説明

抗原提示細胞の活性化処理方法

【課題】疾病抗原特異的CD8+CTLを含む免疫担当細胞をin vivo及び/又はin vitroにおいて効率よく誘導させることができる活性化抗原提示細胞、該活性化抗原提示細胞を含む医薬、該活性化抗原提示細胞を用いた治療・予防方法、該活性化抗原提示細胞を用いて誘導された疾病抗原特異的CTLを含む免疫担当細胞の誘導方法、該方法によって誘導された免疫担当細胞、該免疫担当細胞を含む医薬、及び該免疫担当細胞を用いた治療・予防方法の提供。
【解決手段】抗原提示細胞を疾病抗原で感作するのに加えて、ビスホスホネート及び細胞壁骨格成分で共感作することにより、共感作しない場合に比較して、疾病抗原特異的CD8+CTLの割合及び細胞数を増加させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビスホスホネート、細菌細胞壁骨格成分及び疾病抗原で共感作する工程を含む抗原提示細胞の活性化処理方法に関する。また本発明は、該抗原提示細胞を含む医薬、該抗原提示細胞を用いた治療・予防方法、該抗原提示細胞を用いた免疫担当細胞の誘導方法、該誘導方法によって誘導された免疫担当細胞、該免疫担当細胞を含む医薬、該免疫担当細胞を用いた治療・予防方法、及び抗原提示細胞の活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
がんの治療方法としては手術による切除、放射線、抗がん剤を用いた化学療法が行われている。近年ではそれらの療法以外にも様々な治療方法が研究され、実用化されている。その中の一つに免疫細胞を利用した免疫細胞療法がある。
【0003】
免疫細胞療法には、リンパ球を体外でリンフォカインにより活性化して体内に戻すLAK(Lymphokine Activated Killer)療法、病変を特異的に認識・傷害する細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T Lymphocyte、以下CTLとも記す)を用いたCTL療法、及び樹状細胞(Dendritic cell、以下DCとも記す)を用いた樹状細胞療法等が含まれる。
【0004】
前記樹状細胞療法は、疾病抗原を直接又は細胞内でプロセッシングした後にMHC(Major Histocompatibility antigen Complex、主要組織適合抗原複合体)に提示させた樹状細胞を用い、体内で病原を選択的に攻撃する疾病抗原特異的CTLを誘導し、治療を行う療法である。提示させる前記疾病抗原には、例えば、がん抗原蛋白質若しくはペプチド、感染症抗原蛋白質若しくはペプチド、又はその一部が含まれる(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。
【0005】
疾病抗原で感作した樹状細胞とリンパ球を混合培養して樹状細胞でリンパ球を刺激することによりin vitro(体外)で疾病抗原特異的CTLを誘導できる。例えば、がん抗原蛋白質若しくはペプチド又は感染症抗原蛋白質若しくはペプチドを感作した樹状細胞を使用した場合、1回の混合培養で誘導される疾病抗原CTLの増加は、前記樹状細胞を使用しない場合に比べて5〜20倍である。
【0006】
がん抗原蛋白質若しくはペプチド又は感染症抗原蛋白質若しくはペプチドを感作した樹状細胞を用いた樹状細胞療法では、in vivo(体内)の疾病抗原特異的CTLの誘導効率、すなわち、全リンパ球に占めるCTLの割合が2〜14倍まで上昇することが知られている。
【0007】
樹状細胞による疾病抗原特異的CTLの誘導効率を高めることにより樹状細胞療法の効果を一層良好なものにするため様々な方法が行われている。
【0008】
1つは、樹状細胞を疾病抗原で感作するのに加えて、さらに樹状細胞上のToll様受容体(Toll like receptor、以下TLRと記す)と反応する薬剤等を樹状細胞に反応させて樹状細胞の抗原提示能力を高めることにより、直接的に疾病抗原特異的CTLの誘導効率を高める方法である(TLRを介してのアジュバント効果、例えば、非特許文献3、非特許文献4参照)。例えば、BCG−CWS(Bacillus of Calmette and Guerin−Cell Wall Skelton)はマイコバクテリウムボビス(牛結核菌)のカルメットーゲラン菌から抽出・精製した成分であり、主成分はミコール酸アラビノガラクタン・ペプチドグリカンから構成される。そのためBCG−CWSは細菌ペプチドグリカンのレセプターとして働くTLR2/4を介して刺激し樹状細胞の抗原提示能を高める。
【0009】
他の手法としては、樹状細胞を疾病抗原で感作するのに加えて、樹状細胞上のMHC分子以外の抗原提示分子、例えばCD1d(Cluster Differentiation 1d)分子上に糖脂質等のようなものを提示させ、疾病抗原特異的CTL以外のiNKT細胞(invariant Natural Killer T cells)等を含む免疫担当細胞を活性化し、この活性化した免疫担当細胞を介して間接的に疾病抗原特異的CTLの誘導効率を高める方法である(疾病抗原特異的CTL以外の免疫担当細胞を介してのアジュバント効果、例えば、非特許文献5、非特許文献6参照)。
【0010】
また、ビスホスホネートと疾病抗原で共感作することで樹状細胞を活性化し、CTLの誘導効率を高める方法も知られている(特許文献1、非特許文献7)。
【0011】
しかしながら、上記のTLRを介しての直接的なアジュバンド効果、又は疾病抗原特異的CTL以外の免疫担当細胞を介しての間接的なアジュバント効果による疾病抗原特異的CTL誘導の上昇では未だ不十分であり、さらに効率よく疾病抗原特異的CTLを誘導できる技術の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2007/029689
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Blood 2004,103,383−389
【非特許文献2】Proc Natl Acad Sci U S A. 2001,98,8809−8814
【非特許文献3】Nat Rev Immunol. 2004,4,449−511
【非特許文献4】Cancer Res. 2004,64,5461−5470
【非特許文献5】J Clin Invest. 2004,114,1800−1811
【非特許文献6】J Exp Med. 2002,195,617−624
【非特許文献7】Blood 2007,110,921−927
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、疾病抗原特異的CD8+CTLをin vivo及び/又はin vitroにおいて効率よく誘導させるための抗原提示細胞(例えば、樹状細胞等)の活性化処理方法、該活性化抗原提示細胞を含む医薬、該活性化抗原提示細胞を用いた治療・予防方法、該活性化抗原提示細胞を用いた疾病抗原特異的CD8+CTLの誘導方法、該方法によって誘導された免疫担当細胞、該免疫担当細胞を含む医薬、該免疫担当細胞を用いた治療・予防方法、及び抗原提示細胞の活性化剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記課題を解決するために研究を行った。その結果、樹状細胞を疾病抗原で感作するのに加えてビスホスホネート及び細菌細胞壁骨格成分で共感作すると、ビスホスホネート及び細菌細胞壁骨格成分を添加しない場合に比べ、疾病抗原特異的CTLの全リンパ球に占める割合及び細胞数が著しく増加することを見出し、本発明を完成した。例えば、ビスホスホネート及び細菌細胞壁骨格成分添加することにより、添加しない場合に比べて全リンパ球に占める疾病抗原特異的CTLの割合が約6.0倍高くなり、細胞数として疾病抗原特異的CTLが約19倍になりうる。ただし、本発明は、これらの数値に限定されない。ビスホスホネートも細菌細胞壁骨格成分も樹状細胞を活性化する作用は知られているが、両方を合わせて使用することにより、単なる効果の上乗せではなく、想定していた以上の相乗効果が見られることが確認された。本発明によれば、疾病抗原特異的CD8+CTLを誘導してがん及び/又は感染症を治療・予防する免疫細胞療法のさらなる発展が促される。
【0016】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0017】
(1)抗原提示細胞の活性化処理方法であって、ビスホスホネート、細菌細胞壁骨格成分及び疾病抗原で前記抗原提示細胞を共感作する工程を含むことを特徴とする抗原提示細胞の活性化処理方法;
(2)前記抗原提示細胞が、樹状細胞、未成熟樹状細胞、人工抗原提示細胞からなる群から選択される(1)に記載の抗原提示細胞の活性化処理方法;
(3)前記ビスホスホネートが下記一般式(I)で表される化合物、その塩、及び、それらの水和物であって、
【化1】

上記式(I)中、Rは、水素原子又は低級アルキル基であり、RとRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、アリール基又は置換されたアリール基、アルキル基又は置換されたアルキル基、低級アルキルアミノ基、アルアルキル基、シクロアルキル基及び複素環式基からなる群から選択され、又はRとRは同じ環状構造の一部を形成し、
上記RとRにおける置換基としては、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、アルコキシ基、アリール基、アリールチオ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル基、複素環式基等からなる群から選択される(1)又は(2)に記載の抗原提示細胞の活性化処理方法;
(4)前記ビスホスホネートが、ゾレドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸、インカドロン酸、エチドロン酸、それらの塩、及び、それらの水和物からなる群から選択される(1)から(3)のいずれか一つに記載の抗原提示細胞の活性化処理方法;
(5)前記共感作における前記ビスホスホネートの濃度が、0.001〜20μMである(1)から(4)のいずれかに一つに記載の抗原提示細胞の活性化処理方法;
(6)前記共感作における前記ビスホスホネートの濃度が、0.001〜5μMである(5)に記載の抗原提示細胞の活性化処理方法;
(7)前記細菌細胞壁骨格成分がBCG−CWSであることを特徴とする(1)から(6)に記載の抗原提示細胞の活性化処理方法;
(8)前記疾病抗原が、がん抗原又は感染症抗原蛋白質、がん抗原又は感染症抗原ペプチド、がん細胞又は感染症細胞の細胞融解物、アポトーシス細胞、ネクローシス細胞、及び、それらの熱処理物からなる群から選択される(1)から(7)のいずれか一つに記載の抗原提示細胞の活性化処理方法;
(9)前記共感作における前記疾病抗原の濃度が、0.01〜20μg/mLである(1)から(8)のいずれか一つに記載の抗原提示細胞の活性化処理方法;
(10)前記共感作における前記疾病抗原の濃度が、0.1〜2μg/mLである(9)に記載の抗原提示細胞の活性化処理方法;
(11)活性化抗原提示細胞の生産方法であって、(1)から(10)のいずれか一つに記載の活性化処理方法で抗原提示細胞を処理することを含む活性化抗原提示細胞の生産方法;
(12)(11)に記載の生産方法により生産された活性化抗原提示細胞、
(13)がん及び/又は感染症のための医薬組成物であって、(12)に記載の活性化抗原提示細胞を含む医薬組成物;
(14)前記抗原提示細胞が、自己由来又はHLAを同じくする他家由来である(13)に記載の医薬組成物;
(15)がん及び/又は感染症の予防・治療方法であって、(12)に記載の活性化抗原提示細胞を投与することを含む予防・治療方法;
(16)前記抗原提示細胞が、自己由来又はHLAを同じくする他家由来である(15)に記載の予防・治療方法。
【0018】
(17)免疫担当細胞の誘導方法であって、下記工程(i)及び(ii)を含むことを特徴とする免疫担当細胞の誘導方法。
(i) ビスホスホネート、細菌細胞壁骨格成分及び疾病抗原で抗原提示細胞を共感作する工程、
(ii)前記共感作と同時又はその後に、前記抗原提示細胞とリンパ球とを混合培養する工程;
(18)誘導される免疫担当細胞が、疾病抗原特異的CD8+CTLを含む(17)に記載の免疫担当細胞の誘導方法;
(19)前記抗原提示細胞が、樹状細胞、未成熟樹状細胞、人工抗原提示細胞からなる群から選択される(17)又は(18)に記載の免疫担当細胞の誘導方法;
(20)前記ビスホスホネートが下記一般式(I)で表される化合物、その塩、及び、それらの水和物であって、
【化1】

上記式(I)中、Rは、水素原子又は低級アルキル基であり、RとRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、アリール基又は置換されたアルキル基、アルキル基又は置換されたアルキル基、低級アルキルアミノ基、アルアルキル基、シクロアルキル基及び複素環式基からなる群から選択され、又はRとRは同じ環状構造の一部を形成し、上記RとRにおける置換基としては、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、アルコキシ基、アリール基、アリールチオ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル基、複素環式基からなる群から選択される(17)から(19)いずれか1つに記載の免疫担当細胞の誘導方法;
(21)前記ビスホスホネートが、ゾレドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸、インカドロン酸、エチドロン酸、それらの塩、及び、それらの水和物からなる群から選択される(17)から(20)のいずれか一つに記載の免疫担当細胞の誘導方法;
(22)前記共感作における前記ビスホスホネートの濃度が、0.001〜20μMである(17)から(21)のいずれか一つに記載の免疫担当細胞の誘導方法;
(23)前記共感作における前記ビスホスホネートの濃度が、0.001〜5μMである(22)に記載の免疫担当細胞の誘導方法;
(24)前記細菌細胞壁骨格成分がBCG−CWSである(17)から(23)のいずれか一つに記載の免疫担当細胞の誘導方法;
(25)前記疾病抗原が、がん抗原又は感染症抗原蛋白質、がん抗原又は感染症抗原ペプチド、がん細胞又は感染症細胞の細胞融解物、アポトーシス細胞、ネクローシス細胞、及び、それらの熱処理物からなる群から選択される(17)から(24)のいずれか一つに記載の免疫担当細胞の誘導方法;
(26)前記共感作における前記疾病抗原の濃度が、0.01〜20μg/mLである(17)から(25)のいずれか一つに記載の免疫担当細胞の誘導方法;
(27)前記共感作における前記疾病抗原の濃度が、0.1〜2μg/mLである(26)に記載の免疫担当細胞の誘導方法。
【0019】
(28)免疫担当細胞の生産方法であって、(17)から(27)のいずれか一つに記載の誘導方法により免疫担当細胞を誘導することを含む免疫担当細胞の生産方法;
(29)(28)に記載の生産方法により生産された免疫担当細胞;
(30)がん及び/又は感染症のための医薬組成物であって、(29)に記載の免疫担当細胞を含む医薬組成物;
(31)前記免疫担当細胞が、自己由来又はHLAを同じくする他家由来である(30)に記載のがん及び/又は感染症のための医薬組成物、
(32)がん及び/又は感染症の予防・治療方法であって、(29)に記載の免疫担当細胞を投与することを含む予防・治療方法;
(33)前記免疫担当細胞が、自己由来又はHLAを同じくする他家由来である(32)に記載のがん及び/又は感染症の予防・治療方法。
【0020】
(34)ビスホスホネートと細菌細胞壁骨格成分とを含む抗原提示細胞の活性化剤;
(35)前記抗原提示細胞が、樹状細胞、未成熟樹状細胞、人工抗原提示細胞からなる群から選択される(34)に記載の抗原提示細胞の活性化剤;
(36)前記ビスホスホネートが下記一般式(I)で表される化合物、その塩、及び、それらの水和物であって、
【化1】

上記式(I)中、Rは、水素原子又は低級アルキル基であり、RとRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、アリール基又は置換されたアリール基、アルキル基又は置換されたアルキル基、低級アルキルアミノ基、アルアルキル基、シクロアルキル基及び複素環式基からなる群から選択され、又はRとRは同じ環状構造の一部を形成し、
上記RとRにおける置換基としては、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、アルコキシ基、アリール基、アリールチオ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル基、複素環式基からなる群から選択される(34)又は(35)記載の抗原提示細胞の活性化剤;
(37)前記ビスホスホネートが、ゾレドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸、インカドロン酸、エチドロン酸、それらの塩、及びそれらの水和物からなる群から選択される(34)から(36)のいずれか一つに記載の抗原提示細胞の活性化剤;
(38)前記細菌細胞壁骨格成分がBCG−CWSであることを特徴とする(34)から(37)のいずれか一つに記載の抗原提示細胞の活性化剤。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
第一の実施形態:活性化抗原提示細胞の調製
まず、本発明の活性化抗原提示細胞について詳説する。
【0022】
本発明の活性化抗原提示細胞とはビスホスホネート、細菌細胞壁骨格成分及び疾病抗原で共感作した抗原提示細胞である。
【0023】
本発明に用いる前記抗原提示細胞は、特に制限されず、例えば、未成熟樹状細胞、成熟樹状細胞、その他の抗原提示細胞、人工抗原提示細胞及びそれらの混合物のいずれを用いてもよい。その中でも、未成熟樹状細胞及び成熟樹状細胞が好ましく、より好ましくは、未成熟樹状細胞である。ビスホスホネート、細菌細胞壁骨格成分と疾病抗原とで共感作した場合には未成熟樹状細胞のほうがより好適に疾病抗原特異的CTL及び/又はγδT細胞を誘導させることができるためである。また、前記人工抗原提示細胞とは、人為的に作製した抗原提示細胞であって、例えば、少なくとも主要組織適合抗原(MHC)クラスI及び補助刺激分子(例えば、CD80、CD86など)を発現させるよう遺伝子工学的に作製した細胞が挙げられる。さらに、前記人工抗原提示細胞は、腫瘍由来の細胞株を上述のようにMHCクラスI及び補助刺激分子を発現するよう改変したものであってもよい。前記細胞株の例としては、乳がん由来のMDA‐MB‐231(クラスI抗原HLA‐A*0201)、腎がん由来のTUHR10TKB(クラスI抗原HLA‐A*0201/A*2402)、胃がん由来のJR‐st株(クラスI抗原HLA‐A*2402)等が挙げられる。これらの細胞株は、例えば、ATCCやRIKEN BioResource Center等から入手できる。前記人工抗原提示細胞の作製については、米国公開公報US−2005−0048646−A1に開示され、この引用によりその内容の全体がここに組み込まれる。
【0024】
本発明において、ビスホスホネートとは、特に制限されず、ピロリン酸のアナログであって、ピロリン酸骨格のP−O−PのO(酸素原子)をC(炭素原子)で置換した化合物をいう。本発明に用いるビスホスホネートは、例えば、下記一般式(I)で表される化合物、その塩、及び、それらの水和物が挙げられる。
【0025】
【化1】

【0026】
上記式(I)中、Rは、水素原子又は低級アルキル基であり、RとRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキル基、低級アルキルアミノ基、アルアルキル基、シクロアルキル基及び複素環式基からなる群から選択され、またRとRは同じ環状構造の一部を形成してもよい。
上記RとRにおける置換基としては、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、アルコキシ基、アリール基、アリールチオ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル基、複素環式基等からなる群から選択される。
【0027】
本明細書において、ハロゲン原子としては、例えば、フルオロ原子、クロロ原子、臭素原子等;アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘプチル、オクチル、ペンタデカニル基等の直鎖又は分枝鎖C−C30アルキル基等;低級アルキル基としては、例えば、直鎖又は分枝鎖C−C10アルキル基等;アリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル基等;アルアルキル基としては、例えば、アリール−低級アルキル基等;シクロアルキル基としては、例えば、シクロオクチル、アダマンチル等のC−C10シクロアルキル基等;複素環式基としては、ピリジル、フリル、ピロリジニル、イミダゾリル、キノリル、イソキノリル基等をそれぞれ示す。
【0028】
また、本発明において、ビスホスホネートは、薬学的に許容されるものが好ましく、例えば、骨吸収抑制作用を有し、一般的に骨粗鬆症治療薬として使用されるものが挙げられる。その例として、ゾレドロン酸、その塩及び/又はそれらの水和物(例えばゾレドロン酸ナトリウム水和物(ZOMETA(登録商標)、ノバルティスファーマ))、パミドロン酸、その塩及び/又はそれらの水和物(例えばパミドロン酸二ナトリウム・五水和物(AREDIA(登録商標)、ノバルティスファーマ))、アレンドロン酸、その塩及び/又はそれらの水和物(例えばアレンドロン酸ナトリウム三水和物(ONCLAST(登録商標)、萬有製薬))、リセドロン酸、その塩及び/又はそれらの水和物(例えばリセドロン酸ナトリウム水和物)、イバンドロン酸、その塩及び/又はそれらの水和物(例えばイバンドロン酸ナトリウム)、インカドロン酸、その塩及び/又はそれらの水和物(例えばインカドロン酸二ナトリウム)、エチドロン酸、その塩及び/又はそれらの水和物(例えばエチドロン酸二ナトリウム)等が挙げられる。これらの中で、とりわけゾレドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、それらの塩及び/又はそれらの水和物が好ましい。
【0029】
本発明で用いられる細菌細胞壁骨格成分とは、細菌の細胞壁骨格を構成する成分である。細菌としては例えばマイコバクテリア属、ノカルディア属、コリネバクテリア属等が挙げられる。細菌細胞壁骨格成分はこれらの細菌を物理的に粉砕し、除核酸、除蛋白質、脱脂等の精製工程を経て得られる不溶性残渣であり、長鎖ヒドロキシ脂肪酸であるミコール酸やペプチドグリカンを含む高分子である。特に制限はされないが、例えばBCG−CWSが挙げられる。BCG−CWSは牛結核菌から抽出・精製した成分であり、主成分はミコール酸アラビノガラクタン・ペプチドグリカンから構成される。
【0030】
本発明で使用する疾病抗原において、前記「疾病」とは、特に制限されないが、例えば、がんや感染症等である。前記がんとしては、特に制限されず、あらゆるがんを含み、例えば、治療が困難であるがん(前がん状態を含む)等が挙げられる。前記感染症としては、特に制限されず、例えば、エイズ、B型・C型肝炎等のウイルス感染症や、細胞感染、細菌感染、真菌感染、若しくは原虫による感染症等が挙げられる。本発明において使用する疾病抗原の形態は特に制限されず、例えば、がん抗原又は感染症抗原蛋白質及びそのペプチドが挙げられる。また、前記疾病抗原としては、例えば、がん細胞又は感染症細胞の細胞融解物、アポトーシス細胞、ネクローシス細胞、及び、それらの熱処理物を使用できる。
【0031】
前記疾病抗原ががん抗原である場合、そのがん抗原のがんの種類は問わずどのような抗原も用いることができる。例えば、前立腺がん、肝がん、すい臓がん等のどのようながん抗原であっても利用できる。前記がん抗原としては、例えば、MAGE1、MAGE3、GAGE、BAGE及びRAGE等のMAGE遺伝子ファミリーにコードされるものが挙げられる。他のがん抗原としては、例えば、p53、K‐ras、CDK4及びbcl‐c‐abl遺伝子産物等の変異により生じるがん抗原、c‐erb2(neu)蛋白質等のがん細胞で過剰発現されるがん抗原、および、HPV‐16のE7蛋白質等の発がんウイルス抗原等が挙げられる。さらに、がん胎児抗原(CEA)やα‐フェトプロテイン(AFP)等の腫瘍胎児抗原、ならびに前立腺特異的抗原や、白血病およびリンパ腫のB細胞で発現するCD‐10(CALLA抗原)等の分化抗原も使用することができる。
【0032】
また、感染症抗原の感染症の種類も特に制限されず、例えば、エイズやB型・C型肝炎、エプスタインバーウイルス(EBV)感染症、HPV感染症等のウイルス性感染症の中でも難治性疾患も挙げられる。また、マラリア原虫のスポロゾイド周囲蛋白質のような寄生虫の抗原も用いることができる。
【0033】
また、本発明では前記疾病抗原ペプチドとして合成ペプチドを用いることができる。これにより、自己のがん組織等から採取したがん抗原を使用する場合と比べて患者の負担を少なくすることが可能となる。前記がん抗原蛋白質又はペプチドとしては、例えば、下記表1〜3に記載のものが使用でき、これらは当該分野の当業者が容易に入手又は合成できる。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
本発明において、抗原提示細胞をある物質で感作するとは、抗原提示細胞をその物質と反応させることをいい、好ましくは、前記物質を抗原提示細胞の表面上に直接的に又は間接的に提示させることをいう。また、抗原提示細胞を共感作するとは、同時、連続的、又は断続的に2以上の物質で抗原提示細胞を感作することをいう。前記物質として好ましくは、ビスホスホネート、細菌細胞壁骨格成分及び/又は疾病抗原である。
【0038】
次に、本発明の抗原提示細胞の活性化処理方法、及び本発明の活性化抗原提示細胞の生産方法について樹状細胞を抗原提示細胞として用いた下記一例に基づき詳説する。本発明において、抗原提示細胞の活性化処理とは、上述のとおり、抗原提示細胞をビスホスホネート、細菌細胞壁骨格成分及び疾病抗原で共感作することを含む処理をいう。
【0039】
まず、抗原提示細胞(この例では、樹状細胞)の調製について説明する。樹状細胞の調製は、樹状細胞の前駆細胞を得るための試料を取得することから始める。前記試料としては末梢血、骨髄液、臍帯血等が利用できる。入手の容易さ、患者への負担の少なさを考慮して末梢血を利用することが好ましい。採血量は提供者の負担とならない程度の量を採血するのが好ましい。採血する方法としては真空採血管、採血バッグ等による全血採取を利用することができる。また、多量の細胞を確保する必要がある場合には、成分採血装置を用いて単核球成分を採取する方法を用いれば、直接末梢血単核球を入手することが可能である。上記採取した血液には凝固が起こらないようにヘパリンやクエン酸を加えてもよい。
【0040】
次に、採取した血液から樹状細胞の前駆細胞を含む単核細胞を分離する。分離する方法としては、有核細胞を赤血球から分離するいかなる方法を用いることもできる。例えばフィコール分画つまりフィコールパック(Ficoll−Paque)密度勾配又は溶出を利用する方法が一般的に使用される。なお、回収した細胞は血小板等を除去するために培地、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSと記す)等を用いて数回洗浄することが好ましい。
【0041】
次に、回収した単核細胞から樹状細胞の前駆細胞である単球(CD14陽性細胞)を分離する。CD14は樹状細胞の前駆細胞である単球に発現しているマーカーとして知られている。そのため、抗CD14抗体マグネットビーズを用いたMagnetic Cell Sorting(Miltenyi Biotec、以下、MACSと記す)を利用して単球を単離・回収できる。この方法は、簡単でかつ単球細胞の回収率が高いため好ましい。あるいは、回収した単核細胞を培養フラスコに移し、34℃〜38℃、より好ましくは37℃、2%〜10%、より好ましくは5%COの条件下で1時間以上培養し、付着細胞を樹状細胞の前駆細胞として用いる方法等を使用してもよい。
【0042】
その後、得られた樹状細胞の前駆細胞から未成熟樹状細胞あるいは成熟樹状細胞への分化誘導を行う。培養のための培地としてAIM−V培地(インビトロジェン)を使用する。またAIM−V培地のほかに、RPMI−1640培地(インビトロジェン)、ダルベッコ改変イーグル培地(インビトロジェン、以下、DMEMと記す)、TIL(株式会社免疫生物研究所)、表皮角化細胞培地(コージンバイオ株式会社、以下、KBMと記す)、イスコフ培地(インビトロジェン、以下、IMEMと記す)等、細胞培養に使用されている市販の培地を使用することができる。また、必要に応じて0.5〜20%の牛血清、牛胎児血清(以下、FBSと記す)、ヒト血清、ヒト血漿等を添加することができる。
【0043】
未成熟樹状細胞を得る場合、培養培地に分化誘導因子を添加して樹状細胞の前駆細胞を培養することにより未成熟樹状細胞を得る。分化誘導因子としてはサイトカイン類のいずれを使用することもできる。例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(以下、GM−CSFと記す)、インターロイキン4(以下、IL−4と記す。他のインターロイキンについても同様に記す)、ステムセルファクター(以下、SCFと記す)、IL−13、腫瘍壊死因子α(以下、TNF−αと記す)等が、効率よく未成熟樹状細胞を誘導できる。また、必要に応じてIL−1、IL−2、IL−3等を添加することが好ましい。より好ましくはGM−CSFとIL−4との組合せを用いると効率よく誘導することが可能である。培養は34℃〜38℃、好ましくは37℃、2%〜10%、好ましくは5%CO条件下で行い、培養期間は5〜7日間が好ましい。
【0044】
また、成熟樹状細胞を得る場合には、培養開始後5〜7日目にさらなる分化誘導因子を添加して更に培養する。分化誘導因子としてはサイトカイン類のいずれを使用することもできるが、例えば、GM−CSF、IL−4、SCF、IL−1β、IL−6、IL−13、TNF−α、プロスタグランジンE(以下、PGEと記す)等で効率よく成熟樹状細胞を誘導することが好ましい。必要に応じてIL−1、IL−2、IL−3等の添加することが好ましい。より好ましくはGM−CSF、IL−4、IL−6、IL−1β、PGE及びTNF−αの組合せを用いると効率よく誘導することが可能である。培養は34℃〜38℃、好ましくは37℃、2%〜10%、好ましくは5%CO条件下で行い、培養時間としては24〜48時間が好ましい。
【0045】
また、樹状細胞の前駆細胞として造血幹細胞(CD34陽性細胞)を回収し、GM−CSF、TNF−αとflt−3リガンド(FL)、c−kitリガンド(SCF)、又はトロンボポエチン(TPO)を単独、又はこれらの組合せで添加し、未成熟樹状細胞又は成熟樹状細胞を得る方法や、血液又は末梢血単核球を分離したものからパーコール等の比重液を用いて直接樹状細胞分画を回収する方法も利用することができる。
【0046】
次に、得られた抗原提示細胞(この例では、前記未成熟樹状細胞又は成熟樹状細胞)をビスホスホネート、細菌細胞壁骨格成分及び疾病抗原で共感作する。
【0047】
ビスホスホネートの濃度は通常細胞をビスホスホネートにより感作する濃度であればよく、特に限定はされないが、例えば、文献[The Journal of Immunology,2001,Vol.166,5508−5514、又は、Blood,2001,Vol.98,No.5,1616−1618]に記載されているように0.001μMから20μMであることが好ましく、さらには0.001μMから5μMであることが好ましい。
【0048】
細菌細胞壁骨格成分の濃度は、通常細胞を細菌細胞壁骨格成分により感作する濃度であればよく、特に限定はされない。例えば、BCG−CWSの場合20μg/mLである。
【0049】
疾病抗原の濃度は、通常樹状細胞を疾病抗原により感作する濃度であればよく、特に限定はされない。例えば、上述のような疾病抗原蛋白質又はペプチドの場合、文献[Cancer Research,1999,Vol.59,2167−2173、The Journal of Immunology,1995,Vol.154,2257−2265、又は、The Journal of Immunology,1994,153,996−1003]に記載されているように、0.01〜20μg/mLであることが好ましく、さらには0.1〜2μg/mLであることが好ましい。
【0050】
また、疾病抗原としてアポトーシス細胞及び/又はネクローシス細胞を含む細胞群で樹状細胞を感作する場合、前記細胞群の調製方法として、例えば、1)がん細胞又はがん細胞株を培養し自然発生的に形成させる、2)がん細胞又はがん細胞株に対しUV照射(1J/cm・secを2分間)して形成させる、3)がん細胞又はがん細胞株を85℃、10分間熱処理をして形成させる方法等が挙げられる。
【0051】
ビスホスホネート、細菌細胞壁骨格成分及び疾病抗原で共感作するタイミングは特に制限されず、それぞれの成分を含む溶液を順に添加したり、3成分を同一の液に懸濁して添加したりすることができる。
【0052】
このような本発明の活性化処理方法により調製(生産)された本発明の活性化抗原提示細胞(この例では活性化樹状細胞)は、疾病抗原特異的CD8+CTLを効率よく誘導することができる。例えば、in vitro及びin vivoのいずれの場合でも、本発明の活性化抗原提示細胞は、疾病抗原特異的CTLを誘導することができる医薬として使用することができる。特に、医薬としては、がん及び/又は感染症の治療・予防剤用途が好ましい。本発明において、免疫担当細胞とは、T細胞、iNKT細胞、NK細胞(Natural Killer Cell)、B細胞、単球、樹状細胞、マクロファージ等を含む抗原の特異性を認識したり及び/若しくは特異的免疫反応に携わったりする能力がある細胞、又はこれらの1種類若しくは2種類以上を含む細胞群をいう。本発明の活性化抗原提示細胞は、in vitroで使用する場合、疾病抗原特異的CD8+CTLを誘導することができる組成物として利用することが可能である。また、本発明の活性化抗原提示細胞は、in vivoで使用する場合、遊離ビスホスホネート、細菌細胞壁骨格成分及び疾病抗原を洗浄、除去したのち、疾病抗原特異的CD8+CTLを誘導することができる樹状細胞ワクチンなどのワクチンとして使用可能である。また、本発明の活性化抗原提示細胞をin vitro又はin vivoで用いるいずれの場合にも、必要に応じて、例えば、サイトカイン(例えばIL−2)やその他の蛋白質(例えばアルブミン)等を併用してもよい。
【0053】
第二の実施形態:本発明の活性化抗原提示細胞を含む医薬
次に、本発明の活性化抗原提示細胞を用いた医薬について、上述と同様に、樹状細胞を抗原提示細胞として用いた一例に基づき説明する。
【0054】
まず、前述の第一の実施形態で得られた活性化抗原提示細胞(活性化樹状細胞)を遠心分離法等によって回収する。次に、回収した前記細胞を洗浄する。洗浄する液体としては等張であり、医薬品として用いることできる液体であればいずれを用いることも可能である。この後患者に投与することを考えると、生理食塩水、PBS等を利用することが好ましい。そして、回収された樹状細胞は生理食塩水に懸濁されることで医薬として用いることが可能となる。また、必要に応じてアルブミン等の血清成分やサイトカインを添加することができる。特に、当該医薬としてはがん及び/又は感染症の治療・予防剤用途であることが好ましい。したがって、関連する実施形態として、本発明はがん及び/又は感染症のための医薬の製造するための本発明の活性化抗原提示細胞の使用を含む。
【0055】
第三の実施形態:本発明の活性化抗原提示細胞を用いた治療・予防方法
次に、本発明の樹状細胞を用いた治療・予防方法について、上述と同様に、樹状細胞を抗原提示細胞として用いた一例に基づき説明する。
【0056】
前述の第一の実施形態で得られた本発明の活性化抗原提示細胞(活性化樹状細胞)、又は、第二の実施形態により得られた本発明の医薬を投与することにより、がん及び/又は感染症に対する治療・予防を行うことができる。
【0057】
投与する細胞数としては、投与方法、患者の状態に応じて適宜選択することが可能であり、特に制限されない。通常一回の投与で10〜10個/人であることが好ましく、より好ましくは10個/人以上である。投与回数は患者の状態により異なるが、通常4〜6回を1クールとして投与する。投与間隔は投与する樹状細胞数に依存し、特に制限されない。通常1週間から1ヶ月に一度であることが好ましく、さらには投与する樹状細胞数が5×10個である場合には2週間に1度、2×10以上であるならば1ヶ月に一度投与することが好ましい。投与する方法は、特に制限されないが、静脈、皮下、皮内等へ注射により注入することも、所属リンパ節へ直接注入することも、直接病変部に注入することも、点滴として全身投与することも可能である。あるいは、病変部近辺の動脈から注入することも可能である。
【0058】
これら疾病抗原特異的CTLは直接的にがん細胞や感染細胞を殺傷するばかりでなく、インターフェロンγ(以下、IFNγと記す)等のサイトカインを介して間接的にこれら細胞を傷害することができるため、例えば、がんや感染症等、様々な治療・予防に有効に用いることが可能である。本発明の活性化抗原提示細胞をワクチンとして用いることの利点としては、以下のことが挙げられる。すなわち、従来の疾病抗原のみで感作した樹状細胞ワクチンでは、疾病抗原特異的CD8+CTLのみが活性化される。それに対して、本発明の活性化抗原提示細胞のワクチンは、疾病抗原特異的CD8+CTLの活性化に加えてγδT細胞を活性化することもできる。さらには、これら疾病抗原特異的CD8+CTL及び/又はγδT細胞から誘導されたサイトカインは、ヘルパーT細胞、NK細胞やiNKT細胞及びB細胞を活性化することができる。これにより、生体内全体の液性及び細胞性免疫系が活性化され、その結果、治療・予防効果の向上をもたらすことができる。また、活性化処理に用いる抗原提示細胞は、患者の自己由来又はHLAを同じくする他家由来であることが好ましい。患者に投与された際に患者自身の免疫に排除されることなく、その機能を発揮することが可能となるからである。
【0059】
第四の実施形態:疾病抗原特異的CD8+CTLを含む免疫担当細胞の誘導方法
次に、本発明の免疫担当細胞の誘導方法について説明する。本発明の免疫担当細胞の誘導方法は、疾病抗原特異的CD8+CTLを含む免疫担当細胞を誘導する方法であって、より具体的には、ビスホスホネート、細菌細胞壁骨格成分及び疾病抗原で抗原提示細胞を共感作する工程(i)、及び前記共感作と同時又はその後に、前記抗原提示細胞とリンパ球とを混合培養する工程(ii)を含む誘導方法である。ここで、免疫担当細胞とは、上述のとおり、T細胞、iNKT細胞、NK細胞、B細胞、単球、樹状細胞、マクロファージ等を含み、抗原の特異性を認識したり及び/若しくは特異的免疫反応に携わったりする能力がある細胞、又はこれらの1種類若しくは2種類以上を含む細胞群をいう。
【0060】
まず、第一の実施形態と同様に抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)の活性化処理を行う(工程(i))。そして、前記共感作と同時又はその後に、前記抗原提示細胞と反応細胞を培養容器に播種して混合培養をする(工程(ii))。これにより、前記活性化処理された抗原提示細胞からの疾病抗原特異的刺激を受け、前記反応細胞中の疾病抗原特異的CD8+CTLが活性化され得る。さらに、ビスホスホネート感作による抗原提示細胞代謝系阻害によって抗原提示細胞表面上に提示されたIPP(Isopentenyl diphosphate、イソペンテニル二リン酸)様分子からの刺激を受け、前記反応細胞中のγδT細胞が活性化され得る。γδT細胞から産生されたIFNγは、前記疾病抗原特異的CD8+CTLの更なる活性化と増殖を助けることができる。
【0061】
また、細菌細胞壁骨格成分(ペプチドグリカン等)により感作された抗原提示細胞、例えば未成熟樹状細胞はペプチドグリカンのレセプターとして働くTLR2/4を介して刺激され成熟化が促進される。BCG−CWSにより成熟化された樹状細胞はTNFα、PGE2などで成熟化した樹状細胞と異なり貪食能を保持しているため、がん抗原蛋白質等の疾病抗原を取り込んでプロセッシングして、疾病抗原分子をHLA上に提示することができる。また樹状細胞上のCD40、CD83、CD80及びまたはCD86等の共刺激分子の発現が向上しているため、CTLを活性化することができる。
【0062】
なお、ここでいう反応細胞とは、例えば、ヒトリンパ球であって、末梢血由来の単核球等が好ましい。この反応細胞は、自己由来又はHLAを同じくする他家由来であることが好ましい。
【0063】
前記培養容器は特に限定されるものではなく、通常、当該分野で使用される培養用プレート、シャーレ、フラスコ、バッグ等を利用することができる。各々の細胞群を播種する濃度は実施する状況に応じて自由に設定することができる。
【0064】
前記抗原提示細胞が樹状細胞の場合、樹状細胞と反応細胞との混合培養には、例えば、AIM−V培地を用いて培養することができる。また、AIM−V培地のほか、RPMI−1640培地、DMEM、TIL、KBM、IMEM等、細胞培養に使用されている市販の培地を利用することができる。さらに必要に応じて5%〜20%の牛血清、FBS、ヒト血漿等の血清、サイトカイン等を添加してもよい。培養は、例えば、34℃〜38℃、好ましくは37℃で、例えば、2%〜10%、好ましくは5%のCO条件下で行う。培養期間としては、特に制限されないが、5〜21日間が好ましく、さらに7〜14日間が好ましい。播種する樹状細胞及び反応細胞の数は播種する容器及び用途に応じて設定することができる。また、樹状細胞と反応細胞を混合する割合は状況に応じて適宜設定することが可能であり、特に制限されない。反応細胞中の疾病抗原特異的CD8+CTLの割合を増加させるという目的から、反応細胞と樹状細胞の割合は20:1から2:1が好ましい。
【0065】
このような本発明の誘導方法により、疾病抗原特異的CD8+CTLを含む本発明の免疫担当細胞を調製(生産)することが可能である。また、このようにして得られた本発明の免疫担当細胞は、そのまま又は本発明の活性化抗原提示細胞で繰り返し刺激することにより、より高い割合で疾病抗原特異的CD8+CTLを含む免疫担当細胞として免疫細胞療法に用いることができ、がんや感染症に対してより高い治療・予防効果が期待できる。
【0066】
in vitroで本発明の免疫担当細胞を調製することの利点としては、本発明の活性化抗原提示細胞によって反応細胞を繰り返し刺激することにより、がん細胞や感染症細胞を直接殺傷可能な多量の免疫担当細胞を簡便に調製できることが挙げられる。
【0067】
第五の実施形態:本発明の免疫担当細胞を含む医薬
次に、本発明の免疫担当細胞を含む医薬について説明する。
【0068】
まず、前述の第四の実施形態で得られた疾病抗原特異的CD8+CTLを含む本発明の免疫担当細胞を遠心分離法等によって回収する。次に、回収した細胞を洗浄する。洗浄する液体は、等張であり、医薬品として用いることできる液体であればいずれを用いることも可能である。この後、患者に投与することを考えると生理食塩水、PBS等を利用することが好ましい。そして、回収された疾病抗原特異的CD8+CTLを含む免疫担当細胞は、生理食塩水に懸濁されることで医薬として用いることが可能となる。また、必要に応じてサイトカイン等を添加することができる。当該医薬としては特に、がん及び/又は感染症の治療・予防剤用途が好ましい。したがって、関連する実施形態として、本発明は、がん及び/又は感染症のための医薬の製造するための本発明の活性化抗原提示細胞の使用を含む。
【0069】
第六の実施形態:本発明の免疫担当細胞を用いた治療・予防方法
次に、本発明の免疫担当細胞を用いた治療・予防方法について説明する。
【0070】
前述の第四の実施形態で得られた本発明の免疫担当細胞、又は、第五の実施形態により得られた本発明の医薬を投与することにより、がん及び/又は感染症に対する治療・予防を行うことができる。
【0071】
投与する細胞数としては、投与方法、患者の状態に応じて適宜選択することが可能であり、特に制限されない。通常1回の投与数は10〜1012個/人であることが好ましく、より好ましくは10個/人以上である。投与回数は患者の状態により異なるが、通常4−6回を1クールとして投与する。投与間隔は、特に制限されないが、例えば2週間に1回又は1ヶ月に1回投与することが好ましい。投与する方法は、特に制限されないが、静脈、皮下、皮内等への注射により注入することも、所属リンパ節へ直接注入することも、直接病変部に注入することも、点滴として全身投与することも可能である。あるいは、病変部近辺の動脈から注入することも可能である。また、本発明の免疫担当細胞は、患者の自己由来又はHLAを同じくする他家由来であることが好ましい。患者の自己由来又はHLAを同じくする他家由来であることで、患者に投与された際に、患者自身の免疫系に排除されることなく、その機能を発揮することが可能となるからである。
【0072】
第七の実施形態:抗原提示細胞の活性化剤
次に、本発明の抗原提示細胞の活性化剤について説明する。
【0073】
本発明の抗原提示細胞の活性化剤はビスホスホネートと細菌細胞壁骨格成分を含むものである。本発明の抗原提示細胞の活性化剤はex vivoで抗原提示細胞を培養する際に、培地に添加して抗原提示細胞の活性化を促すことができる。ビスホスホネート、細菌細胞壁骨格成分の量は最終濃度が実施形態1に記載された量となるように適宜設定することができる。
【0074】
また、適当な溶媒、例えば生理食塩水等に懸濁して体内に投与し、体内に存在する抗原提示細胞を活性化することもできる。体内に投与する場合の投与量はビスホスホネート、細菌細胞壁骨格成分の添付文書に記載された量に基づき適宜設定することができる。
【0075】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明がこれに限定されるものでないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0076】
<実施例1−1:樹状細胞の採取及び調製>
健常人ドナーから末梢血を75mL採血した。この健常人末梢血から単核細胞を取得した。この際、血球分離用比重液を用いて単核細胞層を回収した。回収した細胞から血小板等を除去するために10% FBSを添加したAIM−Vで数回洗浄し、次いでMACSにより単球(CD14陽性細胞)を単離した。
【0077】
得られた単球(樹状細胞前駆細胞)から樹状細胞への分化誘導を行った。単球をAIM−Vに500U/mL GM−CSF(IMMUNEX)、500U/mL IL−4(Osteogenetics GmbH)、5%AB血清を含むAIM−V培地により培養した。5日間培養を行い、未成熟樹状細胞を調製した。
【0078】
<実施例1−3:ゾレドロン酸、BCG−CWS及び疾病抗原ペプチドで共感作した樹状細胞の調製及び反応細胞の調製>
上述のとおり調製した末梢血由来の未成熟樹状細胞の懸濁液に、ゾレドロン酸としてZOMETA(ノバルティスファーマ)を0.1μMとなるように添加した。また同時にBCG−CWS(20μg/mL)を加え24時間培養し、抗原提示細胞(APC)を調製した。
【0079】
反応細胞として、樹状細胞調製のためにCD14陽性細胞を単離したあとの残りの細胞(CD14陰性細胞集団、主にT細胞集団)であって、10%FBS、10%ジメチルスルフォキシド(DMSO)を添加したAIM−V培地に懸濁して凍結保存された細胞を解凍、洗浄して用いた。
【0080】
疾病抗原ペプチドとしてメラノーマ抗原MART−1改変抗原A27L(アミノ酸配列:ELAGIGILTV)を最終濃度2μg/mLとなるように添加し、APCとリンパ球(抗原提示細胞と同じドナー由来)による混合リンパ球培養反応(Mixed Lymphocyte Reaction;MLR)を行った。培養は37℃、5%CO条件下で7日間及び14日間行った。7日後、14日後に抗原特異的CD8陽性T細胞を検出するため、テトラマーアッセイを行った。
【0081】
MLR開始から14日後に標識抗体と抗原(A27L)特異的テトラマーを用いてフローサイトメーターで全細胞中にしめるA27L特異的CD8+CTL(疾病抗原特異的CD8+CTL)の割合を測定した。
【0082】
HLA−A*0201 A27Lテトラマー陽性、CD8陽性細胞が占める割合を算出する手順として、まずPE標識されたA27Lテトラマー(MBL)を培養後PBSで洗浄した細胞に添加した。遮光の状態で室温20分染色後、FITC標識された抗CD8抗体(BD Pharmingen)を添加し、遮光の状態で4℃、20分間染色した。コントロールには各抗体のアイソタイプを利用した。細胞の測定はEpics XL・MCLを用い、測定結果の解析にはEpics32を用いた。
【0083】
その結果を下記表1に示す。同表に示すとおり、imDCに比べBCG−CWSを感作したDCはリンパ球との14日間の培養でA27L陽性細胞数を増加させることが確認された。また、ゾレドロン酸を添加することでその効果は増強された。
【0084】
【表4】

【0085】
また、JCOCB細胞株(HLA−A*0201+Mart1+)を標的細胞としてMLRにより誘導されたリンパ球の細胞傷害活性をテラスキャンアッセイにより測定した。
【実施例2】
【0086】
<細胞傷害活性の測定>
実施例1と同様の方法によりMLRを行った。
【0087】
MLRを開始してから14日目のリンパ球を回収した。HLA−A*0201陽性、MART1陽性のヒトメラノーマ細胞株JCOCBをカルセイン(同仁化学)で標識し、標的細胞とした。回収したリンパ球をエフェクター細胞とし、エフェクター細胞:標的細胞が20:1、もしくは40:1となるように混合して96well half plateに播種した。4時間37℃、5%CO条件下で培養を行った。
【0088】
混合培養後の細胞を回収し、テラスキャン(ミネルバテック)を用いてWell内の傾向強度を測定し細胞傷害活性測定した。
【0089】
下記表2に、ZOMETA、BCG−CWS及びA27Lで感作した活性化樹状細胞によって誘導されたA27L抗原特異的CD8+CTLによりアポトーシス細胞の割合(%)を測定した結果を示す。imDCで誘導されたリンパ球でも細胞株に対して傷害活性を有しており、その効果はゾレドロン酸を加えることで増強される。さらに、BCG−CWSを感作されたDCでより強い細胞傷害活性を有していることが確認された。
【0090】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0091】
以上説明したように、本発明の活性化抗原提示細胞は疾病抗原特異的CD8+CTLを従来のペプチドのみで感作した樹状細胞と比較して、非常に効率よく誘導することができる。そのため投与用組成物として患者に投与することでin vivoにおいて疾病抗原特異的CD8+CTLを誘導し、がんや感染症に対する治療・予防効果が期待できる。さらにin vitroでは疾病抗原特異的CD8+CTLを誘導するための組成物として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原提示細胞の活性化処理方法であって、ビスホスホネート、細菌細胞壁骨格成分及び疾病抗原で前記抗原提示細胞を共感作する工程を含むことを特徴とする抗原提示細胞の活性化処理方法。
【請求項2】
前記抗原提示細胞が、樹状細胞、未成熟樹状細胞、人工抗原提示細胞からなる群から選択される請求項1に記載の抗原提示細胞の活性化処理方法。
【請求項3】
前記ビスホスホネートが下記一般式(I)で表される化合物、その塩、及び、それらの水和物であって、
【化1】

上記式(I)中、Rは、水素原子又は低級アルキル基であり、RとRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、アリール基又は置換されたアリール基、アルキル基又は置換されたアルキル基、低級アルキルアミノ基、アルアルキル基、シクロアルキル基及び複素環式基からなる群から選択され、又はRとRは同じ環状構造の一部を形成し、
上記RとRにおける置換基としては、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、アルコキシ基、アリール基、アリールチオ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル基、複素環式基からなる群から選択される請求項1又は2に記載の抗原提示細胞の活性化処理方法。
【請求項4】
前記ビスホスホネートが、ゾレドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸、インカドロン酸、エチドロン酸、それらの塩、及びそれらの水和物からなる群から選択される請求項1から3いずれか一項に記載の抗原提示細胞の活性化処理方法。
【請求項5】
前記共感作における前記ビスホスホネートの濃度が、0.001〜20μMである請求項1から4のいずれか一項に記載の抗原提示細胞の活性化処理方法。
【請求項6】
前記共感作における前記ビスホスホネートの濃度が、0.001〜5μMである請求項5に記載の抗原提示細胞の活性化処理方法。
【請求項7】
前記細菌細胞壁骨格成分がBCG−CWSである請求項1から6のいずれか一項に記載の抗原提示細胞の活性化処理方法。
【請求項8】
前記疾病抗原が、がん抗原又は感染症抗原蛋白質、がん抗原又は感染症抗原ペプチド、がん細胞又は感染症細胞の細胞融解物、アポトーシス細胞、ネクローシス細胞、及び、それらの熱処理物からなる群から選択される請求項1から7のいずれか一項に記載の抗原提示細胞の活性化処理方法。
【請求項9】
前記共感作における前記疾病抗原の濃度が、0.01〜20μg/mLである請求項1から8のいずれか一項に記載の抗原提示細胞の活性化処理方法。
【請求項10】
前記共感作における前記疾病抗原の濃度が、0.1〜2μg/mLである請求項9に記載の抗原提示細胞の活性化処理方法。
【請求項11】
活性化抗原提示細胞の生産方法であって、請求項1から10のいずれか一項に記載の活性化処理方法で抗原提示細胞を処理することを含む活性化抗原提示細胞の生産方法。
【請求項12】
請求項11に記載の生産方法により生産された活性化抗原提示細胞。
【請求項13】
がん及び/又は感染症のための医薬組成物であって、請求項12に記載の活性化抗原提示細胞を含む医薬組成物。
【請求項14】
前記抗原提示細胞が、自己由来又はHLAを同じくする他家由来である請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
がん及び/又は感染症の予防・治療方法であって、請求項12に記載の活性化抗原提示細胞を投与することを含む予防・治療方法。
【請求項16】
前記抗原提示細胞が、自己由来又はHLAを同じくする他家由来である請求項15に記載の予防・治療方法。
【請求項17】
免疫担当細胞の誘導方法であって、下記工程(i)及び(ii)を含むことを特徴とする免疫担当細胞の誘導方法。
(i) ビスホスホネート、細菌細胞壁骨格成分及び疾病抗原で抗原提示細胞を共感作する工程。
(ii)前記共感作と同時又はその後に、前記抗原提示細胞とリンパ球とを混合培養する工程。
【請求項18】
誘導される免疫担当細胞が、疾病抗原特異的CD8+CTLを含む請求項18に記載の免疫担当細胞の誘導方法。
【請求項19】
前記抗原提示細胞が、樹状細胞、未成熟樹状細胞、人工抗原提示細胞からなる群から選択される請求項17又は18に記載の免疫担当細胞の誘導方法。
【請求項20】
前記ビスホスホネートが下記一般式(I)で表される化合物、その塩、及び、それらの水和物であって、
【化1】

上記式(I)中、Rは、水素原子又は低級アルキル基であり、RとRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、アリール基又は置換されたアリール基、アルキル基又は置換されたアルキル基、低級アルキルアミノ基、アルアルキル基、シクロアルキル基及び複素環式基からなる群から選択され、又はRとRは同じ環状構造の一部を形成し、
上記RとRにおける置換基としては、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、アルコキシ基、アリール基、アリールチオ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル基、複素環式基からなる群から選択される請求項17から19に記載の免疫担当細胞の誘導方法。
【請求項21】
前記ビスホスホネートが、ゾレドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸、インカドロン酸、エチドロン酸、それらの塩、及びそれらの水和物からなる群から選択される請求項17から20のいずれかに一項に記載の免疫担当細胞の誘導方法。
【請求項22】
前記共感作における前記ビスホスホネートの濃度が、0.001〜20μMである請求項17から21のいずれか一項に記載の免疫担当細胞の誘導方法。
【請求項23】
前記共感作における前記ビスホスホネートの濃度が、0.001〜5μMである請求項22に記載の免疫担当細胞の誘導方法。
【請求項24】
前記細菌細胞壁骨格成分がBCG−CWSであることを特徴とする請求項17から23のいずれか一項に記載の免疫担当細胞の誘導方法。
【請求項25】
前記疾病抗原が、がん抗原又は感染症抗原蛋白質、そのペプチド、がん細胞又は感染症細胞の細胞融解物、アポトーシス細胞、ネクローシス細胞、及びそれらの熱処理物からなる群から選択される請求項17から24いずれか一項に記載の免疫担当細胞の誘導方法。
【請求項26】
前記共感作における前記疾病抗原の濃度が、0.01〜20μg/mLである請求項17から25のいずれか一項に記載の免疫担当細胞の誘導方法。
【請求項27】
前記共感作における前記疾病抗原の濃度が、0.1〜2μg/mLである請求項26に記載の免疫担当細胞の誘導方法。
【請求項28】
免疫担当細胞の生産方法であって、請求項17から27のいずれか一項に記載の誘導方法により免疫担当細胞を誘導することを含む免疫担当細胞の生産方法。
【請求項29】
請求項28に記載の生産方法により生産された免疫担当細胞。
【請求項30】
がん及び/又は感染症のための医薬組成物であって、請求項29に記載の免疫担当細胞を含む医薬組成物。
【請求項31】
前記免疫担当細胞が、自己由来又はHLAを同じくする他家由来である請求項30に記載のがん及び/又は感染症のための医薬組成物。
【請求項32】
がん及び/又は感染症の予防・治療方法であって、請求項29に記載の免疫担当細胞を投与することを含む予防・治療方法。
【請求項33】
前記免疫担当細胞が、自己由来又はHLAを同じくする他家由来である請求項32に記載のがん及び/又は感染症の予防・治療方法。
【請求項34】
ビスホスホネートと細菌細胞壁骨格成分とを含む抗原提示細胞の活性化剤。
【請求項35】
前記抗原提示細胞が、樹状細胞、未成熟樹状細胞、人工抗原提示細胞からなる群から選択される請求項34に記載の抗原提示細胞の活性化剤。
【請求項36】
前記ビスホスホネートが下記一般式(I)で表される化合物、その塩、及び、それらの水和物であって、
【化1】

上記式(I)中、Rは、水素原子又は低級アルキル基であり、RとRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、アリール基又は置換されたアリール基、アルキル基又は置換されたアルキル基、低級アルキルアミノ基、アルアルキル基、シクロアルキル基及び複素環式基からなる群から選択され、又はRとRは同じ環状構造の一部を形成し、
上記RとRにおける置換基としては、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、アルコキシ基、アリール基、アリールチオ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル基、複素環式基からなる群から選択される請求項34又は35に記載の抗原提示細胞の活性化剤。
【請求項37】
前記ビスホスホネートが、ゾレドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸、インカドロン酸、エチドロン酸、それらの塩、及びそれらの水和物からなる群から選択される請求項34から36いずれか一項に記載の抗原提示細胞の活性化剤。
【請求項38】
前記細菌細胞壁骨格成分がBCG−CWSであることを特徴とする請求項34から37のいずれか一項に記載の抗原提示細胞の活性化剤。

【公開番号】特開2010−259373(P2010−259373A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113000(P2009−113000)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(598086844)株式会社メディネット (10)
【出願人】(509128731)株式会社MBR (1)
【Fターム(参考)】