説明

抗体模倣足場

標的分子に特異的に結合する3本指タンパク質ドメインを含むタンパク質足場、例えば抗体模倣足場、かかるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、かかるタンパク質を使用する方法、およびかかる足場のライブラリーがここに提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者: Richard N. Harkins, Fang Jin, Ye Jin, Marian Seto
【0002】
関連出願の参照
本願は、2009年10月30日に出願された米国仮出願第61/256,901号に基づく優先権を主張し、該出願は引用により本明細書に取り込まれる。
【0003】
配列表
本願は、紙および電子形式の両方の配列表を伴って出願されるものである。出願人は、該紙および電子バージョンの内容が同一であることを証明する。
【0004】
分野
本明細書において、新規な結合特性を有する産物の作成およびスクリーニングに有用なタンパク質足場およびそのライブラリーが提供される。
【背景技術】
【0005】
背景
ハイブリドーマおよび組換えDNA技術は、いくつかの非常に成功した治療モノクローナル抗体医薬の開発をもたらしてきた。モノクローナル抗体(mAB)は、1000億ドルの生物製剤(Biologics)市場の大部分を占めており、次の10年間の生物製剤の成長にとって非常に重要な推進力になると期待されている。しかし、進歩および成功にも関わらず、生物製剤のクラスとしての mAb は高価であり、かつ、そのサイズ(150 kDa)および複雑性(多量体の、グリコシル化された重鎖および軽鎖)のために製造することが困難である。機能的には、mAB は低い組織浸透性を示し、Fc 領域の存在が望まれない Fc 受容体相互作用および補体活性化をもたらし得る。これらの問題点を回避するため、より容易に操作および生産することができる、より小さな代替抗体および抗体模倣物と称される非抗体に基づく形式が開発されてきた。抗体模倣物は、標的の適応症に応じて化学的または遺伝的に包含させることができる追加的エフェクター機能と共に、伝統的な抗体と比較して同等かまたは優れた結合親和性および特異性を示すことが明らかになっている。
【0006】
いくつかの抗体模倣物足場は、伝統的な抗体と一致する効力および選択性で治療標的と結合するよう操作されたものである。抗体模倣物は、イムノグロブリン様のフォールド(fold)、例えばフィブロネクチンIII型、NCAM および CTLA-4を利用して開発されたものである。イムノグロブリンフォールドと類似性を有さない他の模倣物足場が検証に成功しており、前臨床または臨床開発の中にある。
【0007】
“3本指(three finger)”のフォールドは、コブラ科(Elapid)(ウミヘビおよびコブラ)のヘビ毒の神経毒において最初に同定されたものであり、かかる大きな多重遺伝子スーパーファミリーにおいて 275 を超える配列が同定されており、その全てが共通の構造的特徴を有している。それらの類似した構造的特性にもかかわらず、該3本指毒素は、精巧な選択性および高い効力で多様な分子標的と結合する。例えば、短鎖および長鎖神経毒はイオンチャネルであるα1ニコチン性アセチルコリン受容体(nicotinic actylcholine receptor)(AChR)と結合し、ムスカリン毒素はムスカリン AChR と結合し、G-共役タンパク質受容体(GPCR)、デンドロアスピン(dendroaspin)および心臓毒A5はそれぞれインテグリン、αIIbβ3 および αvβ3 を標的とし、カルシセプチンおよび FS2 毒素は L型カルシウムチャネルと結合する。哺乳類においては、TFPD は、主として、リガンドの受容体、例えばウロキナーゼ(ウロキナーゼ受容体)、TGF-βアクチビンおよび骨形態形成タンパク質(TGF-β受容体ファミリー)ならびに補体タンパク質C8およびC9(CD59)の受容体として機能することを含む多様な結合特性を示す細胞表面タンパク質として生じる。
【発明の概要】
【0008】
概要
本明細書において、標的分子と特異的に結合する3本指タンパク質ドメインを含むタンパク質足場、例えば抗体模倣足場、かかるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、および、例えばヒトの疾患の処置および/または診断のためにかかるタンパク質を使用する方法が提供される。また、かかる足場のライブラリーも提供される。
【0009】
したがって、3本指タンパク質ドメイン(TFPD)を含むポリペプチドであって、該 TFPD が、改変された TFPD が特定された標的分子と結合するよう、天然の TFPD のアミノ酸配列と比較して改変されたアミノ酸配列を有するものである、ポリペプチドが提供される。いくつかの態様において、改変された TFPD と結合する標的分子は、天然の TFPD とは結合しない。いくつかの態様において、改変は、該 TFPD のフィンガー 1 (F1)、該 TFPD のフィンガー 2 (F2) 、該 TFPD のフィンガー 3 (F3)、または F1、F2 および F3 からなる群より選択される2以上のフィンガーの組合せの中の位置におけるものである。かかる改変は、置換または挿入であり得、さらには、可能性のある広範な標的分子をカバーするために特異的に操作されまたはランダムに生成され得る。
【0010】
いくつかの態様において、TFPD は哺乳類の TFPD である。いくつかの態様において、TFPD はヒトの TFPD である。いくつかの態様において、ヒトの TFPD は、CD59、ウロキナーゼ受容体(uPAR)ドメイン 1、uPAR ドメイン 2 および uPAR ドメイン 3 からなる Ly-6/uPAR(LU)タンパク質ドメインファミリー内の遺伝子の群、TGFR ドメイン 1、TGFR ドメイン 2、ACVR1、ACV1B、ACV1C、ACVL1、AMHR2、AVR2A、AVR2B、BMR1B、BMP1A および BMPR2 を含む TFPD の TGF-β受容体ファミリー、LYPD3-1、LYPD3-2、 LYPD4-1、LYPD4-2、LYPD5-1、LYPD5-2、TX101-1、TX101-2、CD177-1、CD177-2、CD177-3 および CD177-4 を含むヒト uPAR 遺伝子群のメンバー、ならびに LYPD1、LYPD2、LYPD6、LPD6B、LY6E、LY6D、LY6DL、LY66C、LY6K、LYG6E、LY65C、LY65B、LY66D、LY6H、LYNX1、PATE、PATEB、PATEDJ、PATEM、PSCA、SLUR1、SLUR2、ASPX、HDBP1、SACA4、C9orf57 および BAMBI を含む、TFPD を含む LU ファミリーのさらなるヒト遺伝子から選択される。さらに、いくつかの態様において、TFPD は不活性な突然変異体(inactive mutant)である。
【0011】
さらに、複数の3本指タンパク質ドメイン(TFPD)を含むポリペプチドのライブラリーであって、該 TFPD が、該改変された TFPD が特定された標的分子と結合するよう、対応する天然の TFPD のアミノ酸配列と比較して改変されたアミノ酸配列を有するものである、ライブラリーが提供される。
【0012】
また、抗体模倣物を作成するための足場として3本指タンパク質ドメイン(TFPD)を使用する方法であって、TFPD の1以上のフィンガーにアミノ酸配列を挿入することを含む、方法が提供される。いくつかの態様において、TFPD は CD59 または uPAR ドメイン 3 である。いくつかの態様において、挿入されるアミノ酸配列はランダムな配列である。
【0013】
また、本明細書に開示されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびにかかるポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図 1 は、ヒトの TFPD 配列のアラインメントを示す。ヒト TFPD を含む53の配列を UniProt データベースから取得し、整列させた。CD59 および uPAR ドメイン 3 を矢印で示す。
【図2】図 2 は、種を越える TFPD トポロジーの保存を示す。ヘビ毒α、ヒト CD59 およびヒト uPAR ドメイン 3 の構造を、世界的タンパク質データベースから取得した(それぞれ、pdb 受入番号 1iq9、2uwr および 2fd6)。骨格ポリペプチド鎖を示し、各構造について3つの“指”またはループ(F1、F2 および F3)を示す。
【図3】図 3 は、ヒト TFPD 配列の多様性プロットを示す。可溶性タンパク質または細胞表面受容体の細胞外ドメインをコードする17のヒト TFPD 配列を整列し、コンセンサス配列を得た。TFPD 3本指を基準にした配列の位置を示す。各位置における配列多様性を、Wu-Kabat のタンパク質可変性プロット(variability plot)によって示されるのと同様に表した。
【図4】図 4 は、2つの TFPD、CD59 および uPAR ドメイン 3 についての種をまたぐ配列アラインメントを示す。いくつかの種にわたって、図 4(A) は CD59 の配列アラインメントを示し、図 4(B) は uPAR D3 の配列アラインメントを示す。SwissProt/UniProt ID は以下の生物を意味する: HUMAN、ヒト; AOTTR、ヨザル; CALSQ、マーモセット; CERAE、アフリカミドリザル; MACFA、カニクイザル; PAPSP、ヒヒ; PONAB、オランウータン; SAISC、リスザル; PANTR、チンパンジー; RABIT、ウサギ; PIG、ブタ: RAT、ラット; MOUSE、マウス。
【図5】図 5 は、hCD59 RGD 挿入変異体の設計を示す。エリストスタチン(eristostatin)からの RGD を含む配列である、それぞれ 7、9 または 11 残基からなる RGD1、RGD2 および RGD3 を、示される通りに hCD59 の各フィンガーの先端へ操作した。各フィンガー内の挿入点を丸で囲んだ残基によって示し、挿入される残基が該丸で囲んだ残基と置き換わった。
【図6】図 6 は、hCD59 およびその RGD ループ挿入変異体の発現および機能解析を示す。flag タグが付加された wtCD59 またはその RGD ループ挿入変異体を保有する 1 ml の分注量の HB2151 細胞を、IPTG 誘導の 3-4 時間後に、2 前後に達する OD600 において回収した。ここから、1 ml の HB2151 細胞ごとに 100 μl のペリプラズム画分を抽出した。図 6A は、4-12% ビス-トリスゲル上で分離された、wtCD59 または CD59 F2 RGD1、RGD2 および RGD3 変異体を発現する E. coli からのペリプラズム画分を示し、ここで、タンパク質発現は HPR 抗flagモノクローナル抗体によって検出したものである。各レーンには、3.25 μl のペリプラズム画分と、対照としてのトレフォイルファクター 1 (TFF1) がロードされている。図 6B には、C9 または GPIIb/IIIa 結合アッセイによって測定される CD59 F2 ループ挿入変異体の機能解析のグラフを示す。図 6C および 6D は、F1 および F3 ループにおける hCD59 RGD 挿入変異体の発現解析(C)および機能解析(D)を示す。
【図7】図 7 は、uPAR ドメイン 3 (uPARD3) およびその F2 RGD ループ挿入変異体の発現、ならびにそれらの GPIIb/IIIa との結合能力の試験を示す。図 7A は、抗flag抗体によって検出される、HB2151 ペリプラズム画分における、flag タグが付加された wt uPARD3 および uPARD3 F2 変異体の発現を示す。図 7B は、uPARD3 F2 RGD 挿入変異体についての GPIIb/IIIa 結合アッセイを示す。TFF1 を陰性対照として用いている。
【図8】図 8 は、GPIIb/IIIa に対する hCD59 F2 RGD変異体の競合的結合能力を示す。系列希釈された(段階的 1:5 希釈) RGD ペプチドの競合者であるインテグリリン(Integrilin)およびフィブリノーゲンを 2.5 μl の CD59/F2/RGD3 ペリプラズム画分と共にプレインキュベートし、次いで GPIIb/IIIa でコートされた 96ウェルプレートに添加し、その後 GPIIb/IIIa 結合アッセイと同じ手順を行う。陰性対照として、2.5 μl の wtCD59 を用いている。
【図9】図 9 は、ファージ粒子の表面上における CD59-pIII 融合タンパク質の提示を実証するウエスタンブロット解析を示す。2x109 個の、wtCD59 またはその RGD 変異体を保有するファージ粒子または M13K07 対照ファージを、4-12% ビス-トリスゲル上で分離した。ファージの表面における CD59 の提示を、抗pIIIモノクローナル抗体および抗flag抗体によって調べた。
【図10】図 10 は、wtCD59 またはその RGD 変異体を保有するファージ粒子の機能解析を示すグラフを示す。C9 または IIb/IIIa に対する wtCD59 またはその RGD 変異体のファージの結合能力を、C9 または GPIIb/IIIa 結合アッセイによって測定した。
【図11】図 11 は、GPIIb/IIIa に対するファージ CD59 F2 RGD 変異体の競合的結合能力を示す。系列希釈された(段階的 1:10 希釈)、RGD ペプチドの競合者であるインテグリリンおよびフィブリノーゲンならびに陰性対照の KG を、ファージ CD59/F2/RGD1 と事前に混合し、次いで GPIIb/IIIa でコートされた 96 ウェルプレートに添加し、その後 GPIIb/IIIa 結合アッセイと同じ手順を行った。ファージ wtCD59 を陰性対照として用いた。
【図12】図 12 は、A) C9 および B) GPIIb/IIIa 結合アッセイ後の CD59/F2/RGD1 ファージミド DNA 解析を示す。等量のファージ wtCD59 およびファージ CD59/RGD1 を事前混合し、C9 または IIb/IIIa でコートされたプレートとインキュベートした。未結合のファージを洗浄除去した後、結合したファージを pH2.8 の 10 mM グリシンを用いて溶出させ、pH8.0 の 1M トリスバッファーを用いて中和した。次いで、指数関数的に増殖している TG1 細胞に溶出したファージを感染させ、アンピシリンを有する 2xYT 寒天プレート上に播種し、30℃で終夜インキュベートした。C9 または GPIIb/IIIa でコートされたファージ溶出物に由来する各プレートから、12のクローンをランダムに採取した。ファージミド DNA を単離し、PstI または DraIII 消化によって解析した。奇数番号のウェルは PstI 消化であり、偶数番号のウェルは DraIII 消化である。
【図13】図 13 は、CD59/F2/7-mer ライブラリーの配列解析を示す表である。該 CD59/F2/7-mer ライブラリーから90を超えるクローンを配列決定した。かかる表は、69 個のインフレーム(in-frame)配列の 7 つの位置の各々における各アミノ酸の頻度(20 のアミノ酸のうち)を示す。
【図14】図 14 は、F2 7-mer ランダムライブラリーから発現した CD59 タンパク質のウエスタン解析を示す。HB2151 細胞において CD59/F2/7-mer を発現する22の個々のクローンを採取し、IPTG と共にインキュベートした。ペリプラズム画分を単離し、4-12% ビス-トリスゲル上で分離した。可溶性タンパク質を、HRP と複合化した抗Flag抗体を用いて検出した。HB2151 細胞における wtCD59 のペリプラズム画分を陽性対照(“pos”)として用いている。
【図15】図 15 は、GPIIB/IIIa に対する陽性 CD59 F2 7-mer 結合者(binder)の特異性および配列解析を示す。図 15(A) は、ELISA によってさらに特徴決定された、最初のパニングからの GPIIb/IIIa に対する 6 つの陽性結合者の特異性を示す。Immulon 96 ウェルプレートを GPIIb/IIIa(特異的標的)またはメソテリン(非特異的標的)または BSA(非特異的標的)でコートした。ペリプラズム画分を単離し、標的または非標的でコートされた 96 ウェルプレートと共にインキュベートした。HRP と複合化した抗flag抗体を用いて結合を検出した。データを、405 nm の OD において測定した ELISA シグナルとして示す。図 15(B) は、陽性結合者の挿入されたアミノ酸配列を示す。最上部の配列は 7-mer の挿入を有する親配列である。X は、20 のアミノ酸のいずれかを意味する。灰色で覆われた領域は、7-mer のいずれかの末端に隣接する部分的 CD59 配列である。C3-C16: クローンの名称。図 15(C) は、インテグリン GPIIb/IIIa に対する CD59 F2 7-mer ライブラリーのスクリーニングから得られたユニークな結合者のうちの3つ、C3 (配列番号111)、C10 (配列番号112) および C16 (配列番号113) の全長配列を示す。
【図16】図 16 は、GPIIB/IIIa に対する陽性 CD59 F1 9-mer 結合者の配列解析を示す。陽性結合者のアミノ酸配列を示す。最上部の配列は、9-mer の挿入を有する親配列である。X は、20 のアミノ酸のいずれかを意味する。灰色で覆われた領域は、9-mer のいずれかの末端に隣接する部分的 CD59 配列である。
【図17】図 17 は、GPIIB/IIIa に対する陽性 UPARD3 F2 9-mer 結合者の配列解析を示す。陽性結合者のアミノ酸配列を示す。最上部の配列は、9-mer の挿入を有する親配列である。X は、20 のアミノ酸のいずれかを意味する。灰色で覆われた領域は、9-mer のいずれかの末端に隣接する部分的 UPARD3 配列である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
本発明は、記載される特定の方法、プロトコール、細胞株、動物の種または属、コンストラクトおよび試薬には限定されず、変化し得ることが理解されるべきである。本明細書において用いる用語は単に特定の態様を説明することを目的とするものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本願発明の範囲を限定することを意図するものではない事も理解されるべきである。
【0016】
本明細書において言及する全ての刊行物および特許は、例えば、本明細書に記載の発明と関連して用い得る、刊行物に記載のコンストラクトおよび方法を説明および開示するために、引用によって本明細書中に取り込まれる。上記の及び本明細書全体において言及される刊行物は、本願の出願日前におけるその開示のみを目的として提供される。本発明者らが先行発明によるかかる開示よりも先行する資格がないことを認めるものとみなされるべきものは、本明細書中には存在しない。
【0017】
定義
特に断りのない限り、本明細書において用いる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同等または等価なあらゆる方法、装置および材料を本発明の実施または試験において用いることができるが、好ましい方法、装置および材料を以下に記載する。
【0018】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いる場合、単数形の“ある”、“および”および“該”は、明確に断りのない限り、複数形への言及を含む。したがって、例えば“ある抗体”への言及は、1以上の抗体への言及であり、当業者に公知のその等価物などを含む。
【0019】
本明細書において用いる場合、“3本指タンパク質ドメイン”または“3本指ドメイン”または“TFPD”の用語は互換的に用いられ、本明細書においてフィンガー 1 (F1)、フィンガー 2 (F2) およびフィンガー 3 (F3) と命名された、特徴的なβシートを含む3つのループまたはフィンガーによって特徴付けられる特定のタンパク質ドメインをいう。典型的には、TFPD は長さが約 60-90 アミノ酸であり、大きな 5 から 6本鎖の逆平行βシートを形成する3つのループまたは“フィンガー”によって多くを占められている。通常、そこから3つのループが伸長するドメインの基部において、4つの保存されたジスルフィド結合が見出される。いくつかの TFPD タンパク質において、例えばいくつかのヒト TFPD の第1のフィンガーの先端において、第5のジスルフィドが見出され得る。長鎖ヘビ神経毒においては、第2のループの先端において第5のジスルフィドが見出される。4-5 個のジスルフィド結合のネットワークは、TFPD 足場に構造的安定性を与える。
【0020】
“ポリペプチド”、“ペプチド”、“アミノ酸配列”および“タンパク質”の用語は、本明細書において、あらゆる長さのアミノ酸のポリマーをいうために互換的に用いられる。該ポリマーは直鎖状であっても分岐状であってもよく、改変されたアミノ酸を含み得、非アミノ酸によって中断され得る。該用語は、改変されたアミノ酸ポリマー、例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化(lipidation)、アセチル化、リン酸化、または他のあらゆる操作、例えば標識化成分との複合化をも含む。本明細書において用いる場合、“アミノ酸”の用語は、天然および/または非天然もしくは合成のアミノ酸のいずれかをいい、これらに限定されないが、グリシンおよび D または L 両方の光学異性体、およびアミノ酸類似体およびペプチド模倣物が挙げられる。アミノ酸を指定するために、標準的1文字または3文字コードを用いる。
【0021】
特定のアミノ酸の1文字略号、その対応するアミノ酸、および3文字略号は以下の通りである: A、アラニン (Ala); C、システイン (Cys); D、アスパラギン酸 (Asp); E、グルタミン酸 (Glu); F、フェニルアラニン (Phe); G、グリシン (Gly); H、ヒスチジン (His); I、イソロイシン (Ile); K、リジン (Lys); L、ロイシン (Leu); M、メチオニン (Met); N、アスパラギン (Asn); P、プロリン (Pro); Q、グルタミン (Gln); R、アルギニン (Arg); S、セリン (Ser); T、スレオニン (Thr); V、バリン (Val); W、トリプトファン (Trp); Y、チロシン (Tyr); およびノルロイシン (Nle)。
【0022】
“ドメイン”の用語は、サイズに関わらず、安定な3次元構造をいう。典型的なドメインの3次構造は、溶液中において安定であり、かかるメンバーが単離されていても他のドメインと共有結合により融合していても同じままである。ここに規定するドメインとは、2次構造エレメント、例えばβシート、αヘリックスおよび非構造(unstructured)ループの空間的関係によって形成される特定の3次構造を有するものである。ミクロタンパク質(microprotein)ファミリーのドメインにおいては、通常、ジスルフィド架橋が3次構造を決定する主要なエレメントである。場合によっては、ドメインは、特定の機能的活性、例えばアビディティー(同じ標的に対する複数の結合部位)、多特異性(異なる標的に対する結合部位)、ヒト血清アルブミン(HSA)等の血清タンパク質または IgG (hIgG1、2、3 または 4) または赤血球と結合する半減期(ドメイン、環状ペプチドまたは直鎖状ペプチドを用いる)を付与することができるモジュールである。
【0023】
ポリペプチドの“フォールド”は、ジスルフィド結合の結合パターン(即ち 1-4、2-6、3-5)によって主に定義される。かかるパターンは、トポロジー的に不変のものであり、通常、例えば還元および酸化(酸化還元剤)によってジスルフィドを非結合化および再結合させることなしには別のパターンへの変換を受け入れない。通常、関連する配列を有する天然のタンパク質は同じジスルフィド結合パターンを採用している。システイン距離パターン(CDP)およびいくつかの固定された非cys残基ならびに、もしある場合には、金属結合部位が主な決定要因である。タンパク質のフォールディングは、少数の場合において周囲の配列によっても影響を受け(即ちプロペプチド)、また、タンパク質がそのフォールディングを補助する2価の金属イオン(即ち Ca++)と結合するのを可能にする残基の化学的誘導体化(即ちγ-カルボキシル化)によって影響を受けることもある。大多数のポリペプチドについては、かかるフォールディングの補助は必要ない。
【0024】
しかし、同じ結合パターンを有するタンパク質は依然として、タンパク質にかなり異なる構造を与えるのに十分な大きさのループの長さおよび組成における差異に基づいて、複数のフォールドを含み得る。タンパク質のフォールドの決定要因は、異なるフォールドと比較して構造を大きく変化させるあらゆる特質、例えばシステインの数および結合パターン、システインの間隔、システインループ間の配列モチーフ(特に、フォールディングに必要とされる可能性が高い固定されたループ残基)の差異、またはカルシウム(または他の金属もしくは補因子)結合部位の位置または組成における差異である。
【0025】
“足場”の用語は、目的に合った機能および特性を有する新たな産物、例えばタンパク質または抗体模倣物の操作のための、ポリペプチドプラットフォームをいう。かかる足場は、タンパク質ライブラリーの構築に有用である。典型的には、足場は、配列の関連するタンパク質のファミリーのアラインメントにおいて観察される保存された残基によって規定される。固定された残基は、特にアラインされたタンパク質の機能が異なるものである場合には、フォールディングまたは構造に必要とされ得る。したがって、足場からタンパク質を設計する場合、フレームワークの有益な特性にとって重要なアミノ酸残基を維持し、一方で他の残基を無作為化しまたは突然変異させ得る。タンパク質足場の完全な説明としては、システインの数、位置または間隔および結合パターン、ならびにループ内のあらゆる固定された残基の位置および同一性(identity)が挙げられる。
【0026】
“無作為化された”または“突然変異した”とは、テンプレート配列と比較して1以上のアミノ酸改変を含むことを意味する。“無作為化する”または“突然変異させる”とは、配列に、例えばアミノ酸改変を導入する工程を意味する。無作為化または突然変異は、一般的には核酸コード配列の、意図的、やみくも(blind)または自発的な配列変化によって達成され得、あらゆる手法、例えば PCR、エラープローン(error-prone) PCR、または化学的 DNA 合成によって生じ得る。“対応する非突然変異タンパク質”とは、導入されたアミノ酸突然変異を除いて配列が同一であるタンパク質を意味する。アミノ酸は、置換、即ち1つのアミノ酸を異なるアミノ酸へ置換することによって改変し得る。アミノ酸はまた、アミノ酸残基の挿入または欠失によっても改変し得る。
【0027】
本明細書において用いる場合、“抗体模倣物”または“模倣物”の用語は、抗体と同様の結合を示すが、より小さな代替抗体または非抗体タンパク質であるタンパク質を意味する。
【0028】
本明細書において用いる場合、“非抗体タンパク質”とは、自然にまたは哺乳類の免疫化後に哺乳類の B 細胞によって産生されないタンパク質を意味する。
【0029】
タンパク質に適用される“非天然”とは、タンパク質が、対応する野生型またはネイティブなタンパク質とは異なる少なくとも1つのアミノ酸を含むことを意味する。非天然配列は、例えば、比較ウィンドウが対象の(問合せ)配列の長さである最も低い最小和確率(smallest sum probability)を用いて、Genbank の非冗長(“nr”)データベースと比較する場合には BLAST 2.0 を用いて、BLAST 検索を行うことによって決定することができる。BLAST 2.0 アルゴリズムは Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410 に記載されている。BLAST 解析を行うためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)を介して公的に利用可能である。
【0030】
本明細書において用いる場合、“単離された”の用語は、自然界においてポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体またはその断片に通常付随している成分、細胞および他のものから分離されていることを意味する。
【0031】
“ポリヌクレオチド”、“核酸”、“ヌクレオチド”および“オリゴヌクレオチド”の用語は、互換的に用いられる。これらは、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはそれらの類似体のいずれかである、あらゆる長さのヌクレオチドのポリマー形態をいう。ポリヌクレオチドは、既知または未知の、あらゆる3次元構造を有し得、あらゆる機能を発揮し得る。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である: 遺伝子または遺伝子断片のコードまたは非コード領域、連鎖解析によって規定される遺伝子座(座)、エキソン、イントロン、メッセンジャー RNA (mRNA)、トランスファー RNA、リボソーム RNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、あらゆる配列の単離 DNA、あらゆる配列の単離 RNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、改変されたヌクレオチド、例えばメチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体を含み得る。存在する場合には、ポリマーの組立て(assembly)前または後に、ヌクレオチド構造に対する改変を与えてもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、重合の後に、例えば標識成分との複合化によって、さらに改変し得る。
【0032】
ポリヌクレオチドについて適用される“組換え”とは、ポリヌクレオチドが、クローニング、制限および/またはライゲーション工程および天然に見出されるポリヌクレオチドとは異なるコンストラクトをもたらす他の手順の様々な組合せの産物であることを意味する。
【0033】
“ベクター”または“プラスミド”とは、挿入された核酸分子を宿主細胞の中および/または間へ移す核酸分子であり、好ましくは自己複製するものである。該用語は、主として細胞内への DNA または RNA の挿入のために機能するベクター、主として DNA または RNA の複製のために機能するベクターの複製、および DNA または RNA の転写および/または翻訳のために機能する発現ベクターを含む。上記機能の1より多くを提供するベクターも含まれる。“発現ベクター”とは、適切な宿主細胞に導入された場合に、転写されポリペプチドへ翻訳されることができるポリヌクレオチドである。“発現系”とは、通常、所望の発現産物を生産するよう機能することができる発現ベクターを含む適切な宿主細胞を暗示する。
【0034】
“宿主細胞”には、対象ベクターのレシピエントとなり得るかまたはレシピエントとなっている個々の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には、単一の宿主細胞の後代が含まれる。後代は、自然な、偶発的なまたは計画的な突然変異のため、必ずしも元の親細胞と(形態またはゲノムの全 DNA 量において)完全に同一でなくともよい。宿主細胞には、本明細書に記載されるベクターを用いてインビボでトランスフェクトされた細胞が含まれる。本明細書に記載される宿主細胞の例は、CHO K1 細胞である。
【0035】
“医薬組成物”は、該組成物をインビトロ、インビボまたはエキソビボの診断または治療用途に適したものにする不活性または活性な医薬上許容される担体と活性物質との組合せを含むことを意図する。
【0036】
本明細書において用いる場合、“医薬上許容される担体”の用語は、標準的な医薬担体のいずれか、例えばリン酸緩衝生理食塩水溶液、水、およびエマルション、例えば油/水または水/油エマルション、ならびに様々なタイプの湿潤剤を包含する。組成物はまた、安定剤および保存剤をも含み得る。担体、安定剤およびアジュバントの例については、Martin, REMINGTON'S PHARM. SCI., 15th Ed. (Mack Publ. Co., Easton (1975)) を参照されたい。
【0037】
3本指タンパク質ドメイン
抗体模倣物は、非伝統的な抗体に基づくタンパク質ドメインまたは足場に由来する生物製剤の新規なクラスを表す。頑強な模倣物の構造的特徴としては、内因性の全体的な立体構造安定性および足場内の可変性ループ領域に対する広範な改変に耐える能力が挙げられる。かかる特徴は、新規な結合特性を有する産物の大きなライブラリーの作成を可能にする。
【0038】
3本指タンパク質ドメイン(TFPD)を、新規かつ頑強な模倣物にとって望ましい特性と一致する特定の構造上および機能上の判断基準を用いた公共のタンパク質データベースの系統的検索によって、新規な抗体模倣物として同定した。TFPD は、約 60 から 90 アミノ酸残基を有する小さなものであり、約 4 つまたは 5 つのジスルフィド結合を含むジスルフィドに富むものであり、かつ、図 2 に示されるβシートを含む3つの別個のループまたは“フィンガー”を含むものである。3本指タンパク質ドメインは、脊椎動物にわたって存在し、強力かつ致死的なヘビ毒(例えばα-ブンガロトキシン)から生理学的に重要な細胞表面受容体(例えばウロキナーゼ受容体)まで、広範な機能的多様性を示す。
【0039】
ヒトの TFPD を、よく機能する(well-behaved)模倣物の特性と一致する検索基準を用いて、潜在的模倣物足場として同定した。該基準によって、小さく(長さが 50-100 アミノ酸)、安定で(可溶性、細胞外)、かつ、ヒト起源のものであるタンパク質ドメインを選択した。さらに、新規な標的、特に膜内在性タンパク質、例えば GPCR およびイオンチャネルをスクリーニングするためのライブラリーの作成および提示を許容する構造を探索した。したがって、組成において変化し得、かつ、長さにおいて伸長し得るループを有するタンパク質ドメインは、特定の標的タンパク質に見出される結合ポケットまたは深い間隙において大きな価値のあるものとなり得る。ラクダ科の動物(camelid)およびサメに由来する抗体において見出される伸長した CDR3 ループもかかる特徴を示すことが示されている。プラスモジウム(plasmodium)の頂端膜抗原(AMA1)に特異的なサメ IgNAR の可変重鎖に存在する伸長した CDR3 ループは、該タンパク質の深い疎水性間隙に侵入することが示されている。
【0040】
TFPD は3つのループ領域または“フィンガー”を含むものであり、突然変異誘発試験によって、標的タンパク質、例えばアセチルコリン受容体との結合に関与するいくつかのヘビ毒素の接触残基(contact residue)がループ内に存在することが示された。ライブラリー設計戦略は、足場のループ領域内において多様性を形成することにより、TFPD の天然の結合特性を利用するものである。その際、これまで標的とすることが困難であることが証明されていたタンパク質、例えば膜内在性タンパク質(例えば Gタンパク質共役受容体およびイオンチャネル)に対して TFPD 結合者を開発することができると考えられる。
【0041】
潜在的模倣足場として同定された TFPD としては、これらに限定されないが、図 1 に記載されるものが挙げられる。かかる TFPD には、Ly-6/uPAR(LU)タンパク質ドメインファミリー内の遺伝子、例えば CD59 (SwissProt/UniProt ID# P13987)、ウロキナーゼ受容体(uPAR)ドメイン 1 (Q03405)、uPAR ドメイン 2 (Q03405) および uPAR ドメイン 3 (Q03405) が含まれる。TFPD には、形質転換増殖因子β受容体(TGFR)ファミリー内の遺伝子、例えば TGFR ドメイン 1 (P36897)、TGFR ドメイン 2 (P37173)、ACVR1 (Q04771)、ACV1B (P36896)、ACV1C (Q8NER5)、ACVL1 (P37023)、AMHR2 (Q16671)、AVR2A (P27037)、AVR2B (Q13705)、BMR1B (P36894)、BMR1A (O00238) および BMPR2 (Q13873) も含まれる。他の TFPD としては、ヒト uPAR 遺伝子群のメンバー、例えば LYPD3-1 (O95274)、LYPD3-2 (O95274)、LYPD4-1 (Q6UWN0)、LYPD4-2 (Q6UWN0)、LYPD5-1 (Q6UWN5)、LYPD5-2 (Q6UWN5)、TX101-1 (Q9BY14)、TX101-2 (Q9BY14)、CD177-1 (Q8N6Q3)、CD177-2 (Q8N6Q3)、CD177-3 (Q8N6Q3) および CD177-4 (Q8N6Q3) が挙げられる。さらに、TFPD には、ヒトの LU ファミリーの遺伝子、例えば LYPD1 (Q8N2G4)、LYPD2 (Q6UXB3)、LYPD6 (Q86Y78)、LPD6B (Q3NI32)、LY6E (Q16553)、LY6D (Q14210)、LY6DL (Q99445)、LY66C (O95867)、LY6K (Q17RY6)、LYG6E (Q9UMP8)、LY65C (Q6SRR4)、LY65B (Q8NDX9)、LY66D (O95868)、LY6H (O94772)、LYNX1 (Q9BZG9)、PATE (Q8WXA2)、PATEB (P0C8F1)、PATEDJ (B3GLJ2)、PATEM (Q6UY27)、PSCA (O43653)、SLUR1 (P55000)、SLUR2 (Q86SR0)、ASPX (P26436)、HDBP1 (Q8IV16)、SACA4 (Q8TDM5)、C9orf57 (Q5W0N0) および BAMBI (Q13145) が含まれる。
【0042】
さらに、ヒト TFPD の不活性突然変異体も、潜在的模倣足場としての役割を果たし得る。かかる不活性突然変異体は、全体的な立体構造安定性を依然として維持しつつ、中立的な機能と共に新規な結合特性の導入を可能にするため、潜在的足場として有用である。
【0043】
CD59 に関しては、位置 24 または 40 における突然変異が不活性突然変異体を生成することが知られている。Huang Y et al., J. Biol. Chem. (2005) 280:34073-79 に記載される通り、ヒト CD59 タンパク質のアラニンスキャンを用いて、Asp24Ala および Trp40Ala の両方の CD59 突然変異体が、CHO 細胞において発現させた場合、CHO 細胞の補体溶解を阻害する能力において、CD59 野生型を発現する CHO 細胞と比較して 100% 近く不活性であることが示された。さらに、Bodian DL et al., J. Exp. Med. (1997) 185:507-16 においては、ヒト CD59 の突然変異解析が行われ、突然変異体が機能的活性および活性な立体構造特異的 CD59 抗体によって認識される能力について特徴決定された。この解析により、CD59 突然変異体である Trp40Glu が、不活性であるが、立体構造特異的抗体によって決定される通り正しくフォールディングされたままであることが実証された。hCD59 突然変異体である Asp24Arg の活性もまた、破壊されているが、依然として正しくフォールディングされていることが立体構造に感受性の CD59 抗体によって示された。したがって、不活性な CD59 突然変異体は、提示、ライブラリー作成、およびスクリーニングのためのテンプレート足場として用いることができる。いくつかの態様において、不活性な CD59 突然変異体は、個別におよび組み合わせて、位置 Asp24 および Trp40 における改変を有する。いくつかの態様において、不活性な CD59 突然変異体は、改変 Asp24Ala、Asp24Arg、Trp40Ala、Trp40Glu またはこれらの組合せを含み得る。
【0044】
さらに、uPAR ドメイン 3 に関しては、uPAR の 240-248 に相当する特定の 9-mer ペプチドがインテグリンの結合を阻止すること、さらには位置 245 における単一のアミノ酸突然変異体である uPAR Ser245Ala がインテグリンの結合およびシグナル伝達を完全に抑制することが示されている。したがって、いくつかの態様において、uPAR ドメイン 3 の不活性突然変異体は、提示、ライブラリー作成、およびスクリーニングのためのテンプレート足場として用いることができる。いくつかの態様において、uPAR ドメイン 3 の不活性突然変異体は位置 Ser245 における改変を含み、いくつかの態様において、該改変は Ser245Ala を含む。
【0045】
他の種の TFPD を提示、ライブラリー作成およびスクリーニングのためのテンプレート足場として用い得ることも企図される。図 4A は、HUMAN、ヒト; AOTTR、ヨザル; CALSQ、マーモセット; CERAE、アフリカミドリザル; MACFA、カニクイザル; PAPSP、ヒヒ; PONAB、オランウータン; SAISC、リスザル; PANTR、チンパンジー; RABIT、ウサギ; PIG、ブタ; RAT、ラット; および MOUSE、マウスの CD59 のアラインメントを示す。これらの種は保存されたジスルフィドを示しており、そのため、同様の3次構造を保持しているはずである。同様に、図 4B は、保存されたジスルフィドを示す、いくつかの種の uPAR ドメイン 1-3 のアラインメントを示す。
【0046】
したがって、本願の一つの側面は、3本指タンパク質ドメイン(TFPD)を含むポリペプチドであって、該 TFPD が、特定された標的分子と結合するよう、天然の TFPD のアミノ酸配列と比較して改変されたアミノ酸配列を有している、ポリペプチドである。いくつかの態様において、該改変は、該 TFPD のフィンガー 1 (F1)、該 TFPD のフィンガー 2 (F2)、該 TFPD のフィンガー 3 (F3)、または2以上のフィンガーの組合せの中の位置におけるものである。
【0047】
いくつかの態様において、改変された TFPD と結合する特定された標的分子は、天然の TFPD とは結合しない。いくつかの態様において、特定された標的分子としては、これらに限定されないが、タンパク質、ヌクレオチド、抗体、小分子または対象とする他の抗原が挙げられる。いくつかの態様において、特定された標的分子は、治療標的である。治療標的と結合することにより、改変された TFPD は標的タンパク質のアゴニストまたはアンタゴニストとして機能し得る。したがって、改変された TFPD は、治療または診断目的の医薬化合物として潜在的に有用である。
【0048】
改変は、例えば突然変異、定方向進化(directed evolution)または他の適切な方法によって、1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基に置換することにより作成し得る。単一のまたは複数の特定のアミノ酸を置換のために選択してもよく、あるいは、ランダムな置換を生じさせてもよい。いくつかの態様において、ポリペプチドは、予め決められた特定の置換を含むものである。他の態様において、ポリペプチドは、いずれかのアミノ酸残基のランダムな置換を含むものである。
【0049】
改変は、アミノ酸残基の配列を挿入することによって作成することもできる。挿入は、わずか 1 残基であってもよい。あるいは、挿入は、いかなる長さのものであってもよい。例えば、以下の実施例に記載される 7 残基、9 残基および 11 残基の挿入を、F1、F2 または F3 の中へ挿入し得る。挿入は、各フィンガーに沿って、いずれかの残基の間において作成することもできる。さらに、挿入は、1以上のアミノ酸残基の付加と共に1以上の既存の残基の置換を包含するものであり得る。例えば、2つのアミノ酸残基を7つのアミノ酸残基で置換することができ、それにより、合計で5つのアミノ酸残基の挿入がもたらされる。
【0050】
いくつかの態様において、改変は、欠失によっても作成し得る。かかる欠失は、3次元構造の激しい変化を防ぐため、慎重に行わなければならない。
【0051】
いくつかの態様において、改変は、2以上のフィンガーの組合せにおいて作成し得る。例えば、改変は、F1 および F2、F2 および F3、F1 および F3、または F1、F2 および F3 の中において作成し得る。さらに、改変は、置換もしくは挿入またはこれらの組合せのいずれかであり得る。例えば、F1 において置換を作成し、F3 において挿入を作成し得る。
【0052】
本願の別の側面により、複数の3本指タンパク質ドメイン(TFPD)を含むポリペプチドのライブラリーであって、該 TFPD が、特定された標的分子と結合するよう、対応する天然の TFPD のアミノ酸配列と比較して改変されたアミノ酸配列を有するものである、ライブラリーが提供される。かかるライブラリーは、単一のフィンガー、例えば F2 において生成されたランダムな改変を含むものであってもよく、または、複数のフィンガーにおいて生成されたランダムな改変を含むものであってもよい。
【0053】
また、本明細書に記載されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含むベクター、およびこれらのベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0054】
多特異性足場
二特異性抗体とは、単一の分子と同時に2つの異なる標的分子を標的とし、結合することができる代替的抗体型式を意味する。多価抗体模倣物の概念は、足場へのエフェクター機能の付加にまで拡張することができる。例えば、1つのドメインがヒト血清アルブミンと結合し、それにより模倣物の半減期を延長する一方、他方のドメインが標的分子と結合する二特異性模倣物が設計されている。
【0055】
別の態様において、TFPD は、腫瘍形成に関与するリガンドを用いて操作することもできる。例えば、TFPD は、T 細胞上の CD3 に標的化された1つの結合ドメインと癌特異的細胞表面抗原に標的化された別のドメインとを用いて操作することができる。抗 CD3 ドメインは T 細胞と腫瘍細胞の間の免疫シナプスを作り出し、究極的にはアポトーシスまたはプログラム細胞死と称される腫瘍細胞における自己破壊過程を誘導する。
【0056】
いくつかの態様において、TFPD 足場は、エフェクター機能を与えるエレメントをさらに含み得る。例えば、エフェクター機能としては、循環における TFPD の半減期を延長する、ヒト血清アルブミン(HSA)に特異的に結合する TFPD 結合者が挙げられる。別の例において、TFPD は、循環における TFPD の半減期を延長するために、ポリエチレングリコール(PEG)分子またはヒドロキシエチルデンプン(HES)分子と化学的に複合化できるよう、エフェクター機能を含み得る。別の例において、Fcγ受容体(FcγR)媒介性エフェクター機能、例えば抗体依存性細胞傷害(ADCC)および抗体依存性細胞食作用(antibody-dependent cell-mediated phagocytosis)(ADCP)を増強するため、TFPD は、免疫グロブリンの Fc 領域と融合している。別の例において、腫瘍特異的 TFPD は、腫瘍特異的 TFPD 標的化および細胞毒性を可能にする殺細胞性トキソフォア(toxophore)と化学的に複合化している。
【0057】
本願の別の側面において、個々のフィンガーまたはループが異なる標的と結合するよう、単一のドメイン内において二特異性または多価の TFPD を作成することができる。例えば、F1 ループが特定の標的タンパク質と結合する一方、F2 ループが異なる標的タンパク質と結合するよう、単一の TFPD を作成することができる。
【0058】
あるいは、各 TFPD 単量体が異なる標的と結合する TFPD 多量体を設計し、融合タンパク質として発現させることができる。例えば、各 TFPD 単量体が腫瘍細胞上において過剰発現する2つの異なる受容体に結合し、その機能を阻止する TFPD 二量体を作成することができる。別の例において、一方の TFPD 単量体がヒト血清アルブミンと高い親和性で結合し、他方の TFPD 単量体が腫瘍細胞上において過剰発現する標的受容体と結合する、延長された半減期を有する TFPD 二量体を作成することができる。
【0059】
自然界における TFPD 多量体の証拠は、細胞表面受容体、例えばウロキナーゼ受容体(uPAR)および TGF-β受容体ファミリーのメンバーの外部ドメインとして発現する、哺乳類におけるいくつかの TFPD に由来するものである。uPAR の場合、uPAR の細胞外領域を構成する3つの TFPD が異なる結合特性を有し、ドメイン 1 および 2 が uPAR リガンドであるウロキナーゼとの結合に主として関与する一方、ドメイン 3 がインテグリンα5β1との結合に関与することが示されている。
【0060】
使用
本明細書に記載される TFPD 足場は、新規な結合特性を有するタンパク質のライブラリーを作成するのに有用である。
【0061】
いくつかの態様において、TFPD 足場は、抗体模倣物を作成するのに有用である。かかる抗体模倣物は、対象のあらゆる標的抗原と結合するよう進化させ得る。これらのタンパク質は、天然の抗体よりも優れた特性を有し、インビトロで迅速に進化させることができる。したがって、これらの抗体模倣物は、研究、治療および診断の分野を含む抗体が使用される全ての分野において、抗体の代わりに採用し得る。さらに、これらの足場は抗体よりも優れた溶解性および安定性を有するため、本明細書に記載される抗体模倣物は、抗体分子を破壊または不活化する条件下においても使用し得る。最後に、足場は事実上いかなる化合物との結合をも可能にするため、これらの分子は、研究、診断および治療の分野における用途も見出される完全に新規な結合タンパク質を提供する。
【0062】
別の態様において、標的の結合は、溶液中において行うことができる。例えば、その手法は、Viti F et al. Methods in enzymology (2000) vol.326. p.480-505; や Huang L et al. J. of Mol. Recognit. (2005) 18: 327-333 に記載されている。抗体模倣足場を保有するファージを、溶液中においてビオチン化された標的と結合させ、次いで、該複合体を、ストレプトアビジンと結合した Dynabeads を用いて捕獲する。標的の結合は、細胞表面上においても行うことができる。例えば、磁気選別の手法を用いて細胞表面抗原に対する抗体を選択する方法が記載されている(Philippe M. O'Brien, Robert Aitken による Antibody phage display: methods and protocols、Chapter 18, p219-226)。Eisenhardt SU ら (2007, Nature Protocols vol 2. 3063-3073) も、細胞表面受容体(標的)の様々な立体構造状態を区別することができる特異性の高い scFv 抗体クローンの選択を可能にするプロトコールを記載している。
【0063】
一つの特定の例において、TFPD 足場は、選択の標的として用い得る。例えば、10残基のループ中に提示される特定のペプチド配列と結合するタンパク質が必要とされる場合、そのループのうち1つが10の長さに、かつ、該所望の配列に設定された単一の TFPD クローンを構築する。新しいクローンを細菌において発現させ、精製し、次いで固体の支持体上に固定化する。次いで、適切な足場に基づくファージディスプレイライブラリーを該支持体と相互作用させ、該支持体を洗浄し、所望の分子を溶出させ、そして上記の通りに再選択する。
【0064】
同様に、本明細書に記載される足場、例えば TFPD 足場は、足場によって、例えば TFPD のフィンガーにおいて提示されるペプチド配列と相互作用する天然のタンパク質を見出すために使用し得る。足場タンパク質、例えば TFPD タンパク質を、上記の通りに固定化し、提示されたループに対する結合者についてファージディスプレイライブラリーをスクリーニングする。該結合者を複数回(multiple rounds)の選択によって濃縮し、DNA 配列決定によって同定する。
【0065】
足場に基づく結合タンパク質の定方向進化
本明細書に記載される抗体模倣物は、新規な又は改良された結合タンパク質を進化させるためのあらゆる手法において用い得る。一つの特定の例において、結合の標的を固体支持体、例えばカラム樹脂またはマイクロタイタープレートのウェル上に固定化し、標的を、候補である足場に基づく結合タンパク質のライブラリーと接触させる。かかるライブラリーは、抗体模倣物クローン、例えば TFPD フィンガーの配列および/または長さの無作為化を介して野生型 TFPD 足場から構築された TFPD クローンからなるものであり得る。必要な場合には、このライブラリーは、GP Smith, Science (1985)、J McCafferty et al., Nature (1990) または HB Lowman et al., Biochemistry (1991) に記載される、繊維状ファージ上に提示される融合タンパク質ライブラリーからなるものであり得る。ライブラリーはまた、酵母[ET Boder et al., Nat. Biotech. (1997)を参照]もしくは哺乳類細胞[RR Beerli et al. Proc. Nat. Acad. Sci. USA (2008)を参照]の表面上に、またはリボソームディスプレイを用いてインビトロで[C Zahnd et al., Nat. Methods (2007)を参照]提示されてもよい。別の例において、ライブラリーは、例えば Szostak et al., 米国整理番号09/007,005 および 09/247,190; Szostak et al., WO98/31700; および Roberts & Szostak, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1997) vol. 94, p. 12297-12302 に記載される手法によって作成された、RNA-タンパク質融合ライブラリーであり得る。あるいは、それは DNA-タンパク質ライブラリー(例えば Lohse, DNA-Protein Fusions and Uses Thereof、米国整理番号60/110,549、米国整理番号09/459,190、および WO 00/32823 に記載されるもの)であってもよい。融合ライブラリーを固定化された標的と共にインキュベートし、支持体を洗浄して非特異的結合者を除去し、最も緊密な結合者を非常にストリンジェントな条件下で溶出させ、配列のさらなる突然変異誘発を伴うかまたは伴わずに、配列情報を回収するため、または選択工程を繰り返すために用い得る結合者の新規なライブラリーを作成するために、PCR に供試する。抗原に対する十分な親和性を有する結合者が得られるまで、多数回の選択を行い得る。
【0066】
標的タンパク質の捕獲および検出
選択された TFPD 足場結合者の集団は、例えば、サンプル中、例えば生物学的サンプル中における、分析物標的の検出および/または定量のために用い得る。このタイプの診断アッセイを行うために、対象とする標的に対する選択された足場結合者を適切な支持体上に固定化して、多機能(multi-featured)タンパク質チップを形成する。次いで、サンプルを該チップにアプライし、固定化された結合者の標的特異性に基づいて、結合者と結合するサンプルの構成成分を同定する。この手法を用いて、サンプル中において1以上の構成成分を同時に同定または定量し得る(例えば、サンプルのプロファイリングを行うための手段として)。
【0067】
標的検出のための方法は、結合したタンパク質標的のレベルを測定することを可能にするものであり、これらに限定されないが、ラジオグラフィー、蛍光スキャン、質量分析(MS)および表面プラズモン共鳴(SPR)が挙げられる。フォスフォイメージャー(phosphorimager)システム(Molecular Dynamics、Sunnyvale、Calif.)を用いるオートラジオグラフィーを、例えば 35Sメチオニンを用いて放射性標識された標的タンパク質の検出および定量のために用いることができる。レーザースキャナ(以下を参照)を用いる蛍光スキャンを、蛍光標識された標的の検出および定量のために用い得る。あるいは、蛍光スキャンを、それ自身で標的タンパク質と結合する蛍光標識されたリガンド(例えば、以下に記載する、蛍光標識された標的特異的抗体または標的ビオチンと結合する蛍光標識されたストレプトアビジン)の検出のために用い得る。
【0068】
質量分析は、結合した標的をその分子量に基づいて検出および同定するために用いることができる。結合した標的タンパク質の脱離は、以下に記載する通り、レーザー支援によってチップ表面から直接的に達成し得る。質量の検出は、分子量に基づく、リン酸化またはグリコシル化等の翻訳後修飾を含む標的の改変の測定をも可能にする。表面プラズモン共鳴は、足場結合者が(例えば Biacore, Sweden から得られる)適切な金表面上に固定化される、結合したタンパク質標的の定量のために用いることができる。
【実施例】
【0069】
実施例
本明細書に記載される実施例および実施態様が限定ではなく例証を目的とするものであること、および特許請求の範囲に記載される本願発明の精神および範囲から逸脱することなく他の実施例を用い得ることは、当業者には明らかであろう。
【0070】
実施例 1、データベースマイニングからのヒト TFPD 足場の同定
抗体模倣物のための良好な足場として機能し得る新規なタンパク質フォールドを同定するために公共のタンパク質データベースを検索する際に、いくつかの基準を採用した。理想的には、足場は、小さなものであり、長さが 50 から 100 アミノ酸であり、免疫原性を最小化するためにヒト由来のものであり、取扱いの容易性を確保するために可溶性かつ細胞外のものであり、かつ、既知の3次元構造を有するものである。加えて、タンパク質ドメインの組換え形態を異種性宿主生物、例えば大腸菌(E.coli)または酵母(Pichia)において高レベルで発現させ得ることを実証するデータが存在すべきである。さらに、足場が新規な結合特性の導入を含む改変を許容することを示す突然変異誘発またはタンパク質操作のデータがあることが非常に望ましい。
【0071】
また、潜在的な足場を、従前は伝統的な抗体に基づくアプローチを用いて困難であると証明されていた標的、特に膜内在性タンパク質、例えば GPCR およびイオンチャネルと結合する能力を用いて選択した。かかる足場の構造上および機能上の適応性は、様々な標的クラスと結合するよう足場を再操作し得ることを実証するのに重要である。
【0072】
上述の基準を用いて、SMART (Simple Modular Architecture Research Tool、5.1 release) データベース中の 752 のドメインから、88 のタンパク質ドメインを同定した。これらのドメインをタンパク質の構造的分類(SCOP)データベースに対してマッピングし、種にまたがって最も高度に保存されている配列についてblast検索した後、17 のタンパク質ドメインを選択し、3本指タンパク質ドメイン[SM001526、Ly-6/uPA 受容体様ドメイン(LU)]を模倣物足場としての実験的検証のために選択した。
【0073】
SCOP データベース(タンパク質の構造的分類)において、“ヘビ毒様”のフォールド[受入番号 # 57301]は、3つのスーパーファミリー(ヘビ毒毒素、デンドロアスピン、および細胞表面受容体の細胞外ドメイン)内の 36 のタンパク質構造からなる。“ヘビ毒様”フォールドは、長さが 60-75 アミノ酸であり、3つの大きなループまたは“フィンガー”を含む2つのβシートを有するものとして定義される。4-5 個のジスルフィドのネットワークは、TFPD 足場に構造的安定性を与える。
【0074】
ヒト TFPD 足場は、マウス Ly-6 抗原と関連しており、主として細胞表面受容体(例えば TGF-β受容体ファミリー、ウロキナーゼ受容体、uPAR)の外部ドメイン内に存在する少なくとも 53 個の既知のヒトタンパク質、および GPI結合タンパク質(例えば CD59、PSCA) を含む。図 1 は、該 53 個の既知のヒト TFPD 配列を、そのUniProt(http://www.uniprot.org/)の受入番号と共に示す。2つのヒト TFPD ドメイン、具体的には CD59 およびヒトウロキナーゼ受容体(uPARD3)内の第3ドメインを、不活性突然変異を記載する突然変異誘発データおよびそのそれぞれのリガンドとの複合体についての構造データを含む、これらのタンパク質ドメインについて知られている大量の構造および機能のデータに基づいて、提示候補として選択した。
【0075】
TFPD は、種にまたがって非常に類似したトポロジーを共有している(図 2)。該フォールドは、そこから3つのループまたは“フィンガー”が生じる 4 つのジスルフィドの構造的コアによって区別される。ヒト TFPD のフィンガー 1 内においては、このループの遠位部分に対してさらなる構造的安定性をもたらし得る第5のジスルフィドが存在する。
【0076】
TFPD は、ヒト TFPD 内において著しく類似したトポロジーを共有しているが、特に3本指領域内において、大きな配列多様性が存在する。図 3 は、SCOP データベースからの 17 個のヒト TFPD についての配列多様性プロットを示す。高度の配列バリエーションは、該ドメインの機能的多様性ならびに高度の改変に適応する一方、全体的な立体構造を維持する該 TFPD 足場の能力を反映する。ループ内において大きなギャップ領域が生じる傾向があり、この事は、該フィンガーが、組成における多様性に加えて様々な長さを許容できることを示す。
【0077】
模倣物足場としての TFPD の検証は、3つの段階を含むものであった。第1に、フィンガーまたはループの各々を、RGD を含むタンパク質であるエリストスタチン(eristostatin)からの 7、9 または 11 残基を挿入することによって、その先端領域内における追加的配列に順応する能力について試験した。ヒト CD59 を用いて、C9 補体タンパク質とのネイティブな結合を維持しつつ、挿入変異体の各々について特定のインテグリン結合活性が示された。さらに、ヒト uPAR ドメイン 3 の F2 ループについても特定のインテグリン結合が示された。第2に、hCD59 野生型および挿入変異体が gIII 融合タンパク質としてファージ上に提示され得ること、およびそれらが結合機能性を維持していることが実証された。第3に、hCD59 のループ 2 の先端内において多様性の高いランダムライブラリーを構築し、可溶性の標的タンパク質、GPIIb/IIIa をスクリーニングするために用いた。
【0078】
実施例 2、材料および方法
プラスミド構築
全ての導入遺伝子を pM197 ファージミドベクターにクローニングした。このベクターは pCANTAB5E (Gene bank # U14321) に由来するものであり、gIII シグナル配列が pelB リーダー配列に置換されており、かつ、FLAGタグが Eタグの前に挿入されているものであった。FLAGタグまたは Eタグは、精製および検出のために用いた。
【0079】
ヒト CD59 遺伝子は、77 アミノ酸の成熟ペプチドをコードする。該ヒト成熟 CD59 配列 (Gene bank# NM-203330) を、細菌発現のためにコドン最適化した。
【0080】
3つの CD59/F2/RGD 変異体を作成した。7 から 11 残基を含むエリストスタチンの RGD ループからの3つのペプチドを CD59 のフィンガー 2 (F2) 内に挿入して残基 Gly32-Leu33 (挿入部位)を置換した(図 5 を参照)。該 RGD 配列は、VARGDWN (RGD1、配列番号89)、RVARGDWND (RGD2、配列番号90)、および RVARGDWNDDY (RGD3、配列番号91)である。コドン最適化された野生型 CD59 および3つの CD59/F2/RGD 変異体を、BlueHeron (Invitrogen) によって合成した。これらの遺伝子を SfiI および NotI と隣接させ、pM197 にクローニングして pGT2042、pGT2043 および pGT2044 を作成した。
【0081】
同じ原則を、CD59 のフィンガー 1 およびフィンガー 3 に適用した。A11D12 または N57E58 を除去し、3つの RGD配列で置換した。3つの CD59/F1/RGD および3つの CD59/F3/RGD 変異体も作成した。CD59/F1/RGD 変異体を作成するため、3ペアのオリゴを合成した: RGD1 用に GER283 (5'-CGGCCATGGCTCTTCAATGCTA CAACTGTCCTAACCCGACTGTGGCACGTGGTGATTGGAATTGTAAAACCGC-3'、配列番号92) および GER284(5'-GGTTTTACAATTCCAATCACCACGTGCCACAGTCGGGTTAGGACAGTTGTAGCATTGAAGAGCCATGGCCGGCT-3'、配列番号93); RGD2 用に GER285 (5'-CGGCCATGGCTCTTCAATGCTACAACTGTCCTAACCCGACTCGCGTGGCACGTGGTGATTGGAATGACTGTAAAACCGC-3'、配列番号94) および GER286 (5'-GGTTTTACAGTCATTCCAATCACCA CGTGCCACGCGAGTCGGGTTAGGACAGTTGTAGCATTGAAGAGCCATGGCCGGCT-3'、配列番号95); RGD3 用に GER287 (5'- CGGCCCTTCAATGCTACAACTGTCCTAACCCGACTCGCGTGGCACGTGGTGATTGGAATGACGACTACTGTAAAACCGC-3'、配列番号96) および GER288 (5'- GGTTTTACAGTAGTCGTCATTCCAATCACCACGTGCCACGCGAGTCGGGTTAGGACAGTTGTAGCATTGAAGGGCCGGCT-3'、配列番号97)。二本鎖断片が SfiI および SacII と隣接するよう、対応するオリゴのペアをアニールさせ、次いで、pM197 にクローニングして pGT2046、pGT2047 および pGT2048 を作成した。CD59/F3/RGD 変異体を作成するため、3ペアのオリゴを合成した: RGD1 用に GER289 (5'-CGCGTCTCCGTGAAGTGGCACGTGGT GATTGGAATCTTAC-3'、配列番号98) および GER290 (5'-GTAAGATTCCAATCACCACGTGCCACTTCACGGAGA-3'、配列番号99); RGD2 用に GER291 (5'-CGCGTCTCCGTGAACGCGTGGCACGTGGTGATTGGAATGACCTTAC-3'、配列番号100) および GER292 (5'-GTAAGGTCATTCCAATCACCACGTGCCACGCGTTCACGGAGA-3'、配列番号101); RGD3 用に GER293 (5'-CGCGTCTCCGTGAACGCGTGGCACGTGGTGATTGGAATGACGACTACCTTAC-3'、配列番号102) および GER294 (5'-GTAAGGTAGTCGTCATTCCAATCACCACGTGCCACGCGTTCACGGAGA-3'、配列番号103)。二本鎖断片が MluI および SnaBI と隣接するよう、対応するオリゴのペアをアニールさせ、次いで、pM197 にクローニングして pGT2049、pGT2050 および pGT2051 を作成した。
【0082】
ヒト uPAR ドメイン 3 (gene bank #X51675、成熟タンパク質のアミノ酸 192 から 283 までを含む) を細菌発現のためにコドン最適化し、BlueHeron (Invitrogen) によって合成した。該遺伝子を SfiI および NotI と隣接させ、pM197 にクローニングして pGT2036 を作成した。
【0083】
uPAR D3/F2/RGD 変異体を作成するため、3ペアのオリゴを合成した: RGD1 用に GER297:(5'-CCGGTACTCACGAAGTGGCACGTGGTGATTGGAATAATCAATCTTATATGGTCCGC-3'、配列番号104) および GER298:(5'-GGACCATATAAGATTGATTATTCCAATCACCACGTGCCACTTCGTGAGTA-3'、配列番号105); RGD2 用に GER299:(5'-CCGGTACTCACGAACGCGTGGCACGTGGTGATTGGAATGACAATCAATCTTATATGGTCCGC-3'、配列番号106) および GER300:(5'-GGACCATATAAGATTGATTGTCATTCCAATCACCACGTGCCACGCGTTCGTGAGTA-3'、配列番号107); RGD3 用に GER301:(5'-CCGGTACTCACGAACGCGTGGCACGTGGTGATTGGAATGACGACTACAATCAATCTTATATGGTCCGC-3'、配列番号108) および GER302:(5'-GGACCATATAAGATTGATTGTAGTCGTCATTCCAATCACCACGTGCCACGCGTTCGTGAGTA-3'、配列番号109)。
【0084】
二本鎖断片が AgeI および SacII と隣接するよう、対応するオリゴのペアをアニールさせ、次いで、pM197 にクローニングして pGT2053、pGT2054 および pGT2055 を作成した。
【0085】
細菌発現およびペリプラズム抽出
単一の細菌クローン(HB2151 細胞からのもの)を、37℃で終夜、100 μg/ml のアンピシリンを有する 2 ml の LB 培地中に接種した。前培養を、100 μg/ml のアンピシリンを有する新鮮な LB 培地中で 1:100 に希釈し、30℃で振盪して OD600=0.5 を得た。次いで、細胞を IPTG(終濃度 1mM)の添加によって誘導し、ペリプラズム画分の抽出用に回収する前に、30℃でさらに 3 から 4 時間生育させた。ペリプラズム抽出手順を、PeriPreps periplasting kit(Epicentre Biotechnologies、Wisconsin)を製造者の説明書に従って使用して行った。
【0086】
ウエスタンブロット
細菌溶解物または組換えファージを 4-12% ビス-トリスゲル(Invitrogen、Carlsbad、CA)上にロードして分離した。ゲルを、iBlot (Invitrogen、Carlsbad、CA) を介してニトロセルロース膜上にブロットし、直ぐに 0.5 % のミルク PBS 中でブロッキングした。次いで、膜を、HPR と複合化した抗Flag抗体 (Sigma、St. Louis、MO、0.05% PBST 中で 1:3000) と共に 10 分間、iSNAP 装置 (Bio-Rad、Hercules、CA)を用いてインキュベートした。ECL Plus (Amersham Biosciences、Pittsburgh、PA)を用いてバンドを検出した。
【0087】
C9 結合アッセイ
Immulon 4 HBX プレートを、4 ℃で終夜、1ウェルあたり 50 ng/50 μl の重炭酸バッファー中の C9 タンパク質(Quidel、CA)でコートした。プレートを、200 μl/ウェルの PBS 中の 3% BSA を用いて、振盪しながら 1 時間ブロッキングした。ペリプラズムサンプルまたはファージを、所望のパーセンテージの PBS 内で 50 μl/ウェルとして調製し、RT で 2 時間インキュベートした。次いで、プレート洗浄器(Bio-Tek)を用いて、プレートを 0.05% の PBST(PBS バッファー中の 0.05% Tween 20)洗浄バッファーで 4 回洗浄した。50 μl/ウェルの HRP複合化抗Eタグ抗体(GE、1:5000 希釈)または抗M13抗体(NEB、1:2500 希釈)を RT で 1 時間インキュベートし、その後 PBST (0.05% Tween 20)で4回洗浄した。100 μl/ウェルの ABTS (Sigma) の添加後に 405 nm における吸光度を測定した。
【0088】
GPIIb/IIIa 結合および競合アッセイ
Immulon 1B プレートを、4 ℃で終夜、ウェルあたり 200ng/100μl のコーティングバッファー(20 mM の Tris、pH 7.5、150 mM の NaCl、各々 1 mM の CaCl2、MgCl2、MnCl2) 中の GPIIb/IIIa タンパク質(Innovative research Inc.)でコートした。プレートを、結合バッファー(50 mM の Tris pH 7.5、100 mM の NaCl、各 1 mM の CaCl2、MgCl2、MnCl2)中に 3% の BSA を含む 200 μl/ウェルのブロッキングバッファーを用いて、振盪しながら、1 時間ブロッキングした。直接結合アッセイのために、ペリプラズムサンプルまたはファージを所望のパーセンテージの結合バッファー内で調製し(50 μl/ウェル)、RT で 2 時間インキュベートした。競合アッセイの場合には、系列希釈した(段階的 1:10 希釈)競合者である RGD ペプチド BHRF1、BHRF1-KG (KG(第VIII因子)と結合したBHRF1)およびフィブリノーゲン、陰性対照である KG をペリプラズム画分またはファージと混合し、次いで、GPIIb/IIIaでコートされた 96ウェルプレートに添加し、その後 2 時間室温でインキュベートした。次いで、プレート洗浄器(Bio-Tek)を用いて、プレートを BB で 4 回洗浄した。50 μl/ウェルの HRP複合化抗Eタグ抗体(GE、1:5000 希釈)または抗M13抗体(NEB、1:2500 希釈)を RT で 1 時間インキュベートした後、結合バッファーで4回洗浄した。100 μl/ウェルの ABTS (Sigma) の添加後に、405nm における吸光度を測定した。
【0089】
ライブラリー構築およびクローニング
CD59の F2 ドメインを改変することによって、ランダムライブラリーを作成した。トリホスホロアミダイト(triphosphoroamidite)に基づく合成を用いて、残基 Gly32 および Leu33 を除去し、各々の位置が 20 種全ての可能性のあるアミノ酸で無作為化されている 7 アミノ酸残基の挿入によって置換し、こうしてフレームシフト、停止コドンおよびライブラリーからのいくつかのアミノ酸の過剰発現を除去した。
【0090】
該ライブラリーを含む正鎖(direct strand)プライマーを、Gene-Link Inc.(Hawthorne,NY)から合成した: 5'-TCGATGCATGCTTAATTACTAAAGCCXXXXXXXCAGGTGTACAATAAATGT-3'、配列番号110; および 相補鎖: 5'-GTTCCAGCGGATCCGGATAC-3'、配列番号111。
【0091】
ライブラリー断片を合成し、pM197 をテンプレートとして用いる PCR (PCR superMix HiFi、Invitrogen)によって増幅した。次いで、この PCR 産物を SphI/NotI を用いて二重消化し、SphI/NotI 消化された pM197 ファージミドベクター中にクローニングした。得られたライゲーション反応物を、Engberg et al. および製造者の示唆に従ってエレクトロコンピテントな(electrocompetent)大腸菌 TG1 細胞(Lucigen、Wisconsin)中に電気穿孔処理し、6.2 x 108 のライブラリーサイズを得た。標準的なプロトコールに従って、該ライブラリーをグリセロールストックとして保存し、救出し、ファージ産生のために使用した。
【0092】
ライブラリーの特徴決定
全部で 96 のクローンをランダムに選択し、配列決定して挿入サイズ、フレームシフトおよび 7 アミノ酸領域の各々の位置の多様性を確認した。ファージ表面上における CD59-pIII 融合タンパク質の提示を、ウエスタンブロットによって評価した。抗pIIIマウス mAb (NEB、1:1000 希釈) および HRP複合化ヤギ抗マウス IgG (Jackson Lab、1:6000) を検出試薬として用いた。
【0093】
マイクロタイタープレート上におけるライブラリーパニング
GPIIb/IIIa に対するパニングを行った。Immulon 1B プレートを、100 μl/ウェルの GPIIb/IIIa タンパク質 (コーティングバッファー中の 5 μg/ml、GPIIb/IIIa 結合アッセイ方法を参照)を用いて 4 ℃で終夜コーティングし、その後 BB バッファーで2回短くリンスし、ブロッキングバッファー(3% BSA を有する BB バッファー)を用いて室温(RT)で 2 時間ブロッキングした。BB バッファーを用いてリンスした後、1ウェルにつきブロッキングバッファー中の1011個のファージ粒子を添加し、RT で 2 時間インキュベートした。BBT (0.1% Tween 20)を用いて5回、さらに BB を用いて5回洗浄して未結合のファージを除去した。結合したファージを、1ウェルあたり 100 μl の 0.1M グリシン溶出バッファーを用いて溶出させ、次いで 10 μl の 1 M トリスを用いて中和した。次いで、指数関数的に増殖している TG1 細胞に感染させるために、溶出したファージを用いた。
【0094】
ハイパーファージ(Hyperphage)由来ライブラリーについて、3巡のマイクロタイタープレートパニングおよび1巡の溶液パニングを行った。陽性クローンを選択するため、GPIIb/IIIa に対するファージ ELISA を行った。
【0095】
溶液におけるライブラリーパニング
EZ-link NHS-Biotin (Pierce、Rockford IL) を製造者の説明書に従って用いて、GPIIb/IIIa をビオチン化した。ビオチン化された GPIIb/IIIa(1巡目のパニングは 50 nM; 2巡目は 20 nM、3巡目は 5 nM)を、事前ブロッキングされた 7x1011 cfu (1巡目のパニング、2巡目および3巡目は 1x1011 cfu ファージ)のファージ CD59/F2/7mer ライブラリーと共に、室温において 1 時間、ローテータ上でインキュベートした。ファージ-標的混合物を、室温でさらに 10 分間インキュベートすることにより、事前ブロッキングされたストレプトアビジン結合磁性ビーズ上に捕獲した。溶液を伴うビーズの分離を、磁気濃縮器(Magnetic Concentrator)を用いて行った。次いで、1巡目のパニングについては、ビーズを BBT 0.1% で 4 回洗浄し、その後 BB で 5 回洗浄した。2巡目および3巡目のパニングについては洗浄の厳密性を増大させた。結合したファージを、pH2.5 の 0.1M グリシンバッファーと共に 15 分間インキュベートすることによって溶出させ、次いで、1M トリスを用いて中和した。次いで、指数関数的に増殖している TG1 細胞に感染させるために、溶出したファージを用いた。
【0096】
M13K07 由来ライブラリーについて、3巡の溶液パニングを行った。
【0097】
ELISA スクリーニング
3巡から4巡のパニングの後、指数関数的に増殖している HB2151 細胞または DH10BF' に感染させるために、溶出したファージを用いた。個々のクローンを、96ウェルプレート中において、100 μg/ml のアンピシリンおよび 0.1% のグルコースを有する 200ul の 2xYT 中に接種した。プレートを、振盪インキュベーター中において 37℃で 3 時間インキュベートした。次いで、細胞を、1mM IPTG を用いて 30℃で 3-4 時間誘導した。ペリプラズム画分を抽出し、GPIIb/IIIa ELISA において試験した。
【0098】
実施例 3、CD59 wt および F2 RGD 変異体の発現および試験
ヒト TFPD の、新規な結合活性を組み込むための足場として機能する能力を試験するため、インテグリン認識配列であるアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)を含むディスインテグリンおよびエリストスタチンに由来する一連のペプチドを、hCD59 のフィンガーの各々中に操作した(図 5)。該 RGD を含むペプチドは、様々な長さのものであり(7、9、または 11 アミノ酸)、hCD59 の構造から決定されたフィンガーの先端に組み込んだ。該 hCD59 RGD 含有ループ挿入変異体を、大腸菌において可溶性の FLAGタグ付きタンパク質として発現させ、GPIIb/IIIa ELISA において CD59 活性(補体因子 C9 との結合)およびインテグリン結合について試験した(図 6)。図 6A は、hCD59 野生型 (wt) およびフィンガー 2 (F2) 内に挿入された3つの hCD59 RGD 変異体(RGD 1、2、および 3)を発現する大腸菌のペリプラズム画分からの抽出物の SDS-PAGE ゲル免疫ブロットである。野生型および変異体は、およそ 13kDa の単一種としてペリプラズム中に分泌される。図 6B は、C9 および GPIIb/IIIa 結合 ELISA における hCD59 wt および F2 RGD 変異体の試験を示す。CD59 wt および RGD 含有変異体の両方が用量依存的に C9 と結合し、この事は、これら CD59 種の全てが適切なフォールディングを保持しており、かつ、ネイティブな CD59 活性を示すことを示す。GPIIb/IIIa ELISA において、RGD 変異体はインテグリンと用量依存的に結合し、一方、CD59 wt は、期待される通り、無視できる結合しか示さない。この事は、ネイティブな C9 結合活性を保持しつつ、F2 ループ内において新規な結合活性を示すよう、CD59 足場を操作することができるという概念を支持する。同じ RGD ループ挿入配列を hCD59 の F1 および F3 ループ領域内に操作することによって、同様の結果が得られた(図 6C および 6D)。さらに、同じ RGD ループ配列を、uPAR ドメイン 3 (uPARD3)の F2 ループ内にクローニングした。大腸菌により発現されたタンパク質を、GPIIb/IIIa 結合について試験し、同様の結合が示された(図 7)。
【0099】
インテグリン結合に関する CD59 RGD 変異体の特異性を示すため、固定された量の hCD59 wt または CD59 F2 RGD3 変異体 を GPIIb/IIIa と結合させ、天然のリガンドであるフィブリノーゲンまたはアンタゴニストであるインテグリリン(登録商標)と競合させる競合的 ELISA を行った(図 8)。各々の場合において、RGD 結合部位に関して挿入変異体がインテグリンと高い特異性で結合することを示す、IIb/IIIa 結合についての用量依存的競合が存在した。
【0100】
該 RGD ループ挿入研究は、CD59 足場が、F1、F2 および F3 ループ内における改変に適応でき、かつ、ヒト TFPD を模倣物足場として用いる概念を支持することを実証するものである。該データは、CD59 または uPAR ドメイン 3 足場の柔軟性および新規な結合機能性を F2 ループ内に操作する能力を実証する。
【0101】
実施例 4、ヒト CD59 wt および RGD 変異体はファージ上に提示され得る
TFPD を模倣物足場として検証する際の次の段階は、ライブラリーをスクリーニングするためのディスプレイ方法、例えばリボソーム、細菌、酵母または哺乳類ディスプレイによって、足場を提示する能力を実証することであった。これらの方法のうち、ファージを用いる細菌ディスプレイが、ライブラリーを構築およびスクリーニングするための最も一般的かつ直接的な技法である。
【0102】
FLAGタグが付された hCD59wt および F2 RGD 変異体を、ファージミドベクター中にクローニングし、ファージを感染させた大腸菌においてファージgIIIタンパク質を有する融合タンパク質(CD59-gIII)として発現させた。終夜培養の後、感染した大腸菌から CD59-gIII を発現するファージを単離し、SDS-PAGE によって分析した (図 9)。gIII タンパク質よりも僅かに高い分子量で移動する CD59-gIII 融合タンパク質を、抗gIII抗体を用いて検出した (図 9A)。gIII のバンドと比較して融合タンパク質のバンドの強度が低いのは、CD59-gIII タンパク質が、ヘルパーファージによって発現される gIII タンパク質よりも低いレベルで発現するためであると予測される。抗FLAG抗体は、CD59 wt および RGD 変異体を含む3つの融合タンパク質の強いバンドを検出する (図 9B)。
【0103】
CD59-gIII を発現するファージは、結合 ELISA において C9 および GPIIB/IIIa の両方に結合することが明らかとなり、該タンパク質が正しくフォールドされ、かつ、野生型および RGD 両方の結合活性を示す能力を有することが示された (図 10)。可溶性 CD59 wt および F2 RGD 変異体タンパク質についての結果と同様に、既知の GPIIb/IIA リガンドによるインテグリンからの競合的置換によって証明される通り、CD59-gIIIを発現するファージの結合は用量依存的であり、CD59-gIII RGD 変異体を発現するファージの場合には、GPIIb/IIIa との結合は RGD 結合部位に特異的である (図 11)。
【0104】
特定の結合者を発現するファージを選択する能力を評価するために、等量の CD59 wt および CD59 F2 RGD 1 を発現するファージを混合し、次いで、同じ ELISA アッセイ型式を用いて C9 または GPIIb/IIIa のいずれかと結合させた。プレートを洗浄し、結合したファージを溶出させて、TG1 大腸菌に感染させるために用いた。各プレートからの 12 個のクローンのファージミド DNA 解析により、ほぼ等しい割合の CD59 wt および CD59 F2 RGD1 を発現するファージが C9 プレートに結合することが示された (5 つの wt および 7 つの RGD クローン) (図 12A)。しかし、GPIIb/IIIa プレートに対するファージの結合は、ほぼ排他的に RGD を発現するファージを含んだ (1 つの wt および 11 個の RGD クローン、図 12B)。該結果は、CD59 wt および RGD 変異体タンパク質が、gIII 融合タンパク質としてファージ上に提示された場合に、その結合特性を保持していることを実証するものである。
【0105】
実施例 5、CD59 F2 ライブラリーの構築および検証
hCD59 の F2 ループの先端内において、Gly32-Ala33 をランダムな組成の7アミノ酸のインサートに置換することにより、TFPD ライブラリーを設計および構築した。該設計は、今回 7-merの組成を各位置に生じる全ての可能な 20 種のアミノ酸を用いて無作為化したことを除いては、7アミノ酸のペプチドを F2 ループ内に挿入した CD59 F2 RGD1 変異体と同様のものであった。フレームシフトを最小化し、停止コドンの出現を排除し、かつ、システインを含む20種全てのアミノ酸の等しい表出をもたらすために、トリホスホロアミダイト化学をランダムなオリゴヌクレオチドの合成のために用いた。F2 7-mer ライブラリーの理論上の多様性は、(20)7 またはおよそ 1.28 x 109 である。ランダムオリゴヌクレオチドの混合物を PCR によって増幅し、pM197 ファージミドベクター中にクローニングした。ベクター DNA を用いて形質転換した TG1 大腸菌からランダムクローンを単離し、特徴決定した。ライブラリーのサイズは、TG1 細胞の形質転換後、限界希釈によって 6.2 x 108 であると決定された。69 個のクローンの配列解析により、各位置における予測されたアミノ酸のランダムな分布が示された (図 13)。ライブラリーからの可溶性 CD59 を発現するクローンの数は、HB2151 細胞の形質転換後、ペリプラズム抽出物のウエスタン解析によって、およそ 72% であると決定された (タンパク質を発現する 22 個のクローンのうち 16 個) (図 14)。
【0106】
CD59 F2 7-mer ライブラリーを GPIIb/IIIa に対してスクリーニングし、3巡のパニングの後、選択された数の結合者を特異性について検証した (図 15A)。クローンのうち6つを配列決定し、既知のインテグリン結合 RGD モチーフを明らかにした (図 15B)。IIb/IIIa に対する CD59 F2 7-mer ライブラリーのスクリーニングから得られたユニークな結合者の全長配列、それぞれ配列番号112-114 を、図 15C に示す。このデータは、CD59 F2 ライブラリーの、選択された標的の強力な結合者をスクリーニングおよび同定する能力を実証し、かつ、ヒト TFPD を抗体模倣物足場として検証するものである。
【0107】
実施例 6、CD59 F1 ライブラリーの構築および検証
hCD59 の F1 ループの先端内において、Ala12-Asp13 をランダムな組成の9アミノ酸のインサートに置換することにより、TFPD ライブラリーを設計および構築した。該設計は、今回 9-merの組成を各位置に生じる全ての可能な 20 種のアミノ酸を用いて無作為化したことを除いては、エリストスタチン由来の9アミノ酸の RGD 含有配列を F1 ループ内に挿入した CD59 F1 RGD2 変異体と同様のものであった。該 F1 9-mer ライブラリーの理論上の多様性は、(20)9 またはおよそ 5.12 x 1011 である。CD59 F1 9-mer ライブラリーを GPIIb/IIIa に対してスクリーニングし、3巡のパニングの後、選択された数の結合者を特異性について検証した。陽性クローンを配列決定し、既知のインテグリン結合 RGD モチーフを含む25個のユニークな配列を明らかにした (図 16)。このデータは、hCD59 の TFPD 内において F1 ループを用いて多様性の高いライブラリーを作成する能力、および該 F1 ライブラリーを用いて選択された標的の強力な結合者をスクリーニングおよび同定する能力を実証するものである。
【0108】
実施例 7、UPARD3 F2 ライブラリーの構築および検証
ヒト UPAR の第3ドメイン(UPARD3 の残基 1 が全長 UPAR の残基 192 に相当する)内の Pro40-Lys41 をランダムな組成の9アミノ酸のインサートに置換することにより、ヒト UPARD3 の F2 ループの先端内において TFPD ライブラリーを設計および構築した。該設計は、今回 9-mer の組成を各位置に生じる全ての可能な 20 種のアミノ酸を用いて無作為化したことを除いては、9アミノ酸の RGD 含有配列を F2 ループ内に挿入した UPARD3 F2 RGD2 変異体と同様のものであった。該 F2 9-mer ライブラリーの理論上の多様性は、(20)9 またはおよそ 5.12 x 1011 である。UPARD3 F2 9-mer ライブラリーを GPIIb/IIIa に対してスクリーニングし、3巡のパニングの後、選択された数の結合者を特異性について検証した。陽性クローンを配列決定し、既知のインテグリン結合 RGD モチーフを含む2つのユニークな配列(クローン配列 M B4 および M B7 を参照)を明らかにした(図 17)。このデータは、hUPARD3 F2 ライブラリーの、選択された標的の強力な結合者をスクリーニングおよび同定する能力を実証し、かつ、このタンパク質ファミリーの異なるメンバーを用いる模倣物足場としての TFPD の有用性を検証するものである。
【0109】
本明細書において言及される全ての刊行物および特許は、引用により本明細書に取り込まれる。本発明の範囲および精神から逸脱しない範囲において、記載された本発明の方法の様々な改変およびバリエーションは当業者にとって明らかである。本発明は、特定の態様に関連して記載されているが、特許請求の範囲に記載の発明がかかる特定の態様に不当に限定されてはならないことが理解されるべきである。実際に、当業者にとって明白な、本発明を実施するための上記の様式の様々な改変が、以下の特許請求の範囲の中に含まれることが意図される。当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の態様と等価な多くのものを、認識するか又は常套の実験のみを用いて確認することができるであろう。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3本指タンパク質ドメイン(TFPD)を含むポリペプチドであって、該 TFPD が、特定された標的分子と結合するよう天然の TFPD のアミノ酸配列と比較して改変されたアミノ酸配列を有するものである、ポリペプチド。
【請求項2】
該改変が、該 TFPD のフィンガー 1 (F1) 内の位置におけるものである、請求項1のポリペプチド。
【請求項3】
該改変が、該 TFPD のフィンガー 2 (F2) 内の位置におけるものである、請求項1のポリペプチド。
【請求項4】
該改変が、該 TFPD のフィンガー 3 (F3) 内の位置におけるものである、請求項1のポリペプチド。
【請求項5】
該改変が、F1、F2 および F3 からなる群より選択される2以上のフィンガーの組み合わせにおいて作成されるものである、請求項1のポリペプチド。
【請求項6】
該アミノ酸配列が、1以上の置換によって改変されるものである、請求項1〜5のいずれかのポリペプチド。
【請求項7】
該置換が、ランダムなアミノ酸残基を含むものである、請求項6のポリペプチド。
【請求項8】
該アミノ酸配列が、挿入によって改変されるものである、請求項1〜5のいずれかのポリペプチド。
【請求項9】
該挿入が、ランダムなアミノ酸配列である、請求項8のポリペプチド。
【請求項10】
該挿入が、予め決められた配列である、請求項8のポリペプチド。
【請求項11】
TFPD が、CD59、ウロキナーゼ受容体(uPAR)ドメイン 1、uPAR ドメイン 2、uPAR ドメイン 3、TGFR ドメイン 1、TGFR ドメイン 2、ACVR1、ACV1B、ACV1C、ACVL1、AMHR2、AVR2A、AVR2B、EMR1B、EMR1A、EMPR2、LYPD1、LYPD2、LYPD3-1、LYPD3-2、LYPD4-1、LYPD4-2、LYPD5-1、LYPD5-2、LYPD6、LPD6B、LY6E、LY6D、LY6DL、LY66C、LY6K、LYG6E、LY65C、LY65B、LY66D、LY6H、LYNX1、PATE、PATEB、PATEDJ、PATEM、PSCA、SLUR1、SLUR2、ASPX、HDBP1、SACA4、C9orf57、TX101-1、TX101-2、CD177-1、CD177-2、CD177-3、CD177-4 および BAMBI からなる群より選択される、前記請求項のいずれかのポリペプチド。
【請求項12】
TFPD が CD59 である、請求項11のポリペプチド。
【請求項13】
CD59 が、ヒト、ヨザル、マーモセット、アフリカミドリザル、カニクイザル、ヒヒ、オランウータン、リスザル、チンパンジー、ウサギ、ブタ、ラットおよびマウスからなる群より選択される種のものである、請求項12のポリペプチド。
【請求項14】
CD59 が不活性突然変異体である、請求項12のポリペプチド。
【請求項15】
CD59 不活性突然変異体が、位置 24 または 40 における改変を含むものである、請求項14のポリペプチド。
【請求項16】
TFPD が uPAR ドメイン 3 である、請求項11のポリペプチド。
【請求項17】
uPAR ドメイン 3 が、ヒト、ヨザル、マーモセット、アフリカミドリザル、カニクイザル、ヒヒ、オランウータン、リスザル、チンパンジー、ウサギ、ブタ、ラットおよびマウスからなる群より選択される種のものである、請求項16のポリペプチド。
【請求項18】
uPAR ドメイン 3 が不活性突然変異体である、請求項16のポリペプチド。
【請求項19】
uPAR ドメイン 3 不活性突然変異体が、位置 245 における改変を含むものである、請求項18のポリペプチド。
【請求項20】
特定された標的が、天然の TFPD と結合しないものである、請求項1のポリペプチド。
【請求項21】
特定された標的が、タンパク質、ヌクレオチド、抗体、小分子および興味の対象である抗原からなる群より選択されるものである、請求項1のポリペプチド。
【請求項22】
エフェクター機能を与えるエレメントをさらに含むものである、請求項1のポリペプチド。
【請求項23】
該エレメントが、循環半減期を延長するものである、請求項22のポリペプチド。
【請求項24】
該エレメントが、化学的複合化を可能にするものである、請求項22のポリペプチド。
【請求項25】
請求項1〜21のいずれかのポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項26】
請求項25に規定されるヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項27】
請求項26に規定される発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項28】
請求項1に規定されるポリペプチドおよび少なくとも1つの医薬上許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項29】
複数の3本指タンパク質ドメイン(TFPD)を含むポリペプチドのライブラリーであって、該 TFPD が、特定された標的分子と結合するよう対応する天然の TFPD のアミノ酸配列と比較して改変されたアミノ酸配列を有するものである、ライブラリー。
【請求項30】
該アミノ酸配列が、ランダムに改変されているものである、請求項29のライブラリー。
【請求項31】
異なる改変 TFPD を含む少なくとも 100 個の異なるポリペプチドを含むものである、請求項29のライブラリー。
【請求項32】
請求項29のポリペプチドのライブラリーをコードするポリヌクレオチドのライブラリー。
【請求項33】
3本指タンパク質ドメイン(TFPD)を含む多特異性ポリペプチドであって、該 TFPD が、2以上の特定された標的分子と結合するよう天然の TFPD のアミノ酸配列と比較して改変されたアミノ酸配列を有するものである、多特異性ポリペプチド。
【請求項34】
標的分子が、改変された TFPD の異なるフィンガーに結合する、請求項33の多特異性ポリペプチド。
【請求項35】
2以上の3本指タンパク質ドメイン(TFPD)の融合を含む多特異性化合物であって、該 TFPD が、異なる標的分子と結合するよう天然の TFPD のアミノ酸配列と比較して改変されたアミノ酸配列を有するものである、多特異性化合物。
【請求項36】
抗体模倣物を作成するための足場として3本指タンパク質ドメイン(TFPD)を使用する方法であって、該 TFPD の1以上のフィンガーの中にアミノ酸配列を挿入することを含む、方法。
【請求項37】
TFPD が CD59である、請求項36の方法。
【請求項38】
TFPD が uPAR ドメイン 3 である、請求項36の方法。
【請求項39】
アミノ酸配列がランダムな配列である、請求項36の方法。
【請求項40】
3本指タンパク質ドメイン(TFPD)を含むポリペプチドであって、該 TFPD が、GPIIb/IIIa と結合するよう天然の TFPD のアミノ酸配列と比較して改変されたアミノ酸配列を有するものである、ポリペプチド。
【請求項41】
該 TFPD が、配列番号112に示されるアミノ酸配列を有するものである、請求項40のポリペプチド。
【請求項42】
該 TFPD が、配列番号113に示されるアミノ酸配列を有するものである、請求項40のポリペプチド。
【請求項43】
該 TFPD が、配列番号114に示されるアミノ酸配列を有するものである、請求項40のポリペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図15−3】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2013−509200(P2013−509200A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537177(P2012−537177)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/055014
【国際公開番号】WO2011/053937
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)
【Fターム(参考)】