説明

抗体組成物を生産する細胞

【課題】抗体分子の糖鎖構造を制御することが可能な、抗体組成物を生産する宿主細胞、ADCC活性が高い抗体組成物を生産することが可能な細胞、該細胞を用いた抗体組成物の製造方法、該製造方法で製造された抗体組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、種々の疾患に有用な抗体依存性細胞障害活性の高い、抗体、抗体の断片、抗体のFc領域を有する融合タンパク質等の抗体組成物の製造に用いる細胞、該細胞を用いた抗体組成物の製造方法、抗体組成物、およびそれらの用途に関する。該抗体組成物は、Fc領域に結合する全N−グリコシド結合複合型糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖の割合が20%以上であるものである。


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【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素の活性またはN-グリコシド結合糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性が遺伝子工学的な手法により低下または欠失した細胞。
【請求項2】
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素が、以下の(a)、(b) 及び (c)からなる群から選ばれる酵素である、請求項1記載の細胞。
(a) GMD(GDP-mannose 4,6-dehydratase);
(b) Fx (GDP-keto-6-deoxymannose 3,5-epimerase, 4-reductase);
(c) GFPP(GDP-beta-L-fucose pyrophosphorylase)。
【請求項3】
GMDが、以下の (a) または (b) であるDNAがコードする蛋白質である、請求項2に記載の細胞。
(a) 配列番号65で表される塩基配列からなるDNA;
(b) 配列番号65で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつGMD活性を有する蛋白質をコードするDNA。
【請求項4】
GMDが、以下の (a)、(b) 及び (c) からなる群から選ばれる蛋白質である、請求項2に記載の細胞。
(a) 配列番号71で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b) 配列番号71で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつGMD活性を有する蛋白質;
(c) 配列番号71で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつGMD活性を有する蛋白質。
【請求項5】
Fxが、以下の (a) または (b) であるDNAがコードする蛋白質である、請求項2に記載の細胞。
(a) 配列番号48で表される塩基配列からなるDNA;
(b) 配列番号48で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつFxを有する蛋白質をコードするDNA。
【請求項6】
Fxが、以下の (a)、(b) 及び (c) からなる群から選ばれる蛋白質である、請求項2に記載の細胞。
(a) 配列番号72で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b) 配列番号72で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつFx活性を有する蛋白質;
(c) 配列番号72で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつFx活性を有する蛋白質。
【請求項7】
GFPPが、以下の (a) または (b) であるDNAがコードする蛋白質である、請求項2に記載の細胞。
(a) 配列番号51で表される塩基配列からなるDNA;
(b) 配列番号51で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつGFPP活性を有する蛋白質をコードするDNA。
【請求項8】
GFPPが、以下の (a)、(b) 及び (c) からなる群から選ばれる蛋白質である、請求項2に記載の細胞。
(a) 配列番号73で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b) 配列番号73で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつGFPP活性を有する蛋白質;
(c) 配列番号73で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつGFPP活性を有する蛋白質。
【請求項9】
N-グリコシド結合糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素がα-1,6-フコシルトランスフェラーゼである、請求項1に記載の細胞。
【請求項10】
α-1,6-フコシルトランスフェラーゼが、以下の (a)、(b)、(c)及び(d)からなる群から選ばれるDNAがコードする蛋白質である、請求項9に記載の細胞。
(a) 配列番号1で表される塩基配列からなるDNA;
(b) 配列番号2で表される塩基配列からなるDNA;
(c) 配列番号1で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA;
(d) 配列番号2で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
【請求項11】
α-1,6-フコシルトランスフェラーゼが、以下の (a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び (f) からなる群から選ばれる蛋白質である、請求項9に記載の細胞。
(a) 配列番号23で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b) 配列番号24で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(c) 配列番号23で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質;
(d) 配列番号24で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質;
(e) 配列番号23で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質;
(f) 配列番号24で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質。
【請求項12】
遺伝子工学的な手法が、以下の (a)、(b)、(c) 及び (d) からなる群から選ばれる手法である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の細胞。
(a) 酵素の遺伝子を標的した遺伝子破壊の手法;
(b) 酵素の遺伝子のドミナントネガティブ体を導入する手法;
(c) 酵素についての突然変異を導入する手法;
(d) 酵素の遺伝子の転写又は翻訳を抑制する手法。
【請求項13】
少なくともN-グリコシド結合糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンに耐性である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の細胞が、下記の (a)〜(i) からなる群から選ばれる細胞。
(a) チャイニーズハムスター卵巣組織由来CHO細胞;
(b) ラットミエローマ細胞株YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞;
(c) マウスミエローマ細胞株NS0細胞;
(d) マウスミエローマ細胞株SP2/0-Ag14細胞;
(e) シリアンハムスター腎臓組織由来BHK細胞;
(f) 抗体を産生するハイブリドーマ細胞;
(g) ヒト白血病細胞株ナマルバ細胞;
(h) 胚性幹細胞;
(i) 受精卵細胞。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の細胞に、抗体分子をコードする遺伝子を導入した細胞。
【請求項16】
抗体分子のクラスがIgGである、請求項15記載の細胞。
【請求項17】
請求項15または16に記載の細胞を培地に培養し、培養物中に抗体組成物を生成蓄積させ、該培養物から抗体組成物を採取する工程を含む、抗体組成物の製造方法。
【請求項18】
親株から得られる抗体組成物よりも、抗体依存性細胞障害活性が高い抗体組成物を生産する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項17または18に記載の方法を用いて製造される、抗体組成物。
【請求項20】
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素の活性またはN-グリコシド結合糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性が低下するように、ゲノムが改変されたトランスジェニック非ヒト動物あるいは植物、またはその子孫。
【請求項21】
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素の遺伝子またはN-グリコシド結合糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子がノックアウトされた、請求項20記載のトランスジェニック非ヒト動物あるいは植物、またはその子孫。
【請求項22】
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素が、以下の(a)、(b) 及び (c)からなる群から選ばれる酵素である、請求項20または21に記載のトランスジェニック非ヒト動物あるいは植物、またはその子孫。
(a) GMD(GDP-mannose 4,6-dehydratase);
(b) Fx (GDP-keto-6-deoxymannose 3,5-epimerase, 4-reductase);
(c) GFPP(GDP-beta-L-fucose pyrophosphorylase)。
【請求項23】
GMDが、以下の (a) または (b) であるDNAがコードする蛋白質である、請求項22に記載のトランスジェニック非ヒト動物あるいは植物、またはその子孫。
(a) 配列番号65で表される塩基配列からなるDNA;
(b) 配列番号65で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつGMD活性を有する蛋白質をコードするDNA。
【請求項24】
Fxが、以下の (a) または (b) であるDNAがコードする蛋白質である、請求項22に記載のトランスジェニック非ヒト動物あるいは植物、またはその子孫。
(a) 配列番号48で表される塩基配列からなるDNA;
(b) 配列番号48で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつFx活性を有する蛋白質をコードするDNA。
【請求項25】
GFPPが、以下の (a) または (b) であるDNAがコードする蛋白質である、請求項22に記載の細胞。
(a) 配列番号51で表される塩基配列からなるDNA;
(b) 配列番号51で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつGFPP活性を有する蛋白質をコードするDNA。
【請求項26】
N-グリコシド結合糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素がα-1,6-フコシルトランスフェラーゼである、請求項20または21に記載のトランスジェニック非ヒト動物あるいは植物、またはその子孫。
【請求項27】
α-1,6-フコシルトランスフェラーゼが、以下の (a)、(b)、(c) 及び (d) からなる群から選ばれるDNAがコードする蛋白質である、請求項26に記載のトランスジェニック非ヒト動物あるいは植物、またはその子孫。
(a) 配列番号1で表される塩基配列からなるDNA;
(b) 配列番号2で表される塩基配列からなるDNA;
(c) 配列番号1で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA;
(d) 配列番号2で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
【請求項28】
トランスジェニック非ヒト動物が、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、マウス、ラット、ニワトリ、サル及びウサギからなる群から選ばれる動物である、請求項20〜27のいずれか1項に記載のトランスジェニック非ヒト動物、またはその子孫。
【請求項29】
請求項20〜28のいずれか1項に記載のトランスジェニック非ヒト動物あるいは植物、またはその子孫に抗体分子をコードする遺伝子を導入し、該動物あるいは植物を飼育し、飼育した動物あるいは植物から導入した抗体を含む組織あるいは体液を取得し、取得した組織あるいは体液から目的とする抗体組成物を採取する工程を含む、抗体組成物を製造する方法。
【請求項30】
抗体分子のクラスがIgGである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ゲノムが改変されていない非ヒト動物あるいは植物、またはその子孫から得られる抗体組成物よりも、抗体依存性細胞障害活性が高い抗体組成物を生産する、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
請求項29〜31のいずれか1項に記載の方法を用いて製造される、抗体組成物。
【請求項33】
請求項19または32に記載の抗体組成物を有効成分として含有する医薬。
【請求項34】
医薬が、腫瘍を伴なう疾患、アレルギーを伴なう疾患、炎症を伴なう疾患、自己免疫疾患、循環器疾患、ウイルス感染を伴なう疾患または細菌感染を伴なう疾患に対する診断薬、予防薬又は治療薬である、請求項33に記載の医薬。
【請求項35】
以下の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)及び(j)からなる群から選ばれる蛋白質。
(a) 配列番号71で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b) 配列番号71で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつGMD活性を有する蛋白質;
(c) 配列番号72で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(d) 配列番号72で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつFx活性を有する蛋白質;
(e) 配列番号73で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(f) 配列番号73で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつGFPP活性を有する蛋白質;
(g) 配列番号23で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(h) 配列番号23で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質;
(i) 配列番号24で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(j) 配列番号24で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質。
【請求項36】
請求項35記載の蛋白質をコードするDNA。
【請求項37】
以下の (a)、(b)、(c)、(d)及び (e) からなる群から選ばれるDNA。
(a) 配列番号1で表される塩基配列を含むDNA;
(b) 配列番号2で表される塩基配列を含むDNA;
(c) 配列番号65で表される塩基配列を含むDNA;
(d) 配列番号48で表される塩基配列を含むDNA;
(e) 配列番号51で表される塩基配列を含むDNA。
【請求項38】
以下の (a)、(b) 及び (c)からなる群から選ばれるゲノムDNA。
(a) 配列番号3で表される塩基配列を含むゲノムDNA;
(b) 配列番号67で表される塩基配列を含むゲノムDNA;
(c) 配列番号70で表される塩基配列を含むゲノムDNA。
【請求項39】
請求項36〜38のいずれか1項に記載のDNA全長あるいは一部を含む相同組み換えのためのターゲットベクター。

【公開番号】特開2008−113663(P2008−113663A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311590(P2007−311590)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【分割の表示】特願2002−534508(P2002−534508)の分割
【原出願日】平成13年10月5日(2001.10.5)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】