抗凝固薬及びその用途
【課題】迅速な血液凝固の阻害・抑制が要求される用途に特に適した新規抗凝固薬を提供すること
【解決手段】(1)黄色ブドウ球菌スーパー抗原様タンパク質10(SSL10)又はGlaドメイン結合性を示すその部分ペプチド、(2)(1)の等価ポリペプチド、或いは(3)(1)又は(2)の修飾体のいずれかを含む抗凝固薬が提供される。
【解決手段】(1)黄色ブドウ球菌スーパー抗原様タンパク質10(SSL10)又はGlaドメイン結合性を示すその部分ペプチド、(2)(1)の等価ポリペプチド、或いは(3)(1)又は(2)の修飾体のいずれかを含む抗凝固薬が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗凝固薬(血液凝固の阻害剤)に関する。
【背景技術】
【0002】
黄色ブドウ球菌スーパー抗原様タンパク質(staphylococcal superantigen-like protein: SSL)はスーパー抗原と類似の立体構造を持ちながらスーパー抗原活性を示さない、分子量25〜35kDaの黄色ブドウ球菌の分泌タンパク質である。現在、SSL1〜SSL14の14種類のSSLが存在することが知られている。SSLファミリーは強毒株において発現が認められるなど、病原性との関連が指摘されている。一部のSSLは免疫系分子に作用して免疫回避に関与していることが報告されているが、大部分のSSLの機能はいまだ明らかにされていない。
【0003】
全てのSSLの構造はスーパー抗原(TSST-1)やエンテロトキシンと同様にOB-foldとβ-Graspからなる。SSLファミリー内の分子相互のホモロジーは高くなく、各々固有の機能を持つと考えられる。これまでにSSL7がIgA及び補体C5と結合すること、SSL5及びSSL11がシアリルラクトサミン構造を認識し、接着分子PSGL-1やアナフィラトキシン受容体或いはFcα受容体など各種膜タンパク質に結合することが報告されている。本願発明者らの研究グループはSSL10がIgGのFc部位に結合し、C1qのIgGへの結合を妨害することにより古典経路を介した補体活性化を抑制すること(非特許文献1)、及びSSL5が白血球の炎症部位へのリクルートやがんの浸潤、転移に重要な役割を果たすマトリクスメタロプロティナーゼ9(MMP-9)に結合しその酵素活性を抑制すること(非特許文献2)を報告している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ito S. et al., Mol. Immuno. 2010, 47(4):932-8
【非特許文献2】Ito S. et al., Infect. Immun. 2010, 78(7):3298-305
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、播種性血管内凝固症候群の治療や血栓塞栓症の急性期などの治療など、迅速な血液凝固の阻害・抑制が要求される用途に特に適した新規抗凝固薬及びその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らはSSLファミリーの宿主側標的分子を探索する過程において、SSL10が血液凝固第II因子(プロトロンビン)に結合し、血液凝固を抑制することを見出した。検討を進めた結果、SSL10による血液凝固抑制の作用機序が明らかになるとともに、血液凝固抑制活性に重要な領域に関して有益な情報がもたらされた。
【0007】
ところで、抗凝固薬としてはワルファリンなどが繁用されているが、ワルファリンはその作用の発現がビタミンKの作用の拮抗による血液凝固因子の生合成阻害であり、作用の発現までには数日かかる。それ故、播種性血管内凝固症候群の治療など、迅速な作用の発現が必要な用途には事実上使用できない。本願発明者らの検討によって明らかになった事実によれば、SSL10はワルファリンと同じ標的分子に対し、血液凝固因子の血小板細胞膜上での集合に必要なγカルボキシグルタミン酸含有ドメイン(Glaドメイン)に対する拮抗作用を示すことから、SSL10(又はその部分ペプチド)には、投与直後から抗凝固活性を発揮することを期待できる。一方、抗凝固薬としてヘパリンも広く利用されているが、ヘパリンには投与禁忌の患者が存在する。SSL10はヘパリンとは異なる作用機序で抗凝固作用を示す。従って、ヘパリンの使用ができない場合の代替としてもSSL10(又はその部分ペプチド)は有用である。このようにSSL10は、既存の抗凝固薬にはない特性を有し、その有用性ないし価値は極めて高い。尚、SSL10は血液凝固因子のGlaドメインに結合することにより抗凝固活性を示すが、このような作用機序の抗凝固薬は現在のところ知られていない。
【0008】
以下に示す本発明は、以上の知見ないし成果に基づく。
[1]以下の(1)〜(3)のいずれかを含む、抗凝固薬:
(1)黄色ブドウ球菌スーパー抗原様タンパク質10(SSL10)又はGlaドメイン結合性を示すその部分ペプチド;
(2)(1)の等価ポリペプチド;
(3)(1)又は(2)の修飾体。
[2]前記部分ペプチドがβ−graspドメインの少なくとも一部を含む、[1]に記載の抗凝固薬。
[3]前記部分ペプチドが以下の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドからなる、[1]に記載の抗凝固薬:
(a)β−graspドメインを構成するβ6ストランド、β7ストランド、β8ストランド、α4ヘリックス、β9ストランド、β10ストランド、β11ストランド及びβ12ストランドを含むポリペプチド;
(b)β−graspドメインを構成するβ6ストランド、β7ストランド、β8ストランド、α4ヘリックス及びβ9ストランドを含むポリペプチド;
(c)β−graspドメインを構成するβ10ストランド、β11ストランド及びβ12ストランドを含むポリペプチド。
[4]前記(a)のポリペプチドが配列番号4のアミノ酸配列を含み、前記(b)のポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列を含み、前記(c)のポリペプチドが配列番号3のアミノ酸配列を含む、[3]に記載の抗凝固薬。
[5]前記部分ペプチドがOB-foldドメインを含まない、[2]に記載の抗凝固薬。
[6]播種性血管内凝固症候群の治療、又は急性期若しくは亜急性期の血栓塞栓症の治療に用いられる、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の抗凝固薬。
[7]治療対象がヘパリン禁忌の患者である、[6]に記載の抗凝固薬。
[8][1]〜[7]のいずれか一項に記載の抗凝固薬を、播種性血管内凝固症候群又は血栓塞栓症の患者に対して、治療上有効量投与する、血液凝固抑制法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ブタ血漿中のSSL10結合タンパク質の単離。ブタEDTA血漿にSSL結合セファロースビーズを加え、結合したタンパク質をSDS-PAGEにより解析している。SSL1〜11について標的タンパク質の解析を行ったが、SSL7にIgAのH鎖が結合したのと、SSL10に80Kのタンパク質が結合した以外にSSL結合タンパク質は検出されなかった。
【図2】ブタ血漿中のSSL10結合タンパク質の同定結果。ゲルより切り出した80Kのバンド中のタンパク質をトリプシン消化し、ペプチドマスフィンガープリンティングにより、フラグメントの分子量を同定することにより、タンパク質を同定している。太字の部分がペプチドマスフィンガープリンティングにおいて実際に同定されたペプチドである。プロトロンビンの全アミノ酸配列(配列番号9)の53%をカバーしている。
【図3】プロトロンビンとSSL10の結合。血漿バリウム塩沈殿画分(Ba2+ppt)をサンプルとしたSDS-PAGEの結果(上)と精製ヒトプロトロンビン(PT)をサンプルとしたSDS-PAGEの結果(下)を示す。hIgG:ヒトIgG
【図4】SSL10による血液凝固の抑制。SSL10による、血漿カルシウム再添加凝固時間の延長効果を示す(上、中)。また、フィブリノーゲンゲル化に対するSSL10の作用を示す(下)。(−):凝固していない、+:完全に凝固している(ゲル化)、±:部分的に凝固している(粘度が上昇)。
【図5】トロンビンのプロテアーゼ活性に対するSSL10の効果。ウシαトロンビンによる基質の分解量の時間変化(A)とクエン酸血漿にカルシウムを添加した血漿による基質の分解量の時間変化(B)を示す。
【図6】SSL10によるプロトロンビン活性化の抑制。クエン酸血漿にカルシウムを一定時間添加した血漿による基質の分解量の時間変化を示す。SSL10によってトロンビン活性化が抑制されることがわかる(A)。また、その効果は濃度依存的である(B)。
【図7】Xa及びXa消化プロトロンビンのSSL10への結合。B:SSL10結合画分、UB:非結合画分。
【図8】第X因子と第II因子の構造の比較。
【図9】GlaドメインのSSL10結合性への関与。αキモトリプシンで限定分解することによりGlaドメインを欠失させたプロトロンビンについてのプルダウンアッセイの結果(上)と同様にGlaドメインを欠失させた第Xa因子についてのプルダウンアッセイの結果(下)を示す。B:SSL10結合画分、UB:非結合画分。
【図10】SSL10とプロトロンビンの結合におけるγカルボキシグルタミン酸の重要性。無処理マウスの血漿とワルファリン投与マウスの血漿について、SSL10結合ビーズとプロトロンビンの結合性を調べた(上)。
【図11】プロトロンビン-SSL10結合に対するCaイオンの影響。EDTAの存在下及び非存在下でのSSL10ビーズへのプロトロンビンの結合性(上)と、結合性に対するCa濃度の影響(下)を示す。B:SSL10結合画分、UB:非結合画分。
【図12】抗凝固活性を検討した各SSL10欠失変異体の構造。
【図13】SSL10欠失変異体の抗凝固活性の比較。Δ1〜Δ3、Δ7にはHisタグが付加されている。Δ5にはGSTが付加されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の局面は抗凝固薬に関する。本発明の抗凝固薬は、既知の抗凝固薬と同様に、抗凝固活性が要求される各種用途に適用可能である。尚、慣例に従い、本明細書では、血液凝固を抑制ないし阻害する活性のことを抗凝固活性という。
【0011】
用途の例として、播種性血管内凝固症候群(汎発性血管内血液凝固症候群)の治療、血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、四肢動脈血栓塞栓症、手術中・術後の血栓塞栓症等)の予防・治療、血管カテーテル挿入時の血液凝固の防止、人工心肺の血液凝固の防止、体外循環装置使用時の血液凝固の防止、血液透析の際の血液凝固の防止、輸血の血液凝固の防止、血液検査の際の血液凝固の防止を挙げることができる。但し、本発明の抗凝固薬では投与後速やかに抗凝固活性を発揮することが期待できることから、速効性が要求される又は望まれる用途、例えば播種性血管内凝固症候群(汎発性血管内血液凝固症候群)の治療、急性期又は亜急性期の血栓塞栓症等において特に有効である。また、ヘパリン禁忌の患者に対する治療薬としても本発明の有効性・有用性は高い。
【0012】
典型的には、本発明の抗凝固薬は有効成分としてSSL10又はその部分ペプチドを含む。SSL10はSSLファミリーの一つである。上述の通り、SSL10には補体活性化抑制やMMP-9の活性抑制等の作用が報告されている。SSL10の全長アミノ酸配列を配列表の配列番号1に示す。ここでの「部分ペプチド」の長さは、Glaドメイン結合性を示す限り、特に限定されない。また、「Glaドメイン」とは、γカルボキシグルタミン酸残基に富むCa2+結合ドメインであり、第X因子や第II因子(プロトロンビン)のN末端領域に存在する。ヒト第X因子の全長及びGlaドメインのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号5と配列番号6に示す。同様に、ヒト第II因子の全長及びGlaドメインのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号7と配列番号8に示す。SSL10の部分ペプチドがGlaドメインに結合性を示すか否かは、例えば、後述の実施例に示した実験系によって判定可能である。
【0013】
SSL10の構造は大別してOB-foldドメインとβ-graspドメインからなるが、β-graspドメイン側に抗凝固活性を認めたことから(後述の実施例を参照)、好ましくは、本発明における部分ペプチドはβ-graspドメインを含む。β-graspドメイン全長(β6ストランド、β7ストランド、β8ストランド、α4ヘリックス、β9ストランド、β10ストランド、β11ストランド、β12ストランドを含む)(配列番号4)は勿論のこと、抗凝固活性を示す限りにおいてβ-graspドメインの一部(部分β-grasp)を使用することも可能である。有効成分として採用可能な部分β-graspの例として、β6ストランド〜β9ストランドまでの領域(β6ストランド、β7ストランド、β8ストランド、α4ヘリックス、β9ストランドを含む)(配列番号2)やβ10ストランド〜β12ストランド(β10ストランド、β11ストランド、β12ストランドを含む)(配列番号3)を挙げることができる。これら二つの部分β-graspには高い抗凝固活性が確認されている(後述の実施例を参照)。
【0014】
ここで、一般に、ポリペプチドのアミノ酸配列の一部に改変を施した場合において改変後のポリペプチドが改変前のポリペプチドと同等の機能を有することがある。即ちアミノ酸配列の改変がポリペプチドの機能に対して実質的な影響を与えず、ポリペプチドの機能が改変前後において維持されることがある。そこで本発明は他の態様として、基準となるアミノ酸配列(例えば、配列番号1〜4のいずれか)と等価なアミノ酸配列からなり、抗凝固活性を有するポリペプチド(以下、「等価ポリペプチド」ともいう)を有効成分とする。尚、本明細書では、ペプチドが複数連なる分子の総称として用語「ポリペプチド」を使用する。従って、ポリペプチドを構成するアミノ酸の数に特段の制約はなく、また、「タンパク質」も「ポリペプチド」に含まれる。
【0015】
ここでの「等価なアミノ酸配列」とは、基準となるアミノ酸配列と一部で相違するが、当該相違がポリペプチドの機能(ここでは抗凝固活性)に実質的な影響を与えていないアミノ酸配列のことをいう。抗凝固活性の程度は特に限定されないが、基準のポリペプチド(例えば、配列番号1〜4のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド)と同程度又はそれよりも高いことが好ましい。
【0016】
「アミノ酸配列の一部の相違」とは、典型的には、アミノ酸配列を構成する1〜数個(上限は例えば3個、5個、7個、10個)のアミノ酸の欠失、置換、若しくは1〜数個(上限は例えば3個、5個、7個、10個)のアミノ酸の付加、挿入、又はこれらの組合せによりアミノ酸配列に変異(変化)が生じていることをいう。ここでのアミノ酸配列の相違は抗凝固活性の大幅な低下がない限り許容される。この条件を満たす限りアミノ酸配列が相違する位置は特に限定されず、また複数の位置で相違が生じていてもよい。ここでの複数とは例えば全アミノ酸の約30%未満に相当する数であり、好ましくは約20%未満に相当する数であり、さらに好ましくは約10%未満に相当する数であり、より一層好ましくは約5%未満に相当する数であり、最も好ましくは約1%未満に相当する数である。即ち等価ポリペプチドは、基準となるアミノ酸配列(例えば配列番号1〜4のいずれかのアミノ酸配列)と例えば約70%以上、好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、より一層好ましくは約95%以上、最も好ましくは約99%以上の同一性を有する。
【0017】
好ましくは、抗凝固活性に必須でないアミノ酸残基において保存的アミノ酸置換を生じさせることによって等価ポリペプチドを得る。ここでの「保存的アミノ酸置換」とは、あるアミノ酸残基を、同様の性質の側鎖を有するアミノ酸残基に置換することをいう。アミノ酸残基はその側鎖によって塩基性側鎖(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)のように、いくつかのファミリーに分類されている。保存的アミノ酸置換は好ましくは、同一のファミリー内のアミノ酸残基間の置換である。
【0018】
一方、SSL10又はその部分ペプチドの修飾体、或いは上記等価ポリペプチド(即ちSSL10の等価物又はSSLの部分ペプチドの等価物)の修飾体を本発明の抗凝固薬の有効成分として用いることも可能である。ここでの「修飾体」とは、基本構造に対してその一部(複数箇所であってもよい)を他の原子団等で置換すること、或いは他の分子を付加すること等の修飾を施すことによって、少なくとも一部において基本構造と相違する構造の化合物をいう。当業者であれば、周知ないし慣用の手段を用いて上記のポリペプチドを基本とした置換体などの修飾体をデザインすることができる。また、かかるデザインに基づき、周知ないし慣用の手段を用いて目的の修飾体を調製し、その性質や作用を調べることも当業者には容易と考えられる。
【0019】
本発明における修飾体の代表例としては、各アミノ酸残基において側鎖の一部(原子又は原子団)が他の原子又は原子団で置換されたペプチド誘導体を挙げることができる。このようなペプチド誘導体は、最終生成物として当該ペプチド誘導体が得られるように設計された任意の製造工程によって調製することができる。したがって、目的のペプチド誘導体が、あるペプチドにおいて一部(例えば側鎖の一部である原子団)が特定の原子団によって見かけ上置換されたものである場合には、当該目的のペプチド誘導体はこの見かけ上基本となるペプチドを出発材料として当該特定の原子団を用いた置換反応によって製造されたものであっても、或いは例えば他の構造のペプチドを出発材料として適当な置換反応等(場合によって複数工程であってもよい)によって製造されたものであってもよい。ここでの他の原子又は原子団としてヒドロキシル基、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等)、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等)、アシル基(ホルミル基、アセチル基、マロニル基、ベンゾイル基等)等を例示することができる。
【0020】
尚、本発明における修飾体には、構成アミノ酸残基内の官能基が適当な保護基によって保護されているものも含まれる。このような目的に使用される保護基としてアシル基、アルキル基、単糖、オリゴ糖、多糖等を用いることができる。このような保護基は、保護基を結合させるペプチド部位や使用する保護基の種類などに応じてアミド結合、エステル結合、ウレタン結合、尿素結合等によって連結される。
【0021】
アミノ酸を付加(連結)することによって本発明の修飾体を形成することも可能である。但し、溶解性や生体内利用率の面からアミノ酸の付加数はあまり多くないことが好ましいと考えられる。具体的には付加するアミノ酸の数としては例えば1〜9個、好ましくは1〜5個、更に好ましくは1〜3個、最も好ましくは1個又は2個である。尚、基本となるペプチド(又は修飾ペプチド)の両側においてアミノ酸の付加が行なわれていてもよい。
【0022】
本発明における修飾体の更なる例として、糖鎖の付加による修飾が施されているものを挙げることができる。また、N末端又はC末端が他の原子等で置換されることによってアルキルアミン、アルキルアミド、スルフィニル、スルフォニルアミド、ハライド、アミド、アミノアルコール、エステル、アミノアルデヒド等に分類される各種ペプチド誘導体も本発明における修飾体の一例である。
【0023】
本発明の有効成分(ポリペプチド、修飾体)の製造には、公知のペプチド合成法(例えば固相合成法、液相合成法)を利用すればよい。但し、本発明の有効成分が天然に存在する場合には、抽出、精製などの操作によってそれを調製することもできる。本発明のポリペプチド等の取得源としては例えば、動物細胞(ヒトを含む)、植物細胞、体液(血液、尿等)等が考えられる。
【0024】
本発明の有効成分(ポリペプチド、修飾体)の製造に遺伝子工学的手法を利用してもよい。即ち、本発明におけるポリペプチドをコードする核酸を適当な宿主細胞に導入し、形質転換体内で発現されたポリペプチドを回収することにより本発明におけるポリペプチドを調製することもできる。回収したポリペプチドは必要に応じて精製される。回収したポリペプチドを適当な置換反応に供し、所望の修飾体に変換することもできる。尚、質的均一性及び純度の点からは、本発明におけるポリペプチドを遺伝子工学的手法によって調製することが好ましい。
【0025】
本発明の抗凝固薬の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、塩酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。
【0026】
製剤化する場合の剤形も特に限定されないが、好ましくは注射剤とする。本発明の抗凝固薬には、期待される治療効果(又は予防効果)を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分が含有される。有効成分量は一般に剤形によって異なるが、所望の投与量を達成できるように有効成分量を例えば約0.001重量%〜約95重量%の範囲内で設定する。
【0027】
本発明の抗凝固薬はその用途や剤形に応じた投与経路で対象に投与される。例えば注射剤とした場合には、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射等によって投与することができる。各投与経路は互いに排他的なものではなく、任意に選択される二つ以上を併用することもできる。
【0028】
ここでの「対象」は特に限定されず、ヒト及びヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ニワトリ、ウズラ等である)を含む。好ましい一態様では、本発明の抗凝固薬はヒトに対して適用される。
【0029】
本発明の抗凝固薬の投与量(使用量)は、期待される予防・治療効果が得られるように設定される。治療上有効な投与量の設定においては一般に患者の症状、年齢、性別、及び体重などが考慮される。当業者であればこれらの事項を考慮して適当な投与量及び投与スケジュールを設定することが可能である。
【0030】
本発明の抗凝固薬の使用にあたって他の抗凝固薬を併用してもよい。例えば、ワルファリン製剤等、効果が出現するまでに要する時間が異なる抗凝固薬を併用すれば特に作用時間の点でメリットが得られる。即ち、本発明の抗凝固薬による迅速な血液凝固効果に加えて、他の抗凝固薬による持続的ないし長期的な血液凝固効果を得ることが可能になる。一方、ヘパリン等、作用機序ないし作用点が大きく相違する抗凝固薬を併用することは相加的又は相乗的効果の発揮に有効である。
【0031】
本発明の抗凝固薬は血液透析や人工心肺、その他の体外循環装置使用時の血液凝固の防止や、血管カテーテル挿入時等の血液凝固の防止、更には、輸血や血液検査の際の血液凝固の防止にも適用可能である。
【0032】
以上の記述から明らかな通り本出願は、播種性血管内凝固症候群(汎発性血管内血液凝固症候群)や血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、四肢動脈血栓塞栓症、手術中・術後の血栓塞栓症等)の患者に対して本発明の抗凝固薬を治療上有効量投与することを特徴とする、当該疾患の治療法も提供する。また、本発明の抗凝固薬を用いることを特徴とする血液凝固防止法(例えば、血管カテーテル挿入時の血液凝固の防止、人工心肺の血液凝固の防止、体外循環装置使用時の血液凝固の防止、血液透析の際の血液凝固の防止、輸血の血液凝固の防止、血液検査の際の血液凝固の防止)も提供する。
【実施例】
【0033】
SSL10の宿主側標的分子の同定やSSL10の機能の解明を目指し、以下の実験を行った。
【0034】
1.ブタ血漿中SSL10結合タンパク質の単離
組換えSSL10を架橋したビーズを用いて、ブタ血漿よりSSL10に特異的に結合するタンパク質の単離を試みた。その結果、約80kDaのタンパク質が特異的に単離された(図1)。ペプチドマスフィンガープリンティングにより、このタンパク質は血液凝固第II因子、プロトロンビン(配列番号9)であることが明らかになった(図2)。
【0035】
2.プロトロンビンとSSL10の結合の確認
血漿バリウム塩沈殿画分(Ba2+ppt :γカルボキシグルタミン酸をもつ血液凝固因子であるプロトロンビン、X、IX、VIIを含む)および精製ヒトプロトロンビン(PT)とSSL7、SSL10結合セファロースビーズを混和し、結合画分(B)、非結合画分(UB)をわけ、SDS-PAGEを行うことにより、SSL10とプロトロンビンの結合特異性を確認した。プロトロンビンはSSL7ビーズとは結合せず、SSL10ビーズのみに結合した(図3)。本発明者らの研究グループは、SSL10がヒトIgGと結合することを報告しているが、ヒトIgGとプロトロンビンを共存させてプルダウンアッセイを行った場合、プロトロンビンが優先的に結合したことからSSL10との結合親和性はプロトロンビンの方がIgGよりも高いと考えられる(Ba沈殿画分を用いた場合、プロトロンビン以外のタンパク質も結合している)。
【0036】
3.SSL10による血液凝固の抑制
SSL10がプロトロンビンに結合するのみならず、血液凝固をも抑制するか否かを確認するため、クエン酸加血漿にカルシウムを添加した際の凝固に対するSSL10の効果を調べた。まず、ガラス小試験管内にて、マウスクエン酸血漿100μLに組換えSSL10またはSSL7を20μg加え、室温で5分、37℃で1分静置した後、100μLの25mM CaCl2を加え、15秒ごとに凝固の有無を観察した。SSL10の存在によりクエン酸血漿のカルシウム添加による凝固が抑制された(図4上)。
【0037】
一方、ガラス小試験管内にて、マウスクエン酸血漿100μLに組換えSSL10またはSSL7を20μg加え、室温で5分、37℃で1分静置した後、100μLの25mM CaCl2を加え、凝固までの時間を計測した。SSL10の存在により血漿カルシウム再加凝固時間の延長(50秒から110秒)が認められた(図4中)。血漿中のプロトロンビン濃度は100μg /mlであるので、その2倍量のSSL10の存在によってカルシウム再加凝固時間が2倍以上に延長している。
【0038】
更なる実験として、1%ヒトフィブリノーゲン100μLに組換えSSL10 10μg、ウシαトロンビン(活性型)0.2mU(0.1μg)を加え37℃でインキュベートした際の、凝固までの時間を計測した。ウシαトロンビンによるフィブリノーゲンのゲル化はトロンビンの100倍量のSSL10の存在下でも抑制されなかった(図4下)。
【0039】
以上の結果より、SSL10は活性型トロンビンの酵素活性を抑制することなく血液凝固を抑制する可能性が示された。
【0040】
4.トロンビンのプロテアーゼ活性に対するSSL10の効果
トロンビンの発色基質(H-Sar-Pro-Arg-pNA)を用いて、トロンビンのプロテアーゼ活性に対する、SSL10の効果を検討した。基質ペプチド20 nmole/200μL、25℃、1分ごとに415nmの吸光度(遊離したp-ニトロアニリンの吸収)を測定した。ウシαトロンビンによる基質の分解はSSL10(トロンビンの1000倍量)の存在下でも抑制されなかった(図5A)。クエン酸血漿にカルシウムを添加した血漿(活性化トロンビンを含む)による基質の分解もSSL10の存在によって影響を受けなかった(図5B)。以上の結果より、SSL10はプロトロンビンに結合するが、トロンビンのプロテアーゼ活性を抑えることなく血液凝固を抑制することが示された。
【0041】
5.SSL10によるプロトロンビン活性化の抑制
SSL10がトロンビンの活性化に影響を及ぼすか調べるため、SSL10存在下でマウスクエン酸血漿にカルシウムを加えた際に生じるトロンビン活性を経時的に測定した。血漿に25mMCaCl2添加後、一定時間インキュベートした後、EDTAを加えて活性化を停止した試料中のトロンビン活性を前述の発色基質の切断により測定した。SSL10 20μgの存在により、カルシウム再添加による、血漿中のプロトロンビン活性化が抑制された(図6A。活性化90秒においてSSL10添加血漿中のトロンビン活性は1/6である)。また、SSL10の濃度依存的に血漿中のトロンビン活性の上昇が抑制された(図6B。活性化時間90秒)。SSL7はトロンビン活性の上昇を抑制しなかった。
【0042】
6.Xa及びXa消化プロトロンビンのSSL10への結合
プロトロンビンのどの部分がSSL10と結合するのかを検討するため、プロトロンビンをXaで消化し、フラグメント1+2(GlaドメインおよびKringle1、2を含む)とαトロンビンに分解したものを用い、SSL10ビーズを用いたプルダウンアッセイを行った。活性型のαトロンビンではなく、フラグメント1+2の部分がSSL10ビーズ結合画分(B)に検出された(図7)。またプロトロンビンを活性化する酵素XaもSSL10に結合することが明らかになった(図7)。
【0043】
7.GlaドメインのSSL10結合性への関与
プロトロンビンのフラグメント1+2部分と第X因子に共通している構造としてγカルボキシグルタミン酸を含むGlaドメインがある(図8)。GlaドメインのSSL10結合への関与を検討するため、プロトロンビンをキモトリプシンで消化し、SSL10ビーズを用いてプルダウンアッセイを行った。αキモトリプシン消化によって生じたGlaドメイン欠失プロトロンビン及びGlaドメイン欠失Xaは、いずれもSSL10ビーズへの結合性が消失した(図9)。
【0044】
8.SSL10とプロトロンビンの結合におけるγカルボキシグルタミン酸の重要性
SSL10とプロトロンビンの結合に対するプロトロンビン上のγカルボキシグルタミン酸の重要性を検討するため、ワルファリンを経口投与したマウス(給水ビンに1日目に7.5mg/L、2〜5日目に2.5mg/Lのワルファリンを添加した)、の血漿中のプロトロンビンがSSL10結合ビーズに結合するか否かを検討した。無処理マウス血漿中のプロトロンビンはSSL10結合ビーズと共沈したが、ワルファリン投与マウス血漿中のプロトロンビンはSSL10ビーズとの共沈が著しく減弱した(図10)。以上よりSSL10はプロトロンビン上のγカルボキシグルタミン酸を認識していることが示された。
【0045】
9.プロトロンビン-SSL10結合に対するCaイオンの影響
Glaドメインはカルシウムに結合し、プロトロンビン、Xaのリン脂質への結合に重要であることから、プロトロンビンのSSL10結合のカルシウム依存性についても検討した。SSL10ビーズへのプロトロンビンの結合はEDTAの存在によっては影響を受けなかったが、10 mM以上の濃度のCaイオンによって妨害された(図11)。生理的なCaイオン濃度(1.25 mM)では相互作用に対する影響はほとんど認められなかった。
【0046】
10.APTT法によるSSLの抗凝固活性の測定およびSSL10の血液凝固に関与するドメインの決定
臨床検査等で血液凝固の指標として用いられているAPTT法によるSSL10の抗凝固活性の検討を行った。またSSL10の欠失変異体を作成し(図12)、SSL10の血液凝固に関与するドメインの決定を行った。上記3.に示した方法で各欠失変異体について凝固時間を測定し、比較した。図13の表に示すように、SSL10は用量依存的に抗凝固活性を示した。また、OB-foldからなるΔ1に抗凝固活性は認められない。対照的にβ−graspの一部からなるΔ2(β6ストランド、β7ストランド、β8ストランド、α4ヘリックス、β9ストランドを含む)及びΔ3(β10ストランド、β11ストランド、β12ストランドを含む)には抗凝固活性が存在する。β−graspの全長を含むΔ5(Δ2+Δ3。β6ストランド、β7ストランド、β8ストランド、α4ヘリックス、β9ストランド、β10ストランド、β11ストランド、β12ストランドを含む)には用量依存的な抗凝固活性を認めた。Δ6、Δ7には抗凝固活性は認められない。尚、Δ2、Δ3及びΔ5のアミノ酸配列(タグ部分を除いた配列)を配列番号2(Δ2)、配列番号3(Δ3)及び配列番号4(Δ5)に示す。
【0047】
Δ2及びΔ3はSSL10全長に比べ活性は劣るものの、比較的短い(69A.A.と36A.A.)ことから、抗凝固薬としての有用性はむしろ高いといえる。Δ2及びΔ3をリード化合物とした医薬の開発も期待される。
【0048】
以上のように、SSL10及びその部分ペプチドがGlaドメインへの結合を介して抗血液凝固活性を示すことが判明した。SSL10及びその部分ペプチドは多段階で血液凝固カスケードを抑制し得る。このような作用機序の抗凝固薬は過去に報告がない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の抗凝固薬は、播種性血管内凝固症候群(汎発性血管内血液凝固症候群)の治療、血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、四肢動脈血栓塞栓症、手術中・術後の血栓塞栓症等)の予防・治療、血管カテーテル挿入時の血液凝固の防止、人工心肺の血液凝固の防止、体外循環装置使用時の血液凝固の防止、血液透析の際の血液凝固の防止、輸血の血液凝固の防止、血液検査の際の血液凝固の防止など、様々な用途に適用可能である。本発明の抗凝固薬は、既存の抗凝固薬とは異なる作用機序で抗凝固作用を発揮するものであり、迅速な作用の発現を期待できる。従って、既存の抗凝固薬が使用できない場合(例えばヘパリン禁忌の患者に対する治療)や、速効性が要求される場合に特に有効である。また、本発明の抗凝固薬の有効成分であるSSL10又はその部分ペプチドなどは、抗凝固薬の開発におけるリード化合物としても有用である。
【0050】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【技術分野】
【0001】
本発明は抗凝固薬(血液凝固の阻害剤)に関する。
【背景技術】
【0002】
黄色ブドウ球菌スーパー抗原様タンパク質(staphylococcal superantigen-like protein: SSL)はスーパー抗原と類似の立体構造を持ちながらスーパー抗原活性を示さない、分子量25〜35kDaの黄色ブドウ球菌の分泌タンパク質である。現在、SSL1〜SSL14の14種類のSSLが存在することが知られている。SSLファミリーは強毒株において発現が認められるなど、病原性との関連が指摘されている。一部のSSLは免疫系分子に作用して免疫回避に関与していることが報告されているが、大部分のSSLの機能はいまだ明らかにされていない。
【0003】
全てのSSLの構造はスーパー抗原(TSST-1)やエンテロトキシンと同様にOB-foldとβ-Graspからなる。SSLファミリー内の分子相互のホモロジーは高くなく、各々固有の機能を持つと考えられる。これまでにSSL7がIgA及び補体C5と結合すること、SSL5及びSSL11がシアリルラクトサミン構造を認識し、接着分子PSGL-1やアナフィラトキシン受容体或いはFcα受容体など各種膜タンパク質に結合することが報告されている。本願発明者らの研究グループはSSL10がIgGのFc部位に結合し、C1qのIgGへの結合を妨害することにより古典経路を介した補体活性化を抑制すること(非特許文献1)、及びSSL5が白血球の炎症部位へのリクルートやがんの浸潤、転移に重要な役割を果たすマトリクスメタロプロティナーゼ9(MMP-9)に結合しその酵素活性を抑制すること(非特許文献2)を報告している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ito S. et al., Mol. Immuno. 2010, 47(4):932-8
【非特許文献2】Ito S. et al., Infect. Immun. 2010, 78(7):3298-305
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、播種性血管内凝固症候群の治療や血栓塞栓症の急性期などの治療など、迅速な血液凝固の阻害・抑制が要求される用途に特に適した新規抗凝固薬及びその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らはSSLファミリーの宿主側標的分子を探索する過程において、SSL10が血液凝固第II因子(プロトロンビン)に結合し、血液凝固を抑制することを見出した。検討を進めた結果、SSL10による血液凝固抑制の作用機序が明らかになるとともに、血液凝固抑制活性に重要な領域に関して有益な情報がもたらされた。
【0007】
ところで、抗凝固薬としてはワルファリンなどが繁用されているが、ワルファリンはその作用の発現がビタミンKの作用の拮抗による血液凝固因子の生合成阻害であり、作用の発現までには数日かかる。それ故、播種性血管内凝固症候群の治療など、迅速な作用の発現が必要な用途には事実上使用できない。本願発明者らの検討によって明らかになった事実によれば、SSL10はワルファリンと同じ標的分子に対し、血液凝固因子の血小板細胞膜上での集合に必要なγカルボキシグルタミン酸含有ドメイン(Glaドメイン)に対する拮抗作用を示すことから、SSL10(又はその部分ペプチド)には、投与直後から抗凝固活性を発揮することを期待できる。一方、抗凝固薬としてヘパリンも広く利用されているが、ヘパリンには投与禁忌の患者が存在する。SSL10はヘパリンとは異なる作用機序で抗凝固作用を示す。従って、ヘパリンの使用ができない場合の代替としてもSSL10(又はその部分ペプチド)は有用である。このようにSSL10は、既存の抗凝固薬にはない特性を有し、その有用性ないし価値は極めて高い。尚、SSL10は血液凝固因子のGlaドメインに結合することにより抗凝固活性を示すが、このような作用機序の抗凝固薬は現在のところ知られていない。
【0008】
以下に示す本発明は、以上の知見ないし成果に基づく。
[1]以下の(1)〜(3)のいずれかを含む、抗凝固薬:
(1)黄色ブドウ球菌スーパー抗原様タンパク質10(SSL10)又はGlaドメイン結合性を示すその部分ペプチド;
(2)(1)の等価ポリペプチド;
(3)(1)又は(2)の修飾体。
[2]前記部分ペプチドがβ−graspドメインの少なくとも一部を含む、[1]に記載の抗凝固薬。
[3]前記部分ペプチドが以下の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドからなる、[1]に記載の抗凝固薬:
(a)β−graspドメインを構成するβ6ストランド、β7ストランド、β8ストランド、α4ヘリックス、β9ストランド、β10ストランド、β11ストランド及びβ12ストランドを含むポリペプチド;
(b)β−graspドメインを構成するβ6ストランド、β7ストランド、β8ストランド、α4ヘリックス及びβ9ストランドを含むポリペプチド;
(c)β−graspドメインを構成するβ10ストランド、β11ストランド及びβ12ストランドを含むポリペプチド。
[4]前記(a)のポリペプチドが配列番号4のアミノ酸配列を含み、前記(b)のポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列を含み、前記(c)のポリペプチドが配列番号3のアミノ酸配列を含む、[3]に記載の抗凝固薬。
[5]前記部分ペプチドがOB-foldドメインを含まない、[2]に記載の抗凝固薬。
[6]播種性血管内凝固症候群の治療、又は急性期若しくは亜急性期の血栓塞栓症の治療に用いられる、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の抗凝固薬。
[7]治療対象がヘパリン禁忌の患者である、[6]に記載の抗凝固薬。
[8][1]〜[7]のいずれか一項に記載の抗凝固薬を、播種性血管内凝固症候群又は血栓塞栓症の患者に対して、治療上有効量投与する、血液凝固抑制法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ブタ血漿中のSSL10結合タンパク質の単離。ブタEDTA血漿にSSL結合セファロースビーズを加え、結合したタンパク質をSDS-PAGEにより解析している。SSL1〜11について標的タンパク質の解析を行ったが、SSL7にIgAのH鎖が結合したのと、SSL10に80Kのタンパク質が結合した以外にSSL結合タンパク質は検出されなかった。
【図2】ブタ血漿中のSSL10結合タンパク質の同定結果。ゲルより切り出した80Kのバンド中のタンパク質をトリプシン消化し、ペプチドマスフィンガープリンティングにより、フラグメントの分子量を同定することにより、タンパク質を同定している。太字の部分がペプチドマスフィンガープリンティングにおいて実際に同定されたペプチドである。プロトロンビンの全アミノ酸配列(配列番号9)の53%をカバーしている。
【図3】プロトロンビンとSSL10の結合。血漿バリウム塩沈殿画分(Ba2+ppt)をサンプルとしたSDS-PAGEの結果(上)と精製ヒトプロトロンビン(PT)をサンプルとしたSDS-PAGEの結果(下)を示す。hIgG:ヒトIgG
【図4】SSL10による血液凝固の抑制。SSL10による、血漿カルシウム再添加凝固時間の延長効果を示す(上、中)。また、フィブリノーゲンゲル化に対するSSL10の作用を示す(下)。(−):凝固していない、+:完全に凝固している(ゲル化)、±:部分的に凝固している(粘度が上昇)。
【図5】トロンビンのプロテアーゼ活性に対するSSL10の効果。ウシαトロンビンによる基質の分解量の時間変化(A)とクエン酸血漿にカルシウムを添加した血漿による基質の分解量の時間変化(B)を示す。
【図6】SSL10によるプロトロンビン活性化の抑制。クエン酸血漿にカルシウムを一定時間添加した血漿による基質の分解量の時間変化を示す。SSL10によってトロンビン活性化が抑制されることがわかる(A)。また、その効果は濃度依存的である(B)。
【図7】Xa及びXa消化プロトロンビンのSSL10への結合。B:SSL10結合画分、UB:非結合画分。
【図8】第X因子と第II因子の構造の比較。
【図9】GlaドメインのSSL10結合性への関与。αキモトリプシンで限定分解することによりGlaドメインを欠失させたプロトロンビンについてのプルダウンアッセイの結果(上)と同様にGlaドメインを欠失させた第Xa因子についてのプルダウンアッセイの結果(下)を示す。B:SSL10結合画分、UB:非結合画分。
【図10】SSL10とプロトロンビンの結合におけるγカルボキシグルタミン酸の重要性。無処理マウスの血漿とワルファリン投与マウスの血漿について、SSL10結合ビーズとプロトロンビンの結合性を調べた(上)。
【図11】プロトロンビン-SSL10結合に対するCaイオンの影響。EDTAの存在下及び非存在下でのSSL10ビーズへのプロトロンビンの結合性(上)と、結合性に対するCa濃度の影響(下)を示す。B:SSL10結合画分、UB:非結合画分。
【図12】抗凝固活性を検討した各SSL10欠失変異体の構造。
【図13】SSL10欠失変異体の抗凝固活性の比較。Δ1〜Δ3、Δ7にはHisタグが付加されている。Δ5にはGSTが付加されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の局面は抗凝固薬に関する。本発明の抗凝固薬は、既知の抗凝固薬と同様に、抗凝固活性が要求される各種用途に適用可能である。尚、慣例に従い、本明細書では、血液凝固を抑制ないし阻害する活性のことを抗凝固活性という。
【0011】
用途の例として、播種性血管内凝固症候群(汎発性血管内血液凝固症候群)の治療、血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、四肢動脈血栓塞栓症、手術中・術後の血栓塞栓症等)の予防・治療、血管カテーテル挿入時の血液凝固の防止、人工心肺の血液凝固の防止、体外循環装置使用時の血液凝固の防止、血液透析の際の血液凝固の防止、輸血の血液凝固の防止、血液検査の際の血液凝固の防止を挙げることができる。但し、本発明の抗凝固薬では投与後速やかに抗凝固活性を発揮することが期待できることから、速効性が要求される又は望まれる用途、例えば播種性血管内凝固症候群(汎発性血管内血液凝固症候群)の治療、急性期又は亜急性期の血栓塞栓症等において特に有効である。また、ヘパリン禁忌の患者に対する治療薬としても本発明の有効性・有用性は高い。
【0012】
典型的には、本発明の抗凝固薬は有効成分としてSSL10又はその部分ペプチドを含む。SSL10はSSLファミリーの一つである。上述の通り、SSL10には補体活性化抑制やMMP-9の活性抑制等の作用が報告されている。SSL10の全長アミノ酸配列を配列表の配列番号1に示す。ここでの「部分ペプチド」の長さは、Glaドメイン結合性を示す限り、特に限定されない。また、「Glaドメイン」とは、γカルボキシグルタミン酸残基に富むCa2+結合ドメインであり、第X因子や第II因子(プロトロンビン)のN末端領域に存在する。ヒト第X因子の全長及びGlaドメインのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号5と配列番号6に示す。同様に、ヒト第II因子の全長及びGlaドメインのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号7と配列番号8に示す。SSL10の部分ペプチドがGlaドメインに結合性を示すか否かは、例えば、後述の実施例に示した実験系によって判定可能である。
【0013】
SSL10の構造は大別してOB-foldドメインとβ-graspドメインからなるが、β-graspドメイン側に抗凝固活性を認めたことから(後述の実施例を参照)、好ましくは、本発明における部分ペプチドはβ-graspドメインを含む。β-graspドメイン全長(β6ストランド、β7ストランド、β8ストランド、α4ヘリックス、β9ストランド、β10ストランド、β11ストランド、β12ストランドを含む)(配列番号4)は勿論のこと、抗凝固活性を示す限りにおいてβ-graspドメインの一部(部分β-grasp)を使用することも可能である。有効成分として採用可能な部分β-graspの例として、β6ストランド〜β9ストランドまでの領域(β6ストランド、β7ストランド、β8ストランド、α4ヘリックス、β9ストランドを含む)(配列番号2)やβ10ストランド〜β12ストランド(β10ストランド、β11ストランド、β12ストランドを含む)(配列番号3)を挙げることができる。これら二つの部分β-graspには高い抗凝固活性が確認されている(後述の実施例を参照)。
【0014】
ここで、一般に、ポリペプチドのアミノ酸配列の一部に改変を施した場合において改変後のポリペプチドが改変前のポリペプチドと同等の機能を有することがある。即ちアミノ酸配列の改変がポリペプチドの機能に対して実質的な影響を与えず、ポリペプチドの機能が改変前後において維持されることがある。そこで本発明は他の態様として、基準となるアミノ酸配列(例えば、配列番号1〜4のいずれか)と等価なアミノ酸配列からなり、抗凝固活性を有するポリペプチド(以下、「等価ポリペプチド」ともいう)を有効成分とする。尚、本明細書では、ペプチドが複数連なる分子の総称として用語「ポリペプチド」を使用する。従って、ポリペプチドを構成するアミノ酸の数に特段の制約はなく、また、「タンパク質」も「ポリペプチド」に含まれる。
【0015】
ここでの「等価なアミノ酸配列」とは、基準となるアミノ酸配列と一部で相違するが、当該相違がポリペプチドの機能(ここでは抗凝固活性)に実質的な影響を与えていないアミノ酸配列のことをいう。抗凝固活性の程度は特に限定されないが、基準のポリペプチド(例えば、配列番号1〜4のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド)と同程度又はそれよりも高いことが好ましい。
【0016】
「アミノ酸配列の一部の相違」とは、典型的には、アミノ酸配列を構成する1〜数個(上限は例えば3個、5個、7個、10個)のアミノ酸の欠失、置換、若しくは1〜数個(上限は例えば3個、5個、7個、10個)のアミノ酸の付加、挿入、又はこれらの組合せによりアミノ酸配列に変異(変化)が生じていることをいう。ここでのアミノ酸配列の相違は抗凝固活性の大幅な低下がない限り許容される。この条件を満たす限りアミノ酸配列が相違する位置は特に限定されず、また複数の位置で相違が生じていてもよい。ここでの複数とは例えば全アミノ酸の約30%未満に相当する数であり、好ましくは約20%未満に相当する数であり、さらに好ましくは約10%未満に相当する数であり、より一層好ましくは約5%未満に相当する数であり、最も好ましくは約1%未満に相当する数である。即ち等価ポリペプチドは、基準となるアミノ酸配列(例えば配列番号1〜4のいずれかのアミノ酸配列)と例えば約70%以上、好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、より一層好ましくは約95%以上、最も好ましくは約99%以上の同一性を有する。
【0017】
好ましくは、抗凝固活性に必須でないアミノ酸残基において保存的アミノ酸置換を生じさせることによって等価ポリペプチドを得る。ここでの「保存的アミノ酸置換」とは、あるアミノ酸残基を、同様の性質の側鎖を有するアミノ酸残基に置換することをいう。アミノ酸残基はその側鎖によって塩基性側鎖(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)のように、いくつかのファミリーに分類されている。保存的アミノ酸置換は好ましくは、同一のファミリー内のアミノ酸残基間の置換である。
【0018】
一方、SSL10又はその部分ペプチドの修飾体、或いは上記等価ポリペプチド(即ちSSL10の等価物又はSSLの部分ペプチドの等価物)の修飾体を本発明の抗凝固薬の有効成分として用いることも可能である。ここでの「修飾体」とは、基本構造に対してその一部(複数箇所であってもよい)を他の原子団等で置換すること、或いは他の分子を付加すること等の修飾を施すことによって、少なくとも一部において基本構造と相違する構造の化合物をいう。当業者であれば、周知ないし慣用の手段を用いて上記のポリペプチドを基本とした置換体などの修飾体をデザインすることができる。また、かかるデザインに基づき、周知ないし慣用の手段を用いて目的の修飾体を調製し、その性質や作用を調べることも当業者には容易と考えられる。
【0019】
本発明における修飾体の代表例としては、各アミノ酸残基において側鎖の一部(原子又は原子団)が他の原子又は原子団で置換されたペプチド誘導体を挙げることができる。このようなペプチド誘導体は、最終生成物として当該ペプチド誘導体が得られるように設計された任意の製造工程によって調製することができる。したがって、目的のペプチド誘導体が、あるペプチドにおいて一部(例えば側鎖の一部である原子団)が特定の原子団によって見かけ上置換されたものである場合には、当該目的のペプチド誘導体はこの見かけ上基本となるペプチドを出発材料として当該特定の原子団を用いた置換反応によって製造されたものであっても、或いは例えば他の構造のペプチドを出発材料として適当な置換反応等(場合によって複数工程であってもよい)によって製造されたものであってもよい。ここでの他の原子又は原子団としてヒドロキシル基、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等)、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等)、アシル基(ホルミル基、アセチル基、マロニル基、ベンゾイル基等)等を例示することができる。
【0020】
尚、本発明における修飾体には、構成アミノ酸残基内の官能基が適当な保護基によって保護されているものも含まれる。このような目的に使用される保護基としてアシル基、アルキル基、単糖、オリゴ糖、多糖等を用いることができる。このような保護基は、保護基を結合させるペプチド部位や使用する保護基の種類などに応じてアミド結合、エステル結合、ウレタン結合、尿素結合等によって連結される。
【0021】
アミノ酸を付加(連結)することによって本発明の修飾体を形成することも可能である。但し、溶解性や生体内利用率の面からアミノ酸の付加数はあまり多くないことが好ましいと考えられる。具体的には付加するアミノ酸の数としては例えば1〜9個、好ましくは1〜5個、更に好ましくは1〜3個、最も好ましくは1個又は2個である。尚、基本となるペプチド(又は修飾ペプチド)の両側においてアミノ酸の付加が行なわれていてもよい。
【0022】
本発明における修飾体の更なる例として、糖鎖の付加による修飾が施されているものを挙げることができる。また、N末端又はC末端が他の原子等で置換されることによってアルキルアミン、アルキルアミド、スルフィニル、スルフォニルアミド、ハライド、アミド、アミノアルコール、エステル、アミノアルデヒド等に分類される各種ペプチド誘導体も本発明における修飾体の一例である。
【0023】
本発明の有効成分(ポリペプチド、修飾体)の製造には、公知のペプチド合成法(例えば固相合成法、液相合成法)を利用すればよい。但し、本発明の有効成分が天然に存在する場合には、抽出、精製などの操作によってそれを調製することもできる。本発明のポリペプチド等の取得源としては例えば、動物細胞(ヒトを含む)、植物細胞、体液(血液、尿等)等が考えられる。
【0024】
本発明の有効成分(ポリペプチド、修飾体)の製造に遺伝子工学的手法を利用してもよい。即ち、本発明におけるポリペプチドをコードする核酸を適当な宿主細胞に導入し、形質転換体内で発現されたポリペプチドを回収することにより本発明におけるポリペプチドを調製することもできる。回収したポリペプチドは必要に応じて精製される。回収したポリペプチドを適当な置換反応に供し、所望の修飾体に変換することもできる。尚、質的均一性及び純度の点からは、本発明におけるポリペプチドを遺伝子工学的手法によって調製することが好ましい。
【0025】
本発明の抗凝固薬の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、塩酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。
【0026】
製剤化する場合の剤形も特に限定されないが、好ましくは注射剤とする。本発明の抗凝固薬には、期待される治療効果(又は予防効果)を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分が含有される。有効成分量は一般に剤形によって異なるが、所望の投与量を達成できるように有効成分量を例えば約0.001重量%〜約95重量%の範囲内で設定する。
【0027】
本発明の抗凝固薬はその用途や剤形に応じた投与経路で対象に投与される。例えば注射剤とした場合には、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射等によって投与することができる。各投与経路は互いに排他的なものではなく、任意に選択される二つ以上を併用することもできる。
【0028】
ここでの「対象」は特に限定されず、ヒト及びヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ニワトリ、ウズラ等である)を含む。好ましい一態様では、本発明の抗凝固薬はヒトに対して適用される。
【0029】
本発明の抗凝固薬の投与量(使用量)は、期待される予防・治療効果が得られるように設定される。治療上有効な投与量の設定においては一般に患者の症状、年齢、性別、及び体重などが考慮される。当業者であればこれらの事項を考慮して適当な投与量及び投与スケジュールを設定することが可能である。
【0030】
本発明の抗凝固薬の使用にあたって他の抗凝固薬を併用してもよい。例えば、ワルファリン製剤等、効果が出現するまでに要する時間が異なる抗凝固薬を併用すれば特に作用時間の点でメリットが得られる。即ち、本発明の抗凝固薬による迅速な血液凝固効果に加えて、他の抗凝固薬による持続的ないし長期的な血液凝固効果を得ることが可能になる。一方、ヘパリン等、作用機序ないし作用点が大きく相違する抗凝固薬を併用することは相加的又は相乗的効果の発揮に有効である。
【0031】
本発明の抗凝固薬は血液透析や人工心肺、その他の体外循環装置使用時の血液凝固の防止や、血管カテーテル挿入時等の血液凝固の防止、更には、輸血や血液検査の際の血液凝固の防止にも適用可能である。
【0032】
以上の記述から明らかな通り本出願は、播種性血管内凝固症候群(汎発性血管内血液凝固症候群)や血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、四肢動脈血栓塞栓症、手術中・術後の血栓塞栓症等)の患者に対して本発明の抗凝固薬を治療上有効量投与することを特徴とする、当該疾患の治療法も提供する。また、本発明の抗凝固薬を用いることを特徴とする血液凝固防止法(例えば、血管カテーテル挿入時の血液凝固の防止、人工心肺の血液凝固の防止、体外循環装置使用時の血液凝固の防止、血液透析の際の血液凝固の防止、輸血の血液凝固の防止、血液検査の際の血液凝固の防止)も提供する。
【実施例】
【0033】
SSL10の宿主側標的分子の同定やSSL10の機能の解明を目指し、以下の実験を行った。
【0034】
1.ブタ血漿中SSL10結合タンパク質の単離
組換えSSL10を架橋したビーズを用いて、ブタ血漿よりSSL10に特異的に結合するタンパク質の単離を試みた。その結果、約80kDaのタンパク質が特異的に単離された(図1)。ペプチドマスフィンガープリンティングにより、このタンパク質は血液凝固第II因子、プロトロンビン(配列番号9)であることが明らかになった(図2)。
【0035】
2.プロトロンビンとSSL10の結合の確認
血漿バリウム塩沈殿画分(Ba2+ppt :γカルボキシグルタミン酸をもつ血液凝固因子であるプロトロンビン、X、IX、VIIを含む)および精製ヒトプロトロンビン(PT)とSSL7、SSL10結合セファロースビーズを混和し、結合画分(B)、非結合画分(UB)をわけ、SDS-PAGEを行うことにより、SSL10とプロトロンビンの結合特異性を確認した。プロトロンビンはSSL7ビーズとは結合せず、SSL10ビーズのみに結合した(図3)。本発明者らの研究グループは、SSL10がヒトIgGと結合することを報告しているが、ヒトIgGとプロトロンビンを共存させてプルダウンアッセイを行った場合、プロトロンビンが優先的に結合したことからSSL10との結合親和性はプロトロンビンの方がIgGよりも高いと考えられる(Ba沈殿画分を用いた場合、プロトロンビン以外のタンパク質も結合している)。
【0036】
3.SSL10による血液凝固の抑制
SSL10がプロトロンビンに結合するのみならず、血液凝固をも抑制するか否かを確認するため、クエン酸加血漿にカルシウムを添加した際の凝固に対するSSL10の効果を調べた。まず、ガラス小試験管内にて、マウスクエン酸血漿100μLに組換えSSL10またはSSL7を20μg加え、室温で5分、37℃で1分静置した後、100μLの25mM CaCl2を加え、15秒ごとに凝固の有無を観察した。SSL10の存在によりクエン酸血漿のカルシウム添加による凝固が抑制された(図4上)。
【0037】
一方、ガラス小試験管内にて、マウスクエン酸血漿100μLに組換えSSL10またはSSL7を20μg加え、室温で5分、37℃で1分静置した後、100μLの25mM CaCl2を加え、凝固までの時間を計測した。SSL10の存在により血漿カルシウム再加凝固時間の延長(50秒から110秒)が認められた(図4中)。血漿中のプロトロンビン濃度は100μg /mlであるので、その2倍量のSSL10の存在によってカルシウム再加凝固時間が2倍以上に延長している。
【0038】
更なる実験として、1%ヒトフィブリノーゲン100μLに組換えSSL10 10μg、ウシαトロンビン(活性型)0.2mU(0.1μg)を加え37℃でインキュベートした際の、凝固までの時間を計測した。ウシαトロンビンによるフィブリノーゲンのゲル化はトロンビンの100倍量のSSL10の存在下でも抑制されなかった(図4下)。
【0039】
以上の結果より、SSL10は活性型トロンビンの酵素活性を抑制することなく血液凝固を抑制する可能性が示された。
【0040】
4.トロンビンのプロテアーゼ活性に対するSSL10の効果
トロンビンの発色基質(H-Sar-Pro-Arg-pNA)を用いて、トロンビンのプロテアーゼ活性に対する、SSL10の効果を検討した。基質ペプチド20 nmole/200μL、25℃、1分ごとに415nmの吸光度(遊離したp-ニトロアニリンの吸収)を測定した。ウシαトロンビンによる基質の分解はSSL10(トロンビンの1000倍量)の存在下でも抑制されなかった(図5A)。クエン酸血漿にカルシウムを添加した血漿(活性化トロンビンを含む)による基質の分解もSSL10の存在によって影響を受けなかった(図5B)。以上の結果より、SSL10はプロトロンビンに結合するが、トロンビンのプロテアーゼ活性を抑えることなく血液凝固を抑制することが示された。
【0041】
5.SSL10によるプロトロンビン活性化の抑制
SSL10がトロンビンの活性化に影響を及ぼすか調べるため、SSL10存在下でマウスクエン酸血漿にカルシウムを加えた際に生じるトロンビン活性を経時的に測定した。血漿に25mMCaCl2添加後、一定時間インキュベートした後、EDTAを加えて活性化を停止した試料中のトロンビン活性を前述の発色基質の切断により測定した。SSL10 20μgの存在により、カルシウム再添加による、血漿中のプロトロンビン活性化が抑制された(図6A。活性化90秒においてSSL10添加血漿中のトロンビン活性は1/6である)。また、SSL10の濃度依存的に血漿中のトロンビン活性の上昇が抑制された(図6B。活性化時間90秒)。SSL7はトロンビン活性の上昇を抑制しなかった。
【0042】
6.Xa及びXa消化プロトロンビンのSSL10への結合
プロトロンビンのどの部分がSSL10と結合するのかを検討するため、プロトロンビンをXaで消化し、フラグメント1+2(GlaドメインおよびKringle1、2を含む)とαトロンビンに分解したものを用い、SSL10ビーズを用いたプルダウンアッセイを行った。活性型のαトロンビンではなく、フラグメント1+2の部分がSSL10ビーズ結合画分(B)に検出された(図7)。またプロトロンビンを活性化する酵素XaもSSL10に結合することが明らかになった(図7)。
【0043】
7.GlaドメインのSSL10結合性への関与
プロトロンビンのフラグメント1+2部分と第X因子に共通している構造としてγカルボキシグルタミン酸を含むGlaドメインがある(図8)。GlaドメインのSSL10結合への関与を検討するため、プロトロンビンをキモトリプシンで消化し、SSL10ビーズを用いてプルダウンアッセイを行った。αキモトリプシン消化によって生じたGlaドメイン欠失プロトロンビン及びGlaドメイン欠失Xaは、いずれもSSL10ビーズへの結合性が消失した(図9)。
【0044】
8.SSL10とプロトロンビンの結合におけるγカルボキシグルタミン酸の重要性
SSL10とプロトロンビンの結合に対するプロトロンビン上のγカルボキシグルタミン酸の重要性を検討するため、ワルファリンを経口投与したマウス(給水ビンに1日目に7.5mg/L、2〜5日目に2.5mg/Lのワルファリンを添加した)、の血漿中のプロトロンビンがSSL10結合ビーズに結合するか否かを検討した。無処理マウス血漿中のプロトロンビンはSSL10結合ビーズと共沈したが、ワルファリン投与マウス血漿中のプロトロンビンはSSL10ビーズとの共沈が著しく減弱した(図10)。以上よりSSL10はプロトロンビン上のγカルボキシグルタミン酸を認識していることが示された。
【0045】
9.プロトロンビン-SSL10結合に対するCaイオンの影響
Glaドメインはカルシウムに結合し、プロトロンビン、Xaのリン脂質への結合に重要であることから、プロトロンビンのSSL10結合のカルシウム依存性についても検討した。SSL10ビーズへのプロトロンビンの結合はEDTAの存在によっては影響を受けなかったが、10 mM以上の濃度のCaイオンによって妨害された(図11)。生理的なCaイオン濃度(1.25 mM)では相互作用に対する影響はほとんど認められなかった。
【0046】
10.APTT法によるSSLの抗凝固活性の測定およびSSL10の血液凝固に関与するドメインの決定
臨床検査等で血液凝固の指標として用いられているAPTT法によるSSL10の抗凝固活性の検討を行った。またSSL10の欠失変異体を作成し(図12)、SSL10の血液凝固に関与するドメインの決定を行った。上記3.に示した方法で各欠失変異体について凝固時間を測定し、比較した。図13の表に示すように、SSL10は用量依存的に抗凝固活性を示した。また、OB-foldからなるΔ1に抗凝固活性は認められない。対照的にβ−graspの一部からなるΔ2(β6ストランド、β7ストランド、β8ストランド、α4ヘリックス、β9ストランドを含む)及びΔ3(β10ストランド、β11ストランド、β12ストランドを含む)には抗凝固活性が存在する。β−graspの全長を含むΔ5(Δ2+Δ3。β6ストランド、β7ストランド、β8ストランド、α4ヘリックス、β9ストランド、β10ストランド、β11ストランド、β12ストランドを含む)には用量依存的な抗凝固活性を認めた。Δ6、Δ7には抗凝固活性は認められない。尚、Δ2、Δ3及びΔ5のアミノ酸配列(タグ部分を除いた配列)を配列番号2(Δ2)、配列番号3(Δ3)及び配列番号4(Δ5)に示す。
【0047】
Δ2及びΔ3はSSL10全長に比べ活性は劣るものの、比較的短い(69A.A.と36A.A.)ことから、抗凝固薬としての有用性はむしろ高いといえる。Δ2及びΔ3をリード化合物とした医薬の開発も期待される。
【0048】
以上のように、SSL10及びその部分ペプチドがGlaドメインへの結合を介して抗血液凝固活性を示すことが判明した。SSL10及びその部分ペプチドは多段階で血液凝固カスケードを抑制し得る。このような作用機序の抗凝固薬は過去に報告がない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の抗凝固薬は、播種性血管内凝固症候群(汎発性血管内血液凝固症候群)の治療、血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、四肢動脈血栓塞栓症、手術中・術後の血栓塞栓症等)の予防・治療、血管カテーテル挿入時の血液凝固の防止、人工心肺の血液凝固の防止、体外循環装置使用時の血液凝固の防止、血液透析の際の血液凝固の防止、輸血の血液凝固の防止、血液検査の際の血液凝固の防止など、様々な用途に適用可能である。本発明の抗凝固薬は、既存の抗凝固薬とは異なる作用機序で抗凝固作用を発揮するものであり、迅速な作用の発現を期待できる。従って、既存の抗凝固薬が使用できない場合(例えばヘパリン禁忌の患者に対する治療)や、速効性が要求される場合に特に有効である。また、本発明の抗凝固薬の有効成分であるSSL10又はその部分ペプチドなどは、抗凝固薬の開発におけるリード化合物としても有用である。
【0050】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)〜(3)のいずれかを含む、抗凝固薬:
(1)黄色ブドウ球菌スーパー抗原様タンパク質10(SSL10)又はGlaドメイン結合性を示すその部分ペプチド;
(2)(1)の等価ポリペプチド;
(3)(1)又は(2)の修飾体。
【請求項2】
前記部分ペプチドがβ−graspドメインの少なくとも一部を含む、請求項1に記載の抗凝固薬。
【請求項3】
前記部分ペプチドが以下の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドからなる、請求項1に記載の抗凝固薬:
(a)β−graspドメインを構成するβ6ストランド、β7ストランド、β8ストランド、α4ヘリックス、β9ストランド、β10ストランド、β11ストランド及びβ12ストランドを含むポリペプチド;
(b)β−graspドメインを構成するβ6ストランド、β7ストランド、β8ストランド、α4ヘリックス及びβ9ストランドを含むポリペプチド;
(c)β−graspドメインを構成するβ10ストランド、β11ストランド及びβ12ストランドを含むポリペプチド。
【請求項4】
前記(a)のポリペプチドが配列番号4のアミノ酸配列を含み、前記(b)のポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列を含み、前記(c)のポリペプチドが配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗凝固薬。
【請求項5】
前記部分ペプチドがOB-foldドメインを含まない、請求項2に記載の抗凝固薬。
【請求項6】
播種性血管内凝固症候群の治療、又は急性期若しくは亜急性期の血栓塞栓症の治療に用いられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗凝固薬。
【請求項7】
治療対象がヘパリン禁忌の患者である、請求項6に記載の抗凝固薬。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗凝固薬を、播種性血管内凝固症候群又は血栓塞栓症の患者に対して、治療上有効量投与する、血液凝固抑制法。
【請求項1】
以下の(1)〜(3)のいずれかを含む、抗凝固薬:
(1)黄色ブドウ球菌スーパー抗原様タンパク質10(SSL10)又はGlaドメイン結合性を示すその部分ペプチド;
(2)(1)の等価ポリペプチド;
(3)(1)又は(2)の修飾体。
【請求項2】
前記部分ペプチドがβ−graspドメインの少なくとも一部を含む、請求項1に記載の抗凝固薬。
【請求項3】
前記部分ペプチドが以下の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドからなる、請求項1に記載の抗凝固薬:
(a)β−graspドメインを構成するβ6ストランド、β7ストランド、β8ストランド、α4ヘリックス、β9ストランド、β10ストランド、β11ストランド及びβ12ストランドを含むポリペプチド;
(b)β−graspドメインを構成するβ6ストランド、β7ストランド、β8ストランド、α4ヘリックス及びβ9ストランドを含むポリペプチド;
(c)β−graspドメインを構成するβ10ストランド、β11ストランド及びβ12ストランドを含むポリペプチド。
【請求項4】
前記(a)のポリペプチドが配列番号4のアミノ酸配列を含み、前記(b)のポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列を含み、前記(c)のポリペプチドが配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗凝固薬。
【請求項5】
前記部分ペプチドがOB-foldドメインを含まない、請求項2に記載の抗凝固薬。
【請求項6】
播種性血管内凝固症候群の治療、又は急性期若しくは亜急性期の血栓塞栓症の治療に用いられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗凝固薬。
【請求項7】
治療対象がヘパリン禁忌の患者である、請求項6に記載の抗凝固薬。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗凝固薬を、播種性血管内凝固症候群又は血栓塞栓症の患者に対して、治療上有効量投与する、血液凝固抑制法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−224549(P2012−224549A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90473(P2011−90473)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(506218664)公立大学法人名古屋市立大学 (48)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(506218664)公立大学法人名古屋市立大学 (48)
【Fターム(参考)】
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