説明

抗切断性糸及びその製造方法

本発明は、異なる平均直径を有するフィラメントで製造され、優れた抗切断性を有する糸を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗切断性糸並びにそれから製造される防護布帛および衣類の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
抗切断性糸は、磨耗、切創、引裂、貫通、および穿刺に耐える布帛を製造するのに使用される。このような布帛は、研磨材または鋭利な物体を用いて作業する様々な産業の作業者、および、穿刺具や弾丸からの防護を必要とする警察や軍人のための防護衣を製造するのに使用できる。
【0003】
抗切断性糸は、ガラス、鉱物繊維、鋼から製造できるが、合成ポリマー繊維は優れた抗切断性を提供すると共に、重量に関して有利であり、完成した布帛の外観および手触りが普通の布帛と同じでなくとも類似しているため、ますます合成ポリマー繊維の使用が増加している。抗切断性糸に使用されるポリマーとしては、例えば、ポリアミド(例えば、p−およびm−アラミド)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)、およびポリアゾール(例えば、PBO)、およびPIPD(ポリジイミダゾールピリジニレンジヒドロキシフェニレン、「M5」)が挙げられる。
【0004】
合成ポリマー繊維から製造される糸は様々な紡糸プロセスを使用して製造され、それらは全て、複数の小さい開口部を有する紡糸口金の使用を含み、ポリマーの濃厚溶液または懸濁液(または溶融ポリマー)がその開口部を通して噴射されるかまたは押し出される。押し出された後、ポリマーは凝固(および固化)してフィラメントとなり、その後、紡糸されてマルチフィラメント糸となる。
【0005】
このような紡糸プロセスの例は、従来技術に記載されている。米国特許第4,078,034号明細書は、「エアーギャップ紡糸法」と称される方法を開示しており、そこでは、芳香族ポリアミドの溶液は、凝固浴に導入される前に、紡糸口金からエアーギャップ(約9mm)の中に押し出される。ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(p−アラミド)の場合、溶液は、濃H2SO4中15〜25重量%のp−アラミドからなり、凝固液は、<20重量%のH2SO4水溶液を含有し、その温度は、この急冷工程のために35℃未満に調節される。
【0006】
m−アラミドの紡糸に使用されるプロセスでは、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)などのアミド溶媒中のm−アラミドの濃厚溶液を紡糸口金から凝固水浴中に押し出す。このようなプロセスは米国特許第4,073,837号明細書に開示されている。
【0007】
紡糸口金ヘッドの孔は、所望の数および直径のフィラメントを製造するように選択される。フィラメントは、凝固する前に空気または気体中で(「紡糸延伸」と称されることが多い)、および/または、急冷/凝固プロセス中に液体中で、多くの製品ではフィラメントが最初に急冷された後または凝固した後に延伸することによって、伸長され得る。フィラメントの延伸によって平均直径が減少する。複数のフィラメントを一緒に紡糸して、各フィラメントの線密度の合計である最終線密度を有する糸を製造する。
【0008】
従来の紡糸プロセスで製造された既存の合成糸は優れた抗切断性とたいてい中程度の耐摩耗性を有するが、優れた抗切断性と改善された耐摩耗性を有する糸が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、異なるデニールを有するフィラメントを一緒に紡糸して単一の糸にすると、得られる糸は優れた抗切断性と耐磨耗性を有することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様では、本発明は、
それぞれがちょうどまたは約2〜25(好ましくは4〜10)ミクロン/フィラメントの範囲の平均直径を有する第1の複数の連続フィラメントと、
それぞれが第1の複数のフィラメントの平均直径より大きく、ちょうどまたは約10〜40(好ましくは10〜32)ミクロン/フィラメントの範囲の平均直径を有する少なくとも1つの第2の複数の連続フィラメントと
を含む糸であって、
第1および第2の複数のフィラメントが、芳香族ポリアミド、ポリオレフィン(好ましくは、UHMWPEなどのちょうどまたは約100万Daを超える分子量を有するもの)、M5、および芳香族ポリアゾールからなる群から選択される同じポリマーで製造されている糸を提供する。
【0011】
第2の態様では、本発明は、
ちょうどまたは約4〜25ミクロンの範囲の平均直径を有する第1のフィラメントと、
第1のフィラメントの平均直径より大きく、ちょうどまたは約15〜40ミクロン/フィラメントの範囲の平均直径を有する第2のフィラメントと、
第1のフィラメントの平均直径と第2のフィラメントの平均直径との間に分布した平均直径を有する複数のフィラメントと
を含む糸であって、
フィラメントが全て、芳香族ポリアミド、ポリオレフィン(好ましくは、UHMWPEなどのちょうどまたは約100万Daを超える分子量を有するもの)、M5、および芳香族ポリアゾールからなる群から選択される同じポリマーで製造されている糸を提供する。
【0012】
第3の態様では、本発明は、
それぞれが0.25〜1.25デニール/フィラメントの範囲の第1の公称線密度を有する第1の複数の連続フィラメントと、
それぞれが第1の公称線密度より大きく、1.25〜6デニール/フィラメントの範囲の第2の公称線密度を有する少なくとも1つの第2の複数の連続フィラメントと
を含む糸であって、
第1および第2の複数のフィラメントが、芳香族ポリアミド、ポリオレフィン(好ましくは、少なくとも100万Daの分子量を有するもの)、M5、および芳香族ポリアゾールからなる群から選択される同じポリマーで製造されている糸を提供する。
【0013】
第4の態様では、本発明は、本発明の糸を含む抗切断性布帛を提供する。
【0014】
第5の態様では、本発明は、本発明の抗切断性布帛を使用して製造される抗切断性衣類を提供する。
【0015】
第6の態様では、本発明は、
芳香族ポリアミド、ポリオレフィン(好ましくは、少なくとも100万Daの分子量を有するもの)、M5、および芳香族ポリアゾールから選択されるポリマーを、第1の平均直径の押出孔と第2の平均直径の押出孔を備える紡糸口金から押し出す工程であって、第1の平均直径と第2の平均直径が少なくとも1.2倍異なる工程、
を含む、抗切断性糸の製造方法を提供する。
【0016】
第7の態様では、本発明は、抗切断性糸を製造するための紡糸口金を提供し、紡糸口金は第1の平均直径の押出孔と第2の平均直径の押出孔を備え、第1の平均直径と第2の平均直径は少なくとも1.2倍異なる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の糸を製造するプロセスの概略図である。
【図2A−2D】本発明による様々なキャピラリパターンを有する紡糸口金を示す図である。
【図3】紡糸口金パックの一実施形態を示す図である。
【図4】実施例に使用されている本発明による紡糸口金を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
略称
UHMWPE:超高分子量ポリエチレン
M5:次式で示されるポリピリドビスイミダゾール
【化1】

【0019】
定義
本明細書における目的では、「フィラメント」の用語は、長さ、対、その長さに垂直な断面積を横切る幅の比が大きく、比較的可撓性があり、巨視的に均質な物体と定義される。フィラメントの断面は任意の形状とすることができるが、典型的には円形である。本明細書では、「繊維」の用語は「フィラメント」の用語と同義的に使用される。
【0020】
1つまたは複数のフィラメントに関する「より大きい」、「より小さい」、「最も大きい」、「最も小さい」および「中程度の」の表現は、1つまたは複数のフィラメントの平均直径または線密度を指す。
【0021】
フィラメントに関する「直径」は、フィラメントの断面全体を取り囲むように描くことができる最も小さい円の直径である。紡糸口金の孔に関して、直径は孔を取り囲むように描くことができる最も小さい円を指す。
【0022】
「デニール」は、フィラメントまたは糸の長さ9,000m当たりの重量(単位、グラム)である。
【0023】
「テックス」は、フィラメントまたは糸1キロメートルの重量(単位、グラム)である。
【0024】
「デシテックス」は、テックスの十分の一である。
【0025】
「キャピラリ」および「押出孔」の表現は同義的に使用され、フィラメントの形成時にポリマーが押し出される孔を意味する。
【0026】

混合平均直径フィラメントを有する本発明の糸は、単一の平均直径を有するフィラメントを含む従来の糸と比較して、高い抗切断性と耐磨耗性を示す。混合直径配置は、主に次の2つの理由で優れた抗切断性と耐磨耗性を有すると考えられる:
(1)細いフィラメントと太いフィラメントの配置は、フィラメントの互いに対する「回転(rolling)」を可能にし、このようにして攻撃力を分散させる。
(2)細いフィラメントと太いフィラメントの配置は、高充填を可能にし、このようにして糸の密度を増加させ、攻撃力に耐えるより多くの材料を提供する。
【0027】
本発明者らは、本発明の糸を、異なる平均直径を有するフィラメントで製造されていると称することを選択した。他に本発明の糸を定義するため、「平均直径」の表現の代わりに「線密度」の表現を使用することができる。本発明の糸を、異なる線密度を有するフィラメントで構成されていると称することが同様に可能である。本発明の糸は、「混合フィラメント糸」、「混合デニール糸」および/または「混合デシテックス糸」と称され得る。
【0028】
p−アラミド(例えば、ケブラー(Kevlar)(登録商標))では、フィラメントの平均直径は、ほぼ下記に示すような線密度に変換できる。
【0029】

【0030】
ポリマー
本発明の糸は、例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアゾール、およびこれらの混合物を含む、高強度の繊維を作る任意のポリマーから製造されたフィラメントで製造されてもよい。
【0031】
ポリマーがポリアミドであるとき、アラミドが好ましい。アラミドとは、アミド(−CONH−)結合の少なくとも85%が2つの芳香環に直接結合しているポリアミドを意味する。好適なアラミド繊維は、「Man−Made Fibres−Science and Technology」、第2巻、「Fibre−Forming Aromatic Polyamides」と題されたセクション、297頁、W.Blackら、Interscience Publishers、1968)に記載されている。アラミド繊維およびその製造は、米国特許第4,172,938号明細書、同第3,869,429号明細書、同第3,819,587号明細書、同第3,673,143号明細書、同第3,354,127号明細書、および同第3,094,511号明細書にも開示されている。
【0032】
好ましいアラミドは、パラアラミドである。好ましいパラアラミドは、PPD−Tと称されるポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である。PPD−Tとは、p−フェニレンジアミンとテレフタロイルクロリドを1対1のモル比で重合することによって得られるホモポリマー、並びに、p−フェニレンジアミンと共に他の少量のジアミン、およびテレフタロイルクロリドと共に他の少量のジ酸クロリドを組み込むことによって得られるコポリマーを意味する。一般に、他のジアミンおよび他のジ酸クロリドを、p−フェニレンジアミンまたはテレフタロイルクロリドの最大約10モルパーセントまでの量で、またはおそらくそれよりわずかに高い量で使用することができるが、但し、他のジアミンおよびジ酸クロリドが、重合反応に干渉する反応基を有していない場合のみ使用することができる。PPD−Tは、また、他の芳香族ジアミンおよび他の芳香族ジ酸クロリド、例えば、2,6−ナフタロイルクロリド、またはクロロ−若しくはジクロロテレフタロイルクロリド、または3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどを組み込むことによって得られるコポリマーを意味する。
【0033】
アラミドと一緒に添加剤を使用することができ、他のポリマー材料を最大10重量%までまたはそれより多くアラミドとブレンドできることが分かった。アラミドのジアミンの代わりに使用される他のジアミンを10%以上、またはアラミドのジ酸クロリドの代わりに使用される他のジ酸クロリドを10%以上有するコポリマーを使用することができる。
【0034】
ポリマーがポリオレフィンであるとき、ポリエチレンまたはポリプロピレンが好ましい。ポリエチレンとは、好ましくは100万より大きい分子量を有する主に直鎖のポリエチレン材料を意味し、それは、主鎖炭素原子100個当たり5つの変性単位を超えない少量の鎖分岐またはコモノマーを含有してもよく、またそれと混合して、アルケン−1−ポリマー、特に低密度ポリエチレン、およびポリプロピレンなどの1種類以上のポリマー添加剤、または、一般に組み込まれる酸化防止剤、潤滑剤、紫外線遮断剤、および着色剤などの低分子量添加剤を50重量%以下含有してもよい。このようなものは一般に伸びきり鎖ポリエチレン(ECPE)または超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)として知られている。ポリエチレン繊維の調製は、米国特許第4,478,083号明細書、同第4,228,118号明細書、同第4,276,348号明細書および特公昭60−047,922号公報、特公昭64−008,732号公報に記載されている。高分子量直鎖ポリオレフィン繊維は市販されている。ポリオレフィン繊維の調製は米国特許第4,457,985号明細書に記載されている。
【0035】
ポリマーがポリアゾールであるとき、好適なポリアゾールはポリベンザゾール、ポリピリダゾール、およびポリオキサジアゾールである。好適なポリアゾールとしては、ホモポリマーおよびまたコポリマーが挙げられる。ポリアゾールと一緒に添加剤を使用することができ、ポリアゾールと一緒に他のポリマー材料を最大10重量%までブレンドすることができる。また、ポリアゾールのモノマーの代わりに使用される他のモノマーを10%以上有するコポリマーも使用することができる。好適なポリアゾールホモポリマーおよびコポリマーは、米国特許第4,533,693号明細書(1985年8月6日、Wolfeらに付与)、同第4,703,103号明細書(1987年10月27日、Wolfeらに付与)、同第5,089,591号明細書(1992年2月18日、Gregoryらに付与)、同第4,772,678号明細書(1988年9月20日、Sybertら)、同第4,847,350号明細書(1992年8月11日、Harrisらに付与)、および同第5,276,128号明細書(1994年1月4日、Rosenbergらに付与)に記載されているものなどの既知の手順で製造することができる。
【0036】
好ましいポリベンザゾールは、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、およびポリベンゾオキサゾールである。ポリベンザゾールがポリベンズイミダゾールである場合、好ましくはそれは、PBIと称されるポリ[5,5’−ビ−1H−ベンズイミダゾール]−2,2’−ジイル−1,3−フェニレンである。ポリベンザゾールがポリベンゾチアゾールである場合、好ましくはそれはポリベンゾビスチアゾールであり、より好ましくはそれは、PBTと称されるポリ(ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスチアゾール−2,6−ジイル−1,4−フェンである。ポリベンザゾールがポリベンゾオキサゾールである場合、好ましくはそれは、ポリベンゾビスオキサゾールであり、より好ましくはそれは、PBOと称されるポリ(ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール−2,6−ジイル−1,4−フェニレンである。
【0037】
好ましいポリピリダゾールは、ポリ(ピリドビスイミダゾール)、ポリ(ピリドビスチアゾール)、およびポリ(ピリドビスオキサゾール)を含む、剛直棒状(rigid rod)ポリピリドビスアゾールである。好ましいポリ(ピリドビスオキサゾール)は、M5と称されるポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2,3−d:5,6−d’]ビスイミダゾールである。好適なポリピリドビスアゾールは、米国特許第5,674,969号明細書に記載されているもののような既知の手順で製造することができる。
【0038】
好ましいポリオキサジアゾールとしては、連結基間の化学単位のモルを基準にして少なくとも50%が環状芳香環単位または複素環芳香環単位である、ポリオキサジアゾールホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。好ましいポリオキサジアゾールは、オキサロン(Oxalon)(登録商標)である。
【0039】
方法および紡糸口金
本発明の混合直径連続フィラメント糸は、直径の異なる孔を有する紡糸口金を使用して製造される。直径がより小さい孔では、直径のより小さいフィラメントが得られ、直径がより大きい孔では、直径のより大きいフィラメントが得られる。紡糸口金のより小さい孔に対するより大きい孔の配置は、特に重要ではないが、直径のより小さいフィラメントを直径のより大きいフィラメントの間に挟むことが有利であり、その理由は、これによってフィラメントの回転作用が最大限になるからである。好ましい配置では、紡糸口金の孔の配置は同心円の形態であり、全体が大きい円形の孔配列を形成する。孔は配列の中心に向かって孔の直径が小さくなり、孔は配列の周囲に向かって、孔の直径が大きくなる。様々な種類の紡糸口金孔の配置の例が図2A〜Eおよび図4に示されている。図4に示されている配置は、中心から次のように、即ち、中程度のキャピラリ、次に小さいもの、次に再び中程度のもの、最後に周辺部に大きいキャピラリが、同心状に配置されたフィラメントを有する。これによって、加工中の分離および安定性に関して非常に安定な糸が提供される。より小さいフィラメントは、2つのより大きいフィラメント層の中に「押し込まれる」。この構成における圧力分布は、脱落(dripping)なく紡糸するのにより好ましい。
【0040】
本発明の糸に使用されるフィラメントの断面は、例えば、円形、楕円形、多葉形、「星形」(中心体から離れる複数のアームを有する不規則な形状を指す)および台形であってもよい。紡糸口金の孔は、所望のフィラメント直径および断面に応じて選択される。
【0041】
フィラメントの「線密度」は、ポリマーが紡糸口金孔を通して押し出される速度(質量/時間)、対、フィラメントが製造される速度(速度、または直線距離/時間)によって決定される。フィラメントのサイズ(直径)は、ポリマー密度と繊維の「線密度」の関数である。紡糸口金(または紡糸口金の断面)の孔の数は、最終的な繊維束中に所望されるフィラメントの数によって決定される(その「線密度」は中に含まれる個々のフィラメントの合計である)。紡糸口金の各孔のサイズおよび形状は、所望のフィラメント直径を作り出すのに必要な圧力損失、剪断、紡糸延伸、および配向の影響を受ける。p−アラミド紡糸口金の好ましい実施形態では、より小さい孔は、ちょうどまたは約35〜65ミクロン、より好ましくはちょうどまたは約50ミクロンの直径を有し、より大きい孔は、ちょうどまたは約60〜90ミクロン、より好ましくはちょうどまたは約64ミクロンの直径を有する。好ましくは、より大きい孔の直径とより小さい孔の直径の比は、ちょうどまたは約1.2〜ちょうどまたは約3、より好ましくはちょうどまたは約1.3〜2.5である。3つの異なる直径のフィラメントを有する糸を製造するために、例えば、孔が次の範囲である、即ち、最も小さいものが35〜65ミクロン(好ましくは45〜55ミクロン)、中程度のものが64〜80ミクロン、最も大きいものが75〜90ミクロンである紡糸口金を使用してもよい。
【0042】
紡糸口金は、紡糸されるポリマーまたはポリマー溶液若しくは懸濁液に適した材料で製造される。濃H2SO4から紡糸されるp−アラミドでは、好ましい材料はタンタル、タンタル−タングステン合金、および金−白金(ロジウム)合金である。使用され得る他の材料としては、Hastelloy(登録商標)C−276などの高級ステンレス鋼[即ち、高いクロム(>15重量%)および/またはニッケル(>30重量%)含有量を有する]、セラミックス、およびセラミックスで製造されたナノ構造体が挙げられる。p−アラミド紡糸口金は、また、タンタル−タングステン合金上に純粋なタンタルクラッドを形成したもののような混合材料から製造されてもよい。必要な耐食性と30,000psi(2,110kg/cm2)未満の熱処理降伏強度を有する限り、クラッド層にタンタル以外の材料を使用することができる。このような好適な材料には、硬度が増加する順に挙げると、金、M金属(金90重量%/ロジウム10重量%)、C金属(金69.5重量%/白金30重量%/ロジウム0.5重量%)、D金属(金59.9重量%/白金40重量%/レニウム0.1重量%)、およびZ金属(金50.0重量%/白金49.0重量%/ロジウム1.0重量%)がある。後者は実質的にタンタルと同じ硬度である。また、金75%/白金25%の合金も好適である。しかし、これらの金属は全て、タンタルよりずっと高価である。Z金属以外は全てタンタルより使用中にずっと損傷を受け易い。しかし、非常に高いL/D比(例えば、3.5より大きい)を有するキャピラリを形成するときは、柔軟な材料の方が有利である。
【0043】
ポリマーは、紡糸口金を通して溶液、懸濁液または溶融物として押し出され、得られるフィラメントは紡糸されて糸となり、特定のポリマーに好適な方法で処理される。
【0044】
或いは、本発明の混合デシテックス糸は、「オフラインアセンブリ」で製造することができる、即ち、紡糸後に異なるデニールのフィラメントを集束することができる。しかし、オフラインアセンブリは、直接紡糸(即ち、異なるサイズの孔を有する紡糸口金を使用して、混合デシテックスフィラメントを有する糸を直接製造する)よりも好ましくないが、その理由は、オフラインアセンブリでは直径の異なるフィラメントの分離が起こり、その結果、攻撃力に対する耐性がより低い不均質な糸が得られる可能性があるからである。
【0045】
フィラメントの一群は、その群の任意のフィラメントの平均直径の平均からの偏りがちょうどまたは約0.4ミクロン未満である場合、同じ平均直径を有するものとして分類され得る。
【0046】
好ましい実施形態では、2つのサイズのフィラメントが糸を構成する。この場合、小さい方のフィラメントがちょうどまたは約8〜22ミクロンの範囲の平均直径を有し、大きい方のフィラメントがちょうどまたは約16〜32ミクロンの範囲の平均直径を有することが好ましい。これらの範囲は重なるが、小さい方のフィラメントと大きい方のフィラメントは、小さい方のフィラメントの平均直径が大きい方のフィラメントの平均直径より小さくなるように、異なる平均直径を有するように選択されることが分かる。例えば、本発明には、平均直径がちょうどまたは約8ミクロンである小さい方のフィラメントと平均直径がちょうどまたは約16ミクロンである大きい方のフィラメントを有する糸、および、平均直径がちょうどまたは約22ミクロンである小さい方のフィラメントと平均直径がちょうどまたは約32ミクロンである大きい方のフィラメントを有する糸が挙げられている。
【0047】
2つのサイズのフィラメントからなる糸では、小さい方のフィラメントと大きい方のフィラメントの差がちょうどまたは約2倍以下であり、より好ましくはちょうどまたは約1.5倍以下であることが好ましい。フィラメントのサイズが異なりすぎると、分離が起こり、不均質になり抗切断性が減少する可能性がある。好ましくは、大きい方のフィラメントと小さい方のフィラメントの直径の比はちょうどまたは約1.3〜1.5である。
【0048】
糸が2つの異なる平均直径を有するフィラメントで構成されている実施形態では、第2の複数のフィラメント(即ち、平均直径が大きい方)が糸中のフィラメントの(数で)ちょうどまたは約20〜60%を構成し、第1の複数のフィラメント(即ち、直径が小さい方)が糸中のフィラメントの(数で)ちょうどまたは約40〜80%を構成する。より好ましくは、直径が大きい方のフィラメントは糸中のフィラメントの(数で)ちょうどまたは約45〜55%を構成し、直径が小さい方のフィラメントは糸中のフィラメントの(数で)ちょうどまたは約45〜55%を構成する。
【0049】
別の好ましい実施形態では、3つのサイズのフィラメントが糸を構成する。この場合、最も小さいフィラメントがちょうどまたは約4〜10ミクロン(より好ましくはちょうどまたは約6〜9ミクロン)の範囲の平均直径を有し、中程度のフィラメントがちょうどまたは約10〜13ミクロンの範囲の平均直径を有し、最も大きいフィラメントがちょうどまたは約14〜18ミクロンの範囲の平均直径を有することが好ましい。例えば、次の平均直径、即ち:8、12および16ミクロンの平均直径を有するフィラメントで構成された糸で有利な結果が得られる。3つのサイズのフィラメントを有する糸では、好ましくは最も小さいもの:中程度のもの:最も大きいものの平均直径の比は、ちょうどまたは約2:6:8、より好ましくはちょうどまたは約2:3:4である。
【0050】
糸が、3つの異なる平均直径(線密度)を有するフィラメントで構成されている実施形態では、第3の複数のフィラメント(即ち、最も大きいもの)が糸中のフィラメントの(数で)ちょうどまたは約15〜35%を構成し、第2の複数のフィラメント(即ち、中程度のもの)が糸中のフィラメントの(数で)ちょうどまたは約30〜45%を構成し、第1の複数のフィラメント(即ち、最も小さいもの)が糸中のフィラメントの(数で)ちょうどまたは約30〜45%を構成する。
【0051】
他の好ましい実施形態では、本発明の糸は4、5、6またはそれより多くのサイズのフィラメントで構成される。
【0052】
「連続的」と称される別の実施形態では、本発明の糸は、最も大きいフィラメントまたはフィラメント群(例えば、ちょうどまたは約15〜40ミクロンの平均直径)、および最も小さいフィラメントまたはフィラメント群(例えば、ちょうどまたは約4〜25ミクロンの平均直径)(ここで、最も大きいフィラメント(またはフィラメント群)と最も小さいフィラメント(またはフィラメント群)は異なる平均直径を有する)、並びに、最も大きいフィラメントと最も小さいフィラメントの平均直径の間に分布する平均直径を有する複数のフィラメントからなる。このような配置では、非常に高い充填密度(>90%)を得ることができ、その結果、抗切断性の高い糸が得られる。
【0053】
紡糸口金の孔のサイズは、押し出されるフィラメントの平均直径に影響を与える。フィラメントを延伸するため(延伸)に使用される張力も、フィラメントの平均直径と完成した糸の特性に影響を与える。延伸によってフィラメントの平均直径は減少する。
【0054】
繊維が凝固浴から引き取られる時の繊維の速度を、ポリマーが紡糸孔から紡出される時のポリマーの速度より高くなるように調整することによって、強力、弾性率および伸度などのフィラメントの様々な物理的性質並びにその直径も調整することができる。ここで言及した2つの速度の比は、フィラメントが凝固浴で凝固するp−アラミドでは紡糸延伸と称され、実質的に繊維が急冷された後に伸長されるUHMWPEなどの繊維に言及するときは延伸比と称される。UHMWPEで達成され得る高い延伸比は50〜100倍に達し得る。p−アラミドでは典型的な紡糸延伸比は約2〜14である。
【0055】
本発明の糸を構成するフィラメントは、ほぼ円形の断面を有してもよい。円形の断面は、互いに対するフィラメントの「回転(rolling)」を最大にし、このようにして抗切断性が最大になる。円形の断面はまた充填密度を最大にし、抗切断性にも有利である。代替の実施形態では、フィラメントの断面は楕円形であってもよい。より小さいフィラメントの断面が円形であり且つ大きいフィラメントの断面が楕円形であること、またはその逆も可能である。フィラメントの断面は、紡糸口金の孔の形状の影響を受け、丸い孔では円形の断面が得られ、楕円形の孔では楕円形の断面が得られる。それはまた、内部キャピラリ形状、平行またはらせん状に配置された溝およびチャネルの影響も受ける。更に、それは、凝固プロセスの影響を受け、例えば、m−アラミド(例えば、ノメックス(Nomex)(登録商標))フィラメントは、乾式紡糸の場合、典型的には二葉「ドッグボーン」の形状を有し、または、湿式紡糸の場合、多葉形または「星形」であるが、その理由は、溶媒がコアから脱溶媒される前にスキンが凝固し、収縮領域が外周部を「占め」ないからである。
【0056】
本発明の糸は、好ましくは、ちょうどまたは約15〜40g/デニール、より好ましくはちょうどまたは約25〜35g/デニールの強力を有する。
【0057】
本発明の糸は、好ましくは、ちょうどまたは約1.5〜15%、より好ましくはちょうどまたは約2〜4%の破断点伸びを有する。
【0058】
本発明の糸は、好ましくは、ちょうどまたは約5〜450N/テックス、より好ましくはちょうどまたは約50〜400N/テックスの弾性率を有する。
【0059】
好ましい実施形態では、本発明の糸は、ちょうどまたは約25〜35g/デニールの強力、ちょうどまたは約2〜4%の破断点伸び、ちょうどまたは約50〜400N/テックスの弾性率を有する。
【0060】
本発明の糸を構成するフィラメントの数は限定されず、最終用途および最終的なヤーに必要な線密度に依存する。典型的な糸は合計16〜1500のフィラメントからなる。好ましい実施形態では、糸中のフィラメントの総数は276であり、そのうち(数で)45〜55%がより小さいフィラメントであり、(数で)45〜55%がより大きいフィラメントである。
【0061】
第1および第2の複数のフィラメントより平均直径が大きい第3の複数のフィラメントを有する本発明の糸で、一例では糸中に合計276のフィラメントがあり、その(数で)25〜50%が最も小さいフィラメントであり、(数で)25〜50%が中程度のフィラメントであり、(数で)15〜35%が最も大きいフィラメントである。
【0062】
本発明の糸は、好ましくは、ちょうどまたは約80〜95%、より好ましくはちょうどまたは約90〜95%の可能な最大の充填密度を有する。断面および充填密度は、エポキシ樹脂の繊維流の通過を可能にするように底部が穿孔された円筒状の型に入れられたエポキシ樹脂の中に比較的小さい張力がかかった状態で繊維を固定化することによって測定することができる。次いで、型に入れられた試料を室温で12時間硬化させる。次いで試料を液体窒素中で1分間凍結させ、繊維の軸を横切るように切断し、SEM顕微鏡で拡大して画像分析および直径測定および空隙比の評価を行う。使用される試料調製は走査顕微鏡法では周知であるが、但し研磨は行わない。
【0063】
充填密度は、フィラメントの相対的な直径(即ち、線密度)、および第1の複数のフィラメント(即ち、小さい方)の数と第2の複数のフィラメント(即ち、大きい方)の数の比の影響を受ける。第1の複数のフィラメントと第2の複数のフィラメントの比がちょうどまたは約0.5(即ち、小さい方のフィラメントが数で50%および大きい方のフィラメントが数で50%)であり、フィラメント間の平均直径の差が大きい(大:小がちょうどまたは約2である)糸は、典型的には、高い充填密度(例えば、好ましくは90%より大きく、典型的には90〜95%)を有する。更に、「連続的な」実施形態で製造された糸も高い充填密度を有する。
【0064】
中心に12ミクロンのフィラメントを57本、第1の層の周囲に同心状に配置された8ミクロンのフィラメントを115本、次いで第2の層の周囲に同心状に配置された12ミクロンのフィラメントを更に58本、および第3の層の周囲に外側に配置された16ミクロンのフィラメントを46本含むフィラメント混合物で約90%の充填密度を得ることができる。
【0065】
本発明の糸は、優れた快適性を有し、抗切断性、耐摩耗性、および耐貫通性のある布帛を製造するのに特に適している。このような布帛は従来技術で既知の編組、編成、または織成技術で製造されてもよい。本発明の糸から製造される布帛は、抗切断性、耐摩耗性、および耐貫通性のある衣類、例えば、手袋、履物、カバーオール、ズボンおよびシャツ、並びに、手袋の掌部、ズボン、カバーオールまたはシャツの折り返しなどの、特定の抗切断性、耐摩耗性、および耐貫通性を必要とする衣類の部分を製造するのに使用されてもよい。このような物品は様々な樹脂およびエラストマーでコーティングされてもよい。
【0066】
更に、本発明の糸は、大部分一方向性の(平行な)糸が樹脂およびエラストマーなどの固定化媒体中に埋め込まれているまたは一部埋め込まれている一方向性の防護構造に組み込まれてもよい。
【実施例】
【0067】
温度:全ての温度は摂氏(℃)で測定される。
【0068】
デニールは、ASTM D 1577に準拠して決定され、繊維9000メートルの重量(単位、グラム)として表される繊維の線密度である。デニールは、ドイツ、ミュンヘン(Munich, Germany)のTextechno製のVibroscopeで測定することができる。デニール×(10/9)は、デシテックス(dtex)に等しい。
【0069】
糸の製造方法
図1を参照すると、(10)で記載されているプロセスで、ポリマーとして、ポリマー4.5kgを含有するポリパラフェニレンテレフタルアミドのバッチ溶液調製物を使用して、本発明による糸を製造した。酸18.6kgをミキサにポンプで圧送し、攪拌しつつ−22℃に冷却し、窒素雰囲気中で凍結スラッシュ(frozen slush)を形成した(12)。ポリマーの二分の一から三分の一を最初に添加し、残量のポリマーを添加する前に10分間混合した。次いで、ミキサを取り囲むジャケットを87℃に加熱した(14)。溶液をその温度に1時間半維持した後、ミキサ攪拌機と真空ポンプを停止し、ミキサを窒素で1.7バール(絶対)に加圧した。
【0070】
ポリマー溶液バッチを製造した後、5cm3の計量ポンプ(16)を使用して、溶液を(18)の、図3に示されているフロープレート(22)およびスクリーンパック(20)を通して、460m/分で運転する紡糸プロセスに移送した。図4に示されている276孔の紡糸口金(24)を使用して糸を紡糸した。本発明の糸では、紡糸口金は、76μのキャピラリ直径を有する46個の孔(24a)、64μのキャピラリ直径を有する115個の孔(24b)、および51μのキャピラリ直径を有する115個の孔(24c)を有し、孔の配置は図4に示されている。
【0071】
図3を参照すると、フィラメントは、6mmのエアーギャップ(26)を通った後、3℃の急冷浴(28)水に導入され、急冷ジェット(30)(0.2mmの間隙を有する直径6.4mmの放射状噴流)を通過して紡糸された。急冷浴のジェットおよびトレイフローはそれぞれ2.3l/分および5.3l/分に設定された。図1を参照すると、糸は急冷された後、酸水洗(32)に送られた。中心線間隔445mmで、直径113mmの1対のロール(34)に30回巻き付けられた。水流は15l/分であり、張力は0.7〜1.0g/デニール(0.8〜1.1g/デシテックス)であった。酸洗浄後、糸は、また、別の洗浄キャビネット(36)上に移動し、酸洗浄ロールと同じ直径および中心線間隔を有する1対のロール上に30回巻き付けられた。洗浄キャビネットの最初の半分はアルカリ洗浄(38)(水酸化ナトリウム溶液からなる)であり、後の半分は水洗(40)であった。アルカリ洗浄のための濃アルカリ流および希薄アルカリ流は、それぞれ7.5l/mm、張力は0.5〜0.8g/デニール(0.55〜0.89g/デシテックス)であった。次いで、糸を、中心間隔257mmで直径160mmの1対のロール(42)上に34回巻き付けて、311℃で乾燥させた。糸を乾燥させた後、仕上剤を塗布し(44)、包装ロール(46)上に巻き取った。
【0072】
本発明の試料
本発明の試料は、以下のような、図4に示す紡糸口金から吐出される400デニールの糸から製造された:
2〜2.6dpf(直径約16ミクロン)のフィラメントが得られる46個のキャピラリ(24a);
1.5dpf(直径約12ミクロン)のフィラメントが得られる115個のキャピラリ(24b);および
0.65〜1dpf(直径約8ミクロン)のフィラメントが得られる115個のキャピラリ(24c).
【0073】
糸を編成して、面密度約400g/m2の試料を得た。
【0074】
対照試料
紡糸口金が1つのサイズの孔しか有しておらず、1.5dpf(直径約12ミクロン)のフィラメントしか得られなかったこと以外、正確に前述したように製造された糸を使用して対照試料を製造した。得られた糸は400デニールであり、1.5dpfのフィラメントのみからなった。糸を編成して面密度約400g/m2の試料を得た。
【0075】
本発明の糸の試験
抗切断性
磨耗切創手順
磨耗切創試験手順は、EN388:19941の現行の手順に基づいたが、円形ブレードに加えられる重力に関してそれに変更を行った、即ち、5N相当の力の代わりに2.9N相当の力を加え、磨耗を促進する切創サイクル数を増加させた。(1機械的リスクから守る防護手袋)
【0076】
手順は、EN文献に記載されている。それは、次のように要約できる:
【0077】
重ね合わせた2層の長方形の試料(約80×100mm)を同時に試験した。5Nの代わりに2.9Nの荷重を所定の位置に加えた。試験試料を、導電性ゴムで被覆した支持体上に載せた。円形の回転ブレードの水平移動距離は50mmであった。得られる周辺線速度は10cm/sであった。切創試験機に、試料全体の切創を検出する自動導電システムを装備した。
【0078】
EN388−1994手順の規格に準拠して、綿の標準的な布帛を使用して開始時と各試料試験の間にブレードの鋭利さを検査した。
【0079】
EN388−1994に記載されているサイクル数と提案された計算に基いて、切創レベルを計算し、0〜5の切創レベルが決定されたが、0は達成可能な最も低い切創保護レベルであり、5は最も高いものである。
【0080】
結果
本発明の試料では、切断に必要なサイクルは300超であったが、同一のフィラメント100%で製造された対照では、切断に必要なサイクルは150未満であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがちょうどまたは約2〜25ミクロン/フィラメントの範囲の平均直径を有する第1の複数の連続フィラメントと、
それぞれが前記第1の複数のフィラメントの直径より大きく、ちょうどまたは約10〜40ミクロン/フィラメントの範囲の平均直径を有する少なくとも1つの第2の複数の連続フィラメントと
を含む糸であって、
前記第1および第2の複数のフィラメントが、芳香族ポリアミド、ポリオレフィン(好ましくは、UHMWPEなどのちょうどまたは約100万Daを超える分子量を有するもの)、M5、および芳香族ポリアゾールからなる群から選択される同じポリマーで製造されている糸。
【請求項2】
前記ポリマーが芳香族ポリアミドである、請求項1に記載の糸。
【請求項3】
前記ポリマーが芳香族ポリアゾールである、請求項1に記載の糸。
【請求項4】
前記ポリマーがポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である、請求項1に記載の糸。
【請求項5】
前記ポリマーがM5である、請求項1に記載の糸。
【請求項6】
3つの異なる平均直径を有するフィラメントからなり、最も小さいフィラメントがちょうどまたは約4〜10ミクロンの平均直径を有し、中程度のフィラメントがちょうどまたは約10〜13ミクロンの平均直径を有し、最も大きいフィラメントがちょうどまたは約14〜18ミクロンの範囲の平均直径を有する、請求項1に記載の糸。
【請求項7】
2つの異なる平均直径を有するフィラメントからなり、前記第1の複数のフィラメントが、前記糸中のフィラメントの数でちょうどまたは約40〜80%である、請求項1に記載の糸。
【請求項8】
3つの異なる平均直径を有するフィラメントからなり、最も小さいフィラメントが前記糸中のフィラメントの数でちょうどまたは約30〜45%を構成し、中程度のフィラメントが前記糸中のフィラメントの数でちょうどまたは約30〜45%を構成し、最も大きいフィラメントが前記糸中のフィラメントの数でちょうどまたは約15〜35%を構成する、請求項1に記載の糸。
【請求項9】
2つの異なる平均直径を有するフィラメントを含み、前記大きい方のフィラメントの平均直径と前記小さい方のフィラメントの平均線密度の比がちょうどまたは約1.3〜1.5である、請求項1に記載の糸。
【請求項10】
ほぼ円形の断面を有するフィラメントを含む、請求項1に記載の糸。
【請求項11】
ちょうどまたは約85〜95%の充填密度を有する、請求項1に記載の糸。
【請求項12】
請求項1に記載の糸を含む抗切断性布帛。
【請求項13】
請求項1に記載の糸を含む抗切断性衣類。
【請求項14】
請求項1に記載の糸を含む一方向性防護構造。
【請求項15】
ちょうどまたは約4〜25ミクロンの範囲の平均直径を有する第1のフィラメントまたはフィラメント群と、
前記第1のフィラメントの平均直径より大きく、ちょうどまたは約15〜40ミクロン/フィラメントの範囲の平均直径を有する第2のフィラメントまたはフィラメント群と、
前記第1のフィラメントの平均直径と前記第2のフィラメントの平均直径の間に分布する平均直径を有する複数のフィラメントと
を含む糸であって、
前記フィラメントが全て、芳香族ポリアミド、ポリオレフィン(好ましくは、UHMWPEなどのちょうどまたは約100万Daを超える分子量を有するもの)、M5、および芳香族ポリアゾールからなる群から選択される同じポリマーで製造されている、請求項1に記載の糸。
【請求項16】
芳香族ポリアミド、ポリオレフィン(好ましくは、少なくとも100万Daの分子量を有するもの)、M5、および芳香族ポリアゾールから選択されるポリマーを、第1の平均直径を有する複数の押出孔と第2の平均直径を有する複数の押出孔とを備える紡糸口金から押し出す工程であって、前記第1の平均直径と前記第2の平均直径が少なくとも1.2倍異なる工程、
を含む抗切断性糸の製造方法。
【請求項17】
前記ポリマーが芳香族ポリアミドである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマーが芳香族ポリアゾールである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマーがポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマーがM5である、請求項16に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図2E】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−509506(P2010−509506A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532400(P2009−532400)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/021689
【国際公開番号】WO2008/045492
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】