説明

抗体医薬

IL−10レセプター1の細胞外領域及びヒト抗体の融合タンパク質からなる抗体医薬を用いた治療を、低コストで行うことを有効に利用する手段を提供することを課題とする。 IL−10レセプター1の細胞外領域とヒトIgG1の定常領域の融合タンパク質をコードする遺伝子を発現ベクターに組み込み、遺伝子治療用又はワクチン用の発現ベクターを提供すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、抗体を利用した医薬、抗体医薬、抗体医薬を発現させるベクターの技術に関連する。より具体的には、ヒト抗体のFc領域とがIL−10レセプター1の断片とを結合させた融合タンパク質をコードする遺伝子を発現させる発現ベクターに関連する。
【背景技術】
[キメラ抗体、ヒト化抗体]
モノクローナル抗体は特異性が高く、ガン細胞などの標的細胞を特異的に排除することが期待された。しかしながら、モノクローナル抗体調製に好適なミエローマ細胞が、ヒトでは見つからなかったこともあり、マウスなど、ヒト以外の動物の抗体が調製されてきた。
しかしながら、異種動物抗体は、抗体中に異種動物特異的な部分が多く、そのままヒトに医薬として投与すると、異種動物抗体に対する免疫反応を引き起こすという問題があった。
そのため、キメラ抗体の調製が試みられた。マウスの免疫グロブンリン可変領域のcDNAと、ヒト由来免疫グロブリンの定常領域(Fc領域)とを結合して発現させられた(非特許文献1:Nature.(1984)Vol.312,P.643−6.)。しかしながら、ヒト由来の領域が70%程度で、依然として、免疫反応を引き起こすものであった。
その後、Winter等は、免疫グロブリン中可変領域の3つのループ(CDR,complementary determining region)が抗体を抗原に結びつける機能を果たしていることを見出した。
そこで、可変領域から、この3つのループ以外の部分をヒト遺伝子由来に設計することにより、5−10%の領域を除き、ヒト由来の抗体とすることを可能にした(非特許文献2:Nature(1986)Vol.321,p.783−792、)。また、この設計に、マウス抗体に由来抗原結合部位をヒトの抗体のフレームワーク領域に移植するreshapeと呼ばれる方法も開発され(非特許文献3:Nature 1988 Vol.332,323−)、更にヒト化に伴う親和性の低下の改善も図られた(特許文献1:米国特許6180370号)。実質的に免疫反応を引き起こさない、親和性の高いヒト化抗体が調製されており、これにより、抗体を医薬として活用する道が開かれてきた。
[イムノアドヘシン]
他方、ヒト抗体の遺伝子配列の解明に伴い、遺伝子組み換え法を用いて、目的のタンパク質の断片とヒト抗体のFc領域を融合タンパク質[イムノアドヘシン:Immunoadhesin]として発現させる試みがなされてきた。
例えば、TNFR(TNFリセプター)の細胞外領域とヒトIgG重鎖のヒンジ部分とFc領域とを融合したイムノアドヘシンがTNFアンタゴニストとして働くことが示された(非特許文献4:PRONAS Vol.88,p.10535−19539)。
[IL−10Rインターロイキン10 リセプター]
IL−10(インターロイキン10)は、主にヘルパーT細胞(2型)により産生される。一方では、IL−10は、ヘルパーT細胞(1型)に由来するさまざまなサイトカイン、インターフェロンγ、IL−2、TNF(腫瘍壊死因子)の合成を阻害する免疫抑制的活性がある。他方では、活性化されたB細胞の成長及び分化を刺激する活性を有している。また、炎症反応の抑制に多くの面で関与しているといわれている。
[IL−10レセプター]
細胞表面のIL−10レセプターは、IL−10の活動を仲介する。IL−10レセプターは、サイトカインレセプターファミリーのインターフェロンレセプター様サブグループのメンバーである。ヒト及びマウスのイーターロイキン−10レセプターをコードするcDNAは、すでにクローニングされている(非特許文献5:J Immunology Vol.152,p.1821−1829,非特許文献6:PRONAS Vol.90,p.11267−11271、非特許文献7:The EMBO Journal Vol.16,p.5894−5903)。IL−10レセプターは、IL−10と高親和性のIL−10R1及びIL−10とは低親和性のIL−10R2の2種類のポリペプチドからなっている。
更にIL−10R1の細胞外領域のみの発現、調製がされている(非特許文献8:J.Biol.Chem.Vol.270,P.12906−12911)。
【特許文献1】 米国特許6180370号
【非特許文献1】 Nature.(1984)Vol.312,p.643−6.
【非特許文献2】 Nature(1986)Vol.321,p.783−792
【非特許文献3】 Nature(1988)Vol.332,323−
【非特許文献4】 PRONAS Vol.88,p.10535−19539
【非特許文献5】 J Immunology Vol.152,p.1821−1829,
【非特許文献6】 PRONAS Vol.90,p.11267−11271
【非特許文献7】 The EMBO Journal Vol.16,p.5894−5903
【非特許文献8】 J.Biol.Chem.Vol.270,P.12906−12911
【発明の開示】
(1)従来の抗体医薬は、融合タンパク質を人体に投与するため、あらかじめ、多量の融合たんぱく質を調整しておく必要があるが、融合たんぱく質の発現には、依然相当のコストを要している。
本発明においては,抗体医薬のような融合タンパク質を発現するベクターを作製し,それを遺伝子治療に用いることで,低コストの治療を実現することを課題とする。
(2)また、本発明は、IL−10が免疫抑制的な側面も有し、特に腫瘍などでは、この免疫抑制的な側面が、治療を阻害している面もあると考えられ、このIL−10に対する効果的なアンタゴニストの開発をも課題としている。
本発明者らは、抗体医薬を効率的に投与できるように、抗体医薬を遺伝子治療用ベクターに抗体医薬をコードする遺伝子を組み込んで、体内で、抗体医薬を産生できる組換え遺伝子治療用ベクターを開発した。
更に具体的には、IL−10レセプター1の細胞外領域をIgG1のFc領域と融合させた抗体医薬(イムノアドヘシン)を開発した。
本発明は、抗体医薬を用いた治療を、抗体医薬をコードするDNAを含む発現ベクターを提供することにより、従来からの抗体医薬治療のコストを低減するものである。
更に、本発明は、IL−10レセプター1とIgG1、具体的にはIgG1の定常領域とを結合した融合タンパク質を提供することにより、IL−10が介在する病気の治療薬を提供するものである。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2003−310601号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明で使用するプライマーリストI。
図2は、IL−10R1/IgG1_1−Aの配列。
図3は、IL−10R1/IgG1_2−Aの配列。
図4は、IL−10R1/IgG1_1−Aの3次元構造予測図。
図5は、IL−10R1/IgG1_2−Aの3次元構造予測図。
図6は、プライマーリストII。
図7は、pVAX1−IL10R1(EC*)の配列図。
図8は、pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(V51:ヒンジなし)の配列図。
図9は、pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(V52:変異型ヒンジ**)の配列図。
図10は、pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(V55:野生型ヒンジ***)の配列図。
図11は、#0は、pVAX1を、#1は、pVAX1−IL10R1(V12:EC*)を、#2は、pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1(V51:ヒンジなし),#3は、pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1(V15:SSC型ヒンジ),#4は、pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1(V54:CSC型ヒンジ)をあらわし、それぞれのIL−10活性の阻害活性を示す。
図12は、pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(V54:CSC型変異型ヒンジ**)の配列図
図13は、IL−10R1_V12の3次元構造予測図。
図14は、IgG1(Hinge+CH2+CH3)_WTの3次元構造予測図。
図15は、IL10R1−IgG1(V51:ヒンジなし)の3次元構造予測図。
図16は、IL10R1−IgG1(V52:SSS型変異型ヒンジ)の3次元構造予測図。
図17は、IL10R1−IgG1(V54:CSC型変異型ヒンジ)の3次元構造予測図。
図18は、IL10R1−IgG1(V55:CCC型野生型ヒンジ)の3次元構造予測図。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は、抗体医薬若しくは抗体医薬候補、抗体医薬若しくは抗体医薬候補をコードする遺伝子及び抗体医薬若しくは抗体医薬候補をコードする遺伝子を組み込んだ抗体医薬若しくは抗体医薬候補発現ベクターを提供する。本組み換え発現ベクターは、抗体医薬産生、及び遺伝子治療用に用いることができる。
[融合蛋白質:抗体医薬]
本発明で用いる抗体医薬又は抗体医薬候補としては、ヒト化抗体、更には、ヒト抗体の定常領域と細胞表面レセプターのリガンド結合部位を結合させた融合タンパク質(イムノアドヘシン)を挙げることができる。
本発明において、イムノアドヘシンとしては、ヒトの抗体の定常領域を抗体以外のタンパク質、例えば、レセプター、接着因子、リガンド等の他の分子との結合作用を有する分子を融合させた融合タンパク質を包含する。より具体的には、ヒトの抗体の定常領域を細胞膜レセプターの細胞外領域、好適には、リガンド結合領域に融合させた融合抗体タンパク質、更に好適には、IL−10レセプター若しくはその細胞外領域、又はIL−10レセプター1の細胞外領域に融合させた融合タンパク質を包含する。
イムノアドヘシンを構成するヒト抗体の定常領域としては、IgG、IgM、IgAの定常領域が利用できる。好適には、IgGの定常領域を用いることができる。IgGの定常領域としては、(イ)Fc部分、(ロ)CH2及びCH3からなる領域、(ハ)ヒンジ部分、CH2及びCH3からなる領域、又はCH1〜CH3の連続する領域等並びに、これら領域に、1〜数個のアミノ酸が欠失、付加、置換、又は挿入した部分又は領域であって、抗体の定常領域としても機能を有する部分又は領域を用いることができる。具体的には、IgG1の定常領域、更に具体的には、たとえば、B細胞のTotalRNA又はSRα−neo1−CD80/CD86/IgFcからクローニングできるIgG1の定常領域を用いることができる。
イムノアドヘシンを構成する抗体以外のタンパク質としては、レセプター、接着因子、又はリガンド等の他の分子との結合作用(結合能力)を有する分子、又は他の分子との結合能力を維持した、レセプター、接着因子、又はリガンドの断片、並びに、これらの可溶性の断片が挙げられる。好適には、細胞膜レセプター又はその細胞外領域の断片が挙げられる。細胞膜レセプターとしては、種々の膜タンパク質レセプターを用いることができるが、好適には、IL−10レセプター及びその細胞外領域、更に好適にはIL−10レセプター1の細胞外領域を用いることができる。
IL−10レセプター1の細胞外領域としては、好適には、配列番号13の配列について1〜235アミノ酸又は1〜228のアミノ酸の断片を選ぶことができる。
更に、IL−10レセプター1細胞外領域には、細胞外領域を含む任意の断片であって、IL−10と結合能力を有する断片を包含し、更に、配列番号13のアミノ酸番号1〜235(配列番号14の位置番号62〜766の断片によりコードされるポリペプチド)に1乃至数個のアミノ酸〔好適には、1〜50,更に好適には、1〜20,より好適には、1〜10又は1〜5のアミノ酸〕が欠失、置換、付加又は挿入の変異を有するポリペプチドであってかつ当該ポリペプチドがIL−10と結合活性を有しているポリペプチド、及び配列番号13のアミノ酸番号1〜228(配列番号14の位置番号62〜745の断片によりコードされるポリペプチド)に1乃至数個のアミノ酸〔好適には、1〜50個,更に好適には、1〜20個,より好適には、1〜10個又は1〜5個のアミノ酸〕が欠失、置換、付加又は挿入の変異を有するポリペプチドであって、かつ当該ポリペプチドがIL−10と結合活性を有しているポリペプチド、を包含する。
抗体の定常領域部分としては、IL−10レセプター1との融合タンパク質を調製する場合には、具体的には、IgG1のFc部分、CH2(Constant region Heavy chain domain 2)及びCH3(Constant region Heavy Chain domain 3)からなる領域、又はヒンジ部及びCH2並びにCH3からなる領域、並びに、これらの領域に、1−数個のアミノ酸が欠失、付加、置換、又は挿入した領域であって、抗体の定常領域としても機能を有する部分又は領域が含まれ、好適には、抗体の定常領域部分が2量体を形成しないように構成したもの、特に好適には、IgG1のFc部分でヒンジ部分を欠失又はヒンジ部分のシステインをダイマー形成しないように他のアミノ酸(好適にはセリン)に変異させた変異型ヒンジを有するIgG1のFc領域が含まれ、具体的には、(イ)ヒンジ部分の3個のシステイン内少なくとも2個のシステインをセリンに変異させた変異型ヒンジを有するIgG1の定常領域、(ロ)CH2(Constant region Heavy chain domain 2)及びCH(Constant region Heavy Chain domain 3)からなる領域が含まれる。
イムノアドヘシンとしては、好適には、IL−10レセプター1の細胞外領域をIgG1(重鎖)の定常領域(CH2,CH3及びヒンジ部、又はCH2及びCH3)とを融合させた融合たんぱく質、特に好適には、IL−10レセプター1の細胞外領域をIgG1(重鎖)の定常領域(CH2及びCH3、又はCH2、CH3及び変異ヒンジ部(融合蛋白質が2量体とならないように改変したヒンジ部))との融合蛋白質を挙げることができる。このようなイムノアドヘシンは、IL−10をトラップするIL−10阻害剤として用いることができるほか、IL−10活性の調整に用いることができる。
更に、本願発明の融合蛋白質には、次の(1)及び(2)から構成されるIL−10阻害活性を有する融合蛋白質が包含される。
(1)次の(a)又は(b)で表されるIL−10レセプター1の細胞外領域ポリペプチド;
(a)配列番号13で表されるIL−10レセプター1のアミノ酸配列中第1〜235のアミノ酸又は1〜228のアミノ酸からなるポリペプチド;
(b)配列番号13のアミノ酸配列1〜235で表されるポリペプチドに対して、1〜数個のアミノ酸〔好適には、1〜50個,更に好適には、1〜20個,より好適には、1〜10又は1〜5個のアミノ酸〕が欠失、置換及び/又は付加されたポリペプチドであって、IL−10レセプター活性を有するペプチド、及び
(2)次の(c)、(d)又は(e)で表されるIgG1のFc領域
(C)配列番号12で表されるIgG1遺伝子配列中の第70乃至115塩基から始まり768塩基に至る遺伝子配列でコードされるポリペプチド;
(d)配列番号12で表されるIgG1遺伝子配列中の第70〜115塩基に始まり第768塩基に至る遺伝子配列によりコードされるポリペプチドに対し1〜数個のアミノ酸〔好適には、1〜50個,更に好適には、1〜20個,より好適には、1〜10又は1〜5個のアミノ酸〕が、欠失、置換、又は/及び付加された、IgG1−Fcフラグメントとしての活性を有するポリペプチド;
(e)配列番号12で表されるIgG1遺伝子配列中の第70〜115塩基に始まり第768塩基に至る遺伝子配列によりコードされるポリペプチドに対し1〜数個のアミノ酸〔好適には、1〜50個,更に好適には、1〜20個,より好適には、1〜10又は1〜5個のアミノ酸〕が、欠失、置換、又は/及び付加された、2量体を形成しない可溶性の変異IgG1−Fcフラグメントであるポリペプチド。
更に、具体的には、本願発明の融合蛋白質には、次の融合蛋白質が包含される。(a)配列番号13で表されるIL−10レセプター1のアミノ酸配列中第1〜235のアミノ酸又は1〜228のアミノ酸からなるポリペプチド及び(b)配列番号12で表されるIgG1遺伝子配列中の第115〜768塩基又は第82〜768塩基であって83番目、101番目及び110番目のGの内少なくとも2つのGをCに代えた遺伝子によりコードされるポリペプチドからなる融合蛋白質。
[融合蛋白質(抗体医薬)の有用性:対象疾病]
また、本発明の、IL−10レセプター1とIgG1の定常領域とを結合した融合タンパク質は、IL−10が介在する病気の治療薬又は治療薬候補として用いることができる。具体的には、例えば、本発明の(1)IL−10レセブター1細胞外領域と(2−1)IgG1のヒンジ部を除いた定常領域又は(2−2)ヒンジ部分のシステインを他のアミノ酸に変異させ2量体を形成しないようにした変異ヒンジ部を有するIgG1定常領域を融合させた抗体医薬(融合蛋白質)は、キラーT細胞の活性化を促進、更には、メラノーマをはじめ種々の癌の治療に用いることができる。
[抗体医薬遺伝子]
本発明でベクターに組み込むことができる抗体医薬をコードする遺伝子としては、上記した[抗体医薬]、具体的には、ヒト化抗体、更には、ヒト抗体の定常領域と細胞表面レセプターのリガンド結合部位を結合させた融合タンパク質(イアミュノアドヘシン)をコードするDNA等の核酸又はヌクレオチドをあげることができる。
具体的には、ヒトの抗体の定常領域を細胞膜レセプターの細胞外領域、好適には、リガンド結合領域に融合させた融合抗体タンパク質をコードする遺伝子を包含する。 更に、細胞膜レセプターとしては、種々の膜タンパク質レセプターを用いることができるが、好適には、IL−10レセプターを用いることができる。
本願発明の遺伝子には、例えば、以下の(1)−(4)の遺伝子も包含される。
(1)図2又は8〜10(配列番号7、17,19又は21)のいずれか、好適には、図8〜9(配列番号7、17又は19)のいずれかに記載される遺伝子。
(2)図2又は8〜10(配列番号8、18,20又は22)のいずれかに記載されるポリペプチドに対して、1〜100個,好適には1〜20個,更に好適に1〜10個のアミノ酸が、欠失、置換、及び/又は付加したポリペプチドであって、IL−10阻害活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子。
(3)図2又は8〜10(配列番号7、17,19又は21)いずれか、好適には、図8〜9(配列番号7、17又は19)のいずれかに記載の遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつIL−10阻害活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子。なお、ストリンジェントな条件は、周知のストリンジェント条件を用いることができるが、例えば、(イ)低イオン強度、高温で洗浄する条件、例えば、0.015M NaCl、0.0015M クエン酸ナトリウム、0.1% SDSで50℃洗浄する条件、(ニ)50% ホルムアルデヒド、5XSSC(0.75M NaCl、0.075M クエン酸)、5.Xデンハルト溶液、サケ精子DNA(50g/ml)、0.1% SDS、及び10% 硫酸デキストラン、42℃、更に0.2XSSC、0.1% SDS、42℃で洗浄などの条件が挙げられる。
及び
(4)図2又は8〜10(配列番号配列番号7、17,19又は21)いずれか、好適には、図2又は8〜9(配列番号7、17又は19)のいずれかに記載の遺伝子と60%同一性、好適には80%同一性、更に好適には90%同一性、特に好適には、95%同一性を有し、2量体を形成しないポリペプチドをコードし、かつIL−10阻害活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子。
[ベクター]
本発明で用いる、人へ投与するベクター(発現ベクター)としては、遺伝子治療で用いられている種々のベクター、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペプシンプレックスウイルス、センダイウイルス又は、レンチウイルスを元にして、調製されたベクター、例えば、複製機能を欠損させたベクターを用いることができる。更に、原核生物で複製増殖し、哺乳細胞でトランジエントな発現を起こすプラスミドを用いることもできる。
好適には、ヒトに対する遺伝子治療を可能にするため、既に、the U.S.Food and Drug Administrationにおいて認証を得ているインビトロジェン社のpVAX1をホストベクターとして用いることができる。
本発明の抗体医薬遺伝子は、上記発現ベクター(ホストベクター)に組み換えて、組み換えベクターを調製できる。当該組み換えベクターは、抗体医薬を発現させる及び/又は遺伝子医療に用いることができる。
[投与方法]
(1) 調製された抗体医薬は、例えば、静脈注射により投与することができる。
(2) 調製された遺伝子治療用の抗体医薬発現組み換えベクターは、例えば、そのままで、又はリポソームなどの脂質小胞膜内に導入し、若しくはリン脂質と共存させ、通常の注射用緩衝液に懸濁して、筋肉注射、静脈注射、又は皮下注射等で投与することができる。投与量としては、通常遺伝子治療で用いられる量のベクターを用いることができ、例えば組み換えアデノベクターをヒトに投与する場合は、1x10〜1x1012Pfuを投与できる(J Clin Oncol.2002 Mar 15;20(6):1562−9.)。
例えば、pVAX1に組み込んだ抗体医薬発現組み換えベクターは、適切な注射用緩衝液で希釈し、筋肉注射して用いることができる。
以下実施例は、例示のためであって、本願発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例1〜4が実施例系統Aを構成し、実施例5〜8が実施例系統Bを構成する。実施例系統Aに係るプライマーと実施例系統Bに係るプライマーでは、それぞれの対応する図面(実施例系統Aは、図1、実施例系統Bは図6)に記載されたプライマーを意味する。
【実施例1】
IL−10R1細胞外領域のcDNAの調製
(1)プライマーの調製
IL10R1細胞外領域を切り出すためのプライマーを、(1)細胞外領域1としてIL−10レセプターをコードするcDNA配列番号14の位置番号62〜766を切り出せるように、(2)領域2としては、配列番号の位置番号62〜745を切り出せるように設計した。
設計したプライマーは、図1に、(1)IL−10R1_1−A(領域1)切り出し用フォーワードプライマーを#1(配列番号1)、リバースプライマーを#2(配列番号2)、(2)IL−10R1_2−A(領域2)切り出し用フォーワードプライマーを#1(配列番号1)、リバースプライマーを#3(配列番号3)として示されている。
(2)cDNAの調製
Human T−Cell Leukemia(Jurkat)のtotal RNAを採取した。RT−PCR法によって,プライマーの#1と#2を用いてIL−10R1_1−A領域,#1と#3を用いてIL−10R1_2−A領域のcDNAを得た。
【実施例2】
IgG1(Fc)部位の調製
(1)プライマーの調製
IgG1のFc領域を切り出すためのプライマーを、(イ)Fc領域1はIgG1(配列番号12)の位置番号70〜768を切り出せるように、(ロ)Fc領域2は、配列番号12の位置番号115〜768を切り出せるように設計した。
設計したプライマーは、図1に、(イ)IgG−Fc_1−A(領域1)切り出し用フォーワードプライマーを#4(配列番号4)、リバースプライマーを#6(配列番号6)、(ロ)IgG1−Fc_2−A(領域2)切り出し用フォーワードプライマーを#5(配列番号5)、リバースプライマーを#6(配列番号6)、として示されている。
(2)cDNAの調製
IgG1_Fc部位(IgG1−Fc_1−A領域とIgG1−Fc_2−A領域)は,SRα−neo1−CD80/CD86/IgFc(ペンシルバニア大学医学部病理学教室 David B.Weiner助教授より入手)から,プライマーの#4と#6を用いてIgG1−Fc_1−A領域のcDNA(IgG1_1−A)を、#5と#6を用いてIgG1−Fc_2−A領域のcDNA(IgG1_2−A)をそれぞれ得た。
【実施例3】
IL−10R1/IgG1−Aの遺伝子治療用発現ベクターの作製
ホストベクターであるpVAX1(インビトロジェン社)に,制限酵素Hind IIIとEcoR Iによって結合サイトを作製した。実施例1で調製したIL10R1細胞外領域(IL−10R1_1−AとIL−10R1−2_A)を制限酵素Hind IIIとBamH Iで末端処理し、実施例2で調製したIgG1_Fc部位(IgG1−Fc_1−A領域とIgG1−Fc_2−A領域)を制限酵素BamH IとEcoR Iで末端処理した。(1)IL−10R1_1−AとIgG1_1−AをpVAXの結合サイトに結合させてpVAX1−IL10R1/IgG1_1−A(V15:SSC型ヒンジ)を、(2)IL−10R1_2とIgG1_2をpVAXの結合サイトに結合させてpVAX1−IL10R1/IgG1_2−A(V50:ヒンジなし)構成した。なお、上記SSC型ヒンジとは、ヒンジ部分の3個のシステインの内2個のシステインがセリンに変異されていることを示す。
こうして、遺伝子治療用発現ベクター(pVAX1−IL10R1/IgG1_1−AとpVAX1−IL10R1/IgG1_2−A)を構築した。pVAX1−IL10R1/IgG1_1−Aから発現するタンパク質は配列番号8に、その遺伝子配列は配列番号7に、更に両者を併記して図2示す。また、pVAX1−IL10R1/IgG1_2−Aから発現するタンパク質は、配列番号10に、その遺伝子配列は配列番号9に、更に両者を併記して図3に示す。
構築した遺伝子治療用発現ベクターの塩基配列の確認は、シークエンス・アナライザーにより行い、100%の一致が得られた。
【実施例4】
IL−10R1/IgG1の3次元構造予測
構築した2種類の発現ベクター(pVAX1−IL10R1/IgG1_1−AとpVAX1−IL10R1/IgG1_2−A)から発現するタンパク質(IL10R1/IgG1_1−AとIL10R1/IgG1_2−A)の3次元構造を図4と図5に示す。これらの3次元構造は、化学計算ソフトウェア(MOE,Ver.2003.02,CCG Inc.,Motreaul)によって作製した。
【実施例5】
IL−10R1細胞外領域のcDNAの調製
(1)プライマーの調製
設計したプライマーは、図6に、
(1)IL−10R1(EC*:細胞外領域のみを発現するように,ストップコドンを導入してある)切り出し用フォーワードプライマーを#1:IL10R1_F_Hind3−B(配列番号1:GCCCCCAAGCTTGCCGCCACCATGCTGCCGTGCCTCG)、リバースプライマーを#2:IL10R1_1_R_EcoR1−B(配列番号23:ATCGGGGAATTCTCAGTTGGTCACGGTGAAATACTGC)、
(2)IL−10R1(EC:IgG1のFc領域との結合に用いる)切り出し用フォーワードプライマーを#1:IL10R1_F_Hind3−B(配列番号1:GCCCCCAAGCTTGCCGCCACCATGCTGCCGTGCCTCG)、リバースプライマーを#3:IL10R1_2_R_BamH1(配列番号2:ATCGGGGGATCCGTTGGTCACGGTGAAATACTGC)、として示されている。
(2)cDNAの調製
Human T−Cell Leukemia(Jurkat)のtotal RNAを採取した。RT−PCR法によって,プライマーの図6中の#1と#2を用いてIL−10R1(EC*),#1と#3を用いてIL−10R1(EC)のcDNAを得た。
【実施例6】
IgG1(Fc)部位の調製
(1)プライマーの調製
IgG1のFc領域を切り出すためのプライマーを、(i)Fc領域1(ヒンジ部なし)は、IgG1(配列番号12)の位置番号115〜768を切り出せるように設計した。
(ii)Fc領域(SSS型変異型ヒンジ部)は、IgG1(配列番号12)の位置番号82〜768を、システイン(82−85のコドン、100−102及び109−111のコドン)をセリンに変異させてSRα−neo1−CD80/CD86/IgFcから切り出せるように設計した。
(iii)fc領域(CSC型変異型ヒンジ部)は、IgG1(配列番号12)の位置番号82〜768を,システイン(82−85のコドン及び109−111のコドン)をセリンに変異させてSRα−neo1−CD80/CD86/IgFcから切り出せるように設計した。
(iv)Fc領域(野生型ヒンジ部)はIgG1(配列番号12)の位置番号82〜768を、SRα−neo1−CD80/CD86/IgFcから切り出せるように設計した。
設計したプライマーは、図6に、
(イ)IgG−Fc_1(領域1:ヒンジ部なし)切り出し用フォーワードプライマーを#4:IgG1_1_F_BamH1−B(配列番号5:CGCGGATCCGCACCTGAACTCCTGGG)、リバースプライマーを#7:IgG1_R_EcoR1−B(配列番号6:ATCGGGGAATTCTCATTTACCCGGAGACAGGG)、
(ロ)IgG1−Fc_2−B(領域2:SSS型変異型ヒンジ部)切り出し用フォーワードプライマーを#5:IgG1_2_F−BamH−B(配列番号24:CGGGATCCTCTGACAAAACTCACACATCC)、リバースプライマーを#7:IgG1_R_EcR1−B(配列番号6:ATCGGGGAATTCTCATTTACCCGGAGACAGGG,さらに,修正用フォーワードプライマーを#8:Tailor_F_Mut−B(配列番号25:CTCACACATCCCCACCGTCCCCAGCACCTG),リバースプライマーを#9:Tailor_R_Mut−B(配列番号26:ACGGTGGGGATGTGTGAGTTTTGTCAGAAGA)、
(ハ)IgG1−Fc_3(領域3:CSC型ヒンジ部)切り出し用フォーワードプライマーを#6:IgG1_3_F_BamH−B(配列番号27:CGCGGATCCGAGTCCAAATCTTGTGACAAAACTC)、リバースプライマーを#7:IgG1_R_EcoR1−B(配列番号6:ATCGGGGAATTCTCATTTACCCGGAGACAGGG)として示されている。
(ニ)IgG1−Fc_3(領域3:野生型ヒンジ部)切り出し用フォーワードプライマーを#6:IgG1_3_F_BamH−B(配列番号27:CGCGGATCCGAGTCCAAATCTTGTGACAAAACTC)、リバースプライマーを#7:IgG1_R_EcoR1−B(配列番号6:ATCGGGGAATTCTCATTTACCCGGAGACAGGG),さらに,修正用フォーワードプライマーを#10:Tailor_F_Wt−B(配列番号28:GTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCC),リバースプライマーを#11:Tailor_R_Wt−B(配列番号29:ATGTGTGAGTTTTGTCACAAGATTTGGACTC)、として示されている。
(2)cDNAの調製
IgG1_Fc部位(IgG1−Fc(ヒンジなし)、IgG1−Fc(変異型ヒンジ)及びIgG1−Fc(野生型ヒンジ))は,SRα−neo1−CD80/CD86/IgFcからプライマーの図6中の#4と#7を用いてIgG1−Fc(ヒンジなし)のcDNA、図6中の#5と#7,さらに図6中の#8と#9を用いてIgG1−Fc(SSS型変異型ヒンジ)のcDNA、図6中の#6と#7を用いてIgG1−Fc(CSC型ヒンジ)のcDNA及び図6中の#6と#7,さらに図6中の#10と#11を用いてIgG1−Fc(野生型ヒンジ)のcDNAを得た。
【実施例7】
IL−10R1/IgG1の遺伝子治療用発現ベクターの作製
ホストベクターであるpVAX1(インビトロジェン社)に,制限酵素Hind IIIとEcoR Iによって結合サイトを作製した。実施例5で調製したIL10R1細胞外領域(IL−10R1(EC*)1とIL−10R1(EC))を制限酵素Hind IIIとBamH Iで末端処理し、実施例6で調製したIgG1_Fc部位(IgG1−Fc(ヒンジなし)、IgG1−Fc(変異型ヒンジ)及びIgG1−Fc(野生型ヒンジ))を制限酵素BamH IとEcoR Iで末端処理した。
(イ)V12:pVAX1−IL10R1(EC*)はpVAX1に上記制限酵素処理したIL10R1(EC*)を組み込んで調製した。(利用したプライマーは、図6中の#1及び#2である。)V52:(ロ)V51:pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(V51:ヒンジなし)はpVAX1に上記制限酵素処理したIL10R1(EC)及びIgG1−Fc(ヒンジなし)を組み込んで調製した。
(ハ)V52:pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(V52:SSS型変異型ヒンジ**)はpVAX1に上記制限酵素処理したIL10R1(EC)及びIgG1−Fc(SSS型変異型ヒンジ**)を組み込んで調製した。なお、SSS型変異型ヒンジとはヒンジ部の3個システインを3個のセリンに変異させたヒンジのことを意味する。
(ニ)V54:pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(V54:CSC型変異型ヒンジ**)はpVAX1に上記制限酵素処理したIL10R1(EC)及びIgG1−Fc(CSC型変異型ヒンジ**)を組み込んで調製した。なお、CSC型変異型ヒンジとは、ヒンジ部の3個のシステインの内上流側および下流側の2個のシステインがセリンに変異させられたヒンジを意味する。
(ホ)V55:pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(V55:野生型ヒンジ***)はpVAX1に上記制限酵素処理したIL10R1(EC)及びIgG1−Fc(野生型ヒンジ***)を組み込んで調製した。
こうして、遺伝子発現ベクター(pVAX1−IL10R1(EC*)、pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(V51:ヒンジなし)、pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(V52:SSS型変異型ヒンジ**)、V54:pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(CSC型変異型ヒンジ**)、pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(V55:野生型ヒンジ***)、)を構築した。
pVAX1−IL10R1(EC*)から発現する蛋白質は、配列番号15に、その遺伝子は配列番号16、更に両者を併記して図7(図7−1〜図7−3)に示す。
pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(V51:ヒンジなし)から発現するタンパク質は配列番号18に、その遺伝子配列は配列番号17に、更に両者を併記して図8(図8−1〜図8−4)示す。
pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(V52:SSS型変異型ヒンジ**)から発現するタンパク質は、配列番号20に、その遺伝子配列は配列番号19に、更に両者を併記して図9(図9−1〜図9−4)に示す。
pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(V54:CSC型変異型ヒンジ**)から発現するタンパク質は、配列番号30に、その遺伝子配列は配列番号32に、更に両者を併記して図12(図12−1〜図12−5)に示す。
pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(V55:野生型ヒンジ***)から発現する蛋白質は、配列番号22、その遺伝子は配列番号21に、そして両者を併記して図10(図10−1〜図10−4)に示す。
構築した遺伝子発現ベクターの塩基配列の確認は、シークエンス・アナライザーにより行い、100%の一致が得られた。
【実施例8】
(1)イムノアドヘシンの調製
1X10細胞のIL−10産生性のメラノーマ細胞株(JB)及びIL−10非産生性の細胞株(ZA)が完全RPMI培地で培養された。完全RPMI培地はRPMI1640に10%加熱不活化(不働化)FCS、2mML−グルタミン、非必須アミノ酸、100IU/mlペニシリン及び100pg/mlストレプトマイシンを添加して調製した。)
トランスフェクション24時間前に、メラノーマ細胞は12穴プレートに0.5ml培地中に播かれた。
pVAX1、実施例4又は7で調製された遺伝子発現ベクター(pVAX1−IL10R1(V12:EC*)、pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(V51:ヒンジなし)、pVAX1−IL10R1/IgG1_1−A(V15:SSC型変異型ヒンジ**)及びpVAX1−IL10R1(EC)/IgG1−Fc(V54:CSC型ヒンジ***))、それぞれ、1μgで上記メラノーマ細胞株はトランスフェクトされた。
(2)IL−10阻害活性の測定
トランスフェクション3日後に、上清が回収され、ELISAキット(BioSource INTERNATIONAL,Inc.,Camarillo,CA,USA)でIL−10の生産性がテストされた。IL−10非産生細胞の75μlの培地上清と75μlの希釈組み換えIL−10が混合(最終濃度50,100,200および500pg/ml)され、96穴プレートに加えられた。
上記プレートは37度で1時間インキュベートされた。インキュベーション後、基質が各穴に加えられ、上清中のIL−10の活性がELISAで測定された。結果を図11に示す。なお、図11中の#0は、pVAX1を、#1は、pVAX1−IL10R1(V12:EC*)を、#2は、pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1(V51:ヒンジなし),#3は、pVAX1−IL10R1/IgG1_1−A(V15:SSC型ヒンジ),#4は、pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1(V54:CSC型ヒンジ)をあらわす。
この結果、ヒンジ部を持たず、したがってIgG 1部分で2量体を形成することがない、pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1(V51:ヒンジなし)が一番良くIL−10活性を阻害し、次に、ヒンジ部のシステインをセリンに変異させることにより2量体形成を阻害した、pVAX1−IL10R1/IgG1_1−A(V15:SSC型ヒンジ)が良くIL−10活性を阻害した。IL−10は2量体として機能することから、IL−10をトラップするイムノアドヘシンも2量体が望ましいとの一般には予想されていたが、pVAX1−IL10R1(EC)/IgG1(V54:CSC型ヒンジ)のIL−10阻害活性は上記2者よりも低かった。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【産業上の利用可能性】
本発明は、抗体医薬、及び遺伝子治療剤として産業上利用することができる。
【配列表フリーテキスト】
配列番号1〜6及び配列番号23〜29は、プライマーである。
【図1】







【図4】

【図5】


















【図11】






【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL−10レセプターの細胞外領域をヒト抗体の定常領域を結合させた融合タンパク質(イムノアドヘシン)をコードする遺伝子を遺伝子発現用ベクターに組み込んだ組み換えベクター。
【請求項2】
IL−10レセプターの細胞外領域がIL−10レセプター1の細胞外領域である請求項1記載の組み換えベクター。
【請求項3】
ヒト抗体の定常領域が、ヒトIgG1のFc領域中のCH2及びCH3を含む領域である請求項1又は2記載の組み換えベクター。
【請求項4】
ヒト抗体の定常領域が、ヒトIgG1のFc領域のCH2及びCH3、又はヒトIgG1のFc領域のヒンジ並びにCH2及びCH3からなる請求項1又は2記載の組み換えベクター。
【請求項5】
IL−10レセプター1の細胞外領域が、配列番号13で表されるIL−10レセプター1のアミノ酸配列中第1〜235のアミノ酸又は1〜228のアミノ酸からなるポリペプチドである請求項2〜4いずれか1項記載の組み換えベクター。
【請求項6】
ヒトIgG1のFc領域が、配列番号12で表されるIgG1遺伝子配列中の第70〜768塩基、82〜768塩基又は115〜768塩基によりコードされるポリペプチドである請求項3〜5いずれか1項記載の組み換えベクター。
【請求項7】
発現ベクターが原核生物で複製可能であって、哺乳細胞でトランジエントな発現が可能なプラスミドである請求項1〜6いずれか記載の組み換え現ベクター。
【請求項8】
発現ベクターがpVAX1である請求項7項記載の組み換えベクター。
【請求項9】
融合蛋白質が2量体構造を形成しない融合タンパク質である請求項2記載の組み換えベクター。
【請求項10】
ヒト抗体の定常領域がヒトIgG1のFc領域から、ヒンジ部を欠失させた又はヒンジ部にある3個のシステインの内少なくとも2個のシステインをシステイン以外のアミノ酸に改変したヒトIgG1のFc領域である請求項9記載の組み換えベクター。
【請求項11】
下記(a)又は(b)から選択されるIL−10レセプターの細胞外領域及び下記(c)、(d)又は(e)から選択されるヒト抗体の定常領域からなるIL−10阻害活性を有する融合蛋白質を発現するように構成された組み換えベクター。
(a)配列番号13で表されるIL−10レセプター1のアミノ酸配列中第1〜235のアミノ酸又は1〜228のアミノ酸からなるポリペプチド;
(b)配列番号13で表されるIL−10レセプター1のアミノ酸配列1〜235で表されるポリペプチドに対して、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたポリペプチドであって、IL−10レセプター活性を有するペプチド;
(c)配列番号12で表されるIgG1遺伝子配列中の第70乃至115塩基から始まり768塩基に至る遺伝子配列でコードされるポリペプチド;
(d)配列番号12で表されるIgG1遺伝子配列中の第70〜115塩基に始まり第768塩基に至る遺伝子配列によりコードされるポリペプチドに対し1〜数個のアミノ酸が、欠失、置換、又は/及び付加された、IgG1のFc領域としての活性を有するポリペプチド;
(e)配列番号12で表されるIgG1遺伝子配列中の第70〜115塩基に始まり第768塩基に至る遺伝子配列によりコードされるポリペプチドに対し1〜数個のアミノ酸が、欠失、置換又は/及び付加された、2量体を形成しない可溶性の変異型IgG1のFc領域であるポリペプチド。
【請求項12】
(1)配列番号13で表されるIL−10レセプター1のアミノ酸配列中第1〜235のアミノ酸又は1〜228のアミノ酸からなるポリペプチド及び
(2)配列番号12で表されるIgG1遺伝子配列中の第115〜768塩基、82〜768塩又は第70〜768塩基であって83番目、101番目及び110番目のGの内少なくとも2つのGをCに代えた遺伝子によりコードされるポリペプチドからなる融合蛋白質をコードする遺伝子を発現させるように構成された組み換えベクター。
【請求項13】
IL−10レセプター1の細胞外領域をヒト抗体の定常領域に結合させた融合蛋白質。
【請求項14】
ヒト抗体の定常領域が、(イ)ヒトIgG1のFc領域中のCH2及びCH3を含む領域、(ロ)ヒトIgG1のFc領域のCH2及びCH3からなる領域、又は(ハ)ヒトIgG1のFc領域のヒンジ並びにCH2及びCH3からなる領域である請求項13記載の融合蛋白質。
【請求項15】
融合蛋白質が2量体構造を形成しない請求項13記載の融合タンパク質。
【請求項16】
ヒト抗体の定常領域がヒトIgG1のFc領域からヒンジ部を欠失させた又はヒンジ部の3個のシステインの内少なくとも2個のシステインをシステイン以外のアミノ酸に改変したヒトIgG1のFc領域である請求項15記載の融合蛋白質。
【請求項17】
(a)配列番号13で表されるIL−10レセプター1のアミノ酸配列中第1〜235のアミノ酸又は1〜228のアミノ酸からなるポリペプチド、又は
(b)配列番号13で表されるIL−10レセプター1のアミノ酸配列1〜235で表されるポリペプチドに対して、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたポリペプチドであって、IL−10レセプター活性を有するポリペプチド、から選択されるIL−10レセプター1の細胞外領域

(c)配列番号12で表されるIgG1遺伝子配列中の第70乃至115塩基から始まり768塩基に至る遺伝子配列でコードされるポリペプチド、
(d)配列番号12で表されるIgG1遺伝子配列中の第70〜115塩基に始まり第768塩基に至る遺伝子配列によりコードされるポリペプチドに対し1〜数個のアミノ酸が、欠失、置換、又は/及び付加された、IgG1−Fcフラグメントとしての活性を有するポリペプチド、又は
(e)配列番号12で表されるIgG1遺伝子配列中の第70〜115塩基に始まり第768塩基に至る遺伝子配列によりコードされるポリペプチドに対し1〜数個のアミノ酸が、欠失、置換、又は/及び付加された、2量体を形成しない可溶性の変異IgG1−Fcフラグメントであるポリペプチド、から選択されるIgG1のFc領域に結合させてなるIL−10阻害活性を有する融合蛋白質。
【請求項18】
(a)配列番号13で表されるIL−10レセプター1のアミノ酸配列中第1〜235のアミノ酸又は1〜228のアミノ酸からなるポリペプチド及び
(b)配列番号12で表されるIgG1遺伝子配列中の第115〜768塩基又は第82〜768塩基であって83番目、101番目及び110番目のGの内少なくとも2つのGをCに代えた遺伝子によりコードされるポリペプチド
からなる融合蛋白質。
【請求項19】
IL−10レセプター1の細胞外領域をヒト抗体の定常領域を結合させた融合蛋白質をコードする遺伝子。
【請求項20】
ヒト抗体の定常領域が、(イ)ヒトIgG1のFc領域中の少なくともCH2及びCH3を含む領域、(ロ)ヒトIgG1のFc領域のCH2及びCH3からなる領域、又は(ハ)ヒトIgG1のFc領域のヒンジ並びにCH2及びCH3からなる領域である請求項19記載の融合蛋白質をコードする遺伝子。
【請求項21】
融合蛋白質が2量体構造を形成しない融合タンパク質である請求項19記載の遺伝子。
【請求項22】
ヒト抗体の定常領域がヒトIgG1のFc領域からヒンジ部を欠失させた又はヒンジ部の3個のシステインの内少なくとも2個のシステインをシステイン以外のアミノ酸に改変することにより改変されたヒトIgG1のFc領域である請求項21記載の融合蛋白質をコードする遺伝子。
【請求項23】
下記(a)又は(b)から選択されるIL−10レセプターの細胞外領域及び下記(c)、(d)又は(e)から選択されるヒト抗体の定常領域からなるIL−10阻害活性を有する融合蛋白質をコードする遺伝子。
(a)配列番号13で表されるIL−10レセプター1のアミノ酸配列中第1〜235のアミノ酸又は1〜228のアミノ酸からなるポリペプチド;
(b)配列番号13で表されるIL−10レセプター1のアミノ酸配列1〜235で表されるポリペプチドに対して、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたポリペプチドであって、IL−10レセプター活性を有するペプチド;
(c)配列番号12で表されるIgG1遺伝子配列中の第70乃至115塩基から始まり768塩基に至る遺伝子配列でコードされるポリペプチド;
(d)配列番号12で表されるIgG1遺伝子配列中の第70〜115塩基に始まり第768塩基に至る遺伝子配列によりコードされるポリペプチドに対し1〜数個のアミノ酸が、欠失、置換、又は/及び付加された、IgG1のFc領域としての活性を有するポリペプチド;
(e)配列番号12で表されるIgG1遺伝子配列中の第70〜115塩基に始まり第768塩基に至る遺伝子配列によりコードされるポリペプチドに対し1〜数個のアミノ酸が、欠失、置換、又は/及び付加された、2量体を形成しない可溶性の変異型IgG1のFc領域であるポリペプチド。
【請求項24】
(1)配列番号13で表されるIL−10レセプター1のアミノ酸配列中第1〜235のアミノ酸又は1〜228のアミノ酸からなるポリペプチド、及び
(2)配列番号12で表されるIgG1遺伝子配列中の第115〜768塩基又は第70〜768塩基であって83番目、101番目及び110番目のGの内少なくとも2つのGをCに代えた遺伝子によりコードされるポリペプチドからなる融合蛋白質をコードする遺伝子。
【請求項25】
請求項19〜24いずれか1項記載の遺伝子を発現させる組み換えベクターを導入した宿主。
【請求項26】
請求項25記載の宿主を用いてIL−10レセプター1の細胞外領域をヒト抗体の定常領域を結合させた融合蛋白質を生産する方法。
【請求項27】
請求項26記載の方法で生産された融合蛋白質。
【請求項28】
(1)プライマー#1(GCCCCCAAGCTTGCCGCCACCATGCTGCCGTGCCTCG)及びプライマー#3(ATCGGGGGATCCGTTGGTCACGGTGAAATACTGC)を用いて、Human T−Cell Leukemia(Jurkat)から採取した全RNAに対してRT−PCRすることによって,得ることができるIL−10R1領域をコードする遺伝子並びに
(2)(i)IgG−Fc_1(領域1:ヒンジ部なし)切り出し用フォーワードプライマーを#4(CGCGGATCCGCACCTGAACTCCTGGG)、リバースプライマーを#7(ATCGGGGAATTCTCATTTACCCGGAGACAGGG)を用いて、SRα−neo1−CD80/CD86/IgFcに対してPCRすることにより得ることができるヒンジを欠失させたIgG1のFc領域をコードする遺伝子、
(ii)IgG1−Fc_2(領域2:変異型ヒンジ部)切り出し用フォーワードプライマーを#5(CGGGATCCTCTGACAAAACTCACACATCC)、リバースプライマーを#7(ATCGGGGAATTCTCATTTACCCGGAGACAGGG)を用いて、SRα−neo1−CD80/CD86/IgFcに対してPCRすることにより得ることができるIgG1のFc領域をコードする遺伝子をさらに,修正用フォーワードプライマーを#8(CTCACACATCCCCACCGTCCCCAGCACCTG),リバースプライマーを#9(ACGGTGGGGATGTGTGAGTTTTGTCAGAAGA)を用いて修正を加えた変異型ヒンジを有するIgG1のFc領域をコードする遺伝子、又は
(iii)IgG1−Fc_2(領域3:野生型ヒンジ部)切り出し用フォーワードプライマーを#6:IgG1_2_F_BamH(CGGGATCCTCTGACAAAACTCACACATCC)、リバースプライマーを#7(ATCGGGGAATTCTCATTTACCCGGAGACAGGG)を用いて、SRα−neo1−CD80/CD86/IgFcに対してPCRすることにより得ることができるIgG1のFc領域をコードする遺伝子をさらに,修正用フォーワードプライマーを#10(GTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCC),リバースプライマーを#11(ATGTGTGAGTTTTGTCACAAGATTTGGACTC)を用いて修正を加えた野生型ヒンジを有するIgG1のFc領域をコードする遺伝子
をpVAXに組込んで発現させることにより得られる融合蛋白質。

【国際公開番号】WO2005/024027
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【発行日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513718(P2005−513718)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013090
【国際出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】