的に結合させて、タンデム「スーパー結合剤」を作製することができる。このタンデム結合剤は、強化された結合、さらに場合によっては架橋機能さえもたらすことができる。Fab架橋は、抗体全体が望ましくない長期の架橋をもたらす場合に有益であろう。例えば、インスリン代用物として作用して血清クリアランスに3〜4週間を要するインスリン受容体抗体は、免疫グロブリン全体には望ましくない場合がある。インスリンは、通常、数分の半減期を有するので、Fabは、この規模の半減期とより同調し、タンデム機能性は、この適用に適切に対処することができる。
【0135】
上の記述は、抗体のみを第2の機能性グループとして記述したが、関連するペプチド(例えば、エリスロポイエチン模倣物)、受容体(例えば、TNF−RI)、ドミナントネガティブ全タンパク質(例えば、DN−TNF、Steedら、Science.301:1895−1898(2003))拮抗断片又はドメイン(例えば、HGFに基づくNK1又はNK4ドメイン)、及び結合タンパク質(例えば、IL−1ra)も付加及び束縛された構築物に同様に組み入れて、類似機能の分子を作製することができる。さらに、2個の部位を利用して、第2のFab様分子を作製する重鎖と軽鎖などのヘテロ二量体タンパク質を組み入れることもできる。
【0136】
実施例5
カッパSLCライブラリー
上述したように、Vκ様及びJCκドメインは、単一の結合体として使用することができるが、それらを重鎖と組み合わせて、抗原に対するパニングのためのコンビナトリアルライブラリーを作製することもできる。重鎖は、無処置又は過免疫のリンパ球由来のコレクション又は合成コレクションであり得る。カッパSLCライブラリーと併用される前もって濃縮された抗体ライブラリー由来の重鎖コレクションを有することが有益な場合もある。いずれにしても、カッパSLC SURROBODIES(商標)の十分に多様なコレクションは、実施例1で上述した適切な選択及び設計のもとで、各カッパSLC成分中の独立した結合要素を介して複数の抗原選択性をもたらすことができ、又は標的に対してVκ様及びJCκ尾部を介して、古典的な抗体には存在しない追加の結合を介した結合を増強することができる。
【0137】
具体的には、本発明者らは、H5N1トリインフルエンザ生存物の骨髄から調製されたコンビナトリアル抗体ライブラリーを用いた反復手法を使用する。これらのライブラリーを2回の選択のためにH5N1ウイルス赤血球凝集素タンパク質に対してスクリーニングする。次に、ファージミドプラスミドを増幅し、精製し、このプラスミド調製物から制限消化によって重鎖可変領域を単離する。次いで、これらの重鎖を定常重鎖ドメイン1とインフレームでクローン化して、ファージミドディスプレイ用のm13遺伝子IIIコートタンパク質との組換え融合体を形成する。
【0138】
パニング後、濃縮クローンをHB2151 E.coli系統に移行させて、可溶性SURROBODY(商標)タンパク質を産生させることによって、すべての適切な回数の選択からのクローン抗原結合ファージ及びライブラリーに対して、ELISA試験を実施する。手短に述べると、HB2151クローンを増殖させ、可溶性SURROBODIES(商標)を産生させる。具体的には、100mcg/mlアンピシリン及び200マイクロモルIPTGを補充した2−YT培地中でコロニーを終夜30度で培養し、上述したように、周辺質溶解物を基本的に以前に概説したようにELISAによって試験する。
【0139】
実施例6
既存の軽鎖V遺伝子及び軽鎖定常遺伝子由来のSLC様分子の操作
カッパSLCの成分は、非再配列軽鎖V遺伝子及び再配列軽鎖JC遺伝子から代替機能をもたらすので、すべての残留カッパ及びラムダ軽鎖V遺伝子からの類似の翻訳されたタンパク質を操作して、Vκ様分子(図9及び10)及び残留カッパJC再配列物の全組合せ(4種類のJCκ様)(図11及び12)及びラムダJC再配列物(4「J」×10「定常」=40種類のJCλ様)(図11)を作製することができる。これらの操作された分子の各々は、Vκ様及びJCκを用いたもの、並びに2007年3月28日に出願された同時係属中のPCT出願番号PCT/US2008/058283にVpreB及びλ5と一緒に含まれるもの、並びにその組合せ及びキメラと類似の目的を果たすことができる(図16)。
【0140】
実施例7
血清中半減期を延長するカッパ代替軽鎖融合
in vivoでの抗体断片の半減期は、抗体断片が、安定な抗原結合性断片を形成するのに必要なものだけでなくすべての重鎖定常ドメインを含む無処置の完全な重鎖との融合体の一部であるときに、かなり延長される。IgGの場合には、これは、ドメインCH1、CH2及び場合によってはCH3の含有を意味する。特に、CH2及びCH3がin vivoでこの効果の大部分を与えることは十分に証明されている。実際、これらのCH2及びCH3ドメインと異種タンパク質の融合は、典型的には、親分子と比較してこれらのキメラ分子の効力及びPK/PDを改善するのに十分である。同様に、Vκ様とJCκの一方又は両方との機能的融合体は、重鎖の定常ドメインとのこの結合によって利点を得る。
【0141】
II型糖尿病の治療の場合、グルカゴン様ペプチド1(すなわちGLP−1)の投与は、すい臓におけるグルコース依存性インスリン分泌を誘発し、それによって患者のグルコース管理を改善して、個々を利するものである。しかし、持続性GLP−1ペプチドが望ましい目標である。カッパ代替軽鎖の尾部は、独特で利用可能であるので、この目標は、活性GLP−1部分をVκ様尾部(配列番号28)のC末端又はJCκ(配列番号29)のN末端部に組換え融合することによって達成することができる。JCκ融合体の場合には、発現は、図15に示すように、Vκ様の存在下でも非存在下でも、さらには可変重鎖ドメインの存在下及び非存在下でさえも、実施することができる。同様に、Vκ様との融合体は、JCκの存在下でも非存在下でも、恐らくは重鎖のCH1ドメインを用いても用いなくても、実施することができる。同様に、他の有益な成長因子、サイトカイン、受容体及び酵素融合体を作製することができる。これらの場合のすべてにおいて、結合は、代替軽鎖又はSURROBODY(商標)成分の必要条件ではなく、全体的に又は主に異種代替軽鎖融合要素によって与えられ得る。
【0142】
上記記述においては、本発明を特定の実施形態に関連して説明したが、本発明はそのようには限定されない。実際、本明細書に示し、記載するものに加えて、本発明の種々の改変が、上記記述から当業者に明らかになるはずであり、添付の特許請求の範囲に包含される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Vκ様及び/又はJCκ配列を含む、κ様代替軽鎖(SLC)構築物。
【請求項2】
Vκ様配列を含む、請求項1に記載のκ様SLC構築物。
【請求項3】
JCκ配列を含む、請求項1に記載のκ様SLC構築物。
【請求項4】
Vκ様配列とJCκ配列の両方を含む、請求項1に記載のκ様SLC構築物。
【請求項5】
標的に特異的に結合することができる、請求項1に記載のκ様SLC構築物。
【請求項6】
前記Vκ様配列が、シグナル配列を有する若しくは有さないかつC末端部を有する若しくは有さない配列番号2又はその断片を含む、請求項5に記載のκ様SLC構築物。
【請求項7】
前記Vκ様配列が、配列番号2のN末端シグナルペプチド(アミノ酸1〜20)を含む、請求項6に記載のκ様SLC構築物。
【請求項8】
前記Vκ様配列が、配列番号2内からのC末端部の少なくとも一部を含む、請求項7に記載のκ様SLC構築物。
【請求項9】
前記Vκ様配列が、シグナル配列を有する若しくは有さないかつC末端部を有する若しくは有さない配列番号7〜18又はその断片を含む群より選択される、請求項5に記載のκ様SLC構築物。
【請求項10】
前記JCκ配列が、N末端伸長部を有する若しくは有さない配列番号4又はその断片を含む、請求項5に記載のκ様SLC構築物。
【請求項11】
前記JCκ配列が、N末端伸長部を有する若しくは有さない配列番号19〜23又はその断片からなる群より選択される配列を含む、請求項5に記載のκ様SLC構築物。
【請求項12】
抗体重鎖配列と結合した、請求項1から3及び5から11のいずれか一項に記載のκ様SLC構築物。
【請求項13】
抗体重鎖配列と結合した、請求項4に記載のκ様SLC構築物。
【請求項14】
前記Vκ様配列がC末端部を含む、請求項13に記載のκ様SLC構築物。
【請求項15】
前記JCκ配列がN末端伸長部を含む、請求項13に記載のκ様SLC構築物。
【請求項16】
前記Vκ様配列がC末端部を含み、前記JCκ配列がN末端伸長部を含む、請求項13に記載のκ様SLC構築物。
【請求項17】
前記Vκ様配列がC末端部を欠き、前記JCκ配列がN末端伸長部を欠く、請求項13に記載のκ様SLC構築物。
【請求項18】
前記抗体重鎖配列が完全長抗体重鎖又はその断片である、請求項12に記載のκ様SLC構築物。
【請求項19】
前記抗体重鎖配列が完全長抗体重鎖又はその断片である、請求項13に記載のκ様SLC構築物。
【請求項20】
前記Vκ様配列及び前記JCκ配列が互いに共有結合している、請求項13に記載のκ様SLC構築物。
【請求項21】
前記結合が直接融合である、請求項20に記載のκ様SLC構築物。
【請求項22】
前記結合が異種リンカーを介する、請求項20に記載のκ様SLC構築物。
【請求項23】
前記異種リンカーが未変性ポリペプチドの配列又はその断片を含む、請求項22に記載のκ様SLC構築物。
【請求項24】
前記異種リンカーが治療用ポリペプチドの配列又はその断片を含む、請求項22に記載のκ様SLC構築物。
【請求項25】
前記異種リンカーが抗体配列を含む、請求項22に記載のκ様SLC構築物。
【請求項26】
前記抗体配列が抗体の軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列を含む、請求項25に記載のκ様SLC構築物。
【請求項27】
前記抗体の軽鎖配列及び重鎖配列が抗原に結合することができる、請求項26に記載のκ様SLC構築物。
【請求項28】
前記抗原が、前記構築物が結合する前記標的とは異なる、請求項27に記載のκ様SLC構築物。
【請求項29】
前記Vκ様配列及び/又は前記JCκ配列に共有結合した抗体の少なくとも1個の抗原結合領域を含む、請求項13に記載のκ様SLC構築物。
【請求項30】
二機能性である、請求項29に記載のκ様SLC構築物。
【請求項31】
三機能性である、請求項29に記載のκ様SLC構築物。
【請求項32】
前記Vκ様配列がC末端部を含み、前記JCκ配列がN末端伸長部を含む、請求項1に記載のκ様SLC構築物。
【請求項33】
前記C末端部及び/又は前記N末端伸長部が異種分子に結合した、請求項32に記載のκ様SLC構築物。
【請求項34】
前記異種分子がペプチド又はポリペプチドである、請求項33に記載のκ様SLC構築物。
【請求項35】
同じ結合特異性を有する抗体よりも改善された薬物動態プロファイルを有する、請求項12に記載のκ様SLC構築物。
【請求項36】
同じ結合特異性を有する抗体よりも改善された効力を有する、請求項12に記載のκ様SLC構築物。
【請求項37】
同じ標的に結合する抗体よりも改善された特異性を有する、請求項12に記載のκ様SLC構築物。
【請求項38】
請求項1に記載のκ様SLC構築物のコレクションを含む、ライブラリー。
【請求項39】
ディスプレイの形の請求項38に記載のライブラリー。
【請求項40】
前記ディスプレイが、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、DNAディスプレイ、哺乳動物細胞上のディスプレイ、胞子ディスプレイ、ウイルスディスプレイ、タンパク質−DNA結合に基づくディスプレイ、及びマイクロビーズディスプレイからなる群より選択される、請求項39に記載のライブラリー。
【請求項41】
前記ディスプレイがファージディスプレイである、請求項40に記載のライブラリー。
【請求項42】
抗体配列のコレクションを更に含む、請求項38に記載のライブラリー。
【請求項43】
前記抗体配列が重鎖可変領域配列及び/又は軽鎖可変領域配列を含む、請求項42に記載のライブラリー。
【請求項44】
Vκ様配列のコレクションを含む、請求項38に記載のライブラリー。
【請求項45】
前記Vκ様配列のコレクションが、そのCDR配列及び/又はC末端配列が異なるVκ様配列変異体を含む、請求項44に記載のライブラリー。
【請求項46】
JCκ配列のコレクションを含む、請求項38に記載のライブラリー。
【請求項47】
前記JCκ配列のコレクションが、そのN末端伸長部が異なるJCκ配列変異体を含む、請求項46に記載のライブラリー。
【請求項1】
Vκ様及び/又はJCκ配列を含む、κ様代替軽鎖(SLC)構築物。
【請求項2】
Vκ様配列を含む、請求項1に記載のκ様SLC構築物。
【請求項3】
JCκ配列を含む、請求項1に記載のκ様SLC構築物。
【請求項4】
Vκ様配列とJCκ配列の両方を含む、請求項1に記載のκ様SLC構築物。
【請求項5】
標的に特異的に結合することができる、請求項1に記載のκ様SLC構築物。
【請求項6】
前記Vκ様配列が、シグナル配列を有する若しくは有さないかつC末端部を有する若しくは有さない配列番号2又はその断片を含む、請求項5に記載のκ様SLC構築物。
【請求項7】
前記Vκ様配列が、配列番号2のN末端シグナルペプチド(アミノ酸1〜20)を含む、請求項6に記載のκ様SLC構築物。
【請求項8】
前記Vκ様配列が、配列番号2内からのC末端部の少なくとも一部を含む、請求項7に記載のκ様SLC構築物。
【請求項9】
前記Vκ様配列が、シグナル配列を有する若しくは有さないかつC末端部を有する若しくは有さない配列番号7〜18又はその断片を含む群より選択される、請求項5に記載のκ様SLC構築物。
【請求項10】
前記JCκ配列が、N末端伸長部を有する若しくは有さない配列番号4又はその断片を含む、請求項5に記載のκ様SLC構築物。
【請求項11】
前記JCκ配列が、N末端伸長部を有する若しくは有さない配列番号19〜23又はその断片からなる群より選択される配列を含む、請求項5に記載のκ様SLC構築物。
【請求項12】
抗体重鎖配列と結合した、請求項1から3及び5から11のいずれか一項に記載のκ様SLC構築物。
【請求項13】
抗体重鎖配列と結合した、請求項4に記載のκ様SLC構築物。
【請求項14】
前記Vκ様配列がC末端部を含む、請求項13に記載のκ様SLC構築物。
【請求項15】
前記JCκ配列がN末端伸長部を含む、請求項13に記載のκ様SLC構築物。
【請求項16】
前記Vκ様配列がC末端部を含み、前記JCκ配列がN末端伸長部を含む、請求項13に記載のκ様SLC構築物。
【請求項17】
前記Vκ様配列がC末端部を欠き、前記JCκ配列がN末端伸長部を欠く、請求項13に記載のκ様SLC構築物。
【請求項18】
前記抗体重鎖配列が完全長抗体重鎖又はその断片である、請求項12に記載のκ様SLC構築物。
【請求項19】
前記抗体重鎖配列が完全長抗体重鎖又はその断片である、請求項13に記載のκ様SLC構築物。
【請求項20】
前記Vκ様配列及び前記JCκ配列が互いに共有結合している、請求項13に記載のκ様SLC構築物。
【請求項21】
前記結合が直接融合である、請求項20に記載のκ様SLC構築物。
【請求項22】
前記結合が異種リンカーを介する、請求項20に記載のκ様SLC構築物。
【請求項23】
前記異種リンカーが未変性ポリペプチドの配列又はその断片を含む、請求項22に記載のκ様SLC構築物。
【請求項24】
前記異種リンカーが治療用ポリペプチドの配列又はその断片を含む、請求項22に記載のκ様SLC構築物。
【請求項25】
前記異種リンカーが抗体配列を含む、請求項22に記載のκ様SLC構築物。
【請求項26】
前記抗体配列が抗体の軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列を含む、請求項25に記載のκ様SLC構築物。
【請求項27】
前記抗体の軽鎖配列及び重鎖配列が抗原に結合することができる、請求項26に記載のκ様SLC構築物。
【請求項28】
前記抗原が、前記構築物が結合する前記標的とは異なる、請求項27に記載のκ様SLC構築物。
【請求項29】
前記Vκ様配列及び/又は前記JCκ配列に共有結合した抗体の少なくとも1個の抗原結合領域を含む、請求項13に記載のκ様SLC構築物。
【請求項30】
二機能性である、請求項29に記載のκ様SLC構築物。
【請求項31】
三機能性である、請求項29に記載のκ様SLC構築物。
【請求項32】
前記Vκ様配列がC末端部を含み、前記JCκ配列がN末端伸長部を含む、請求項1に記載のκ様SLC構築物。
【請求項33】
前記C末端部及び/又は前記N末端伸長部が異種分子に結合した、請求項32に記載のκ様SLC構築物。
【請求項34】
前記異種分子がペプチド又はポリペプチドである、請求項33に記載のκ様SLC構築物。
【請求項35】
同じ結合特異性を有する抗体よりも改善された薬物動態プロファイルを有する、請求項12に記載のκ様SLC構築物。
【請求項36】
同じ結合特異性を有する抗体よりも改善された効力を有する、請求項12に記載のκ様SLC構築物。
【請求項37】
同じ標的に結合する抗体よりも改善された特異性を有する、請求項12に記載のκ様SLC構築物。
【請求項38】
請求項1に記載のκ様SLC構築物のコレクションを含む、ライブラリー。
【請求項39】
ディスプレイの形の請求項38に記載のライブラリー。
【請求項40】
前記ディスプレイが、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、DNAディスプレイ、哺乳動物細胞上のディスプレイ、胞子ディスプレイ、ウイルスディスプレイ、タンパク質−DNA結合に基づくディスプレイ、及びマイクロビーズディスプレイからなる群より選択される、請求項39に記載のライブラリー。
【請求項41】
前記ディスプレイがファージディスプレイである、請求項40に記載のライブラリー。
【請求項42】
抗体配列のコレクションを更に含む、請求項38に記載のライブラリー。
【請求項43】
前記抗体配列が重鎖可変領域配列及び/又は軽鎖可変領域配列を含む、請求項42に記載のライブラリー。
【請求項44】
Vκ様配列のコレクションを含む、請求項38に記載のライブラリー。
【請求項45】
前記Vκ様配列のコレクションが、そのCDR配列及び/又はC末端配列が異なるVκ様配列変異体を含む、請求項44に記載のライブラリー。
【請求項46】
JCκ配列のコレクションを含む、請求項38に記載のライブラリー。
【請求項47】
前記JCκ配列のコレクションが、そのN末端伸長部が異なるJCκ配列変異体を含む、請求項46に記載のライブラリー。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1】
【公表番号】特表2011−527707(P2011−527707A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517662(P2011−517662)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/050290
【国際公開番号】WO2010/006286
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(508339161)シー レーン バイオテクノロジーズ, エルエルシー (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/050290
【国際公開番号】WO2010/006286
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(508339161)シー レーン バイオテクノロジーズ, エルエルシー (10)
【Fターム(参考)】
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