説明

抗原性ポリペプチド

【課題】病原性微生物によって発現される抗原性ポリペプチドを提供する。
【解決手段】病原性微生物によって発現される抗原性ポリペプチドの同定のための方法;このポリペプチドを含むワクチン;このポリペプチドを製造するための組換え方法;およびこのポリペプチドに対する治療用抗体に関する。単離された核酸分子によってコードされるポリペプチドであって、病原性生物体によって発現されるポリペプチドをコードするDNA配列;該DNA配列に対して遺伝コードの結果として縮重するDNA配列、からなる群より選択されるDNA配列を含む、ワクチンとしての使用のためのポリペプチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原性微生物によって発現される抗原性ポリペプチドの同定のための方法;このポリペプチドを含むワクチン;このポリペプチドを製造するための組換え方法;およびこのポリペプチドを指向する治療用抗体、に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物生物体は、世界中の何百万もの人々を冒す多数の致命的な疾患または消耗性疾患を引き起こす。微生物生物体を制御する現在の方法は、抗微生物剤(抗生物質)および殺菌剤の使用を含む。これらは、これらの薬剤への曝露が抗微生物剤の効果を無効にし得る耐性菌の発生を生じる顕著な選択圧をかけるため、問題となることが示されてきた。例えば、近年、微生物生物体はトリクロサン(家庭および産業環境において用いられる多数の殺菌剤に添加される薬剤)に対して耐性となってきたことが発見されてきた。
【0003】
まず間違いなくより重大な問題は、多数の顕著な病原性微生物の抗生物質耐性株の進化である。
【0004】
限定する目的ではなく例示として、5000万人に至るまでの世界中の人々が薬物耐性結核(TB)に感染していると推定されている(世界保健機構、1998年提供の図)。従来、TBを処置するための抗生物質の使用は、比較的高頻度の耐性を助長した単一薬物(例えば、エチオナミド)の投与に頼っていた。このため、現在、薬物の組合せを用いて、結核を処置している。しかし、結核を処置するために用いられる薬物の少なくとも1つに耐性である株によって引き起こされる場合の死亡率は、処置される場合でさえ、なお50%に達する。Mycobacterium tuberculosis(TBの原因因子)は、低増殖性細菌であり、かつ死滅させるのに長時間かかる。従って、複合薬物を有効にするために、TBを有する人は少なくとも6ヶ月間、毎日この複合薬物を服用しなければならない。従って、患者は、毎日2個以上の丸剤を頻繁に服用しなければならず、そしてこれは、比較的長期間の処置にわたる厳しく管理された投薬を必要とする。多数の患者は、断続的にのみ投薬を受け、それ故、M.tuberculosis感染を完全に根絶するための、治療の全クールを完了しない。さらに、TBは、HIV感染に強く関連し、それ故、TBの馴化は、免疫抑制に強く関連する。
【0005】
TBに対するワクチン接種は、長年利用可能であった。カルメット−ゲラン杆菌(BCG)ワクチン接種は、TBに潜在的に罹患し得る多数の人々をワクチン接種するための安全かつ安価な手段であるので、長期間、世界中で広く用いられてきた。BCGは、Mycobacterium bovisの生きた弱毒化株由来である。しかし、TBの感染形態に対するワクチン接種の影響は最小であり、それ故、BCGは、この疾患の全般的制御をほとんど寄与しない。
【0006】
抗生物質に対する耐性を発生した病原性生物体のさらなる例は、Staphylococcus aureusである。S.aureusは、正常に健常な人々の約20〜40%において、通常の生育地が鼻の上皮内壁である細菌であり、そして悪影響を引き起こすことなくたいてい人々の皮膚においても通常見出されている。しかし、特定の環境下で、特に皮膚が損傷を受ける場合、この微生物は、感染を引き起こし得る。これは、患者が外科的処置を受け得、そして/または免疫抑制性薬物を服用し得る病院において特に問題である。これらの患者は、彼らが受けている処置に起因して、S.aureusに感染に対して非常により無防備である。S.aureusの耐性株は、近年発生してきた。メチシリン耐性株は、流行しており、そしてこれらの耐性株の多くはまた、いくつかの他の抗生物質に耐性である。現在、S.aureusに対する有効なワクチン接種手段は存在していない。米国において、S.aureus感染は、毎年200万人の院内感染のうちの13%の原因となっている。これは、260,000人の人々がS.aureus感染を示し、このうちの60〜80,000人が死亡する。
【0007】
従って、S.aureusは、敗血症、心内膜炎、関節炎および中毒性ショックを含む、広範囲な生命を脅かす疾患を引き起こし得る主要なヒト病原体である。この可能性は、生物体の変動性、およびビルレンスに関連した成分のその保有量によって決定される。病原性は、多因子性であり、そしてどの成分も特定の感染の原因であることを示さない(Projan,S.J.& Novick,R.P.(1997)in The Staphylococci in Human Disease(Crossley,K.B.& Archer,G.L.,eds.)55〜81頁を参照のこと)。
【0008】
感染の発症時、そしてそれが進行するにつれて、この生物体の必要性および環境は変化し、そしてこれは、S.aureusが産生するビルレンス決定因子における対応する変更によって反映される。感染開始時、その病原体が宿主組織に接着することが重要であり、そしてこのようにして豊富なレパートリーの細胞表面関連接着タンパク質が作製される。これらの細胞表面接着タンパク質としては、コラーゲン結合タンパク質、フィブリノーゲン結合タンパク質およびフィブロネクチン結合タンパク質が挙げられる。この病原体はまた、食作用を低下させる因子または抗体を循環させることによって認識されるこれらの細胞の能力を妨害する因子の産生によって宿主の防御を回避する能力を有する。
【0009】
しばしば、感染の病巣は、膿瘍として発現し、多数の生物体が増加する。S.aureusは、クオラムセンシング(quorum sensing)ペプチドの産生によってそれ自体の細胞密度をモニタリングする能力を有する。おそらくこれらの細胞の飢餓の開始によってもたらされる生理学的変化に関連する、このペプチドの蓄積は、ビルレンス決定因子の産生における付着分子から侵襲および組織穿通に関連する成分への転換を誘発する。これらとしては、広範な溶血素、プロテアーゼおよび他の分解酵素が挙げられる。
【0010】
任意の感染のプロセスの間、S.aureusによって作製されるビルレンス決定因子は、環境の刺激および生理学的刺激に応じて産生される。これらの刺激は、身体内のニッチに依存し、そして感染進行につれて変化する。インビボでの条件についてはほとんど知られておらず、そしていくつかの成分はこの環境下で単独で産生されるようである。従って、これらは潜在的なワクチン成分であり、これは、先行技術によって発見され得なかった。
【0011】
最近の医学史において最も重要な開発の1つは、多種多様な病原性生物体由来の予防的防御を提供するワクチンの開発である。多数のワクチンは、個体に注射される不活化病原体または弱毒化病原体によって生成される。免疫された個体は、体液性応答(抗体)および細胞性応答(細胞溶解性T細胞、CTL応答)の両方を引き起こすことによって応答する。例えば、肝炎のワクチンは、ウイルスを不活化する加熱、およびホルムアルデヒドのような架橋剤でこれを処理することによって作製される。ワクチンとして有用な弱毒化病原体の例は、生きた病原体を弱毒化することによって産生されるポリオワクチンによって示される。
【0012】
しかし、特定の疾患に対するワクチン中の弱毒化生物体の使用は、弱毒化の条件および性質の病理学に関する知識の欠如に起因して問題となる。特定のウイルス剤について、これは、特にレトロウイルスにおけるウイルスが、エラー傾向のある複製サイクル(これは、このウイルスを含む遺伝子中に生存可能な変異を生じる)を有するので、特に問題である。これは、結果として既にワクチンとして用いられてきた抗原性決定因子の代替物を生じ得る。不活化病原体または弱毒化病原体の使用に代わるものとしては、この免疫系が特に感受性である病原体エピトープの同定である。これに関して、感染の間に病原性生物体によって産生される多数の病原性毒素は、特定の病原性生物体から個体を防御するワクチンの開発に特に有用である。
【0013】
いわゆるサブユニットワクチンの開発(その中の免疫原が特定の病原性生物体によって発現されるタンパク質または複合体のフラグメントまたはサブユニットであるワクチン)は、重要な医薬研究の焦点となってきた。サブユニットワクチンの開発に有用な候補分子を同定する必要性は、少なからず明白である。なぜなら、病原性生物体の制御に対する従来の化学療法アプローチが、つい最近、抗生物質耐性の発生によって窮境に立たされてきたからである。多数の方法は、ワクチンとして用いられ得る潜在的な抗原性ポリペプチドを同定するために開発されてきた。1つのこのような方法が、本明細書中に開示される。
【0014】
長年の間、腫瘍細胞が多数の腫瘍細胞特異的抗原(この抗原のうちのいくつかは、腫瘍細胞表面に提示されている)を産生することは知られていた。免疫系は、これらの抗原を外来性として認識し、これによって、自己抗原に対する抗体(いわゆる、自己抗体または自己抗血清)の産生を生じる。
【0015】
1つのこのような技術は、組換え体発現クローニングによる抗原の血清学的同定(略して、SEREX)である。
【0016】
代表的に、この技術は、腫瘍組織からのRNAの抽出に続く単離された総RNAからのmRNAの選択的富化に関連する。mRNAは、ウイルスの逆転写酵素を用いてcDNAに逆転写される。従って、合成されたcDNAは、発現ベクターにサブクローニングされ、そして適切な細菌株に形質転換される。形質転換された細菌は、適切な栄養アガーにプレーティングされ、そして適切な増殖条件下で、サブクローニングされたcDNAは、細菌細胞中の発現ベクターから発現される。これらの細胞は、ファージベースの発現ベクター(例えば、λファージ)またはファージミドベースのベクターの使用によって自然に溶解され、これらの溶解サイクルを通して、これらの細胞は、細胞溶解を引き起こす。放出されたポリペプチドは、適切な膜支持体(すなわち、ニトロセルロース、ナイロン)に転写され、そして腫瘍組織が本来単離された患者由来の自己抗血清に曝露される。免疫スクリーニング方法論は、患者由来の選択された腫瘍組織において過剰に発現されるかまたは不適切に発現される遺伝子の同定を可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、感染の間に病原性生物体によって発現される抗原性ポリペプチドを同定するこの技術を開発してきた。感染中に産生される自己抗血清を用いて、ゲノムDNAから作製した発現ライブラリーをスクリーニングして抗原を同定およびクローニングする。
【0018】
その最も広い局面において、本発明は、病原微生物による感染の間に発現される抗原性ポリペプチドの同定に関する。
【0019】
本発明の第1の局面に従って、抗原性ポリペプチドを同定する方法が提供され、この方法は、以下:
(i)病原性生物体の遺伝子配列または部分的な遺伝子配列をコードする核酸ライブラリーを提供する工程;
(ii)宿主細胞中にこのライブラリーを形質転換/トランスフェクトする工程;
(iii)この形質転換/トランスフェクトした遺伝子配列または部分的な遺伝子配列の発現に役立つ条件を提供する工程;
(iv)この遺伝子配列/部分的な遺伝子配列によって発現されるポリペプチドと、この病原性生物体に感染されるかまたは感染された動物由来の自己抗血清とを接触させる工程;および
(v)この自己抗血清に結合しているポリペプチドまたは部分的なポリペプチドをコードする核酸を精製する工程、を包含する。
【0020】
本発明の好ましい方法において、このライブラリーは、病原性生物体のゲノムDNAを含む。
【0021】
理想的には、この病原性生物体は、細菌である。
【0022】
より好ましくは、なおこの細菌性生物体は、以下から選択される:Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Enterococcus faecalis;Mycobacterium tuberculsis;Streptococcus group B;Streptoccocus pneumoniae;Helicobacter pylori;Neisseria gonorrhea;Streptococcus group A;Borrelia burgdorferi;Coccidiodes immitis;Histoplasma sapsulatum;Neisseria meningitidis type B;Shigella flexneri;Escherichia coli;Haemophilus influenzae。
【0023】
好ましくは、なおこの病原性生物体は、Staphylococcus spp.属である。理想的には、この生物体は、Staphylococcus aureusまたはStaphylococcus epidermidisである。
本発明のさらに好ましい実施形態において、この核酸ライブラリーは、λライブラリーであり、理想的にはλ発現ライブラリーである。
【0024】
本発明の第2の局面に従って、以下から選択されるDNA配列を含む核酸分子が提供される:
(i)配列番号1〜13に示されるDNA配列;
(ii)病原性生物体によって発現されるポリペプチドをコードする上記(i)において同定される配列番号1〜13に示される配列にハイブリダイズするDNA配列;および
(iii)(i)および(ii)において規定されるDNA配列に対して遺伝コードの結果として縮重するDNA配列。
【0025】
本発明のなおまださらに好ましい実施形態において、この核酸分子は、ゲノムDNAである。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号1〜13に示される配列にアニーリングする単離された核酸分子が提供される。
【0027】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション/洗浄条件は、当該分野において周知である。例えば、核酸は、60℃にて0.1×SSC、0.1% SDS中で洗浄後、安定にハイブリダイズする。核酸の配列が知られている場合、最適なハイブリダイゼーション条件は、算出され得ることが当該分野において周知である。例えば、ハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーションに共される核酸のGC含有量によって決定され得る。Sambrookら(1989)Molecular Cloning;A Laboratory Approachを御参照のこと。特定の相同性のある核酸分子間でハイブリダイゼーションを達成するのに必要とされるストリンジェンシー条件を算出するための一般式は、以下:
=81.5℃+16.6Log[Na]+0.41[G+C(%)]−0.63(ホルムアミド(%))
である。
【0028】
本発明の第3の局面に従って、本発明に従う方法によって同定される少なくとも1つのポリペプチドが提供される。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、このポリペプチドは、本発明の先の任意の局面または実施形態に従う生物体の感染性病原性に関連する。
【0030】
さらになお好ましくは、このポリペプチドは、配列番号14〜19の少なくとも1つ、または配列番号14〜19の一部である。
【0031】
本発明の第4の局面に従って、核酸分子がこの核酸分子によってコードされるポリペプチドの組換え発現を促進するよう適合するベクターの一部であることを特徴とする核酸分子が提供される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、このベクターは原核生物の遺伝子発現のために適合する発現ベクターである。あるいは、この発現ベクターは、真核生物の遺伝子発現のために適合される。
【0033】
代表的には、この適合は、限定する目的ではなく例示として、細胞特異的発現を媒介する転写制御配列(プロモーター配列)の供給を含む。これらのプロモーター配列は、細胞特異的、誘導性または構成的であり得る。
【0034】
プロモーターは、当該分野で認識されている用語であり、明瞭さのために、限定する目的ではなく例示としてのみ提供される以下の特徴を含む。エンハンサーエレメントは、遺伝子の転写開始部位に対して5’方向にしばしば見出されるシス作用性核酸配列である(エンハンサーはまた、遺伝子配列に対して3’方向に見出され得るかまたはイントロン配列に位置され得、従って独立した位置である)。エンハンサーは、エンハンサーが連結される遺伝子の転写速度を増加させるよう機能する。エンハンサー活性は、エンハンサーエレメントに特異的に結合することが示されてきたトランス作用性転写因子(ポリペプチド)に応答性である。転写因子の結合/活性(David S Latchmanによる、Eukaryotic Transcription Factors,Academic Press Ltd,San Diegoを御参照のこと)は、多数の環境の信号(environmental cue)に応答性であり、これらの信号は、限定する目的ではなく例示として、中間代謝産物(例えば、グルコース、脂質)、環境のエフェクター(例えば、光、熱)を含む。
【0035】
プロモーターエレメントはまた、いわゆるTATAボックスおよび転写開始の部位を選択するよう機能するRNAポリメラーゼ開始選択(RIS)配列を含む。これらの配列はまた、とりわけRNAポリメラーゼによる転写開始選択を促進させるよう機能するポリペプチドと結合する。
【0036】
適合はまた、この選択マーカーおよび自己複製配列の供給を含み、これらは両方とも真核生物細胞または原核生物宿主のいずれかにおけるこのベクターの維持を促進する。自発的に維持されるベクターは、エピソームのベクターと呼ばれる。
【0037】
ベクターにコードされる遺伝子(vector encoded gene)の発現を促進する適合は、転写終結配列/ポリアデニル化配列の提供を含む。これはまた、二シストロン性発現カセットまたは多重シストロン性発現カセットに配置されるベクターにコードされる遺伝子の発現を最大にするよう機能するリボソーム内部侵入領域(IRES)の提供を含む。
【0038】
これらの適合は、当該分野において周知である。一般的に、発現ベクター構築および組換えDNA技術に関する顕著な量の刊行された文献が存在する。Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,Cold Spring Harbour,NYおよびこの文献中の参考文献;Marston,F(1987)DNA Cloning Techniques:A Practical Approach 第III巻 IRL Press,Oxford UK;DNA Cloning:F M Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(1994)を御参照のこと。
【0039】
本発明のなおさらなる局面に従って、本発明の先の任意の局面または実施形態に従うポリペプチドの産生のための方法が提供され、この方法は、以下:
(i)本発明に従うベクターで形質転換/トランスフェクトした細胞を提供する工程;
(ii)このポリペプチドの製造に役立つ条件下でこの細胞を増殖させる工程;および
(iii)この細胞、またはこの細胞の増殖環境由来のこのポリペプチドを精製する工程、を包含する。
【0040】
本発明の好ましい方法において、このベクターは、このポリペプチドの精製を促進する分泌シグナルをコードし、それ故、この組換えポリペプチドは、このポリペプチドの精製を促進する分泌シグナルと共に提供される。
【0041】
本発明の第5の局面に従って、本発明に従うベクターで形質転換またはトランスフェクトした細胞または細胞株が提供される。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、この細胞は、原核生物細胞である。あるいは、この細胞は、以下から選択される真核生物細胞である:真菌;昆虫;両生類;哺乳動物;植物。
【0043】
本発明のなおさらなる局面に従って、本発明に従う少なくとも1つのポリペプチドを含むワクチンが提供される。
【0044】
理想的には、このワクチンは、キャリアおよび/またはアジュバントをさらに含む。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1) (i)配列番号1〜13に示されるDNA配列;
(ii)上記(i)において同定された配列番号1〜13に示される配列にハイブリダイズし、そして病原性生物体によって発現されるポリペプチドをコードするDNA配列;
(iii)(i)および(ii)において規定されるDNA配列に対して遺伝コードの結果として縮重するDNA配列、
からなる群より選択されるDNA配列を含む、単離された核酸分子。
(項目2) ゲノムDNAである、項目1に記載の単離された核酸分子。
(項目3) ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1〜13に示される配列にアニーリングする、項目1または2に記載の単離された核酸分子。
(項目4) 項目1〜3のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、ベクター。
(項目5) 上記核酸によってコードされるポリペプチドの組み換え発現に適合している、項目4に記載のベクター。
(項目6) 原核生物遺伝子発現に適合した発現ベクターである、項目4または5に記載のベクター。
(項目7) 真核生物遺伝子発現に適合した発現ベクターである、項目4または5に記載のベクター。
(項目8) 上記ベクターの適合が、プロモーター配列の供給を含む、項目4〜7のいずれか1項に記載のベクター。
(項目9) 上記プロモーター配列が、細胞特異的、誘導性または構成的発現を提供する、項目8に記載のベクター。
(項目10) 抗原性ポリペプチドを同定するための方法であって、該方法は、以下:
(i)病原性生物体の遺伝子または部分的な遺伝子配列をコードする核酸ライブラリーを提供する工程;
(ii)宿主細胞中に該ライブラリーを形質転換/トランスフェクトする工程;
(iii)該遺伝子/部分的な遺伝子配列によって発現されるポリペプチドと、該病原性生物体に感染されるかまたは感染された動物由来の自己抗血清とを接触させる工程;および
(iv)該自己抗血清に結合しているポリペプチドまたは部分的なポリペプチドをコードする核酸を精製する工程、
を包含する、方法。
(項目11) 項目10に記載の方法であって、ここで、上記ライブラリーが、病原性生物体のゲノムDNAを含む、方法。
(項目12) 項目10または項目11に記載の方法であって、ここで、上記病原性生物体が細菌である、方法。
(項目13) 項目10〜12のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、上記細菌性生物体が、以下:
Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Enterococcus faecalis;Mycobacterium tuberculsis;Streptococcus group B;Streptoccocus pneumoniae;Helicobacter pylori;Neisseria gonorrhea;Streptococcus group A;Borrelia burgdorferi;Coccidiodes immitis;Histoplasma sapsulatum;Neisseria meningitidis type B;Shigella flexneri;Escherichia coli;Haemophilus influenzae、から選択される、方法。
(項目14) 項目13に記載の方法であって、ここで、上記病原性生物体が、Staphylococcus aureusである、方法。
(項目15) 項目13に記載の方法であって、上記病原性生物体が、Staphylococcus epidermidisである、方法。
(項目16) 項目10〜15のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、上記核酸ライブラリーが、λライブラリーである、方法。
(項目17) 項目10〜16のいずれか1項に記載の方法によって同定されるポリペプチド。
(項目18) 配列番号14〜19からなる群より選択される、項目17に記載のポリペプチド。
(項目19) 項目17または18に記載のポリペプチドの産生のための方法であって、該方法は、以下:
(i)項目4〜9のいずれか1項に記載のベクターを用いて形質転換またはトランスフェクトした細胞を提供し、該細胞に細胞培養条件を提供する工程;
(ii)該細胞、またはその増殖環境から、該ポリペプチドを精製する工程、
を包含する、方法。
(項目20) 上記ベクターは、上記ポリペプチドの精製を促進する分泌シグナルをコードし、それ故、上記組換えポリペプチドは、該ポリペプチドの精製を促進する分泌シグナルと共に提供される、項目19に記載の方法。
(項目21) 項目4〜9のいずれか1項に記載のベクターで形質転換またはトランスフェクトした、細胞。
(項目22) 原核細胞である、項目21に記載の細胞。
(項目23) 真菌細胞、昆虫細胞、両生類細胞、哺乳動物細胞、植物細胞からなる群より選択される真核細胞である、項目21に記載の細胞。
(項目24) 項目16または17に記載のポリペプチドを少なくとも1つ含む、ワクチン
(項目25) 項目24に記載のワクチンであって、該ワクチンがさらにキャリアおよび/またはアジュバントを含む、ワクチン。
(項目26) 病原性微生物に対して動物を免疫する方法であって、該方法は、上記項目のいずれか1項に記載のポリペプチドの少なくとも1つ、もしくはその一部、または上記項目のいずれか1項に記載のワクチン、を該動物に投与する工程、を包含する、方法。
(項目27) 項目26に記載の方法であって、上記動物がヒトである、方法。
(項目28) 項目26または項目27に記載の方法であって、ここで、上記抗原性ポリペプチドまたはワクチンが、静脈内、筋肉内または皮下のいずれかへの直接注射によって送達される、方法。
(項目29) 項目25または項目26に記載の方法であって、ここで、上記抗原性ポリペプチドまたはワクチンが経口投与される、方法。
(項目30) 項目26〜29のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、上記ワクチンが、細菌Staphylococcus spp.属に対するものである、方法。
(項目31) 項目30に記載の方法であって、ここで、上記ワクチンが、細菌種Staphylococcus aureusに対するものである、方法。
(項目32) 項目30に記載の方法であって、ここで、上記ワクチンが、細菌種Staphylococcus epidermidisに対するものである、方法。
(項目33) 項目16または項目17に記載のポリペプチドの選択的部分と少なくとも結合する、抗体、または少なくともその有効な部分。
(項目34) モノクローナル抗体である、項目33に記載の抗体。
(項目35) 項目33または項目34に記載の抗体であって、ここで、上記有効な部分がFAbフラグメントを含む、抗体。
(項目36) キメラ抗体である、項目33〜35のいずれか1項に記載の抗体。
(項目37) ヒト化抗体である、項目33〜35のいずれか1項に記載の抗体。
(項目38) 項目33〜37のいずれか1項に記載の抗体であって、該抗体に、マーカー、標識、またはタグが提供される、抗体。
(項目39) 項目38に記載の抗体であって、ここで、該抗体に、放射活性標識、蛍光標識;エピトープタグからなる群より選択されるマーカーが提供される、抗体。
(項目40) 融合ポリペプチドとして産生される、項目34〜39のいずれか1項に記載の抗体。
(項目41) 項目34〜40のいずれか1項に記載の抗体の発現のために適合する、ベクター。
(項目42) 項目41に記載のベクターを用いて形質転換またはトランスフェクトした細胞。
(項目43) 項目34または40のいずれか1項に記載の抗体の産生のための方法であって、該方法は、
i)項目41に記載のベクターを用いて形質転換またはトランスフェクトした細胞を提供し、該細胞に細胞培養条件を提供する工程;および
ii)該細胞、またはその増殖環境から、該ポリペプチドを精製する工程、
を包含する、方法。
(項目44) 項目34に記載の抗体を産生する、ハイブリドーマ細胞株。
(項目45) Staphylococcus aureus関連敗血症、食中毒または皮膚障害の処置のための医薬品の製造のための、項目33〜40のいずれか1項に記載の抗体の使用。
(項目46) Staphylococcus epidermidis関連敗血症、腹膜炎または心内膜炎の処置のための医薬品の製造のための、項目33〜40のいずれか1項に記載の抗体の使用。
(項目47) 項目34に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を調製するための方法であって、
i)免疫応答性哺乳動物を、配列番号14〜19に示されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドまたはそのフラグメントを含む免疫原を用いて免疫する工程;
ii)該免疫された免疫応答性哺乳動物のリンパ球を骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマ細胞を形成する工程;
iii)(i)のアミノ酸配列に対する結合活性について、工程(ii)の上記ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体をスクリーニングする工程;
iv)該ハイブリドーマ細胞を培養して増殖させ、そして/またはこのモノクローナル抗体を分泌させる工程;および
v)培養上清から該モノクローナル抗体を回収する工程、
を包含する、方法。
(項目48) 上記免疫応答性哺乳動物はマウスである、項目47に記載の方法。
(項目49) 上記免疫応答性哺乳動物はラットである、項目47に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0045】
用語アジュバントおよび用語キャリアは、以下の様式に解釈される。いくつかのポリペプチド抗原またはペプチド抗原は、B細胞エピトープを含むがT細胞エピトープは含まない。免疫応答は、このポリペプチド/ペプチド中にT細胞エピトープを含ませることによってか、または複数のT細胞エピトープを含む免疫原性キャリアタンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニンもしくは破傷風トキソイド)へのこのポリペプチド/ペプチドの結合体化によって非常に増強され得る。この結合体は、抗原提示細胞によって取り込まれ、プロセスされ、そしてヒト白血球抗原(HLAの)クラスII分子によって提示される。これは、キャリアに由来するエピトープに対するT細胞の特異性によって、もとの抗原性ポリペプチド/ペプチドに特異的なB細胞に対してT細胞補助(T cell help)が与えられることを可能にする。これは、抗体の産生、分泌およびアイソタイプスイッチの増加を引き起こし得る。
【0046】
アジュバントは、免疫細胞の活性を調節することによって抗原に対する特異的な免疫応答を増強する物質または手段である。アジュバントの例としては、単なる例として、同時刺激分子に対するアゴニスト性抗体、フロイントアジュバント、ムラミルジペプチド、リポソームが挙げられる。従って、アジュバントは、免疫調節物質である。キャリアは、第2の分子に結合した場合、第2の分子に対する免疫応答を増強する免疫原性分子である。
【0047】
本発明のなおさらなる局面において、病原性微生物に対して動物を免疫する方法が提供され、この方法は、本発明に従う少なくとも1つのポリペプチドもしくはその一部または本発明に従うワクチンをこの動物に投与する工程を包含する。
【0048】
本発明の好ましい方法において、この動物はヒトである。
【0049】
好ましくは、このワクチンまたは抗原性ポリペプチドは、静脈内、筋肉内、皮下のいずれかの直接注射によって送達され得る。さらになお、このワクチンまたは抗原性ポリペプチドは、経口摂取され得る。
【0050】
好ましくは、このワクチンは、細菌種Staphylococcus aureusに対するものである。
【0051】
このワクチンはまた、細菌種Staphylococcus epidermidisに対するものであり得る。
【0052】
ワクチンまたは抗原性ポリペプチドが、ヒト以外の動物(限定する目的ではなく例示として、家庭用ペット、家畜、ウマ)において予防する状況または緩和する状況において有効であることもまた、明白である。
【0053】
本発明のさらなる局面に従って、本発明に従う少なくとも1つのポリペプチドに結合する抗体、または少なくとも有効に結合するその一部が提供される。
【0054】
本発明の好ましい実施形態において、この抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり、ここで、この抗体はこのポリペプチドに特異的である。
【0055】
あるいは、この抗体は、ヒト抗体の不変領域または定常領域と共にこの抗体の可変領域を含むよう組換え方法によって産生されたキメラ抗体である。
【0056】
本発明のさらなる代替実施形態において、この抗体は、この抗体の相補性決定領域を、ヒト抗体の定常(C)領域および可変(V)領域由来のフレームワーク領域の両方と結合させる組換え方法によってヒト化される。
【0057】
好ましくは、この抗体は、従来の標識またはタグ(例えば、放射活性および/もしくは蛍光および/もしくはエピトープの標識もしくはタグ)を含むマーカーと共に提供される。
【0058】
好ましくは、このポリペプチドに対するこのヒト化モノクローナル抗体は、原核生物細胞または真核生物細胞のトランスフェクションまたは形質転換に適切に適合する発現ベクターにおいて融合ポリペプチドとして産生される。
【0059】
抗体(免疫グロブリンとしてもまた公知)は、外来分子(抗原)に対する特異性を有するタンパク質分子である。免疫グロブリン(Ig)は、二対のポリペプチド鎖、一対の軽(L)(低分子量)鎖(κまたはλ)、ならびに一対の重(H)鎖(γ、α、μ、δおよびε)からなる、構造的に関連したタンパク質のクラスである(4つ全てが、ジスルフィド結合によって互いに連結されている)。H鎖およびL鎖は両方とも、抗原の結合に寄与し、かつ1つのIg分子から別のIg分子までにわたり高度に可変性である領域を有する。さらに、H鎖およびL鎖は、非可変領域または定常領域を含む。
【0060】
L鎖は、2つのドメインからなる。このカルボキシ末端のドメインは、所定の型のL鎖の間で本質的に同一であり、そして「定常」(C)領域と称される。このアミノ末端のドメインは、L鎖毎に変化し、この抗体の結合部位に寄与する。この可変性に起因して、これは「可変」(V)領域と称される。
【0061】
Ig分子のH鎖は、いくつかのクラス(α、μ、σ、αおよびγ)のものである(これらの中に、サブクラスが存在する)。2つの同一のH鎖およびL鎖の1つ以上のユニットからなるアセンブルされたIg分子は、それが保有するH鎖からその名前が由来する。従って、以下の5つのIgアイソタイプが存在する:IgA、IgM、IgD、IgEおよびIgG(H鎖における差異に基づく4つのサブクラス(すなわち、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)を有する)。抗体構造およびそれらの種々の機能に関するさらなる詳細は、以下において見出され得る:Using Antibodies:A laboratory manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press。
【0062】
キメラ抗体は、マウス抗体またはラット抗体のV領域の全てがヒト抗体C領域と結合される組換え抗体である。ヒト化抗体は、げっ歯類抗体V領域由来の相補性決定領域とヒト抗体V領域由来のフレームワーク領域とを融合する組換えハイブリッド抗体である。ヒト抗体由来のC領域もまた用いられる。相補性決定領域(CDR)は、抗体の重鎖および軽鎖の両方のN末端ドメイン内にある領域であり、ここにV領域の大部分のバリエーションが制限される。これらの領域は、その抗体分子の表面でループを形成する。これらのループは、抗体と抗原との間の結合表面を提供する。
【0063】
非ヒト動物由来の抗体は、外来抗体に対する免疫応答および循環からのその抗体の除去を誘発する。キメラ抗体およびヒト化抗体は両方とも、ヒト被験体へ注射した場合、抗原性を低減させる。なぜなら、減少した量のげっ歯類(すなわち、外来)抗体が組換えハイブリッド抗体内に存在する上、ヒト抗体領域は免疫応答を誘発(illicit)しないからである。これは、より弱い免疫応答および抗体のクリアランスにおける減少を生じる。これは、ヒト疾患の処置において治療用抗体を用いる場合、明らかに望ましい。ヒト化抗体は、より少ない「外来性」抗体の領域を有するよう設計され、従って、キメラ抗体よりもより低い免疫原性であると考えられる。
【0064】
本発明の別の局面において、本発明に従うヒト化抗体またはキメラ抗体の発現に適合するベクターが提供される。
【0065】
本発明のなおさらなる局面において、本発明に従うヒト化抗体またはキメラ抗体をコードするベクターで形質転換またはトランスフェクトされた細胞または細胞株が提供される。
【0066】
本発明のなおさらなる局面において、本発明に従うヒト化抗体またはキメラ抗体の産生のための方法が提供され、この方法は、以下:
(i)本発明に従うヒト化抗体またはキメラ抗体をコードする核酸分子を含むベクターで形質転換またはトランスフェクトした細胞を提供する工程;
(ii)この抗体の製造に役立つ条件下でこの細胞を増殖させる工程;および
(iii)この細胞、またはその増殖環境からこの抗体を精製する工程、を包含する。
【0067】
本発明のなおさらなる局面において、本明細書中の前記のようなモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株が提供される。
【0068】
本発明のさらなる局面において、本発明に従うハイブリドーマ細胞株を用いて本発明に従うモノクローナル抗体を産生させる方法が提供される。
【0069】
本発明のさらなる局面において、本発明に従うモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を調製する方法が提供され、この方法は、以下の工程:
i)免疫応答性哺乳動物を、配列番号14〜19に示されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドまたはそのフラグメントを含む免疫原を用いて免疫する工程;
ii)免疫された免疫応答性哺乳動物のリンパ球を骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマ細胞を形成する工程;
iii)(i)のアミノ酸配列に対する結合活性について、工程(ii)のハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体をスクリーニングする工程;
iv)このハイブリドーマ細胞を培養して増殖させ、そして/またはこのモノクローナル抗体を分泌させる工程;および
v)この培養上清からモノクローナル抗体を回収する工程、を包含する。
【0070】
好ましくは、この免疫応答性哺乳動物は、マウスである。あるいは、この免疫応答性哺乳動物は、ラットである。
【0071】
ハイブリドーマ細胞を用いたモノクローナル抗体の産生は、当該分野において周知である。モノクローナル抗体を産生するために用いられるこれらの方法は、KohlerおよびMilstein,Nature 256,495−497(1975)ならびにまた、DonillardおよびHoffman,“Basic Facts about Hybridomas”,Compendium of Immunology 第VII版,Schwartz,1981に開示され、これらは参考として援用される。
【0072】
本発明のさらなる局面において、Staphylococcus aureus関連敗血症、食中毒または皮膚障害の処置のための医薬の製造のための、抗体の使用が提供される。
【0073】
本発明の別の局面において、Staphylococcus epidermidis関連敗血症、腹膜炎または心内膜炎の処置のための医薬の製造のための、本発明に従う抗体の使用が提供される。
【0074】
本発明に従う方法によって同定されたポリペプチドは、以下から生じる広範な疾患に対する治療用抗体の産生を容易にすることが明らかである:病原性感染(例えば、敗血症);結核;細菌関連食中毒;血液感染;腹膜炎;心内膜炎;セプシス;髄膜炎;肺炎;胃潰瘍;淋病;連鎖球菌性咽喉炎(strep throat);連鎖球菌関連中毒性ショック;壊死性筋膜炎;膿痂疹;ヒストプラスマ症;ライム病;胃腸炎;赤痢;細菌性赤痢。
【0075】
既に前で述べたように、微生物は、多種多様な疾患を引き起こす。限定する目的でなく、以下の列挙は、多数の微生物およびこれらが引き起こすいくつかの疾患である。
【0076】
【表1】




本発明の実施形態を、ここで、単なる実施例によってならびに以下の材料、方法および配列番号1〜19ならびに表1を参照して記載する。
【実施例】
【0077】
(材料および方法)
S.aureus 8325/4のゲノムDNAのλZAP発現ライブラリーを用いた。これは、全ゲノムDNAの部分的なSau3A消化由来の2〜10kbのフラグメントを含む。これを、ベクターのBamH1部位中にクローニングした。このライブラリーは、このゲノムの10倍より高いの達成範囲を含む。このライブラリーを直径9cmのペートリー皿上におよそ20,000プラーク形成単位の初期スクリーニングを用いたプラークリフト(plaque lift)によって探索した。用いたプレーティング細胞、それらの処理、プレーティング手順および緩衝液は、製造業者のハンドブック(Stratagene)に全く記載されるように行った。プレーティング細胞(Escherichia coli XL1−Blue MRF’)を、ファージで感染させ、そしてLBプレート(10mMのMgSOを含む)上に、3mlのLBトップアガー(10mMのMgSOを含む)をプレーティングした。次いで、これらのプレートを、42℃にて4時間、インキュベートした。直径8.5cmのニトロセルロースフィルターディスク(予め10mMのIPTGで濡らし、そして風乾した)を、各プレートに配置し、その位置をマークした。次いで、このプレートを37℃でさらに3.5時間インキュベートした。これらのフィルターを回収し、TBST緩衝液で洗浄し、次いで、6%w/vの乾燥脱脂粉乳および3%v/vのブタ血清(Sigma)を含有するTBST中で4℃にて一晩ブロッキングした。この血清を用いて、フィルター上の任意のプロテインAクローンをブロックした。次いで、これらのフィルターを、室温にて90分間、ブロッキング溶液において患者の血清(1/5000希釈)で処理した。抗血清を、主要なS.aureus感染から回復に向かっている患者から得た。次いで、これらのフィルターを、3回、TBST中で10分間洗浄した。用いた二次抗体は、室温にて30分間、ブロッキング溶液での1/30,000希釈のヤギ抗ヒト全IgGアルカリホスファターゼ結合物(Sigma)であった。次いで、これらのフィルターを上記のように洗浄し、標準的な比色手順を用いて発色させた。
【0078】
交差反応性プラークをアガープレート上に配置し、そして0.02mlのクロロホルムを含む0.2mlのファージ緩衝液中に芯をくり抜いて入れた(core)。各コアストックの力価を決定し、そしてファージを1プレートあたりおよそ200プラークでプレーティングした。プラークリフトおよびスクリーニングを上記のように実施して、単一で純粋な交差反応性クローンを得た。
【0079】
次いで、この純粋なクローンをプレートにスポット(1μl)し、直径0.5cmのコンフルエントなプラークを得た。30の個々のクローンを、各プレートにスポットし得る。プラークリフトを実施し、このフィルターを適切な血清で探索した。この方法において、クローンを他の患者の血清、非感染ドナーの血清および抗プロテインA血清とのこれらの交差反応性について試験し得る。
【0080】
次いで、個々のクローンを切り出して、製造業者のプロトコル(Stratagene)を用いてE.coli XLOLRにファージミドを与えた。プラスミドミニプレップを各々実施し、ゲノムのインサートのサイズを制限マッピングによって決定した。このクローニングしたインサートの正体を、ベクター配列に対するプライマー(これは、このインサートにわたる配列決定を可能にする)を用いてDNA配列決定によって決定した。誘導された配列の公的ドメインデータベースに対する比較によって、クローニングした遺伝子の性質を決定し得る。
【0081】
(ハイブリダイゼーション溶液/条件)
代表的に、ハイブリダイゼーション条件は、以下を用いる:4〜6×SSPE(20×SSPEは、1lに溶解させた175.3gのNaCl、88.2gのNaHPOOおよび7.4gのEDTAを含有し、そしてpHを7.4に調整した);5〜10×デンハルト液(50×デンハルト液は、5gのFicoll(タイプ400,Pharmacia)、5gのポリビニルピロリドンおよび(abd)5gのウシ血清アルブミン;l00μg〜1.0mg/mlの超音波処理したサケ/ニシンDNA;0.1〜1.0%のドデシル硫酸ナトリウム;必要に応じて40〜60%の脱イオン化ホルムアミドを含む)。ハイブリダイゼーション温度は、核酸標的配列のGC含有量に依存して変化させるが、代表的には、42℃〜65℃である。
【0082】
【表2】




(配列表)
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【数9】

【数10】

【数11】

【数12】

【数13】

【数14】

【数15】

【数16】

【数17】

【数18】

【数19】

【数20】

【数21】

【数22】

【数23】

【数24】

【数25】

【数26】

【数27】

【数28】

【数29】

【数30】

【数31】

【数32】

【数33】

【数34】

【数35】

【数36】

【数37】

【数38】

【数39】

【数40】

【数41】

【数42】

【数43】

【数44】

【数45】

【数46】

【数47】

【数48】

【数49】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2012−44991(P2012−44991A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−195496(P2011−195496)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【分割の表示】特願2002−504647(P2002−504647)の分割
【原出願日】平成13年6月20日(2001.6.20)
【出願人】(500085769)ユニヴァーシティー オヴ シェフィールド (7)
【出願人】(502448775)バイオシネクサス インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】