説明

抗原性遺伝子ワクチンおよびその製造方法

【目的】 人体または動物の細菌性感染に対して、その体内で抗原−抗体反応を起こすような抗原性物質を含まず、経口投与によってその粘膜系統内で持続的に免疫効果を発揮し得るワクチンの提供。
【構成】 脊椎動物を免疫化せしめるワクチンであって、脊椎動物の病原体である生物体から誘導された組み換え遺伝子を発現する非病原性微生物、またはその脊椎動物のアレルゲンを産生する非病原性微生物からなる。

【発明の詳細な説明】
本発明はワクチンに関し、さらに詳しくは病原性生体に由来する1種またはそれ以上の組み換え遺伝子を含む微生物から得られ、その病原生体のワクチンとして有効な抗原性遺伝子生成物に関する。細菌に起因した伝染病は、世界の至る所に存在している。公衆衛生の改善や抗生物質の出現により、伝染病の罹病率が低下し、またその発生率も減少してはいるものの、多くの発展途上国においては未だに細菌性疾患が絶えない。医学の先進国においても、薬物耐性遺伝子を伴って細菌を転換したり、薬物耐性遺伝子の副体を播種する方法がいろいろ行われているが、伝染病発生後にその影響と対峙するような従来の伝染病防衛方法に優る薬物耐性を発揮するに至っていない。ここ数年来、伝染病を撲滅しないまでも予防することのできるワクチンの要望が高まっている。健全な表皮面が無傷であることは稀れであり、仮に無傷であっても細菌の侵入を許す関係で、ほとんどの場合、粘膜の一つが初期感染点である。これらの粘膜として、結膜系、経口系、呼吸系、胃腸系および性尿器系が挙げられる。当該粘膜の粘膜分泌物は、侵入する病原体に対しての抗体を含むので、細菌の第1防衛線として作用する。従って、粘膜分泌系統の免疫反応を増大させることは、病原体に対する免疫を誘起する際の所望の目的を達成することになる。細菌性疾病に対して従来使用されてきたワクチンは一般に、(1) 病因学剤から精製された特異成分、(2) 全面致死の病因学剤または(3) 生存ワクチンとしての病因学剤の無毒誘導体である。これらの三種の型のワクチン類から選択された例を以下に示す。ストレプトコツカス・ムタンスからグルコシルトランスフェラーゼ酵素を回収する方法と、その精製酵素(第1型ワクチン)を虫歯の局部免疫法に使用することが米国特許明細書第4,250,262 号に開示されている。同明細書には、ストレプトコツカス・ムタンスの血清型a、cまたはgに関する細菌の培養、酵素の精製、その酵素を使用して唾液中における免疫グロブリンA(IgA)の抗体を刺激することが詳しく触れてある。精製された細菌の特異成分から得られたワクチン例が米国特許明細書第4,203,971 号および第4,239,749 号に記載されている。これらの両米国特許明細書は、ガナコツチノ外被物質からの糖蛋白質で構成されたナイセリア・ゴノリアの感染に対して有用なワクチンを開示している。糖蛋白質を注射すれば殺菌性抗体を刺激することができる。米国特許明細書第3,931,398 号に開示されているごとく、虫歯を免疫にするためにストレプトコツカム・ムタンスノ致死細胞を経口投与により使用することが第2型ワクチンの一例である。本発明者は、IgA抗体が生産可能な抗体であり、しかも斑点形成を減少せしめうることをすでにい確認している。エシエリヒア・コリ細菌の選択菌株を含む生存細菌ワクチン(第3型ワクチン)が米国特許明細書第3,975,517 号に開示されている。この細菌は、牝豚の乳腺内に注射する際、事前に希釈ホルマリン処理により弱化または部分的に不活性化されたものである。このようにして生産された抗体は豚の乳中で見い出だされ、新生豚をエシエリヒア・コリ感染から保護した。エシエリヒア・コリを不活性化するホルマリン処理は細菌の一時的弱化に過ぎないので、注射前に細菌が回復しないように注意が払われた。細菌が途中で回復すると、予防というよりは感染という重大な問題を招来する虞がある。上記米国特許明細書第3,975,517 号の例い示されているように、病原性生体から直接ワクチンを製造する場合、いくつかの問題が内在する。全細菌(生存または致死)またはその細菌から得た不純製剤を使用するに当っての主な障害は、その製剤中に不利な交叉反応を起こす多くの抗原性物質が存在していることである。例えば、ストレプトコツカム・ムタンスにより産生された蛋白質抗原は人心筋中の抗原と交叉反応すると報告されている。そのため、他の類似の病原性細菌蛋白質は、人用ワクチンとして使用する際、安全性が問題になる。その他の問題が生ずるのは経口投与可能なワクチンを開発する場合である。発展途上国におい未熟の医者による汎用や、患者側における苦痛のない服用の観点からすると、経口投与は最も好ましい投与形体である。IgA反応を刺激するのに経口投与形態を用いると、実際に吸収されて有効免疫反応を刺激することのできる物質量は通常は低くなる。一般に経口免疫法に必要な抗原の投与量は全身免疫誘発法に必要な投与量より多い。その理由は、抗原の大部分が胃腸内の酵素により減殺され、そのまま体外に放出されるかまたは非免疫形態で吸収されると想定されるためである。本発明の目的は、細菌性感染に対して人体内または動物体内で不利な抗体−抗原反応を起こす抗原性物質を含まず、また交叉反応の問題を解消して経口投与に適し、さらに人体または動物の粘膜系統内で持続しかつ分泌系統内でIgAの産生を刺激するワクチンを提供することにある。本発明の別の目的は、前記ワクチンを製造する方法を提供することにある。本発明のこれからの目的およびその他の目的は、温血動物である生体の組み換え遺伝子を含み、その遺伝子を表現する生存非病原性担体微生物からなる温血動物免疫用ワクチンを提供することによって達成される。本発明の目的は、温血動物の病原体またはその動物のアレルゲンを産生する第一生体から誘動された遺伝子の抗原性遺伝子生成物からなり、その遺伝子が遺伝子生成物を産生する第二生体内に表現され、かつ前記第一生体またはアレルゲンが動物体内に存在するとき、遺伝子生成物が動物体内で免疫反応を誘発するワクチンを提供することによっても達成可能である。本明細書中に記載された遺伝子組み換え操作によって生成される微生物と、遺伝子の入手に適する病原性細菌を以下に例示する。これらの培養物はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、米国、メリーランド、ロックビル、パークローン・ドライブ 12301〔American type Culture Collection(ATCC)、12301 Parklawn Drive、Rockville 、Maryland、U.S.A 〕に寄託されており、その副培養物は寄託機関であるATCCから取得可能である。ストレイプトコカム・ムタンスの遺伝子の遺伝子移転および封入により得られた菌株:エシエリヒア・コリ 1274(pYA619)
(ATCC No.31984 )
エシエリヒア・コリ HB101 (pYA726)
(ATCC No.31985 )
エシエリヒア・コリ 1274(pYA601)
(ATCC No.31986 )
授体菌株:ストレプトコツカス・ムタンス UAD90(ATCC No.31987 )
ストレプトコツカス・ムタンス UAD50(ATCC No.31988 )
ストレプトコツカス・ムタンス UAD308(ATCC No.31989 )
本発明は、組み換えDNA技術を介して病原体から選択抗原を産生するのに非病原性抗原を使用し、実質的に病原性生体の汚染抗原を含まない選択抗原を提供すれば、従来の抗病原ワクチンに付随した大部分の問題を最少限に留めうることおを確認した。ワクチンを粘膜に直接導入するこおとによりIgAの産生を刺激するのが好ましい。IgA前非細胞を抗原刺激するための中枢径路が消化管連合リンパ組織(GALT)と細気管連合リンパ組織(以下BALTという)に存在し、かつ増感細胞の遠隔粘膜部位への播種を伴うことが最近の研究から明らかになった。入手可能なデータによれば、消化管、呼吸管、乳腺、口腔腺、性尿管の固有槽が増感された細胞を介してGALTおよびBALTから供給される。例えば、リンパ球は遠隔細胞または小細胞集合体としての腸管の内層全体に拡散される。この細胞集合体の一部はリンパ上皮組織として知られている別異の器官に展開される。人体内におけるその主要器官は(1) 扁桃腺(咽頭壁内)、(2) 付属体(大腸管と小腸管の接合部)、(3) パイエル集腺(小腸管の終端部に主に見られる長楕円形リンパ細胞集合体)である。例えば、フエリチンを使ってマウスに経口免疫を施すと、マウスの腸外リンパ組織内に抗体生成細胞の出現を来たすことが「ジャーナル・オブ・イムノロジー」(Journal of Immunology )123 、1705(1979)に報告されている。さらに、分泌腺内での免疫グロブリン系細胞形成抗フエリチンの大部分がIgAであり、脾または末梢リンパ腺内では免疫グロブリンM(IgM)と免疫グロブリンG(IgM)のフエリチン結合細胞が見い出だされた。この免疫系統の刺激用主要中枢径路はGALTとBALTの増感により生起すると想定される。次の図式はBリンパ球の増感経路、離隔粘膜組織を誘発する両リンパ球のGALTとBALTからの遊走、両リンパIgA生成形質球への分化を示す。
粘膜免疫系統摂取または吸入抗原↓GALT、BALT内での特殊粘膜上皮細胞経由によるTリンパ球、Bリンパ球への抗原浸透↓T細胞、B細胞の局部増感↓T細胞、B細胞の腸間膜リンパ球への移行↓胸管リンパ↓血液循環↓B細胞、T細胞の離隔粘膜組織誘発消化管、呼吸管の固有層乳腺口腔腺涙腺性尿組織その他↓IgA生成細胞への分化、分子展開(抗原の存在下)
本発明の好ましい実施例において、選択抗原を回パイエル集腺などのGALTに搬送するのに抗体細菌を使用することができる。サルモネラ属などの数種属の細菌はパイエル集腺を誘発することが知られている。十分に研究されたエシエリヒア・コリRDEC−1を例に挙げると、パイエル集腺に対して特異な種属である当該細菌は家兎の回腸のパイエル集腺に特異的に付着し、その集腺内に侵入して持続する。人体に特異なその他のエシエリヒア・コリ菌株は人体内のパイエル集腺を隔離するこおとが知られ、またストレプトコツカス・タイフイムラム−エシエリヒア・コリ雑種も人体内のパイエル集腺を隔離することが判明している。これらの担体細菌が病原性生体の組み換え遺伝子を含み、かつその遺伝子を表現すれば、その病原体に対する抗体が産生される。組み換えDNA技術の出現に伴い、現在では、病因剤を介するのとは異なり、抗原に対して遺伝子を表現しうる細菌の別の宿主菌株を介することにより特異の抗原を産生する極めて特異なワクチンの製造が可能になった。抗原が哺乳宿主の抗原と交叉反応して自己免疫を誘発するような場合、組み換えDNA技術の使用により遺伝子を改変し、交叉反応性抗原決定因子の生成を防止せしめることもまた可能である。それゆえに、哺乳宿主の抗原と交叉反応し、または自己免疫を誘引する物質を含まないワクチンの開発に組み換えDNA技術を採用することができる。本発明は、局部免疫が重要であって、一防衛線となる細菌性またはウイルス性疾病に対する有効ワクチン類の開発に広く適用えきることが明らかである。本発明のワクチンの例として、腸病原エシエリヒア・コリ菌株、ビブリオ・コレラ、サルモネラ・タイフイ、シゲラ属細菌に起因した腸疾患を制御するワクチンがある。本発明のその他のワクチンは、嚢胞性線維症患者の持続性プソイドモナス・アエルギノサ感染の制御、エルジニア・ペステスに起因した肺ペストの予防、エシエリヒア・コリ性尿管感染の予防、ナイセリア・ゴノリア、トレポネマ・パリダムおよびクラミデア・トラコマテスに起因した性病の予防と、クラムデに起因した眼感染の予防に使用できる。遺伝子の入手が可能なストレプトコツチ属(A群、B群)、例えば咽喉病の原因となる属も本発明の範囲内に含まれる別の細菌例である。流行性感冒ウイルス用に製造されたワクチンなどのウイルス性ワクチンも本発明の範疇に入る。DNAウイルス、例えばポパウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポクスウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、ミコソウイルス、パラミコソウスまたはレトロウイルスといった類のその他のウイルスに有効なウイルス性ワクチンを製造することもできる。本発明の実施例の一つは、脊椎動物の病原体である生体またはその動物の抗原を産生する生体から誘動された組み換え遺伝子を表現でき、生存非病原性微生物からなる脊椎動物免疫用ワクチンである。この実施例中で用いられる各技術用語を以下に説明する。ワクチンとは、生体の免疫系統を刺激することにより後発の病害を予防するのに使用される薬剤である。免疫法とは、生体に予め露出された病原体または抗原に対抗する生体内で高抗体水準を連続的に誘発せしめる方法でる。免疫系統とは、例えばインターフエロン生成といった単細胞生体に異体を内在させる反応を含むが、本発明でいう免疫系統は、多細胞生体が生体細胞または生体外液に侵入する抗原性物質に対して抗体を産生する解剖学的特徴と機構に限定される。このようにして産生した抗体は免疫グロブリンA、D、E、GまたはM(IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgM)などの免疫学的分類のいずれかに属する。IgAが温血動物の分泌系統から得られる主要免疫グロブリンであることに注目すれば、特に興味あるワクチンはIgAの産生を刺激するワクチンである。しかし、本発明はIgAの産生を刺激するワクチンに限定されるものではない。例えば、いまここで述べた型のワクチンは、IgAの形式に加えて、単細胞免疫および液素性免疫などの広範囲の免疫反応を起こす可能性がある。抗原類の免疫反応は仔細に研究されて広く報告されている。免疫学調査結果が「マイクロバイオロジー:イムノロジー・アンド・モレキュラー・ジェネテックス」(「Microbiology:Immunol0gy and Molecular Geenetics」)(3版、1980年、ハーパー・アンド・ロー社)に発表されている。脊椎動物は、魚類、水陸両用動物類、爬虫類、鳥類および哺乳類を含んだコルデート門の主要部門である脊椎動物亜門の一員であり、いずれも軟骨性脊柱を有することが特徴である。脊椎動物はすべて官能免疫系統を有し、抗原と反応して抗体を産生する。その結果、全脊椎動物がワクチン類と反応可能である。ワクチンは一般に人または犬(狂犬病ワクチン)などの哺乳類に適用されるが、ここに述べた性質を有すれば、たとば魚類などの営利的に飼養された別の部門の脊椎動物も本発明の範囲に入る。本発明の実施例における特徴の一つは、遺伝子生成物として非病原性微生物を使用することである。この遺伝子生成物は病原体またはアレルギンに対する抗体反応の刺激に用いられる。非病原性とは、遺伝子の微生物が病原体として作用しえないことを意味するのではなく、使用される特定の微生物が特定の被治療動物に対する病原体であることを意味する。当該微生物は遺伝子または病原性の種族に属するが、非病原性菌株であってもよい。病原性とは、疾患の発症または通常の生理機能を阻害することを意味する。微生物にはウイルス類、細菌類、原虫類、単細胞カビ類が含まれる。試験官中で非ウイルスDNAと組合わせたウイルス被覆蛋白質からなる合成ウイルスを担体として使用することも可能である。急速に発展しつつある組み換えDNA技術の結果、第一生体の遺伝子物質を第二生体の遺伝子物質に転換するための多用の技術が最近では広く利用できるようになった。本発明において第二生体再現により同一遺伝子物質含んだ卑属親を生起させるために、第一生体から第二生体に転換された遺伝子物質は組み換え遺伝子と呼称される。本発明での遺伝子とは、広義には生物学遺伝単位体を示すものとして用いられている。組み換え遺伝子とは親生体中に存在するような完全遺伝子ある必要はなく、例えば官能ポリペプチドなどの巨大分子を産生または規制できるものであればよい。この遺伝子は、抗原性生成物の産生の際に用いる導子の型として作用すれば十分である。遺伝子生成物は必ずしも親生体中におけるものと厳密に同じ形態でなくともよい。例えば、100 アミノ酸残基から成るポリペプチドを指定する官能遺伝子を部分的に担体に転換させ、宿主細胞の細胞機構を介してわずかに75またはそれ以下の10のアミノ酸残基から成るペプチドを生成することができる。しかし、この遺伝子生成物が、親生体中に存在する類似抗原に対して抗体を形成するような抗原である場合、本発明において定義の遺伝子の範囲に入ると考えられる。その抗原スペクトルの他端部には、数種の遺伝子生成物を指定するDNAの長切片が存在し、これらの遺伝子の一つまたは全部が抗原性を有する。その結果、本発明でいう遺伝子とは、抗原の産生可能な遺伝単位体である。この遺伝子は染色体、細胞質またはウイルスを起源とするものであればよい。遺伝子の免疫反応誘発を有効ならしめるためには、遺伝子が表現されねばならない。遺伝子の表現とは、遺伝子(DNA基部列)の組織に固有の情報が、遺伝子の位置する細胞の生化学機構によりポリペプチド、RNA分子またはその他の生物学分子の形態の物理的生成物に転移されることを意味する。これらの生化学機構は、微生物が細菌原虫または酵母菌の場合は担体微生物の細胞機構であり、微生物がウイルスの場合は感染細胞の細胞機構であってもよく、このようにして製造された生物学分子は遺伝生成物と呼ばれる。ここに用いた遺伝子生成物とは、遺伝子の制御下で発生する生化学反応の結果により製造されるすべての生物学生成物を指す。例えば、遺伝子生成物は遺伝子の初期生成物つまり代謝物である酵母またはその他の分子の制御下で製造されたRNA分子ペブチドまたは生成物である。例えば、遺伝子は最初、リボゾームの作用により酵素に移植されるRNA分子の合成を制御する。この酵素は、遺伝子が存在した原細胞の対外環境中で多糖類の形成を制御する。上記RNA分子、酵素および多糖類はすべて本発明でいう遺伝子生成物である。これらの遺伝子生成物はいうまでもなく、例えば糖蛋白質類などの他の多様型遺伝子生成物も動物の免疫系統に導入されると抗原として作用する。ワクチン中の抗原として使用するのに適した遺伝子生成物は、糖蛋白質類を含んだ蛋白質遺伝子生成物である。ワクチンの抗体産生を有効ならしめるためには、種痘動物の抗体産生機構が活動し始めうるように、抗原性物質が放出されねばならない。従って、遺伝子生成物の微生物担体を動物体内に導入することが必要である。前記したように、BALTおよびGALT細胞の好ましい反応を刺激する際、筋肉注射、皮下注射または腹腔内投与、腔内投与などのワクチン投与方法も可能であるが、微生物または遺伝子生成物を消化管または細気管内に直接導入する方法が好適である。担体微生物を用いる場合、一旦その微生物が動物体内に存在すると、抗原が動物免疫系統内で形成可能な状態にならなければならない。この状態は、担体微生物が死滅し、抗原分子が放出されたときに達成される。しかし、死滅することのない担体微生物により外部環境中で得られる抗原の形成を制御できるように遺伝子を選択するのが好ましい。このように遺伝子の選択を行えば、種痘動物内、例えばパイエル集腺内で持続しかつ抗原を継続的に産生し、その結果、抗体形成を連続的に誘発する生存微生物を使用することが可能である。この場合の好適遺伝子生成物は、細胞膜を経て外部環境内に移行される生成物、あるいは外部膜に付着または封埋され、遺伝子生成物の全部または一部が外部環境に露出される生成物である。後者の遺伝子生成物の典型例は通常は予防を必要とする生体の表面上に見られる抗原である。これらの抗原を従来のように細胞面に移行させれば、その抗原に対する抗体形成が大幅に増大される。しかしながら、死滅して細胞質抗原を放出した非生存担体を使用してもよい。非生存担体微生物を用いる場合、生存担体の場合に比し、通常は病原性である細菌などの広範囲の担体微生物を採用することができる。他の病原体からの抗原をGALTまたはBALTに搬送するのに病原体を用いることは、もしその病原体がパイエル集腺内侵入能を保持した状態で「無毒化」されない限り適切でない。自然界での生存防止のためのエシエリヒア・コリ菌株の改変は周知であり、例えば米国特許明細書第4,190,495 号に記載されている。特定の栄養素を要求する細菌を誘起するのに実験室で用いたのと同じ削減(△)突然変異(例えば△thyA)を使用すればパイエル集腺の侵入を防止せずに長期間生存を阻止することができる。アスパラギン酸半アルデヒド脱水素酵素を削減しかつジアミノピメリン酸(DAP)を要求する△asd突然変異もまた細胞内蛋白質と外質蛋白質の放出を伴って、生体内でのDAPの少ない死に帰着する。さらに、腸内ケリン合成を阻止するストレプトコツカス・タイフィムラムの削減突然変異により、無毒でしかもサルモネラ感染に対して有効な免疫を誘起しうる菌株が生成される。この細菌は「ネーチャー」(Nature)、291 、238 (1981)に記載されており、担体微生物の至便な供給源である。組み換え遺伝子を誘導する生体は被種痘動物の病原体、あるいはその動物のアレルギンまたは他の抗原である。アレルギンとは、被種痘動物体内でアレルギー反応を起す物質である。動物の毛、花粉などの多種の異なった物質はアレルゲンであるため、個々の動物のアレルギー反応は特定のアレルゲンに依存して変化する。通常、アレルギー反応を示す動物に対してアレルギン耐性を誘引することができる。アレルギン耐性誘引方法は周知であり、一般にアレルゲンの服用量を増加させながらアレルゲンを動物に投与することからなる。アレルギン耐性誘引については、前記刊行物「マイクロバイロジー」に詳しく記載されている。上述の型の生存ワクチンは周知技術または標準技術により動物に投与され、その方法は経口摂取、腸管培養または気管支−経鼻噴霧である。これらの各投与方法は、生存ワクチンをBALT細胞またはGALT細胞に容易に到達せしめることで、抗体形成を誘発させうる点で好ましい。担体微生物を動物の血流中に到達せしめる静脈注射などの投与方法も異常状態下で適用できるが、担体微生物による全身感染を招くので通常は使用すべきでない。しかし、後述する本発明の他の実施例の場合のごとく、精製した抗原を用いれば静脈注射の適用が可能である。好適な投与方法が経口摂取と腸管培養であるから、好ましい担体微生物は被感染動物の腸管上皮組織のいずれかを選択的に誘発しうる種族に属する微生物である。これらの微生物菌株は、腸病原性菌株の遺伝子操作により誘導される腸病原性菌株の非病原性誘導体であることが好ましい。パイエル集腺を誘発し、IgAの産生を直接刺激する菌株が最適である。人用菌株としてパイエル集腺を誘発するエシエリヒア・コリ属、サルモネラ属の菌株ならびにサルモネラ−エシエリヒア・コリ属の雑種が適する。組み換えDNA技術は現在では周知であり、広汎に利用されているので常套手段と考えられている。広義には、このDNA技術方法は、第一生体の遺伝子物質、通常はその遺伝子物質の一部を第2生体中に転換させ、転換された遺伝子物質が転換生体の遺伝子物質の永久部(再結合により)になるように構成されている。当該方法によれば、遺伝子副体(染色外因子とも呼称される)または親染色体のいずれか一方の親生体からDNAの小片がまず取得される。遺伝子の副体は、細胞の染色体から物理的に分離された遺伝単位体である。DNAは大きさは任意であり、制限的内部核酸分解酵素の作用により入手でき、この分解酵素は、DNAを特異の対塩基部位で分裂せしめる役目を果す。DNA片は、変換(カルシウムイオンなどの種々の化学剤の存在下で人工的に誘発されうる裸DNAの外部環境からの摂取)、接合(細菌の有性生殖)、人工感染(ファージによるかまたはファージ被覆蛋白質の存在下での非ウイルス性DNAの転移)などの多種の手段を介して宿主細胞内に転移される。その他の適切な転移手段は人工的抗原変換などの方法である。親DNAが担体細胞内に入れば、そのDNAは分離片(一般に完全伝搬遺伝子副体)として継続的に存在するか、または宿主細胞染色体中に挿入されて細胞分裂時に染色体とともに生殖される。遺伝子物質の転換は比較的単純であるが、その転換により遺伝子が表現されるとの予測は未だ早計である。だからといって、本発明の実施が困難な訳けではない。宿主微生物が転換された遺伝子を表現し、それにより抗原を産生しなければならない点で、「ショットガン」アプローチを適切に利用できる。所望の抗原、例えば病原性細胞膜断片に対し、標準技術によりまず抗体が産生される。抗原源である生体からのDNAは内部核酸分解酵素により多数の断片に開裂され、これらの断片が担体微生物中に無差別に挿入される。病原体からの抗原を表現する微生物は、病原体抗原に対する札付抗体との反応により容易に同定される。所望の組み換え生体を得るために抗原表現用微生物を選定して分枝発生させることができる。微生物のショットガン隔離法は周知であって、「アニュアル・レビュー・オブ・バイオテクノロジー(Annual Review of Biotechnology)」、46、415(1977) に記載されている。本発明の範囲に属すると考慮されるのは、非病原性微生物内で表現される病原性生体から惹起された遺伝子を含む組み換え生体の産生可能な方法であり、遺伝子転換技術は本発明の要部ではない。DNA単離、遺伝子隔離およびその他の関連技術が「レコンビナント・デー・エヌ・エー:メソツズ・オブ・エンジモロジー(Recombinant DNA:Methods of Enzymology) 」(68巻、1979年、アカデミック・プレス)などに開示されている。本発明の第二実施例において、脊椎動物の病原体である生体から誘導された組み換え遺伝子を表現する微生物より産生された遺伝子生成物からなり、その遺伝子生成物が脊椎動物中で病原体に対して免疫反応を誘起できる脊椎動物免疫用ワクチンが提供される。第二実施例で産生された遺伝子生成物には、免疫またはアレルギン耐性誘引の対象生体から惹起される他の抗原性物質は存在しない。このことは、感染動物の多様の細胞または器官と反応可能な抗体を誘起するとして知られている病原性生体を取り扱う際、極めて重要である。例えば、ストレプトコツカス・ムタンスにより得られたある種の蛋白質抗原は人心筋に内在の抗原と交叉反応すると報告されている。従って、その他の類似の連鎖球菌蛋白質を人用ワクチンとして使用する場合、安全性という特別の問題が持ち上る。この安全性の問題は、危険な交叉反応を呈することのない抗原のみを誘導する組み換え微生物の分枝系統を選択することにより回避可能である。前記した両実施例間の主な相違点は、第一実施例における生存微生物が抗原の担体として作用するのに対し、第二実施例におけるワクチンが遺伝子生成物を産生する生存微生物の存在しない状態で遺伝子生成物を含有していることである。第二実施例による主な利点は、担体微生物による無制限感染の危険性がないことである。第一実施例の場合、微生物の非病原性菌株の選択および非ウイルス性菌株産生能力に伴う制御により、無制限感染の危険はほとんどないが、抗原性遺伝子生成物をワクチンとして直接産生しうる微生物の使用が必要であることはいうまでもない。第二実施例の場合、実質的に感染動物を害するような他の抗原の不存在下で遺伝子生成物を産生するために、病原体つまり抗原生成生物の遺伝子を導入しうる生体を使用することが可能である。従って、所望の遺伝子生成物を高収率で産生する生体を成長させて採取し、遺伝子生成物を分離した後、その生成物を内部投与に適した生体形成を必要とすることなくワクチンとして使用できる。その結果、高収率性の非両立生体を用いたワクチンの製造が可能である。第二実施例によれば、前記した遺伝子生成物を含めたいずれの型の抗原性遺伝子生成物をも産生できる。抗体反応によるショットガン隔離および分枝系選択は第二実施例にも同様に適切に作用する。第二生体に内在する他の物質からの抗原の分離は、分枝選定との成長の後に行われる。複合混合物から特定成分を物理的化学的に分離せしめる手法は、広く知られている。ある種の混合物から得た画分中に抗原性遺伝子生成物が存在するかどうかは抗体/抗原反応の試験により容易に判定できるので、大部分の遺伝子生成物の分離には常用の実験手法で間に合う。すべての抗原の分離に適用可能な方法の一つは、支持物質に結合された抗体からなるアフィニテイ・カラム・クロマトグラフイの使用である。この方法では、抗原含有粗製剤をカラムに通過せしめるとき、抗原をカラムに保持する必要がある。抗体反応による分子系統のショットガンによる隔離および選定は適切な分枝系の好ましい選定方法であるから、所望の抗原用抗体が常に存在し、適切なアフイニテイ・カラム・クロマトグラフイを容易に調整できる。硫酸アンモニウム沈澱、ゲル濾過などの精製方法もまた適切である。要約すると、本発明のワクチンは微生物の遺伝子操作により製造され、その製造方法は次の2つの必須工程から成る。
1)病原性生体中の抗原を指定する遺伝子を選定する工程。
2)前記遺伝子を非病原性担体微生物中に挿入せしめ、前記病原性生体に対して抗体を誘導しうる遺伝子生成物またはその代謝生成物を産生するために、前記微生物が前記遺伝子を表現し、前記病原性生体に対してワクチンによる予防を必要とする脊椎動物にその遺伝子生物(担体微生物の存在下または不存在下で)を投与せしめる工程。
上記の両工程に引き続いて起る工程、例えば投与用微生物培養物の生成、抗原性遺伝子生成物の精製は本発明の要部ではなく、ワクチン最終形態に調整する常用技術工程である。本発明をより具体的に説明するために、後者の常用工程を実施せしめる方法を以下に記載する。本発明のワクチンは、病原体から誘導された遺伝子を表現できる担体微生物または無細胞無ウイルス形態の遺伝子生成物のいずれか一方を含む。投与方法としては、使用するワクチンの型に合せて自在に選定することが好ましい。担体微生物を含むワクチンは経口投与に適し、特にパイエル集腺の隔離が必要な場合に望ましい。服用量は担体微生物の組み換え遺伝子表現能力および抗原産生能力に依存して変るが、一般には102 〜107 微生物/mlの濃度で1〜10mlである。好ましい経口製剤は腸溶皮剤である。この製剤は接種された動物の腸内で溶解するが、胃内の酸や酵素に対して耐性である。米国特許明細書第3,241,520 号および同第3,253,944 号などに開示されているように、種々の腸溶皮型製剤が当業界において知られ、市販もされている。腸溶皮カプセルの製剤に適した方法が米国特許明細書第4,152,415 号に記載されているが、その方法は本発明の担体微生物を含有するカプセルの製剤用に容易に変形かのうである。必要な唯一の変形点は、生存微生物の過剰の乾燥を防ぐために抗原含有スラリーの水分を調節することである。所定の乾燥量は常用実験手法により簡単に測定できる。病原体から惹起された遺伝子生成物を含有する無細胞無ウイルスワクチンは上述のように経口的に投与してもよく、または非経口的に投与することもできる(例えば筋肉注射、皮下注射または静脈注射)。服用量は遺伝子生成物の抗原性により変化するが、既存ワクチンの代表的な免疫反応を誘発するのに十分な量であればよく、常用の実験手法により所定の服用量を簡単に設定できる。ワクチンの代表的な初期服用量は0.001 〜1mg/kg/体重であるが、所望の予防度合に応じて服用量を増加したり多重に服用すればよい。ワクチンが懸濁または溶解される医薬用担体は、接種された動物に対して無毒の、担体生体つまり抗原性遺伝子生成物に対して相溶性の溶剤または固体である。医薬用担体の好適例は、生理濃度またはその近傍濃度の通常の生理食塩水や無毒塩などの液体担体、タルクや庶糖などの固体担体である。必要に応じて、完全または不完全なフロインド補助薬などの補助薬を添加することにより遺伝子生成物の抗原性を向上させてもよい。ワクチンを気管支管を通して投与する場合、煙霧形状のワクチンが適する。以下に本発明の実施例を記載するが、この実施例はもとより例示を目的とし、本発明を限定するものではない。
実施例ストレプトコツカス・ムタンス属の菌株6715(血清型g、グアニン+シトシン含量45%)、菌株PS14およびGS−5(血清型c、グアニン+シトシン含量35%)からのDNAを適切なエシエリヒア・コリK−12の菌株内に分枝を発生させた。ショットガン分枝発生実験により、ストレプトコツカス・ムタンス遺伝子がエシエリヒア・コリ内で表現されたかどうか、もし表現されたならば、その遺伝子がエシエリヒア・コリ遺伝子の欠陥を補充したかどうかを測定した。ストレプトコツカス・ムタンス細胞をムタノリシン酵素で処理した後、細菌を硫酸ドデシルナトリウム洗浄剤で洗浄することにより、ストレプトコツカス・ムタンス菌株UAB50、UAB90、UAB308からDNAを単離した。エタノール沈澱によりDNAを回収し、EcoRI、HindIII 、BamHI、PstIなどの多種の制限内部核酸分解酵素により制限し、同族酵素によりpBR322またはpACYC184ベクトル片焼還に用いた。ポリヌクレオチド結合酵素(またはDNAリガーゼ)を添加して組み換え分子を形成し、HB101、χ1274、χ1849などの適切なエシエリヒア・コリK−12菌株を塩化カルシウム冷電撃法により転換した。その他の実験において、DNAをコスミドベクトルpJC74に結禁し、組み換えコスミドDNAを熱誘導ラムダプロフアージλcI857に対して溶原性のHB101などの適切なエシリヒア・コリK−12菌株内に導入せしめるための成分とともに、生体内包装法を介して組み換え分子を包装することにより組み換え分子を形成した。分枝ベクトルが適切な耐薬品遺伝子を担持した抗生物質に対する抵抗用としての転換剤つまり人工感染分枝を選定した。多種の突然変異エシエリヒア・コリ菌株を用いて試験した結果、プリン、ピリミジンおよびアミノ酸生合成ならびに炭水化物用に被験したエシエリヒア・コリの遺伝子欠陥の約40%をストレプトコツカス・ムタンスの遺伝子情報により補充可能であることが判明した。ストレプトコツカス・ムタンスDNAの存在をサウザン(Southern)吸取分析より確認した。一定の機能を欠いたエシエリヒア・コリの削減突然変異体は、所望補体の光学量が付与された場合と同様に、複転写遺伝子副体pBR322およびpACYC184〔ベゼスダ・リサーチ・ラボラトリー(Bethesda Research Laboratory)から入手可能)〕に分枝発生されたストレプトコツカス・ムタンス遺伝子情報により急速に成長することがある。一般に、大部分のストレプトコツカス・ムタンス遺伝子は構成的に表現され、終局体による抑圧を受けることなく適切な基体により誘発可能であった。一つの例外はガラクトース用ストレプトコツカス・ムタンスの4〜5個の遺伝子の複合体であった。これらの遺伝子は配位的に調整され、ストレプトコツカス・ムタンス内における場合と全く同じ手法によりエシエリヒア・コリ内で適度に誘発された。その結果、上記試験に基づく仮説に対してある一定の自己調整が行われることが判明した。糖の転移および付燐酸反応に必要でかつストレプトコツカス・ムタンスの細胞質膜と連合すると思われるストレプトコツカス・ムタンスの遺伝子生成物は、エシエリヒア・コリ内で実質的に同じように機能する。ストレプトコツカス・ムタンスの細胞面に通常存在するかまたは成長媒体中に排出されるストレプトコツカス・ムタンスの遺伝子生成物はエシエリヒア・コリの細胞質膜を通して転移され、外質空間中に終止した。細胞質からの種々の外質蛋白質を外質内に転移する際に欠陥のあるエシエリヒア・コリperAの突然変異体は、ストレプトコツカス・ムタンスのある種の細胞面遺伝子生成物をエシエリヒア・コリの外質空間内に転移させた。エシエリヒア・コリ内でのストレプトコツカス・ムタンス遺伝子の分枝発生は、ストレプトコツカス・ムタンスの歯面隔離能力に寄与しうる遺伝子を同定することによって達成せしめた。グルコシルトランスフェラーゼはスクロースを開裂してフラクトースを産生する一方で、グルコースを重合してグルカンに転換する。ストレプトコツカス・ムタンスは、α1→6結合を有する水溶性グルカンと、分子形成されかつα1→6結合に加えてα1→3結合を有する水不溶グルカンの両グルカン類を合成する。ストレプトコツカス・ムタンスPS14およびGS−5からのグルコシルトランスフェラーゼ用遺伝子をエシエリヒア・コリ中に分子発生させた。pYA601(PS14からの)およびpYA619(GS−5からの)の中のその遺伝子は、水溶性グルカンを合成する酵素を指定しうる1730bpDNA断片に含有されている。分子量55,000のグルコシルトランスフェラーゼは変形されることなくエシエリヒア・コリ外質中に転移される。ここでグルコシルトランスフェラーゼはスクロース(エシエリヒア・コリの外質内に入りうる)を開裂し、成長用として使用されるフラクトースを遊離させてグルカンを合成する。前述のように、精製グリコシルトランスフェラーゼは、ストレプトコツカス・ムタンスにより誘発された虫歯に抗して予防免疫を呈した。酵素活性を有さない細胞面連合蛋白質用の多種のストレプトコツカス・ムタンス遺伝子を確実に分枝発生させるために、免疫学予検法を使用した。この方法の実施に当り、ストレプトコツカス・ムンタス6715の硫酸アンモニウム沈澱細胞外蛋白質に対する抗体を育成した。pJC74コスミド分枝発生方法を用いて、λcI857感熱プロファージに対して溶原性のエシエリヒア・コリ菌株内に遺伝子分子を挿入した。この分子発生方法は「プナス(PNAS)」,75、4242(1978)に記載されている。30℃で成長された細胞集落中で溶原性細胞を37℃に昇温して誘導させると、その細胞は崩壊した。当該細胞がエシエリヒア・コリの外表面に転移される代りに細胞質に局在したとしても、抗原の遊離を招来した。この方法を使用し、かつストレプトコツカス・ムタンスの細胞外蛋白質に対する抗体と交叉反応する抗原を含んだ細胞集落の周辺にプレシヒ・チン帯を形成させれば、ストレプトコツカス・ムタンスの細胞面連合蛋白質抗原を表現する数多くの分枝系を同定することができた。これらの分枝系を確認番号pYA701ないしpYA721として同定した。特に興味ある分枝系はpYA721であった。pYA721分枝系は、当初ストレプトコツカス・ムタンスDNAの5.5Mdal 断片により指定された210k蛋白質を特定するものである。この蛋白質抗原は、ストレプトコツカス・ムタンスのすべての血清型において蛋白質抗原と交叉反応する。ただし、原則的に噛歯類動物の細胞を集落し、人には適用されることのないストレプトコツカス・ムタンスの1群(正しくはストレプトコツカス・フェラスとして知られている)である血清型bは除外する。ストレプトコツカス・ムタンスの血清型gから得た210k蛋白質は、ストレプトコツカス・ムタンス菌株イングブリット(Ingbritt)の血清型cから精製した210k蛋白質の赤毛猿への注射によってストレプトコツカス・ムタンス誘発の虫歯を予防しうることを見い出したラッセル(Russell) の抗原I/II (図2)に免疫学的に関連していることに注目すべきである〔「イムノロジー(Immunology) ,40、97(1980)〕。ノトバイオート ラットの下顎領域をストレプトコツカス・ムタンスの致死細胞で免疫化すると、ストレプトコツカス・ムタンスに抗する唾液凝集体が誘引される。この凝集体はIgAの類に属する。この免疫法は、病原性ストレプトコツカス・ムタンス菌株によるその後の攻撃を予防した。つまり、非免疫対象ラット群に比較し、免疫ラット群における平均虫歯評点が著しく低下した。引き続いて実験した結果、ストレプトコツカス・ムタンスの致死細胞の摂取はストレプトコツカス・ムタンスに抗して唾液分泌物IgAを同様に刺激し、さらにラットが抗原性ストラプトコツカス・ムタンス菌株に攻撃されたとき、予防的免疫を付与しうることが判明した。これらの結果を臨床実験で確認した。臨床実験において、ストレプトコツカス・ムタンスの致死菌株を経口摂取したところ、涙およびサルビア中にIgAを産生した。この場合の抗体はストレプトコツカス・ムタンスのワクチン菌株に抗して特異なものであった。血清凝集体の増加は皆無に等しく、人心反応性抗体を刺激しないことが上記の実験から判明した。エシエヒリア・コリ内で表現され、集中的に研究されてきたストレプトコツカス・ムタンスの2つの遺伝子生成物はエス・ピー・エー・エー(spaA)蛋白質とグルコシルトランスフェラーゼである。グルコシルトランスフェラーゼはそのスクロース加水分解による還元糖の遊離能力により評価分析することができ、ソモギイ試薬を使い、520mm の反応を行った。この評価分析は抽出物およびトルエン化細胞について使用可能である。非変質ポリアクリルアミド ゲル中の酵素活性は、そのゲルを0.1 Mスクロース(0.2 M緩衝剤中、pH7.0 )に1〜2時間浸漬し、次いで暗所でトリフェニールテトラゾリウムクロライドのアルカリ溶液で処理し、還元糖生成活性を含む帯体を同定することにより測定できる。グルカン合成用のグルコシルトランスフェラーゼを評価分析するに当り、均一に札付けした放射性スクロースを使用してもよいが、この方法は高価で煩雑である。放射性免疫分析用として、エシエリヒア・コリにより産生されたグルコシルトランスフェラーゼに対する家兎の単固有抗体および単分枝抗体を使用することができ、また細胞面上にグルコシルトランスフェラーゼを有する細菌細胞を同定するに際し、フルオレンジまたはローダミンイソシアネートで札付けした抗体を用いることが可能である。精製の点から判断すると、グルコシルトランスフェラーゼは33%硫酸アンモニウムに可溶な55k蛋白質(図3)である。かくして、硫酸アンモニウム沈澱により細胞抽出物から多種のエシエリヒア・コリ蛋白質を取り出すことができる。その後、これらの蛋白質をジメチルアミノエチルセルロース〔デー・イー52(DE52),ホワットマン・リミテッド(Whatman Ltd.)〕,ウルトロゲル・エー・シー・エー54(Ultrogel AcA54)およびウルトロゲル・エー・シー・エー44(Ultrogel AcA44)(LKB) の組み合せによるクロマトグラフィーに、アミコン(Amicon)膜による限外濾過の貯槽濃度で通して均質なグルコシルトランスフェラーゼを調製した。他の蛋白質帯が放射性札付および放射性自己皮膚描画法、エス・デー・エス(SDS)ポリアクリルアシダオ ゲルのコマッシー(Commassie) 青着色法のいずれの方法からも検出できないことからして、蛋白質汚染物は数パーセント以下である。この方法を使用すれば、約50%のグルコシルトランスフェラーゼを回収することができ、またピー・ワイ・エー601(pYA601)遺伝子副体を含有するエシエリヒア・コリ細胞の培養物1lから10〜15mgのグルコシルトランスフェラーゼを得ることができる。グルコシルトランスフェラーゼはエシエリヒア・コリχ1849内で合成される。グルコースまたはラフィノース上で、イソプロピル−チオ−β−ガラクトピラノシドとともに成長するエシエリヒア・コリ細胞は、グルコシルトランスフェラーゼ分子とβ−ラクタマーゼ分子の双方をそれぞれ約50%産生する。βーラクタマーゼ分子はまたピー・ビー・アール322(pMR322)分枝発生ベクトル上に指定される。グルコシルトランスフェラーゼ用の遺伝子は1360と370bp (図4)の2つのヒンドIII(HindIII)断片に張架し、大型断片がRNAポリメラーゼ結合部位を有する(両断片ともバム・エッチ・アイ(BamHI) 断片内で分枝発生されている)。一方の断片が促進−停止制御序列のために100bp を控除すれば、両ヒンドIII(HindIII)断片はわずかに55〜58k の分子量の蛋白質を特定することになる。spaA蛋白質はその大きさに応じて数工程により精製可能である。その蛋白質をストレプトコツカス・ムンタスから精製するとき、無細胞培養上澄液を限外濾過により初期容量の5%まで濃縮せしめ、スクロースを10%(w/v)の濃度で添加し、次いでその画分を37℃で2時間培養する。すべてのグルコシルトランスフェラーゼ酵素と、デキストランに結合されまたはスクロース親和性を有する他の蛋白質とが一体になって複合体を形成する。この複合体を低速遠心分離により除去する。次いで、その上澄液をウルトロゲル・エー・シー・エー44(Ultrogel AcA44)とウルトロゲル・エー・シー・エー34(Ultrogel AcA34)に連続的に通過させ、最終的にジエチルアミノエチルセルロースのクラマトグラフィーに通した後、均質な蛋白質を得る。エシエリヒア・コア中の210kエス・ピー・エー・エー(spaA)蛋白質を冷間浸透圧電撃によりその外質液から精製せしめることができる。エシエリヒア・コリ外質にはこの大きさの蛋白質がほとんど存在しないため、ジエチルアミノエチルセルロースによるイオン交換クロマトグラフィー、それに引き続くウルトロゲル・エー・シー・エー34(Ultrogel AcA34)によるゲル濾過クロマトグラフィーを介して210kエス・ピー・エー・エー(spaA)蛋白質の均質な製剤を得ることができる。エス・ピー・エー・エー(spaA)蛋白質は免疫学法的に評価分析される。ストレプトコツカス・ムタンスおよびエシエリヒア・コリの両属菌株から産生されたspaA蛋白質に対する家兎の単固有抗体を得た。寒天二重拡散(図5)およびロケツト電気泳動の両方法を用いて、エシエリヒア・コア外質(80%以上)体エシエリヒア・コリ細胞質中のエス・ピー・エー・エー(spaA)蛋白質量を測定するために、上記の単固有抗体を使用した。さらに、この抗体をローダミンイソシアネートによりspaA蛋白質に抗して抱合させ、細胞表面上にエス・ピー・エー・エー(spaA)蛋白質を有する連鎖球菌細胞を選別した。この螢光抗体を用いれば、細胞表面上にエス・ピー・エー・エー(spaA)蛋白質を表現するエシエリヒア・コリ菌株を同定することができる。次の遺伝子組み換え仲介物を作成した。
pYA727の作成pYA727は、pYA721から複分枝されたSpaA蛋白質の生成を指定するサルモネラ・ムタンスDNAの断片8・35kbを含む。このDNA断片はプラスミド分枝仲介物pACYC184の中に含まれているものであるが、その配向は遺伝子組み換えプラスミドpYA726中のサルモネラ・ムタンスDNAと同じ8・35kbの配向とは逆である。双方の収率はSpaA蛋白質に匹敵する。上記の両プラスミドは、エシエリヒア・コリまたはサルモネラ・ネズミチフスの菌株中に存在している。サルモネラ菌株中に導入したときの安定性は、pYA727プラスミドの方がpYA726より優れると思われる。
病原性サルモネラ菌株の誘導体の作成アラバマ大学微生物工学部のウイリアム・ベンジヤミンから入手した毒性サルモネラ・ネズミチフス菌株SR−11を誘導し、x3115とx3137を得た(表*1*)。テトラサイクリンに対する耐性を有するトランスポゾンTn10を用いたトランスポゾン突然変異と、フザリン酸耐性の選択中におけるTn10および隣接する遺伝子組み換え物質の抹殺は、標準法に準じた(R.Davisほか、「Advanced Bacterial Genetics」1979)。x3115はアムピシリン抵抗を選択するpYA601 DNAにより、次いでクロラムフェニコール抵抗を選択するpYA727 DNAにより変換させた。グリコシルトランスフェラーゼAの合成を特定するプラスミドpYA601と、表面蛋白抗原A(例えばSpaA蛋白質)の合成を特定するpYA727がそれぞれ異なった抗体抵抗を特定し、同一微生物細胞中で相互に実施することができる。その理由は、初期分枝仲介物のpBR322とpACYC184とが互換性を有して、同一微生物細胞中で単独で実施できるからである。サルモネラ・ネズミチフ菌x3137の生成は、x3115から二段法で行い(表I)、代謝物を追加的に導入することでthyA遺伝子を抹殺してチミジンを付加した。次いで、クロラムフエニコール抵抗を選択して、pYA727によりx3137を変換した。x3245には、「Nature」29、238(1981)に記載されているように、サルモネラ・ネズミチフス菌SL1344を無毒とし、保護免疫を誘発するものとして、△arcA554 代謝物を含んでいる。アムピリシン抵抗とクロラムフェニコール抵抗とを選択することで、χ3245をpYA601とpYA727 で変換した。
表I:本発明の担体菌株の遺伝子特徴と遺伝子工学χ3041 サルモネラ・ネズミチフス菌SR-11asd遺伝子の近傍のzge位置にTn10を含むχ3011上で生長したP22によりTcrに導入χ3105 同上SR-11 、zge、Tn10フザル酸抵抗の選択によりTn10と近傍のasd遺伝子の抹殺χ3115 同上SR-11 、ΔasdA3Tn10を含み、thyA遺伝子に挿入されたχ3001上で生長したP22によりTcrに導入χ3134 同上SR-11 、asdA3 、thyA、Tn10フザル酸抵抗の選択によりTn10とthyA遺伝子部分の抹殺χ3137 同上SR-11 、△asdA3 、△thyA42χ3245 同上SL3261、△arcA554 、hisG46χ3175 サルモネラ・チフス菌Ty21a、galE 表II 菌株/プラスミド ATCC No. 寄託年月日エシエリヒア・コリχ1274 (pYA619) 31984 10/21/81 〃 HB101 (pYA726) 31985 10/21/81 〃 χ1274 (pYA601) 31986 10/21/81ストレプトコッカス・ムタンス UAB90 31987 10/21/81 〃 UAB50 31988 10/21/81 〃 UAB308 31989 10/21/81サルモネラ・ネブミチフス菌 χ3115 (pYA601/ pYA727) 39961 12/21/84 〃 χ3137 (pYA727) 39962 12/21/84 〃 χ3245 (pYA601 pYA727) 39963 12/21/84サルモネラ・チフス菌χ3175 (pYA727) 39964 12/21/84 χ3175はサルモネラ・チフス菌Ty21Aである。この菌株は「J.InfectionsDiseases 」,131,553(1975) と米国特許明細書第3,856,935 号に開示されており、菌株の試料はウォルター・リード陸軍研究所のルイス・バロンから得た。クロラムフェニコール抵抗を選択することにより、その菌をpYA727プラスミドで変換した。χ3315とχ3137における△asdA3の代謝は、ジアミノピメリン酸(DAP)を欠く寒天上で1010の微生物を培養しても、Asdに復元しない。同様に、χ3137の△thyA42の代謝、χ3245の△aroA554の代謝は、それぞれチミジン、芳香族アミノ酸、ビタミンを欠く寒天上で1010微生物を培養しても復元しない。χ3115、χ3137、χ3245、χ3175はいずれも相当量のサルモネラ・ムタンスspaA蛋白質を産生する一方、χ3115とχ3245はサルモネラ・ムタンスにより特定されたグルコシルトラスフェラーゼAの蛋白質を相当量産生する。サルモネラ・ネズミチフス菌株のχ3115、χ3127、χ3245は、経口投与または胃挿管法によりマウスに導入する場合、プラスミドpYA601やpYA727の有無に関係なく無毒である。つまり、マウスは経口投与で107 〜108 の細菌に抗して生存し、病原性サルモネラ・ネズミチフス菌といった野性型菌株の無毒誘導体に対して悪影響を示さなかった。有毒性サルモネラ・ネズミチフス菌SR−11(χ3041) を用いた対照は、経口または胃挿管で105 で死亡率100 %を呈した。サルモネラ・ムタンス蛋白質を表現する遺伝子組み換えプラスミドの補体を有するχ3115、χ3137、χ3245は局部的にGALTとなり、パイエル集腺の外科切開により回収可能である。pYA601とpYA727を有するχ3245で免疫化されたマウスは、数週間後に有毒性サルモネラ・ネズミチフス菌SR−11に挑戦しても、十分に保護することができた。さらに、pYA727中で指定されたサルモネラ・ネズミチフス菌表面抗体とサルモネラ・ムタンス特定spaA蛋白質に抗しての分泌IgA抗体が、免疫化されたマウスノ耳下腺に検出された。確認試験として、χ3115、χ3137、χ3245のナリデキシ酸抵抗性の誘導体を調べた。この酸抵抗は、各菌株へのファージp22の中介変換によって、gyzA1816を導入することで比較した。このようにマーカーを付せば、感染後のサルモネラ誘導体を選択的に回収でき、実験結果の分析を促進することになる。gyzA1816マーカーを使用すれば、上記誘導体を担体細菌として作用させる必要はない。χ3115Nalr、χ3137Nalr、χ3245Nalrを、胃挿管法によりマウスに投与し、1時間後にパイエル集腺(GALT)の微生物を回収した。24時間後、これらの無毒サルモネラ誘導体を5倍に増量し、パイエル集腺で検出した。上記三種の細胞の1回当りの服用量109 でマウスを免疫化した後の15日、8日、15日目の、サルモネラ抗原とサルモネラ・ムタンス遺伝子組み換え生成物に抗してのマウス血清中のピーク力価から抗体反応を調べた。耳下腺の分泌IgAに関し、サルモネラ・ムタンス表面蛋白質の抗原を表現する上記三種の無毒サルモネラ誘導体で免疫化したマウスについて、サルモネラ抗原とサルモネラ・ムタンス抗原の両者に対して免疫後22日目でピーク力価が検出された。他の実験では、サルモネラ・ムタンス抗原を表現する無毒サルモネラ・ネズミチフス菌株をマウスに3日連続して投与した。サルモネラ抗原とサルモネラ・ムタンス抗原に対する血清抗体の力価は、免疫後30日目でピークに達し、分泌IgA抗体も免疫後30日目でピークを示した。結果を表III 〜Vに示す。血清、分泌抗体力価はELISAで測定した。サルモネラ・ネズミチフス菌LT2、サルモネラ・ムタンス6715(ステレオタイプg)、サルモネラ・ムタンスMT8148(ステレオタイプC)の超音波処理物を被覆した。前述した通り、spaA遺伝子はステレオタイプgに由来し、この蛋白質の蛋白質抗体はタイプc等のすべてのステレオタイプ交叉反応可能なものである。一方、atfA遺伝子はセロタイプcに由来し、GtfAの抗体はセロタイプgに由来する遺伝子生成物とは反応しない。1日当り1回または3回ずつ109 の細菌を、マウスに胃挿管法により投与した。サルモネラ・ムタンスspaA蛋白の合成を表現する無毒のサルモネラ・チフス菌誘導体χ3175は、マウスに対する病原体ではないため、マウスによる比較試験を省いた。ボランティアの被験者に対して試験を行った。その結果、サルモネラ・ネズミチフス菌は人体に経口投与しても無毒であり、十分な免疫を呈することが判明した。
表III BALB/cマウスにおける血清、耳下腺抗体反応 挑戦 血清(1/100) 耳下腺(1/10) 回数 回数 LT2 6715 MT8148 LT2 6715 MT8148 8 0.34 0.17 0.82 <0.1 <0.1 <0.1 0.14 0.15 0.65 <0.1 <0.1 <0.1 1 15 0.93 0.28 1.56 <0.1 <0.1 <0.1 1.09 1.20 2.18 0.11 <0.1 <0.1 22 0.60 0.14 0.80 0.22 0.15 0.13 0.38 0.16 0.96 0.16 0.11 <0.1 16 1.03 0.18 0.66 0.19 0.15 <0.1 2.04 0.19 0.71 0.17 0.11 <0.1 3 23 1.31 0.18 1.01 0.14 0.16 0.32 1.05 0.15 0.98 0.21 0.12 0.28 30 1.56 0.17 0.99 1.05 0.35 0.87 1.98 0.19 1.22 0.97 0.41 0.93 表IV BALB/cマウスにおける血清、耳下腺抗体反応 挑戦 抗Ig血清(1/100) 耳下腺(1/10) 回数 回数 LT2 6715 MT8148 LT2 6715 MT8148 8 1.11 0.26 0.41 <0.1 <0.1 <0.1 0.93 0.19 0.21 0.23 <0.1 <0.1 1 15 0.81 0.21 0.44 0.21 <0.1 <0.1 0.21 0.17 0.49 <0.1 <0.1 <0.1 22 0.15 0.17 0.29 2.05 0.45 1.10 0.20 0.28 0.42 0.21 0.16 0.15 16 0.46 0.12 0.32 0.13 <0.1 0.11 0.19 0.20 0.21 0.12 <0.1 <0.1 3 23 0.35 0.20 0.41 0.13 <0.1 <0.1 0.31 0.15 0.39 0.12 <0.1 <0.1 30 2.05 0.16 0.65 0.65 0.32 0.58 1.56 0.19 0.70 0.76 0.18 0.72 表V BALB/cマウスにおける血清、耳下腺抗体反応 挑戦 血清(1/100) 耳下腺(1/10) 回数 回数 LT2 6715 MT8148 LT2 6715 MT8148 8 0.25 0.12 0.80 <0.1 <0.1 0.12 0.29 0.13 1.85 <0.1 <0.1 0.09 1 15 1.66 0.20 2.14 <0.1 <0.1 <0.1 0.65 0.45 0.95 <0.1 <0.1 <0.1 22 0.79 0.48 1.15 0.13 <0.1 <0.1 2.18 0.39 1.22 0.12 <0.1 <0.1 16 0.68 0.11 0.57 0.12 <0.1 <0.1 0.34 0.11 0.58 0.15 0.15 <0.1 3 23 0.58 0.14 0.98 0.35 <0.1 <0.1 0.64 0.10 <0.1 30 0.87 0.24 0.98 0.22 0.19 0.21 0.92 0.51 1.32 0.75 0.45 0.81
【図面の簡単な説明】
【図1】精製spaA蛋白質の抗血清とストレプトコツカス・ムタンス菌株の血清型a,c,e,f,g,dの濃縮培養上澄液との反応に関するオウチャターロニイー(Ouchterlony) 分析を示す図。
【図2】精製spaA蛋白質の抗血清と、精製spaA蛋白質によるストレプトコツカス・ムタンス血清型c抗原I/II、つまりspaA蛋白質を産生するエシエリヒア・コリχ1274(pYA722)の抽出物および分枝発生ベクトル(pACY184)を含むエシエリヒア・コリχ1274の抽出物のオウチャターロニイー分析を示す図。
【図3】55k蛋白質がグルコシルトランスフェラーゼでありかつβ−ラクタマーゼである場合の(1) χ1849(pBR322),(2)χ1849,(3)χ1849(pYA601)から得られた単細胞中で合成された放射性札付き蛋白質を示す図。
【図4】ストレプトコツカス・ムタンスDNA挿入物を長さ1360,370bpの2つのHindIII 制御断片で構成したpYA601の物理地図を示す図。
【図5】エシエリヒア・コリHB101(pYA721) の外質(B) および細胞質(C) に存在するspaA蛋白質であり、(A) が耐spaA血清を含むオウチャターロニー分析を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 脊椎動物の体内において、病原体に抗して免疫反応を誘起することのできる抗原を産生するために、前記脊椎動物の前記病原体から誘導された組み換え遺伝子を表現する非病原性微生物からなる脊椎動物免疫用ワクチン。
【請求項2】 前記微生物が前記脊椎動物のリンパ上皮組織を誘導する種族に属する請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】 前記微生物が細菌である請求項2に記載のワクチン。
【請求項4】 前記遺伝子が前記病原体の表面抗原を指定する請求項1に記載のワクチン。
【請求項5】 前記遺伝子が前記病原体の酵素を指定する請求項1に記載のワクチン。
【請求項6】 前記微生物がサルモネラ族またはエシエリヒア族の細菌あるいはサルモネラ−エシエリヒア族の雑種に族する細菌である請求項1に記載のワクチン。
【請求項7】 前記細菌がエシエリヒア・コリRDEC−1またはエシエリヒア・コリ−K12である請求項6に記載のワクチン。
【請求項8】 前記病原体がエシエリヒア・コリ、ビブリオ・コレラ、シゲラ・プソイドモナス・アエルギノサ、ナイセリア・ゴノリア、グラミデア・トラコマテスおよびストレプトコツカス・ムタンスからなる群から選ばれた1種の細菌である請求項1に記載のワクチン。
【請求項9】 前記微生物がストレプトコツカス・ムタンスであり、前記微生物がエシエリヒア・コリ属の細菌、サルモネラ属の細菌およびサルモネラ−エシエリヒア属の雑種群から選ばれた請求項1または2に記載のワクチン。
【請求項10】 前記遺伝子が表面抗原であるグルコシルトランスフェラーゼ酵素を指定する請求項9に記載のワクチン。
【請求項11】 脊椎動物のアルゲン脱感用ワクチンにおいて、脊椎動物のアルゲンを産生する第1生体から誘導された遺伝子の抗原性遺伝子生成物からなり、前記遺伝子が前記遺伝子生成物を産生する第2生体内で表現され、かつ前記遺伝子生成物が前記脊椎動物のアレルゲンである脊椎動物のアレルゲン脱感用ワクチン。
【請求項12】 病原体に対する脊椎動物免疫用ワクチンの製造方法において、病原性生体中の抗原を指定する遺伝子を選択する工程と、前記遺伝子を担体微生物中に挿入する工程からなり、前記遺伝子生成物を前記脊椎動物に投与せしめる際、前記病原性生体またはその病原性生体の代謝物に対して抗体を誘発できる遺伝子生成物を産生するために、前記微生物が前記遺伝子を表現するワクチンの製造方法。
【請求項13】 前記微生物が細菌である請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】 前記細菌が前記脊椎動物のリンパ上皮組織を誘導する種族に属する請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】 前記遺伝子が前記病原体の表面抗原である酵素を指定する請求項12に記載の製造方法。
【請求項16】 前記細菌がサルモネラ属の細菌、エシエリヒア属の細菌およびサルモネラ−エシエリヒア属の雑種の群から選ばれた請求項12に記載の製造方法。
【請求項17】 前記病原性生体がストレプトコツカス・ムタンスである請求項12または16に記載の製造方法。
【請求項18】 前記ワクチンが前記担体微生物の不存下で前記遺伝子生成物からなる請求項12に記載の製造方法。
【請求項19】 前記担体微生物が非病原性である請求項12に記載の製造方法。
【請求項20】 前記ワクチンが前記遺伝子生成物と前記担体微生物からなる請求項12または19に記載の製造方法。
【請求項21】 前記遺伝子を前記担体微生物中に挿入させる前に遺伝子副体中に挿入せしめる請求項12に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平6−165688
【公開日】平成6年(1994)6月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−144230
【分割の表示】特願昭57−185912の分割
【出願日】昭和57年(1982)10月22日
【出願人】(593114588)リサーチ・コーポレイション (2)