説明

抗原タンパク質コンジュゲートおよびその製造方法

抗原タンパク質コンジュゲートの、改良された製造方法を提供する。該コンジュゲートは、好ましくは、該抗原タンパク質中の1以上の遊離スルフヒドリル基との反応により形成される。本発明の方法は、好ましくは、トリアルキルホスフィンを還元剤として使用し、好ましくは単一反応容器内(すなわち、「インシトゥ(in situ)」)での、該抗原タンパク質中のジスルフィド結合の還元およびコンジュゲート部分とのコンジュゲート形成を可能にする。なぜなら、該製造方法は、最適には、後にスルフヒドリル反応剤を添加する前に該還元剤を除去することを必要としないからである。該インシトゥ(in situ)方法により製造される抗原タンパク質コンジュゲート、診断イムノアッセイにおけるその使用も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
とりわけ、本発明は、タンパク質コンジュゲートの分野、特に、抗原タンパク質のコンジュゲートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
標識、タグまたは他の部分がタンパク質に結合したタンパク質コンジュゲートは、当技術分野で公知の多数の方法により形成されうる。タンパク質中のチオール(スルフヒドリル)基の数はアミンのような他の反応性基に比べて少ないため、標識またはタグのコンジュゲート形成するための、チオール基の使用は、タンパク質活性を遮断または不活性化する可能性がより低い、より集中的なアプローチを可能にする。
【0003】
スルフヒドリル基はシステイン残基の形態でタンパク質中に存在し、しばしば、ジスルフィド結合の形態で存在する。したがって、コンジュゲート形成の前に、スルフヒドリル基を露出させるためにタンパク質を適当な還元剤で処理しなければならない。タンパク質のジスルフィド結合を還元するために典型的に使用される還元剤には、ジチオトレイトール(DTT)およびβ−メルカプトエタノール(β−ME)が含まれる。還元剤としてこれらの化合物のいずれを使用する場合にも、スルフヒドリル反応試薬の導入の前に還元剤を除去する後続工程が必要である。なぜなら、還元剤のチオール官能性は、スルフヒドリル反応剤とも反応して、コンジュゲート形成効率を抑制および軽減しうるからである。したがって、チオール含有還元剤の使用は追加的な精製工程を必要とし、これは処理時間の増加を招き、それに伴い、スルフヒドリル基が酸化されて分子間および分子内ジスルフィド結合を再形成させる可能性を増加させる。
【0004】
ジスルフィド結合を減少させるために、水溶性トリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)も使用される(J.Org.Chem.,56,2648−2650(1991))。TCEPには、DTTおよびβ−MEと比較して無臭であるという利点がある。また、TCEPは水溶液中で速度論的に安定であり、広いpH範囲にわたってその還元有効性を保有する。TCEPは、7.5を超えるpH値においてDTTより有意に安定であることが示されており、8.0未満のpH値においてDTTより速効かつ強力な還元剤である。
【0005】
TCEPは一般に、ジスルフィド結合の還元に対して選択的であり、多数の他の官能性に対しては無反応性である又は最低限度の反応性しか有さないとみなされているが、いくつかの最近の研究は、TCEPが実際には、あるチオール反応性官能性と反応することを示している。DTTとTCEPとの特性の比較において、研究者(Getz,E.B.ら,Anal.Biochemistry,273,73−80(1999))は、還元剤の非存在下での標識化と比較して、DTTおよびTCEPが共に、マレイミドでのスルフヒドリル基の標識化を抑制すること(尤も、この抑制は、DTTの存在下で、より顕著である)を報告している。ヨードアセトアミドでの標識化の場合には、低濃度(すなわち、0.1mM)では、TCEPまたはDTTのいずれの存在も標識化効率にほとんど影響を及ぼさないことが判明した。しかし、より高い濃度(すなわち、1.0mM)では、TCEPは、対応量のDTTより、ヨードアセトアミド結合に有害である。同様に、他の研究者(Shafer,D.E.ら,Anal.Biochemistry,282,161−164(2000))は、TCEPがヨードアセトアミド基およびマレイミド基の両方と迅速に結びついて、コンジュゲート形成工程の前にチオール−ペプチド溶液から過剰なTCEPを除去することが必要となると報告している。
【0006】
タンパク質内のジスルフィド結合のTCEP還元は多くの場合に用いられている。例えば、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化および液体二次イオン化質量分析の準備におけるタンパク質の部分的還元(Fischer,W.H.ら,Rapid Commun.Mass.Spectrom.,7,225−228(1993))、蛍光偏光またはFRET研究のためのタンパク質の蛍光標識(Bergendahl,V.ら,Anal,Biochemistry,307,368−374(2002))、ならびにマッピング目的のタンパク質ジスルフィド結合の限定的還元(Wu,J.およびWatson,J.T.,Protein Sci.,6,391−398(1997))の場合が挙げられる。
【0007】
この背景的情報は、本発明に関連している可能性があると本出願人が考えている情報を知らしめる目的で記載されている。前記情報のいずれかが本発明に対する先行技術を構成することを必ずしも自認するものではなく、そのように解釈されるべきでもない。
【0008】
本明細書中で言及されている全ての特許および刊行物の全体を参照により本明細書に組み入れるものとする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J.Org.Chem.,56,2648−2650(1991)
【非特許文献2】Getz,E.B.ら,Anal.Biochemistry,273,73−80(1999)
【非特許文献3】Shafer,D.E.ら,Anal.Biochemistry,282,161−164(2000)
【非特許文献4】Fischer,W.H.ら,Rapid Commun.Mass.Spectrom.,7,225−228(1993)
【非特許文献5】Bergendahl,V.ら,Anal,Biochemistry,307,368−374(2002)
【非特許文献6】Wu,J.およびWatson,J.T.,Protein Sci.,6,391−398(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概略
本発明の目的は、抗原タンパク質コンジュゲートの製造方法を提供することである。本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、(a)1以上のジスルフィド結合の少なくとも1つの還元を可能にする条件下、1以上のジスルフィド結合を含む抗原タンパク質をトリアルキルホスフィンと接触させて、少なくとも一対のスルフヒドリル残基を含む還元された抗原タンパク質を得る工程、および(b)該スルフヒドリル残基の少なくとも1つとスルフヒドリル反応性試薬との反応を可能にする条件下、前記の還元された抗原タンパク質を、コンジュゲート部分とチオール反応性官能性とを含むスルフヒドリル反応性試薬と接触させて、該抗原タンパク質コンジュゲートを形成させる工程を含んでなる、抗原タンパク質コンジュゲートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のもう1つの態様においては、好ましくは、(a)1以上のジスルフィド結合の少なくとも1つの還元を可能にする条件下、1以上のジスルフィド結合を含む抗原タンパク質をトリアルキルホスフィンと接触させて、少なくとも一対のスルフヒドリル残基を含む還元された抗原タンパク質を得る工程、および(b)該スルフヒドリル残基の少なくとも1つとスルフヒドリル反応性試薬との反応を可能にする条件下、前記の還元された抗原タンパク質を、コンジュゲート部分とチオール反応性官能性とを含むスルフヒドリル反応性試薬と接触させて、該抗原タンパク質コンジュゲートを形成させる工程を含む製造方法により製造される抗原タンパク質コンジュゲートを提供する。
【0012】
本発明のもう1つの態様においては、好ましくは、(a)抗体:抗原タンパク質コンジュゲート複合体の形成を可能にする条件下、サンプルを、抗原タンパク質コンジュゲートと接触させること(ここで、該抗原タンパク質コンジュゲートは、検出可能な標識とコンジュゲート形成された抗原タンパク質を含み、好ましくは、(i)該抗原タンパク質内の1以上のジスルフィド結合の還元を可能にする条件下、該抗原タンパク質をトリアルキルホスフィンと接触させて、少なくとも一対のスルフヒドリル残基を含む還元された抗原タンパク質を得る工程、および(ii)該スルフヒドリル残基の少なくとも1つとスルフヒドリル反応性試薬との反応を可能にする条件下、前記の還元された抗原タンパク質を、検出可能な標識とチオール反応性官能性とを含むスルフヒドリル反応性試薬と接触させて、該抗原タンパク質コンジュゲートを形成させる工程を含む製造方法により製造される。)、および(b)ステップ(a)において形成されたいずれかの抗体:抗原タンパク質コンジュゲート複合体を検出することを含んでなる、サンプル中の抗原タンパク質に対する抗体を検出するための方法を提供する。
【0013】
本発明のこれらの及び他の特徴は、添付図面を参照する以下の詳細な説明において、より明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の例示的実施形態に従う法によりホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート形成されたタンパク質を製造するために用いる還元およびコンジュゲート形成工程の概要図を示す。この同じ方法が、組換え、合成または単離抗原タンパク質に適用されうる。
【図2】図2は、試験条件(A)DTTまたはTCEPの非存在下の1:800希釈のインシトゥ(in situ)製造、(B)DTTまたはTCEPの非存在下の1:1600希釈のインシトゥ(in situ)製造、(C)DTTの非存在下の1:200希釈の通常製造、(D)TCEPの存在下の1:200希釈の通常製造、(E)DTTまたはTCEPの非存在下の1:200希釈の通常製造に関する、血清を陰性対照(白抜きの棒グラフ)として使用した場合の、インシトゥ(in situ)および通常技術により製造されたホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)−NS3タンパク質コンジュゲートの重複サンプル(黒塗の棒グラフ)の感度の比較の結果を示す棒グラフである。
【図3】図3は、5モル当量のホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)−マレイミドおよび種々の濃度のトリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を使用するインシトゥ(in situ)技術により製造した種々のホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)−gp41−p24組換えタンパク質(dx589)コンジュゲートの、HIV陰性サンプル(白抜きの棒グラフ)およびHIV陽性血清サンプル(黒塗棒グラフ−第1棒グラフ,QC1362;第2棒グラフ,QC1363)中に存在する抗HIV抗体への結合能を示す棒グラフであり、ここで、製造中に以下のモル当量のTCEPを使用した:(A)0、(B)2.5、(C)5、(D)10、(E)20、(F)40、および(G)参照体(通常技術による製造)。
【図4】図4は、種々の濃度のホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)−マレイミドおよび5モル当量のトリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を使用するインシトゥ(in situ)技術により製造した種々のホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)−gp41−p24組換えタンパク質(dx589)コンジュゲートの、HIV陰性サンプル(白抜きの棒グラフ)およびHIV陽性血清サンプル(黒塗棒グラフ−第1棒グラフ,QC1362;第2棒グラフ,QC1363)中に存在する抗HIV抗体への結合能を示す棒グラフであり、ここで、製造中に以下のモル当量のHRP−マレイミドを使用した:(A)2.5、(B)5、(C)10、(D)20、および(E)参照体(通常技術による製造)。
【図5】図5は、インシトゥ(in situ)技術により製造したホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)−gp41−p24組換えタンパク質(dx589)コンジュゲートの、HIV陰性サンプル(白抜きの棒グラフ)およびHIV陽性血清サンプル(黒塗棒グラフ−第1棒グラフ,QC1362;第2棒グラフ,QC1363)中の抗HIV抗体への結合能を判定するための力価測定研究の結果を示す棒グラフであり、ここで、以下の希釈度の該タンパク質コンジュゲートを試験した:(A)1:13,000、(B)1:26,000、および(C)1:52,000。
【図6】図6は、インシトゥ(in situ)方法(X軸)および通常技術(Y軸)により製造したホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)−gp41−p24組換えタンパク質(dx589)コンジュゲートの特異性の比較の結果を示す散布図である。SDSの非存在下で製造した該インシトゥ(in situ)コンジュゲートが白抜きの三角形で示されており、SDSの存在下で製造した該インシトゥ(in situ)コンジュゲートが黒塗の菱形で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、とりわけ、抗原タンパク質コンジュゲートの、改良された製造方法を提供する。該コンジュゲートは、好ましくは、該抗原タンパク質中の1以上の遊離スルフヒドリル基との反応により形成される。本発明の方法は、好ましくは、トリアルキルホスフィンを還元剤として使用する。さらに、該方法は、好ましくは、単一反応容器内(すなわち、「インシトゥ(in situ)」)での該抗原タンパク質中のジスルフィド結合の還元およびコンジュゲート部分とのコンジュゲート形成を可能にする。なぜなら、該方法は、後にスルフヒドリル反応剤を添加する前に該還元剤を除去することを必要としないからである。
【0016】
本発明の1つの態様においては、本発明の方法により提供される抗原タンパク質コンジュゲートは、好ましくは、通常の方法(例えば、DTTを使用する方法)により製造される対応コンジュゲートと比較して増強された抗体結合特性を示し、したがって、現在入手可能なスルフヒドリル誘導体化タンパク質コンジュゲートに対する改良に相当する。したがって、本発明は更に、好ましくは、インシトゥ(in situ)方法により製造された改良された抗原タンパク質コンジュゲートを提供する。いずれの特定の理論またはメカニズムにも限定されるものではないが、該タンパク質にコンジュゲート形成されるコンジュゲート部分を含むスルフヒドリル反応剤と共にインシトゥ(in situ)でトリアルキルホスフィン還元剤を使用すると、該タンパク質が、開いたコンホメーションで維持されて、エピトープを遮蔽または隠蔽しうるタンパク質折り畳みを妨げることが可能となると提議される。メカニズムには無関係に、本発明の方法により、システインを含有する鍵エピトープが遮蔽されず、開いたまま維持されることは、新規であり驚くべき結果である。
【0017】
本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、トリアルキルホスフィン還元剤の存在下の抗原タンパク質の遊離スルフヒドリル基とのコンジュゲート部分のコンジュゲート形成は、該還元剤の非存在下で該コンジュゲート形成工程の前に生じうる分子間または分子内ジスルフィド結合の再形成を最小にする。この実施形態においては、通常の技術により製造されたタンパク質コンジュゲートとは対照的に、好ましくは、該インシトゥ(in situ)方法により製造された抗原タンパク質コンジュゲートは、ついで、追加的な還元剤の非存在下でコグネイト抗体に効率的に結合するよう使用されうる。
【0018】
本発明のもう1つの態様においては、該インシトゥ(in situ)方法は、好ましくは、N−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセタート(SATA)のような追加的な誘導体化剤を要することなく、抗原タンパク質内への十分なコンジュゲート部分の取込みをもたらす。
【0019】
もう1つの態様においては、好ましくは、本発明の方法は、該タンパク質コンジュゲートを製造するのに必要な工程の数を最小にすることにより、通常の方法に比べて単純化されたコンジュゲート形成法である。1つの実施形態においては、還元剤を除去するための精製工程の省略は、好ましくは、通常のコンジュゲート形成方法と比べて、該方法の合計所要時間を減少させる。また、本発明の方法に必要な時間の減少は、酸化環境に対する反応物の曝露を最小にし、それにより、スルフヒドリル基が酸化され分子間および分子内ジスルフィド結合を再形成する可能性を減少させる。
【0020】
もう1つの態様においては、好ましくは、本発明の方法は容易に再現可能であり、通常の方法より一貫した産物を与える。
【0021】
本発明の方法により提供されるタンパク質コンジュゲートは、該タンパク質と該タンパク質に結合する抗体との間の相互作用の増強および/または産物の一貫性が有利となる多くの状況において有用である。具体例には、検出、精製およびアッセイ開発用途が含まれるが、これらに限定されるものではない。したがって、もう1つの態様においては、本発明は、該インシトゥ(in situ)方法により製造された抗原タンパク質コンジュゲートを使用する、抗原タンパク質に対する抗体を検出する方法を提供する。
【0022】
定義
特に示さない限り、本明細書中で用いる全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されているのと同じ意義を有する。
【0023】
「シクロアルキル」なる語は、(特に示さない限り)3〜15個の炭素原子を含有する環状または多環式アルキル基を意味する。多環式基の場合、これらは、遠位環の1つが芳香性でありうる多縮合環(例えば、テトラヒドロナフタレンなど)でありうる。
【0024】
「アリール」なる語は、少なくとも1つの芳香環を有する芳香族炭素環式基(例えば、フェニルまたはビフェニル)または少なくとも1つの環が芳香性である多縮合環を有する芳香族炭素環式基(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、9−フルオレニルなど)を意味する。
【0025】
「複素環」または「複素環式基」なる語は、少なくとも1つのヘテロ原子、例えばN、OもしくはSを環内に有し、単一の環を有する(例えば、モルホリノ、ピリジルまたはフリル)、または多縮合環を有する(例えば、ナフトピリジル、キノキサリル、キノリニル、インドリジニル、インダニルまたはベンゾ[b]チエニル)、飽和、不飽和もしくは芳香族炭素環式基を意味する。
【0026】
「ヘテロアリール」なる語は、少なくとも1つの複素環が芳香性である複素環を意味する。
【0027】
本明細書中で用いる「約」なる語は、示されている値からの凡そ+/−10%の変動を意味する。そのような変動は、それに特に言及されているかどうかには無関係に、本明細書に記載されている任意の与えられた値に常に含まれると理解されるべきである。
【0028】
抗原タンパク質コンジュゲートの製造方法
本発明は、好ましくは、スルフヒドリル誘導体化抗原タンパク質コンジュゲートを製造するためのインシトゥ(in situ)製造方法を提供する。該方法は、好ましくは、該タンパク質のジスルフィド結合がトリアルキルホスフィンで還元されて遊離スルフヒドリル基を与える還元工程、およびコンジュゲート形成部分を含むスルフヒドリル反応性試薬と該遊離スルフヒドリル基とを反応させてスルフヒドリル誘導体化抗原タンパク質コンジュゲートを形成させることを含むコンジュゲート形成工程を含む。本発明においては、好ましくは、該トリアルキルホスフィンは、該コンジュゲート形成工程の前に該反応混合物から除去される必要がない。
【0029】
1つの実施形態においては、該インシトゥ(in situ)方法は、好ましくは、組換えタンパク質(単離および/または合成抗原タンパク質にも適用可能である)に関して図1に全般的に示す還元およびコンジュゲート形成工程を含む。この実施形態においては、好ましくは、該方法は、例えば該還元工程を37℃で行った場合、わずか3時間で完了しうる。
【0030】
コンジュゲート部分のジスルフィド結合の還元またはコンジュゲート形成を促進するために、それぞれ還元および/またはコンジュゲート形成工程の一部として、所望により、他の成分が含まれうる。
【0031】
該方法は更に、該タンパク質コンジュゲートを下流の用途に最適化するために、所望により、コンジュゲート形成工程後に随意的な追加工程を含みうる。例えば、該方法は、コンジュゲート形成後に残存するいずれかの未反応遊離スルフヒドリル基を保護するための保護工程、1以上の精製工程などを含みうる。これは全て、後記(例えば、「反応条件」の説明)において、そしてまた、それに続く実施例において、より詳細に記載されている。
【0032】
抗原タンパク質
本発明のインシトゥ(in situ)方法は、好ましくは、少なくとも1つのジスルフィド結合を含有する種々の抗原タンパク質に関して該抗原タンパク質に対する抗体を検出することが望ましい場合のそのような種々の抗原タンパク質に適用されうる。該ジスルフィド結合は、分子内ジスルフィド結合(すなわち、該タンパク質分子内)として、あるいは分子間ジスルフィド結合(すなわち、2つのタンパク質分子間、例えば、二量体タンパク質の2つの分子間)として存在しうる。1つの実施形態においては、該インシトゥ(in situ)方法は、分子内ジスルフィド結合を含む抗原タンパク質に適用される。もう1つの実施形態においては、該インシトゥ(in situ)方法は、分子間ジスルフィド結合を含む抗原タンパク質に適用される。
【0033】
本発明の方法において使用する適当な抗原タンパク質の具体例には、疾患または感染の存在を示すタンパク質、例えばウイルスタンパク質、細菌タンパク質、真菌タンパク質、自己免疫応答を誘発するタンパク質などが含まれるが、これらに限定されるものではない。非限定的な具体例には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、A型肝炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、の構造および非構造タンパク質が含まれる。呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザウイルス、狂犬病ウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、ポリオーマウイルス、SARSコロナウイルス、トリインフルエンザウイルス;大腸菌(E.coli)、シゲラ属種(Shigella spp.)、クラミジア属種(Chlamydia spp.)および百日咳属種(Pertussis spp.);ならびに例えばヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、黄体形成ホルモン(LH)および甲状腺刺激ホルモン(TSH)のようなヒトタンパク質が含まれる。
【0034】
本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、該インシトゥ(in situ)方法はウイルスタンパク質に適用される。もう1つの実施形態においては、該インシトゥ(in situ)方法はHCVまたはHIVタンパク質に適用される。もう1つの実施形態においては、好ましくは、該方法はHCVタンパク質に適用される。
【0035】
該インシトゥ(in situ)方法において使用するタンパク質は、単離されたタンパク質、組換えタンパク質または合成タンパク質でありうる。タンパク質の単離方法は、組換えタンパク質の製造方法と同様に、当技術分野でよく知られている(例えば、Coliganら(編),Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,Inc.New York,NY;Ausubelら,(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.New York,NYを参照されたい)。あるいは、該タンパク質は、好ましくは、商業的入手源から得られうる。多種多様な単離された又は組換え抗原タンパク質が、例えばSigma−Aldrich(St.Louis,MO)、Innogenetics N.V.(Gent,Belgium)、Advanced Biotechnologies Inc.(Columbia,MD)およびSerotec(Raleigh,NC)から、現在商業的に入手可能である。
【0036】
本発明のインシトゥ(in situ)方法は、好ましくは、1以上のジスルフィド結合を含む完全長タンパク質、末端切断型タンパク質および抗原タンパク質断片に同等に適用可能である。そのような断片は、好ましくは、単離された又は組換えタンパク質から、当技術分野で公知の断片化技術、例えばプロテアーゼ消化により作製されることが可能であり、あるいは、それらは、例えば標準的な固相ペプチド合成により、化学合成されることが可能であり、あるいは組換え技術を用いて製造されうる。同様に、該インシトゥ(in situ)方法は、好ましくは、天然タンパク質またはその突然変異体(ただし、該突然変異タンパク質は少なくとも1つのジスルフィド結合を含み、該天然タンパク質のエピトープの1以上を保有する)に適用されうる。
【0037】
本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、該インシトゥ(in situ)方法は完全長タンパク質または実質的に完全長のタンパク質に適用される。
【0038】
トリアルキルホスフィン還元剤
該タンパク質のジスルフィド結合は、好ましくは、トリアルキルホスフィン還元剤を使用して還元され、それぞれの還元されたジスルフィド結合は2つのスルフヒドリル基を与え、それらの一方または両方を更にスルフヒドリル反応性試薬と反応させて該タンパク質コンジュゲートを形成させることが可能である。該トリアルキルホスフィンは、好ましくは、一般式(I)
【0039】
【化1】

(式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、置換されている又は置換されていないアルキル基である)を有する。
【0040】
多数のトリアルキルホスフィンが当技術分野で公知であり、商業的に入手可能である。具体例には、トリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)(Invitrogen−Molecular Probes,Carlsbad,CA;Pierce Biotechnology Inc.,Rockford,IL;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)、トリス(2−シアノエチル)ホスフィン(Invitrogen−Molecular Probes,Carlsbad,CA)およびトリブチルホスフィン(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)が含まれるが、これらに限定されるものではない。固定化されたTCEPも(例えば、Pierce Biotechnology Inc.,Rockford,ILから)商業的に入手可能であり、本発明の方法において使用されうる。
【0041】
本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、該トリアルキルホスフィンは水溶性トリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)である。あるいは、もう1つの実施形態においては、好ましくは、該トリアルキルホスフィンはトリス(2−シアノエチル)ホスフィンである。いずれの理論にも束縛されるものではないが、TCEPと比較した場合のトリス−(2−シアノエチル)ホスフィンの疎水性の増加は該タンパク質の疎水性領域内への還元剤のより著しい透過を可能にし、これは、埋もれたジスルフィドとのより大きな反応性をもたらしうる。もう1つの実施形態においては、好ましくは、該トリアルキルホスフィンはトリブチルホスフィンである。
【0042】
他の成分
該還元反応には、該タンパク質中のジスルフィド結合の還元を促進する1以上の他の成分が含まれうる。例えば、1つの実施形態においては、該反応混合物に変性剤または界面活性剤を加えることが可能である。界面活性剤/変性剤は該タンパク質の疎水性コア内へのトリアルキルホスフィンの透過を促進しうる。タンパク質中のジスルフィド結合を還元するトリアルキルホスフィンの能力を妨げない適当な変性剤または界面活性剤は当業者により容易に選択されうる。具体例には、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、尿素、グアニジンおよびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。加えるべき変性剤の量は、当技術分野で公知のとおりに決定されうる。例えば、最適な結果を与える濃度を決定するために、種々の量の界面活性剤の存在下で該反応を行うことが可能である。
【0043】
1つの実施形態においては、好ましくは、該方法の還元工程に界面活性剤が含まれる。もう1つの実施形態においては、好ましくは、該方法の還元工程にSDSが含まれる。
【0044】
タンパク質の疎水性コア内に位置するジスルフィド結合への接近は、好ましくは、反応混合物のpHを、それが酸性(例えば、pH約2.5〜pH約5.0)または塩基性(例えば、pH約9.0〜pH約11.0)となるよう調節することにより促進されうる。TCEPのようなトリアルキルホスフィンは広範なpH領域にわたってそれらの有効性を保有するため、pHの調節は、好ましくは、トリアルキルホスフィンの還元能に影響を及ぼさないであろう。所望により、pHの調節は、酸、塩基およびバッファーのような当技術分野で公知の種々のpH修飾試薬の使用により達成されうる。
【0045】
1つの実施形態においては、好ましくは、該方法の還元工程にpH修飾試薬が含まれる。
【0046】
スルフヒドリル反応性試薬
本発明の方法において使用するスルフヒドリル反応性試薬は、好ましくは、チオール反応性官能性に連結されたコンジュゲート部分を含む。該コンジュゲート部分は、好ましくは、該コンジュゲート部分上の官能基を介して直接的に、あるいはリンカーを介して間接的に、該チオール反応性官能性に連結されうる。
【0047】
コンジュゲート部分
本発明の方法は、好ましくは、還元工程により、遊離スルフヒドリル基を介して、種々の有用な部分を抗原タンパク質にコンジュゲート形成するために使用されうる。本発明により想定されるコンジュゲート部分の具体例には、検出可能な標識、精製を促進する部分、および固定化を促進する又は固定化をもたらす部分が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、コンジュゲート部分は、検出可能な標識である。適当な検出可能な標識の非限定的な具体例には、直接的に検出されうる標識、例えば放射性同位体、発蛍光団、化学発光団、酵素、コロイド粒子、蛍光微粒子などが含まれる。検出可能な標識は、好ましくは、それ自体が検出可能であり、あるいは、場合によっては、それを1以上の追加的化合物と反応させて、検出可能な産物を生成させることが可能である。したがって、標識の検出を可能にするためには、直接的に検出可能な標識は、基質、誘発試薬、光などのような追加的な成分を要する、と当業者は理解するであろう。検出可能な標識の具体例には、色原体、放射性同位体(例えば、125I、131I、32P、H、35Sおよび14C)、蛍光化合物(例えば、フルオレセイン、ローダミン、ルテニウムトリスビピリジルおよびランタニドキレート誘導体)、化学発光化合物(例えば、アクリジニウムおよびルミノール)、可視または蛍光粒子、核酸、錯化剤および酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、酸ホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−ラクタマーゼおよびルシフェラーゼ)が含まれるが、これらに限定されるものではない。酵素使用の場合、例えば色原性、発蛍光性または発光性基質の添加は、好ましくは、検出可能なシグナルの生成をもたらす。時間分解蛍光、内部反射蛍光およびラマン分光法のような他の検出系も有用である。
【0049】
本発明はまた、望ましくは、間接的に検出される検出可能な標識の使用を提供する。間接的に検出可能な標識は、典型的には、「アフィニティーペア」、すなわち、該ペアの第1メンバーが本発明の検出用ペプチドに結合されており、該ペアの第2メンバーが第1メンバーに特異的に結合する、2つの異なる分子の使用を含む。該ペアの2つのメンバーの間の結合は、典型的には、化学的または物理的な性質のものである。そのような結合ペアの具体例には、抗原および抗体;アビジン/ストレプトアビジンおよびビオチン;ハプテン、およびハプテンに特異的な抗体;相補的ヌクレオチド配列;酵素補因子/基質および酵素などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、コンジュゲート部分は、検出可能な標識である。もう1つの実施形態においては、好ましくは、検出可能な標識は酵素である。もう1つの実施形態においては、好ましくは、検出可能な標識はホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼである。
【0051】
本発明はまた、コンジュゲート部分が固体支持体または粒子、または固体支持体上の固定化を促進する部分であることを想定している。適当な固体支持体および粒子の具体例には、多孔性および無孔性物質、ラテックス粒子、磁性粒子、微粒子(例えば、米国特許第5,705,330号を参照されたい)、ビーズ、膜、マイクロタイターウェルおよびプラスチックチューブが含まれる。固体支持体上の固定化を促進する部分の具体例には、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼインおよびチログロブリンが含まれる。
【0052】
チオール反応性官能性
当技術分野で公知の多数の異なるチオール反応性官能性が、本発明の方法におけるスルフヒドリル反応性試薬としての使用に適している。具体例には、ヨードアセトアミド、マレイミド、ハロゲン化ベンジルおよびブロモメチルケトンが含まれるが、これらに限定されるものではない。使用されている個々の抗原タンパク質およびコンジュゲート部分ならびに得られるタンパク質コンジュゲートの下流用途に基づいて適当なチオール反応性官能性を選択することは当業者の知見の範囲内である。
【0053】
本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、スルフヒドリル反応性試薬に含まれるチオール反応性官能性はマレイミドである。
【0054】
リンカー
本発明の1つの実施形態においては、コンジュゲート部分は、好ましくは、リンカーを介してチオール反応性基に連結される。当技術分野で公知の種々の長さ及びコンホメーションのリンカーが使用されうる。ただし、それらは、得られるタンパク質コンジュゲートの機能を妨げないものでなければならない。該リンカーは、好ましくは、本発明の還元条件に対して安定である1以上の官能基を含みうる。例えば、そのような官能基は、好ましくは、アルキル、シクロアルキル、エーテル、ペプチドまたはそれらの組合せを含む。
【0055】
本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、該リンカーは、約1〜約100個の炭素原子、場合によっては約1〜約50個の炭素原子を有する分枝状または非分枝状の飽和または不飽和炭化水素鎖であり、ここで、該炭素原子の1以上は、場合によっては、−O−、−NR−(ここで、RはH、またはC1〜C6アルキルである)、シクロアルキル基、アリール基、複素環基またはヘテロアリール基であり、該鎖は、場合によっては、(C1−C6)アルコキシ、(C3−C6)シクロアルキル、(C1−C6)アルカノイル、(C1−C6)アルカノイルオキシ、(C1−C6)アルコキシカルボニル、(C1−C6)アルキルチオ、アミド、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ(=O)、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリールオキシの群から選ばれる1以上の置換基により炭素上で置換されていてもよい。
【0056】
適当なリンカーの具体例には、好ましくは1〜約100原子、場合によっては約1〜約50個の原子の鎖長を有するペプチド;好ましくは、場合によっては約6〜約100個の炭素原子、場合によっては約6〜約50個の炭素原子の鎖長を有する、エタノールアミン、エチレングリコールおよびポリエチレンのような群から誘導されたリンカー;フェノキシエタノール;プロパノールアミド;ブチレングリコール;ブチレングリコールアミド;プロピルフェニル;ならびにエチル、プロピル、ヘキシル、ステリル、セチルおよびパルミトイルアルキル鎖が含まれるが、これらに限定されるものではない。他の具体例には、好ましくは、約3〜約30個の反復単位を有するポリエチレングリコールに基づくリンカーが含まれる。
【0057】
1つの実施形態においては、好ましくは、該リンカーは、場合によっては1〜約50個の炭素原子を有する、分枝状または非分枝状の飽和または不飽和炭化水素鎖であり、ここで、該炭素原子の1以上は、場合によっては、−O−または−NR−(ここで、Rは前記と同意義である)であり、該鎖は、場合によっては、(C1−C6)アルコキシ、(C1−C6)アルカノイル、(C1−C6)アルカノイルオキシ、(C1−C6)アルコキシカルボニル、(C1−C6)アルキルチオ、アミド、ヒドロキシ、オキソ(=O)、カルボキシ、アリールおよびアリールオキシの群から選ばれる1以上の置換基により炭素上で置換されていてもよい。
【0058】
もう1つの実施形態においては、好ましくは、該リンカーは、場合によっては1〜約50個の炭素原子を有する、分枝状または非分枝状の飽和または不飽和炭化水素鎖であり、ここで、該炭素原子の1以上は、場合によっては、シクロアルキル基またはアリール基により置換されていてもよい。もう1つの実施形態においては、好ましくは、該リンカーはシクロヘキシル基またはフェニル基を含む。もう1つの実施形態においては、好ましくは、該リンカーは更に、1以上のアミド結合を含む。
【0059】
もう1つの実施形態においては、好ましくは、該リンカーは、場合によっては1〜約50個の炭素原子を有する非分枝状の飽和炭化水素鎖であり、該炭素原子の1以上は、場合によっては、−O−または−NR−(ここで、Rは前記と同意義である)であり、該鎖は、場合によっては、(C1−C6)アルコキシ、(C1−C6)アルカノイル、(C1−C6)アルカノイルオキシ、(C1−C6)アルコキシカルボニル、(C1−C6)アルキルチオ、アミド、ヒドロキシ、オキソ(=O)、カルボキシ、アリールおよびアリールオキシの群から選ばれる1以上の置換基により炭素上で置換されていてもよい。
【0060】
標的分子上の第一級アミンと反応しうる活性化エステルならびにマレイミドおよびヨードアセトアミドチオール反応性官能性を有する商業的に入手可能なヘテロ二官能性架橋試薬の非限定的な具体例には、N−スクシンイミジル 4−(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシラート、3−(マレイミド)プロピオン酸 N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、11−(マレイミド)ウンデカン酸 N−スクシンイミジルエステル、マレイミド酢酸 N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、3−マレイミド安息香酸 N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、4−マレイミド酪酸 N−スクシンイミジルエステル、6−マレイミドヘキサン酸 N−スクシンイミジルエステル、4−(4−マレイミドフェニル)酪酸 N−スクシンイミジルエステル、3−(マレイミド)プロピオン酸 N−スクシンイミジルエステル、スクシンイミジル−4−ヨードアセチル−アミノベンゾアートおよび6−(ヨードアセトアミド)ヘキサン酸 N−ヒドロキシスクシンイミドエステルが含まれる。
【0061】
反応条件
本発明の1つの実施形態のインシトゥ(in situ)方法を場合によって含む還元およびコンジュゲート形成工程を図1に図示する。抗原タンパク質をトリアルキルホスフィン還元剤と接触させる還元工程は、好ましくは、当技術分野で公知の範囲の反応条件下で行われうる(例えば、Han,J.C.ら,Anal.Biochem.,220,5−10(1994);Mery,J.C.ら,Int.J.Peptide Protein Res.,42,44−52(1993);Ruegg,U.T.およびRudinger,J.,Methods Enzymol.,47,111−126(1997)を参照されたい)。また、適当な反応条件は、商業的に入手可能なトリアルキルホスフィンの製造業者により提供されるとおりのものである。
【0062】
例えば、TCEPまたは他のトリアルキルホスフィンは、好ましくは、タンパク質濃度に対して1〜約100倍モル過剰で使用される。本発明の1つの実施形態においては、TCEPは、好ましくは、タンパク質濃度に対して1〜約75倍モル過剰で、還元剤として使用される。もう1つの実施形態においては、TCEPは、好ましくは、タンパク質濃度に対して1〜約50倍モル過剰で、還元剤として使用される。もう1つの実施形態においては、TCEPは、好ましくは、タンパク質濃度に対して1〜約20倍モル過剰で、還元剤として使用される。さらにもう1つの実施形態においては、TCEPは、好ましくは、タンパク質濃度に対して2〜約20倍モル過剰で、還元剤として使用される。
【0063】
該反応は、好ましくは、約5℃〜約100℃の温度範囲にわたって、場合によってはpH約2〜pH約11のpHで行われうる。最適な反応時間の長さは、該反応が行われる温度に左右されるであろう。したがって、低温では、反応時間は数時間にわたることがあるが、室温またはそれ以上では、反応は一般に、約5分〜約3時間後に完了する。例えば、タンパク質の還元は、好ましくは、約2mg〜約10mgのタンパク質水溶液に対して約2mM〜約3mMのTCEPを使用した場合、約30分以内に達成されうる。適当な反応条件は当業者により容易に決定されうる。
【0064】
1つの実施形態においては、好ましくは、該還元工程は、約100℃の温度で約8分間〜約15分間、モル過剰のトリアルキルホスフィンの存在下で行われる。もう1つの実施形態においては、好ましくは、該還元工程は、室温で約30分間〜約3時間、モル過剰のトリアルキルホスフィンの存在下で行われる。
【0065】
前記のとおり、該トリアルキルホスフィンは、好ましくは、コンジュゲート形成工程前に反応混合物から除去される必要がない。場合によっては、前記のとおり、還元および/またはコンジュゲート形成工程において他の成分が使用されうる。例えば、TPEPまたは他のトリアルキルホスフィンと共にSDSが使用されることが可能であり、例えば、タンパク質に対して約1〜約10倍モル過剰のSDSが使用されうる。本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、タンパク質に対して約1〜約15倍モル過剰のSDSが使用される。もう1つの実施形態においては、好ましくは、タンパク質に対して約2〜約8倍モル過剰のSDSが使用される。さらにもう1つの実施形態においては、好ましくは、タンパク質に対して約5〜約7倍モル過剰のSDSが使用される。
【0066】
また、コンジュゲート形成工程は、好ましくは、使用する個々のタンパク質およびスルフヒドリル反応性試薬に応じて種々の条件下で行われうる。適当な条件は当業者により容易に決定されうる。
【0067】
例えば、ヨードアセトアミドを含むスルフヒドリル反応性試薬の場合、タンパク質に対して約1〜約20倍モル過剰のスルフヒドリル反応性試薬、場合によっては、タンパク質に対して約1〜約10倍モル過剰のスルフヒドリル反応性試薬が使用されうる。本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、ヨードアセトアミドを含むスルフヒドリル反応性試薬の場合、タンパク質に対して約1〜約15倍モル過剰のスルフヒドリル反応性試薬が使用される。もう1つの実施形態においては、好ましくは、ヨードアセトアミドを含むスルフヒドリル反応性試薬の場合、スルフヒドリル含量に対して約2〜約5倍モル過剰のスルフヒドリル反応性試薬が使用される。ヨードアセトアミド試薬の場合、コンジュゲート形成反応は、好ましくは、光の非存在下で行われるべきである。
【0068】
ヨードアセトアミドを含むスルフヒドリル反応性試薬の場合、好ましくは、コンジュゲート形成工程は約6.0〜約9.0のpHおよび約2℃〜約40℃の温度で行われる。本発明の1つの実施形態においては、ヨードアセトアミドを含むスルフヒドリル反応性試薬の場合、好ましくは、該反応は約6.0〜約8.5のpHで行われる。本発明のもう1つの実施形態においては、ヨードアセトアミドを含むスルフヒドリル反応性試薬の場合、好ましくは、該反応は約7.5〜約8.5のpHで行われる。
【0069】
ヨードアセトアミドを含むスルフヒドリル反応性試薬の場合、用いる反応温度に応じて約15分間〜約24時間の反応時間が好ましい。例えば、約2℃〜約10℃の低温では、約2時間〜約24時間の反応時間が好ましい。上昇した温度、例えば室温〜約40℃では、約30分間〜約4時間の反応時間が好ましい。
【0070】
もう1つの例として、マレイミドを含むスルフヒドリル反応性試薬の場合には、好ましくは、タンパク質に対して約1〜約20倍モル過剰のスルフヒドリル反応性試薬が使用されうる。本発明の1つの実施形態においては、マレイミドを含むスルフヒドリル反応性試薬の場合、好ましくは、タンパク質に対して約1〜約15倍モル過剰のスルフヒドリル反応性試薬が使用される。もう1つの実施形態においては、マレイミドを含むスルフヒドリル反応性試薬の場合、好ましくは、タンパク質に対して約1〜約10倍モル過剰のスルフヒドリル反応性試薬が使用される。
【0071】
マレイミドを含むスルフヒドリル反応性試薬の場合、好ましくは、コンジュゲート形成工程は約6.0〜約8.0のpHおよび約2℃〜約40℃の温度で行われる。用いる反応温度に応じて約30分間〜約24時間の反応時間が好ましい。例えば、約2℃〜約10℃の低温では、約2時間〜約24時間の反応時間が好ましい。上昇した温度、例えば室温〜約40℃では、約30分間〜約4時間の反応時間が好ましい。適当な条件は当業者により容易に決定されうる。
【0072】
本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、該方法は、マレイミドを含むモル過剰のスルフヒドリル反応性試薬を使用し、好ましくは、コンジュゲート形成工程は約30℃〜約40℃の温度で約30分間〜約2時間の反応時間にわたって行われる。本発明のもう1つの実施形態においては、好ましくは、該方法は、マレイミドを含むモル過剰のスルフヒドリル反応性試薬を使用し、好ましくは、コンジュゲート形成工程は約2℃〜約8℃の温度で、好ましくは約2時間〜約24時間の反応時間にわたって行われる。
【0073】
追加的工程
該方法は、場合によっては更に、コンジュゲート形成工程後に1以上の追加的工程を含みうる。例えば、好ましくは、該方法は保護工程、クエンチ工程、脱塩工程、1以上の精製工程またはそれらの組合せを含みうる。
【0074】
1つの実施形態においては、保護またはクエンチ工程は、コンジュゲート形成工程後に未反応のまま残されたいずれかの遊離スルフヒドリル基の更なる反応を妨げるために用いられうる。保護は、当技術分野で公知のとおりに、例えば、ヨード酢酸、マレイミド誘導体(例えば、N−エチルマレイミド)、システイン、ヨードアセトアミド、およびヨード酢酸の種々の塩の使用により達成されうる。クエンチは、好ましくは、適当な還元剤、例えばシステイン、DTT、TCEP、β−メルカプトエタノールなどの添加により達成されうる。
【0075】
脱塩は、好ましくは、適当な脱塩カラム(例えば、GE Healthcare Bio−Sciences AB,Uppsala,SwedenおよびPierce Biotechnology Inc.,Rockford,ILから商業的に入手可能なもの)の使用により達成されうる。
【0076】
好ましくは、クロマトグラフィーに基づく工程、例えばゲル濾過(例えば、PD10カラムを使用するもの)、サイズ排除、イオン交換などを含む(これらに限定されるものではない)種々の精製方法も用いられうる。透析、濾過および接線流動濾過を含む(これらに限定されるものではない)追加的な精製方法も用いられうる。
【0077】
本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、還元およびコンジュゲート形成工程の後、保護工程、例えば、ヨード酢酸を使用する、例えば室温で約3時間の保護を行う。他の変法は当業者により容易に決定されうる。
【0078】
抗原タンパク質コンジュゲートの特徴
本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、本発明の方法により提供される抗原タンパク質コンジュゲートは、他の方法(例えば、DTTまたはβ−メルカプトエタノールを使用するもの)により製造された対応スルフヒドリル誘導体化コンジュゲートと比較して増強された抗体結合特性を示し、したがって、現在入手可能なスルフヒドリル誘導体化タンパク質コンジュゲートに対する改良に相当する。
【0079】
抗体結合の増強は、例えば、イムノアッセイ形態における感度の増加により示されうる。感度の増加は、例えば、より低い力価の抗体を検出しうること、および/または同じ力価の抗体を、より低い濃度で使用された場合に検出しうることでありうる。1つの実施形態においては、好ましくは、該インシトゥ(in situ)方法により製造された抗原タンパク質コンジュゲートは、同じアッセイ条件下で通常方法により製造された対応スルフヒドリル誘導体化コンジュゲート(すなわち、「通常」スルフヒドリル誘導体化コンジュゲート)と比較された場合に、実質的に等価な力価の抗体を検出するのに、より低い濃度でイムノアッセイにおいて使用されうる。
【0080】
多数のイムノアッセイの場合、スルフヒドリル基を介して誘導体化されたタンパク質コンジュゲートは、それらのコグネイト抗体に有効に結合するためには、アッセイにおいて還元剤の存在を要する。これとは対照的に、本発明の1つの実施形態においては、該インシトゥ(in situ)方法により製造された抗原タンパク質コンジュゲートは、還元剤の存在を要することなくコグネイト抗体に効率的に結合しうる。
【0081】
用途
本発明の方法により製造された抗原タンパク質コンジュゲートは多くの状況において有用である。例えば、該タンパク質コンジュゲートは、好ましくは、コグネイト抗体の検出が必要な用途、例えば、コンジュゲート部分が検出可能標識である診断アッセイにおいて、および場合によっては、コグネイト抗体の精製が必要な用途において、例えば、コンジュゲート部分が固体支持体もしくは粒子、または固体支持体上の固定化を促進する部分である、アフィニティーリガンドとして使用されうる。本発明はまた、研究手段としての、例えば、アッセイの開発における、または特定の標的タンパク質に対する抗体の単離における、該抗原タンパク質コンジュゲートの使用を提供する。
【0082】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、好ましくは該インシトゥ(in situ)方法により製造された抗原タンパク質コンジュゲートを使用して、抗原タンパク質に対する抗体を検出する方法を提供する。1つの実施形態においては、該タンパク質コンジュゲートは、好ましくは、診断イムノアッセイにおいて使用される。
【0083】
もう1つの態様において、本発明はまた、好ましくは1以上の抗原タンパク質コンジュゲートを含む、イムノアッセイキットを提供する。該抗原タンパク質コンジュゲートは、好ましくは、コンジュゲート部分が固体支持体もしくは粒子である捕捉抗原として、および/またはコンジュゲート部分が検出可能標識である検出抗原として、該キットにおいて提供されうる。
【0084】
特定の実施形態においては、該タンパク質コンジュゲートはHCV NS3コンジュゲートであり、これは、好ましくは、組合せHCV抗体−抗原検出アッセイにおいて使用される。もちろん、言うまでもなく、本明細書における典型的な形態の全て、および本発明の任意のアッセイまたはキットは、例えば米国特許第5,089,424号および第5,006,309号に記載されている、ならびに例えばAbbottのARCHITECT(登録商標)、AxSYM、IMX、PRISMおよびQuantum IIプラットフォームを含む(これらに限定されるものではない)Abbott Laboratories(Abbott Park,IL)により商業的に販売されている、自動化および半自動化系(微粒子を含む固相が存在するものを含む)における使用に適合化または最適化されうる。
【0085】
また、本発明のアッセイおよびキットは、場合によっては、AbbottのPoint of Care(i−STAT(商標))電気化学イムノアッセイ系を含むポイント・オブ・ケア(point of care)アッセイ系に適合化または最適化されうる。単一使用試験装置におけるイムノセンサーならびにその製造および操作方法が例えば米国特許第5,063,081号ならびに公開されている米国特許出願20030170881、20040018577、20050054078および20060160164(それらに関してそれらの教示を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
【0086】
つぎに、具体的な実施例に関して本発明を説明する。以下の実施例は、本発明の例示的実施形態を記載するものであり、本発明を何ら限定するものではないと理解されるであろう。
【0087】
実施例
【実施例1】
【0088】
C型肝炎ウイルスNS3タンパク質およびホースラディッシュペルオキシダーゼのコンジュゲートのインシトゥ(in situ)製造
組換えC型肝炎ウイルス(HCV)非構造タンパク質NS3およびホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)のコンジュゲートを以下のとおりに製造した。標準的なタンパク質発現方法に従い、組換えNS3(rNS3)を製造した。これはNS3の天然配列を、該天然配列のN末端の位置の該ベクターからのリーダー配列と共に含んでいた。
【0089】
HRP−マレイミド溶液を以下のとおりに調製した。2倍モル過剰のスルホ−SMCCをDMSO(Pierce)に溶解し、25mM HEPES/1mM EDTA(pH7.8)に溶解された100mg/mL HRPに加えた。該溶液を穏やかに攪拌し、室温で45分間放置した。該溶液(2.3mL)をPD10カラム(Pharmacia)上にローディングし、25mM HEPES/1mM EDTA(pH6.8)(3.2mL)で溶出することにより、該HRP−マレイミドをゲル濾過により精製した。
【0090】
pH6.8で、10倍過剰のTCEPを含有するTCEP(PerbioまたはCalbiochem)の水溶液中、該rNS3を室温で2時間還元して、還元されたrNS3を得た。前記のとおりに調製した、10モル当量のホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)−マレイミドを、還元されたrNS3およびTCEPの溶液に加え、得られた混合物を攪拌し、2〜8℃で16〜24時間放置して、rNS3−HRPを得た。ついで未反応のスルフヒドリル基を室温で3時間の過剰のヨード酢酸との反応により保護した。得られた保護されたrNS3−HRPを、2.5mLの産物を各カラム上にローディングし3mL中で溶出することにより、PD10カラム(Sephadex(商標)G−25 Medium;GE Healthcare Bio−Sciences AB,Uppsala,Sweden)上のゲル濾過により精製して、最終的なrNS3−HRP産物を得た。最終的なrNS3−HRP産物を製造するために該4工程法を行うために必要な総時間は1.5日であった。
【実施例2】
【0091】
通常技術によるC型肝炎ウイルスNS3タンパク質およびホースラディッシュペルオキシダーゼのコンジュゲートの製造
実施例1に記載のインシトゥ(in situ)方法とは対照的に、rNS3−HRPコンジュゲートの製造のための最も効率的な従来方法は9工程(中間産物の精製を含む)を要し、3日間の総時間を要した。
【0092】
特に、rNS3を約300mMの最終濃度のβ−メルカプトエタノール(β−ME)と共に温置した。ついで、還元されたrNS3をG25 Sephadexカラム上に負荷し、8M 尿素/EDTA/25mM HEPES(pH7.8)で溶出した。溶出した画分をタンパク質の存在に関して試験し、ついで該タンパク質を含有する画分を集めた。ついで、集めたrNS3画分を50倍モル過剰のSATAと共に30℃で1時間温置した。該溶液を6M 尿素/EDTA/50mM HEPES(pH6.8)中、2〜8℃で2回(まず6時間、ついで一晩)透析した。該タンパク質中へのチオール基の取り込みを標準的な方法により分析した。
【0093】
還元されたrNS3を13倍モル過剰のHRP−マレイミドと共に2〜8℃で一晩温置し、同時に、該タンパク質に対して約130倍モル過剰のヒドロキシルアミンの添加によりデマスキングを行った。ついで該タンパク質に対して30倍モル過剰としてβ−MEを加え、2〜8℃で20分間温置した。ついでNEM(N−エチルマレイミド)を該タンパク質に対して100倍過剰として加えて、rNS3−HRPコンジュゲートを得た。これらの最後の2つの工程(β−MEでの保護およびNEM添加)を省略しても、該通常HCVコンジュゲートの一部が得られたであろう。
【実施例3】
【0094】
インシトゥ(in situ)および通常技術により製造されたNS3タンパク質コンジュゲートの感度の比較
種々のコンジュゲート希釈度で陽性HCV血清サンプル(QC1691)を使用して、HCVに対する抗体を各コンジュゲートが検出する能力を評価し、固定化NS3タンパク質を含むHCVイムノアッセイキットを使用して、HCV陰性サンプルでバックグラウンドのレベルを決定することにより、実施例1に記載されているとおりのインシトゥ(in situ)方法および実施例2に記載されているとおりの通常技術により製造されたrNS3−HRPコンジュゲートの感度を比較した。このキットは、2006年9月1日付けで米国特許出願番号60/841,800(これに関してその教示を参照により本明細書に組み入れることとする)として出願された“Combination Hepatitis C Virus Antigen and Antibody Detection Method”と題する特許出願の対象である。該イムノアッセイキットと共に通常提供されるコンジュゲートの代わりに、実施例1および2において製造されたコンジュゲートを使用した。
【0095】
該イムノアッセイキットは以下の成分を含んでいた。
【0096】
1.96ウェルの各プレートを精製組換えHCV抗原(rNS3)、コアタンパク質ペプチドおよび抗HCVコアモノクローナル抗体で被覆した。
【0097】
2.表1に示す化学的組成および6.2のpHを有するサンプル希釈剤。
【0098】
【表1】

【0099】
3.表2に示す化学的組成および7.6のpHを有する陰性対照
【0100】
【表2】

【0101】
4.表3に示す化学的組成および7.6のpHを有する抗体陽性対照
【0102】
【表3】

【0103】
5.表4に示す化学的組成および10.8〜11.2のpHを有する抗原陽性対照
【0104】
【表4】

【0105】
6.表5に示す化学的組成および6.8のpHを有するコンジュゲート希釈剤
【0106】
【表5】

【0107】
8.0.048% 過酸化水素溶液、4.233% クエン酸三ナトリウムおよび95.719% 蒸留水を含有し7.5〜8.5のpHを有する基質希釈剤。すべてのパーゼントは重量/重量パーセントとして計算されている。
【0108】
9.表6に示す化学的組成および2.0±0.3のpHを有する基質濃縮物
【0109】
【表6】

【0110】
基質溶液
基質溶液を調製するために、透明プラスチック容器において、以下の表7に示すとおりに、ある容量の無色基質希釈剤を等容量のオレンジ色基質濃縮物に加える。
【0111】
【表7】

【0112】
10.該キットは洗浄用流体を含む。特に、125mLの20倍実効強度Tween/食塩水洗浄用流体を含有する1本または2本のボトル。該20倍実効強度溶液は1.714% Bronidox(登録商標)(10%溶液)、1.541% プロパン−1,2−ジオール、0.173% 5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、14.266% 塩化ナトリウム、0.857% Tween 20および83.136% 水を含有する。すべてのパーセントは重量/重量パーセントである。該溶液のpHは7であり、該溶液の密度は1.11g/mLである。該洗浄用流体を蒸留水または脱イオン水のいずれかで20分の1希釈して必要容量を得、あるいは洗浄用流体の1本のボトルの全内容物を2500mLの最終容量まで希釈する。希釈されると、該洗浄用流体は0.01% Bronidox(登録商標)保存剤を含有する。
【0113】
イムノアッセイ法:
以下に記載する工程に従い、イムノアッセイを行った。すべての試薬およびサンプルおよび試薬を、使用前に18〜30℃にした。該試薬と共に使用するすべてのガラス器を2M 塩酸で十分に洗浄し、ついで蒸留水または高品質脱イオン水ですすいだ。
【0114】
該方法は以下の工程を含む。
【0115】
1.洗浄用流体を調製し、該コンジュゲートを再構成させる。
【0116】
2.50μlのサンプル希釈剤を各ウェルに加える。
【0117】
3.50μlのサンプルまたは50μlの対照をウェルに加える。白色背景の使用はサンプル添加の可視化を補助するであろう。
【0118】
4.該ウェルを蓋で覆い、室温で60分間温置する(第1温置期間)。
【0119】
5.該温置期間の終了時に、「洗浄手順」に記載されているとおりに該プレートを洗浄する。洗浄が完了した後、該プレートを反転させ、残留洗浄用流体を吸収紙上に叩き取る。
【0120】
6.直ちに100μlのコンジュゲートを各ウェルに加える。
【0121】
7.該ウェルを蓋で覆い、室温で60分間温置する(第2温置期間)。
【0122】
8.基質溶液を調製する。
【0123】
9.工程5を繰返す。
【0124】
10.該プレートを洗浄した直後に、100μlの基質溶液を各ウェルに加える。
【0125】
11.該ウェルを蓋で覆い、37℃±1℃で温置する(第3温置期間)。直射日光を避ける。
【0126】
12.50μlの停止溶液(0.5M 硫酸)を加える。
【0127】
13.15分以内に、利用可能であれば参照波長として690nmを用いて450nmの吸光度を読み取る。該装置を空気中でブランク化する(カートリッジ内にプレート無し)。
【0128】
洗浄手順:当技術分野で公知の標準的なプロトコールに従い、該プレートを洗浄した。
【0129】
結果:
典型的な実験の結果を図2に示す。該結果は、該インシトゥ(in situ)rNS3−HRPコンジュゲートが、通常のrNS3−HRPより高い力価(すなわち、より低い濃度)で使用可能であり、より高いシグナルおよびより低い陰性結果を与えたことを示している。また、該rNS3−HRPコンジュゲートはDTTまたはTCEPの非存在下で使用可能であり、一方、通常方法に従い製造されたrNS3−HRPコンジュゲートの場合には、該コンジュゲート希釈剤に6mM DTTを加えなければならなかった。該通常rNS3−HRPをDTTまたはTCEPの非存在下で使用した場合には、陽性シグナルが実質的に低下した。該結果は、該インシトゥ(in situ)方法が該タンパク質構造を、開いたコンホメーションで維持し、予想されうるとおり、嵩張ったHRP部分が鍵エピトープを遮蔽することなく、それらが安定な様態で露出されることを示唆している。
【実施例4】
【0130】
界面活性剤を使用するHIV gp41−p24組換えタンパク質(dx589)およびホースラディッシュペルオキシダーゼのコンジュゲートのインシトゥ(in situ)製造
HIV gp41−p24組換えタンパク質(dx589)およびホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)のコンジュゲートを以下のとおりに製造した。8M 尿素、25mM HEPES、1mM EDTA(pH7.8)および該タンパク質に対して6.25モル過剰のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有する水溶液中、該タンパク質に対して5倍モル過剰のTCEPで、dx589を加熱ブロック中、100℃で10分間還元した。
【0131】
実施例1に記載のプロトコールを用いて、HRP−マレイミドを製造した。ついで、還元されたdx589を5倍モル過剰のHRP−マレイミドと2〜8℃で15〜24時間反応させた。
【実施例5】
【0132】
HIV gp41−p24組換えタンパク質(dx589)およびホースラディッシュペルオキシダーゼのコンジュゲートのインシトゥ(in situ)製造−TCEP濃度の最適化
得られたdx589−HRPコンジュゲートがコグネイト抗体に結合する能力に対する該還元反応における種々の濃度のTCEPの効果を調べた。還元反応においてSDSを加え、該タンパク質に対して5倍モル当量のHRP−マレイミドおよび種々の濃度(該タンパク質に対して0〜40倍モル当量)のTCEPを使用する以外は実施例4に全般的に記載されているとおりに、種々のdx589−HRPコンジュゲートを製造した。HIV陽性パネルQC1362およびQC1363に対して該コンジュゲートを試験した。結果を図3に示す。
【0133】
通常rNS3−HRPコンジュゲートの製造に関して実施例2に記載されている方法に従い、dx589−HRPコンジュゲート(「G」、参照体、図3)も製造した。
【0134】
陽性HIV血清サンプル(QC1362およびQC1363、図3における黒塗の棒グラフ)を使用して、該インシトゥ(in situ)方法により製造されたdx589−HRPコンジュゲートがHIVに対する抗体を検出する能力、およびHIV陰性サンプル(図3における白抜きの棒グラフ)でのバックグラウンドのレベルの決定を、Abbott Murex HIV 1.2.0キットを該キットと共に供給されたプロトコールに従い使用して評価し、通常技術により製造されたdx589−HRPと比較した。該キットと共に通常供給されるコンジュゲートの代わりに該dx589−HRPコンジュゲートを使用することにより、該dx589−HRPコンジュゲートを試験した。典型的な実験の結果を図3に示す。この場合におけるTCEPの最適濃度は2.5〜20倍モル当量と決定された。高い陽性シグナルと共に最低陰性シグナルを与えたTCEPの濃度は5倍モル当量と決定された。
【実施例6】
【0135】
HIV gp−41−p24組換えタンパク質(dx589)およびホースラディッシュペルオキシダーゼのコンジュゲートのインシトゥ(in situ)製造−HRP−マレイミド濃度の最適化
得られたdx589−HRPコンジュゲートがコグネイト抗体に結合する能力に対するコンジュゲート形成反応における種々の濃度のHRP−マレイミドの効果を調べた。5倍モル当量のTCEPおよび種々の濃度(2.5〜20倍モル当量)のHRP−マレイミドを使用する以外は実施例5に記載されているとおりの(すなわち、還元反応においてSDSを使用しない)インシトゥ(in situ)技術により、種々のdx589−HRPコンジュゲートを製造した。
【0136】
陽性HIV血清サンプル(QC1362およびQC1363、図4における黒塗の棒グラフ)を使用して、得られたdx589−HRPコンジュゲートがHIVに対する抗体を検出する能力、およびHIV陰性サンプル(図4における白抜きの棒グラフ)でのバックグラウンドのレベルの決定を、実施例5に全般的に記載されている方法に従い評価し、通常技術により製造されたdx589−HRP(「ref」)と比較した。典型的な実験の結果を図4に示す。この目的におけるHRP−マレイミドの最適濃度は2.5〜10倍モル当量と決定された。高い陽性シグナルと共に最低陰性シグナルを与えたHRP−マレイミドの濃度は5倍モル過剰と決定された。
【実施例7】
【0137】
インシトゥ(in situ)技術により製造されたdx589−HRPコンジュゲートの力価測定
実施例4に記載されているとおりに製造されたdx589−HRPコンジュゲートの、HIV陽性サンプル中の抗体への結合における感度を評価した。該dx589−HRPコンジュゲートの調製物を系列希釈し、陽性HIV血清サンプル(QC1362およびQC1363、図5における黒塗棒グラフ)を使用して、得られた希釈されたdx589−HRPコンジュゲートがHIVに対する抗体を検出する能力、および図5に全般的に記載されている方法に従いHIV陰性サンプル(図5における白抜きの棒グラフ)で観察されるバックグラウンドのレベルを決定することにより、該感度を評価した。典型的な実験の結果を図5に示す。該結果は、該インシトゥ(in situ)方法により製造されたdx589−HRPコンジュゲートが、高い希釈度(52,000分の1)においてさえ、抗体を特異的に検出可能であったことを示している。
【実施例8】
【0138】
インシトゥ(in situ)技術および通常技術により製造されたdx589タンパク質コンジュゲートの特異性の比較
実施例5(SDS無し)および実施例4(+SDS)に記載されているインシトゥ(in situ)方法により製造されたdx589−HRPコンジュゲートの特異性を、実施例5に記載されているアッセイ法に従い、HIV陰性サンプルのパネルに対して評価し、偽陽性の数を決定し、通常技術により製造されたdx589−HRPを使用して同じパネルで得られた偽陽性の数と比較した。
【0139】
典型的な実験の結果を図6に示す。白抜きの三角形は、該インシトゥ(in situ)方法(SDS無し)により製造されたdx589−HRPコンジュゲート、および通常技術により製造されたdx589−HRPに関する比較データを示す。黒塗の菱形は、該インシトゥ(in situ)方法(+SDS)により製造されたdx589−HRPコンジュゲート、および通常技術により製造されたdx589−HRPに関する比較データを示す。水平および垂直の線は「カットオフ」値を示す。カットオフを超える値は「偽陽性」とみなされる。該結果は、該インシトゥ(in situ)方法(+SDS)により製造されたdx589−HRPコンジュゲートが、通常技術により製造されたdx589−HRPと同等の特異性を有することを示している。これらの実験において該インシトゥ(in situ)方法(SDS無し)により製造されたdx589−HRPコンジュゲートの特異性は満足しうるものではなかった。また、該インシトゥ(in situ)方法により製造されたdx589−HRPコンジュゲートは、通常技術により製造されたコンジュゲートより一貫して製造することが可能であり、より再現性のある結果を与えた。
【0140】
本明細書中で言及されている全ての特許、刊行物(公開された特許出願を含む)およびデータベース登録の開示の全体を、それぞれのそのような個々の特許、刊行物およびデータベース登録が参照により本明細書に組み入れられると明示的かつ個々に示されているのと同等に、参照により本明細書に明示的に組み入れることとする。
【0141】
本発明は或る特定の実施形態に関して記載されているが、本明細書に添付されている特許請求の範囲に記載されている本発明の精神および範囲から逸脱しないそれらの種々の修飾が当業者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1以上のジスルフィド結合の少なくとも1つの還元を可能にする条件下、1以上のジスルフィド結合を含む抗原タンパク質をトリアルキルホスフィンと接触させて、少なくとも一対のスルフヒドリル残基を含む還元された抗原タンパク質を得る工程、および
(b)該スルフヒドリル残基の少なくとも1つとスルフヒドリル反応性試薬との反応を可能にする条件下、前記の還元された抗原タンパク質を、コンジュゲート部分とチオール反応性官能性とを含むスルフヒドリル反応性試薬と接触させて、該抗原タンパク質コンジュゲートを形成させる工程を含んでなる、抗原タンパク質コンジュゲートの製造方法。
【請求項2】
該トリアルキルホスフィンが、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン、トリス(2−シアノエチル)ホスフィンおよびトリブチルホスフィンよりなる群から選ばれる、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
該抗原タンパク質がウイルスタンパク質である、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
該抗原タンパク質がC型肝炎ウイルスタンパク質またはヒト免疫不全ウイルスタンパク質である、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
該抗原タンパク質がC型肝炎ウイルスタンパク質である、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
該C型肝炎ウイルスタンパク質が非構造タンパク質NS3である、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
該コンジュゲート部分が検出可能な標識である、請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
該コンジュゲート部分が酵素である、請求項1記載の製造方法。
【請求項9】
該酵素がホースラディッシュペルオキシダーゼである、請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
該チオール反応性官能性がマレイミドまたはヨードアセトアミドである、請求項1記載の製造方法。
【請求項11】
該チオール反応性官能性がマレイミドである、請求項1記載の製造方法。
【請求項12】
(a)1以上のジスルフィド結合の少なくとも1つの還元を可能にする条件下、1以上のジスルフィド結合を含む抗原タンパク質をトリアルキルホスフィンと接触させて、少なくとも一対のスルフヒドリル残基を含む還元された抗原タンパク質を得る工程、および
(b)該スルフヒドリル残基の少なくとも1つとスルフヒドリル反応性試薬との反応を可能にする条件下、前記の還元された抗原タンパク質を、コンジュゲート部分とチオール反応性官能性とを含むスルフヒドリル反応性試薬と接触させて、該抗原タンパク質コンジュゲートを形成させる工程を含む製造方法により製造される抗原タンパク質コンジュゲート。
【請求項13】
サンプル中の抗原タンパク質に対する抗体を検出するための方法であって、
(i)抗体:抗原タンパク質コンジュゲート複合体の形成を可能にする条件下、該サンプルを請求項12記載の抗原タンパク質コンジュゲートと接触させること、
(ii)工程(i)において形成されたいずれかの抗体:抗原タンパク質コンジュゲート複合体を検出することを含んでなる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−509192(P2010−509192A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526883(P2009−526883)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/077067
【国際公開番号】WO2008/027944
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】