説明

抗体又はその断片の結晶化

本開示は抗体又はその断片の結晶化及び/又は濃縮の方法に関する。本方法は、二価カチオンの塩を含有する溶液に抗体又はその断片を接触させることを含む。抗体又はその断片の結晶及び/又はタンパク質ゲルは組成物又は製剤において有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(関連出願とのクロスレファレンス)
本出願は2004年7月23日に出願された米国出願第60/590707号に基づく米国特許法第119条第(e)項の優先権を主張するものである。
【0002】
(発明の背景)
モノクローナル抗体は、限定するものではないが、癌、呼吸器疾患、炎症疾患、及び感染症を含む多くの疾患及び症状の治療における強力な治療剤になってきている。一般に、抗体を含む治療法は一用量当たり100mgから1gの送達を必要とする。そのような治療に対して一般的に使用されるアプローチ法は約2から20mLの50mg/mL抗体溶液の静脈点滴を使用することである。例えば皮下注射のような静脈内投与以外の導入法が望まれているので、抗体のより濃縮した溶液を得ることは有利であろう。しかしながら、抗体の濃縮溶液は、限定するものではないが、高い粘性溶液、タンパク質凝集を含む問題及び溶液の安定性の問題を生じうる。
【0003】
例えばX線結晶学において使用するために抗体断片は結晶化されている。過去に報告されたモノクローナル抗体の結晶化方法は一般に蒸気拡散法を使用している。この方法の欠点は製造される結晶の量が微少なことと、ある場合にはヒトでの使用にとって許容できない薬剤を使用していることを含む。バッチプロセス法をまた使用して若干多い量の結晶を製造することができる。一般的に用いられているバッチプロセス法は典型的には有機又は重合体沈殿剤を利用している。Yang等, PNAS, vol. 100, no. 12, pp.6934-6939 (2003);Kuznetsov等, J. Crystal Growth, vol. 232, pp.30-39 (2001);Kuznetsov等, J. Structural Biology, vol. 131, pp.108-115 (2000);Harris等, Immunological Reviews, vol. 163, pp.35-43 (1998);Harris等, J. MoI. Biol., vol. 275, pp.861-872, (1998);及びHarris等, Proteins, vol. 23, pp.285-89 (1995)。一般的に使用されている有機又は重合体沈殿剤の例には、ポリエチレングリコール(PEG)、イソプロパノール、ジェファミン(登録商標)(Huntsman Petrochemical Corp., Salt Lake City, UT)、及び(+/-)-2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)が含まれる。
多くの抗体は今はヒトへの投与のために大規模で処理されているので、結晶及び/又は濃縮されたタンパク質ゲル、特に有機又は重合体沈殿剤を含まないものを大規模に生成する方法を利用できることが望ましい。結晶及び/又はゲルは貯蔵と治療のための投与に有用である。
【0004】
(発明の概要)
本発明の一側面では、約1から500ミリモル濃度(mM)の二価カチオンの塩と約1から100mMのバッファーを含む溶液に抗体又はその断片を接触させ、抗体又はその断片の結晶が生成されるまで抗体又はその断片と溶液をインキュベートする工程を含む抗体又はその断片の結晶を製造するための方法が提供される。
ある実施態様では、方法は、約1から120mMの亜鉛塩を含有する溶液に抗体又はその断片を接触させ;抗体又はその断片の結晶が生成されるまで抗体又はその断片と溶液をインキュベートすることを含む。ある実施態様では、インキュベーションは周囲温度でなされる。ある実施態様では、温度は約20から27℃である。他の実施態様では、インキュベーションは約20℃未満の温度、好ましくは約0から20℃、より好ましくは約0から10℃でなされる。
ある実施態様では、方法は、亜鉛塩とバッファーから本質的になる溶液に抗体又はその断片を接触させ;抗体又はその断片の結晶及び/又はタンパク質ゲルが生成されるまで抗体又はその断片と溶液をインキュベートすることを含む。
【0005】
抗体又はその断片の結晶を製造するための方法は、亜鉛塩を含み他の沈殿剤を欠く溶液に抗体又はその断片を接触させ;抗体又はその断片の結晶が生成されるまで抗体又はその断片と溶液をインキュベートすることを含む。
ある実施態様では、二価塩は約10から80mM、より好ましくは25mMから60mMの塩化亜鉛(ZnCl)である。他の実施態様では、バッファーは約1から20mMのNaOAc、より好ましくは約25〜75mMの酢酸ナトリウム(NaOAc)である。ある実施態様では、溶液は約10mMを超えるZnClと約5mMを超えるNaOAcを含有する。例えば、溶液は約100mMのZnClと約mMのNaOAcを含有する。他の実施態様では、バッファーは約4から約9、より好ましくは約4.7から5.7のpHを有している。
【0006】
また提供されるのはここに記載された方法によって製造された抗体又はその断片の結晶である。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体でありうる。
本発明はまた抗VEGF抗体、抗CD20、抗CD11a、抗CD40、抗Apo-2、抗HER2、抗IgE抗体、及びその断片からなる群から選択される抗体の結晶又はタンパク質ゲルを含む組成物を提供する。好ましくは、抗体は完全長グリコシル化抗体である。
また提供されるのは抗VEGF、抗Apo-2、抗CD20、抗CD11a、抗CD40、抗HER2、抗Apo-2、抗IgE抗体、及びその断片からなる群から選択される抗体の結晶又はタンパク質ゲルを含む製剤である。
【0007】
本発明はまた上記の組成物又は製剤の一つの有効量を哺乳動物に投与することを含む哺乳動物における症状を治療するための方法を提供する。その症状には、VEGF、CD20、CD11a、CD40、Apo-2、及びHER2に関連するものが含まれる。
上記の組成物又は製剤の少なくとも一と容器を含む製造品がまた提供される。
本発明は、抗体又はその断片を濃縮し、精製し、保存し及び送達するためにとりわけ有用な方法、組成物及び製剤を提供する。
【0008】
(好適な実施態様の詳細な説明)
(詳細な説明)
定義
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、最も広い意味で互換性をもって使用され、モノクローナル抗体(完全長及び無傷のモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、多エピトープ特異性を有する抗体組成物、親和性成熟抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化、多価抗体、及び多特異性抗体(例えば、所望の生物学的活性を示す限りにおいて二重特異性抗体)並びに所望の生物学的活性を示す限りにおいて抗原結合断片(例えばFab、F(ab')2、scFv及びFv)を含む。
完全長抗体は、ジスルフィド結合によって相互連結された4つのポリペプチド鎖、つまり2つの同一の重鎖(H)及び2つの同一の軽鎖(L)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(V)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、つまりCH1、CH2及びCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(V)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCから構成される。V及びVドメインは、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる更に保存的な領域で分散された相補性決定領域(CDR)つまり超可変ループ(HVL)に更に細分される。各V及びVは、典型的には3つのCDRと4つのFRから構成され、次の順番でアミノ末端からカルボキシ末端まで並ぶ:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0009】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)には異なったクラスをあてがうことができる。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5つの主要なクラスがあり、例えばIgG-1、IgG-2、IgA-1、IgA-2等々のようなサブクラス(アイソタイプ)に更に分けることができる。免疫グロブリンの異なったクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンのサブユニット構造と三次元立体配置はよく知られており、一般に例えばAbbas等, Cellular and MoI. Immunology, 4版 (2000)に記載されている。抗体は、抗体と一又は複数の他のタンパク質又はペプチドとの共有結合又は非共有結合によって形成されたより大きな融合分子の一部でありうる。
任意の脊椎動物種由来の抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づきカッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる二つの明確に異なったタイプの一つにあてがうことができる。
【0010】
「完全長抗体」という用語は、以下に定義する抗体断片とは異なり、少なくとも2つの重鎖と2つの軽鎖を含む実質的に無傷の形態の抗体を意味する。この用語は特にFc領域を含む重鎖を持つ抗体を意味する。完全長抗体は天然配列抗体又は組換え抗体でありうる。完全長抗体はヒト、ヒト化及び/又は親和性成熟でありうる。
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。すなわち、集団を構成する個々の抗体が、抗体の産生の間に生じうる変異体を除いて本質的に同一である。
モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体、あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同性があり、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体、あるいは他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同である「キメラ」抗体、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りこのような抗体の断片を特に含む(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984))。
【0011】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型とは、非ヒト免疫グロブリンから得られた最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントのCDR又は高頻度可変ループ(HVL)の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の抗体特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDR又はHVLの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、抗原結合親和性を改善するために、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体親和性又は機能活性を改善するためになされうる。一般に、ヒト化抗体は、全て又は実質的に全ての高頻度可変領域が非ヒト免疫グロブリンのものに一致し、全て又は実質的に全てのFRがヒト免疫グロブリン配列である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体はまたここに記載された抗原結合断片としても産生されうる。ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。更なる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Riechmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。また次の概説論文とそこで引用された文献を参照のこと:Vaswani及びHamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle及びGross, Curr. Op. Biotech 5:428-433 (1994)。
【0012】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生されるものに対応するアミノ酸配列を有するもの、及び/又はヒト抗体を作製するための技術の任意のものを使用して作製されたものである。ヒト抗体のこの定義は非ヒト抗原結合残基を有するヒト化抗体を特に排除する。
「親和性成熟」抗体は一又は複数の高頻度可変領域に、改変を持たない親抗体と比較して抗原に対する抗体の親和性に改善を生じる一又は複数の改変を有するものである。好ましい親和性成熟抗体は標的抗原に対してナノモル濃度又はピコモル濃度の親和性を有する。親和性成熟抗体は当該分野で既知の手順によって産生される。Marks等, Bio/Technology 10:779-783 (1992)はVH及びVLドメインシャッフリングによる親和性成熟を記述している。CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム変異誘発は、Barbas等, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 91:3809-3813 (1994);Scier等, Gene 169:147-155 (1995);Yelton等, J. Immunol. 155:1994-2004 (1995);Jackson等, J. Immunol. 154(7):3310-9 (1995);及びHawkins等, J. MoI Biol. 226:889-896 (1992)によって記載されている。
【0013】
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部のみを含み、一般には無傷の抗体の抗原結合部位を含み、よって抗原に結合する能力を保持している。本発明に包含される抗体断片の例には、(i)重鎖と軽鎖の間に一つの鎖間ジスルフィド結合を有するVL、CL、VH及びCH1ドメインを有するFab断片;(ii)CH1ドメインのC末端に一又は複数のシステイン残基を有するFab断片であるFab'断片;(iii)VH及びCH1ドメインを有するFd断片;(iv)VH及びCH1ドメイン及びCH1ドメインのC末端に一又は複数のシステイン残基を有するFd'断片;(v)抗体の単一アームのVL及びVHドメインを有するFv断片;(vi)VHドメインからなるdAb断片;(vii)少なくともVL、VH、CL、CH1ドメインを含みヒンジ領域を欠く無ヒンジ抗体;(viii)F(ab')断片、つまりヒンジ領域のジスルフィド架橋によって結合した2つのFab'断片を含む二価断片;(ix)一本鎖抗体分子(例えば一本鎖Fv;scFv);(x)同じポリペプチド鎖中で軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む2つの抗原結合部位を持つ「ダイアボディ」;(xi)相補的軽鎖ポリペプチドと一緒になって一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む「直鎖状抗体」が含まれる。
【0014】
ここで使用される場合、「結晶」は、原子が、三次元で規則的に繰り返すパターンに配置され、典型的には格子を形成する物質の固体状態の一形態を意味する。
ここで使用される場合、「ゲル」は、液体コロイド溶液よりもより固体である粘弾性溶液である抗体又は抗体断片の濃縮形態を意味する。場合によっては、ゲルは結晶を含みうる。本発明の方法を使用して生成されるゲルは一般には高濃度の抗体又はその断片を含み、場合によっては結晶を含みうる。
ここで使用される場合の「沈殿剤」は化合物又は分子を不溶性にさせる薬剤を意味する。ある場合には、その化合物又は分子は結晶を形成する。化合物又は分子の結晶を生成するために使用することができる沈殿剤は典型的には塩、高分子又は有機分子である。有機沈殿剤には、イソプロパノール、エタノール、ヘキサンジオール、及び2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)が含まれる。高分子沈殿剤には、ポリエチレングリコール及びポリアミン、例えばジェファミン(登録商標)が含まれる。使用される塩には、典型的には0.2M以上の濃度での、硫酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム及びギ酸マグネシウムが含まれる。
【0015】
「疾患」又は「症状」は、抗体での治療から恩恵を受ける任意の症状である。これには、問題の疾患に対して哺乳動物に素因を与える病理症状を含む慢性及び急性疾患又は疾病が含まれる。ここで治療される疾患の非限定的な例には、悪性及び良性の腫瘍、非白血病及びリンパ性悪性腫瘍;神経、膠細胞、星状細胞、視床下部及び他の腺性、マクロファージ、上皮、間質及び胞胚腔疾患;及び炎症、血管形成及び免疫疾患が含まれる。
ここで使用される場合、「治療」とは治療されている個体又は細胞の天然の過程を改変する試みでの臨床的介入を意味する。治療の望ましい効果は徴候の軽減、疾病のあらゆる直接的又は間接的病理的結果の減少、転移の防止、疾病進行速度の減少、疾病状態の寛解又は緩和、及び緩解又は改善された予後が含まれる。
【0016】
(発明の実施形態)
抗体及び抗体断片は、特に治療的に、非常に有用になってきている。多くの抗体が治療用途について現在研究されている。治療的使用にはしばしば抗体又は抗体断片の大規模な産生が必要となる。本発明の一側面は、抗体又はその断片、特に大規模で製造されるものを濃縮し、精製し、保存する方法を含む。本発明の方法は結晶、ゲル、及び結晶を伴うゲルを提供する。抗体又はその断片の結晶及び/又はゲルは、例えば抗体又は抗体断片の貯蔵、濃縮、精製、及び移送のため、X線回折による3次元構造の特徴付けのために有用である。
多くのタンパク質は、そのサイズとその三次元構造のために結晶化させることが困難な場合がある。典型的には、結晶化をもたらす条件の組み合わせを特定するために沈殿剤、バッファー及びpHの幾つかの組み合わせをスクリーニングしなければならない。抗体及び抗体断片は、そのサイズとヒンジ領域が分子をより可撓性にし剛性を少なくしているという点から、特に結晶化が困難であった。また、抗体又はその断片は抗体の供給源によってはグリコシル化されている場合がある。
【0017】
ある実施態様では、方法は、抗体又はその断片を、二価カチオンの塩を含み、それから本質的になり、又はそれからなる溶液に接触させることを含む。ある実施態様では、二価のカチオン塩の存在は、例えば約1から500mMのように、低濃度である。溶液はまた酢酸ナトリウムのようなバッファーを含み、それから本質的になり、又はそれからなるものとできる。ある実施態様では、バッファーは、例えば約1から100mMのように、低イオン強度を有している。二価カチオンの例には、限定するものではないが、亜鉛、マグネシウム、及びカルシウムが含まれる。本発明を決して限定することを意味するものではないが、二価カチオンの塩は沈殿剤として作用し、タンパク質結晶の生成に寄与する。ある場合には、溶液は、例えば有機又は高分子沈殿剤のような他の沈殿剤を含まない。
【0018】
ある実施態様では、方法は、抗体又はその断片を、亜鉛塩を含み、それから本質的になり、又はそれからなる溶液に接触させることを含む。ある実施態様では、亜鉛塩の存在は、例えば約1から120mM、好ましくは10から80mM、より好ましくは25から60mMと、低濃度である。ある実施態様では、亜鉛塩はZnClである。溶液は酢酸ナトリウムのようなバッファーを含み、それから本質的になり、又はそれからなるものとできる。ある実施態様では、バッファーは、例えば約1から100mM、好ましくは1から20mM、より好ましくは25mMから75mMと、低イオン強度を有している。ある実施態様では、溶液は約100mMのZnClと約10mMのNaOAcを含有する。ある場合には、溶液は、例えば有機又は高分子沈殿剤のような他の沈殿剤を含まない。該方法は結晶及び/又はタンパク質ゲルの生成をもたらす。場合によっては、タンパク質ゲルは結晶を含有しうる。
ある実施態様では、溶液は約10mMを超えるZnClと約5mMを超えるNaOAcを含有する。他の実施態様では、溶液は100mMのZnClと10mMのNaOAcを含有する。
【0019】
ある実施態様では、方法は、抗体又はその断片を、マグネシウム塩を含み、それから本質的になり、又はそれからなる溶液に接触させることを含む。ある実施態様では、塩化マグネシウム(MgCl)は、例えば約1から500mM、より好ましくは約200から500mM、最も好ましくは約1から100mMと、低濃度で使用される。溶液は酢酸ナトリウム又はトリスのようなバッファーを含み、それから本質的になり、又はそれからなるものとできる。ある実施態様では、バッファーは、例えば約1から100mMのように、低イオン強度を有している。ある場合には、溶液は、例えば有機又は高分子沈殿剤のような他の沈殿剤を含まない。ある場合には、溶液のpHは、例えば約7.5から約9のように高い。該方法は結晶及び/又はタンパク質ゲルの生成をもたらす。場合によっては、タンパク質ゲルは結晶を含有しうる。
【0020】
ある実施態様では、方法は、抗体又はその断片を、亜鉛塩を含み、それから本質的になり、又はそれからなる溶液に接触させてタンパク質ゲルを生成させることを含む。場合によっては、タンパク質ゲルは結晶を含有しうる。ある実施態様では、亜鉛塩は、例えば約1から120mMのような低濃度である。溶液はまた酢酸ナトリウムのようなバッファーを含み、それから本質的になり、又はそれからなるものとできる。ある場合には、溶液は、例えば有機又は高分子沈殿剤のような他の沈殿剤を含まない。
本発明の方法は抗体又は抗体断片を結晶化させ、濃縮し又は精製するための低コストの方法を提供する。ある場合には、本発明の方法は、製品において望まれないかもしれない高分子又は有機沈殿剤のような他の沈殿剤の使用を含まない方法を提供する。抗体又は抗体断片の結晶及び/又はタンパク質ゲルは、担体又は保存及び/又は投与のための他の成分と組み合わせることができる。
【0021】
抗体又はその断片
抗体又は抗体断片は本発明の方法において使用される。限定するものではないが、抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、親和性成熟抗体、多エピトープ特異性を持つ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体及び多重特異性抗体が含まれる。
ある場合には、抗体は完全長抗体として産生される。完全長抗体は典型的には2つの重鎖と2つの軽鎖を含む。5つの主要なクラスの免疫グロブリンがあり、これらにはIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが含まれる。これらの幾つかは更にIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM1、IgM2、IgA1又はIgA2のようなサブクラスに分けられる。これらのクラスの一又は複数の抗体を本発明の方法で使用することができる。ある実施態様では、抗体はIgG抗体である。
抗体断片もまた本発明の方法で使用することができる。抗体断片は抗原結合断片を含み、Fab、Fab'、Fab、Fab'、Fd、一本鎖Fv、scFv、dAb、無ヒンジ抗体、ダイアボディ、及び直鎖状抗体を含む。
抗体又はその断片の供給源に応じて、抗体はグリコシル化されていてもよい。典型的には、哺乳動物又は昆虫細胞から得られ又はそこで産生された組換え抗体はグリコシル化している。原核生物細胞から得られ又はそこで産生された抗体又はその断片はグリコシル化を欠くか又はグリコシル化され得ない。抗体のグリコシル化はまたグリコシル化部位配列の変異によって修飾又は削除されうる。
【0022】
抗体又は抗体断片は抗原に対して特異的である。本発明の方法に有用な抗体には、レニン;ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン、リポタンパク質;α-1-抗トリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;VIIIC因子、IX因子、組織因子(TP)、及びフォン・ヴィレブランド因子等の凝固因子;プロテインC等の抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;ウロキナーゼ又はヒト尿又は組織型プラスミノーゲン活性化剤(t-PA)等のプラスミノーゲン活性化剤;ボンベシン;トロンビン;造血性成長因子;腫瘍壊死因子-α及び-β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン;ミューラー阻害物質;リラキシンA-鎖;リラキシンB-鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;β-ラクタマーゼ等の微生物タンパク質;DNアーゼ;例えばCTLA-4のような細胞障害性Tリンパ球関連抗原(CTLA);インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモン又は成長因子のレセプター;プロテインA又はD;リウマチ因子;脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)、又はNGF-β等の神経成長因子等の神経成長因子;血小板誘導成長因子(PDGF);aFGF及びbFGF等の繊維芽成長因子;上皮成長因子(EGF);TGF-α及びTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5を含む、TGF-βのようなトランスフォーミング成長因子(TGF);インシュリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インシュリン様成長因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、CD19、CD20及びCD40等のCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1からIL-10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞レセプター;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス性抗原、例えばAIDSエンベロープの一部;輸送タンパク質;ホーミングレセプター;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン、例えばCD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4及びVCAM;腫瘍関連抗原、例えばHER2、HER3又はHER4レセプター;及び上に列挙した任意のポリペプチドの断片のような分子を含む抗原に対する抗体が含まれる。
【0023】
本発明によって包含される抗体に対する好ましい抗原には、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD40、CD34及びCD46等のCDタンパク質;EGFレセプター、HER2、HER3又はHER4レセプターのようなErbBレセプターファミリーのメンバー;LFA-1、Mac1、p150.95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、α4/β7インテグリン、及びαv/β3インテグリンで、そのα又はβサブユニット(例えば抗CD11a、抗CD18又は抗CD11b抗体)を含むもの;VEGFのような成長因子;組織因子(TF);TGF-β、αインターフェロン(α-IFN);IL-8のようなインターロイキン;血液型抗原;Apo-2デスレセプター;flk2/flt3レセプター;肥満(OB)レセプター;mplレセプター;CTLA-4;プロテインC等々が含まれる。ここで最も好ましい標的はVEGF、TF、CD19、CD20、CD40、TGF-β、CD11a、CD18、Apo-2デスレセプター、及びC24である。
ある実施態様では、抗体又はその断片は抗VEGF、抗Apo-2、抗IgE、抗HER2、抗CD11a、又は抗CD20を含む。
抗体又は抗体断片は、天然源から得、合成的に又は組換え法によって調製される。抗体を産生する方法は当業者に知られ、ファージディスプレイにより抗体又は抗体断片を産生することを含む。大規模生産方法は既知であり、10リットル以上の量での抗体又はその断片の産生を含む。
【0024】
抗体又は抗体断片は当業者に知られた方法によって精製される。ある場合には、産生される抗体又は断片を精製し、更なるアッセイ及び使用のために実質的に均一な調製物を得る。当該分野で知られている標準的なタンパク質精製方法を用いることができる。次の手順は好適な精製手順の例である:免疫親和性又はイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ又はDEAEのような陽イオン交換樹脂でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、及び例えばセファデックスG-75を使用するゲル濾過。例えば、精製の第一工程として、細胞培養から誘導された抗体又はその断片は、プロテインAへの抗体の特異的結合を可能にするためにプロテインA固定固相上へ適用される。ついで固相は、固相に非特異的に結合した汚染物を除去するために洗浄される。最後に、抗体は溶出によって固相から回収される。
本発明のある実施態様では、本発明の方法において使用される溶液中の抗体の濃度は少なくとも1g/Lである。溶液中の抗体の濃度は約1から約100g/Lの範囲である。本発明の更なる実施態様では、抗体の濃度は約20から約100g/Lの範囲である。本発明の更に他の実施態様では、抗体の濃度は約40から約90g/Lの範囲である。
【0025】
本発明の方法は溶液から抗体又は抗体断片を結晶化又は濃縮する方法を含む。結晶又はタンパク質ゲルは例えば抗体又はその断片の構造の特徴付け、その貯蔵、濃縮、精製及び移送のために有用である。ある実施態様では、濃縮される抗体の濃度は少なくとも1gm/L、より好ましくは少なくとも40から90gm/Lである。本発明の方法は抗体又はその断片の結晶を製造するための低コストの方法を提供する。本発明の一側面では、方法は、抗体又はその断片を、二価カチオン塩を含み、それから本質的になり、又はそれからなる溶液に接触させ、抗体又はその断片の結晶が生成されるまで抗体又はその断片を溶液と共にインキュベートすることを含む。
ある実施態様では、方法は、亜鉛塩を約1から約120mM、より好ましくは約10から80mM、最も好ましくは約25から60mMの亜鉛塩を含み、それから本質的になり、又はそれからなる溶液に抗体又はその断片を接触させることを含む。亜鉛塩には、塩化亜鉛、リン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、酢酸亜鉛、又は硫酸亜鉛が含まれる。ある実施態様では、溶液は、約1から約100mMのZnClを含み、それから本質的になり、又はそれからなる。特定の実施態様では、溶液は10mMを超えるZnClと5mMを超えるNaOAc、好ましくは約100mMのZnClと約10mMのNaOAcを含む。ある実施態様では、該方法は、場合によっては結晶を含んでいてもよいタンパク質ゲルを提供する。
【0026】
ある実施態様では、該方法は、抗VEGF抗体又はその断片を、約1から約500mM、より好ましくは約200から500mM、最も好ましくは約10から100mMのマグネシウム塩を含有し、それから本質的になり、又はそれからなる溶液に接触させることを含む。マグネシウム塩は可溶性であるものであり溶媒中で解離できる。マグネシウム塩には、塩化マグネシウム、リン酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、及び硫酸マグネシウムが含まれる。ある実施態様では、溶液は約1から約100mMの塩化マグネシウムを含有し、それから本質的になり、又はそれからなる。ある実施態様では、溶液は、例えば約7.5から約9と、高いpHを有する。
ある実施態様では、該方法は、抗VEGF抗体又はその断片を、約1から約500mM、より好ましくは約1から200mM、最も好ましくは約10から100mMのカルシウム塩を含有し、それから本質的になり、又はそれからなる溶液に接触させることを含む。カルシウム塩は可溶性であるものであり溶媒中で解離できる。カルシウム塩には、塩化カルシウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、酢酸カルシウム、及び硫酸カルシウムが含まれる。ある実施態様では、溶液は約1から約100mMの塩化カルシウムを含有し、それから本質的になり、又はそれからなる。ある実施態様では、溶液は、例えば約7.5から約9と、高いpHを有する。
【0027】
ある実施態様では、該方法は、抗体又はその断片を、亜鉛塩を含有し、それから本質的になるが、他の沈殿剤を欠く溶液に接触させることを含む。ある場合には、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、イソ-プロパノールを含む有機分子又はポリエチレングリコール又はポリアミンを含む高分子化合物のような他の沈殿剤の使用を最小にすることが望ましい場合がある。
これらの実施態様は、他の沈殿剤が使用されないので、従来の結晶化方法よりも利点がある。如何なる有機又は高分子沈殿剤も使用しないことの一つの可能な利点は、例えば大規模な操作において経済的であること、例えば有機沈殿剤のコストであり、それを使用しない方法はより経済効率がよい。如何なる有機沈殿剤も使用しないことの他の可能な利点は、最終の結晶中に如何なる有機沈殿剤の残渣も存在していないことである。これは、哺乳動物への投与のための溶液を製剤化するために結晶化した抗体を使用することが望ましいため、有利である。使用される有機沈殿剤の幾つかは、例えばヒトのような哺乳動物への投与には望ましくないであろう。
【0028】
本発明の方法はまた二価カチオンの塩とバッファーを含有し、それから本質的になり、又はそれからなる溶液を含む。本発明において使用することができるバッファーは当業者によって一般的に使用されている任意のものを含む。限定するものではないが、その例には、酢酸、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ホウ酸、クエン酸、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタン-スルホン酸)、ビシン、MES、カコジル酸ナトリウム、イミダゾール、塩化アンモニウム、ギ酸マグネシウム、乳酸、リン酸、クエン酸カリウム、メタリン酸カリウム、一塩基リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、二塩基リン酸ナトリウム、一塩基リン酸ナトリウム、及びトリス(トリスヒドロキシメチルアミノ-エタン)が含まれる。本発明のある実施態様では、酢酸ナトリウム(NAOAc)がバッファーとして使用される。
ある実施態様では、溶液中のバッファーの濃度は約1から約100mMの範囲とできる。本発明の他の実施態様では、溶液中のバッファーの濃度は約5から約100mM、より好ましくは1から20mM、最も好ましくは25から75mMの範囲とできる。
ある実施態様では、バッファーは、二価カチオンの塩及び固体としての抗体又はその断片と組み合わされる。本発明の他の実施態様では、バッファーは二価カチオン及び溶液としての抗体と組み合わされる。本発明の更なる実施態様では、固形のバッファーと固形の二価塩を溶液中に入れ、ついで、溶液か固形形態の抗体と組み合わせることができる。
【0029】
典型的には、溶液のpHは、使用される特定のバッファーに少なくとも部分的に依存する。一実施態様では、溶液の所望されるpHは二価カチオンの塩と異なったpHでの塩の溶解度に少なくとも部分的に依存する。ある実施態様では、バッファーのpHは約4.5から約9の範囲とできる。二価カチオンがZnである実施態様では、溶液のpHは約4と6の間である。二価カチオンがZnである本発明の他の実施態様では、溶液中の酢酸ナトリウムの濃度は約1から100mMの間であり、溶液のpHは約4.7から5.7の間である。他の実施態様では、二価カチオンはMgであり、バッファーはトリスであり、溶液のpHは約7.5から9である。
一実施態様では、溶液のpH、使用されるバッファー及び使用される二価塩が、結晶化される抗体に少なくとも部分的に依存しうる。本発明のある実施態様では、抗体は、使用されるバッファーを少なくとも部分的に支配し、同様に使用される二価塩を少なくとも部分的に支配する(例えば溶解度問題のため)特定のpH範囲内で安定であるので、これらの因子間に相互作用がありうる。当業者は、溶解度曲線を作成し相変化を生じる濃度範囲又はバッファー、二価塩及びpHを特定することによってバッファー濃度及び二価カチオンの塩の濃度を決定することができる。
【0030】
ある実施態様では、抗体又はその断片は、少なくとも25mMの亜鉛塩と少なくとも50mMのバッファー、例えば酢酸ナトリウムで結晶化される。他の実施態様では、約10から80mMの亜鉛塩と約25から75mMの酢酸ナトリウムのようなバッファーの組み合わせが好ましい。
本発明の方法は、溶液と抗体又はその断片を接触させることを含む。ある実施態様では、抗体又はその断片を、蒸気拡散法で溶液に接触させる。蒸気拡散では、小体積(つまり数ミリメートル)の抗体、又はその断片、溶液が溶液と混合される。この混合物は少量の溶液を含むウェル上に懸濁される。他の実施態様では、接触方法は透析を含む。透析は抗体又はその断片を保持するがバッファーや沈殿剤のような小分子が拡散して出入りすることを許容するサイズ排除半透膜を含む。沈殿剤はゆっくりと膜を通過して拡散し、抗体又はその断片の溶解度を低減させる。他の実施態様はバッチタイプの方法である。バッチ法では、溶液は抗体又はその断片の溶液に加えられる。
本発明の方法は、結晶又はタンパク質ゲルが生成されるまで抗体又はその断片を溶液と共にインキュベートすることを含む。ある実施態様では、溶液はインキュベーションの間一日に一回又は二回穏やかに混合されうる。他の実施態様では、溶液は連続的に混合されうる。大きい結晶が望まれる場合は、混合は最小になされなければならない。
【0031】
インキュベーションは約0℃から約27℃、より好ましくは約2から25℃の温度範囲で実施することができる。ある実施態様では、温度は周囲温度(例えば約25℃)に維持される。他の場合では、インキュベーションは約2から8℃で実施される。
溶液及び抗体又はその断片は、結晶又はタンパク質ゲルが生成されるまでインキュベートがなされる。典型的には、インキュベーションの時間は約1時間から30日、より好ましくは1から5日である。
結晶は遊離の固形物又はゲルとして生成されうる。本発明のある実施態様では、抗体又はその断片の結晶はゲルの一部である。一般に、本発明の方法で生成されるゲルは高濃度の抗体又は抗体断片を有する。一実施態様では、本発明の方法を使用して生成されるゲルは約200から約250mg抗体/mLの濃度を有している。
【0032】
組成物又は製剤
本発明の方法は抗体又はその断片の結晶又はタンパク質ゲルの生成を含む。結晶は、典型的には格子と呼ばれる規則的な3次元構造を有している。これは、規則的な分子格子を持たず、不均一な又は分子構造を有さない非結晶固形物である非晶質固体とは対照的である。ゲルは、柔軟であり得、粘性があり又は硬く脆い濃縮タンパク質溶液である。
ここに記載された方法において生成される結晶は、針状、錐状形状;球状及び花状を含む様々な形状を有しうる。結晶のサイズはmmからμmサイズのオーダーであり得る。ある実施態様では、結晶は少なくとも約10μmのサイズであり、よってそれらは肉眼で見える。治療のための投与では、結晶のサイズは投与経路に応じて変化し、例えば皮下投与では、結晶のサイズは静脈内投与より大きくできる。
ある場合では、結晶が抗体又はその断片の結晶であることを証明することが望ましい。抗体又はその断片の結晶は複屈折光の下で顕微鏡により分析できる。結晶は複屈折光を通過させる一方、非結晶性物質は通過させない。また他の方法では、結晶を分離し、洗浄し、再溶解させ、SDS-PAGEゲル上を流し、場合によっては抗Fcレセプター抗体で染色することができる。場合によっては、再溶解された抗体又はその断片はまた標準的な圧政を使用してその特異的抗原への結合性を試験することもできる。再溶解された抗体又はその断片はまた質量スペクトル法によっても分析することができる。
【0033】
ある場合では、結晶は互いに架橋させることができる。そのような架橋は結晶の安定性を向上させうる。結晶を架橋させるための方法は当業者に知られており、例えば米国特許第5849296号に記載されている。結晶は例えばグルタルアルデヒドのような二官能性試薬を使用して架橋させることができる。架橋されれば、結晶は凍結乾燥させ、例えば診断又は治療用途における使用のために保存することができる。
ある場合では、結晶又はタンパク質ゲルを乾燥させることが望ましい場合がある。結晶又はタンパク質ゲルはN及び/又は不活性ガス、真空オーブン乾燥、凍結乾燥、蒸発、トレイ乾燥、流動床乾燥、スプレー乾燥、真空乾燥又はローラー乾燥で乾燥させることができる。
結晶は溶液中に維持することができ、又は結晶は洗浄し、他の担体及び/又は成分と組み合わせて結晶の組成物及び/又は製剤を生成することができる。組成物及び製剤は例えば治療及び診断用途のために使用することができる。
【0034】
本発明の他の側面は抗体又はその断片の結晶又はタンパク質ゲルの組成物及び/又は製剤を含む。組成物は抗体又はその断片の結晶又はタンパク質ゲルと担体を含有する。製剤は抗体又はその断片の結晶又はタンパク質ゲルと少なくとも一種の成分を含有する。ある実施態様では、抗体は、抗VEGF、抗Apo-2、抗CD20、抗CD11a、抗HER2、抗IgE及びその断片からなる群から選択される。
抗体又は抗原結合断片の結晶又はタンパク質ゲルの製剤又は組成物は、所望の純度を有する抗体を、生理学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤と混合することによって、水溶液、凍結又は他の乾燥製剤の形で、貯蔵のために調製される(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16版, 1980, Osol, A編 (1980))。許容できる担体、賦形剤又は安定剤は、用いる投与量及び濃度ではレシピエントに対して無毒性であり、リン酸、クエン酸及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存料(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンズアルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン類、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(残基数10個未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリン等の単糖類、二糖類及び他の炭水化物;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖類;及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0035】
ある実施態様では、結晶又はタンパク質ゲルは重合体担体と組み合わせて安定性及び持続性放出を付与することができる。そのような重合体には生体適合性及び生物分解性高分子が含まれる。重合体担体は単一の重合体タイプであってもよいし又は重合体混合物タイプから構成されてもよい。重合体担体の非限定的な例には例えばアクリル酸重合体、シアノアクリレート重合体、アミノ酸重合体、無水物重合体、デプシペプチド重合体、ポリ(エステル)、例えば乳酸重合体又はPLA、乳酸グリコール酸共重合体又はPLGA、β-ヒドロキシブチラート重合体、カプロラクトン重合体及びジオキサノン重合体;ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ[(オルガノ)ホスハゼン]、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸・アルキルビニルエステル共重合体、プルロニックポリオール、アルブミン、天然及び合成ポリペプチド、アルギナート、セルロース及びセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリコサミノグリカン、硫酸化多糖類、変性デンプン、例えばアミロースデンプン、アミロペクチンデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、メタクリレートデンプン、及び他のデンプン、及びタンパク質結晶をカプセル化する任意の一般的物質が含まれる。
【0036】
抗体又はその断片の結晶の製剤は少なくとも一つの成分又は賦形剤を含む。成分又は賦形剤は当業者に知られており、酸性化剤、エアロゾル噴霧剤、アルコール変性剤、アルカリ化剤、アンチケーキング剤、消泡剤、微生物保存料、抗-抗酸化剤、緩衝剤、滑剤、色素、乾燥剤、乳化剤、濾過助剤、香辛料及び香料、保湿剤、軟膏、可塑剤、溶剤(例えば油又は有機)、吸着剤、二酸化炭素吸着剤、硬化剤、座薬基剤、懸濁又は粘性増加剤、甘味料、錠剤バインダー、錠剤又はカプセル希釈剤、錠剤崩壊剤、錠剤又はカプセル潤滑剤、等張化剤、香味又は甘味ビヒクル、油脂性ビヒクル、固形担体ビヒクル、撥水剤、及び湿潤又は可溶化剤を含む。
ある実施態様では、成分は貯蔵安定性を向上させる。他の実施態様では、成分又は賦形剤は好ましくはアルブミン、スクロース、トレハロース、ラクチトール、ゼラチン、及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンからなる群から選択される。
ここに記載される組成物及び製材はまた結晶性抗体又はその断片の有効量を含有する。投薬量は標準的な方法を使用して容易に決定することができる。抗体は適切には一回で又は一連の治療にわたって患者に投与される。
【0037】
疾患のタイプや重篤さに応じて、約1μg/kgから約50mg/kg(例えば、0.1−20mg/kg)の抗体が、例えば、1回又はそれ以上の別々の投与あるいは連続注入の何れであろうと、患者に投与するための最初の候補用量である。典型的な1日又は週毎の用量は、症状に応じて、約1μg/kgから約20mg/kg又はそれ以上であり、治療は、疾患の徴候の所望の抑制が現れるまで繰り返される。しかしながら、他の用量計画が有用である場合もある。
ある実施態様では、組成物又は製剤は、再溶解されたとき少なくとも約1g/Lかそれ以上の抗体又はその断片の濃度を含む。他の実施態様では、抗体濃度は再溶解されたとき少なくとも約1g/Lから約100g/Lである。
【0038】
抗体又はその抗体断片の結晶及び/又はタンパク質ゲル、又はそのような結晶又はタンパク質ゲルを含有する製剤又は組成物は、単独で、薬学的、パーソナルケア又は動物用調製物の一部として、又は予防用調製物の一部として、アジュバントを伴うか伴わないで投与することができる。例えば、それらは経口、肺、鼻、耳、肛門、皮膚、眼内、静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、粘膜、舌下腺、皮下、経皮、局所又は頭蓋内経路によって、又は口腔中に投与することができる。薬学的、パーソナルケア又は動物用用途の何れにおいても、抗体又はその断片の結晶、又はその結晶製剤又は組成物は任意の上皮表面に局所的に投与されうる。そのような上皮表面には、口、眼、耳、肛門及び鼻の表面が含まれ、抗体又はその断片の結晶又はその製剤又は組成物の適用によって治療され、保護され、修復され、又は解毒されうる。
【0039】
本発明の他の側面は製造物品を含む。製造物品は抗体又はその断片の結晶又はタンパク質ゲルを含む組成物又は製剤と容器を含む。抗体又はその断片は好ましくは抗VEGF、抗CD20、抗Apo-2、抗CD11a、抗HER2、抗IgE又はその断片である。場合によっては、製造物品は治療的使用のためのヒトへの投与のための指示書を含んでいてもよい。
製造物品はまた抗体又はその断片の結晶又はタンパク質ゲルの組成物又は製剤と、抗体又はその断片のその特異的抗原への結合を検出するための様々な診断試薬を含みうる。その特異的抗原への抗体の結合を検出するための試薬には、検出可能な薬剤で標識された抗体に対する抗体が含まれる。検出可能な薬剤は蛍光部分、放射性部分、及び酵素的部分を含みうる。ある実施態様では、製造物品は抗体又はその断片の結晶又はタンパク質ゲルの組成物又は製剤と容器を含む。製造物品は組成物又は製剤をヒトに投与するための指示書を更に含みうる。他の実施態様では、製造物品はその特異的抗原への抗体又はその断片の結合を検知するための薬剤を更に含む。
【0040】
組成物又は製剤の使用
抗体又はその断片の結晶又はタンパク質ゲルを含有する本発明の組成物又は製剤は、従来の抗体調整物が使用されるあらゆる目的に対して使用することができる。例えば、組成物又は製剤は、例えば精製、濃縮、画像化、診断及び/又は治療的用途に使用することができる。ある実施態様では、タンパク質ゲル又はゲル中に存在する結晶は、更なる結晶化又は精製が起こる溶液として又は結晶の貯蔵のための溶液として、局所投与のために使用することができる。
ある実施態様では、組成物又は製剤は抗VEGF抗体又はその断片の結晶、結晶性又はタンパク質ゲルを含む。これらの組成物又は製剤はVEGF関連疾患又は症状を治療する方法及び診断方法に有用である。VEGF関連疾患又は症状及び診断アッセイは例えば国際公開第98/45331号に記載されている。抗VEGF抗体は様々な新生物及び非新生物疾患及び障害の治療に有用である。治療に適している新生物及び関連症状には、乳癌腫、肺癌腫、胃癌腫、食道癌腫、結腸直腸癌腫、肝臓癌腫、卵巣癌腫、テコーマ、男性胚腫、子宮頸部癌腫、子宮内膜癌腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、繊維肉腫、絨毛癌、頭部及び首部の癌、鼻咽腔癌腫、喉頭癌腫、肝臓芽腫、カポジ肉腫、メラノーマ、皮膚癌腫、血管腫、海面性血管腫、血管芽腫、膵臓癌腫、網膜癌腫、星状細胞腫、膠芽腫、シュワン細胞腫、乏突起膠細胞腫、髄芽腫、神経芽腫、横紋筋肉腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、尿路肉腫、甲状腺癌腫、ウィルムス腫瘍、腎細胞癌腫、前立腺癌腫、母斑症(phakomatoses)に関連した異常な血管増殖、浮腫(例えば脳腫瘍に関連したもの)、及びMeigs症候群が含まれる。
【0041】
治療に反応性である非腫瘍性症状には、関節リュウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、糖尿病及び未熟児網膜症を含む他の増殖性網膜症、水晶体後繊維増殖症、新血管新生緑内障、年齢関連性斑変性、甲状腺過形成(グレイブス病)、角膜及び他の組織の移植、慢性炎症、肺炎症、腎炎症候群、子癇前症、腹水症、心外膜液(例えば心膜炎に関連したもの)、及び胸膜滲出が含まれる。
加齢性黄斑変性(AMD)は年輩者層にとって、深刻な視覚損失に至る主要原因である。AMDの滲出形態は脈絡膜新血管新生及び網膜色素内皮細胞剥離により特徴付けられる。脈絡膜新血管新生が予後の劇的悪化に関連しているため、本発明のVEGF抗体は、重度のAMDを低減させるのに有用であることが期待される。
ある実施態様では、本発明の組成物又は製剤は抗CD11aの結晶、結晶性、又はタンパク質ゲルを含有する。これらの組成物又は製剤はCD11a関連疾患又は症状を治療する方法及び診断方法に有用である。CD11a関連疾患又は症状及び診断アッセイは米国特許第6037454号に記載されており、これは出典明示によりここに援用する。
【0042】
抗CD11a(LFA-1のαサブユニット)抗体は様々なLFA-1媒介疾患を治療するために使用することができる。リンパ球機能関連抗原1(LFA-1;CD11a/CD18)は免疫学的応答及び炎症に必須の細胞性相互作用の間、白血球付着に関与する。「LFA-1媒介疾患」という用語は、リンパ球上のLFA-1レセプターに関与する細胞接着相互作用によって引き起こされる病理的状態を意味する。そのような疾患の例には、乾癬を含む炎症性皮膚疾患などのT細胞炎症反応;炎症性腸疾患に伴う反応(クローン病及び潰瘍性大腸炎など);成人呼吸窮迫症候群;皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;湿疹及び喘息のようなアレルギー症状;T細胞及び慢性炎症反応を含む他の状態;皮膚過敏反応(ツタウルシ及びオーク過敏症を含む);アテローム製硬化症;白血球接着欠損;自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、全身エリテマトーデス(SLE)、真性糖尿病、多発性硬化症、レーノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、実験的自己免疫性脳脊髄炎、シェーグレン症候群、若年発症糖尿病、及び典型的には結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症及び脈管炎において見られるサイトカイン及びTリンパ球に媒介される遅延型過敏症に関連する免疫反応;悪性貧血;慢性閉塞性肺疾患(COPD);気管支炎;膵島炎;鼻炎;じんま疹;糸球体腎炎;白血球血管外遊出を含有する疾患;CNS炎症疾患;敗血症又は外傷に二次的な多臓器傷害症候群;自己免疫溶血性貧血;重症筋無力症(mythemia gravis);抗原抗体複合体媒介疾患;ネフローゼ症候群;悪性腫瘍(例えば、慢性リンパ球性白血病又はヘアリー細胞白血病のようなB細胞悪性腫瘍);移植片対宿主又は宿主対移植片病を含むあらゆる種類の移植;HIV及びライノウイルス伝染;肺線維症;腫瘍細胞の二次器官などへの浸潤が含まれる。
【0043】
ある実施態様では、本発明の組成物又は製剤は抗HER2の結晶、結晶性又はタンパク質ゲルを含有する。これらの組成物又は製剤はHER2関連疾患又は症状を治療するのに有用である。HER2関連疾患又は症状及び診断アッセイは米国特許第6387371号に記載されており、これを出典明示によりここに援用する。
治療的有効量の抗HER2レセプター抗体を患者に投与することにより、HER2レセプターの機能を阻害して腫瘍細胞の増殖が阻害される。トラツズマブ(Trastuzumab)(ジェネンテック社)は、HER2過剰発現/HER2遺伝子増幅癌、特に転移性乳癌(MBC)の治療のためのHER2細胞外ドメインに向けられた組換えヒト化モノクローナル抗体である。HER2遺伝子はまた唾液腺腺癌、腎臓腺癌、乳腺癌及び胃癌株価細胞においてもまた増幅されうる。該抗体は、例えばパクリタキセル又はタルセバ(登録商標)のような他の治療剤と併用して患者に投与することができる。
【0044】
ある実施態様では、本発明の組成物又は製剤は抗CD20の結晶、結晶性又はタンパク質ゲルを含有する。これらの組成物又は製剤はCD20関連疾患又は症状を治療する方法及び診断方法において有用である。CD20関連疾患又は症状及び診断アッセイは米国特許第6171586号及び同第5736137号に記載されており、これらを出典明示によりここに援用する。CD20(Bp35としても知られている)は、その非常に高いレベルでの発現のためB細胞腫瘍に関する疾患を標的とする興味ある抗原である。CD20は初期プレB細胞発達の間に発現されるヒトB細胞マーカーであり、形質細胞分化まで残る。CD20分子は細胞分裂周期の開始と分化に必要とされる活性化プロセスの一工程を調節することができる。よって、CD20表面抗原はB細胞リンパ腫を治療するために標的とできる。
C2B8は特定の免疫学的に活性なキメラ抗CD20抗体である。C2B8抗体を用いた治療介入は、哺乳動物系は末梢血B細胞を直ぐにかつ効果的に回復させるので、末梢血及びリンパ球組織中のB細胞をパージ又は枯渇させる。免疫系が末梢血B細胞欠損状態にあると、「異常な」注意(つまり患者の隔離等)の必要性は、霊長類の主要な免疫応答がT細胞媒介性であるので、必要ではない。C2B8にまた放射性標識をタグ付けして、標的腫瘍細胞を破壊することができる。
【0045】
ある実施態様では、本発明の組成物又は製剤は抗Apo-2抗体の結晶、結晶性又はタンパク質ゲルを含有する。これらの組成物又は製剤は癌のような疾患を治療するのに有用である。抗Apo-2抗体の治療的用途は米国特許第6252050号に記載されており、これを出典明示によりここに援用する。従って、本発明は、交差反応性Apo-2Lレセプター抗体のような抗体を使用して癌を治療するための方法を提供する。例えばアゴニストApo-2抗体を用いて、癌細胞中のアポトーシスを活性化又は刺激することができる。勿論、本発明の方法を、手術のような更に他の治療技術と組み合わせて用いることができると考えられる。
ある実施態様では、本発明の組成物又は製剤は抗IgE抗体の結晶、結晶性又はタンパク質ゲルを含有する。(これらの組成物又は製剤はIgE媒介疾患、例えばアレルギー性疾患及び炎症を治療するのに有用である。)抗IgE抗体の治療的用途は米国特許第6329509号及び同第5994511号に記載されており、これをここに出典明示により援用する。
【0046】
抗体及び標識抗体は、患者における癌の存在を検出し、又はそれを有すると既に診断されている患者においてそのような癌の状態をモニターするために様々な免疫画像診断又は免疫アッセイ手順において使用することができる。癌の状態をモニターするために使用される場合、定量的免疫アッセイ手順を使用しなければならない。そのようなモニタリングアッセイが周期的に実施され結果が比較されれば、患者の腫瘍量が増加したか又は減少したかに関して決定をすることができる。使用することができる一般的なアッセイ技術は直接及び間接アッセイを含む。試料が癌細胞を含む場合は、標識抗体はその細胞に結合するであろう。組織又は細胞を洗浄して未結合標識抗体を除去した後、組織試料を標識免疫複合体の存在について読み取る。間接的アッセイでは、組織又は細胞試料が未標識モノクローナル抗体と共にインキュベートされる。試料はついでモノクローナル抗体に対する標識抗体(例えば標識抗マウス抗体)で処理され、洗浄され、三元複合体の存在について読み取られる。
【0047】
上記では特定の実施態様に言及したが、本発明はそのようには限定されないことは理解されるであろう。当業者であれば、本発明の全体の概念を変えることなく開示された実施態様に様々な変更をなすことができるであろう。そのような変更は全て本発明の範囲内であることを意図する。明細書を通じて引用された全ての文献は出典明示によりここに明示的に援用される。
【0048】
実施例1
様々な濃度の塩化亜鉛及び酢酸ナトリウム中での抗VEGF抗体の溶解度
完全長及び/又はグリコシル化抗体の結晶化は困難な場合がある。サイズ、形状及び糖鎖の存在が抗体の結晶を得る困難性に寄与している。有機及び非有機沈殿剤、バッファー、及び共溶質の多くの異なった組み合わせを調査して抗体の結晶化に適した条件を見いだす必要があるであろう。様々な濃度のZnCl及NaOAcの溶液中でのVEGFの完全長グリコシル化抗体の溶解度を調査して、抗体タンパク質結晶がこれらの条件で生成されるかどうかを決定した。
【0049】
材料と方法
抗VEGF抗体の調製と精製
抗VEGF抗体(ベバシツマブ)は一般に国際公開第98/45331号及びPresta等, Can. Res., 57:4593-4599に記載されているようにして調製することができ、その開示は出典明示によりここに援用する。その方法をまた以下に概説。
A4.6.1(Kunkel等, 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:488-492)と命名されているVEGFに特異的なマウス抗体をクローニングし配列決定した。ヒト軽鎖及び重鎖可変ドメインに対する合成コンセンサス配列を用いて、プログラムInsightTM(Accelrys, Inc. San Diego CA)を使用してマウスCDRを移入できるコンピュータグラフィックモデルを作成した。マウス抗体A4.5.1のV及びV領域のコンピュータモデルもまた作成してCDRのコンフォメーションを決定した。
A4.6.1の全てのF(ab)ヒト化変異体をコードするプラスミドを、F(ab)-1のプラスミド鋳型から構築した。プラスミドpEMX1(Kunkel等, 1985 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:488-492)はコンセンサスヒトVPサブグループI及びVサブグループIIIをコードするDNA断片を含む。ヒト化抗VEGFはpEMX1の部位特異的突然変異誘発によって構築した(Kunkel等, 1985 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:488-492)。抗VEGF抗体をコードする核酸配列は国際公開第98/45331号に提供されている。
【0050】
抗VEGFを産生する方法の一例をここに記載する。安定なヒト化IgG1変異体(rhuMAb VEGF)の発現のために、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に、重鎖及び軽鎖の双方を同時発現するように設計されたジシストロニックなベクターを形質移入した(Lucas等, 1996 Nucleic Acids Res., 24:1774-1779)。プラスミドを、L. Chasin (Columbia University, New York, NY)によって開発されたCHO-K1DUX B11細胞株の企業の誘導体であるDP12細胞中にリポフェクションによって導入し、グリシン/ヒポキサンチン/チミジン(GHT)非含有培地(Chisolm等, 1996 DNA Cloning 4. Mammalian systems, pp. 1-41, Oxford: Oxford University Press)中での増殖に対して選択した。
20の未増幅クローンを無作為に選択し、96ウェルプレートに再び播種した。各コロニーの相対的特異的生産性を、ELISAを使用してモニターし、3日後に各ウェルに蓄積された完全長ヒトIgGを定量した。蛍光染料カルセインAMを、ウェル当たりの生存細胞数の代理マーカーとして使用した。これらのデータに基づき、幾つかの未増幅クローンを、増加濃度のメトトレキセートの存在下での更なる増幅のために選択した。10、50、及び100nMのメトトレキセートで生存している個々のクローンを選択し、生産性のスクリーニングのために96ウェルプレートに移した。
【0051】
高い特異的生産性を再現可能に示した一クローンをTフラスコ中で増殖させ、攪拌培養物に播種するために使用した。数回の継代後に、懸濁適合細胞を使用して、様々なホルモン及びタンパク質加水分解物を補填したGHT含有無血清培地中の産生培養物に播種した。rhuMAb(組換えヒト化モノクローナル抗体)を含む収集細胞培養液を、プロテインAセファロース(登録商標)CL-4Bを使用して精製した。この工程の後の純度は約99%であった。均一になるまでの引き続く精製を、Qセファロース(登録商標)の後にCMセファロース(登録商標)を利用するイオン交換クロマトグラフィー工程を使用して実施した。最終精製抗体の内毒素量は<0.10eu/mgであった。精製した抗体を濃縮し、限外濾過と膜分離を使用して更に精製した。精製及び/又は濃縮のための代替法はタンジェンシャルフローフィルトレーションを含む。
【0052】
結晶化条件
上に記載されたようにして調製された抗VEGFをMilli-Q(登録商標)水中に透析し、84.4g/Lに濃縮した。1MのNaOAc原液のpHを、6NのHClを用いてpH5.7に調整した。連続希釈スキームに従ってバッファーを調製し、pHを、1NのNaOHを用いてpH5.7に調整した。ZnClの濃度は5から100mMの範囲であり、NaOAc濃度は10から100mMまで変化させた。
結晶化の透析法は、タンパク質を保持するが小分子(つまりバッファー及び沈殿剤)が膜を自由に通って拡散することを可能にする半透膜サイズ排除膜を利用した。透析法はSlide-a-Lyzer(登録商標)透析カセット(ピアス、ロックフォード、イリノイ州)中に注入した抗VEGF原液1mLの使用を含み、5℃で一晩各原液中に透析した。透析バッファーは3日の期間にわたって全3回交換した。透析装置は各原液で連続的に混合し、得られた物質を3日後に回収した。物質は、透析カセット膜を注意してスライスし、滅菌スパチュラを使用してチューブ中にゲル溶液を移すことによって回収した。溶解度曲線は透析カセットから回収された物質のタンパク質濃度を測定することによって作成した。タンパク質濃度はZnClの濃度に対してプロットした。
【0053】
結果
ZnCl及びNaOAc、pH5.7における抗VEGFの溶解度曲線を図1に示す。
ZnCl濃度が増加すると、抗VEGFの溶解度の減少が観察される。NaOAcバッファー中の様々な濃度のZnClへの抗VEGFの透析の間、ゲルの生成が透析カセットに観察された。ゲルは最初は濁りから始まった。結晶を含むゲルは、室温及び4℃で2mMと低いZnClを含むバッファーから透析25分以内に生成した。ゲルを更に顕微鏡によって分析し、結晶性物質がゲル中で観察された。ゲル内の結晶は非常に小さく均一であった。顕微鏡で観察した場合、ゲル内の結晶は、十字偏光子下で見たときに複屈折を示したが、これはそれが結晶性物質であることを示している。
様々なバッファー及び共溶質と共に有機及び無機沈殿剤を含む多くの条件を、完全長グリコシル化抗体を結晶化させる能力についてこれまでに調べた。調べた条件の多くは抗体の結晶の生成には至らなかった(データは示さず)。特に治療的に使用されることになる抗体に対して、有機沈殿剤の使用を避ける結晶化法を設計することが望ましかった。
【0054】
我々の研究は、如何なる有機沈殿剤を使用しないで完全長抗体の結晶を生成するためには、NaOAcバッファー中でのZnClのような塩の形態の二価カチオンの組み合わせを利用することができることを示した。NaOAcバッファー中様々な濃度のZnCl中における抗VEGF抗体の溶解度が、抗VEGFが不溶性になり結晶生成に至るNaOAc中のZnCl濃度を決定することを可能にする。低ZnCl濃度で、遊離の結晶が観察される。ZnCl濃度を増加させると結晶を含むゲルの生成を生じる。溶解度の研究の結果、次の実施例のバッチ結晶化研究に使用される濃度範囲を決定した。
【0055】
実施例2
塩化亜鉛と酢酸ナトリウムでの抗VEGFの結晶化
実施例1に記載したように、様々な濃度のZnCl及びNaOAc溶液で透析した抗VEGF溶液はある濃度で不溶性になり結晶及び/又はゲルの生成を生じた。有機沈殿剤を伴わないZnCl及びNaOAc溶液での抗VEGFの結晶化を、透析条件とバッチ条件の双方で研究した。得られた結晶を更に特徴付けした。バッチ条件での結晶化が、これらの条件を大規模生産に規模を拡大できるので、望ましい。
【0056】
材料と方法
結晶化方法と分析
抗VEGFを、36g/Lから84.4g/Lの抗VEGFを遠心分離限外濾過により濃縮することによって調製し、Milli-Q(登録商標)水中に透析した。抗VEGFの得られた濃度は84.4g/Lであり、透析によるか又はバッチで様々な濃度のZnCl及びNaOAcと共にインキュベートした。抗VEGF濃度は280nmの吸光度を測定することによって定量した。
次のようなZnCl及びNaOAcの4通りの結晶化原液をまた作製した:
1: 10mMのZnCl、100mMのNaOAc、pH5.7
2: 50mMのZnCl、100mMのNaOAc、pH5.7
3: 50mMのZnCl、10mMのNaOAc、pH5.7
4: 50mMのZnCl、水酸化ナトリウムでpHを5.7に調整
【0057】
ZnCl及びNaOAcの濃度の組み合わせは表1aに示す。
透析法は、Slide−a−lyzer(登録商標)透析装置(ピアス、ロックフォード、イリノイ州)に配した1mLの抗VEGF原液を使用して実施し、各原液に透析した。透析装置は各原液に連続的に混合され、5日後に得られた物質を装置から掻きだし、エッペンドルフチューブに入れた。
実験はまた「バッチ」法を使用して実施した。バッチ法は、エッペンドルフチューブ中の結晶化原液のそれぞれを用いて1:1の比で0.75mLの抗VEGF原液(つまり0.75mL)を添加することによって開始した。各チューブを、穏やかな混合を行うために毎日2回傾けた。チューブを周囲温度に維持し5日間の間、2回傾けた。

【0058】
結晶の顕微鏡分析
材料を回収した後、複屈折光の有無で形態を顕微鏡分析した。複屈折光の使用は結晶性固形物と固形沈殿物を区別する。分析は、2つの偏光フィルターの間に光を通すことによって達成した。一つのフィルターは試料の下に置き、他のフィルターは試料の上に置いた。試料が結晶性ではない場合は、二つの偏光フィルターは光が観察者に達するのをブロックする。試料が結晶性である場合は、光を屈折させ、第二のフィルターを通過させ、観察者の目に入る。結晶を、スライド上に試料を置き、様々な倍率で結晶を見て顕微鏡分析した。
Izit染料での染色と粉砕/亀裂試験を含む他の方法を用いて固形物質を試験した。殆どの結晶性物質は小さすぎて粉砕対亀裂の決定ができないので、粉砕/亀裂試験は、決定的ではなかった。多くの偽陰性及び擬陽性が観察されたので、Izit染料もまた一貫性がなかった。
【0059】
結果
結果を表1b及び1cに示す。
表1bは、表1aに与えたように、様々な条件下で試料の1、2及び5日目に行った目視観察を示す。

表1cは表1aに与えられた様々な条件下で試料から回収された物質について実施した分析測定値を示す。生成された固形物は、十字偏光子下で見たときに複屈折を示したが、殆どの場合、規則的な形状、又は形態を認識するには小さすぎた。

【0060】
これらの結果は、抗VEGFは透析及びバッチ法双方でZnCl及びNaOAcの組み合わせを用いて結晶化されたことを示している。研究した全ての条件は、抗VEGFが沈殿剤溶液に接触した直後にその相を変化させた。複屈折を示す固形物は、ZnCl及びNaOAcを含むあらゆる条件で観察され、結晶がこれらの条件の各々で生成されたことを示している。ある場合には、観察された結晶は抗VEGFのゲル様相内にあった。ある場合には、結晶はゲルから分離することができなかったため、それらが抗VEGF結晶であったことがはっきりとは示せなかった。結晶は錐状又は花状の構造を形成する。この実施例では、抗VEGF結晶を、有機沈殿剤を使用しないでZnCl及びNaOAcを使用する透析法又はバッチ法の何れかによって製造することができることを示した。
【0061】
複屈折及び非複屈折光下の代表的な写真を図2a−2fに示す。図2aは5mMのZnCl及び100mMのNaOAc、pH5.7の存在下で生成した抗VEGF結晶の200×倍率の非複屈折光下の写真である。図2bは5mMのZnCl及び100mMのNaOAc、pH5.7の存在下で生成した抗VEGF結晶の200×倍率の複屈折光下の写真である。図2cは25mMのZnCl及び10mMのNaOAc、pH5.7の存在下で生成した抗VEGF結晶の200×倍率の非複屈折光下の写真である。図2dは25mMのZnCl及び10mMのNaOAc、pH5.7の存在下で生成した抗VEGF結晶の200×倍率の複屈折光下の写真である。図2eは10mMのZnCl、100mMのNaOAcの溶液、pH5.7で生成した抗VEGF結晶の200×倍率の非複屈折光下の写真である。図2fは10mMのZnCl、100mMのNaOAcの溶液、pH5.7で生成した抗VEGF結晶の200×倍率の複屈折光下の写真である。
【0062】
実施例3
様々な結晶化条件
これまでに記載したように、抗VEGF抗体はZnCl及びNaOAcの様々な濃度で結晶化した。他の結晶化条件は抗VEGFを結晶化させる能力又は抗VEGF結晶の収率に影響を及ぼす場合がある。抗VEGFの結晶化に対するpH、温度変化及び二価カチオンの同定の影響を調べた。
【0063】
材料と方法
Milli-Q(登録商標)中87g/Lの抗VEGFの原液を限外濾過と10kD再生セルロース膜での膜分離によって調製した。各試料は1:1の比のタンパク質:バッファー溶液から構成され、43.5g/Lの最終抗VEGF濃度であった。1MのZnCl、塩化カルシウム(CaCl)、MgClの原液を、Milli-Q水中に適切量の固形物を溶解させ、滅菌グレードのフィルターを用いて溶液を濾過することによって、調製した。NaOAc、pH4.7とNaOAc、pH5.7の1モル濃度の原液を、適切量の酢酸ナトリウム三水和物及び氷酢酸をMilli-Q(登録商標)水に添加して調製し、滅菌グレードのフィルターを用いて濾過した。
溶液条件は、適切量の水、二価イオン原液、バッファー原液、及びタンパク質原液を加えることによって調製した。タンパク質原液は常に最後に添加した。
【0064】
ZnCl、MgCl、CaCl及びNaOAcの濃度の組み合わせを、2つの異なったpH及び温度で調べた。ZnClの濃度は5から100mMの範囲で、NaOAcは10から100mMの範囲であった。MgClの濃度は10mMのNaOAc中、5から100mMの範囲であった。CaClの濃度は10mMのNaOAc中、5から100mMの範囲であった。
バッチ法を使用する結晶化は、各バッチが1mlの試料容積を有していた点以外は、実施例2に記載したようにして実施した。
【0065】
結果
結果を表2に示す。ZnClとNaOAcの組み合わせは完全長抗VEGF抗体の結晶及び/又は結晶を有するゲルの生成に効果的であった。固形物質は複屈折光の屈折によって測定して結晶性物質に対して陽性であった。上清中の抗VEGF濃度は280nmの吸光度を測定することによって定量した。

【0066】
ZnCl/NaOAcの組み合わせは全て抗VEGFの結晶をゲル中に又は溶液中に遊離で生じた。塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウム溶液はこれらの条件下で抗VEGFに対して如何なる効果も示さなかった(データは示さず)。塩化カルシウム及び酢酸ナトリウム溶液は、100mMのCaCl、10mMのNaOAcでpH4.7で4℃でインキュベートした場合に抗VEGFと結晶を生じた(データは示さず)。
結晶性物質は、100mMのZnCl、10mMのNaOAcでpH5.7で生成され、室温でインキュベートした溶液から単離された。結晶は20mMのNaOAc及び20mMのZnCl、pH5.7で3回洗浄し、結晶を水に溶解させた。異なった量の水中へ再溶解した結晶をSDS PAGEにかけ、結晶化前の抗VEGFと比較した。結晶の洗浄物もまた抗VEGFの存在について試験した。結果を図5に示す。その結果は、洗浄物は抗VEGFについて陰性であったが再溶解した結晶は抗VEGFを確かに有していた。結晶量の増加は検出される抗VEGFの増加を生じた。
再溶解した抗VEGFもまた質量スペクトルによって分析し、コントロール抗VEGFと比較した。無傷の抗体のMALDI-TOF質量スペクトルは一般に150kDaに広いピークを与え、一抗体を他の抗体から区別することは容易ではない。しかしながら、還元された抗体からの質量スペクトルは軽鎖に対して高感度を示す。軽鎖質量は各抗体産物に対して独特であるので、試料をTCEPで還元し、線形ポジティブモードで分析した。濃度差を説明するために、最初の2試料を50倍に希釈し、次の2試料をシナピン酸マトリックス溶液で10倍に希釈し、室温にてTCEPで還元した(2時間)。試料をプレート上に付着させ、空気乾燥させ、0.1%の冷TFAで洗浄し、質量スペクトルを得た。
【0067】
抗VEGF軽鎖の分子量は23433Daであり、MALDI-TOF質量スペクトルは典型的にこの質量範囲で+/−0.05%の質量精度を示す。原液と上清のスペクトルは類似のパターンを示し、つまり一価及び二価にプロトン化した軽鎖からの強いピークと弱い二価の荷電重鎖である。(図7D、A、及びC)。洗浄液(分析した条件下)は軽鎖の存在を示していないが(図7B)、結晶溶液は軽鎖ピークを示していた。
MALDI-TOFMSによる結晶からの天然Lys-C消化物の分析は、多くの抗VEGF関連ピーク(並びにLys-C自己分解産物)を示した。しかしながら、最初の洗浄液からの消化物はまた抗VEGF関連ピークの幾つかを示した(データは示さず)。一般には、無傷のタンパク質と比較してMALDI-TOFMSにより消化物に、より高い感度が観察される。
まとめると、抗VEGFは結晶中に明確に見られるが、最初の洗浄物もまた少量の抗VEGFを含んでいる場合がある。その結果は、結晶から再溶解した抗VEGFがコントロール抗VEGFと同じ質量スペクトル特性を有していたことを示している。
【0068】
実施例4
抗VEGF溶液のゲル液相の研究
抗VEGF結晶を含む溶液において2相が同定された。それらは結晶を含みうる溶液及びゲル中に遊離した結晶を含む。抗VEGF上清濃度は、存在する結晶相に直接関係する。ゲルが存在している場合、可溶型抗VEGF濃度は典型的には約10g/L未満である。ゲルが存在していない場合、可溶型抗VEGF濃度は一般に40g/Lを超えて上昇する。 結晶化条件の抗VEGF相空間を、pH5.7でNaOAc濃度とZnCl濃度を変えることによって研究した。相空間の探求によって、溶液がゲルから液相へどこで遷移するかを特定することができる場合がある。これは、結晶収率を改善する最適な結晶化条件を見いだすのに役立ちうる。
【0069】
材料と方法
Milli-Q(登録商標)水中84.4g/Lの抗VEGF原液を、1mLのバッチ実験に対する成分としてpH5.7のZnCl及びNaOAcの1M原液と共に使用した。それぞれが42.2g/Lの抗VEGF濃度とそれぞれ5から100mM及び10から100mMの範囲のZnCl及びNaOAc濃度を有している22のバッチをつくった(表3を参照のこと)。
溶液は、周囲温度で保存したポリプロピレンチューブ中でつくった。実施された22の中には、一つの群は混合せず、一つの群は穏やかな混合を与えるために毎日2回傾斜させた、二種の異なった群がある。チューブは3週間の間にわたって観察した。生成したゲルの割合はその3週間の最初と終わりに非混合群において目視で決定した。21日後、チューブを遠心分離し、上清中の抗VEGF濃度をA280によって分析した。
【0070】
結果
表3は22試料の非混合又は静置群の結果を示している。

【0071】
混合チューブ群では、ゲル相がチューブの側面に沿って広がったので、%ゲルを定量できなかった。しかしながら、溶液状態、透明性、ゲル、遊離の固形物、又はゲル+遊離の固形物の目視での指摘を、最初と21日の終わりに決定した。21日後に、チューブを遠心分離し、上清中の抗VEGF濃度をA280によって分析した。表4は22の試料の毎日2回傾けた(混合した)群の結果を示している。

【0072】
全てのチューブで結晶が生成された。結晶のあるものは溶液中で遊離しており、あるものはゲル中にあった。
非混合試料に対する相マップはNaOAc濃度に対してZnCl濃度をプロットすることにより生成した。このプロットは図3に見ることができる。図4は混合実験と非混合実験の相マップを比較している。
併せると、図1(実施例1から)、3及び4は、ZnClが40mMを超えチューブが混合される場合、系が相転移点に近づくと、可溶型抗VEGFが約10−22g/Lまで減少することを示している。チューブが静置されZnCl濃度が40mM以下である場合は、可溶型抗VEGF濃度の減少はほとんどないないしはない。これから、ZnClが可溶型抗VEGFの消失における支配的な因子であると信じさせる。ZnCl濃度が10mM未満であるか80mMより多い場合は、NaOAcの効果は減少する。ZnCl濃度が遷移点(25−60mM)に近くなると、NaOAc濃度は可溶型抗VEGF濃度に大きな影響を持つように思われる。
【0073】
実施例5
他の抗体の結晶化
完全長抗体に対する従来の結晶化条件は典型的にはPEG、MPD又はプロパノールのような有機沈殿剤を利用している。我々は、抗VEGFのような完全長抗体がこれらの有機沈殿剤の不在下で結晶化し得ることを発見した(先の実施例を参照のこと)。我々は他の完全長抗体がNaOAc(pH4.7;pH5.7)、HEPES(pH7.5)又はトリス(pH9.0)の不在下で二価カチオンで結晶化させることができるかどうかを調べた。
【0074】
材料と方法
試験したモノクローナル抗体は、抗HER2、抗CD11a、抗CD20(C2B8)及び抗VEGF(ジェネンテック、サウスカリフォルニア、カリフォルニア州)であった。これらの特異性を持つ抗体の調製と特徴付けは米国特許第5736147号、同第6387371号、同第6037454号及び国際公開第98/45331号に記載されている。抗体は実施例1に記載した精製工程と同様の限外濾過と膜分離が続く3種のクロマトグラフィーを使用して精製した。
モノクローナル抗体をMilli-Q(登録商標)に透析し、約80−100mg/mLの範囲の結果濃度を得た。実験は、抗体溶液1部を各々の適切な溶液1部と混合してバッチ形式で実施した。最終試料容積は1から2mLであった。試料は6mLのポリプロピレンチューブに保存した。
【0075】
使用した二価の塩は、ZnCl、CaCl、及びMgClであった。使用したバッファーはそれぞれ10mMのNaOAc、pH4.7;10mMのNaOAc、pH5.7;10mMのHEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタン-スルホン酸)、pH7.5、及び10mMのトリス(トリスヒドロキシメチルアミノエタン)、pH9.0の最終濃度及びpHを有していた。トリスバッファー溶液を含む試料を周囲温度で保存し、他のバッファー溶液を含む試料は2−8℃の温度で保存した。
試料について毎日目視検査を実施した。3日の保存後に固形物質が観察されなかった場合には温度を急激に変更した:最初の貯蔵条件に応じて試料を2−8℃又は室温に移した。更に3日後に固形物質が観察されなかった場合には、試料を2−8℃で保存し毎週モニターした。固形物質を伴った試料を、複屈折を測定するために十字偏光子下で観察した。
【0076】
結果
抗CD40分子に対して試験した条件下では結晶は観察されなかった(データは示さず)。
ZnClでの抗CD20(C2B8)分子に対する結果を表5に示す。観察された固形物は全て複屈折に基づいて結晶性ではなかった。しかしながら、ある場合にはタンパク質ゲルが生成された。CaCl及びMgClでの抗CD20(C2B8)分子に対して試験された条件下で結晶は観察されなかった(データは示さず)。表中のN/Aは、280nmでの上清の吸光度を試験しなかったことを示している。

ZnClでの抗HER2分子に対する結果を以下の表6に示す。以下に示す条件下で生成した固形物は全て複屈折によって測定して結晶性ではなかった。CaCl又はMgClでの抗HER2分子に対して試験された条件下で結晶は観察されなかった(データは示さず)。

【0077】
ZnClでの抗CD11a分子に対する結果を以下の表7に示す。これらの条件下で生成した固形物は全て複屈折によって測定して結晶生成に対して陰性であった。CaCl又はMgClでの抗CD11a分子に対して試験された条件下で結晶は観察されなかった(データは示さず)。

結果は、ZnClでの抗VEGF分子に対するものは以下の表8に、MgClに対するものは表9に示す。結晶及びゲルはこれらの条件下で生成した。必ずしも全ての沈殿剤が複屈折光によって結晶性物質に対して陽性ではなかった。CaClでの抗VEGF分子に対して試験された条件下で結晶は観察されなかった(データは示さず)。


【0078】
上の結果から、より高いZnCl及びNaOAc濃度と4.7と5.7のpHの組み合わせが、可溶性抗体から抗体ゲルへの抗HER2、抗CD20(C2B8)及び抗CD11aの相変化を誘導するように思われる。ZnCl/NaOAcの組み合わせの全てが、抗VEGFに添加したときに結晶をつくった。
pH7.5とpH9.0でMgClとCaClのみを調べた(CaClの結果は示さず)。上記の結果に基づいて、抗VEGFの結晶化は、室温で10mMのトリス、50mMのMgCl、pH9.0で;室温と2−8℃の双方で10mMのトリス、100mMのMgCl、pH9.0で観察された。
【0079】
実施例6
結晶化条件における沈殿剤の使用
我々は、我々が抗VEGFの結晶化条件に添加剤を導入できるかどうかを調べた。使用した結晶化条件はpH5.7の10mMのZnClと10mMのNaOAcであった。
pH5.7の10mMのZnClと10mMのNaOAcを使用する結晶化条件は抗VEGF結晶をつくるために既に示した。収率を増大させることを意図して、3種の最も効果的な有機沈殿剤(スクリーニングにより決定)を結晶化バッファーに添加した。試験した沈殿剤はハンプトンリサーチから購入した(+/−)-2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)、ハンプトンリサーチから購入したポリエチレングリコール(PEG)3350、及びハンプトンリサーチから購入したプロパノールであった。
沈殿剤の各々を、Milli-Q(登録商標)水に抗VEGF(ジェネンテック、サウスサンフランシスコ、カリフォルニア州)を入れた溶液を含むポリプロピレンチューブに加えて、5.7のpHで42.4g/Lの抗VEGF、10mMのZnCl、10mMのNaOAcの最終濃度と、以下の表10に示す沈殿剤の割合が得られた。
ポリプロピレンチューブを周囲温度に配し、一日2回傾けて穏やかに混合した。2週間後、上清試料を集め、抗VEGF濃度をA280によって分析した。
【0080】
結果
結果を表10に示す。

バッチチューブの全てにおいて結晶が目で見て観察された。測定された上清濃度は全てのポリプロピレンチューブにおいて41から53g/Lであった。結晶化は生じたが、これらの沈殿剤の添加によって増加しているようには思われなかった。図6は3種の異なった沈殿剤に対して沈殿剤濃度の関数として上清濃度を示している。MPD、PEG3350又はプロパノールの添加は、pH5.7の10mMのZnClと10mMのNaOAcを使用する収率に対して収率を有意には改善するようには思えないことが分かった。
【0081】
実施例7
他のモノクローナル抗体の結晶化
我々はZnClとNaOAcの混合物がモノクローナル抗体の一般的な結晶化条件として使用することができるかどうか調べた。
抗VEGFに対してここで特定した結晶化条件はポリエチレングリコールを含んでいない。文献で報告されている他の条件の全てがその結晶化プロセスにおいてポリエチレングリコールを使用している。過去の実験では、他の抗体は、溶液からゲル化又は沈殿させることによってこれらの条件の影響を受けた。この実験において、抗体の相空間を研究し結晶化条件を同定するためにより高いZnCl濃度を研究した。
【0082】
材料と方法
比較した抗体は抗HER2、抗CD11a、抗2C4、抗CD20(2H7)、抗CD20(C2B8)、及び抗VEGFであった。該抗体の全てをMilli-Q(登録商標)水に膜分離し約100mg/mLまで濃縮した。実験はバッチ様式で実施し、抗体溶液1部を溶液1部と混合した。最終試料容積は約3−5mLであり、試料を、如何なるタンパク質コントロールもない状態で6mLのポリプロピレンチューブで保存した。試料を周囲温度と約2−8℃で保存した。その試料を毎日検査した。3日の保存後に結晶又は沈殿物が観察されなかった場合、温度を急激に変更した:試料を、最初の貯蔵条件に応じて2−8℃又は室温に移した。更に3日後に何も観察されなかった場合、試料を約2−8℃で保存し毎週モニターした。
溶液は様々な濃度のZnCl、CaCl及びMgClを有し、全てが0.01MのNaOAcを有し、4.7か5.7の何れかのpHを有していた。
【0083】
結果

ZnCl中の抗VEGF分子に対する結果を表11に示す。これらの条件下でMgCl又はCaClを使用した場合、結晶は観察されなかった(データは示さず)。



【0084】
抗CD20(C2B8)及び抗2C4分子に対する結果は試験した条件の何れにおいても結晶又はゲルの生成を示さなかった(データは示さず)。
抗CD20(2H7)分子に対する結果を以下の表12(ZnCl)、表13(CaCl)、及び表14(MgCl)に示す。多くの場合、タンパク質ゲルが生成した。沈殿した物質は複屈折によって測定したところ結晶性ではなかった。

【0085】
抗HER2分子に対する結果を以下の表15(ZnCl)に示す。これらの条件下でMgCl又はCaClを使用した場合、結晶は観察されなかった(データは示さず)。

【0086】
抗CD11a分子に対する結果を以下の表16(ZnCl)に示す。これらの条件下でMgCl又はCaClを使用した場合、結晶は観察されなかった(データは示さず)。

これらの結果は、異なった抗体がZnCl及びNaOAcに接触すると結晶又はゲルの何れかを形成し得ることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は室温、pH5.7において様々なZnCl及びNaOAc濃度での抗VEGFの溶解度を示すグラフである。グラフは、ZnCl及びNaOAc濃度の関数としてプロットした可溶型抗VEGFの濃度を示す。異なったNaOAc濃度は次の通りである:x10mMのNaOAc;△25mMのNaOAc(白線);◆50mMのNaOAc;■75mMのNaOAc;*100mMのNaOAc。
【図2a−c】図2aは5mMのZnCl及び100mMのNaOAc、pH5.7の存在下で生成した抗VEGF結晶の200×倍率の非複屈折光下の写真である。図2bは5mMのZnCl及び100mMのNaOAc、pH5.7の存在下で生成した抗VEGF結晶の200×倍率の複屈折光下の写真である。図2cは25mMのZnCl及び10mMのNaOAc、pH5.7の存在下で生成した抗VEGF結晶の200×倍率の非複屈折光下の写真である。
【図2d−f】図2dは25mMのZnCl及び10mMのNaOAc、pH5.7の存在下で生成した抗VEGF結晶の200×倍率の複屈折光下の写真である。図2eは10mMのZnCl、100mMのNaOAcの溶液、pH5.7で生成した抗VEGF結晶の200×倍率の非複屈折光下の写真である。図2fは10mMのZnCl、100mMのNaOAcの溶液、pH5.7で生成した抗VEGF結晶の200×倍率の複屈折光下の写真である。
【図3】図3はNaOAc濃度に対してZnCl濃度をプロットすることによって作成した静置条件に対する相マップを示す。◆遊離の結晶;■相変移;△ゲル結晶(白の三角形)。
【図4】図4は混合条件対静置条件の相マップを示す。記号は次のものを表す:◇遊離混合;◆ゲル混合;--◆--遷移混合;--■--遷移静置;□遊離静置;及び■ゲル静置。
【図5】図5は単離し、洗浄し、再溶解した抗VEGF結晶のSDS-PAGEを示す。レーン1は分子量マーカーである;レーン2は5μgの抗VEGFである;レーン3は空である;レーン4は上清である;レーン5は洗浄1、母液である;レーン6は洗浄2、母液である;レーン7は洗浄3、母液である;レーン8は空である;レーン9は1mlの結晶(水に溶解した)である;レーン10は5mlの結晶(水に溶解した)である;レーン11は10mlの結晶(水に溶解した)である;レーン12は15mlの結晶(水に溶解した)である;レーン13は20mlの結晶(水に溶解した)である。
【図6】図6は抗VEGF結晶化条件10mMのZnCl、10mMのNaOAc、pH5.7への沈殿剤の添加を示す。可溶型抗VEGFの量は添加した沈殿剤の%に対してプロットした。
【図7】図7は抗VEGF原液(D)、抗VEGF結晶溶液(A、C)及び結晶からの洗浄溶液(B)の質量スペクトル分析を示す。抗VEGFの還元した軽鎖は約23449Dの質量を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体又はその断片の結晶を製造するための方法であって、
a)約1から500mMの二価カチオンの塩と約1から100mMのバッファーを含む溶液に抗体又はその断片を接触させ;
b)抗体又はその断片の結晶が生成されるまで抗体又はその断片と溶液をインキュベートすることを含む方法。
【請求項2】
二価カチオンの塩が約10mMから80mMのZnClである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
二価カチオンの塩が約25mMから60mMのZnClである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
バッファーが酢酸ナトリウム(NaOAc)を含んでなる請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
バッファーが約1mMから20mMのNaOACを含んでなる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
バッファーが約25mMから75mMのNaOACを含んでなる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
溶液が約10mMを超えるZnClと約5mMを超えるNaOACを含有する請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
溶液が約100mMのZnClと約10mMのNaOACを含有する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
抗体又はその断片が抗VEGF、抗CD20、抗CD11a、抗HER2、抗Apo-2、又は抗IgE抗体、又はその断片である請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
接触が周囲温度でなされる請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
バッファーが少なくとも4.7のpHを有する請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
バッファーが約4.7から5.7のpHを有する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
二価カチオンの塩が約200mMから500mMのMgClである請求項1に記載の方法。
【請求項14】
抗体が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、親和性成熟抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体である請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
抗体が完全長抗VEGF抗体である請求項1から14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
接触が2−8℃でなされる請求項1から15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
抗体が、Fab、Fab'、Fab、Fab'、Fd、Fd'、scFv、scFv、dAb、無ヒンジ抗体、直鎖状抗体、及びダイアボディからなる群から選択される請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
抗体がIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM1、IgM2、IgA、又はIgA2である請求項1から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
抗VEGF、抗CD20、抗CD11a、抗HER2、抗Apo-2、又は抗IgE抗体、又はその断片の結晶と担体を含有する組成物。
【請求項20】
担体が高分子担体である請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
結晶が抗VEGF抗体又はその断片の結晶である請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
担体が高分子担体である請求項19から21の何れか一項に記載の組成物。
【請求項23】
抗VEGF、抗CD20、抗CD11a、抗HER2、抗Apo-2、又は抗IgE抗体、又はその断片のゲルと担体を含有する組成物。
【請求項24】
担体が高分子担体である請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
高分子担体が、アクリル酸重合体、シアノアクリレート重合体、アミノ酸重合体;アミン重合体、無水物重合体、デプシペプチド重合体、ポリ(エステル)、乳酸重合体、乳酸グリコール酸共重合体又はPLGA、b-ヒドロキシブチラート重合体、カプロラクトン重合体、ジオキサノン重合体、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ(オルガノホスハゼン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸、アルキルビニルエステル共重合体、プルロニックポリオール、アルブミン、アルギナート、セルロース及びセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリコサミノグリカン、硫酸化多糖類、その混合体及び共重合体からなる群から選択される請求項19から24の何れか一項に記載の組成物。
【請求項26】
抗VEGF、抗CD20、抗CD11a、抗HER2、抗Apo-2、又は抗IgE抗体、又はその断片のゲルと少なくとも一種の成分を含有する製剤。
【請求項27】
ゲルが、抗VEGF抗体又はその断片のゲルである請求項26に記載の製剤。
【請求項28】
製剤又は組成物が、1mg/ml又はそれ以上の抗体又は抗体断片濃度を有している請求項19から27の何れか一項に記載の製剤又は組成物。
【請求項29】
製剤又は組成物が、3mg/ml又はそれ以上の抗体又は抗体断片濃度を有している請求項28に記載の製剤又は組成物。
【請求項30】
少なくとも一種の成分がアルブミンである請求項26から30の何れか一項に記載の製剤。
【請求項31】
成分が、スクロース、トレハロース、ラクチトール、ゼラチン、ヒドロキシプロピル-B-シクロデキストリンからなる群から選択される請求項26から30の何れか一項に記載の製剤。
【請求項32】
請求項1に記載の方法によって製造される抗体又はその断片の結晶。
【請求項33】
結晶が架橋している請求項19から31の何れか一項に記載の組成物又は製剤。
【請求項34】
哺乳動物におけるVEGF関連症状を治療する方法において、請求項21に記載の組成物又は製剤の有効量を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項35】
抗体又はその断片の結晶を製造するための方法であって、
a)約1から120mMの亜鉛塩を含有する溶液に抗体又はその断片を接触させ;
b)抗体又はその断片の結晶が生成されるまで抗体又はその断片と溶液をインキュベートすることを含む方法。
【請求項36】
抗体又はその断片の結晶を製造するための方法であって、
a)亜鉛塩とバッファーから本質的になる溶液に抗体又はその断片を接触させ;
b)抗体又はその断片の結晶が生成されるまで抗体又はその断片と溶液をインキュベートすることを含む方法。
【請求項37】
抗体又はその断片の結晶を製造するための方法であって、
a)亜鉛塩を含有し他の沈殿剤を欠く溶液に抗体又はその断片を接触させ;
b)抗体又はその断片の結晶が生成されるまで抗体又はその断片と溶液をインキュベートすることを含む方法。
【請求項38】
抗体又はその断片の結晶を製造するための方法であって、
a)約1から120mMの二価カチオンの塩と約1から100mMのバッファーを含有する溶液に抗体又はその断片を接触させ;
b)抗体又はその断片のタンパク質ゲルが生成されるまで抗体又はその断片と溶液をインキュベートすることを含む方法。
【請求項39】
抗体又は抗体断片が、抗VEGF、抗CD20、抗CD11a、抗HER2、抗IgE抗体、又はその断片である請求項35から38の何れか一項に記載の方法。
【請求項40】
抗体が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体である請求項35から38の何れか一項に記載の方法。
【請求項41】
抗体が、Fab、Fab'、Fab、Fab'、Fd、Fd'、scFv、scFv、dAb、無ヒンジ抗体、直鎖状抗体、及びダイアボディからなる群から選択される請求項35から38の何れか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2a−c】
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【図2d−f】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−507554(P2008−507554A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522796(P2007−522796)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/026017
【国際公開番号】WO2006/012500
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】