説明

抗凝血薬化合物およびその使用

本発明によれば、抗凝血薬として使用するための、式(I)の化合物[R1、R2、R3およびnは、本記述において示す意味を有する]または薬学的に許容されるその溶媒和物、塩、もしくはプロドラッグが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗凝血薬化合物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗凝血薬は、不適当な血液凝固、およびその結果として起こる障害を抑えるために与えられ、特に、深部静脈血栓症、肺塞栓症、心筋梗塞、および卒中の予防、人工、異種、同種、または自家心臓弁置換後の機械的な心臓弁機能の維持、ならびに外科手術中の血餅生成の予防において使用することができる。
【0003】
ワルファリンおよびヘパリンは、一般的に使用される抗凝血薬であり、その治療的な使用の最もよくある合併症は、出血である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】英国特許第2,314,773号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Remington The Science and Practice of Pharmacy、第19版、Mack Printing Company、ペンシルヴェニア州イーストン(1995)
【非特許文献2】Langer、Science (1990) 249、1527
【非特許文献3】Brynら、Solid-State Chemistry of Drugs、第2版、SSCI, Inc (米国ウェストラフィエット)刊、1999、ISBN 0-967-06710-3
【非特許文献4】Bundegaard, H.「Design of prodrugs」、1〜92頁、Elsevier, New York-Oxford (1985)
【非特許文献5】Ruttimannら、「Chimica」(1986) 40 (9) 290〜306
【非特許文献6】Gerorkzanら、「Chem. Hetrocyclic Compd」(英訳版) (1989) 2、269
【非特許文献7】Houben, R. J.ら(1997)、「Assay of Vitamin K-Dependent Carboxylase Activity in Hepatic and Extrahepatic Tissues」、Methods in Enzymology 282: 358〜368
【非特許文献8】Houben, R. J.、D. Jinら(1999)、「Osteocalcin binds tightly to the gamma-glutamylcarboxylase at a site distinct from that of the other known vitamin K-dependent proteins」、Biochem J 341 (Pt 2): 265〜9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今回、意外にも、ある種のナフトキノン化合物が抗凝血薬として作用し得ることがわかった。したがって、本発明は、代替抗凝血薬に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、抗凝血薬として使用するための、式(I)の化合物
【0008】
【化1】

[式中、
R1は、水素、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、-ORa、SRa、SORa、-SO2Ra、-SO2NRaRb、-NRaRb、-NRaCORb、-NRaCO2Rb、-CORa、-CO2Ra、-CONRaRb、あるいは18個までの炭素原子をそれぞれが含有する直鎖状、分枝状、もしくは環状の基、または18個までの炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子を含有するヘテロ環基を含む炭化水素基を表し、
R2は、各出現につき独立に、水素、または特に、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、-ORa、SRa、SORa、-SO2Ra、-SO2NRaRb、-NRaRb、-NRaCORb、-NRaCO2Rb、-CORa、-CO2Ra、-CONRaRb、あるいは18個までの炭素原子をそれぞれが含有する直鎖状、分枝状、もしくは環状の基、または18個までの炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子を含有するヘテロ環式の基を含む炭化水素基を表し
(たとえば、R1またはR2が、水素、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、-ORa、SRa、SORa、-SO2Ra、-SO2NRaRb、-NRaRb、-NRaCORb、-NRaCO2Rb、-CORa、-CO2Ra、-CONRaRb、あるいは18個までの炭素原子をそれぞれが含有する直鎖状、分枝状、もしくは環状の基、または18個までの炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子を含有するヘテロ環式の基を含む炭化水素基を表し)、
R3は、18個までの炭素原子をそれぞれが含有し、-CO2Ra置換基を含んでいる少なくとも1個の部分で置換されている、直鎖状、分枝状、もしくは環状の基を含む炭化水素基を表し、
RaおよびRbは、各出現につき独立に、水素、あるいは18個までの炭素原子をそれぞれが含有する直鎖状、分枝状、もしくは環状の基、または18個までの炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子を含有するヘテロ環式の基を含む炭化水素基を表し
(たとえば、RaおよびRbは、独立に、水素、あるいは18個までの炭素原子をそれぞれが含有する直鎖状、分枝状、もしくは環状の基、または18個までの炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子を含有するヘテロ環式の基を含む炭化水素基を表し)、
nは、0、または特に1、2、3もしくは4である]
または薬学的に許容されるその溶媒和物、または特に塩もしくはプロドラッグが提供される。
【0009】
本発明の一態様では、式(I)の化合物は、ビタミンK3でない。
【0010】
本発明の別の態様は、式(I)の化合物を、薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物を提供する。別の態様では、本発明は、抗凝血薬として使用するための、式(I)の化合物と、そのための薬学的に許容される担体、希釈剤、または医薬添加剤とを含む医薬組成物に関する。本発明はまた、抗凝血薬として使用する医薬の製造における、式Iの化合物、または式Iの化合物を含む医薬組成物の使用に関する。
【0011】
医薬組成物におけるような、用語「組成物」とは、活性成分と、担体を構成する不活性成分(薬学的に許容される医薬添加剤)とを含む成果物、ならびに成分のいずれか2種以上が組み合わさり、複合体形成し、もしくは集合し、または成分の1種または複数が解離し、または成分の1種または複数が他のタイプの反応もしくは相互作用を経る結果として、直接または間接的に生じる任意の成果物を包含するものとする。したがって、本発明の医薬組成物は、式Iの化合物、追加の活性成分、および薬学的に許容される医薬添加剤を混ぜて作製されたいかなる組成物も包含する。適切な医薬組成物は、たとえば、Remington The Science and Practice of Pharmacy、第19版、Mack Printing Company、ペンシルヴェニア州イーストン(1995)で見ることができる。非経口投与については、発熱物質を含まず、必要なpH、等張性、および安定性を有する、非経口的に許容される水溶液を用いることができる。適切な溶液は、当業者のよく知るところとなり、数多くの方法が文献に記載されている。薬物送達方法についての簡潔な総説は、たとえば、Langer、Science (1990) 249、1527でも見ることができる。
【0012】
本明細書における式(I)の化合物への言及は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、薬学的に許容されるすべての溶媒和物、または特に塩、プロドラッグ、もしくは互変異性体への言及を包含すると解釈される。したがって、その最も広い態様では、本発明は、抗凝血薬として使用するための、また抗凝血薬として使用する医薬の製造における、式(I)の化合物、または薬学的に許容されるその溶媒和物、または特に塩、プロドラッグ、もしくは互変異性体に関する。
【0013】
用語「薬学的に許容される塩」とは、無機塩基および有機塩基を含めた薬学的に許容される非毒性の塩基から調製された塩(たとえば、R3に置換基-CO2Raが存在する場合)、または無機酸および有機酸を含めた薬学的に許容される非毒性の酸から調製された塩(たとえば、R1またはR2のいずれかに塩基性置換基が存在する場合)を指す。
【0014】
無機塩基から導かれる塩として、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが挙げられる。薬学的に許容される非毒性有機塩基から導かれる塩として、第一級、第二級、および第三級アミン、自然発生する置換アミンを含めた置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂、たとえば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、イソプロピルアミン、リシン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンなどの塩が挙げられる。
【0015】
酸から導かれる塩として、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸などの塩が挙げられる。
【0016】
上述のように、式Iには、化合物およびその塩の任意の溶媒和物も包含される。好ましい溶媒和物は、固体状態の構造(たとえば、結晶構造)の本発明の化合物に、薬学的に許容される非毒性溶媒(以下では溶媒和溶媒と呼ぶ)の分子が組み込まれて形成された溶媒和物である。そのような溶媒の例としては、水、アルコール(エタノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、およびジメチルスルホキシドが挙げられる。溶媒和物は、本発明の化合物を、溶媒和溶媒を含有する溶媒または溶媒の混合物で再結晶化することにより調製できる。任意の所与の事例において溶媒和物が生成したかどうかは、化合物の結晶を、熱重量分析(TGE)、示差走査熱量測定(DSC)、X線結晶学などの、よく知られた標準の技術を使用した分析にかけて、判定することができる。
【0017】
溶媒和物は、化学量論的または非化学量論的溶媒和物でよい。特に好ましい溶媒和物は、水和物であり、水和物の例として、半水和物、一水和物、および二水和物が挙げられる。
【0018】
溶媒和物、およびその生成および特徴付けに使用する方法のより詳細な論述については、Brynら、Solid-State Chemistry of Drugs、第2版、SSCI, Inc (米国ウェストラフィエット)刊、1999、ISBN 0-967-06710-3を参照されたい。
【0019】
本発明は、その範囲内に、式(I)の化合物のプロドラッグの使用も包含する。一般に、そのようなプロドラッグは、in vivoで、求められる化合物に容易に変換可能である、式(I)の化合物の機能性誘導体である。適切なプロドラッグ誘導体の選択および調製のための従来の手順は、当業界でよく知られている。
【0020】
該当する式Iの化合物の「プロドラッグ」という用語は、投与(たとえば、経口または非経口投与)された後、in vivoで代謝されて、実験的に検出可能な量で、かつ所定の時間内に(たとえば、6時間〜24時間の間の投薬間隔のうちに(すなわち、1日1〜4回))その化合物となる、任意の化合物を包含する。
【0021】
式Iの化合物のプロドラッグは、化合物上に存在する官能基を、そのプロドラッグが哺乳動物対象に投与されたとき、in vivoで変更官能基が切断されるような方法で変更することにより調製できる。変更は通常、プロドラッグ置換基を有する親化合物を合成することにより実現される。プロドラッグとしては、式Iの化合物中にあるヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、カルボキシル、またはカルボニル基が、in vivoで切断されると遊離のヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、カルボキシル、またはカルボニル基をそれぞれ生じ得る任意の基に結合している、式Iの化合物が挙げられる。
【0022】
プロドラッグの例として、その限りでないが、ヒドロキシル官能基のエステルおよびカルバメート、カルボキシル官能基のエステル、N-アシル誘導体、およびN-マンニッヒ塩基が挙げられる。プロドラッグについての全般的な情報は、たとえば、Bundegaard, H.「Design of prodrugs」、1〜92頁、Elsevier, New York-Oxford (1985)で見ることができる。
【0023】
一態様では、プロドラッグは、ビタミンKでない。別段記載しない限り、用語「ビタミンK」は、本明細書では、まとめてビタミンK1およびビタミンK2に関するものであり、ビタミンKの人工類似体に関するものではない。
【0024】
式Iの化合物は、二重結合を含有する場合もあり、したがって、個々の各二重結合についてE(エントゲーゲン)およびZ(ツザメン)幾何異性体として存在することがある。そのようなすべての異性体およびその混合物が、本発明の範囲内に含まれる。
【0025】
式Iの化合物は、位置異性体として存在する場合もあり、また互変異性を示す場合もある。すべての互変異性体形態およびその混合物が、本発明の範囲内に含まれる。
【0026】
式Iの化合物は、1個または複数の不斉炭素原子を含有する場合もあり、したがって、光学および/またはジアステレオ異性を示すことがある。ジアステレオ異性体は、従来の技術、たとえば、クロマトグラフィーまたは分別結晶を使用して分離することができる。種々の立体異性体は、化合物のラセミ混合物または他の混合物を、従来の、たとえば、分別結晶またはHPLCの技術を使用して分離することにより単離できる。あるいは、光学活性のある適切な出発材料を、ラセミ化もしくはエピマー化を引き起こさない条件下で反応させる(すなわち、「キラルプール」法)、適切な出発材料を、適切な段階で後に除去することのできる「キラル助剤」と反応させる、たとえばホモキラルな酸を用いて誘導体化(すなわち、動的分割を含めて分割)した後、ジアステレオ異性体誘導体をクロマトグラフィーなどの従来の手段によって分離する、または適切なキラル試薬もしくはキラル触媒と反応させることにより、所望の光学異性体を、すべて当業者に知られている条件下で、生成することができる。すべての立体異性体およびその混合物が、本発明の範囲内に含まれる。
【0027】
本発明の上述の態様において言及した使用のための、式(I)の化合物、または式(I)の化合物を含む医薬組成物は、医学的処置の方法において利用することができる。したがって、本発明の別の態様によれば、以下のことが提供される。
(i)抗凝血薬として使用する医薬を製造するための、式(I)の化合物、または式(I)の化合物を含む医薬組成物の使用、および
(ii)抗凝血薬治療の恩恵を受ける障害または状態を治療または予防する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の式(I)の化合物、または式(I)の化合物を含む医薬組成物を投与する工程を含む方法。
【0028】
用語「抗凝血薬治療の恩恵を受ける障害または状態」は、当業者には、血栓症およびそれに関連した疾患が含まれると理解されよう。たとえば、血栓症に関連した疾患として、深部静脈血栓症(特に、深部静脈血栓症の予防)、肺塞栓症、心筋梗塞(たとえば、血液凝固阻止が必要となる外科手術手順においての心筋梗塞)、卒中、ならびに人工心臓、またはヒト、特に非ヒト心臓などの移植心臓に対しての心臓弁機能の維持(たとえば、人工、異種、同種、または自家心臓弁置換後、および外科手術中の血餅生成の予防)が挙げられる。
【0029】
したがって、一態様では、式(I)の化合物を抗凝血薬として使用して、血栓症および血栓症関連疾患を予防する。前述の本発明の態様に関連して挙げることのできる特定の障害または状態として、血栓症が挙げられる。
【0030】
抗凝血薬活性を有する本発明の化合物および組成物は、血栓症およびそれに関連した疾患の予防または治療に、たとえば、深部静脈血栓症、肺塞栓症、血液凝固阻止が必要となる外科手術手順においての心筋梗塞、卒中の予防、ならびに人工心臓、またはヒト心臓、特に非ヒト心臓などの移植心臓に対しての心臓弁機能の維持(たとえば、人工、異種、同種、または自家心臓弁置換後、および外科手術中の血餅生成の予防)において使用することができる。
【0031】
したがって、本発明の別の態様は、以下の事物に関する。
(a)血栓症、深部静脈血栓症、肺塞栓症、血液凝固阻止が必要となる外科手術手順においての心筋梗塞、卒中、および人工心臓または移植心臓についての心臓弁機能の維持から選択される状態または障害(たとえば、血栓症)の治療または予防において使用するための、上で規定したような式Iの化合物、または式(I)の化合物を含む医薬組成物。
(b)血栓症、深部静脈血栓症、肺塞栓症、血液凝固阻止が必要となる外科手術手順においての心筋梗塞、卒中、および人工心臓または移植心臓に対しての心臓弁機能の維持から選択される状態または障害(たとえば、血栓症)を治療または予防する医薬を調製するための、上で規定したような式Iの化合物、または式(I)の化合物を含む医薬組成物の使用、
(c)血栓症、深部静脈血栓症、肺塞栓症、血液凝固阻止が必要となる外科手術手順においての心筋梗塞、卒中、および人工心臓または移植心臓に対しての心臓弁機能の維持から選択される障害または状態(たとえば、血栓症)を治療または予防する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の式(I)の化合物、または式(I)の化合物を含む医薬組成物を投与する工程とを含む方法。
【0032】
疑義を回避するために、本発明においては、用語「治療」は、その治療を必要とする患者の治療的または姑息的治療、ならびに該当する疾患状態に陥りやすい患者の予防的治療および/または診断への言及を包含する。
【0033】
用語「患者」は、哺乳動物(たとえば、ヒト)患者への言及を包含する。
【0034】
用語「有効量」とは、治療を受ける患者に対して治療効果を付与する(たとえば、疾患の治療または予防に十分な)化合物の量を指す。効果は、他覚的(すなわち、ある種の試験またはマーカーによって測定可能)でも、または自覚的(すなわち、対象が効果の徴候を示すもしくは効果を感じる)でもよい。
【0035】
用語「ハロゲン」は、本明細書では、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素(たとえば、臭素、特に、塩素またはフッ素)を包含する。
【0036】
用語「炭化水素」は、本明細書で、R1、R2、R3、RaおよびRbのいずれかに関して使用するとき、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルキル、アリール、アリール-アルキル、アリール-アルケニル、およびアリール-アルキニルを包含する。
【0037】
適切なアルキル基には、1〜18個の炭素原子、またはより好ましくは1〜9個の炭素原子を含有する直鎖状または分枝状のアルキル基が含まれる。たとえば、典型的な例として、メチルもしくはエチル、または直鎖状もしくは分枝状のプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルなどを挙げることができる。
【0038】
適切なアルケニル基には、2〜18個の炭素原子を含有する直鎖状および分枝状のアルケニル基が含まれ、ビニル、アリル、もしくはイソプレン部分、2-、3-もしくは4-ペンテニル、または2-、3-もしくは4-ヘキセニルなど、およびこれらの異性体形態を挙げることができる。本発明の化合物中に存在するアルケニル基は、1価または複数の不飽和を含むものでよい。
【0039】
適切なアルキニル基には、2〜18個の炭素原子を含有する直鎖状および分枝状のアルキニル基が含まれる。たとえば、典型的な例として、エチニル基およびプロピニル基を挙げることができる。
【0040】
適切なシクロアルキル基には、3〜7個の炭素原子を含有する基、たとえば、シクロプロピルまたはシクロヘキシルが含まれる。
【0041】
適切なアリール基には、フェニルやナフチルなどの、1個の環または縮合した2個もしくは3個の環を有する芳香族炭化水素系を含めることができる。特に適切なアリール基は、フェニルでよい。
【0042】
適切なヘテロ環基には、5または6個の環原子を有し、その少なくとも1個の環原子が酸素、硫黄、または窒素である環系を含めることができる。この環系は、芳香族でも、または芳香族でなくてもよい。例としては、ピペラジニル、モルホリニル、ピロリル、イミダゾリル、チエニル、フラニル、または知られている他のヘテロ環系を挙げることができる。
【0043】
本発明の好ましい実施形態によれば、R1は、18個までの炭素原子をそれぞれが含有する直鎖状、分枝状、または環状の基を含む炭化水素基を表す。R1は、1〜18個の炭素原子、またはより好ましくは1〜9個の炭素原子(たとえば、1〜6個の炭素原子、たとえば、1〜5個の炭素原子)を含有する直鎖状または分枝状のアルキル基を含めて、アルキル基を表すことがより好ましい。R1がメチルを表すことが特に好ましい。
【0044】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、nは0を表し、または別法として、nは4であり、R2は、各出現につき水素である(たとえば、R2は水素を表し、nは4である)。
【0045】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、R3は、18個までの炭素原子を含有する直鎖状または分枝状の炭化水素基を含む炭化水素基、好ましくは、-CO2Ra置換基を含んでいる少なくとも1個の部分で置換されている適切なアルキル基またはアルケニル基を表す。より好ましくは、R3は、-CO2Ra置換基を含んでいる少なくとも1個の部分で置換されている、直鎖状でも分枝状でもよいC1-9アルキルまたはC2-9アルケニルを表し、Raは、実質的に上で規定した通りである。R3に関しては、Raは、水素、または18個までの炭素原子、好ましくは9個までの炭素原子、さらにより好ましくは6個までの炭素原子を含有する直鎖状または分枝状の炭化水素基を含む炭化水素基を表すことが好ましい。Raは、水素または直鎖状または分枝状のC1-6アルキル、特にメチルを表すことが好ましい。
【0046】
好ましくは、R3は、次式(II)によって表すことができる。
【0047】
【化2】

ここで、連結していない結合は、式(II)の構造断片が式(I)の化合物の残部に結合する点を表し、
Raは、上で規定した通りであり、
Rc、RdおよびReは、水素またはC1-6アルキル(直鎖状でも分枝状でもよい)から独立に選択され、
qは、1、2、3または4であり、
rおよびsは、0、1、2、3または4から独立に選択され、
【0048】
【化3】

は、単結合または二重結合を表し、これが二重結合であるとき、Reは、上記式(II)中に存在しない。
【0049】
式(II)は、-CO2Raで置換されている、直鎖状もしくは分枝状のC4-8アルキル基または直鎖状もしくは分枝状のC4-8アルケニル基を表すことが好ましく、Raは、水素、または直鎖状もしくは分枝状のC1-6アルキル、特にメチルを表すことが好ましい(たとえば、Raは、R3に結合しているとき、HまたはCH3を表す)。
【0050】
式(II)で表される特に好ましい基として、
-(CH2)7CO2H、
-CH2CH=C(CH3)(CH2)2CO2H、および
-CH2CH=C(CH3)CO2H
が挙げられる。
【0051】
詳細には、本発明は、抗凝血薬として使用するために、以下の化合物の1つまたは複数を提供する。
(i)2,3-ジメトキシ-1,4-ナフトキノン(XVI)、
(ii)メナジオン(III)、
(iii)KCAT-5C-Me(XIX)、
(iv)NaQuinate-Me(VII)、
(v)(4E)-6-(1,4-ジヒドロ-2-メチル-1,4-ジオキソナフタレン-3-イル)-4-メチルヘキサ-4-エン酸(VIII)、
(vi)(2E)-4-(1,4-ジヒドロ-2-メチル-1,4-ジオキソナフタレン-3-イル)-2-メチルブタ-2-エン酸(XIV)、および
(vii)8-(1,4-ジヒドロ-2-メチル-1,4-ジオキソナフタレン-3-イル)オクタン酸(XV)。
【0052】
疑義を回避するため、示した化学名と化学構造とに不一致があれば、化学構造が優先される。
【0053】
実質的に上述の通りである本発明による治療において使用するのに特に好ましいのは、(4E)-6-(1,4-ジヒドロ-2-メチル-1,4-ジオキソナフタレン-3-イル)-4-メチルヘキサ-4-エン酸(VIII)である。
【0054】
本発明は、実質的に上述の通りである本発明による治療において使用するための新規化合物も提供する。詳細には、それら新規化合物は、(2E)-4-(1,4-ジヒドロ-2-メチル-1,4-ジオキソナフタレン-3-イル)-2-メチルブタ-2-エン酸(XIV)および8-(1,4-ジヒドロ-2-メチル-1,4-ジオキソナフタレン-3-イル)オクタン酸(XV)である。
【0055】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、メナジオンでない。
【0056】
本発明はまた、抗凝血薬として使用する医薬の製造における、式Iの化合物、または式Iの化合物を含む医薬組成物の使用に関する。
【0057】
本発明はまた、外科手術手順を受けることになる患者において血栓症またはそれによって引き起こされる疾患を予防するための医薬の調製における、式Iの化合物、または式Iの化合物を含む医薬組成物の使用に関する。したがって、本発明はまた、外科手術手順を受けることになる患者における血栓症またはそれによって引き起こされる疾患の予防において使用するための、式Iの化合物、または式Iの化合物を含む医薬組成物、ならびに外科手術手順を受けることになる患者において、血栓症またはそれによって引き起こされる疾患を、有効量の式Iの化合物、または式Iの化合物を含む医薬組成物を(たとえば、外科手術に先立って、または外科手術後に)患者に投与することによって予防する方法に関する。
【0058】
一態様では、本発明の化合物の使用は、別の治療剤と共に、併用療法の一部としてのものでもよい。
【0059】
本発明はまた、式(I)の化合物と、ビタミンKなどの血液凝固薬の組合せに関する。一態様では、式(I)の化合物は、血液凝固薬の凝固効果を調節するためのものである(たとえば、式(I)の化合物は、血液凝固薬の凝固効果を調節する)。別の態様では、式(I)の化合物の抗凝固効果を調節する血液凝固薬が提供される。
【0060】
本発明はまた、式(I)の化合物の抗凝血薬効果を逆転させる医薬の調製におけるビタミンKの使用に関する。
【0061】
本発明の別の態様では、治療を必要とする患者に、治療有効量の本発明の化合物または組成物(たとえば、式(I)の化合物または式(I)の化合物を含む医薬組成物)を投与することを含む、血液凝固によって引き起こされる疾患を治療または予防する方法が提供される。したがって、血液凝固によって引き起こされる疾患の治療または予防において使用するための式(I)の化合物または式(I)の化合物を含む医薬組成物、ならびに血液凝固によって引き起こされる疾患を治療または予防する医薬を調製するための、式(I)の化合物または式(I)の化合物を含む医薬組成物の使用も提供される。
【0062】
本発明の別の態様では、治療を必要とする患者に、治療有効量の本発明の化合物または組成物(たとえば、式(I)の化合物または式(I)の化合物を含む医薬組成物)を投与して、抗凝血薬効果を発揮させ、次いで血液凝固薬を投与して、抗凝血薬効果を調節または逆転させる工程を含む、患者の血液凝固能を管理する方法が提供される。したがって、治療を必要とする患者に、治療有効量の本発明の化合物または組成物(たとえば、式(I)の化合物または式(I)の化合物を含む医薬組成物)を投与して、抗凝血薬効果を発揮させ、次いで血液凝固薬を投与して、抗凝血薬効果を調節または逆転させる工程を含む、患者の血液凝固能を管理する方法において使用するための、式(I)の化合物または式(I)の化合物を含む医薬組成物、ならびに治療を必要とする患者に、治療有効量の本発明の化合物または組成物(たとえば、式(I)の化合物または式(I)の化合物を含む医薬組成物)を投与して、抗凝血薬効果を発揮させ、次いで血液凝固薬を投与して、抗凝血薬効果を調節または逆転させる工程を含む、患者の血液凝固能を管理する方法において使用する医薬を調製するための、式(I)の化合物または式(I)の化合物を含む医薬組成物の使用も提供される。
【0063】
例として、外科手術を受ける必要があり、抗凝血薬を使用中の患者は、血液凝固薬で治療して、外科手術後の過剰な出血を防ぐ必要がある。式(I)の化合物、および式(I)の化合物を含む医薬組成物を抗凝血薬として使用すると、ビタミンK(たとえば、ビタミンK1またはK2)の使用による抗凝血薬効果の効率的かつ急速な逆転、および抗凝血薬の身体からの迅速な排泄が可能になる。言い換えれば、式(I)の化合物および式(I)の化合物を含む医薬組成物を抗凝血薬として使用すると、
(a)ビタミンK(たとえば、ビタミンK1またはK2)を加える、および/または
(b)式(I)の化合物は身体から迅速に排泄されるので、式(I)の化合物の投与を中断する
ことにより、抗凝血薬効果を急速かつ効率的に逆転させることができる。
【0064】
対照的に、別の抗凝血薬であるワルファリンの効果の逆転は、ワルファリンでは生物学的半減期が相対的に長い(2.5日)ので、より時間がかかり、実現するのにより長い時間を要する。
【0065】
したがって、一態様では、本発明は、患者を式Iの化合物または式Iの化合物を含む医薬組成物で治療し、次いで手術後に同じ患者をビタミンKまたは他の血液凝固薬で治療して、血液凝固が起こるのを可能にする工程を含む治療計画に関する。場合により、外科手術が完了した後に、患者を式Iの化合物または式Iの化合物を含む医薬組成物で治療してもよい。本発明は、そのような体制における、またそのような体制で使用するための医薬の調製における、式Iの化合物または式Iの化合物を含む医薬組成物の使用に関する。
【0066】
一態様では、本発明は、式Iの化合物と他の活性構成要素、たとえば、別の抗凝血薬との組合せに関する。
【0067】
化合物は、並行して、別個に、または順次使用するための組合せ調製物として、一緒に使用することができる。
【0068】
本発明によれば、式(I)の化合物は、単独で(すなわち、単剤療法、たとえば、血栓症などを予防または治療する単剤療法として)投与することもできる。しかし、本発明のもう1つの実施形態では、式(I)の化合物は、別の治療剤(たとえば、血栓症を予防もしくは治療する別の治療剤、または別法として血液凝固薬化合物(たとえば、ビタミンK))と組み合わせて投与することもできる。
【0069】
したがって、本発明の別の態様は、
(A)上で規定したような式(I)の化合物と、
(B)別の治療剤(たとえば、血液凝固薬(たとえばビタミンK)または抗凝血薬)と
を含み、構成要素(A)および(B)それぞれに、薬学的に許容される佐剤、希釈剤、または担体が混ぜられて製剤されている、組合せ製品に関する。
【0070】
本明細書で使用するとき、用語「別の治療剤」は、血液凝固薬および/または抗凝血薬から選択される1種または複数(たとえば1種)の治療剤(たとえば、1種の治療剤)への言及を包含する。
【0071】
挙げることのできる特定の他の治療剤として、たとえば、血液凝固薬のビタミンK1およびビタミンK2、ならびに抗凝血薬のワルファリンがある。
【0072】
本明細書で使用するとき、用語「順次、並行して、または同時に投与する」は、
別個の医薬製剤(一方が式Iの化合物を含有し、1種または複数の他方が1種または複数の他の治療剤を含有する)の投与、および
式Iの化合物と他の治療剤とを含有する単一の医薬製剤の投与
への言及を包含する。
【0073】
上述の組合せ製品は、構成要素(A)の構成要素(B)と合わせた投与に備えるものであり、したがって、製剤の少なくとも1種が構成要素(A)を含み、少なくとも1種が構成要素(B)を含む別個の製剤としての体裁にしてもよいし、または組合せ調製物としての体裁(すなわち、製剤)にしてもよい(すなわち、構成要素(A)と構成要素(B)を含む単一の製剤としての体裁にしてもよい)。
【0074】
したがって、以下のものがさらに提供される。
(I)薬学的に許容される佐剤、希釈剤、または担体が混ぜられた、上で規定したような式Iの化合物と別の治療剤とを含んでいる医薬製剤(この製剤を、以下では「組合せ調製物」と呼ぶ)、ならびに
(II)次の構成要素、すなわち、
(i)薬学的に許容される佐剤、希釈剤、または担体が混ぜられた、上で規定したような式Iの化合物を含んでいる医薬製剤と
(ii)薬学的に許容される佐剤、希釈剤、または担体が混ぜられた別の治療剤を含んでいる医薬製剤と
を含み、構成要素(i)および(ii)が、他方と合わせて投与するのに適する形態でそれぞれ提供される、パーツキット。
【0075】
すなわち、パーツキットの構成要素(i)は、薬学的に許容される佐剤、希釈剤、または担体が混ぜられた構成要素(A)である。同様に、構成要素(ii)は、薬学的に許容される佐剤、希釈剤、または担体が混ぜられた構成要素(B)である。
【0076】
一態様では、本発明は、血液凝固薬、たとえば、ビタミンKを式(I)の化合物と組み合わせる工程を含む、組合せ医薬の調製方法に関する。
【0077】
場合により、次いで、組合せ医薬を、薬学的に許容される任意の医薬添加剤、希釈剤、または担体と合わせて、医薬組成物にしてもよい。
【0078】
場合により、組合せ医薬または医薬組成物を、経口送達用の錠剤に製剤することもできる。
【0079】
式(I)の化合物の予防的または治療的用量の度合いは、当然、治療する状態の性質および重症度ならびにその特定の式Iの化合物およびその投与経路により変わる。また、個々の患者の年齢、体重、全般的健康状態、性別、食事、投与時間、排泄速度、薬物の組合せ、および応答を始めとする様々な要素に応じても様々となる。一般に、日用量は、哺乳動物の体重1kgあたり約0.001mg〜約1000mg(たとえば、0.001mg〜約100mg)、好ましくは1kgあたり0.01mg〜約10mgである。その一方で、場合によっては、これら限界の範囲外にある投与量の使用が必要なこともある。いずれにせよ、医療従業者または他の技術者は、個々の患者に最も適するであろう実際の投与量を常法どおりに決定することができる。
【0080】
単一の剤形を生成するために担体材料と合わせることのできる活性成分の量は、治療を受けるホストおよびその特定の投与方式に応じて変わる。たとえば、ヒトへの経口投与を目的とした製剤は、組成物全体の約5〜約99.95パーセントの間で様々でよい、適切で好都合な量の担体材料が配合された、0.05mg〜5gの活性薬剤を含有してよい。単位剤形は一般に、約0.1mg〜約0.4gの間、通常は0.5mg、1mg、2mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、200mg、または400mgの活性成分を含有する。
【0081】
式(I)の化合物の好ましい用量は、1日に40mgより多い用量、より好ましくは1日に少なくとも45mgの用量である。
【0082】
合計日用量は、単独で、または他の治療と組み合わせて、その日のうちに1または複数回で送達することができる。
【0083】
式(I)の化合物は、従来の薬学的に許容される非毒性担体、佐剤、および賦形剤を含有する投与量単位製剤にして、適切な任意の手段によって、たとえば、経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、非経口的に、または直腸に投与することができる。用語「非経口」は、本明細書では、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内の注射または注入技術を包含する。
【0084】
活性成分を含有する医薬組成物は、たとえば、錠剤、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、乳濁液、硬もしくは軟カプセル剤、またはシロップもしくはエリキシルとしての、経口的使用に適する形態にすることができる。経口的使用を目的とした組成物は、医薬組成物の製造について当分野で知られているいかなる方法に従って調製してもよく、このような組成物は、医薬として洗練され、味のよい調製物とするために、甘味剤、着香剤、着色剤、および保存剤からなる群から選択される1種または複数の薬剤を含有してよい。錠剤は、錠剤の製造に適する、薬学的に許容される非毒性の医薬添加剤が混ぜられた活性成分を含有する。それら医薬添加剤は、たとえば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;顆粒化および崩壊剤、たとえば、トウモロコシデンプン、アルギン酸;結合剤、たとえば、デンプン、ゼラチン、アカシア;ならびに滑沢剤、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルクでよい。
【0085】
錠剤は、コーティングされていなくてもよいし、または既知の技術によってコーティングして、消化管での崩壊および吸収を遅らせ、それによってより長時間にわたり作用を持続させることもできる。たとえば、モノステアリン酸グリセリルやジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を用いることができる。錠剤をコーティングして、制御放出のための治療用浸透圧錠剤を生成することもできる。
【0086】
経口的使用のための製剤は、活性成分が、不活性固体希釈剤、たとえば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリンと混合されている、硬ゼラチンカプセル剤、または活性成分が、水と混和性の溶媒、たとえば、プロピレングリコール、PEG、エタノール、もしくは油性媒質、たとえば、ラッカセイ油、流動パラフィン、オリーブ油と混合されている、軟ゼラチンカプセル剤としての体裁にすることもできる。
【0087】
たとえば、錠剤やカプセル剤などの固体経口組成物は、1〜99%(w/w)の活性成分、0〜99%(w/w)の希釈剤または充填剤、0〜20%(w/w)の崩壊剤、0〜5%(w/w)の滑沢剤、0〜5%(w/w)の流動助剤(flow aid)、0〜50%(w/w)の顆粒化剤または結合剤、0〜5%(w/w)の抗酸化剤、および0〜5%(w/w)の顔料を含有してよい。加えて、制御放出錠剤は、0〜90%(w/w)の放出制御ポリマーも含有してよい。
【0088】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適する医薬添加剤が混ぜられた活性材料を含有する。そのような医薬添加剤は、懸濁化剤、たとえば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアカシアゴムであり、分散または湿潤剤は、自然発生するホスファチド、たとえば、レシチンでよい。水性懸濁液は、1種または複数の保存剤、1種または複数の着色剤、1種または複数の着香剤、および1種または複数の甘味剤も含有してよい。
【0089】
非経口製剤(注射用の溶液もしくは懸濁液または注入用の溶液など)は、1〜50%(w/w)の活性成分、50%(w/w)〜99%(w/w)の液体または半固体の担体または賦形剤(たとえば、水などの溶媒)、および0〜20%(w/w)の他の1種または複数の医薬添加剤、たとえば、緩衝剤、抗酸化剤、懸濁液安定剤、張性調整剤、保存剤を含有してよい。
【0090】
油性懸濁液は、活性成分を、植物油、たとえば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、もしくはヤシ油、または鉱油、たとえば、流動パラフィンに懸濁させることにより製剤できる。油性懸濁液は、増粘剤、たとえば、蜜蝋、固形パラフィン、セチルアルコールを含有してもよい。甘味剤および着香剤を加えて、味のよい経口調製物とすることもできる。これら組成物は、アスコルビン酸、ビタミンE、または何らかのそうした同等の薬剤などの抗酸化剤を加えることにより保存することができる。
【0091】
水を加えることによる水性懸濁液の調製に適する分散性粉末および顆粒は、分散もしくは湿潤剤、懸濁化剤、および1種または複数の保存剤が混ぜられた活性成分を備える。適切な分散もしくは湿潤剤、および懸濁化剤は、上ですでに挙げたものによって例示される。追加の医薬添加剤、たとえば、甘味剤、着香剤、および着色剤が存在してもよい。
【0092】
本発明の医薬組成物は、水中油型乳濁液の形にすることもできる。油相は、植物油、たとえば、オリーブ油もしくはラッカセイ油、または鉱油、たとえば、流動パラフィン、またはこれらの混合物でよい。適切な乳化剤は、自然発生するホスファチド、たとえば大豆レシチン、脂肪酸とヘキシトール無水物から得られるエステルまたは部分エステル、たとえばモノオレイン酸ソルビタン、および前記部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物、たとえばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンでよい。乳濁液は、甘味剤および着香剤も含有してよい。
【0093】
シロップおよびエリキシルは、甘味剤、たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロースを加えて製剤することができる。このような製剤は、保存剤、着香剤、および着色剤も含有してよい。医薬組成物は、注射可能な水性または油脂性の滅菌懸濁液の形にすることもできる。この懸濁液は、適切な分散もしくは湿潤剤および懸濁化剤を使用し、知られている技術に従って製剤することができる。注射可能な滅菌調製物は、たとえば、1,3-ブタンジオール溶液として、非経口的に許容される非毒性の希釈剤または溶媒中の注射可能な滅菌溶液または懸濁液にすることもできる。用いることのできる許容される賦形剤および溶媒の中でも、水、リンガー液、および等張性塩化ナトリウム溶液が挙げられる。エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの共溶媒を使用してもよい。加えて、滅菌固定油も、溶媒または懸濁媒として慣例的に用いられる。この目的では、合成のモノ-もしくはジ-グリセリドを始めとする、無刺激性のいかなる固定油を用いてもよい。加えて、オレイン酸などの脂肪酸も、注射剤の調製に使用することができる。
【0094】
式(I)の化合物は、薬物を直腸投与するための坐剤の形で投与することもできる。こうした組成物は、薬物を、周囲温度では固体であるが、直腸温度では液体であり、したがって直腸で融解して薬物を放出する、適切な非刺激性の医薬添加剤と混合することにより調製できる。そのような材料は、カカオ脂およびポリエチレングリコールである。
【0095】
局所的使用については、式(I)の化合物を含有するクリーム、軟膏、ゲル、溶液、または懸濁液などを用いる(本出願の目的では、局所施用は、洗口剤および含嗽剤を包含するものとする)。局所製剤は、一般に、医薬用担体、共溶媒、乳化剤、浸透性改善剤、保存剤系、および皮膚軟化薬からなるものでよい。
【0096】
ここで、本発明について、単に例として、添付の図面に即して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】化合物VIII(本明細書では、NaQuinateとも呼ぶ)の合成経路の一例を示す図である。
【図2A】図1に示す経路で使用する化合物Vの合成経路の一例を示す図である。
【図2B】図1に示す経路で使用する化合物Vの合成経路の一例を示す図である。
【図3】220μMのビタミンK1ヒドロキノン存在下でのKCAT-5C (XIV)によるγ-カルボキシラーゼの阻害(n=1)を示すグラフである。
【図4】220μMのビタミンK1ヒドロキノン存在下でのKCAT-5C-Me (XIX)によるγ-カルボキシラーゼの阻害(n=1)を示すグラフである。
【図5】220μMのビタミンK1ヒドロキノン存在下でのNaQuinate (VIII)によるγ-カルボキシラーゼの阻害(n=1)を示すグラフである。
【図6】220μMのビタミンK1ヒドロキノン存在下でのNaQuinate-Me (VII)によるγ-カルボキシラーゼの阻害(n=1)を示すグラフである。
【図7】220μMのビタミンK1ヒドロキノン存在下でのQCAT-Me (XVIII)によるγ-カルボキシラーゼの阻害(n=1)を示すグラフである。
【図8】220μMのビタミンK1ヒドロキノン存在下でのDMK (XVI)によるγ-カルボキシラーゼの阻害(n=1)を示すグラフである。
【図9】220μMのビタミンK1ヒドロキノン存在下でのビタミンK3 (III)によるγ-カルボキシラーゼの阻害(n=1)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0098】
本発明による化合物は、適切ないかなる方法によって合成してもよい。適切な方法は、Ruttimannら、「Chimica」(1986) 40 (9) 290〜306およびGerorkzanら、「Chem. Hetrocyclic Compd」(英訳版) (1989) 2、269ならびに図8および図9に即して以下に記載する。加えて、本発明の化合物は、GB 2,314,773で開示され、参照により本明細書に援用される方法の類推によって生成することもできる。察せられる通り、本発明の化合物は、上で挙げた参考文献で開示されている方法の類推によって調製することもでき、または市販品として購入することもできる(指摘する場合)。
【0099】
本明細書において図1に示すように、出発材料のメナジオン(Aldrich Chemical Company、III)を用い、25℃でシクロペンタジエンと反応させて、その縮合誘導体(IV)を生成した。塩基O-K+(たとえば、カリウムtert-ブトキシド)で処理し、引き続いてメチル4-メチル-6-ブロモ-ヘキサ-4-エノエート(V)で処理して、3-置換基を導入した(VI)。70℃〜110℃の範囲の熱をかけてさらに中間体を反応させ、シクロペンタジエンを脱離させ、その結果として生成物メチルエステルNaQuinate (VII)が単離された。この化合物の特徴付けについては、上で参考文献として挙げたRuttimannらにより示されており、それを参照により本明細書に援用する。
【0100】
化合物(VII)は、たとえばKOHを使用する塩基加水分解、およびたとえばH3O+ (たとえば塩酸水溶液)または同等物を使用する後続の酸処理によって、既知のやり方で対応するカルボン酸に変換し、それによってNaQuinate (VIII)を生成する。この化合物の特徴付けについては、上で参考文献として挙げたRuttimannらにより示されている。
【0101】
上で使用した中間体(V)の調製は、図2Aに示す通りに実施する。臭化プレニル(Aldrich Chemical Company) (L=BrであるIX)を、mCPBAを使用してエポキシドに変換し、これを引き続いて加熱して、L=Brである中間体(X)を得た。Ac2O-DMAPで処理して、L=Brであるエステル(XII)を生成し、次いでこれを、LDAおよびTMSCI(図2AではTMSUと称する)などの標準試薬を使用してクライゼン(たとえば、アイルランド-クライゼン)転位にかけた。L=Brである、その転位生成物(XIII)を、CH2N2との反応によって、上で明らかにしたNaQuinateの調製で使用する、メチルエステル(V)に変換した。その特徴付けについては、上で参考文献として挙げたGerorkzanらにより示されており、その開示を参照により本明細書に援用する。
【0102】
別法として、上で使用した中間体(V)のより特別な調製は、図2Bに示す通りに実施する。プレニルアルコール(17)をtert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMSCl)で保護して、TBDMSエーテル18とした。18をメタ-クロロペルオキシ安息香酸と反応させてエポキシド19を生成し、これが、高温還流下で、引き続いて転位を起して、アルコール20となった。プロピオン酸の存在下、20をトリメチルオルトアセテートと反応させると、エステル21が生じ、これを(フッ化テトラブチルアンモニウムを使用して)脱保護して、遊離アルコール22を得た。引き続いて22を臭化物23(本明細書では化合物(V)とも呼ぶ)にする官能基相互変換を、四臭化炭素およびトリフェニルホスフィンを使用して実現した。
【0103】
本発明の範囲内にある他の化合物の生成にも同等の方法を使用することができる。
【0104】
生物学的活性の判定:以下のアッセイのいずれかを使用し、種々の式Iの化合物を試験して、その抗凝血薬としての活性を判定することができる。すなわち、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)試験、プロトロンビン時間(PT)試験、PTプロトロンビン比(PR)および国際標準比(INR)の導出、フィブリノゲン検査(多くの場合Clauss法による)、血小板数、血小板機能検査(多くの場合PFA-100による)、TCT、ならびに出血時間。
【0105】
プロトロンビン時間は、血漿を使用して測定するのが最も一般的である。サンプル中のカルシウムを結合して抗凝血薬として働く液体クエン酸塩を含有する試験管に、血液を抜き取る。血液を混合し、次いで遠心分離して、血漿から血液細胞を分離する。血漿を自動計測器において37℃で分析するが、これには血漿のサンプルを用いる。過剰のカルシウムを加える(それによってクエン酸塩の効果を逆行させる)と、血液を再び凝固させることができる。組織因子(III因子としても知られる)を加え、サンプルが凝固するのにかかる時間を光学的に測定する。プロトロンビン時間は、(動物から得た)組織因子を加えた後、血漿が凝固するのにかかる時間である。これにより、凝固の外因性経路(ならびに共通経路)の質が測定される。
【0106】
INRは、結果を標準化するために考案された。INRは、患者のプロトロンビン時間の正常(対照)サンプルに対する比を、使用する分析系のISI値で累乗したものである。各製造者は、その製造者が製造するいずれの組織因子にもISI値(国際感度指数)を割り当てる。ISI値は、特定バッチの組織因子が国際的に標準化されたサンプルと比べてどうであるかを示す。健康な人の正常範囲は、0.9〜1.3であり、ワルファリン療法を受けている人では、2.0〜3.0であるが、目標INRは、人工心臓弁を付けている人についてなど、特定の状況ではより高くてもよい。
【0107】
特許出願および認められた特許を含めて、本出願におけるすべての参考文献の教示は、参照により本明細書に完全に援用される。本出願が優先権を主張する特許出願があれば、刊行物および参照文献について本明細書で記載したようにして、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0108】
疑義を回避するため、本明細書では、用語「comprising(含む)」、「comprise(含む)」、および「comprises(含む)」について、本発明者らは、あらゆる場合において、用語「consisting of(からなる)」、「consist of(からなる)」、および「consists of(からなる)」によってそれぞれ場合により置き換え可能であるものとしている。用語「約」(または「およそ」)は、すべての数値に使用する場合、5%の変動を見込んでおり、すなわち、約1.25%の値であれば、1.19%〜1.31%の間を意味することになる。
【0109】
本明細書に記載の特定の実施形態は、本発明を限定するものとしてではなく、実例として示していることは理解されよう。本発明の主な特色は、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の実施形態で用いることができる。当業者なら、型どおりの調査だけで、本明細書に記載の詳細な手順の数多くの同等形態を察知し、または突きとめることができよう。そうした同等形態は、本発明の範囲内であるとみなされ、特許請求の範囲に包含される。本出願において挙げたすべての刊行物および特許出願は、本発明が属する分野の技術者の技量を示すものである。すべての刊行物および特許出願は、個々の各刊行物または特許出願について参照により援用されることが詳細かつ個別に表記されたのと同じ程度に、参照により本明細書に援用される。
【0110】
単語「a」または「an」の使用は、特許請求の範囲および/または明細書において用語「comprising」と共に使用するとき、「1つ」を意味する場合もあるが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたはそれ以上」の意味とも矛盾しない。特許請求の範囲における用語「または」の使用は、単に選択肢を指すことを明示しない限り、または選択肢が互いに両立しないものでない限り、この開示で単なる選択肢および「および/または」を指す定義が支持されているとしても、「および/または」を意味するのに用いる。本出願では終始、用語「約」は、値が、その測定、その値を求めるのに用いる方法、または調査対象の中に存在するばらつきについての誤差の固有の変動を包含することを示すのに用いる。
【0111】
用語「またはこれらの組合せ」とは、本明細書では、この用語に先行する、列挙された細目のすべての交換および組合せを指す。
【0112】
本明細書で開示し、特許請求する組成物および/または方法はすべて、この開示に照らして、必要以上の実験をすることなく、製造し、実施することができる。本発明の組成物および方法について、好ましい実施形態に関して述べてきたが、当業者には、本発明の構想、真意、および範囲から逸脱することなく、組成物および/または方法に変化を添え、また本明細書に記載の方法の工程または工程の順序を変化させてもよいことは明らかとなろう。当業者に明らかなそうしたすべての同様の代替形態および変更形態は、添付の特許請求の範囲によって規定される、本発明の真意、範囲、および構想の範囲内にあると考える。
【0113】
本発明の個々の任意の態様は、文脈から明らかな場合を除き、他の任意の態様と組み合わせることができる。
【0114】
本発明について、以下の非限定的な実施例に即してさらに説明する。
【0115】
(実施例)
(実施例1)
観察による抗凝血薬活性
食塩水中10%エタノールの注射液にして腹腔内投与される1回の注射(15μg/マウス/日)の形の本発明の一化合物(4E)-6-(1,4-ジヒドロ-2-メチル-1,4-ジオキソナフタレン-3-イル)-4-メチルヘキサ-4-エン酸(VIII) [本明細書ではNaQuinateとも呼ぶ]で、マウスを処置した。対照マウスには、担体を投与し、NaQuinate活性構成要素は投与しなかった。
【0116】
NaQuinate処置マウスは、NaQuinateで処置しなかったマウスよりはるかにおびただしく出血することが観察され、NaQuinateが抗凝血薬効果を発揮することが示された。
【0117】
(実施例2)
NaQuinateは、ビタミンK依存性酵素によるγ-カルボキシル化反応を阻害する
NaQuinateおよび関連化合物の活性を、ビタミンKサイクルにおいて調べた。
【0118】
【化4】

【0119】
1.カルボキシラーゼアッセイ
Houbenら(1997)の方法を使用した[Houben, R. J.ら(1997)、「Assay of Vitamin K-Dependent Carboxylase Activity in Hepatic and Extrahepatic Tissues」、Methods in Enzymology 282: 358〜368]。
【0120】
実験用試験管はすべて、ウシミクロソーム調製物25μl、10% 3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CHAPS) 5μl、飽和硫酸アンモニウム溶液25μlおよび0.1Mジチオスレイトール(DTT) (Sigma) 5μl、飽和硫酸アンモニウム(Sigma)溶液25μlおよび500μM脱炭酸オステオカルシン(d-Oc) 5μlを加えることにより準備した。化合物を10μlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させたので、10μlのDMSOを陽性対照および陰性対照試験管に加えた。各試験管に緩衝液D (500mMのNaClおよび25mMのTris-HCl (pH7.5))を加えて、均一な体積の反応混合物(125μl)を得た。陰性対照は別として、それぞれの試験管に、化合物(KCAT-5C (XIV)、KCAT-5C-Me (XIX)、NaQuinate (VIII)、NaQuinate-Me (VII)、QCAT-Me (XVIII)、DMK (XVI)、およびビタミンK3 (III))またはビタミンK1 (濃度889μM) (Konakion(登録商標)、Hoffmann-La Rocheの混合ミセル)を加えた。各試験管に5μlのNaH14CO3 (New England Nuclear)溶液を加えて(最終放射活性を試験管あたり5μCiとする)、直ちに反応を開始した。試験管をボルテックスで混合し、30分間水浴(20℃)に浸した。各混合物100μlを、5%(w/v)のトリクロロ酢酸(TCA) 800μlを含有するバイアルにピペットで移して、タンパク質を沈殿させ、反応を停止した。3分間沸騰させることにより、取り込まれていない14CO2を除去した。冷却した後、5mlのOptifluorを加え、Wallac 1414 Winspectral液体シンチレーションカウンターで14CO2取込みのレベルを測定した。
【0121】
組換えヒトγ-カルボキシラーゼの阻害
化合物の調製
試験対象の化合物は、化合物のDMSO溶液に0.2M DTTを加え(最終v/v比を1:3のDTT:DMSOとする)、水浴(37℃)で終夜インキュベートすることにより、そのヒドロキノン型に還元した。
【0122】
カルボキシラーゼアッセイ
このアッセイでは、上述のものとは異なるミクロソーム調製物を使用した。そのミクロソーム調製物は、ヒトγ-カルボキシラーゼのcDNAがそのDNAに組み込まれている、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni) High Five細胞から調製したミクロソームからなる。Houben, R. J.、D. Jinら(1999)、「Osteocalcin binds tightly to the gamma-glutamylcarboxylase at a site distinct from that of the other known vitamin K-dependent proteins」、Biochem J 341 (Pt 2): 265〜9に記載の通りに調製されたミクロソームを、店舗から購入した。
【0123】
標準反応混合物は、ミクロソーム調製物5μl、500μM脱炭酸オステオカルシン(d-OC) 5μl (陰性対照試験管を除く)、飽和硫酸アンモニウム溶液25μl、5% PC/CHAPS 5μlを含有するものとした。これに加え、(化合物を1:3のDMSO:0.2M DTTに溶解させたことを考慮に入れて)試験管に1:3 (v/v)のDMSO:0.2M DTTを加えて、DMSO:0.2M DTTの合計体積を試験管あたり40ulとした。緩衝液Dの溶液を加えて、すべての最終試験管を125μlの均一な体積とした。ビタミンKヒドロキノン(最終濃度220μM)とNaH14CO3(最終放射活性5μCi)の1:1(v/v)混合物10μlを各試験管に加えた後、一定範囲の濃度の化合物を加えることにより、実験を開始した。
【0124】
結果
ウシ肝臓γ-カルボキシラーゼの活性化
試験した化合物に、14CO2のオステオカルシンへの取込みを陰性対照より大きく増加させたものはなかった。したがって、γ-カルボキシラーゼの補因子としての活性を有する化合物はなかったという結論を下すことができる。
【0125】
組換えヒトγ-カルボキシラーゼの阻害
試験した化合物はすべて、還元型ビタミンK1の存在下でγ-カルボキシラーゼ酵素を阻害することが判明した。以下に濃度反応曲線を示す。結果は、試験中の化合物の濃度に対する14CO2の取込みとして表示する。
【0126】
結果を以下の通りまとめて示す。
阻害活性に応じてランク付けした試験化合物の阻害活性
【0127】
【表1】

【0128】
【化5】

【0129】
理論にとらわれるものではないが、実施例1で観察された抗凝血薬効果は、ビタミンKサイクルの酵素複合体におけるカルボキシラーゼ酵素の阻害(たとえば、NaQuniateによる阻害)によるものであると考えられる。
【0130】
本発明は、本明細書で開示するような使用について、実施例におけるすべての個別の化合物に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗凝血薬として使用するための、式(I)の化合物
【化1】

[式中、
R1は、水素、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、-ORa、SRa、SORa、-SO2Ra、-SO2NRaRb、-NRaRb、-NRaCORb、-NRaCO2Rb、-CORa、-CO2Ra、-CONRaRb、あるいは18個までの炭素原子をそれぞれが含有する直鎖状、分枝状、もしくは環状の基、または18個までの炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子を含有するヘテロ環基を含む炭化水素基を表し、
R2は、各出現につき独立に、水素、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、-ORa、SRa、SORa、-SO2Ra、-SO2NRaRb、-NRaRb、-NRaCORb、-NRaCO2Rb、-CORa、-CO2Ra、-CONRaRb、あるいは18個までの炭素原子をそれぞれが含有する直鎖状、分枝状、もしくは環状の基、または18個までの炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子を含有するヘテロ環式の基を含む炭化水素基を表し、
R3は、18個までの炭素原子をそれぞれが含有し、-CO2Ra置換基を含んでいる少なくとも1つの部分で置換されている、直鎖状、分枝状、もしくは環状の基を含む炭化水素基を表し、
RaおよびRbは、各出現につき独立に、水素、あるいは18個までの炭素原子をそれぞれが含有する直鎖状、分枝状、もしくは環状の基、または18個までの炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子を含有するヘテロ環式の基を含む炭化水素基を表し、
nは、0、1、2、3または4である]
または薬学的に許容されるその溶媒和物、または特に塩もしくはプロドラッグ。
【請求項2】
R1またはR2が、水素、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、-ORa、SRa、SORa、-SO2Ra、-SO2NRaRb、-NRaRb、-NRaCORb、-NRaCO2Rb、-CORa、-CO2Ra、-CONRaRb、あるいは18個までの炭素原子をそれぞれが含有する直鎖状、分枝状、もしくは環状の基、または18個までの炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子を含有するヘテロ環基を含む炭化水素基を表し、
R3が、18個までの炭素原子をそれぞれが含有し、-CO2Ra置換基を含んでいる少なくとも1つの部分で置換されている、直鎖状、分枝状、もしくは環状の基を含む炭化水素基を表し、
RaおよびRbは、独立に、水素、あるいは18個までの炭素原子をそれぞれが含有する直鎖状、分枝状、もしくは環状の基、または18個までの炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子を含有するヘテロ環式の基を含む炭化水素基を表し、
nは、0、1、2、3または4である、
請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
R1が、18個までの炭素原子をそれぞれが含有する直鎖状、分枝状、または環状の基を含む炭化水素基を表す、請求項1または請求項2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
R1が、1〜9個の炭素原子を含有する直鎖状または分枝状のアルキル基を含めたアルキル基を表す、請求項2に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
R1がメチルを表す、請求項3に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
nが0を表す、請求項1および請求項3から5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
nが4を表し、R2が、各出現につき水素である、請求項2から5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
R3が、-CO2Ra置換基を含んでいる少なくとも1つの部分で置換されている、18個までの炭素原子を含有する直鎖状または分枝状の炭化水素基を含む炭化水素基を表す、請求項1から7のいずれかに記載の使用のための化合物。
【請求項9】
R3が、-CO2Ra置換基を含んでいる少なくとも1つの部分で置換されている、直鎖状でも分枝状でもよいC1-9アルキルまたはC2-9アルケニルを表す、請求項8に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
-CO2Ra置換基を含んでいる少なくとも1つの部分のRaが、水素、または18個までの炭素原子を含有する直鎖状もしくは分枝状の炭化水素基を含む炭化水素基を表す、請求項9に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
-CO2Ra置換基を含んでいる少なくとも1つの部分のRaが、水素、または直鎖状もしくはメチルを含む炭化水素基を表す、請求項10に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
R3が次式(II)
【化2】

によって表される、請求項8から11のいずれか一項に記載の使用のための化合物
[式中、連結していない結合は、式(II)の構造断片が式(I)の化合物の残部に結合する点を表し、
Raは、請求項1から11のいずれかで規定した通りであり、
Rc、RdおよびReは、水素またはC1-6アルキル(直鎖状でも分枝状でもよい)から独立に選択され、
qは、1、2、3または4であり、
rおよびsは、0、1、2、3または4から独立に選択され、
【化3】

は、単結合または二重結合を表し、これが二重結合であるとき、Reは、上記式(II)中に存在しない]。
【請求項13】
式(II)の構造断片が、
-(CH2)7CO2H、
-CH2CH=C(CH3)(CH2)2CO2H、および
-CH2CH=C(CH3)CO2H
から選択される、請求項12に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
式(I)の化合物が、
(i) 2,3-ジメトキシ-1,4-ナフトキノン(XVI)、
(ii)メナジオン(III)、
(iii) KCAT-5C-Me(XIX)、
(iv) NaQuinate-Me(VII)、特に
(v) (4E)-6-(1,4-ジヒドロ-2-メチル-1,4-ジオキソナフタレン-3-イル)-4-メチルヘキサ-4-エン酸(VIII)、
(vi) (2E)-4-(1,4-ジヒドロ-2-メチル-1,4-ジオキソナフタレン-3-イル)-2-メチルブタ-2-エン酸(XIV)、および
(vii) 8-(1,4-ジヒドロ-2-メチル-1,4-ジオキソナフタレン-3-イル)オクタン酸(XV)
を含むリストから選択される、請求項1から13のいずれかに記載の使用のための化合物。
【請求項15】
式(I)の化合物が、
(a) (4E)-6-(1,4-ジヒドロ-2-メチル-1,4-ジオキソナフタレン-3-イル)-4-メチルヘキサ-4-エン酸(VIII)、
(b) (2E)-4-(1,4-ジヒドロ-2-メチル-1,4-ジオキソナフタレン-3-イル)-2-メチルブタ-2-エン酸(XIV)、および
(c) 8-(1,4-ジヒドロ-2-メチル-1,4-ジオキソナフタレン-3-イル)オクタン酸(XV)
を含むリストから選択される、請求項14に記載の使用のための化合物。
【請求項16】
式(I)の化合物が(4E)-6-(1,4-ジヒドロ-2-メチル-1,4-ジオキソナフタレン-3-イル)-4-メチルヘキサ-4-エン酸(VIII)である、請求項15に記載の使用のための化合物。
【請求項17】
抗凝血薬として使用するための、請求項1から16のいずれか一項に記載の式(I)の化合物と、そのための薬学的に許容される担体、希釈剤、または医薬添加剤とを含む医薬組成物。
【請求項18】
抗凝血薬として使用する医薬の製造における、請求項1から16のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、または請求項17に記載の組成物の使用。
【請求項19】
抗凝血薬治療の恩恵を受ける障害または状態を治療または予防する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の請求項1から16のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または請求項17に記載の医薬組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項20】
外科手術手順を受けることになる患者における血栓症またはそれによって引き起こされる疾患の予防において使用するための、請求項1から16のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項21】
別の治療剤と共に、併用療法の一部として使用するための、請求項1から16のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項22】
(A)請求項1から16のいずれか一項に記載の式(I)の化合物と、
(B)別の治療剤と
を含み、構成要素(A)および(B)それぞれに、薬学的に許容される佐剤、希釈剤、または担体が混ぜられて製剤されている、組合せ製品。
【請求項23】
薬学的に許容される佐剤、希釈剤、または担体が混ぜられた、請求項1から16のいずれか一項に記載の式(I)の化合物と別の治療剤とを含んでいる医薬製剤。
【請求項24】
次の構成要素、すなわち、
(i)薬学的に許容される佐剤、希釈剤、または担体が混ぜられた、請求項1から16のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を含んでいる医薬製剤と、
(ii)薬学的に許容される佐剤、希釈剤、または担体が混ぜられた別の治療剤を含んでいる医薬製剤と
を含み、構成要素(i)および(ii)が、他方と合わせて投与するのに適する形態でそれぞれ提供される、パーツキット。
【請求項25】
別の治療剤が、血液凝固薬および他の抗凝血薬から選択される、請求項21から24に記載の使用、組合せ、製剤、およびキット。
【請求項26】
別の治療剤が、ビタミンK (たとえば、ビタミンK1もしくはビタミンK2)またはワルファリンから選択される、請求項25に記載の使用、組合せ、製剤、およびキット。
【請求項27】
請求項1から16のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または請求項17に記載の組成物の血液凝固薬との組合せ。
【請求項28】
血液凝固薬の凝固効果の調節において使用するための、請求項1から16のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項29】
請求項1から16のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または請求項17に記載の医薬組成物の抗凝固効果の調節において使用するための血液凝固薬。
【請求項30】
治療を必要とする患者に、治療有効量の化合物または組成物を投与して抗凝血薬効果を発揮させ、次いで血液凝固薬を投与して、抗凝血薬効果を調節または逆転させる工程を含む、患者の血液凝固能を管理する方法で使用するための、請求項1から16のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項31】
血液凝固薬がビタミンK(たとえば、ビタミンK1またはK2)である、請求項27から30に記載の組合せおよび使用。
【請求項32】
患者を化合物組成物(I)で治療し、次いで手術後に同じ患者をビタミンKまたは他の血液凝固薬で治療して、血液凝固が起こるのを可能にする工程を含む治療計画において使用するための、請求項1から16のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項33】
請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物または請求項17に記載の組成物を血液凝固薬と共に含むキット。
【請求項34】
治療を必要とする患者に、治療有効量の請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物または請求項17に記載の組成物を投与する工程を含む、血液凝固によって引き起こされる疾患を治療または予防する方法。
【請求項35】
式(I)の化合物がビタミンK3でない、請求項1から34のいずれかに記載の化合物、使用、キット、組合せ、医薬製剤、および/または方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−515711(P2013−515711A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545449(P2012−545449)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/GB2010/052194
【国際公開番号】WO2011/077158
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512166407)ハオマメディカ・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】