説明

抗微生物ペプチドを固定化した素材

【課題】MRSAを始めとする薬剤耐性菌を含む広範な細菌、トリパノソーマ原虫等の病原微生物および骨髄腫、白血病等のガンの増殖を抑制する処理を施した抗菌性医療器具、医療素材を提供する。
【解決手段】X1−Lue−X2−Leu−X3−Ile−X4−Arg−Arg−NH(式中、X1はArgまたはAlaであり、X2はTyr、ArgまたはLeuであり、X3はArgまたはAlaであり、X4はGlyまたはArgである。)を含むポリペプチドを基材に固定化することにより、抗菌活性を有する医療器具、医療素材を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カブトムシディフェンシン由来改変ペプチドを固定化した素材、その製造方法および使用方法ならびに当該素材から成る成型品に関する。
【背景技術】
【0002】
感染症とは、細菌などの微生物がヒトまたは動物の体内に侵入、増殖し、その結果として惹起される疾病をいい、その発症は、感染する微生物と感染した宿主の抵抗力のバランスに依存している。特に、医療機関内においては感染に対する抵抗力が低下した患者が多く、健常人には何ら病原性を示さない微生物が、抵抗力が低下した患者に対しては致死的な症状の原因となる場合がある。このような医療機関内における感染は、病院外でおこる感染症とは病原体も対策も異なる点が多いため、市中感染と区別して院内感染と呼ばれる。
【0003】
院内感染の原因は主に接触感染であることから、手洗いや医療器具の消毒、滅菌等の対策が採られているが、MRSAを始めとする院内感染は増加傾向にあり、より効果的な対策が求められている。
【0004】
また、縫合糸、人工血管、カテーテル等の施術後に体内に留置される医療機器は細菌の接着の足場となり易く、付着した細菌が増殖してバイオフィルムが形成される。このような医療器具の表面に形成されたバイオフィルム中の細菌は抗菌薬や免疫系に対して抵抗性を増し、治療に抵抗してしばしば慢性、再発性の感染症の原因となることから、留置用医療機器の使用には、このようなバイオフィルム感染症が問題となっている。
【0005】
本発明者らはカブトムシディフェンシン由来改変ペプチドが、薬剤耐性菌を含む広範な細菌、トリパノソーマ原虫等の病原微生物および骨髄腫、白血病等のガン細胞に対して細胞膜を破壊し、殺す活性を有することを見出した(特許文献1)。これらカブトムシディフェンシン由来改変ペプチドを医療器具、医療素材の表面に固定化することができれば、院内感染、術後感染の予防に有効であることが期待される。
【0006】
また、当該ペプチドを固定化した抗菌性素材を用いることにより、生体内に留置してもバイオフィルム形成の足場として利用されない医療素材を提供し得ることが期待される。
【0007】
しかし、従来、抗微生物ペプチドを効率よく固相表面に固定化した抗菌素材は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−284421
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、MRSAを始めとする薬剤耐性菌を含む広範な細菌、トリパノソーマ原虫等の病原微生物および骨髄腫、白血病等のガンに対して傷害性を有するカブトムシディフェンシン由来改変ペプチドを素材表面上に固定化することにより、当該素材を用いた抗菌性医療器具、医療素材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意努力の結果、自由度の高い固定化法を用いることにより、抗微生物ペプチドの活性を失わせることなく素材表面に固定化し得ること、および当該ペプチドの活性が洗浄を繰り返しても劣化しないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は上記知見に基づき、下記式で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを固定化した素材を提供するものである。
X1−Lue−X2−Leu−X3−Ile−X4−Arg−Arg−NH
(式中、X1はArgまたはAlaであり、X2はTyr、ArgまたはLeuであり、X3はArgまたはAlaであり、X4はGlyまたはArgである。)
好ましくは、上記ポリペプチドはArg−Leu−Tyr−Leu−Arg−Ile−Gly−Arg−Arg−NH、Arg−Leu−Arg−Leu−Arg−Ile−Gly−Arg−Arg−NH、Ala−Leu−Tyr−Leu−Ala−Ile−Arg−Arg−Arg−NHまたはArg−Leu−Leu−Leu−Arg−Ile−Gly−Arg−Arg−NHから成る群より選択される。
【0012】
別の態様として本発明は、上記素材を製造する方法に関する。具体的には、以下の方法により抗菌ペプチドが結合した素材を製造する。
【0013】
基材表面上のヒドロキシル基とエピハロヒドリンを反応させて、基材表面をハロゲン化した後、1,3−ジアミノプロパンまたはジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテルなどのジアミノ化合物を加えて、アミノ修飾基材を作製する。次に当該アミノ基に保護アミノ酸のカルボキシル基を反応させて、ペプチド結合を形成させる。結合しなかったアミノ酸を洗浄した後、ピペリジン等で基材上のアミノ基を脱保護し、新たな保護アミノ酸を結合させる。この工程を繰り返して所望のアミノ酸を順次結合させ、最後にアミノ酸を脱保護して本発明のポリペプチドが結合した素材を得る。
【0014】
本発明で使用するカブトムシディフェンシン由来改変ペプチドは、薬剤耐性菌を含む広範な細菌、トリパノソーマ原虫等の病原微生物および骨髄腫、白血病等のガン細胞に対して傷害性を有しており、当該ペプチドを結合した本発明の素材はこれら生物活性を安定的に維持している。本発明の素材は洗浄やオートクレーブによる加熱滅菌処理によってその活性を喪失しないことから、当該素材を用いることにより、抗微生物または抗ガン活性を有する成型品が得られる。
【0015】
したがって、本発明はまた、当該基材を所望の形に成型した抗微生物または抗ガン活性を有する成型品に関する。
【0016】
例えば、本発明の素材を用いた創傷被覆材を使用することにより、創傷部位における細菌感染を予防し得ることが期待できる。また、本発明の素材を透析膜に用いることにより、人工透析器具の細菌汚染の可能性を軽減し得るとともに、血液中の病原微生物やガン細胞等を殺す効果が期待できる。また、例えば本発明の素材を用いた衣服を使用することにより、衣服に付着した病原微生物による感染を予防し得ることが期待できる。
【0017】
更に、本発明の素材を用いた人工血管、ステント等の生体留置用器具は、細菌増殖の足場として利用されることを回避できるため、バイオフィルム感染症を予防することができる。
【0018】
また、本発明の素材の抗微生物活性を利用して液体中の病原性微生物を殺すことができる。したがって、本発明は一態様として、血液または血漿などの液体を本発明の素材と接触させることを特徴とする液体の殺菌方法を提供する。
【0019】
本発明は、より具体的には以下の物および方法を提供する。
(1)下記式で表されるアミノ酸配列:
X1−Lue−X2−Leu−X3−Ile−X4−Arg−Arg−NH
(式中、X1はArgまたはAlaであり、X2はTyr、ArgまたはLeuであり、X3はArgまたはAlaであり、X4はGlyまたはArgである。)を含むポリペプチドを固定化した素材。
(2)前記ポリペプチドがArg−Leu−Tyr−Leu−Arg−Ile−Gly−Arg−Arg−NH、Arg−Leu−Arg−Leu−Arg−Ile−Gly−Arg−Arg−NH、Ala−Leu−Tyr−Leu−Ala−Ile−Arg−Arg−Arg−NHまたはArg−Leu−Leu−Leu−Arg−Ile−Gly−Arg−Arg−NHである(1)に記載の素材。
(3)前記ポリペプチドがスペーサーを介してC末端側で基材と結合していることを特徴とする(1)または(2)に記載の素材。
(4)基材が高分子または金属である(1)乃至(3)のいずれかに記載の素材。
(5)基材がセルロースである(4)に記載の素材。
(6)基材にエピハロヒドリンを反応させて表面をハロゲン化した後、1,3−ジアミノプロパンまたはジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテルを加えてアミノ修飾し、当該アミノ基に保護アミノ酸を順次結合させ、最後に保護基を脱離させることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の素材の製造方法。
(7)(1)乃至(5)のいずれかに記載の素材から成る抗微生物または抗ガン活性を有する成型品。
(8)創傷被覆材、縫合糸、人工血管、カテーテル、透析膜、衣服およびステントからなる群より選択される(7)に記載の成型品。
(9)液体を(1)乃至(5)のいずれかに記載の素材と接触させることを特徴とする液体の殺菌方法。
(10)液体が血液または血漿である(9)に記載の殺菌方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明者らは、自由度の高い固定化法を用いることにより、抗微生物活性を維持しつつ、カブトムシディフェンシン由来改変ペプチドを固相に固定化し得ることを見出した。また、固定化されたペプチドは非常に安定であり、繰返しの洗浄、オートクレーブによる滅菌処理を行っても活性を維持していることが確認された。
【0021】
よって、本発明のカブトムシディフェンシン由来改変ペプチドを固定化した素材を用いることにより、長期間の再利用が可能な抗微生物処理された医療機器を提供することが可能となる。
【0022】
更に、長期間にわたって抗微生物活性を維持し得ることから、当該素材を用いることにより、バイオフィルム感染症を誘発し難い生体内留置用の医療機器を提供することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ペプチドを基材に固定化する反応の模式図である。
【図2】カブトムシディフェンシン由来改変ペプチドを固定化した綿布のマウス骨髄腫細胞P3−X63−Ag8.653およびヒト白血病細胞Jurkatに対する活性を示す。図中「布なし」は布が入っていない群、「未処理布」はペプチドが固定されていない布が入っている群、「ペプチド固定綿布1」および「ペプチド固定綿布2」はそれぞれ配列番号4のペプチドが1,3−ジアミノプロパンまたはジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテルを介して固定された布が入っている群を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の素材は、アミノ酸配列X1−Lue−X2−Leu−X3−Ile−X4−Arg−Arg−NH(式中、X1はArgまたはAlaであり、X2はTyr、ArgまたはLeuであり、X3はArgまたはAlaであり、X4はGlyまたはArgである。)を含むポリペプチドを基材上に固定化したものである。
【0025】
本発明において使用するポリペプチドの好ましい例としては、
Arg−Leu−Tyr−Leu−Arg−Ile−Gly−Arg−Arg−NH(配列番号1)、
Arg−Leu−Arg−Leu−Arg−Ile−Gly−Arg−Arg−NH(配列番号2)、
Ala−Leu−Tyr−Leu−Ala−Ile−Arg−Arg−Arg−NH(配列番号3)、または
Arg−Leu−Leu−Leu−Arg−Ile−Gly−Arg−Arg−NH(配列番号4)を含むポリペプチドを挙げることができる。
【0026】
本発明において「基材」とは、カブトムシディフェンシン由来改変ペプチドを結合させる固相をいう。また、「素材」とは上記ポリペプチドを結合させた基材をいい、人工血管や透析膜などに成型することにより、医療用機器等の成型品に加工し得るものである。したがって、基材および素材の形状は繊維、膜、粒状など、成型品としての機能を奏するものであればいずれの形状であってもよい。
【0027】
当該基材は、セルロースなどのポリマーや金属などペプチドを固定化し得るものではあればどのような材質から成るものであっても良い。
スペーサー付きのペプチドを共有結合により固定化するために、すでに基材中に固定化に利用できる適当な官能基を有しているか、あるいは官能基を容易に導入できる素材を使用することが好ましい。
具体的には、セルロース、ナイロン、ポリスチレンなどの高分子の使用が好ましく、特にセルロースは、官能基として水酸基を持っており、その水酸基に他の官能基を導入することも容易である。また、金はそれ自体がチオール基と容易に反応し、また様々な素材を金に蒸着させることが容易であることから特に好ましい。
【0028】
本発明において「ポリペプチド」はL型アミノ酸、D型アミノ酸のいずれのアミノ酸から成るものであってもよい。
【0029】
ポリペプチドはペプチド固相合成法に準じた方法によって、固相上にスペーサーを介して順次アミノ酸を結合させることにより製造することができる。ここで、「スペーサー」とは、上記の構造において固相とアミノ酸を結合させる能力を有する化合物であり、固相上の官能部位と反応してスペーサーを固相上に結合させ得る官能部位を有するものである。
固相とスペーサーは共有結合に限らず、イオン結合や疎水結合、抗原抗体反応など固相とスペーサーを固定し得るものであれば、結合の種類に限られず、どのような結合であっもよい。
【0030】
反応する官能部位の組合わせは、固相上の官能部位とスペーサーの官能部位の間で交換が可能であり、どちらにどの官能部位が導入されるかは限定されない。
【0031】
反応する官能部位の組合わせとしては、ハロゲン、カルボキシル基およびアルデヒド基とアミノ基、特にジアミノアルキル基またはジアミノエーテル基等のジアミノ基の組合わせが好ましい。また、チオエステル基、アルデヒド、ブロモアセチル基およびマレイミド基とチオール基との組合わせも好ましい。
【0032】
スペーサーは、固相上の官能部位と結合する官能部位に加えて、ペプチドのC末端と結合する官能部位を有する必要がある。当該官能部位の組み合わせとしては、アルデヒド、ブロモアセチル基およびマレイミド基とチオールの組み合わせが好ましい。またペプチドのC末端と結合し得るアミノ基を有するものも好ましい。スペーサーとペプチドとの結合は、固相とスペーサーとの結合と同様に、結合の種類に限られず、どのような結合であってもよい。
また、どちらにどの官能部位を入れるかは限定されず、反応する2つの官能部位をどちらか一方ずつに導入すればよい。
【0033】
本発明で「保護アミノ酸」とは、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)やt−ブチルカルボニル基(Boc基)などの保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸をいう。
【0034】
本発明で「成型品」とは、素材を所望の形状に加工した製品をいう。例えば、創傷被覆材、縫合糸、人工血管、カテーテル、透析膜、ステントおよび衣服などが本発明の好適な成型品である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例1
カブトムシディフェンシン由来改変ペプチドのスペーサーを介したC末端での固定化
1)綿布にエピブロモヒドリンを反応させ表面をブロモ化した後、1,3−ジアミノプロパンを加え、アミノ修飾綿布を合成した。これらのアミノ基に9−フルオレニルメトキシ基(Fmoc基)で保護したD型アミノ酸を結合させ、ピペリジンで保護基を脱離させた後に、新たにFmocで保護したアミノ酸を結合させた。このようにD型アミノ酸を順次結合させて、RLLLRIGRR(配列番号4)のD型ペプチドをC末端で固定化した綿白布を合成した。但し、第1段階のアミノ酸の反応効率が他のアミノ酸に比較して低いために、最初にグリシンを結合させた後に、上記アミノ酸を順次結合させた。単位面積当たりのペプチド結合量は0.25 μg/cmであった(ペプチド固定綿布1)。
【0037】
2)1,3−ジアミノプロパンに代えてジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテルを用いて、同様の工程によってRLLLRIGRR(配列番号4)を結合させた綿白布を合成した。単位面積当たりのペプチド結合量は0.13 μg/cmであった(ペプチド固定綿布2)。
【0038】
実施例2
カブトムシディフェンシン由来改変ペプチドの結合部位を制御しない固定化
綿布にエピブロモヒドリンを反応させて、布の表面をブロモ化した。当該綿布にペプチドを反応させ、分子中のいずれかのアミノ基と綿布のブロモ基とを結合させた。配列番号1、2、3および4のペプチドを固定化させた綿布をA、B、CおよびDとした。
【0039】
実施例3
カブトムシディフェンシン由来改変ペプチド固定化綿布の抗微生物活性
i)スペーサーを介してペプチドをC末端で固定化した綿布の抗微生物活性試験
実施例1においてペプチドを間接的に固定化した綿布について、抗微生物活性試験を行った。ペプチド固定化綿布を培養液中に入れ、18時間培養した後に生菌は認められなかった(実験1)。実験1で用いた布を超純粋で手振り洗浄(振幅30cm×30回振とう×3回)およびオートクレーブによる滅菌操作を4回繰り返し行った後も抗菌活性が維持されていることが認められた(実験2−5)。また、実験5の後、当該ペプチド固定綿布を家庭用洗濯機を用いて界面活性剤を使用せずに洗濯し(洗い→すすぎ→脱水)、再度上記条件で手振り洗浄を行った後にオートクレーブ処理し、実験6に使用した。
本実験により、スペーサーを介してC末端でペプチドを固定化することにより、抗菌活性が安定的に維持されることが示めされた。
【0040】
【表1】

* 表中各数値は細菌数(CFU)を示す。
【0041】
ii)ペプチドの結合部位を制御せず固定化した綿布の抗微生物活性試験
実施例2において作製した、ペプチドの結合部位を制御せず固定化した綿布A、B、CおよびDについて、JIS規格に基づく抗菌試験法を用いて黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する抗菌活性を測定した。ペプチド固定化綿布を培養液中に入れ、18時間培養した後に生菌は認められなかった(実験1)。実験1で用いた綿布を前記条件で手振り洗浄し、オートクレーブによる滅菌操作を行った後に再度抗菌試験を行った。当該洗浄及び抗菌試験を繰返し実施した結果、2回以上洗浄を繰り返すことにより全てのペプチド固定化綿布において生菌が認められた(実験2−5)。
【表2】

* 表中各数値は細菌数(CFU)を示す。
【0042】
実施例4
カブトムシディフェンシン由来改変ペプチド固定化綿布の抗ガン活性
カブトムシディフェンシン由来改変ペプチド固定化綿布のマウス骨髄腫細胞P3−X63−Ag8.653およびヒト白血病細胞Jurkatに対する活性を測定した。
【0043】
ペプチドを固定化した綿布と固定化していない綿布をともに5mm×5mmの大きさに切断し、超純水1ml中で洗浄(ボルテックスmax×10秒)後、オートクレーブ処理を行い、試験に用いた。96ウェルプレートの各ウェルの底に布を置き、その上からマウス骨髄腫細胞P3−X63−Ag8.653またはヒト白血病細胞Jurkatを8×10個/100μl/ウェル添加し、5%CO・37℃で24時間培養後、生存率を測定した。培地はRPMI1640(Gibco11875−085:グルコース2000mg/L、L−グルタミン300mg/L)にウシ血清(最終濃度20%)とペニシリン−ストレプトマイシン(最終濃度50mg/L)を添加したものを使用した。
ペプチド固定化綿布を培地中に入れた場合、ガン細胞の生存率はいずれも大幅に減少した。ペプチド固定化綿布の洗浄、滅菌を行い、再び試験を行った結果も同様に繰返しの実験で抗ガン活性は維持された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表されるアミノ酸配列:
X1−Lue−X2−Leu−X3−Ile−X4−Arg−Arg−NH
(式中、X1はArgまたはAlaであり、X2はTyr、ArgまたはLeuであり、X3はArgまたはAlaであり、X4はGlyまたはArgである。)を含むポリペプチドを固定化した素材。
【請求項2】
前記ポリペプチドがArg−Leu−Tyr−Leu−Arg−Ile−Gly−Arg−Arg−NH、Arg−Leu−Arg−Leu−Arg−Ile−Gly−Arg−Arg−NH、Ala−Leu−Tyr−Leu−Ala−Ile−Arg−Arg−Arg−NHまたはArg−Leu−Leu−Leu−Arg−Ile−Gly−Arg−Arg−NHである請求項1に記載の素材。
【請求項3】
前記ポリペプチドがスペーサーを介してC末端側で基材と結合していることを特徴とする請求項1または2に記載の素材。
【請求項4】
基材が高分子または金属である請求項1乃至3のいずれかに記載の素材。
【請求項5】
基材がセルロースである請求項4に記載の素材。
【請求項6】
基材にエピハロヒドリンを反応させて表面をハロゲン化した後、1,3−ジアミノプロパンまたはジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテルを加えてアミノ修飾し、当該アミノ基に保護アミノ酸を順次結合させ、最後に保護基を脱離させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の素材の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の素材から成る抗微生物または抗ガン活性を有する成型品。
【請求項8】
創傷被覆材、縫合糸、人工血管、カテーテル、透析膜、衣服およびステントからなる群より選択される請求項7に記載の成型品。
【請求項9】
液体を請求項1乃至5のいずれかに記載の素材と接触させることを特徴とする液体の殺菌方法。
【請求項10】
液体が血液または血漿である請求項9に記載の殺菌方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−184022(P2010−184022A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29726(P2009−29726)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(501167644)独立行政法人農業生物資源研究所 (200)
【出願人】(591023594)和歌山県 (62)
【Fターム(参考)】