説明

抗体複合体、抗原検出方法、及び抗体複合体製造方法

【課題】MUSTagの検出感度を向上させること。
【解決手段】
標識としての核酸鎖、抗原に特異的に結合する抗体、及び核酸鎖と抗体を結合するアダプター部位を含有する抗体複合体において、アダプター部位に、プロテインG、プロテインAまたはプロテインLのいずれかのイムノグロブリン結合ドメインを含有させて抗体と結合させ、アダプター部位と抗体とを化学的に架橋して、架橋型抗体複合体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体複合体、抗体複合体を用いた抗原検出方法、及び抗体複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微量抗原を検出方法として、従来、ELISA等が開発されたが、最近、検出感度を上げたMUSTagと呼ばれる複合体を用いる方法が開発された(例えば、特許文献1参照)。
具体的には、抗体に、プロテインGを介して、標識となるオリゴヌクレオチドを結合させた複合体を用い、この複合体の抗体部分を抗原と結合させた後で、オリゴヌクレオチドを切断して回収し、PCRでオリゴヌクレオチドを検出することにより、抗原を検出するという方法が一例として挙げられる。
【特許文献1】国際公報WO2006/049289
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、MUSTagの検出感度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明者は、MUSTagの検出感度を向上させるために、様々な条件を検討した結果、実施例に示すように、アダプター部位と抗体を架橋することにより、抗原の検出感度が強くなることを見出した。従来、プロテインG、プロテインAまたはプロテインLは、高い親和性でIgG分子のFc領域に結合することが知られているため、この発見は当業者にとっても予想外のことであり、MUSTagを用いた抗原の検出方法においては、プロテインG、プロテインAまたはプロテインLと抗体の結合力が十分でないことが示唆された。
【0005】
即ち、本発明は以下の通りである。
〈1〉抗原を検出するための抗体複合体であって、標識としての核酸鎖、前記抗原に特異的に結合する抗体、及び前記核酸鎖と前記抗体を結合するアダプター部位を含有し、前記アダプター部位は、プロテインG、プロテインAまたはプロテインLのいずれかのイムノグロブリン結合ドメインを含有し、前記アダプター部位と前記抗体とは、化学的に架橋されていることを特徴とする抗体複合体。
〈2〉前記核酸鎖を切り離すことができる切断部位を含むことを特徴とする〈1〉に記載の抗体複合体。
〈3〉前記切断部位は、制限酵素、光照射、または活性酸素によって切断されることを特徴とする〈2〉に記載の抗体複合体。
〈4〉前記アダプター部位は、アビジン類のビオチン結合ドメインと、プロテインG、プロテインAまたはプロテインLのイムノグロブリン結合ドメインとを含む融合タンパク質を含有し、核酸鎖がビオチン結合核酸であることを特徴とする〈1〉〜〈3〉のいずれかに記載の抗体複合体。
〈5〉前記抗体は、モノクローナル抗体であることを特徴とする〈1〉〜〈4〉に記載の抗体複合体。
〈6〉抗原を検出する方法であって、前記抗原と、請求項1〜5のいずれかに記載の抗体複合体を接触させて、前記抗原と前記抗体複合体を含有する抗原抗体複合体を形成させる工程と、前記オリゴヌクレオチド鎖を検出する検出工程と、を含むことを特徴とする方法。
〈7〉前記抗原抗体複合体は、請求項2または3に記載の抗体複合体を含み、前記検出工程は、前記切断部位で前記オリゴヌクレオチド鎖を切り離し、回収する工程、を含むことを特徴とする〈6〉に記載の方法。
〈8〉前記検出工程は、前記オリゴヌクレオチド鎖を増幅する工程と、増幅された前記オリゴヌクレオチド鎖を検出する工程と、を含むことを特徴とする〈6〉または〈7〉に記載の方法。
〈9〉抗原の検出用キットであって、標識としての核酸鎖、前記抗原に特異的に結合する抗体、及び前記核酸鎖と前記抗体を結合するアダプター部位を含有する抗体複合体を含有し、前記アダプター部位は、プロテインG、プロテインAまたはプロテインLのいずれかのイムノグロブリン結合ドメインを含有し、前記アダプター部位と前記抗体とは、化学的に架橋されていることを特徴とするキット。
〈10〉前記抗体複合体は、前記核酸鎖を切り離すことができる切断部位を含むことを特徴とする〈9〉に記載のキット。
〈11〉前記切断部位は、制限酵素、光照射、または活性酸素によって切断されることを特徴とする〈10〉に記載のキット。
〈12〉前記アダプター部位は、アビジン類のビオチン結合ドメインと、プロテインG、プロテインAまたはプロテインLのイムノグロブリン結合ドメインとを含む融合タンパク質を含有し、核酸鎖がビオチン結合核酸であることを特徴とする〈9〉〜〈11〉のいずれかに記載のキット。
〈13〉前記抗体は、モノクローナル抗体であることを特徴とする〈9〉〜〈12〉のいずれかに記載のキット。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、MUSTagの検出感度を向上させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いている場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコルを用いる。
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的に実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0008】
==架橋型抗体複合体==
本発明の抗体複合体は、標識としての核酸鎖、検出対象である抗原に特異的に結合する抗体、及び核酸鎖と抗体を結合するアダプター部位を含有し、アダプター部位は、プロテインG、プロテインAまたはプロテインLのいずれかのイムノグロブリン結合ドメインを含有し、アダプター部位と抗体とは、化学的に架橋されている。
【0009】
標識としての核酸鎖は、DNAであってもRNAであっても構わないが、検出を容易にするため、DNAであることが好ましい。また、その長さに制限は無いが、切断や検出の際に酵素などが作用し易いように短い方が好ましいが、検出し易いように、十数塩基〜数十塩基の長さのオリゴヌクレオチドが好ましい。さらに、一本鎖または二本鎖であってもよいが、安定性の面から二本鎖であることが好ましい。この核酸鎖をPCRなどで検出するために、核酸鎖の塩基配列は、できるだけ特異的であることが好ましい。
【0010】
抗体複合体に含まれる核酸鎖と抗体はアダプター部位を介して結合している。それによりオリゴヌクレオチド複合抗体の構造安定性を一層高めることができ、得られる複合体の収率をより向上させるとともに、ひいては検出感度や検出効果を高める等の効果が得られる。
このアダプター部位は、プロテインG、プロテインAまたはプロテインLのいずれかのイムノグロブリン結合ドメインを含有していれば、その他の構成は特に限定されない。
従って、アダプター部位は、プロテインG、プロテインAまたはプロテインLのタンパク質そのものを含有していてもよく、それらのイムノグロブリン結合ドメインと他のペプチドの融合タンパク質を含有してもよい。なお、ここで、プロテインG、プロテインAまたはプロテインLは、野生型タンパク質のみならず、イムノグロブリン結合活性を有する変異型タンパク質であってもよい。
例えば、イムノグロブリン結合ドメインは、それぞれ、プロテインG(GenBank accession number cDNA: X06173, protein: CAA29540)の場合、303-357番目、373-427番目、443-497番目のアミノ酸の領域であり、プロテインA(GenBank accession number cDNA: M18264, protein: AAA26677)の場合、39-88番目、100-149番目、158-207番目、216-265番目、274-323番目のアミノ酸の領域であり、プロテインL(GenBank accession number cDNA: M86697, protein: AAA25612)の場合、115-173番目、185-245番目、257-317番目、329-389番目、400-462番目のアミノ酸の領域である。
さらに、アダプター部位は、製造する際に必要なtagを含んでもよい。tagの種類は、特に限定されず、GST-tagやMBP-tag、myc-tagやflag-tag等でもよいが、低分子のニッケルに結合できるため、化学架橋工程で影響が無いという点から、tagはHis-tagであることが好ましい。
【0011】
アダプター部位に含まれるイムノグロブリン結合ドメインは、抗体には直接結合しているが、核酸鎖に対しては、直接的に結合していても、間接的に結合していても構わない。間接的に結合する場合、例えば、アビジン類のビオチン結合ドメインと、プロテインG、プロテインAまたはプロテインLのイムノグロブリン結合ドメインとがリンカー化合物を介して結合するか、あるいは融合タンパク質になっており、一方、核酸鎖がビオチンと結合していて、ビオチン結合ドメインとビオチンが結合する場合や、イムノグロブリン結合ドメインと核酸鎖が共にビオチンを結合していて、これらのビオチン同士がアビジン類を介して結合する場合など、様々な態様が考えられる。リンカー化合物としては、例えば「Sulhsuccinimidy1 4-(N・maleimidomethyl)cyclohexane−1−carboxylate (Sulfo・SMCC)」等を用いることができる。
【0012】
ここで、アビジン類は通常ホモ4量体を形成しており、1つのサブユニットにつき1つのビオチン結合ドメインを有するため、タンパク全体で4つのビオチン結合ドメインを有していることになるが、本発明で用いるビオチン結合ドメインは、1つのサブユニットがあればよく、また4量体を形成していてもよい。しかし、標識である核酸鎖を溶液中に曝すような構造にするため、プロテインG1分子に核酸鎖1分子を結合させることが好ましく、そのためには、4量体を形成せずビオチン結合ドメインを1つだけ有するような単量体のアビジン類変異体を使用するのが好ましい。これまで単量体となるアビジン類変異体は活発に研究されてきたが、成功していないことが多かった(Qureshi, M. H., and Wong, S. L. (2002). Protein Expr Purif vol.25, p.409-415; Laitinen, O. H.et al., (2003). J Biol Chem vol.278, p.4010-4014.)。しかし、本発明においては、実施例に示すように、ストレプトアビジンの39-183番目のアミノ酸配列を有するペプチドを使用することにより、ビオチンとの結合活性を失わない変異体が作製された。
【0013】
また、アビジン類とは、アビジン、ストレプトアビジンやニュートラアビジンなどのビオチン結合タンパク質のことである。例えば、アビジン(RefSeq accession number cDNA: NM_205320, protein: NP_990651)及びニュートラアビジン(アビジンと配列は同じで脱グリコシル処理したもの)の場合、ビオチン結合ドメインは、アミノ酸28-146番目の領域であり、ストレプトアビジン(GenBank accession number cDNA: X03591, protein: CAA27265)の場合は、アミノ酸39-156番目の領域である
【0014】
アダプター部位と抗体は、化学的に架橋されているが、架橋の種類については、特に限定されない。例えば、アミノ基間架橋,カルボキシル基間架橋,チオール基間架橋などが挙げられる。アダプター部位の中で、抗体と架橋されるアミノ酸残基は特に限定されないが、抗体と直接結合しているイムノグロブリン結合ドメイン中の残基であることが好ましい。
【0015】
抗体は、検出対象である抗原に特異的に結合できれば、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であっても構わない。また、抗体の種類に制限は無く、例えばIgGであってもIgMであってもよいが、アダプター部位に含まれるイムノグロブリン結合ドメインが結合する種類の抗体でなければならない。
【0016】
このように、核酸鎖、抗体、及び核酸鎖と抗体を結合するアダプター部位を含有する抗体複合体において、アダプター部位と抗体を架橋して架橋型抗体複合体とすることにより、抗原の検出感度が著しく強くなる。
【0017】
上述の抗体複合体は、核酸鎖を切り離すことができる切断部位を含んでもよい。この切断部位は、核酸、抗体、アダプター部位のいずれに設けられてもよいが、例えば、核酸に設ける時は、制限酵素による切断部位、抗体やタンパク質のアダプターに設ける時は、プロテアーゼによる切断部位、アダプターとしてクロスリンカー(2価の架橋剤等)を設ける時は光照射や活性酸素によるによる切断部位、というように、設ける場所によって、その特性が異なる。しかし、簡便さと特異性の面で、核酸鎖に制限酵素による切断部位を設けるのが好ましい。
【0018】
また、核酸鎖を、標識として機能させるため、放射性同位元素、蛍光色素、酵素などのマーカーを結合させてもよい。
【0019】
==架橋型抗体複合体の製造方法==
核酸鎖、抗体、及び核酸鎖と抗体を結合するアダプター部位を含有する架橋型抗体複合体は、これらの構成要素を含有するように製造できれば、特に限定されない。
【0020】
例えば、まず、アダプター部位に、標識部分となる核酸鎖を結合させ、次いで、アダプター部位を抗体に固定して抗体複合体を製造し、その後、化学架橋剤を用いて、アダプター部位と抗体を架橋してもよい。
【0021】
アダプター部位に核酸鎖を直接的に結合させる場合は、アダプター部位のどこに結合させてもよいが、例えば、核酸鎖の末端をアミノ基もしくはチオール基で修飾し、アダプター部位中のアミノ基、カルボキシル基、チオール基等の官能基と適切な架橋剤を用いて化学的に架橋することにより結合させることができる。また、アダプター部位に核酸鎖を間接的に結合させる場合は、アダプター部分をアビジン類のビオチン結合ドメインと結合させ、核酸鎖をビオチン化して、両者を常法により混合することにより、核酸鎖をアダプター部分に結合させることができる。あるいは、予めアダプター部分及び核酸鎖等をいずれもビオチン化しておき、常法により当該アダプター部分と核酸鎖とを混合すると共にアビジン類を添加することで、アビジン類を介して核酸鎖をアダプター部分に結合させることもできる。次いで、アダプター部分/核酸鎖結合体と抗体とを、常法により混合することで、抗体複合体を得ることができる。
【0022】
最後に、この抗体複合体を化学架橋剤で処理することにより、抗体複合体中のアダプター部位と抗体を架橋する。架橋剤としては、Dimethyl Pimelimidate (DMP)、Dimethyl suberimidate (DMS)、Bis[Sulfosuccinimidyl]suberate (BS3)等を用いることができるが、架橋の効率を高め、抗体複合体-アダプター部位をより特異的に架橋させるため、DMPを用いるのが好ましい。
【0023】
==架橋型抗体複合体を用いた抗原検出方法==
こうして製造された架橋型抗体複合体と、検出対象である抗原とを接触させて抗原抗体複合体を形成させる。
【0024】
検出対象となる抗原は、その種類・存在様式など、特に限定されないが、抗体で認識できれば、タンパク質でも糖でも核酸でもよく、精製物であっても抽出物であってもよい。また、ウイルスや細胞に存在していてもよく、その場合、ウイルスや細胞をそのまま検出に用いてもよい。従って、被験試料は、例えば、生体成分(組織や血液)やその抽出物、食肉や野菜等の食品類、土壌や河川水などであってもよい。
【0025】
抗原抗体複合体の作製方法は特に限定されず、抗原を支持体に固定化してもしなくても良いが、例えば、抗原を支持体に固定化し、架橋型抗体複合体を抗原に結合させることにより、架橋型抗体複合体を支持体に結合させる。その後、緩衝液で洗浄することにより、未反応の架橋型抗体複合体を除去することができ、高純度の抗原抗体複合体を得ることができる。この支持体には、プラスティックの底面やビーズなどを用いることができる。また、抗原を支持体に固定化するのに、抗原を支持体に直接結合させても、間接的に結合させても構わない。直接結合させる場合は、抗原を含む緩衝液を支持体と接触させればよく、間接的に結合させる場合は、支持体に、抗原が結合する物質(例えば、抗体等)を予め結合させ、そこに抗原を含む緩衝液を支持体と接触させればよい。特異性を高めるためには、後者の間接結合が好ましい。
【0026】
抗原に結合した架橋型抗体複合体を検出するために、容器ごとPCRなどで、架橋型抗体複合体中の核酸を検出してもよいが、検出操作を簡便にするために、核酸を回収するのが好ましい。
【0027】
核酸は、架橋型抗体複合体ごと回収してもよく、例えば、常法に従って、抗原と抗体を解離させることによって架橋型抗体複合体を回収することができる。あるいは、核酸だけを回収してもよく、酸処理、アルカリ処理、熱処理、プロテアーゼ処理等を行って、架橋型抗体複合体を変性させたり、分解させたりすればよい。
【0028】
しかしながら、このような過激な処理では、検出をHRPなどの酵素反応で行うことができず、PCRを行うためには、Taqポリメラーゼ等の酵素が機能できるように核酸を精製する必要がある。従って、架橋型抗体複合体に核酸鎖を、制限酵素処理や光処理等の穏やかな処理で切り離すことができる切断部位を設けることが好ましい。そして、核酸鎖の検出をするために、この切断部位で抗原抗体複合体から核酸鎖を切り離し、回収する。この回収工程によって、核酸鎖の検出前に濃縮することができ、より少量の核酸鎖も検出可能になる。
【0029】
このようにして回収された核酸鎖を検出する。検出方法は特に限定されないが、放射性同位元素、蛍光色素、酵素などのマーカーが核酸鎖に結合している場合、そのマーカーを検出してもよい。しかし、検出感度の点から、核酸鎖を増幅して検出することが好ましい。増幅方法は、常法に従えばよく、PCR法、LAMP法、ICAN法などを用いることができる。また、検出も、電気泳動法など常法を用いればよい。
【0030】
なお、複数の抗原を同時に検出するためには、各抗原に特異的に結合する抗体と、抗原の種類に一対一で対応する核酸鎖とを含有する抗体複合体を用いることにより、各抗原を各核酸鎖と対応できるようにする。それによって、各核酸鎖を検出することで各抗原を個別に検出することができる。
【0031】
この場合、各抗原に対する特異的な抗体複合体を得るには、それぞれの抗体複合体をそれぞれ形成した後、精製しておく必要があり、使用する際には、抗体複合体をそれぞれ混合すればよい。
【0032】
異なる抗原に対応する核酸鎖は、配列を変えることで特異性を持たせてもよく、長さを変えることで特異性を持たせてもよい。後者の場合、DNA増幅のためのプライマーを共通にすることも可能になる。また、核酸鎖に、異なる種類の標識(例えば、酵素の場合、アルカリホスファターゼとHRPというように)でラベルすることにより、特異性を持たせることもできる。
【0033】
==抗原検出用キット==
本発明にかかる架橋型抗体複合体を用いた抗原の検出を容易にするために、必要な試薬を抗原検出用キットとしてキット化してもよい。
【0034】
このキットは、標識としての核酸鎖、検出対象である抗原に特異的に結合する抗体、及び核酸鎖と抗体を結合するアダプター部位を含有する抗体複合体を含有する。ここで、アダプター部位は、プロテインG、プロテインAまたはプロテインLのいずれかのイムノグロブリン結合ドメインを含有し、アダプター部位と抗体とは、化学的に架橋されている。
その他の抗体複合体の態様は、「架橋型抗体複合体」の項で述べた通りである。
【0035】
このキットには、架橋型抗体複合体の他に、他の構成成分を備えてもよく、様々なバッファー、プライマーや酵素などの検出用試薬を含んでいてもよい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【0037】
==プロテインG/ストレプトアビジン/His-tagの融合タンパク質の作製==
まず、プロテインG/ストレプトアビジン/His-tagの融合タンパク質(以下、融合タンパク質と呼ぶ。)を作製した。まず、プロテインGにおけるIgG抗体Fc領域との結合領域を含む部分として、配列番号1(プロテインG全長、GenBank accession number:M13825)に示されるアミノ酸配列のうちの第228番目〜第268番目のアミノ酸配列領域(配列番号2)をコードするDNA(配列番号3に示される塩基配列のうちの第1259番目〜第1381番目の塩基配列(配列番号4))、及びストレプトアビジンにおけるビオチンとの結合領域を含む部分として、配列番号5(ストレプトアビジン全長、GenBank accession number:X03591)に示されるアミノ酸配列のうちの第39番目〜第183番目のアミノ酸配列領域(配列番号6)をコードするDNA(配列番号7に示される塩基配列のうちの第164番目〜第598番目の塩基配列領域(配列番号8)を、リン酸基部位無保護法による化学合成法によって合成した。この際、必要により、断片的に合成された個々の二本鎖DNAを結合させて、全長DNAを完成した。その後、合成した各DNAをそれぞれ鋳型とし、下記のプライマーを用いて、 〈95℃30秒−55℃30秒− 72℃30秒を35サイクル〉の反応条件でPCRを行い、各二本鎖DNAを増幅した。なお、PCRにより得られるDNA断片が両端(小文字部分の塩基配列)に制限酵素認識部位を有するように、各プライマーを設計した。
プロテインGプライマーF:
5'- CATATGCACTTACAAATTAATCCTTAA -3' (配列番号9)
プロテインGプライマーR:
5'- GAATTCGGATCCTTCACCGTCAACACCGTTG -3' (配列番号10)
ストレプトアビジンプライマーF:
5'- GAATTCAAGCTTGCCGGCATCACCGGCACCTG -3' (配列番号11)
ストレプトアビジンプライマーR:
5'- CTGCAGCTGCTGAACGGCGTCGAGCG -3' (配列番号12)
得られたDNA断片をEcoRIで切断後、ライゲーションによって結合させ、再度、プロテインGプライマーFとストレプトアビジンプライマーRを用いて、PCRを行い、融合DNA断片を増幅させた。
次に、His-tagとの融合タンパク質を合成するためのバクテリア用発現ベクターpCR2.1(Invitrogen社)を用い、増幅した融合DNA断片をNdeIで切断し、このベクターのNdeI部位に挿入した。このようにして、プロテインG/ストレプトアビジン/His-tagの融合タンパク質(配列番号13)をコードする塩基配列(配列番号14)を有する組換えベクターを構築した。
この組換えベクターを大腸菌DH5αに導入し、IPTGで発現誘導させた後、大腸菌を可溶化して、ニッケルキレートを固相化したセファロースビーズ(品名:Ni-NTA agarose、会社名:QIAGEN、製品番号:30210)をもちいて、プロテインG/ストレプトアビジン/His-tagの融合タンパク質を精製した。精製後のタンパク質の分析結果の一例(SDS-PAGEによる解析)を図1に示す。
【0038】
==オリゴヌクレオチドのビオチン化==
配列番号15の配列(131塩基)を有するDNAをインサートしたpcDNA3 (Invitrogen社製)を鋳型DNAとし、ビオチン化プライマー(5-MUSTagBio)を含む下記プライマー(配列番号16及び17)を使用して〈95℃60秒−55℃60秒−72℃30秒を35サイクル〉の反応条件でPCRを行うことにより、5'末端がビオチン化されたオリゴヌクレオチド鎖#1(配列番号15)を合成した。
#1:
5’-[Biotin]-CACTGCTTACTGGCTTATCGAAATGGAATTCTGCATGCATCTAGAGGGCCCTATTCTATAGCATAGTGTCACCTAAATGCTAGGCACCTTCTAGTTGCCAGCCATCTGTTGCACACCAAACGTGGCTTGCC-3’ (配列番号15)
【0039】
同様に、配列番号18の配列を有するDNAをインサートしたpcDNA3 (Invitrogen社製)を鋳型とし、同じプライマー(配列番号16、17)を用いて、5'末端がビオチン化されたオリゴヌクレオチド鎖#7(配列番号18)を合成した。
#7:
5’-[Biotin]-CACTGCTTACTGGCTTATCGAAATGGAATTCTGCATGCATCTAGAGGGCCCTATTCTATAGCATAGTGTCACCTAAATGCTAGGCAACCGACAATTGCATGAAGAACTCGCACATTGACGTCAATAATGACGTATGTTCCCACCACCAAACGTGGCTTGCC-3’ (配列番号18)
〈PCR用プライマーの配列〉
5-MUSTag primer Bio-F:
5'-[Biotin]-CACTGCTTACTGGCTTATCGAAA-3' (配列番号16)
3-MUSTag primer R:
5'-GGCAAGCCACGTTTGGTG-3'(配列番号17)
【0040】
==架橋型抗体複合体の作製==
(1)オリゴヌクレオチドと抗体の融合タンパク質への結合
微量遠心チューブに、結合バッファー(0.2 M Borate pH 9.0, 0.5 M NaCl, 0.1 mM EDTA, 0.05% Monocaprate)243.4 μl、融合タンパク質 6.6 μl(100 pmol)、ビオチン化オリゴヌクレオチド(IFN−γ及びIL−12に対しては#1、EGF及びIL−15に対しては#7)を40 μl(100 pmol)加え、室温で0.5時間、回転させながら、融合タンパク質のストレプトアビジン部位とビオチン化オリゴヌクレオチドを結合させた。その後、下記の抗体(0.5 mg/ml)を60 μl(200 pmol)加え、室温で1時間、回転させながら、融合タンパク質のプロテインG部位と抗体を結合させた。
〈抗体の種類〉
抗hEGF抗体:種類:goat polyclonal、会社名:R&D、製品番号:AF236、濃度:0.5 mg/mL
抗hIFN-γ抗体:種類:goat polyclonal、会社名:R&D、製品番号:AF-285-NA、濃度:0.5 mg/mL
抗hIL-12 p70抗体:種類:mouse IgG1、会社名:R&D、製品番号:MAB611(clone 24945)、濃度:0.5 mg/mL
抗hIL-15抗体:種類:mouse IgG1、会社名:R&D、製品番号:MAB247(clone 34593)、濃度:0.5 mg/mL
【0041】
(2)架橋反応
使用直前にカップリングバッファーで6 mMに調整したDMP(Pierce, #21667, MW 259.177)を反応溶液と等量(約350 μl)加えて混合し、1時間、室温で静置した。1M Tris(pH 7.4)を最終濃度50 mMになるように加えて、15分間、室温で静置し、架橋反応を停止させた後、0.45 μm PTFEフィルター(製品名:Millex FH, 会社名:Millipore, 製品番号:SLFHR04NL)でろ過した。最後に、下記の条件で反応液をゲル濾過クロマトグラフィーにより分画し、最も分子量の大きいピークの画分を回収してMUSTag溶液とした。溶液中のMUSTagの濃度は、作製に用いた抗体を標準とし、ELISAで比較することにより測定した。
〈ゲル濾過クロマトグラフィーの条件〉
機器: 製品名:SMART system, 会社名:旧Pharmacia(現GE Healthcare, 製造中止品)
カラム: 製品名:Superdex 200 PC 3.2/30, 会社名:GE Healthcare, 製品番号:17-1089-01)
バッファー: 10 mM Tris-HCl pH 7.4, 0.5 M NaCl, 0.1 mM EDTA, 0.05% Monocaprate
流速:100 μl/min
【0042】
(3)抗原とMUSTagの結合
EGF、IFN−γ、IL−12、IL−15のそれぞれに対する下記捕捉用抗体を、固相化用バッファー(0.05 M NaHCO3-Na2CO3 Buffer(pH 9.6)、0.02% sodium azide)で2 μg/mLの濃度に調製し、96ウェルプレートの各ウェルに50 μl加えて4 ℃で一晩静置することにより、捕捉用抗体をプレートに固相化した。
固相化後、ウェル内の液を捨て、1% BSA / PBSを50 μl加えて60分間室温で静置し、プレートのブロッキングを行った。
その後、以下のように調整した8段階の濃度の各抗原を50μl加えて混合し、室温で60分間静置してプレート上に固相化した捕捉用抗体と結合させた。
抗体結合後、ウェル内の溶液を捨て、MUSTag希釈液(1% BSA / 0.05% Tween 20 / 0.45 M NaCl / 50 mM Na2HPO4-NaH2PO4 Buffer (pH 7.4))で8 ng/mLの濃度に調製した架橋MUSTag、及び、コントロールとして、架橋していないMUSTagを、25 μL添加し、室温で60分間放置して、抗原に結合させた。
その後、1st wash Buffer(0.5 M NaCl / 0.05% Tween 20 / 20 mM Tris-HCl (pH 7.4))300 μLで1回、2nd wash Buffer(0.05% Tween 20 / PBS 300 μL)で3回各ウェルを洗浄した。
〈捕捉用抗体の種類〉
抗hEGF抗体: 種類:mouse IgG1、会社名:R&D、製品番号:MAB636(clone 10827)、保存濃度:0.5 mg/mL
抗hIFN-γ抗体: 種類:mouse IgG2A、会社名:R&D、製品番号:MAB2852(clone K3.53)、保存濃度:0.5 mg/mL
抗hIL-12抗体: 種類:goat polyclonal、会社名:R&D、製品番号:AF-219-NA、保存濃度:0.5 mg/mL
抗hIL-15抗体: 種類:mouse IgG1、会社名:R&D、製品番号:MAB647(clone 34505)、保存濃度:0.5 mg/mL
〈抗原の調整〉
以下、各抗原の希釈には、抗原希釈液(1% BSA / PBS)を用いた。
rhEGFの原液(会社名:R&D、製品番号:236-EG、保存濃度:200 μg/mL)を100,000倍に希釈し、2000 pg/mLに調製した。さらに、希釈抗原液を10倍ずつ希釈して10倍希釈系列を7段階作成し、ネガティブコントロール(0 pg/mL、抗原希釈液のみ)を含めて8種類の濃度(2000, 200, 20, 2, 0.2, 0.02, 0.002, 0 [pg/mL])の抗原を用意した。
rhIFN-γの原液(会社名:R&D、製品番号:285-IF、保存濃度:100 μg/mL)を5,000倍に希釈し、20000 pg/mLに調製した。さらに、希釈抗原液を5倍ずつ希釈を行って5倍希釈系列を7段階作成し、ネガティブコントロール(0 pg/mL、抗原希釈液のみ)を含めて8種類の濃度(20000, 4000, 800, 160, 32, 6.4, 1.28, 0 [pg/mL])の抗原を用意した。
rhIL-12の原液(会社名:R&D、製品番号:219-IL、保存濃度:10 μg/mL)を1% BSA / PBSで250倍に希釈し、40000 pg/mLに調製した。さらに、希釈抗原液を5倍ずつ希釈して5倍希釈系列を7段階作成し、ネガティブコントロール(0 pg/mL、抗原希釈液のみ)を含めて8種類の濃度(40000, 8000, 1600, 320, 64, 12.8, 2.56, 0 [pg/mL])の抗原を用意した。
rhIL-15の原液(会社名:R&D、製品番号:247-IL、保存濃度:10 μg/mL)を2,500倍に希釈し、4000 pg/mLに調製した。さらに、希釈抗原液を5倍ずつ希釈をして5倍希釈系列を7段階作成し、ネガティブコントロール(0 pg/mL、抗原希釈液のみ)を含めて8種類の濃度(4000, 800, 160, 32, 6.4, 1.28, 0.256, 0 [pg/mL] )の抗原を用意した。
【0043】
(4)オリゴヌクレオチド鎖の検出
洗浄後の各ウェルの溶液を完全に除去し、EcoRI酵素溶液(7.5 unit/mL EcoRI / 50 mM NaCl / 10 mM MgCl2 / 10 mM Tris-HCl (pH 7.4))を30 μL(EcoRI 0.225 unit/well含有)を添加して室温で15分反応させ、抗体複合体のオリゴヌクレオチド鎖を切断した。
反応後の上清を回収して、この上清3 μlに対し、下記のプライマー及びプローブ(プライマーの配列は#1と#7で共通)を用いてリアルタイムPCRを行った。なお、PCRは、〈95 ℃, 15 minのプレヒーティングの後、95 ℃, 15 sec−60 ℃, 1 minを35サイクル〉という条件で行った。
リアルタイムPCRによるDNA鎖の合成反応に伴い変動する蛍光量を、反応開始後1サイクル毎に測定することにより、抗原の各希釈系列のウェルごとに、増幅断片の検出の可否、及び増幅量の変化を観察した。
〈リアルタイムPCR用プライマー・プローブの配列〉
Forward primer: 5’-GGGCGGCTGCATCTAGAGGGCCCTATTCTATA-3’(配列番号19)
Reverse primer: 5’-GGCAAGCCACGTTTGGTG-3’(配列番号20)
Probe for #1: 5’-CCTTCTAGTTGCCAGCCATCTGTT-3’(配列番号21)
Probe for #7: 5’-ACCGACAATTGCATGAAGAACTC-3’(配列番号22)
【0044】
(5)得られた結果の標準化と解析
上記検出方法において、抗原抗体反応の検出結果は、Ct値(PCRにより増幅されたDNAが基準量に達するのに要したサイクル数)で示される。その結果を図2に示す。
各検出結果に対し、ブランクのCt値の平均から各抗原濃度でのCt値を差し引いて差分(ΔCt)を求めることにより、各検量線の標準化を行った。その結果を図3に示す。
ここで、ΔCtが各測定系におけるブランクの測定値の標準偏差の3.3倍になる抗原濃度を低濃度側の検出限界とし、(架橋ありのMUSTagを用いた際の低濃度側の検出限界の抗原濃度)/(架橋無しのMUSTagを用いた際の低濃度側の検出限界の抗原濃度)を検出感度とした(架橋無しのMUSTagを用いた際の感度を1とした)。同様に、高濃度側の定量限界は、得られた検量線を用いて各抗原濃度でのΔCtを濃度に変換した際に、変換後の値の変動係数(C.V.)が20%となる濃度として算出した。
各サイトカインを用いたときの低濃度側の検出限界、検出感度及び高濃度側の定量限界を表1に示す。
【表1】

【0045】
(6)架橋の有無による感度の比較
架橋反応により、goat polyclonal製のMUSTag(EGF, IFN-γ)で3〜5倍、mouse monoclonal製のMUSTag(IL-12, IL-15)で20〜100倍の感度向上が得られた。このような低濃度での最高感度のみでなく高濃度側の定量限界も改善されており、測定可能範囲全体が広くなっていた。
また、同じ抗原濃度に対するΔCt値を比較した場合のシグナル強度に関しても、goat polyclonal抗体で最大2倍、mouse monoclonal抗体で最大5倍のΔCtの増大が確認できた。このように、架橋型MUSTagを用いることにより、測定のS/N比が改善され、より精度の高い定量が可能になった。
【0046】
(7)架橋剤の違いによる感度の比較
DMPに代えて、架橋剤としてDMS(PIERCE、#20700、MW:273.2、最終濃度:2 mM)やBS(PIERCE、#21580、MW:572.43、最終濃度:5 mMまたは10 mM)を用い、抗原IL−15に対して検出実験を行った結果を図4に示す。この時のDMSでクロスリンクを行ったMUSTagに関しては、DMPで架橋したものと同等の反応性を示した。BS3による架橋においても、コントロールと比べ、明確な感度・レンジ幅の向上が確認された。
このように、アミン反応性架橋剤の種類に依らず、クロスリンク反応によってMUSTagの反応性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施例における、精製後のプロテインG/ストレプトアビジン/His-tag融合タンパク質のSDS-PAGEの結果を示す写真である。
【図2】本発明の一実施例において、架橋型MUSTagを用い、様々な抗原濃度における抗原の検出結果を示したグラフである。
【図3】本発明の一実施例において、架橋型MUSTagを用い、様々な抗原濃度における抗原の検出結果を標準化したグラフである。
【図4】本発明の一実施例において、複数の架橋剤を用いて製造した架橋型MUSTagを用い、様々な抗原濃度における抗原の検出結果を示したグラフ及び検出結果を標準化したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原を検出するための抗体複合体であって、
標識としての核酸鎖、前記抗原に特異的に結合する抗体、及び前記核酸鎖と前記抗体を結合するアダプター部位を含有し、
前記アダプター部位は、プロテインG、プロテインAまたはプロテインLのいずれかのイムノグロブリン結合ドメインを含有し、
前記アダプター部位と前記抗体とは、化学的に架橋されていることを特徴とする抗体複合体。
【請求項2】
前記核酸鎖を切り離すことができる切断部位を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗体複合体。
【請求項3】
前記切断部位は、制限酵素、光照射、または活性酸素によって切断されることを特徴とする請求項2に記載の抗体複合体。
【請求項4】
前記アダプター部位は、アビジン類のビオチン結合ドメインと、プロテインG、プロテインAまたはプロテインLのイムノグロブリン結合ドメインとを含む融合タンパク質を含有し、核酸鎖がビオチン結合核酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抗体複合体。
【請求項5】
前記抗体は、モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項1〜4に記載の抗体複合体。
【請求項6】
抗原を検出する方法であって、
前記抗原と、請求項1〜5のいずれかに記載の抗体複合体を接触させて、前記抗原と前記抗体複合体を含有する抗原抗体複合体を形成させる工程と、
前記オリゴヌクレオチド鎖を検出する検出工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記抗原抗体複合体は、請求項2または3に記載の抗体複合体を含み、
前記検出工程は、前記切断部位で前記オリゴヌクレオチド鎖を切り離し、回収する工程、を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記検出工程は、
前記オリゴヌクレオチド鎖を増幅する工程と、
増幅された前記オリゴヌクレオチド鎖を検出する工程と、を含むことを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
抗原の検出用キットであって、
標識としての核酸鎖、前記抗原に特異的に結合する抗体、及び前記核酸鎖と前記抗体を結合するアダプター部位を含有する抗体複合体を含有し、
前記アダプター部位は、プロテインG、プロテインAまたはプロテインLのいずれかのイムノグロブリン結合ドメインを含有し、
前記アダプター部位と前記抗体とは、化学的に架橋されていることを特徴とするキット。
【請求項10】
前記抗体複合体は、前記核酸鎖を切り離すことができる切断部位を含むことを特徴とする請求項9に記載のキット。
【請求項11】
前記切断部位は、制限酵素、光照射、または活性酸素によって切断されることを特徴とする請求項10に記載のキット。
【請求項12】
前記アダプター部位は、アビジン類のビオチン結合ドメインと、プロテインG、プロテインAまたはプロテインLのイムノグロブリン結合ドメインとを含む融合タンパク質を含有し、核酸鎖がビオチン結合核酸であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のキット。
【請求項13】
前記抗体は、モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載のキット。

【図4】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−6788(P2010−6788A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171512(P2008−171512)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(591063394)財団法人 東京都医学研究機構 (69)
【出願人】(505337696)シンセラ・テクノロジーズ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】