説明

抗体製剤

VLA−4結合抗体の製剤を説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年6月14日出願の米国出願第60/944,076号の優先権を主張するものであり、参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系の最も一般的な疾病のうちの1つである。今日、世界中で2,500,000人以上が多発性硬化症を有する。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、一部において、高度に濃縮されたVLA−4結合抗体を含有する製剤の開発に基づく。一部の実施形態は、皮下(SC)または筋肉内(IM)送達による、例えば、ヒト患者といったヒト等の被験体への送達に好適である。該製剤はまた、例えば、許容される点滴マトリクス(生理食塩水等)に希釈した場合、静脈内(IV)投与に好適である。VLA−4結合抗体は、例えば、ナタリズマブであることが可能であり、抗体濃度は約120mg/mLから約190mg/mLの範囲である。該製剤は、炎症性疾患、免疫疾患、または自己免疫疾患のための治療効果を提供する。例えば、該製剤は、多発性硬化症(MS)等の中枢神経系(CNS)炎症性疾患のための治療効果を提供することが可能である。
【0004】
一態様において、本発明は、約120から約190mg/mLの濃度(例えば、約135mg/mL、約140mg/mL、約150mg/mL、約160mg/mL、または約165mg/mLの濃度)のVLA−4結合抗体と、約pH5.5から約pH6.5を有するリン酸緩衝液とを含む、安定した水性医薬組成物等の水性医薬組成物を特徴とする。一部の実施形態において、VLA−4抗体濃度は、約130mg/mLから約180mg/mL、または約140mg/mLから約160mg/mLである。一実施形態において、VLA−4抗体濃度は、約150mg/mLを上回り、例えば、約150mg/mLから約190mg/mLを上回る範囲である。一実施形態において、VLA−4抗体濃度は約150mg/mLである。
【0005】
一実施形態において、VLA−4結合抗体は、ナタリズマブ等のヒト化モノクローナル抗体である。別の実施形態において、VLA−4結合抗体は、ナタリズマブの変異体である。例えば、一部の実施形態において、該抗体の軽鎖可変領域は、ナタリズマブの軽鎖可変領域の1つ以上のアミノ酸残基(しかしながら、2、3、4、5、もしくは6アミノ酸残基を上回らない)の異なるアミノ酸配列を有する、ならびに/または重鎖可変領域は、ナタリズマブの重鎖可変領域の1つ以上のアミノ酸残基(しかしながら、2、3、4、5、もしくは6アミノ酸残基を上回らない)の異なるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態において、一部またはすべての差異は、保存的変化である。
【0006】
別の実施形態において、VLA−4結合抗体は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,840,299号の配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、および米国特許第5,840,299号の配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域のうちの1つまたは両方を有する。他の実施形態において、VLA−4抗体は、これらの抗体のうちの1つの変異体である。例えば、一部の実施形態において、軽鎖可変領域は、米国特許第5,840,299号の配列番号7の配列と1つ以上のアミノ酸残基(しかしながら、2、3、4、5、もしくは6アミノ酸残基を上回らない)の異なるアミノ酸配列を有する、および/または重鎖可変領域は、米国特許第5,840,299号の配列番号11によって定義される、1つ以上のアミノ酸残基(しかしながら、2、3、4、5、もしくは6アミノ酸残基を上回らない)の異なるアミノ酸配列を有する。
【0007】
さらに別の実施形態において、VLA−4結合抗体は、表1−1の配列番号1の軽鎖アミノ酸配列、および表1−2の配列番号2の重鎖アミノ酸配列のうちの1つまたは両方を有する。他の実施形態において、VLA−4抗体は、これらの抗体のうちの1つの変異体である。例えば、一部の実施形態において、該抗体の軽鎖は、配列番号1の配列と1つ以上のアミノ酸残基(しかしながら、2、3、4、5、もしくは6アミノ酸残基を上回らない)の異なるアミノ酸配列、および/または該抗体の重鎖は、配列番号2の配列と1つ以上のアミノ酸残基(しかしながら、2、3、4、5、もしくは6アミノ酸残基を上回らない)の異なるアミノ酸配列を有する。
【0008】
本文脈で用いるアミノ酸配列における「差異」とは、アミノ酸の同一性の差異(例えば、上で言及される配列番号7または11のアミノ酸に対する異なるアミノ酸の置換)、または失欠もしくは挿入を意味する。差異は、例えば、フレームワーク領域、CDR、ヒンジ、または定常領域内であり得る。差異は、タンパク質の配列の内部または末端であり得る。一部の実施形態において、一部またはすべての差異は、参照された配列と比較して、保存的変化である。
【0009】
ある実施形態において、該組成物のpHは、約6.0±0.5(例えば、約5.0±0.5、約6.0±0.5、約7.0±0.5)であり、リン酸緩衝液の組成は、約5mMから約30mM(例えば、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM)である。別の実施形態において、該組成物は、約100mMから約200mM(例えば、約120mM、140mM、160mM、180mM)の濃度の、塩化ナトリウム等の塩をさらに含む。別の実施形態において、該組成物は、Lアルギニン塩酸塩、またはグリセロールを含む。別の実施形態において、該組成物は、約200mMから約300mM(例えば、約220mM、240mM、260mM、280mM)の濃度の、グリシン等のアミノ酸を含有する。別の実施形態において、該組成物は、約0.001%から約2.0%、約0.004%から約0.4%、約0.008から約0.2%、約0.02%から約0.08%(w/v)(例えば、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約1%、約1.5%)の量のポリソルベート80等の界面活性物質等の薬剤として許容される賦形剤を含有する。
【0010】
ある実施形態において、該組成物は、グリセロールを含み、Lアルギニン塩酸塩、または塩化ナトリウムを実質的に含有しない。他の実施形態において、該組成物は、Lアルギニン塩酸塩を含むが、グリセロールまたは塩化ナトリウム(リン酸緩衝液およびLアルギニン塩酸塩由来のもの以外)を実質的に含まない。他の実施形態において、該組成物は、塩化ナトリウムを含むが、グリセロールまたはLアルギニン塩酸塩を実質的に含まない。
【0011】
一部の実施形態において、該抗体製剤は、例えば、リン酸緩衝液の代わりに、ヒスチジン緩衝剤を含み、該ヒスチジン緩衝剤は、約pH5から約pH7(例えば、約pH5.5±0.5、pH6±0.5、またはpH6.5±0.5)である。該ヒスチジン緩衝剤組成物は、約10mMから約30mM(例えば、約15mM、約20mM、約25mM)である。該ヒスチジン緩衝剤製剤はまた、約200mMから約300mMのグリセロール(例えば、約240mM、約250mM、約260mM、約270mM、約280mMのグリセロール)、およびポリソルベート80を約0.001%から約2.0%(w/v)(例えば、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約1%、約1.5%)を含む。該ヒスチジン製剤は、任意選択で、約5mMから約15mMのLメチオニン(例えば、約10mMのLメチオニン)を含む。
【0012】
一実施形態において、本明細書で扱う組成物は、pH6±0.5の140mg/mLから160mg/mLのナタリズマブ、5mMから15mMのリン酸ナトリウム緩衝液、130mMから150mMの塩化ナトリウム、および0.01%から0.1%(w/v)のポリソルベート80を含有する。別の実施形態において、該組成物は、pH6±0.5の、140mg/mLから160mg/mLのナタリズマブ、5mMから15mMのリン酸ナトリウム緩衝液、250mMから300mMのグリセロール、および0.01%から0.1%(w/v)のポリソルベート80を含有する。さらに別の実施形態において、該組成物は、pH6±0.5の、140mg/mLから160mg/mLのナタリズマブ、5mMから15mMのリン酸ナトリウム緩衝液、150mMから170mMのLアルギニン塩酸塩、および0.01%から0.1%(w/v)のポリソルベート80を含有する。
【0013】
一実施形態において、本明細書で扱う組成物は液体である。
別の実施形態において、該組成物は、約2℃から約8℃(例えば、約5℃)の温度で、少なくとも12ヶ月(例えば、少なくとも24、30、36ヶ月)間安定している。別の実施形態において、該組成物は、周囲温度(約20〜30℃、例えば約25℃)で、少なくとも2、3、4、5、6、または7日(例えば、少なくとも1週間または12日もしくは14日)間安定している。
さらに別の実施形態において、該組成物は、皮下または筋肉内投与に好適である。さらに別の実施形態において、該組成物は、静脈内投与に好適である。
【0014】
別の態様において、本発明は、リン酸緩衝液中に約120から約190mg/mLのVLA−4結合抗体およびポリソルベートを含む、安定した水性組成物等の水性組成物を調製する方法を特徴とする。該方法は、細胞培養において抗体を発現させるステップと、抗体に少なくとも1回のクロマトグラフィー精製ステップを行うステップと、抗体に少なくとも2回のリン酸緩衝液中における限外濾過/ダイアフィルトレーションステップを行うステップと、抗体に少なくとも1回のリン酸緩衝液中における限外濾過ステップを行うステップと、ポリソルベートおよび/またはリン酸緩衝液を添加することによって、抗体の濃度を、例えば、下方に、約120mg/mLから約190mg/mLへ調整するステップと、を含む。一実施形態において、VLA−4結合抗体は、ナタリズマブであり、別の実施形態において、ポリソルベートは、ポリソルベート80である。抗体の濃度は、例えば、約135mg/mLから約165mg/mL、例えば、約150mg/mLであり得る。一部の実施形態において、リン酸緩衝液は、グリセロール、Lアルギニン塩酸塩、または塩化ナトリウム等の他の賦形剤を含む。最終製剤は、約5から約7、例えば、約5.5から約6.5のpHを有する。
【0015】
別の態様において、本発明は、皮下または筋肉内投与のために設計された、またはそれに好適な送達装置を特徴とし、該送達装置は、例えば、皮下または筋肉内投与に好適なナタリズマブの濃縮された製剤を含有する組成物といった、本明細書に記載の組成物の単位用量とともにパッケージ化されるか、それを含む。一実施形態において、該単位用量は、約100mgから約450mg(例えば、約120mgから約350mg;約150mg、約200mg、約250mg、約300mg)である。一実施形態において、該単位用量は、約100mgから約450mgを上回る範囲である。別の実施形態において、該単位用量は、ヒトの体重1kg当り、約1.4mg/kgから約3.0mg/kgのVLA−4結合抗体もしくはそのフラグメントを送達する。別の実施形態において、該単位用量は、約0.25mLから約1.5mL(例えば、約0.5mL、約0.75mL、約1.0mL)である。
【0016】
一実施形態において、単位用量は、約300mgのナタリズマブであり、別の実施形態において、該単位用量は、フラクションに分割され、例えば、2つに分割され、分割されたそれぞれは、約150mgのVLA−4結合抗体を含有する。さらに別の実施形態において、患者は、レジメンとしてナタリズマブを投与される。一実施形態において、患者は、例えば、150mgのナタリズマブの2回の連続投与によって、月に1回、約300mgのナタリズマブを投与される。代替の実施形態において、患者は、150mgのナタリズマブの初回投与、次いで約2週間後の150mgのナタリズマブの2回目の投与によって、一月あたり約300mgのナタリズマブを投与される。
【0017】
本発明は、例えば、ナタリズマブといった、VLA−4結合抗体の高度に濃縮された液体製剤の、患者への提供を最適化する方法を特徴とする。
一実施形態において、該方法は、提供される抗体の濃度の漸増を可能にする。これは、抗体濃度の上昇を可能にし、濃度の増加に伴い、患者の耐性、反応等を監視することを可能にすることができる。例えば、該方法は、1つ以上の初期濃度または比較的低い濃度でナタリズマブを患者に提供し、その後、最終のより高い濃度でナタリズマブを患者に提供することによって開始することができる。初期濃度に関する例示的な製剤は、典型的に、最終のより高い濃度の80%、70%、50%、30%、20%または10%未満の抗体濃度を有する。典型的な初期濃度は、例えば、20mg/mL、30mg/mL、または40mg/mLであることが可能である。典型的な最終濃度は、例えば、約120mg/mLから約190mg/mL(例えば、約135mg/mL、約140mg/mL、約150mg/mL、約160mg/mL、または約165mg/mL)である。一部の実施形態において、患者は、1つまたは複数の初期濃度で1回または複数回の投与を受ける。例えば、一実施形態において、患者は、複数の投与にわたり、濃度を増加させたものを受ける。一部の実施形態において、患者は、最終濃度に到達する前に、1つ以上の初期濃度で2、3、4、5、6、7、または8回の投与を受ける。例えば、患者は、最初の初期濃度で1回以上の投与、および2回目のより高い濃度で1回以上の投与を受ける。一部の実施形態において、患者には、1回以上の投与の後、有害な症状(拒絶反応)を含む、諸症状がないか診断される。一部の実施形態において、患者は、患者が前回の投与に対して許容されない副作用を呈していないとの診断後にのみ、ナタリズマブの濃度を増加させた製剤を投与される。
【0018】
一実施形態において、該方法は、提供される抗体の用量(本明細書で用いる用量とは、例えば、2回といった、規定の少数の投与のうちの1回、または各々で提供される抗体の量を指す)の漸増を可能にする。これは、用量の上昇を可能にし、用量が増加するにつれて、患者の耐性、有害な反応等を監視することを可能にすることができる。例えば、該方法は、ナタリズマブを1つ以上の初期用量または比較的低い用量で患者に提供し、その後、ナタリズマブを最終の、より高い用量で患者に提供することによって開始することができる。典型的な初期用量は、例えば、最終のより高い用量の80%、70%、50%、30%、20%または10%以下であり得る。典型的な最終用量は、一旦、定常状態投与が達成されると、投与の頻度に基づいて変化する。例えば、一部の実施形態は、75mgから500mg(例えば、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg)(これらの用量は、およそ月に1回の投与の典型であり得る)の最終用量を含む。他の実施形態は、50mgから250mg(例えば、75mg、100mg、150mg、200mg)(これらの用量は、2週間毎の投与の典型である)の最終用量を含む。他の実施形態は、25mgから150mg(例えば、50mg、75mg、100mg、125mg)(これらの用量は、週1回の投与の典型である)の最終用量を含む。一部の実施形態において、患者は、1つまたは複数の初期濃度で1回または複数回の投与を受ける。例えば、一実施形態において、患者は、複数の投与にわたり、増加する用量を受ける。一部の実施形態において、患者は、最終用量に到達する前に、1つ以上の初期用量で2、3、4、5、6、7、または8回の投与を受ける。例えば、患者は、最初の初期用量で1回以上の投与、および2回目のより高い初期用量で1回以上の投与を受ける。一部の実施形態において、患者には、1回以上の投与の後、有害な症状を含む、諸症状がないか診断される。一部の実施形態において、患者は、患者が前回の用量に対して許容されない副作用を呈していないとの診断後にのみ、増加させた用量のナタリズマブを投与される。
【0019】
本発明はまた、濃度または用量の上昇を実現するための、例えば、スターターパックといった、キットも含む。一実施形態において、患者または医療提供者は、増加濃度または用量のナタリズマブのパッケージを含む、ナタリズマブ製剤のキットまたは「スターターパック」が提供される。スターターパックが提供された患者または医療提供者は、まず、例えば、低用量、もしくは最低用量または濃度のナタリズマブを自己投与または投与し、指定期間待つように指導される。患者が有害な症状を経験しないか、または軽度の副作用を経験する場合、患者または医療提供者は、第2の製剤、例えば、より高い、例えば、2番目に高い濃度または用量を自己投与または投与するように指導される。患者または医療提供者は、所望の用量または濃度が達成されるまで、用量または濃度の段階的な増加を継続するように指導される。患者または医療提供者は、指定された期間、一定の間隔で、最終製剤の自己投与または投与を維持するように指導され得る。
【0020】
一実施形態において、シリンジ等の好適な送達装置に予めパッケージ化された、VLA−4結合抗体の高度に濃縮された製剤が患者に提供される。
別の態様において、本発明は、例えば、VLA−4結合抗体治療を必要とする患者に、本明細書に記載の製剤をどのように投与するかを指導する方法といった、方法を特徴とする。該方法は、(i)患者に、本明細書に記載のVLA−4結合抗体の高度に濃縮された製剤の少なくとも1つの単位用量を提供するステップと、(ii)少なくとも1つの単位用量を筋肉内または皮下に自己投与するように患者を指導するステップと、を含む。別の方法、例えば、治療の方法は、(i)患者に、VLA−4結合抗体の高度に濃縮された製剤の少なくとも2つの単位用量を提供するステップと、(ii)単位用量を皮下または筋肉内に、例えば、1回で1用量を自己投与するように患者を指導するステップと、を含む。
【0021】
一実施形態において、患者は、多発性硬化症等の炎症性疾患を有する。他の実施形態において、患者は、例えば、喘息(例えば、アレルギー性喘息)、関節疾患(例えば、関節リウマチ、乾癬性関節炎)、糖尿病(例えば、I型糖尿病)、線維性疾患(例えば、肺線維症、骨髄線維症、肝硬変、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、腎間質性線維症)、または炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎)を有する。
【0022】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のVLA−4結合抗体の濃縮された製剤の単位用量を特徴とし、該単位用量は、約0.25mLから約1.5mL(例えば、約0.5mL、約0.75mL、または約1.0mL)である。一実施形態において、単位用量は、約100mgから約450mg(例えば、約150mg、約160mg、約180mg、約200mg、約250mg、約300mg、または約350mg)である。
【0023】
別の態様において、本発明は、VLA−4結合抗体の水性製剤の単位用量を特徴とし、該単位用量のヒトへの投与は、ヒトの体重1kgあたり約1.4mgから約3.0mgのVLA−4結合抗体もしくはそのフラグメントを送達する。
【0024】
別の態様において、本発明は、患者に、皮下または筋肉内投与に好適な製剤にVLA−4結合抗体を含有する組成物を投与することによって、患者を治療する方法を特徴とする。一実施形態において、患者は、多発性硬化症、喘息、関節リウマチ、糖尿病、またはクローン病等の炎症性疾患を有する。別の実施形態において、該組成物は、レジメンとして投与される。別の実施形態において、該方法は、該組成物による治療に好適な患者を選択するステップをさらに含む。治療に好適な患者は、例えば、多発性硬化症を示す兆候もしくは症状等の、疾病の発症を示す兆候もしくは症状を呈している。さらに別の実施形態において、該方法は、患者に、血栓溶解剤、神経保護剤、抗炎症剤、ステロイド、サイトカイン、または成長因子等の第2の治療薬剤を投与するステップをさらに含む。
【0025】
別の態様において、本発明は、患者が予め選択された基準を満たすかどうかを判断し、かつ患者が予め選択された基準を満たす場合、本明細書に記載のVLA−4結合抗体製剤を患者に承認、提供、処方、または投与することによって、患者を評価する方法を特徴とする。一実施形態において、予め選択された基準とは、患者が先の代替の治療法またはレジメン、例えば、多発性硬化症の治療に十分に反応しないことである。別の実施形態において、予め選択された基準とは、進行性多巣性白質脳症(PML)のいずれの兆候もしくは症状の非存在、または進行性多巣性白質脳症のいずれの診断の非存在である。別の実施形態において、該基準は、参照により本明細書に組み込まれる、薬物分配の方法およびシステムを説明する、2006年8月9日出願の米国特許第60/836,530号に記載されるとおりである。
【0026】
別の態様において、本発明は、ナタリズマブの高度に濃縮された製剤の投与について、受容者を指導する方法を特徴とする。該方法は、受容者(例えば、最終使用者、患者、医師、小売もしくは卸売薬局、配給業者、または病院の薬剤部、介護施設クリニックまたは保健維持機構)に、該薬物は患者の皮下または筋肉内投与にするべきであることを指導するステップを含む。
【0027】
別の態様において、本明細書に記載の組成物を分配する方法を提供する。該組成物は、ナタリズマブの高度に濃縮された製剤を含有し、皮下または筋肉内または静脈内投与に好適である。該方法は、受容者(例えば、最終使用者、患者、医師、小売もしくは卸売薬局、配給業者、または病院の薬剤部、介護施設クリニックまたは保健維持機構)に、少なくとも6、12、24、もしくは36ヶ月間、患者を治療するのに十分な単位用量の薬物を含むパッケージを提供するステップを含む。
【0028】
別の態様において、本発明は、(例えば、期限切れであるかどうかを判断するために)高度に濃縮された量のVLA−4結合抗体を含有する本明細書に記載の組成物の1つのパッケージまたは多くのパッケージの品質を評価する方法を特徴とする。該方法は、パッケージが期限切れであるかどうかを評価するステップを含む。使用期限は、製造、アッセイ、パッケージ化等の予め選択された事象から、少なくとも6、12、24、36、もしくは48ヶ月であり、例えば、24または36ヶ月を上回る。一部の実施形態において、決定またはステップは、分析の結果行われ、例えば、製品が期限切れであるかどうかによって、パッケージ内の抗体を使用、廃棄、分類、選択、発売もしくは保留、出荷、新たな場所へ移動、市販開始、販売、もしくは特売、回収または販売中止する。
【0029】
別の態様において、本発明は、高度に濃縮された量のVLA−4結合抗体を含有する水性組成物の少なくとも2単位用量を含むパッケージを特徴とする。一実施形態において、該単位用量のすべては、同一の量の抗体を含有し、他の実施形態において、2つ以上の濃度、または2つ以上の異なる製剤(例えば、異なる濃度または放出特性を有する)単位用量が存在する。一実施形態において、少なくとも1用量は、約100mgから約450mgのVLA−4結合抗体、例えば、約100mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、または約400mgのVLA−4結合抗体を含有する。
【0030】
別の態様において、本発明は、受容者にVLA−4結合抗体を含有する水性製剤の投与について指導する方法を含む。該方法は、受容者(例えば、最終使用者、患者、医師、小売もしくは卸売薬局、配給業者、または病院の薬剤部、介護施設クリニックまたは保健維持機構)に、該抗体は使用期限前に患者に投与すべきであることを指導するステップを含む。使用期限は、製造、アッセイ、パッケージ化等の予め選択された事象から、少なくとも6、12、18、24、36、もしくは48ヶ月であり、例えば、18、24または36ヶ月を上回る。一実施形態において、受容者はまた、抗体の供給、例えば、単位用量の供給を受ける。
【0031】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の製剤と、第PCT/US2007/075577号(国際公開第WO/2008/021954号として公開)に記載の方法またはシステムの使用を特徴とする。実施形態には、本明細書に記載の製剤を分配する方法、本明細書に記載の製剤の、薬局、点滴センター、もしくは患者への提供を監視または追跡する方法、1人以上の患者を監視する方法、患者を選択する方法、または本明細書に記載の製剤の使用に関するデータを収集もしくは報告する方法を含む。第PCT/US2007/075577号(国際公開WO/2008/021954号として公開)は参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
別の態様において、本発明は、例えば、多発性硬化症といった、本明細書に記載の疾患のための、本明細書に記載の製剤による治療に対して、患者を選択する方法を特徴とする。該方法は、
例えば、ナタリズマブといった、VLA−4結合抗体の静脈内送達によって治療されている患者を選択または提供するステップと、
本明細書に記載の製剤を該患者に提供または投与するステップと、
これによって、該患者を治療するステップと、を含む。
【0033】
別の態様において、本発明は、製品またはプロセス、例えば、製造プロセスを分析する方法を特徴とする。該方法は、高度に濃縮されたVLA−4結合抗体組成物の水性製剤、例えば、本明細書に記載のプロセスによって作製されたものを提供するステップと、色(例えば、無色からわずかに黄色、もしくは無色から黄色)、透明度(例えば、透明からわずかに乳白色、もしくは透明から乳白色)、または粘度(20℃〜30℃、例えば、25℃等の周囲温度で測定した際、例えば、約5cPから30cP(例えば、10cP、20cP))等の溶液パラメータを評価することによって製剤の評価を提供するステップと、を含む。該評価には、1つ以上の溶液パラメータの評価を含むことができる。任意選択で、溶液パラメータが予め選択された基準を満たすかどうかの判断を行い、例えば、予め選択された基準が存在するか、または予め選択された範囲内に存在するかどうかを判断することによって、プロセスを分析する。
【0034】
一実施形態において、プロセスの評価には、抗VLA−4抗体製剤の安定性の測定が含まれる。抗体製剤の安定性は、例えば、凝集体の形成によって測定することができ、これは、例えば本明細書に記載のように、サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、色、透明度、もしくは粘度別に、分析される。予め設定された期間にわたり、および任意選択により、所与の温度で、アッセイパラメータの変化が約10%、5%、3%、2%、1%、0.5%、0.05%、または0.005%以下である場合、製剤は安定していると判断することができ、したがって、さらなる処理または分配に許容される。一実施形態において、高度に濃縮された液体抗VLA−4抗体製剤は、室温(例えば、約18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、もしくは25℃)で、1、2、3、4、もしくは5日間以上安定している。
【0035】
一実施形態において、該方法は、測定された値を参照値と比較し、それによって製造プロセスを分析するステップをさらに含む。
一実施形態において、該方法は、少なくとも一部において、分析に基づき、製造プロセスを維持するステップをさらに含む。一実施形態において、該方法は、分析に基づき、製造プロセスを変更するステップをさらに含む。
【0036】
別の実施形態において、該方法は、選択されたプロセスによって作製された、高度に濃縮されたVLA−4結合抗体の水性製剤の、例えば、製造プロセスといった、プロセスを評価するステップを含み、これには、本明細書に記載の方法もしくは分析に基づいて、該プロセスに関する判断を行うステップを含む。
一実施形態において、該方法は、少なくとも一部において、該方法もしくは分析に基づいて、製造プロセスを維持または変更するステップをさらに含む。したがって、別の実施形態において、評価を行う者は、本明細書に記載の方法もしくは分析を実践しないが、本明細書に記載の方法もしくは分析によって得られる結果に単に依存するわけではない。
【0037】
別の実施形態において、該方法は、バッチ間の変動を監視または制御する方法において、2つ以上の調製物を比較するか、または調製物を参照標準と比較するステップを含む。
さらに別の実施形態において、該方法は、少なくとも一部において判断に基づき、例えば、分類、選択、容認もしくは破棄、発売もしくは回収、薬物製品への処理、出荷、異なる場所へ発送、移動、製剤化、ラベル添付、パッケージ化、市販、該調製物の販売もしくは特売を行うための該判断を行うステップをさらに含むことができる。
【0038】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の、例えば、ナタリズマブ製剤といった、VLA−4結合抗体製剤を保存、分配、または使用する方法を特徴とする。該方法は、
第1の低い温度、例えば、18℃未満、例えば、凝固点より高いが、15℃、10℃、もしくは4℃またはそれ以下で、第1の期間、該製剤を保存するステップと、
第2のより高い温度、例えば、冷蔵することなく、または室温、例えば、18℃から25℃で、第2の期間、該製剤を保存するステップを含み、該第2の期間は、24、48、72、もしくは96時間を上回らず、一部の実施形態において、第2の期間は、該製剤の患者への投与後または破棄後に終了する。
【0039】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の例えば、ナタリズマブ製剤といった、VLA−4結合抗体製剤を保存、分配、または使用する方法を特徴とする。該方法は、
第1の低い温度、例えば、18℃未満、例えば、凝固点より高いが、15℃、10℃、もしくは4℃またはそれ以下で、第1の期間、該製剤を保存するステップと、
該製剤を、受容者、例えば、最終使用者、例えば、患者もしくは医療提供者に提供するステップと、
任意選択で、最終使用者に、該製剤が第2のより高い温度、例えば、冷蔵することなく、または室温で、例えば、18℃から25℃で、保存することができることを指導するステップと、
受容者による受容後、該製剤を第2の温度で、最大24、48、72、もしくは96時間保存するステップと、を含む。
【0040】
別の態様において、本発明は、実在者、例えば、薬局、配給業者、または最終使用者、例えば、患者もしくは医療提供者に、本明細書に記載の、例えば、ナタリズマブ製剤といった、VLA−4結合抗体製剤をどのように保存、分配、または使用するかを指導する方法を特徴とする。該方法は、
実在者に、第1の低い温度、例えば、18℃未満、例えば、凝固点より高いが、15℃、10℃、もしくは4℃またはそれ以下で、第1の期間、該製剤を保存するべきであることを指導するステップであって、該第1の期間は、該製剤が最終使用者に提供されるまで、または患者への投与前24、48、72、もしくは96時間以内まで、延長される、ステップと、
実在者に、第2のより高い温度、例えば、冷蔵することなく、または室温、例えば、18℃から25℃で、第2の期間、該製剤を保存することができることを指導するステップであって、該第2の期間は、24、48、72、もしくは96時間を超過しない、ステップと、
これによって、実在者を指導するステップと、を含む。
【0041】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の例えば、ナタリズマブ製剤といった、VLA−4結合抗体製剤を保存、分配、または使用する方法を特徴とする。該方法は、
第1の低い温度、例えば、18℃未満、例えば、凝固点より高いが、15℃、10℃、もしくは4℃またはそれ以下で、第1の期間、該製剤を保存するステップと、
該製剤を第2のより高い温度、例えば、冷蔵することなく、または室温、例えば、18℃から25℃で、24、48、72、もしくは96時間未満保存するステップと、を含む。
【0042】
別の態様において、本発明は、例えば、品質管理または出荷規格分析において、高度に濃縮されたVLA−4結合抗体の水性製剤の品質を評価するといった、評価方法を特徴とする。該方法は、色(例えば、無色からわずかに黄色、もしくは無色から黄色)、透明度(例えば、透明からわずかに乳白色、もしくは透明から乳白色)、または粘度(例えば、20℃〜30℃、例えば、25℃等の周囲温度で測定した際、約5cPから30cP)等の溶液パラメータに関する、抗体製剤の評価を提供するステップを含む。該評価には、上記パラメータのうち、1つ以上の評価を含むことができる。該方法はまた、任意選択で、溶液パラメータが予め選択された基準を満たすかどうか、例えば、予め選択された基準が存在するか、または予め選択された範囲内に存在するかどうかを判断するステップを含む。観察された溶液パラメータが予め選択された値の範囲内であるか、または予め選択された標準基準を満たす場合、パッケージ化、使用、販売、販売開始、廃棄等のために、調製物を選択する。
【0043】
別の態様において、本発明は、規制要件、例えば、食品医薬品局といった規制機関の、例えば、事後承認要件に適合させる方法を特徴とする。該方法は、色(例えば、無色からわずかに黄色、もしくは無色から黄色)、透明度(例えば、透明からわずかに乳白色、もしくは透明から乳白色)、または粘度(例えば、20℃〜30℃等の周囲温度で測定した際、約5cPから30cP)等の溶液パラメータに関する、抗体製剤の評価を提供するステップを含む。事後承認要件には、上記のパラメータのうちの1つ以上の測定を含むことができる。該方法はまた、任意選択で、観察された溶液パラメータが予め選択された基準を満たすかどうか、またはパラメータが予め選択された範囲内であるかどうかを判断するステップ、任意選択で、分析の値もしくは結果の請願書を提出するステップ、または例えば、規制機関に該値もしくは結果を伝送することによって、機関と連絡を取り合うステップと、を含む。
【0044】
別の態様において、本発明は、例えば、出荷規格、ラベル要件、または簡易検査要件(例えば、本明細書に記載の特性といった)を満たす、予め選択された特性を有する、VLA−4結合抗体の1組の水性製剤を作製する方法を特徴とする。該方法は、試験抗体調製物を提供するステップと、本明細書に記載の方法に従って試験抗体調製物を分析するステップと、試験抗体調製物が予め選択された基準を満たすかどうかを判断するステップ(例えば、参照値(例えば、本明細書に開示する1つ以上の参照値)との予め選択された関係を有する)と、1組の製品を作製するように試験抗体調製物を選択するステップと、を含む。
【0045】
別の態様において、本発明は、VLA−4結合抗体の複数の組の水性製剤を特徴とし、各組の1つ以上の溶液パラメータ(例えば、本明細書に記載の方法によって判断された値もしくは溶液パラメータ)は、例えば、本明細書に記載の範囲もしくは基準といった、予め選択された所望の参照値もしくは基準から、予め選択された範囲未満で変動する。一部の実施形態において、1つ以上の組の抗体製剤の1つ以上のパラメータを判断し、該判断の結果として、1組もしくは複数の組を選択する。一部の実施形態は、判断の結果を、例えば、参照標準といった予め選択された値もしくは基準と比較するステップを含む。他の実施形態は、例えば、値もしくはパラメータの判断の結果に基づいて、投与する組の用量を調整するステップを含む。
【0046】
別の態様において、本発明は、報告書受領者への報告書の提供、参照標準(例えば、食品医薬品局要件)との適合に関する、VLA−4結合抗体の水性製剤の試料の評価、他者から、VLA−4結合抗体の調製物が一部の規定の要件を満たすという指標の要求、またはVLA−4結合抗体の調製物に関する情報の他者への提出、のうちの1つ以上の方法を特徴とする。例示的な受領者もしくは他者としては、政府、例えば、米国連邦政府(例えば、政府機関(例えば、食品医薬品局))が挙げられる。該方法は、第1の国(例えば、米国)において、VLA−4結合抗体の水性製剤を作製および/または試験するための以下のステップのうちの1つ以上(もしくはすべて)を含む。第1の国の外部に少なくとも試料のアリコートを送付する(例えば、米国外部、第2の国へ送付する)ステップ、VLA−4結合抗体の調製物の構造に関するデータ(例えば、本明細書に記載の構造および/もしくは鎖に関連するデータ、例えば、本明細書に記載の方法のうちの1つ以上によって生成されたデータ)を含む、報告書を作成または受領するステップ、ならびに該報告書を報告書受領者に提供するステップ。
【0047】
一実施形態において、報告書受領者は、既定の要件もしくは参照値がデータによって満たされるかどうかを判断することができ、任意選択で、報告書受領者からの返答は、例えば、VLA−4結合抗体の水性製剤の製造業者、配給業者もしくは販売業者によって、受領される。一実施形態において、報告書受領者からの承認を受領すると、VLA−4結合抗体の調製物は、選択、パッケージ化、または販売される。
【0048】
別の態様において、本発明は、VLA−4結合抗体の水性製剤を評価する方法を特徴とする。該方法は、VLA−4結合抗体の存在もしくはレベルに関するデータを受領するステップであって、例えば、該データは本明細書に記載の1つ以上の方法によって作成される、ステップと、該データ、および任意選択で1組のVLA−4結合抗体の識別子を含む報告書を提供するステップと、該報告書を意思決定者(例えば、政府機関(例えば、食品医薬品局))に提出するステップと、任意選択で該意思決定者からの連絡を受領するステップと、任意選択で意思決定者からの連絡に基づき、該1組のVLA−4結合抗体を発売または市場に出すかどうかを決定するステップと、を含む。一実施形態において、該方法は、試料を発売するステップをさらに含む。
【0049】
例示的な製剤としては、以下のものが挙げられる。

1.ナタリズマブ、125〜175mg/mL、もしくは140〜160mg/mL、例えば、150mg/mL、
リン酸ナトリウム緩衝液、1〜100mM、5〜20mM、もしくは5〜50mM、例えば、10mM、
塩化ナトリウム、50〜200mM、100〜180mM、もしくは120〜160mM、例えば、140mM、
ポリソルベート80、0.01〜0.12%、0.02〜0.08%、もしくは0.02〜0.06%、例えば、0.04%(w/v)、および
pH6.0±1.0、例えば、6.0±0.5、

2.ナタリズマブ、125〜175mg/mLもしくは140〜160mg/mL、例えば、150mg/mL、
10mM リン酸ナトリウム緩衝液、
140mM 塩化ナトリウム、
0.04%(w/v)ポリソルベート80、および
pH6.0±0.5、

3.150mg/mL ナタリズマブ、
リン酸ナトリウム緩衝液、1〜100mM、5〜20mM、もしくは5〜50、例えば、10mM、
140mM 塩化ナトリウム、
0.04%(w/v)ポリソルベート80、および
pH6.0±0.5、

4.150mg/mL ナタリズマブ、
10mM リン酸ナトリウム緩衝液、
塩化ナトリウム 50〜200mM、100〜180mM、または120〜160mM、例えば、140mM、
0.04%(w/v)ポリソルベート80、および
pH6.0±0.5、

5.150mg/mL ナタリズマブ、
10mM リン酸ナトリウム緩衝液、
140mM 塩化ナトリウム、
ポリソルベート80、0.01〜0.12%、0.02〜0.08%、もしくは0.02〜0.06%、例えば、0.04%(w/v)、および
pH6.0±0.5、

6.150mg/mL ナタリズマブ、
10mM リン酸ナトリウム緩衝液、
140mM 塩化ナトリウム、
0.04%(w/v)ポリソルベート80、および
pH6.0±1.0、例えば、pH6.0±0.5、

ならびに

7.150mg/mL ナタリズマブ、
10mM リン酸ナトリウム緩衝液、
140mM 塩化ナトリウム、
0.04%(w/v)ポリソルベート80、および
pH6.0±0.5。

【0050】
一部の実施形態において、上記の製剤1〜7のうちのいずれも、アミノ酸、例えば、アルギニンもしくはグリシン、またはグリセロールを本質的に含まない可能性がある。
本明細書に開示する方法および組成物は、混合物内の1つ以上の構造の存在、分布、または量が、生物学的活性を有するか、またはそれに影響を及ぼす場合、使用することができる。該方法はまた、生物学的同等性を評価または確証するために、構造活性の観点から有用である。本明細書において使用する「高度に濃縮されたVLA−4結合抗体製剤」とは、約120mg/mLから約190mg/mL(例えば、約120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、150mg/mL、160mg/mL、170mg/mL、180mg/mL、190mg/mL)の、ナタリズマブ等のVLA−4結合抗体を含有する安定した水性製剤を指す。
【0051】
「皮下または筋肉内投与に好適」とは、組成物のヒト等の被験体への投与が、被験体において1つ以上の症状を改善させる等の治療効果を有することを意味する。「治療する」という用語は、統計的に有意な程度または当業者が検出可能な程度のいずれかまで、疾患に関連する状態、症状、もしくはパラメータを改善する、または疾患の進行を予防するのに有効な量、様態、および/または形態での治療薬の投与を指す。有効量、様態、または形態は、被験体に応じて変動し得、被験体に合わせて調製され得る。
【0052】
VLA−4結合抗体の「安定した」製剤は、例えば、12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月以上といった長期間にわたり、凝集、フラグメント化、脱アミド化、酸化、もしくは生物学的活性の変化のうちの、いずれか1つ以上の兆候をほとんど呈しないかまったく呈しない。例えば、一実施形態において、該組成物の10%未満が、凝集、フラグメント化、または酸化する。凝集、沈殿、および/もしくは変性は、色および/もしくは透明度の外観検査等の既知の方法によって、または紫外光散乱もしくはサイズ排除クロマトグラフィーによって評価することができる。タンパク質がその生物学的活性を保持する能力は、抗体の化学変化した形態を検出および定量化することによって評価することができる。サイズ改変(例えば、クリッピング)は、例えば、エンドプロテアーゼで処理した抗体のサイズ排除クロマトグラフィー、SDS−PAGEおよび/またはマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI/TOF MS)、またはペプチドマッピングを用いて評価することができる。他のタイプの化学変化としては、荷電変化(例えば、脱アミド化の結果として生じる)が挙げられ、これは、例えば、イオン交換クロマトグラフィーによって評価することができる。所与の時間における抗体の生物学的活性が、例えば、抗原結合アッセイにおいて判断される、医薬製剤が調製された時間に呈された生物学的活性の約10%以内である場合、抗体は、該医薬製剤において「その生物学的活性を保持する」。
【0053】
「VLA−4結合抗体」とは、VLA−4インテグリンのα4サブユニット等のVLA−4インテグリンに結合し、かつ少なくとも部分的にVLA−4の活性、特にVLA−4インテグリンの結合活性またはシグナル伝達活性、例えば、VLA−4媒介シグナルを変換する能力を抑制する、抗体を指す。例えば、VLA−4結合抗体は、VLA−4の、VLA−4の同族リガンド、例えば、VCAM−1等の細胞表面タンパク質への結合、またはフィブロネクチンもしくはオステオポンチン等の細胞外基質成分への結合を抑制し得る。VLA−4結合抗体は、α4サブユニットもしくはβ1サブユニットのいずれか、または両方に結合し得る。一実施形態において、該抗体は、α4のB1エピトープに結合する。VLA−4結合抗体は、約10−6、10−7、10−8、10−9、もしくは10−10M未満のKを有するVLA−4に結合し得る。VLA−4はまた、アルファ4/ベータ1およびCD29/CD49bとしても知られる。
【0054】
本明細書において使用する、「抗体」という用語は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域を含むタンパク質、例えば、免疫グロブリン可変ドメインもしくは免疫グロブリン可変ドメイン配列を提供するアミノ酸配列を指す。例えば、抗体は、重(H)鎖可変領域(本明細書においてはVHと省略)、および軽(L)鎖可変領域(本明細書においてはVLと省略)を含み得る。別の実施例において、抗体は、2つの重(H)鎖可変領域および2つの軽(L)鎖可変領域を含む。「抗体」という用語は、抗体の抗原結合フラグメント(例えば、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、およびdAbフラグメント)、ならびに完全抗体、例えば、タイプIgA、IgG、IgE、IgD、IgM(ならびにそのサブタイプ)の無傷免疫グロブリンを包含する。免疫グロブリンの軽鎖は、カッパもしくはラムダタイプであり得る。一実施形態において、該抗体はグリコシル化される。抗体は、抗体依存性細胞毒性および/もしくは補体仲介性細胞毒性に対して機能的であることが可能であるか、またはこれらの活性のうちの1つもしくは両方に対して非機能的であり得る。
【0055】
VHおよびVL領域は、さらに、「相補性決定領域」(「CDR」)と称される超可変性の領域に細分され、「フレームワーク領域」(FR)と称される、より保存された領域に散在され得る。FRおよびCDRの範囲は、正確に定義されている(Kabat, E.A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、第五版、米国保健社会福祉省、NIH公開第91−3242号、およびChothia, C. et al. (1987) J. Mol. Biol. 196:901−917を参照)。Kabatの定義を本明細書において使用する。各VHおよびVLは、通常、3つのCDRおよび4つのFRからなり、以下の順でアミノ末端からカルボキシル末端に位置する。FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0056】
「免疫グロブリンドメイン」とは、免疫グロブリン分子の可変もしくは定常ドメイン由来のドメインを指す。免疫グロブリンドメインは、通常、約7つのβ鎖から形成される2つのβシート、および保存されたジスルフィド結合を含有する(例えば、 A. F. Williams and A. N. Barclay 1988 Ann. Rev Immunol. :381−405を参照)。
【0057】
本明細書において使用する「免疫グロブリン可変ドメイン配列」とは、免疫グロブリン可変ドメインの構造を形成することができるアミノ酸配列を指す。例えば、該配列は、自然発生の可変ドメインのアミノ酸配列のすべてもしくは一部を含み得る。例えば、該配列は、1つ、2つ、もしくはそれ以上のNもしくはC末端アミノ酸、内部アミノ酸を省略している場合があるか、1つ以上の挿入もしくは追加の末端アミノ酸を含んでいる場合があるか、または他の変化を含んでいる場合がある。一実施形態において、免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むポリペプチドは、標的結合構造(すなわち「抗原結合部位」)、例えば、VLA−4と相互作用する構造を形成するように、別の免疫グロブリン可変ドメイン配列に会合することができる。
【0058】
抗体のVHもしくは鎖はさらに、重鎖もしくは軽鎖定常領域のすべてまたは一部を含み得、それによって、それぞれ、免疫グロブリン重鎖または軽鎖を形成する。一実施形態において、抗体は、2つの免疫グロブリン重鎖および2つの免疫グロブリン軽鎖の四量体である。免疫グロブリン重鎖および軽鎖は、ジスルフィド結合によって結合させることができる。重鎖定常領域は、通常、3つの定常ドメイン、CH1、CH2、およびCH3を含む。軽鎖定常領域は、通常、CLドメインを含む。重鎖および軽鎖の可変領域には、抗原と相互作用する結合ドメインが含まれる。抗体の定常領域によって、通常は、宿主組織または因子(免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクタ細胞)、および古典的な補体系の第1の成分(Clq)を含む)への抗体の結合を媒介する。
【0059】
抗体の1つ以上の領域は、ヒトのものであり得るか、有効にヒトのものであり得るか、またはヒト化されたものであり得る。例えば、可変領域の1つ以上が、ヒトのものであり得るか、または有効にヒトのものであり得る。例えば、CDRの1つ以上の(例えば、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3)がヒトのものであり得る(HC(重鎖)、LC(軽鎖))。軽鎖CDRのそれぞれはヒトのものであり得る。HC CDR3はヒトのものであり得る。フレームワーク領域の1つ以上は、ヒトのものであり得、例えば、HCもしくはLCのFR1、FR2、FR3、およびFR4であり得る。一実施形態において、フレームワーク領域のすべてが、ヒトのものであり、例えば、ヒト体細胞(例えば、免疫グロブリンを生成する造血細胞、または非造血細胞)に由来するものである。一実施形態において、ヒト配列は、生殖系列配列(例えば、生殖系列核酸によってコードされる)である。定常領域の1つ以上は、ヒトのものであり得るか、有効にヒトのものであり得るか、またはヒト化されたものであり得る。別の実施形態において、フレームワーク領域(例えば、FR1、FR2、およびFR3(合計で)、もしくはFR1、FR2、FR3、およびFR4(合計で))、または抗体全体の少なくとも70、75、80、85、90、92、95、もしくは98%が、ヒトのものであり得るか、有効にヒトのものであり得るか、またはヒト化されたものであり得る。例えば、FR1、FR2、およびFR3は、合計で、ヒト生殖系列セグメントによってコードされるヒト配列に対して、少なくとも70、75、80、85、90、92、95、98、もしくは99%同一である可能性がある。
【0060】
「有効にヒト」の免疫グロブリン可変領域は、免疫グロブリン可変領域が正常なヒトにおいて免疫原生反応を惹起しないように、十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を含む、免疫グロブリン可変領域である。「有効にヒト」の抗体は、抗体が正常なヒトにおいて免疫原生反応を惹起しないように、十分な数のヒトアミノ酸位置を含む、抗体である。
【0061】
「ヒト化」免疫グロブリン可変領域は、修飾された形態が、修飾されていない形態よりも少ない免疫反応をヒトにおいて惹起するように修飾される(例えば、免疫グロブリン可変領域が正常なヒトにおいて免疫原生反応を惹起しないように、十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を含むように修飾される)、免疫グロブリン可変領域である。「ヒト化」免疫グロブリンの説明としては、例えば、米国特許第6,407,213号および米国特許第5,693,762号が挙げられる。一部の場合、ヒト化免疫グロブリンは、1つ以上のフレームワークアミノ酸位置に非ヒトアミノ酸を含み得る。
【0062】
抗体のすべてもしくは一部は、免疫グロブリン遺伝子またはそのセグメントによってコードされ得る。例示的なヒト免疫グロブリン遺伝子としては、カッパ、ラムダ、アルファ(IgA1およびIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、エプシロン、ならびにミュー定常領域遺伝子、さらには種々の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25Kdまたは214アミノ酸)は、NH2末端で可変領域遺伝子によって(約110アミノ酸)、およびCOOH末端でカッパもしくはラムダ定常領域遺伝子によってコードされる。全長免疫グロブリン「重鎖」(約50Kdまたは446アミノ酸)は同様に、可変領域遺伝子(約116アミノ酸)、および他の前述の定常領域遺伝子(例えば、ガンマ(約330アミノ酸をコード)のうちの1つによってコードされる。
【0063】
全長抗体の「抗原結合フラグメント」という用語は、関心対象の標的(例えば、VLA−4)に特異的に結合する能力を保持する全長抗体の1つ以上のフラグメントを指す。全長抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に包含される結合フラグメントの例としては、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメントである、Fabフラグメント、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結される2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントである、F(ab')フラグメント、(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント、(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,(1989) Nature 341:544−546)、および(vi)機能性を保持する、単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、FvフラグメントであるVLおよびVHの2つのドメインは別の遺伝子によってコードされるが、VLおよびVH領域が対になって一本鎖Fv(scFv)として知られる一価分子を形成する、単一のタンパク質鎖として作製することを可能にする合成リンカーによって、組み換え方法を使用して結合することができる。例えば、Bird et al.(1988) Science 242:423−426、およびHuston et al. (1988) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照されたい。
【0064】
本明細書において使用する「約」とは、所与の値の0.1%から5%以内(例えば、所与の値のプラスマイナス5%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%以内)を指す。量および他の指定された値が本明細書に提供される場合、許容偏差は、薬剤として許容される標準内である。
【0065】
本発明の実施形態によってある種の利点を提供する。一部の例において、医薬組成物における使用を目的とするタンパク質の高濃度製剤(例えば、抗体)を作製することは困難である。かかる製剤を調製する方法を本明細書に提示する。高濃度のタンパク質(例えば、抗VLA−4抗体の)を含有する医薬組成物は、短期間にわたる投与に有用であり得る。高濃度製剤(例えば、抗VLA−4抗体の)はまた、簡略化した方法によって投与(例えば、皮下に)することもできる。
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を、添付の図面および以下の説明に記載する。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面、ならびに請求項から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】種々の製剤において150mg/mLの濃度におけるナタリズマブの撹拌前および撹拌後の可溶性凝集体のレベルを示す。HCN=20mM ヒスチジン、240mM グリシン、0.04%(w/v) ポリソルベート80、pH6。HOL=20mM ヒスチジン、240mM グリセロール、0.04%(w/v) ポリソルベート80、pH6。PCN=20mM リン酸、240mM グリシン、0.02%(w/v) ポリソルベート80、pH6。PST=20mM リン酸、140mM NaCl、0.02%(w/v) ポリソルベート80、pH6。
【図2】図1に記載の製剤における150mg/mLの濃度におけるナタリズマブの撹拌前および撹拌後の340nmでの溶液の紫外吸光度を示す。
【図3】凝集と、HOL製剤(HOL=20mM ヒスチジン、240mM グリセロール、pH6、ポリソルベート80は実験の変数)におけるナタリズマブ(150mg/mL)に対する種々のレベルのポリソルベート80との関係を示す。
【図4】図1に記載の種々の製剤における、40℃で保存したナタリズマブ(150mg/mL)の経時的な凝集の割合(%)を示す。
【図5】図1に記載の種々の製剤における2〜8℃のもと、バイアル内で保存したナタリズマブ(150mg/mL)の経時的な凝集の割合(%)を示す。
【図6】図1に記載の種々の製剤における2〜8℃および40℃で保存したナタリズマブ(150mg/mL)の経時的なメチオニン酸化の割合(%)を示す。
【図7】6ヶ月にわたるナタリズマブ(150mg/mL)の補足剤を含まない賦形剤の関数としてのメチオニン酸化の割合(%)を示す。
【図8】時間(8週間)に対する、種々の濃度および種々の製剤におけるナタリズマブのフラグメント化の割合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
高度に濃縮されたVLA−4結合抗体の安定した製剤は、皮下(SC)、筋肉内(IM)、または静脈内(IV)投与に有用である。本発明で扱う製剤は、約120mg/mLから約190mg/mLのVLA−4結合抗体、例えば、ナタリズマブを含有する。
【0068】
(医薬組成物)
本明細書に記載の組成物は、医薬組成物として製剤化される。VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)は、例えば、緩衝液中、約120mg/mLから190mg/mLの濃度(例えば、約120mg/mLから約180mg/mL、約140mg/mLから約160mg/mL、約135mg/mLから約165mg/mL;例えば、約120mg/mL、130mg/mL、135mg/mL、140mg/mL、150mg/mL、160mg/mL、165mg/mL、170mg/mL、180mg/mL、190mg/mL)で提供され得る。一実施形態において、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)は、緩衝液中、150mg/mLを上回り、約190mg/mL未満の濃度で提供される。別の実施形態において、該製剤は、より高い濃度(例えば、170mg/mLから190mg/mL)で調製され、次いで、希釈して所望の濃度(例えば、135mg/mLから165mg/mL)に戻される。例えば、該製剤は、例えば、175mg/mL、180mg/mLまたは185mg/mLの抗体濃度で調製し、次いで、希釈して投与に所望される濃度、例えば、140mg/mL、145mg/mL、150mg/mL、155mg/mL、または160mg/mLに戻すことができる。組成物は、2〜8℃(例えば、4℃、5℃、6℃、7℃)で保存することができる。
【0069】
一実施形態において、VLA−4結合抗体は、賦形剤材料、例えば、160mM Lアルギニン塩酸塩(±10%)、リン酸緩衝液(例えば、リン酸二ナトリウム七水和物およびリン酸一ナトリウム)、およびポリソルベート80で製剤化され得、総ナトリウム含有量は、60mMを上回らない。別の実施形態において、VLA−4結合抗体は、275mMグリセロール(±10%)、リン酸緩衝液(例えば、リン酸二ナトリウム七水和物およびリン酸一ナトリウムまたは他のリン酸塩)、およびポリソルベート80で製剤化され得、実質的に塩化ナトリウムを含まない。別の実施形態において、VLA−4結合抗体は、140mM塩化ナトリウム(±10%)、リン酸緩衝液、およびポリソルベート80で製剤化され得る。リン酸緩衝液を含む例示的な製剤は、以下、例えば、実施例8、9、10、11、および12において提供される。
【0070】
一実施形態において、VLA−4結合抗体は、賦形剤材料、例えば、240mMグリセロール(±10%)、ヒスチジン緩衝剤、ポリソルベート80、および任意選択でL−メチオニンで製剤化され得る。ヒスチジン緩衝剤を含む例示的な製剤は、以下、例えば、実施例13および14において提供される。
リン酸緩衝液は、当該技術分野において知られ、例えば、適切なpHに調整されたリン酸二ナトリウム(無水物)、リン酸二ナトリウム七水和物、リン酸二ナトリウム二水和物、リン酸一ナトリウム無水物、リン酸一ナトリウム一水和物、リン酸一ナトリウム二水和物、リン酸三ナトリウム無水物、またはリン酸三ナトリウム十二水塩の水溶液を含む。リン酸緩衝液は、例えば、適切なpHに調整されたリン酸一カリウム、リン酸二カリウム無水物、またはリン酸三カリウムも含む。
【0071】
ヒスチジン緩衝剤は、当該技術分野において知られ、例えば、塩酸もしくは水酸化ナトリウムのいずれかを用いて適切なpHに調整されたD−ヒスチジン、D−ヒスチジン一塩化一水和物、DL−ヒスチジン、DL−ヒスチジン一塩化一水和物、L−ヒスチジン、またはL−ヒスチジン一塩化一水和物の水溶液、または当該技術分野において知られる他の酸もしくは塩基を含む。
通常、医薬組成物は、薬剤として許容される担体を含む。本明細書において使用する「薬剤として許容される担体」は、生理学的に適合する任意およびすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤等を含む。
【0072】
「薬剤として許容される塩」は、抗体の所望の生物学的活性を保持し、任意の所望されない毒性効果を与えない塩を意味する(例えば、Berge,S.M.,et al.(1977)J.Pharm.Sci.66:1−19を参照)。かかる塩の例としては、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、非毒性無機酸、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等、ならびに非毒性有機酸、例えば、脂肪族モノカルボン酸および脂肪族二カルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸、遊離アミノ酸等に由来のものが挙げられる。塩基付加塩としては、アルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等、ならびに非毒性有機アミン、例えば、N,N′−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等に由来のものが挙げられる。
【0073】
通常、生理学的に適合する薬剤、例えば、遊離アミノ酸、遊離アミノ酸の塩酸塩、ナトリウム塩、またはカリウム塩は、抗体の安定性を促進するために、医薬製剤において賦形剤として使用される。本明細書における製剤は、安定性を促進するために、添加剤、例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、および他のポリオール、ならびに糖(例えば、スクロース)を含み得る。
【0074】
本明細書で扱う製剤は、薬剤として許容される賦形剤、例えば、界面活性物質、例えば、ポリソルベート80、モノステアリン酸グリセリン、ステアリン酸ポリオキシル、ラウロマクロゴール、またはオレイン酸ソルビタンを含み得る。一実施形態において、本明細書で扱う製剤は、約0.01%(w/v)から約0.1%(w/v)ポリソルベート80、例えば、約0.2%または0.04%ポリソルベート80を含む。
【0075】
高度に濃縮されたVLA−4結合抗体を含有する医薬組成物は、液体溶液(例えば、注射剤および注入できる溶液)の形態である。かかる組成物は、非経口形態(例えば、皮下、腹腔内、または筋肉内注射)により投与され得る。本明細書において使用する「非経口投与」および「非経口投与された」という用語は、通常は注射による内部および局所投与以外の投与形態を意味し、皮下もしくは筋肉内投与、ならびに静脈内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、表皮下、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外、および胸骨内注射および注入を含む。一実施形態において、本明細書に記載の製剤は、皮下に投与される。
【0076】
医薬組成物は、製造および保存の状態下で無菌であり安定している。医薬組成物を試験して、投与に関する規制および産業基準を満たすことを保証することもできる。
高度に濃縮された量のVLA−4結合抗体を含有する医薬組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散剤、リポソーム、または高い抗体濃度に好適な他の秩序構造として製剤化され得る。滅菌注射剤は、必要量の本明細書に記載の薬剤を、上に列挙される材料の1つまたは組み合わせとともに適切な溶媒に組み込むことによって、必要に応じて、濾過滅菌に続いて調製することができる。一般に、分散剤は、本明細書に記載の薬剤を、塩基性分散媒体および上に列挙されるものから必要とされる他の材料を含有する滅菌媒体に組み込むことによって調製される。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散剤の場合は必要な粒径の維持によって、および界面活性物質の使用によって維持することができる。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを該組成物に含めることによってもたらされ得る。
【0077】
一部の実施形態において、製剤を説明するパラメータ、例えば、製品ラベルに表示され得るパラメータを特徴とする。かかるパラメータは、例えば、色(通常、無色からわずかに黄色、または無色から黄色)、透明度(通常、透明からわずかに乳白色、または透明から乳白色)、および粘度(周囲温度、例えば、20℃から30℃で測定した場合、通常、約5cPから30cPの間)を含む。かかるパラメータは、当該技術分野において知られる方法によって測定することができる。例えば、透明度は、市販のオパールエッセンススタンダード(例えば、HunterLab Associates,Inc.(Reston,VA)から入手可能)を使用して測定することができる。
【0078】
一部の実施形態において、抗体製剤の安定性が分析される。例示的な方法は、例えば、凝集研究、酸化研究、フラグメント化研究、シアリル化研究、等電点研究、半抗体研究、重鎖および軽鎖パリティ研究、および二次構造(例えば、円偏光二色性分析による)、熱変性(例えば、示差走査熱量測定の円偏光二色性分析による)、トリプトファン環境(例えば、蛍光分析による)、IgGの折り畳み(例えば、遠紫外線円偏光二色性分析による)、および芳香族残基環境(例えば、紫外線可視分光光度法による)の分析を含む。
【0079】
(抗体製剤を作製する方法)
VLA−4結合抗体製剤を含有する製剤は、米国公開出願第2005/0053598号に記載されるように作製し、高濃度の抗体(例えば、約75mg/mLから約190mg/mL、100mg/mLから約180mg/mL、約120mg/mLから約170mg/mL、135mg/mLから約165mg/mLの濃度)に対応するように修正することができる。該プロセスは、熟練者に既知のとおり変更できるが、一般に、例えば、以下の手順に従う。関心対象の抗体またはタンパク質を作製する細胞を含有する機能している細胞バンクからアンプルを取得する。接種材料を調製する。必要に応じて追加供給しながら、接種材料の細胞を培養または発酵する。遠心分離および/または濾過によって細胞を採取/浄化する。これは、例えば、らせん状にねじれた濾過によって、細胞を10倍濃縮することにより行うことができる。例えば、0.2μmフィルターを通す中間濾過の後に、例えば、タンパク質A Sepharose Fast Flow(登録商標)による親和性クロマトグラフィー、および次いで逆溶出を行う。組成物を含有する抗体は、次いで、低pH、例えば、pH3.6〜3.7で処理を受ける。次いで、混合物は、ウイルス濾過に続いて濃度/ダイアフィルトレーションステップを経る。さらに、組成物は、例えば、アニオン交換クロマトグラフィー、例えば、DEAE Sepharose Fast Flow(登録商標)によって精製される。このステップは、複数回行うことができる。この点から、該組成物は、次いで、さらに濃縮された後、例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー、例えば、Sephacryl S300HR(登録商標)システムによって精製される。組成物を含有する抗体は、所望される場合、さらに濃縮することができる。最終製剤は、緩衝液およびポリソルベートを添加し、限外濾過プロセスによって抗体を再度濃縮することにより作製される。結果として生じる抗体製剤は、品質管理試験され、品質保証(QA)が出され得る。抗体製剤は、以下の表1に例示される方法のいずれかに従って作製することができる。例えば、VLA−4結合抗体を含有する製剤、例えば、ナタリズマブは、以下のプロセスによって作製することができる。当該技術分野において知られるように、大量の細胞培養、例えば、5,000から20,000リットル(例えば、5,000、10,000、15,000、20,000リットル)を接種、培養、供給、採取、および浄化する。浄化した材料は、例えば、クロマトグラフィー、ウイルス不活性化、およびウイルス濾過によって精製する。浄化した材料の限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)は、リン酸プロセス中間体を生じる。リン酸プロセス中間体は、例えば、タンパク質をさらに濃縮するための方法によるさらなる処理のために、2〜8℃で保存してもよい。最終製剤を作製するために、ポリソルベートおよび緩衝液(本明細書に記載のとおり)をリン酸プロセス中間体に添加し、最終の所望抗体濃度を得る。一代替例において、最終製剤は、リン酸プロセス中間体を緩衝液で希釈して最終の所望濃度、例えば、20mg/mL等の低濃度に戻すことによって作製される。ポリソルベートは、通常、最終希釈ステップ中に添加される。
【0080】
一実施形態において、VLA−4結合抗体製剤は、リン酸プロセス中間体が、少なくとも第2のUF/DFプロセス、および任意選択で、少なくとも1つの追加UFプロセスを経て、本明細書に記載のヒスチジン製剤となり、最終の所望濃度が、例えば、約75mg/mLから190mg/mLの間、例えば、約75mg/mLから約190mg/mLの間、例えば、75mg/mL、100mg/mL、125mg/mL、135mg/mL、150mg/mL、165mg/mL、180mg/mL、190mg/mLとなることを除いて、上に説明するとおりに、ヒスチジン製剤で作製される。一代替例において、ヒスチジン緩衝剤中の抗体製剤は、所望の濃度を上回る最終濃度になる。次いで、最終製剤は、希釈によりヒスチジン製剤緩衝剤を所望のタンパク質濃度に戻すことによって作製される。ポリソルベートは、通常、最終希釈ステップ中に添加される。
【0081】
別の実施形態において、抗体製剤は、リン酸プロセス中間体が、少なくとも第2のUF/DFプロセス、および任意選択で、少なくとも1つの追加UFプロセスを経て、本明細書に記載のリン酸製剤緩衝液となり、最終の所望濃度が、例えば、約75mg/mLから190mg/mLの間、例えば、約75mg/mLから約190mg/mLの間、例えば、75mg/mL、100mg/mL、125mg/mL、135mg/mL、150mg/mL、165mg/mL、180mg/mL、190mg/mLとなることを除いて、上に説明するとおりに、リン酸製剤で作製される。一代替案において、リン酸緩衝液中の抗体製剤は、最終濃度が所望の濃度を上回り、最終製剤は、リン酸製剤緩衝材に希釈して所望のタンパク質濃度に戻すことによって作製される。ポリソルベートは、通常、最終希釈ステップ中に添加される。
【0082】
別の実施形態において、VLA−4結合抗体製剤は、リン酸製剤用の商業UF/DFプロセスが続き、ポリソルベートを添加して、VLA−4結合抗体製剤を所望の最終濃度、例えば、約75mg/mLから190mg/mLの間、例えば、約75mg/mLから約190mg/mLの間、例えば、75mg/mL、100mg/mL、125mg/mL、135mg/mL、150mg/mL、165mg/mL、180mg/mL、190mg/mLで作製することを除いて、上に説明するとおりに、リン酸製剤で作製される。一代替例において、リン酸緩衝液中の抗体製剤は、最終濃度が所望の濃度を上回り、次いで、最終製剤は、リン酸製剤緩衝剤に希釈して所望のタンパク質濃度に戻すことによって作製される。ポリソルベートは、通常、最終希釈ステップ中に添加される。
【表1】

【0083】
表1のUF/DFプロセス(例えば、UF/DF#1、UF/DF#2)は、通常、例えば、平板またはらせん状にねじれた限外濾過カセット(例えば、10kDまたは30kD細孔径)を使用して、抗体を濃縮および透析する接線流プロセスである。かかるプロセスは、生成物を0から100g/L、例えば、30g/L、50g/L、80g/Lに濃縮するために好適である。表1のUFプロセス(例えば、UF#3)は、通常、生成物を例えば、0から300g/Lまたはそれ以上、例えば、150g/L、200g/L、210g/L、220g/L、230g/L、または240g/Lに濃縮するために好適なオープンチャンネル平板カセットを使用する。
【0084】
表1の商業UF/DFプロセスは、通常、第1のUF/DF操作を使用して、生成物を製剤緩衝液に透析し、生成物を約5g/Lから40g/L(例えば、約10g/L、約20g/L、約30g/L)に濃縮する。第2のUF操作は、通常、生成物を約135g/Lから約185g/L(例えば、約140g/L、150g/L、165g/L)にさらに濃縮するために行う。
【0085】
本明細書に記載のVLA−4結合抗体製剤のいずれかは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国公開出願第2005/0053598号に記載のように、滅菌バイアルにパッケージ化することができる。例えば、該製剤は、例えば、3.0、5.0または20mL充填バイアルにパッケージ化することができる。充填された製剤は、約2〜8℃の冷却下で保存される。
【0086】
一実施形態において、最終製剤は、抽出可能な最小量が1mLである、3.0mL充填バイアルに液体としてパッケージ化される。例えば、充填バイアルは、約1.1mLから約1.5mL(例えば、約1.1mL、約1.2mL、約1.3mL、約1.4mL)の抗体製剤を含み得る。別の実施形態において、抗体製剤は、使用時に1mLの溶液が患者に注射される量でプレフィルシリンジにパッケージ化され、1mLの溶液は、所望の量の抗体、例えば、135mgから165mgのナタリズマブ、例えば、150mgのナタリズマブを送達する。
【0087】
(ナタリズマブおよび他のVLA−4結合抗体)
本明細書に記載の高度に濃縮されたVLA−4結合抗体に好適な製剤抗体は、ナタリズマブ、アルファ4インテグリン結合抗体を含む。ナタリズマブ(USAN名)は、抗体コード番号AN100226を有し、「TYSABRI(登録商標)」とも称される。任意の生体内修正(例えば、アミノ酸のクリッピング)前のナタリズマブの軽鎖および重鎖のアミノ酸配列は、表1−1および表1−2に示される。
【表2】

【表3】

【0088】
ナタリズマブは、血液から中枢神経系への白血球の移動を阻害する。ナタリズマブは、活性T細胞および他の単核白血球の表面上でVLA−4(アルファ4ベータ1とも称される)に結合する。T細胞と内皮細胞との間の接着を分断する場合があり、したがって、内皮全体および実質組織への単核白血球の移動を阻止する。結果として、炎症性サイトカインのレベルも低減できる。
ナタリズマブは、再発寛解型多発性硬化症および再発二次進行型多発性硬化症の患者における脳病変および臨床的再発の数を削減できる。
【0089】
ナタリズマブおよび関連VLA−4結合抗体は、例えば、米国特許第5,840,299において説明される。モノクローナル抗体21.6およびHP1/2は、VLA−4を結合する例示的なマウスモノクローナル抗体である。ナタリズマブは、ヒト化型のマウスモノクローナル抗体21.6(例えば、米国特許第5,840,299号を参照)。ヒト化型のHP1/2も説明されている(例えば、米国特許第6,602,503号を参照)。いくつかの追加VLA−4結合モノクローナル抗体、例えば、HP2/1、HP2/4、L25およびP4C2は、例えば、米国特許第6,602,503、Sanchez−Madrid et al.,1986 Eur.J.Immunol.,16:1343−1349、Hemler et al.,1987 J.Biol.Chem.:11478−11485、Issekutz and Wykretowicz,1991,J.Immunol.,147:109(TA−2マブ)、Pulido et al.,1991 J.Biol.Chem.,266:10241−10245、および米国特許第5,888,507に記載されている。
【0090】
一部のVLA−4結合抗体は、同族リガンド、例えば、VCAM−1またはフィブロネクチンへの結合に関与するアルファ4サブユニットのエピトープを認識する。多くのかかる抗体は、同族リガンド(例えば、VCAM−1およびフィブロネクチン)に対するVLA−4の結合を阻害する。
【0091】
一部の有用なVLA−4結合抗体は、細胞、例えば、リンパ球上のVLA−4と相互作用し得るが、細胞凝集は生じない。しかしながら、他のVLA−4結合抗体は、かかる凝集を生じることが観察されている。HP1/2は、細胞凝集を生じない。HP1/2モノクローナル抗体(Sanchez−Madrid et al.,1986)は、極めて高い効力を有し、VCAM1およびフィブロネクチンの両方とのVLA−4相互作用を阻止し、VLA−4上のエピトープBに対する特異性を有する。この抗体および他のBエピトープ特異抗体(例えば、B1またはB2エピトープ結合抗体、Pulido et al.,1991,上記)は、本明細書に記載の製剤および方法において使用できる1つのクラスのVLA−4結合抗体を表す。
【0092】
例示的なVLA−4結合抗体は、1つ以上のCDR、例えば、本明細書で開示される特定の抗体の3つのHC CDRすべておよび/または3つのLC CDRすべて、または、つまりかかる抗体と少なくとも80、85、90、92、94、95、96、97、98、99%一致するCDR、例えば、ナタリズマブを有する。一実施形態において、H1およびH2超可変ループは、本明細書に記載の抗体のものと同様の標準構造を有する。一実施形態において、L1およびL2超可変ループは、本明細書に記載のものと同様の標準構造を有する。
【0093】
一実施形態において、HCおよび/またはLC可変ドメイン配列のアミノ酸配列は、本明細書に記載の抗体、例えば、ナタリズマブのHCおよび/またはLC可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70、80、85、90、92、95、97、98、99、または100%一致する。HCおよび/またはLC可変ドメイン配列のアミノ酸配列は、本明細書に記載の抗体、例えば、ナタリズマブの対応する配列とは少なくとも1つのアミノ酸が異なり得るが、10、8、6、5、4、3、または2つのアミノ酸が異なるにすぎない。例えば、差異は、主として、または全体がフレームワーク領域内であり得る。
【0094】
HCおよびLC可変ドメイン配列のアミノ酸配列は、本明細書に記載の核酸配列に対して極めて厳重な条件下でハイブリダイズ(雑種核酸を生成)する核酸配列、または本明細書に記載の可変ドメインもしくはアミノ酸配列をコード化する核酸配列によってコード化することができる。一実施形態において、HCおよび/またはLC可変ドメインの1つ以上のフレームワーク領域(例えば、FR1、FR2、FR3、および/またはFR4)のアミノ酸配列は、本明細書に記載の抗体のHCおよびLC可変ドメインの対応するフレームワーク領域と、少なくとも70、80、85、90、92、95、97、98、99、または100%一致する。一実施形態において、1つ以上の重鎖または軽鎖フレームワーク領域(例えば、HC FR1、FR2、およびFR3)は、ヒト生殖細胞抗体から対応するフレームワーク領域の配列と少なくとも70、80、85、90、95、96、97、98、または100%一致する。
【0095】
2つの配列間の「相同性」または「配列同一性」(該用語は、本明細書において同義的に使用される)の計算は、次のように行われる。配列を、最適な比較目的で整列させる(例えば、最適アラインメントのための第1および第2のアミノ酸または核酸配列の1つまたは両方にギャップを導入することができ、非相同配列は、比較目的で無視され得る)。最適アラインメントは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用し、Blossum 62得点マトリクスを用いて、最高スコアとして決定され、ギャップペナルティは12、ギャップ拡張ペナルティ4、およびフレームシフトギャップペナルティ5である。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基を比較する。第1の配列における位置が、第2の配列において対応する位置と同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合は、したがって、分子はその位置において同一である(本明細書において使用するアミノ酸または核酸「同一性」は、アミノ酸または核酸「相同性」に相当する)。2つの配列間の同一性の割合(%)は、該配列によって共有される同一位置の数の関数である。
【0096】
本明細書において使用する「極めて厳重な条件下でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を説明する。ハイブリダイゼーション反応を行うためのガイダンスは、参照により組み込まれる、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6において見出され得る。水性および非水性方法は、該参照文献に記載されており、いずれをも使用することができる。極めて厳重なハイブリダイゼーション条件は、6X SSC中、約45度でのハイブリダイゼーションを含み、その後、0.2X SSC、0.1% SDS中、65度、または実質的に類似する条件での1回以上の洗浄を行う。
【0097】
(投与)
本明細書に記載の高度に濃縮されたVLA−4結合抗体製剤は、皮下、筋肉内、および静脈内投与を含む様々な方法によって、被験体、例えば、ヒト被験体に投与することができる。通常、投与は、皮下または筋肉内注射による。
【0098】
製剤は、固定用量またはmg/kg用量として投与され得る。通常、投与は固定用量である。例えば、製剤は、4週間毎に(例えば、月1回)75mgから500mg(例えば、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg)、または2週間毎に50mgから250mg(例えば、75mg、100mg、150mg、200mg)、または週1回25mgから150mg(例えば、50mg、75mg、100mg、125mg)の固定単位用量で投与される。製剤は、1から8mg/kg、例えば、約6.0、4.0、3.0、2.0、1.0mg/kgの用量でボーラス投与することもできる。修正される用量範囲は、通常、4週間毎または月1回の投与の場合、500、400、300、250、200、150、または100mg/被験体未満の用量を含む。VLA−4結合抗体は、例えば、3週間から5週間毎、例えば、4週間毎または月1回投与することができる。
【0099】
用量レジメンは、所望の反応、例えば、治療反応をもたらすように調整することができる。用量は、VLA−4結合抗体に対する抗体の産生を低減または回避するように選択して、アルファ4サブユニットの40、50、70、75、または80%を上回る飽和を達成するか、アルファ4サブユニットの80%、70%、60%、50%、または40%未満の飽和を達成するか、または循環白血球値の増加を防ぐこともできる。
【0100】
ある実施形態では、急速放出に対して抗体を保護する担体、例えば、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む、制御放出製剤を用いて、活性薬剤を調製することができる。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニール、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を使用することができる。かかる製剤を調製するための多くの方法は、特許権を有するかまたは一般に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、編者:J.R.Robinson,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0101】
用量レジメンは、所望の反応、例えば、治療反応をもたらすように調整することができる。「治療反応」は、疾患に関連する状態、症状、またはパラメータが、統計的に有意な程度または当業者に検出可能な程度のいずれかで改善することを意味する。
本明細書において使用する用量単位形または「固定用量」は、治療対象の被験体に対する単位用量として好適な物理的に不連続な単位を意味し、各単位は、必要な医薬担体と関連する、および任意選択で他の薬剤と関連する所望の治療効果をもたらすように計算された既定量の活性抗体を含有する。
【0102】
医薬組成物は、本明細書に記載の「治療上有効量」のVLA−4結合抗体、例えば、ナタリズマブを含み得る。かかる有効量は、投与薬剤の効果、または1つ以上の薬剤が使用される場合は、薬剤および二次薬剤の組み合わせ効果に基づいて決定することができる。治療上有効量の薬剤は、個人の疾患状態、年齢、性別、体重、および抗体が個人において所望の反応を引き出す能力、例えば、少なくとも1つの疾患パラメータ、例えば、多発性硬化症パラメータの改善、または疾患、例えば、多発性硬化症の少なくとも1つの症状の改善等の要素によっても異なり得る。治療上の有効量は、組成物の治療上有益な効果が、任意の毒性または有害効果を上回る量でもある。
【0103】
(装置およびキット)
高濃度のVLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)を有する製剤は、医療装置を用いて投与することができる。該装置は、可搬性、室温保存、および使いやすさを考慮して設計され得るか、またはかかる特徴を有し得、例えば、訓練を受けていない被験体または現場の救急隊員によって、緊急事態に使用でき、医療施設および他の医療機器に移動させることができるようにする。装置は、例えば、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)を含む医薬調製物を保存するための1つ以上の筐体を含み得、1つ以上の単位用量の薬剤を送達するように構成することができる。
【0104】
例えば、医薬組成物は、経皮送達装置、例えば、皮下注射または多室型シリンジを含むシリンジを用いて投与することができる。一実施形態において、装置は、針が取り付けられた、または一体化されたプレフィルシリンジである。他の実施形態において、装置は、針が取り付けられていないプレフィルシリンジである。針は、プレフィルシリンジとともにパッケージ化することができる。一実施形態において、装置は、自動注入装置、例えば、自動注入シリンジである。別の実施形態において、注入装置は、ペン型注入装置である。さらに別の実施形態において、シリンジは、ステークニードルシリンジ、ルアーロックシリンジ、またはルアースリップシリンジである。他の好適な送達装置は、ステント、カテーテル、マイクロニードル、および埋め込み型制御放出装置を含む。組成物は、インラインフィルターの有無にかかわらず、例えば、IVチューブを含む標準IV機器を用いて経静脈的に投与することができる。ある実施形態において、装置は、皮下または筋肉内投与において使用するためのシリンジである。
【0105】
医薬組成物は、医療装置を用いて投与することができる。例えば、医薬組成物は、無針皮下注射装置、例えば米国特許第5,399,163号、第5,383,851号、第5,312,335号、第5,064,413号、第4,941,880号、第4,790,824号、または第4,596,556号に開示される装置を用いて投与することができる。よく知られているインプラントおよびモジュールの実施例は、制御した速度で薬剤を分注する埋め込み型微量注入ポンプを開示する米国特許第4,487,603、皮膚を通して薬剤を投与するための治療装置を開示する米国特許第4,486,194号、精密な注入速度で薬物を送達するための薬剤注入ポンプを開示する米国特許第4,447,233号、連続的な薬物送達のための変流量埋め込み型注入装置を開示する米国特許第4,447,224号、多室型容器を有する浸透圧薬物送達システムを開示する米国特許第4,439,196号、および浸透圧薬物送達システムを開示する米国特許第4,475,196号を含む。治療組成物は、皮下もしくは筋肉内投与のための生分解性または非生分解性持続放出製剤の形態でもあり得る。例えば、米国特許第3,773,919号および第4,767,628号、および国際PCT出願第WO94/15587号を参照されたい。連続投与は、埋め込み型または外部ポンプを使用して達成することもできる。投与は、例えば、1日1回の注射で断続的に行うか、または例えば、持続放出製剤を低用量で継続的に行うこともできる。送達装置は、VLA−4結合抗体の投与に最適となるように修正することができる。例えば、シリンジは、VLA−4結合抗体の保存および送達に最適な程度にシリコン化することができる。当然のことながら、多くの他のかかるインプラント、送達システム、およびモジュールも知られている。
【0106】
本発明は、第1および第2の薬剤を投与するための装置も特徴とする。装置は、例えば、医薬調製物を保存するための1つ以上の筐体を含み得、単位用量の第1および第2の薬剤を送達するように構成することができる。第1および第2の薬剤は、同一または個別の容器に保存することができる。例えば、装置は、投与前に薬剤を混合することができる。異なる装置を使用して、第1および第2の薬剤を投与することも可能である。
【0107】
VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)は、キットで提供することができる。一実施形態において、キットは、(a)高濃度のVLA−4結合抗体を含む組成物を含有する容器、および任意選択で(b)第2の薬剤を含む組成物を含有する容器、および任意選択で(c)情報資料を含み得る。情報資料は、本明細書に記載の方法および/または治療上の利益を得るための薬剤の使用に関する記述的、指示的、宣伝用、または他の資料であり得る。一実施形態において、該キットは、第2の薬剤も含む。例えば、該キットは、VLA−4結合抗体を含む組成物を含有する第1の容器と、第2の薬剤を含む第2の容器と、を含む。一実施形態において、該キットは、本明細書に記載の高濃度液体抗体製剤を事前充填した1つ以上の単回使用シリンジを含む。
【0108】
キットの情報資料は、その形態に限定されない。一実施形態において、情報資料は、抗体の産生、濃度、有効期限、バッチまたは製造地情報等に関する情報を含み得る。一実施形態において、情報資料は、例えば、好適な用量、投薬形態、または投与形態(例えば、本明細書に記載の用量、投薬形態、または投与形態)で、VLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)を投与し、炎症性疾患(例えば、MS)を有する、または炎症性疾患に関連するエピソードを経験する危険性のある被験体を治療する方法に関する。情報は、印刷物、コンピュータで読取可能な資料、録画、もしくは録音、または実質的な資料へのリンクまたはアドレスを提供する情報を含む様々な形式で提供され得る。
【0109】
薬剤に加えて、キット中の組成物は、他の材料、例えば、溶媒もしくは緩衝液、安定剤、または保存剤を含み得る。薬剤は、任意の形態、例えば、液体、乾燥または凍結乾燥形態、および実質的に純粋および/または滅菌形態で提供され得る。薬剤が液体溶液で提供される場合、該液体溶液は、例えば、水溶液である。薬剤が乾燥形態で提供される場合、再構成は、一般に、好適な溶媒の添加による。溶媒は、例えば、滅菌水または緩衝液は、任意選択でキットに提供することができる。
【0110】
キットは、薬剤を含有する1つまたは複数の組成物のための1つ以上の容器を含み得る。一部の実施形態において、キットは、組成物および情報資料のための個別の容器、分割器、または区画を含む。例えば、組成物は、ボトル、バイアル、またはシリンジに含まれ得、情報資料は、プラスチックスリーブまたはパケットに含まれ得る。他の実施形態において、キットの個別の要素は、単一の分割されていない容器に含まれる。例えば、組成物は、ボトル、バイアル、またはシリンジに含まれ、そこに情報資料がラベル形式で添付される。一部の実施形態において、キットは、複数の(例えば、パック)個別容器を含み、それぞれ1つ以上の単位用量形態(例えば、本明細書に記載の用量形態)の薬剤を含有する。容器は、単位用量の組み合わせ、例えば、VLA−4−結合抗体(例えば、ナタリズマブ)および第2の薬剤の両方を、例えば、所望の割合で含む単位用量を含み得る。例えば、キットは、複数のシリンジ、アンプル、ホイルパケット、ブリスターパック、医療装置を含み、例えば、それぞれ単一の組み合わせ単位用量を含有する。キットの容器は、気密、防水(例えば、湿度または蒸発の変化に対して不透過)、および/または光密閉であり得る。
キットは、任意選択で、組成物の投与に好適な装置、例えば、シリンジまたは他の好適な送達装置を含む。該装置は、1つまたは両方の薬剤を事前に充填した状態で、または空の状態であり得るが、充填に好適であるという状態で提供され得る。
【0111】
(多発性硬化症)
皮下または筋肉内投与に好適な高度に濃縮されたVLA−4結合抗体を有する製剤は、炎症性疾患、例えば、多発性硬化症(MS)の治療に有用である。多発性硬化症は、炎症および髄鞘の喪失を特徴とする中枢神経系疾患である。
【0112】
MSを有する患者は、「MSの診断に関するワークショップ」で定義されるように、臨床的に明確なMSの診断を確立する基準によって同定され得る(Poser et al.,Ann.Neurol.13:227,1983)。簡潔に述べると、臨床的に明確なMSを有する個人は、2度の発病、および2つの病変の臨床的証拠または1つの病変の臨床的証拠のいずれか、および別の個別病変の副次臨床的証拠を有している。明確なMSは、2度の発病および脳脊髄液中のIgGオリゴクローナルバンドの証拠によるか、または発病、2つの病変、および脳脊髄液中のIgGオリゴクローナルバンドの臨床的証拠の組み合わせによっても診断され得る。McDonald基準を使用して、MSを診断することもできる(McDonald et al.,2001,Recommended diagnostic criteria for multiple sclerosis:guidelines from the International Panel on the Diagnosis of Multiple Sclerosis,Ann Neurol 50:121−127)。McDonald基準は、複数の臨床的発病がない場合に、MSの診断に使用されるCNS不全の経時的なMRI証拠の使用を含む。多発性硬化症の有効な治療は、いくつかの異なる方法で評価され得る。以下のパラメータを使用して、治療の有効性を計測することができる。2つの例示的な基準は、EDSS(総合障害度評価尺度)およびMRI(磁気共鳴映像法)上の悪化の出現を含む。EDSSは、MSによる臨床的障害を等級分けする手段である(Kurtzke,Neurology 33:1444,1983)。神経障害の種類および重度に関して、8つの機能系が評価される。簡潔に述べると、治療に先立って、患者は、以下の系:錐体、小脳、脳幹、感覚器、腸および膀胱、視覚、脳および他における障害について評価される。フォローアップは、規定の間隔で行われる。スケールは、0(正常)から10(MSによる死)の範囲である。1段階の降下は、有効な治療を示す(Kurtzke,Ann.Neurol.36:573−79,1994)。
【0113】
悪化は、MSに起因し、適切な新しい神経的異常を伴う新たな症状の出現として定義される(IFNB MS Study Group,上記)。さらに、悪化は、少なくとも24時間継続し、少なくとも30日は安定性または改善が先立っていなければならない。簡潔に述べると、患者は、臨床医による標準神経学的診察を受ける。悪化は、神経学的格付けスケールに従って、軽度、中度、または重度のいずれかである(Sipe et al.,Neurology 34:1368,1984)。年間の悪化率および悪化がみられない患者の比率が決定される。
【0114】
治療は、これらの測定値のいずれかに関して、治療群とプラセボ群との間に、悪化のない患者または再発のない患者の割合または比率において、統計学的に有意な差異がある場合に有効であるとみなされ得る。さらに、最初の悪化までの時間、および悪化の期間と重度も測定され得る。この点において、治療としての測定の有効性は、対照群と比較した治療群において、最初の悪化までの時間または期間および重度における統計学的に有意な差異である。悪化がみられない、または再発がない期間が1年、18ヶ月または20ヶ月を上回ることは、特に注目に値する。
【0115】
第1の薬剤、および任意選択で第2の薬剤を投与する有効性は、以下の基準のうちの1つ以上に基づいて評価することもできる:限界希釈法により決定されるMBP反応性T細胞の頻度、MBP反応性T細胞株およびクローンの増殖反応、患者から確立されたMBPに対するT細胞株およびクローンのサイトカインプロファイル。有効性は、反応細胞の頻度の減少、天然ペプチドとの比較で改変ペプチドと合併されるチミジンの減少、およびTNFとIFN−アルファの減少によって示される。
【0116】
臨床的測定は、1年および2年間隔での再発率、および6ヶ月間持続するEDSSのベースライン1.0単位からの進行までの時間を含むEDSSの変化を含む。Kaplan−Meier曲線上で、障害の持続的進行の遅延は有効性を示す。他の基準は、MRI上のT2画像の領域および量の変化、およびガドリニウム増強画像によって決定される病変の数および量を含む。
【0117】
MRIを使用し、ガドリニウム−DTPA増強結像によって活性病変を測定する(McDonald et al.Ann.Neurol.36:14,1994)か、またはT加重法を使用して、病変の位置および程度を測定することができる。簡潔に述べると、ベースラインMRIが得られる。それぞれの後次研究に対し、同一の結像面および患部位置が使用される。位置付けおよび結像配列は、病変の検出を最大にし、病変の追跡を促進するように選択することができる。後次研究において、同一の位置付けおよび結像配列使用することができる。MS病変の存在、位置、および程度は、放射線技師によって決定され得る。病変の領域は、総病変領域のスライス毎に概説および要約され得る。新しい病変の証拠、活性病変の出現率、病変領域の変化率の3つの分析を行ってもよい(Paty et al.,Neurology 43:665,1993)。治療による改善は、ベースラインとの比較または治療群対プラセボ群で、個別の患者における統計学的に有意な改善によって確立され得る。
【0118】
本明細書に記載の方法で治療され得る多発性硬化症に関連する例示的な症状は、視神経炎、二重視、眼振、眼ディスメトリア、核間性眼筋麻痺、運動および音眼内閃光、求心性瞳孔障害、不全麻痺、単不全麻痺、不全対麻痺、片側不全麻痺、四肢不全麻痺、麻痺、対麻痺、片麻痺、四肢麻痺(tetraplegia、quadraplegia)、痙縮、構音障害、筋萎縮、痙攣(spasms、cramps)、緊張低下、間代性痙攣、間代性筋痙攣、筋波動、下肢静止不能症候群、下垂足、機能不全反射、知覚障害、知覚麻痺、神経痛、神経障害痛および神経原性疼痛、レルミット兆候、固有感覚不全、三叉神経痛、運動失調、企図振戦、測定障害、前庭性運動失調、目まい、言語失調、筋失調症、拮抗運動反復不全、頻尿、膀胱痙縮、弛緩性膀胱、排尿筋−括約筋筋失調、勃起障害、性感過剰症、不感症、便秘、便意切迫、便失禁、うつ病、認知機能障害、認知症、気分変動、情緒不安定、陶酔感、双極性障害、不安神経症、失語、不全失語症、疲労、ウートホフ症状、胃食道逆流、および睡眠障害を含む。
【0119】
MSの各症例は、いくつかの提示および後次経過パターンの1つを示す。最も一般的に、MSは、最初に一連の発病として現れた後に完全または部分的寛解が生じ、症状が不思議に軽減して、安定期間の後に再発する。これは、再発寛解型(RR)MSと称される。一次進行型(PP)MSは、明確な寛解のない段階的な臨床的減退を特徴とするが、一時的なプラトーまたは症状のわずかな軽減があり得る。二次進行型(SP)MSは、再発寛解型の経過で始まり、後で一次進行型の経過が続く。稀に、患者は、進行再発型(PR)の経過を有する場合があり、疾患は、急性の発病により中断される進行性の経路を辿る。PP、SP、およびPRは、一括して慢性進行性MSと称される場合がある。
【0120】
数人の患者は、即座の過酷な減退として定義される悪性MSを経験し、結果として著しい障害をもたらすか、または疾患の発症後すぐに死に至り得る。この減退は、本明細書に記載の治療を組み合わせて投与することによって、停止または減速され得る。
ヒト研究に加えて、または先行して、動物モデルを使用して、2つの薬剤を使用する有効性を評価することができる。多発性硬化症の例示的な動物モデルは、例えば、Tuohy et al.(J.Immunol.(1988)141:1126−1130)、Sobel et al.(J.Immunol.(1984)132:2393−2401)、およびTraugott(Cell Immunol.(1989)119:114−129)に記載される実験的自己免疫性脳炎(EAE)マウスモデルである。EAE誘導に先行して、本明細書に記載の第1および第2の薬剤をマウスに投与することができる。ついで、特徴的な基準についてマウスを評価し、モデルにおいて2つの薬剤を使用する有効性を決定する。
【0121】
(他の疾患)
本明細書に記載の製剤および方法を使用して、他の炎症性、免疫性、または自己免疫性疾患、例えば、中枢神経系の炎症(例えば、多発性硬化症に加えて、髄膜炎、視神経脊髄炎、神経サルコイドーシス、CNS血管炎、脳炎、および横断性脊髄炎)、組織または臓器移植の拒絶反応または移植片対宿主病、急性CNS損傷、例えば、脳卒中または脊髄損傷、慢性腎疾患、アレルギー、例えば、アレルギー性喘息、1型糖尿病、炎症性腸疾患、例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、重症筋無力症、線維筋痛、関節疾患、例えば、関節リウマチ、乾癬性関節炎、炎症性/免疫性皮膚病、例えば、乾癬、白斑、皮膚炎、扁平苔癬、全身性紅斑性狼瘡、シェーグレン症候群、血液癌、例えば、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、固形癌、例えば、肺、乳房、前立腺、脳の例えば、肉腫または癌腫、および線維性疾患、例えば、肺線維症、骨髄線維症、肝硬変、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、および腎間質性線維症を治療することもできる。
【0122】
例えば、高濃度のVLA−4結合抗体(例えば、ナタリズマブ)を含有する製剤を皮下または筋肉内に投与して、これらおよび他の炎症性、免疫性、または自己免疫性疾患を治療することができる。
【0123】
(抗体生成)
VLA−4に結合する抗体は、例えば、動物を使用する免疫付与、またはファージ提示法等の生体外方法によって生成することができる。VLA−4のすべてまたは一部は、免疫原として使用することができる。例えば、アルファ4サブユニットの細胞外領域は、免疫原として使用することができる。一実施形態において、免疫動物は、天然の、ヒトまたは一部ヒト免疫グロブリン部位を持つ免疫グロブリン産生細胞を含有する。一実施形態において、非ヒト動物は、少なくともヒト免疫グロブリン遺伝子の一部を含む。例えば、ヒトIg部位の大フラグメントを持つマウス抗体産生に欠けるマウス株を操作することが可能である。ハイブリドーマ技術を使用して、所望の特異性を持つ遺伝子に由来の抗原特異的モノクローナル抗体を産生および選択することができる。例えば、XenoMouse(登録商標)、Green et al.Nature Genetics 7:13−21(1994)、米国特許第2003−0070185号、米国特許第5,789,650号、および国際出願第WO96/34096号を参照されたい。
【0124】
VLA−4に対する非ヒト抗体は、例えば、齧歯類において産生することもできる。非ヒト抗体は、例えば、米国特許第6,602,503号、欧州特許第EP239400号、米国特許第5,693,761号、および米国特許第6,407,213号に記載のように、ヒト化することができる。
【0125】
欧州特許第EP239400号(Winter et al.)は、ある種の相補性決定領域(CDR)を別種のそれらと(所定の可変領域内で)置換することによる抗体の改変について記載する。CDR置換抗体が含有する非ヒト成分は著しく少ないため、CDR置換抗体が、真のキメラ抗体と比較して、ヒトにおける免疫反応を誘発する可能性が低い(Riechmann et al.,1988,Nature 332,323−327、Verhoeyen et al.,1988,Science 239,1534−1536)。通常、組み換え核酸技術を使用することによって、マウス抗体のCDRは、ヒト抗体において対応する領域に置換され、所望の置換抗体をコード化する配列を産生する。所望のアイソタイプ(通常、CHの場合ガンマIおよびCLの場合カッパ)のヒト定常領域遺伝子セグメントを追加することができ、ヒト化重鎖および軽鎖遺伝子は、哺乳類細胞において共発現し、溶解可能なヒト化抗体を産生し得る。
【0126】
Queen et al.,1989および国際出願第WO90/07861号は、オリジナルマウス抗体のVフレームワーク領域に対する最適なタンパク質配列相同性について、コンピュータ分析によりヒトVフレームワーク領域を選択するステップと、マウスV領域の第三の構造をモデリングして、マウスCDRと相互作用する可能性のあるフレームワークアミノ酸残基を可視化するステップと、を含むプロセスについて記載している。これらのマウスアミノ酸残基は、次いで、相同ヒトフレームワーク上に重畳される。米国特許第5,693,762号、第5,693,761号、第5,585,089号、および第5,530,101号も参照されたい。Tempest et al.,1991,Biotechnology 9,266−271は、基準として、NEWMおよびREI重鎖および軽鎖それぞれに由来のV領域フレームワークを、マウス残基のラジカル導入のないCDR移植に利用している。Tempestらのアプローチを使用してNEWMおよびREIベースのヒト化抗体を構成する利点は、NEWMおよびREI可変領域の三次元構造がX線結晶学から分かり、したがって、CDRとV領域フレームワーク残基との間の特異的相互作用をモデル化することができることである。
【0127】
非ヒト抗体を修飾して、ヒト免疫グロブリン配列、例えば、コンセンサスヒトアミノ酸残基を、特定の位置、例えば、以下の位置(軽鎖の可変ドメインのFRにおいて)4L、35L、36L、38L、43L、44L、58L、46L、62L、63L、64L、65L、66L、67L、68L、69L、70L、71L、73L、85L、87L、98L、および/または(重鎖の可変ドメインのFRにおいて)2H、4H、24H、36H、37H、39H、43H、45H、49H、58H、60H、67H、68H、69H、70H、73H、74H、75H、78H、91H、92H、93H、および/または103H(Kabat付番に従う)のうちの1つ以上(例えば、少なくとも5、10、12、またはすべて)に挿入する置換を含めることができる。例えば、米国特許第6,407,213号を参照されたい。
【0128】
例えば、生体外で初回抗原刺激を受けたヒト脾細胞を使用して、Boerner et al.,1991,J.Immunol.,147,86−95に記載されるように、VLA−4に結合する完全ヒトモノクローナル抗体を産生することができる。それらは、Persson et al.,1991,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,88:2432−2436またはHuang and Stollar,1991,J.Immunol.Methods 141,227−236、および米国特許第5,798,230によって記載されるように、レパートリークローニングによって調製され得る。大型の非免疫ヒトファージ提示法ライブラリを使用して、高親和性抗体を単離してもよく、標準ファージ技術を使用してヒト治療薬として開発され得る(例えば、Vaughan et al,1996、Hoogenboom et al.(1998)Immunotechnology 4:1−20、およびHoogenboom et al.(2000)Immunol Today 2:371−8、米国特許第2003−0232333号を参照)。
【0129】
(抗体産生)
抗体は、原核および真核細胞において産生することができる。一実施形態において、抗体(例えば、scFvs)は、イースト細胞、例えば、Pichia(例えば、Powers et al.(2001)J Immunol Methods.251:123−35を参照)、HanseulaまたはSaccharomycesにおいて発現する。
【0130】
一実施形態において、抗体、特に全長抗体、例えば、IgGは、哺乳類細胞において産生される。組み換え発現のための例示的な哺乳類宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(Urlaub and Chasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に記載のdhfr−CHO細胞を含み、例えば、Kaufman and Sharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載のように、DHFR選択可能マーカーとともに使用される)、リンパ球細胞株、例えば、NS0骨髄腫細胞およびSP2細胞、COS細胞、K562、および形質転換動物、例えば、形質転換哺乳類から得た細胞を含む。例えば、細胞は、哺乳類上皮細胞である。
【0131】
免疫グロブリンドメインをコード化する核酸配列に加えて、組み換え発現ベクターは、追加の核酸配列、例えば、宿主細胞(例えば、複製の起源)においてベクターの複製を規制する配列および選択可能なマーカー遺伝子を担持し得る。選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、第4,634,665号、および第5,179,017号を参照)。例示的な選択可能マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(dhfr宿主細胞において、メトトレキサート選択/増幅に使用するため)およびneo遺伝子(G418選択用)を含む。
【0132】
抗体(例えば、全長抗体またはその抗原結合部分)の組み換え発現のための例示的なシステムにおいて、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコード化する組み換え発現ベクターは、リン酸カルシウム媒介の形質転換によってdhfr CHO細胞に導入される。組み換え発現ベクター内で、抗体重鎖および軽鎖遺伝子は、エンハンサ/プロモータ規制要素(例えば、SV40、CMV、アデノウイルス等に由来、例えば、CMVエンハンサ/AdMLPプロモータ規制要素またはSV40エンハンサ/AdMLPプロモータ規制要素)にそれぞれ操作可能に連結され、高レベルの遺伝子転写を駆動する。組み換え発現ベクターは、DHFR遺伝子も担持し、これによってメトトレキサート選択/増幅を使用して、ベクターで形質転換されたCHO細胞の選択が可能になる。選択された形質転換宿主細胞を培養して、抗体重鎖および軽鎖の発現を可能にし、無傷抗体は、培養培地から回復される。標準分子生物学技術を使用して、組み換え発現ベクターを調製して、宿主細胞を形質転換し、形質転換細胞を選択して、宿主細胞を培養し、培養培地から抗体を回復する。例えば、一部の抗体は、タンパク質Aまたはタンパク質Gを用いる親和性クロマトグラフィーによって単離され得る。例えば、精製されたVLA−4−結合抗体、例えば、ナタリズマブは、標準タンパク質濃度技術を使用して、約100mg/mLから約200mg/mLに濃縮することができる。
【0133】
抗体は、修飾、例えば、Fc機能を改変して、例えば、Fc受容体またはC1qもしくは両方との相互作用を削減または除去する修飾を含んでもよい。例えば、ヒトIgG1定常領域は、例えば、米国特許第5,648,260号に従って、例えば、1つ以上の残基234および237において突然変異し得る。他の例示的な修飾は、米国特許第5,648,260号に記載のものを含む。
【0134】
Fcドメインを含む一部の抗体の場合、抗体産生システムは、抗体を合成するように設計され得、Fc領域は、グリコシル化される。例えば、IgG分子のFcドメインは、CH2ドメインにおけるアスパラギン297においてグリコシル化される。このアスパラギンは、二分岐型オリゴ糖を用いる修飾のための部位である。このグリコシル化は、Fcγ受容体および相補C1qにより媒介されるエフェクタ機能に関与する(Burton and Woof(1992)Adv.Immunol.51:1−84、Jefferis et al.(1998)Immunol.Rev.163:59−76)。Fcドメインは、アスパラギン297に対応する残基を適切にグリコシル化する哺乳類発現系において産生され得る。Fcドメインは、他の真核翻訳後修飾を含み得る。
【0135】
抗体は、形質転換動物によっても産生され得る。例えば、米国特許第5,849,992は、形質転換哺乳類の乳腺において抗体を発現するための方法を記載する。トランス遺伝子は、乳汁特異的プロモータおよび関心対象の抗体、例えば、本明細書に記載の抗体をコード化する核酸配列、および分泌のシグナル配列を含んで構成される。かかる形質転換哺乳類の雌によって産生される乳汁は、そこで分泌される関心対象の抗体、例えば、本明細書に記載の抗体を含む。抗体は、乳汁から精製され得るか、または一部の適用では、直接使用され得る。
【0136】
抗体は、例えば、循環における、例えば、血液、血清、リンパ、気管支肺胞洗浄、または他の組織におけるその安定性および/または保持を、例えば、少なくとも1.5、2、5、10、または50倍改善する部分で修飾され得る。
例えば、VLA−4結合抗体は、ポリマー、例えば、実質的に非抗原性ポリマー、例えば、ポリアルキレンオキシドまたはポリエチレンオキシドと関連し得る。好適なポリマーは、実質的に重量が異なる。約200から約35,000ダルトン(または約1,000から約15,000、および2,000から約12,500)の範囲の分子数平均重量を有するポリマーを使用することができる。
【0137】
例えば、VLA−4結合抗体は、水溶性ポリマー、例えば、親水性ポリビニルポリマー、例えば、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンと共役され得る。かかるポリマーの非限定リストは、ブロック共重合体の水溶性が維持されるという条件下で、ポリアルキレンオキシドホモポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール、その共重合体およびそのブロック共重合体を含む。追加の有用なポリマーは、ポリオキシアルキレン、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、およびポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのブロック共重合体(Pluronics)、ポリメタクリレート、カルボマー、サッカリド単量体から成る分岐または非分岐多糖、D−マンノース、D−およびL−ガラクトース、フコース、フラクトース、D−キシロース、L−アラビノース、D−グルクロン酸、シアル酸、D−ガラクツロン酸、D−マンヌロン酸(例えば、ポリマンヌロン酸、またはアルギニン酸)、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、D−グルコースおよびホモ多糖およびヘテロ多糖を含むノイラミン酸、例えば、ラクトース、アミロペクチン、スターチ、ヒドロキシエチルスターチ、アミロース、硫酸デキストラン、デキストラン、デキストリン、グリコーゲン、または酸ムコ多糖の糖サブユニット、例えば、ヒアルロン酸、糖アルコールのポリマー、例えば、ポリソルビトールおよびポリマンニトール、ヘパリンまたはヘパロンを含む。
【0138】
(例示的な第2の薬剤)
一部の場合において、本明細書に記載の製剤、例えば、皮下または筋肉内投与に好適な高濃度のVLA−4結合抗体を含有する製剤は、第2の薬剤を含むか、または第2の薬剤を含有する製剤と組み合わせて投与される。
一実施例において、VLA−4結合抗体および第2の薬剤は、共製剤として提供され、共製剤は、被験体に投与される。例えば、共製剤を投与する少なくとも24時間前または後に、1用量の高度に濃縮された抗体製剤、および次いで第2の薬剤を含有する1用量の製剤を個別に投与することもさらに可能である。別の実施例において、抗体および第2の薬剤は、個別の製剤として提供され、投与ステップは、抗体および第2の薬剤を連続的に投与するステップを含む。連続投与は、同日(例えば、互いに1時間以内、または少なくとも3、6、または12時間間隔)または異なる日に提供することができる。
【0139】
一般に、抗体および第2の薬剤は、それぞれ複数の用量として、個別の時間に投与される。抗体および第2の薬剤は、一般に、レジメンに従ってそれぞれ投与される。一方または両方のレジメンは、規則的な周期性を有し得る。抗体のレジメンは、第2の薬剤のレジメンとは異なる周期性を有し得、例えば、一方を他方よりも頻繁に投与することができる。一実施例において、抗体および第2の薬剤のうちの一方は週に1回投与され、他方は月に1回投与される。別の実施例において、抗体および第2の薬剤のうちの一方は連続的に、例えば、30分を上回るが1、2、4、または12時間未満の期間にわたって投与され、他方はボーラスとして投与される。抗体および第2の薬剤は、任意の適切な方法によって、例えば、皮下に、筋肉内に、または静脈内に投与され得る。
【0140】
一部の実施形態において、抗体および第2の薬剤のそれぞれは、それぞれ単回治療用に処方されるものと同一用量で投与される。他の実施形態において、抗体は、単独投与された場合に、有効性に必要な量以下の用量で投与される。同様に、第2の薬剤は、単独投与された場合に、有効性に必要な量以下の用量で投与され得る。
【0141】
VLA−4結合抗体と組み合わせて多発性硬化症を治療するための第2の薬剤の非限定例は、以下を含む。
・インターフェロン、例えば、ヒトインターフェロンベータ−1a(例えば、AVONEX(登録商標)またはRebif(登録商標))およびインターフェロンベータ−1b(BETASERON(登録商標)、17位で置換されたヒトインターフェロンベータ、Berlex/Chiron)、
・酢酸ガラティラメル(Copolymer 1、Cop−1、COPAXONE(登録商標)Teva Pharmaceutical Industries,Inc.とも称される)、
・Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)または例えば、リツキシマブとの重複エピトープと競合する、または結合する別の抗CD20抗体、
・ミクストキサントロン(NOVANTRONE(登録商標)Lederle)、
・化学療法薬、例えば、クラブリビン(LEUSTATIN(登録商標))、アザチオプリン(IMURAN(登録商標))、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))、シクロスポリン−A、メトトレキサート、4−アミノピリジン、およびチザニジン、
・コルチコステロイド、例えば、メチルプレドニゾロン(MEDRONE(登録商標)Pfizer)、プレドニゾン、
・免疫グロブリン、例えば、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)、CTLA4 Ig、アレムツズマブ(MabCAMPATH(登録商標))またはダクリズマブ(CD25を結合する抗体)、
・スタチン、
・TNFアンタゴニスト、
酢酸ガラティラメルは、アミノ酸−グルタミン酸、リシン、アラニン、およびチロシンのランダム鎖で形成されたタンパク質である(故にGLATiramer)。溶液中において、これらのアミノ酸から、N−カルボキシアミノ酸無水物を使用して、約5パーツのアラニンに対して3リシン、1.5グルタミン酸および1チロシンの割合で合成することができる。
【0142】
追加の第2の薬剤は、他のヒトサイトカインまたは成長因子の抗体またはアンタゴニスト、例えば、TNF、LT、IL−1、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−12、IL−15、IL−16、IL−18、EMAP−11、GM−CSF、FGF、およびPDGFを含む。さらに他の例示的な第2の薬剤は、細胞表面分子に対する抗体、例えば、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80、CD86、CD90またはそれらのリガンドを含む。例えば、ダクリズブマブは、多発性硬化症を改善し得る抗CD25抗体である。
【0143】
さらに他の例示的な抗体は、本明細書に記載の薬剤の活性を提供する抗体、例えば、インターフェロン受容体、例えば、インターフェロンベータ受容体を係合する抗体を含む。通常、第2の薬剤が抗体を含む実施例において、VLA−4以外またはアルファ4インテグリン以外の標的タンパク質、または少なくとも第1の薬剤によって認識されるもの以外のVLA−4上のエピトープに結合する。
【0144】
さらに他の追加の例示的な第2の薬剤は、FK506、ラパマイシン、ミコフェノレートモフェチル、レフルノミド、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、例えば、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデノシンアゴニスト、抗血栓剤、補体阻害剤、アドレナリン作動薬、本明細書に記載のように、前炎症性サイトカインによるシグナル伝達を干渉する薬剤、IL−Iベータ変換酵素阻害剤(例えば、Vx740)、抗P7、PSGL、TACE阻害剤、T細胞シグナル伝達阻害剤、例えば、キナーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザスロプリン、6−メルカトプリン、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、本明細書に記載の溶解性サイトカイン受容体およびその誘導体、抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL−13およびTGF)を含む。
【0145】
一部の実施形態において、第2の薬剤を使用して、MSの1つ以上の症状または副作用を治療することができる。かかる薬剤は、例えば、アマンタジン、バクロフェン、パパべリン、メクリジン、ヒドロキシジン、スルファメトキサゾール、シプロフロキサシン、ドキュセート、ペモリン、ダントロレン、デスモプレッシン、デキサメタゾン、トルテロジン、フェニトイン、オキシブチニン、ビサコジル、ベンラファクシン、アミトリプチン、メテナミン、クロナゼパム、イソニアジド、バルデナフィル、ニトロフラントイン、シーリアム(オオバコ)親水性粘漿薬、アルプロスタジル、ガバペンチン、ノルトリプチン、パロキセチン、臭化プロパンテリン、モダフィニル、フルオキセチン、フェナゾピリジン、メチルプレドニゾロン、カルバマゼピン、イミプラミン、ジアゼパム、シルデナフィル、ブプロピオン、およびセルトラリンを含む。小分子である多くの第2の薬剤は、150から5000ダルトンの間の分子量を有する。
【0146】
TNFアンタゴニストの実施例は、TNF(例えば、ヒトTNFアルファ)に対するキメラ、ヒト化、ヒトまたは生体外で生成された抗体(またはその抗原結合フラグメント)、例えば、D2E7(ヒトTNFアルファ抗体、米国特許第6,258,562号、BASF)、CDP−571/CDP−870/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFアルファ抗体、Celltech/Pharmacia)、cA2(キメラ抗TNFアルファ抗体、REMICADE(登録商標)、Centocor)、抗TNF抗体フラグメント(例えば、CPD870)、TNF受容体の溶解性フラグメント、例えば、p55またはp75ヒトTNF受容体またはその誘導体、例えば、75kdTNFR−IgG(75kD TNF受容体−IgG融合タンパク質、ENBREL(登録商標)、Immunex、例えば、Arthritis & Rheumatism(1994)Vol.37,S295、J.Invest.Med.(1996)Vol.44,235A)、p55kdTNFR−IgG(55kD TNF受容体−IgG融合タンパク質(LENERCEPT(登録商標))、酵素アンタゴニスト、例えば、TNFアルファ変換酵素(TACE)阻害剤(例えば、アルファ−スルホニルヒドロキサム酸誘導体、第WO01/55112号、およびN−ヒドロキシホルムアミドTACE阻害剤GW3333、−005、または−022)、およびTNF−bp/s−TNFR(溶解性TNF結合タンパク質、例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(supplement),S284、Amer.J.Physiol.−Heart and Circulatory Physiology(1995)Vol.268,pp.37−42)を含む。
【0147】
第2の薬剤に加えて、さらに他の薬剤を被験体に送達することも可能である。しかしながら、一部の実施形態において、VLA−4結合抗体および第2の薬剤以外のタンパク質または生物製剤は、医薬組成物として被験体に投与されない。VLA−4結合抗体および第2の薬剤は、注射によって送達される唯一の薬剤であり得る。VLA−4結合抗体および第2の薬剤が組み換えタンパク質である実施形態において、VLA−4結合抗体および第2の薬剤は、被験体に投与される唯一の組み換え薬剤であるか、または免疫または炎症反応を調整する唯一の組み換え薬剤であり得る。さらに他の実施形態において、VLA−4結合抗体単体は、被験体に投与される唯一の組み換え薬剤または唯一の生物製剤であり得る。
【0148】
本明細書に含まれるすべての参照文献および発行物は、参照により組み込まれる。以下の実施例は、限定を意図しない。
【実施例】
【0149】
実施例1.静脈内製剤の開発の概要:保存および構造的安定性。pH6の、10mMのリン酸中20mg/mLのナタリズマブ、140mMの塩化ナトリウム、0.02%のポリソルベート80を含有するナタリズマブの製剤の保存安定性を判断するために実験を実施した。製剤の保存中の安定性の変化の割合は、異なる保存条件データセット(2〜8℃で24ヶ月、25℃で12ヶ月、40℃で3ヶ月)に対して算出した。以下のパラメータを使用して、初期ポイントと比較した安定性変化の割合の評価を行った。凝集の割合(%)、アミノ酸残基メチオニン255の酸化の割合(%)、存在する半抗体の割合(%)、H+Lの割合(%)、フラグメント化の割合(%)、シアリル化の割合(%)、および低等電点(pI)を有するアイソフォームの割合(%)。保存安定性製剤開発試験の結果を表2に示す。これらの結果は、より高い抗体濃度を含有する製剤の安定性試験に対するベースラインも提供する。
【表4】

【0150】
種々の生理物理学的技術を使用して、示差走査熱量測定(DSC)によるタンパク質二次構造の監視、蛍光分光光度計を用いたトリプトファン蛍光によるトリプトファン残基の環境の監視、遠紫外線における円偏光二色性を介したIgGの折り畳みの三次構造の監視、ならびに紫外線および可視分光光度法を介した芳香族残基の環境の監視を含む、20mg/mLのナタリズマブ製剤の構造的安定性の評価を行った。
【0151】
20mg/mL製剤の構造的安定性は、示差走査熱量計(Microcal、Amherst, MA)における熱融解実験中のT(熱融解曲線の中間点)を監視することによって、一部において最適化された。緩衝液対照と比較して、タンパク質を融解するのに必要とされる過剰エンタルピーを監視し、データをコンピュータで分析した。構造的安定性に対して感受性があるとして知られるトリプトファン蛍光を、製剤条件を最適化するように、温度を上昇させて、紫外分光光度法によって監視した。再度、紫外分光光度法を遠紫外領域において使用し、IgGの折り畳みを測定した。6つのピークが監視され、種々の製剤における構造的安定性の尺度として芳香族残基の環境に従うために、紫外可視スペクトル230〜320nmの二次導関数を算出した。
【0152】
20mg/mLでのナタリズマブの安定性のアセスメントを行うために実施した構造的試験の結果を表3に示す。追加の試験は、ナタリズマブが、ピストンポンプによるポンピングの間、不均一核形成を生じることを示している。複数の凍結/解凍サイクル後、抗体品質に変化は認められず、バイアル中での長期にわたる2〜3日の撹拌後、抗体は安定していた(データは実施例2に示す)。ナタリズマブは、強い光のストレスの存在下で凝集、酸化、および脱アミド化を生じ、かつ長期間、ステンレススチールと接触させて保存した際、金属触媒酸化にも感受性を有する。
【表5】

【0153】
実施例2.150mg/mL製剤の加速安定性実験。特に皮下もしくは筋肉内投与に有用とみられる、より高い濃度のナタリズマブに好適な製剤を判定するために、加速安定性実験を、種々の製剤において150mg/mLのナタリズマブを用いて実施した。試験製剤を、周囲温度(約25℃)で数日間、Type I USP/EPガラスバイアル中での撹拌に供した。凝集試験に使用する製剤は以下のとおりであった。HCN=20mM ヒスチジン、240mM グリシン、pH6。HOL=20mM ヒスチジン、240mM グリセロール、pH6。PCN=20mM リン酸、240mM グリシン、pH6。PST=20mM リン酸、140mM NaCl、pH6。HOLおよびHCN製剤は、追加の0.04%(w/v)のポリソルベート80(w/v)を有する。PCNおよびPST製剤は、安定性に対する変数として試験する際を除き(以下の実験3)、追加の0.02%(w/v)のポリソルベート80を有する。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して、撹拌前および撹拌後の凝集率(%)を測定した。
【0154】
撹拌前および撹拌後の可溶性凝集体のレベルを図1に示す。可溶性凝集体の割合(%)は、SECによって測定し、可溶性凝集体の割合(%)の最も小さな変化は、HOL製剤(20mM ヒスチジン、240mM グリセロール、0.04%(w/v) ポリソルベート80、pH6)において認められた。
【0155】
上に説明するとおりに実施した加速安定性試験はまた、凝集体を検出するために紫外吸光度によって監視した。紫外分光光度計を使用して、1cmの経路長の紫外可視分光光度計において、上に記載するHCN、HOL、PCN、およびPST緩衝液中150mg/mLの濃度のナタリズマブの溶液に対して、340nmでの吸光度を測定することによって、撹拌前および撹拌後の凝集体の存在を監視した。
【0156】
撹拌前および撹拌後の種々の製剤におけるナタリズマブ(150mg/mL)の凝集の紫外吸光度試験の結果は、図2に見ることができる。340nmのより低い吸光度から明らかなように、ヒスチジン製剤(HOLおよびHCN)は、これらの条件下で、最も安定しており、より少ない凝集を示した。40℃で1ヶ月間保存した後、不溶性の沈殿物がリン酸製剤に認められたが、ヒスチジン製剤には認められなかった。
【0157】
表4は、20mg/mLおよび150mg/mL製剤の安定性属性を比較するものである。この結果は、20mg/mLおよび150mg/mL製剤が同様に安定していることを示す。
【表6】

【0158】
実施例3.ポリソルベート80は、ナタリズマブに対して可溶化効果を有する。20mg/mLおよび150mg/mLのナタリズマブにおけるポリソルベート80レベルの可溶化効果を調査した。ポリソルベート80を種々の濃度(w/v)で、HOL緩衝液中20mg/mLおよび150mg/mLのナタリズマブに添加した。上に説明するとおり40℃で8週間材料を撹拌することによって、加速安定性試験を実施した。凝集率(%)を、上の実施例に説明するとおり、SECによって測定した。
【0159】
撹拌中のナタリズマブの安定性におけるポリソルベート80レベルの効果を図3に示すが、これは、135〜165mg/mLのナタリズマブに関するデータを示している。撹拌実験中の安定性に対する最小ポリソルベート80レベルは、150mg/mLのナタリズマブに関しては約0.03%(w/v)であり、20mg/mLのナタリズマブに関しては0.02%(w/v)である。したがって、好ましいポリソルベート80の濃度は、抗体濃度に従って変化する。
【0160】
実施例4.異なる温度でのナタリズマブの長期保存。種々の製剤、および2〜8℃および40℃における150mg/mLのナタリズマブの安定性を、上の実施例2に説明するとおり、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、凝集の割合(%)を測定することによって評価を行った。ナタリズマブ(150mg/mL)は、上の実施例2に説明するとおり、HCN、HOL、PCN、またはPST緩衝液内のいずれかであった。40℃で保存したナタリズマブに関するデータを5ヶ月にわたり収集し、2〜8℃で保存したナタリズマブのデータを24ヶ月にわたって収集した。
【0161】
40℃での保存に対するナタリズマブ(150mg/mL)の種々の製剤の安定性効果の結果は図4に示し、2〜8℃での保存に対する結果は図5に示す。150mg/mLの濃度では、PST製剤(20mM リン酸、140mM NaCl、0.02%(w/v) ポリソルベート80、pH6)中のナタリズマブは、40℃で凝集が最も少なかった。抗体を2〜8℃で24ヶ月間保存した際、凝集における有意な差異は認められなかった。これらのデータは、PST製剤中の高濃度のナタリズマブが特に安定していることを示した。
【0162】
実施例5.リン酸製剤において還元されるナタリズマブのメチオニン酸化 メチオニン残基がナタリズマブ(150mg/ml)の種々の製剤において酸化する傾向、および遊離メチオニン(10mM)の保護効果を、endoLysCペプチドマップのUV−HPLC特性化によって試験した。ナタリズマブ(150mg/mL)を、2〜8℃および40℃で最長24ヶ月間、ヒスチジンおよびリン酸製剤(実施例2に記載のHOL、HCN、PST、およびPCN)内で保存した。酸化メチオニンの割合(%)で表される結果を、図6に示す。リン酸製剤に関しては、150mg/mLでのナタリズマブにおけるメチオニンの酸化は、ヒスチジン製剤と比較して、両温度範囲において低速度で有意に還元および発生した。
【0163】
40℃で6ヶ月にわたって保存したナタリズマブ(150mg/mL)に対し、メチオニンを含まない製剤と比較して、HOL等のヒスチジン製剤における過剰遊離メチオニン(L−met)の抗酸化効果が見られた(図7)。メチオニン酸化の割合(%)は、上に説明するとおりに定量化した。したがって、リン酸緩衝液中の150mg/mLのナタリズマブを製剤化することがメチオニン酸化に対してより保護的であり、150mg/mLでの安定性に必要な賦形剤の数を低減させた。
【0164】
実施例6.リン酸緩衝液を上回る、ヒスチジン緩衝剤中のフラグメント化の速度。種々の製剤(HOL:20mM ヒスチジン、240mM グリセロール、0.04%(w/v) ポリソルベート80、pH6、およびPST:20mM リン酸、140mM NaCl、0.02%(w/v) ポリソルベート80、pH6)中のナタリズマブ(20mg/mL、50mg/mL、75mg/mL、および150mg/mL)のフラグメント化の速度を8週間経時的に比較した。フラグメント化は、非還元GelChipキャピラリー電気泳動によって、半抗体の割合(%)を測定することにより定量化した。
【0165】
4つの異なる濃度(20mg/mL、50mg/mL、75mg/mL、および150mg/mL)、ならびに2つの異なる製剤(HOL:20mM ヒスチジン、240mM グリセロール、0.04%(w/v) ポリソルベート80、pH6、およびPST:20mM リン酸、140mM NaCl、0.02%(w/v) ポリソルベート80、pH6)において、ナタリズマブに関して経時的に半抗体の割合(%)を測定した、フラグメント化試験の結果を、図8に示す。ヒンジ開裂速度は、ヒスチジン製剤よりもリン酸で低い。ヒスチジン製剤環境は、リン酸製剤環境よりも還元する(酸化還元電位に基づく)。
【0166】
実施例7.皮下もしくは筋肉内投与に好適なナタリズマブの例示的な製剤
上の実験を踏まえて、リン酸ベースの製剤は、皮下または筋肉内投与に好適な高度に濃縮されたナタリズマブ組成物に最適であることが判定された。該組成物はまた、静脈内投与のために希釈および使用することができる。上の実験は、ナタリズマブが、PSTおよびPCN等のリン酸製剤中で保存され、次いでヒスチジン製剤、HOLおよびHCN中で保存された際、酸化しにくいことを示した。したがって、遊離メチオニンは、通常、ナタリズマブの酸化の防止には、リン酸製剤中で必要ではない(実施例5を参照)。リン酸製剤PST中でのナタリズマブのフラグメント化の速度もまた、ヒスチジン製剤HOL中よりも低いことが認められた(実施例6を参照)。長期安定性は、ヒスチジン製剤HOLおよびHCNよりも、リン酸製剤PSTおよびPCNの方が良好であった。
【0167】
一部の実施形態において、以下に提供する製剤の成分のそれぞれは、10%変動し得る。
【0168】
実施例8
例示的な製剤
150mg/mL ナタリズマブ
10mM リン酸ナトリウム緩衝液
140mM 塩化ナトリウム
0.04%(w/v) ポリソルベート80
pH6.0±0.5に調整されたpH
【0169】
実施例9
例示的な製剤
150mg/mL ナタリズマブ
10mM リン酸ナトリウム緩衝液
275mM グリセロール
0.04%(w/v) ポリソルベート80
pH6.0±0.5に調整されたpH
【0170】
実施例10
例示的な製剤
150mg/mL ナタリズマブ
10mM リン酸ナトリウム緩衝液
160mM L−アルギニン塩酸塩
0.04%(w/v) ポリソルベート80
pH6.0±0.5に調整されたpH
【0171】
実施例11
例示的な製剤
150mg/mL ナタリズマブ
10mM リン酸ナトリウム緩衝液
9%(w/v) スクロース
0.04%(w/v) ポリソルベート80
pH6.0±0.5に調整されたpH
【0172】
実施例12.
例示的な製剤
150mg/mL ナタリズマブ
10mM リン酸ナトリウム緩衝液
9%(w/v) ソルビトール
0.04%(w/v) ポリソルベート80
pH6.0±0.5に調整されたpH
【0173】
実施例13
例示的な製剤
150mg/mL ナタリズマブ
20mM Lヒスチジン
240mM グリセロール
10mM Lメチオニン
0.04%(w/v) ポリソルベート80
pH6.0±0.5に調整されたpH
【0174】
実施例14
例示的な製剤
150mg/mL ナタリズマブ
20mM Lヒスチジン
240mM グリセロール
0.04%(w/v) ポリソルベート80
pH6.0±0.5に調整されたpH
【0175】
実施例15.安定性データ
実施例8として上に提供する製剤を、固定針シリンジで保存し、安定性データを種々の時点で測定した。これらのデータは、以下の表に要約されており、製剤が、5℃でシリンジに保存した際、少なくとも18から24ヶ月安定していることを示す。
【0176】
製剤
150mg/mL ナタリズマブ
10mM リン酸ナトリウム緩衝液
140mM 塩化ナトリウム
0.04%(w/v) ポリソルベート80
pH6.0±0.5に調整されたpH
【0177】
【表7】

【0178】
【表8】

【0179】
【表9】

【0180】
【表10】

【0181】
本発明の多くの実施形態を説明した。それでもなお、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の修正を行うことができることを理解されよう。したがって、他の実施形態も以下の請求項の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約120から約190mg/mLの濃度のVLA−4結合抗体を含む水性医薬組成物であって、グリセロールと、約pH5から約pH7を有するリン酸緩衝液とをさらに含む、水性医薬組成物。
【請求項2】
約120から約190mg/mLの濃度のVLA−4結合抗体を含む水性医薬組成物であって、Lアルギニン塩酸塩と、約pH5から約pH7を有するリン酸緩衝液とをさらに含む、水性医薬組成物。
【請求項3】
約120から約190mg/mLの濃度のVLA−4結合抗体を含む水性医薬組成物であって、塩化ナトリウムと、ポリソルベート80と、約pH5から約pH7を有するリン酸緩衝液と、をさらに含む、水性医薬組成物。
【請求項4】
前記VLA−4結合抗体はナタリズマブである、請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記VLA−4結合抗体は、約130mg/mLから約180mg/mLの濃度範囲である、請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項6】
前記VLA−4結合抗体は、約140mg/mLから約160mg/mLの濃度範囲である、請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項7】
前記VLA−4結合抗体は、約150mg/mLの濃度である、請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物のpHは約6±0.5である、請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項9】
前記リン酸緩衝液は、約5mMから約30mMのリン酸ナトリウム緩衝液である、請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項10】
前記リン酸緩衝液は、約10mMのリン酸ナトリウム緩衝液である、請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、塩化ナトリウムを実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、60mM未満のナトリウム含有量を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項13】
界面活性物質をさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項14】
前記界面活性物質は、ポリソルベート80、モノステアリン酸グリセリン、ステアリン酸ポリオキシル、ラウロマクロゴール、およびオレイン酸ソルビタンからなる群より選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記界面活性物質はポリソルベート80である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記界面活性物質は、約0.001%から約2.0%(w/v)の量で存在する、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
前記界面活性物質は、約0.04%(w/v)の量で存在する、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は、皮下もしくは筋肉内投与に好適である、請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物は、約2℃から約8℃の温度で少なくとも12ヶ月間安定している、請求項1、2、または3に記載の組成物。
【請求項20】
140mMの塩化ナトリウムを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項21】
0.04%のポリソルベート80(w/v)を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項22】
皮下もしくは筋肉内投与のために設計された、またはそれに好適な送達装置であって、請求項1、2または3に記載の組成物の単位用量とともにパッケージ化されるか、それを含む、送達装置。
【請求項23】
前記単位用量のヒトへの投与は、前記ヒトの体重1kgあたり約1.4mg/kgから約3.0mg/kgのVLA−4結合抗体もしくはそのフラグメントを送達する、請求項22に記載の送達装置。
【請求項24】
前記単位用量は約0.25から1.5mLである、請求項22に記載の送達装置。
【請求項25】
前記単位用量は約1mLである、請求項22に記載の送達装置。
【請求項26】
前記単位用量は約120mgから約350mgである、請求項22に記載の送達装置。
【請求項27】
前記単位用量は約150mgである、請求項22に記載の送達装置。
【請求項28】
前記単位用量は約300mgである、請求項22に記載の送達装置。
【請求項29】
前記単位用量は、フラクションに分割される、請求項22に記載の送達装置。
【請求項30】
前記単位用量は2つに分割され、分割されたそれぞれは約150mgのVLA−4結合抗体を含有する、請求項22に記載の送達装置。
【請求項31】
患者を治療するためにVLA−4結合抗体治療を必要とする前記患者を指導する方法であって、(i)前記患者に、請求項1、2、または3に記載の組成物の少なくとも1つの単位用量を提供するステップと、(ii)前記患者に前記少なくとも1つの単位用量を皮下に自己投与するように指導するステップと、を含む方法。
【請求項32】
患者を治療するためにVLA−4結合抗体治療を必要とする前記患者を指導する方法であって、(i)前記患者に、請求項1、2、または3に記載の組成物の少なくとも1つの単位用量を提供するステップと、(ii)前記患者に1用量を一度に、前記単位用量を皮下に自己投与するように指導するステップと、を含む方法。
【請求項33】
前記患者は炎症性疾患を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記患者は、多発性硬化症、喘息、関節炎、糖尿病、線維症、および炎症性腸疾患からなる群より選択される疾患を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
請求項1、2、または3に記載の組成物の単位用量であって、約0.25mLから1.5mLである、単位用量。
【請求項36】
前記単位用量は約1mLである、請求項35に記載の単位用量。
【請求項37】
請求項1、2、または3に記載の組成物の単位用量であって、前記単位用量のヒトへの投与は、前記ヒトの体重1kgあたり約1.4mgから約3.0mgのVLA−4結合抗体もしくはそのフラグメントを送達する、単位用量。
【請求項38】
患者を治療する方法であって、前記患者に、請求項1、2、または3に記載の組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項39】
前記患者は炎症性疾患を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記患者は、多発性硬化症、喘息、関節リウマチ、糖尿病、またはクローン病からなる群より選択される疾患を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記組成物は、レジメンとして投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記組成物による治療に好適な患者を選択するステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記患者は多発性硬化症を有し、治療に好適な前記患者は、多発性硬化症のための先の代替治療に対して不十分な反応を示している、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記患者に、第2の治療薬剤、例えば、血栓溶解剤、神経保護剤、抗炎症剤、ステロイド、サイトカイン、または成長因子を投与するステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
患者を評価する方法であって、(i)前記患者が予め選択された基準を満たすかどうかを判断するステップと、(ii)前記患者が前記予め選択された基準を満たす場合、請求項1、2、または3に記載の組成物を前記患者に承認、提供、処方、または投与するステップを含む、方法。
【請求項46】
前記患者は多発性硬化症を有し、前記患者は多発性硬化症のための先の代替治療に対して不十分な反応を有した、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
pH6±0.5で、135mg/mLから165mg/mLのナタリズマブ、5mMから15mMのリン酸ナトリウム緩衝液、130mMから150mMの塩化ナトリウム、および0.02%から0.08%(w/v)のポリソルベート80を含む、水性医薬組成物。
【請求項48】
pH6±0.5で、135mg/mLから165mg/mLのナタリズマブ、5mMから15mMのリン酸ナトリウム緩衝液、250mMから300mMのグリセロール、および0.02%から0.08%(w/v)のポリソルベート80を含む、水性医薬組成物。
【請求項49】
pH6±0.5で、135mg/mLから165mg/mLのナタリズマブ、5mMから15mMのリン酸ナトリウム緩衝液、150mMから170mMのLアルギニン塩酸塩、および0.02%から0.08%(w/v)のポリソルベート80を含む、水性医薬組成物。
【請求項50】
リン酸緩衝液中の120から190mg/mLのVLA−4結合抗体と、ポリソルベートとを含む水性組成物を調製する方法であって、
(i)前記抗体を細胞培養で発現させるステップと、
(ii)前記抗体に少なくとも1回のクロマトグラフィー精製ステップを行うステップと、
(iii)前記抗体に少なくとも2回のリン酸緩衝液中での限外濾過/ダイアフィルトレーションステップを行うステップと、
(iv)前記抗体に少なくとも1回のリン酸緩衝液中での限外濾過ステップを行うステップと、
(v)ポリソルベートおよびリン酸緩衝液を添加することによって、前記抗体の濃度を120mg/mLから190mg/mLに調整するステップと、を含む方法。
【請求項51】
前記VLA−4結合抗体はナタリズマブである、請求項51に記載の方法。
【請求項52】
前記ポリソルベートはポリソルベート80である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
請求項1、2、または3に記載の組成物の品質を評価する方法であって、前記組成物の溶液パラメータを評価するステップと、前記溶液パラメータが予め選択された基準を満たすかどうかを判断するステップと、前記溶液パラメータが前記予め選択された基準を満たす場合、前記組成物の品質は使用に好適であることを判断するステップと、を含む方法。
【請求項54】
前記溶液パラメータは色である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記溶液パラメータは透明度である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記溶液パラメータは粘度である、請求項55に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−529999(P2010−529999A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512385(P2010−512385)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/066928
【国際公開番号】WO2008/157356
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】