説明

抗原に対する粘膜寛容の誘導

本発明は、免疫モデュレーション化合物産生微生物と組み合わせた抗原の粘膜デリバリー、好ましくは経口デリバリーによる、抗原に対する寛容の誘導に関するものである。さらに具体的には、本発明は、免疫抑制サイトカイン分泌微生物と組み合わせた抗原の経口デリバリーにより、前記抗原への望まれない免疫反応を抑制することができるFoxp3+調節性T細胞ならびに/またはIL−10および/もしくはTGF−β産生調節性T細胞の誘導に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘膜による、好ましくは免疫モデュレーション化合物産生微生物と組み合わせた抗原の経口デリバリーによる、抗原に対する寛容の誘導に関するものである。さらに具体的には、本発明は、免疫抑制サイトカイン分泌微生物と組み合わせた前記抗原の経口デリバリーによる、抗原に対する望まれない免疫反応を抑制することができるFoxp3+ならびに/またはIL−10および/もしくはTGF−β産生抗原特異的調節性T細胞の誘導に関するものである。
【0002】
発明の分野
免疫系は、自己と非自己とを識別する課題を有する。呼吸器、消化器および尿生殖器に沿って存在する粘膜免疫系は、食物、空気中の抗原または共生細菌フロラなどの多数の細菌および無害な抗原と共に共存する追加の負担を負う。粘膜免疫系の主要な特徴は、それがこれらの抗原に対して寛容であり続けるが、効果的に病原体を忌避する能力を保持できることである。注射によろうと損傷によろうと、抗原の導入は、全身的に炎症細胞の局所浸潤および特異的免疫グロブリン産生に至る。対照的に、消化管および尿生殖器などの粘膜表面に導入された抗原は、それらの抗原に対する免疫反応の能動的な阻害を全身的に誘発する。消化管を介した抗原の投与によるこれらの調節された反応の特異的誘導は、経口寛容として公知である。抗原の経口投与は、全身不反応性に至ることがあり、(ステロイドのように)望まれない副作用を有する免疫抑制性医学発明物の魅力的な代替物である。本発明は、特に、低用量の抗原への繰り返し曝露により得られる低用量寛容の分野にある。粘膜を介する寛容の誘導は、自己免疫性疾患、アレルギー性疾患および炎症性疾患に対する処置戦略として提案されてきた。
【背景技術】
【0003】
技術の現状
経口寛容は1911年に最初に記載されたが、研究者が、関係するメカニズムに取り組み始めたのは1970年代後半になってからであった(Mayer and Shao, 2004a)。経口寛容の発生には、抗特異的T細胞の除去、過大な免疫偏向、およびアネルギーの誘導からTregによる抑制までいくつかのメカニズムが提案されてきた(Mucida et al., 2005)。大部分の研究者は、経口寛容を得る二つの別個の方法があることに意見が一致しており、それらは、抗原の単回高用量後に得られる、アネルギーおよび/または除去に基づく高用量寛容(Friedman and Weiner, 1994)ならびに低用量の抗原への繰り返し曝露によって得られる、Foxp3+、IL−10および/またはTGF−β産生調節性T細胞を含めたCD4+T細胞による免疫反応の能動的な抑制によって仲介される低用量寛容である。重要なことに、粘膜寛容により誘導される調節性T細胞は、あるタンパク質に特異的な調節性細胞が別のタンパク質に対する近くのエフェクター細胞の反応を抑制する過程であるバイスタンダー抑制を仲介することが示された。器官特異的自己免疫を誘導する抗原のプールが主として未知であることから、バイスタンダー抑制は抗原誘導性抑制の重要な特徴であり、これはエピトープスプレッディングの現象を無効にする。エピトープスプレッディングは、初期の免疫反応が時間と共に拡大し、他の抗原に対する反応を含むようになる、自己免疫性疾患およびアレルギー性疾患の合併症である。
【0004】
経口寛容の誘導に果たす樹状細胞の役割は、in vivoでFlt3Lが駆動するDCのエクスパンション(Viney et al. 1998)およびRANK−L介在性DC活性化(Williamson et al., 2002)の後に高まった経口寛容が示される研究により示唆された。特に未熟樹状細胞は、おそらく調節性T細胞の誘導により寛容を仲介することができる。さらにIL−10は、調節性T細胞の誘導に関与する寛容化樹状細胞の局在を拡充しながら未熟樹状細胞の機能をモデュレーションし、未熟樹状細胞の終末分化を阻害することができる(De Smedt et al. 1997)。
【0005】
粘膜寛容の誘導は、アレルギー性疾患および自己免疫性疾患の多数の実験モデルで評価されてきたが、ヒトでの試験からの臨床データは、一般に期待外れであった。経口寛容を実現するために、免疫モデュレーション化合物と組み合わせて、または組み合わせずに抗原をデリバリーするいくつかの試みがなされたが、大部分の場合でその効果は有意ではない。どの事象でも、結果はヒトに移すための方法として十分ではない。全てのこれらの実験における主要な問題は、CD4+T細胞の誘導およびその後の抗原特異的調節性T細胞の産生を介した能動的な抑制が観察されていないことである。これが観察されている場合に限り、ヒトにおいて抗原に対する免疫反応の真の能動的な抑制を得ることができる。
【0006】
治療的適用および予防的適用のための、ターゲティングされた、さらに効率的な分子のデリバリーは、製薬業界にとって優先事項である。有効な戦略は、所望の作用部位に分子を集中させることにより必要な用量を減少させ、安全性を上げ、かつ有効性を高めるはずである。粘膜経路の薬物デリバリーおよびワクチンデリバリーは、注射に比べて多くの物流の利点および生物学的利点を与える。経口デリバリーは、投与の容易さを受けて特に魅力的である。しかし、消化管分解および低レベルの吸収は、一般にこの経路のペプチド性およびタンパク質性薬物のデリバリーを無効にする。鼻、直腸、肺および眼経路などの代替的な粘膜経路もまた研究されている。タンパク質性およびペプチド性ワクチン抗原の粘膜デリバリーは、一般に免疫反応をあまり刺激せず、免疫寛容を誘導することができる。
【0007】
IL−4、TGF−β、IL−10(Slavin et al., 2001)および抗IL−12の粘膜デリバリーは、全て寛容を高めると仮定されてきた。インターロイキン10(IL−10)は、低用量寛容の発生に重大な役割を果たす(Slavin et al., 2001 ; Mauer et al., 2003)。低用量経口ミエリン塩基性タンパク質および同時の経口IL−10を用いたマウスの処置は、実験的自己免疫性脳脊髄炎の重症度および発生を低下させるが、治療効果は低く、ヒトに決して十分に有効ではないことが示された。これらの実験において、IL−10の補給量は高い(1μgから10μg)が、数値は高用量の投与の方が有効であることを示唆している。増殖、IL−12およびIFN−γ分泌に及ぼす0.1μgのIL−10のin vitro抑制効果が観察されたが、疾患に対して0.1μgのIL−10およびMBP処置の併用効果は見られなかった。低用量経口ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG)と組み合わせたIL−10の経口投与を用いて同じマウス実験が行われたが、その実験は、MOG誘導性マウスモデルにおいて再発減少を招いた。ここでもまた治療効果は低く、IL−10補給量は高く、高用量の使用の方が有効な数値を示している。両実験において、長期持続免疫寛容による免疫反応の能動的な抑制はないか、またはその抑制はヒトに有効であるには少なくとも不十分である。特になぜかというと、ヒトに移すのに十分な実際の治療効果を断定するためには、最終的に調節性T細胞の産生を招く抗原特異的CD4+T細胞の誘導が観察されなければならないからである。そのようなメカニズムだけが、ヒトにおける免疫反応を能動的に抑制することができるであろう。前述の例の全てにおいて、CD4+T細胞の誘導は観察されなかった。
【0008】
ミクロフロラが経口寛容の誘導に役割を果たすことは、一般に合意されている(Moreau and Corthier, 1988; Gaboriau-Routhiau et al., 2003)。Di Giacintoら(2005)は、プロバイオティクスがIL−10およびIL−10依存性TGF−β保持調節性細胞を誘導しうることを示唆している。しかし、この効果がどのように発揮されるかは全く明らかではなく、腸管での微生物の単なる存在では不十分である(Rask et al., 2005)。さらに、プロバイオティクスはアレルギーおよび喘息の症状を改善することがあるが、その結果は必ずしも明確ではなく、プロバイオティクス単独の使用は、信頼できる経口寛容反応を誘導するには十分ではない。アレルギー性免疫反応を予防するために乳酸菌により低用量抗原をデリバリーするいくつかの試みがなされ(Daniel et al., 2006)、それは低下したアレルゲン特異的IgE反応および高まったアレルゲン特異的分泌性IgA反応に至った。Tヘルパー2型反応からより大きいTヘルパー1型反応へ免疫の均衡を望ましく移動させることがマウスで実現されているが、遊離アレルゲンのデリバリーに関して顕著な改善はない。一般に、アレルゲンのそのような単独デリバリーのアプローチは、ヒトに同一の結果を実現するには不十分であろう。これは、そのような戦略が非常に長期の間欠性の処置を必要とするものであるが、調節性T細胞の誘導は実現されないか、または真の能動的な長期持続性の免疫寛容の効果を実現する調節性区画を設置するには少なくとも不十分であるという事実による。別の例では、ミエリン抗原を発現しているリコンビナント乳酸菌の経口投与は、マウスモデルにおいて低下した実験的自己免疫性脳脊髄炎を招いた(Maassen et al., 2003)。しかし、治療効果は低く、ヒトに移すには不十分とみなされる。特になぜかというと、ヒトに移すのに十分な実際の治療効果を断定するためには、最終的に調節性T細胞の産生を招く抗原特異的CD4+T細胞の誘導が観察されなければならないからである。そのようなメカニズムだけが、ヒトにおける免疫反応を能動的に抑制することができるであろう。前述の例の全てにおいて、CD4+T細胞の誘導は観察されなかった。
【0009】
したがって、当技術分野において抗原の寛容を効果的に誘導する問題が残る。
【0010】
発明の概要
驚くことに本発明者らは、免疫モデュレーション化合物産生微生物の粘膜デリバリーと組み合わせた抗原の粘膜デリバリーが、好ましくは当該抗原が微生物により発現され、好ましくは当該粘膜デリバリーが経口的に行われるならば、安定な粘膜寛容反応を誘導することができることを見い出した。本発明者らは、抗原発現微生物単独の粘膜デリバリーに比べて、そのような組み合わせの粘膜デリバリーの方が抗原特異的免疫反応の有意に良好な抑制を与えることを観察した。なおさらに驚くことに、抗原の経口デリバリーとの組み合わせであろうとなかろうと、遊離の免疫モデュレーション化合物の経口デリバリーに比べて、本発明により得られる免疫抑制の方が有意に有効である。
【0011】
本発明者らは、抗原もしくはIL−10産生L.lactis単独を用いた単独療法よりも、または経口投与された遊離IL−10と組み合わせた抗原よりもずっと高い効率で、本発明が経口寛容を誘導することができることを実証する。抗原特異的調節性T細胞のin vivo活性化は強く高まった。これらの細胞は、免疫適格レシピエントに優性寛容を伝達し、バイスタンダー抑制さえも仲介する。本発明の有効性は、自己免疫性疾患およびアレルギー性疾患マウスモデルにおいて、ならびに治療薬の免疫不活性化に関連して実証された。
【0012】
本発明の詳細な説明
この開示全体にわたり、様々な公報、特許および公開された特許明細書は、確認引用文献により参照される。これらの公報、特許および公開された特許明細書の開示は、本発明が属する技術の現状をさらに完全に説明するために、これによって本開示への参照により組み入れられる。
【0013】
A.一般的な技法
本発明の実施は、特に示さない限り、当該技術の熟練の範囲内である有機化学、薬理学、分子生物学(リコンビナント技法を含む)、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技法を採用する。そのような技法は、"Molecular Cloning: A Laboratory Manual" Second Edition(Sambrook et al., 1989); "Oligonucleotide Synthesis" (M. J. Gait, ed., 1984); "Animal Cell Culture" (R. I. Freshney, ed., 1987); "Methods in Enzymology" (Academic Press, Inc.)のシリーズ; "Handbook of Experimental Immunology" (D. M. Weir & C. C. Blackwell, eds.); "Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells" (J. M. Miller & M. P. Calos, eds., 1987); "Current Protocols in Molecular Biology" (F. M. Ausubel et al., eds., 1987および定期刊行物); "Polymerase Chain Reaction" (Mullis et al., eds., 1994); および "Current Protocols in Immunology" (J. E. Coligan et al., eds., 1991)などの文献に十分に説明されている。
【0014】
B.定義
本明細書に使用するある用語は以下の特定の意味を有することがある。明細書および特許請求の範囲に使用する単数形「a」「an」および「the」は、状況が明らかに別のものを指示しない限り複数の参照を含む。例えば、「細胞」という用語は、その混合物を含めた複数の細胞を含む。同様に、本明細書に記載される処置または薬剤の調製のための「化合物」の使用は、状況が明らかに別のものを指示しない限り、そのような処置または調製のために本発明の一つまたは複数の化合物を使用することを考えている。
【0015】
本明細書に使用する用語「含んでいる」は、その組成物および方法が、引用された要素を含むが、その他を排除しているわけではないことを意味することを意図する。組成物および方法を定義するために使用されるときの「本質的になる」は、その組み合わせから任意の本質的に重要な他の要素を除外することを意味するものとする。したがって、本明細書に定義される要素から本質的になる組成物は、単離精製法からの微量混入物、およびリン酸緩衝生理食塩水、保存料などの薬学的に許容され得る担体を除外しない。
【0016】
「からなる」は、他の成分の微量を超える要素および本発明の組成物を投与するための実質的な方法のステップを除外することを意味するものとする。
【0017】
これらの転換する用語のそれぞれにより定義される態様は、本発明の範囲内に属する。
【0018】
本発明の第一の局面は、抗原に対する免疫寛容を誘導するための方法であり、その方法は、免疫モデュレーション化合物産生微生物の粘膜デリバリーと組み合わせた前記抗原の粘膜デリバリーを含む。
【0019】
好ましくは本発明は、免疫寛容を誘導する粘膜デリバリー用の薬剤を調製するための、抗原と組み合わせた免疫モデュレーション化合物産生微生物の使用に関するものである。
【0020】
好ましくは、前記免疫寛容は動物に誘導される。前記動物は哺乳動物であり、好ましくは、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマおよびヒトからなる群より選択される。好ましくは、前記哺乳動物はヒトである。
【0021】
好ましくは、前記免疫寛容は粘膜寛容である。
【0022】
本明細書に使用する「粘膜」は、口腔粘膜、直腸粘膜、尿道粘膜、膣粘膜、眼粘膜、頬粘膜、肺粘膜および鼻粘膜などの任意の粘膜でありうる。本出願にわたり使用される「粘膜デリバリー」は、粘膜へのデリバリーを包含する。経口粘膜デリバリーには、頬、舌下および歯肉経路のデリバリーが含まれる。したがって、本発明は、前記粘膜デリバリーが、直腸デリバリー、頬デリバリー、肺デリバリー、眼デリバリー、鼻デリバリー、膣デリバリーおよび経口デリバリーからなる群より選択される方法に関するものである。好ましくは、前記粘膜デリバリーは経口デリバリーであり、前記寛容は経口寛容である。
【0023】
本出願にわたり本明細書に使用する「粘膜寛容」は、(ヒトを含む)動物が粘膜経路で抗原に曝露された後の、前記動物における前記抗原に対する特異的免疫反応性の阻害である。好ましくは、前記粘膜寛容は全身寛容である。抗原のその後の曝露は、非経口注射、粘膜デリバリー、または自己抗原の場合などの内因生産性による曝露などの、当業者に公知のそれぞれの曝露でありうる。「経口寛容」は、(ヒトを含む)動物が経口経路で抗原に曝露された後の、前記動物における前記抗原に対する特異的免疫反応性の阻害である。「低用量経口寛容」は、低用量の抗原により誘導される経口寛容であり、ナイーブなホストに寛容を伝達することができるシクロホスファミド感受性調節性T細胞により仲介される能動的な免疫抑制を特徴とする。「高用量経口寛容」は、高用量の抗原により誘導される経口寛容であり、シクロホスファミド処置に非感受性であり、抗原特異的T細胞のアネルギーおよび/または除去によりT細胞反応性低下の誘導に取りかかる。シクロホスファミドに対する感受性の差は、低用量および高用量寛容を識別するために使用することができる(Strobel et al., 1983)。好ましくは前記経口寛容は、Mayer及びShao(2004b)により記載された低用量経口寛容である。
【0024】
したがって本発明は、本明細書に記載される方法または使用に関するものであり、ここで、免疫寛容の前記誘導は、前記誘導の前の少なくとも1.5倍、好ましくは2倍、またはさらに好ましくは3倍以上である。または前記抗原は、前記誘導の前の少なくとも1.5、2、または3倍以上寛容化されている。免疫寛容の誘導は、当技術分野で公知の方法により測定することができる。好ましくは、免疫寛容の前記誘導は、前記動物におけるサイトカインレベルのモデュレーションにより測定することができる。それとしてそのモデュレーションは、サイトカインレベルの増加のことがあり、例えばサイトカインレベルの前記増加は、前記誘導前の少なくとも1.5、2、または3倍以上である。または前記モデュレーションは、特定のサイトカインレベルのレベルの減少であり、例えばサイトカインレベルの前記減少は、前記誘導前の少なくとも1.5分の1、2分の1、または3分の1以下である。サイトカインは、任意の関連するサイトカインから選択することができ、好ましくは前記サイトカインは、IL−2、IL−4、IL−6、IL−10、IL−12、TNF−α、IFN−γ、IFN−α、MCP−1、TGFβ、RANK−LおよびFlt3Lからなる群より選択される。
【0025】
抗原は、当業者に公知の任意の抗原でありうる。本出願を通して本明細書に使用する「抗原」は、好ましくは動物の身体に導入された場合に免疫反応を誘発する任意の物質であり、ここで、前記免疫反応は、T細胞仲介性および/またはB細胞仲介性反応のことがある。T細胞仲介性反応は、Th1および/またはTh2反応を包含する。抗原は、アレルゲン(食物アレルゲンを含む)、アロ抗原、セルフ抗原、自己抗原、および免疫反応を誘導する治療用分子または抗原を非限定的に含めた任意の抗原でありうる。好ましくは、前記抗原は免疫反応関連疾患の誘導に関与する。なおさらに好ましくは、前記抗原はアレルギー性喘息、多発性硬化症、I型糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性重症筋無力症、関節リウマチ、食物アレルギー、セリアック病または移植片対宿主病の誘導に関与する。
【0026】
本明細書に使用する免疫反応関連疾患は、抗原に対する身体の望まれない免疫反応により起こる疾患であり、ここで前記抗原は、異種抗原または自己抗原のいずれかでありうる。免疫反応関連疾患には、食物アレルギーを含めたアレルギー反応、セリアック病、アレルギー性喘息、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性重症筋無力症、関節リウマチ、I型糖尿病および多発性硬化症が含まれるが、それに限定されるわけではない。免疫反応関連疾患には、移植片対宿主病または非内因性第VIII因子に対する抗体産生などの薬物療法の免疫活性化などの望まれない免疫反応もまた含まれる。好ましくは、その疾患は、アレルギー性喘息、食物アレルギー、セリアック病、I型糖尿病および治療薬の免疫不活性化からなる群より選択される。したがって、免疫反応関連疾患には、食物アレルギーを含めたアレルギー反応、セリアック病、アレルギー性喘息、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性重症筋無力症、関節リウマチ、I型糖尿病および多発性硬化症が含まれるが、それに限定されるわけではないと認識されよう。免疫反応関連疾患には、移植片対宿主病または非内因性第VIII因子に対する抗体産生などの薬物療法の免疫活性化などの望まれない免疫反応もまた含まれる。好ましくはその疾患は、アレルギー性喘息、食物アレルギー、セリアック病、移植片対宿主病、I型糖尿病および治療薬の免疫不活性化からなる群より選択される。
【0027】
さらなる態様では、前記抗原は、抗原発現微生物によりデリバリーされる。好ましくは前記抗原は、抗原分泌微生物または抗原表出微生物によりデリバリーされる。したがって本発明は、前記抗原が前記抗原発現微生物の表面で表出されているか、または前記抗原が発現される、本明細書に記載される方法に関するものである。免疫モデュレーション化合物および抗原は、同じ微生物によりデリバリーされることができるし、その微生物は異なる微生物であってもよい。
【0028】
したがって上記を考慮して、本発明は本明細書に記載される方法または使用に関することが認識されているものであり、ここで、前記方法または使用は、治療的および/または予防的である。
【0029】
「化合物」は、単純または複合の有機分子および無機分子、ペプチド、ペプチド模倣体、タンパク質、タンパク質複合体、抗体、糖質、核酸またはその誘導体を含めた任意の化学的または生物学的な化合物または複合体を意味する。免疫モデュレーション化合物は、免疫系の機能を改変する化合物である。本明細書に使用する免疫モデュレーション化合物は、寛容誘導化合物であり、寛容の誘導は、非限定的な例としてTreg、Tr1もしくはTr3などの調節性T細胞を誘導することによる、またはTh1/Th2バランスをTh1に傾けることによる直接的な方法で、あるいは未熟樹状細胞から寛容化樹状細胞への活性化および/または成熟樹状細胞上の「共刺激」因子の発現を誘導しているTh2免疫反応を阻害することによる間接的な方法で得ることができる。免疫モデュレーション化合物および免疫抑制化合物は、当業者に公知であり、それらには、スペルグアリンなどの細菌代謝物、タクロリムスまたはシクロスポリンなどの真菌およびストレプトミセス代謝物、IL−4、IL−10、IFNα、TGFβ(調節性T細胞に関する選択的アジュバントとして)、Flt3L、TSLPおよびRank−L(選択的寛容原性DC誘導因子として)、抗CD40L、抗CD25、抗CD20、抗IgE、抗CD3などの抗体および/またはアンタゴニスト、ならびにCTL−4 IgまたはCTLA−4アゴニスト融合タンパク質などのタンパク質、ペプチドまたは融合タンパク質が含まれうるが、それに限定されるわけではない。
【0030】
したがって免疫モデュレーション化合物は、当業者に公知の任意の免疫モデュレーション化合物でありうる。好ましくは、前記免疫モデュレーション化合物は免疫抑制化合物であり、なおさらに好ましくは、前記化合物は免疫抑制サイトカインまたは抗体である。好ましくは、前記免疫抑制サイトカインは、寛容増強サイトカインまたは抗体である。免疫抑制サイトカインは当業者に公知であり、それらには、調節性T細胞に対する選択的アジュバントとしてのIL−4、IL−10、IFN−αおよびTGFβ;ならびに選択的寛容原性DC誘導因子としてのFlt3L、TSLPおよびRank−Lが含まれるが、それに限定されるわけではない。好ましくは、前記免疫抑制サイトカインは、IL−4、IL−10、IFNαおよびFlt3Lからなる群より選択される。本発明が、その機能的ホモログにもまた関することは、当業者に認識されていよう。機能的ホモログは、少なくとも意図される目的について本質的に同一または類似の機能を有するが構造的に異なりうる分子を意味する。最も好ましくは、前記免疫抑制寛容増強サイトカインは、IL−10またはその機能的ホモログである。好ましくは、前記免疫抑制抗体は、抗IL−2、抗IL12、抗IL6および抗IFN−γからなる群より選択される。
【0031】
本明細書に使用する「デリバリー」は、当業者に公知のデリバリーの任意の方法を意味し、それには、所望により粘膜デリバリーおよび/または粘膜取り込みを高めることができる化合物の存在下での、デリバリーする化合物のコーティングされた、またはコーティングされていない薬学的製剤、デリバリーする化合物を含むか、もしくは保有するカプセル、リポソーム、油体もしくはポリマー粒子、またはデリバリーする化合物を分泌、表出もしくは蓄積している微生物が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0032】
本明細書に記載される化合物または組成物は、純粋な形態で、他の活性成分と組み合わせて、または薬学的に許容され得る無毒性賦形剤もしくは担体と組み合わせて投与することができる。経口組成物は、一般に不活性な希釈担体または食用担体を含むものである。薬学的に適合性の結合剤および/またはアジュバント物質を組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分または類似の性質の化合物のいずれかを含むことがある:微結晶セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくは乳糖などの賦形剤;アルギン酸、Primogelもしくはトウモロコシデンプンなどの分散剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤(glidant);ショ糖もしくはサッカリンなどの甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香味料などの香味料。ユニット投薬形態がカプセルの場合、カプセルは、上記の種類の物質に加えて、脂肪油などの液体担体を含むことがある。加えて、ユニット投薬形態は、投薬ユニットの物理的形態を改変する様々な他の物質、例えば砂糖、セラックまたは腸溶剤などのコーティングを含むことがある。さらにシロップは、活性化合物に加えて、甘味料としてショ糖およびある種の保存料、色素、着色料および香味料を含むことがある。薬学的に許容され得る担体の形態および性質は、その担体が組み合わされる活性成分の量、投与経路、および他の周知の変数により指示されることが認識されているものである。担体は、その製剤の他の成分と適合する意味で「許容され」なければならず、そのレシピエントに有害であってはならない。
【0033】
投与のための代替調製物には、滅菌した水性または非水性の液剤、懸濁剤および乳剤が含まれる。非水性溶媒の例は、ジメチルスルホキシド、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には、アルコールおよび水の混液、緩衝媒質および生理食塩水が含まれる。静注用ビヒクルには、液体栄養補液、リンゲルデキストロースに基づく補液のような電解質補液などが含まれる。保存料、および例えば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスなどの他の添加物もまた存在しうる。これらのデリバリー法のために、生理食塩水、アルコール、DMSOおよび水性溶液を含めた様々な液体製剤が可能である。
【0034】
好ましくは、前記免疫抑制サイトカインは、低量で、好ましくはマウスの実験設定で投与される細菌用量あたり0.1μg以下で発現され、ヒトの疾患設定においてその量を変換することができる。本発明が、抗原もしくはL.lactis単独などのIL−10産生微生物を用いた単独療法よりも、または経口投与した遊離IL−10と組み合わせた抗原よりもずっと高い効率を有して経口寛容を誘導することができることを実証する。抗原特異的調節性T細胞のin vivo活性化は強く高まった。これらの細胞は、免疫適格レシピエントに優性寛容を伝達し、バイスタンダー抑制さえも仲介する。本発明の有効性は、自己免疫性疾患およびアレルギー性疾患のマウスモデルにおいて、ならびに治療薬の免疫不活性化に関連して実証された。
【0035】
本明細書に使用する「処置」および「処置する」などの用語には、発生した精神病もしくは状態が一度樹立したならばその改善もしくは除去、または当該疾患または状態の特徴的な症状の緩和が含まれる。本明細書に使用するこれらの用語は、患者の状態に応じて、疾患または状態に伴う苦痛の前にそれに関連する疾患もしくは状態または症状の重症度を低減することを含めて、前記疾患もしくは状態またはそれに関連する症状の開始を予防することもまた包含する。苦痛の前のそのような予防または低減は、投与時にその疾患もしくは状態に苦しんでいない患者に本発明の化合物または組成物を投与することを表す。「予防」は、例えば回復期後に疾患もしくは状態、またはそれに関連する症状の再発を予防すること、すなわち再燃予防もまた包含する。精神状態が身体愁訴を担いうることも明らかなはずである。この点で、「処置する」という用語には、身体疾患もしくは状態の予防、または発生した身体疾患もしくは状態が一度樹立したならばその身体疾患または状態の改善もしくは除去、またはその当該状態の特徴的な症状の緩和もまた含まれる。
【0036】
本明細書に使用する「薬剤」という用語は、「薬物」、「治療薬」、「一服」または治療もしくは予防効果を有する調製物を示すために医学の分野で使用される他の用語もまた包含する。
【0037】
本発明の化合物、すなわち抗原および免疫モデュレーション化合物は、治療有効量でデリバリーまたは発現されることもまた認識されているものである。本明細書に使用する「治療有効量」という用語は、所望の処置方式により投与した場合に所望の治療的または予防的な効果または反応を誘発するものである、本発明の化合物または組成物の量を表すことを意味する。好ましくは、その化合物または組成物は、ユニット投薬形態、例えば錠剤、カプセル剤または定量エアロゾル用量で提供されることにより、1回用量が対象、例えば患者に投与される。
【0038】
本出願にわたり本明細書に使用する「組み合わせて」は、ある瞬間に粘膜レベルで抗原および免疫モデュレーション化合物が同時に存在することを意味する。これは、抗原および免疫モデュレーション化合物の両方が常に粘膜レベルで同時に存在する必要があることを意味しない。したがってこの方法は、抗原および免疫モデュレーション化合物産生微生物の同時投与と、抗原および免疫モデュレーション化合物産生微生物の連続投与との両方、またはその任意の組み合わせに及ぶ。
【0039】
さらなる態様では、前記抗原は、前記免疫モデュレーション化合物分泌微生物と同時に、またはそれと連続的にデリバリーされる。
【0040】
好ましい態様は、抗原および免疫モデュレーション化合物産生微生物の同時投与である。この場合、抗原および免疫モデュレーション化合物産生微生物は、同一の薬学的製剤に、または一緒に摂取される一つを超える薬学的製剤に含まれていることがある。好ましい態様は、抗原および免疫モデュレーション化合物の両方を産生する微生物によるデリバリーである。
【0041】
抗原および免疫モデュレーション化合物発現微生物、または両要素を含む組成物が同時に投与される場合、その化合物または活性成分は、単一の薬学的組成物または製剤に存在してもよい。
【0042】
またはその化合物または活性成分は、同時または別々に使用するための別々の薬学的組成物または製剤の形で投与される。したがって本発明は、抗原および本発明の免疫モデュレーション分子発現微生物を含む薬学的組成物、ならびにこれらの薬学的組成物の使用にも関するものである。
【0043】
連続投与の場合、抗原または免疫モデュレーション化合物産生微生物のいずれかを最初に投与することができる。連続投与の場合、抗原および免疫モデュレーション化合物産生微生物の投与間の時間は、好ましくは3時間を超えず、なおさらに好ましくは2時間を超えず、最も好ましくは1時間を超えない。
【0044】
活性成分は、所望の活性を示すのに十分な、1日に1〜6回投与されることがある。これらの1日量は、1日1回の単回投与として与えることもできるし、全体で特定の1日量となる2回以上の小用量として、1日の同じ時間または異なる時間に与えることもできる。好ましくは、活性成分は1日に1回または2回投与される。両方の活性薬剤は同時に、または非常に接近した時間で投与されることが考えられている。または、一つの化合物は朝に摂取し、もう一つはその後に日中に摂取することもできよう。または別のシナリオでは、一つの化合物は1日2回摂取し、もう一つは1日2回投薬を行ううちの1回と同時または別々のいずれかで1日1回摂取することができよう。好ましくは、両方の化合物は同時に一緒に摂取され、混合物として投与される。一態様では、第2の化合物は、前記第1の化合物と同時に、別々に、または連続的に投与される。
【0045】
本発明の全ての局面において、1日維持用量は、患者に臨床的に望まれる期間、例えば1日間から最長数年間(例えばその哺乳動物の全残存寿命);例えば約(2もしくは3もしくは5日間、1もしくは2週間、または1年間)より長く、かつ/または例えば最長約(5年間、1年間、6ヶ月、1ヶ月、1週間、または3もしくは5日間)与えることができる。約3から約5日間または約1週間から約1年間の1日維持用量の投与が典型的である。液体製剤の他の構成要素には、保存料、無機塩、酸、塩基、緩衝液、栄養素、ビタミンまたはその他の医薬品が含まれることがある。
【0046】
免疫モデュレーション化合物および/または抗原を分泌している微生物は、1日に少なくとも104コロニー形成単位(cfu)から1012cfu、好ましくは1日に106cfuから1012cfu、最も好ましくは1日に109cfuから1012cfuの用量でデリバリーすることができる。Steidlerら(Science 2000)に記載された方法に従って、例えば約109cfuの免疫モデュレーション化合物は、少なくとも1ngから100ngまで分泌される。当業者に公知のELISAにより、例えば109cfuの抗原が少なくとも1ngから100ngまで分泌される。当業者は、任意の他の用量のcfuに関して免疫モデュレーション化合物および/または抗原の分泌範囲を計算することができる。
【0047】
抗原は低用量反応を誘導する用量でデリバリーすることができる。好ましくは、前記抗原は、少なくとも1日10fgから100μg、好ましくは1日1pgから100μg、最も好ましくは1日1ngから100μgの用量でデリバリーすることができる。
【0048】
本発明の免疫モデュレーション化合物は、少なくとも1日10fgから100μg、好ましくは1日1pgから100μg、最も好ましくは1日1ngから100μgの用量でデリバリーすることができる。
【0049】
好ましくは化合物または組成物は、ユニット投薬形態、例えば錠剤、液剤、カプセル剤または定量エアロゾル用量で提供されることにより、1回用量が対象、例えば患者に投与される。
【0050】
投与様式、例えば経口または上記の投与様式のうち任意のものに応じて、当業者は、患者に投与される実際の用量を規定または計算する方法を知っている。当業者は、患者、微生物、ベクターなどに応じて用量を調整することに精通しているものである。
【0051】
本発明の化合物は、薬理学的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物または代謝物の形態を採ることもある。薬理学的に許容され得る塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸およびマンデル酸などを非限定的に含めた無機酸および有機酸の塩基性塩が含まれる。本発明の化合物がカルボキシ基などの酸性官能基を含む場合、カルボキシ基についての適切な薬学的に許容され得る陽イオンの対は、当業者に周知であり、それらには、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウムおよび第四アンモニウム陽イオンなどが含まれる。
【0052】
微生物は、粘膜デリバリーに適した、細菌、酵母または真菌を含めた任意の微生物でありうる。好ましくは、前記微生物は非病原微生物であり、なおさらに好ましくは、前記微生物はプロバイオティック微生物である。プロバイオティック生物は、当業者に公知である。プロバイオティック生物には、Lactobacillus sp.、Lactococcus sp.、Bifidobacterium sp.などの細菌およびSaccharomyces cerevisiae亜種boulardiiなどの酵母が含まれるが、それに限定されるわけではない。好ましくは、前記細菌は乳酸菌である。なおさらに好ましくは、前記乳酸菌は、Lactobacillus、Leuconostoc、Pediococcus、Lactococcus、Streptococcus、Aerococcus、Carnobacterium、Enterococcus、Oenococcus、Teragenococcus、VagococcusおよびWeisellaからなる群より選択される。さらに好ましい一態様では、前記微生物はLactococcus lactisである。別の好ましい態様では、前記微生物はSaccharomyces cerevisiaeである。
【0053】
好ましい態様では、免疫抑制サイトカインは、抗IL−2、抗IL−12および/または抗IFNγなどの免疫誘導サイトカインに対する拮抗抗体ならびに抗CD40Lおよび抗CD3などの共刺激分子に対する拮抗抗体と組み合わされる。または、コレラ毒素Bサブユニットなどの、免疫抑制サイトカインの産生を刺激する化合物、ならびにICOSアゴニストおよびCTLA−4アゴニストなどの調節性T細胞の機能を刺激する分子をデリバリーしてもよい。上記のように好ましくは、前記微生物は非病原微生物であり、なおさらに好ましくはそれはプロバイオティック微生物である。プロバイオティック生物は当業者に公知であり、それにはLactobacillus sp.、Lactococcus sp.、Bifidobacterium sp.などの細菌、およびSaccharomyces cerevisiae亜種boulardiiなどの酵母が含まれるが、それに限定されるわけではない。好ましい一態様では、前記微生物はLactococcus lactisである。別の好ましい態様では、前記微生物はSaccharomyces cerevisiaeである。乳酸菌による、経口および膣デリバリーの両方を含めた粘膜への異種タンパク質(すなわち非乳酸菌タンパク質)のデリバリーが記載されており(Steidler and Rottiers, 2006; Liu et al., 2006)、それによりこれらの乳酸菌は抗原および免疫抑制化合物の両方のデリバリーに極めて適したものになっていることから、最も好ましくは、前記プロバイオティック微生物は乳酸菌である。
【0054】
本発明の別の局面は、免疫反応関連疾患を処置するための薬剤の調製に、抗原と組み合わせた免疫モデュレーション化合物産生微生物を使用することである。好ましくは、前記免疫モデュレーション化合物は免疫抑制サイトカインである。好ましくは、前記抗原は抗原分泌微生物によりデリバリーされる。免疫モデュレーション化合物および抗原は、同一の微生物によってデリバリーしてもよいし、それは異なる微生物であってもよい。好ましくは、前記免疫抑制サイトカインは免疫抑制寛容増強サイトカインである。免疫抑制寛容増強サイトカインは当業者に公知であり、それらにはIL−4、IL−10、IFNαおよびTGFβ、Flt3L、およびRank−Lが含まれるが、それに限定されるわけではない。好ましくは、前記免疫抑制サイトカインは、IL−4、IL−10、IFNαおよびFlt3Lからなる群より選択される。最も好ましくは、前記免疫抑制サイトカインは、IL−10またはその機能的ホモログである。好ましい一態様では、免疫抑制サイトカインは、抗IL−2、抗IL−12および/または抗IFNγなどの免疫誘導サイトカインに対する拮抗抗体、ならびに抗CD40Lおよび抗CD3などの、共刺激分子に対する拮抗抗体と組み合わされる。好ましくは前記免疫抑制サイトカインは、低量、好ましくはマウスの実験設定で0.1μg以下で発現され、ヒトの疾患設定においてその量を変換することができる。
【0055】
本発明の化合物および組成物は、ニュートラシューティカル(nutraceutical)、機能性食品もしくはメディカルフードとして、または前記ニュートラシューティカル、機能性食品、もしくはメディカルフード中の添加物として使用されうることが認識されよう。別の態様は、好ましくはヒトの消費に適合する、ニュートラシューティカルおよび香味料を含む食品または飲料を提供し、ここで、そのニュートラシューティカルは、農産物からの抽出物を含む。
【0056】
液体抽出物の形態であろうと乾燥組成物の形態であろうと、ニュートラシューティカルは食用であり、ヒトに直接食べられてもよいが、好ましくは添加物または栄養補助食品の形態で、例えば健康食品店で販売されている類の錠剤の形態で、または食用固形物中の成分、より好ましくはシリアル、パン、豆腐、クッキー、アイスクリーム、ケーキ、ポテトチップ、プレッツェル、チーズなどの加工食品として、および飲用液体、例えば牛乳、ソーダ、スポーツ飲料および果汁などの飲料に入れてヒトに提供される。したがって一態様では、有効な量のニュートラシューティカルと食品または飲料を混合して、食品または飲料の栄養価を高めることによる、食品または飲料の栄養価を高めるための方法が提供される。
【0057】
別の態様は、ニュートラシューティカルと食品または飲料を混合して栄養的に高まった食品または飲料を生産することを含む、食品または飲料の栄養価を高めるための方法を提供し、ここで、そのニュートラシューティカルは、その食品または飲料の栄養価を高めるために有効な量で混合され、ここで、そのニュートラシューティカルは、本発明の抗原を含む農作物からの抽出物を含み、ここで、栄養的に高まった食品または飲料は、さらに香味料を含むことがある。好ましい香味料には、砂糖、コーンシロップ、果糖、デキストロース、マルトデキストロース、シクラメート、サッカリン、フェニルアラニン、キシリトール、ソルビトール、マルチトールおよびハーブ甘味料、例えばステビアなどの甘味料が含まれる。
【0058】
本明細書に記載されるニュートラシューティカルは、ヒトの消費を意図され、したがってそれらを得るための工程は、好ましくは優良製造規範(GMP)および当該工程に適用される任意の適用可能な政府規制にしたがって行われる。特に好ましい工程は、天然由来溶媒のみを利用する。本明細書に記載されるニュートラシューティカルは、好ましくは比較的高レベルの健康増進物質を含む。ニュートラシューティカルを、相互に混合してその健康増進効果を増大することができる。
【0059】
ニュートラシューティカルとは対照的に、いわゆる「メディカルフード」は、一般の人々に使用されることを予定しておらず、店舗やスーパーマーケットでは入手できない。メディカルフードは、低脂肪食品または低ナトリウム食品などの、疾患のリスクを減少させるための健康食の中に含まれる食品ではなく、体重減少製品でもない。疾患状態または健康状態を管理するために患者が特殊な栄養要求を有し、その患者が医師の継続的な治療を受けている場合に、その医師はメディカルフードを処方する。ラベルは、その製品が特定の医学的障害または状態を管理するために使用されることを意図することをはっきりと提示しなければならない。メディカルフードの例は、慢性炎症状態を有する患者のためにターゲティングされた栄養支援を提供するように計画された栄養的に多様なメディカルフードである。この製品の活性化合物は、例えば本明細書に記載される化合物の一つまたは複数である。機能性食品は、低脂肪食品もしくは低ナトリウム食品、または体重減少製品などの、疾患のリスクを減らす健康食の中に含まれる食品を包含することがある。したがって本発明は、本発明によるニュートラシューティカルを含む食品または飲料を考えている。
【0060】
したがって本発明は、免疫寛容を誘導するための、または免疫反応関連疾患を処置するための薬剤、メディカルフードまたはニュートラシューティカルの調製のために、抗原と組み合わせた免疫モデュレーション化合物分泌微生物の使用に関する。好ましくは本発明は、免疫反応関連疾患が関与する疾患または障害を処置、予防および/または緩和するための薬剤、メディカルフードまたはニュートラシューティカルの調製および/または製造のための組成物の使用に関するものであり、その使用は、前記組成物が少なくとも免疫モデュレーション化合物分泌微生物および抗原を含むことを特徴とする。
【0061】
さらなる局面では、本発明は、免疫反応関連疾患を含む疾患または障害を処置、予防および/または緩和するための、少なくとも免疫モデュレーション化合物分泌微生物および抗原の使用に関するものである。したがって本発明は、それを必要とする動物における免疫反応関連疾患を処置するための方法にもまた関するものであり、その方法は、免疫モデュレーション化合物分泌微生物の粘膜デリバリーと組み合わせた抗原の粘膜デリバリーを含む。
【0062】
さらなる態様では、本発明は、抗原と組み合わせて免疫モデュレーション化合物分泌微生物を含む組成物に関するものである。好ましくは、前記組成物は薬学的組成物である。好ましくは、前記抗原はアレルゲン、アロ抗原、セルフ抗原または自己抗原である。なおさらに好ましくは、前記抗原は、アレルギー性喘息、多発性硬化症、I型糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性重症筋無力症、関節リウマチ、食物アレルギーまたはセリアック病の誘導に関与する。好ましい一態様では、前記抗原は治療用抗原、好ましくは抗CD3である。好ましくは、本発明による抗原は、抗原発現微生物によりデリバリーされる。この場合、抗原は前記抗原発現微生物の表面に表出されていることもあるし、前記生物により分泌されることもある。好ましくは前記組成物は、噴霧剤、カプセル剤、エアロゾル、口中錠(lozenge)、ボーラス、錠剤、サシェ(sachet)、液剤、懸濁剤、乳剤またはトローチ剤の形で、好ましくはユニット投薬形態で、例えば錠剤、カプセル剤または定量エアロゾル用量で提示される。好ましくは、本発明による組成物の免疫モデュレーション化合物は、免疫抑制化合物または抗体である。好ましい一態様では、前記免疫抑制化合物は、寛容増強サイトカインまたは寛容増強抗体であり、最も好ましくは、それは、IL−4、IL10、IFN−α、Flt3L、TGFβおよびRANK−Lからなる群より選択される。別の好ましい態様では、前記免疫抑制化合物は、抗IL−2、抗IL12および抗IFN−γからなる群より選択される免疫抑制抗体である。好ましい一態様では、本発明による組成物の免疫モデュレーション化合物分泌微生物はプロバイオティック微生物である。別の好ましい態様では、本発明による組成物の免疫モデュレーション化合物分泌微生物は細菌または酵母であり、好ましくは前記細菌は乳酸菌であり、なおさらに好ましくは、それはLactobacillus、Leuconostoc、Pediococcus、Lactococcus、Streptococcus、Aerococcus、Carnobacterium、Enterococcus、Oenococcus、Teragenococcus、VagococcusおよびWeisellaからなる群より選択される乳酸菌であり、最も好ましくは前記LactococcusはLactococcus lactisである。好ましくは、前記酵母はSaccharomyces cerevisiaeである。好ましくは、本発明による組成物の前記抗原および前記免疫モデュレーション化合物は、同じ微生物により発現される。好ましくは、本発明による組成物は、アジュバント、薬学的に許容され得る担体および/または賦形剤をさらに含む。好ましくは、本発明による組成物は、免疫抑制サイトカインの産生を刺激する化合物をさらに含み、好ましくは免疫抑制サイトカインの産生を刺激する前記化合物は、コレラ毒素Bサブユニットである。好ましくは、本発明による組成物において前記抗原および/または前記免疫モデュレーション化合物分泌微生物は、少なくとも10フェムトグラムから100mgの用量で存在する。
【0063】
最後の態様では、本発明は、免疫反応関連疾患を含む疾患または障害を処置、予防および/または緩和するための、免疫モデュレーション化合物分泌微生物と組み合わせて少なくとも抗原を含む薬剤、ニュートラシューティカルまたはメディカルフードに関するものである。
【0064】
当業者は、本発明の好ましい態様に多数の変更および改変を加えることができ、そのような変更および改変は本発明の精神から逸脱せずに行うことができることを認識しているものである。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲の中に属するそのような均等な改変の全てを包含することが意図される。
【0065】
加えて、本発明の化合物の記載に使用される全ての用語は、当技術分野において周知であるそれらの意味を有する。
【0066】
実施例
実施例A:in situデリバリーされたIL−10と組み合わせた、卵アルブミンを分泌しているL.lactisの経口投与後の前記卵アルブミンに対する寛容の誘導
実施例への材料および方法
細菌およびプラスミド
L.lactis MG1363株をこの研究にわたり使用した。細菌は、GM17培地、すなわち0.5%グルコースを補充したM17(Difco Laboratories, Detroit, MI)中で培養した。全ての株の保存用懸濁液は、GM17中の50%グリセロールに入れて−20℃で保存した。胃内接種のために、保存用懸濁液を新鮮GM17で500倍に希釈し、30℃でインキュベーションした。これらは16時間以内に2×109コロニー形成単位(CFU)/mlの飽和密度に達した。この研究にわたり、混合した細菌懸濁液を使用した。したがって、混合しなければならない細菌を遠心分離により採集し、両細菌培養物のペレットをBM9培地に入れて10倍濃縮した(Schotte, et al., 2000)。処置のために、各マウスは胃内カテーテルによりこの懸濁液100μlの投与を受けた。
【0067】
Gallus gallus(ニワトリ)卵アルブミンをコードしているmRNA配列は、Genbank(アクセッション番号AY223553)から検索した。総RNAをニワトリ子宮部から単離し、cDNAは、体積25μl中の総RNA 2μg、2μMオリゴdTプライマー(Promega Corporation Benelux, Leiden, The Netherlands)、0.01mM DTT(Sigma-Aldrich, Zwijndrecht, The Netherlands)、0.5mM dNTP(Invitrogen, Merelbeke, Belgium)、Rnasin(Promega Incorporation Benelux)20U、およびsuperscript II逆転写酵素(Invitrogen)100Uを使用して合成した。OVA cDNAフラグメントは、以下の条件を使用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅させた:以下のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いて94℃2分に続いて、94℃45秒、62℃30秒、および72℃90秒を30サイクル。
【0068】
【表1】

【0069】
増幅されたフラグメントは、ラクトコッカスP1プロモーターの下流で、エリスロマイシン耐性pT1NXベクターのUsp45分泌シグナルに融合させた。OVA cDNAを保有するプラスミドを用いて、およびIL−10を保有するプラスミドを用いてトランスフォーメーションされたMG1363株は、OVAを分泌しているL.lactis(LL−OVA)およびLL−IL10と呼んだ。空のベクターであるpT1NXを含むMG1363であるL.lactis−pT1NX(LL−pT1NX)を対照として利用した。
【0070】
動物
7週齢雌性Balb/cマウスは、Charles River Laboratories(Italy)から得た。これらのマウスをSPF条件で飼育し、標準的な実験室用飼料および水道水を自由摂取させた。動物実験は、Ghent大学、the Department for Molecular Biomedical Researchの倫理委員会により承認された。
【0071】
経口寛容の誘導および評価
マウスは、第−46から−42、−39から−35、−32から−28、−25から−21、−18から−14、−11から−7、−4から−1日に混合L.lactis懸濁液の投与を受け、LL−pT:LL−pT1NX(ベクター対照)およびLL−pT1NXの混合細菌懸濁液;LL−OVA:卵アルブミンを分泌しているL.lactis株およびLL−pT1NXの混合細菌懸濁液;LL−OVA+LL−mIL10:LL−OVAおよびマウスインターロイキン10を分泌しているL.lactis株の混合細菌懸濁液。経口寛容誘導のための二つの陽性対照をこの研究に含めた。陽性対照1は、第−7日にBM9培地100μl中の卵アルブミン20mgの投与を受けた。陽性対照2は、L.lactis補給と同じ日にBM9培地100μl中の卵アルブミン1μgの投与を受けた。マウスは、カテーテルにより胃内に補給を受けた。対照マウスは経口処置しなかった。第0日に、M.tuberculosis H37RA(Difco)100μgを含む完全フロイントアジュバント中に1:1で乳化させたOVA 100μgをマウスにs.c.免疫した。免疫の11日後に腸間膜リンパ節(MLN)ならびに膝窩および鼠径リンパ節(PLN/ILN)を採取し、OVA特異的増殖およびサイトカイン産生について細胞を評価した。
【0072】
in vitro OVA特異的増殖
所属膝窩および鼠径リンパ節の単細胞懸濁液を調製した。細胞を計数し、10%ウシ胎仔血清(FCS)、10U/mlペニシリン、10μg/mlストレプトマイシン、2mM L−glutamax、0.4mMピルビン酸ナトリウムを含む、単独または11、33、100もしくは300μg/ml OVA存在下のいずれかのRPMI−1640(RPMI完全培地)200μlの中に2×105細胞となるように再懸濁した。細胞は、37℃の5%CO2加湿インキュベーター中でU底96ウェル組織培養プレート(Becton Dickinson)に入れて90時間培養した。増殖は、1μCi/ウェルの[3H]チミジンの添加により培養の最終18時間に評価した。DNAに結合した放射能は、ガラス繊維製フィルターマット(Perkin Elmer)上に採集し、チミジンの取込みをシンチレーションカウンター(Perkin Elmer)で測定した。
【0073】
in vitro CD4精製T細胞のOVA特異的増殖
CD4+T細胞は、CD4+T細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を使用してPLN/ILN由来の全細胞調製物から精製した。2×105個のCD4+T細胞は、抗原提示細胞として作用する、OVAをロードされたマイトマイシンC処理脾臓細胞と共に、1/3、1/1、1/0.3、1/0.1および1/0のCD4+T細胞/APC比でRPMI完全培地200μlに入れて培養した。これらの細胞は、37℃の5%CO2加湿インキュベーター中のU底96ウェル組織培養プレート(Becton Dickinson)に入れて90時間培養した。増殖は、培養の最終18時間に1μCi/ウェルの[3H]チミジンの添加により評価した。DNAに結合した放射能をガラス繊維製フィルターマット(Perkin Elmer)上に採集し、チミジンの取込みをシンチレーションカウンター(Perkin Elmer)で測定した。
【0074】
OVA特異的サイトカイン産生の測定
腸間膜リンパ節(MLN)ならびに所属膝窩および鼠径リンパ節由来のリンパ節細胞を調製し、2×106細胞/mlで再懸濁し、部分量100μlを、300μg/ml OVAと共にU底96ウェル組織培養プレートに入れて72時間培養した。マウス炎症キットを使用したCytometric Bead Array(BD Bioscience)によりサイトカインレベルを定量するまで、上清を−20℃で保存した。
【0075】
実施例A1:LL−IL10はLL−Ovaの寛容誘導能を有意に高める
経口寛容の誘導を研究するために、GM L.lactis(LL−pt:LL−pT1NX[全](=ベクター対照)およびLL−pT1NXの混合細菌懸濁液;LL−OVA:OVAを分泌しているL.lactis[全てイタリック]およびLL−pT1NXの混合細菌懸濁液;LL−OVA+LL−mIL−10:OVAを分泌しているL.lactisおよびマウスIL−10を分泌しているL.lactisの混合細菌懸濁液)を連続する5日間に6回(第−46から−42、−39から−35、−32から−28、−25から−21、−18から−14、−11から−7、および−4から−1日)、または−7日にOVA単回量20mg(陽性対照1)またはL.lactis補給と同じ日にOVA1μgを多回量(陽性対照2)マウスに経口補給した。対照マウスは経口処置しなかった。0日目に、完全フロイントアジュバント中のOVAをマウスにs.c.免疫し、PLN/ILN細胞のOVA特異的増殖を11日目に評価した。LL−IL−10の添加はOVAへの寛容誘導を有意に高めた。それは、LL−OVA[全]+LL−mIL−10群におけるPLN/ILN細胞のOVA特異的増殖反応(図1)が、対照群およびLL−ova群に比べて有意に減少したからであった。
【0076】
実施例A2:LL−IL10はOvaに反応した炎症性サイトカインの産生減少と関連して経口寛容を強化する
経口寛容の誘導を研究するために、上記(実施例1)のようにGM L.lactisまたはOVAをマウスに経口補給し、続いて完全フロイントアジュバント中のOVAをs.c.免疫した。免疫の11日後に、MLNおよびPLN/ILN中のOVAに反応したサイトカイン産生は、マウス炎症キットを使用したCytometric Bead Arrayにより定量した。MLNにおいて、炎症性サイトカインであるIL−12,TNF−α、IFN−γおよびIL−6の産生は、LL−ova群に比べてLL−ova+LL−mIL−10群では検出されないか、または強く減少し、LL−ova群ではこれらの炎症性サイトカインの強い産生が観察された(図2A)。PLNでは、LL−ova+Ll mIL−10群における炎症性サイトカインTNF−α、IFN−γ、MCP−1およびIL−6の産生が、LL−ova群に比べて強く減少し、この群においてTNF−α、MCP−1およびIL−6レベルは対照群で観察されるレベルよりも低い(図2B)。
【0077】
実施例A3:LL−IL10はCD4+T細胞により経口寛容を高める
経口寛容の誘導がCD4+[全]T細胞により仲介されたかどうかを評価するために、MLNおよびPLN/ILNにおけるOVA特異的増殖CD4 T細胞反応を研究した。したがって、上に示した日にGM L.lactisまたはOVAをマウスに経口補給した(実施例1)。第0日に完全フロイントアジュバント中のOVAをマウスにs.c.免疫し、11日後にMLNおよびPLN/ILNからCD4 T細胞を精製し、続いてOVAをロードされたマイトマイシンC処理脾臓細胞の存在下で培養した。LL−ova+LL−mIL−10群におけるOVA特異的CD4 T細胞反応は、LL−ova群および対照群に比べて有意に減少した(図3)。
【0078】
実施例B:in situデリバリーされたIL−10と組み合わせた、第VIII凝固因子および第IX凝固因子を分泌しているL.lactisの経口投与後の前記因子に対する寛容の誘導
緒言
インターフェロン、第VIII/IX因子、および抗体(レミケード)などのいくつかの治療用(リコンビナント)タンパク質は、長期処置期間にわたり高用量で投与される。しかし、その使用に伴う合併症は、抗体などのタンパク質特異的免疫反応の発生である。阻害物質とも呼ばれるこれらの抗体(Ab)は、治療用タンパク質をあまり有効でないようにする。例には、血友病における第VIII/IX因子、慢性腎不全の治療を受けている患者におけるエリスロポイエチン(Epo)、および多発性硬化症のための治療を受けている患者におけるIFN−βに対する阻害物質の形成が含まれる。ここでは、IL−10産生L.lactisと組み合わせた第VIII因子(および第IX因子)の経口デリバリーが、抗原特異的CD4調節性T細胞の誘導により前記因子に対する阻害物質の形成を抑制することを実証する。
【0079】
実施例への材料および方法
細菌およびプラスミド
L.lactis MG1363株をこの研究全体にわたり使用する。細菌は、GM17培地、すなわち0.5%グルコースを補充したM17(Difco Laboratories, Detroit, MI)中で培養する。全ての株の保存用懸濁液は、GM17中の50%グリセロールに入れて−20℃で保存する。胃内接種のために、保存用懸濁液を新鮮GM17で200倍に希釈し、30℃でインキュベーションする。これらは16時間以内に2×109コロニー形成単位(cfu)/mlの飽和密度に達する。この研究にわたり、混合した細菌懸濁液を使用する。したがって、混合した細菌を遠心分離により採集し、両細菌培養物のペレットをBM9培地に入れて10倍濃縮する(Schotte, Steidler et al. 2000)。処置のために、各マウスは胃内カテーテルによりこの懸濁液100μlの投与を受ける。
【0080】
FVIIIおよびFIX特異的CD4+T細胞エピトープを代表するヒトFVIIIおよびFIXのcDNAまたはcDNAフラグメントを増幅させ、ラクトコッカスP1プロモーターの下流でエリスロマイシン耐性pT1NXベクターのUsp45分泌シグナルに融合させる。
【0081】
マウスIL−10、FVIII(および/またはエピトープフラグメント)、FIX(および/またはエピトープフラグメント)を保有するプラスミドを用いてトランスフォーメーションされたMG1363株は、IL10分泌L.lactisすなわちLL−IL10、LL−FVIII、LL−FIXと呼んだ。空のベクターpT1NXを含むMG1363であるLL−pT1NXは対照として役立つ。
【0082】
FVIIIおよびFIXの定量
それぞれLL−FVIIIおよびLL−IX由来のFVIIIまたはFIXは、以前に記載されたヒトFVIIIおよびFIX特異的酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)(Chuah et al., 2003)を使用して判定する。リコンビナントタンパク質は、記載されたようにウエスタンブロット分析およびCOATestおよびaPTTアッセイ(Chuah et al., 2003; VandenDriessche et al., 1999)によっても分析する。このタンパク質のNH2末端は、自動エドマン分解により判定する。FVIIIおよびFIXは、肝臓に通常発現し、そこでそれらは大規模な翻訳後修飾を受けることから、操作されたL.lactisから産生された凝固因子は、生物学的に不活性なおそれがある。しかし、これらの翻訳後の差は、これらのL.lactisに産生されたリコンビナントタンパク質が免疫寛容を誘導する能力に影響をもたない見込みがある。実際に、これまでに詳細に特徴づけられた大部分の阻害物質は、典型的にはグリコシル化部分よりもアミノ酸残基を認識する(Villard et al., 2003)。
【0083】
動物
Biら(1995)およびWangら(1997)により記載されたように、ES細胞における相同組換えを使用してマウスFVIIIまたはFIX遺伝子をノックアウトすることによって得た血友病AまたはBマウスは、研究室で繁殖させる。これらのレシピエントマウスは、CFAの存在下で精製リコンビナントFVIIIまたはFIX抗原を用いてチャレンジしたときに中和抗体を産生する(Mingozzi et al., 2003)。この阻害物質の状態は、Bethesdaアッセイまたは抗FVIII/抗FIX特異的ELISAを使用して経時的にモニターすることができる。FVIIIまたはFIX(+CFA)を用いてチャレンジされたレシピエントマウスは、典型的には抗原チャレンジの2〜3週間後に阻害物質を発生する。
【0084】
実験の設定
4〜6週齢のマウスに、LL−FVIII、LL−FIXもしくはLL−pT1NXまたはLL−OVA(無関係の抗原)の投与を、陰性対照として、またはLL−IL10もしくはIL−10タンパク質(1または10μg)と組み合わせて、または組み合わせずに受けさせる。寛容誘導のための陽性対照として、肝細胞特異的プロモーターからFIXを発現しているアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)をマウスに注射する。レシピエント動物は、FIX+CFAを用いたその後のチャレンジの際の抗FIX抗体の誘導を防止するFIX特異的免疫寛容を発生する。
【0085】
予防の設定では、LL−FVIIIおよびLL−FIXを単独で、またはLL−IL10もしくはIL−10と一緒に、胃内カテーテルを使用して異なる処置間隔および用量を使用して血友病AまたはBマウスに経口投与する。続いてCFAの存在下で精製リコンビナントFVIIIまたはFIX抗原を用いてこれらのレシピエントマウスをチャレンジする(Mingozzi et al., 2003)。対照動物は、LL−pT1NXおよびLL−OVAに曝露する。眼窩後採血により血漿を採集する。FVIIIまたはFIXに対する抗体の産生は、Bethesdaアッセイ(Kasper et al., 1975)を使用して、または改変抗FVIIIまたは抗FIX特異的ELISA(VandenDriessche et al., 1999)を使用して異なる時間間隔で評価する。
【0086】
治療の設定では、記載されたようにFVIIIまたはFIXを血友病AまたはBマウスに最初に免疫する(Mingozzi et al., 2003)。Bethesdaアッセイまたは抗FVIII/抗FIX特異的ELISAを使用して阻害物質の状態を経時的にモニターする。低いまたは高い阻害物質力価を有するマウスは、続いてLL−FVIII、LL−FIXで、単独またはLL−IL10もしくはIL−10と一緒に異なる処置間隔および用量を使用して処置し、阻害物質の力価を経時的に判定する。LL−FVIII、LL−FIXの投与を単独またはLL−IL10と一緒に受けたマウスを、無関係な抗原(破傷風トキソイドまたはOva)を用いてチャレンジすることによって、可能な免疫寛容の特異性を評価する。陽性対照として、マウスを精製FVIIIまたはFIXに経口曝露する。
【0087】
細胞培養、増殖およびサイトカインアッセイ
脾臓およびリンパ節の単細胞懸濁液は、細胞に70μmフィルター細胞ストレーナー(Becton/Dickinson Labware)を通過させることにより調製する。赤血球溶解緩衝液と共にインキュベーションすることによって、脾臓細胞懸濁液から赤血球を除去する。
【0088】
総脾臓細胞集団の増殖アッセイ、2×105個の細胞を、単独または精製VIIIもしくはFIXと一緒のいずれかで、抗IL−10または抗TGF−β中和モノクローナル抗体の存在下または不在下のいずれかで、96ウェルU底プレート中で総体積200μlの完全培地に入れて培養する。FVIIIおよびFIXを1から100μg/mlの範囲の濃度で加える。中和抗体は、1、0.1および0.01μg/mlで加える。CD4+T細胞およびCD4+CD25-T細胞集団の増殖アッセイのために、0.2×105個のCD4+T細胞またはCD4+CD25-T細胞を、抗原提示細胞として作用する1×105個の放射線照射CD4細胞およびFVIIIまたはFIX(0または100μg/ml)と共に、中和抗体の存在下または不在下のいずれかの合計体積200μlの完全培地に入れて96ウェルU底プレート中で培養する。37℃の5%CO2加湿インキュベーターに入れて72時間後に、1μCi/ウェルの[3H]チミジンの添加により増殖を評価する。DNAに結合した放射能を16〜18hr後にガラス繊維製フィルターマット(Perkin Elmer, Boston, USA)上に採集し、チミジンの取込みをシンチレーションカウンター(Perkin Elmer)で測定する。
【0089】
サイトカイン測定のために、異なる増殖アッセイに使用される細胞培養物の上清を培養の24、48および72h後に収集し、サイトカイン分析を行うまで−20℃で凍結する。サイトカイン産生は、Mouse Inflammation Cytometric Bead Assay(BD Biosciences, Mountain View, CA, USA)を使用して定量する。
【0090】
in vivo T調節性活性アッセイ
マウスにおける抗体形成の能動的な抑制を試験するために、異なる実験のL.Lactis処置群から単離した脾臓細胞、ビーズ精製CD4+T細胞、CD4+CD25-T細胞またはCD4+CD25+T細胞をナイーブC3H/HeJマウスに養子移入する。未処置マウスを対照として使用する。移入された細胞数は、全脾臓細胞、亜集団枯渇脾臓細胞、または正の選択をされたCD4細胞ならびにCD4+CD25-T細胞およびCD4+CD25+T細胞について10個である。養子移入の36時間後にcFA中のhF.IX 5μgをレシピエントマウス(実験コホートあたりn=4〜5)に皮下注射した。免疫の2.5週間後に血漿中の抗hF.IX IgG力価を測定した。
【0091】
実施例B1:LL−IL10は血友病AまたはBマウスにおいてLL−FVIIIおよびLL−IXの寛容誘導能を有意に高める
経口寛容の誘導を研究するために、上記(実験の設定)のようにマウスに経口補給する。LL−IL−10の添加は、FVIIIおよびFIXに対する寛容誘導を有意に高める。それは、対照およびLL−FVIII/IX群に比べてLL−FVIII/FIX+LL−mIL−10群において脾臓細胞の因子特異的増殖反応が有意に減少するからである。
【0092】
実施例B2:LL−IL10は、FVIIIおよびFIXの特異的力価とIFN−γとの減少ならびに前記因子に反応したIL10およびTGF−βのより多い産生に関連して経口寛容を強化する
経口寛容の誘導を研究するために、上記(実験の設定)のようにマウスに経口補給する。脾臓細胞およびリンパ節におけるFVIIIおよびFIX特異的抗体ならびに前記因子に反応したサイトカインの産生は、上記のように定量する。対照群およびLL−FVIII/IX群に比べてLL−FVIII/FIX+LL−mIL−10群では、阻害物質の形成および炎症性サイトカインであるIFN−γの産生は強く減少し、免疫抑制サイトカインであるIL−10およびTGF−βは有意に増加する。
【0093】
実施例B3:LL−IL10はCD4+T細胞を介して経口寛容を高める
CD4+T細胞が経口寛容の誘導を仲介するかどうかを評価するために、脾臓細胞およびリンパ節における因子特異的増殖性CD4+T細胞反応を研究する。したがって、上記(実験の設定)のようにマウスに経口補給し、「細胞培養、増殖およびサイトカインアッセイ」に記載されるように因子特異的CD4+T細胞増殖を判定する。LL−FVIII/FIX+LL−mIL−10群における因子特異的CD4 T細胞反応は、対照群およびLL−FVIII/IX群に比べて有意に減少する。
【0094】
実施例B4:IL−10は経口寛容の強化にLL−IL10よりも有効ではない
LL−IL10がIL−10と同様に有効であるかどうかを評価するために、上記(実験の設定)のようにマウスに経口補給する。脾臓細胞およびリンパ節における因子特異的増殖性CD4 T細胞反応を研究する。LL−FVIII/FIX+LL−mIL−10群における因子特異的増殖性CD4 T細胞反応は、LL−FVIII/IX+IL−10群に比べて有意に減少する。
【0095】
実施例B5:LL−FVIII/FIXとLL−IL−10との組み合わせ治療後に抗原に誘導されるT調節性細胞は、in vivo阻害物質形成からの防御を伝達することができる
経口寛容プロトコールで処置されたマウスにおける抗体形成の能動的な抑制について試験するために、上記の異なる処置群からの脾臓細胞を養子移入する(in vivo T調節性活性アッセイ)。対照およびLL−FVIII/IX群に比べて、抗因子IgGの形成はLL−FVIII/FIX+LL−mIL−10群で有意に減少し、本発明者らの組み合わせ経口寛容プロトコールにおける調節性CD4+T細胞の活性化を示している。
【0096】
実施例C:アレルゲンDer p1を分泌しているL.lactisを、in situデリバリーされたIL−10と組み合わせて経口投与後の前記アレルゲンに対する寛容の誘導
緒言
アレルギー性喘息は、気道の慢性炎症性障害である。アレルギー性喘息は、可逆性気道閉塞、アレルゲン特異的免疫グロブリンEの血清レベルの上昇、粘液の過剰分泌、および気管支痙攣原性刺激に対する気道反応亢進(AHR)を特徴とする。その症状は、患者が感作されたアレルゲン(例えば樹木、草、雑草の花粉、塵、塵性ダニ、カビ、動物のフケ)への曝露により悪化する。2型Tヘルパー(Th2)リンパ球は、この疾患の開始、進行および持続に重大な役割を果たす。現在のデータは、アレルゲンに対するTh2反応が通常は調節性T細胞により抑制されることを示唆している。さらにアレルギーの個体では、このサブセットによる抑制は減少する。ここでは、IL−10産生L.lactisと組み合わせたアレルゲンの経口デリバリーが、抗原特異的CD4+調節性T細胞の誘導により喘息様反応を抑制することを実証する。
【0097】
実施例への材料および方法
ヒト疾患を模倣するアレルギー性喘息の二つのマウスモデルは、Ovaアレルゲンモデルおよびヒト化SCIDモデルである。
【0098】
Ovaアレルゲンモデル
ヒトアレルギー性喘息に高度に特徴的な所見であるTh2サイトカイン依存性好酸球性気道炎症、気管支反応性亢進、およびIgE産生に至るOVAエアロゾルを用いてOVA感作マウスを吸入チャレンジする(Brusselle, 1994, Clin Exp Allergy 24:73; Kips et al. 1996, Am J Respir Crit Care Med 153:535; Brusselle et al. 1995, Am J Respir Cell Mol Biol 12:254)。
【0099】
細菌
この研究にわたりL.lactis MG1363株を使用する。細菌は、GM17培地、すなわち0.5%グルコースを補充したM17(Difco Laboratories, Detroit, MI)で培養する。全ての株の保存用懸濁液は、GM17中の50%グリセロールに入れて−20℃で保存する。胃内接種のために、保存用懸濁液を新鮮GM17で200倍に希釈し、30℃でインキュベーションする。これらは16時間以内に2×109コロニー形成単位(CFU)/mLの飽和密度に達する。細菌は遠心分離により採集し、BM9培地に入れて10倍に濃縮する。処置のために、各マウスは胃内カテーテルによりこの懸濁液100μlの投与を毎日受ける。
【0100】
プラスミド
Gallus gallus卵アルブミンをコードしているmRNA配列はGenbank(アクセッション番号AY223553)から検索する。総RNAはニワトリ子宮部から単離し、cDNAは、体積25μl中の総RNA 2μg、2μMオリゴdTプライマー(Promega Corporation Benelux, Leiden, The Netherlands)、0.01mM DTT(Sigma-Aldrich, Zwijndrecht, The Netherlands)、0.5mM dNTP(Invitrogen, Merelbeke, Belgium)、Rnasin(Promega Incorporation Benelux)20U、およびsuperscript II逆転写酵素(Invitrogen)100Uを使用して合成する。OVA cDNAフラグメントは、以下の条件を使用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅させる:以下のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いて94℃2分に続いて94℃45秒、62℃30秒、および72℃90秒を30サイクル
【0101】
【表2】

【0102】
増幅されたフラグメントは、ラクトコッカスP1プロモーター下流でエリスロマイシン耐性pT1NXベクターのUsp45分泌シグナルに融合させる。
【0103】
マウスIL−10およびOVA cDNAを保有するプラスミドを用いてトランスフォーメーションされたMG1363株は、LL−IL10およびLL−OVAと呼ぶ。空のベクターpT1NXを有するMG1363であるLL−pT1NXは対照として役立つ。
【0104】
OVAの定量
LL−OVAからのOVAは社内で開発したOVA特異的酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を使用して判定する。リコンビナントタンパク質の産生は、ウエスタンブロット分析によっても評価する。
【0105】
OVAアレルゲンモデル
マウス
BALB/cマウス(6から8週齢)は、Charles River Laboratories(Calco, Italy)から購入する。マウスは、特定病原体未感染の状態で維持する。
【0106】
マウスの免疫
水酸化アルミニウム(ミョウバン)2mg中のOVA(グレードV;Sigma-Aldrich)2μgをマウスにi.p.免疫する。この免疫は、10日感覚で繰り返す(0日および10日)。対照マウスは、OVA/ミョウバン溶液の代わりに生理食塩水の注射を受ける。免疫の7日後に、感作されたマウスは、3%OVAのエアロゾル化PBS溶液を10分間吸入する。OVAの吸入は、3日連続で行う(18日、19日および20日)。対照マウスは実験群に使用するものと同じ条件でPBS単独を吸入する。
【0107】
経口寛容の誘導
単独またはIL−10(1または10μg)もしくはLL−IL10と組み合わせたLL−OVA、LL−IL10単独、IL−10単独(1または10μg)、LL−pT1NX、または水(非補給対照)の投与をマウスに受けさせる。予防の設定では、二つの異なる方式の間の最初のi.p免疫の前にマウスを補給する。補給方式1および2は、5日間の毎日投与と2日間の非投与が交互になったそれぞれ4および6サイクルからなる。経口寛容誘導のための陽性対照として、胃内カテーテルによる最初の免疫(合計5回の補給)の10から2日前まで1日おきにOVAの1mg(低用量)または30mg(高用量)をマウスに補給し、その補給は気管支好酸球および気道反応性亢進を減少させ、高用量補給の方が低用量補給よりも有効である。
【0108】
治療の設定では、予防の設定について記載したものと同じL.lactis株をマウスに毎日補給するが、最初の免疫から初めて免疫の8日後までのみとする。
【0109】
経口寛容の誘導のための陽性対照として、OVA30mgをマウスに補給する。
【0110】
気道反応性亢進(AHR)の測定
最後の吸入(21日目)の24h後に、メタコリン誘導性気流閉塞により気道反応性亢進を評価する。噴霧した生理食塩水(Otsuka Pharmaceutical)にマウスを2.5min曝露し、続いて漸増する用量(1〜30mg/ml)の噴霧したメタコリンに曝露する。噴霧後にこれらのマウスを体プレチスモグラフに2.5min入れ、Biosystem XA WBPシステム(Buxco Electronics)を使用してPenh(enhanced pause)を測定する。「Penh」は肺気流閉塞を表し、次式を使用して計算される:Penh=((Te−Tr)/(Tr×PEF/PIF))[ここで、Penh=enhanced pause(無次元)、Te=呼気時間(秒)、Tr=緩和時間(秒)、PEF=最大呼気流量(ミリリットル/秒)、およびPIF=最大吸気流量(ミリリットル/秒)である]。ほぼ5秒毎にPenhを測定し、平均し、累積値を各時点についてのPenhの値として平均する。気道反応性亢進はPC200Mch(メタコリン誘発濃度200%)として表現し、これは、ベースラインのPenh値を2倍にしたメタコリン濃度である。
【0111】
気管支肺胞洗浄液(BALF)の分析
気道反応性亢進の測定後に、気管支肺胞洗浄液試料を得る。100mg/kgケタミンおよび10mg/kgキシラジンのi.p.注射によりマウスを麻酔し、それから生理食塩水0.5mlで4回肺を洗浄する。洗浄液を遠心分離し、1%BSAを有する生理食塩水1mlに細胞を再懸濁する。総細胞数は、血球計数器を使用して計数する。サイトスピン試料は、この懸濁液を300rpmで5分間遠心分離することによって調製する。好酸球を好中球とはっきりと識別するために、三つの異なる染色、すなわちDiff-Quick、メイ−グリュンワルト−ギムザ、およびハンセル(エオシン)染色を適用する。標準的な形態基準に基づき、少なくとも300個の白血球を光学顕微鏡により識別する。BALF中のIL−13、IL−4およびIL−5レベルは、製造業者の説明書通りにCytometric Bead Assay(BD Biosciences, Mountain View, CA, USA)により検出する。
【0112】
血清総IgEおよびOVA特異的Igの測定
21日目に、麻酔下で眼窩後静脈叢(retro-orbital sinus)から血液試料を得る。試料が完全に凝固した後で、試料を遠心分離し、血清を収集し、使用まで−80℃で保存する。総IgEは、ペアAb(BD Pharmingen)を使用して製造業者の説明書通りにELISAによりアッセイする。血清中のOVA特異的IgE、IgG1およびIgG2aを測定するために、マイクロタイタープレート(Maxisorp, Nunc, VWR International, Haasrode, Belgium)を2μg/ml OVAでコーティングする。その後、ウェルをPBS中の0.1%カゼインで遮断し、その後、ヤギ抗マウスIgG2a−HRP[Southern Biotechnology Associates (SBA), Imtec ITK Diagnostics, Antwerpen, Belgium、1:5000希釈]、ヤギ抗マウスIgG1−HRP、またはヤギ抗マウスIgE−HRP(SBA、1:5000希釈)と共に0.1%カゼインおよび0.05%Tween20を含むPBS(PBS−CT)で1:10から1:20480希釈したマウス血清試料と共に、そのプレートをインキュベーションする。洗浄後、基質[3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質試薬、Pharmingen, Becton Dickinson, Erembodegem, Belgium]を各ウェルに加える。最後に、ウェルに1M H2SO4を加えることによって反応を停止させる。450nmで吸光度を読み取る。ELISAスコアは、計算されたカットオフ値よりも高いOD450をまだ有した最高希釈の逆数である力価として表現する。カットオフは、5匹の非免疫マウスの平均OD450にSDの3倍を加えたものとして計算する。
【0113】
肺組織の組織学的検査
肺胞洗浄液試料を得た後に、生理食塩水で肺を潅流し、マウスから切除する。この肺を中和緩衝ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋する。切片(厚さ3μm)をH&Eまたは過ヨウ素酸−シッフ(PAS)で染色する。肺における組織学的変化の強度は、1)上皮剥離または気管支上皮細胞核の凹凸、2)杯細胞数の増加、3)血管から気管支および気管支周囲間質の粘膜および粘膜下領域への炎症細胞の浸潤、ならびに4)平滑筋細胞層の肥大および肥厚という所見の分布および強度にしたがって、四つの等級スコア(0:炎症なし、1:微弱/軽度、2:中度、および3:重度)で評価する。
【0114】
肺におけるサイトカインおよびケモカイン遺伝子発現の分析のためのRT−PCR
生理食塩水で潅流後に肺を取り出し、製造業者の説明書通りにISOGEN(Nippon Gene)を使用して総RNAを抽出する。総RNA(10μg)は、オリゴ(dT)15プライマー(Promega)およびSuperscript II Rnase H逆転写酵素(Invitrogen Life Technologies)を使用して42℃で2時間逆転写する。各試料が同量のcDNAを含んでいたことを確認するために、β−アクチン特異的プライマーを使用して各試料のβ−アクチンcDNA濃度を最初に判定する。適切なサイクル数の間増幅させることによって、これらの試料はPCR産物の量が増幅曲線の直線部に残った。PCR産物を2%アガロースゲルで電気泳動させ、臭化エチジウム染色により視覚化した。以下の特異的プライマーセットを使用してIL−13、エオタキシン、IL−10、IFN−γおよびTGF−βのレベルを判定する。
βアクチンについてのセンスプライマー
【0115】
【表3】

【0116】
および
アンチセンスプライマー
【0117】
【表4】

【0118】
IL−13についてのセンスプライマー
【0119】
【表5】

【0120】
および
アンチセンス
【0121】
【表6】

【0122】
エオタキシンについてのセンスプライマー
【0123】
【表7】

【0124】
および
アンチセンスプライマー
【0125】
【表8】

【0126】
IL−10についてのセンスプライマー
【0127】
【表9】

【0128】
および
アンチセンス
【0129】
【表10】

【0130】
IFN−γについてのセンスプライマー
【0131】
【表11】

【0132】
および
アンチセンス
【0133】
【表12】

【0134】
TGF−βについてのセンスプライマー
【0135】
【表13】

【0136】
および
アンチセンス
【0137】
【表14】

【0138】
細胞培養、増殖およびサイトカインアッセイ
最後の吸入(第21日)の1日後に、細胞に70μmフィルター細胞ストレーナー(Becton/Dickinson Labware)を通過させることにより、脾臓および縦隔リンパ節の単細胞懸濁液を調製する。赤血球溶解緩衝液と共にインキュベーションすることにより脾臓細胞懸濁液から赤血球を除去する。それぞれCD4+T細胞単離キット(Miltenyi Biotec, Germany)またはCD4+CD25+調節性T細胞単離キット(Miltenyi Biotec, Germany)、およびMACSカラム(midiMACS; Miltenyi Biotec)を使用して、CD4+T細胞およびCD4+CD25-T細胞を濃縮する。
【0139】
バルク脾臓細胞集団およびLN集団の増殖アッセイ、2×105個の細胞は、総体積200μlの完全培地に入れて、単独または精製OVAの存在下のいずれかで、かつ抗IL−10または抗TGF−β中和モノクローナル抗体の存在下または不在下のいずれかで96ウェルU底プレート中で培養する。OVAは1から100μg/mlの範囲の濃度で添加する。中和抗体は、1、0.1および0.01μg/mlで加える。CD4+T細胞集団およびCD4+CD25-T細胞集団の増殖アッセイのために、2×105個のCD4+T細胞またはCD4+CD25-T細胞は、抗原提示細胞として作用する、1mg/ml OVAを16hロードされたマイトマイシン処理脾臓細胞と共に、CD4+T細胞またはCD4+CD25-T細胞/APCの比が1/1、1/0.3、1/0.1、1/0.03、1/0で、中和抗体の存在下または不在下のいずれかの合計体積200μlの完全培地に入れて96ウェルU底プレート中で16h培養する。37℃の5%CO加湿インキュベーター中で72h後に、1μCi/ウェルの[3H]チミジンの添加により増殖を評価する。DNAに結合した放射能は、18h後にガラス繊維フィルターマット(Perkin Elmer, Boston, USA)上に採集し、チミジンの取込みはシンチレーションカウンター(Perkin Elmer)で測定する。
【0140】
サイトカイン測定のために、異なる増殖アッセイに使用される細胞培養物の上清を培養の24、48および72h後に収集し、サイトカイン分析を行うまで−80℃で凍結する。サイトカイン産生は、Mouse Inflammation Cytometric Bead Assay(BD Biosciences, Mountain View, CA, USA)を使用して定量する。
【0141】
in vivo T調節性活性のアッセイ
最後の吸入(第21日)の1日後に、処置マウスの脾臓を0.1%コラゲナーゼ(Sigma-Aldrich)を用いて37℃で20分間消化する。一部の実験では、全脾臓細胞の単細胞懸濁液を調製し、ConA(2μg/ml; Sigma-Aldrich)と共に48h培養する。細胞を収集し、107個をナイーブBALB/cマウスにi.v.で養子移入する。負の選択のために、ビオチン化抗マウスCD4、CD8、CD11c、CD19およびCD11b mAb(BD Pharmingen)を有する磁気ビーズ(MACS; Miltenyi Biotec)を製造業者の説明書通りに使用して、全脾臓細胞からCD4+、CD8+、CD11C+、CD19+またはCD11b+細胞を枯渇させる。枯渇の効率は、フローサイトメトリーにより調べる(>99%)。CD4+T細胞単離キット、調節性T細胞単離キットを製造業者の説明書通りに使用してCD4+細胞、CD4+CD25-細胞を精製する。正の選択をされた細胞の純度は、フローサイトメトリーを使用してチェックする。細胞移入実験のために、OVA/ミョウバンを用いたそれらの最初の免疫の直前またはそれらの2回目の免疫の直後にBALB/cマウスに尾静脈から細胞を移入する。移入された細胞数は、全脾臓細胞、亜集団枯渇脾臓細胞、または正の選択をされたCD4細胞およびCD4+CD25-細胞について10個である。
【0142】
ヒト化SCID(hu−SCID)モデルにおいて(Duez et al., 2000; Hammad et al., 2000に記載された通り)
このモデルでは、屋内塵性ダニ(HDM)アレルゲンであるDer p1に対するアレルギー性免疫反応を研究することができる。HDMアレルギー患者からのPBMCを用いてi.p.再構成し、続いてHDMエアロゾルに曝露した当該hu−SCIDマウスはヒトIgEを産生し、活性化T細胞およびDCを含む肺浸潤液を発生し、気管支収縮剤に反応してAHRを示す(Pestel et al. 1994, J Immunol, 153:3804; Duez et al., Am J Respir Crit Care Med, vol 161 , ppp 200-206, 2000)。
【0143】
細菌
この研究にわたりL.lactis MG1363株を使用する。細菌は、GM17培地、すなわち0.5%グルコースを補充したM17(Difco Laboratories, Detroit, MI)で培養する。全ての株の保存用懸濁液は、GM17中の50%グリセロール中に入れて−20℃で保存する。胃内接種のために、保存用懸濁液を新鮮GM17で200倍に希釈し、30℃でインキュベーションする。これらは16時間以内に2×109コロニー形成単位(CFU)/mLの飽和密度に達した。細菌を遠心分離により採集し、BM9培地に入れて10倍に濃縮する。処置のために、各マウスは胃内カテーテルによりこの懸濁液100μLの投与を毎日受ける。
【0144】
プラスミド
222アミノ酸残基の球状糖タンパク質であるDer p1は、Dermatophagoides pteronyssinus(Dpt)ダニ由来の主要アレルギンの一つである。Der p1タンパク質をコードしている、最適のL.lactisコドン利用を有するDNA配列を合成し、増幅させ、ラクトコッカスP1プロモーター下流でエリスロマイシン耐性pT1NXベクターのUsp45分泌シグナルに融合させる。マウスIL−10、Der p1、Der p1 aa52−71およびDer p1 aa117−133 cDNAを保有するプラスミドを用いてトランスフォーメーションされたMG1363株は、LL−IL10、LL−Derp1、LL−Derp1 aa52−71、およびLL− Derp1 aa117−133と呼ぶ。空のベクターpT1NXを有するMG1363であるLL−pT1NXは対照として役立つ。
【0145】
Der p1の定量
LL−Derp1由来のDer p1は、社内で開発したDer p1特異的酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を使用して判定する。リコンビナントタンパク質の産生は、ウエスタンブロット分析によっても評価する。
【0146】
患者
血液は、屋内塵性ダニに感受性または非感受性のドナーから収集する。アレルギー患者は、屋内塵性ダニ感作の通常の特徴を提示する。Dermatophagoides pteronyssinus(Dpt)アレルゲンに関する皮膚穿刺試験(Stallergenes, Fresnes, France)(直径≧10mm)は陽性であり、全ての患者は血清中特異的IgE抗体を有する。総IgE濃度は150IU/ml(150〜1600IU/ml)を超える。健康なドナーは陰性対照として試験する(合計IgEレベルは150IU/ml未満であり、彼らは通常に吸入されたアレルギンに関して陰性の皮膚穿刺試験を有する)。
【0147】
ヒト末梢血単核細胞の増殖
遠心分離(120×g、15分間)後に血小板に富む血漿を得て、捨てる。それから血球をRPMI1640(Life Technologies, Paisley, Scotland)(vol/vol)で希釈し、Ficoll勾配(Pharmacia, Uppsala, Sweden)の上に重層する。遠心分離(400×g、30分間)後に、界面でPBMCを採集し、滅菌RPMI培地で3回洗浄してから移し替える。
【0148】
マウス
C.B.−17 SCIDマウス(6〜8週齢)を、特定動物施設の中で無菌床敷を有する隔離飼育器で維持する。ELISAによりマウス血清免疫グロブリンの不在についてSCIDコロニーを定期的にチェックする。
【0149】
SCIDマウスへの末梢血単核細胞の移入:PBMC hu−SCIDマウス
SCIDマウスは、細胞移入時に6から8週齢である。アレルギー患者または健康ドナーからの単核細胞10×106個をRPMI 400μlに入れたものを23ゲージの針を通して腹腔内注射することにより、マウスを再構成する。同じ日に、これらのマウスに2反応性指数[IR]ユニットのDptの投与を腹腔内に受けさせる。細胞の再構成の4日後に、100IRユニットのDpt(100IRユニットはDpt抽出物に含まれるタンパク質約200μgに等しい)を含むアレルゲンエアロゾルにSCIDマウスを連続4日間毎日曝露する(第0日から第4日)。対照群はDptに曝露しない。気道反応性の測定(第35日および第60日)の1日前に、100IRユニットのDpt溶液の別のエアロゾルにhu−SCIDマウスを曝露する。
【0150】
実験の設定
Der p1または陰性対照として無関係の抗原(OVA)を発現するように操作されたL.lactisを、LL−IL10またはIL−10タンパク質(1または10μg)と組み合わせるか、または組み合わせずにマウスに投与を受けさせる。
操作されたL.lactis細菌は、PBMC再構成の1日後に開始して、異なる処置間隔および用量を使用して胃内カテーテルを使用してSCIDマウスに経口投与する。経口寛容の誘導は、ヒト血清IgE抗体の測定、肺浸潤の分析、AHRの測定、ならびにBALF中の細胞集団およびサイトカイン産生の分析により評価する。さらに、寛容の誘導は、Der p1に対する増殖T細胞反応の分析により評価する。
【0151】
気道反応性(AHR)の評価
気道反応性(肺抵抗に50%の増加を引き起こすカルバコールの誘発用量として表現)は、Duezら(2000)により記載されたように第35日または第60日に測定する。
【0152】
ヒトIgEの測定
ヒト細胞の移植の数日後に、エーテル麻酔下でマウスの眼窩後静脈叢から採血する。ε鎖に特異的な二つの異なるマウスmAb(Immunotech International, Luminy, France)を使用して二部位免疫放射定量法によりヒトIgEを研究する。少なくとも20μlの血清を2回繰り返しの試験に使用する。方法の感度は、0.1IUiml(0.24ng/ml)の検出を許す。
【0153】
Dptアレルゲンに対する特異的IgE Abは、ELISAにより定量する。簡潔には、0.1M炭酸/重炭酸緩衝液(pH9.6)中のDptアレルゲンでプラスチック試験管(Maxisorb Startube, Nunc, Denmark)を4℃で一晩コーティングし、0.1M PBS(pH7.4)中の1%BSAで室温で2h飽和させる。洗浄後、BSA(1%)およびTween(0.01%)を含むPBSで希釈したHu−SCIDマウス血清と共に試験管を室温で2h、および4℃で一晩インキュベーションする。大規模に洗浄後、HRPラベル抗ヒトIgE Abを加える。洗浄後、基質[3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質試薬、Pharmingen, Becton Dickinson, Erembodegem, Belgium]を各ウェルに加える。最後に、ウェルに1M H2SO4を加えることによって反応を停止する。吸光度を450nmで読み取る。
【0154】
肺の組織検査
肺を35日目に切除し、パラホルムアルデヒド中で固定し、パラフィン包埋用に加工する。パラフィン組織切片は、ヒトCD45+細胞の検出用に染色し、その後、マウス肺切片上のヒト細胞は、Duezら(2000)に記載されたように組織スコア付けにより定量した。
【0155】
気管支肺胞洗浄液(BALF)の分析
OVAアレルゲンモデルに記載したようにBALFを分析する。
【0156】
細胞培養、増殖およびサイトカインアッセイ:
脾臓の単細胞懸濁液は、細胞に70μmのフィルター細胞ストレーナー(Becton/Dickinson Labware)を通過させることによって調製する。赤血球は、赤血球溶解緩衝液と共にインキュベーションすることによって脾臓細胞懸濁液から除去する。CD4+T細胞およびCD4+CD25-T細胞は、それぞれヒトCD4+T細胞単離キット(Miltenyi Biotec, Germany)またはヒトCD4+CD25+調節性T細胞単離キット(Miltenyi Biotec, Germany)、およびMACSカラム(midiMACS; Miltenyi Biotec)を使用して濃縮する。
【0157】
バルク脾臓細胞の増殖アッセイ、2×105個の細胞は、単独または精製Der p1存在下のいずれかで、かつ抗IL−10または抗TGF−β中和モノクローナル抗体の存在下または不在下のいずれかの合計体積200μlの完全培地に入れて96ウェルU底プレート中で培養する。Der p1は、1から100μg/mlの範囲の濃度で加える。中和抗体は、1、0.1および0.01μg/mlで加える。ヒトCD4+T細胞集団およびヒトCD4+CD25-T細胞集団の増殖アッセイのために、2×105個のCD4+T細胞またはCD4+CD25-T細胞は、中和抗体の存在下または不在下のいずれかの合計200μlの完全培地に入れて、抗原提示細胞として作用する、1mg/ml Der p1を16hロードされたマイトマイシン処理ヒトPBMCと共に、CD4+T細胞またはCD4+CD25-T細胞/APCの比が1/1、1/0.3、1/0.1、1/0.03、1/0で96ウェルU底プレート中で培養する。37℃の5%CO加湿インキュベーター中で72h後に、1μCi/ウェルの[3H]チミジンの添加により増殖を評価する。DNAに結合した放射能は、18h後にガラス繊維製フィルターマット(Perkin Elmer, Boston, USA)上に採集し、チミジンの取込みは、シンチレーションカウンター(Perkin Elmer)で測定する。
【0158】
サイトカイン測定のために、異なる増殖アッセイに使用される細胞培養物の上清を培養の24、48および72h後に収集し、サイトカイン分析を行うまで−80℃で凍結する。サイトカイン産生は、Human Inflammation Cytometric Bead Assay(BD Biosciences, Mountain View, CA, USA)を使用して定量する。
【0159】
実施例C1:LL−IL10は、喘息についてのOVAモデルおよびhuSCIDマウスモデルにおいてそれぞれLL−OVAおよびLL−Der p1の寛容誘導能を有意に高める
経口寛容の誘導を研究するために、上記(実験の設定)のようにマウスに経口補給する。LL−IL−10の添加はOVA/Derp1への寛容誘導を有意に高める。それは、対照群およびLL−OVA/Derp1群に比べてLL−OVA/Derp1+LL−mIL−10群において脾臓細胞のアレルゲン特異的増殖反応が有意に減少するからである。
【0160】
実施例C2:LL−IL10は、前記アレルゲンに反応したAHR、好酸球浸潤、血清IgEレベルの減少、ならびにIL−13、IL−4およびIL−5サイトカイン産生の低下と関連して経口寛容を強化する
経口寛容の誘導を研究するために、上記(実験の設定)のようにマウスに経口補給する。前記因子に反応したAHR、好酸球のBALF浸潤、IgE力価、およびサイトカイン産生を判定する。LL−OVA/Derp1+LL−mIL−10群では、対照およびLL−OVA/Derp1群に比べてAHR、好酸球BALF浸潤、IgE力価は大きく減少し、IL−13、IL−4およびIL−5は有意に低下する。
【0161】
実施例C3:LL−IL10はCD4+T細胞を介して経口寛容を高める
CD4 T細胞が経口寛容の誘導を仲介するかどうかを評価するために、脾臓細胞およびリンパ節におけるアレルゲン特異的増殖性CD4 T細胞反応を研究する。したがって、上記(実験の設定)のようにマウスに経口補給し、「細胞培養、増殖およびサイトカインアッセイ」に記載されるようにアレルゲン特異的CD4+T細胞増殖を判定する。LL−OVA/Derp1+LL−mIL−10群におけるアレルゲン特異的CD4 T細胞反応は、対照群およびLL−OVA/Derp1群に比べて有意に減少する。
【0162】
実施例C4:IL−10は経口寛容の強化にLL−IL10よりも有効ではない
LL−IL10がIL−10と同様に有効であるかどうかを評価するために、上記(実験の設定)のようにマウスに経口補給する。脾臓細胞およびリンパ節におけるアレルゲン特異的増殖性CD4 T細胞反応を研究する。LL−OVA/Derp1+LL−mIL−10群におけるアレルゲン特異的CD4 T細胞反応は、LL−OVA/Derp1+IL−10群に比べて有意に減少している。
【0163】
実施例C5:LL−OVAとLL−IL10との組み合わせ治療後に抗原に誘導されたT調節性細胞は、喘息様反応からの防御をin vivoで伝達することができる。
経口寛容プロトコールで処置されたマウスにおける喘息様反応の能動的な抑制について試験するために、上記(in vivo T調節性活性アッセイ)の異なる処置群由来の脾臓細胞を養子移入する。対照群およびLL−OVA群と比べて、喘息様反応は、LL−OVA+LL−mIL10群において有意に減少しており、これは、本発明者らの組み合わせ経口寛容プロトコールにおける調節性CD4+T細胞の活性化を示している。
【0164】
実施例D:in situデリバリーされたIL−10と組み合わせた、α−グリアジンを分泌しているL.lactisの経口投与後の前記アレルゲンに対する寛容の誘導
緒言
セリアックスプルーまたはグルテン過敏性腸症としても知られているセリアック病は、グルテンを含む特定の食用穀類に対する免疫反応を発生する慢性炎症性疾患である。セリアックは、ヒト白血球抗原変異体HLA−DQ2またはHLA−DQ8をコードする遺伝子と強く関連する複合多遺伝子障害である。セリアックの病因の最も重要な局面の一つは、Tヘルパー1型免疫反応の活性化である。これは、HLA−DQ2/DQ8分子を発現する抗原提示細胞がCD4(+)T細胞に毒性グルテンペプチドを提示するときに生じる。グリアジンおよびグルテニンという両方のクラスのグルテンタンパク質は、DQ2およびDQ8と結合するペプチドを含む。セリアック病患者の小腸においてグルテン特異的T細胞からのIFN−γ産生などの免疫反応が、粘膜の破壊をトリガーすることが一般に受け入れられている。したがって、セリアック病患者の腸における有害な免疫T細胞反応の活性化は、この疾患の開始および進行に重要と思われる。
【0165】
ここに、IL−10産生L.lactisと組み合わせたグリアジンペプチドの経口デリバリーが、抗原特異的CD4+調節性T細胞の誘導を介してグリアジン特異的免疫反応を抑制することを実証する。
【0166】
実施例への材料および方法
細菌
この研究全体にわたりL.lactisMG1363株を使用する。細菌は、GM17培地、すなわち0.5%グルコースを補充したM17(Difco Laboratories, Detroit, MI)中で培養する。全ての株の保存用懸濁液は、GM17中の50%グリセロール中で−20℃で保存する。胃内接種のために、保存用懸濁液を新鮮GM17で200倍に希釈し、30℃でインキュベーションする。それらは、16時間以内に2×109コロニー形成単位(CFU)/mLの飽和密度に達した。遠心分離により細菌を採集し、BM9培地に入れて10倍に濃縮する。処置のために、胃内カテーテルによりこの懸濁液の100μLの投与を各マウスに毎日受けさせる。
【0167】
プラスミド
α−グリアジンタンパク質をコードしている、最適なL.lactisコドン利用を有するDNA配列(Triticum aestivumの配列AJ133612に基づく)、HLA−DQ8(UniProtKB/TrEMBLエントリーQ9M4L6の残基203〜220の配列
【0168】
【表15】

【0169】
に対応する)およびHLA−DQ8脱アミド形態(UniProtKB/TrEMBLエントリーQ9M4L6の残基203〜220の配列
【0170】
【表16】

【0171】
に対応する)のグリアジンペプチドを合成し、増幅させ、ラクトコッカスP1プロモーター下流でエリスロマイシン耐性pT1NXベクターのUsp45分泌シグナルに融合させる。
【0172】
マウスIL−10、α−グリアジン、HLA−DQ8および脱アミノHLA−DQ8を保有するプラスミドを用いてトランスフォーメーションされたMG1363株は、LL−IL10、LL−HLA/DQ8、LL−HLA/DQ8dと呼ぶ。空のベクターpT1NXを含むMG1363であるLL−pT1NXは対照として役立つ。
【0173】
HLA−DQ8およびDQ8dの定量
LL−HLA/DQ8およびLL−HLA/DQ8d由来のHLA−DQ8およびHLA−DQ8dは、社内で開発したELISAを使用して判定する。リコンビナントタンパク質の産生は、ウエスタンブロット分析によっても評価する。
【0174】
マウス
HLA−DQ8トランスジェニックマウス(Senger et al. 2003)は、無グルテン食で特定病原体未感染の状態で維持し、8〜14週齢で使用する。CFA(Difco; BD)50μl中の粗グルテン(Sigma-Aldrich)50μgを足底内注射によりマウスに免疫する。
【0175】
経口寛容の誘導
寛容化実験のために、免疫の前後に、異なる処置間隔および用量を使用してLL−HLA/DQ8、LL−HLA/DQ8dを単独またはIL−10(1または10μg)もしくはLL−IL10と組み合わせたもの、LL−IL10単独、IL−10単独(1または10μg)、LL−pT1NX、または水(無補給対照)を投与する。経口寛容誘導のための陽性対照として、免疫(第0日)前の第−7、−6、−5、−4日に、保存溶液から水に溶解させた小麦グリアジンまたはリコンビナントα−グリアジンの50mg用量をマウスに補給する。
【0176】
血清グリアジン特異的Igの測定
粗グリアジン(Sigma-Aldrich)をメタノールに10mg/mlで再懸濁し、それから1μg/mlの濃度で無水エタノールに希釈する。1μg/mlグリアジンのエタノール溶液100μlをImmulon2プレート(Fisher Scientific International Inc.)の各ウェルに入れ、それからフードの下で乾燥させる。それから、プレートを4%BSA/PBSで37℃で2時間遮断する。プレートを1×PBS、0.05%Tween20で洗浄する。試料血清は、0.1%BSA/PBSに1:200、1:400および1:800希釈し、37℃で1時間インキュベーションする。検出抗体は、Accurate Chemical & Scientific Corp.からのビオチン化ラット抗マウスIgAおよびJackson ImmunoResearch Laboratories Inc.からのビオチン化抗マウスIgGである。酵素コンジュゲートはストレプトアビジン−HRPであり、基質はTMBである。
【0177】
細胞培養、増殖およびサイトカインアッセイ
脾臓および縦隔リンパ節の単細胞懸濁液は、細胞に70μmフィルター細胞ストレーナー(Becton/Dickinson Labware)を通過させることにより調製する。赤血球は赤血球溶解緩衝液と共にインキュベーションすることにより脾臓細胞懸濁液から除去する。それぞれCD4+T細胞単離キット(Miltenyi Biotec, Germany)またはCD4+CD25+調節性T細胞単離キット(Miltenyi Biotec, Germany)およびMACSカラム(midiMACS; Miltenyi Biotec)を使用して、CD4+T細胞およびCD4+CD25-T細胞を濃縮する。
【0178】
バルク脾臓細胞集団およびLN集団の増殖アッセイ。2×105個の細胞は、単独、または粗グリアジンもしくは合成HLA−DQ8/DQ8d存在下で、かつ抗IL−10または抗TGF−β中和モノクローナル抗体の存在下または不在下のいずれかの合計体積200μlの完全培地に入れて96ウェルU底プレート中で培養する。抗原を1から100μg/mlの範囲の濃度で加える。中和抗体は、1、0.1および0.01μg/mlで加える。CD4+T細胞集団およびCD4+CD25-T細胞集団の増殖アッセイのために、2×105個のCD4+T細胞またはCD4+CD25-T細胞は、抗原提示細胞として作用する、1mg/ml粗グリアジンまたは合成HLA−DQ8/DQ8dを16hロードされたマイトマイシン処理脾臓細胞と共に、CD4+T細胞またはCD4+CD25-T細胞/APCの比が1/1、1/0.3、1/0.1、1/0.03、1/0で、中和抗体の存在下または不在下のいずれかの合計体積200μlの完全培地に入れて、96ウェルU底プレート中で培養する。37℃の5%加湿CO2インキュベーター中で72時間後に、1μCi/ウェルの[3H]チミジンの添加により増殖を評価する。DNAと結合した放射能は、18h後にガラス繊維製フィルターマット(Perkin Elmer, Boston, USA)上に採集し、チミジンの取込みはシンチレーションカウンター(Perkin Elmer)で測定する。
【0179】
サイトカインの測定のために、異なる増殖アッセイに使用される細胞培養物の上清を培養の24、48および72h後に収集し、サイトカイン分析を行うまで−80℃で凍結する。サイトカインの産生は、Mouse Inflammation Cytometric Bead Assay(BD Biosciences, Mountain View, CA, USA)を使用して定量する。
【0180】
実施例D1:LL−IL10はLL−HLA/DQ8dの寛容誘導能を有意に高める
経口寛容の誘導を研究するために、上記(経口寛容の誘導)のようにマウスに経口補給する。LL−IL−10の添加は、HLA−DQ8dへの寛容誘導を有意に高める。それは、LL−HLA/DQ8d+LL−mIL−10群における脾臓細胞のHLA−DQ8d特異的増殖反応が、対照群およびLL−HLA/DQ8d群に比べて有意に減少するからである。
【0181】
実施例D2:LL−IL10は前記アレルギンに反応したIFN−γの産生減少と関連して経口寛容を強化する
経口寛容の誘導を研究するために、上記(経口寛容の誘導)のようにマウスに経口補給する。HLA−DQ8dに反応したサイトカイン産生は、上記(細胞培養、増殖およびサイトカインアッセイ)のように定量する。脾臓細胞およびリンパ節において、LL−HLA/DQ8d+LL−mIL−10群における炎症性サイトカインIFN−γの産生は、対照群およびLL−HLA/DQ8d群に比べて強く減少する。
【0182】
実施例D3:LL−IL10はCD4+T細胞を介した経口寛容を高める
CD4 T細胞が経口寛容の誘導を仲介するかどうかを評価するために、脾臓細胞およびリンパ節におけるDQ8特異的増殖性CD4 T細胞反応を研究する。したがって、上記(経口寛容の誘導)のようにマウスに経口補給し、DQ8特異的CD4+T細胞の増殖は「細胞培養、増殖およびサイトカインアッセイ」に記載されるように判定する。LL−HLA/DQ8d+LL−mIL−10群におけるDQ8特異的CD4 T細胞反応は、対照群およびLL−HLA/DQ8d群に比べて有意に減少する。
【0183】
実施例D4:IL−10は経口寛容の強化にLL−IL10よりも有効ではない
LL−IL10がIL−10と同様に有効かどうかを評価するために、上記(経口寛容の誘導)のようにマウスに経口補給する。脾臓細胞およびリンパ節におけるDQ8特異的増殖性CD4 T細胞反応を研究する。LL−HLA/DQ8d+LL−mIL−10群におけるDQ8特異的CD4 T細胞反応は、LL−HLA/DQ8d+IL−10群に比べて有意に減少する。
【0184】
実施例E:in situデリバリーされたIL−10と組み合わせた、BLG食物アレルゲンを分泌しているL.lactisの経口投与後の前記食物アレルゲンに対する寛容の誘導
【0185】
緒言
食物アレルギーは、人口の約2%から5%を苦しめる疾患である。ヒトでは、高いIgE抗体およびIL−4産生抗原特異的Tリンパ球の存在はTh2偏向メカニズムを示唆する。
【0186】
ここで、IL−10産生L.lactisと組み合わせた食物アレルゲンの経口デリバリーが、抗原特異的CD4+調節性T細胞の誘導を介してアレルゲン特異的免疫反応を抑制することを実証する。
【0187】
実施例への材料および方法
細菌およびプラスミド
L.lactis MG1363株をこの研究にわたり使用する。細菌は、GM17培地、すなわち0.5%グルコースを補充したM17(Difco Laboratories, Detroit, MI)で培養する。全ての株の保存用懸濁液は、GM17中の50%グリセロールに入れて−20℃で保存する。胃内接種のために、保存用懸濁液を新鮮GM17で200倍に希釈し、30℃でインキュベーションする。それらは、16時間以内に2×109コロニー形成単位(CFU)/mLの飽和密度に達する。遠心分離により細菌を採集し、BM9培地に入れて10倍に濃縮する。処置のために、胃内カテーテルによりこの懸濁液の100μLの投与を各マウスに毎日受けさせる。ウシβ−ラクトグロブリンcDNAを増幅させ、ラクトコッカスP1プロモーターの下流でエリスロマイシン耐性pT1NXベクターのUsp45分泌シグナルに融合させる。マウスIL−10またはBLGを保有するプラスミドを用いてトランスフォーメーションされたMG1363株は、LL−IL10およびLL−BLGと呼ぶ。空のベクターpT1NXを含むMG1363であるLL−pT1NXは対照として役立つ。
【0188】
ウシβ−ラクトグロブリン(BLG)の定量
LL−BLG由来のBLGは、社内で開発したBLG特異的酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)およびウエスタンブロット分析を使用して判定する。
【0189】
実験の設定
L.lactisの防御効果を探求するために使用する食物アレルギーのマウスモデルは、Frossardら(J Allergy Clin Immunol 113:958-964, 2004)に記載された食物誘導IgE型反応のマウスモデルである。マウスは、LL−IL10またはリコンビナントIL−10(1または10μg)と組み合わせてまたは組み合わせずに、LL−BLGまたは陰性対照として無関係の抗原(OVA)の投与を受ける。寛容誘導の陽性対照として、飲料水に入れた高用量のBLGの投与をマウスに受けさせ、その飲料水はBLGの経口チャレンジの際のアナフィラキシーからマウスを予防する。
【0190】
予防の設定では、BLGを産生する操作をされたL.lactis細菌を、異なる処置間隔および用量を使用して、胃カテーテルを用いてマウスに経口投与する。その後、コレラ毒素の存在下で、精製BLG抗原を用いてこれらのレシピエントマウスを経口チャレンジする。BLGを発現せず(代わりにOVAを発現する)対照ベクターで操作されたL.lactisに対照動物を曝露する。寛容の誘導は、胃内抗原チャレンジ後のアナフィラキシーの分析により、血清および便中のBLG特異的IgG1、IgG2aおよびIgE力価の測定により、脾臓およびPP中の抗体分泌細胞数の判定により、MLN、PPおよび脾臓におけるT細胞増殖およびサイトカイン産生の分析により評価する。
【0191】
BLGへの免疫寛容の誘導がIL−10により高まりうるかどうかを評価するために、LL−BLGをLL−IL10と共にマウスに投与する。
【0192】
BLGに対する経口感作
0.2mol/L NaHCO3中のBLG(Sigma)20mgおよびList Biological Laboratoriesから購入したCTX 10μgを、第0、7、14および21日目に5週齢雌性C3H/HeOuJマウス(Charles River)に胃管栄養により免疫する。陽性対照群(寛容化マウス)は飲料水に入れた0.8mg/mL BLGを4週間自由に与えられる。与えるタンパク質の合計量(22.4mg)は感作されたマウスに投与されたBLGの合計量と類似している。この寛容化手順が永続的に末梢性免疫系もまた活性化し、粘膜免疫系だけを活性化するわけではないことを実証するために、ミョウバン1mgに吸着させたBLG 80μgを寛容化マウスの群に第28日および第42日に2回注射する。
【0193】
抗原のチャレンジ
第28日に、0.2mol NaHCO3 0.4ml中のBLG 100mgを用いて全てのマウスを胃内強制投与によりチャレンジする。アナフィラキシーを観察し、他(Frosssard et al., 2001)に詳細に記載された反応スコア(0:無反応〜3:重度の反応または死亡)を使用することにより等級分けする。中核体温は、チャレンジ前および強制投与の30分後に耳で赤外線により測定する。動物を屠殺し、心穿刺により血液をEDTA含有試験管に収集し、市販のELISAキット(Immunotech, Marseille, France)によるヒスタミン測定のために血漿を得る。
【0194】
細胞培養、増殖およびサイトカインアッセイ
脾臓、腸間膜リンパ節およびPPの単細胞懸濁液は、Frossardら(2004)により記載されたように調製する。CD4+T細胞およびCD4+CD25-T細胞は、それぞれCD4+T細胞単離キット(Miltenyi Biotec, Germany)またはCD4+CD25+調節性T細胞単離キット(Miltenyi Biotec, Germany)およびMACSカラム(midiMACS; Miltenyi Biotec)を使用して濃縮する。
【0195】
バルク脾臓細胞およびLN集団の増殖アッセイ、2×105個の細胞は、単独または精製BLGの存在下のいずれかで、かつ抗IL−10または抗TGF−β中和モノクローナル抗体の存在下または不在下のいずれかの合計体積200μlの完全培地に入れて96ウェルU底プレート中で培養する。BLGは1から100μg/mlの範囲の濃度で加える。中和抗体は、1、0.1および0.01μg/mlで加える。CD4+T細胞集団およびCD4+CD25-T細胞集団の増殖アッセイのために、2×105個のCD4T細胞またはCD4+CD25-T細胞は、抗原提示細胞として作用する、1mg/ml BLGを16hロードされたマイトマイシン処理脾臓細胞と共に、CD4+T細胞またはCD4+CD25-T細胞/APCの比率が1/1、1/0.3、1/0.1、1/0.03、1/0で、中和抗体の存在下または不在下のいずれかの合計体積200μlの完全培地に入れて96ウェルU底プレート中で培養する。37℃の5%CO2加湿インキュベーター中で37℃で72h後に、1μCi/ウェル[3H]チミジンの添加により増殖を評価する。DNAと結合した放射能は、18h後にガラス繊維製フィルターマット(Perkin Elmer, Boston, USA)上に採集し、チミジンの取込みは、シンチレーションカウンター(Perkin Elmer)で測定する。
【0196】
サイトカイン測定のために、異なる増殖アッセイに使用される細胞培養物の上清を培養の24、48および72h後に収集し、サイトカイン分析を行うまで−80℃で凍結する。サイトカイン産生は、Mouse Inflammation Cytometric Bead Assay(BD Biosciences, Mountain View, CA, USA)を使用して定量する。
【0197】
in vivo T調節性活性のアッセイ
マウスにおける抗体形成の能動的な抑制について試験するために、異なる実験のL.Lactis処置群から単離した脾臓細胞、ビーズ精製CD4T細胞、CD4+CD25-T細胞またはCD4+CD25+T細胞をナイーブC3H/HeOuJマウスに養子移入する。未処置マウスは対照として使用する。移入した細胞数は、全脾臓細胞、亜集団を枯渇させた脾臓細胞、または正の選択をされたCD4細胞ならびにCD4+CD25-T細胞およびCD4+CD25+T細胞について107個である。Tregが関係しているならば、BLG抗原を用いたこれらのマウスのその後のチャレンジは、BLGに対する体液性免疫反応およびアナフィラキシーの誘導を予防するはずである。
【0198】
BLG特異的な血清抗体および便抗体についての酵素結合免疫吸着検定
第0、7、14、21および28日目の尾採血から血清を得る。同時に便を得て、ペプスタチン1:1000(Fluka)を0.1mg/mL補充したPBS+1%FCS(Life technologies)に再懸濁する。試料を機械的に脱凝集させ、2分間ボルテックス処理し、続いて14000rpmで4℃で20分間、2回の遠心分離を行う。
【0199】
Adel-Patientら(2000, J. Immunol Methods)から改良した方法により、BLG特異的IgE、IgG1、IgG2aおよび/またはIgA抗体レベルについて血清および便をアッセイする。簡潔には、MaxiSorpマイクロタイタープレート(Nunc)に250ng/ウェルのストレプトアビジン(Fluka)を室温で18時間、続いてポリビニルピロリドンK25(Fluka)溶液300μLを一晩コーティングする。ビオチン化BLG 1μgを3時間インキュベーションし、0.5μg/mLヤギ抗マウスIgA、ラット抗マウスIgG1、または抗マウスIgG2aペルオキシダーゼラベル抗体(Southern Biotechnologies)の存在下でPBS+10%ウマ血清に希釈した血清(IgG1について1:6666および1:2222、IgG2aについて1:666および1:222、IgEについて1:66および1:22)または便(1:3、1:10、および1:33)を、2回の繰り返しで2時間加える。IgEの測定のために、ラット抗マウスIgEモノクローナルAb(clone R35-72, BD Pharmingen)に続いてペルオキシダーゼ結合抗ラットAb(Caltag)を加える。吸光度を490nmで測定する。結果は任意の単位として表現し、BLG+ミョウバンを免疫したマウス由来のプール血清を基準血清として使用する。
【0200】
ELISPOTにより測定した抗原特異的抗体の産生
腸管からパイエル板を機械的に切除し、5mmol EDTA(Life Technologies)を補充したHBSS培地中で30分間インキュベーションする。同様に、Peyer板および腸間膜リンパ節を穏やかに破砕し、70μmのナイロンフィルターを通して濾過する。脾臓細胞は、トリス緩衝NH4Cl中で5分間予備インキュベーションして赤血球を除去する。リンパ芽球は、Percollの60%/66%勾配(Amersham)で単離する。
【0201】
BLG特異的IgG1、IgG2aおよびIgA抗体の測定のために、ELISPOTプレート(Millipore)にストレプトアビジンを37℃で一晩コーティングし、続いてビオチン化BLG 1μgを3時間加える。Percollの60%/66%勾配で単離したリンパ芽球は、ペニシリン、ストレプトマイシン、L−グルタミン、ゲンタマイシン、ポリミキシンBおよび5%FCSを補充したIscove改変Dulbecco培地中で二つの異なる濃度、すなわち1×106および2×106個で37℃で24時間再懸濁し、続いて抗IgA、抗IgG1および抗IgG2a抗体(Southern Biotechnology)と共に4℃で一晩インキュベーションする。100μL/ウェルのアミノエチルカルバゾールを10分間加え、KS ELISPOT4.2.1ソフトウェア(Zeiss)を使用してスポットを自動計数し、細胞106個あたりの細胞形成単位(CFU)として表わす。
【0202】
実施例E1:LL−IL10は食物アレルギーのマウスモデルにおいてLL−BLGの寛容誘導能を有意に高める
経口寛容の誘導を研究するために、上記(実験の設定)のようにマウスに経口補給する。LL−IL−10の添加はBLGへの寛容誘導を有意に高める。それは、LL−BLG+LL−mIL−10群における脾臓細胞のアレルゲン特異的増殖反応は対照群およびLL−BLG群に比べて有意に減少するからである。
【0203】
実施例E2:LL−IL10はBLG特異的抗体反応の減少および前記アレルゲンに反応したIL−4サイトカイン産生の低下に関連する経口寛容を強化する
経口寛容の誘導を研究するために、上記のようにマウスを経口補給する(実験の設定)。BLG特異的抗体反応および前記因子に反応したサイトカイン産生は上記のように判定する。LL−BLG+LL−mIL−10群におけるBLG特異的抗体レベルおよびIL−4は、対照群およびLL−BLG群に比べて有意に低下する。
【0204】
実施例E3:LL−IL10はCD4+T細胞を介して経口寛容を高める
CD4 T細胞が経口寛容の誘導を仲介するかどうかを評価するために、脾臓細胞およびリンパ節におけるアレルゲン特異的増殖性CD4 T細胞反応を研究する。したがって、上記(実験の設定)のようにマウスに経口補給し、「細胞培養、増殖およびサイトカインアッセイ」に記載されるようにアレルゲン特異的CD4+T細胞増殖を判定する。LL−BLG+LL−mIL−10群におけるアレルゲン特異的CD4 T細胞反応は、対照群およびLL−BLG群に比べて有意に減少する。
【0205】
実施例E4:IL−10は経口寛容の強化にLL−IL10よりも有効ではない
LL−IL10がIL−10と同様に有効かどうかを評価するために、上記(実験の設定)のようにマウスに経口補給する。脾臓細胞およびリンパ節におけるアレルゲン特異的増殖性CD4 T細胞反応を研究する。LL−BLG+LL−mIL−10群におけるアレルゲン特異的CD4 T細胞反応は、LL−BLG+IL−10群に比べて有意に減少する。
【0206】
実施例E5:LL−BLGとLL−IL10との組み合わせ治療後に抗原に誘導されるT調節性細胞はin vivoアレルギー様反応からの防御を伝達することができる
経口寛容プロトコールで処置したマウスにおけるアレルギー様反応の能動的な抑制について試験するために、上記(in vivo T調節性活性アッセイ)の異なる処置群からの脾臓細胞を養子移入する。LL−BLG+LL−mIL−10群におけるアレルギー様反応は、対照群およびLL−BLG群に比べて有意に減少し、これは、本発明者らの組み合わせ経口寛容プロトコールにおける調節性CD4+T細胞の活性化を示している。
【0207】
実施例F:前記アレルゲンを分泌しているL.lactisをin situデリバリーされたIL−10と組み合わせて経口投与後の、インスリンに対する寛容性の誘導
緒言
自己免疫は、自発性の炎症性組織損傷およびセルフ抗原に対する寛容の欠如に起因する生理学的機能不全を特徴とする。自己免疫は、部分的に活動しすぎる免疫系と関連し、その免疫系は、過剰のTヘルパー(Th)細胞を特徴とする。感受性遺伝子などの素因および環境因子は影響することが困難であるため、免疫療法を開発する近年の努力は、病原性エフェクター細胞を枯渇させ、かつ/または免疫調節性T細胞を高めることにより、前者細胞と後者細胞との間の機能的均衡を再樹立することに向けられている。膵島β細胞の自己免疫性破壊は、1型糖尿病(T1D)の主要な原因である。この破壊は、いくつかのβ細胞自己抗原に対する細胞性および体液性免疫反応と関連し、両方の免疫反応が疾患の臨床的発症に先行することがある。
【0208】
ここでは、IL−10産生L.lactisと組み合わせた自己抗原の経口デリバリーが、抗原特異的CD4+調節性T細胞の誘導により糖尿病特異的免疫反応を抑制することを実証する。
【0209】
実施例への材料および方法
細菌およびプラスミド
この研究全体にわたりL.lactis MG1363株を使用する。細菌は、GM17培地、すなわち0.5%グルコースを補充したM17(Difco Laboratories, Detroit, MI)で培養する。全ての株の保存用懸濁液は、GM17中の50%グリセロールに入れて−20℃で保存する。胃内接種のために、保存用懸濁液を新鮮GM17で200倍に希釈し、30℃でインキュベーションする。それらは、16時間以内に2×109コロニー形成単位(CFU)/mLの飽和密度に達する。遠心分離により細菌を採集し、BM9培地に入れて10倍に濃縮する。処置のために、胃内カテーテルによりこの懸濁液100μLの投与を各マウスに毎日受けさせる。ヒトプロインスリンII B24−C36ペプチド(hpIIp)、ブタインスリンおよび免疫優性ペプチドInsB9-23(B9-23は、ヒト、ラットおよびマウスという多種にわたり本質的に同一である)をコードしている、最適のL.lactisコドン利用を有するDNA配列を合成し、増幅させ、ラクトコッカスP1プロモーターの下流で、エリスロマイシン耐性pT1NXベクターのUsp45分泌シグナルに融合させる。
【0210】
マウスIL−10、hpIIp、インスリン、InsB9-23を保有するプラスミドを用いてトランスフォーメーションされたMG1363株は、LL−IL10、LL−hpIIp、LL−insulin、LL−InsB9-23と呼ぶ。空のベクターpT1NXを含むMG1363であるLL−pT1NXは対照として役立つ。これらのタンパク質の発現は、抗原特異的ELISAおよびウエスタンブロット分析を使用して判定する。
【0211】
マウス
雌性および雄性非肥満糖尿病(NOD)マウスおよびNOD−重症複合免疫不全(SCID)(Balb/cバックグラウンド)マウスは、Jackson laboratoryから購入する。Balb/c野生型(WT)マウスは、Charles River Italyから購入する。マウスは、特定病原体を除去した中央動物施設で維持する。施設のガイドラインに沿ってマウスを処置および使用する。
【0212】
実験の設定
予防の設定では、LL−hpIIp、LL−insulin、LL−InsB9-23を単独で、またはLL−IL10またはリコンビナントマウスIL−10(1〜10μg)と共に、21日齢(離乳)から開始して、最適な補給方式を使用して、または(大部分のマウスが糖尿病を発生する)100日齢までNODマウスに経口投与する。加えて、LL−pT1NXを陰性対照として経口投与する。陽性(寛容化)対照群について、3週齢のNODマウスをヒトインスリン0.8mgで週3回2または4週間経口処置する。糖尿病の発生は、週3回および血中グルコースレベルの糖尿モニタリングの場合に、尿グルコースレベルの連続モニタリングにより判定する。12〜23週および実験の終了時(35週)に膵臓を収集し、連続切片をヘマトキシリン/エオシンで染色し、単核細胞の浸潤を評点するか、または免疫組織化学によりT細胞の浸潤を分析する。治療の設定では、LL−hpIIp、LL−insulin、LL−InsB9-23を、単独またはLL−IL10もしくはリコンビナントマウスIL−10と共に、安定した糖尿および高血糖を示している糖尿病NOD雌に経口投与する(12〜23週)。加えて、陰性対照としてLL−pT1NXを経口投与する。陽性(寛容化)対照群について、Bressonら(2006)に記載されたように糖尿病NODマウスを処置する。完全寛解は、糖尿の消失および正常血糖への復帰と定義する。
【0213】
寛容誘導の詳細なメカニズムは、in vitroで、特異的自己抗原をNODマウスに再チャレンジ後にin vivoで、およびNOD−SCIDマウスにT細胞を養子移入することにより分析する。
【0214】
糖尿病の検出:
グルコースのモニタリング:尿グルコースはDiastix(Miles)により測定し、血中グルコースモニタリングシステムOneTouch Ultra(LifeScan Inc.)を用いた血中グルコース測定により確認する。糖尿病は、250mg/dlを超える2回の連続する血中グルコース値として定義する。
【0215】
膵島炎:マウスは、CO2を用いた窒息により屠殺し、膵臓を10%ホルマリン中で一晩固定し、パラフィンに包埋し、5μmの連続切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色する。膵島炎スコア(平均±SD)は、以下のように10〜15膵島/マウスにおける細胞浸潤度を顕微鏡で等級分けすることにより判定する:0:膵島浸潤の徴候はみられない、1:膵島周囲への浸潤、2:<50%の浸潤、3:>50%の浸潤。
【0216】
免疫組織化学
膵臓β細胞におけるインスリン、CD4およびCD8の発現を検出するために、一次Ab(Dakoからのモルモット抗ブタインスリン[希釈1:300]、抗CD4 RM4.5、およびBD Biosciencesからの抗CD8a IHC[希釈1:50])を、Christenら(2004)に記載されたように凍結組織切片に適用する。
【0217】
in vitro増殖アッセイ
脾臓、腸間膜LN(MLN)およびPLNの単細胞懸濁液を調製する。総脾臓細胞集団の増殖アッセイ、2×105個の細胞は、完全培地単独あるいは段階濃度(1〜100μg/ml)の精製ヒトインスリンまたはCD4 T細胞もしくはCD8 T細胞に特異的なペプチド(それぞれInsB9-23(H−2dまたはH−2g拘束性)およびInsB15-23(Kd拘束性))(Sigma)の存在下で、かつ抗IL−10または抗TGF−β中和モノクローナル抗体の存在下または不在下のいずれかの合計体積200μlの完全培地に入れて、96ウェルU底プレート中で培養する。中和抗体は、1、0.1および0.01μg/mlで加える。総CD3+T細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞およびCD4+CD25-T細胞集団の増殖アッセイのために、0.2×105個のT細胞は、インスリンまたはGAD65またはCD4+T細胞もしくはCD8+T細胞に特異的なペプチドをロードされたWT Balb/cマウスからの照射した脾臓細胞1×105個と共に、中和抗体の存在下または不在下のいずれかの合計体積200μl完全培地に入れて96ウェルU底プレート中で培養する。37℃の5%CO2加湿インキュベーター中で72hr後に、1μCi/ウェルの[3H]チミジンの添加により増殖を評価する。DNAに結合した放射能を16〜18hr後にガラス繊維製フィルターマット(Perkin Elmer, Boston, USA)上に採集し、シンチレーションカウンター(Perkin Elmer)でチミジンの取込みを測定する。T細胞は、CD3+、CD4+またはCD8+単離キット(MACS; Milteny Biotec, Auburn, CA)を使用した磁気ビーズ分離による負の選択によりPLNまたは脾臓から精製する。CD4+T細胞は、総細胞として使用するか、またはCD25+単離キット(Milteny Biotec)を使用したMACSによりCD25+およびCD25-にさらに分離する。細胞集団の純度(>90%)は、フローサイトメトリー分析により判定する。
【0218】
サイトカイン測定のために、上記の異なる増殖アッセイ(抗原特異的刺激)に使用される細胞培養物の上清を培養の72h後に収集し、サイトカイン分析を行うまで−80℃で凍結する。サイトカイン産生は、Mouse Inflammation Cytometric Bead Assay(BD Biosciences, Mountain View, CA, USA)を使用して定量する。精製CD3+T細胞、CD4+T細胞またはCD8+T細胞を培養し、それらの細胞を抗CD3/抗CD28混合物(各1μg/ml)で24時間in vitroで非特異的に刺激するか、または対照として未刺激のままとする。上清を採集し、BD(商標)Cytometric Bead ArrayフレックスセットをBD FACSArray Bioanalyzerで使用して、FCAPアレイソフトウェア(BD Biosciences)を使用して、IL−10、IL−4、IL−5およびIFNγ産生について分析する。捕捉ELISA実験は、Quantikineキット(R&D Systems)を使用してTGF−βを判定するために使用する。
【0219】
in vitro T細胞増殖阻害アッセイ
最近糖尿病になった雌性NOD(8〜12週)から単離した精製総脾臓CD4+CD25-T細胞2×104個は、WT Balb/cマウス由来の、T細胞を枯渇され、放射線照射され、インスリンまたはペプチドをロードされた脾臓細胞2×104個の存在下で、異なる実験群からの脾臓、MLNまたはPLNから単離した様々な数のCD8+T細胞集団、CD4+T細胞集団およびCD4+CD25-T細胞集団と共に、共培養する。37℃の5%CO2加湿インキュベーター中で72hr後に、1μCi/ウェルの[3H]チミジンの添加により増殖を評価する。DNAに結合した放射能を、16〜18hr後にガラス繊維製フィルターマット(Perkin Elmer, Boston, USA)上に採集し、シンチレーションカウンター(Perkin Elmer)でチミジンの取込みを測定する。
【0220】
in vitro細胞毒性アッセイ
使用するリンパ芽球ターゲットは、Balb/cマウスからのConA活性化脾臓細胞である。合計106個のターゲット細胞を100μCiの51Cr(Amersham International, Buckinghamshire, U.K)で37℃で90minラベルし、3回洗浄し、それから1μg/mlのペプチド(InsB15-23または無関係のペプチド)と共に37℃で1hインキュベーションする。ターゲット細胞を2回洗浄し、104個/ウェルで蒔く。脾臓、MLNおよびPLNから単離したCD8+T細胞を各ウェルに3回の繰り返しで様々なエフェクター:ターゲット(E:T)比で加える。プレートを500rpmで2min遠心分離し、37℃で4hインキュベーションする。インキュベーション後に、51Crの放出[%溶解=100×(試験cpm−自発cpm)/(総cpm−自発cpm)]の判定のために上清を収集する。間接的殺滅アッセイのために、CD8+T細胞は、エフェクターと共にインキュベーションする前に5μg/ml抗CD3抗体(クローン145−2C11、Pharmingen)と共にインキュベーションする。
【0221】
糖尿病の養子移入
8〜10wkのNOD−SCIDマウスに、糖尿病雌性NODマウス(6週、12週および18週)から単離した脾臓細胞2×107個をi.v.で、または5×106個をi.p.で、異なるL.lactis処置実験群から単離した、段階数のビーズ精製CD3+T細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞、CD4+CD25-T細胞、またはCD4+CD25+T細胞と組み合わせて、または組み合わせずに注射する。未処置マウスを対照として用いる。糖尿病の発症を週に3回、血中グルコースレベルの連続モニタリングにより決定する。
【0222】
実施例F1:LL−IL10は、非肥満糖尿病マウスにおけるLL−hpIIp、LL−insulin、LL−InsB9-23の寛容誘導能を有意に高める
経口寛容の誘導を研究するために、上記(実験の設定)のようにマウスに経口補給する。LL−hpIIp/insulin/InsB9-23+LL−mIL−10群における脾臓細胞の自己抗原特異的増殖反応は、対照群およびLL−hpIIp/insulin/InsB9-23群に比べて有意に減少することから、LL−IL10の添加は、自己抗原への寛容誘導を有意に高める。
【0223】
実施例F2:LL−IL10は、膵島炎の低減、β細胞破壊の速度減少、および脾臓細胞によるIL−10産生増加と関連して経口寛容を強化する
経口寛容の誘導を研究するために、上記(実験の設定)のようにマウスに経口補給する。膵島炎の存在、β細胞破壊速度、および前記自己抗原に対するサイトカイン産生は、上記のように判定する。組織学的分析は、対照群およびLL−hpIIp/insulin/InsB9-23群に比べてLL−hpIIp/insulin/InsB9-23+LL−mIL−10群において有意に低度の膵島炎およびβ細胞破壊、ならびにIL−10産生増加を示す。
【0224】
実施例F3:LL−IL10はCD4+T細胞を介して経口寛容を高める
CD4 T細胞が経口寛容の誘導を仲介するかどうかを評価するために、脾臓細胞およびリンパ節における自己抗原特異的増殖性CD4 T細胞反応を研究する。したがって、上記(実験の設定)のようにマウスに経口補給し、自己抗原特異的CD4+T細胞増殖を上記(in vitro増殖アッセイ)の様に判定する。対照群およびLL−hpIIp/insulin/InsB9-23群に比べたLL−hpIIp/insulin/InsB9-23+LL−mIL−10群における自己抗原特異的CD4 T細胞反応。
【0225】
実施例F4:IL−10は経口寛容の強化にLL−IL10よりも有効ではない
LL−IL10がIL−10と同様に有効であるかどうかを評価するために、上記(実験の設定)のようにマウスに経口補給する。脾臓およびリンパ節における自己抗原特異的増殖性CD4 T細胞反応を研究する。LL−hpIIp/insulin/InsB9-23+IL−10群に比べたLL−hpIIp/insulin/InsB9-23+LL−mIL−10群における自己抗原特異的CD4 T細胞反応。
【0226】
実施例F5:LL−InsB15-23とLL−IL10との組み合わせ治療後のNODマウスにおいて自己攻撃性CD8+反応は抑制される
本発明者らの組み合わせアプローチが、バイスタンダー抑制メカニズムにより糖尿病をモデュレーションすることができる抑制性CD4+T細胞を誘導するかどうかを調べるために、CD8+自己攻撃性T細胞が受ける効果を分析する。抗原特異的自己攻撃性CD8+T細胞の率および/または活性は、組み合わせ治療後に強く減少する。
【0227】
実施例F6:LL−InsB15-23とLL−IL10との組み合わせ治療後の抗原誘導性T調節性細胞は、アレルギー様反応の防御をin vivoで伝達することができる。
経口寛容プロトコールで処置したマウスにおける糖尿病様反応の能動的抑制を試験するために、上記のように異なる処置群からの脾臓細胞を養子移入する(糖尿病の養子移入)。対照およびLL−InsB9-23群に比べて、LL−InsB9-23+LL−mIL−10群では、糖尿病様反応は有意に減少し、これは、本発明者らの組み合わせ経口寛容プロトコールにおける調節性CD4+T細胞の活性化を示している。
【0228】
【表17】





【図面の簡単な説明】
【0229】
【図1】Balb/cマウスにGM L.lactisまたは卵アルブミンタンパク質(OVA)を経口補給後の膝窩および鼠径部リンパ節(PLN/ILN)における増殖性免疫反応を示す図である。OVA特異的増殖反応は、完全フロイントアジュバント中のOVAを用いてマウスを皮下チャレンジ(第0日)した11日後に測定した。第−46から−42、−39から−35、−32から−28、−25から−21、−18から−14、−11から−7、−4から−1日に混合L.lactis懸濁液の投与をマウスに受けさせた。LL−pT:LL−pT1NX(ベクター対照)およびLL−pT1NXの混合細菌懸濁液、LL−OVA:卵アルブミンを分泌しているL.lactis株およびLL−pT1NXの混合細菌懸濁液、LL−OVA+LL−mIL10:LL−OVAおよびマウスインターロイキン10を分泌しているL.lactis株の混合細菌懸濁液。陽性対照1には第−7日にOVA 20mgの投与を受けさせた。陽性対照2にはL.lactis補給と同日にOVA 1μgの投与を受けさせた。示した結果は、マウス4匹を有する群から3回の繰り返しで培養したプール細胞についての、cpm単位(±SD)の平均[3H]チミジン取り込みである。
【図2】Balb/cマウスにGM L.lactisまたはOVAを経口補給後のMLNおよびPLN/ILNにおけるサイトカイン反応を示す図である。対照マウスおよびGM L.lactisまたはOVAを補給したマウスにおけるIL12p70(a)、TNF−α(b)、IFN−γ(c)、MCP−1(d)、IL−10(e)およびIL−6(f)の分泌を評価した。300μg/ml OVAでin vitro再刺激後に、マウス炎症キットを使用してCBA(BD Bioscience)によりサイトカインの存在についてMLN(A)およびPLN/ILN(B)細胞の細胞培養上清を試験した。示した結果は、マウス4匹を有する群からのプール細胞によるサイトカイン産生である。
【図3】Balb/cマウスにGM L.lactisまたは卵アルブミンタンパク質(OVA)を経口補給後のPLN/ILNにおけるOVA特異的増殖性CD4+T細胞反応を示す図である。OVA特異的増殖性反応は、完全フロイントアジュバント中でOVAを用いてマウスを皮下チャレンジ(第0日)した11日後に測定した。第−46から−42、−39から−35、−32から−28、−25から−21、−18から−14、−11から−7、−4から−1日に混合L.lactis懸濁液の投与をマウスに受けさせた。LL−pT:LL−pT1NX(ベクター対照)およびLL−pT1NXの混合細菌懸濁液、LL−OVA:卵アルブミンを分泌しているL.lactis株およびLL−pT1NXの混合細菌懸濁液、LL−OVA+LL−mIL10:LL−OVAおよびマウスインターロイキン10を分泌しているL.lactis株の混合細菌懸濁液。陽性対照1には第−7日にOVA 20mgの投与を受けさせた。陽性対照2にはL.lactis補給と同日にOVA 1μgの投与を受けさせた。示した結果は、マウス4匹を有する群から3回の繰り返しで培養したプール細胞についての、cpm単位(±SD)の平均[3H]チミジン取り込みである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において免疫寛容を誘導するためまたは免疫反応関連疾患を処置するために、薬剤、メディカルフードまたはニュートラシューティカルを調製するための、抗原と組み合わせた免疫モデュレーション化合物分泌微生物の使用。
【請求項2】
哺乳動物において免疫反応関連疾患に関与する疾患もしくは障害を処置、予防および/もしくは緩和するための、または免疫寛容を誘導するための、薬剤、メディカルフードまたはニュートラシューティカルを調製するための組成物の使用であって、該組成物が、少なくとも免疫モデュレーション化合物分泌微生物および抗原を含むことを特徴とする使用。
【請求項3】
哺乳動物が、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタおよびヒトからなる群より選択される、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
免疫寛容の誘導が、該誘導の前の少なくとも1.5、2または3倍以上である、請求項1から3のいずれか記載の使用。
【請求項5】
免疫寛容の誘導が、哺乳動物におけるサイトカインレベルのモデュレーションにより測定される、請求項1から4のいずれか記載の使用。
【請求項6】
モデュレーションが、サイトカインレベルの増加であり、該サイトカインが、IL−10、TGF−β、IL−4およびIFNαの群より選択される、請求項1から5のいずれか記載の使用。
【請求項7】
サイトカインレベルの増加が、誘導の前の少なくとも1.5、2または3倍以上である、請求項6記載の使用。
【請求項8】
モデュレーションが、サイトカインレベルの減少であり、該サイトカインが、IFN−γ、IL−2、IL−5、IL−6、IL−12、IL−13、TNF−αおよびMCP−1の群より選択される、請求項5記載の使用。
【請求項9】
サイトカインレベルの減少が、誘導の前の少なくとも1.5、2または3倍以上である、請求項8記載の使用。
【請求項10】
抗原が、T細胞介在性免疫反応および/またはB細胞介在性免疫反応を誘発する、請求項1から9のいずれか記載の使用。
【請求項11】
T細胞介在性免疫反応が、Th1免疫反応である、請求項1から10のいずれか記載の使用。
【請求項12】
T細胞介在性免疫反応が、Th2免疫反応である、請求項1から10のいずれか記載の使用。
【請求項13】
抗原が、アレルゲン、アロ抗原、セルフ抗原または自己抗原である、請求項1から12のいずれか記載の使用。
【請求項14】
抗原が、アレルギー性喘息、多発性硬化症、I型糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性重症筋無力症、関節リウマチ、食物アレルギーまたはセリアック病の誘導に関与する、請求項1から13のいずれか記載の使用。
【請求項15】
抗原が、治療用抗原、好ましくは抗CD3である、請求項1から12のいずれか記載の使用。
【請求項16】
抗原が、抗原発現微生物によりデリバリーされる、請求項1から15のいずれか記載の使用。
【請求項17】
抗原が、抗原発現微生物の表面に表出されている、請求項16記載の使用。
【請求項18】
抗原が、分泌される、請求項16記載の使用。
【請求項19】
方法が、治療用である、請求項1から18のいずれか記載の使用。
【請求項20】
方法が、予防用である、請求項1から18のいずれか記載の使用。
【請求項21】
粘膜デリバリーが、直腸デリバリー、頬デリバリー、肺デリバリー、眼デリバリー、鼻デリバリー、膣デリバリーおよび経口デリバリーからなる群より選択される、請求項1から20のいずれか記載の使用。
【請求項22】
抗原および/または免疫モデュレーション化合物発現微生物が、噴霧剤、カプセル剤、エアロゾル、口中錠(lozenge)、ボーラス、錠剤、サシェ、液剤、懸濁剤、乳剤またはトローチ剤によりデリバリーされる、請求項1から21のいずれか記載の使用。
【請求項23】
抗原および免疫モデュレーション化合物発現微生物が、ユニット投薬形態、例えば錠剤、カプセル剤または定量エアロゾル用量でデリバリーされる、請求項1から22のいずれか記載の使用。
【請求項24】
抗原が、免疫モデュレーション化合物分泌微生物と同時にまたは連続的にデリバリーされる、請求項1から23のいずれか記載の使用。
【請求項25】
免疫モデュレーション化合物が、免疫抑制化合物である、請求項1から24のいずれか記載の使用。
【請求項26】
免疫抑制化合物が、寛容増強サイトカインまたは寛容増強抗体である、請求項25記載の使用。
【請求項27】
免疫抑制化合物が、免疫抑制サイトカインまたは抗体である、請求項1から25のいずれか記載の使用。
【請求項28】
免疫抑制サイトカインが、IL−4、IL10、IFN−α、Flt3L、TGFβおよびRANK−Lからなる群より選択される、請求項27記載の使用。
【請求項29】
免疫抑制抗体が、抗IL−2、抗IL12および抗IFN−γからなる群より選択される、請求項27記載の使用。
【請求項30】
微生物が、細菌または酵母である、請求項1から29のいずれか記載の使用。
【請求項31】
細菌が、乳酸菌である、請求項30記載の使用。
【請求項32】
乳酸菌が、Lactobacillus、Leuconostoc、Pediococcus、Lactococcus、Streptococcus、Aerococcus、Carnobacterium、Enterococcus、Oenococcus、Teragenococcus、VagococcusおよびWeisellaからなる群より選択される、請求項31記載の使用。
【請求項33】
Lactococcusが、Lactococcus lactisである、請求項32記載の使用。
【請求項34】
酵母が、Saccharomyces cerevisiaeである、請求項30記載の使用。
【請求項35】
微生物が、プロバイオティック微生物である、請求項30から34のいずれか記載の使用。
【請求項36】
免疫モデュレーション化合物が、分泌される、請求項1から35のいずれか記載の使用。
【請求項37】
免疫モデュレーション化合物が、微生物表面に表出されている、請求項1から35のいずれか記載の使用。
【請求項38】
抗原および免疫モデュレーション化合物が、同じ微生物により発現される、請求項1から37のいずれか記載の使用。
【請求項39】
抗原および/または免疫モデュレーション化合物分泌微生物が、アジュバント、薬学的に許容され得る担体および/または賦形剤をさらに含む、請求項1から38のいずれか記載の使用。
【請求項40】
抗原および/または免疫モデュレーション化合物分泌微生物が、免疫抑制サイトカインの産生を刺激する化合物をさらに含む、請求項1から39のいずれか記載の使用。
【請求項41】
免疫抑制サイトカインの産生を刺激する化合物が、コレラ毒素Bサブユニットである、請求項40記載の使用。
【請求項42】
抗原および/または免疫モデュレーション化合物分泌微生物が、少なくとも1日、好ましくは少なくとも1週間、さらに好ましくは少なくとも1ヶ月または1年間デリバリーされる、請求項1から41のいずれか記載の使用。
【請求項43】
抗原および免疫モデュレーション化合物分泌微生物が、少なくとも1日1回、好ましくは1日2回デリバリーされる、請求項1から42のいずれか記載の使用。
【請求項44】
抗原および/または免疫モデュレーション化合物分泌微生物が、少なくとも10フェムトグラム/日から100mg/日の用量でデリバリーされる、請求項1から43のいずれか記載の使用。
【請求項45】
免疫モデュレーション化合物分泌微生物を抗原と組み合わせて含む組成物。
【請求項46】
組成物が、薬学的組成物である、請求項45記載の組成物。
【請求項47】
抗原が、アレルゲン、アロ抗原、セルフ抗原または自己抗原である、請求項45または46記載の組成物。
【請求項48】
抗原が、アレルギー性喘息、多発性硬化症、I型糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性重症筋無力症、関節リウマチ、食物アレルギーまたはセリアック病の誘導に関与する、請求項45から47のいずれか記載の組成物。
【請求項49】
抗原が、治療用抗原、好ましくは抗CD3である、請求項45から47のいずれか記載の組成物。
【請求項50】
抗原が、抗原発現微生物によりデリバリーされる、請求項45から49のいずれか記載の組成物。
【請求項51】
抗原が、該抗原を発現している微生物の表面に表出されている、請求項45から50のいずれか記載の組成物。
【請求項52】
抗原が、分泌される、請求項45から50のいずれか記載の組成物。
【請求項53】
抗原および/または免疫モデュレーション化合物発現微生物が、噴霧剤、カプセル剤、エアロゾル、口中錠、ボーラス、錠剤、サシェ、液剤、懸濁剤、乳剤またはトローチ剤に存在する、請求項45から52のいずれか記載の組成物。
【請求項54】
抗原および免疫モデュレーション化合物発現微生物が、ユニット投薬形態、例えば錠剤、カプセル剤または定量エアロゾル用量に存在する、請求項45から53のいずれか記載の組成物。
【請求項55】
免疫モデュレーション化合物が、免疫抑制化合物または抗体である、請求項45から54のいずれか記載の組成物。
【請求項56】
免疫抑制化合物が、寛容増強サイトカインまたは寛容増強抗体である、請求項55記載の組成物。
【請求項57】
免疫抑制化合物が、IL−4、IL10、IFN−α、Flt3L、TGFβおよびRANK−Lからなる群より選択されるサイトカインである、請求項55記載の組成物。
【請求項58】
免疫抑制抗体が、抗IL−2、抗IL−12および抗IFN−γからなる群より選択される、請求項55記載の組成物。
【請求項59】
微生物が、プロバイオティック微生物である、請求項45から58のいずれか記載の組成物。
【請求項60】
微生物が、細菌または酵母である、請求項45から59のいずれか記載の組成物。
【請求項61】
細菌が、乳酸菌である、請求項60記載の組成物。
【請求項62】
乳酸菌が、Lactobacillus、Leuconostoc、Pediococcus、Lactococcus、Streptococcus、Aerococcus、Carnobacterium、Enterococcus、Oenococcus、Teragenococcus、VagococcusおよびWeisellaからなる群より選択される、請求項61記載の組成物。
【請求項63】
Lactococcusが、Lactococcus lactisである、請求項62記載の組成物。
【請求項64】
酵母が、Saccharomyces cerevisiaeである、請求項60記載の組成物。
【請求項65】
抗原および免疫モデュレーション化合物が、同じ微生物により発現される、請求項45から64のいずれか記載の組成物。
【請求項66】
アジュバント、薬学的に許容され得る担体および/または賦形剤をさらに含む、請求項45から65のいずれか記載の組成物。
【請求項67】
免疫抑制サイトカインの産生を刺激する化合物をさらに含む、請求項45から66のいずれか記載の組成物。
【請求項68】
免疫抑制サイトカインの産生を刺激する化合物が、コレラ毒素Bサブユニットである、請求項67記載の組成物。
【請求項69】
抗原および/または免疫モデュレーション化合物分泌微生物が、少なくとも10フェムトグラムから100mgの用量で存在する、請求項45から68のいずれか記載の組成物。
【請求項70】
免疫モデュレーション分子発現微生物の粘膜デリバリーと組み合わせた、抗原の粘膜デリバリーを含む、動物における該抗原に対する免疫寛容を誘導するための方法。
【請求項71】
免疫モデュレーション化合物分泌微生物の粘膜デリバリーと組み合わせた、抗原の粘膜デリバリーを含む、免疫反応関連疾患の処置を必要とする哺乳動物における該処置のための方法。
【請求項72】
免疫反応関連疾患を含む疾患もしくは障害を処置、予防および/もしくは緩和するための、または免疫寛容を誘導するための、免疫モデュレーション化合物分泌微生物と組み合わせて少なくとも抗原を含む、薬剤、ニュートラシューティカルまたはメディカルフード。

【図1】
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【図2A(a)】
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【図2A(b)】
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【図2A(c)】
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【図2A(d)】
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【図2A(e)】
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【図2A(f)】
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【図2B(a)】
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【図2B(b)】
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【図2B(c)】
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【図2B(d)】
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【図2B(e)】
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【図2B(f)】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−521406(P2009−521406A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542752(P2008−542752)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069062
【国際公開番号】WO2007/063075
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(507055501)アクトジェニックス・エヌブイ (11)
【氏名又は名称原語表記】Actogenix NV
【Fターム(参考)】