説明

抗原結合タンパク質

本発明は、HGFアンタゴニストとVEGFアンタゴニストとの組み合わせに関し、かつ、1つ以上のエピトープ結合ドメインに連結したタンパク質スキャフォールドを含むHGFに結合する抗原結合タンパク質、それら構築物の製造方法及びその使用を提供する。ここでこの抗原結合タンパク質はそのうちの少なくとも1つがエピトープ結合ドメイン由来であり、そのうちの少なくとも1つがペアード(対になった)VH/VLドメイン由来である、少なくとも2つの抗原結合部位を有する構築物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HGFアンタゴニストとVEGFアンタゴニストとの組み合わせに関し、かつ、1つ以上のエピトープ結合ドメインに連結したタンパク質スキャフォールドを含むHGFに結合する抗原結合タンパク質、それら構築物の製造方法及びその使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
抗体を治療用途に用いることは周知である。
【0003】
抗体は、少なくとも2つの重鎖と2つの軽鎖を含むヘテロ多量体糖タンパク質である。IgMを除いて、通常、インタクト抗体は約150Kdaのヘテロテトラマー糖タンパク質であり、2つの同じ軽鎖(L)と2つの同じ重鎖(H)により構成される。通常、各軽鎖は1つの共有結合性ジスルフィド結合により重鎖に結合するが、別々の免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間のジスルフィド結合の数は変化する。それぞれ重鎖と軽鎖は鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖には、一端に可変ドメイン(VH)があり、続いて多くの定常領域がある。各軽鎖は、可変ドメイン(VL)と、他端に定常領域を有する;軽鎖の定常領域は重鎖の最初の定常領域と並び、また、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと並んでいる。ほとんどの脊椎動物種由来の抗体の軽鎖は、定常領域のアミノ酸配列に基づいたカッパおよびラムダと呼ばれる2つのタイプの1つに割り付けられる。ヒト抗体は、重鎖の定常領域のアミノ酸配列によって、5つの異なるクラス、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMに割り付けられる。IgGとIgAは、さらにサブクラス、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4、ならびにIgA1およびIgA2に細分化することができる。種変異体はマウスとラットで認められ、少なくともIgG2a、IgG2bがある。抗体の可変ドメインは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる特別の変異性を示す特定の領域により、該抗体に結合特異性を付与する。可変領域の中で、より保存される領域はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。インタクト重鎖と軽鎖の可変ドメインはそれぞれ3つのCDRによって連結されている4つのFRを含む。各鎖の中のCDRはFR領域により他方の鎖のCDRとごく接近して置かれ、抗体の抗原結合性部位の形成に寄与する。定常領域は、抗体の抗原への結合に直接関係しないが、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)への関与やFcγ受容体への結合による食作用、新生児のFc受容体(FcRn)による半減期/クリアランス速度、および補体カスケードのC1qコンポーネントによる補体依存性細胞毒性、等種々のエフェクター機能を示す。
【0004】
IgG抗体の構造の性質とは、2つの抗原結合性部位があり、その両方が同じエピトープに特異的である、というものである。従って、それらは一重特異性である。
【0005】
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性がある抗体である。そのような抗体を作る方法は、当業者には既知である。本来、二重特異性抗体の組み換え産生は、2つのH鎖が異なる結合特異性を有する場合の2つの免疫グロブリンH鎖L鎖ペアの同時発現に基づいている。Millstein et al, Nature 305 537-539 (1983), WO93/08829 and Traunecker et al EMBO, 10, 1991, 3655-3659参照。HとL鎖の任意組み合わせが可能なために、組み合わせ可能な10種の異なる抗体構造の混合物が産生され、その内の1つだけが所望の結合特異性を有する。別のアプローチでは、少なくともヒンジ部、CH2およびCH3領域の一部を含む重鎖定常領域に対し所望の結合特異性を備えた可変ドメインを融合させることが含まれる。少なくとも1つの融合体中にある軽鎖結合に必要な部位を含んでいるCH1領域を有することが好ましい。これらの融合体をコードするDNA、また、所望ならL鎖を、別々の発現ベクトルに挿入し、適切な宿主生物へ同時導入する。2つあるいは3つすべての鎖のコード配列を1つの発現ベクトルに挿入するが、それは可能である。1つのアプローチでは、二重特異性抗体は1つのアーム中の一つ目の結合特異性を有するH鎖、および、別のアーム中の二つ目の結合特異性を提供するH−L鎖ペアから構成される。WO94/04690参照。また、Suresh et al Methods in Enzymology 121, 210, 1986も参照のこと。別のアプローでチは、単一のドメイン結合部位を含む抗体分子を含んでいる(WO2007/095338に記述)。
【0006】
HGF(肝細胞増殖因子または分散因子,SF)は、その受容体MET(間葉上皮転換因子、c−METまたは肝細胞増殖因子受容体しても知られている)と共に、細胞内で、前移動性,抗アポトーシス性および前分裂促進的シグナルの独特の組み合わせを伝達することができる多面的サイトカインである。ほとんどの組織原産で、HGFは間葉系源の細胞により発現され、細胞外マトリクス中に局在化し、そこでは、プロテアーゼにより切断されるまで不活性(前HGF)形態のままである。正常な生理的条件下では、これは、組織損傷に応答して、または胚発生中に起こる。METは上皮由来の細胞により発現され、それらの組織の局在性と一致し、HGF/METシグナル伝達の効果は、成体における組織修復および胚における器官形成に対し必要不可欠である上皮間葉相互作用,細胞動員,遊走および迅速な細胞分裂において重要である。HGF/METシグナリングの活性化は、増殖,分散/遊走,細胞極性の誘発および血管新生を含む幅広い細胞プロセスを調整し、この場合、効果は細胞の型および環境に依存する。成体動物では、この経路はかなり無活動であるが、肝再生,腎臓損傷の修復,皮膚治癒および腸損傷などのプロセスに不可欠であり、この場合、傷の端での細胞内のHGF/METシグナリングにより媒介される浸潤性増殖の協調的プロセスは組織完全性の回復に必須である。制御されたHGF/METは、胚発生および組織形態形成を組織化する協調的な遺伝子プログラムと共に、正常な生理機能の本質的な特徴であり、一方、癌細胞における制御されていないHGF/MET発現は、腫瘍の新生物播種の重要な特徴である。この制御されていない発現は、変異,ゲノム増幅,転写上方制御およびパラクリンまたはオートクリン活性化を活性化した結果生じ得る。実際、HGF/MET依存浸潤性増殖シグナルは、隣接する組織に移動し浸潤し、原発腫瘍から離れた部位で転移巣を確立する細胞が得られる可能性のある高侵襲性腫瘍の一般的な特徴であることが示されている。HGFは強力な血管新生因子であり、METは内皮細胞により発現されることが知られているという事実に加えて、HGF/METの治療標的は、癌発症,腫瘍進行および転移を阻害するかなりの可能性を有する。
【0007】
血管内皮増殖因子(VEGF)ファミリーの増殖因子およびそれらの受容体は血管新生および血管透過性の必要不可欠な制御因子である。VEGFファミリーはVEGF−A,PIGF(胎盤増殖因子),VEGF−B,VEGF−C,VEGF−Eおよびヘビ毒VEGFを含み、それぞれが、血管パターン形成および血管発生において明確な役割を有すると考えられる。単一の8−エクソン遺伝子から転写されたmRNAの別のスプライシングのために、VEGF−Aは、シグナルペプチド切断後に残ったアミノ酸の数により識別される少なくとも9つのサブタイプ(アイソフォーム)を有する。例えば、ヒトでは、最も顕著なアイソフォームはVEGF165であり、これは、可溶型と細胞結合型の間の平衡状態で存在する。より長いアイソフォーム(VEGF183,VEGF189およびVEGF206)は、極めて正に帯電したC末端領域を有し、細胞表面グリカンおよびそれらのバイオアベイラビリティを調節するヘパリンとの結合を媒介する。VEGF−Aアイソフォームはすべて、受容体結合VEGF断片を構築する約110のN末端残基のコアを介して生じる会合によりホモ二量体を形成する。正常な状況下では、および、固形腫瘍の中心では、VEGFの発現は低酸素条件により主に媒介され、血管供給の不足を表す。低酸素は、低酸素誘導因子HIF−1αの、構成的に発現されたHIF−1αとの二量体化を引き起こし、VEGF遺伝子のプロモータ領域中の低酸素応答要素に結合する転写因子を形成する。正常酸素状態下では、HIF−1αタンパク質は、複数のプロリンヒドロキシル化イベントの結果として、ユビキチン依存性分解を受ける。他の腫瘍結合型VEGF上方制御は、癌遺伝子経路(すなわちras)を介する、炎症性サイトカインおよび増殖因子を介する活性化によって、ならびに機械力によって生じる。
【0008】
活性VEGFホモ二量体は、細胞表面でVEGFRファミリーの受容体により結合される。VEGF−Aでは、主な血管内皮結合受容体はVEGFR1(Flt1)およびVEGFR2(Flk−2;KDR)である。どちらの受容体も、チロシンキナーゼファミリーのメンバーであり、活性化のためにはリガンド媒介二量体化を必要とする。二量体化すると、キナーゼドメインは、自己リン酸化を受けるが、VEGFR2におけるキナーゼ活性の程度はVEGFR1よりも大きい。VEGFの血管新生シグナリングは、主にVEGFR2を介して媒介されるが、VEGFの親和性は、VEGFR1に対して約3倍大きい(KDは、VEGFR2では100pMであることに比べ約30pM)ことが証明されている。これにより、VEGFR1は、VEGFを捕捉するデコイ受容体として主に作用し、VEGFR2活性化の程度を調節するということが提案されている。VEGFR1発現はいくつかの腫瘍と関連するが、その主な役割は、胚発生および器官形成中にあると考えられる。VEGF−A165もまた、ニューロピリン受容体NRP1およびNRP2により結合される。これらの受容体はTKドメインが欠如しているが、VEGFR2に対する共受容体として作用しVEGFをVEGFR2にトランスファさせることによりシグナリングを増強する。
【0009】
多くの研究が、VEGF−Aを腫瘍血管新生における主要な因子として確認することを支援している。例えば、VEGF−Aはほとんどの腫瘍および腫瘍関連間質において発現される。増殖を支援するための良く発達し、拡大した血管系が存在しないと、腫瘍細胞は壊死性およびアポトーシス性となり、よって、連続細胞増殖の結果となり得る腫瘍容積(約1mm3)の増加を制限する。VEGF−Aの発現は壊死領域に隣接する低酸素腫瘍細胞で最も高く、増殖腫瘍における低酸素によるVEGF−Aの誘導が血管新生のアクチベーターとインヒビターの均衡を変化させることができ、腫瘍において新規血管の増殖を引き起こすことを示す。この仮説と一致して、VEGF−Aを阻害もしくは捕捉し、またはそのシグナリング受容体,VEGFR−2をブロックする多くのアプローチ、例えば、低分子量チロシンキナーゼ阻害剤,モノクローナル抗体,アンチセンスオリゴヌクレオチドなどが治療薬として開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO93/08829
【特許文献2】WO94/04690
【特許文献3】WO2007/095338
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Millstein et al, Nature 305 537-539 (1983)
【非特許文献2】Traunecker et al EMBO, 10, 1991, 3655-3659
【非特許文献3】Suresh et al Methods in Enzymology 121, 210, 1986
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は治療に使用されるHGFアンタゴニストとVEGFアンタゴニストの組み合わせに関する。
【0013】
本発明は、特に、1つまたは複数のエピトープ結合ドメインにリンクされたタンパク質スキャフォールドを含む抗原結合タンパク質に関し、この抗原結合タンパク質は少なくとも2つの抗原結合性部位を有し、その内の少なくとも1つがエピトープ結合ドメイン由来で、またその内の少なくとも1つがペアード(対になった)VH/VLドメイン由来であり、また、抗原結合性部位の少なくとも1つがHGFに結合する。
【0014】
本発明は、特に、1つまたは複数のエピトープ結合ドメインにリンクされたタンパク質スキャフォールドを含む抗原結合タンパク質に関し、この抗原結合タンパク質は少なくとも2つの抗原結合性部位を有し、その内の少なくとも1つがエピトープ結合ドメイン由来で、またその内の少なくとも1つがペアード(対になった)VH/VLドメイン由来であり、ならびに、抗原結合性部位の少なくとも1つがHGFに結合し、抗原結合性部位の少なくとも1つがVEGFに結合する。
【0015】
また、本発明は、本明細書記載のうちのいずれかの抗原結合タンパク質の重鎖をコードしたポリヌクレオチド配列、および本明細書記載のうちのいずれかの抗原結合タンパク質の軽鎖をコードしたポリヌクレオチドを提供する。このポリヌクレオチドは、等価のポリペプチド配列に相当するコード配列を示すが、このポリヌクレオチド配列を、開始コドン、適切なシグナル配列および停止コドンと共に発現ベクターに挿入することができることは理解されるであろう。本発明はさらに組み換え型の形質転換または形質移入した宿主細胞を提供し、この宿主細胞は本明細書記載のいずれかの抗原結合タンパク質の重鎖、および軽鎖をコードした1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む。
【0016】
さらに、本発明は本明細書記載のいずれかの抗原結合タンパク質の産生方法を提供し、この方法は、第1および第2のベクターを含む宿主細胞を適切な培地、例えば無血清培地中で培養するステップを含み、前記第1のベクターが本明細書記載のいずれかの抗原結合タンパク質の重鎖をコードしたポリヌクレオチドと、前記第2のベクターが本明細書記載のいずれかの抗原結合タンパク質の軽鎖をコードしたポリヌクレオチドを含む。
【0017】
本発明はさらに本明細書記載の抗原結合タンパク質および製薬上許容可能なキャリアを含む医薬品組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ELISAにより決定された、精製ヒトモノクローナル抗HGF抗体(BPC2013〜2015)および抗HGF−VEGF二重特異性抗体(BPC2021〜BPC2026)の、ヒト組換えHGFへの結合を示す図である。
【図2】ELISAにより決定された、精製抗HGF−VEGF二重特異性抗体(BPC2021〜2026)のVEGFへの結合を示す図である。
【図3a】Bx−PC3細胞におけるHGF−媒介METリン酸化(pMET)に対する様々なHGF/VEGF二重標的分子(mAb−dAb)の効果を示す図である。
【図3b】Bx−PC3細胞におけるHGF−媒介METリン酸化(pMET)に対する様々なHGF/VEGF二重標的分子(mAb−dAb)の効果を示す図である。
【図4a】Mv1Lu増殖アッセイの結果を示す図である。mAbと比較したmAbdAb構築物による処理(図4a)および不適切mAbdabと比較したmAbdAbによる処理(図4b)。
【図4b】Mv1Lu増殖アッセイの結果を示す図である。mAbと比較したmAbdAb構築物による処理(図4a)および不適切mAbdabと比較したmAbdAbによる処理(図4b)。
【図5】BxPC3浸潤アッセイにおけるウェルの画像の定量的分析を示す図である。
【図6a】血管新生アッセイの結果−フィールド面積(図6a)および平均細管長(図6b)の結果を示す図である。
【図6b】血管新生アッセイの結果−フィールド面積(図6a)および平均細管長(図6b)の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本明細書で使われる用語「タンパク質スキャフォールド」は、これに制限されるものではないが、免疫グロブリン(Ig)スキャフォールド,例えば、IgGスキャフォールドを含み、これは4鎖または2鎖抗体であってもよく、または抗体のFc領域のみを含んでもよく、あるいは1つまたは複数の抗体由来の定常領域を含んでもよい。また、この定常領域は、ヒトまたは霊長類起源であっても、ヒトまたは霊長類定常領域の人工キメラであってもよい。このようなタンパク質スキャフォールドは、1つまたは複数の定常領域の他に抗原結合性部位を含んでもよい。例えば、タンパク質スキャフォールドがIgG全体を含む場合もある。このようなタンパク質スキャフォールドは、他のタンパク質ドメイン、例えばエピトープ結合ドメインまたはScFvドメイン、等の抗原結合性部位を有するタンパク質ドメインに結合可能である。
【0020】
「ドメイン」は、他のタンパク質とは独立した三次構造を有する折り畳まれたタンパク質構造である。通常、ドメインは領域タンパク質の多様な機能特性の原因であり、多くの場合、残りのタンパク質および/またはドメインの機能を失うことなく、付加、除去または他のタンパク質に移動可能である。「抗体単一可変領域」は、抗体可変ドメインの配列特性を含む、折り畳まれたポリペプチド領域である。従って、これは完全抗体可変ドメイン、および、例えば、1つまたは複数のループが抗体可変ドメインの特性を有しない配列、または切断されたまたはNやC末端延長部を含む抗体可変ドメイン、並びに少なくとも全長領域の結合活性と特異性を保持している可変ドメインの折り畳まれた断片、により置換された場合、等の修飾可変ドメインを含む。
【0021】
語句「免疫グロブリン単一可変ドメイン」は、別の可変領域またはドメインに独立に抗原またはエピトープに特異的に結合する抗体可変ドメイン(V,VHH,V)を指す。免疫グロブリン単一可変ドメインは、他の、別の可変領域または可変ドメインと共にある種のフォーマット(例えば、ホモまたはヘテロ多量体)で存在できる。この場合、他の領域またはドメインは、単一免疫グロブリン可変ドメインによる抗原結合に必要ではない(すなわち、免疫グロブリン単一可変ドメインは新たな可変ドメインとは独立に抗原に結合する)。本明細書で使われる場合、「ドメイン抗体」または「dAb」は、抗原に結合が可能な「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じである。免疫グロブリン単一可変ドメインは、ヒト抗体可変ドメインであってもよいが、他の種、例えばげっ歯類(例はWO00/29004で開示),テンジクザメおよびラクダVHHdAb、等由来の単一抗体可変ドメインを含んでもよい。ラクダVHHはラクダ,ラマ,アルパカ,ヒトコブラクダ,およびグアナコ等の種由来の免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドであり、これは元々軽鎖の欠けた重鎖抗体を産生する。このVHH領域は、当業者に利用可能な標準的な方法によりヒト化されてもよく、このような領域も本発明による「ドメイン抗体」と考えられる。本明細書で使われる「V」はラクダVHHドメインを含む。NARVは、テンジクザメを含む軟骨魚類で特定された別のタイプの免疫グロブリン単一可変ドメインである。また、これらの領域は、新規抗原受容体可変領域(通常、V(NAR)またはNARVと省略)としても知られる。詳細は、Mol. Immunol. 44, 656-665 (2006)および US20050043519A参照。
【0022】
用語「エピトープ結合ドメイン」は、別の可変領域またはドメインとは独立に、抗原またはエピトープに特異的に結合するドメインを指す。これは、免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えばヒト、ラクダまたはサメの免疫グロブリン単一可変ドメインであってもよく、または下記を含む群から選択された非免疫グロブリンスキャフォールドの誘導体であってもよい。CTLA−4(Evibody);リポカリン;プロテインA由来分子、例えばプロテインAのZ−領域(アフィボディ,SpA),A−領域(アビマー/マキシボディ(Maxibody));熱ショックタンパク質、例えばGroELとGroES;トランスフェリン(トランスボディ(Trans−body));アンキリンリピートタンパク質(DARPin);ペプチドアプタマー;C−タイプレクチン領域(テトラネクチン);ヒトγクリスタリンおよびヒトユビキチン(affilin);PDZドメイン;ヒトプロテアーゼ阻害剤のスコーピオントキシンクニッツタイプドメイン;およびフィブロネクチン(アドネクチン(アドネクチン));このドメインは、その天然のリガンド以外のリガンドに結合させるためにタンパク質工学による操作が行われたものである。
【0023】
CTLA−4(細胞毒性Tリンパ球関連抗原4)は主にCD4+T細胞上に発現するCD28ファミリー受容体である。その細胞外ドメインは可変ドメイン様Igフォールドを有する。抗体のCDRに対応するループは、異種の配列と置換して異なる結合特性を出すことができる。異なる結合特異性有するように操作されたCTLA−4分子は、Evibodyとして知られている。詳細は、Journal of Immunological Methods 248 (1-2), 31-45 (2001)を参照のこと。
【0024】
リポカリンは細胞外タンパク質ファミリー で、ステロイド, ビリン, レチノイドおよび脂質、等の小さな疎水性の分子を輸送する。これらは、円錐形構造の開口端に多くのループがある強固なβ−シート二次構造を有し、これは別の標的抗原に結合するように操作できる。Anticalinはサイズが160−180アミノ酸で、リポカリン由来である。詳細は、Biochim Biophys Acta 1482: 337-350 (2000), US7250297B1 およびUS20070224633を参照のこと。
【0025】
アフィボディは、黄色ブドウ球菌のプロテインA由来のスキャフォールドで、抗原結合するように操作できる。このドメインは約58アミノ酸のらせん状束からなる。ライブラリは表面残基の無作為化により生成されている。詳細は、Protein Eng.Des.Sel.17, 455-462 (2004) および EP1641818A1を参照のこと。
【0026】
アビマーは、A−ドメインスキャフォールドファミリー由来の多ドメインタンパク質である。約35アミノ酸の未変性ドメインは、明確なジスルフィド結合構造をとっている。多様性は、A−ドメインファミリー中の天然変異の混ぜ合わせにより生成されている。詳細は、Nature Biotechnology 23(12), 1556 - 1561 (2005) and Expert Opinion on Investigational Drugs 16(6), 909-917 (June 2007)を参照のこと。
【0027】
トランスフェリンは、単量体血清輸送糖タンパク質である。トランスフェリンは許容表面ループに挿入する操作により別の標的抗原に結合させることができる。操作したトランスフェリンスキャフォールドの例には、トランスボディがある。詳細は、J. Biol.Chem 274, 24066-24073 (1999)参照。
【0028】
設計アンキリンリピートタンパク質(DARPin)は、膜内在性タンパク質の細胞骨格への連結を媒介するタンパク質ファミリーであるアンキリン由来である。アンキリンの一回の繰り返しは33残基のチーフで、2つのα−へリックスとβ−ターンを含む。これらは、各繰り返し中の一つ目のα−へリックスとβ−ターンの残基を無秩序化することにより標的抗原に結合するよう操作できる。これらの結合面を、分子の数を増やすことにより増加させることができる(親和性成熟の方法)。詳細は、J. Mol. Biol. 332, 489-503 (2003), PNAS 100(4), 1700-1705 (2003)とJ. Mol. Biol. 369, 1015-1028 (2007) および US20040132028A1参照。
【0029】
フィブロネクチンは、抗原に結合させるように操作できるスキャフォールドである。アドネクチンは、ヒトIII型フィブロネクチン(FN3)における15繰り返し単位の内の10番目のドメインの天然アミノ酸配列骨格からなる。β−サンドイッチの一端の3つのループは操作によりアドネクチンに特異的に目的治療標的を認識させることができる。詳細は、Protein Eng. Des. Sel. 18, 435-444 (2005), US20080139791, WO2005056764 および US6818418B1参照。
【0030】
ペプチドアプタマーはコンビナトリアル認識分子で、定常性スキャフォールドタンパク質で構成され、このタンパク質の典型的例には、活性部位に挿入された制限付き可変ペプチドループを含むチオレドキシン(TrxA)がある。詳細は、Expert Opin.Biol. Ther. 5, 783-797 (2005)参照。
【0031】
ミクロボディは、長さ25−50アミノ酸の天然のマイクロタンパク質由来で、3−4システインブリッジを含む。マイクロタンパク質の例には、KalataB1、コノトキシンおよびノッティン(knottin)がある。マイクロタンパク質は、ループを有し、これをマイクロタンパク質全体の折り畳みに影響を与えないで25アミノ酸まで含有するように操作できる。操作されたノッティンドメインの詳細については、WO2008098796参照。
【0032】
他のエピトープ結合ドメインには、別の標的抗原の結合特性を操作するためのスキャフォールドとして使われてきたタンパク質、例えばヒトγ−クリスタリンおよびヒトユビキチン(affilin),ヒトプロテアーゼ阻害剤のkunitzタイプドメイン,Ras−結合タンパク質AF−6のPDZドメイン、サソリ毒(カリブドトキシン),C−タイプレクチンドメイン(テトラネクチン)がある(これらは、Handbook of Therapeutic 抗体 (2007, edited by Stefan Dubel) の7章Non-抗体 ScaffoldsおよびProtein Science 15:14-27 (2006)でレビューされている)。本発明のエピトープ結合ドメインは、これらの代替タンパク質ドメイン由来であってもよい。
【0033】
本明細書で使われる用語「ペアード(対になった)Vドメイン」,「ペアードVドメイン」,および「ペアードV/Vドメイン」は、それらのパートナー可変ドメインペアとペアの場合のみ抗原に特異的に結合する抗体可変ドメインを指す。いずれの対形成でも常に1つのVと1つのVがあり、用語「ペアードVドメイン」はVパートナーを指し、用語「ペアードVドメイン」はVパートナーを指し、用語「ペアードV/Vドメイン」は一緒の2つのドメインを指す。
【0034】
本明細書で使われる用語「抗原結合タンパク質」は、抗体、抗体断片、例えばドメイン抗体(dAb),ScFv,FAb,FAb,およびHGFおよび/またはVEGFに結合可能な他のタンパク質構築物を指す。抗原結合分子は少なくとも1つのIg可変ドメイン、例えば抗体,ドメイン抗体,Fab,Fab’,F(ab’)2,Fv,ScFv,二特異性抗体,mAbdAbs,アフィボディ,ヘテロコンジュゲート抗体または二重特異性抗体を含み得る。一実施形態では、抗原結合分子は抗体である。別の実施形態では、抗原結合分子はdAb、すなわち免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えば、異なるV領域またはドメインとは独立して、特異的に抗原またはエピトープに結合するV,VHHまたはVである。抗原結合分子は2つの標的に結合可能であってもよく、すなわち、二重標的タンパク質であってもよい。抗原結合分子は、抗体および抗原結合断片の組み合わせ、例えば、1つまたは複数のドメイン抗体および/またはモノクローナル抗体に連結された1つまたは複数のScFvsであってもよい。抗原結合分子はまた非免疫グロブリンドメイン、例えば下記を含む群から選択されたスキャフォールドの誘導体であるドメインを含み得る。CTLA−4(Evibody);リポカリン;プロテインA由来分子、例えばプロテインAのZ−領域(アフィボディ,SpA),A−ドメイン(アビマー/マキシボディ(Maxibody));熱ショックタンパク質、例えばGroELとGroES;トランスフェリン(トランスボディ(Trans−body));アンキリンリピートタンパク質(DARPin);ペプチドアプタマー;C−タイプレクチンドメイン(テトラネクチン);ヒトγクリスタリンおよびヒトユビキチン(affilin);PDZドメイン;ヒトプロテアーゼ阻害剤のスコーピオントキシンクニッツタイプドメイン;およびフィブロネクチン(アドネクチン(アドネクチン));このドメインは、HGFまたはVEGFに結合させるためにタンパク質工学による操作が行われたものである。本明細書では、「抗原結合タンパク質」はヒトHGFおよび/またはVEGFに拮抗しおよび/または中和することができる。さらに、抗原結合タンパク質は、HGFおよび/またはVEGFに結合し、天然リガンドが受容体に結合および/または活性化しないようにすることにより、HGFおよび/またはVEGF活性をブロックしてもよい。
【0035】
本明細書では、「VEGFアンタゴニスト」は、VEGFの少なくとも1つの活性を減少または排除することができる任意の化合物を含む。一例として、VEGFアンタゴニストは、VEGFに結合することができ、その結合は、VEGF活性を直接減少または排除することができ、または少なくとも1つのリガンドが受容体に結合するのをブロックすることにより間接的に作用することができる。
【0036】
本明細書では、「HGFアンタゴニスト」は、HGFの少なくとも1つの活性を減少または排除することができる任意の化合物を含む。一例として、HGFアンタゴニストは、HGFに結合することができ、その結合は、HGF活性を直接減少または排除することができ、または少なくとも1つのリガンドが受容体に結合するのをブロックすることにより間接的に作用することができる。
【0037】
本発明の一実施形態では、抗原結合性部位は、Biacore(登録商標)で測定した場合に、少なくともKd値1mMで抗原に結合し、例えばKd値10nM,1nM,500pM,200pM,100pM,で各抗原に結合する。
【0038】
本明細書で使われる用語「抗原結合性部位」は、抗原に特異的に結合可能な構築物上の部位を指し、単一ドメイン,例えばエピトープ結合ドメインであっても、標準的抗体上に認められるペアードV/Vドメインであってもよい。本発明の一部の態様では、単一鎖
用語「mAb/dAb」および「dAb/mAb」は、本明細書では本発明の抗原結合タンパク質を指す。この2つの用語は、本明細書では相互に置き換え可能な使い方が可能で、同じ意味が意図されている。
【0039】
用語「定常重鎖1」は本明細書では、免疫グロブリン重鎖のCH1ドメインを指す。
【0040】
用語「定常軽鎖」は本明細書では、免疫グロブリン軽鎖の定常ドメインを指す。
【0041】
本発明はHGFアンタゴニストとVEGFアンタゴニストを含む組成物を提供する。また、本発明は治療に使用するためのHGFアンタゴニストとVEGFアンタゴニストの組み合わせを提供する。本発明はまたHGFアンタゴニストをVEGFアンタゴニストと併用して投与することにより疾患を治療する方法を提供する。HGFアンタゴニストとVEGFアンタゴニストを別々に投与しても、順次投与しても、同時に投与してもよい。
【0042】
血管新生の阻害は、増殖する腫瘍への血液の供給を欠乏させる(よって、酸素および栄養分を制限する)目的で確立された治療アプローチである。複数の血管新生阻害剤が、前臨床癌モデルおよびいくつかの臨床試験で治療上確認されている。アバスチン(Bevacizumab),VEGFを標的とするモノクローナル抗体は、化学療法と併用して、転移性結腸直腸癌(CRC)および非小細胞肺癌(NSCLC)の治療のための一次治療として認可されており、多くの小分子化合物が前臨床および臨床開発中である。ある癌、例えば乳癌および結腸癌では、これらのような薬剤が、化学療法と併用して投与されると、疾患の進行を遅らせ、患者の生存期間を数ヶ月増加させるが、単独で投与した場合はそうではない。実際、いくつかの臨床試験では、Bevacizumabのみの治療は、化学療法(CT)プラス治療に比べ成績が劣るために早期に打ち切られた。当初、この所見は矛盾していると考えられた。というのも、腫瘍血液供給の減少が、CTを腫瘍に送達させることができる程度を制限することが示されていたからである。この所見を正当化する試みは、Bevacizumabの効果は腫瘍の特徴的に障害された血管系を「正常化」するという提案に基づく。血管正常化の仮定効果は、間質液圧(IFP)の減少であり、血流の増加およびCT薬の腫瘍のコアへの浸透が得られる。CTとの併用におけるBevacizumabの効果に対する別の理論は、VEGFの遮断は、栄養分および酸素供給を減少させ、アポトーシス促進性イベントを誘発し、これはCTにより誘導されたものを増強することを示唆する。
【0043】
インビボモデルでの最近の研究は、診療所で、VEGF経路の阻害を標的とする単独療法において使用される場合の、抗血管新生阻害剤の長期有効性の欠如をより明らかにし始めている。いくつかの報告が、そのようなアプローチの抗腫瘍効果を証明しているが、また、同時の腫瘍順応およびより悪性度の高い段階への進行も示し、侵襲性が高くなり、場合によっては、リンパおよび遠隔転移が増加する。そのため、癌細胞の酸素を欠乏させた(低酸素)結果は、原発腫瘍増殖に対する有益な効果に加えて、それを求めて他の場所へ腫瘍細胞を駆動すると考えられる。言い換えれば、新血管新生を効果的に阻害することにより、抗腫瘍効果および生存利益を生成させる抗血管新生療法は、さらに、浸潤および転移を増加させることにより腫瘍の表現型を変えることができる。他の報告は、低酸素は、癌細胞にMETを産生させ、HGF/MET媒介経路を介するシグナリングを増加させ、これにより、それらの細胞が高い運動性を有するようになり、遠隔部位まで移動するようになる(転移拡散)ことを示している。さらに、VEGF阻害剤単独の延長使用は、別の新血管新生経路の使用を促進する可能性があり、生存率の増加に伴い薬物耐性の可能性が広がる。
【0044】
よって、二重特異性分子は、単一の薬剤中で、HGF抗体の活性(腫瘍増殖、血管新生および転移の抑制)と、VEGF遮断の抗血管新生効果を組み合わせ、各成分を別個に使用した場合に比べいくつかの利点を有する。相乗効果の可能性があり、というのも、HGFおよびVEGFの同時中和は、細胞の低酸素への転移性応答を抑制することができ、一方、改善された血管新生制御を送達させる。さらに、これらの2つの活性を組み合わせると、患者の生存率が増加するように、単一薬剤抗血管新生治療に対する薬物耐性の可能性を制限することができる。
【0045】
このようなアンタゴニストは、抗体であっても、エピトープ結合ドメイン、例えば免疫グロブリン単一可変ドメインであってもよい。アンタゴニストは、別々の分子の組み合わせとして、同時に投与、すなわち同時投与(co−administered)、あるいは互いを例えば20時間以内、または15時間以内、または12時間以内、または10時間以内、または8時間以内、または6時間以内、または4時間以内、または2時間以内、または1時間以内、または30分以内、の投与のように24時間以内に投与してもよい。
【0046】
本発明において使用される他のHGFアンタゴニストは、抗c−MET抗体,例えばWO2009007427に記載される抗体を含む。
【0047】
さらなる実施形態では、アンタゴニストは2つ以上の抗原に結合できる1つの分子として存在する。例えば、本発明はHGFとVEGFに結合可能な、またはHGFおよびVEGFR2に結合可能な、またはc−METおよびVEGFに結合可能な二重標的分子を提供する。
【0048】
本発明はタンパク質スキャフォールドを含む抗原結合タンパク質を提供する。このスキャフォールドは1つまたは複数のエピトープ結合ドメインに結合し、当該抗原結合タンパク質は少なくとも2つの抗原結合性部位を有し、少なくともその内の1つがエピトープ結合ドメイン由来であり、また少なくともその内の1つがペアードV/Vドメイン由来であり、またこの抗原結合性部位の少なくとも1つがHGFに結合する。
【0049】
このような抗原結合タンパク質は、タンパク質スキャフォールドを含み,このスキャフォールドは、例えばIgG等のIgスキャフォールド、例えば1つまたは複数のエピトープ結合ドメインに結合するモノクローナル抗体、例えば結合タンパク質は少なくとも2つの抗原結合性部位を有するドメイン抗体で、その内の少なくとも1つがエピトープ結合ドメイン由来であり、また抗原結合性部位の少なくとも1つがHGFに結合している。また、本発明はこれを産生する方法および使用、特に治療で使用する方法に関する。
【0050】
本発明の抗原結合タンパク質はまたmAbdAbとも呼ばれる。
一実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質のタンパク質スキャフォールドは、Igスキャフォールド、例えばIgGスキャフォールドまたはIgAスキャフォールドである。IgGスキャフォールドは、抗体の全てのドメイン(すなわち、CH1,CH2,CH3,V,V)を含んでもよい。本発明の抗原結合タンパク質はIgG1,IgG2,IgG3,IgG4またはIgG4PEから選択されたIgGスキャフォールドを含んでもよい。
【0051】
本発明の抗原結合タンパク質は少なくとも2つの抗原結合性部位を有し、例えば2つの結合部位をの内、一つ目の結合部位は抗原上の第1のエピトープに特異性を有し、二つ目の結合部位は同じ抗原上の第2のエピトープに特異性を有する。さらなる実施形態では、4つの抗原結合性部位,または6つの抗原結合性部位,または8つの抗原結合性部位,または10個以上の抗原結合性部位を有する。一実施形態では、抗原結合タンパク質は1以上の抗原に対して、例えば、2つ以上の抗原,例えば2つの抗原,または3つの抗原,または4つの抗原に対して特異性を有する。
【0052】
別の態様では、本発明は、2つ以上の式Iの構造を含むホモダイマーの少なくとも1つを含むHGFに結合可能な抗原結合タンパク質に関する:
【化1】

【0053】
式中、
Xは、定常重鎖ドメイン2および定常重鎖ドメイン3を含む定常抗体領域を表し;
、R、RおよびRはエピトープ結合ドメインから独立に選択されたドメインを表し;
は、定常重鎖1,およびエピトープ結合ドメインからなる群から選択されたドメインを表し;
は、ペアードVおよびエピトープ結合ドメインからなる群から選択されたドメインを表し;
は、定常軽鎖、およびエピトープ結合ドメインからなる群より選択されたドメインを表し;
は、ペアードVおよびエピトープ結合ドメインからなる群から選択されたドメインを表し;
nは、0,1,2,3および4から独立に選択された整数を表し;
mは、0および1から独立に選択された整数を表し、
定常重鎖1および定常軽鎖ドメインは会合しており;
少なくとも1つのエピトープ結合ドメインが存在し;
さらに、RがペアードVドメインを表す場合は、RはペアードVドメインを表し、これにより2つのドメインが一緒に抗原に結合可能となる。
【0054】
一実施形態では、RはペアードVを表し、RはペアードVを表す。
【0055】
さらなる実施形態では、RとRのどちらか、または両方がエピトープ結合ドメインを表す。
【0056】
またさらなる実施形態では、RとRのどちらか、または両方がエピトープ結合ドメインを表す。
【0057】
一実施形態では、Rが存在する。
【0058】
一実施形態では、R、RおよびRはエピトープ結合ドメインを表す。
【0059】
一実施形態では、R、R、RおよびRはエピトープ結合ドメインを表す。
【0060】
一実施形態では、(R,(R,(Rおよび(R=0,すなわち存在せず、RはペアードVドメインであり,RはペアードVドメインであり,RはVdAbであり,およびRはVdAbである。
【0061】
別の実施形態では、(R,(R,(Rおよび(Rは0,すなわち存在せず、RはペアードVドメインであり,RはペアードVドメインであり,RはVdAbであり,および(R=0すなわち存在しない。
【0062】
別の実施形態では、(R,および(Rは0,すなわち存在せず、RはdAbであり,RはdAbであり,RはペアードVドメインであり,RはペアードVドメインであり,(Rと(R=0、すなわち存在しない。
【0063】
本発明の一実施形態では、エピトープ結合ドメインは免疫グロブリン単一可変ドメインである。
【0064】
いずれかの本明細書記載の抗原結合タンパク質は1つまたは複数の抗原を中和することができ、例えばHGFの中和およびVEGFの中和も可能であることは、理解されるであろう。
【0065】
本発明の抗原結合タンパク質に関連して本明細書で使われる用語「中和する」およびその文法的変形体は、本発明の抗原結合タンパク質の存在下、このような抗原結合タンパク質の無い場合の標的の活性に比較して、全体的または部分的に標的の生物活性が低下することを意味する。これに限定されないが、中和が、1つまたは複数のリガンドのブロッキング、受容体を活性化するリガンドの阻害、受容体の発現低下、またはエフェクター機能への作用、によるものであってもよい。
【0066】
中和のレベルはいくつかの方法、例えば、下記実施例において設定されるアッセイ法のいずれかを使用することにより、例えば、リガンドの受容体への結合の阻止を測定するアッセイ法において測定可能である。この測定法は、例えば実施例6に記載のように実施される。このアッセイでは、HGFの中和は、中和する抗原結合タンパク質の存在下でMETのリン酸化(Metリン酸化はHGFにより刺激される)の減少を評価することにより測定される。このアッセイにおいて使用するのに好適なHGFタンパク質としてはNCBI参照配列:NM_000601.4(UniProt ID P14210)の配列を含むHGFタンパク質が挙げられる。VEGFの中和のレベルは、例えば、実施例14において記載されるアッセイにより測定することができる。このアッセイにおいて使用するのに好適なVEGFタンパク質としては、NCBI参照配列NP_001020539.2(UniProt ID:P15692)を含むVEGF165が挙げられる。
【0067】
中和を評価する他の方法で、例えば中和する抗原結合タンパク質の存在下、リガンドとその受容体間の結合低下を評価することにより測定する方法は、当業者には既知であり、例えばBiacore(登録商標)アッセイがある。
【0068】
本発明の別の態様では、少なくとも実質的に本明細書で例示されている抗原結合タンパク質と等価な中和活性を有する抗原結合タンパク質が提供される。
【0069】
本発明の抗原結合タンパク質はHGFに対して特異性を有し、例えばHGFに結合可能なエピトープ結合ドメイン、および/またはHGFに結合するペアードV/Vを含む。抗原結合タンパク質はHGFに結合可能な抗体を含んでもよい。抗原結合タンパク質はHGFに結合可能な免疫グロブリン単一可変ドメインを含んでもよい。
【0070】
一実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、例えばHGFおよびVEGFに結合可能な場合のように1つ以上の抗原に対し特異性を有する。一実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質HGFおよびVEGFに同時に結合できる。
【0071】
本明細書記載のいずれかの抗原結合タンパク質が、例えば実施例7に記載されたような適切なアッセイを使った化学量論的解析により測定して、同時に2つ以上の抗原に結合可能であってもよいことは理解されよう。
【0072】
このような抗原結合タンパク質の例には、HGFアンタゴニストであるエピトープ結合ドメインを有するVEGF抗体、重鎖のC末端やN末端または軽鎖のC末端やN末端に結合した抗HGF免疫グロブリン単一可変ドメインがある。実施例には、配列番号34または39の重鎖配列および/または配列番号35の軽鎖配列を含み、重鎖と軽鎖の片方または両方がHGFに結合する1つまたは複数のエピトープ結合ドメインをさらに含む抗原結合タンパク質がある。
【0073】
このような抗原結合タンパク質の例には、重鎖のC末端やN末端、またはC末端に結合したVEGFアンタゴニストであるエピトープ結合ドメインを有するHGF抗体がある。例としては配列番号2,6または10で設定された重鎖配列および/または配列番号4,8または12で設定された軽鎖配列を含む抗原結合タンパク質が挙げられ、重鎖と軽鎖の片方または両方が、例えばVEGFまたはVEGF受容体、例えばVEGFR2に結合することにより、VEGFに拮抗することができる1つまたは複数のエピトープ結合ドメインをさらに含む。そのようなエピトープ結合ドメインは、配列番号25,26,36,37および38で設定されるものから選択することができる。
【0074】
一実施形態では、抗原結合タンパク質は、配列番号2,6,または10で設定される重鎖配列,および配列番号4,8または12で設定される軽鎖配列を含み、さらに、重鎖のC末端もしくはN末端または軽鎖のC末端もしくはN末端に結合された、VEGFに拮抗することができる少なくとも1つのエピトープ結合ドメイン,例えば抗dAb,例えば配列番号25または26で設定されるもの,または例えば配列番号26で設定される抗VEGFアンチカリン,または抗VEGFR2アドネクチンを含む。
【0075】
このような抗原結合タンパク質の例には、重鎖のC末端やN末端、または軽鎖のC末端やN末端に結合したVEGF免疫グロブリン単一可変ドメインを含むエピトープ結合ドメインを有するHGF抗体が挙げられる。例えば、配列番号14,18もしくは22で設定された重鎖配列および配列番号4,8もしくは12で設定された軽鎖配列を有する抗原結合タンパク質、配列番号2,6もしくは10で設定された重鎖配列および配列番号16,20もしくは24で設定された軽鎖配列を有する抗原結合タンパク質,または配列番号14,18もしくは22で設定された重鎖配列および配列番号16,20もしくは24で設定された軽鎖配列を有する抗原結合タンパク質である。
【0076】
一実施形態では、抗原結合タンパク質は、VEGFアンタゴニストであるエピトープ結合ドメインに結合した抗HGF抗体を含み、抗HGF抗体が、配列番号2の重鎖配列および配列番号4の軽鎖配列を有する抗体、または配列番号6の重鎖配列および配列番号10の軽鎖配列を有する抗体、または配列番号8の重鎖配列および配列番号12の軽鎖配列を有する抗体と同じCDSを有する。
【0077】
一実施形態では、抗原結合タンパク質は、VEGFアンタゴニストであるエピトープ結合ドメインに連結された抗HGF抗体を含み、ここで、重鎖配列は配列番号10を含み、軽鎖配列は配列番号12を含み、例えば、配列番号22の重鎖配列および配列番号12の軽鎖配列を含むmAbdAbである。
【0078】
本発明で使用されるHGF抗体のさらなる詳細は、WO2005017107, WO2007/143098およびWO2007/115049において示される。
【0079】
このような抗原結合タンパク質の他の例には、重鎖のC末端やN末端、または軽鎖のC末端やN末端に結合した抗VEGFエピトープ結合ドメインを有する抗HGF抗体がある。このVEGFエピトープ結合ドメインは、VEGFdAbで、WO2007080392(参照により本明細書に組み込まれる)にあるいずれかのVEGFdAb配列、特に配列番号117,119,123,127−198,539および540で設定されるdAbから選択されるVEGF dAb、またはWO2008149146(参照により本明細書に組み込まれる)で設定されるVEGF dAb配列のいずれか、特に、DOM15−26−501,DOM15−26−555,DOM15−26−558,OM15−26−589,DOM15−26−591,DOM15−26−594およびDOM15−26−595と記載されているdAbから選択されるVEGF dAb,またはWO 2008149147(参照により本明細書に組み込まれる)で設定されるVEGF dAb配列のいずれかから選択されるVEGF dAb、または、WO 2008149150(参照により本明細書に組み込まれる)で設定されるVEGF dab配列のいずれかから選択されるVEGF dabである。
【0080】
本明細書の請求項に組み込むために開示を提供するという明白な意図を持って、本発明の内容に適用するための可変ドメインとアンタゴニストの実施例として、あたかも本明細書に明示的に記載されているかのように、これらの具体的配列およびWO2007080392, WO2008149146, WO2007066106, WO2008149147およびWO 2008149150の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
また、このような抗原結合タンパク質は、同じまたは異なる抗原特異性を有し、重鎖のC末端および/またはN末端、および/または、軽鎖のC末端および/またはN末端に結合した1つまたは複数の追加のエピトープ結合ドメインを有してもよい。
【0082】
本発明の一実施形態では、本明細書記載の発明に従った、ADCCおよび/または補体活性化またはエフェクター機能を低減するように定常領域を含む抗原結合タンパク質が提供される。このような一実施形態では、重鎖定常領域は、IgG2またはIgG4アイソタイプの本来の無効化定常領域または変異IgG1定常領域を含んでもよい。適切な修飾の例は、EP0307434に記載されている。一例では、位置235および237(EUインデックスナンバリング)のアラニン残基の置換が含まれる。
【0083】
一実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、Fc機能、例えばADCCおよびCDC活性の1つまたは両方を有する。このような抗原結合タンパク質は、軽鎖上、例えば、軽鎖のC末端上にエピトープ結合ドメインを含んでもよい。
【0084】
また、本発明は、エピトープ結合ドメインを抗体の軽鎖上に配置することにより、特に、エピトープ結合ドメインを軽鎖のC末端上に配置することにより抗原結合タンパク質のADCCおよびCDC機能を維持する方法を提供する。
【0085】
本発明は、また、エピトープ結合ドメインを抗体の重鎖上に配置することにより、特に、エピトープ結合ドメインを重鎖のC末端上に配置することにより抗原結合タンパク質のCDC機能を低減させる方法を提供する。
【0086】
一実施形態では、抗原結合タンパク質は、ドメイン抗体(dAb)であるエピトープ結合ドメインを含み、例えば、エピトープ結合ドメインがヒトVまたはヒトVであっても、ラクダVHH(ナノボディ)またはサメdAb(NARV)であってもよい。一実施形態では、抗原結合タンパク質は、下記の群から選択されたスキャフォールド誘導体であるエピトープ結合ドメインを含む。CTLA−4(Evibody);リポカリン;プロテインA由来分子例えばプロテインAのZドメイン(アフィボディ,SpA),Aドメイン(アビマー/マキシボディ);GroELやGroES等の熱ショックタンパク質;トランスフェリン(トランスボディ);アンキリンリピートタンパク質(DARPin);ペプチドアプタマー;C−タイプレクチンドメイン(テトラネクチン);ヒトγクリスタリンおよびヒトユビキチン(affilin);PDZドメイン;ヒトプロテアーゼ阻害剤のスコーピオントキシンクニッツタイプドメイン;およびフィブロネクチン(アドネクチン);このドメインは、その天然のリガンド以外のリガンドに結合させるためにタンパク質工学による操作が行われたものである。
【0087】
本発明の抗原結合タンパク質は、アドネクチンであるエピトープ結合ドメインに結合したタンパク質スキャフォールド、例えば、重鎖のC末端に結合したアドネクチンを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、またはアドネクチンに結合したタンパク質スキャフォールド、例えば、重鎖のN末端に結合したアドネクチンを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または,アドネクチンに結合したタンパク質スキャフォールド、例えば、軽鎖のC末端に結合したアドネクチンを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または,アドネクチンに結合したタンパク質スキャフォールド、例えば、軽鎖のN末端に結合したアドネクチンを有するIgGスキャフォールドを含んでもよい。
【0088】
他の実施形態では、抗原結合タンパク質は、タンパク質スキャフォールド、例えばCTLA−4であるエピトープ結合ドメインに結合したIgGスキャフォールド、例えば、重鎖のN末端に結合したCTLA−4を有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、重鎖のC末端に結合したCTLA−4を有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、軽鎖のN末端に結合したCTLA−4を有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、軽鎖のC末端に結合したCTLA−4を有するIgGスキャフォールドを含んでもよい。
【0089】
他の実施形態では、抗原結合タンパク質は、タンパク質スキャフォールド、例えばリポカリンであるエピトープ結合ドメインに結合したIgGスキャフォールド、例えば、重鎖のN末端に結合したリポカリンを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、重鎖のC末端に結合したリポカリンを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、軽鎖のN末端に結合したリポカリンを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、軽鎖のC末端に結合したリポカリンを有するIgGスキャフォールドを含んでもよい。
【0090】
他の実施形態では、抗原結合タンパク質は、タンパク質スキャフォールド、例えばSpAであるエピトープ結合ドメインに結合したIgGスキャフォールド、例えば、重鎖のN末端に結合したSpAを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、重鎖のC末端に結合したSpAを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、軽鎖のN末端に結合したSpAを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、軽鎖のC末端に結合したSpAを有するIgGスキャフォールドを含んでもよい。
【0091】
他の実施形態では、抗原結合タンパク質は、タンパク質スキャフォールド、例えばアフィボディであるエピトープ結合ドメインに結合したIgGスキャフォールド、例えば、重鎖のN末端に結合したアフィボディを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、重鎖のC末端に結合したアフィボディを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、軽鎖のN末端に結合したアフィボディを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、軽鎖のC末端に結合したアフィボディを有するIgGスキャフォールドを含んでもよい。
【0092】
他の実施形態では、抗原結合タンパク質は、タンパク質スキャフォールド、例えばaffimerであるエピトープ結合ドメインに結合したIgGスキャフォールド、例えば、重鎖のN末端に結合したaffimerを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、重鎖のC末端に結合したaffimerを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、軽鎖のN末端に結合したaffimerを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、軽鎖のC末端に結合したaffimerを有するIgGスキャフォールドを含んでもよい。
【0093】
他の実施形態では、抗原結合タンパク質は、タンパク質スキャフォールド、例えばGroELであるエピトープ結合ドメインに結合したIgGスキャフォールド、例えば、重鎖のN末端に結合したGroELを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、重鎖のC末端に結合したGroELを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、軽鎖のN末端に結合したGroELを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、軽鎖のC末端に結合したGroELを有するIgGスキャフォールドを含んでもよい。
【0094】
他の実施形態では、抗原結合タンパク質は、タンパク質スキャフォールド、例えばトランスフェリンであるエピトープ結合ドメインに結合したIgGスキャフォールド、例えば、重鎖のN末端に結合したトランスフェリンを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、重鎖のC末端に結合したトランスフェリンを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、軽鎖のN末端に結合したトランスフェリンを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、軽鎖のC末端に結合したトランスフェリンを有するIgGスキャフォールドを含んでもよい。
【0095】
他の実施形態では、抗原結合タンパク質は、タンパク質スキャフォールド、例えばGroESであるエピトープ結合ドメインに結合したIgGスキャフォールド、例えば、重鎖のN末端に結合したGroESを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、重鎖のC末端に結合したGroESを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、軽鎖のN末端に結合したGroESを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、軽鎖のC末端に結合したGroESを有するIgGスキャフォールドを含んでもよい。
【0096】
他の実施形態では、抗原結合タンパク質は、タンパク質スキャフォールド、例えばDARPinであるエピトープ結合ドメインに結合したIgGスキャフォールド、例えば、重鎖のN末端に結合したDARPinを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、重鎖のC末端に結合したDARPinを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、軽鎖のN末端に結合したDARPinを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、軽鎖のC末端に結合したDARPinを有するIgGスキャフォールドを含んでもよい。
【0097】
他の実施形態では、抗原結合タンパク質は、タンパク質スキャフォールド、例えばペプチドアプタマーであるエピトープ結合ドメインに結合したIgGスキャフォールド、例えば、重鎖のN末端に結合したペプチドアプタマーを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、重鎖のC末端に結合したペプチドアプタマーを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、例えば、軽鎖のN末端に結合したペプチドアプタマーを有するIgGスキャフォールドを含んでもよく、または、軽鎖のC末端に結合したペプチドアプタマーを有するIgGスキャフォールドを含んでもよい。
【0098】
本発明の一実施形態では、4つのエピトープ結合ドメイン、例えば4つのドメイン抗体があり、2つのエピトープ結合ドメインが同じ抗原に対し特異性を有してもよく、抗原結合タンパク質中に存在する全てのエピトープ結合ドメインが同じ抗原に対し特異性を有してもよい。
【0099】
本発明のタンパク質スキャフォールドは、リンカーを使ってエピトープ結合ドメインに連結してもよい。適切なリンカーの例は、長さで1アミノ酸〜150アミノ酸,または1アミノ酸〜140アミノ酸,例えば、1アミノ酸〜130アミノ酸,または1〜120アミノ酸,または1〜80アミノ酸,または1〜50アミノ酸,または1〜20アミノ酸,または1〜10アミノ酸,または5〜18アミノ酸のアミノ酸配列であってもよい。このような配列は、それ自身の三次構造を有してもよく、例えば、本発明のリンカーが単一可変ドメインを含んでもよい。一実施形態では、リンカーのサイズは、単一可変ドメインと同等である。適切なリンカーは、サイズが1〜20オングストロームであってもよく、例えば、15オングストローム未満,または10オングストローム未満,または5オングストローム未満であってもよい。
【0100】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つのエピトープ結合ドメインはIgスキャフォールドに直接に結合し、このスキャフォールドは、1〜150アミノ酸、例えば、1〜20アミノ酸、例えば1〜10アミノ酸からなるリンカーを有している。このようなリンカーは、配列番号27〜32で示されるもののいずれか1つから選択することができ、または、これらリンカーの複合であってもよい。
【0101】
本発明の抗原結合タンパク質で使用するリンカーは、単体でも他のリンカー、1つまたは複数のGS残基のセット、例えば、「GSTVAAPS」または「TVAAPSGS」または「GSTVAAPSGS」であってもよい。一実施形態ではリンカーは配列番号28を含む。
【0102】
一実施形態では、エピトープ結合ドメインは、リンカー「(PAS)(GS)」によりIgスキャフォールドに結合している。別の実施形態では、エピトープ結合ドメインは、リンカー「(GGGGS)(GS)」によりIgスキャフォールドに結合している。別の実施形態では、エピトープ結合ドメインは、リンカー「(TVAAPS)(GS)」によりIgスキャフォールドに結合している。別の実施形態では、エピトープ結合ドメインは、リンカー「(GS)(TVAAPSGS)」によりIgスキャフォールドに結合している。別の実施形態では、エピトープ結合ドメインは、リンカー「(PAVPPP)(GS)」によりIgスキャフォールドに結合している。別の実施形態では、エピトープ結合ドメインは、リンカー「(TVSDVP)(GS)」によりIgスキャフォールドに結合している。別の実施形態では、エピトープ結合ドメインは、リンカー「(TGLDSP)(GS)」によりIgスキャフォールドに結合している。この全ての実施形態で、n=1〜10,およびm=0〜4である。
【0103】
このようなリンカーに例には、(PAS)(GS)ここでn=1およびm=1(配列番号46),(PAS)(GS)ここでn=2およびm=1(配列番号47),(PAS)(GS)ここでn=3およびm=1(配列番号48),(PAS)(GS)ここでn=4およびm=1,(PAS)(GS)ここでn=2およびm=0,(PAS)(GS)ここでn=3およびm=0,(PAS)(GS)ここでn=4およびm=0がある。
【0104】
このようなリンカーに例には、(GGGGS)(GS)ここでn=1およびm=1,(GGGGS)(GS)ここでn=2およびm=1,(GGGGS)(GS)ここでn=3およびm=1、(GGGGS)(GS)ここでn=4およびm=1,(GGGGS)(GS)ここでn=2およびm=0(配列番号49),(GGGGS)(GS)ここでn=3およびm=0(配列番号50),(GGGGS)(GS)ここでn=4およびm=0がある。
【0105】
このようなリンカーに例には、(TVAAPS)(GS)ここでn=1およびm=1(配列番号:32),(TVAAPS)(GS)ここでn=2およびm=1(配列番号:64),(TVAAPS)(GS)ここでn=3およびm=1(配列番号:65),(TVAAPS)(GS)ここでn=4およびm=1,(TVAAPS)n(GS)mここでn=2およびm=0,(TVAAPS)(GS)ここでn=3およびm=0,(TVAAPS)(GS)ここでn=4およびm=0がある。
【0106】
このようなリンカーに例には、(GS)(TVAAPSGS)ここでn=1およびm=1(配列番号40),(GS)(TVAAPSGS)ここでn=2およびm=1(配列番号41),(GS)(TVAAPSGS)ここでn=3およびm=1(配列番号42),または(GS)(TVAAPSGS)ここでn=4およびm=1(配列番号43),(GS)(TVAAPSGS)ここでn=5およびm=1(配列番号44),(GS)(TVAAPSGS)ここでn=6およびm=1(配列番号45),(GS)(TVAAPSGS)ここでn=1およびm=0(配列番号32),(GS)(TVAAPSGS)ここでn=2およびm=10,(GS)(TVAAPSGS)ここでn=3およびm=0,または(GS)(TVAAPSGS)ここでn=0がある。
【0107】
このようなリンカーに例には、(PAVPPP)(GS)ここでn=1およびm=1(配列番号51),(PAVPPP)(GS)ここでn=2およびm=1(配列番号52),(PAVPPP)(GS)ここでn=3およびm=1(配列番号53),(PAVPPP)(GS)ここでn=4およびm=1,(PAVPPP)(GS)ここでn=2およびm=0,(PAVPPP)(GS)ここでn=3およびm=0,(PAVPPP)(GS)ここでn=4およびm=0がある。
【0108】
このようなリンカーに例には、(TVSDVP)(GS)ここでn=1およびm=1(配列番号54),(TVSDVP)(GS)ここでn=2およびm=1(配列番号55),(TVSDVP)(GS)ここでn=3およびm=1(配列番号56),(TVSDVP)(GS)ここでn=4およびm=1,(TVSDVP)(GS)ここでn=2およびm=0,(TVSDVP)(GS)ここでn=3およびm=0,(TVSDVP)(GS)ここでn=4およびm=0がある。
【0109】
このようなリンカーに例には、(TGLDSP)(GS)ここでn=1およびm=1(配列番号57),(TGLDSP)(GS)ここでn=2およびm=1(配列番号58),(TGLDSP)(GS)ここでn=3およびm=1(配列番号59),(TGLDSP)(GS)ここでn=4およびm=1,(TGLDSP)(GS)ここでn=2およびm=0,(TGLDSP)(GS)ここでn=3およびm=0,(TGLDSP)(GS)ここでn=4およびm=0がある。
【0110】
別の実施形態では、エピトープ結合ドメインおよびIgスキャフォールドの間にはリンカーが存在しない。別の実施形態では、エピトープ結合ドメインはリンカー「TVAAPS」によりIgスキャフォールドに結合する。別の実施形態では、エピトープ結合ドメインはリンカー「TVAAPSGS」によりIgスキャフォールドに結合する。別の実施形態では、エピトープ結合ドメインはリンカー「GS」によりIgスキャフォールドに結合する。別の実施形態では、エピトープ結合ドメインはリンカー「ASTKGPT」によりIgスキャフォールドに結合する。
【0111】
一実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、少なくとも1つの抗原結合性部位、例えばヒト血清アルブミンに結合可能な少なくとも1つのエピトープ結合ドメイン、を含む。
【0112】
一実施形態では、少なくとも3つの抗原結合性部位があり、例えば4または5または6または8または10抗原結合性部位があり、この抗原結合タンパク質は少なくとも3または4または5または6または8または10抗原に結合可能であり、例えば、3または4または5または6または8または10抗原に同時に結合可能である。
【0113】
また、本発明は医薬に使用するための、例えば、血管新生を必要とする、またはHGF(HGF/Metシグナリング)および/またはVEGFの上昇したレベルと関連すると考えられる固形腫瘍の治療薬製造に使用するための抗原結合タンパク質を提供する。そのような腫瘍としては、結腸,乳房,卵巣,肺(小細胞または非小細胞),前立腺,膵臓,腎臓,肝臓,胃,頭頸部,メラノーマ,肉腫が挙げられる。原発性および二次性(転移性)脳腫瘍もまた含まれ、グリオーマ(上衣腫を含む),髄膜腫,オリゴデンドローマ,アストロサイトーマ(低悪性度,未分化および多形神経膠芽腫),髄芽腫,神経節腫,シュワン腫および脊索腫が挙げられるが、それらに限定されない。本発明の抗原結合タンパク質を用いた治療に好適な望ましくない血管新生と関連する他の疾患としては、加齢性黄斑変性病,糖尿病性網膜症,RAおよび乾癬が挙げられる。
【0114】
本発明は、固形腫瘍(結腸,乳房,卵巣,肺(小細胞または非小細胞),前立腺,膵臓,腎臓,肝臓,胃,頭頸部,メラノーマ,肉腫を含む),原発性および二次性(転移性)脳腫瘍、例えば限定はされないが、グリオーマ(上衣腫を含む),髄膜腫,オリゴデンドローマ,アストロサイトーマ(低悪性度,未分化および多形神経膠芽腫),髄芽腫,神経節腫,シュワン腫および脊索腫,加齢性黄斑変性病,糖尿病性網膜症,RAまたは乾癬の患者を治療する方法を提供し、これは、本発明の治療量の抗原結合タンパク質の投与を含む。
【0115】
本発明の抗原結合タンパクは、固形腫瘍(結腸,乳房,卵巣,肺(小細胞または非小細胞),前立腺,膵臓,腎臓,肝臓,胃,頭頸部,メラノーマ,肉腫を含む),原発性および二次性(転移性)脳腫瘍、例えば限定はされないが、グリオーマ(上衣腫を含む),髄膜腫,オリゴデンドローマ,アストロサイトーマ(低悪性度,未分化および多形神経膠芽腫),髄芽腫,神経節腫,シュワン腫および脊索腫,加齢性黄斑変性病,糖尿病性網膜症,RAまたは乾癬あるいはHGFおよび/またはVEGFの過剰産生に関わる他の任意の疾患の治療に使うことができる。
【0116】
本発明の抗原結合タンパク質は、何らかのエフェクター機能を有しうる。例えば、タンパク質スキャフォールドがエフェクター機能を有する抗体由来のFc領域を含む場合、例えば、タンパク質スキャフォールドがIgG1由来のCH2およびCH3を含む場合である。エフェクター機能のレベルは、既知の技術、例えば、CH2ドメインの変異により、例えば、IgG1 CH2ドメインが239および332および330から選択された位置に1つまたは複数の変異を有する場合、例えば、変異がS239DおよびI332EおよびA330Lから選択され、その抗体が強化されたエフェクター機能を有するようにする技術、および/または、例えば、本発明の抗原結合タンパク質のグリコシレーションプロファイルを変えてFc領域のフコシル化を減少させる技術、等の技術により変えることができる。
【0117】
本発明に使われるタンパク質スキャフォールドには、抗体の全てのドメインを含む全モノクローナル抗体スキャフォールドを含み、または、本発明のタンパク質スキャフォールドは、一価抗体のような従来にない構造を含んでもよい。このような一価抗体は、重鎖のヒンジ部がホモ二量体化しないように修飾されたペアード重鎖と軽鎖を含んでもよい(このような一価抗体は、WO2007059782に記述されている)。他の一価抗体は、機能的可変領域とCH1領域が欠けた第2の重鎖と二量体化するペアード重鎖と軽鎖を含んでもよい。この場合、ホモ二量体よりもヘテロ二量体を形成するように第1と第2の重鎖を修飾して、2つの重鎖と1つの軽鎖を有する一価抗体ができる(このような一価抗体は、WO2006015371に記載されている)。このような一価抗体は、本発明のエピトープ結合ドメインが結合できるタンパク質スキャフォールドを提供可能である。
【0118】
本発明に使われるエピトープ結合ドメインは、別の可変領域またはドメインと独立して、抗原またはエピトープに特異的に結合するドメインであり、これは、ドメイン抗体であっても、または下記の群から選択された非免疫グロブリンスキャフォールドの誘導体であるドメインであってもよい。CTLA−4(Evibody);リポカイン;プロテインA誘導分子、例えばプロテインAのZドメイン(アフィボディ,SpA),Aドメイン(アビマー/マキシボディ);熱ショックタンパク質、例えばGroELおよびGroES;トランスフェリン(トランスボディ);アンキリンリピートタンパク質(DARPin);ペプチドアプタマー;Cタイプレクチンドメイン(テトラネクチン);ヒトγクリスタリンおよびヒトユビキチン(affilin);PDZドメイン;ヒトプロテアーゼ阻害剤のスコーピオントキシンクニッツタイプドメイン;およびフィブロネクチン(アドネクチン);このドメインは、その天然のリガンド以外のリガンドに結合させるためにタンパク質工学による操作が行われた。一実施形態では、これはドメイン抗体であってもよく、また他の適切なドメイン、例えば、CTLA−4,リポカリン,SpA,アフィボディ,アビマー,GroEL,トランスフェリン,GroESおよびフィブロネクチンからなる群から選択されたドメインであってもよい。一実施形態では、これは免疫グロブリン単一可変ドメイン、アフィボディ,アンキリンリピートタンパク質(DARPin)およびアドネクチンから選択されてもよい。別の実施形態では、これは、アフィボディ,アンキリンリピートタンパク質(DARPin)およびアドネクチンから選択されてもよい。別の実施形態では、これは、ドメイン抗体、例えば、ヒト,ラクダまたはサメ(NARV)ドメイン抗体から選択されたドメイン抗体であってもよい。
【0119】
エピトープ結合ドメインは、1つまたは複数の位置でタンパク質スキャフォールドに結合可能である。この位置には、タンパク質スキャフォールドのC末端およびN末端,例えば、IgGの重鎖のC末端重鎖および/または軽鎖のC末端,または例えばIgGの重鎖のN末端および/または軽鎖のN末端が挙げられる。
【0120】
一実施形態では、第1のエピトープ結合ドメインがタンパク質スキャフォールドに結合し、第2のエピトープ結合ドメインが第1のエピトープ結合ドメインに結合し、例えばタンパク質スキャフォールドがIgGスキャフォールドの場合は、第1のエピトープ結合ドメインIgGスキャフォールドの重鎖のC末端に結合してもよく、そのエピトープ結合ドメインがそのC末端の位置で第2のエピトープ結合ドメインに結合でき、または例えば、第1のエピトープ結合ドメインは、IgGスキャフォールドの軽鎖のC末端に結合してもよく,その第1のエピトープ結合ドメインは、そのC末端の位置で第2のエピトープ結合ドメインにさらに結合してもよく,または例えば、第1のエピトープ結合ドメインは、IgGスキャフォールドの軽鎖のN末端に結合してもよく、その第1のエピトープ結合ドメインはそのN末端の位置で第2のエピトープ結合ドメインにさらに結合してもよく,または例えば、第1のエピトープ結合ドメインは、IgGスキャフォールドの重鎖のN末端に結合してもよく、その第1のエピトープ結合ドメインは、そのN末端の位置で第2のエピトープ結合ドメインにさらに結合してもよい。
【0121】
エピトープ結合ドメインがドメイン抗体である場合は、一部のドメイン抗体がスキャフォールド内の特定の位置に適合することがある。
【0122】
本発明で使用するドメイン抗体は、通常のIgGの重鎖および/または軽鎖のC末端で結合可能である。さらに、一部の免疫グロブリン単一可変ドメインは、通常の抗体の重鎖および軽鎖の両方のC末端に結合できる。
【0123】
免疫グロブリン単一可変ドメインのN末端が抗体定常ドメイン(C3またはCのいずれか)に融合している構築物の場合は、ペプチドリンカーは、免疫グロブリン単一可変ドメインが抗原に結合するのを支援することができる。事実、dAbのN末端は、抗原結合活性に関わる相補性決定領域(CDRS)の近傍に配置される。従って、短いペプチドリンカーは、エピトープ結合ドメインおよびタンパク質スキャフォールドに対する定常ドメインの間のスペーサーとして作用し、これによりdAbCDRをより容易に抗原に近づけることができ、従って高い親和性での結合が可能となる。
【0124】
免疫グロブリン単一可変ドメインがIgGに結合する環境は、融合しようとする抗体鎖によって異なる:IgGスキャフォールドの抗体軽鎖のC末端で融合する場合は、各免疫グロブリン単一可変ドメインが抗体ヒンジとFc部の近くに配置されることが期待される。このような免疫グロブリン単一可変ドメインは相互に大きく離れていると思われる。通常の抗体では、Fab断片間の角度、および各Fab断片とFc部間の角度は非常に大きく変動する。mAb、dAbの場合はFab断片間の角度は多くは異ならないが、一方、各FabとFc部間の角度には、一部の角度制約が観察されることがある。IgGスキャフォールドの抗体重鎖のC末端で融合した場合、各免疫グロブリン単一可変ドメインはFc部のC3ドメインの近くに配置されることが期待される。これはFc受容体(例えば、FcγRI,II,IIIおよびFcRn)へのFc結合特性に影響することは期待できない。理由は、これらの受容体が、C2ドメイン(FcγRI,IIおよびIIIクラスの受容体の場合)またはC2およびC3ドメイン間のヒンジ(例えば、FcRn受容体の場合)と結合しているからである。このような抗原結合タンパク質の別の特徴は、両免疫グロブリン単一可変ドメインが相互に空間的に接近していることが期待され、適切なリンカーにより与えられた柔軟性があるという条件下、これらの免疫グロブリン単一可変ドメインはホモ二量体でさえ形成でき、従って、Fc部の「ジップド(zipped)」四次構造化を促進し、この構築物の安定性を高めることができる。
【0125】
このような構造の考察は、エピトープ結合ドメインに結合する最も適切な位置、例えば、dAbのタンパク質スキャフォールド(例えば、抗体)上の位置、の選択の助けとなり得る。
抗原のサイズ、その局在化(血液中または細胞表面上),その四次構造(単量体または多量体)は変動可能である。通常の抗体は、ヒンジ部が存在することによりアダプター構築物として機能するように元々設計されているが、Fab断片の先端での2つの抗原結合性部位の方向は大きく変動でき、従って抗原の分子特性とその環境を受け入れることが可能である。対照的に、抗体または他のタンパク質スキャフォールドに結合した免疫グロブリン単一可変ドメインは、直接的あるいは間接的に構造的柔軟性が少ない。
【0126】
免疫グロブリン単一可変ドメインの溶液中結合状態と方法の理解も有益である。インビトロでdAbは単量体での存在が多く、溶液中ではホモ二量体か多量体が多いという根拠が蓄積されてきた(Reiter et al. (1999) J Mol Biol 290 p685-698; Ewert et al (2003) J Mol Biol 325, p531-553, Jespers et al (2004) J Mol Biol 337 p893-903; Jespers et al (2004) Nat Biotechnol 22 p1161-1165; Martin et al (1997) Protein Eng. 10 p607-614; Sepulvada et al (2003) J Mol Biol 333 p355-365)。これはIgドメインと一緒のインビボで観察された多量体発生、例えば、ベンスジョーンズタンパク質(免疫グロブリン軽鎖の二量体 (Epp et al (1975) Biochemistry 14 p4943-4952; Huan et al (1994) Biochemistry 33 p14848-14857; Huang et al (1997) Mol immunol 34 p1291-1301)およびamyloid fibers (James et al. (2007) J Mol Biol. 367:603-8)、を強く想起させる。
【0127】
例えば、溶液中では二量体化する傾向のdabを軽鎖のC末端よりもFc部のC末端に結合させることが望ましいという可能性もある。理由は、Fc部のC末端への結合により本発明の抗原結合タンパク質との関連で、これらのdAbを二量体化させると思われるためである。
【0128】
本発明の抗原結合タンパク質は、単一抗原に特異的な抗原結合性部位を含んでもよく、2つ以上の抗原または単一抗原上の2つ以上のエピトープに対し特異的な抗原結合性部位を有してもよく、また、抗原結合性部位のそれぞれが同じまたは異なる抗原上の別々のエピトープに対し特異的であってもよい。
【0129】
特に、本発明の抗原結合タンパク質は、HGFおよびVEGFに関連する疾患、例えば、血管新生を必要とする、またはHGF(HGF/Metシグナリング)および/またはVEGFの上昇したレベルと関連すると考えられる固形腫瘍を治療するのに有用であり得る。そのような腫瘍としては、結腸,乳房,卵巣,肺(小細胞または非小細胞),前立腺,膵臓,腎臓,肝臓,胃,頭頸部,メラノーマ,肉腫が挙げられる。原発性および二次性(転移性)脳腫瘍もまた含まれ、グリオーマ(上衣腫を含む),髄膜腫,オリゴデンドローマ,アストロサイトーマ(低悪性度,未分化および多形神経膠芽腫),髄芽腫,神経節腫,シュワン腫および脊索腫が挙げられるが、それらに限定されない。本発明の抗原結合タンパク質を用いた治療に好適な望ましくない血管新生と関連する他の疾患としては、加齢性黄斑変性病,糖尿病性網膜症,RAおよび乾癬が挙げられる。
【0130】
本発明の抗原結合タンパク質は、本発明の抗原結合タンパク質のためのコード配列を含む発現ベクターを有する宿主細胞の形質移入により産生可能である。発現ベクターまたは組換えプラスミドは、宿主細胞に対する複製および発現、および/または分泌を制御できる通常の制御配列の操作環境にこれらのコード配列を置くことにより産生可能である。調節配列には、プロモータ配列,例えば、CMVプロモータ,および他の既知抗体から得られたシグナル配列が含まれる。同様にして、相補的抗原結合タンパク質の軽鎖または重鎖をコードしたDNA塩基配列を有する第2の発現ベクターを産生できる。特定の実施形態では、この第2の発現ベクターは、コード配列と選択可能なマーカーに関することを除いて第1の発現ベクターに同じにして、各ポリペプチド鎖が機能的に発現していることを可能な限り確実にする。あるいは、抗原結合タンパク質のための重鎖と軽鎖コード配列を単一のベクター上に、例えば、同じベクター中に2つの発現カセットに入れて、置いてもよい。
【0131】
選択された宿主細胞は、第1と第2のベクターの両方を使って通常の技術により同時形質移入され(または、単純に単一のベクターで形質移入され)、組換えまたは合成軽鎖と重鎖の両方を含む本発明の形質移入した宿主細胞が作られる。この形質移入した細胞は、次に通常の技術により培養され本発明の操作された抗原結合タンパク質が産生される。組換え重鎖および/または軽鎖の会合を含む抗原結合タンパク質はアッセイ、例えば、ELISAやRIA、により培養物からスクリーニングされる。同様の通常の技術を採用して、他の抗原結合タンパク質を構築することが可能である。
【0132】
本方法で採用されたクローニングおよびサブクローニングステップのための適切なベクター、および、本発明の組成物の作成は当業者により選択されうる。例えば、通常のクローニングベクターのpUCシリーズを使用可能である。1つのベクター、pUC19、は市販品で、Amersham(バッキンガムシャー州,英国)またはPharmacia(ウプサラ、スウェーデン)、等のサプライハウスから入手可能である。さらに、容易に複製可能で、多くのクローニングサイトと選択可能な遺伝子(例えば、抗生物質耐性)を有し、容易に操作できる、いずれのベクターもクローニングの目的に使用可能である。従って、クローニングベクターの選択は本発明における制約因子ではない。
【0133】
また、発現ベクターを、異種のDNA塩基配列の発現、例えば哺乳動物のジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(DHFR)、を増幅するための適切な遺伝子により特徴づけることができる。他のベクター配列には、ポリAシグナル配列、例えば、ウシ成長ホルモン(BGH)由来の配列、およびβ‐グロビンプロモータ配列(betaglopro)が含まれる。本明細書で使える発現ベクターは、当業者にはよく知られた技術により合成してもよい。
【0134】
このようなベクターの構成要素、例えば、レプリコン,選択遺伝子,エンハンサー,プロモータ,シグナル配列、等、は市販または天然の入手源から入手してもよく、また、選択宿主中の組換えDNAの生成物の発現および/または分泌の誘導に使用される既知手順により合成してもよい。哺乳動物、細菌、昆虫、酵母、および真菌の発現に関する技術分野で既知の多くのタイプがある他の適切な発現ベクターもこの目的に選択してもよい。
【0135】
また、本発明は、本発明の抗原結合タンパク質のコード配列を含む組換えプラスミドを形質移入された細胞株を包含する。これらクローニングベクターのクローニングと他の操作に有用な宿主細胞もまた従来からあるものである。しかし、種々の大腸菌株由来の細胞は、本発明の抗原結合タンパク質作成におけるクローニングベクターや他のステップの複製に使うことができる。
【0136】
本発明の抗原結合タンパク質の発現のための適切な宿主細胞または細胞株には、哺乳動物細胞、例えば、NS0,Sp2/0,CHO(例えば、DG44),COS,HEK,繊維芽細胞(例えば、3T3),および骨髄細胞、例えば、これはCHOまたは骨髄細胞中で発現してもよい、が含まれる。ヒト細胞を使って、分子をグリコシレーションパターンで修飾させてもよい。あるいは、他の真核細胞株を採用してもよい。哺乳動物宿主細胞の選択および形質転換,培養,増幅,スクリーニングと生成物産生および精製の方法は、当業者には既知である。例えば、前述のSambrook et alを参照。
【0137】
細菌細胞は、組換えFabの発現のため、または本発明の他の実施形態のために適切な宿主細胞として有用であり得る(例えば、Pluckthun, A., Immunol. Rev., 130:151-188 (1992)参照)。しかし、細菌細胞で発現したタンパク質は、折り畳まれていないまたは不適切に折り畳まれた形式または非グリコシル化形式になる傾向があるため,細菌細胞中で産生されたいずれの組換えFabも抗原結合能力の保持の観点でスクリーニングしなければならなくなる。細菌細胞で発現された分子が正しく折り畳まれた形式で産生された場合は、その細菌細胞は望ましい宿主となるだろう。あるいは、別の実施形態で、分子が細菌宿主中で発現され、引き続き再折り畳みされることが可能である。例えば、発現に使われる種々の大腸菌株は、バイオテクノロジーの分野で宿主細胞としてよく知られている。種々の枯草菌、ストレプトマイセス,他の桿菌等の株もまたこの方法に採用できる。
【0138】
所望の場合は、当業者に既知の酵母細胞株もまた、昆虫細胞、例えば、ショウジョウバエと鱗翅類、およびウイルス発現システムと同様に、宿主細胞として入手可能である。例えば、Miller et al., Genetic Engineering, 8:277-298, Plenum Press (1986)、および本明細書に引用の文献を参照のこと。
【0139】
ベクターが作成される一般的な方法、本発明の宿主細胞を産生するために必要な形質移入方法、およびこのような宿主細胞から本発明の抗原結合タンパク質を産生するために必要な培養方法、は全て従来からの技術であってもよい。典型的には,本発明の培養方法は無血清培養方法で,通常細胞を無血清懸濁液中で培養する。同様に、本発明の抗原結合タンパク質を一度産生した後、細胞培養内容物を当分野の標準的手法、例えば、硫安塩析法,アフィニティーカラム,カラムクロマトグラフイー,ゲル電気泳動法、等、により精製してもよい。このような技術は、当該分野の技術の範囲内にあり本発明を制限するものではない。例えば、改変抗体の調製に関しては、WO 99/58679 および WO 96/16990に記載されている。
【0140】
抗原結合タンパク質のさらに別の発現法では、トランスジェニック動物中での発現を使用してもよい。この例は、U.S. Patent No.4,873,316に記載されている。これは、動物カゼインプロモータを使った発現システムであり、このプロモータは、遺伝子導入で哺乳動物に取り込んだ場合、雌のミルク中に所望の組換えタンパク質を産生させる。
【0141】
本発明のさらなる態様では、本発明の抗体を産生する方法を提供し、この方法は本発明の抗体の軽鎖および/または重鎖をコードしたベクターで形質転換または形質移入した宿主細胞を培養し、これにより産生された抗体を回収するステップを含む。
【0142】
本発明に従って、本発明の抗原結合タンパク質を産生する方法が提供され、この方法は、
(a)抗原結合タンパク質の重鎖をコードした第1のベクターを提供するステップと;
(b)抗原結合タンパク質の軽鎖をコードした第2のベクターを提供するステップと;
(c)哺乳動物宿主細胞(例えば、CHO)を前記第1と第2のベクターで形質転換するステップと;
(d)抗原結合タンパク質を前記宿主細胞から前記培地へ分泌を促す条件下で、ステップ(c)の宿主細胞を培養するステップと;
(e)分泌されたステップ(d)の抗原結合タンパク質を回収するステップと、
を含む。
【0143】
所望の方法で発現された後、抗原結合タンパク質のインビトロ活性を適切なアッセイにより調査する。現在よく使われるELISAアッセイ方式を採用し、標的に対する抗原結合タンパク質の定性および定量評価を行う。さらに、他のインビトロアッセイを使って、通常のクリアランス機序にも関わらす体の中に残留している抗原結合タンパク質を評価するため実施されるヒトの臨床試験の前に中和性能を確認する。
【0144】
治療の用量と持続時間は、ヒトの循環系における本発明の分子の相対的持続時間に関係し、治療条件と患者の全体的健康状態に依存して当業者により調節可能である。最大の治療効果を得るためには、長期間にわたる(例えば、4〜6ヶ月間)反復投薬(例えば、週一回または2週間に一回)が、必要となる可能性があることが想定される。
【0145】
本発明の治療薬の投与方法は、宿主に薬剤を送達する任意の適切なルートであってよい。本発明の抗原結合タンパク質,および医薬品組成物は、非経口投与、すなわち、皮下(s.c.),髄腔内,腹腔内,筋肉内(i.m.),静脈内(i.v.),または鼻腔内の投与に特に有用である。
【0146】
本発明の治療薬は、有効量の本発明の抗原結合タンパク質を製薬上許容可能なキャリア中の有効成分として含む医薬品組成物として調製されてもよい。本発明の予防薬としては、抗原結合タンパク質を含む水性懸濁液または水溶液は、生理的pHに緩衝され注射の準備ができた形としてもよい。非経口投与用組成物は、通常、本発明の抗原結合タンパク質の溶液、または製薬上許容可能なキャリア、例えば水性キャリア、に溶解したそのカクテルを含む。種々の水性キャリアは、例えば、0.9%食塩水,0.3%グリシン,等を用いてもよい。これらの溶液は、無菌状態で、通常、粒子状物質の無い状態にされる。これらの溶液は、通常のよく知られた滅菌技術(例えば、濾過)により無菌にされる。組成物は、適切な生理学的条件に必要とされる、例えば、pH調節剤および緩衝剤等のような製薬上許容可能な補助物質を含んでもよい。このような製剤処方での本発明の抗原結合タンパク質の濃度は、広く変動可能で、すなわち、重量%で約0.5%未満から,通常、約1%または少なくとも約1%、そして15〜20%までになり、また、選択された具体的な投与方法に従って流体容量,粘性、等に基づき一次的に選択される。
【0147】
従って、本発明の筋肉内注射用医薬品組成物は、1mLの無菌緩衝水、および約1ng〜約200mg、例えば、約50ng〜約30mg、または、約5mg〜約25mgの本発明の抗原結合タンパク質を含むように調製され得る。同様に、本発明の点滴静注用医薬品組成物は、約250mlの無菌リンゲル液,および約1〜約30mg、または約5mg〜約25mgの1ml当たりのリンゲル液中の本発明の抗原結合タンパク質を含むように調製され得る。非経口投与組成物を調製する実際の方法は既知で、当業者には明らかであり、さらに詳細は、例えば、Remington's Pharmaceutical Science, 15th ed., Mack Publishing Company, イーストン,ペンシルベニア州、に記載されている。本発明の静脈内投与可能な抗原結合タンパク質製剤の調製については、Lasmar U and Parkins D “The formulation of Biopharmaceutical products”, Pharma. Sci. Tech. today, page 129-137, Vol.3 (3rd April 2000), Wang, W “Instability, stabilisation and formulation of liquid protein pharmaceuticals”, Int. J. Pharm 185 (1999) 129-188, Stability of Protein Pharmaceuticals Part A and B ed Ahern T.J., Manning M. C., New York, NY: Plenum Press (1992), Akers, M. J.“Excipient-Drug interactions in Parenteral Formulations”, J. Pharm Sci 91 (2002) 2283-2300, Imamura, K et al “Effects of types of sugar on stabilization of Protein in the dried state”, J Pharm Sci 92 (2003) 266-274,Izutsu, Kkojima, S.“Excipient crystalinity and its protein-structure-stabilizing effect during freeze-drying”, J Pharm. Pharmacol, 54 (2002) 1033-1039, Johnson, R, “Mannitol-sucrose mixtures-versatile formulations for protein lyophilization”, J. Pharm. Sci, 91 (2002) 914-922, Ha, E Wang W, Wang Y. j. “Peroxide formation in polysorbate 80 and protein stability”, J. Pharm Sci, 91, 2252-2264,(2002)、を参照のこと。この全内容は参照により本明細書に組み込まれ、具体的に参照される。
【0148】
一実施形態では、医薬品として用いる場合、本発明の治療薬はユニット剤形として存在する。適切な治療有効量は当業者には容易に決定可能である。適切な用量は患者の体重により計算され、例えば、0.01〜20mg/kg,例えば0.1〜20mg/kg,例えば1〜20mg/kg,例えば10〜20mg/kgまたは例えば1〜15mg/kg,例えば10〜15mg/kgの範囲であってもよい。本発明の有効ヒト治療条件の使用に関して、適切な用量は0.01〜1000mg,例えば0.1〜1000mg,例えば0.1〜500mg,例えば500mg,例えば0.1〜100mg,または0.1〜80mg,または0.1〜60mg,または0.1〜40mg,または例えば1〜100mg,または1〜50mg,の範囲内の本発明の抗原結合タンパク質であってもよく、これらは非経口、例えば、皮下、静脈内、または筋肉内投与できる。このような用量は、必要なら、医師により選択された適切な時間間隔で反復してもよい。
【0149】
本明細書記載の抗原結合タンパク質は、貯蔵のための冷凍乾燥が可能で、使用に先立ち適切なキャリア中で再構成できる。この技術は、通常の免疫グロブリンで有効であることが示され、既知技術の凍結乾燥と再構成技術を用いることができる。
【0150】
当技術分野で既知のいくつかの方法を使って本発明に使われるエピトープ結合ドメインを見つけることが可能である。
【0151】
用語「ライブラリ」は、ポリペプチドまたは核酸の不均一混合物を指す。ライブラリは、それぞれ単一ポリペプチドまたは核酸配列を有するメンバーからなる。この点で、「ライブラリ」は「レパートリー」と同義である。ライブラリメンバー間の配列の差異は、ライブラリ中に存在する多様性の原因である。ライブラリはポリペプチドまたは核酸の単純な混合物の形を取ってもよく、また、核酸のライブラリで形質転換された生命体または細胞の形、例えば、細菌、ウイルス、動物、または植物、等の形であってもよい。一実施例では、それぞれの生命体または細胞は1つのみまたは限られた数のライブラリメンバーを含む。都合のいいことに、核酸によってコードされたポリペプチドを発現させるために核酸が発現ベクターの中に組み込まれる。一態様では、従って、ライブラリは宿主生物の集合体の形を取ることができ、各生命体は、発現して対応するポリペプチドメンバーを産生することが可能な核酸型の単一ライブラリメンバーを含んだ1つまたは複数の発現ベクターのコピーを含む。従って、この宿主生物の集合体は多様なポリペプチドの大きなレパートリーをコードする可能性を有している。
【0152】
「ユニバーサルフレームワーク」は、Kabatの定義(“Sequences of Proteins of Immunological Interest”, 米国保健社会福祉省)の配列中に保存された抗体領域に対応する単一抗体フレームワーク配列、またはChothiaとLeskの定義(Chothia and Lesk, (1987) J. Mol. Biol. 196:910-917)によるヒト生殖細胞系列免疫グロブリンレパートリーまたは構造に対応する単一抗体フレームワーク配列である。これは、単一フレームワークでも、これらのフレームワークの集合体であってもよく、たとえ高頻度可変領域にのみある変異だったにしても、実質的にいかなる結合特異性の誘導も許容することが認められてきた。
【0153】
本明細書で定義されたアミノ酸およびヌクレオチド配列の整合性と相同性,類似性または同一性は、一実施形態中で調製され、デフォルトのパラメーターを使ってBLAST2 Sequenceアルゴリズムにより測定されている(Tatusova, T. A. et al., FEMS Microbiol Lett, 174:187-188 (1999))。
【0154】
ディスプレイシステム(例えば、核酸のコード化機能、および、核酸によりコードされたペプチドまたはポリペプチドの機能特性とリンクしたディスプレイシステム)が、本明細書記載の方法中で、例えば、dAbまたは他のエピトープ結合ドメインの選択において、使われた場合、選択されたペプチドまたはポリペプチドをコードした核酸のコピー数を増幅するまたは増やすことは、好都合なことが多い。これは、本明細書記載の方法や他の適切な方法を使って追加のラウンドのために、あるいは、追加のレパートリー(例えば、親和性成熟レパートリー)を調製するために、十分な量の核酸および/またはペプチドまたはポリペプチドを得る効率的な手段を提供する。従って、一部の実施形態では、エピトープ結合ドメイン選択方法は、ディスプレイシステム(例えば、ファージディスプレイのような、核酸のコーディング機能および核酸によりコードされたペプチドまたはポリペプチドの機能特性とリンクしたディスプレイ)の使用を含み、選択されたペプチドまたはポリペプチドをコードした核酸のコピー数を増幅するまたは増やすことをさらに含む。核酸は、任意の適切な方法、例えば、ファージ増幅,細胞増殖またはポリメラーゼ連鎖反応、を使って増幅可能である。
【0155】
一実施例では、この方法は核酸のコーディング機能および核酸によりコードされたポリペプチドの物理的、化学的、および/または機能的特性にリンクしたディスプレイシステムを用いる。このようなディスプレイシステムは、複数の複写可能な遺伝子パッケージ(genetic package)、例えば、バクテリオファージまたは細胞(細菌)、を含むことができる。ディスプレイシステムは、ライブラリ、例えば、バクテリオファージディスプレイライブラリ、を含んでもよい。バクテリオファージディスプレイはディスプレイシステムの一例である。
【0156】
多くの適切なバクテリオファージディスプレイシステム(例えば、一価のディスプレイおよび多価のディスプレイシステム)が記載されてきた(例えばGriffiths et al., U.S. Patent No. 6,555,313 B1(参照により本明細書に組み込まれる);Johnson et al., U.S. Patent No. 5,733,743 (参照により本明細書に組み込まれる); McCafferty et al., U.S. Patent No. 5,969,108 (参照により本明細書に組み込まれる); Mulligan-Kehoe, U.S. Patent No. 5,702,892 (参照により本明細書に組み込まれる); Winter, G. et al., Annu. Rev. Immunol. 12:433-455 (1994); Soumillion, P. et al., Appl. Biochem. Biotechnol. 47(2-3):175-189 (1994); Castagnoli, L. et al., Comb. Chem. High Throughput Screen, 4(2):121-133 (2001)、参照)。バクテリオファージディスプレイシステムで提示されたペプチドまたはポリペプチドは、いずれの適切なバクテリオファージ、例えば、線状ファージ(例えば、fd,M13,F1),溶菌ファージ(例えば、T4,T7,ラムダ),またはRNAファージ(例えば、MS2)、上にも提示可能である。
【0157】
通常、適切なファージコートタンパク質(例えば、fd pIIIタンパク質)との融合タンパク質としてペプチドまたはファージポリポリペプチドのレパートリーを提示するファージライブラリは、産生されるか提供される。融合タンパク質は、ペプチドまたはポリペプチドファージコートタンパク質の先端、または所望なら内部の位置、にペプチドまたはポリペプチドを提示できる。例えば、提示されたペプチドまたはポリペプチドは、pIIIのアミノ末端からドメイン1まで存在可能である(pIIIのドメイン1はN1とも呼ばれる)。提示されたポリペプチドは、直接pIIIに(例えば、pIIIのドメイン1のN末端)またはリンカーを使ってpIIIに融合可能である。所望なら,融合体はタグ(例えば、mycエピトープ,Hisタグ)をさらに含むこともできる。ファージコートタンパク質との融合タンパク質として提示されたペプチドまたはポリペプチドのレパートリーを含むライブラリは、任意の適切な方法を用いて産生可能である。例えば、提示されたペプチドまたはポリペプチドをコードしたファージベクターライブラリやファージミドベクターを、適切な宿主細菌中に導入し、生成した細菌を培養してファージを産生する(例えば、適切なヘルパーファージを使って、または必要ならプラスミドを補完して)。ファージライブラリは、培養物から任意の適切な方法、例えば、沈降法および遠心分離法、により回収可能である。
【0158】
ディスプレイシステムは任意の所望量の多様性を含むペプチドまたはポリペプチドのレパートリーを含むこともできる。例えば、このレパートリーは生命体、生命体のグループ、所望組織または所望細胞型、により発現された天然のポリペプチドに対応するアミノ酸配列を有するペプチドまたはポリペプチドを含むことも、または、無秩序のまたは無秩序化されたアミノ酸配列を有するペプチドまたはポリペプチドを含むこともできる。希望するなら、このポリペプチドは、共通のコアまたはスキャフォールドを共有することができる。例えば、レパートリーまたはライブラリ中の全ポリペプチドが、プロテインA,プロテインL,プロテインG,フィブロネクチンドメイン,アンチカリン(Anticalin),CTLA4,所望の酵素(例えば、ポリメラーゼ,セルラーゼ),または免疫グロブリンスーパーファミリー由来のポリペプチド,例えば、抗体または抗体断片(例えば、抗体可変ドメイン)から選択されたスキャフォールドをベースにすることも可能である。このようなレパートリーやライブラリ中のポリペプチドは、無秩序または無秩序化されたアミノ酸配列の規定領域および共通アミノ酸配列の領域を含むことができる。特定の実施形態では、レパートリー中の全てまたは実質的に全てのポリペプチドが所望のタイプ、例えば、所望の酵素(例えば、ポリメラーゼ)または所望の抗体の抗原結合性断片(例えば、ヒトVまたはヒトV)、である。一部の実施形態では、ポリペプチドディスプレイシステムはポリペプチドのレパートリーを含み、その中の各ポリペプチドは抗体可変ドメインを含む。例えば、レパートリー中の各ポリペプチドはV,VまたはFv(例えば、単鎖Fv)を含んでもよい。
【0159】
アミノ酸配列の多様性を、任意の適切な方法を使って、ペプチドまたはポリペプチドまたはスキャフォールドの任意の所望の領域に導入可能である。例えば、アミノ酸配列の多様性を、標的部位、例えば、任意の適切な変異誘発性(例えば、低忠実性PCR,オリゴヌクレオチド媒介または部位特異的変異,NNKコドンを使った多様化)または任意の他の適切な方法を使って、多様化ポリペプチドをコードした核酸ライブラリを調製することにより、抗体可変ドメインの相補性決定領域または疎水性ドメイン、に導入可能である。所望なら、多様化すべきポリペプチドの領域を無秩序化できる。レパートリーを構成するポリペプチドのサイズは、概して選択できる問題であり、均一なポリペプチドサイズは必要ではない。レパートリー中のポリペプチドは、少なくとも三次構造(少なくとも1つのドメインを形成する)を有することができる。
【0160】
選択/単離/回収
エピトープ結合ドメインまたはドメインの集合体は、適切な方法を使って、レパートリーまたはライブラリ(例えば、ディスプレイシステム中の)から選択、単離、および/または回収可能である。例えば,ドメインは選択可能な特性(例えば、物理的特性,化学的特性,機能特性)に基づいて選択または単離される。適切な選択可能な特性には、レパートリー中のペプチドまたはポリペプチドの生物活性,例えば,一般的リガンド(例えば、スーパー抗原)に対する結合性,標的リガンド(例えば、抗原,エピトープ,基質)に対する結合性,抗体に対する結合性(例えば、ペプチドまたはポリペプチド上に発現したエピトープ経由),および触媒能力が含まれる(例えば、Tomlinson et al., WO 99/20749; WO 01/57065; WO 99/58655参照)。
【0161】
一部の実施形態では、実質的に全てのドメインが共通の選択可能特性を共有するペプチドまたはポリペプチドのライブラリまたはレパートリーからプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドが選択および/または単離される。例えば、ドメインを、実質的に全てのドメインに共通の一般的リガンドに結合する,共通の標的リガンドに結合する,共通の抗体に結合する(または結合される),または共通の触媒能力を有するライブラリまたはレパートリーから選択することができる。この選択のタイプは、所望の生物活性を有する親のペプチドまたはポリペプチドに基づいたレパートリーまたはドメインを調製する際、例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインの親和性成熟を行う場合、に特に有用である。
【0162】
共通の一般的リガンドに対する結合性に基づいた選択では、元のライブラリまたはレパートリーの成分である全てまたは実質的に全てのドメイを含むドメインのコレクションまたは集合体が得られる。例えば,標的リガンドまたは一般的リガンドに結合しているドメイン、例えばプロテインA,プロテインLまたは抗体は、パニングまたは適切な親和性マトリックスを使って選択、単離、および/または回収ができる。パニングは、リガンド(例えば、一般的リガンド,標的リガンド)の溶液を適切な容器(例えば、チューブ,ペトリ皿)に加え、リガンドを容器の壁表面上に沈着または被覆させることにより成し遂げられる。過剰リガンドを洗い流し、ドメインを容器に加え、この容器をペプチドまたはポリペプチドが固定化したリガンドと結合するための適切な条件下で維持する。非結合ドメインは、洗い流され、結合ドメインは、任意の適切な方法、例えば、削り取りやpHを下げることによって回収できる。
【0163】
適切なリガンド親和性マトリックスは、通常、固体担体またはビーズ(例えば、アガロース)を含み、これに対しリガンドが共有結合的または非共有結合的に連結される。
【0164】
親和性マトリックスは、ドメインがマトリックス上のリガンドに結合するための適切な条件下、バッチプロセス,カラムプロセスまたは任意の他の適切なプロセスを使って、ペプチドまたはポリペプチド(例えば、プロテアーゼとインキュベートされたレパートリー)と結合させることができる。親和性マトリックスと結合しないドメインを洗い流すことができ、結合したドメインを、低pHバッファー,マイルドな変性剤(例えば、尿素)、またはリガンドとの結合で競合するペプチドまたはドメインで溶出、等の任意の適切な方法で溶出し、回収する。一実施例では、ビオチン化した標的リガンドは、レパートリー中のドメインが標的リガンドに結合するために適切な条件下、レパートリーと結合する。結合ドメインは、固定化したアビジンストレプトアビジン(例えば、ビーズ上の)を使って回収される。
【0165】
一部の実施形態では、一般的または標的リガンドは、抗体またはその抗体の抗原結合性断片である。ライブラリまたはレパートリーのペプチドまたはポリペプチド中で実質的に保存されたペプチドまたはポリペプチドの構造的特徴と結合する抗体または抗原結合断片は、特に一般的リガンドとして有用である。プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドの単離,選択および/または回収のためのリガンドとしての使用に適切な抗体と抗原結合性断片は、モノクローナルまたはポリクローナルであってもよく、任意の適切な方法で調製できる。
【0166】
ライブラリ/レパートリー
プロテアーゼエピトープ結合ドメインをコードする、および/または、これを含むライブラリは、任意の適切な方法を使って調製または入手可能である。ライブラリは、目的のドメインまたはスキャフォールド(例えば、ライブラリから選択されたドメイン)に基づくドメインをコードするように設計することも、または、本明細書記載の方法を使って別のライブラリから選択することも可能である。例えば,ドメインが豊富なライブラリは、適切なポリペプチドディスプレイシステムを使って調整可能である。
【0167】
所望のタイプのドメインのレパートリーをコードしたライブラリは、任意の適切な方法を使って容易に産生可能である。例えば,所望のタイプのポリペプチド(例えば、免疫グロブリン可変ドメイン)をコードした核酸配列を得ることができ、それぞれが1つまたは複数の変異を含む核酸のコレクションが調製できる。例えば、エラープローンポリメラーゼ連鎖反応(PCR)システムを使って核酸を増幅することにより、化学的変異誘発により(Deng et al., J. Biol. Chem., 269:9533 (1994)) 、または細菌突然変異誘発株を使って(Low et al., J. Mol. Biol., 260:359 (1996)) 調整可能である。
【0168】
他の実施形態では、核酸の特定の領域を多様化の標的にすることができる。
【0169】
選択位置を変異させる方法も当業者にはよく知られており、これには、例えば、PCRを使う場合または使わない場合の、不適正なオリゴヌクレオチドまたは変性オリゴヌクレオチドの使用が含まれる。例えば,合成抗体ライブラリは、抗原結合ループに対する変異を標的にして作られてきた。無秩序または半無秩序抗体H3およびL3領域を、生殖細胞系列免疫グロブリンV遺伝子セグメントに付加して、変異フレームワーク領域を有する大ライブラリが構築されている(Hoogenboom and Winter (1992) supra; Nissim et al. (1994) supra; Griffiths et al. (1994) supra; DeKruif et al. (1995) supra)。このような多様化は、拡張され、一部または全ての他の抗原結合ループを含むまでになっている(Crameri et al. (1996) Nature Med., 2:100; Riechmann et al. (1995) Bio/Technology, 13:475; Morphosys, WO 97/08320, supra)。他の実施形態では、核酸の特定の領域を多様化の標的にでき、例えば,2段階PCR戦略では1回目のPCR生成物を「メガプライマー(mega−primer)」として用いる(例えば、Landt, O. et al., Gene 96:125-128 (1990)参照)。標的の多様化は、例えば、SOE PCRを使っても達成できる(例えば、Horton, R.M. et al., Gene 77:61-68 (1989) 参照)。
【0170】
選択位置での配列多様性は、ポリペプチドの配列を特定するコード配列を変え、多くのアミノ酸(例えば20全部またはそのサブセット)をその位置に組み込むことにより得ることができる。IUPAC命名法を使って説明するが、最も用途の広いコドンは、NNKであり、これはTAG停止コドンと同様に全アミノ酸をコードする。NNKコドンは、必要な多様性を導入するために使用可能である。同じ目的を有する他のコドンNNNも使用でき、これは追加の停止コドンTGAとTAAを作り出す。このような標的化手法は、標的領域中の全配列空間を調査対象にすることができる。
【0171】
一部のライブラリは、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであるドメイン(例えば、抗体またはその一部)を含む。例えば、ライブラリは既知の主鎖構造を有するドメインを含むことができる。(例えば、Tomlinson et al.,WO99/20749参照)。ライブラリは適切なプラスミドまたはベクター中で調製できる。本明細書で使われるベクターは、異種のDNAを細胞の中に導入し、それの発現および/または複製をするために使われる離散した要素を指す。任意の適切なベクターを使うことができ、これにはプラスミド(例えば、細菌性プラスミド),ウイルスまたはバクテリオファージベクター、人工染色体、およびエピソームベクターが含まれる。このようなベクターは、単純クローニングおよび突然変異生成のために使うことができ、または、発現ベクターライブラリの発現を促進するために使うことができる。ベクターおよびプラスミドは、通常1つまたは複数のクローニング部位(例えば、ポリリンカー)、複製開始点、および少なくとも1つの選択可能なマーカー遺伝子を含む。発現ベクターは、ポリペプチドの転写と翻訳促進エレメント、例えば、エンハンサー,プロモータ,転写終結信号,シグナル配列,等をさらに含むことができる。これらのエレメントは、このような発現ベクターが、発現に適切な条件下維持された場合(例えば、適切な宿主細胞中で)、ポリペプチドが発現し、産生されるようにポリペプチドをコードしたクローン化挿入断片に作動可能なようにリンクされた状態に配置することが可能である。
【0172】
クローニングおよび発現ベクターは、通常、1つまたは複数の選択宿主細胞中でベクターに複製させる核酸配列を含む。典型的には、クローニングベクター中では,この配列は、ベクターに宿主染色体DNAとは独立に複製させ、複製開始点または自己複製配列を含む配列である。このような配列は、種々の細菌、酵母およびウイルスでよく知られている。プラスミドpBR322由来の複製開始点は、大抵のグラム陰性細菌に対し適切で、2ミクロンプラスミド開始点は、酵母に適切であり、また種々のウイルス開始点(例えば、SV40,アデノウイルス)は、哺乳動物細胞中に入れるクローニングベクターに有用である。これらがコス細胞のような高レベル複製が可能な哺乳動物細胞で使われるのでなければ、通常、複製開始点は哺乳類の発現ベクターには必要でない。
【0173】
クローニングまたは発現ベクターは、選択可能マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含むことができる。このようなマーカー遺伝子は、選択培養培地中で成長した形質転換宿主細胞の生存または成長に必要なタンパク質をコードしている。従って、選択遺伝子を含むベクターで形質転換されなかった宿主細胞は、その倍地中で生存しないことになる。典型的な選択遺伝子は、抗生物質と他の毒素、例えば、アンピシリン,ネオマイシン,メトトレキサートまたはテトラサイクリン,に耐性を付与し、栄養要求性欠如を補完し,または成長培地中で得られない重要な栄養素を補給する、タンパク質をコードしている。
【0174】
適切な発現ベクターは多くの要素を含むことができる。例えば、複製開始点,選択可能マーカー遺伝子,1つまたは複数の発現調節エレメント,例えば、転写調節エレメント(例えば、プロモータ,エンハンサー,ターミネーター)および/または1つまたは複数の翻訳信号,シグナル配列またはリーダー配列,等を含むことができる。発現調節エレメントおよび信号またはリーダー配列は、もしあれば、ベクターまたは他のソースから供給を受けることができる。例えば,抗体鎖をコードしたクローン化核酸の転写および/または翻訳調節配列は、直接発現に使用可能である。
【0175】
プロモータは、所望の宿主細胞中の発現のために組み込んでもよい。プロモータは、構成的であっても誘導可能であってもよい。例えば,プロモータは、核酸の転写を命令するように、抗体、抗体鎖またはその一部をコードした核酸に作動可能なようにリンクされてもよい。種々の適切な原核生物用プロモータ(例えば、β−ラクタマーゼおよびラクトースプロモータシステム,アルカリフォスファターゼ,トリプトファン(trp)プロモータシステム,大腸菌用のlac,T3,T7プロモータ)および真核生物(例えば、シミアンウイルス40初期または後期プロモータ,ラウス肉腫ウイルス末端反復配列プロモータ,サイトメガロウイルスプロモータ,アデノウイルス後期プロモータ,EG−1aプロモータ)宿主が入手可能である。
【0176】
さらに、発現ベクターは、通常、ベクターを保持している宿主細胞の選択に用いる選択可能マーカー,および,複製可能な発現ベクターの場合には、複製開始点を含む。抗生物質または薬剤耐性を付与する産物をコードした遺伝子は、共通の選択可能マーカーであり、原核生物(例えば、β−ラクタマーゼ遺伝子(アンピシリン耐性),テトラサイクリン耐性用Tet遺伝子)および真核細胞(例えば、ネオマイシン(G418またはジェネテシン),gpt(ミコフェノール酸),アンピシリン,またはヒグロマイシン耐性遺伝子)で使用可能である。ジヒドロ葉還元酵素標識遺伝子は、種々の宿主中でメトトレキサートにより選択を可能にする。宿主の栄養要求性マーカーの遺伝子産物をコードした遺伝子(例えば、LEU2,URA3,HIS3)は、酵母中の選択マーカーとして使われることが多い。ウイルス(例えば、バキュロウイルス)またはファージベクター,および宿主細胞のゲノムに統合可能なベクター,例えば、レトロウイルスベクター、の使用もまた意図されている。
【0177】
原核生物(例えば、大腸菌等の細菌細胞)または哺乳動物細胞中での発現に適切な発現ベクターには、例えば,pETベクター(例えば、pET−12a,pET−36,pET−37,pET−39,pET−40,Novagen他),ファージベクトル(例えば、pCANTAB5E,Pharmacia),pRIT2T(プロテインA融合ベクター,Pharmacia),pCDM8,pCDNA1.1/amp,pcDNA3.1,pRc/RSV,pEF−1(Invitrogen,Carlsbad,CA),pCMV−SCRIPT,pFB,pSG5,pXT1 (Stratagene, La Jolla, CA), pCDEF3 (Goldman, L.A., et al., Biotechniques, 21:1013-1015 (1996)),pSVSPORT(Gibco BRL,Rockville,MD),pEF−Bos(Mizushima, S., et al., Nucleic Acids Res., 18:5322 (1990)) 等、が挙げられる。種々の発現宿主,例えば、原核細胞(大腸菌),昆虫細胞(ショウジョウバエSchnieder S2細胞,Sf9),酵母(P.methanolica,P.pastoris,S.cerevisiae)および哺乳動物細胞(例えば、コス細胞)での使用に適切な発現ベクターが入手可能である。
【0178】
ベクターの一部の実施例は、ポリペプチドライブラリメンバーに相当するヌクレオチド配列の発現を可能とする発現ベクターである。従って、一般的および/または標的リガンドによる選択は、ポリペプチドライブラリメンバーを発現する単一クローンの別々の増殖と発現により行われる。上述のように、具体的な選択ディスプレイシステムは、バクテリオファージディスプレイである。従って、ファージまたはファージミドベクターは使用可能である。例えば、ベクターは大腸菌複製開始点(二本鎖複製用)および、ファージ複製起点(一本鎖DNAの産生用)を有するファージミドベクターであってもよい。このようなベクターの操作および発現は、当業者にはよく知られている (Hoogenboom and Winter (1992) supra; Nissim et al. (1994) supra)。簡単に述べれば、ベクターは、ファージミドおよび発現カセット上流のラックプロモータに選択性を付与するβ−ラクタマーゼ遺伝子を含むことができる。この遺伝子は、適切なリーダー配列,多重クローニング部位,1つまたは複数のペプチドタグ,1つまたは複数のTAG停止コドンおよびファージタンパク質pIIIを含むことができる。従って、大腸菌の種々の抑制因子および非抑制因子株を使って、また、グルコース,イソ−プロピルチオ−β−Dガラクトシド(iso−propylthio−β−D−galactoside)(IPTG)またはVCSM13等のヘルパーファージを添加して、ベクターは、発現のないプラスミドとして複製することができ、大量のポリペプチドライブラリメンバーのみ、または産物ファージ(この内の一部はポリペプチド−pIII融合体で、その表面に少なくとも1つのコピーを含む)、を産生することができる。抗体可変ドメインは、標的リガンド結合部位および/または一般的リガンド結合部位を含んでもよい。特定の実施形態では、一般的リガンド結合部位は、プロテインA,プロテインLまたはプロテインG等のスーパー抗原のための結合部位である。可変ドメインは、任意の所望の可変ドメイン,例えば、ヒトVH(例えば、V1a,V1b,V2,V3,V4,V5,V6),ヒトVλ(例えば、Vλl,Vλll,Vλlll,VλlV,VλV,VλVIまたはVκ1)またはヒトVK(例えば、Vκ2,Vκ3,Vκ4,Vκ5,Vκ6,Vκ7,Vκ8,Vκ9またはVκ10)に基づくものであってもよい。
【0179】
またさらなる技術カテゴリーには、レパートリーの人工区分への選別が含まれ、これは遺伝子とその遺伝子産物との結びつきを利用する。例えば,所望の遺伝子産物をコードした核酸が、油中水乳剤を使って形成されたマイクロカプセル中で選択可能となる選択システムが、WO99/02671, WO00/40712 および Tawfik & Griffiths (1998) Nature Biotechnol 16(7), 652-6に記載されている。所望の活性を有する遺伝子産物をコードした遺伝因子がマイクロカプセル中に区分けされ、次に、転写、および/または翻訳されてそれぞれの遺伝子産物(RNAまたはタンパク質)をマイクロカプセル内に産生する。引き続き、所望の活性を有する遺伝子産物を産生する遺伝子因子が選別される。この手法によって、種々の方法で所望の活性を検出することにより目的の遺伝子産物を選択できる。
【0180】
エピトープ結合ドメインの解析
ELISAを含む当業者に周知の方法によって、ドメインのその特異的抗原又はエピトープに対する結合を試験することができる。一例として、結合は、モノクローナル抗体を用いたELISAを用いて試験される。
【0181】
ファージELISAは、任意の適切な手順に従い実施することができ:例示的なプロトコルを下記に記載する。
【0182】
それぞれの回の選別で生産したファージの集団を、「ポリクローナル」ファージ抗体を同定するために、選択した抗原又はエピトープに対する結合によりELISAによってスクリーニングすることができる。これら集団由来の、単一の感染させたバクテリアのコロニーからのファージをその後、「モノクローナル」ファージ抗体を同定するためにELISAによってスクリーニングすることができる。抗原又はエピトープに結合する可溶性抗体断片のスクリーニングもまた所望され、これもまた、例えばC−又はN−末端タグに対する試薬を用いたELISAによって実施することができる(例えばWinter et al.(1994)Ann.Rev.Immunology 12,433〜55及びそこで引用された文献を参照のこと)。
【0183】
PCR産物のゲル電気泳動(Marks et al.1991,上記;Nissim et al.1994,上記)、プロービング(Tomlinson et al.,1992 J.Mol.Biol.227,776)又はベクターDNAのシークエンスにより、選択したファージモノクローナル抗体の多様性を評価することができる。
【0184】
dAbの構造
dAbが、本明細書に記載したファージディスプレイ技術に用いるために選択したV遺伝子レパートリーから選択される場合には、これらの可変ドメインは普遍的なフレームワーク領域を含み、そのため、本明細書で定義したような特定の一般的リガンドによって認識されるようになる可能性がある。普遍的なフレームワーク、一般的リガンドなどの使用については国際公開第99/20749に記載されている。
【0185】
V遺伝子レパートリーが使用される場合には、ポリペプチド配列における多様性が可変ドメインの構造的ループ内に局在する場合もある。それぞれの可変ドメインとその相補対との相互作用を高めるために、DNAシャッフリング又は変異生成によって、いずれの可変ドメインのポリペプチド配列をも変化させてもよい。DNAシャッフリングは当業者に周知であり、かつ、例えばStemmer,1994,Nature,370:389〜391及び米国特許第6,297,053号に記載され、この両方は引用することにより本明細書に組み入れられる。突然変異生成のその他の方法もまた当業者に周知である。
【0186】
dAb構築物作成における使用のためのスキャフォールド
i.主鎖構造の選択
免疫グロブリンスーパーファミリーの全てのメンバーは、ポリペプチド鎖については類似した折り畳み部分を共有する。例えば、抗体はそれらの一次配列に関しては高度に多様化しているが、配列の比較及び結晶学的な構造は予想に反して、6つの抗体の抗原結合ループのうちの5つ(H1、H2、L1、L2、L3)が限られた数の主鎖構造、又は標準的な構造をとることを明らかにした(Chothia and Lesk(1987)J.Mol.Biol.,196:901;Chothia et al.(1989)Nature,342:877)。ループ長及び鍵となる残基の解析はさらに、大部分のヒト抗体に見られるH1、H2、L1、L2及びL3の主鎖構造の予測を可能にした(Chothia et al.(1992)J.Mol.Biol.,227:799;Tomlinson et al.(1995)EMBO J.,14:4628;Williams et al.(1996)J.Mol.Biol.,264:220)。H3領域は、(Dセグメントの使用により)配列、長さ及び構造においてはより多様であるが、ループ及び抗体フレームワークの鍵となる位置における特定の残基の長さ及び存在又は残基の型に依存して、短いループ長においてはH3領域もまた限られた数の主鎖構造を形成する(Martin et al.(1996)J.Mol.Biol.,263:800;Shirai et al.(1996)FEBS Letters,399:1)。
【0187】
dAbはVドメインライブラリ及び/又はVドメインライブラリなどのドメインライブラリから有利に構築される。1つの態様においては、特定のループ長及び鍵となる残基がメンバーの主鎖構造を保証するように選択されてドメインライブラリが設計されることが知られている。都合の良いことに、これらは天然に見られる、上記で議論されたような機能を果たさない可能性を最小限にするための、免疫グロブリンスーパーファミリーの実際の構造である。生殖細胞系V遺伝子セグメントは、抗体又はT細胞受容体ライブラリを構築するための、1つの好適な基礎となるフレームワークとして機能するが、その他の配列もまた役立つ。変異も低頻度で生じ得るが、機能性メンバーの少数が、その機能に影響を及ぼさない程度に変化した主鎖構造を有する可能性がある程度である。
【0188】
標準的な構造の理論もまた、リガンドによってコードされる異なる主鎖構造の数の評価、リガンド配列に基づく主鎖構造の予測、及び標準的な構造に影響を及ぼさない多様化のための残基の選択のために役立つ。ヒトVκドメインにおいては、L1ループは4つの標準的な構造のうちの1つをとることができ、L2ループは単一の標準的な構造を有し、ヒトVκドメインの90%がL3ループにおける5つの標準的な構造のうちの1つをとることができることが知られている(Tomlinson et al.(1995)上記);従って、Vκドメインのみにおいては、異なる種類の主鎖構造を作り出すために、異なる標準的な構造が結合することが可能である。VλドメインがL1、L2及びL3ループの異なる種類の標準的な構造をコードするし、Vκ及びVλドメインがH1及びH2ループの複数の標準的な構造をコードする任意のVドメインと対合することが可能な場合には、これら5つのループで見られる標準的な構造な組み合わせの数は非常に多くなる。このことは、様々な種類の結合特異性を生産するためには、主鎖構造の多様性の生成が必須である可能性を意味する。しかしながら、予想に反し、見いだされた単一の既知の主鎖構造に基づいて抗体ライブラリを構築することにより、実質的に全ての抗原を標的とするための十分な多様性の生成のためには主鎖構造における多様性は必要とされない。さらに驚くべきことに、単一の主鎖構造はコンセンサス構造である必要もなく、単一の天然に生じる構造を全ライブラリの基礎として用いることが可能である。従って、一つの特定の態様においては、dAbは単一の既知の主鎖構造を有する。
【0189】
選択された単一の主鎖構造が、問題となる免疫グロブリンスーパーファミリータイプの分子間ではありふれたものになってもよい。その構造をとる十分な数の天然に生じる分子が観察される場合、その構造はありふれたものとなる。従って、1つの態様においては、天然に生じる免疫グロブリンドメインのそれぞれの結合ループの異なる主鎖構造は個別に検討され、その後、異なるループにおける所望の主鎖構造の組み合わせを有する、天然に生じる可変ドメインが選択される。何も得られかった場合には、最も近似した等価物を選択することができる。異なるループにおける所望の主鎖構造の組み合わせは、所望の主鎖構造をコードする生殖細胞系遺伝子セグメントを選択することにより作出することができる。一例として、選択した生殖細胞系遺伝子セグメントは、天然にしばしば発現し、特に、それらは全ての天然の生殖細胞系遺伝子セグメント中で最も頻繁に発現するものであってもよい。
【0190】
ライブラリの設計においては、6つの抗原結合ループそれぞれの異なる主鎖構造の頻度を個別に検討してもよい。H1、H2、L1、L2及びL3においては、20%から100%の範囲で天然に生じる分子の抗原結合ループを構成する、指定された構造が選択される。典型的には、その観察される頻度は35%を超え(すなわち35%から100%の間)、そして理想的には、50%を超える、又は65%を超えさえもする。H3ループの大部分が標準的な構造を有さないため、標準的な構造を示す、それらのループ間でありふれた主鎖構造を選択することが好ましい。ループのそれぞれにおいては、天然のレパートリーにおいて最も頻繁に観察される構造がされに選択される。ヒト抗体においては、それぞれのループにおける、最も一般的な標準的な構造(CS)は以下の通りである:H1−CS1(発現レパートリーの79%)、H2−CS3(46%)、L1−VκのCS2(39%)、L2−CS1(100%)、L3−VκのCS1(36%)(計算はκ:λ率が70:30であるとみなす。Hoodet al.(1967)Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.,48:133)。標準的な構造を有するH3ループについては、94番の残基から101番の残基である、塩橋を有する7つの残基のCDR3の長さ(Kabat et al.(1991)Sequences of proteins of immunological interest,U.S.Department of Health及びヒト Services)が最も一般的であることが見いだされた。EMBLデータライブラリには、この構造を形成するために必要とされる長さのH3及び鍵となる残基を有するヒト抗体配列が少なくとも16あり、及びタンパク質データバンク中には、抗体モデリングの基礎として使用可能な少なくとも2つの結晶学的な構造が存在する(2cgr及び1tet)。最も頻繁に発現する生殖細胞系遺伝子セグメントの標準的な構造の組み合わせは、Vセグメント3−23(DP−47)、JセグメントJH4b、VκセグメントO2/O12(DPK9)及びJκセグメントJκ1である。VセグメントDP45及びDP38もまた適している。これらのセグメントをさらに、所望の単一の主鎖構造を有するライブラリを構築するための基礎として、組み合わせることによって使用することができる。
【0191】
また別の方法としては、単離において、それぞれの結合ループの天然に生じる異なる主鎖構造に基づいて単一の主鎖構造を選択する代わりに、天然に生じる主鎖構造の組み合わせが単一の主鎖構造を選択するための基礎として使用される。抗体の場合には、例えば、任意の2つ、3つ、4つ、5つ、6つの抗原結合ループの天然に生じる標準的な構造の組み合わせを決定することができる。ここで、選択される構造は天然に生じる抗体においてありふれたものであってもよく、かつ、天然のレパートリーにおいて最も頻繁に見られるものであってもよい。従って、ヒト抗体においては、例えば、5つの抗原結合ループであるH1、H2、L1、L2及びL3の天然の組み合わせについて検討する場合には、最も頻繁にみられる標準的な構造の組み合わせを決定し、その後、単一の主鎖構造を選択するための基礎として、H3ループにおける最も一般的な構造と組み合わせる。
【0192】
標準的な配列の多様化
選択された複数の既知の主鎖構造又は単一の既知の主鎖構造を有することから、構造的及び/又は機能的多様性を有するレパートリーを生成するために、分子の結合部位を多様にすることにより、dAbを構築することができる。このことは、それらがそれらの構造及び/又それらの機能において十分な多様性を有するように変異が生成され、幅のある活性を提供することができることを意味する。
【0193】
所望の多様性は、典型的には、1つ以上の位置において選択した分子を多様化することにより生成される。変化させる位置は、ランダムに選ぶこともでき、又は選択してもよい。多様化はその後、非常に膨大な数の変異を生成する、在住アミノ酸を任意のアミノ酸又は、天然若しくは合成のそのアナログにより置換すること、又は限定数の変異を生成する、在住のアミノ酸を1つ以上の定義されたアミノ酸サブセットにより置換する、ランダム化によって達成できる。
【0194】
それらの変異を導入する様々な方法が報告されている。分子をコードする遺伝子中にランダムな突然変異を導入するためには、変異性PCR(Hawkins et al.(1992)J.Mol.Biol.,226:889)、化学的突然変異生成(Deng et al.(1994)J.Biol.Chem.,269:9533)又はバクテリアの突然変異誘発遺伝子株(Low et al.(1996)J.Mol.Biol.,260:359)を用いることができる。選択した位置に変異を導入するための方法も当該分野においては周知であり、これらにはPCRの使用を介した又は介さない、ミスマッチオリゴヌクレオチド又は変性オリゴヌクレオチドの使用が含まれる。例えば、複数の合成抗体ライブラリが抗原結合ループに対するターゲティング突然変異によって作出された。ヒト破傷風トキソイド結合FabのH3領域が、新しい種類の結合特性を作出するためにランダム化された(Barbas et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4457)。変異のないフレームワーク領域を有する巨大ライブラリを生産するために、H3及びL3領域のランダム化又はセミランダム化が生殖細胞系V遺伝子セグメントに付加された(Hoogenboom&Winter(1992)J.Mol.Biol.,227:381;Barbas et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4457;Nissim et al.(1994)EMBOJ.,13:692;Griffiths et al.(1994)EMBOJ.,13:3245;De Kruif et al.(1995)J.Mol.Biol.,248:97)。それらの変異は、いくつか又は全てのその他の抗原結合ループを含むように拡大された(Crameri et al.(1996)Nature Med.,2:100;Riechmann et al.(1995)Bio/Technology,13:475;Morphosys,国際公開第97/08320号,上記)。
【0195】
ループランダム化はH3のみに対しては約1015を超える構造を作出し、その他の5つのループについても類似した数の変異を生成する可能性があるため、全ての可能な組み合わせを発現するライブラリを構築するために現在の形質転換技術を用いること、又は無細胞系を用いることさえも適してはいない。例えば、これまでに構築された最も巨大なライブラリのうちの1つにおいては、この設計のライブラリにおいて可能な多様性のただ1つの画分である、6x1010の異なる抗体が生成された(Griffiths et al.(1994)上記)。
【0196】
1つの実施形態においては、分子の所望の機能を作出する又は変化させることに直接含まれるそれらの残基のみが多様化される。多くの分子においては、その機能は標的に結合することであり、さらに、分子の全体のパッキング又は選択した主鎖構造の維持に重要な残基を変化させることを避けるために、多様性は標的結合部位に集中させる必要がある。
【0197】
1つの態様においては、抗原結合部位におけるそれらの残基のみが多様化されたdAbライブラリが使用される。これらの残基は特にヒト抗体レパートリーにおいて多様であり、かつ、高品質な抗体/抗原複合体と結合することが知られている。例えば、L2においては、天然に生じる抗体の50及び53番目の位置が変化すると抗原と結合することが観察されることが知られている。反対に、ライブラリにおいては2つが変化したのに対し、標準的な方法では、Kabat et al.(1991、上記)によって定義された複数の7残基である、相当する相補性決定領域(CDR1)における全ての残基を多様化させただろう。このことは、幅のある抗原結合特性を作出するためには、機能的な多様性に関する十分な改良が必要とされることを示す。
【0198】
天然においては、抗体の多様性は、ナイーブ初代レパートリーを作出するための生殖細胞系V、D及びJ遺伝子セグメントの体細胞組換え(いわゆる生殖細胞系及び接合多様性)、並びに生じた再構成V遺伝子の体細胞超変異の、2つの過程の結果である。ヒト抗体配列の解析により、初代レパートリーにおける多様性が抗原結合部位の中心に集中していること、一方で体細胞超変異は初代レパートリーにおいて高度に保存される抗原結合部位の末端の領域にまで多様性を広げることが示された(Tomlinson et al.(1996)J.Mol.Biol.,256:813を参照のこと)。この相補性はおそらく配列間隔を検索するための効果的な方法として発展し、そして明かに抗体に特有ではあるが、その他のポリペプチドレパートリーに対しても容易に適用することができる。多様化した残基は、標的への結合部位を形成する残基のサブセットである。標的結合部位における異なる(重複を含む)残基のサブセットは、必要に応じて選択の異なる段階において多様化される。
【0199】
抗体レパートリーの例においては、初代「ナイーブ」レパートリーは抗原結合部位のいくつかの、しかし全てではない、残基が多様化された場合に作出される。この文脈で本明細書で使用される場合、「ナイーブ」又は「ダミー」という用語は、予め決められた標的を有しない抗体分子を意味する。これらの分子は、多様な抗原刺激に曝されていない胎児及び新生児患者の場合と同様に、免疫多様化を受けていない患者の免疫グロブリン遺伝子によってコードされる分子に類似する。このレパートリーはその後、抗原又はエピトープの種類によって選択される。必要に応じて、さらなる多様性をその後、最初のレパートリーにおいて多様化された領域の外側に導入することができる。この成熟したレパートリーを改変した機能、特異性又は親和性によって選択することができる。
【0200】
本明細書において記載された配列は、実質的に同一な配列、例えば少なくとも90%同一な配列、本明細書で記載された配列と例えば少なくとも91%、又は少なくとも92%、又は少なくとも93%、又は少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%同一な配列を含むことを理解されたい。
【0201】
核酸については、「実質的な同一性」という用語は、2つの核酸又はその示された配列を、最適にアライン又は比較した場合に、適切なヌクレオチドの挿入又は欠損を含めて、少なくとも約80%のヌクレオチドが、通常は少なくとも約90%から95%、または少なくとも約98%から99.5%のヌクレオチドが同一であることを示す。また、実質的な同一性は、選択的なハイブリダイゼーションの条件下でセグメントが相補鎖にハイブリダイズする場合にも存在する。
【0202】
ヌクレオチド及びアミノ酸配列については、「同一」という用語は、適切な挿入又は欠損を含めて最適にアライン及び比較した場合の2つの核酸又はアミノ酸配列の同一性の度合いを意味する。また、実質的な同一性は、選択的なハイブリダイゼーションの条件下でDNAセグメントが相補鎖にハイブリダイズする場合にも存在する。
【0203】
2つの配列間の同一性のパーセンテージは、その2つの配列を最適にアライメントするために導入することが必要とされるギャップ及びそれぞれのギャップの長さを考慮した、その配列が共有している同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一の位置の数/全位置の数x100)。2つの配列間の配列の比較及び同一性のパーセンテージの決定は、以下の限定しない実施例に記載した数学的アルゴリズムを用いて行うことができる。
【0204】
2つのヌクレオチド配列間の同一性のパーセンテージは、NWSgapdna.CMPマトリックス並びに40、50、60、70、又は80のギャップウェート及び1、2、3、4、5、又は6の長さウェートを使用してGCGソフトウェア中のGAPプログラムを用いて決定することができる。2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の同一性のパーセンテージもまたALIGNprogram(version 2.0)に組み込まれたE.Meyers及びW.Miller(Comput.Appl.Biosci.、4:11〜17(1988))のアルゴリズムを用い、PAM120ウェート残基表、12のギャップ長ペナルティ及び4のギャップペナルティを使用して決定することができる。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性のパーセンテージはGCGソフトウェア中のGAPプログラム中に組み込まれたNeedleman及びWunsch(J.Mol.Biol.48:444〜453(1970))のアルゴリズムを用い、Blossum62マトリックス又はPAM250マトリックスのいずれか及び16、14、12、10、8、6、又は4のギャップウェートと1、2、3、4、5、又は6の長さウェートを使用して決定することができる。
【0205】
一例として、本発明のポリペプチド配列は、配列番号38によってコードされる参照配列と100%同一であってもよく、又は同一性のパーセンテージが100%未満になるような特定の整数までのアミノ酸変異を、参照配列と比較して、含んでいてもよい。それらの変異は、少なくとも1つのアミノ酸欠損、保存置換及び非保存置換を含む置換、又は挿入からなる群より選択される。ここで前記変異は、参照配列若しくは参照配列中の1つ以上の隣接したグループのアミノ酸中に個別に散在して、参照ポリペプチド配列のアミノ−又はカルボキシ−末端又はそれら末端位置の間の任意の位置に生じてもよい。指定された同一性のパーセンテージにおけるアミノ酸変異の数は、配列番号38によってコードされるポリペプチド配列中のアミノ酸の総数とそれぞれの同一性のパーセンテージの数字上のパーセンテージ(100で割る)とを掛け、その後、配列番号38によってコードされるポリペプチド配列中のアミノ酸の数から得られた数値を引くことによって決定する、又は:
【数1】

【0206】
であり、
式中naはアミノ酸変異の数、xaは配列番号38によってコードされるポリペプチド配列中のアミノ酸の総数、及びyは、例えば70%の場合には0.70、80%の場合には0.80、85%の場合には0.85などであり、並びにここでxa及びyの数値がいずれの整数でもない場合には、xaから引く前に、最も近い整数まで切り捨てる。
【実施例】
【0207】
実施例1−HGF/VEGF抗原結合タンパク質の設計および構築
抗HGFモノクローナル抗体の可変領域をコードするコドン最適化DNA配列を構築し、発現ベクターにクローン化させた。可変領域配列を、新規に、PCRに基づく戦略および重複オリゴヌクレオチドを用いて構築した。PCRプライマーを、シグナル配列(配列番号33)を組み込み、哺乳動物発現ベクターにクローン化するために必要とされる制限部位を含むように設計した。Hind IIIおよびSpeI部位を、Vドメインをフレームし、ヒトγ1C領域を単独で、またはTVAAPSGSリンカーを介してC末端でVEGF dAb(配列番号25)に融合されたヒトγ1C領域を含む哺乳動物発現ベクターへのクローン化を可能にするように設計した。HindIIIおよびBsiWI部位を、Vドメインをフレームし、ヒトκC領域を単独で、またはTVAAPSGSリンカーを介してC末端でVEGF dAb(配列番号25)に融合されたヒトκC領域を含む哺乳動物発現ベクターへのクローン化を可能にするように設計した。
【0208】
下記表1は、構築した抗HGF mAbsおよび抗HGF−VEGF二重特異性抗原結合タンパク質の概要を示す。
【表1】

【0209】
BPC2013,BPC2014,BPC2015,BPC2021,BPC2022, BPC2023,BPC2024,BPC2025,およびBPC2026に対する重鎖および軽鎖をコードしている発現プラスミドを、293fectin(Invitrogen、12347019)を用いてHEK293−6E細胞中に一過的に同時導入した。24時間後、細胞培養に栄養としてトリプトンを添加し、さらに72〜120時間後に細胞を回収した。ある場合には、上清材料を結合アッセイにおいて被験物質として使用した。他の場合には、二重特異性抗原結合タンパク質をプロテインAカラムを使用して精製し、その後、結合アッセイで試験した。
【0210】
実施例2−ヒトHGF結合ELISA
96ウェル高結合プレートを、50μl/ウェルの100ng/mL組換えヒトHGF(R&D Systems)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。その後の工程をすべて室温で実施した。このプレートを0.05%のTween20を含むトリス緩衝食塩水で3回洗った。80μLのブロッキング溶液(0.05%のTween20を含むトリス緩衝食塩水中に1%BSA)をそれぞれのウェルに加え、そしてこのプレートを室温で少なくとも1時間インキュベートした。その後、再び洗いの工程を行った。上清または精製抗体を、プレートにわたり、ブロッキング溶液中で連続して希釈した。1時間インキュベートした後、プレートを洗った。ヤギ抗ヒトκ軽鎖特異ペルオキシダーゼ結合抗体(Sigma A7164)をブロッキング溶液中で0.75μg/mLに希釈し、そして50μLをそれぞれのウェルに加えた。プレートを1時間インキュベートした。再度洗いの工程を行った後、50μlのOPD(o−フェニレンジアミン二塩酸塩)SigmaFast基質溶液をそれぞれのウェルに加え、25μLの3M硫酸を加えることによって反応を停止させた。VersaMax Microplate Reader(Molecular Devices)を利用し、標準的なエンドポンドプロトコールを用いて490nmで吸光度を測定した。
【0211】
図1は精製mAbdabを用いたELISAの結果を示し、そして抗原結合タンパク質およびポジティブコントロール抗体BPC2013〜2015およびBPC2021〜2026が組換えヒトHGFへの結合を示すことを確認する。ネガティブコントロール抗体はHGFに対する結合を示さない。
【0212】
実施例3−ヒトVEGF結合ELISA
96ウェル高結合プレートを、50μl/ウェルの0.4μg/mLヒトVEGFでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。その後の工程をすべて室温で実施した。このプレートを0.05%のTween20を含むトリス緩衝食塩水で3回洗った。80μLのブロッキング溶液(0.05%のTween20を含むトリス緩衝食塩水中に1%BSA)をそれぞれのウェルに加え、そしてこのプレートを室温で少なくとも1時間インキュベートした。その後、再び洗いの工程を行った。上清または精製抗体を、プレートにわたり、ブロッキング溶液中で連続して希釈した。1時間インキュベートした後、プレートを洗った。ヤギ抗ヒトκ軽鎖特異ペルオキシダーゼ結合抗体をブロッキング溶液中で0.75μg/mLに希釈し、そして50μLをそれぞれのウェルに加えた。プレートを1時間インキュベートした。再度洗いの工程を行った後、50μlのOPD(o−フェニレンジアミン二塩酸塩)SigmaFast基質溶液をそれぞれのウェルに加え、25μLの3M硫酸を加えることによって反応を停止させた。VersaMax Microplate Reader(Molecular Devices)を利用し、標準的なエンドポンドプロトコールを用いて490nmで吸光度を測定した。
【0213】
図2はELISAの結果を示し、そして抗原結合タンパク質およびポジティブコントロール抗体BPC2021〜2026がヒトVEGFへの結合を示すことを確認する。ネガティブアイソタイプ適合コントロール抗体(GRITS26816)はVEGFに対する結合を示さない。
【0214】
実施例4−ヒトVEGFへの結合の動力学
C1チップ上の捕捉表面を用いてBiacore分析を実施した。プロテインAを捕捉剤として使用し、最初にアミンカップリングによってC1バイオセンサチップに結合させた。抗体を固定化表面上に捕捉させ、明確な濃度のヒトVEGF(256,64,16,4,1,0.25nM)を、この捕捉表面上に通過させた。捕捉抗体表面上での緩衝液の注入を、二重規準のために使用した。100mM水酸化ナトリウムを用い、各VEGF注入後、捕捉表面を再生させ;再生により捕捉抗体を除去したが、その後のサイクルで抗体を捕捉する表面の能力に有意の影響を与えなかった。すべての実行を、25℃でHBS−EP緩衝液を用いて実施した。データをBiacore T100(GE Healthcare)を用いて作成し、そのソフトウェアに固有の1:1結合モデルにフィッティングさせた。二重特異性抗原結合タンパク質BPC2021〜2026は、ヒトVEGFに対して高い親和性を示しネガティブコントロールHGF抗体(BPC2013〜2015)はヒトVEGFに対する結合を示さない。
【表2】

【0215】
実施例5−ヒトHGFへの結合の動力学
最初にアミンカップリングによってCM5チップ上に固定化させたヒトHGF(室内で製造)を用いてBiacore分析を実施した。抗体を、固定化表面上に、規定された濃度(500,125,31.3,7.8,1.95,0.46nM)で通過させた。ヒトHGF固定化表面上での緩衝液の注入を、二重規準のために使用した。100mMリン酸を用いた各抗体注入後に固定化表面を再生させ;再生により結合抗体を除去したが、その後のサイクルで抗体を結合させる表面の能力に有意の影響を与えなかった。すべての実行を、25℃でHBS−EP緩衝液を用いて実施した。データをBiacore T100(GE Healthcare)を用いて作成し、そのソフトウェアに固有の1:1結合モデルおよび二価被分析物モデルにフィッティングさせた。二重特異性抗原結合試料BPC2021〜2026および親HGF抗体BPC2013〜2015はすべてヒトHGFに対し高い親和性を示す。
【表3】

【0216】
実施例6−Bx−PC3腫瘍細胞におけるMETリン酸化(pMET)へのHGF/VEGF抗原結合タンパク質の効果
Bx−PC3細胞を、Costar96ウェルプレートに、グルタミンおよび10%FCSを補充したRPMI中100,000細胞/ml(10000細胞/100μl/ウェル)で播種し、16時間37℃/5%COでインキュベートした。細胞を100μlPBSで洗浄し、100μlRPMI無血清培地を添加し、さらに16時間37℃/5%COでさらにインキュベートした。試験試料BPC2015,BPC2023〜BPC2026またはコントロール(BPC1007&BPC1023)を細胞に2組で、30μg/mlまでの様々な濃度で添加した。15分後、HGF(室内)を200ng/mlの最終濃度まで37℃/5% COで添加した。最後に、培地を除去し、細胞を100μlの氷冷PBSで洗浄し、冷溶解緩衝液(Cell Signalling Path−Scan Phospho−Met Sandwich ELISAキット,7333により供給)で溶解させた。METリン酸化をCell Signalling pMET ELISAを用い、製造者プロトコルに従い(Cell Signalling Path−Scan Phospho−Met Sandwich ELISAキット,7333)アッセイした。
【0217】
図3Aおよび3Bは様々な抗HGF/VEGF mAb−dAb(BPC2023〜2026)および抗HGF mAb(BPC2015)のBx−PC3細胞におけるHGF−刺激METリン酸化(pMET)に対する効果を示す2つの実験を表す。結果により、抗HGF mAb(BPC2015)は、抗HGF/VEGF mAb−dAb(BPC2023〜2026)のように、HGF媒介受容体リン酸化を阻害することが確認される。ネガティブコントロール試料BPC1007およびBPC1023は、HGF−媒介受容体リン酸化の阻害を示さなかった。
【0218】
このアッセイをその後、同じHGF mAbsおよび抗HGF/VEGF mAb−dAbsを用いて実施した。アッセイ条件は前の実施と同一とした。抗HGF mAbsおよび抗HGF/抗VEGF mAbdAbはどちらも、HGF−媒介METリン酸化を阻害した。ネガティブコントロールは、METリン酸化の阻害に何の効果も有さなかった。IC50は、抗体のMETリン酸化に対する効果を示す。3つの独立した実験からの平均IC50を表4に示す。
【表4】

【0219】
このアッセイをその後、HGF mAb(BPC2015)抗不適切/VEGF mAb−dAbおよび抗HGF/VEGF mAb−dAb(BPC2025)(0.01nMまでの4倍希釈で用量設定された667nMから)を用いて実施した。細胞をこれらの試験mAb/mAbdAbと共に1時間のみインキュベートし、40ng/mlのHGFを使用し、細胞シグナリングをMesoScale Discovery platform(MSD)により測定したことを除き、アッセイ条件は前の実行と同一とした。
【0220】
抗HGF mAbおよび抗HGF/抗VEGF mAbdAbはどちらも、HGF−媒介METリン酸化を用量依存様式で阻害した。コントロールmAbおよび不適切mAb−VEGF dAbは、METリン酸化の阻害に何の効果も有さなかった。IC50は抗体の%ホスホMET−((pMET生MSDユニット/総生METユニット)*100)に対する効果を示す。HGF mAb(BPC2015)に対する2つの独立した実験からの平均IC50は0.40nMであり、mAbdAb(BPC2025)では0.34nMであった。
【0221】
実施例7
抗原結合タンパク質の化学量論性評価(Biacore(商標)を用いる)
この実施例は予測上のものである。これは本発明の抗原結合タンパク質を試験することができる追加のアッセイを実施するためのガイダンスを提供する。
【0222】
抗ヒトIgGを、最初にアミンカップリングによってCM5バイオセンサーチップ上に固定化する。単一の濃度のHGFまたはVEGFを通過させた後に、抗原結合タンパク質をこの表面上に捕捉する。この濃度は、結合表面及び観察される結合シグナルを最大のR−maxに達するまで飽和させるのに十分な濃度である。化学量をその後、下記の式を用いて算出する:
化学量=Rmax*Mw(リガンド)/Mw(被分析物)*R(固定化又は補足されたリガンド)。
【0223】
同時に1つ以上の被分析物の結合について化学量を算出する場合には、飽和抗原濃度の異なる抗原を順番に通過させ、その後上述の通りに化学量を算出する。この試験はBiacore3000を利用し、HBS−EPランニングバッファーを用いて25℃で行うことができる。
【0224】
実施例8
Mv1Lu増殖アッセイ
TGF−βはMv1Lu細胞増殖を阻害する。これは、HGFの添加により克服される。よって、このアッセイHGF中和抗体のHGF−媒介細胞増殖を阻害する能力を評価する。CellTiterGlo(商標)アッセイは、ATP−依存性であり、よって総細胞数に比例する生物発光シグナルを得る。「+TGF−β+HGF」と「+TGF−β−HGF」の間の差は、HGF−媒介細胞増殖を反映する(J. Immunol Methods 1996, Jan 16, Vol 189 (1); 59-64)
Mv1Lu細胞(ATCC)を、40ng/mlヒトHGFおよび1ng/ml TGF−β(R&D Systems)が補充された無血清培地でインキュベートした。HGFを必要に応じてコントロールウェルから除外した。すべての実行を、TGFβの存在下で実施した。「HGF−」で指定されたネガティブコントロール実行を除き、すべての実行をHGFの存在下で実施した。
【0225】
抗体またはmAbdAb構築物を、2.0,1.0,0.5,0.25,0.125,0.06または0.03μg/mlの最終濃度で添加した。総細胞数を48時間後発光ATP−依存性アッセイを用いて決定した。このアッセイでは、生物発光シグナルは生存細胞数に比例する(CellTiterGlo,Promega)。すべての条件を3組で試験した。
【0226】
図4に示されるデータは、平均+/−SDとして示され、2つの独立した実験を表す。
【0227】
抗HGFモノクローナル抗体(BPC2015)は、HGF−媒介Mv1Lu細胞増殖を、用量依存様式で抑止した。このHGF−中和能力が、mAbdAbフォーマットで保持されたことを確認するために、抗HGFモノクローナル抗体部分および抗VEGFdAb部分を含むmAbdAb構築物を用いて直接比較を実施した(BPC2025)。mAbdAb構築物を用いた処理では、HGF媒介Mv1Lu細胞増殖の用量依存抑止が得られ、これは、mAb応答プロファイルと区別できなかった(図4a)。
【0228】
観察された効果がHGFの特異的中和によるものであったことを確認するために、並列実験を、BPC2025、およびアッセイ−不適切タンパク質を標的とするモノクローナル抗体部分および抗VEGF dAbを含む別のmAbdAb構築物を同一の用量滴定で比較して実施した。抗不適切/VEGF mAbdAbの効果は観察されなかった(図4b)。
【0229】
データから、抗HGF mAbは、HGF−依存細胞増殖を用量依存様式で抑止し、この活性はmAbdAbフォーマットにおいて保持されることが示される。
【0230】
実施例9
BxPC3浸潤アッセイ
細胞浸潤を、Oris Cell Invasionシステムを用いて評価し、製造者(Platypus)により指示されるように実施した。簡単に言うと、130,000BxPC3細胞(ATCC)/ウェルを、細胞外マトリクスでコーティングした96ウェルプレートに、ウェルプラグの存在下で播種し、環状無細胞領域を生成させた。細胞接着後、プラグを除去し、ウェルを洗浄し、細胞外マトリクスで覆い、三次元細胞環境を提供した。プレートをインキュベートし、マトリクス重合させ、ウェルを、20ng/mlヒトHGFを含む成長培地(10%熱失活ウシ胎仔血清,グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI(Invitrogen))で覆った。HGFを必要に応じてコントロールウェルから除外した。抗体またはmAbdAb構築物を、20,10,5または2.5μg/mlの濃度範囲で添加した。プレートを72時間インキュベートし、その後画像解析し、残りの無細胞領域の画素面積を定量化した。すべての条件を少なくとも3組で試験した。
【0231】
すべてのウェルの画像を獲得し、画像解析にかけ、浸潤の定性的および定量的評価を可能にした。72時間のインキュベーション後の残りの無細胞領域の定性的比較により、BxPC3細胞のHGF−依存性浸潤応答は細胞外マトリクス分解および細胞浸潤に起因する無細胞面積および非均一多細胞突起の見かけの減少として現れたことを確認した。図5で示される定量的分析は、HGF−未処理ウェルに比べHGFで処理したウェルでの無細胞面積の減少を確認した。図5は、残りの無細胞面積の平均+/−SDを示し、2つの独立した実験を表す。抗HGF mAb(BPC2015)およびmAbdAb(BPC2025)は、アイソタイプコントロールモノクローナル抗体で処理したウェルと比較して、無細胞領域のサイズが保持されることにより示されるように、このアッセイおいて、試験した各濃度で、HGF−媒介BxPC3浸潤を抑止した。
【0232】
実施例10
血管新生アッセイ
Angiokit(商標)は内皮細胞および線維芽細胞の市販の共培養アッセイであり、推定抗血管新生剤の、インビトロでの内皮ネットワーク形成に関連する1つまたは複数のパラメータを阻害する能力を試験するために使用することができる。これらのパラメータは画像解析を用いて定量化され、例えば、総内皮細胞面積(フィールド面積),血管分岐点の数,平均細管長などが挙げられる。
【0233】
血管新生共培養アッセイ(Angiokit(商標))を、製造者(TCS Cellworks)により指示されるように実施した。簡単に言うと、培地を24ウェルフォーマットAngiokit(商標)共培養プレートから吸引し、20ng/mlのヒトHGFを補充した、または補充していない完全成長培地と置換した。試験化合物を添加し、0.17μMの同程度の最終モル濃度の各構築物を達成した。培地および試験化合物を4,7および9日に置換した。細胞を11日に固定し、内皮細胞ネットワークを、製造者により指示されるように、抗CD31免疫細胞化学により可視化した。画像を光学顕微鏡により記録し、画像解析をAngioSysソフトウエア(TCS Cellworks)を用いて実施した。
【0234】
様々な血管新生過程に対するHGF−拮抗作用の効果(BPC2015)またはアイソタイプコントロールモノクローナル抗体(mAbネガティブコントロール)を用いた場合。HGF mAb(BPC2015)をその後、同じアッセイにおいて抗HGS/抗VEGF mAbdAb(BPC2025)と同時に実施した。
【0235】
図6aおよびbで示されるデータは、4つの同型ウェルの平均+/−SDとして表され、2つの独立した実験を表し、フィールド面積および平均細管長を示す。定性的分析により、抗HGF mAbまたは抗HGF/抗VEGF mAbdAbのいずれかを用いた処理により媒介されるHGF中和により内皮ネットワーク形成の明確な阻害が得られたことが明らかになった。これは、アイソタイプコントロール処理と比較した総フィールド面積及び総細管長を含む血管新生パラメータに対する抗HGF mAbまたは抗HGF/抗VEGF mAbdAbによる阻害効果を確認した定量的分析により確認された。
【0236】
実施例11
Bx−PC3細胞におけるAKTリン酸化の阻害に対する抗HGF mAbおよび抗HGF/VEGF mAbdAbの効果の比較
c−MET受容体のリン酸化を介するシグナル伝達は、そのリガンドHGFの結合により開始される。METリン酸化が起こると、様々なアダプタータンパク質の動員および活性化により2つの主要な細胞シグナリング経路の活性化が起こる。これにより、細胞増殖(MAPK/MEK/ERK経路)および生存(PI3キナーゼ/AKT経路)の活性化に至る。
【0237】
Bx−PC3膵臓細胞を、滅菌96ウェル細胞培養プレートにRPMI完全培地中10,000細胞/ウェルで蒔き一晩37℃/5%COで放置した。その後、細胞を24時間RPMI無血清培地中でインキュベートし、その後、コントロールmAb,抗HGFmAb,抗不適切/VEGFmAb−dAbまたは抗HGF/VEGF mAb−dAb(BPC2025)(0.01nMまでの4倍希釈で用量設定された667nMから)のいずれかを、40ng/mlの「室内」HGFと共に1時間、添加した。細胞を、製造者の指示におけるように、MSD溶解緩衝液中で溶解させた。溶解物を凍結し、リン酸化AKTレベルを、製造者の指示において記載されるように、MSD pAKT/Total AKTアッセイ(カタログ番号K11100D−2)を用いて評価した。
【0238】
抗HGF mAbおよび抗HGF/抗VEGF mAbdAbはどちらもHGF−媒介AKTリン酸化を用量依存様式で阻害した。コントロールmAbおよび不適切mAb−VEGF dAbは、AKTリン酸化の阻害に影響しなかった。IC50は、抗体の%ホスホAKT−((pAKT生MesoScale Discoveryプラットフォーム(MSD)ユニット/総生AKTユニット)*100)に対する効果を示す。
【0239】
HGF mAb(BPC2015)に対する2つの独立した実験からの平均IC50は0.63nMであり、mAbdAb(BPC2025)では0.88nMであった。
【0240】
実施例12
Bx−PC3細胞におけるERKリン酸化の阻害に対する抗HGF mAbおよび抗HGF/VEGF mAbdAbの効果の比較
このアッセイは、細胞を、HGFおよび試験mAb/mAbdAb構築物と、3時間インキュベートしたことを除き、実施例11で記載したのと同じ方法を用いて実施した。
【0241】
リン酸化ERK,MAPK/MEK経路の下流メンバーのレベルを、製造者の指示に記載されるように、MSD pERK/Total ERKアッセイ(カタログ番号K11107D−2)を用いて評価した。
【0242】
抗HGF mAbおよび抗HGF/抗VEGF mAbdAbはどちらもHGF−媒介ERKリン酸化を用量依存様式で阻害した。コントロールmAbおよび不適切mAb−VEGF dAbは、ERKリン酸化の阻害に影響しなかった。IC50は、抗体の%ホスホERK−((pERK生MesoScale Discoveryプラットフォーム(MSD)ユニット)*100)に対する効果を示す。
【0243】
HGF mAb(BPC2015)に対する2つの独立した実験からの平均IC50は0.98nMであり、mAbdAb(BPC2025)では0.92nMであった。
【0244】
実施例13
Bx−PC3細胞における細胞遊走の阻害に対する抗HGF mAbおよび抗HGF/VEGF mAbdAbの効果の比較
Amsbio(商標)は、滅菌96ウェル組織培養プレートから構成され、各ウェルに予め挿入されたシリコーン播種ストッパを有するOris細胞遊走アッセイを供給する。細胞を添加し、コンフルエンスまで増殖させる。ストッパを除去し、環状無細胞領域を残す。この領域内への細胞遊走をその後、遊走阻害剤または促進剤を添加した後、時間と共にモニタする。
【0245】
Bx−PC3膵臓細胞を、Oris細胞遊走96ウェルプレートにRPMI完全培地中10,000細胞/ウェルで蒔き、72時間コンフルエントになるまでインキュベートした。細胞ストッパを除去し、無細胞領域を得た。その後、細胞を24時間RPMI無血清培地中でコントロールmAb,抗HGFmAb,抗不適切/VEGFmAbまたは抗HGF/VEGF mAb−dAb(BPC2025))(0.01nMまでの4倍希釈で用量設定された667nMから)のいずれかと、25ng/mlのHGFと共にインキュベートした。無細胞領域への細胞遊走をその後、Envisionプレートリーダー上でCell Tracker(Invitrogen Cell Tracker(商標)Green CMFDA #C2925)を用いて定量化した。
【0246】
HGF mAb(BPC2015)に対する3つの独立した実験からの平均IC50は0.33nMであり、mAbdAb(BPC2025)では0.32nMであり、mAbdAbフォーマットは、HGF結合部位の活性に影響しなかったことが示された。
【0247】
実施例14−VEGF受容体結合アッセイ
この実施例は予測上のものである。これは本発明の抗原結合タンパク質を試験することができる追加のアッセイを実施するためのガイダンスを提供する。
【0248】
この実施例は予測上のものである。これは本発明の抗原結合タンパク質を試験することができる追加のアッセイを実施するためのガイダンスを提供する。このアッセイは、内皮細胞におけるVEGF受容体VEGFR2のVEGF−媒介リン酸化およびVEGF結合タンパク質のこの過程を阻害する能力を測定する。初代内皮細胞(例えば、ヒト臍帯内皮細胞,Lonza)を、ゼラチンコーティングしたプレート上に単層として播種し、一晩完全成長培地(EGM−2 Bulletkit,Lonza)中でインキュベートする。細胞は約4時間血清不足とし、その後、VEGF165(例えば、R&D Systems,Cat No:293−VE−050)または推定VEGF結合タンパク質と共にプレインキュベートしたVEGF165で処理する。細胞溶解物を20分後に生成させ、リン酸化VEGFR2を、適切な方法(例えば、Mesoscale Discovery Cat No:K111DJD−2)を用い、製造者の指示に従い定量化する。
【0249】
配列
【表5】















【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のエピトープ結合ドメインに連結したタンパク質スキャフォールドを含む抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は少なくとも2つの抗原結合部位を有し、そのうちの少なくとも1つはエピトープ結合ドメインに由来し、そのうちの少なくとも1つはペアードVH/VLドメインに由来し、かつ該抗原結合部位の少なくとも1つはHGFに結合することが可能である、上記抗原結合タンパク質。
【請求項2】
少なくとも1つのエピトープ結合ドメインが免疫グロブリン単一可変ドメインである、請求項1に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項3】
免疫グロブリン単一可変ドメインがヒトdAbである、請求項2に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項4】
免疫グロブリン単一可変ドメインがラクダ科dAb(VHH)またはサメdAb(NARV)である、請求項2に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項5】
少なくとも1つのエピトープ結合性ドメインが、CTLA−4(Evibody);リポカリン;プロテインAのZドメイン(Affibody、SpA)、Aドメイン(Avimer/Maxibody)などのプロテインA由来分子;GroEl及びGroESなどの熱ショックタンパク質;トランスフェリン(trans−body);アンキリンリピートタンパク質(DARPin);ペプチドアプタマー;C型レクチンドメイン(Tetranectin);ヒトγクリスタリン及びヒトユビキチン(affilins);PDZドメイン;ヒトプロテアーゼインヒビターのスコーピオントキシンクニッツ(scorpiontoxinkunitz)型ドメイン;並びにフィブロネクチン(アドネクチン)より選択される非Igスキャフォールドに由来する、請求項1に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項6】
エピトープ結合ドメインがAffibody、アンキリンリピートタンパク質(DARPin)及びアドネクチンより選択されるスキャフォールドに由来する、請求項5に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項7】
結合タンパク質が2以上の抗原に対する特異性を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項8】
少なくとも1つのペアードVH/VLドメインがHGFに結合可能な、請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項9】
少なくとも1つのエピトープ結合ドメインがHGFに結合可能な、請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項10】
抗原結合タンパク質がHGF及びVEGFに結合可能な、請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項11】
タンパク質スキャフォールドがIgスキャフォールドである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項12】
IgスキャフォールドがIgGスキャフォールドである、請求項11に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項13】
IgGスキャフォールドがIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4より選択される、請求項12に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項14】
IgGスキャフォールドが抗体の全てのドメインを含む、請求項11〜13のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項15】
配列番号10の重鎖配列および配列番号12の軽鎖配列を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項16】
配列番号22重鎖配列および配列番号12の軽鎖配列を含む、請求項15に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項17】
4つのエピトープ結合ドメインを含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項18】
2つのエピトープ結合ドメインが同じ抗原に対する特異性を有する、請求項17に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項19】
少なくとも1つのエピトープ結合ドメインが1〜150のアミノ酸を含むリンカーを介してIgスキャフォールドに直接連結されている、請求項1〜18のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項20】
少なくとも1つのエピトープ結合ドメインが、1〜20のアミノ酸を含むリンカーを介してIgスキャフォールドに直接連結されている、請求項19に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項21】
少なくとも1つのエピトープ結合ドメインが、配列番号3〜8で示されるいずれか1つの配列、又はそれらの任意の複合もしくは組み合わせより選択されたリンカーを介してIgスキャフォールドに直接連結されている、請求項20に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項22】
少なくとも1つのエピトープ結合ドメインがヒト血清アルブミンに結合する、請求項1〜21のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項23】
軽鎖のN末端でIgスキャフォールドと連結したエピトープ結合ドメインを含む、請求項11〜22のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項24】
重鎖のN末端でIgスキャフォールドと連結したエピトープ結合ドメインを含む、請求項11〜22のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項25】
軽鎖のC末端でIgスキャフォールドに連結したエピトープ結合ドメインを含む、請求項11〜22のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項26】
重鎖のC末端でIgスキャフォールドに連結したエピトープ結合ドメインを含む、請求項11〜22のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項27】
4つの抗原結合部位を有する、請求項1〜26のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項28】
医薬で使用するための、請求項1〜27のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項29】
癌、例えば固形腫瘍(結腸,乳房,卵巣,肺(小細胞または非小細胞),前立腺,膵臓,腎臓,肝臓,胃,頭頸部,メラノーマ,肉腫を含む),原発性および二次性(転移性)脳腫瘍、例えば限定はされないが、グリオーマ(上衣腫を含む),髄膜腫,オリゴデンドローマ,アストロサイトーマ(低悪性度,未分化および多形神経膠芽腫),髄芽腫,神経節腫,シュワン腫および脊索腫,または加齢性黄斑変性病,糖尿病性網膜症,RAもしくは乾癬の治療のための医薬の製造における使用のための、請求項1〜28のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項30】
治療量の請求項1〜27のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質を投与することを含む、癌、例えば固形腫瘍(結腸,乳房,卵巣,肺(小細胞または非小細胞),前立腺,膵臓,腎臓,肝臓,胃,頭頸部,メラノーマ,肉腫を含む),原発性および二次性(転移性)脳腫瘍、例えば限定はされないが、グリオーマ(上衣腫を含む),髄膜腫,オリゴデンドローマ,アストロサイトーマ(低悪性度,未分化および多形神経膠芽腫),髄芽腫,神経節腫,シュワン腫および脊索腫,または加齢性黄斑変性病,糖尿病性網膜症,RAもしくは乾癬に罹患した患者の治療方法。
【請求項31】
癌、例えば固形腫瘍(結腸,乳房,卵巣,肺(小細胞または非小細胞),前立腺,膵臓,腎臓,肝臓,胃,頭頸部,メラノーマ,肉腫を含む),原発性および二次性(転移性)脳腫瘍、例えば限定はされないが、グリオーマ(上衣腫を含む),髄膜腫,オリゴデンドローマ,アストロサイトーマ(低悪性度,未分化および多形神経膠芽腫),髄芽腫,神経節腫,シュワン腫および脊索腫,または加齢性黄斑変性病,糖尿病性網膜症,RAもしくは乾癬の治療のための、請求項1〜27のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項32】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質の重鎖をコードする、ポリヌクレオチド配列。
【請求項33】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質の軽鎖をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項34】
請求項1〜27のいずれかに記載の抗原結合タンパク質の重鎖及び軽鎖をコードする1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む、形質転換又はトランスフェクトされた組換え宿主細胞。
【請求項35】
請求項34に記載の宿主細胞を培養する工程及び抗原結合タンパク質を単離する工程を含む、請求項1〜27に記載の抗原結合タンパク質の生産方法。
【請求項36】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質及び製薬上許容可能な担体を含む医薬組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate


【公表番号】特表2012−527876(P2012−527876A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512353(P2012−512353)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057229
【国際公開番号】WO2010/136482
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】