説明

抗原提示細胞の機能の調節による免疫応答の制御

本発明は、抗原提示細胞の機能を調節するシャペロニン10の使用に関する。より詳細には、本発明は、HLAなどのMHC分子の細胞表面発現の調節に属する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に抗原提示細胞(APC)の機能の調節による免疫応答の制御に関する。特に、本発明は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、例えば、HLAの細胞表面発現などのAPC機能の調節におけるシャペロニン10の使用、ならびに、疾患を処置するための関連方法、使用および組成物、ならびに、APC機能の修飾因子をスクリーニングするためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
細菌およびウイルスの病原体の侵入に対する宿主防御システムの中心的要素は、免疫系の刺激を引き起こすシグナル伝達カスケードを誘導する細胞レセプターによる病原体またはその構成要素の認識の成功を伴う。この系に必須の局面は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)−ペプチド複合体のT細胞認識である。
【0003】
CD4T細胞は、病原体由来ペプチドがMHCクラスII分子(最初に小胞体において構築されるα鎖およびβ鎖から構成される)とともに提示されるとき、そのようなペプチドを認識することができる。これらのα鎖およびβ鎖は、ペプチド結合溝を保護し、エンドソーム区画へのMHCクラスII分子の輸送を促進するインバリアント鎖(Ii)と会合する。そのエンドソーム区画において、Iiは除去され、結合溝にペプチド(CLIP)が残される。シャペロン分子HLA−DMは、CLIPと抗原ペプチドとの置換を促進する。次いで、抗原ペプチドを有する成熟MHCクラスII分子は、細胞表面に移動し、それらをCD4T細胞に提示することができる。
【0004】
この抗原のプロセシングおよび成熟MHCクラスII分子の提示のシステムは、ナイーブT細胞を刺激することができ、かつ、主要な免疫応答を誘導することができる唯一のAPCである樹状細胞(DC)において生じる。従って、DCは、抗原提示および適応免疫の誘導において中心的役割を果たす。DCが免疫応答を誘導する能力は、その成熟状態に左右される。未成熟DCは、末梢において、細胞表面捕捉抗原上でMHCおよびT細胞共刺激分子(例えば、CD40、CD80、CD83およびCD86)を低レベルで発現していると考えられている。そして、それらは、二次リンパ組織に移動し、成熟プロセスを受ける。成熟すると、MHC分子は、細胞内の区画から細胞表面に再分配され、抗原を提示する能力が上昇する。同時に、T細胞の活性化を増強する共刺激分子の表面発現がアップレギュレートされる。DCによって分泌されるサイトカインのプロファイルもまた、その成熟状態に左右される。成熟DCによって産生されるサイトカインとしては、IL−12、IL−1α/β、IL−18、IFN−α/β、IL−6、TNF−α、IL−10およびTGF−βが挙げられる。DCサイトカインプロファイルは、免疫応答のTh1/Th2の成果を最終的に決定する。つまり、DCによるIL−12の分泌を誘導する抗原は、Th1分化を誘導するのに対し、IL−12産生を誘導しない抗原は、Th2分化を促進する。
【0005】
DCの成熟に関する制御プロセスの多くは、不明なままである。特に、MHCクラスII分子が、未成熟DCとしてエンドソーム構造体に存在する段階から成熟DCとして原形質膜に存在する段階へと局在が変化するときに関連する分子シグナル伝達経路の多くは、不確かなままである。
【0006】
シャペロニン10(Cpn10)は、タンパク質のフォールディングにおいて必須の役割を果たす、高度に保存されたミトコンドリアのシャペロンである。Cpn10はまた、多くの免疫調節性活性、例えば、インビトロとインビボの両方における、核因子κB(NF−κB)活性化の阻害および炎症誘発性サイトカインの産生に関連することが示されている。本発明は、MHC分子の細胞内の区画からDCの細胞表面への再分配およびT細胞のAPC媒介性の活性化をはじめとしたAPC機能を調節する能力をCpn10が有するという、驚くべき予想外の知見に基づくものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の局面によれば、少なくとも1つのMHC分子の細胞表面発現のレベルを調節することによって、被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において免疫応答を調節するための方法が提供され、前記方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0008】
上記方法は、少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節することによって被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において免疫応答を調節する工程をさらに含み得る方法であり、この方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0009】
上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0010】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0011】
上記シャペロニン10は、天然由来のシャペロニン10、組換えで生成されたシャペロニン10または合成的に生成されたシャペロニン10であり得る。このシャペロニン10は、真核生物起源であり得る。このシャペロニン10は、哺乳動物起源であり得る。このシャペロニン10は、ヒトシャペロニン10であり得る。
【0012】
上記シャペロニン10は、配列表の配列番号:1、配列表の配列番号:2または配列表の配列番号:3に示されるようなポリペプチド配列を含み得る。このシャペロニン10は、アセチル化されていてもよいし、アセチル化されていなくてもよい。
【0013】
上記シャペロニン10は、シャペロニン10をコードするポリヌクレオチドの形態で投与され得る。このシャペロニン10をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結された遺伝的構築物内に位置し得る。このポリヌクレオチドは、配列表の配列番号:4に示されるような配列を含み得る。
【0014】
本発明の第2の局面によれば、少なくとも1つのMHC分子の細胞表面発現のレベルを調節することによって、被験体において疾患または状態を処置または予防するための方法が提供され、前記方法は、その被験体に有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0015】
上記方法は、少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節することによって、被験体において疾患または状態を処置または予防する工程さらに含み得る方法であり、この方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0016】
上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0017】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0018】
上記疾患または状態は、ウイルスまたは細菌の病原体による被験体の感染から生じ得るか、または別途それらと関連し得る。この疾患または状態は、癌、自己免疫障害、炎症、アレルギー、喘息または感染症であり得る。
【0019】
上記シャペロニン10は、天然由来のシャペロニン10、組換えで生成されたシャペロニン10または合成的に生成されたシャペロニン10であり得る。このシャペロニン10は、真核生物起源であり得る。このシャペロニン10は、ヒトシャペロニン10であり得る。
【0020】
上記シャペロニン10は、配列表の配列番号:1、配列表の配列番号:2または配列表の配列番号:3に示されるようなポリペプチド配列を含み得る。このシャペロニン10は、アセチル化されていてもよいし、アセチル化されていなくてもよい。
【0021】
上記シャペロニン10は、シャペロニン10をコードするポリヌクレオチドの形態で投与され得る。このシャペロニン10をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結された遺伝的構築物内に位置し得る。このポリヌクレオチドは、配列表の配列番号:4に示されるような配列を含み得る。
【0022】
本発明の第3の局面によれば、被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において、少なくとも1つのMHC分子の細胞表面発現のレベルを調節するための方法が提供され、前記方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0023】
上記方法は、被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節する工程をさらに含み得る方法であり、この方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0024】
上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0025】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0026】
本発明の第4の局面によれば、被験体またはその少なくとも1つの組織もしくは器官において、抗原提示細胞の機能を調節するための方法が提供され、前記方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0027】
上記抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0028】
上記機能は、リンパ節への移動、T細胞の活性化またはT細胞の増殖を含む群から選択され得る。
【0029】
本発明の第5の局面によれば、疾患または状態の処置または予防に使用されるときの組成物が提供され、前記組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤または補助剤とともにシャペロニン10を含み、このシャペロニン10は、少なくとも1つのMHC分子の細胞表面発現のレベルを調節する。
【0030】
上記シャペロニン10は、さらに、少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節し得る。上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0031】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0032】
本発明の第6の局面によれば、疾患または状態の処置または予防に使用されるときの組成物が提供され、前記組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤または補助剤とともにシャペロニン10を含み、このシャペロニン10は、被験体またはその少なくとも1つの組織もしくは器官において抗原提示細胞の機能を調節する。
【0033】
上記抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。上記機能は、リンパ節への移動、T細胞の活性化またはT細胞の増殖を含む群から選択され得る。
【0034】
本発明の第7の局面によれば、疾患または状態の処置または予防のための薬物を製造するためのシャペロニン10の使用が提供され、ここで、シャペロニン10は、少なくとも1つのMHC分子の細胞表面発現のレベルを調節する。
【0035】
上記シャペロニン10は、さらに、少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節し得る。
【0036】
上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0037】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0038】
本発明の第8の局面によれば、疾患または状態の処置または予防のための薬物を製造するためのシャペロニン10の使用が提供され、ここで、シャペロニン10は、被験体またはその少なくとも1つの組織もしくは器官において抗原提示細胞の機能を調節する。
【0039】
上記抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0040】
上記機能は、リンパ節への移動、T細胞の活性化またはT細胞の増殖を含む群から選択され得る。
【0041】
本発明の第9の局面によれば、被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において、1つあるいはそれ以上の免疫調節因子の細胞内での産生、局在性および/または細胞表面発現を調節するための方法が提供され、前記方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含み、シャペロニン10は、少なくとも1つのMHC分子または少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節する。
【0042】
上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0043】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0044】
本発明の第10の局面によれば、免疫応答を調節する化合物を同定するためのプロセスが提供され、前記プロセスは:
(a)Cpn10の存在下で、細胞または細胞抽出物を候補化合物と接触させる工程;および
(b)前記細胞の表面上での少なくとも1つのMHC分子の発現が、前記候補化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
を含む。
【0045】
上記プロセスは:
(c)前記細胞の表面上での少なくとも1つの他の細胞表面分子の発現が、前記候補化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
をさらに含み得る。
【0046】
上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0047】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0048】
本発明の第11の局面によれば、免疫応答を調節する化合物を同定する複数の化合物をスクリーニングするためのプロセスが提供され、前記プロセスは:
(a)Cpn10の存在下で、細胞または細胞抽出物を前記複数の化合物と接触させる工程;および
(b)前記細胞の表面上での少なくとも1つのMHC分子の発現が、前記複数の化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
を含む。
【0049】
上記プロセスは:
(c)前記細胞の表面上での少なくとも1つの他の細胞表面分子の発現が、前記複数の化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
をさらに含み得る。
【0050】
上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0051】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0052】
本発明の第12の局面によれば、被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において、少なくとも1つのMHC分子の細胞表面発現のレベルの調節を誘導するためのプロセスが提供され、前記プロセスは、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0053】
上記プロセスは、被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルの調節をさらに含み得るプロセスであり、このプロセスは、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0054】
上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0055】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0056】
本発明の第13の局面によれば、免疫応答を調節する化合物を同定するためのプロセスが提供され、前記プロセスは:
(a)Cpn10の存在下で、細胞または細胞抽出物を候補化合物と接触させる工程;および
(b)前記細胞のリンパ節への移動、または、T細胞の増殖を活性化する能力および/もしくは引き起こす能力が、前記候補化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
を含む。
【0057】
上記細胞は、抗原提示細胞であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0058】
本発明の第14の局面によれば、免疫応答を調節する化合物を同定する複数の化合物をスクリーニングするためのプロセスが提供され、前記プロセスは:
(a)Cpn10の存在下で、細胞または細胞抽出物を前記複数の化合物と接触させる工程;および
(b)前記細胞のリンパ節への移動、または、T細胞の増殖を活性化する能力および/もしくは引き起こす能力が、前記複数の化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
を含む。
【0059】
上記細胞は、抗原提示細胞であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0060】
本発明の第15の局面によれば、被験体またはその少なくとも1つの組織もしくは器官において、抗原提示細胞の機能を調節するためのプロセスが提供され、前記プロセスは、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0061】
上記抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0062】
上記機能は、リンパ節への移動またはT細胞の活性化を含む群から選択され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
(定義)
本明細書の文脈において、用語「含む(comprising)」とは、「必ずしも単独ではないが、もっぱら含む」を意味する。さらに、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの用語「含む(comprising)」の変化形は、同様に変化した意味を有する。
【0064】
本明細書中で使用されるとき、用語「処置」、「処置する」およびそれらの変化形は、疾患状態または症状を治療するか、疾患の定着を予防するか、または任意の方法で別途、疾患もしくは他の望ましくない症状の進行を予防、妨害、遅延もしくは逆転させる、任意およびすべての用法のことをいう。
【0065】
本明細書中で使用されるとき、用語「有効量」は、薬剤または化合物が所望の治療的作用または予防的作用をもたらすのに無毒性であるが十分な量の意味の中に入る。必要とされる正確な量は、処置される種、被験体の年齢および全般的な状態、処置される状態の重症度、投与される特定の薬剤ならびに投与様式などの因子に応じて被験体ごとに異なる。従って、正確な「有効量」を明記することはできない。しかしながら、所与の任意の場合について、適切な「有効量」は、単なる日常的な実験を使用して、当業者によって決定され得る。
【0066】
用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって互いに結合したアミノ酸から生成されたポリマーを意味する。用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書中で交換可能に使用されるが、本発明において、「ポリペプチド」は、完全長タンパク質の一部を構成し得る。
【0067】
用語「ポリヌクレオチド」とは、本明細書中で使用されるとき、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド塩基または公知のアナログもしくは天然のヌクレオチドあるいはそれらの混合物の一本鎖ポリマーまたは二本鎖ポリマーのことをいう。
【0068】
本明細書中で使用されるとき、用語「調節する(modulating)」、「調節する(modulates)」およびそれらの変化形は、本発明の特定の調節性の分子または薬剤の非存在下におけるある分子の活性、産生、分泌または他の機能のレベルと比べて、その調節性の分子または薬剤の存在下におけるその分子の活性、産生、分泌または機能のレベルを上昇または低下させることをいう。これらの用語は、上昇または低下の数量化を意味しない。この調節は、所望の結果をもたらすのに十分な任意の規模であり得、また、直接的であってもよいし、間接的であってもよい。
【0069】
用語「免疫調節因子」とは、本明細書中で使用されるとき、免疫応答の活性化、維持、成熟、阻害、抑制または増強において関与する分子介在物質(メディエーター)のこという。
【0070】
用語「MHC分子」とは、主要組織適合複合体の一部と複合体化しているか、その一部と会合しているか、またはその一部を形成している任意の分子のことをいう。ゆえに、「MHC分子」は、あらゆる記述のヒト白血球抗原(HLA)(例えば、HLA−DR(MHCクラスII)、MHCクラスI分子または非古典的MHC分子(例えば、CD1a、CD1bまたはCD1c)が挙げられるがこれらに限定されない)を含み得る。
【0071】
用語「他の細胞表面分子」とは、細胞表面上に発現している任意の分子のことをいい、共刺激分子を含んでもよいし、含まなくてもよい。用語「共刺激分子」とは、MHC分子が関与するシグナルの伝達に直接的または間接的に寄与することができる任意の分子のことをいう。
【0072】
本発明者らは、蛍光色素標識タンパク質を用いて、Cpn10が、抗原提示細胞、主に樹状細胞と強く相互作用することを示した。一連のTLRリガンドで刺激する前に骨髄性の樹状細胞(DC)またはPBMC由来の形質細胞様樹状細胞が特異的に枯渇していたというインビトロでの実験のデータから、Cpn10の存在下においてサイトカイン産生の動態がかなり変化することが示された。さらに、本発明者らは、Cpn10とともに成熟した単球由来DCが、HLA−DRおよび他の共刺激分子を細胞内の区画から細胞表面へ低下したレベルで再分配することを証明した。このMHCクラスII分子発現の下方調節および抗原提示能力の低下は、Cpn10の抗炎症性作用全体に寄与し得る。
【0073】
特に、DCの成熟に対するCpn10の作用を評価するために、本発明者らは、これまでに広く特徴づけされている単球由来DCを使用した(J.Exp.Med.1994;179:1109;Blood 2002;99:993;PNAS 1996;93:2588;Int.Immunol.2004;16:767)。単球由来未成熟DCは、CD14HLA−DRCD1a細胞である。それらは、LPSによる活性化において、HLA−DRをアップレギュレートし、T細胞に対する刺激性リガンドを細胞表面上に発現させる。本明細書中では、Cpn10が、インビトロにおいてDC成熟の程度を調節することを示す。
【0074】
そこで、本発明者らは、Cpn10が、細胞表面におけるHLA−DRのLPS誘導性発現をダウンレギュレートすることを示した。このHLA−DR発現の低下の結果、DCの成熟によるIFN−γ産生が低下し得る(J.Immunol 1989;143:3781に記載)。他方で、Cpn10誘導性のHLA−DRのダウンレギュレーションは、抗原を保持したMHCクラスII分子を細胞表面に輸送するエンドサイトーシス経路の効率の変化を反映し得る。しかしながら、本明細書中に示されるデータは、DC成熟の阻害ならびにDCおよびB細胞の抗原提示能力の低下が、自己免疫疾患の回復におけるCpn10の有望な作用様式であるという明らかな証拠をもたらす。
【0075】
従って、本発明は、少なくとも1つのMHC分子の細胞表面発現のレベルを調節することによって、被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において免疫応答を調節するための方法を提供し、ここで、前記方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0076】
上記方法は、少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節することによって、被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において免疫応答を調節する工程をさらに含み得る方法であり、この方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0077】
上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0078】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0079】
上記シャペロニン10は、天然由来のシャペロニン10、組換えで生成されたシャペロニン10または合成的に生成されたシャペロニン10であり得る。このシャペロニン10は、真核生物起源であり得る。このシャペロニン10は、哺乳動物起源であり得る。このシャペロニン10は、ヒトシャペロニン10であり得る。
【0080】
上記シャペロニン10は、配列表の配列番号:1、配列表の配列番号:2または配列表の配列番号:3に示されるようなポリペプチド配列を含み得る。このシャペロニン10は、アセチル化されていてもよいし、アセチル化されていなくてもよい。
【0081】
上記シャペロニン10は、シャペロニン10をコードするポリヌクレオチドの形態で投与され得る。このシャペロニン10をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結された遺伝的構築物内に位置し得る。このポリヌクレオチドは、配列表の配列番号:4に示されるような配列を含み得る。
【0082】
本発明はまた、MHC分子の少なくとも1つの細胞表面発現のレベルを調節することによって、被験体において疾患または状態を処置または予防するための方法を提供し、ここで、前記方法は、被験体に有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0083】
上記方法は、少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節することによって、被験体において疾患または状態を処置または予防する工程を含み得る方法であり、この方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0084】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0085】
上記疾患または状態は、ウイルスまたは細菌の病原体による被験体の感染から生じ得るか、または別途それらと関連し得る。この疾患または状態は、癌、自己免疫障害、炎症、アレルギー、喘息または感染症であり得る。
【0086】
上記シャペロニン10は、天然由来のシャペロニン10、組換えで生成されたシャペロニン10または合成的に生成されたシャペロニン10であり得る。このシャペロニン10は、真核生物起源であり得る。このシャペロニン10は、ヒトシャペロニン10であり得る。
【0087】
上記シャペロニン10は、配列表の配列番号:1、配列表の配列番号:2または配列表の配列番号:3に示されるようなポリペプチド配列を含み得る。このシャペロニン10は、アセチル化されていてもよいし、アセチル化されていなくてもよい。
【0088】
上記シャペロニン10は、シャペロニン10をコードするポリヌクレオチドの形態で投与され得る。シャペロニン10をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結された遺伝的構築物内に位置し得る。このポリヌクレオチドは、配列表の配列番号:4に示されるような配列を含み得る。
【0089】
本発明は、さらに、被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において少なくとも1つのMHC分子の細胞表面発現のレベルを調節するための方法を提供し、ここで、前記方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0090】
上記方法は、被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において、少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節する工程を含み得る方法であり、この方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0091】
上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0092】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0093】
本発明は、さらに、被験体またはその少なくとも1つの組織もしくは器官において、抗原提示細胞の機能を調節するための方法を提供し、ここで、前記方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0094】
上記抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0095】
上記機能は、リンパ節への移動、T細胞の活性化またはT細胞の増殖を含む群から選択され得る。
【0096】
本発明は、さらに、疾患または状態の処置または予防に使用されるときの組成物を提供し、ここで、前記組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤または補助剤とともにシャペロニン10を含み、このシャペロニン10は、少なくとも1つのMHC分子の細胞表面発現のレベルを調節する。
【0097】
上記シャペロニン10は、さらに、少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節し得る。
【0098】
上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0099】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0100】
本発明はまた、疾患または状態の処置または予防に使用されるときの組成物を提供し、ここで、前記組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤または補助剤とともにシャペロニン10を含み、このシャペロニン10は、被験体またはその少なくとも1つの組織もしくは器官において、抗原提示細胞の機能を調節する。
【0101】
上記抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0102】
上記機能は、リンパ節への移動、T細胞の活性化またはT細胞の増殖を含む群から選択され得る。
【0103】
本発明は、さらに、疾患または状態の処置または予防のための薬物を製造するためのシャペロニン10の使用を提供し、ここで、シャペロニン10は、少なくとも1つのMHC分子の細胞表面発現のレベルを調節する。
【0104】
上記シャペロニン10は、さらに、少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節し得る。
【0105】
上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0106】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0107】
本発明は、さらに、疾患または状態の処置または予防のための薬物を製造するためのシャペロニン10の使用を提供し、ここで、シャペロニン10は、被験体またはその少なくとも1つの組織もしくは器官において、抗原提示細胞の機能を調節する。
【0108】
上記抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0109】
上記機能は、リンパ節への移動、T細胞の活性化またはT細胞の増殖を含む群から選択され得る。
【0110】
本発明は、さらに、被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において、1つあるいはそれ以上の免疫調節因子の細胞内での産生、局在性および/または細胞表面発現を調節するための方法を提供し、ここで、前記方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含み、シャペロニン10は、少なくとも1つのMHC分子または少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節する。
【0111】
上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0112】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0113】
本発明はまた、免疫応答を調節する化合物を同定するためのプロセスを提供し、ここで、前記プロセスは:
(a)Cpn10の存在下で、細胞または細胞抽出物を候補化合物と接触させる工程;および
(b)前記細胞の表面上での少なくとも1つのMHC分子の発現が、前記候補化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
を含む。
【0114】
上記プロセスは:
(c)前記細胞の表面上での少なくとも1つの他の細胞表面分子の発現が、前記候補化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
をさらに含み得る。
【0115】
上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0116】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0117】
本発明は、さらに、免疫応答を調節する化合物を同定する複数の化合物をスクリーニングするためのプロセスを提供し、ここで、前記プロセスは:
(a)Cpn10の存在下で、細胞または細胞抽出物を前記複数の化合物と接触させる工程;および
(b)前記細胞の表面上での少なくとも1つのMHC分子の発現が、前記複数の化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
を含む。
【0118】
上記プロセスは:
(c)前記細胞の表面上での少なくとも1つの他の細胞表面分子の発現が、前記複数の化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
をさらに含み得る。
【0119】
上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0120】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0121】
本発明は、さらに、被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において、少なくとも1つのMHC分子の細胞表面発現のレベルの調節を誘導するためのプロセスを提供し、ここで、前記プロセスは、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0122】
上記プロセスは、被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルの調節をさらに含み得るプロセスであり、このプロセスは、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0123】
上記MHC分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子または非古典的MHC分子であり得る。このMHCクラスII分子は、HLAであり得る。このHLAは、HLA−DR、HLA−DPまたはHLA−DQであり得る。
【0124】
上記細胞表面発現は、抗原提示細胞の細胞表面発現であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0125】
本発明は、さらに、免疫応答を調節する化合物を同定するためのプロセスが提供され、前記プロセスは:
(a)Cpn10の存在下で、細胞または細胞抽出物を候補化合物と接触させる工程;および
(b)前記細胞のリンパ節への移動、または、T細胞の増殖を活性化する能力および/もしくは引き起こす能力が、前記候補化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
を含む。
【0126】
上記細胞は、抗原提示細胞であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0127】
本発明はまた、免疫応答を調節する化合物を同定する複数の化合物をスクリーニングするためのプロセスが提供され、前記プロセスは:
(a)Cpn10の存在下で、細胞または細胞抽出物を前記複数の化合物と接触させる工程;および
(b)前記細胞のリンパ節への移動、または、T細胞の増殖を活性化する能力および/もしくは引き起こす能力が、前記候補化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
を含む。
【0128】
上記細胞は、抗原提示細胞であり得る。この抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0129】
本発明はさらに、被験体またはその少なくとも1つの組織もしくは器官において、抗原提示細胞の機能を調節するためのプロセスが提供され、前記プロセスは、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む。
【0130】
上記抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択され得る。
【0131】
上記機能は、リンパ節への移動、T細胞の活性化またはT細胞の増殖を含む群から選択され得る。
【0132】
当業者は、Cpn10が、本発明の方法に従って、単独または1つあるいはそれ以上のさらなる薬剤と組み合せて、投与され得ることを理解する。例えば、Cpn10は、TLR3、TLR4、TLR7およびTLR9の1つあるいはそれ以上を刺激することができる1つあるいはそれ以上のTLRアゴニストとともに投与され得る。さらに、本発明は、疾患および障害の処置に対する他の治療的なアプローチと組み合わせて、Cpn10を使用する併用療法を企図する。例えば、Cpn10は、I型インターフェロン(例えば、IFNβまたはIFNα)の治療に応答性であるウイルス性疾患の処置に有用であり得る。さらに、TLR7およびTLR9のアゴニスト誘導性の活性化によって、放射線治療に対する腫瘍の応答性が増大することが以前に報告されているので、Cpn10は、癌を処置するために放射線治療と組み合わせて使用され得る。
【0133】
上記のような併用療法では、併用療法の各成分は、所望の効果をもたらすために、同時もしくは任意の順序で連続的に投与され得るか、または異なる時点で投与され得る。あるいは、それらの成分は、結合生成物として一緒に、単一の投薬単位に製剤化され得る。それらの成分が別々に投与されるとき、同じ投与経路によって投与することが好ましい場合があるが、必ずしもそうである必要はない。
【0134】
(Cpn10)
本発明の局面および実施形態によれば、処置する必要のある被験体に、有効量のCpn10を投与する。特定の実施形態において、処置される被験体は、ヒトであり、ゆえに、Cpn10ポリペプチドは、ヒトCpn10ポリペプチドである。当業者は、本発明に従って使用されるCpn10の正確なアイデンティティーが、多くの因子、例えば、処置される種に応じて異なり得、Cpn10は、処置される種由来であるように選択され得ることを理解する。
【0135】
Cpn10は、天然Cpn10、天然由来Cpn10、組換えCpn10または合成Cpn10であり得る。Mortonら,2000(Immunol Cell Biol 78:603−607)、Ryanら,1995(J Biol Chem 270:22037−22043)およびJohnsonら,2005(J Biol Chem 280:4037−4047)に記載されている方法は、組換えおよび合成のCpn10タンパク質に適した生成方法の例であり、Somodevilla−Torresら,2003(Protein Expression and Purification 32:276−287)、Ryanら,1995(J Biol Chem 270:22037−22043)およびZhangら,2000(J Neurol Sci 182:5−15)に記載されている方法は、天然および天然由来のCpn10タンパク質に適した生成方法の例であるが、当業者は、本発明が、使用される精製方法または生成方法によって限定されないこと、ならびに、本発明の方法および本発明の組成物に従って使用するためのCpn10を生成するために、他の任意の方法が使用され得ることを理解する。
【0136】
本発明に従って使用するためのCpn10ポリペプチドおよびCpn10ペプチドフラグメントは、標準的な組換え核酸技術を使用して得てもよいし、例えば、従来の液相または固相の合成技術を使用して、合成してもよい。Cpn10ペプチドは、1つあるいはそれ以上のプロテイナーゼ(例えば、endoLys−C、endoArg−C、endoGlu−Cおよびstaphylococcus V8−プロテアーゼ)によるポリペプチドの消化によって生成され得る。消化されたペプチドフラグメントは、例えば、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)技術によって精製され得る。
【0137】
本発明の実施形態はまた、Cpn10をコードするポリヌクレオチドの投与を企図する。そのような状況において、上記ポリヌクレオチドは、典型的には、被験体へのポリヌクレオチドの投与後に適切なポリペプチド配列が産生されるようにプロモーターに作動可能に連結されている。上記ポリヌクレオチドは、ベクター中に入った状態で被験体に投与され得る。このベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクターであり得るか、または、外来配列の挿入、それらの真核細胞への導入および導入配列の発現に適合した他の任意の適当なビヒクルであり得る。典型的には、上記ベクターは、真核生物の発現ベクターであり得、発現制御配列およびプロセシング配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列)を含み得る。投与される核酸構築物は、裸のDNAを含み得るか、または1つあるいはそれ以上の薬学的に許容可能なキャリアを含む組成物の形態であり得る。
【0138】
Cpn10ポリペプチドは、配列表の配列番号:1に示されるようなアミノ酸配列を有し得る。Cpn10をコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列表の配列番号:4に示されるとおりであり得るか、または配列表の配列番号:4の配列にハイブリダイズする配列に対して十分な配列同一性を示し得る。代替の実施形態では、上記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列表の配列番号:4に示される配列と、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、96%、97%、98%または99%の同一性を共有し得る。
【0139】
フラグメントおよびそれらの変異体は、本明細書中で使用されるとき、用語「ポリペプチド」および「ポリヌクレオチド」の範囲内である。単なる例示であるが、WO95/15338(すなわち「Chaperonin 10」PCT出願番号PCT/AU94/00740)に記載されているようなCpn10のペプチドフラグメントは、本発明の局面および実施形態に従って使用され得る。
【0140】
用語「フラグメント」とは、完全長Cpn10タンパク質の構成物をコードするか、または完全長Cpn10タンパク質の構成物である、核酸配列またはポリペプチド配列のことをいう。そのポリペプチドに関して、そのフラグメントは、完全長タンパク質と共通の質的な生物学的活性を有する。本発明に従って使用されるCpn10の生物学的に活性なフラグメントは、典型的には、対応する完全長タンパク質の免疫調節性活性の少なくとも約50%、より典型的には、そのような活性の少なくとも約60%、より典型的には、そのような活性の少なくとも約70%、より典型的には、そのような活性の少なくとも約80%、より典型的には、そのような活性の少なくとも約90%、そして、より典型的には、そのような活性の少なくとも約95%を有し得る。
【0141】
用語「変異体」とは、本明細書中で使用されるとき、実質的に類似の分子のことをいう。一般に、核酸配列変異体は、共通の質的な生物学的活性を有するポリペプチドをコードする。一般に、ポリペプチド配列変異体はまた、共通の質的な生物学的活性を有する。さらに、これらのポリペプチド配列変異体は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有し得る。
【0142】
さらに、変異体ポリペプチドは、アナログを含み得、ここで、用語「アナログ」とは、Cpn10の誘導体(1つあるいはそれ以上のアミノ酸の付加、欠失、置換を含む)であるポリペプチドのことを意味し、そのポリペプチドは、天然のCpn10と同一の機能を実質的に保持する。ポリペプチドの活性を変化させることなく、いくつかのアミノ酸がポリペプチド内で変化し得ること(保存的置換)は、当該分野で周知である。用語「保存的アミノ酸置換」とは、ポリペプチド鎖(タンパク質の1次配列)内のある1つのアミノ酸を、同様の特性を有する別のアミノ酸で置換するか、または置き換えることをいう。例えば、帯電したアミノ酸であるグルタミン酸(Glu)を、同様に帯電したアミノ酸であるアスパラギン酸(Asp)で置換することは、保存的アミノ酸置換であり得る。アミノ酸付加は、Cpn10ポリペプチドまたはそのフラグメントと、ポリヒスチジンタグなどの第2のポリペプチドもしくはペプチドとの融合、マルトース結合タンパク質との融合、グルタチオンSトランスフェラーゼとの融合、緑色蛍光タンパク質との融合、または、FLAGもしくはc−mycなどのエピトープタグの付加によって生じ得る。例えば、野生型ヒトCpn10ポリペプチドは、N末端にさらなるGSMトリペプチド部分を含み得るか(配列表の配列番号:2;例えば、WO95/15338(この開示は本明細書中で参照により援用される)を参照のこと)、またはN末端にさらなるアラニン(A)残基を含み得るか(配列表の配列番号:3;WO2004/041300(すなわち「Chaperonin 10 immunosuppression」PCT出願番号PCT/AU2003/001467))(この開示は本明細書中で参照により援用される)、またはN末端にさらなるグリシン(G)残基を含み得る(配列表の配列番号:5;PCT/AU2006/001278(「Modified Chaperonin 10」PCT出願))(この開示は本明細書中で参照により援用される)。本発明は、そのような改変型のCpn10をコードするポリヌクレオチドの使用も企図する。
【0143】
Cpn10変異体は、当業者に周知の方法を使用して、Cpn10タンパク質の突然変異誘発、または、ランダム突然変異誘発もしくは部位特異的突然変異誘発などによるコード核酸の突然変異誘発によって、生成され得る。そのような方法は、例えば、Current Protocols In Molecular Biology(Chapter 9),Ausubelら,1994,John Wiley & Sons,Inc.,New York(この開示は本明細書中で参照により援用される)に見られ得る。変異体およびアナログはまた、他の化学部分と複合体化したポリペプチド、融合タンパク質または別途、転移後に修飾されたポリペプチドも包含する。適当な修飾の例は、同時係属中の国際特許出願番号PCT/AU2005/000041(この開示は本明細書中で参照により援用される)に記載されている。
【0144】
さらに、Cpn10ポリペプチドまたはそのフラグメントは、側鎖修飾(例えば、当業者に公知であるような、アセチル化、アミジン化、カルバモイル化、還元的アルキル化および他の修飾)をはじめとした他の翻訳後修飾を有し得る。
組成物および投与経路
【0145】
一般に、本発明の方法に従った使用に適した組成物は、当業者に公知の方法および手順に従って調製され得、従って、それらには、薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤および/または補助剤が含まれ得る。
【0146】
組成物は、標準的な経路によって投与され得る。一般に、組成物は、非経口(例えば、静脈内、髄腔内、皮下または筋肉内)、経口または局所的な経路によって投与され得る。投与は、全身性、領域性または局所性であり得る。任意の所与の状況において使用される特定の投与経路は、処置される状態の性質、その状態の重症度および程度、送達される特定の化合物の必要な用量ならびにその化合物の副作用の可能性をはじめとした多くの因子に左右される。
【0147】
一般に、適当な組成物は、当業者に公知の方法に従って調製され得、その組成物には、薬学的に許容可能な希釈剤、補助剤および/または賦形剤が含まれ得る。この希釈剤、補助剤および賦形剤は、その組成物の他の成分と適合可能であること、および、そのレシピエントに対して有害でないことに関して「許容可能」でなければならない。
【0148】
薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤の例は、脱塩水または蒸留水;食塩水溶液;植物系油(例えば、ピーナッツ油、ベニバナ油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油(例えば、ピーナッツ油、ベニバナ油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ラッカセイ油およびやし油));ポリシロキサン(例えば、メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサンおよびメチルフェニルポリソルポキサン)をはじめとしたシリコーン油;揮発性シリコーン;鉱油(例えば、液体パラフィン、軟パラフィンまたはスクアラン);セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);低級アルカノール、例えば、エタノールまたはイソプロパノール;低級アラルカノール;低級ポリアルキレングリコールまたは低級アルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールまたはグリセリン;脂肪酸エステル(例えば、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピルまたはオレイン酸エチル);ポリビニルピリドン;寒天;カラギナン;トラガカントゴムまたはアラビアゴムおよびワセリンである。典型的には、上記キャリア(単数または複数)は、組成物の10重量%〜99.9重量%を形成する。
【0149】
本発明の組成物は、注射による投与に適した形態、経口摂取に適した製剤の形態(例えば、カプセル、錠剤、カプレット、エリキシル剤)、局所的投与に適した軟膏、クリームまたはローションの形態、点眼剤としての送達に適した形態、鼻腔内吸入または経口吸入などの吸入による投与に適したエアロゾルの形態、非経口投与、すなわち、皮下、筋肉内もしくは静脈内注射に適した形態であり得る。
【0150】
注射可能な溶液または懸濁液としての投与について、無毒性の非経口的に許容可能な希釈剤またはキャリアとしては、リンガー溶液、等張性食塩水、リン酸緩衝食塩水、エタノールおよび1,2プロピレングリコールが挙げられ得る。経口用としての使用に適したキャリア、希釈剤、賦形剤および補助剤のいくつかの例としては、ピーナッツ油、液体パラフィン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、トラガカントゴム、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、ゼラチンおよびレシチンが挙げられる。さらにこれらの経口製剤は、適当な着香料および着色剤を含み得る。カプセルの形態で使用されるとき、そのカプセルは、崩壊を遅延させるモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの化合物でコーティングされ得る。
【0151】
補助剤としては、典型的には、緩和薬、乳化剤、増粘剤、保存剤、殺菌剤および緩衝剤が挙げられる。経口投与用の固体形態は、ヒトおよび獣医学薬務において許容可能な結合剤、甘味料、崩壊剤、希釈剤、着香料、コーティング剤、保存剤、潤滑剤および/または遅延剤を含み得る。適当な結合剤としては、アラビアゴム、ゼラチン、トウモロコシデンプン、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースまたはポリエチレングリコールが挙げられる。適当な甘味料としては、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテームまたはサッカリンが挙げられる。適当な崩壊剤としては、トウモロコシデンプン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアーゴム、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸または寒天が挙げられる。適当な希釈剤としては、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムまたはリン酸二カルシウムが挙げられる。適当な着香剤としては、ペパーミント油、冬緑油、サクランボ、オレンジまたはラズベリーの着香料が挙げられる。適当なコーティング剤としては、アクリル酸および/またはメタアクリル酸ならびに/もしくはそれらのエステルのポリマーまたは共重合体、ろう、脂肪族アルコール、ゼイン、シェラックあるいはグルテンが挙げられる。適当な保存剤としては、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、アルファ−トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベンまたは亜硫酸水素ナトリウムが挙げられる。適当な潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたはタルクが挙げられる。適当な遅延剤としては、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルが挙げられる。
【0152】
経口投与用の液体の形態は、上記薬剤に加えて、液体キャリアを含み得る。適当な液体キャリアとしては、水、油(例えば、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ラッカセイ油、やし油)、液体パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪族アルコール、トリグリセリドまたはそれらの混合物が挙げられる。
【0153】
経口投与用の懸濁液は、さらに、分散剤および/または懸濁剤を含み得る。適当な懸濁剤としては、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムまたはアセチルアルコールが挙げられる。適当な分散剤としては、レシチン、ステアリン酸などの脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールもしくはジオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビトールまたはラウリン酸ポリオキシエチレンソルビトール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンもしくはジオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンあるいはラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどが挙げられる。
【0154】
経口投与用のエマルジョンは、さらに、1つあるいはそれ以上の乳化剤を含み得る。適当な乳化剤としては、上で例示されたような分散剤または天然ゴム(例えば、グアーゴム、アラビアゴムまたはトラガカントゴム)が挙げられる。
【0155】
非経口的に投与可能な組成物を調製するための方法は、当業者には明らかであり、例えば、本明細書中に参照により援用されるRemington’s Pharmaceutical Science,15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.に詳細に記載されている。
【0156】
本発明の局所用製剤は、1つあるいはそれ以上の許容可能なキャリアおよび必要に応じて他の任意の治療的な成分とともに活性成分を含む。局所的投与に適した製剤としては、処置が必要な部位に皮膚を通過して浸透させることに適した液体または半液体の調製物(例えば、リニメント剤、ローション、クリーム、軟膏またはペースト)および眼、耳または鼻への投与に適した液滴が挙げられる。
【0157】
本発明の液滴は、滅菌された水溶性または油性の溶液または懸濁液を含み得る。これらは、殺菌剤および/もしくは殺真菌剤ならびに/または他の任意の適当な保存剤の水溶液に活性成分を溶解し、必要に応じて界面活性剤を含めることによって調製され得る。次いで、得られた溶液を濾過により精製し、適当な容器に移し、滅菌し得る。滅菌は、オートクレーブすること、もしくは、90℃〜100℃で半時間維持すること、または、濾過によって達成され得、その後、無菌操作によって容器に移される。液滴中に含めるのに適した殺菌剤および殺真菌剤の例は、硝酸フェニル水銀または酢酸フェニル水銀(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)および酢酸クロルヘキシジン(0.01%)である。油溶液の調製に適した溶媒としては、グリセロール、希アルコールおよびプロピレングリコールが挙げられる。
【0158】
本発明のローションは、皮膚または眼への適用に適したものを含む。眼用ローションは、必要に応じて殺菌薬を含んでいる滅菌水溶液を含み得、そして液滴の調製物に関して上で説明されたものと類似の方法によって調製され得る。皮膚への適用のためのローションまたはリニメント剤はまた、乾燥を速めるための薬剤および皮膚を冷却するための薬剤(例えば、アルコールまたはアセトン)および/あるいは保湿剤(例えば、グリセロールまたはひまし油もしくはラッカセイ油などの油)を含み得る。
【0159】
本発明のクリーム、軟膏またはペーストは、外用のための活性成分の半固体の製剤である。それらは、細かく分割された形態または粉末状の形態の活性成分を単独で、または、脂肪性もしくは非脂肪性の基剤とともに水溶液または非水溶液中の溶液または懸濁液中で、混合することによって作製され得る。その基剤は、アルコール(例えば、プロピレングリコールまたはマクロゴール)と一緒に、炭化水素(例えば、硬パラフィン、軟パラフィンまたは液体パラフィン)、グリセロール、蜜ろう、金属石鹸;粘滑剤;天然起源の油(例えば、アーモンド油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、ひまし油またはオリーブ油);羊毛脂もしくはその誘導体、または、脂肪酸(例えば、ステアリン酸またはオレイン酸)を含み得る。
【0160】
上記組成物は、任意の適当な界面活性物質(例えば、陰イオン性、陽イオン性または非イオン性の界面活性物質(例えば、それらのソルビタンエステルまたはポリオキシエチレン誘導体))を含み得る。懸濁剤(例えば、天然ゴム、セルロース誘導体または無機材料(例えば、ケイ素性のシリカおよび他の成分(例えば、ラノリン))もまた含まれ得る。
【0161】
上記組成物は、リポソームの形態でも投与され得る。リポソームは、一般に、リン脂質または他の脂質物質から誘導され、水性媒質中に分散される一重膜または多重膜の水和液晶によって形成される。リポソームを形成することができる、任意の無毒性で生理的に許容可能かつ代謝可能な脂質が使用され得る。リポソーム形態での組成物は、安定剤、保存剤、賦形剤などを含み得る。好ましい脂質は、天然と合成の両方のリン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成する方法は、当該分野で公知であり、本明細書に関して特に:Prescott,Ed.,Methods in Cell Biology,Volume XIV,Academic Press,New York,N.Y.(1976),p.33 et seq.(この内容が本明細書中に参照により援用される)が参照される。
【0162】
上記組成物は、一連のポリエチレングリコール(PEG)誘導体に結合体化され得る。タンパク質へのPEGの付加(PEG化)は、タンパク質の血漿クリアランス速度を低下させ、それによって、それらの有効性を増大させるための十分に確立された方法である(Nucciら,1991,Adv.Drug Del,Rev.6:133)。ペグ化のさらなる利点としては、タンパク質の安定性の増大、免疫原性の低下、溶解性の増大およびタンパク質分解への感受性の低下が挙げられ得る(Sheffield W.2001,Curr Drug Targets Cardiovasc Haematol Disord.1:1−22)。PEG分子は、−(OCH3CH2)n−OHという基本的な繰り返し構造を含み、それらの分子量によって分類される。PEG誘導体は、流体力学的半径を増大させるためにタンパク質に結合体化され、一般に、半減期の延長は、結合しているPEG鎖のサイズに直接関係する(Sheffield W.2001,Curr Drug Targets Cardiovasc Haematol Disord.1:1−22)。
【0163】
上記組成物はまた、微小粒子の形態で投与され得る。ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸−コ−グリコリド(PLGA)およびイプシロン−カプロラクトン(−カプロラクトン)から形成される生分解性の微小粒子は、血漿半減期を延長し、それにより有効性を延ばす薬物キャリアとして広く使用されている(R.Kumar,M.,2000,J Pharm Pharmaceut Sci.3(2)234−258)。微小粒子は、ワクチン、抗生物質およびDNAをはじめとした一連の薬物候補を送達するために製剤化されている。さらに、これらの製剤は、非経口の皮下注射、静脈内注射および吸入をはじめとした様々な送達経路用に開発されている。
【0164】
上記組成物は、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)および有機溶媒または有機溶媒の混合物から構成される徐放性マトリックスを含み得る。さらに、粘度を高めるためおよび放出速度を低下させるためにポリマー添加物を放出調節因子としてビヒクルに加えられ得る。SAIBは、周知の食品添加物である。SAIBは、非常に疎水性で、2つの酢酸基に対して6つのイソ酪酸基という名目上の比で完全にエステル化されたスクロース誘導体である。混合エステルとして、SAIBは、結晶化しないが、透明の粘稠性の液体として存在する。SAIBと、エタノールまたはベンジルアルコールなどの薬学的に許容される有機溶媒とを混合することによって、混合物の粘度を注射可能な程度に十分に低下させる。活性な薬学的成分が、SAIB送達ビヒクルに加えられ、SAIB溶液製剤またはSAIB懸濁液製剤を形成し得る。その製剤が、皮下に注射されるとき、その溶媒は、マトリックスから拡散し、SAIB−薬物またはSAIB−薬物ポリマー混合物が生体内形成デポーを構築することが可能となる。
【0165】
本発明の目的で、分子および薬剤は、治療的または予防的に組成物として被験体に投与され得る。治療的な適用において、組成物は、すでに疾患に罹患している患者に、疾患およびその合併症を治癒するのに十分な量または少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で投与される。
【0166】
上記組成物は、患者を効果的に処置するのに十分な量の分子または薬剤を提供するべきである。
【0167】
任意の特定の患者に対する治療的に有効な用量レベルは、医学分野で周知の他の関連する因子とともに、処置される障害およびその障害の重症度;使用される分子または薬剤の活性;使用される組成物;患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食事;投与時間;投与経路;分子または薬剤の隔離の速度;処置期間;処置と併用されるか、または同時に使用される薬物をはじめとした種々の因子に左右される。
【0168】
当業者は、ルーチンの実験によって、適応可能な疾患を処置するために必要な、薬剤または化合物の有効かつ無毒性の量を決定することができる。
【0169】
一般に、有効な用量は、約0.0001mg〜約1000mg/kg体重/24時間;典型的には、約0.001mg〜約750mg/kg体重/24時間;約0.0lmg〜約500mg/kg体重/24時間;約0.1mg〜約500mg/kg体重/24時間;約0.1mg〜約250mg/kg体重/24時間;約1.0mg〜約250mg/kg体重/24時間の範囲であると予想される。より典型的には、有効な用量の範囲は、約1.0mg〜約200mg/kg体重/24時間;約1.0mg〜約100mg/kg体重/24時間;約1.0mg〜約50mg/kg体重/24時間;約1.0mg〜約25mg/kg体重/24時間;約5.0mg〜約50mg/kg体重/24時間;約5.0mg〜約20mg/kg体重/24時間;約5.0mg〜約15mg/kg体重/24時間の範囲であると予想される。
【0170】
あるいは、有効な用量は、最大約500mg/mであり得る。一般に、有効な用量は、約25〜約500mg/m、好ましくは、約25〜約350mg/m、より好ましくは、約25〜約300mg/m、さらにより好ましくは、約25〜約250mg/m、なおもより好ましくは、約50〜約250mg/m、そしてさらになおもより好ましくは、約75〜約150mg/mの範囲であると予想される。
【0171】
典型的には、治療的な適用において、上記処置は、疾患状態の持続期間の間に行われ得る。
【0172】
さらに、最適な量および個別の投薬の間隔が、処置される疾患状態の性質および程度、投与形態、投与経路および投与部位、ならびに処置される特定の個体の性質によって決定されることは、当業者には明らかである。また、そのような最適な条件は、従来の技術によって決定することができる。
【0173】
処置の最適なクール(例えば、限定された日数における1日あたりに投与される組成物の投薬回数)を、処置決定試験の従来のコースを用いて当業者が確認することができることもまた、当業者には明らかである。
【0174】
(Cpn10アゴニストおよびアンタゴニスト)
本発明はまた、Cpn10のアゴニストおよびアンタゴニストの使用、ならびに、そのようなアゴニストおよびアンタゴニストをスクリーニングおよび作製する方法も企図する。
【0175】
Cpn10アゴニストおよびアンタゴニストは、特異的に設計され得るか、またはそれらのTLR3、TLR4、TLR7および/またはTLR9のシグナル伝達ならびに免疫調節因子分泌に対する効果に従ってスクリーニングされ得る。
【0176】
抗体は、Cpn10またはそのフラグメントもしくはアナログのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用し得る。好ましくは、適当な抗体は、Cpn10ポリペプチドの不連続の領域またはフラグメント、特に、プロテアーゼ活性および/またはパートナーとの結合性もしくは基質との結合性をもたらす際に関与する領域またはフラグメントから作製される。抗原性のCpn10ポリペプチドは、少なくとも約5アミノ酸、および好ましくは、少なくとも約10アミノ酸を含む。
【0177】
適当な抗体を作製するための方法は、当業者によって十分に理解されている。例えば、典型的にはFab部分を含む抗Cpn10モノクローナル抗体は、Antibodies−A Laboratory Manual,Harlow and Lane,eds.,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(1988)に記載されているハイブリドーマ技術を使用して調製され得る。
【0178】
本質的には、Cpn10またはそのフラグメントもしくはアナログに特異的なモノクローナル抗体の調製において、連続的な培養細胞株による抗体分子の産生をもたらす任意の技術が使用され得る。これらとしては、Kohlerら,1975,Nature,256:495−497によって初めて開発されたハイブリドーマ法ならびにトリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozborら,1983,Immunology Today,4:72)およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBV−ハイブリドーマ法(Coleら,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,pp.77−96,Alan R.Liss,Inc.,(1985))が挙げられる。不死の抗体産生細胞株は、融合以外の技術(例えば、発癌性DNAによるBリンパ球の直接的な形質転換、または、エプスタイン・バーウイルスによるトランスフェクション)によって作製され得る。例えば、M.Schreierら,「Hybridoma Techniques」(1980);Hammerlingら,「Monoclonal Antibodies and T−cell Hybridomas」(1981);Kennettら,「Monoclonal Antibodies」(1980)を参照のこと。
【0179】
手短に言えば、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、ミエローマまたは他の自己永続的な細胞株を作製する手段は、認識因子と結合する部分もしくは認識因子またはその起源特異的なDNA結合部分で超免疫された哺乳動物の脾臓から得たリンパ球と融合する手段である。本発明の実施において有用なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、それらが当該認識因子と免疫反応する能力および標的細胞において特定の転写活性を阻害する能力によって同定される。
【0180】
本発明の実施において有用なモノクローナル抗体は、適切な抗原特異性の抗体分子を分泌するハイブリドーマを含んでいる栄養培地を含むモノクローナルハイブリドーマ培養を開始することによって作製され得る。その培養を、ハイブリドーマが抗体分子を培地に分泌するのに十分な条件かつ期間において維持する。次いで、抗体含有培地を回収する。次いで、周知の技術によって、抗体分子をさらに単離することができる。
【0181】
同様に、ポリクローナル抗体を作製するために使用され得る様々な手順が、当該分野で公知である。抗Cpn10ポリクローナル抗体の作製では、Cpn10またはそのフラグメントもしくはアナログを注射することによって様々な宿主動物を免役することができ、その動物としては、ウサギ、ニワトリ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどが挙げられるがこれらに限定されない。さらに、Cpn10ポリペプチドまたはそのフラグメントもしくはアナログを、免疫原性のキャリア、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に結合体化することができる。また、様々なアジュバントを使用して、免疫学的応答を増大させてもよく、そのアジュバントとしては、フロイントアジュバント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムなどの無機物ゲル、表面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン)、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールおよび潜在的に有用なヒトアジュバント(例えば、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum))が挙げられるがこれらに限定されない。
【0182】
所望の抗体についてのスクリーニングは、当該分野で公知の種々の技術によっても達成され得る。抗体の免疫特異的な結合性についてのアッセイとしては、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、サンドイッチイムノアッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、ゲル内拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、インサイチュイムノアッセイ、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイおよび免疫電気泳動アッセイなどが挙げられ得るが、これらに限定されない(例えば、Ausubelら,eds,1994,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.1,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkを参照のこと)。抗体の結合は、1次抗体上の検出可能な標識によって検出され得る。あるいは、抗体は、適切に標識された2次抗体または試薬との結合によって検出され得る。イムノアッセイにおいて結合を検出するための種々の方法が当該分野で公知であり、それは、本発明の範囲内である。
【0183】
Cpn10またはそのフラグメントもしくはアナログに対して作製された抗体(またはそのフラグメント)は、Cpn10に対する結合親和性を有する。好ましくは、その抗体(またはそのフラグメント)は、約10−1超、より好ましくは、約10−1超、さらにより好ましくは、約10−1超、最も好ましくは、約10−1超の結合親和性または親和力を有する。
【0184】
適当な量の本発明の抗体を得ることに関して、無血清培地を用いたバッチ発酵を使用して抗体が作製され得る。発酵後、クロマトグラフィおよびウイルスの不活化/除去工程を組み込んだ多段階の手順を介して、抗体を精製し得る。例えば、まず、抗体をプロテインAアフィニティークロマトグラフィで分離し、次いで、溶媒/洗浄剤で処理することによって任意の脂質エンベロープを有するウイルスを不活化し得る。典型的には、陰イオン交換クロマトグラフィおよび陽イオン交換クロマトグラフィを使用してさらに精製することにより、残渣のタンパク質、溶媒/洗浄剤および核酸を除去し得る。精製された抗体は、ゲル濾過カラムを用いてさらに精製され、0.9%食塩水中に製剤化され得る。次いで、製剤化された大量の調製物は、滅菌され、ウイルス濾過され、分注され得る。
【0185】
抗体以外のアゴニストおよびアンタゴニストもまた企図される。候補のアゴニストまたはアンタゴニストは、TLR3、TLR4、TLR7またはTLR9、および、必要に応じてTLR3、TLR4、TLR7もしくはTLR9アゴニストと、分子複合体を形成する能力によって同定され得る。さらに、候補アンタゴニストは、Cpn10と、TLR3、TLR4、TLR7またはTLR9、および、必要に応じてTLR3、TLR4、TLR7もしくはTLR9アゴニストを含んでいる分子複合体の形成を阻止または妨害する能力によって同定され得る。
【0186】
アゴニストおよびアンタゴニストを同定し、生成するための技術および手順は、当業者に周知であり、それらとしては、分子のライブラリー(例えば、コンビナトリアルライブラリーなどの合成化学ライブラリー)のスクリーニング、構造データベースのコンピュータ支援スクリーニング、コンピュータ支援のモデリングおよび/もしくは設計、または、分子結合相互作用を検出する従来型の生物物理学的な技術が挙げられる。
【0187】
ここで、以下の特定の実施例を参照することによって、本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定すると決して解釈されるべきでない。
【実施例】
【0188】
組換えヒトCpn10
以下の実施例に記載される実験では、Johnsonら,2005(J Biol Chem 280:4037−4047)に記載されているように、組換えヒトCpn10(GenBankアクセッション番号X75821)をE.coliにおいて産生した。純度については、SDS−PAGEによって97%を超えることを確認した。Cpn10の凍結アリコートを使用前に1回だけ解凍した。すべてのCpn10バッチが、GroEL媒介性のロダネーゼリフォールディングアッセイにおけるE.coli GroESと同じモル活性を示した(データ示さず)。
【0189】
実施例1−一般的な材料および方法
細胞培養および細胞シグナル伝達分子
すべての細胞培養実験において、50μMの2−メルカプトエタノール(2−ME)(Gibco)および1%可欠アミノ酸(Gibco)を含む補充RPMI(SPP−036)を、組換えヒトGM−CSF(R&D Systems,#215−GM,Lot No AR115021)、組換えヒトIL−4(R&D Systems,#204 IL,Lot No AG235051)、CD14Micro Beads(Miltenyi #130−050−201,Lot No 5050927008)およびE.coli由来のLPS(Sigma #L6529,Lot No 015K4103)と様々な組み合わせで使用した。
【0190】
未成熟DC生成
PBMCを健常志願者から調製した(LTP−062.02)。PBMC原液をクリオチューブ(cryo−tube)内で液体窒素中に保存した(LTP−063−03)。CD14MicroBeadsを製造者の指示書に従って使用することによって単球を精製した。5×10個のCD14単球を、75cmフラスコ内の2−MEおよび可欠アミノ酸を含む補充RPMIの20ml中に播種した。未成熟DCを生成するために、GM−CSF(10μg/ml)+IL−4(10μg/ml)(GM−CSF/IL−4−DC)を培養物に加えた。培養4日目に、10mlのサイトカイン含有新鮮培地を加えた。
【0191】
Cpn10の存在下または非存在下でのDCの成熟
未成熟DCを5日目に回収、洗浄し、6ウェルプレートにおいて、3mlの補充RPMI/ウェルに1×10細胞/ウェルの濃度で播種した。LPS(0.12ng/ml)によってDCの成熟を20時間誘導した。LPSの添加の1時間前にCpn10(10μg/ml)を加えた。
【0192】
細胞表面のイムノフェノタイピング
成熟DCを回収、洗浄し、そして、BD製の以下のAPC−Cy7結合体化モノクローナル抗体(mAb)、PE結合体化mAbまたはAPC結合体化mAb:CD14−APC−Cy7、HLA−DR−APC、CD1a−PE、CD11c−PE、CD80−PE、CD83−PE、CD86−PEおよびCD40−PEを使用して、4℃で30分間標識した。使用したアイソタイプコントロールは、IgG−APC−Cy7、IgG−APCおよびIgG−PEであった。死細胞および残骸を、それらの光散乱特性に基づいて解析から除外した。BD FACS−Arrayフローサイトメーターにおいて解析を行った。
【0193】
DCによるサイトカイン放出の解析
培養5日目にDCを回収、洗浄し、そして1×10/mlで平底微量希釈プレートに播種した。LPS(0.15ng/ml)を用いてDCを20時間成熟させた。DCサイトカイン産生に対するCpn10の効果を評価するために、LPSの添加の1時間前にCpn10(0.1〜10μg/ml)を加えた。上清を回収し、−20℃で保存した。20時間、DCをCpn10とインキュベーションした後の培養上清中のTNF−αの蓄積を、R&D DuoSetキットを製造者の指示書に従って使用してELISAによって評価した。
【0194】
基礎的な混合白血球反応(MLR)アッセイ
CD4T細胞単離キットII(Miltenyi,#130−091−155,Lot No 5060928051)を製造者の指示書に従って使用することによって、CD4T細胞を新鮮血液から精製した。T細胞の純度は、フローサイトメトリーによってルーチンの方法で確認した。合計1×10個のT細胞を、Cpn10(0.1〜10μg/ml)の存在下または非存在下で1×10個のDCと6日間共培養した。上清を回収し、そしてIFN−γ蓄積についてELISAによって解析した。CyQUANT増殖アッセイキット(Molecular Probes #C35006,Lot No 45179A)を製造者の指示書に従って使用して、細胞増殖を評価した。
【0195】
実施例2−Cpn10は、インビトロにおいてDC成熟を低下させる。
培養された単球由来DCを使用して、Cpn10が、LPSに応答したDC成熟を調節する能力を評価した。単球のDCへの変換を、CD1aおよびCD14細胞表面発現のフローサイトメトリー解析によって確認した。CD1aCD14DCを、成熟マーカーHLA−DR、CD40、CD80、CD83およびCD86の表面発現についてさらに解析した。LPSに応答したHLA−DRの平均蛍光強度(MFI)(図1)は、成熟期間の間にCpn10を加えたとき、有意に減少した(p<0.05)。対照的に、HLA−DRの発現は、アゴニストの非存在下でCpn10とインキュベートした未成熟DC上では変化しなかった(図1は、独立した3回の実験の代表例である)。
【0196】
さらに、上清を試験する前に、単球由来のDCをCpn10とともに20時間インキュベートしたとき、細胞培養液中へのTNF−αの恒常的な放出が有意かつ用量依存的に減少したことが見出された。これらの結果は、Cpn10が細胞活性化を低減させる能力を反映し得る(図2、独立した4回の実験の代表例)。
【0197】
実施例3−DCによるT細胞刺激のCpn10調節
Cpn10が基礎的な混合白血球反応(MLR)においてDCによるT細胞刺激を調節する能力は、リガンド(例えば、プロスタグランジンE、IL−1β、IL−6およびTNF−αまたは可溶性CD40L3量体)に応答したDC成熟に対するCpn10の影響の解析とともに調査され得る。図3に示されるように、培養された単球由来DCを使用して、IFN−γ産生について細胞培養上清を試験する前の6日間、同種CD4T細胞との共培養に応答してCpn10がT細胞の活性化を調節する能力を評価した。図3に示されるデータ(独立した2回の実験の代表例)は、IFN−γ蓄積が、Cpn10によって有意に低下したことを示唆している。図4に示されるデータは、CyQUANT細胞増殖アッセイによって測定するとき、Cpn10が基礎的なMLRの間にT細胞の増殖に影響しないことを証明している(図3におけるデータは、独立した2回の実験の代表例である)。
【0198】
実施例4−処置用の組成物
本明細書中に提供される本発明を実施する最良の形態によれば、特定の好ましい組成物が以下に概説される。以下は、単なる例示的な組成物の例と解釈されるべきであり、本発明の範囲を限定すると決して解釈されるべきでない。
【0199】
実施例4(a)−非経口投与用の組成物
筋肉内注射用組成物は、1mlの滅菌緩衝水および1mgの適当な化合物を含むように調製され得る。同様に、静脈内点滴用組成物は、250mlの滅菌リンガー溶液および5mgの適当な化合物を含み得る。
【0200】
実施例4(b)−注射可能な非経口組成物
注射による投与に適した組成物は、10体積%のプロピレングリコール中の、1重量%の適当な化合物および水とを混合することによって調製され得る。その溶液は、濾過によって滅菌される。
【0201】
実施例4(c)−カプセル組成物
カプセルの形態に適した化合物の組成物は、標準的な2片の硬ゼラチンカプセルを、粉末状の50mgの薬剤または化合物、100mgのラクトース、35mgのタルクおよび10mgのステアリン酸マグネシウムで満たすことによって調製され得る。
【0202】
実施例4(d)−点眼組成物
点眼剤として送達するための典型的な組成物を以下で概説する:
適当な化合物 0.3g
ヒドロキシ安息香酸メチル 0.005g
ヒドロキシ安息香酸プロピル 0.06g
精製水 約100.00mlとなるように
【0203】
ヒドロキシ安息香酸メチルおよびヒドロキシ安息香酸プロピルを70mlの75℃の精製水に溶解し、得られた溶液を冷却する。次いで、適当な化合物を加え、その溶液を、膜フィルター(0.22μmポアサイズ)で濾過することによって滅菌し、滅菌容器に無菌的に入れる。
【0204】
実施例4(e)−吸入投与用の組成物
20〜30mlの容量のエアロゾル容器の場合:10mgの適当な化合物と0.5〜0.8重量%の滑沢剤(例えば、ポリソルベート85またはオレイン酸)との混合物をフレオンなどの噴霧剤中に分散し、そして鼻腔内投与または経口吸入投与のいずれかに適したエアロゾル容器に入れる。
【0205】
実施例4(f)−軟膏組成物
軟膏として送達するための典型的な組成物は、1.0gの適当な化合物とともに、滑らかで均一な生成物を作製するために分散される白色軟パラフィンを100.0gとなるまで含む。
【図面の簡単な説明】
【0206】
ここでは、非限定的な例示のみの目的で添付の図面を参照して本発明を説明する。
【図1】Cpn10は、DC上でのHLA−DR発現を有意に低下させる。5日間、GM−CSFおよびIL−4の存在下で単球からヒトDCを分化させた。LPSによって単球がDCに変換したことは、CD1aおよびCD14細胞表面発現のフローサイトメトリー解析によって確認した。成熟マーカーHLA−DRの細胞表面発現について、CD1aCD14DCをさらに解析した。培養された単球由来DCを使用して、Cpn10がLPS誘導性のDC成熟を調節する能力について評価した。HLA−DRの発現は、Cpn10とともにインキュベートした未成熟DC上では変化しなかった(A)。しかしながら、HLA−DR発現のLPS誘導性のアップレギュレーションは、Cpn10によって有意に低下した(A対B,p=0.0408;A対C,p=0.0324;A対D,p=0.0161)(B)。独立した3回の実験の代表例である。
【図2】Cpn10は、DCによる恒常的なTNF−α放出を低下させる。培養された単球由来のDCを使用して、Cpn10が恒常的なTNF−α放出を調節する能力を評価した。DCを、ある濃度範囲のCpn10と20時間にわたってインキュベートした。培養上清中のTNF−α蓄積をELISAによって測定した。示されるデータは、独立した4回の実験の代表例である。
【図3】Cpn10は、基礎的な混合白血球反応(MLR)においてIFN−γ産生を減少させる。培養された単球由来のDCを使用して、Cpn10が基礎的な混合白血球反応(MLR)においてDCによるT細胞の活性化を調節する能力を評価した。DCを、同種CDT細胞と6日間共培養し、培養上清中のIFN−γ産生をELISAによって測定した。IFN−γ蓄積は、Cpn10によって有意に低下した。データは、独立した2回の実験の代表例である。
【図4】Cpn10は、基礎的な混合白血球反応(MLR)においてT細胞の増殖に影響しない。培養された単球由来のDCと単離された同種CD4T細胞とを、Cpn10の存在下または非存在下で6日間、共培養した。製造者の指示書に従ってCyQUANT細胞増殖アッセイキットを使用して、増殖を測定した。独立した2回の実験の代表例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのMHC分子の細胞表面発現のレベルを調節することによって、被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において免疫応答を調節するための方法であって、前記方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節することによって、被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において免疫応答を調節する工程をさらに含む方法であって、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのMHC分子の細胞表面発現のレベルを調節することによって、被験体において疾患または状態を処置または予防するための方法であって、前記方法は、該被験体に有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む、方法。
【請求項4】
前記方法が、少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節することによって、被験体において疾患または状態を処置または予防する工程をさらに含む方法であって、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において、少なくとも1つのMHC分子の細胞表面発現のレベルを調節するための方法であって、前記方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む、方法。
【請求項6】
前記方法が、被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において、少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節する工程をさらに含む方法であって、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記他の細胞表面分子が、共刺激分子である、請求項2、4または6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記MHC分子が、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子および非古典的MHC分子を含む群から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記MHCクラスII分子が、HLA−DR、HLA−DPおよびHLA−DQを含む群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞表面発現が、抗原提示細胞の細胞表面発現である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗原提示細胞が、マクロファージ、樹状細胞およびB細胞を含む群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記シャペロニン10が、天然由来のシャペロニン10、組換えで生成されたシャペロニン10または合成的に生成されたシャペロニン10である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
シャペロニン10が、真核生物起源である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
シャペロニン10が、哺乳動物起源である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記シャペロニン10が、ヒトシャペロニン10である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記シャペロニン10が、配列表の配列番号:1、配列表の配列番号:2または配列表の配列番号:3に示されるようなポリペプチド配列を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記シャペロニン10が、アセチル化されているか、またはアセチル化されていない、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記シャペロニン10が、シャペロニン10をコードするポリヌクレオチドの形態で投与される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記シャペロニン10をコードするポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結された遺伝的構築物内に位置する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリヌクレオチドが、配列表の配列番号:4に示されるような配列を含む、請求項18または請求項19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
被験体またはその少なくとも1つの組織もしくは器官において抗原提示細胞の機能を調節するための方法であって、前記方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む、方法。
【請求項22】
前記抗原提示細胞が、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記機能が、リンパ節への移動、T細胞の活性化またはT細胞の増殖を含む群から選択される、請求項21または22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
疾患または状態の処置または予防に使用されるときの組成物であって、前記組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤または補助剤とともにシャペロニン10を含み、該シャペロニン10は、少なくとも1つのMHC分子の細胞表面発現のレベルを調節する、組成物。
【請求項25】
前記シャペロニン10が、さらに、少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節する、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記他の細胞表面分子が、共刺激分子である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記MHC分子が、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子および非古典的MHC分子を含む群から選択される、請求項24〜26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記MHCクラスII分子が、HLA−DR、HLA−DPおよびHLA−DQを含む群から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記細胞表面発現が、抗原提示細胞の細胞表面発現である、請求項24〜28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記抗原提示細胞が、マクロファージ、樹状細胞およびB細胞を含む群から選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
疾患または状態の処置または予防に使用されるときの組成物であって、前記組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤または補助剤とともにシャペロニン10を含み、該シャペロニン10は、被験体またはその少なくとも1つの組織もしくは器官において抗原提示細胞の機能を調節する、組成物。
【請求項32】
前記抗原提示細胞が、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択される、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記機能が、リンパ節への移動、T細胞の活性化またはT細胞の増殖を含む群から選択される、請求項31または請求項32のいずれかに記載の組成物。
【請求項34】
疾患または状態の処置または予防のための薬物を製造するためのシャペロニン10の使用であって、該シャペロニン10は、少なくとも1つのMHC分子の細胞表面発現のレベルを調節する、使用。
【請求項35】
前記シャペロニン10が、さらに、少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節する、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記他の細胞表面分子が、共刺激分子である、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記MHC分子が、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子および非古典的MHC分子を含む群から選択される、請求項34〜36のいずれか1項に記載の使用。
【請求項38】
前記MHCクラスII分子が、HLA−DR、HLA−DPおよびHLA−DQを含む群から選択される、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
前記細胞表面発現が、抗原提示細胞の細胞表面発現である、請求項34〜38のいずれか1項に記載の使用。
【請求項40】
前記抗原提示細胞が、マクロファージ、樹状細胞およびB細胞を含む群から選択される、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
疾患または状態の処置または予防のための薬物を製造するためのシャペロニン10の使用であって、該シャペロニン10は、被験体またはその少なくとも1つの組織もしくは器官において抗原提示細胞の機能を調節する、使用。
【請求項42】
前記抗原提示細胞が、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択される、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記機能が、リンパ節への移動、T細胞の活性化またはT細胞の増殖を含む群から選択される、請求項41または請求項42のいずれかに記載の使用。
【請求項44】
被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において、1つあるいはそれ以上の免疫調節因子の細胞内での産生、局在性および/または細胞表面発現を調節するための方法であって、前記方法は、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含み、該シャペロニン10は、少なくとも1つのMHC分子または少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルを調節する、方法。
【請求項45】
前記他の細胞表面分子は、共刺激分子である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記MHC分子が、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子および非古典的MHC分子を含む群から選択される、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記MHCクラスII分子が、HLA−DR、HLA−DPおよびHLA−DQを含む群から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記細胞表面発現が、抗原提示細胞の細胞表面発現である、請求項44〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記抗原提示細胞が、マクロファージ、樹状細胞およびB細胞を含む群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
免疫応答を調節する化合物を同定するためのプロセスであって、前記プロセスは:
(a)Cpn10の存在下で、細胞または細胞抽出物を候補化合物と接触させる工程;および
(b)前記細胞の表面上での少なくとも1つのMHC分子の発現が、前記候補化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
を含む、プロセス。
【請求項51】
前記プロセスが:
(c)前記細胞の表面上での少なくとも1つの他の細胞表面分子の発現が、前記候補化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
をさらに含む、請求項50に記載のプロセス。
【請求項52】
免疫応答を調節する化合物を同定する複数の化合物をスクリーニングするためのプロセスであって、前記プロセスは:
(a)Cpn10の存在下で、細胞または細胞抽出物を前記複数の化合物と接触させる工程;および
(b)前記細胞の表面上での少なくとも1つのMHC分子の発現が、前記複数の化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
を含む、プロセス。
【請求項53】
前記プロセスが:
(c)前記細胞の表面上での少なくとも1つの他の細胞表面分子の発現が、前記複数の化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
をさらに含む、請求項52に記載のプロセス。
【請求項54】
被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において、少なくとも1つのMHC分子の細胞表面発現のレベルの調節を誘導するためのプロセスであって、前記プロセスは、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む、プロセス。
【請求項55】
前記プロセスが、被験体またはその少なくとも1つの細胞、組織もしくは器官において、少なくとも1つの他の細胞表面分子の細胞表面発現のレベルの調節をさらに含む方法であって、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む、請求項54に記載のプロセス。
【請求項56】
前記他の細胞表面分子が、共刺激分子である、請求項51、53または55のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項57】
前記MHC分子が、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子および非古典的MHC分子を含む群から選択される、請求項50〜56のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項58】
前記MHCクラスII分子が、HLA−DR、HLA−DPおよびHLA−DQを含む群から選択される、請求項57に記載のプロセス。
【請求項59】
前記細胞表面発現が、抗原提示細胞の細胞表面発現である、請求項50〜58のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項60】
前記抗原提示細胞が、マクロファージ、樹状細胞およびB細胞を含む群から選択される、請求項59に記載のプロセス。
【請求項61】
免疫応答を調節する化合物を同定するためのプロセスであって、前記プロセスは:
(a)Cpn10の存在下で細胞または細胞抽出物を候補化合物と接触させる工程;および
(b)前記細胞のリンパ節への移動、または、T細胞の増殖を活性化する能力および/もしくは引き起こす能力が、前記候補化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
を含む、プロセス。
【請求項62】
免疫応答を調節する化合物を同定する複数の化合物をスクリーニングするためのプロセスであって、前記プロセスは:
(a)Cpn10の存在下で細胞または細胞抽出物を前記複数の化合物と接触させる工程;および
(b)前記細胞のリンパ節への移動、または、T細胞の増殖を活性化する能力および/もしくは引き起こす能力が、前記複数の化合物と接触することで調節されるかを判定する工程
を含む、プロセス。
【請求項63】
前記細胞が、抗原提示細胞である、請求項61または請求項62に記載のプロセス。
【請求項64】
前記抗原提示細胞が、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択される、請求項63に記載のプロセス。
【請求項65】
被験体またはその少なくとも1つの組織もしくは器官において、抗原提示細胞の機能を調節するためのプロセスであって、前記プロセスは、有効量のシャペロニン10を投与する工程を含む、プロセス。
【請求項66】
前記抗原提示細胞が、マクロファージ、樹状細胞またはB細胞を含む群から選択される、請求項65に記載のプロセス。
【請求項67】
前記機能が、リンパ節への移動、T細胞の活性化またはT細胞の増殖を含む群から選択される、請求項65または請求項66に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−528297(P2009−528297A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556616(P2008−556616)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000254
【国際公開番号】WO2007/098557
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(505165000)シーバイオ リミテッド (5)
【Fターム(参考)】