説明

抗体定量法

本発明は、生物学的サンプル中の興味のある抗体量を決定するための新規方法に関する。1つの態様では、本発明の方法は、F(ab)2断片を産生するために、ペプシン消化による該生物学的サンプルのタンパク質除去工程を少なくとも含むことを特徴とする。好ましい態様では、興味のある抗体の配列を同定する1個またはそれ以上のペプチドを、タンデム質量分析検出を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC-MS/MS)を用いてモニターする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的サンプル中の興味のある抗体量を決定するための新規方法に関する。1つの態様では、本発明の方法は、F(ab)2断片を産生するために、少なくともペプシン消化による該生物学的サンプルのタンパク質除去工程を含むことを特徴とする。好ましい態様では、興味のある抗体の配列を同定する1個またはそれ以上のペプチドを、タンデム質量分析検出を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC-MS/MS)を用いてモニターする。
【背景技術】
【0002】
背景
さまざまな前臨床モデルおよび臨床サンプルで、医薬化合物の薬物動態を正確かつ確実に決定する能力は、最適な効果および最小限の毒性のための用量レジメンを設計するのに重要である。これは、後期臨床試験での成功の機会を最大にし、規制認可過程で必要な構成要素である。高い成功の可能性および減少した開発時間/コストのために、治療的モノクローナル抗体(mAb)は、製薬業界でますます重要になってきている。これらのタンパク質は、免疫グロブリン(IgG)であり、それは、標的に結合し、その活性を阻害するか/その濃度を減少させることにより作用する。血清中のmAb濃度をモニターすることは、通常、酵素結合免疫吸着法(ELISA)を用いることにより行われる。この技術は、高感度であり(ピコグラム/mLほど低いLOQ)、早く行えるため、数千のサンプルを解析するのに十分である。しかしながら、それは、低い精度(30%までのCV)および正確さを含む重大な限界を示す。加えて、それは、マトリックス干渉、例えば、抗薬剤抗体を受け得て、長い開発時間を有する。さらに、前臨床モデルの間で変換するか、前臨床から臨床サンプルへ変換するか、または前臨床モデルで、毒性効果を減少させるために抗体を非ヒト化するとき、アッセイは、しばしば、再開発される必要がある。結果として、データの信頼性を改善し、開発時間/費用を減少させる他の方法を開発することが有益である。
【0003】
タンデム質量分析検出を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC-MS/MS)は、生物学的マトリックス(biological matrices)からの小分子医薬を定量するために、広く使用される方法である。マルチプル反応モニタリングモード(MRM)で作動させた三連四重極質量分析は、典型的には、最も低いLOQ、最大の特異性、最高の精度および正確さならびに最大のハイスループットを提供するが、他の型の質量分析法もまた、使用し得る。最近になって、この技術は、複合サンプル、例えば、血清および細胞ライセートからのタンパク質の定量にまで拡張されてきた(Gerber et. al. (2003))。この技術はまた、PCT特許出願WO2005/101017で、抗体−薬剤結合体の検出に関して記載されている(2005, Genentech)。当該発明では、一般に、トリプシンで消化し、プロテオティピックペプチドをHPLC-MS/MSでモニターし、タンパク質濃度を計算するために使用する。この解析のためのサンプル調製技術は、典型的には、1-5 μg/mLの範囲のLOQで、最も豊富なタンパク質の除去を必要とする(Anderson and Hunter (2006))。除去は、免疫親和性カラムまたは色素を用いて達成され、コスト、全体の血清能力(serum capacity)およびスループットに関して、かなりの制限を有する。さらに、除去キットは、異なる種に関して、減少した有効性を有し得る。さらに、mAbで、市販で入手可能な起源から実現可能な唯一の除去の型は、アルブミンである。IgGの濃縮は、Protein A/Gカラムまたはビーズを用いて可能であり得るが、この戦略はまた、同様の制限を被りうる。ペプシンは、相対的に非特異的なプロテアーゼであり、IgG由来の抗原に結合する能力を保持する抗体断片(F(ab)2)を産生する多くの集団により使用され得る(Rousseaux et. al. (1980))。最近、Jones and Landon (2002および2003)は、ペプシンを、ヒツジ血清サンプルからのF(ab)2の商業的生産のために使用し得ることを証明した。本発明は、ペプシン様酵素が、血清からのmAbの定量のためのアッセイ、例えば、質量分析に基づくアッセイでの最初の工程として、血清を除去し、F(ab)2を濃縮するために使用し得ることの最初の証明に基づくものである。この方法は、コスト効率が良く、普遍的であり(興味のある種およびmAbから独立して)、無限の可能性を有する。さらに、それは、IgGのFc領域に関連するペプチドを除去する。これらのペプチドは、最も高度に保存されており、最も豊富である。これらの除去は、MSイオン抑制を減少させ、LOQを低くする。
【発明の概要】
【0004】
発明の詳細な説明
本発明は、生物学的サンプル中の興味のある抗体の量を決定するためのインビトロ法であって、該生物学的サンプルがさらに抗体以外のタンパク質を含み、工程:
a) 該生物学的サンプルを、非免疫グロブリンタンパク質のタンパク質分解および抗体分子の消化のために適当な条件下で、ペプシン様プロテアーゼと共にインキュベートし、少なくともCDR領域を含む抗体断片を産生し; そして
b) 該興味のある抗体に由来する抗体断片の量を決定すること
(ここで、該抗体断片の量は、生物学的サンプル中の興味のある抗体の量と相関している)
を含むことを特徴とする、インビトロ法に関する。
【0005】
他に記載がなければ、本明細書で使用する用語および語句は、下記の意味を有することを意図する:
【0006】
本明細書で使用する“抗体”なる用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する、完全長の抗体または1個またはそれ以上の抗体の断片を意味する。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片、“結合断片”により行われ得ることが示されている。結合断片の例は、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片である、Fab断片; ヒンジ領域でジスルフィド架橋により結合する2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab)2断片; VHおよびCH1ドメインからなる、Fd断片; 抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなる、Fv断片; VHドメインからなる、dAb断片(Ward et al., 1989); および単離した相補性決定領域(CDR)を含む。
【0007】
さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは、別々の遺伝子によりコードされているが、それらは、組み換え方法を用いて、それらがVLおよびVH領域が一価分子を形成するように組み合わせた一本鎖タンパク質となることを可能にする合成リンカーにより、結合させ得る(一本鎖Fv (scFv)として既知である; 例えば、Huston et al., 1988を参照のこと)。そのような一本鎖抗体はまた、抗体の“抗原結合部分”なる用語の範囲内に包含されることを意図する。
【0008】
本明細書で使用する“モノクローナル抗体”なる用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を意味する。モノクローナル抗体調製物(composition)は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。
【0009】
“興味のあるペプチド”なる用語は、好ましくは、ペプシン様消化により産生した抗体断片に含まれるペプチドを意味し、それは、実験的に有利なクロマトグラフィーおよび質量分析特性を示す。1つの態様では、興味のあるペプチドまたは興味のあるペプチドの組合せは、特有であり、すなわち、それは、興味のある抗体にのみ見出し得る。有利なクロマトグラフィーパフォーマンスは、高いペプチド回収率を有する幅の狭いピークと定義され、十分な質量分析パフォーマンスは、“興味のあるペプチド”の配列に関して、高度の選択性を有する相対的に高い親イオンおよび断片イオン強度により示される。
【0010】
“内部標準”なる用語は、“興味のあるペプチド”の標識版を意味し、ここで、配列、構造および化学的特性は、“興味のあるペプチド”に類似するが、質量は異なる。例えば、“内部標準”は、重同位体、例えば、13C、重水素および/または15Nで標識し得る。他の標識戦略は、上記の基準を満たす限り、使用し得る。
【0011】
“興味のある抗体”なる用語は、生物学的サンプルに含まれる、定量される特異的な抗体を意味する。
【0012】
“生物学的サンプル”なる用語は、(i) 血液、胆汁、尿、または便; (ii) 組織抽出物; および(iii) 細胞培養培地、細胞ライセート、または細胞抽出物を意味する。好ましくは、生物学的サンプルは、興味のある抗体を含むすべての生物学的起源に由来する血清である。
【0013】
“生物学的起源”なる用語は、好ましくは、(i) ほ乳類起源、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル、またはヒトを意味し; ほ乳類組織; および/または、ほ乳類培養細胞を含む。
【0014】
“定量する”なる用語は、生物学的サンプル中の化学物質、例えば、ペプチドもしくはタンパク質の相対的もしくは絶対的な量を決定することを意味する。絶対量は、一般に、濃度範囲の観点で決定する。
【0015】
本発明は、特定のプロテアーゼが、生物学的サンプルを少なくともCDR領域を含む抗体断片、例えば、F(ab)2断片で豊富にするために使用し得ることの発見に基づく。それにより、生物学的サンプルは、非免疫グロブリンタンパク質が除去される。次いで、残りの安定的な抗体断片は、生物学的サンプル中に含まれる興味のある抗体の質量分析に基づく定量のために適当である。
【0016】
便宜上、非免疫グロブリンタンパク質、例えば、血清中に存在する非免疫グロブリンタンパク質を消化することができるが、少なくともCDR領域を含む抗体断片を保持することができるプロテアーゼは、以下では“ペプシン様プロテアーゼ”と記載する。そのようなペプシン様プロテアーゼの例は、ペプシン、パパイン、エラスターゼ、フィシン、ブロメラインまたはV8プロテアーゼを含むが、これらに限定されない。好ましい“ペプシン様プロテアーゼ”は、少なくとも、抗体の可変領域、より好ましくは、F(ab)またはF(ab)2断片を保持できるものである。“抗体断片を保持する”なる句は、抗体断片が、ペプシン様プロテアーゼにより分解されないか、または適当な反応条件下、生物学的サンプル中に存在する他の多くのタンパク質よりもタンパク質分解に対して耐性があることを意味する。インキュベーション時間は、分から日の範囲にあり得る。
【0017】
好ましい態様では、該ペプシン様プロテアーゼは、ペプシンおよび非免疫グロブリンタンパク質を消化できるが、安定なF(ab)2断片を保持することができるすべての適当なそのホモログもしくはオーソログである。例えば、ブタペプシンは、市販で入手可能である。ペプシンの適当なホモログもしくはオーソログは、最適なアライメントで並べたとき、ブタペプシンと、少なくとも50%のアミノ酸同一性、より好ましくは、少なくとも80%、および最も好ましくは、少なくとも90%の同一性を有する。比較ウィンドウを決定するための配列の最適アライメントは、Smith and Waterman (1981)の局所的相同性アルゴリズムにより行い得る。
【0018】
好ましい態様では、本発明の方法における生物学的サンプル中のタンパク質除去のための、ペプシン様プロテアーゼ、好ましくは、ペプシンの適当な濃度は、酵素:タンパク質比率が1:100から1:10 (wt/wt)の範囲内にある。
【0019】
該方法の他の特定の態様では、工程b)は、下記のサブ工程を含む:
b1) ペプシン消化の不活性化後、工程a)で産生された抗体断片に対する1個またはそれ以上の内部標準ペプチドの添加;
b2) サンプル加工、すなわち、工程b1)で得たサンプルを他のプロテアーゼ、好ましくは、非ペプシン様プロテアーゼで消化し、所望により、サンプルペプチドを抽出すること;
b3) サンプルの複雑度を減少させるためのペプチド分離、すなわち、1個またはそれ以上のサンプル中で、クロマトグラフィーおよび/または他の手段により、サンプルペプチドを別々に、部分的に分離すること;
b4) 興味のあるペプチドの質量分析解析、すなわち、1個またはそれ以上の分離したサンプル中に存在するサンプルペプチドの質量または質量電荷比を、質量分析により測定し、興味のある抗体由来の興味のあるペプチドおよび内部標準ペプチドに相当するピークシグナルを同定すること; および
b5) 興味のあるペプチドの定量、すなわち、該ピークシグナルを、サンプル中の興味のあるペプチドの量を決定するために、シグナル標準化用内部標準ペプチドを用いて、ブランクの生物学的起源材料に種々の既知濃度で加えられた抗体の標準曲線に由来するピークシグナルと比較し、それにより、生物学的サンプル中に含まれる興味のある抗体の量を決定すること。
【0020】
サンプル加工:
工程b1)で得られたサンプルを、さらに、“ペプシン様”プロテアーゼではない他のプロテアーゼを用いて、工程b2)で処理し得る。1個またはそれ以上のプロテアーゼはまた、一緒に、もしくは他の酵素と共に使用し得て、それにより、サンプルコンポーネントを分解できる。
【0021】
例えば、タンパク質分解酵素であるトリプシンは、リシンまたはアルギニンと非特異的なアミノ酸の間のペプチド結合を切断するセリンプロテアーゼであり、それにより、アミノ末端(N末端)およびリシンもしくはアルギニンカルボキシ末端アミノ酸(C末端)を含むペプチドを産生する。この方法で、タンパク質の切断に由来するペプチドは、特異的かつ予測可能であり、トリプシン消化からのサンプル中、それらの存在および/または量は、それらの起源のタンパク質の存在および/または量を示し得る。他の典型的なタンパク質分解酵素は、ArgC、LysC、V8プロテアーゼおよびAspNを含む。
【0022】
例えば、ペプシン消化により得られた興味のある抗体のF(ab)2断片は、さらに、プロテアーゼ、例えば、トリプシンで消化されると、3つのペプチド(例えば、ペプチドA、BおよびC)を産生し得る。したがって、タンパク質分解酵素、例えば、トリプシンで消化され、解析すると、ペプチドA、BおよびCを含むことが確認されたサンプルは、興味のある抗体をもともと含んでいたと言うことができる。トリプシンによるF(ab)2断片の消化が完了するか、または適切なコントロールが不完全な消化の原因となるように実施されるとき、サンプル(またはそのフラクション)中の、1個またはそれ以上のペプチドA、BおよびCの同定および/または定量は何れも、元のサンプル(またはそのフラクション)に含まれる興味のある抗体を同定および/または定量するために使用し得る。
【0023】
所望により、サンプル加工後に得られたサンプルペプチドを、好ましくは、質量分析解析の結果の感度および再現性に影響を与えるか、または減少させるすべての望まない物質を除去するのに適当な抽出法を用いて、抽出する。例えば、固相抽出(SPE)が使用でき、それにより、過度の塩および界面活性剤、残余血清脂質、ペプシン消化から生じる非トリプシンペプチドならびに不溶性物質を除去し、サンプル中のペプチドのかなりの濃度を可能にする。
【0024】
サンプルの複雑度を減少させるためのペプチド分離
工程b3)で、サンプル混合物を解析するために、ペプチドを、個々に、部分的に分離することができ、質量分析を、サンプル混合物のフラクションのみについて行う。この方法で、解析の複雑度は、分離したペプチドを質量に関して個々に解析し、それにより、解析工程の感度を増加させるので、実質的に減少し得る。当然に、解析は、サンプル混合物の1個またはそれ以上のさらなるフラクションについて、1回またはそれ以上の回数、繰り返すことができ、それにより、サンプル混合物のすべてのフラクションの解析を可能にする。
【0025】
別々に標識された興味のあるほぼ同一なペプチドおよび内部標準ペプチドが、ある濃度で、またはある質量で共溶出するか、もしくはほぼ共溶出し、それが、サンプル混合物中のそれらの豊富さと比例する分離条件を、サンプル混合物を含む各々のサンプルで、各々のペプチドの量を決定するために使用し得る。セクションb5で上記したとおり、興味のあるペプチド、したがって、興味のある抗体の定量は、ペプシンが不活性化された後、各サンプル中に加えられた内部標準ペプチドの使用により決定され得る。ブランク生物学的マトリックスで、興味のある抗体の既知濃度の標準曲線は、また、内部標準ペプチドの固定量を用いて作製される。同じ内部標準を含む同一もしくは類似のマトリックスからのすべてのサンプル中、興味のある抗体の量は、したがって、標準曲線から計算され得る。この方法の重要な想定は、標準曲線におけるスパイクした抗体が、類似したサンプル調製および試験サンプルからの同じ抗体に対する消化効率関連効果を受けることである。したがって、試験におけるサンプルからの抗体を定量するために、ブランクマトリックス中のスパイクした抗体からの標準曲線を、内部標準ペプチドと共に使用することは合理的であり、そこでは、同じ内部標準を使用する。さらに、内部標準は、MSシグナル強度を標準化するのに役立ち、したがって、サンプル調製および解析のいくつかの段階からの変動性を減少させる。したがって、いくつかの態様では、サンプル混合物の分離は、サンプル混合物中の内部標準ペプチドおよび興味のあるペプチドのための質量分析(例えば、MS/MS解析)で決定されるシグナル間の相関関係を維持しながら、解析を単純化し得る。
【0026】
ある態様では、分離は、クロマトグラフィーで行うことができる。興味のあるペプチドを分離するのに適当なすべてのクロマトグラフィー分離工程を使用し得る。クロマトグラフィー分離は、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーまたは親和性クロマトグラフィーであり得る。例えば、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を、そのようなサンプル分離および質量分析を達成するために使用し得る。好ましい態様では、分離工程b3)は、HPLCで行われる。
【0027】
興味のあるペプチドの質量分析解析
本発明の方法は、生物学的サンプル中の興味のある抗体に由来するペプチドの解析のために適当であり、ここで、興味のあるペプチドは、1個またはそれ以上の下記の分離工程により、最初に、単離され、分離され、または部分的に分離される。興味のある抗体の選択的定量のために、興味のあるペプチドは、好ましくは、興味のある抗体の可変領域で選択される少なくとも1個の部分を含む。ペプチドは、さらに、興味のある抗体の断片に特異的に相当するピークシグナルと他のタンパク質断片に相当する非特異的なシグナルを区別することができるアミノ酸配列部分、または抗体中の保存されたアミノ酸配列から選択されるべきである。興味のある該ペプチドの配列は、未変性IgG配列データベースから取得した相当する未変性IgGアミノ酸残基と比較して、抗体の可変軽鎖および/または重鎖領域で特有のアミノ酸残基を含むペプチドから選択され得る。理想的には、興味のあるペプチドはまた、十分なイオン化およびクロマトグラフィー特性を有し、高度に修飾を受けやすい残基(例えば、メチオニン)を有さず、興味のある種由来の全IgG、例えば、全ヒトIgGからの検出可能なバックグラウンドを有さないべきである。
【0028】
好ましくは、工程b4)では、分離したサンプル中の“興味のあるペプチドを含む”消化されたタンパク質の質量または質量電荷比の同定が、当分野で利用可能な十分な選択性および感度を有する任意の質量分析により行われ得る。
【0029】
それは、例えば、分子イオンを選択し、断片化する能力を有するタンデム質量分析および他の質量分析を用いて実施され得る。タンデム質量分析計(およびより小型の一段階質量分析計(lesser degree single-stage mass spectrometers))は、それらの質量電荷(m/z)比にしたがって分子イオンを選択し、断片化し、次いで、生じた断片(娘)イオンスペクトルを記録する能力を有する。より特に、娘断片イオンスペクトルは、選択したイオンを解離エネルギーレベルに置くことにより、産生し得る(例えば、衝突誘導性解離(CID))。例えば、特定のm/z比の標識ペプチドに相当するイオンは、最初の質量分析から解析し、断片化し、第2の質量分析で再解析し得る。そのようなタンデム質量分析を行い得る典型的な装置は、磁場4セクター(magnetic four-sector)、タンデム飛行時間、三連四重極、イオントラップ、およびハイブリッド四重極飛行時間型(Q-TOF)質量分析を含むが、これらに限定されない。
【0030】
好ましい態様では、工程b4)は、タンデム質量分析(MS/MS)で行われる。好ましくは、マルチプル反応モニタリング(MRM)のための三連四重極を、タンデム質量分析のために使用する。簡潔には、MRMでは、最初の四重極(first quadrupole)を、ペプチドの親質量を単離するために使用する。親質量は、ペプチドの全体配列を代表する。次いで、それは、四重極衝突を通過し、断片化される。第3の四重極は、選択した断片イオンをモニターするために使用される。発生した断片は、内部ペプチド配列を示す。
【0031】
興味のあるペプチドの定量:
興味のあるペプチドの定量測定は、工程b4)で、質量分析から得ることができる。
【0032】
ある態様では、類似の内部標準ペプチドで標準化した興味のあるペプチドの定量は、標準曲線からの計算を用いて達成し得る。
【0033】
他の態様では、興味のあるペプチドの絶対量を決定し得る。興味のあるペプチドの定量測定は、好ましくは、内部標準ペプチドを用いて行われる。内部標準ペプチドおよび所望により、興味のあるペプチドは、例えば、このような内部標準が、質量は標識に起因して異なるが、構造的および化学的に興味のあるペプチドに類似しているような方法で、別々に標識される。したがって、分離工程からの溶出は、調製されたとおりの(as prepared)、サンプル中の、調製され、標識された内部標準ペプチドの既知の量に比例した興味のあるペプチドの量を含む。次いで、標準曲線により、サンプル中の興味のあるペプチドの量は、それが起源である興味のある抗体の量と関連付けることができる。好ましい態様では、内部標準ペプチドは、例えば、重水素で同位体標識され、例えば、ペプシン不活性化後、規定された濃度で、抗体断片と共にインキュベートされる。
【0034】
本明細書で使用するとき、“同位体で標識された”は、1個またはそれ以上の重原子同位体で合成的に濃縮されたペプチドを意味する(例えば、安定的な同位体、例えば、重水素、13C、15N、18O、37Clまたは81Br)。
【0035】
定量検量線は、空の(blank)生物学的マトリックス、例えば、血清中、興味のある抗体の連続希釈を用いて作製する。各サンプルを、実際の試験サンプルと同様の方法で加工する。ペプシン消化が試験サンプルと同様に不活性化された後、内部標準ペプチドを、検量線希釈の各々に対して、既知の固定した量で加える。トリプシンまたは他の特定のプロテアーゼ消化が完了すると、サンプルは、既知のレベルの内部標準ペプチドおよび興味のある抗体の消化により生じた興味のあるペプチドのいくつかの集団を含む。興味のあるペプチドのシグナル強度と希釈系列中の相当する内部標準ペプチドシグナル強度の比率は、検量線を作製するために使用する。次いで、この検量線データを、使用した手順および内部標準の量が同一であるので、試験サンプルに適用し、興味のある抗体を定量し得る。
【0036】
内部標準および検量線に基づく興味のあるペプチドの定量により、生物学的サンプル中にもともと存在する興味のある抗体量の決定が可能になる。
【0037】
下記の実施例は、例示の目的にのみ用いることを意図しており、添付の特許請求の範囲に記載した本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】種々の量のブタペプシンで消化したヒト血清のSDS-PAGEゲル。
【図2】簡易検証の間に得られた、mAb Xでスパイクしたヒト血清の典型的なHPLC-MS/MSクロマトグラム。
【図3】直線性および範囲を証明する典型的なペプチドH-T4標準曲線。
【図4】mAb X濃度対時間: ラットで静脈内投与されたmAb XのためのELISAおよびHPLC-MS/MSデータの比較。
【実施例】
【0039】
実施例
下記の実施例は、血清サンプル中の興味のある抗体(以下、mAb Xと呼ぶ)を定量するために、本発明の1つの特定の態様を詳細に記載している。
【0040】
1. 方法の開発
ペプシン消化(Pepsin Depletion)
評価
ヒト血清を消化し、F(ab)2を選択的に濃縮するペプシンの効果を評価するために、市販で取得されプールされたヒト血清(Equitech Bio)の50 μLアリコートを、希塩酸でpH 3.5に調整し、さまざまな濃度のブタペプシン(Roche Applied Science Cat. # 03 117 901 001)で、37℃で一晩、消化する(およそ100 mg/mLの全血清タンパク質と推定する)。ペプシン消化は、Novex NUPAGE 4-12% ゲル(In Vitrogen)上で、非還元条件下、MESランニングバッファーを用いて、200V定常で40分間、未処理ヒト血清と共に行い、クマシーブルー(Bio-rad)で染色し、脱染し、その後、Alpha Innotech MultiImage Light Cabinetを用いてスキャンする。図1は、ペプシンが、高濃度の酵素でさえ、安定的なF(ab)2を産生しながら、ヒト血清を消化するのに成功したことを証明する。ペプシンは、1:100から1:10 (wt/wt)の酵素:タンパク質比率の範囲の濃度で、使用のために適当である。より高い濃度を使用することは、評価されていなかったが、可能であり得る。
【0041】
最適化プロトコール
機器
HPLC-MS/MSシステムは、エレクトロスプレーニードルとして、New Objective 50 micron ID metal TaperTip(商標)を用いて、ナノエレクトロスプレー起源を備えた三連四重極として作動する、Agilent 1100 キャピラリーLCシステム(キャピラリーポンプ、自動回収装置および脱気剤)、Analytical Sales Hot Sleeve(商標)カラム加熱器およびApplied Biosystems 4000QTRAP質量分析から構成されていた。システムは、Analyst 1.4ソフトウェアを用いて作動させた。
【0042】
ペプチド選択
mAb XがHPLC-MS/MSに基づく薬物動態アッセイで使用することが適当であるか否かを決定する最初の工程は、抗体の可変軽鎖および可変重鎖領域における最も特有な残基を同定する解析を行うことである。これらは、分子のFab部分に見出すことができ、ペプシンに基づく消化戦略を実現可能にする。この解析は、ヒトIgGに対して、インシリコで行う。定量のための推定される候補を選択したとき、理想的には、該ペプチドは、十分なイオン化およびクロマトグラフィー特性を有し、高度に修飾されやすい残基(例えば、メチオニン)はなく、全ヒトIgGのバックグラウンドは存在しないものであるべきである。これらの基準に基づいて、下記でH-T4と呼ばれ、重鎖におけるペプチド断片に相当する1つのペプチドが、選択された。バリンの重水素化類似体を有する安定な同位体標識内部標準(IS)を合成した。ISを、すべてのサンプルについて、一定濃度でスパイクし、シグナルを標準化した。これは、サンプルの取扱ならびに分析の、例えば、測定毎のおよびサンプル毎の(サンプル調製、イオン化効率および注入量)のバラツキを調整した。
【0043】
質量分析条件
ISを、1 mMの濃度まで水で再構成した。それを、さらに、30% アセトニトリル、0.1% ギ酸で、0.5 nMまで希釈し、質量分析に直接注入した。Analyst 1.4ソフトウェア中の定量最適化ツールを、MRM条件を最適化するために使用した。簡潔には、MRMでは、最初の四重極を、ペプチドの親質量を単離するために使用する。親質量は、ペプチドの全体配列を代表する。次いで、それは、四重極衝突を通過し、断片化される。第3の四重極は、選択した断片イオンをモニターするために使用される。発生した断片は、内部ペプチド配列を示す。Q1およびQ3質量は共に、異なる遷移を示し、適当に選択され、配列に高度に選択的である。この場合に、最適化後の2つの最も激しい遷移は、ソフトウェアにより選択され、合計された(summed)。複数の遷移を選ぶことにより、解析の選択性を増加させる。表1は、興味のある1つの特異的ペプチドおよび内部標準のための最適化MS条件を示す。Q1およびQ3は、単位分解(unit resolution)で作動させた。
【0044】
表1 H-T4およびISペプチドのための最適化MRMパラメーター
【表1】

【0045】
最終HPLC条件
HPLCカラムは、0.3 x 75 mm Zorbax C8 Stablebond300であり、60℃まで加熱した。流速は、5 μL/分に設定した。移動相Aは、水中、0.1% ギ酸で構成され、移動相Bは、アセトニトリル中、0.1% ギ酸であった。勾配は、質量分析にペプチドを溶出するために使用した。フローの最初の12.5分は、浪費するためにそらし、次の6分間、フローをインラインに切り換え、その後、残りの解析時間が、起源を汚染化する潜在性を最小化するように、フローを浪費に戻す。
【0046】
表2 HPLC勾配条件
【表2】

【0047】
サンプルおよび標準処理
薬物動態試験および検証サンプルのために、サンプルあたり20-50 μL血清を、96ウェル 2 mLプレートにピペッティングした。サンプルのpHを、333 mM 塩酸を67 mMの最終濃度で加えることにより、3.5 ± 0.25に調整した。次いで、ペプシン(水中、20 mg/mL)を、2 μg ペプシン/μL 血清の最終濃度で加えて、プレートを覆い、簡単に遠心分離し、ボルテックスにかけた。消化は、オーブンを用いて、37℃で一晩、行った。
【0048】
トリプシン消化
ペプシン消化の完了後、サンプルを、2M 尿素、1% β-オクチルグルコピラノシド(OG)、10 mM DTT、50 mM 重炭酸アンモニウム pH 7.8で475 μLに希釈し、プレートをボルテックスにかける。pHを6.0超まで上げ、不可逆的にペプシンを不活性化させる。尿素およびOGは、タンパク質を変性させ、ペプシン消化の機能として形成されたすべての沈殿タンパク質/低分子量凝集体を溶解させるように作用する。2.5 ρmolesのISを、各サンプルにスパイクした。DTTによるジスルフィド結合還元を促進するために、プレートを、オーブンで、37℃で2時間、インキュベートした。IAAを、20 mMの最終濃度で加え、プレートを、暗所室温で、1時間、カルボキシアミドメチレートを保持しないシステイン残基となるまでインキュベートした。ウシトリプシン(Sigma Cat. #T-1426)は、1 mM 塩酸中、2.5 mg/mLで調製し、0.5 μg トリプシン/μL 血清を加えた。プレートを覆い、簡単に遠心分離し、ボルテックスにかけた。サンプルを、オーブンで、37℃で一晩、消化した。消化を停止するために、次の日に、ギ酸を、1% (v/v)の最終濃度で加えた。
【0049】
固相抽出
消化物を、真空マニホールドで、Oasis MCX 96ウェル 30 μm、30 mg プレート(Waters Corp.)を用いて、固相抽出(SPE)によりきれいにした。これにより、過度の塩、界面活性剤、残りの血清脂質、ペプシン消化から生じた非トリプシンペプチドおよび装置を詰まらせるか、LOQを減少させるか、またはアッセイの耐久性および再現性を減少させ得る不可溶性物質を除去した。それはまた、サンプルのかなりの濃度を可能にした。製造者の推奨するプロトコールにわずかな修飾を加えて行った。簡潔には、Oasis MCXウェルを、1.0 mL メタノールで、その後、1.0 mL HPLC 等級水でプレ洗浄した。サンプルを載せ、次いで、2 x 1.0 mL 1% 酢酸で、その後、2 x 1.0 mL メタノールで洗浄した。次いで、50% メタノール、45% エタノール中、1.0 mL 5% 水酸化アンモニウムを、96ウェル 2 mLコレクションプレートに溶出するために使用した。サンプルを蒸発乾固し、−50℃で保存した。HPLC-MS/MS解析より前に、消化物を、1% トリフルオロ酢酸で新たに再構成した。2.5 μL 血清同等物を、HPLCカラムに注入した。
【0050】
2. 方法の評価
簡易検証
HPLC-MS/MS法のヒト血清での限定的な検証を、ELISAに基づく方法に関する許容されたガイドライン(DeSilva et. al. (2003)およびSmolec et. al. (2005))にしたがって、適当なアッセイパフォーマンスを証明するために行った。ヒト血清を、人の健常ボランティア対象、すなわち、2人の女性および2人の男性から集めた。興味のある抗体mAb Xを、250 μg/mLで1つの血清サンプルにスパイクし、50 μg/mLで他の3つにスパイクした。50 μg/mLサンプルの内の2つのスパイクしたサンプルを、相当する血清で、それぞれ5.0 μg/mLおよび0.5 μg/mLに連続希釈した。サンプルを、3回調整し、複製あたり50 μLのアリコートを用いて、3回のアッセイで解析した。標準曲線は、500から0.1 μg/mLの市販で入手したヒト血清プール(Equitech Bio)を連続希釈し、全体の手順を行うことにより作製した(3回の複製/点)。
【0051】
ラット薬物動態試験−ELISAとの比較
ELISAとの比較は、HPLC-MS/MS法を用いて、10 mg/kgでmAb Xを投与したラットからのサンプルを解析することにより得た。ELISAは、捕捉のために抗ヒトFc抗体を、その後、検出のために抗ヒトFab抗体を使用する標準的なプロトコールを用いて行い、ラット中のmAb Xの薬物動態を決定した。MS解析に関しては、限られたサンプル量のために、各時間点からの血清を、1回(singlet)で調製し(20 μL血清)、3回、解析した。標準曲線は、500から0.5 μg/mLのmAb Xの市販で入手したラット血清プール(Sigma-Aldrich)を連続希釈し、全体のサンプル調製手順を行うことにより作製した(3回の複製/点)。さらに、50 μg/mL、5 μg/mLおよび0.5 μg/mLでのmAb Xのラット血清スパイクを、このマトリックスの正確さを決定するために解析した。
【0052】
結果
簡易検証
図2は、簡易検証の間に得られた典型的な抗体スパイクHPLC-MS/MSクロマトグラムであり、ISと興味のあるペプチド(下記の特定の実施例で、H-T4と呼ぶ)の共溶出を証明する。
【0053】
直線性および範囲
線形動態範囲は、特定の範囲で、濃度に直接比例したシグナルを産生する方法の能力として評価される。範囲は、適当な精度および正確さと共に決定されることが証明されている、検体の上部および下部レベル間の間隔である。1/xの重み付けでゼロを通る直線回帰したところ、mAb Xに関するMRM法は、3回すべてのアッセイについて、R2 0.999を有する0.5から500 μg/mLの直線であった(図3)。これは、3桁のダイナミックレンジ(dynamic range)であり、MRMに関する文献で報告されているものと一致する。500 μg/mLを超える濃度を本試験で評価しなかったことは、注目されるべきである。現在の概算を超えて範囲を拡張することは、可能であり得る。QTRAPは、3.5から4桁のダイナミックレンジであり得ることが報告されている。
【0054】
精度および正確さ
方法の正確さは、測定値と実値(true)または許容値(accepted value)の一致の近似性の測定である。0.5から250 μg/mLの範囲にわたって、3回のアッセイに関するスパイクの%の正確さ(または%回収率)は、理論上の10%以内であった。
【0055】
精度は、任意の特定の濃度における方法の再現性の測定である。精度は、しばしば、反復測定の変動係数(CV)として示され、通常、アッセイ内およびアッセイ間で評価される。すべての濃度に関する1日CVのアッセイ内およびアッセイ間は、7%未満であった。
【0056】
定量限界
定量限界(LOQ)は、定量結果が高度の信頼性を有することが報告されており、かつ、シグナル:ノイズ(S/N)が少なくとも10:1である濃度と定義される。これらの基準を考慮して、S/Nは、H-T4ピークに関する絶対シグナル強度を決定することにより、0.5 μg/mLスパイクレベルについて計算し、それを、ピークの後の1分間の領域(one minute region)におけるノイズの強度と比較した。S/Nは、3回すべてのアッセイで、34.4±8.8であった。LOQは、最も一般的な前臨床用量レジメンのための半減期を計算するのに十分な0.25 μg/mLであるべきである。
【0057】
選択性(特異性)
アッセイの特異性は、存在することが予測され得るコンポーネントの存在下、検体を明確に評価する能力である。典型的には、これらは、不純物、分解産物、およびマトリックスコンポーネントを含み得る。HPLC-MS/MS法の特異性を評価するために、4人の対象各々からのブランク血清サンプルおよび市販で取得される血清プールを解析した。mAb XのH-T4は、アッセイ機会のすべてで、ブランクのいずれにおいても検出されなかった。
【0058】
ラット薬物動態試験−ELISAとの比較
図4は、HPLC-MS/MS法とELISAの比較を示す。非常に近い一致が、該方法間で観察された。さらに、ラット血清スパイクは、理論値の6%の範囲内にあり、したがって、簡易検証の間に得られるHPLC-MS/MS法の正確さを高める。
【0059】
参照
Anderson L, Hunter CL (2006) Quantitative mass spectrometric multiple reaction monitoring assays for major plasma proteins. Mol Cell Proteomics; 5(4):573-588.
DeSilva B, Smith W, Weiner R, Kelley M, Smolec J, Lee B, Khan M, Tacey R, Hill H, Celniker A (2003) Recommendations for the bioanalytical method validation of ligand-binding assays to support pharmacokinetic assessments of macromolecules. Pharm Res; 20(11):1885-1900.
Gerber SA, Rush J, Stemman O, Kirschner MW, Gygi SP (2003) Absolute quantification of proteins and phosphoproteins from cell lysates by tandem MS. Proc Natl Acad Sci; 100(12):6940-6945.
Huston, J.S., Levinson, D., Mudgett, H.M., Tai, M.S., Novotny, J., Margolies, M.N., et al. (1988) Protein engineering of antibody binding sites: recovery of specific activity in an anti-digoxin single-chain Fv analogue produced in Escherichia coli. Proc Natl Acad Sci; 85: 5879-5883.
Jones RG, Landon J (2003) A protocol for 'enhanced pepsin digestion': a step by step method for obtaining pure antibody fragments in high yield from serum. J Immunol Methods; 275(1-2):239-250.
Jones RG, Landon J (2002) Enhanced pepsin digestion: a novel process for purifying antibody F(ab')(2) fragments in high yield from serum. J Immunol Methods; 263(1-2):57-74.
【0060】
Rousseaux J, Biserte G, Bazin H (1980) The differential enzyme sensitivity of rat immunoglobulin G subclasses to papain and pepsin. Mol Immunol; 17(4):469-482.
Smith, TF and Waterman, MS (1981) Overlapping Genes and Information-Theory J Theoret Biol, 91, 379-380.
Smolec J, DeSilva B, Smith W, Weiner R, Kelly M, Lee B, Khan M, Tacey R, Hill H, Celniker A, Shah V, Bowsher R, Mire-Sluis A, Findlay JW, Saltarelli M, Quarmby V, Lansky D, Dillard R, Ullmann M, Keller S, Karnes HT (2005) Bioanalytical method validation for macromolecules in support of pharmacokinetic studies. Pharm Res; 22(9):1425-1431.
Ward ES, Gussow D, Griffiths AD, Jones PT, Winter G. (1989 ) Binding activities of a repertoire of single immunoglobulin variable domains secreted from Escherichia coli. Nature. Oct 12;341(6242):544-6.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプル中に含まれる興味のある抗体の量を決定するためのインビトロ法であって、該生物学的サンプルがさらに抗体以外のタンパク質を含み、工程:
a) 生物学的サンプルを、非免疫グロブリンタンパク質のタンパク質分解および抗体分子の消化のために適当な条件下で、ペプシン様プロテアーゼと共にインキュベートし、少なくともCDR領域を含む抗体断片を産生し; そして
b) 興味のある抗体に由来する抗体断片の量を決定すること
(ここで、該抗体断片の量は、生物学的サンプル中の興味のある抗体の量と相関している)
を含むことを特徴とする、インビトロ法。
【請求項2】
工程a)の該ペプシン様プロテアーゼが、FabまたはF(ab)2断片を産生することができるプロテアーゼからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)の該ペプシン様プロテアーゼが、ペプシンまたは安定なF(ab)2断片を産生することができる適当なホモログである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)が、下記のサブ工程:
b1) ペプシンの不活性化後、工程a)で産生された抗体断片に対する1個またはそれ以上の内部標準ペプチドを添加し;
b2) 工程b1)のサンプルを他の非ペプシン様プロテアーゼで消化し、所望により、サンプルペプチドを抽出し;
b3) 1個またはそれ以上のサンプル中で、抽出したペプチドを個々に、部分的に分離し;
b4) 1個またはそれ以上の分離したサンプル中に存在するサンプルペプチドの質量または質量電荷比を、その選択した断片イオンと共に、質量分析により測定し、興味のある抗体由来の興味のある1個またはそれ以上のペプチドおよび内部標準ペプチドに相当するピークシグナルを同定し; そして
b5) サンプル中の興味のあるペプチドの量を決定し、それにより、生物学的サンプル中に含まれる興味のある抗体の量を決定すること
を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程b5)が、該ピークシグナルを、サンプル中の興味のあるペプチドの量を決定するために、シグナル標準化用内部標準ペプチドを用いて、ブランクの生物学的起源材料に種々の既知濃度で加えられた抗体の標準曲線に由来するピークシグナルと比較することからなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
分離工程b3)をサンプルペプチド分離により行う、すなわち、サンプルペプチドをクロマトグラフィー分離、例えば、HPLCにより分離する、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
質量分析解析工程b4)をタンデム質量分析(MS/MS)により行う、請求項4から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該内部標準ペプチドが、同位体標識ペプチド、例えば、重水素化ペプチドである、請求項4から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
興味のある該ペプチドが、興味のある抗体の断片に特異的に相当するピークシグナルと他のタンパク質断片に相当する非特異的シグナルを区別するために適当な、興味のある抗体の可変領域で選択される部分を少なくとも含む、請求項4から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
興味のある該ペプチドが、未変性IgG配列データベースから取得した相当する未変性IgGアミノ酸残基と比較して、抗体の可変軽鎖および/または重鎖領域で特有のアミノ酸残基を含む部分から選択される部分を少なくとも含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該質量分析解析を三連四重極質量分析を用いて行う、請求項4から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
該生物学的サンプルが、すべての種、好ましくは、ほ乳類に由来する血清、血漿、組織もしくは細胞株である、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
興味のある抗体が、ほ乳類、例えば、ヒトに投与される非天然に生じる抗体である、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
興味のある該抗体が、潜在的な治療薬である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該方法が、親和性カラムまたはアルブミン除去による抗体濃縮のいずれの工程をも有さない、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−515020(P2010−515020A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543205(P2009−543205)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/088258
【国際公開番号】WO2008/079914
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】