説明

抗原虫剤の化学療法標的としてのサイクリックGMP依存性プロテインキナーゼ

【課題】抗原虫剤の化学療法標的として使用しうる新規プロテインキナーゼに関し、該新規キナーゼを使用する潜在的抗原虫剤の同定方法、および該キナーゼの作用を阻害する物質を使用する原虫感染症の治療方法を提供する。
【解決手段】Eimeria tenella、Toxoplasma gondii由来、新規原虫cGMP依存性プロテインキナーゼ(PKG)、および該PKGポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列。該PKGを用いた、抗原虫活性を有する化合物の同定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原虫剤の化学療法標的として使用しうる新規プロテインキナーゼに関する。本発明は更に、該新規キナーゼを使用する潜在的抗原虫剤の同定方法、および該キナーゼの作用を阻害する物質を使用する原虫感染症の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
寄生性原虫は、ヒトおよび動物における多種多様な感染症の原因となる。該疾患の多くは宿主の生命を脅かすものであり、畜産業においては、著しい経済的損失を引き起こすことがある。例えば、マラリアは、該疾患を撲滅するための大規模な国際的努力にもかかわらず、依然としてヒトの健康を著しく脅かすものである。クルーズ・トリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)により引き起こされるシャガス病などのトリパノソーマ症およびブルース・トリパノゾマ(T.brusei)により引き起こされるアフリカ睡眠病は、それぞれ、南米およびアフリカにおいては珍しくない。ニューモシスティス・カリニ(Pneumocystis carinii)、トキソプラズマ・ゴンヂ(Toxoplasma gondii)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)種により引き起こされる免疫低下宿主における日和見感染症は、先進国においては益々重要になりつつある。
【0003】
広範に広まっている家畜疾患であるコクシジウム症は原虫感染により引き起こされる。養禽業においては、コクシジウム症は、トリ集団における高レベルの罹患率および致死率を招き、莫大な経済的損失を引き起こすことがある。感染性因子はエイメリア(Eimeria)属の原虫である。最も重要なトリエイメリア種のいくつかには、エイメリア・テネラ(E.tenella)、エイメリア・アセルブリナ(E.acervulina)、エイメリア・ネカトリクス(E.necatrix)、エイメリア・ブルネッティ(E.brunetti)およびエイメリア・マクシマ(E.maxima)が含まれる。
【0004】
シャガス病などのいくつかの原虫疾患においては、満足な治療法が存在せず、他の原虫疾患においては、原虫の薬剤耐性株が出現することがある。したがって、新規かつ有効な抗原虫薬を同定することが絶えず必要とされている。しかし、駆虫薬の発見は、ほとんどの場合、寄生虫のパネルに対する天然物および合成化合物の生物学的スクリーニングによる無作為で骨の折れる過程であった。抗原虫薬の生化学的標的を同定しそれを該スクリーニング過程に含めることができれば、この過程は著しく促進され、より特異的となりうる。
【0005】
cGMP依存性プロテインキナーゼ(PKG)は、特定のタンパク質基質のリン酸化を触媒する。cGMPの不存在下では、これらの酵素の活性は非常に低い。哺乳類細胞においては、可溶性(PKG1)および膜結合形態(PKG2)の2つのタイプのPKGが存在する。該可溶性タンパク質の複数のスプライス変異体が同定されている。PKGは、高等動物における多数の細胞過程を制御することが知られている。哺乳類PKG1は、平滑筋、胎盤および小脳に最も豊富に存在する。マウスにおけるPKG1の標的化破壊は、明らかに平滑筋に関連した表現型、すなわち、腸および血管の重篤な機能不全を与えた。PKG2の発現は、小腸、脳のいくつかの領域(特に視床下部)および肺において最も高い。PKG2を欠くトランスジェニックマウスは、成長板の骨化欠損により引き起こされる矮小表現型を示し、腸分泌機能不全をも有する。PKGは、タマホコリカビ(Dictyostelium)、ゾウリムシ(Paramecium)、テトラヒメナ(Tetrahymena)および回虫(Ascaris)においても同定されている。
【0006】
(発明の詳細な記載)
1つの態様においては、本発明は、新規原虫cGMP依存性プロテインキナーゼ(PKG)、および該PKGポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を提供する。1つの実施形態においては、本発明は、配列番号11のアミノ酸配列より実質的になるエイメリア・テネラ(ニワトリ盲腸コクシジウム)(Eimeria tenella)のPKG精製画分、および配列番号11のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を提供する。より詳しくは、該ポリヌクレオチド配列は配列番号10に記載のものである。もう1つの実施形態においては、本発明は、配列番号13のアミノ酸配列より実質的になるトキソプラズマ・ゴンヂ(Toxoplasma gondii)の実質的に純粋なPKG、および配列番号13のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。より詳しくは、該ポリヌクレオチド配列は配列番号12に記載のものである。
【0007】
もう1つの態様において、本発明は、
(a)原虫PKGを、(i)PKGと相互作用する既知量の標識化合物、および(ii)既知希釈度の試験化合物または天然物抽出物と接触させ、
(b)該試験化合物により誘発された該標識化合物の相互作用の阻害率を定量することを含んでなる、抗原虫活性を有する化合物の同定方法を提供する。
【0008】
もう1つの態様においては、本発明は、
(a)無傷の宿主または原虫の細胞を試験化合物または天然物抽出物と接触させ、
(b)該細胞を破壊して、PKG触媒活性を有する生化学的画分を得、
(c)該生化学的画分におけるPKG活性のレベルを測定することを含んでなる、抗原虫活性を有する化合物の同定方法を提供する。
【0009】
本発明の方法は、潜在的抗原虫薬としての化合物をスクリーニングするための簡便かつ特異的なアッセイを提供する。
【0010】
ポリペプチド
本発明の新規PKGは原虫由来である。特に、該酵素は、アピコンプレキサン科の原虫、より詳しくはエイメリア(Eimeria)種(これらに限定されるものではない)において存在する。本発明の天然エイメリア・テネラ(Eimeria tenella)PKGは、約1,003アミノ酸を有する約120kDaのタンパク質である。トキソプラズマ・ゴンヂ(Toxoplasma gondii)由来の天然PKGは、約115kDaであり、約994アミノ酸を有する。本発明のPKGは、可溶性タンパク質の粗抽出物、寄生性原虫から単離されたPKG精製画分(天然酵素)、アフィニティー精製された天然PKG(cGMP、基質に基づくペプチド、インヒビターに基づく分子または抗体を使用して可溶性抽出物から精製されたもの)、および組換えDNA技術により産生されたPKG(組換え発現酵素)を含む。本発明で用いる「PKG精製画分」なる語は、それに天然で付随しているほとんどの他のタンパク質、脂質、炭水化物、核酸または他の物質を含有しないPKGポリペプチドを意味する。当業者は、タンパク質の精製のための標準的な技術を用いてPKGを精製することが可能である。該PKG精製画分は、還元ポリアクリルアミドゲル上で主要バンドを与えるであろう。該ポリペプチドの配列は、アミノ酸配列決定により決定することができる。
【0011】
本発明の原虫PKGは、配列番号11のポリペプチドおよび配列番号13のポリペプチドならびにそれらの機能的ポリペプチドおよび断片を含む。本発明で用いる「機能的ポリペプチドおよび断片」なる語は、PKG活性を有するポリペプチドを意味する。PKGの一次アミノ酸配列の小さな修飾は、本明細書に記載のPKGポリペプチドと実質的に同等な活性を有するタンパク質を与えうる。そのような修飾は、例えば部位特異的突然変異誘発による意図的なもの、または自発的なものでありうる。これらの修飾により産生されたポリペプチドのすべては、PKGの酵素活性が存在する限り、本発明に含まれる。さらに、1以上のアミノ酸の欠失は、そのキナーゼ活性を有意に改変することなく、生じる分子の構造の修飾を引き起こしうる。これは、より広範な有用性を有しうる、より小さな活性分子の開発につながりうる。例えば、キナーゼ活性に要求されることがないアミノまたはカルボキシル末端アミノ酸を除去することが可能である。PKGの生物活性を含有する、より小さなペプチドが、本発明に含まれる。
【0012】
本発明のPKGポリペプチドはまた、該タンパク質の生物活性を実質的に改変しないポリペプチド配列の同類変異を含む。本発明で用いる「同類変異」は、アミノ酸残基が別の生物学的に類似した残基で置換されることを意味する。同類変異の具体例には、ある疎水性残基(例えば、イソロイシン、バリンまたはロイシン)を別の疎水性残基で置換すること、ある極性残基を別の極性残基で置換すること(例えば、リシンからアルギニン、アスパラギン酸からグルタミン酸、またはアスパラギンからグルタミンへの置換)などが含まれる。「同類変異」なる語はまた、該酵素の活性が実質的に改変されない限り、非置換親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を使用することを含む。
【0013】
ポリヌクレオチド
本発明はまた、配列番号11または配列番号13のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列より実質的になる単離されたポリヌクレオチド配列を提供する。本発明で用いる「ポリヌクレオチド」は、分離した断片またはより大きな構築物の形態のポリデオキシリボヌクレオチドまたはポリリボヌクレオチドを意味し、原虫PKGをコードするDNA、cDNAおよびRNA配列を含む。本発明で用いる「単離(された)」なる語は、それに天然で付随する他の核酸、タンパク質、脂質、炭水化物または他の物質を実質的に含有しないポリヌクレオチドを含む。原虫PKGの全部または一部をコードするすべてのポリヌクレオチドもまた、PKGキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする限り、本発明に含まれると理解される。そのようなポリヌクレオチドには、天然に存在するポリヌクレオチド、合成ポリヌクレオチド、および意図的に操作されたポリヌクレオチドが含まれる。例えば、PKGポリヌクレオチドは部位特異的突然変異誘発に付されうる。
【0014】
特定のアミノ酸をコードする種々のコドンには、かなりの量の重複が存在することが公知である。20個の天然アミノ酸が存在するが、それらのほとんどは、2以上のコドンにより定められる。したがって、本発明はまた、同一アミノ酸の最終翻訳物をコードする代替的コドンを含有するDNA配列に関する。本明細書の目的においては、1以上の置換コドンを保持する配列を縮重変異(体)と定義する。したがって、本発明は、同一タンパク質を発現するDNA分子の相違をもたらしうるコドン重複性を開示する。
【0015】
本明細書において特に開示するものは、エイメリア・テネラ(E.tenella)PKGの推定コード領域を含有する4283塩基対(bp)長のcDNA配列(配列番号10)である。該cDNAは、約113kDaの推定分子量を有する約1003アミノ酸のタンパク質をコードする3009塩基対のオープンリーディングフレームを含む。本明細書において特に開示するものはまた、トキソプラズマ・ゴンヂ(T.gondii)PKGの推定コード領域を含有する3898塩基対(bp)長のcDNA配列(配列番号12)である。該cDNAは、約112kDaの推定分子量を有する約994アミノ酸のタンパク質をコードする2982塩基対のオープンリーディングフレームを含む。PKGをコードするポリヌクレオチドは、ヌクレオチド配列配列番号10および配列番号12、ならびにその配列に相補的な核酸配列を含む。相補的配列はアンチセンスヌクレオチドを含みうる。該配列がRNAである場合、デオキシヌクレオチドA、G、CおよびTは、それぞれ、リボヌクレオチドA、G、CおよびUにより置き換えられる。本発明はまた、前記核酸配列の断片を含み、それらは少なくとも15塩基長であり、それは、配列番号11および配列番号13のPKGを含む本発明のタンパク質をコードするDNAに該断片が選択的にハイブリダイズするのを可能にするのに十分なものである。
【0016】
PKGをクローニングするためには、種々の方法のいずれかを用いることが可能である。これらの方法には、以下の技術が含まれるが、これらに限定されるものではない。
(1)RACE PCRクローニング技術(Frohmanら,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.85:8998−9002)。完全長cDNA配列を得るために、5’および/または3’RACEを行なうことができる。この方法は、PKG cDNAのPCR増幅用の遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプライマーの使用を伴う。これらの遺伝子特異的プライマーは、公に利用可能な多数の核酸およびタンパク質データベースを検索することにより同定されたEST(発現しているタグ配列)ヌクレオチド配列の同定を介して設計する。
(2)適当な発現ベクター系におけるPKG含有cDNAライブラリーの構築後のPKG cDNAの直接機能発現。
(3)PKGタンパク質のアミノ酸配列から設計した標識縮重オリゴヌクレオチドプローブによる、バクテリオファージまたはプラスミドベクター中に構築されたPKG含有cDNAライブラリーのスクリーニング。
(4)PKGタンパク質をコードする部分cDNAによる、バクテリオファージまたはプラスミドベクター中に構築されたPKG含有cDNAライブラリーのスクリーニング。この部分cDNAは、PKGタンパク質に関連した他のキナーゼに関して知られているアミノ酸配列からの縮重オリゴヌクレオチドプライマーの設計による、PKG DNA断片の特異的PCR増幅により得られる。
(5)PKGタンパク質をコードする部分cDNAによる、バクテリオファージまたはプラスミドベクター中に構築されたPKG含有cDNAライブラリーのスクリーニング。この方法はまた、前記のとおりにESTとして同定されたPKG cDNAのPCR増幅用の遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプライマーの使用を伴いうる。
(6)鋳型として配列番号10または配列番号12を使用することによる、5’および/または3’遺伝子特異的オリゴヌクレオチドの設計。それにより、該完全長cDNAを公知RACE技術により作製するか、あるいは該コード領域の一部を、これらの同じ公知RACE技術により作製して、cDNAおよび/またはゲノムライブラリーの多数の型の1つをスクリーニングするためのプローブとして使用するコード領域の一部を作製し単離して、PKGをコードするヌクレオチド配列の完全長形態を単離することが可能である。
【0017】
PKG活性を有する細胞または細胞系から適当なcDNAライブラリーが調製されうることは、当業者に容易に認められる。PKG cDNAの単離用のcDNAライブラリーの調製に使用するための細胞または細胞系の選択は、まず、PKG活性に関する任意の公知アッセイを用いて細胞関連PKG活性を測定することにより行なうことができる。
【0018】
cDNAライブラリーの調製は、当技術分野でよく知られた標準的な技術により行なうことができる。よく知られたcDNAライブラリー構築技術は、例えば、Sambrookら,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New Yorkに記載されている。また、相補的DNAライブラリーは、Clontech Laboratories,Inc.およびStratageneを含む(これらに限定されるものではない)多数の商業的入手源から入手することができる。
【0019】
また、PKGをコードするDNAは、適当なゲノムDNAライブラリーからも単離されうることが、当業者に容易に認められる。ゲノムDNAライブラリーの構築は、当技術分野でよく知られた標準的な技術により行なうことができる。よく知られたゲノムDNAライブラリー構築技術は、Sambrookら(前掲)に記載されている。ゲノムDNAライブラリーも、Clontech Laboratories,Inc.およびStratageneを含む(これらに限定されるものではない)多数の商業的入手源から入手することができる。
【0020】
これらの好ましい方法の1つによりPKG遺伝子をクローニングするためには、PKGまたは相同タンパク質のアミノ酸配列またはDNA配列が必要かもしれない。これを達成するために、PKGまたは相同タンパク質を精製し、自動シークエネーターにより部分アミノ酸配列を決定することができる。全アミノ酸配列を決定することは必ずしも必要でないが、部分PKG DNA断片のPCR増幅のために、6〜8アミノ酸の2つの領域の直列(linear)配列を決定することが可能である。適当なアミノ酸配列を同定したら、それらをコードしうるDNA配列を合成する。遺伝暗号は縮重しているため、特定のアミノ酸をコードするのに2以上のコドンが使用されうる。したがって、該アミノ酸配列は、類似したDNAオリゴヌクレオチドの組のいずれかによりコードされうる。該セットの1つのメンバーだけがPKG配列と同一になるが、該組のその他のメンバーは、ミスマッチを有するDNAオリゴヌクレオチドの存在下であっても、PKG DNAにハイブリダイズしうるであろう。そのミスマッチDNAオリゴヌクレオチドは、それでもなお、PKGをコードするDNAの同定および単離を可能にするのに十分な程度にPKG DNAにハイブリダイズしうる。
【0021】
あるいは、利用可能な1以上のデータベースを検索することにより、発現される配列の領域のヌクレオチド配列を同定することができる。cDNAライブラリーまたはcDNA集団から、関心のあるcDNAのPCR増幅を行なうためには、遺伝子特異的プライマーを使用することができる。前記のとおり、PCRに基づく方法で使用するための適当なヌクレオチド配列は、配列番号10または配列番号12から得ることが可能であり、それにより、重複する5’および3’RACE産物を単離して、PKGをコードする完全長配列を作製したり、あるいはPKGをコードするヌクレオチド配列の一部を単離して、cDNAまたはゲノムに基づくライブラリーの1以上をスクリーニングするためのプローブとして使用して、PKGまたはPKG様タンパク質をコードする完全長配列を単離することが可能である。
【0022】
本発明のDNA配列は、いくつかの方法により得ることができる。例えば、該DNAは、当技術分野でよく知られたハイブリダイゼーション技術を用いて単離することができる。これらには、1)相同ヌクレオチド配列を検出するためのプローブでのゲノムまたはcDNAライブラリーに対するハイブリダイゼーション、2)共有された構造的特徴を有するクローン化DNA断片を検出するための発現ライブラリーの抗体スクリーニング、および3)オリゴヌクレオチドプライマーを使用する所望のヌクレオチド配列のPCR増幅が含まれるが、それらに限定されるものではない。好ましくは、本発明のPKGポリヌクレオチドは原虫生物に由来し、より好ましくは、エイメリア(Eimeria)種に由来する。核酸ハイブリダイゼーションに基づくスクリーニング方法は、適当なプローブが入手可能である限り、任意の生物から任意の遺伝子配列を単離することを可能にする。問題のタンパク質をコードする配列の一部に対応するオリゴヌクレオチドプローブは、化学的に合成することができる。この場合には、アミノ酸配列の短いオリゴペプチド伸長が既知でなければならないことが要求される。
【0023】
該タンパク質をコードするDNA配列は遺伝暗号から推定することができる。しかし、遺伝暗号の縮重を考慮しなければならない。該配列が縮重している場合には、混合添加反応を行なうことが可能である。これは、変性二本鎖DNAの不均一混合物を含む。そのようなスクリーニングの場合、一本鎖DNAまたは変性二本鎖DNA上でハイブリダイゼーションが好ましく行われる。ハイブリダイゼーションは、関心のあるポリペプチドに関連したmRNA配列が非常に少量しか存在しない起源に由来するcDNAクローンの検出において特に有用である。すなわち、非特異的結合を避けるように定められたストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いることにより、例えば、混合物中の完全な対応相補体であるその単一のプローブへの該標的DNAのハイブリダイゼーションによる特異的cDNAクローンのオートラジオグラフィーによる可視化が可能となりうる(Wallaceら,Nucl.Acid Res.,9:879−1981)。
【0024】
PKGをコードする特異的DNA配列の生成は、1)ゲノムDNAからの二本鎖DNA配列の単離、2)関心のあるポリペプチドの必要なコドンを得るための、DNA配列の化学的製造、および3)真核供与細胞から単離されたmRNAの逆転写による二本鎖DNA配列のインビトロ合成によってももたらされうる。後者の場合、cDNAと一般に称される、mRNAの二本鎖DNA相補体が最終的に形成される。
【0025】
所望のポリペプチドのアミノ酸残基の全配列が既知でない場合には、DNA配列の直接的合成は可能ではなく、ふさわしい方法はcDNA配列の合成である。関心のあるcDNA配列を単離するための標準的な方法としては、高レベルの遺伝子発現を有する供与細胞内に豊富に存在するmRNAの逆転写に由来する、プラスミドまたはファージを保持するcDNAライブラリーの形成が挙げられる。ポリメラーゼ連鎖反応技術と併用すれば、稀有配列産物でさえもクローニングすることができる。該ポリペプチドのアミノ酸配列の有意な部分が既知の場合には、標的cDNA中に存在すると推定される配列が重複した標識一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAプローブ配列の作製を、一本鎖形態に変性したcDNAのクローン化コピー上で行なうDNA/DNAハイブリダイゼーション法において用いることができる。
【0026】
ゲノムDNAを得るための好ましい方法は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、これは、DNAの特定のセグメントが特異的に複製される核酸合成のインビトロ法に基づくものである。増幅したいDNA断片に隣接する2つのオリゴヌクレオチドプライマーを、該DNAの熱変性、対応する相補的配列への該プライマーのアニーリング、およびDNAポリメラーゼによる該アニール化プライマーの伸長の反復サイクルにおいて用いる。これらのプライマーは、標的配列の対抗鎖にハイブリダイズし、該ポリメラーゼによるDNA合成が該プライマー間の領域に沿って進行するように配向する。該伸長産物自体もプライマーに相補的でありそれに結合しうるため、増幅の連続的サイクルは、前サイクルで合成された標的DNAの量を実質的に2倍にする。その結果、約2<n>個(nは、実施した増幅サイクル数である)の特異的標的断片の指数関数的蓄積が生じる(PCR Protocols,Innisら編,Academic Press,Inc.,1990;これを参照により本明細書に組み入れることとする)。
【0027】
PKGに特異的な抗体を使用して、ラムダgt11などのベクター中のcDNA発現ライブラリーを、少なくとも1つのエピトープを有するPKGペプチドに関して間接的にスクリーニングすることができる。そのような抗体は、ポリクローナル的またはモノクローナル的に誘導され、PKG cDNAの存在を示す発現産物の検出に使用されうる。PKGのポリヌクレオチド配列はまた、PKGをコードするポリヌクレオチドに相補的な配列(アンチセンス配列)を含む。アンチセンス核酸は、特定のmRNA分子の少なくとも一部に相補的なDNAまたはRNA分子である(Weintraub,Scientific American,262:40,1990)。本発明は、PKGポリペプチドの産生を抑制しうるすべてのアンチセンスポリヌクレオチドを含む。細胞内で、該アンチセンス核酸は対応mRNAにハイブリダイズして、二本鎖分子を形成する。該細胞は二本鎖のmRNAを翻訳しないため、あるいは該二本鎖mRNAは分解するように仕向けられるため、該アンチセンス核酸は該RNAの翻訳を妨げうる。約15ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーが好ましい。なぜなら、それは、容易に合成され、細胞に進入するのに十分な程度に小さく、標的PKG産生細胞内に導入された場合に問題を引き起こす可能性が、より大きな分子より低いからである。遺伝子の翻訳を抑制するためのアンチセンス方法の使用は当技術分野においてよく知られている(Marcus−Sakura,Anal.Biochem.,172:289,1988)。
【0028】
ベクター、宿主細胞、発現
PKGをコードするDNA配列は、適当な宿主細胞内へのDNA導入によりインビトロで発現されうる。「宿主細胞」は、関心のあるDNA配列を保持するベクターを複製し該DNA配列のコード化タンパク質を発現しうる細胞である。この用語は、対象宿主細胞の任意の後代をも含む。複製中に突然変異が生じうるため、すべての後代が親細胞と同一とは限らないと理解される。しかし、「宿主細胞」なる語を用いる場合には、そのような後代が含まれる。外来DNAが宿主内で連続的に維持されることを意味する安定導入の方法は、当技術分野で公知である。
【0029】
宿主細胞内で組換えPKGを発現させるためには、種々の発現ベクターを使用することができる。「発現ベクター」は、適当な宿主におけるクローン化DNAの転写およびそれらのmRNAの翻訳に必要なDNA配列である。そのようなベクターを使用して、細菌、藍藻類、植物細胞、昆虫細胞、アピコンプレキサン寄生虫および動物細胞などの種々の宿主内で真核性DNAを発現させることができる。特別に設計されたベクターは、細菌−酵母、細菌−昆虫細胞、細菌−アピコンプレキサン寄生虫または細菌−動物細胞などの宿主間のDNAの往復(シャトル)を可能にする。適切に構築された発現ベクターは、宿主細胞内での自律複製のための複製起点、選択マーカー、一定数の有用な制限酵素部位、潜在的な高コピー数および活性なプロモーターを含有すべきである。他の発現ベクターは、宿主細胞内での自律複製のための複製起点を含有しないが、その代わりに、組込み/維持に関して選択するためのマーカーを使用して(ランダムに又は相同組込み事象により)安定に組込まれる能力に依存する。プロモーターは、RNAポリメラーゼがDNAに結合しRNA合成を開始するのを指令するDNA配列と定義される。強力なプロモーターは、mRNAの高頻度の開始をもたらすものである。発現ベクターには、クローニングベクター、修飾されたクローニングベクター、特別に設計されたプラスミドまたはウイルスが含まれうるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
組換えPKGの発現に適している可能性がある商業的に入手可能な哺乳類発現ベクターには、pcDNA3.1、pcDNAI、pcDNAIamp(Invitrogen)、pMC1neo(Stratagene)、pXT1(Stratagene)、pSG5(Stratagene)、EBO−pSV2−neo(ATCC 37593)、pBPV−1(8−2)(ATCC 37110)、pdBPV−MMTneo(342−12)(ATCC 37224)、pRSVgpt(ATCC 37199)、pRSVneo(ATCC 37198)、pSV2−dhfr(ATCC 37146)、pUCTag(ATCC 37460)およびλZD35(ATCC 37565)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
細菌細胞内で組換えPKGを発現させるためには、種々の細菌発現ベクターを使用することができる。組換えPKGの発現に適している可能性がある商業的に入手可能な細菌発現ベクターには、pCR2.1(Invitrogen)、pET11a(Novagen)、ラムダgt11(Invitrogen)、pcDNAII(Invitrogen)、pKK223−3(Pharmacia)およびpQEベクター(Qiagen)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
真菌細胞内で組換えPKGを発現させるためには、種々の真菌細胞発現ベクターを使用することができる。組換えPKGの発現に適している可能性がある商業的に入手可能な真菌細胞発現ベクターには、pYES2(Invitrogen)およびピチア(Pichia)発現ベクター(Invitrogen)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
昆虫細胞内で組換えPKGを発現させるためには、種々の昆虫細胞発現ベクターを使用することができる。PKGの組換え発現に適している可能性がある商業的に入手可能な昆虫細胞発現ベクターには、pBlueBacIII、pBlueBacHis2(Invitrogen)およびpFastBac1、pFastBacHT(Life Technologies)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
アピコンプレキサン寄生虫(最も注目に値するのはトキソプラズマ・ゴンヂ(Toxoplasma gondii)である)内で組換えPKGを発現させるためには、種々の発現ベクターを使用することができる。PKGの組換え発現に適している可能性がある発現ベクターには、pminCAT/HXGPRT−、pDHFR−TSc3/M3、pDHFR−TSc3/M2M3、pminiHXGPRTおよびpminP30/G(NIH AIDS Research and Reference Reagent Program)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
該発現ベクターは、感染、形質転換、トランスフェクション、リポフェクション、プロトプラスト融合およびエレクトロポレーションを含む(これらに限定されるものではない)多数の技術のいずれか1つにより宿主細胞内に導入することができる。該発現ベクター含有細胞をクローン的に増殖させ、個々に分析して、それらがPKGタンパク質を産生するか否かを判定する。PKGを発現する宿主細胞クローンの同定は、抗PKG抗体に対する免疫反応性を含む(これらに限定されるものではない)いくつかの手段により行なうことができる。
【0036】
また、PKG DNAの発現は、インビトロで得た合成mRNAまたは天然mRNAを使用して行なうことができる。合成mRNAまたはPKG産生細胞から単離されたmRNAは、コムギ胚芽抽出物および網状赤血球抽出物を含む(これらに限定されるものではない)種々の無細胞系内で効率的に翻訳されることが可能であり、また、カエル卵母細胞内へのマイクロインジェクション(これに限定されるものではない)を含む細胞に基づく系内で効率的に翻訳されることが可能であり、カエル卵母細胞内へのマイクロインジェクションが好ましい。
【0037】
PKGコード配列を発現させるためには、種々の宿主−発現ベクター系を使用することができる。これらには、PKGコード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌;PKGコード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、タバコモザイクウイルス(TMV))に感染した又はPKGコード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;PKGコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;またはPKGコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス)に感染した動物細胞系または安定発現のために操作された形質転換動物細胞系などの微生物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
最適レベルのPKGタンパク質を与えるPKG cDNA配列を決定するために、以下のものを含む(これらに限定されるものではない)PKG cDNA分子を構築することができる:PKG cDNAの完全長オープンリーディングフレーム、および該タンパク質の特異的ドメインまたは該タンパク質の再編成ドメインだけをコードするcDNA部分を含有する種々の構築物。すべての構築物は、PKGの5’および/または3’非翻訳領域の全部または一部を含有するように或いはそれらを全く含有しないように設計することができる。PKGの活性およびタンパク質発現のレベルは、これらの構築物を単独で又は組合せて適当な宿主細胞内に導入した後に測定することができる。一過性アッセイにおいて最適な発現を与えるPKG cDNAカセットを決定した後、このPKG cDNA構築物を、哺乳類細胞、植物細胞、昆虫細胞、卵母細胞、細菌および酵母細胞用の発現ベクターを含む(これらに限定されるものではない)種々の発現ベクター(組換えウイルスを含む)に導入する。
【0039】
また、組換えPKGコード配列のタンパク質コード領域は、エピトープタグを付加するためにcDNAのレベルで修飾することができる。該cDNA配列の修飾は、通常、該タンパク質コード領域のアミノまたはカルボキシ末端に対して行われるが、これらに限定されるものではない。これは、当技術分野において一般的ないくつかの方法のいずれかにより達成される。修飾の具体例には、インフルエンザウイルスHAタグ、FLAGタグ、ヘキサヒスチジンタグ、c−mycタグ、ならびにマルトース結合タンパク質、グルタチオントランスフェラーゼおよびグリーン蛍光タンパク質との融合が含まれるが、これらに限定されるものではない。これらのタグは、該タグ配列に対する商業的に入手可能な抗血清を使用して組換えPKGを宿主PKGから免疫学的に識別するための手段として、および組換え体を宿主PKGから分離するための精製手段として有用でありうる。
【0040】
宿主細胞内の組換えPKGタンパク質のレベルは、イムノアフィニティーおよび/またはリガンドアフィニティー技術を含む(これらに限定されるものではない)種々の技術により定量する。PKG特異的アフィニティービーズまたはPKG特異的抗体を使用して、[H]−ロイシン、[35S]−メチオニンなどの放射性アミノ酸で代謝的に標識されたPKGタンパク質または未標識PKGタンパク質を単離する。標識されたPKGタンパク質をSDS−PAGEにより分析する。未標識PKGタンパク質は、PKGに特異的な又はエピトープタグに特異的な抗体を使用するウエスタンブロット法、ELISAまたはRIAアッセイにより検出する。
【0041】
PKGの精製
宿主細胞内でPKGを発現させた後、PKGタンパク質を回収して、活性形態のPKGを得ることができる。いくつかのPKG精製方法が利用可能であり、使用に適している。塩分別、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイト吸着クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよび環状ヌクレオチドアフィニティークロマトグラフィーの種々の組合せ又は個々の適用により、細胞ライセートおよび抽出物から、または馴らし培地から、組換えPKGを精製することができる。
【0042】
また、完全長PKGに又はPKGのポリペプチド断片に特異的なモノクローナルまたはポリクローナル抗体で作製されたイムノアフィニティーカラムの使用により、他の細胞タンパク質から組換えPKGを分離することができる。さらに、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体は、該タンパク質の一部に由来する合成ペプチド(通常、約9〜約25アミノ酸長)に対して産生させることができる。
【0043】
PKGに対する単一特異性抗体は、PKGに対して反応性である抗体を含有する哺乳類抗血清から精製したり、あるいはKohlerおよびMilstein(1975,Nature 256:495−497)の技術を用いてPKGに対して反応性であるモノクローナル抗体として調製する。本発明で用いる単一特異性抗体は、PKGに対する均一な結合特性を有する複数の抗体種または単一の抗体種と定義される。本発明で用いる均一な結合は、ある特定の抗原またはエピトープ(例えば、前記のPKGに伴うもの)に該抗体種が結合しうることを意味する。PKG特異的抗体は、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ウマなどの動物を、免疫アジュバントの存在下または不存在下で、適当な濃度のPKGまたはPKG合成ペプチドで免疫することにより産生させる。
【0044】
初回免疫の前に、免疫前血清を集める。各動物に、許容される免疫アジュバントを伴う約0.1μg〜約1000μgのPKGを投与する。そのような許容されるアジュバントには、フロイント完全、フロイント不完全、ミョウバン沈殿物、油中水型エマルション(コリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)およびtRNAを含有するもの)が含まれるが、これらに限定されるものではない。初回免疫は、好ましくはフロイント完全アジュバント中のPKGタンパク質またはPKG合成ペプチドを複数部位において皮下(SC)、腹腔内(IP)またはその両方に投与することよりなる。各動物から一定間隔で(好ましくは毎週)採血して、抗体力価を測定する。初回免疫後、該動物は、ブースター注射を受けても受けなくてもよい。ブースター注射を受ける動物には、一般には、フロイント不完全アジュバント中の等量またはより少量のPKGを同一経路で与える。ブースター注射は、最大力価が得られるまで約3週間間隔で行なう。各ブースター免疫の約7日後、または単回免疫後にほぼ毎週、該動物から採血し、血清を集め、アリコートを約−20℃で保存する。
【0045】
PKGと反応性であるモノクローナル抗体(mAb)は、近交系マウス、好ましくはBalb/cをPKGで免疫することにより調製する。約0.5mlのバッファーまたは食塩水中の約1μg〜約100μg、好ましくは約10μgのPKGを等容積の許容される前記アジュバント中に含むもので、該マウスをIPまたはSC経路により免疫する。フロイント完全アジュバントが好ましい。該マウスは、第0日に初回免疫を受け、約3〜約30週間休ませる。免疫化マウスには、リン酸緩衝食塩水などのバッファー溶液中の約1〜約100μgの同じPKG抗原のブースター免疫を静脈内(IV)経路により1回以上行なう。当技術分野で公知の標準的な方法により免疫化マウスから脾臓を摘出することにより、抗体陽性マウスからリンパ球、好ましくは脾リンパ球を得る。安定なハイブリドーマの形成を許容する条件下で該脾リンパ球と適当な融合相手(好ましくは、骨髄腫細胞)とを混合することにより、ハイブリドーマ細胞を産生させる。融合相手には、マウス骨髄腫P3/NS1/Ag4−1、MPC−11、S−194およびSp2/0(これらに限定されるものではない)が含まれうるが、Sp2/0が好ましい。該抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを、約30%〜約50%の濃度で分子量約1000のポリエチレングリコール中で融合させる。当技術分野で公知の方法により、融合ハイブリドーマ細胞を、ヒポキサンチン、チミジンおよびアミノプテリンで補足されたダルベッコ変法イーグル基礎培地(DMEM)中での増殖により選択する。上清流体を、約14、18および21日の増殖陽性ウェルから集め、該抗原としてPKGを使用する固相イムノラジオアッセイ(SPIRA)などのイムノアッセイにより抗体産生に関してスクリーニングする。また、該培養流体をオクタロニー沈降アッセイにおいて試験して、該mAbのアイソタイプを決定する。抗体陽性ウェルからのハイブリドーマ細胞を、MacPherson,1973,Soft Agar Techniques,Tissue Culture Methods and Applications,KruseおよびPaterson編,Academic Pressの軟寒天技術などの技術によりクローニングする。
【0046】
初回抗原刺激の約4日後に約2×10〜約6×10個のハイブリドーマ細胞を、プリスタンで予め刺激を受けたBalb/cマウスに注射(約0.5ml/マウス)することにより、モノクローナル抗体をインビボで産生させる。細胞導入の約8〜12日後に腹水を集め、該モノクローナル抗体を、当技術分野で公知の技術により精製する。
【0047】
約2%ウシ胎仔血清を含有するDMEM中で該ハイブリドーマを増殖させることにより、抗PKGモノクローナル抗体のインビトロ産生を行なって、十分な量の該特異的モノクローナル抗体を得る。当技術分野で公知の技術により、該モノクローナル抗体を精製する。
【0048】
腹水またはハイブリドーマ培養液の抗体力価を、沈降法、受身凝集反応、酵素結合抗体免疫吸着(ELISA)技術およびラジオイムノアッセイ(RIA)技術を含む(これらに限定されるものではない)種々の血清学的または免疫学的アッセイにより測定する。体液または組織および細胞抽出物中のPKGの存在を検出するために、同様のアッセイを用いる。
【0049】
単一特異的抗体を産生させるための前記方法を用いて、PKGポリペプチド断片または完全長PKGポリペプチドに特異的な抗体を産生させることが可能であると当業者に容易に認められる。
【0050】
該抗体がアガロースゲルビーズ支持体と共有結合を形成するようにN−ヒドロキシスクシンイミドエステルで予め活性化されたゲル支持体であるAffigel−10(Biorad)に該抗体を加えることにより、PKG抗体アフィニティーカラムを作製する。ついで該抗体を、スペーサーアームでアミド結合を介して該ゲルに結合させる。ついで、残存する活性化エステルを1MエタノールアミンHCl(pH8.0)でクエンチする。該カラムを水、ついで0.23MグリシンHCl(pH2.6)で洗浄して、未結合抗体または外来タンパク質を除去する。ついで該カラムをリン酸緩衝食塩水(pH7.3)中で平衡化し、PKGまたはPKG断片を含有する細胞培養上清または細胞抽出物を、該カラムにゆっくり通過させる。ついで、光学密度(A280)がバックグラウンドに低下するまで、該カラムをリン酸緩衝食塩水で洗浄し、ついで該タンパク質を0.23Mグリシン−HCl(pH2.6)で溶出する。ついで該精製PKGタンパク質を、リン酸緩衝食塩水に対して透析する。
【0051】
組換え発現PKGの精製のための前記方法は、寄生性原虫由来の天然酵素の精製にも適していることが、当業者に理解されるであろう。
【0052】
インヒビター−アッセイおよび分子
本発明のもう1つの態様においては、抗原虫活性を有する化合物の同定方法を提供する。1つの実施形態においては、該方法は、
(a)原虫PKGを、(i)PKGと相互作用する既知量の標識化合物および(ii)既知希釈度の試験化合物または天然物抽出物と接触させ、
(b)該試験化合物により誘発された該標識化合物の相互作用の阻害率を定量することを含む。
【0053】
該PKGは、精製または部分精製された天然酵素、クローン化PKGもしくはその操作された変異体、該酵素の粗調製物、またはPKG活性を含有する抽出物でありうる。所望の酵素活性を保有するPKGの断片も、本発明の範囲内に含まれる。
【0054】
PKGと相互作用する化合物は、該酵素の基質である化合物、または該酵素の活性部位または酵素活性の改変をもたらす代替部位(例えば、cGMP結合ドメイン)で該酵素に結合する化合物である。基質は、一般的なプロテインキナーゼ基質(例えば、ミオシン塩基性タンパク質、MBP)、合成ペプチドまたは他の天然に存在する基質でありうる。PKGに結合する化合物の具体例としては、KT5823などの公知インヒビター、合成または天然に存在するペプチド、および他の小分子(すなわち、非ペプチド性)インヒビター、例えば、2−(4−フルオロフェニル)−5−(N−メチルピペリジン−4−イル)−3−(4−ピリジル)ピロール(本発明においては、これは「インヒビター化合物」と称される)が挙げられる。該インヒビター化合物およびその製造は米国特許第5,792,778号に開示されている。好ましくは、PKGと相互作用する化合物は、該化合物と該酵素との相互作用のレベルの容易な定量を可能にするために標識される。好ましい放射能標識は[14C]または[H]である。該トリチル化インヒビター化合物は、以下のとおりに製造することができる。
【0055】
インヒビター化合物(該遊離アミン体、2.5mg、0.007mmol)のDMSO(0.8ml)溶液を室温で30分間攪拌した。高い比活性のトリチウム標識ヨウ化メチル(200mCi、0.0026mmol;0.4mlトルエン溶液中80Ci/mmol)をこの混合物に加え、得られた透明溶液を24時間攪拌した。該生成物をイソプロパノール(35mL)で希釈し、ほぼ乾固するまで蒸発させ、3mLのHPLC精製用メタノールで溶解させた。該生成物を、7mLの冷水(使用前に冷蔵庫内で冷却したもの)を含有するバイアル内に集めた。放射能および放射能純度に関するアッセイ後、該サンプルを、分解を防ぐために冷蔵庫内に保存した。該精製生成物の全活性は45mCiであり、比活性は68Ci/mmol(UVスペクトル測定による)であった。HPLC条件は、Zorbax SB−C18 Semi−prepカラム(5um,内径9.4mm×250mm)、65/35/0.1(v/v/v)水/アセトニトリル/HClO4、230nmでのUV検出、4.5mL/分、Rt=24.5mm、放射化学的純度:98.5%であった。
【0056】
該試験化合物は、合成化合物、精製された調製物、粗調製物、または植物、微生物または動物から得られた天然物の初期抽出物でありうる。
【0057】
本発明の1つの特定の実施形態は、PKG活性の、試験化合物により誘発される阻害に基づく。該酵素阻害アッセイは、PKGまたはPKG含有化合物を、酵素基質(そのうちの1つは放射能標識されている)と該試験化合物(それらのそれぞれは既知濃度で存在する)との混合物に加えることを含む。該酵素の量は、該放射能標識基質(通常は[32P]−または[33P]−ATP)の20%未満が該アッセイ中に消費されるように選択する。該アッセイは、一連の異なる希釈レベルの試験化合物を使用して行なう。一定期間のインキュベーションの後、該ATP基質の標識部分は、酵素作用により該ペプチドまたはタンパク質基質に共有結合する。この反応生成物を、取込まれていない前駆体から分離し、計数する。該アッセイは、一般には、対照(試験化合物の不存在下)および陽性対照(試験化合物の代わりに公知酵素インヒビターを含有するもの)と平行して行なう。該酵素活性の50%が阻害される該試験化合物の濃度(IC50)を、認められている方法を用いて測定する。
【0058】
酵素阻害は、該試験化合物の阻害活性の最も直接的な尺度であるが、本発明者らは、該試験化合物が酵素活性部位に対する結合に関して公知インヒビターと競合する比較結合アッセイが、前記の酵素阻害アッセイから得られた結果と良く相関することを見出した。したがって、本発明のもう1つの特定の実施形態は、試験化合物と公知PKGインヒビターとの競合結合に基づく。該結合アッセイは、部分精製酵素ではなくPKG含有粗抽出物の使用を可能にするため、酵素阻害を評価するための、より簡便な方法の1つである。粗抽出物の使用は、該抽出物中に存在する他の酵素が該試験基質をリン酸化しうるため、酵素阻害アッセイに常に適しているわけではない。該競合結合アッセイは、PKGまたはPKG活性含有抽出物を該試験化合物と標識インヒビターとの混合物(それらは共に該混合物中に既知濃度で存在する)に加えることにより行なう。インキュベーション後、該酵素−インヒビター複合体を未結合標識インヒビターおよび未標識試験化合物から分離し、計数する。PKGへの該標識インヒビターの結合の50%を阻害するのに要した該試験化合物の濃度(IC50)を計算する。
【0059】
好ましい実施形態においては、本発明の方法は、組換えPKG、天然PKGまたはエイメリア(Eimeria)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、マラリア原虫(Plasmodium)種などの原虫から得られたPKG含有抽出物を使用する。
【0060】
より好ましい実施形態においては、本発明の方法は更に、酵素阻害アッセイまたは結合アッセイにおいて宿主PKGに対する試験化合物のIC50を測定して、宿主のPKGより優先する寄生虫PKGに対する選択性を有する化合物を同定することを含む。該アッセイは、既に記載されているものと同じであり、原虫の宿主から得られるPKG活性によるものである。例えば、該宿主PKGは、哺乳動物、例えばヒト、または鳥類、例えばニワトリから得られうる。
【0061】
寄生虫PKGに選択的なインヒビターを同定するのに有用なもう1つの方法は、寄生虫PKGにより触媒される基質リン酸化のレベルを宿主PKGまたは他の細胞キナーゼ活性と比較して測定するためにゲルキナーゼアッセイを使用することである。したがって、宿主PKGではなく寄生虫PKGによる試験基質(例えば、ミエリン塩基性タンパク質)のリン酸化を特異的に阻害する化合物は、選択的な寄生虫PKGインヒビターであるとみなされるであろう。
【0062】
該酵素阻害または結合アッセイにおいて、PKGを含有する粗抽出物または抽出物を使用する場合には、試験化合物の標的は、天然基質のリン酸化のレベルを調べることにより確認されうる。例えば、該酵素を含有する無傷の宿主または寄生虫の細胞を該試験化合物で処理する。あるいは、該酵素を含有する無傷の宿主または寄生虫の細胞を、標識リン酸([33P]または[32P]が、好ましい標識である)の存在下で試験化合物で処理する。どちらの場合も、該細胞を細胞溶解し、可溶性タンパク質を部分精製し、二次元ポリアクリルアミド電気泳動により分析する。タンパク質は、染色により又はオートラジオグラフィーもしくはフルオログラフィーによる放射能標識の検出により検出される。異なってリン酸化された種は、多リン酸化タンパク質の泳動度の変化により又はオートラジオグラフィーシグナルの存在/不存在により、そのようなゲル上で容易に区別することができる。PKGインヒビターは、基質内への放射能標識リン酸の取込みを阻止するであろう。この技術は、試験化合物で処理された無傷細胞を使用するものであるため、この技術は、細胞環境内でPKGインヒビターに変換されうるが該酵素自体に基づくアッセイではそのように同定され得ないプロドラッグを同定するためにも用いられうる。
【0063】
抗原虫活性を有する化合物の同定方法のもう1つの実施形態は、
(a)無傷の宿主または原虫の細胞を試験化合物または天然物抽出物と接触させ、
(b)該細胞を破壊して、PKG触媒活性を有する生化学的画分を得、
(c)該生化学的画分におけるPKG活性のレベルを測定することを含む。
【0064】
例えば、無傷の宿主細胞を既知濃度の試験化合物(または既知希釈度の天然物抽出物)で1分間〜12時間処理する。ついで該宿主細胞を、例えば実施例3に記載の方法または当技術分野における他の公知方法を用いて細胞溶解する。PKG触媒活性のレベルは、後記実施例に記載の方法および当業者に一般に公知の他の方法を用いて測定することができる。
【0065】
PKGインヒビターとして同定された化合物は、抗原虫剤として有用でありうる。そしてそれら自体を、ヒトおよび動物(家禽を含む)における原虫疾患の治療および予防に使用することができる。例えば、PKGインヒビターを、PKGを阻害する化合物の治療的有効量にて、原虫感染症に罹患した宿主に投与することができる。治療的有効量は、原因原虫のPKGを阻害するのに十分な量でありうる。PKGインヒビターが使用されうる原虫疾患およびそれらのそれぞれの病原体の具体例には、1)アメーバ症(双核アメーバ(Dientamoeba)種、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica))、2)ランブル鞭毛虫症(ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia))、3)マラリア(三日熱マラリア原虫(P.vivax)、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、四日熱マラリア(P.malariae)および卵形マラリア原虫(P.ovale)を含むマラリア原虫(Plasmodium)種)、4)リーシュマニア症(ドノバンリーシュマニア(L.donovani)、熱帯リーシュマニア(L.tropica)、メキシコリーシュマニア(L.mexicana)およびブラジルリーシュマニア(L.braziliensis)を含むリーシュマニア種)、5)トリパノソーマ症およびシャガス病(トリパノソーマ・ブルーセイ(T.brucei)、トリパノソーマ・テイレリ(T.theileri)、トリパノソーマ・ローデシェンセ(T.rhodesiense)、ガンビア・トリパノソーマ(T.gambiense)、トリパノソーマ・エバンシ(T.evansi)、トリパノソーマ・エキパーダム(T.equiperdum)、トリパノソーマ・エクイヌム(T.equinum)、トリパノソーマ・コンゴレンゼ(T.congolense)、トリパノソーマ・ビバクス(T.vivax)およびクルーズ・トリパノソーマ(T.cruzi)を含むトリパノソーマ(Trypanosoma)種)、6)トキソプラズマ症(トキソプラズマ・ゴンヂ(Toxoplasma gondii))、7)ネオスポラ症(neosporosis)(ネオスポラ・カニヌム(Neospora caninum))、8)バベジア症(バベジア(Babesia)種)、9)クリプトスポリジウム症(クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)種)、10)赤痢(大腸バランチジウム(Balantidium coli))、11)膣炎(膣トリコモナス(T.vaginitis)およびトリコモナス・フィータス(T.foetus)を含むトリコモナス(Trichomonas)種)、12)コクシジウム症(エイメリア・テネラ(E.tenella)、エイメリア・ネカトリクス(E.necatrix)、エイメリア・アセルブリナ(E.acervulina)、エイメリア・マクシマ(E.maxima)、エイメリア・ブルネッティ(E.brunetti)、エイメリア・ミテイス(E.mitis)、エイメリア・ボビス(E.bovis)、エイメリア・メラグラマティス(E.melagramatis)およびイソスポラ(Isospora)種を含むエイメリア(Eimeria)種)、13)腸肝炎(ヒストモナス・ガリナルム(Histomonas gallinarum))、および14)アナプラズマ(Anaplasma)種、ベスノイティア(Besnoitia)種、リューコサイトゾーン(Leucocytozoan)種、微胞子虫類(Microsporidia)種、サルコシスチス(Sarcocystis)種、タイレリア(Theileria)種およびニューモシスティス・カリニ(Pneumocystis carinii)により引き起こされる感染症が含まれる。
【0066】
PKGインヒビターは、アピコンプレキサ(Apicomplexa)亜門のメンバーにより引き起こされる原虫感染症の治療または予防において好ましく使用される。PKGインヒビターはまた、ヒトおよび動物におけるマラリア、トキソプラズマ症、クリプトスポリジウム症およびトリパノソーマ症の治療または予防において、およびコクシジウム感染の治療またはそのような感染の発生の予防のためのコクシジウム症(特に家禽におけるもの)の処置において好ましく使用される。
【0067】
PKGインヒビターを慢性的に投与することが予想される場合(例えば、家禽におけるコクシジウム症の予防などの場合)には、該PKGインヒビターは、好ましくは、宿主PKG活性よりも原虫に選択的である。そのような選択的インヒビターの長期投与は、PKGの阻害による宿主に対する副作用を最小限に抑えるであろう。
【0068】
ヒトおよび動物における寄生虫感染症の確立を予防するためにPKGインヒビターを使用する2つの具体例としては、該化合物を飼料または飲み水中で連続的に投与することによる、1)流行地域のヒトにおけるプラスモジウム(Plasmodium)(マラリア)感染の予防、および2)家禽におけるコクシジウム症の予防が挙げられる。マラリアは、世界における第1位の死亡原因である。該疾患は、流行地域において蚊により伝染され、生命を脅かす感染症にまで非常に急速に進行しうる。したがって、マラリアを保持する蚊が存在する地域に住む又はそこを訪れる者は、感染を予防するために日常的に予防薬を服用する。該PKGインヒビターは、1日に1回以上、経口的または非経口的に投与されるであろう。該用量は、0.01mg/kg〜100mg/kgとなろう。該化合物は、該患者または動物が寄生虫感染の危険にさらされている全期間にわたり投与されうるであろう。
【0069】
コクシジウム症は、ヒトおよび動物において生じうる疾患であり、いくつかの属のコクシジウムにより引き起こされる。最も経済的に重要な、コクシジウム症の発生は、家禽における疾患である。家禽におけるコクシジウム症は、エイメリア(Eimeria)属の寄生性原虫により引き起こされる。該疾患は、汚染された糞便を介してトリ集団全体に非常に急速に広がりうる。該寄生虫は、腸組織を破壊し、したがって腸の裏打ちを損傷して栄養吸収を損なう。家禽小屋内でのコクシジウム症の発生は、家禽生産者にとって大きな痛手となる経済的損失を引き起こしうるため、飼料中に予防的に抗コクシジウム剤を使用することが標準的な慣行となっている。PKGインヒビターは、そのトリの生涯またはその一時期にわたり飼料または飲み水中に投与されるであろう。該用量は、飼料または水中で0.1ppm〜500ppmとなろう。
【0070】
ヒトまたは動物における確立された寄生虫感染症の治療のためには、該感染が疑われたり又は診断されたら、該PKGインヒビターを経口的または非経口的に投与することが可能であろう。該治療期間は、具体的な寄生虫疾患および該感染の重症度に応じて様々となろう。一般には、該寄生虫が駆除され及び/又は該疾患の症状が消散するまで、該治療を継続することになろう。2つの具体例として、1)動物またはヒトにおけるクリプトスポリジウム・パルブム(Cryptosporidium parvum)感染の治療、およびヒトにおける急性熱帯熱マラリアの治療が挙げられる。クリプトスポリジウム・パルブム(Cryptosporidium parvum)は、ヒトおよび動物の腸管を裏打ちする細胞に感染しそれを破壊する寄生性原虫である。感染は極めて急速に確立し、その患者に急性作用をもたらす。ヒトの場合には、患者は5〜7日間にわたり重篤な赤痢となる。免疫低下患者においては、クリプトスポリジウム・パルブム(C.parvum)感染が持続することがあり、生命を脅かすことがある。動物においては、クリプトスポリジウム・パルブム(C.parvum)感染は、若い乳牛の第1位の死亡原因である。クリプトスポリジウム・パルブム(C.parvum)感染は、症状および糞便検査により容易に診断されうる。該疾患が疑われたり及び/又は診断されたら、PKGインヒビターでの治療を開始することができる。該用量は、0.01mg/kg〜500mg/kgの様々なものとなろう。治療は、該感染が消失するまで、1日1回以上、経口的または非経口的なものとなろう。通常は、この投与期間は1〜3週間となろう。
【0071】
熱帯熱マラリア(P.falciparum)は、生命を脅かす急性マラリア感染症をヒトにおいて引き起こす。該感染は、治療されないで放置されると、しばしば、患者を死に至らしめる。マラリア感染は、症状および患者からの血液サンプルの検査により容易に診断されうる。診断後に治療が開始されるであろう。PKGインヒビターは、該感染が消失するまで、1日1回以上、経口的または非経口的に投与されるであろう。該用量は、0.01mg/kg〜200mg/kgとなろう。
【0072】
PKGインヒビターは、他の抗原虫剤に用いるのと同様の方法で、治療を要する患者に投与することができる。例えば、それを非経口的、経口的、局所的または直腸内に投与することができる。投与すべき量は、使用する個々の化合物、関与する感染生物、個々の宿主、該疾患の重症度、該宿主の身体状態、および選択した投与経路に応じて様々となり、適当な投与量は、当業者により容易に決定されうる。ヒトおよび動物における原虫疾患の投与には、該投与量は0.01mg/kg〜500mg/kgとなりうる。ヒトおよび動物における予防用には、該投与量は0.01mg/kg〜100mg/kgとなりうる。抗コクシジウム剤として、特に家禽において使用する場合には、該化合物は、好ましくは、該動物の飼料または飲み水中に投与される。該投与量は0.1ppm〜500ppmである。
【0073】
PKGインヒビターは、通常の医薬配合技術に従い製剤化することができる。したがって、PKGインヒビター組成物は、該有効成分に加えて、医薬上許容される担体および所望により使用する他の治療成分を含有しうる。該組成物は、経口、直腸、局所または非経口(皮下、筋肉内および静脈内を含む)投与に適した組成物でありうるが、与えられたいずれかの場合における最も適した経路は、個々の宿主、ならびに該有効成分が投与される状態の性質および重症度に左右されるであろう。該組成物は、単位投与形として簡便に提供され、薬学分野の当業者によく知られた方法のいずれかにより製造される。
【0074】
経口投与に適した本発明の医薬組成物は、所定量の該有効成分をそれぞれが含有するカプセル剤、カシェ剤または錠剤などの分離した単位として、あるいは散剤または顆粒剤として、あるいは水性液、非水性液中の液剤または懸濁剤、水中油型エマルションまたは油中水型エマルションとして提供されうる。そのような組成物は、薬学分野の方法のいずれかにより製造することができるが、すべての方法は、1以上の必要な成分を構成する担体と該有効成分とを一緒にする工程を含む。一般に、該組成物は、該有効成分を液体担体または微細固体担体またはそれらの両方と均一かつ密接に混合し、ついで、必要に応じて、該生成物を所望の外観に成形することにより製造する。例えば、錠剤は、所望により1以上の補助成分と共に圧縮または成形することにより製造することができる。圧縮錠剤は、所望により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性剤または分散剤と混合された散剤、顆粒剤などの自由流動形態の有効成分を適当な機械中で圧縮することにより製造することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適当な機械中で成形することにより製造することができる。望ましくは、各錠剤は約1mg〜約500mgの該有効成分を含有し、各カシェ剤またはカプセル剤は約1〜約500mgの該有効成分を含有する。
【0075】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中のこれらの活性化合物の液剤または懸濁剤として製造することができる。また、分散液は、油中のグリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物中で製造することができる。保存および使用の通常の条件下では、これらの製剤は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含有する。
【0076】
注射用途に適した医薬形態には、無菌水溶液または分散液、および無菌注射溶液または分散液の即時調製用の無菌散剤が含まれる。いずれの場合においても、該形態は無菌でなければならず、容易な注入性が存在するよう流体でなければならない。それは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌、真菌などの微生物の汚染作用に対して防護されなければならない。該担体は、例えば水、エタノール、多価アルコール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、それらの適当な混合物および植物油を含有する溶媒または分散媒でありうる。
【0077】
適当な局所製剤には、経皮装置、エアゾール剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、粉剤などが含まれる。これらの製剤は、該有効成分を含有するよう通常の方法により製造することができる。例えば、クリーム剤または軟膏剤は、約5〜10重量%の該化合物を含有する十分な量の親水性物質および水を、所望のコンシステンシーを有するクリーム剤または軟膏剤を与えるのに十分な量で混合することにより製造する。
【0078】
担体が固体である、直腸内投与に適した医薬組成物は、単位投与坐剤として最も好ましく提供される。適当な担体には、カカオ脂および当技術分野において一般に用いられる他の物質が含まれ、該坐剤は、軟化または融解担体との組合せ体の混合およびそれに続く型物の冷却および成形により簡便に形成されうる。
【0079】
前記医薬製剤は、前記担体成分に加えて、適宜、1以上の追加的担体成分、例えば希釈剤、緩衝剤、香味剤、結合剤、界面活性剤、粘稠化剤、滑沢剤、保存剤(抗酸化剤を含む)など、および意図される被投与体の血液に対して該製剤を等張にするために加える物質を含みうると理解されるべきである。
【0080】
家禽におけるコクシジオス症の処置に使用する場合には、PKGインヒビターは、飼料組成物の成分として簡便に投与することができる。適当な家禽飼料組成物は、典型的には、約1重量ppm〜約1000重量ppm、好ましくは、約0.01重量%〜約0.1重量%のPKGインヒビターを含有する。もちろん、その最適なレベルは、関与するエイメリア(Eimeria)種によって様々となり、当業者により容易に決定されうる。食餌に対して約0.01重量%〜約0.1重量%の家禽飼料中のレベルが、エイメリア・テネラ(E.tenella)に関連した病理の抑制において特に有用であり、腸生息種の同様の抑制のための好ましい濃度は、食餌に対して約0.01重量%〜約0.1重量%である。約0.01重量%〜約0.1重量%の量が、盲腸および腸コクシジオス症の病理学的効果の減弱に有利である。
【0081】
家禽飼料の製造においては、PKGインヒビターは、微粉砕形態のそれを家禽飼料または中間体製剤(予混体)と機械的に混合することにより容易に分散させることが可能であり、ついでそれを他の成分と混和して、家禽に与えられる最終的な家禽飼料を製造することができる。家禽飼料の典型的な成分には、糖ミツ、発酵残渣、ひき割りトウモロコシ粉、粉砕または練り伸ばされたエンバク、小麦麦芽飼料(shorts)およびふすま入り粗びき小麦粉、ムラサキウマゴヤシ、クローバーおよび肉粉、ならびに無機補助物質、例えば骨粉、炭酸カルシウムおよびビタミンが含まれる。
【0082】
また、化合物を含有する組成物は、散剤または液体濃縮物形態として製造することができる。標準的な獣医用製剤の慣例に従い、ラクトース、ショ糖などの通常の水溶性賦形剤を該散剤に加えて、それらの物理的特性を改善することができる。例えば、本発明の特に適切な散剤は、50〜100% w/w、好ましくは、60〜80% w/wの該化合物、および0〜50% w/w、好ましくは、20〜40% w/wの通常の獣医用賦形剤を含む。これらの散剤は、例えば中間体予混体を介して動物飼料に加えたり、あるいは動物の飲み水中に希釈することができる。
【0083】
本発明の液体濃縮物は、適切には、水溶性化合物の組合せを含有し、所望により、獣医的に許容される水混和性溶媒、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、グリセロールホルマール、または30% v/vまでのエタノールと混合したそのような溶媒を含みうる。該液体濃縮物は、動物、特に家禽の飲み水に投与することができる。
【0084】
以下の実施例は、本発明を例示ずるために記載されており、本発明の範囲を何ら限定するものではないと解釈されるべきである。
【実施例1】
【0085】
H]インヒビター化合物を使用する競合結合アッセイ
PKGを、適当に希釈された[H]インヒビター化合物と氷上で60分間インキュベートし、0.8ml G−25ゲル濾過カラム(AGTCから購入)での溶出により遊離リガンドを結合リガンドから分離する。リガンド結合タンパク質を含有するゲル粒子内部容積を集め、放射能を液体シンチレーション計数により評価する。競合結合研究のために、過剰の又は適切に希釈された非放射性競合体を、放射能標識化合物の添加と同時に又はその0.01〜5分前に加える。該寄生虫薬結合タンパク質への該標識インヒビターの結合の50%を抑制するのに要した該試験化合物の濃度(IC50)を求める。
【0086】
該競合結合アッセイのためのPKGは、S100画分、PKG活性含有粗調製物または組換えPKGでありうる。一般には、該PKG調製物は、20〜50μgのタンパク質を含有する。
【実施例2】
【0087】
PKG触媒活性
エイメリア・テネラ(E.tenella)PKG精製画分(実施例3に記載のとおりに得られたもの)(0.05μl)を、25mM HEPES,pH7.4,10mM MgCl、5mM β−メルカプトエタノール、20mM β−グリセロリン酸(または100μMオルトバナジウム酸ナトリウム)、10μM cGMP、2μM ATP、10nM[33P]ATP(2000Ci/mmol)、400μM Kemptide(または2mM Kemptideまたは0.43mg/mlミエリン塩基性タンパク質)を含有する20μlのインキュベーション混合物中、室温で2時間インキュベートする。ついで該反応を、20μlのアッセイ容積当たり2.5μlの0.25Mリン酸でクエンチし、該混合物をWhatman P81クロマトグラフィー紙上にスポットする。該クロマトグラフィー紙を2分間乾燥させ、150mlの75mMリン酸で5回(それぞれ3分間)洗浄し、ついで95%エタノールで手短に洗浄する。風乾後、該フィルター上に残った標識Kemptideを液体シンチレーション計数により定量する。
【実施例3】
【0088】
エイメリア・テネラからの[H]インヒビター化合物結合タンパク質の精製
(a)エイメリア・テネラのライセートの調製
約6×10個のエイメリア・テネラ(E.tenella)未芽胞形成オーシストを、50mlの10mM Hepes(pH7.4)中で2回洗浄した。ついでオーシストを、等容積の細胞溶解バッファー(20%グリセロール、10mM Hepes,pH7.4、0.1mMオルトバナジウム酸ナトリウム、プロテアーゼインヒビターカクテル[Sigma P8340、1:200希釈物])および等容積の3mmガラスビーズに懸濁させ、4℃で15分間ボルテックスすることにより混合した。オーシストを、破壊に関して顕微鏡検査し、該オーシストの95%が破壊されるまで混合を継続した。ついでガラスビーズを取り出し、該懸濁液の残りに加えた20mlの細胞溶解バッファーで洗浄した。得られたホモジネートを該ガラスビーズから分離し、100,000×gで1時間遠心分離した。該ペレットを捨て、該上清(これを、エイメリア・テネラ(E.tenella)S100画分と称することとする)を結合アッセイおよび更なる標的精製のために維持した。該タンパク質濃度を評価した後、該S100画分をアリコート化し、−80℃で凍結した。
【0089】
(b)エイメリア・テネラ[H]インヒビター化合物結合タンパク質の精製
該S100画分を2LのバッファーA(30mMリン酸ナトリウム,pH7.4、1mM DTT、1mM EDTA、20%グリセロール、10mMフッ化ナトリウム、0.1mMオルトバナジウム酸ナトリウム)に対して室温で一晩透析した。該透析物を100,000×gで1時間遠心分離し、該ペレットを捨てた。該上清を、バッファーA中で平衡化されたHiLoad Q 26/10カラム(Pharmacia)にアプライした。280nmのODが基線レベルに戻るまで(これは、該カラムからはそれ以上のタンパク質が溶出しないことを示す)、該カラムをバッファーAで洗浄した。ついで、バッファーA中の直線塩化ナトリウム勾配(0〜1M NaCl)を用いて、該タンパク質を溶出した。[H]インヒビター化合物(前記実施例1に記載のもの)を使用して、各画分を、結合に関して試験した。単一のピークとして溶出した結合活性および結合活性含有画分をプールし、2LのバッファーB(30mMリン酸ナトリウム,pH7.4、1mM DTT、1mM EDTA、10mMフッ化ナトリウム、0.1mMオルトバナジウム酸ナトリウム、1M硫酸アンモニウム)に対して一晩透析した。該透析プールを、バッファーB中で平衡化されたブチルセファロースカラム(Pharmacia)にアプライした。280nmのODが基線レベルに戻るまで(これは、該カラムからはそれ以上のタンパク質が溶出しないことを示す)、該カラムをバッファーBで洗浄した。バッファーB中の硫酸アンモニウムの直線逆勾配(1Mから0Mまでの硫酸アンモニウム)で、該タンパク質を該カラムから溶出した。各画分を、前記のとおりに[H]インヒビター化合物の結合に関して試験し、結合活性を含有する画分をプールし、2LのバッファーC(10mMリン酸ナトリウム,pH7.4、1mM DTT、10mMフッ化ナトリウム、0.1mMオルトバナジウム酸ナトリウム)に対して一晩透析した。該透析物を、バッファーC中で平衡化されたヒドロキシアパタイトカラム(Biorad)にアプライした。280nmのODが基線レベルに戻るまで(これは、該カラムからはそれ以上のタンパク質が溶出しないことを示す)、該カラムをバッファーCで洗浄した。バッファーC中のリン酸ナトリウムの直線勾配(10〜400M リン酸ナトリウム)を用いて、タンパク質を該カラムから溶出した。該画分を、実施例1に記載のとおりに[H]インヒビター化合物の結合に関して試験し、結合活性を含有する画分をプールし、2LのバッファーAに対して一晩透析した。該透析物を、バッファーA中で平衡化されたMonoQ 5/5カラム(Pharmacia)にアプライし、280nmのODが基線レベルに戻るまで(これは、該カラムからはそれ以上のタンパク質が溶出しないことを示す)、該カラムをバッファーAで洗浄した。ついでバッファーA中の塩化ナトリウムの直線勾配(0Mから1M)を用いて、該タンパク質を溶出した。各画分を、前記のとおりに[H]インヒビター化合物への結合に関して試験した。結合活性を含有する画分のアリコートを4〜20%または4〜12%ポリアクリルアミドゲル(Novex)にアプライし、SDSの存在下で電気泳動を行なった。その完了したゲルを、銀染色キットを該製造業者の説明(Daiichi Pure Chemical Co.Ltd.)に従い使用して染色した。後続の実験においては、それらの2つのピーク結合画分は「PKG精製画分」と称される。
【0090】
該ピーク画分においては、該[H]インヒビター化合物結合活性と同じプロフィールで溶出した120kDaのタンパク質が同定された。このタンパク質をクーマシーブルー染色ポリアクリルアミドゲルから切り出し、トリプシンペプチドを得、ペプチド配列を得た。得られたペプチドを以下に示す。
【0091】
1.AENRQFLA[配列番号1]
2.VLYIL[配列番号2]
3.LVSIK[配列番号3]
4.EDTQAEDARLLGHLEK[配列番号4]
5.EMPTASTGTPEQQQQQQQQ[配列番号5]
6.HGEEQQQERKPSQQQQN[配列番号6]
7.VFLXIV[配列番号7]
【実施例4】
【0092】
エイメリア・テネラインヒビター化合物結合タンパク質をコードするcDNAのクローニング
一連の縮重オリゴヌクレオチドを、前記ペプチドの配列から合成した。これらの縮重オリゴヌクレオチドの組合せを、共役した逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)において使用した。逆転写酵素により触媒される反応において、エイメリア・テネラ(E.tenella)の未芽胞形成オーシストから調製したRNAを基質としてランダムヘキサマープライマーと共に使用して、該RNAのcDNAコピーを合成した。ついでこのcDNAのアリコートを、一連のPCR反応における鋳型として、前記縮重オリゴヌクレオチドの種々の組合せと共に使用した。
【0093】
鋳型としての該一次PCR反応産物、および前記の初期プライマー群とは異なる縮重オリゴヌクレオチドを使用するネスティドPCR反応を行なって、関心のあるcDNA産物を、より良く同定した。プライマーの乱交性(promiscuous)ハイブリダイゼーションがPCR反応中に生じうる及び実際に生じること、および縮重オリゴヌクレオチドを使用した場合に乱交性ハイブリダイゼーションの頻度が著しく増加することが当業者に認識されている。初期セットのペプチド配列から誘導された異なる単一の又は対になった縮重オリゴヌクレオチドプライマーでの二次的またはネスティドPCR反応を行なうことにより、関心のあるタンパク質に関連したPCR反応産物の確実性におけるはるかに大きな信頼性を得ることができる。配列データベース中の公知配列に対する類似性を有するオープンリーディングフレーム(ORF)および/または該天然ペプチドの1つと同じ内部推定ペプチドを同定するために、この選択基準を用いて、該RT−PCR反応産物のいくつかをクローニングし配列決定した。該RT−PCR産物の1つ(クローンEt.52035)は、前記で挙げた4番目のペプチドから誘導された縮重オリゴヌクレオチドにより一方の末端において及び前記で挙げた1番目のペプチドから誘導された縮重オリゴヌクレオチドにより他方の末端において定められる単一のオープンリーディングフレームを有する。さらに、クローンEt.52035由来のこのORFは、キイロショウジョウバエ(D.melanogaster)cGMP依存性プロテインキナーゼ(PKG)およびエス・セレビシエ(S.cerevisiae)cAMP依存性プロテインキナーゼ調節サブユニットに対する、限られたアミノ酸配列同一性を有する。クローンEt.52035のヌクレオチド配列を配列番号8として示し、該推定アミノ酸配列を配列番号9として示す。Et.52035 PCR産物の作製に使用した縮重オリゴヌクレオチドを以下に挙げる。該一次PCR反応においては、オリゴヌクレオチドAG1−2(ペプチド配列番号5由来)およびAG4−1(配列番号1由来)をプライマー対として使用した。ついでこのPCRの産物を二次反応における基質として、プライマー対としてのオリゴヌクレオチドAG3−1(ペプチド配列番号4由来)およびAG4−1と共に使用した。
【0094】
AG1−2:5'−ACN GGN CAN CCN GA(A/G)CA(A/G)CA−3’
AG4−1:5’−GCN A(A/G)(A/G)AA(C/T)TGN C(T/G)(A/G)TT(C/T)TC−3’
AG3−1:5’GA(A/G)GA(C/T)ACN CA(A/G)GCN GA(A/G)GA(C/T)GC−3’
【0095】
クローンEt.52035由来のインサートをハイブリダイゼーションプローブとして使用して、エイメリア・テネラ(E.tenella)cDNAライブラリーをスクリーニングした。該cDNAライブラリーは、当技術分野において一般的な方法により構築した。エイメリア・テネラ(E.tenella)の未芽胞形成オーシスト(USO)から全RNAを調製した。ポリ(A)RNAを、オリゴ(dT)セルロースクロマトグラフィーを使用して2回選択し、SuperScript逆転写酵素(Life Technologies,Inc.)による第1鎖cDNA合成のための鋳型として使用し、オリゴ(dT)でプライム化した。第2鎖cDNAの合成およびEcoRIアダプターの連結後、二本鎖cDNAを、Sephacryl S−500 HRを使用するカラムクロマトグラフィーによりサイズ分画し、ついでファージベクターラムダZAPII(Stratagene)内に連結した。ついで連結反応産物を、Gigapack III Goldパッケージングエキストラクト(Stratagene)を該製造業者の推奨に従い使用してパッケージングした。クローンEt.52035由来の453塩基対のインサートを使用して、合計1.25×10個の組換えファージをスクリーニングした。いくつかのプラーク純粋陽性クローンを各ライブラリーから単離し、製造業者の推奨に従いインビトロ切り出しによりpBluescript SK(Stratagene)内にサブクローニングした。ファジミドクローンを、制限酵素地図作成および部分ヌクレオチド配列分析により特徴づけた。Prism FS サイクルシークエンシングキットと共にApplied Biosystemsモデル373装置を使用して、自動DNAシークエンスを行なった。
【0096】
このスクリーニングにおいて精製された最長のcDNAクローン(Et.PKG7)は、113kDaのタンパク質をコードしうる1003アミノ酸の推定ORFを有する約4.3kb長である。生化学的に精製された120kDaのエイネリア・テネラ(E.tenella)タンパク質由来の7個のペプチド配列のそれぞれは、このORF内に位置しうる。Et.PKG7のヌクレオチド配列を配列番号10として示し、該推定アミノ酸配列を配列番号11として示す。該推定アミノ酸配列は、尚も、ショウジョウバエ(Drosophila)PKGに最も密接に類似しており、二重(dual)cGMP結合ドメインに対しては31%の同一性、該触媒ドメインに対しては45%の同一性を示す。これらの2つの機能的ドメインが該タンパク質の長さに沿って互いに近い他のすべてのPKGとは異なり、該エイメリア(Eimeria)遺伝子産物は、それらの2つのドメイン間に約300アミノ酸を有すると予想される。この300アミノ酸長は、エイメリア(Eimeria)タンパク質と他のPKGとのサイズの相違の大部分を説明するものである。
【実施例5】
【0097】
エイメリア・テネラPKG7のトキソプラズマ・ゴンヂcDNAホモログのクローニング
エイメリア・テネラ(E.tenella)cDNAクローンPKG7の753ヌクレオチド長(配列番号10内のヌクレオチド2573〜3325位)をPCRにより増幅し、減少したハイブリダイゼーションストリンジェンシーを用いてトキソプラズマ・ゴンヂ(T.gondii)cDNAライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして使用して、この関連寄生性原虫からPKGホモログを単離した。エイメリア(Eimeria)cDNAクローンのこの領域を選択したのは、それが、該推定タンパク質産物の触媒ドメインの大部分を含み、核酸データベース中のPKG登録体のなかで進化的に最も高度に保存された領域であるからである。約4.0kb長の完全長トキソプラズマ・ゴンヂ(T.gondii)cDNAクローンは既に配列決定されており、エイメリア・テネラ(E.tenella)クローンPKG7から予想されるタンパク質に69%同一であり77%類似している994アミノ酸長の推定タンパク質をコードしている。トキソプラズマ・ゴンヂ(T.gondii)PKGをコードするヌクレオチド配列を配列番号12に示し、該推定アミノ酸配列を配列番号13に示す。
【実施例6】
【0098】
エイメリア・テネラPKG7によりコードされるタンパク質の機能的組換え発現
cDNAクローンEt.PKG7のオープンリーディングフレームは、6個のヒスチジン残基を該タンパク質のC末端に付加するようにPCRにより修飾されている。これは、当業者によく知られた方法を用いて達成されている。クローンEt.PKG7由来の推定オープンリーディングフレームの末端にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーを合成した。該5’−オリゴヌクレオチドは、開始メチオニンと推定される部位から始まり、BamHIクローニング部位を付加するように修飾されている。該3’−オリゴヌクレオチドは、Et.PKGの最後の6個の推定アミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列に相補的な配列を保持する。これに続いて、該合成オリゴヌクレオチドは、6個の連続したヒスチジン残基をコードしうる18ヌクレオチドを有する。そしてこの長さに続いて、TAAヌクレオチドトリプレット(翻訳終結コドン)、ついでクローニング用のXbaI制限酵素認識配列が存在する。これらの2つの合成プライマーを、鋳型としてEt.PKG7を使用するPCR反応において使用して、該タンパク質コード領域に対応し無脊椎動物細胞内での組換えタンパク質発現用のバキュロウイルス発現ベクターpFastBac1(Life Technologies)内に5’−Bam HI/3’−Xba I断片として定方向にクローニングされうるcDNAを作製した。該ヘキサ−ヒスチジンモチーフは、該組換えタンパク質の発現およびウエスタンブロットによるその精製を追跡するためのエピトープ、ならびに固定化金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)による組換えEt.PKG7の精製を補助するアフィニティータグの両方として働く。無脊椎動物Sf9細胞内で発現されたウエスタンブロット陽性組換えタンパク質は、生化学的な特徴づけのために連続的なIMACおよびcGMP−アガロースアフィニティークロマトグラフィー(後記を参照されたい)により部分精製されている。
【実施例7】
【0099】
天然120kDaエイメリア・テネラ[H]インヒビター化合物結合タンパク質およびcGMP依存性プロテインキナーゼとしてcDNAクローンEt.PKG7から発現された組換えタンパク質の同定
(a)PKG触媒活性
前記のエイメリア・テネラ(E.tenella)PKG精製画分(0.05μl)を、25mM HEPES,pH7.4、10mM MgCl、5mM β−メルカプトエタノール、20mM β−グリセロリン酸(または100μMオルトバナジウム酸ナトリウム)、10μM cGMP、2μM ATP、10nM[33P]ATP(2000Ci/mmol)、400μM Kemptide(または2mM Kemptideまたは0.43mg/mgミエリン塩基性タンパク質)を含有する20μlのインキュベーション混合物中、室温で2時間インキュベートした。ついで該反応を、20μlのアッセイ容積当たり2.5μlの0.25Mリン酸でクエンチし、該混合物をWhatman P81クロマトグラフィー紙上にスポットした。該クロマトグラフィー紙を2分間乾燥させ、150mlの75mMリン酸で5回(それぞれ3分間)洗浄し、ついで95%エタノールで手短に洗浄する。風乾後、該フィルター上に残った標識Kemptideを液体シンチレーション計数により定量した。
【0100】
生化学的に精製された天然エイメリア・テネラ(E.tenella)インヒビター化合物結合タンパク質は、環状ヌクレオチド補因子の不存在下で試験した場合にはキナーゼ活性をほとんど含有していなかった。キナーゼ活性を、cAMPの存在下でアッセイした場合には限界的に刺激されたにすぎなかったが、cGMPでは該活性は400倍を超える大きさで刺激された。
【0101】
(b)「ゲル内」キナーゼアッセイ
該キナーゼ活性が120kDaのポリペプチドにより生じておりこの生化学的画分中の別の副次的タンパク質により生じているのではないことを確認するために、「ゲル内」キナーゼアッセイを行なった(後記方法を参照されたい)。該ゲル内キナーゼアッセイは、製造業者の説明書(Stratagene In−Gel Protein Kinase Assay Kit,Instruction Manual Cat.#206020,Revision #117002)に従い行なった。ただし、該キットで提供されている基質の代わりに、ゲル1ml当たり0.33mgのミエリン塩基性タンパク質を使用した。この方法においては、SDS−ポリアクリルアミドゲルにキナーゼ基質を染み込ませ、該精製画分を該ゲル内に電気泳動させる。SDSにさらした後で該キナーゼを再生させるために十分に洗浄した後、32P ATPおよびcGMPを加えた。該標識は、触媒的に活性なキナーゼが存在する位置で該基質に取込まれる。このアッセイにおいては、標識は120kDaのタンパク質の位置においてのみ取り込まれた。
【0102】
(c)エイメリア・テネラ(E.tenella)のライセート由来の可溶性タンパク質を、HiLoad Qカラム(前記実施例3を参照されたい)上でクロマトグラフィーに付した。画分をキナーゼ活性および結合活性に関して試験した。その結果は、これらの2つの活性が符合することを示しており、[H]インヒビター化合物への結合とキナーゼ活性とが同一タンパク質中に存在するという更なる証明を与えるものである。
【0103】
(d)cGMPアガロースアフィニティークロマトグラフィー
1mlのcGMPアガロースカラム(Biolog)をcGMPアガロースバッファー(50mM Hepes,pH7.4、10%グリセロール、10mMフッ化ナトリウム、0.1mMオルトバナジウム酸ナトリウム、1mM EDTA)で平衡化し、該精製画分を該カラムにアプライした。該カラムを10mlのcGMPアガロースバッファーで洗浄した。1mM GMPを含有する5mlのcGMPアガロースバッファーでの洗浄により、非特異的結合タンパク質を除去した。15mM cGMPを含有する5mlのcGMPアガロースバッファーでタンパク質を溶出し、画分を集めた。画分を[H]インヒビター化合物結合、PKG活性に関して及びポリアクリルアミドゲル電気泳動後の銀染色により分析した。アフィニティーマトリックスであるcGMPアガロース(Biolog)はcGMP結合タンパク質に結合する。該精製天然寄生虫PKG画分をそのようなカラムにアプライした場合には、該インヒビター化合物結合活性およびPKG触媒活性のすべては該カラムに結合し、cGMPでは溶出可能であったが、GMPでは溶出できなかった(後記を参照された)。該溶出液の染色ゲルは、該カラムから溶出した唯一のタンパク質が120kDaのポリペプチドであることを示した。cDNAクローンEt.PKG7から無脊椎動物細胞内で発現されIMACクロマトグラフィーにより部分精製された組換えタンパク質も、該cGMP−アガロースアフィニティーマトリックスに結合し、cGMP含有バッファーで特異的に溶出されうる。これらの連続的アフィニティークロマトグラフィーにより精製された組換えタンパク質はまた、触媒的に活性なPKGである。
【0104】
前記アッセイからの結果は、120kDaのエイメリア・テネラ(E.tenella)タンパク質がPKGであること、およびそれがインヒビター化合物に特異的に結合することを示している。さらに、天然および組換え発現の両方のPKG触媒活性が、<5nMのIC50でインヒビター化合物により阻害されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原虫のcGMP依存性プロテインキナーゼ。
【請求項2】
アピコンプレキサン(Apicomplexan)科の原虫のcGMP依存性プロテインキナーゼ
【請求項3】
エイメリア(Eimeria)種のcGMP依存性プロテインキナーゼ。
【請求項4】
エイメリア・テネラ(Eimeria tenella)のcGMP依存性プロテインキナーゼ。
【請求項5】
トキソプラズマ・ゴンヂ(Toxoplasma gondii)のcGMP依存性プロテインキナーゼ。
【請求項6】
配列番号11のcGMP依存性プロテインキナーゼをコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
配列番号10を有するポリヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号11を有するポリペプチド。
【請求項9】
配列番号13のcGMP依存性プロテインキナーゼをコードするポリヌクレオチド。
【請求項10】
配列番号12を有するポリヌクレオチド。
【請求項11】
配列番号13を有するポリペプチド。
【請求項12】
(a)原虫PKGを、(i)PKGと相互作用する既知量の標識化合物、および(ii)既知希釈度の試験化合物または天然物抽出物と接触させ、
(b)該試験化合物により誘発された該標識化合物の相互作用の阻害率を定量することを含んでなる、抗原虫活性を有する化合物の同定方法。
【請求項13】
PKGと相互作用する化合物がPKGの基質である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
PKGと相互作用する化合物が、該酵素に結合する化合物である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
(a)無傷の宿主または原虫の細胞を試験化合物または天然物抽出物と接触させ、
(b)該細胞を破壊して、PKG触媒活性を有する生化学的画分を得、
(c)該生化学的画分におけるPKG活性のレベルを測定することを含んでなる、抗原虫活性を有する化合物の同定方法。

【公開番号】特開2010−193900(P2010−193900A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−107098(P2010−107098)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【分割の表示】特願2000−611704(P2000−611704)の分割
【原出願日】平成12年4月10日(2000.4.10)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】