説明

抗内毒素剤、及びこれを含有する歯周病抑制用口腔用組成物

【課題】LPSの活性を阻害し、歯周病の予防又は治療に有効である他、細菌感染によるエンドトキシンショック症状等の予防又は治療に有効な抗内毒素剤、及びこれを含有する歯周病抑制用口腔用阻害剤の提供。
【解決手段】分子内にアミド構造を有する界面活性剤(例えば脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸アミドベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、N−アシルアミノ酸塩、N−ヤシ油脂肪酸アシルL-アルギニンエチルdl−ピロリドンカルボン酸塩)を有効成分とする抗内毒素剤、該抗内毒素剤の有効量を含有する歯周病抑制用口腔用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LPSの活性を阻害し、歯周病の予防又は治療に有効である他、細菌感染によるエンドトキシンショック症状等の予防又は治療に有効な抗内毒素剤、及びこれを含有する歯周病抑制用口腔用阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エンドトキシン(内毒素) はグラム陰性菌の細胞外膜を構成する成分の一つとして知
られている。エンドトキシン はリポポリサッカライド(LPS)の一種であり、その化
学構造は多糖類によって構成される部分と脂質部分(通常リピドAと呼ばれる)から成っている。エンドトキシン がその菌体の細胞外膜に存在する場合は、エンドトキシンの疎
水性部分であるリピドA部分が細胞外膜の脂質二重層の膜中に埋め込まれた形で存在し、エンドトキシンの親水性部分である多糖部分は菌体の外側にでた形で存在する。エンドトキシンの生物活性はリピドAの部分が担っており、その活性は非常に多彩なものがあり、一方で免疫賦活化作用を持ち生体にとって好影響を及ぼす反面、ショック症状を引き起こすなど悪影響を及ぼす面も持ち合わせている。
【0003】
歯科の分野においても特に歯周病の治療に関し、エンドトキシンの作用が問題として取り上げられている。歯周病は細菌(特にグラム陰性嫌気性菌)による感染症としてとらえられており、歯の喪失の主要な原因と考えられている。エンドトキシンは歯周病原性菌の細胞外膜から放出され歯肉繊維芽細胞などの生体側細胞に作用し、様々なサイトカイン類を発現させ歯肉の炎症、歯槽骨の吸収などにも影響を及ぼしていると考えられている。さらに、エンドトキシンは歯周組織再生の過程にも関与している。通常、エンドトキシンは歯面に吸着し易く、その除去はスケーリング、キュレッテージ等の物理的除去でしか対応できない状態である。しかし、このような物理的除去だけでは、完全に除去することは困難であると考えられており、歯周組織再生過程における残存したエンドトキシンによる影響が議論されている。化学的除去については、タウロリンを用いた系(特許文献1参照)などが報告され、その毒性中和作用について説明がなされている。このように、グラム陰性菌により放出されるエンドトキシンは、医科、歯科の両分野においてその毒性を示し、治療上の問題を引き起こしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−201878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、LPSにより引き起こされる歯周病、エンドトキシンショック等の予防又は治療に有効な抗内毒素剤、及びこれを含有する歯周病抑制用口腔用阻害剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意検討を重ねた結果、分子内にアミド構造を有する界面活性剤が、LPSの活性を阻害し、歯周病、エンドトキシンショック等の予防又は治療に有効であることを見出した。また、本発明者は、カチオン系界面活性剤が、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸アミドベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、N−アシルアミノ酸塩、N−ヤシ油脂肪酸アシルL-アルギニンエチルdl−ピロリドンカルボン酸塩の抗内毒素作用を増強することを見出した。さらに、本発明者は、オイゲノール、経皮アルデヒド、アネトール、ダバナが脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸アミドベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、N−アシルアミノ酸塩、N−ヤシ油脂肪酸アシルL-アルギニンエチルdl−ピロ
リドンカルボン酸塩の苦味を低減することを見出した。
【0007】
本発明は、これらの知見に基づき、下記の抗内毒素剤、歯周病抑制用口腔用組成物を提供するものである。
【0008】
項1. 分子内にアミド構造を有する界面活性剤を有効成分とする抗内毒素剤。
【0009】
項2. 界面活性剤が、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸アミドベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、N−アシルアミノ酸塩及びN−ヤシ油脂肪酸アシルL-アルギニンエチルdl−ピロリドンカルボン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の抗内毒素剤。
【0010】
項3. 界面活性剤の脂肪酸由来のアシル基部分の炭素数が8〜16である項2に記載の抗内毒素剤。
【0011】
項4. 界面活性剤の脂肪酸由来のアシル基部分の炭素数が12〜16である項2に記載の抗内毒素剤。
【0012】
項5. 界面活性剤が、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸アミドベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン及びN−ヤシ油脂肪酸アシルL-アルギニンエチルdl−ピロリドンカルボン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の抗内毒素剤。
【0013】
項6. 項1〜5のいずれかに記載の抗内毒素剤の有効量を含有する歯周病抑制用口腔用組成物。
【0014】
項7. 少なくとも1種のカチオン系界面活性剤をさらに含有する項6に記載の歯周病抑制用口腔用組成物。
【0015】
項8. カチオン系界面活性剤が塩化セチルピリジニウムである項7に記載の歯周病抑制用口腔用組成物。
【0016】
項9. オイゲノール、桂皮アルデヒド、アネトール及びダバナからなる群から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含有する項6〜8のいずれかに記載の歯周病抑制用口腔用組成物。
【0017】
本発明の抗内毒素剤は、分子内にアミド構造を有する界面活性剤を有効成分とする。ここでアミド構造とは下記化学式(1)に示される部分構造を意味する。
【0018】
【化1】

【0019】
分子内にアミド構造を有する界面活性剤としては、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸アミドベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、N−アシルアミノ酸塩、N−ヤシ油脂肪酸アシルL-アルギニンエチルdl−ピロリドンカルボン酸塩などが挙げられ、これらの中の1種又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0020】
脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸アミドベタイン、脂
肪酸アミドプロピルベタイン、N−アシルアミノ酸塩(脂肪酸部分を有する場合)、N−ヤシ油脂肪酸アシルL-アルギニンエチルdl−ピロリドンカルボン酸塩を構成する脂肪酸由来のアシル基部分の炭素数は8〜16が好ましく、12〜16がより好ましい。脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸アミドベタイン、N−ヤシ油脂肪酸アシルL-アルギニンエチルdl−ピロリドンカルボン酸塩を構成する脂肪酸アミドとしては以下に示す脂肪酸のアミド又はその混合物が好ましい。例えば、ヤシ油脂肪酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリル酸)、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オレイン酸などが用いられる。これらの中でも、カプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸が好ましく、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸がより好ましい。
【0021】
なお、脂肪酸由来のアシル基部分の炭素数とは脂肪酸を構成するアルキル基の炭素と、脂肪酸を構成するカルボニル基の炭素との合計数である。したがって、脂肪酸部分の炭素数が12である脂肪酸モノエタノールアミドはラウリン酸モノエタノールアミドを意味し、脂肪酸部分の炭素数が14である脂肪酸アミドベタインはミリスチン酸アミドベタインを意味する。
【0022】
また、N−アシルアミノ酸塩としては、例えば、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、N−アシルサルコシン塩などが用いられる。塩としてはNa塩、K塩、Mg塩などが好ましく、Na塩がより好ましい。Na塩としては、例えば、N−アシル−N−メチル−β−アラニンナトリウム、N−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−アシル−N−メチルタウリンナトリウム、N−アシルサルコシンナトリウムなどが用いられる。
【0023】
これらの界面活性剤は、抗内毒素剤としてそのまま経口的に使用可能であるが、薬学的に許容される担体と組み合わされて経口投与用医薬組成物又は非経口投与用組成物として使用することも可能である。
【0024】
経口投与用医薬組成物は、公知の剤型、例えば錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤等として製剤化可能である。これら製剤の製造方法は、公知の方法によって製造することができる。また、製剤化にあたっては、剤型に応じて適切な担体等を選択し、これを配合できる。
【0025】
固形製剤とする場合は、公知の賦形剤(無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乳糖、コーンスターチ、結晶セルロース等)、結合剤(カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク等)、崩壊剤(デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム等)、着色剤、甘味剤、矯味剤等を配合することができる。
【0026】
液体製剤とする場合は、水性もしくは油性の懸濁液、溶液又はシロップ等とすることができる。また、適当なビヒクルで再溶解しうる乾燥物とすることも可能である。これらに加え、乳化剤(レシチン、ソルビタンモノオレエート等)、乳化助剤(ソルビットシロップ、メチルセルロース、ゼラチン等)、非水性ビヒクル(ココナッツ油、落花生油等)、酸化防止剤、着色剤、香味剤等を配合することができる。
【0027】
非経口投与用医薬組成物は、公知の剤型、例えば注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤、軟膏剤、ゲル剤、坐剤として製剤化可能である。これら製剤の製造方法は、公知の方法によって製造することができる。例えば、注射剤であれば、無菌の水性もしくは油性液に有効成分を溶解、懸濁又は乳化することによって製造することができる。また、製剤化にあた
っては、剤型に応じて適切な担体等を選択し、これを配合できる。例えば、注射剤用の水溶液としては、生理食塩水、ブドウ糖、その他の補助液を含む等張液等が挙げられ、必要に応じて適当な懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム等を併用することが可能である。
【0028】
分子内にアミド構造を有する界面活性剤の投与量は、投与経路、投与回数、被投与者の年齢、体重及び性別などに応じて適宜選択されるが、通常、成人1日当たり10μg〜10mg、好ましくは0.1mg〜1mgである。
【0029】
本発明の歯周病抑制用口腔用組成物は、医薬、食品などの口腔用組成物であって、歯周病の抑制を目的とする組成物を包含する。例えば、練歯磨、粉歯磨、液状歯磨、ジェル状歯磨、洗口剤、プロフィーペースト、パスタ、ドロップ、チューインガム、タブレット、うがい剤、口腔用軟膏等として使用することができ、常法により製造することができる。これらの形態の中でも、練歯磨、液状歯磨、洗口剤、チューインガムが好ましく、練歯磨、液体歯磨、洗口剤が最も好ましい。
【0030】
口腔用組成物に配合する分子内にアミド構造を有する界面活性剤の量は、組成物全重量に対し、0.01〜1重量%程度、好ましくは0.01〜0.1重量%程度である。
【0031】
これらの口腔用組成物を調製する場合、その形態に応じて通常使用される成分を配合することが可能であり、これら成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜選択可能である。例えば歯磨剤(練歯磨、液状歯磨、粉歯磨)の場合、研磨剤、賦形剤、発泡剤、粘結剤、pH調整剤、本発明の有効成分である界面活性剤以外の界面活性剤、湿潤剤、甘味剤、香料、防腐剤、着色剤、その他の有効成分などを配合することができる。
【0032】
研磨剤としては、第2リン酸カルシウム・2水和物および無水和物、リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、シリカゲル、ケイ酸アルミニウム、沈降性シリカ、不溶性メタリン酸ナトリウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ポリメタクリル酸メチル、ベントナイト、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂、及びこれらの組み合わせなどが好ましく使用される。研磨剤の配合量は口腔用組成物全重量に対して、通常、5〜90重量%程度、練歯磨の場合には5〜50重量%程度である。
【0033】
賦形剤として、例えば、火成性シリカ、増粘性シリカ(一般に、RDA値が30以下程度
のシリカを示す。なお、RDA値とは、Radioactive Dentin Abrasionの略称であり、例えば、Hefferenらの方法(J. Dent. Res., Vol. 55, No.4, 563-573,1976年)により求めることができる。)、結晶セルロースを含む粉体状セルロース、及びこれらの組み合わせなどを例示することができる。これらの中では、火成性シリカ、増粘性シリカが好ましい。賦形剤の配合量は、組成物全重量に対して、通常0.1〜30重量%程度であり、好ましくは0.5〜10重量%程度である。
【0034】
発泡剤としては、有効成分である界面活性剤以外のアニオン性界面活性剤が挙げられる。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル基の炭素数が8〜18である高級アルキル硫酸エステル塩;α−オレフィンスルホネート塩、高級脂肪酸ナトリウムモノグリセライドモノサルフェート、α−オレフィンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせなどを例示することができる。これらアニオン性界面活性剤の配合量は、組成物全重量に対して、通常、0.001〜5重量%程度、好ましくは0.01〜2重量%程度である。
【0035】
また、本発明組成物には、上記のアニオン性界面活性剤以外にも、有効成分である界面
活性剤を除き、通常口腔用組成物に用いられる非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤やカチオン性界面活性剤を配合してもよい。この様な界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステルアルキルグリコシド(例えば
アルキル鎖:C8〜C16程度)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば脂肪酸部分の炭素数が8〜16程度)、ショ糖脂肪酸エステル(例えば脂肪酸部分の炭素数が8〜16程度)等の非イオン性界面活性剤;N−アルキルジアミノエチルグリシン、アルキルベタイン
、アルキルスルホベタイン、アルキルベタイン、イミダゾニウムベタインなどの両性界面活性剤;塩化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウムなどのカチオン性界面活性剤などを例示することができ、これらは1種でも2種以上でも用いることができる。これらの中では、分子内にアミド構造を有する界面活性剤の抗内毒素作用を増強するカチオン性界面活性剤(特に、塩化セチルピリジニウム)や、分子内にアミド構造を有する界面活性剤の安定性向上に寄与できるポリオキシエチレン硬化ひまし油、アルキルグリコシドが好ましい。これら非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤やカチオン性界面活性剤の配合量は、組成物全重量に対して、通常、0.001〜5重量%程度、好ましくは0.01〜2重量%程度である。
【0036】
粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体;アルギン酸ナトリウムなどのアルカリ金属アルギネート;アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、トラガカントガム、カラヤガム、アラビアガム、カラギーナンなどのガム類;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンなどの合成粘結剤などが挙げられる。粘結剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。粘結剤の配合量は、組成物全重量に対して、通常、0.3〜5重量%程度である。
【0037】
香料としては、オイゲノール、桂皮アルデヒド、アネトール、ダバナ、アネトール、メントール、カルボン、バニリン、ベンジルサクシネート、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、シトロネロール、α−テルピネオール、メチルアセテート、シトロネリルアセテート、メチルオイゲノール、シオネール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモールなどが挙げられる。これらは、単品化合物として用いてもよいが、これらを含有している精油などの植物抽出液(例えば、下記のような植物抽出物)として配合してもよい。また、香料としては、タイム油、ナツメグ油、スペアミント油、ペパーミント油、フェンネル油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、ピメント油、珪藻油、シソ油、冬緑油、ユーカリ油、バジル油、ティーツリー油、タバナ油、バニラ油、クランベリー油などの植物抽出液が挙げられる。香料は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中では、本発明の有効成分である界面活性剤の矯味に優れたオイゲノール、桂皮アルデヒド、アネトール、ダバナが好ましい。香料の配合量は、香料の種類などに応じて適宜設定することができるが、組成物全重量に対して、通常0.05〜10重量%程度、好ましくは0.1〜5重量%程度である。
【0038】
甘味剤としては、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、アセスルファームK、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、キシリトール、パラチノース、パラチニット、エリスリトール、マルチトールなどが挙げられる。甘味剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。甘味剤の配合量は、所望の甘みに応じて適宜設定することができるが、通常、組成物全重量に対して0.01〜5重量%である。
【0039】
湿潤剤としては、例えば、ソルビット液、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ラクチット等が挙げられる。湿潤剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。湿潤剤の配合量は、組成物全重量に対して通常5〜70重量%程度である。
【0040】
pH調整剤としては、例えば、リン酸およびその塩(リン酸ナトリウム、リン酸水素ナ
トリウムなど)、クエン酸およびその塩(ナトリウム等)、リン酸およびその塩、リンゴ酸
およびその塩、グルコン酸およびその塩、マレイン酸およびその塩、アスパラギン酸およびその塩、グルコン酸およびその塩、コハク酸およびその塩、グルクロン酸およびその塩、フマル酸およびその塩、グルタミン酸およびその塩、アジピン酸およびその塩、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウムなどを例示することができる。pH調整剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。pH調整剤の配合量は、所望のpHとなる限り特に制限されないが、組成物全体に対して、通常0.01〜5重量%程度、好ましくは0.1〜3重量%程度である。本発明の組成物のpHは、本発明の効果が奏される限り特に制限されないが、通常4〜10程度であり、好ましくは5.5〜9程度である。
【0041】
防腐剤としては、安息香酸ナトリウムなどの安息香酸塩;メチルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類を例示することができる。防腐剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。防腐剤の配合量は、組成物全体に対して、通常0.01〜3重量%程度である。
【0042】
着色剤としては、例えば、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号などの法定色素;群青、強化群青、紺青などの鉱物系色素;酸化チタンなどを例示することができる。着色剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。着色剤の配合量は、組成物全体に対して、通常0.0001〜1重量%程度である。
【0043】
その他の有効成分としては、例えば、塩化ベンゼトニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルピリジニウム等の第四級アンモニウム塩、塩酸クロルヘキシジン、酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸アレキシジン、酢酸アレキシジン、グルコン酸アレキシジン等のビグアニド系殺菌剤等のカチオン性殺菌剤;n−ラウロイルサルコンシンナトリウムなどのアニオン性殺菌剤;トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤;デキストラナーゼ、アミラーゼ、パパイン、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)などの酵素;酸化亜鉛、塩化亜鉛などの亜鉛化合物;モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウムなどのアルカリ金属モノフルオロホスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズなどのフッ化物;トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、酢酸トコフェロールなどのビタミンE誘導体、グリチルリチン塩類、グリチルレチン酸、グリセロホスフェート、クロロフィル、硝酸カリウム、塩化ナトリウム、カロペプタイド、水溶性無機リン酸化合物などが挙げられる。水溶性無機リン酸化合物としては、
一般式(2):
m+2m3m+1
[式中、Mは、NaまたはKを示し、mは2以上の整数である。]
一般式(3):
(MPO3l
[式中、Mは、NaまたはKを示し、lは3以上の整数である。]
で表される化合物が例示される。
【0044】
mは、通常2以上の整数であり、好ましくは2〜6程度の整数である。lは、通常3以上の整数であり、好ましくは3〜6程度の整数である。
【0045】
式(2)で示される化合物の具体例として、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0046】
式(3)で示される化合物の具体例としては、例えば、テトラメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
これら有効成分は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。有効成分の配合量は、所望の効果が得られる範囲内であれば特に制限されず、有効成分の種類などに応じて適宜設定することができる。有効成分の配合量は、組成物全重量に対して、通常0.001〜30重量%程度、好ましくは0.01〜20重量%程度である。
【0047】
水の配合量は、剤型などに応じて適宜設定することができるが、組成物全重量に対して、通常0〜97重量%程度、好ましくは10〜50重量%程度である。低級アルコールの配合量は剤型などに応じて適宜設定することができるが、組成物全重量に対して、通常0〜20重量%程度、好ましくは0〜10重量%程度である。高級アルコールの配合量は剤型などに応じて適宜設定することができるが、組成物全重量に対して、通常0〜50重量%程度、好ましくは0〜30重量%程度である。
【発明の効果】
【0048】
本発明の抗内毒素剤及び歯周病抑制用口腔用組成物は、歯周病の予防又は治療、エンドトキシンショックの予防又は治療に有効である。また、カチオン系界面活性剤を配合することにより、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸アミドベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、N−アシルアミノ酸塩、N−ヤシ油脂肪酸アシルL-アルギニンエチルdl−ピロリドンカルボン酸塩の抗内毒素作用が増強された、歯周病又はエンドトキシンショックの予防又は治療に有効な組成物を供給できる。さらに、オイゲノール、経皮アルデヒド、アネトール、ダバナを配合することにより、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸アミドベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタインの苦味の低減した歯周病又はエンドトキシンショックの予防又は治療に有効な組成物を供給できる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
実施例1:大腸菌LPSに対する内毒素活性抑制効果
各種被験物質を用いて内毒素活性抑制試験を行った。試験は生化学工業(株)製のトキシカラー LS−6セットを使用し、マイクロプレートを用いたカイネティック比色法に
より行った。エンドトキシンがカブトガニの血球抽出成分LAL(Limulus Amebocyte Lysate)を活性化し、ゲル化を引き起こす酵素反応に基づいており、酵素による合成基質の加水分解により生ずる分解物を発色により測定する方法である。
【0051】
大腸菌LPS(生化学工業(株)製)をLPSフリーの水に溶解し、78.6pg/mlのLPS希釈液を調製した。被験物質をLPSフリーの水で希釈し、100μg/mlの被験物質希釈液を調製した。マイクロプレートの各ウェルにLPS希釈液を25μLと被験物質希釈液25μLを分注し、試験溶液とした。なお、これらに加え、ウェルにLPS希釈液25μlとLPSフリーの蒸留水25μlを分注し、対照とした。次いで、各ウェ
ルにLAL試薬を50μLずつ分注し、1分間撹拌し、撹拌液の初期吸光度(405nm)を測定し、37℃で30分間反応させた後、再度反応液の吸光度(405nm)を測定し、吸光度の経時変化率(mAbs/min)を求めた。阻害率は次式に基づいて算出した。阻害率を表1に示す。
【0052】
【数1】

【0053】
【表1】

【0054】
なお、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインは炭素数の異なる脂肪酸アミドプロピルベタイン(カプリル酸アミドプロピルベタイン、カプリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルベタイン、ヘキサデカン酸アミドプロピルベタイン)の混合物を主成分とする界面活性剤である。
【0055】
実施例2:ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインの歯周病菌及び大腸菌LPSに対する内毒素活性抑制効果
大腸菌LPSに加えて歯周病菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス381菌)LPSを用い、被験物質としてヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインを用いた以外は実施例1と同様に試験して、歯周病菌及び大腸菌内毒素活性抑制試験を行った。測定結果を表2に示す。ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインは歯周病菌LPS活性を顕著に阻害した。
【0056】
なお、前記歯周病菌LPSは以下の方法で製造した。
【0057】
ポルフィロモナス・ジンジバリス381株をトリプチケース・ソイ・ブロス(酵母抽出物(1mg/mL)、ビタミンK1(1mg/L)、ヘミン(5mg/L)を添加)培地20mLに植菌し、37℃で24時間嫌気培養した。前出のトリプチケース・ソイ・ブロス培地2Lを用意し、嫌気培養した培養液をこの2Lの培地に添加し、37℃で48時間
嫌気培養した。培養液を遠心分離(7000rpm、10分、4℃)し、菌体を得た。この菌体
にLPSフリーの水を添加し、遠心分離(7000rpm、10分、4℃)し、菌体を洗浄した
。得られた菌体の湿菌体重量を秤量後、菌体10gあたり40mLのLPSフリーの水を添加して菌懸濁液とし、65〜68℃の恒温槽で加温した。加温した菌懸濁液に90%フェノールを40mL添加し、65〜68℃に加温しながら15分間激しく振とうし、氷冷下で1時間静置した。静置後遠心分離(4000rpm、15分、4℃)し、水層を取得した。
さらにフェノール層にLPSフリーの水40mLを添加し、同様の操作を2回繰り返した。集めた水層を透析膜(Speotra/Por. MWCO:6000-8000)に入れ、滅菌蒸留水に対して4
℃で一晩透析を行った。透析した水層を超遠心(45000rpm、2時間、4℃)し、沈殿を取得した。この沈殿を凍結させ、凍結乾燥を行った。得られた凍結乾燥品を歯周病菌LPSとした。
【0058】
【表2】

【0059】
実施例3:脂肪酸部炭素数の異なる脂肪酸アミドプロピルベタインの歯周病菌及び大腸菌LPSに対する内毒素活性抑制効果
被験物質としてカプリル酸アミドプロピルベタイン(脂肪酸部炭素数8)、カプリン酸アミドプロピルベタイン(脂肪酸部炭素数10)、ラウリン酸アミドプロピルベタイン(脂肪酸部炭素数12)、ミリスチン酸アミドプロピルベタイン(脂肪酸部炭素数14)、ヘキサデカン酸アミドプロピルベタイン(脂肪酸部炭素数16)を用いた以外は実施例2と同様に試験して、歯周病菌及び大腸菌内毒素活性抑制試験を行った。測定結果を表3に示す。脂肪酸部炭素数が14及び16の場合に顕著な歯周病菌LPS活性抑制効果が確認された。
【0060】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸アミドベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン及びN−ヤシ油脂肪酸アシルL-アルギニンエチルdl−ピロリドンカルボン酸塩からなる群から選択される、少なくとも1種の、ヤシ油脂肪酸アミド構造を有する界面活性剤を有効成分とする、口腔用抗歯周病菌内毒素剤。
【請求項2】
請求項1に記載の抗内毒素剤の有効量を含有する歯周病抑制用口腔用組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のカチオン系界面活性剤をさらに含有する請求項2に記載の歯周病抑制用口腔用組成物。
【請求項4】
カチオン系界面活性剤が塩化セチルピリジニウムである請求項3に記載の歯周病抑制用口腔用組成物。
【請求項5】
オイゲノール、桂皮アルデヒド、アネトール及びダバナからなる群から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含有する請求項2〜4のいずれかに記載の歯周病抑制用口腔用組成物。

【公開番号】特開2011−1387(P2011−1387A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227386(P2010−227386)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【分割の表示】特願2003−341229(P2003−341229)の分割
【原出願日】平成15年9月30日(2003.9.30)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】