抗微生物剤

【課題】膜破壊活性またはLPS(リポ多糖類)破壊活性を有するペプチドストレッチが融合されたエンドリシンを含む、エンドリシン変異体の提供。
【解決手段】カチオン性ペプチドストレッチが、5〜100個のアミノ酸残基を含み、該ペプチドストレッチ中に含まれる少なくとも70%のアミノ酸残基が、アルギニン、および/またはリジンであり、かつ0%〜30%がセリン、および/またはグリシンである、前記エンドリシン変異体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラム陰性細菌に対して改善された抗菌作用を有する改変されたエンドリシン変異体に関連する。改変されたエンドリシン変異体は、エンドリシンおよびエンドリシンに融合されたカチオン性ペプチドを含み、したがってエンドリシンのカチオン性を増強する。本発明はまた、カチオン性の増強を伴う改変されたエンドリシン変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸で形質転換された微生物にも関連する。本発明は、産生生物として、本発明に係るエンドリシン変異体をコードする核酸で形質転換された微生物を使用して、エンドリシン変異体を産生する方法にさらに関連する。
【0002】
とりわけ、本発明は、膜破壊活性またはLPS破壊活性を有するペプチドストレッチが融合されたエンドリシンを含むエンドリシン変異体に関連する。さらに、本発明はこの改変されたエンドリシン変異体をコードする核酸分子、該核酸分子を含むベクター、および該核酸分子または該ベクターのいずれかを含む宿主細胞に関連する。さらに本発明は、エンドリシン変異体を産生する方法に関連する。さらに、本発明は、医用薬剤としての使用のため、とりわけグラム陰性細菌感染症の処置もしくは予防のため、診断手段、殺菌剤として、または美容用物質としての改変されたエンドリシン変異体に関連する。本発明はまた、食材の、食品加工器具の、食品加工設備の、食材と接触する表面の、医療装置の、病院および手術室の表面のグラム陰性細菌の汚染の除去、または減少、または予防にも関連する。さらに、本発明は、医薬、食品、または飼料、もしくは環境診断における診断手段としての、エンドリシン変異体の使用に関連する。最後に、本発明は、改変されたエンドリシン変異体を含む薬学的組成物に関連する。
【背景技術】
【0003】
エンドリシンは、バクテリオファージ(または細菌ウイルス)によってコードされるペプチドグリカンヒドロラーゼである。それらは、ファージ増殖の溶菌サイクルにおける後期遺伝子発現の間に合成され、かつ細菌ペプチドグリカンの分解によって、感染した細胞からの子孫ウイルス粒子の放出を媒介する。それらは、β(1,4)-グリコシラーゼ(リゾチーム)、トランスグリコシラーゼ、アミダーゼまたはエンドペプチターゼのいずれかである。エンドリシンの抗微生物用途は、Gasson(GB2243611号(特許文献1))により、既に1991年に示唆されていた。エンドリシンの殺傷能力は長期にわたって公知であったが、これらの酵素の抗菌薬としての使用は、抗生物質の成功および優勢性のため無視されていた。多剤抗生物質耐性細菌が出現してはじめて、エンドリシンを用いてヒト病原体と戦うというこの単純な概念が興味を持たれるようになった。全く新規のクラスの抗菌剤を開発する切迫した必要性が生じ、かつ「酵素」および「抗生物質」の混成用語である「エンザイビオティクス(enzybiotics)」として使用されるエンドリシンは、この必要性に完全に一致する。2001年にFischettiおよび共同研究者らが、A群レンサ球菌(streptococcus)に対するバクテリオファージC1エンドリシンの、治療上の潜在能力を初めて実証した(Nelson et al., 2001(非特許文献1))。それ以来、多数の刊行物において、細菌感染症、とりわけグラム陽性細菌による感染症を制御する魅力的でかつ補完的な代替法として、エンドリシンが確立されている。続いて、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)(Loeffler et al., 2001(非特許文献2))、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)(Schuch et al., 2002(非特許文献3))、S. アガラクチア(S. agalactiae)(Cheng et al., 2005(非特許文献4))、およびスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(Rashel et al, 2007(非特許文献5))等の他のグラム陽性病原体に対して、異なるエンドリシンが、エンザイビオティクスとしてのそれらの効力を証明している。エンドリシンのペプチドグリカンへの接近を外膜が遮蔽するため、現在では、エンドリシン治療の最も重要な課題は、エンドリシンの外来性作用に対するグラム陰性細菌の非感受性にある。これにより、現在、重要なグラム陰性病原体に対する効果的なエンドリシンの範囲の拡張が妨げられている。
【0004】
グラム陰性細菌は、特質としてその特徴的な非対称二重層を備えた外膜を有する。外膜二重層は、リン脂質(主としてホスファチジルエタノールアミン)を含む内側の単層、および主に単一の糖脂質であるリポ多糖類(LPS)で構成される外側の単層からなる。細菌界におけるLPS構造には莫大な多様性が存在し、かつ環境条件の克服に応えてLPS構造が改変されうる。LPS層の安定性および異なるLPS分子間の相互作用は、二価イオン(Mg2+、Ca2+)と、LPS分子のアニオン性要素(リピドAおよび内側コア中のリン酸基、ならびにKDOのカルボキシル基)との静電的相互作用によって主に達成される。したがって、カチオン結合部位は、外膜の統合性に関して必須である(Vaara, 1992(非特許文献6))。(少なくとも20残基の)ポリL-リジンポリマー等のポリカチオン性物質は、これらの安定な二価カチオンとの置換によって外膜透過性を増加させる。さらに、それらは、いわゆる「自己促進取り込み(self-promoted uptake)」機構を作用させる(Hancock and Wong, 1984(非特許文献7))。体積が大きいため、それらは外膜の正常な遮断機能を破壊し、かつ一過性に亀裂を創出し、それら自身の取り込みを促進させる(Vaara and Vaara, 1983(非特許文献8))。さらに、不飽和脂肪酸の欠如によっておこるリピドAの疎水性部分の高密度の規則正しいパッキングによって、高い粘性を有する強固な構造体が形成される。これは、親油性分子の浸透性をより低くし、かつ外膜(OM)にさらなる安定性をもたらす。
【0005】
しかしながら、抗生物質に対する微生物の抵抗性の増加によって、細菌により引き起こされるますます多くの感染症の処置において困難が生じている。とりわけ、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)および腸内細菌科(Enterobacteriaceae)等のグラム陰性細菌により引き起こされる感染症で困難が生じる。
【発明の概要】
【0006】
したがって、グラム陰性細菌に対する、新規の抗微生物剤の必要性が存在する。
【0007】
本目的は、特許請求の範囲に定義される事項によって解決される。
[請求項1001]
膜破壊活性、またはLPS破壊活性を有するペプチドストレッチが融合されたエンドリシンを含む、エンドリシン変異体。
[請求項1002]
エンドリシンに融合される前記ペプチドストレッチが、カチオン性、より好ましくはポリカチオン性ペプチドである、請求項1001記載のエンドリシン変異体。
[請求項1003]
ペプチドストレッチが、アルギニン、ヒスチジンおよびリジン残基、とりわけアルギニンおよびリジン残基からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸残基を含む、請求項1001または1002記載のエンドリシン変異体。
[請求項1004]
ペプチドストレッチ中に含まれる少なくとも70%のアミノ酸残基が、アルギニン、ヒスチジンおよび/またはリジン残基、とりわけアルギニンおよび/またはリジン残基である、前記請求項のいずれか一項記載のエンドリシン変異体。
[請求項1005]
ペプチドストレッチが、約5個〜約100個のアミノ酸残基、とりわけ約5個〜50個のアミノ酸残基、とりわけ約5個〜30個のアミノ酸残基を含む、前記請求項のいずれか一項記載のエンドリシン変異体。
[請求項1006]
ペプチドストレッチが、エンドリシンのN末端および/またはC末端、とりわけエンドリシンのN末端に融合される、前記請求項のいずれか一項記載のエンドリシン変異体。
[請求項1007]
エンドリシンが、グラム陰性細菌の細胞壁、とりわけ以下:
腸内細菌科(Enterobacteriaceae)
とりわけエシェリキア属(Escherichia)、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、シトロバクター属(Citrobacter)、エドワージエラ属(Edwardsiella)、エンテロバクター属(Enterobacter)、ハフニア属(Hafnia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、モルガネラ属(Morganella)、プロテウス属(Proteus)、プロビデンシア属(Providencia)、セラチア属(Serratia)、およびエルシニア属(Yersinia)、
シュードモナス科(Pseudomonadaceae)
とりわけシュードモナス属(Pseudomonas)、バークホルデリア属(Burkholderia)、ステノトロホモナス属(Stenotrophomonas)、シュワネラ属(Shewanella)、スフィンゴモナス属(Sphingomonas)、およびコマモナス属(Comamonas)、
ナイセリア属(Neisseria)、モラクセラ属(Moraxella)、ビブリオ属(Vibrio)、アエロモナス属(Aeromonas)、ブルセラ属(Brucella)、フランシセラ属(Francisella)、ボルデテラ属(Bordetella)、レジオネラ属(Legionella)、バルトネラ属(Bartonella)、コクシエラ属(Coxiella)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、パスツレラ属(Pasteurella)、マンヘミア属(Mannheimia)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ガードネレラ属(Gardnerella)、
スピロヘータ科(Spirochaetaceae)
とりわけトレポネーマ属(Treponema)およびボレリア属(Borrelia)、
レプトスピラ科(Leptospiraceae)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、スピリルム属(Spirillum)、ストレプトバシラス属(Streptobacillus)、
バクテロイデス科(Bacteroidaceae)
とりわけバクテロイデス属(Bacteroides)、フゾバクテリウム属(Fusobacterium)、プレボテラ属(Prevotella)、およびポルフィロモナス属(Porphyromonas)、ならびに
アシネトバクター属(Acinetobacter)、
とりわけA. バウマニ(A. baumanii)
からなる群より選択されるグラム陰性細菌の細胞壁を分解する活性を有する、前記請求項のいずれか一項記載のエンドリシン変異体。
[請求項1008]
エンドリシンが、SEQ ID NO:1のphiKZgp144、SEQ ID NO:2のELgp188、SEQ ID NO:3のサルモネラのエンドリシン、SEQ ID NO:4の腸内細菌ファージT4のエンドリシン、SEQ ID NO:5のアシネトバクター・バウマニのエンドリシン、SEQ ID NO:6の大腸菌ファージK1Fのエンドリシン、SEQ ID NO:8のPSP3サルモネラのエンドリシン、およびSEQ ID NO:9の大腸菌ファージP2のエンドリシンからなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載のエンドリシン変異体。
[請求項1009]
ペプチドストレッチが、少なくとも一つのKRKモチーフを含み、とりわけ該ペプチドストレッチが、SEQ ID NO:10〜30からなる群より選択される配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載のエンドリシン変異体。
[請求項1010]
SEQ ID NO:35〜49、53、57、62〜64、および66〜78からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載のエンドリシン変異体。
[請求項1011]
請求項1001〜1010のいずれか一項記載のエンドリシン変異体をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
[請求項1012]
請求項1011記載の核酸分子を含む、ベクター。
[請求項1013]
とりわけ細菌細胞または酵母細胞である、請求項1011記載の核酸分子もしくは請求項1012記載のベクターを含む、宿主細胞。
[請求項1014]
請求項1013記載の宿主細胞におけるエンドリシン変異体の発現を含む、請求項1001〜1010のいずれか一項記載のエンドリシン変異体を産生する方法。
[請求項1015]
医用薬剤、診断手段、殺菌剤または美容用物質としての使用のための、請求項1001〜1010のいずれか一項記載のエンドリシン変異体。
[請求項1016]
グラム陰性細菌感染症の処置用の医用薬剤としての使用のための、請求項1001〜1010のいずれか一項記載のエンドリシン変異体。
[請求項1017]
食材の、食品加工器具の、食品加工設備の、食材と接触する表面の、医療装置の、病院および手術室の表面の、グラム陰性細菌の汚染の除去、減少ならびに/または予防のための、請求項1001〜1010のいずれか一項記載のエンドリシン変異体の使用。
[請求項1018]
医薬、食品、または飼料、もしくは環境診断における診断手段としての、請求項1001〜1010のいずれか一項記載のエンドリシン変異体の使用。
[請求項1019]
請求項1001〜1010のいずれか一項記載のエンドリシン変異体を含む、薬学的組成物。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】GB2243611号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Nelson et al., 2001
【非特許文献2】Loeffler et al., 2001
【非特許文献3】Schuch et al., 2002
【非特許文献4】Cheng et al., 2005
【非特許文献5】Rashel et al, 2007
【非特許文献6】Vaara, 1992
【非特許文献7】Hancock and Wong, 1984
【非特許文献8】Vaara and Vaara, 1983
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下の図面は、本発明を例示する。
【図1】(POLY)n-gp144((POLY))n-KZ144)の組換え産生のためのプラスミド構築物を示す概略図である。あらかじめ、(5’テールプライマーに、BamHI制限部位および第一のポリカチオン性カセットを用いる)テールPCRによって、pEXP5CT/POLY-gp144(pEXP5CT/POLY-KZ144)を構築した。BamHIでプラスミドを直線化し、脱リン酸化して、突出BamHI末端を含むカセットにライゲーションした。このカセットは、2つの相補的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに由来し、かつ正に荷電された9つの残基をコードする。第一と第二のカセットの間の接合部位に、セリンとともに、更に一つの正に荷電されたアルギニン残基を創出する。より長いpEXP5CT/(POLY)n-gp144(pEXP5CT/(POLY)n-KZ144)変異体を、反復サイクルによって同様に構築した。
【図2】ピキア・パストリス(Pichia pastoris)による、POLY-gp144の発現および分泌を示す。P. パストリスX33の発現培養液の上清[1日後(正方形)、3日後(三角形)および4日後(円形)]30μlを、270μlのクロロホルムで透過処理されたP. エルジノーサPAO1p細胞に添加する。緩衝剤の条件は、POLY-gp144の最適な酵素学的条件とした(KH2PO4/K2HPO4、I=120 mM pH 6.2)。続いて、分光光度的に光学密度を記録した。光学密度の低下は、P. パストリスによる壁分解酵素の分泌を示す。陰性対照として、発現プラスミドを含まないP. パストリスX33を含める(菱形)。
【図3】未改変phiKZgp144エンドリシンおよびELgp188エンドリシン、正に荷電された9つのアミノ酸残基を含むペプチドストレッチを含んだ、改変された変異体、POLY-gp144およびPOLY-gp188、ならびに正に荷電された18のアミノ酸残基を含むペプチドストレッチを含んだ、改変された変異体(POLY)2-gp144および(POLY)2-gp188の、シュードモナス・エルジノーサPAO1p細胞に対する抗菌活性を、グラフ表示において示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図4】未改変エンドリシンPSP3gp10、およびその改変されたエンドリシン変異体、PKPSP3gp10の、発現ならびに精製の結果を示すクマシー染色されたSDS-PAGEの図を示す。レーンLMWは、サイズマーカー(LMWラダー)に関する。以下の3つのレーンは、Ni2+親和性クロマトグラフィー後、溶出用緩衝剤(20 mM NaH2PO4-NaOH pH7.4;0.5 M NaCl;500 mMイミダゾール)中の精製されたタンパク質の、タンパク質画分に関係する。レーンFTはフロースルーに関係し、かつレーンWは廃棄画分に関係する。精製されたタンパク質画分中には二次的バンドは微量であり、組換えタンパク質の高い純度を示している(90%超)。
【図5A】振盪せず室温で保温後、異なる組成物における未改変PSP3gp10および改変されたPKPSP3gp10の、対数増殖中のグラム陰性細菌それぞれに対する抗菌活性をグラフ表示において示す。各種のグラム陰性細菌を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの未改変PSP3gp10を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKPSP3gp10を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの未改変PSP3gp10および0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKPSP3gp10および0.5 mM EDTAを含む組成物と共に、30分に渡って保温した。図5Aは、P. エルジノーサPAO1p細胞に対する抗菌活性を表す。「Δ」は、各々のPSP3gp10とPKPSP3gp10試料との活性の相違を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図5B】振盪せず室温で保温後、異なる組成物における未改変PSP3gp10および改変されたPKPSP3gp10の、対数増殖中のグラム陰性細菌それぞれに対する抗菌活性をグラフ表示において示す。各種のグラム陰性細菌を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの未改変PSP3gp10を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKPSP3gp10を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの未改変PSP3gp10および0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKPSP3gp10および0.5 mM EDTAを含む組成物と共に、30分に渡って保温した。図5Bは、P. エルジノーサBr667細胞に対する抗菌活性を表す。「Δ」は、各々のPSP3gp10とPKPSP3gp10試料との活性の相違を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図5C】振盪せず室温で保温後、異なる組成物における未改変PSP3gp10および改変されたPKPSP3gp10の、対数増殖中のグラム陰性細菌それぞれに対する抗菌活性をグラフ表示において示す。各種のグラム陰性細菌を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの未改変PSP3gp10を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKPSP3gp10を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの未改変PSP3gp10および0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKPSP3gp10および0.5 mM EDTAを含む組成物と共に、30分に渡って保温した。図5Cは、大腸菌(E. coli)WK 6細胞に対する抗菌活性を表す。「Δ」は、各々のPSP3gp10とPKPSP3gp10試料との活性の相違を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図5D】振盪せず室温で保温後、異なる組成物における未改変PSP3gp10および改変されたPKPSP3gp10の、対数増殖中のグラム陰性細菌それぞれに対する抗菌活性をグラフ表示において示す。各種のグラム陰性細菌を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの未改変PSP3gp10を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKPSP3gp10を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの未改変PSP3gp10および0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKPSP3gp10および0.5 mM EDTAを含む組成物と共に、30分に渡って保温した。図5Dは、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)細胞に対する抗菌活性を表す。「Δ」は、各々のPSP3gp10とPKPSP3gp10試料との活性の相違を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図6】未改変エンドリシンP2gp09およびその改変されたエンドリシン変異体、PKP2gp09の、発現ならびに精製の結果を示すクマシー染色されたSDS-PAGEの図を示す。レーンLMWは、サイズマーカー(LMWラダー)に関する。以下の3つのレーンは、Ni2+親和性クロマトグラフィー後、溶出用緩衝剤(20 mM NaH2PO4-NaOH pH7.4;0.5 M NaCl;500 mMイミダゾール)中の精製されたタンパク質の、タンパク質画分に関係する。レーンFTはフロースルーに関係し、かつレーンWは廃棄画分に関係する。精製されたタンパク質画分中には二次的バンドは微量であり、組換えタンパク質の高い純度を示している(95%超)。
【図7A】振盪せず室温で保温後、異なる組成物における未改変P2gp09および改変されたPKP2gp09の、対数増殖中のグラム陰性細菌それぞれに対する抗菌活性を、グラフ表示において示す。各種のグラム陰性細菌を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの未改変P2gp09を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKP2gp09を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの未改変P2gp09および0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKP2gp09および0.5 mM EDTAを含む組成物と共に、30分に渡って保温した。図7Aは、P. エルジノーサPAO1p細胞に対する抗菌活性を表す。「Δ」は、各々のP2gp09とPKP2gp09試料との活性の相違を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図7B】振盪せず室温で保温後、異なる組成物における未改変P2gp09および改変されたPKP2gp09の、対数増殖中のグラム陰性細菌それぞれに対する抗菌活性をグラフ表示において示す。各種のグラム陰性細菌を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの未改変P2gp09を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKP2gp09を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの未改変P2gp09および0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKP2gp09および0.5 mM EDTAを含む組成物と共に、30分に渡って保温した。図7Bは、P. エルジノーサBr667細胞に対する抗菌活性を表す。「Δ」は、各々のP2gp09とPKP2gp09試料との活性の相違を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図7C】振盪せず室温で保温後、異なる組成物における未改変P2gp09および改変されたPKP2gp09の、対数増殖中のグラム陰性細菌それぞれに対する抗菌活性をグラフ表示において示す。各種のグラム陰性細菌を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの未改変P2gp09を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKP2gp09を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの未改変P2gp09および0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKP2gp09および0.5 mM EDTAを含む組成物と共に、30分に渡って保温した。図7Cは、大腸菌WK 6細胞に対する抗菌活性を表す。「Δ」は、各々のP2gp09とPKP2gp09試料との活性の相違を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図7D】振盪せず室温で保温後、異なる組成物における未改変P2gp09および改変されたPKP2gp09の、対数増殖中のグラム陰性細菌それぞれに対する抗菌活性をグラフ表示において示す。各種のグラム陰性細菌を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの未改変P2gp09を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKP2gp09を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの未改変P2gp09および0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKP2gp09および0.5 mM EDTAを含む組成物と共に、30分に渡って保温した。図7Dは、バークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)細胞に対する抗菌活性を表す。「Δ」は、各々のP2gp09とPKP2gp09試料との活性の相違を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図7E】振盪せず室温で保温後、異なる組成物における未改変P2gp09および改変されたPKP2gp09の、対数増殖中のグラム陰性細菌それぞれに対する抗菌活性をグラフ表示において示す。各種のグラム陰性細菌を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの未改変P2gp09を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKP2gp09を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの未改変P2gp09および0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKP2gp09および0.5 mM EDTAを含む組成物と共に、30分に渡って保温した。図7Eは、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)G1細胞に対する抗菌活性を表す。「Δ」は、各々のP2gp09とPKP2gp09試料との活性の相違を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図7F】振盪せず室温で保温後、異なる組成物における未改変P2gp09および改変されたPKP2gp09の、対数増殖中のグラム陰性細菌それぞれに対する抗菌活性をグラフ表示において示す。各種のグラム陰性細菌を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの未改変P2gp09を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKP2gp09を含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの未改変P2gp09および0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKP2gp09および0.5 mM EDTAを含む組成物と共に、30分に渡って保温した。図7Fは、サルモネラ・チフィムリウムLT2(SGSC N°2317)細胞に対する抗菌活性を表す。「Δ」は、各々のP2gp09とPKP2gp09試料との活性の相違を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図8】未改変エンドリシンOBPgpLYSおよびその改変されたエンドリシン変異体、PKOBPgpLYSの、発現ならびに精製の結果を示すクマシー染色されたSDS-PAGEの図を示す。レーンLMWは、サイズマーカー(LMWラダー)に関する。以下の3つのレーンは、Ni2+親和性クロマトグラフィー後、溶出用緩衝剤(20 mM NaH2PO4-NaOH pH7.4;0.5 M NaCl;500 mMイミダゾール)中の精製されたタンパク質の、タンパク質画分に関係する。レーンFTはフロースルーに関係し、かつレーンWは廃棄画分に関係する。精製されたタンパク質画分中には二次的バンドは微量であり、組換えタンパク質の高い純度を示している(90%超)。
【図9A】振盪せず室温で保温後、異なる組成物における未改変OBPgpLYSおよび改変されたPKOBPgpLYSの、対数増殖中のグラム陰性細菌それぞれに対する抗菌活性をグラフ表示において示す。各種のグラム陰性細菌を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの未改変OBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの未改変OBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物と共に、30分に渡って保温した。図9Aは、大腸菌WK 6細胞に対する抗菌活性を表す。「Δ」は、各々のOBPgpLYSとPKOBPgpLYS試料との活性の相違を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図9B】振盪せず室温で保温後、異なる組成物における未改変OBPgpLYSおよび改変されたPKOBPgpLYSの、対数増殖中のグラム陰性細菌それぞれに対する抗菌活性をグラフ表示において示す。各種のグラム陰性細菌を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンのない組成物、1.315μMの未改変OBPgpLYSを含むがEDTAのない組成物、1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSを含むがEDTAのない組成物、1.315μMの未改変OBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物と共に、30分に渡って保温した。図9Bは、サルモネラ・チフィムリウムLT2(SGSC N°2317)細胞に対する抗菌活性を表す。「Δ」は、各々のOBPgpLYSとPKOBPgpLYS試料との活性の相違を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図9C】振盪せず室温で保温後、異なる組成物における未改変OBPgpLYSおよび改変されたPKOBPgpLYSの、対数増殖中のグラム陰性細菌それぞれに対する抗菌活性をグラフ表示において示す。各種のグラム陰性細菌を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの未改変OBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの未改変OBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物と共に、30分に渡って保温した。図9Cは、シュードモナス・エルジノーサPAO1p細胞に対する抗菌活性を表す。「Δ」は、各々のOBPgpLYSとPKOBPgpLYS試料との活性の相違を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図9D】振盪せず室温で保温後、異なる組成物における未改変OBPgpLYSおよび改変されたPKOBPgpLYSの、対数増殖中のグラム陰性細菌それぞれに対する抗菌活性をグラフ表示において示す。各種のグラム陰性細菌を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの未改変OBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの未改変OBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物と共に、30分に渡って保温した。図9Dは、シュードモナス・エルジノーサBr667細胞に対する抗菌活性を表す。「Δ」は、各々のOBPgpLYSとPKOBPgpLYS試料との活性の相違を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図9E】振盪せず室温で保温後、異なる組成物における未改変OBPgpLYSおよび改変されたPKOBPgpLYSの、対数増殖中のグラム陰性細菌それぞれに対する抗菌活性をグラフ表示において示す。各種のグラム陰性細菌を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの未改変OBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの未改変OBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物と共に、30分に渡って保温した。図9Eは、シュードモナス・プチダG1細胞に対する抗菌活性を表す。「Δ」は、各々のOBPgpLYSとPKOBPgpLYS試料との活性の相違を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図9F】振盪せず室温で保温後、異なる組成物における未改変OBPgpLYSおよび改変されたPKOBPgpLYSの、対数増殖中のグラム陰性細菌それぞれに対する抗菌活性をグラフ表示において示す。各種のグラム陰性細菌を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの未改変OBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの未改変OBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物と共に、30分に渡って保温した。図9Fは、バークホルデリア・シュードマレイ細胞に対する抗菌活性を表す。「Δ」は、各々のOBPgpLYSとPKOBPgpLYS試料との活性の相違を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において使用される「タンパク質」という用語は、同義的に「ポリペプチド」という用語を意味する。本明細書において使用される「タンパク質」という用語は、特定の配列において、ペプチド結合によって連結されるアミノ酸残基の直線状ポリマーを意味する。タンパク質のアミノ酸残基は、例えば、炭水化物およびリン酸等の、例えば様々な基の共有結合性の接続によって改変されてもよい。ヘムまたは脂質等の他の物質は、よりゆるやかにポリペプチド鎖に結合されてもよく、コンジュゲートされたタンパク質を生じさせ、それらも、本明細書において使用される「タンパク質」という用語に含まれる。ポリペプチド鎖の折り畳み、とりわけαへリックスおよびβシートの存在に関して、様々な様式が解明されている。本明細書において使用される「タンパク質」という用語は、全てα、全てβ、α/β、およびαに加えてβである、全ての4つのクラスのタンパク質を意味する。
【0012】
本明細書において使用される「融合タンパク質」という用語は、2つの核酸配列の融合により生じる発現産物を意味する。そのようなタンパク質は、例えば、組換えDNA発現システムにおいて産生されてもよい。さらに、本明細書において使用される「融合タンパク質」という用語は、第一のアミノ酸配列、とりわけエンドリシン、オートリシンおよび/または他のペプチドグリカンヒドロラーゼと、第二のまたはさらなるアミノ酸配列との融合物を意味する。第二のまたはさらなるアミノ酸配列は、好ましくはペプチドストレッチであり、とりわけカチオン性ペプチドおよび/またはポリカチオン性ペプチドである。好ましくは、第二のおよび/またはさらなるアミノ酸配列は、第一のアミノ酸配列の任意のドメインに対して外来性であり、かつ第一のアミノ酸配列のいかなるドメインとも実質的に相同でない。
【0013】
「改変されたエンドリシン変異体」という用語は、本明細書において、「エンドリシン変異体」という用語と同義的に使用される。双方の用語は、エンドリシンおよびペプチドストレッチ、とりわけカチオン性ペプチドおよび/またはポリカチオン性ペプチドを含む融合タンパク質を意味する。
【0014】
本明細書において使用される「ペプチドストレッチ」という用語は、エンドリシン、オートリシン、および/またはペプチドグリカンヒドロラーゼ等のタンパク質に連結される任意の種類のペプチドを意味する。とりわけ、本明細書において使用される「ペプチドストレッチ」という用語は、カチオン性ペプチドおよび/またはポリカチオン性ペプチドを意味する。しかしながら、本発明の意味におけるペプチドストレッチは、His-タグ、Strep-タグ、Avi-タグ、Myc-タグ、Gst-タグ、JS-タグ、システイン-タグ、FLAG-タグ、または当技術分野において公知の他のタグ、チオレドキシンもしくはマルトース結合タンパク質(MBP)を意味しない。本明細書において使用される「タグ」という用語は、「ペプチドストレッチ」という用語と対照的に、ポリペプチドの発現および/または親和性精製を促進するため、ポリペプチドを表面に固定化するため、または例えば、異なるELISAアッセイ様式における抗体結合によって、ポリペプチドの検出のためのマーカー部分または標識部分として役割を果たすために有用であり得るペプチドを意味するが、それは、上に列挙される促進作用の一つに関してタグが有用になる機能が、ペプチドの正の電荷によってもたらされない限りにおいてである。しかしながら、各々のpHに応じてHis-タグも正に荷電され得るが、固定化された二価のカチオンに結合するが故に親和性精製の手段として使用され、本発明に係るペプチドストレッチとしては使用されない。
【0015】
本明細書において使用される「ペプチド」という用語は、一つのアミノ酸残基のアミノ基が、別のアミノ酸残基のカルボキシル基にペプチド結合によって連結される、約2〜約100アミノ酸残基、より好ましくは、約4〜約50アミノ酸残基、より好ましくは約5〜30アミノ酸残基からなる短いポリペプチドを意味する。ペプチドは、特定の機能を有してもよい。ペプチドは、天然のペプチド、または合成的に設計されかつ産生されるペプチドであり得る。ペプチドは、例えば、酵素学的切断または化学的切断によって、天然のタンパク質に由来し得るか、もしくは取り出され得るか、または従来のペプチド合成技術(例えば、固相合成等)もしくは分子生物学的技術(Sambrook, J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)を参照のこと)を使用して調製され得る。好ましくは、合成的に産生されたペプチドは、例えばカチオン性ペプチド、またはポリカチオン性ペプチドである。
【0016】
本明細書において使用される、「カチオン性ペプチド」という用語は、正に荷電されたアミノ酸残基を有するペプチドを意味する。好ましくは、カチオン性ペプチドは、9.0またはそれを超えるpKa値を有する。典型的には、カチオン性ペプチドの少なくとも4つのアミノ酸残基は、例えばリジンまたはアルギニンのように、正に荷電され得る。「正に荷電される」とは、およその生理学的条件で、アミノ酸残基の側鎖が正味の正電荷を有することを意味する。本明細書において使用される「カチオン性ペプチド」という用語は、ポリカチオン性ペプチドも意味する。
【0017】
本明細書において使用される、「ポリカチオン性ペプチド」という用語は、大多数が正に荷電されたアミノ酸残基、とりわけリジン、アルギニン、および/またはヒスチジン残基、より好ましくは、リジン、および/またはアルギニン残基で構成される、合成的に設計されかつ産生されるペプチドを意味する。少なくとも約20、30、40、50、60、70、75、80、85、90、95または約100%のアミノ酸残基が、正に荷電されたアミノ酸残基、とりわけリジンおよび/またはアルギニン残基である場合、ペプチドは、大部分が正に荷電されたアミノ酸残基で構成される。正に荷電されていないアミノ酸残基であるアミノ酸残基は、中性のアミノ酸残基、および/または負に荷電されたアミノ酸残基、および/または疎水性アミノ酸残基であり得る。好ましくは、正に荷電されていないアミノ酸残基であるアミノ酸残基は、中性のアミノ酸残基、とりわけセリンおよび/またはグリシンである。
【0018】
本明細書において使用される「エンドリシン」という用語は、細菌の細胞壁を加水分解するのに適した酵素を意味する。「エンドリシン」は、エンドペプチダーゼ、N-アセチル-ムラモイル-L-アラニン-アミダーゼ(アミダーゼ)、N-アセチル-ムラミダーゼ、N-アセチル-グルコサミニダーゼ(リゾチーム)、またはトランスグリコシラーゼの活性の少なくとも一つを有する、少なくとも一つの「酵素学的活性ドメイン」(EAD)を含む。さらに、エンドリシンは酵素学的に不活性で、かつ宿主細菌の細胞壁に結合する領域、いわゆるCBD(細胞壁結合ドメイン)に結合する領域も含む場合がある。エンドリシンは、一つ、二つ、またはそれを超えるCBDを含み得る。しかしながら、本明細書において使用される「エンドリシン」という用語は、少なくとも一つのEADを有するが、いかなるCBDも有しない酵素もまた意味する。一般に、細胞壁結合ドメインは、細菌表面上の異なる要素に結合することができる。好ましくは、細胞壁結合ドメインは、ペプチドグリカン結合ドメインであり、かつ細菌のペプチドグリカンに結合する。
【0019】
本明細書において使用される「細胞壁」という用語は、グラム陰性細菌の外側の、細胞の囲いを形成し、かつしたがってそれらの統合性を保証する、全ての要素を意味する。とりわけ、本明細書において使用される「細胞壁」という用語は、ペプチドグリカン、リポ多糖類を有するグラム陰性細菌の外膜、細菌の細胞膜を意味するが、例えば、莢膜、外側のタンパク質層または粘液等として、ペプチドグリカン上に蓄積された付加的な層も意味する。
【0020】
本明細書において使用される「オートリシン」という用語は、エンドリシンに関連するが、細菌によってコードされ、かつ例えば細胞分裂および細胞壁代謝に関与する酵素を意味する。オートリシンの概要は、「Bacterial peptidoglycan(murein)hydrolases. Vollmer W, Joris B, Charlier P, Foster S. FEMS Microbiol Rev. 2008 Mar; 32(2): 259-86」中に見出され得る。
【0021】
本明細書において使用される「EAD」という用語は、エンドリシンの酵素学的活性ドメインを意味する。EADは、細菌ペプチドグリカンを加水分解する役割を担う。それは、エンドリシンの少なくとも一つの酵素活性を示す。EADはまた、一つを超える酵素学的活性モジュールで構成され得る。「EAD」という用語は、本明細書において「触媒ドメイン」という用語と同義的に使用される。
【0022】
本明細書において使用される「欠失」という用語は、各々の元の配列から1個、2個、3個、4個、5個またはそれを超えるアミノ酸残基の除去を意味する。
【0023】
本明細書において使用される「挿入」または「付加」という用語は、各々の元の配列に対して1個、2個、3個、4個、5個もしくはそれを超えるアミノ酸残基の、挿入または付加を意味する。
【0024】
本明細書において使用される「置換」という用語は、特定の位置に配置されるアミノ酸残基の、異なるアミノ酸残基との交換を意味する。
【0025】
本発明は、グラム陰性細菌に対する改善された抗菌剤、とりわけリポ多糖類(LPS)破壊活性または一般的な膜破壊活性を有するペプチドに融合されたエンドリシンを含む、改変されたエンドリシン変異体に関連する。LPSは、グラム陰性細菌の外膜の主要な要素である。それは細胞膜の負の電荷を増加させ、かつ特定の種類の化学的な攻撃から膜を保護する。LPSは、細菌外部から添加されたエンドリシンからも、ある程度までグラム陰性細菌の膜を保護する。しかしながら、LPSは、例えば正に荷電されたペプチドのような、LPS破壊活性を有するペプチドストレッチによって破壊され得る。さらに、ペプチドストレッチは、外膜タンパク質輸送機構、構造上の外膜タンパク質の不安定化、および/または脂質依存性不安定化に関与する可能性がある。驚くべきことに、本発明の発明者らは、LPS破壊活性または一般的な膜破壊活性を有するペプチドストレッチは、ペプチドストレッチに融合されたエンドリシンがグラム陰性細菌の外膜を貫いて通過するのを促進することを見出した。グラム陰性細菌の外膜を介するエンドリシン通過の促進後に、細菌の細胞内圧力にもはや耐えられない場合、ペプチドグリカン層の分解と、続く浸透圧性の溶解のため、グラム陰性細菌の細胞壁は、エンドリシンによってより容易に破壊され得るか、または崩壊し得る。
【0026】
したがって、本発明は、グラム陰性細菌の細胞壁を分解する活性を有するエンドリシン、ならびにN末端および/またはC末端で酵素に融合される、膜破壊活性を有するペプチドストレッチで構成される融合タンパク質に言及する。本発明に係る融合タンパク質はまた、改変されたエンドリシン変異体、または単にエンドリシン変異体、または改変されたエンドリシンとも称される。
【0027】
改変されたエンドリシン変異体のエンドリシン部分は、好ましくは、例えば腸内細菌科(エシェリキア属(Escherichia)、とりわけ大腸菌、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、シトロバクター属(Citrobacter)、エドワージエラ属(Edwardsiella)、エンテロバクター属(Enterobacter)、ハフニア属(Hafnia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、とりわけ、K. ニューモニエ(K. pneumoniae)、モルガネラ属(Morganella)、プロテウス属(Proteus)、プロビデンシア属(Providencia)、セラチア属(Serratia)、エルシニア属(Yersinia))、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)(シュードモナス属(Pseudomonas)、とりわけP. エルジノーサ、バークホルデリア属、ステノトロホモナス属(Stenotrophomonas)、シュワネラ属(Shewanella)、スフィンゴモナス属(Sphingomonas)、コマモナス属(Comamonas))、ナイセリア属(Neisseria)、モラクセラ属(Moraxella)、ビブリオ属(Vibrio)、アエロモナス属(Aeromonas)、ブルセラ属(Brucella)、フランシセラ属(Francisella)、ボルデテラ属(Bordetella)、レジオネラ属(Legionella)、バルトネラ属(Bartonella)、コクシエラ属(Coxiella)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、パスツレラ属(Pasteurella)、マンヘミア属(Mannheimia)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ガードネレラ属(Gardnerella)、スピロヘータ科(Spirochaetaceae)(トレポネーマ属(Treponema)およびボレリア属(Borrelia))、レプトスピラ科(Leptospiraceae)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、スピリルム属(Spirillum)、ストレプトバシラス属(Streptobacillus)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)(バクテロイデス属(Bacteroides)、フゾバクテリウム属(Fusobacterium)、プレボテラ属(Prevotella)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas))、アシネトバクター属(Acinetobacter)、とりわけA. バウマニ(A. baumanii)等の、ヒトもしくは動物に病原性の株を含む、グラム陰性細菌の細菌群、細菌科、細菌属、または細菌種に特異的なバクテリオファージによりコードされる。
【0028】
さらに、エンドリシンは、好ましくは、腸内細菌科(エシェリキア属、とりわけ大腸菌、サルモネラ属、シゲラ属、シトロバクター属、エドワージエラ属、エンテロバクター属、ハフニア属、クレブシエラ属、とりわけK. ニューモニエ、モルガネラ属、プロテウス属、プロビデンシア属、セラチア属、エルシニア属)、シュードモナス科(シュードモナス属、とりわけP. エルジノーサ、バークホルデリア属、ステノトロホモナス属、シュワネラ属、スフィンゴモナス属、コマモナス属)、ナイセリア属、モラクセラ属、ビブリオ属、アエロモナス属、ブルセラ属、フランシセラ属、ボルデテラ属、レジオネラ属、バルトネラ属、コクシエラ属、ヘモフィルス属、パスツレラ属、マンヘミア属、アクチノバチルス属、ガードネレラ属、スピロヘータ科(トレポネーマ属およびボレリア属)、レプトスピラ科、カンピロバクター属、ヘリコバクター属、スピリルム属、ストレプトバシラス属、バクテロイデス科(バクテロイデス属、フゾバクテリウム属、プレボテラ属、ポルフィロモナス属)、アシネトバクター属、とりわけA. バウマニ等の、ヒトもしくは動物に病原性の株を含む、グラム陰性細菌の細菌群、細菌科、細菌属または細菌種に対する細胞壁分解活性を有する。
【0029】
好ましくは、エンドリシン部分は、以下の表に示されるように、ファージまたは野生型エンドリシンに由来する。


【0030】
また好ましくは、エンドリシン部分は、シュードモナス・エルジノーサのファージΦKZおよびELのエンドリシン、シュードモナス・プチダのファージOBPのエンドリシン、ファージLUZ24のエンドリシン、またはT4リゾチーム、gp61ムラミダーゼ、ならびにPSP3エンドリシンに由来する。
【0031】
より好ましくは、エンドリシン部分は、SEQ ID NO:1のphiKZgp144、SEQ ID NO:2のELgp188、SEQ ID NO:3のサルモネラのエンドリシン、SEQ ID NO:4の腸内細菌ファージT4エンドリシン、SEQ ID NO:5のアシネトバクター・バウマニのエンドリシン、SEQ ID NO:6の大腸菌ファージK1Fエンドリシン、SEQ ID NO:7のOBPgpLYS、SEQ ID NO:8のPSP3サルモネラエンドリシン(PSP3gp10)、およびSEQ ID NO:9の大腸菌ファージP2エンドリシン(P2gp09)からなる群より選択される。
【0032】
本発明の別の好ましい態様において、本発明に係るエンドリシンまたは改変されたエンドリシン変異体は、アミノ酸配列の改変および/または代替を含む。そのような代替および/または改変は、欠失、挿入および付加、置換もしくはその組み合わせ等の変異、ならびに/または例えば、ビオチン化、アセチル化、PEG化等のアミノ酸残基の化学的変化、アミノ基、SH基、もしくはカルボキシル基の化学的変化を含んでもよい。改変されたエンドリシンおよび/または変更されたエンドリシンは、各々の野生型エンドリシンの溶解活性を示す。しかしながら、活性は、各々の野生型エンドリシンの活性より、より高いかまたはより低い可能性がある。活性は、各々の野生型エンドリシンの活性の約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190もしくは約200%、またはさらにそれ以上であり得る。活性は、例えば(Briers et al., J. Biochem. Biophys Methods 70: 531-533, (2007))等に記載されるプレート溶解アッセイまたは液体溶解アッセイ等の、当技術分野において当業者に周知のアッセイによって測定され得る。
【0033】
本発明の一つの局面において、膜破壊活性をおよび/またはLPS破壊活性を有するペプチドは、リジン、アルギニンおよび/もしくはヒスチジンである一つまたは複数の正に荷電されたアミノ酸を含む、正に荷電されたペプチドを含む。好ましくは、ペプチド中のアミノ酸の80%を超えて、好ましくは90%を超えて、好ましくは100%が、正に荷電されたアミノ酸である。都合のよいことに、カチオン性ペプチドは、エンドリシン変異体のN末端および/またはC末端に融合され、したがってエンドリシン変異体タンパク質のカチオン性を増強する。本発明の別の態様において、エンドリシンに融合されたカチオン性ペプチドは、少なくとも5アミノ酸長、より好ましくは少なくとも9アミノ酸長である。
【0034】
好ましい態様において、エンドリシン変異体は、エンドリシンおよびそれに融合されたペプチドを含み、ペプチドは、約3〜約50、より好ましくは約5〜約20、例えば、約5〜約15アミノ酸残基を含み、かつアミノ酸残基の少なくとも20、30、40、50、60、もしくは70%、より好ましくは少なくとも80%、例えば少なくとも90%は、アルギニンまたはリジン残基のいずれかである。別の好ましい態様において、エンドリシン変異体は、エンドリシンおよびそれに融合されたペプチドを含み、ペプチドは、約3〜約50、より好ましくは約5〜約20、例えば約5〜約15アミノ酸残基を含み、かつアミノ酸残基は、アルギニンまたはリジン残基のいずれかである。
【0035】
好ましくは、改変されたエンドリシン変異体のペプチドストレッチは、エンドリシンのN末端および/またはC末端に融合される。とりわけ好ましい態様において、ペプチドストレッチはエンドリシンのN末端にのみ融合される。しかしながら、N末端およびC末端の双方にペプチドストレッチを有する、改変されたエンドリシン変異体も好ましい。N末端のペプチドストレッチおよびC末端のペプチドストレッチは、同一または別個のペプチドストレッチであり得る。
【0036】
本発明に係る改変されたエンドリシン変異体のペプチドストレッチは、好ましくは、共有結合で酵素に結合される。好ましくは、ペプチドストレッチは、少なくとも5個、より好ましくは少なくとも6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、55個、56個、57個、58個、59個、60個、61個、62個、63個、64個、65個、66個、67個、68個、69個、70個、71個、72個、73個、74個、75個、76個、77個、78個、79個、80個、81個、82個、83個、84個、85個、86個、87個、88個、89個、90個、91個、92個、93個、94個、95個、96個、97個、98個、99または少なくとも100個のアミノ酸残基からなる。とりわけ、約5個〜約100個のアミノ酸残基、約5個〜約50個、または約5個〜約30個のアミノ酸残基を含むペプチドストレッチが好ましい。約6個〜約42個のアミノ酸残基、約6個〜約39個のアミノ酸残基、約6個〜約38個のアミノ酸残基、約6個〜約31個のアミノ酸残基、約6個〜約25個のアミノ酸残基、約6個〜約24個のアミノ酸残基、約6個〜約22個のアミノ酸残基、約6個〜約21個のアミノ酸残基、約6個〜約20個のアミノ酸残基、約6個〜約19個のアミノ酸残基、約6個〜約16個のアミノ酸残基、約6個〜約14個のアミノ酸残基、約6個〜約12個のアミノ酸残基、約6個〜約10個のアミノ酸残基、または約6個〜約9個のアミノ酸残基を含むペプチドストレッチが、より好ましい。
【0037】
本発明の一つの局面において、融合されたペプチドストレッチは、リジン、アルギニンおよび/もしくはヒスチジン、とりわけリジンおよび/もしくはアルギニンの、一つもしくは複数の正に荷電されたアミノ酸残基を含む、カチオン性ペプチド、ならびに/またはポリカチオン性ペプチドである。好ましくは、ペプチドストレッチ中の約20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%を超えるアミノ酸残基が正に荷電されたアミノ酸残基であり、とりわけリジンおよび/またはアルギニン残基である。特に、約100%の正に荷電されたアミノ酸残基、とりわけアルギニンおよび/またはリジン残基からなるペプチドストレッチが好ましく、好ましくは、正に荷電されたアミノ酸残基の約60%〜約70%がリジン残基であり、かつ正に荷電されたアミノ酸残基の約30%〜約40%がアルギニン残基である。約100%の正に荷電されたアミノ酸残基、とりわけアルギニン、および/またはリジン残基からなるペプチドストレッチがより好ましく、好ましくは、正に荷電されたアミノ酸残基の約64%〜約68%がリジン残基であり、かつ正に荷電されたアミノ酸残基の約32%〜約36%がアルギニン残基である。アルギニンのみ、またはリジンのみのいずれかからなるペプチドストレッチも好ましい。
【0038】
とりわけ、SEQ ID NO:10(KRKKRK)の少なくとも1個のモチーフを含むカチオン性ペプチドストレッチ、および/またはポリカチオン性ペプチドストレッチが好ましい。とりわけ、SEQ ID NO:10(KRKKRK)の少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、または17個のモチーフを含むカチオン性ペプチドストレッチが好ましい。少なくとも1個のKRKモチーフ(lys-arg-lys)を含み、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、または33個のKRKモチーフを含むカチオン性ペプチドストレッチがより好ましい。
【0039】
本発明の別の好ましい態様において、カチオン性ペプチドストレッチは、正に荷電されたアミノ酸残基、とりわけリジンおよび/またはアルギニン残基の他に、中性のアミノ酸残基、とりわけグリシンおよび/またはセリン残基を含む。約70%〜約100%、もしくは約80%〜約95%、もしくは約85%〜約90%の正に荷電されたアミノ酸残基、とりわけリジン、アルギニンおよび/またはヒスチジン残基、より好ましくはリジンおよび/またはアルギニン残基からなり、かつ約0%〜約30%、もしくは約5%〜約20%、もしくは約10%〜約20%の中性のアミノ酸残基、とりわけグリシンおよび/またはセリン残基からなるカチオン性ペプチドストレッチが好ましい。約4%〜約8%のセリン残基、約33%〜約36%のアルギニン残基、および約56%〜約63%のリジン残基からなるポリペプチドストレッチが好ましい。とりわけ、Xがリジン、アルギニン、およびヒスチジンを除く任意のアミノ酸である、少なくとも1個のSEQ ID NO:32(KRXKR)のモチーフを含むポリペプチドストレッチが好ましい。とりわけ、少なくとも1個のSEQ ID NO:33(KRSKR)のモチーフを含むポリペプチドストレッチが好ましい。少なくとも約2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、もしくは約20個のSEQ ID NO:32(KRXKR)、またはSEQ ID NO:33(KRSKR)のモチーフを含むカチオン性範囲がより好ましい。
【0040】
約9〜約16%のグリシン残基、約4〜約11%のセリン残基、約26〜約32%のアルギニン残基、および約47〜約55%のリジン残基からなるポリペプチドストレッチも、好ましい。とりわけ、少なくとも1個のSEQ ID NO:34(KRGSG)のモチーフを含むポリペプチドストレッチが好ましい。少なくとも約2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または約20個のSEQ ID NO:34(KRGSG)のモチーフを含むカチオン性範囲がより好ましい。
【0041】
本発明の別の好ましい態様において、カチオン性ペプチドストレッチは、正に荷電されたアミノ酸残基、とりわけリジンおよび/またはアルギニン残基の他に、疎水性アミノ酸残基、とりわけバリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、トレオニン、セリン、プロリンおよびグリシン残基を含み、より好ましくは、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンおよび/またはトリプトファン残基を含む。約70%〜約100%、または約80%〜約95%、または約85%〜約90%の正に荷電されたアミノ酸残基、とりわけリジンおよび/またはアルギニン残基からなり、かつ約0%〜約30%、または約5%〜約20%、または約10%〜約20%の疎水性アミノ酸残基、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、トレオニン、セリン、プロリンおよびグリシン残基、より好ましくは、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンおよび/またはトリプトファン残基からなるカチオン性ペプチドストレッチが好ましい。
【0042】
とりわけ、以下の配列からなる群より選択されるペプチドストレッチが好ましい。

【0043】
好ましくは、ペプチドストレッチは、His-タグ、Strep-タグ、Avi-タグ、Myc-タグ、Gst-タグ、JS-タグ、システイン-タグ、FLAG-タグまたは当技術分野において公知の他のタグ等でなく、かつ、チオレドキシンもしくはマルトース結合タンパク質(MBP)でない。しかしながら、本発明に係るペプチドストレッチ、および/または改変されたエンドリシン変異体は、そのようなタグまたは複数のタグ等をさらに含んでもよい。
【0044】
好ましくは、ペプチドストレッチは、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体を、グラム陰性細菌の外膜を貫いて導く機能を有するが、酵素に融合されることなく投与される場合、全く活性を有しないか、または低い活性のみを有する。改変されたエンドリシン変異体をグラム陰性細菌の外膜を貫いて導く機能は、ペプチドストレッチの、外膜またはLPSを破壊する活性の潜在能力によってもたらされる。
【0045】
特に、以下の改変されたエンドリシン変異体からなる群より選択される、改変されたエンドリシン変異体が好ましい。


【0046】
本発明に係る改変されたエンドリシン変異体、およびしたがって、SEQ ID NO:35〜49、53、57、61〜64および66〜78の特に好ましい改変されたエンドリシン変異体は、例えば精製のためのタグをさらに含んでもよい。好ましくは、改変されたエンドリシン変異体のC末端におけるHis6-タグが好ましい。例えばクローニングの理由等のため、タグは、付加的なアミノ酸残基によって、改変されたエンドリシン変異体に連結され得る。好ましくは、タグは、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のさらなるアミノ酸残基によって、改変されたエンドリシン変異体に連結され得る。好ましい態様において、改変されたエンドリシン変異体は、さらなるアミノ酸残基、リジンおよびグリシン(Lys-Gly)、またはロイシンおよびグルタミン酸(Leu-Glu)によって、改変されたエンドリシン変異体のC末端に連結されたHis6-タグを含む。
【0047】
とりわけ、以下に記載される実施例において使用される、改変されたエンドリシン変異体が好ましい。実施例において使用されるSEQ ID NO:35〜42、53、57、および61の改変されたエンドリシン変異体は、さらなるアミノ酸残基リジンおよびグリシン(Lys-Gly)によって、各々の改変されたエンドリシン変異体にC末端で連結されたHis6-タグを含む。実施例において使用されるSEQ ID NO:43〜49、および75の改変されたエンドリシン変異体は、さらなるアミノ酸残基、ロイシンおよびグルタミン酸(Leu-Glu)によって、各々の改変されたエンドリシン変異体のC末端に連結されたHis6-タグを含む。
【0048】
融合タンパク質は、例えばSambrook et al. 2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual等によって記載されるような標準的クローニング技術を使用して、少なくとも2つの核酸配列を連結することによって構築される。そのようなタンパク質は、例えば、組換えDNA発現システムにおいて産生されてもよい。本発明に係るそのような融合タンパク質は、エンドリシンおよび各々のペプチドストレッチに関する核酸を融合させることによって、得られることができる。
【0049】
一部の融合タンパク質は、細菌中で発現されると毒性であるか、またはタンパク質分解により均一でないかのいずれかの可能性があるため、本ストラテジーでは、他の付加的なタンパク質に融合された、または連結されたこれらの融合タンパク質が発現されてもよい。これらの他の付加的なタンパク質の例は、大腸菌において毒性の抗微生物性ペプチドの発現を媒介することが示されたチオレドキシンである(TrxA mediating fusion expression of antimicrobial peptide CM4 from multiple joined genes in Escherichia coli. Zhou L, Zhao Z, Li B, Cai Y, Zhang S. Protein Expr Purif. 2009 Apr;64(2):225-230)。
【0050】
融合タンパク質の抗微生物機能のためには、タンパク質分解切断によって、付加的な融合タンパク質を除去することが必要である場合がある。pET32発現システム(Novagen)等の市販のキットは、使用されるプロテアーゼに応じて、例えばMGSから、導入されたエンテロキナーゼ切断部位に起因するアラニン残基が残留しているAMGS(SEQ ID NO:31)へのように、融合物のN末端を改変しなくてはならない場合がある。
【0051】
本発明の別の好ましい態様において、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体のペプチドストレッチは、アミノ酸配列の改変および/または変更を含む。そのような変更および/または改変は、欠失、挿入および付加、置換もしくはその組み合わせ等の変異、ならびに/または例えば、ビオチン化、アセチル化、PEG化等のアミノ酸残基の化学的変化、アミノ基、SH基、もしくはカルボキシル基の化学的変化を含んでもよい。
【0052】
本発明は、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体をコードする単離された核酸分子にさらに関連する。本発明は、本発明に係る核酸分子を含むベクターにさらに関連する。ベクターは、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体の、恒常的発現または誘導性の発現を提供してもよい。
【0053】
本発明はまた、改変されたエンドリシン変異体を発現する遺伝学的に改変された適切な宿主細胞等の微生物から、改変されたエンドリシン変異体を得る方法にも関連する。宿主細胞は、細菌もしくは酵母もしくは真菌類等の微生物、または哺乳動物細胞、とりわけヒト細胞等の動物細胞であってもよい。本発明の一つの態様において、酵母細胞はピキア・パストリス細胞である。宿主細胞は、例えば収率、可溶性、費用等の単なる生物工学的理由によって選択されてもよいが、医学的観点で、例えば非病原性細菌または酵母、ヒト細胞から選択されてもよい。
【0054】
改変されたエンドリシン変異体をコードする遺伝物質の宿主細胞中への導入によって、宿主細胞が遺伝学的に改変される、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体の発現を得るため、かつ当業者に周知の遺伝子工学法によって、それらの翻訳および発現を得るため、本発明の別の局面は、適切な宿主細胞を遺伝学的に形質転換する方法に関連する。
【0055】
さらなる局面において、本発明は、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体、および/または本発明に係る改変されたエンドリシン変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子もしくはベクターで、形質転換された宿主を含む組成物、好ましくは薬学的組成物に関連する。
【0056】
本発明の好ましい態様において、組成物は、例えばEDTA等の金属キレート剤、TRIS、乳酸、ラクトフェリン、ポリミキシン、クエン酸、および/または例えばVaaraにより記載される他の物質(Agents that increase the permeability of the outer membrane. Vaara M. Microbiol Rev. 1992 Sep; 56(3): 395-441)等の、グラム陰性細菌の外膜を透過させる付加的な剤を含む。上に記述された透過剤の組み合わせを含む組成物も、好ましい。とりわけ、約10μM〜約100 mM EDTA、より好ましくは約50μM〜約10 mM EDTA、より好ましくは約0.5 mM〜約10 mM EDTA、より好ましくは約0.5 mM〜約2 mM EDTA、より好ましくは約0.5 mM〜約1 mM EDTAを含む組成物が、好ましい。しかしながら、約10μM〜約0.5 mM EDTAを含む組成物も好ましい。約0.5 mM〜約2 mM EDTA、より好ましくは約1 mM EDTA、およびさらに約10〜約100 mM TRISを含む組成物も、好ましい。
【0057】
本発明はまた、医用薬剤としての使用のための、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体、および/または本発明に係る改変されたエンドリシン変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸で、形質転換された宿主にも関連する。
【0058】
さらなる局面において、本発明は、病原性グラム陰性細菌に関連する障害、疾患または病状の処置および/または予防のための医用薬剤の製造における、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体、および/または本発明に係る改変されたエンドリシン変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含むベクターで、形質転換された宿主の使用に関連する。とりわけ、障害、疾患または病状の処置および/または予防は、腸内細菌科(エシェリキア属、とりわけ大腸菌、サルモネラ属、シゲラ属、シトロバクター属、エドワージエラ属、エンテロバクター属、ハフニア属、クレブシエラ属、とりわけK. ニューモニエ、モルガネラ属、プロテウス属、プロビデンシア属、セラチア属、エルシニア属)、シュードモナス科(シュードモナス属、とりわけP. エルジノーサ、バークホルデリア属、ステノトロホモナス属、シュワネラ属、スフィンゴモナス属、コマモナス属)、ナイセリア属、モラクセラ属、ビブリオ属、アエロモナス属、ブルセラ属、フランシセラ属、ボルデテラ属、レジオネラ属、バルトネラ属、コクシエラ属、ヘモフィルス属、パスツレラ属、マンヘミア属、アクチノバチルス属、ガードネレラ属、スピロヘータ科(トレポネーマ属およびボレリア属)、レプトスピラ科、カンピロバクター属、ヘリコバクター属、スピリルム属、ストレプトバシラス属、バクテロイデス科(バクテロイデス属、フゾバクテリウム属、プレボテラ属、ポルフィロモナス属)、アシネトバクター属、とりわけA. バウマニ等の、ヒトもしくは動物に病原性の株を含む、グラム陰性細菌の細菌群、細菌科、細菌属または細菌種によって引き起こされる可能性がある。好ましくは、障害、疾患または病状は、シュードモナス属、とりわけシュードモナス・エルジノーサ、および/またはシュードモナス・プチダ、バークホルデリア属、とりわけバークホルデリア・シュードマレイ、および/またはバークホルデリア・ソラナセラム(Burkholderia solanacearum)、サルモネラ属、とりわけサルモネラ・チフィムリウムおよび/またはサルモネラ エンテリティディス(Salmonella enteritidis)、アシネトバクター属、とりわけアシネトバクター・バウマニ、大腸菌および/またはクレブシエラ属、とりわけクレブシエラ・ニューモニエにより引き起こされる可能性がある。
【0059】
本発明は、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体、および/または本発明に係る改変されたエンドリシン変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸で、形質転換された宿主を含む医用薬剤にさらに関連する。
【0060】
さらなる局面において、本発明は、有効量の本発明に係る改変されたエンドリシン変異体、および/または本発明に係る改変されたエンドリシン変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸で形質転換された有効量の宿主、または本発明に係る組成物を対象に投与する段階を含む、処置および/または予防を必要とする対象において障害、疾患または病状を処置する方法に関連する。対象は、ヒトまたは動物であってもよい。
【0061】
好ましくは、処置の方法は、グラム陰性細菌、特に上に列挙されたグラム陰性細菌により引き起こされる感染症の処置、および/または予防のためであってもよい。とりわけ処置の方法は、グラム陰性細菌、特に上に列挙されたグラム陰性細菌によって引き起こされる皮膚、軟組織、呼吸器系、肺、消化管、眼、耳、歯、鼻咽頭、口腔、骨、膣の感染症、菌血症の創傷および/または心内膜炎の、処置および/または予防のためであってもよい。
【0062】
本発明に係る処置(または予防)の方法において使用される投与量および投与経路は、処置される特定の疾患/感染部位に依存する。投与経路は、例えば、経口的、局所的、鼻咽頭内、非経口的、吸入、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、髄腔内、気管支内、肺内、骨内、心臓内、関節内、直腸内、膣内、または他の任意の投与経路であってもよい。
【0063】
本発明に係る改変されたエンドリシン変異体、および/または本発明に係る改変されたエンドリシン変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸で形質転換された有効量の宿主、または本発明に係る組成物の、感染部位(または感染の危険にさらされた部位)に対する適用に関して、感染部位に到達するまで、プロテアーゼ、酸化、免疫応答等の環境的な影響から活性化合物を保護する製剤が使用されてもよい。したがって、製剤は、カプセル剤、糖剤、ピル剤、粉剤、坐剤、乳剤、懸濁剤、ゲル剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤、注射可能溶液、シロップ剤、スプレー剤、吸入剤、または他の任意の医学的に妥当な生薬製剤であってもよい。好ましくは、生薬製剤は、適切な担体、安定剤、香料、緩衝剤、または他の適切な試薬を含んでもよい。例えば、局所適用に関して、製剤は、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤、または硬膏剤であってもよく、鼻咽頭適用に関して、製剤は、スプレー剤で鼻部に適用される生理食塩水であってもよい。経口投与に関して、例えば、腸管内等の特定の感染部位の処置および/または予防の場合、感染部位に到達するまで、胃腸管の過酷な消化性環境から本発明に係る改変されたエンドリシン変異体を保護することが必要であり得る。したがって、胃における消化の初期段階に生存し、かつ後に本発明に係る改変されたエンドリシン変異体を腸管環境中に分泌する細菌が、担体として使用され得る。
【0064】
本発明の特定の態様において、シュードモナス、特にシュードモナス・エルジノーサによって引き起こされる障害、疾患または病状、とりわけ腸管の罹患で特に乳児の腸管の罹患、髄膜の感染症で例えば出血性髄膜炎、中耳の感染症、皮膚の感染症(壊疽性膿瘡)で特に熱傷、尿路の感染症、鼻炎、菌血症性肺炎、の処置および/または予防のための、とりわけ、患者が嚢胞性線維症、または白血病等の血液悪性腫瘍を患っているか、もしくは免疫抑制治療に起因する好中球減少症、敗血症で特に長期の静脈内カテーテル留置または尿道カテーテル留置、侵襲性外科手術および重度の熱傷によるもの、心内膜炎で特に患者が静脈内薬物使用者である場合、または開心術の合併症を伴う患者、特に汚染された眼科溶液使用後または重度の顔面熱傷後に極めて破壊的な眼感染症を患う患者、骨軟骨炎、特に汚染された衣類を介する重度の外傷または刺創の結果として起こる骨軟骨炎を伴う患者、の処置および/または予防のための、医用薬剤の製造における、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体、および/または本発明に係る改変されたエンドリシン変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含むベクターで形質転換された宿主の使用。
【0065】
本発明の別の特定の態様において、障害、疾患または病状は、バークホルデリア・シュードマレイによって引き起こされる、とりわけホイットモア病(Whitmore’s Disease)、慢性肺炎、とりわけ患者が外傷性皮膚病変を有する敗血症である。
【0066】
本発明の別の特定の態様において、障害、疾患または病状は、サルモネラ・チフィムリウムおよびサルモネラ エンテリティディスによって引き起こされる、とりわけ、急性胃腸炎および局所的化膿プロセス、特に骨髄炎、心内膜炎、胆嚢炎であり、かつ、とりわけ患者が2歳未満で、サルモネラ・チフィムリウムによって引き起こされる髄膜炎である。
【0067】
本発明の別の特定の態様において、障害、疾患または病状は、アシネトバクター・バウマニによって引き起こされる、とりわけ静脈内カテーテル留置の結果としての、特に気管支炎、肺炎、創傷感染症および敗血症である。
【0068】
本発明の別の特定の態様において、障害、疾患または病状は、大腸菌によって引き起こされる、とりわけ腸管外感染症、特に虫垂炎、化膿性胆嚢炎、腹膜炎、化膿性髄膜炎および尿路の感染症、腸内の大腸菌感染、特に流行性腸炎、ならびに赤痢、敗血症、腸毒血症、乳腺炎および赤痢に類似の感染性疾患である。
【0069】
本発明の別の特定の態様において、障害、疾患または病状は、クレブシエラ・ニューモニエによって引き起こされる、とりわけ肺炎、菌血症、髄膜炎および尿路の感染症である。
【0070】
処置される(または予防される)感染症が、多剤耐性細菌株によって、とりわけ一つもしくは複数の以下の抗生物質:ストレプトマイシン、テトラサイクリン、セファロチン、ゲンタマイシン、セフォタキシム、セファロスポリン、セフタジジム、またはイミペネムに対して耐性の株によって引き起こされる場合、好ましくは、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体が医療処置のために使用される。さらに、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体は、抗生物質、ランチビオティクス、バクテリオシン、またはエンドリシン等の従来の抗菌剤との併用でそれを投与する処置の方法において、使用され得る。
【0071】
本発明はまた、少なくとも一つのコンパートメントが、本発明に係る一つもしくは複数の改変されたエンドリシン変異体、および/もしくは本発明に係る改変されたエンドリシン変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸で、形質転換された一つもしくは複数の宿主、または本発明に係る組成物を含む、一つまたは複数のコンパートメントを含む薬学的パックにも関連する。
【0072】
別の局面において、本発明は、本発明に係る一つもしくは複数の改変されたエンドリシン変異体、および/または本発明に係る改変されたエンドリシン変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸で形質転換された一つもしくは複数の宿主を、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体と混合する段階を含む、薬学的組成物を調製するプロセスに関連する。
【0073】
さらなる局面において、本発明に係る組成物は、美容用組成物である。いくつかの細菌種は、皮膚等の患者の身体の環境的に曝露された表面で刺激を引き起こし得る。そのような刺激を予防するため、または細菌性病原体の軽微な症状を取り除くため、既存の、または新たに定着する病原性グラム陰性細菌を分解させるのに十分量の、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体を含む特別な美容用調製物が利用されてもよい。
【0074】
さらなる局面において、本発明は、医薬、食品、または飼料、もしくは環境診断における診断手段、とりわけグラム陰性細菌によって引き起こされる細菌感染症の診断にとりわけ関する診断手段として使用するための、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体に関連する。この点において、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体は、病原性細菌、とりわけグラム陰性の病原性細菌を特異的に分解する手段として使用されてもよい。本発明に係る改変されたエンドリシン変異体による細菌細胞の分解は、Triton X-100等の界面活性剤、またはポリミキシンB等の細菌細胞のエンベロープを脆弱化させる他の添加剤の添加によって強化され得る。PCR、核酸ハイブリダイゼーションもしくはNASBA(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)等の核酸ベースの方法、IMS、免疫蛍光もしくはELISA技術等の免疫学的方法、または個別の細菌群もしくは細菌種に特異的なタンパク質(例えば、腸内細菌のβ-ガラクトシダーゼ、コアグラーゼ陽性株のコアグラーゼ)を使用する酵素学的アッセイ等の、細菌細胞の細胞内容物に依存する他の方法を使用する特異的な細菌検出のための初期段階として、特異的な細胞分解が必要である。
【0075】
さらなる局面において、本発明は、食材の、食品加工器具の、食品加工設備の、棚および食品保管領域等の食材と接触する表面の、ならびに病原性細菌、条件的病原細菌、もしくは他の望ましくない細菌が食物材料に潜在的に感染し得る全ての他の状況の、医療装置の、ならびに、病院および手術室の全ての種類の表面の、グラム陰性細菌汚染の除去、減少および/または予防のための、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体の使用に関連する。
【0076】
とりわけ、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体は、消毒剤として予防的に使用されてもよい。消毒剤は、手術の前もしくは後、または例えば血液透析の間に使用されてもよい。さらに、早産児および免疫不全患者、または人工器管を必要とする対象者が、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体で処置されてもよい。処置は、予防的、または急性感染症の期間中、のいずれであってもよい。同一の状況において、特にシュードモナス・エルジノーサ(FQRP)、アシネトバクター種、ならびに例えば大腸菌、サルモネラ、シゲラ、シトロバクター、エドワージエラ、エンテロバクター、ハフニア、クレブシエラ、モルガネラ、プロテウス、プロビデンシア、セラチアおよびエルシニア種等の腸内細菌科等の抗生物質耐性株による院内感染症は、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体で、予防的、または急性期の間に処置されてもよい。したがって、本発明に係る改変されたエンドリシン変異体はまた、界面活性剤、テンシド(tenside)、溶媒、抗生物質、ランチビオティック、またはバクテリオシン等の、消毒溶液中で有用な他の成分と併用して、殺菌剤として使用されてもよい。
【0077】
本発明に係る改変されたエンドリシン変異体の、例えば、病院、歯科手術、獣医学、厨房または浴室等における殺菌剤としての使用に関して、改変されたエンドリシン変異体は、例えば、液体、パウダー、ゲルの形態で、またはウェットワイプ製品もしくは消毒シート製品の成分で、組成物中に調製され得る。組成物は、各々の使用および形態に関して、適切な担体、添加剤、希釈剤、および/または賦形剤をさらに含んでもよいが、EDTA等の抗微生物活性を支持する剤、または融合タンパク質の抗微生物活性を増強する剤も含んでもよい。融合タンパク質はまた、アルコール、アルデヒド、酸化剤、フェノール類、四級アンモニウム化合物、またはUVライト等の一般的な殺菌剤と共に使用されてもよい。例えば、表面、対象物および/または装置の消毒に関して、改変されたエンドリシン変異体が、該表面、対象物および/または装置に適用され得る。この適用は、例えば、消毒組成物を布地または布切れ等の任意の手段で湿らせる、スプレーする、注入することによってなされてもよい。融合タンパク質は、各々の適用および完全な抗微生物活性を得るよう意図された「反応時間」に応じて、様々な濃度で使用されてもよい。
【0078】
本発明のさらなる適用性の範囲は、以下に提供される詳細な記載から明確になると考えられるが、本発明の精神および範囲内での様々な変更および改変は、詳細な記載から当業者に明白になると考えられるため、詳細な記載および特定の実施例は、本発明の好ましい態様を示すが、例示のためのみに提供されることが理解されるべきである。前述の一般的な記載、および以下に続く詳細な記載の双方は、例示的かつ説明的であるのみであって、かつ特許請求される本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0079】
以下の実施例は本発明を説明するが、限定的と見なされるべきでない。そうでないと示されない限り、例えば、Sambrock et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkにより記載されるような、分子生物学の標準的方法が使用された。
【実施例】
【0080】
実施例1:改変されたphiKZgp144およびELgpgp188エンドリシン変異体のクローニング、発現ならびに精製
SEQ ID NO:1に示されるphiKZgp144およびSEQ ID NO:2に示されるELgp188は、シュードモナス・エルジノーサのファージφKZおよびELに由来するモジュラーエンドリシンであり、N末端ペプチドグリカン結合ドメイン、およびC末端触媒ドメインを含む(Briers et al., 2007)。
【0081】
phiKZgp144およびELgp188のオープンリーディングフレーム(ORF)の増幅に関して、標準5’プライマー(phiKZgp144に関して:

;ELgp188に関して

)、ならびにSEQ ID NO:81および82の標準3’プライマー(phiKZgp144に関して:

;ELgp188に関して:

)を適用したPCRを使用した。phiKZgp144またはELgp188をコードするオープンリーディングフレームの5’末端を、正に荷電された9つの残基(Lys-Arg-Lys-Lys-Arg-Lys-Lys-Arg-Lys-SEQ ID NO:11)をコードする遺伝子断片を伴って伸長させるため、伸長5’プライマー(phiKZgp144に関して:

;ELgp188に関して:

)、ならびにSEQ ID NO:81および82の標準3’プライマーを用いて、テールPCRを適用した。製造者のプロトコールに従って、pEXP5CT/TOPO(登録商標)発現ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)に、PCR産物をクローニングした。tRNAの枯渇を回避し、かつフレームシフトのリスクを減少させるため(利用可能なリジンのトリプレットはAAAおよびAAGのみの2つであり、長いA-ストレッチをもたらす)、リジントリプレットに加えて、アルギニントリプレットを組み入れた。さらなるポリカチオン性カセットを設計されたBamHI制限部位へ挿入することによって、追加のカチオン性残基を有するテールが伸びる。この挿入は、各接合部位に、アルギニントリプレットおよびセリントリプレットを生み出す(図1)。ポリカチオン性ペプチドストレッチを4つまで、phiKZgp144およびELgp188の双方に融合し、正に荷電された各々9個、19個、29個および39個のアミノ酸残基をN末端に含む(POLY)n-gp144、または(POLY)n-gp188(n=1、2、3、4)と称した。したがって、以下の構築物を大腸菌BL21(DE3)pLysS細胞中で発現させた(37℃で対数増殖中の細胞、1 mM IPTGを使用して誘導、37℃で4時間に渡って発現)。

【0082】
改変されたエンドリシン変異体、POLY-gp144(SEQ ID NO:35)、(POLY)2-gp144(SEQ ID NO:36)、POLY-gp188(SEQ ID NO:39)、および(POLY)2-gp188(SEQ ID NO:40)をさらなる研究に使用した。C末端の6×His-タグを使用するNi2+親和性クロマトグラフィー(1 ml His-トラップNi-NTAカラムを使用するAkta Fast Protein Liquid Chromatography)によって、タンパク質を精製した。大腸菌の発現培養液1リットル当たりの全収率を、タンパク質濃度の分光光度的測定および精製された貯蔵溶液の全容量によって決定した。高い純度を確保するため、gp144誘導体(50 mMイミダゾール)と比較して、よりストリンジェントな条件下(65 mMイミダゾール)で、gp188誘導体の精製を行った。大腸菌の発現培養液1リットル当たりの全収率を、表1に示す。
【0083】
(表1)大腸菌の発現培養液1リットル当たりの、エンドリシン誘導体の組換え精製の収率

【0084】
精製された貯蔵溶液は、約90%純粋であった。POLY誘導体の精製溶液の質量分光分析によって、大腸菌50Sリボソームサブユニットタンパク質L2、および16S rRNAウリジン-516シュードウリジラート合成酵素を追跡した。全てのphiKZgp144誘導体は、β-メルカプトエタノールの添加により単量体へと変換され得る多量体形成を示し、これは分子間ジスルフィド結合が多量体化を引き起こすことを示している。
【0085】
実施例2:改変されたphiKZgp144およびELgp188変異体の抗菌活性
対数増殖期の(約106/ml)P. エルジノーサPAO1p細胞(Pirnay JP et al. (2003), J Clin Microbiol., 41(3): 1192-1202)を100倍希釈し(最終密度は約106/ml)、緩衝剤(20 mM NaH2PO4-NaOH pH 7.4;0.5 M NaCl;0.5 Mイミダゾール)において100μg/mlの最終濃度で、10μgの各々の未透析タンパク質(未改変エンドリシンphiKZgp144(SEQ ID NO:1)およびELgp188(SEQ ID NO:2)、ならびに改変されたエンドリシン変異体、POLY-gp144(SEQ ID NO:35)、(POLY)2-gp144(SEQ ID NO:36)、POLY-gp188(SEQ ID NO:39)および(POLY)2-gp188(SEQ ID NO:40)と共に室温で保温した。1時間後、細胞懸濁液をPBS緩衝剤中で希釈し(10e-5、10e-4および10e-3)、プレーティングした(標準LB培地、37℃で一晩培養)。さらに、PBS緩衝剤中に細胞を含む陰性対照をプレーティングした。一晩保温後、残留コロニーを計数した。計数された細胞数に基づいて、対数ユニット(=log10N0/Ni)での相対的な不活性化(%)(=100-(Ni/N0)*100、N0=未処置細胞の数、およびNi=処置された細胞数)として、抗菌活性を算出した(表2)。全ての試料を6回反復した。平均値/標準偏差を表す。スチューデントのt検定を使用して、統計学的解析を行った。
【0086】
陰性対照と比較して、未改変エンドリシンphiKZgp144およびELgp188は、細胞数を有意に減少させない。この知見は、グラム陰性細菌の細胞壁を分解するエンドリシンの障壁としての、外膜の効力を示す。対照的に、表2に示されるように、改変されたエンドリシンPOLY-gp144、(POLY)2-gp144、POLY-gp188、および(POLY)2-gp188との保温は、細菌細胞数の有意な減少(POLY-gp144に関して99.85±0.09%、およびPOLY-gp188に関して98.0±0.2%)を引き起こす(α=0.05)。ポリカチオン性ペプチドストレッチの長さの増加は、特にphiKZgp144の場合、抗菌活性をさらに強化する傾向がある((POLY)2-gp144に関して、99.98±0.02%または3.7±0.3対数ユニットまでの減少が1時間以内に達成される)。
【0087】
さらに、実験によって、改変されたエンドリシンphiKZgp144は、改変されたエンドリシンELgp188よりも、より高い抗菌活性を有することが実証された。
【0088】
(表2)未改変ならびに改変されたphiKZgp144およびELgp188変異体エンドリシンの抗菌効果

【0089】
したがって、phiKZgp144(SEQ ID NO:1)への、9つのカチオン性残基の短いペプチドストレッチのN末端への添加は既に、1時間以内にほぼ99.9%の細胞を死滅させるのに十分であることが実施例によって実証された。ポリ-L-リジンは、内在性の抗菌活性も有するが、この性質は、これまでのところ、少なくとも20残基の多量体によるものだけである(Vaara and Vaara, 1983a、1983b)。しかしながら、ポリカチオン性ペプチドストレッチおよびエンドリシンの協調作用は、細胞を死滅させる。
【0090】
さらなる実験において、改変されたエンドリシンPOLY-gp144を50 mM KH2PO4/K2HPO4 pH7に対して透析し、上に記述された未透析のタンパク質溶液の代わりに使用した。それによって、不活性化のレベルは、2.9±0.3対数ユニットから3.9±0.2対数ユニットまでさらに増加した。
【0091】
実施例3:非毒性の組換え産生の宿主としてのピキア・パストリスにおける、改変されたphiKZgp144およびELgp188変異体の発現
POLY-gp144(SEQ ID NO:35)をコードするオープンリーディングフレームを、pPICZαAシャトルベクター(Invitrogen)にクローニングし、続いて相同組換えによってP. パストリスのゲノムに組み込んだ(製造者によって示される;P. パストリスX33細胞(Invitrogen))。BMMY培地中でメタノール(1%)を用いて遺伝子発現を誘導し、1日後、3日後、および4日後に、酵素活性の存在に関して上清を解析した。したがって、1日後、3日後、および4日後に、30μlの量のP. パストリスの発現培養液の上清を、270μlのクロロホルムで透過処理されたP. エルジノーサPAO1p細胞(Pirnay JP et al. (2003), J Clin Microbiol., 41(3): 1192-1202)に添加した(緩衝剤条件:KH2PO4/K2HPO4 I=120 mM pH 6.2)。続いて、分光光度学的に光学密度を記録した(図2)。光学密度の低下は、P. パストリスによる壁分解酵素の分泌を示す。陰性対照として、発現プラスミドを含まないP. パストリスX33を包含した。したがって、上清試料を添加した場合の基質の溶解は、POLY-gp144(SEQ ID NO:35)が、P. パストリスにより成功裡に組換え産生され、かつ分泌されたことに関する尺度となる。1日後に、限定的な酵素活性を検出することができた。4日目には上清中にいかなる有意な活性の増加も観察されなかったため、最大活性は3日後に観察された。P. パストリスの細胞密度に対して、いかなる毒性効果も観察されなかった。
【0092】
P. パストリスによる発現の間、ベクターのα分泌シグナルは、周囲の培地への組換えタンパク質の分泌をもたらすが、限られた種類のみの他のタンパク質が分泌されるため、精製が簡易化される。オープンリーディングフレームの5’末端中のBamHI制限部位によって、さらなるポリカチオン性ペプチドストレッチをコードするより多くのカセットの付加が可能になる。
【0093】
実施例4:異なるポリカチオン性ペプチドストレッチを有する、さらなる改変されたエンドリシンphiKZgp144変異体
phiKZgp144および他のエンドリシンの、ポリカチオン性ペプチド変異体の潜在能力を試験しかつ比較するため、タンパク質のN末端に異なるポリカチオン性ペプチドを有するようコード遺伝子を合成した。ペプチドストレッチの変動は、リンカー配列の長さ、組成および挿入に関わる。一方で、N末端の複合的KRKモチーフを有するさらなるポリカチオン性ペプチドストレッチを産生した。他方で、アルギニン(R)またはリジン(K)のみからなるポリカチオン性ペプチドストレッチを産生した。さらに、長いポリカチオン性ペプチドストレッチの翻訳を増強するために、リンカー配列を含むポリカチオン性ペプチドストレッチを産生した。
【0094】
異なる産物をpET32b発現ベクター(Novagen, Darmstadt, Germany)にクローニングした。大腸菌宿主に対するポリカチオン性ペプチドの潜在的な毒性を減少させるため、pET32bを使用した。ベクターにコードされる融合タンパク質(チオレドキシン)は、ポリカチオン性ペプチドを遮蔽し、かつ精製段階の間に除去され得る。
【0095】
したがって、OD600nm=0.6の光学密度に達するまで、以下の改変されたエンドリシン変異体を、大腸菌BL21(DE3)細胞において37℃で発現させた。続いて、1 mM IPTG(最終濃度)でタンパク質発現を誘導し、4時間に渡って発現を行った。続いて、6000gで20分間に渡る遠心分離によって大腸菌細胞を収集し、S-tag精製キット(Novagen, Darmstadt, Germany)に従って細胞破壊およびタンパク質精製を行った。

【0096】
S-Tag(商標)rEK精製キット(Novagen, Darmstadt, Germany)を使用して、全てのタンパク質を精製した。pET32bベクターを使用して、発現されたタンパク質は、宿主に対して毒性でなく、産生されたタンパク質の高い収率をもたらした。精製された貯蔵溶液は、高い純度を示した。
【0097】
対数増殖期の(約106/ml)P. エルジノーサPAO1p細胞(熱傷創傷単離株、Queen Astrid Hospital, Brussels;Pirnay JP et al. (2003), J Clin Microbiol., 41(3): 1192-1202)を100倍希釈し(最終密度は約106/ml)、緩衝剤(20 mM NaH2PO4-NaOH pH7.4;0.5 M NaCl;0.5 Mイミダゾール)において100μg/mlの最終濃度で、上に列挙された10μgの各々の未透析のタンパク質と共に室温で保温した。1時間後、細胞懸濁液を1:100に希釈し、LB上にプレーティングした。さらに、緩衝剤(20 mM NaH2PO4-NaOH pH7.4;0.5 M NaCl;0.5 Mイミダゾール)を使用して、陰性対照をプレーティングした。37℃で一晩保温後、残留コロニーを計数した。計数された細胞数に基づいて、相対的な不活性化(%)(=100-(Ni/N0)*100、N0=未処置細胞の数、およびNi=処置された細胞数)として、抗菌活性を算出した(表3)。全ての試料を少なくとも4回反復した。
【0098】
(表3)未改変ならびに改変されたphiKZgp144およびELgp188エンドリシンの抗菌効果

【0099】
陰性対照と比較して、未改変phiKZgp144は細胞数を有意に減少させない。それ以上に、N末端に複合的KRKモチーフのポリカチオン性ペプチドを備えた改変されたphiKZgp144変異体は、抗微生物効果を極めて増強する。しかしながら、計測されたように、リジンまたはアルギニンのホモマーペプチドストレッチを有する変異体も、未改変phiKZgp144と比較して細胞の有意な減少を示す。さらに、38アミノ酸残基のポリカチオン性ペプチドストレッチを有し、かつリンカー配列を含む変異体も、抗微生物効果を極めて増強する。
【0100】
実施例5:サルモネラ・チフィムリウムのファージPSP3の改変されたエンドリシン変異体
SEQ ID NO:8のPSP3gp10は、サルモネラ・チフィムリウムのファージPSP3に由来する165アミノ酸残基の球状エンドリシンであり、触媒λ様ムラミダーゼドメインを含む。BLASTpおよびPfam解析によって予測されるように、PSP3gp10エンドリシンは、アミノ酸残基約34位からアミノ酸残基約152位の範囲に、その触媒ドメインを含む。
【0101】
以下のPCRパラメータを使用して、Hot Start TaqポリメラーゼPCR反応(Qiagen, Germany)において、ファージPSP3の精製されたゲノムDNAを、PSP3gp10のオープンリーディングフレーム(ORF)の増幅のための鋳型として使用した。

【0102】
PCRに関して、標準5’プライマー

および標準3’プライマー

を使用した。PSP3gp10をコードするORFの5’末端を、ポリカチオン性の9-merのペプチドLys-Arg-Lys-Lys-Arg-Lys-Lys-Arg-Lys(SEQ ID NO:11)をコードする遺伝子断片を伴って伸長させるため、伸長5’プライマー

およびSEQ ID NO:51の標準3’プライマーを用いたテールPCR(同一パラメータを用いたHot Start TaqポリメラーゼPCR)を適用した。元の未改変PSP3gp10のPCR断片およびPK伸長された断片の双方を、製造者のTAクローニングプロトコールに従って、pEXP5CT/TOPO(登録商標)発現ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)にライゲーションした。
【0103】
対数増殖中の大腸菌BL21(λDE3)pLysS細胞(Invitrogen)において、1 mM IPTG(イソプロピルチオガラクトシド)を用いて誘導後、37℃で4時間に渡ってSEQ ID NO:8のPSP3gp10、およびSEQ ID NO:53のPKPSP3gp10の組換え発現を行う。pEXP5CT/TOPO(登録商標)発現ベクターによってコードされるC末端の6×His-タグを使用して、Ni2+親和性クロマトグラフィー(Akta FPLC、GE Healthcare)によって双方のタンパク質を精製した。以下の4つの段階で、Ni2+親和性クロマトグラフィーを全て室温で行う:
1.流速0.5 ml/分で、10カラム容量の洗浄緩衝剤(60 mMイミダゾール、0.5 mM NaClおよび20 mM NaH2PO4-NaOH pH 7.4)を用いた、Histrap HP 1 mlカラム(GE Healthcare)の平衡化。
2.流速0.5 ml/分で、Histrap HP 1 mlカラムへの全溶解物(所望のエンドリシンを含む)のローディング。
3.流速1 ml/分で、15カラム容量の洗浄緩衝剤を用いたカラムの洗浄。
4.流速0.5 ml/分で、10カラム容量の溶出緩衝剤(500 mMイミダゾール、5 mM NaClおよび20 mM NaH2PO4-NaOH pH 7.4)を用いた、カラムからの結合エンドリシンの溶出。
【0104】
大腸菌の発現培養液1リットル当たりの、双方の精製組換えタンパク質の全収率を表4に示す。280 nmの波長でのタンパク質濃度の分光光度学的測定、および精製された貯蔵溶液の全容量によって、値を決定した。溶出緩衝剤(20 mM NaH2PO4-NaOH pH 7.4;0.5 M NaCl;500 mMイミダゾール)中の、各々PSP3gp10およびPKPSP3gp10からなる精製された貯蔵溶液は、SDS-PAGEゲル上で可視的に決定される際、少なくとも90%純粋であった。
【0105】
(表4)大腸菌の発現培養液1リットル当たりの、精製された組換えPSP3gp10エンドリシンおよびその改変された変異体、PKPSP3gp10の収率

【0106】
SEQ ID NO:53のPKPSP3gp10エンドリシンの抗グラム陰性スペクトラムを決定するため、1.315μM PKPSP3gp10エンドリシンおよび0.5 mM EDTAの組み合わせを、臨床分離のP. エルジノーサ株PAO1pおよびBr667、大腸菌WK6、ならびにサルモネラ・チフィムリウムに対して試験した(表5を参照のこと)。対数増殖中の細菌細胞(0.6のOD600nm)を、約106/mlの最終密度に100倍希釈し、各々の株を、各々0.5 mM EDTAを含まない、かつ含む組み合わせにおいて、未改変エンドリシンPSP2gp10(SEQ ID NO:8)および改変されたエンドリシンPKPSP3gp10(SEQ ID NO:53)と共に、撹拌せず室温で30分間に渡って保温した。保温に関して、緩衝剤(20 mM NaH2PO4-NaOH pH 7.4;0.5 M NaCl;0.5 Mイミダゾール)中で各々のエンドリシンを使用し、1.315μMのエンドリシン最終濃度で保温を行った。対照として、0.5 mM EDTAを含む(上に概要されたものと同一の緩衝剤中で)が、エンドリシンを含まない場合も、各株を30分間保温した。
【0107】
(表5)使用されたグラム陰性株のリスト

*Pirnay JP et al. (2003).Molecular epidemiology of Pseudomonas aeruginosa colonization in a burn unit: persistence of a multidrug-resistant clone and a silver sulfadiazine-resistant clone. J Clin Microbiol., 41(3);1192-1202.
【0108】
保温後、細胞懸濁液を3回希釈し(各々105-104-103細胞/ml)、100μlの各希釈液をLB培地上にプレーティングした。37℃で一晩保温後、残留コロニーを計数した。計数された細胞数に基づいて、対数ユニットでの相対的な不活性化として(=log10N0/Ni、N0=未処置細胞の数、およびNi=処置された細胞数)、抗菌活性を算出した(表6)。
【0109】
(表6)異なる対数増殖中のグラム陰性種に対する、EDTA-Na2を含むかつ含まない場合の、未改変エンドリシン(PSP3gp10)ならびにその改変されたエンドリシン変異体(PKPSP3gp10)の抗菌活性

【0110】
全ての試料を3回反復した。平均値+/-標準偏差を表す。観察された最大の減少は、10細胞/mlの検出レベルおよび初期細胞密度に依存する。PAO1pに関して、EDTAは、未改変PSP3gp10エンドリシンおよびその改変された変異体、PKPSP3gp10の双方と、相乗的に作用する。
【0111】
実施例6:大腸菌ファージP2の改変されたエンドリシン変異体
SEQ ID NO:9のP2gp09は、大腸菌ファージP2に由来する165アミノ酸残基の球状のエンドリシンであり、触媒λ様ムラミダーゼドメインを含む。BLASTpおよびPfam解析によって予測されるように、P2gp09エンドリシンは、アミノ酸残基約34位からアミノ酸残基約152位の範囲に、その触媒ドメインを含む。
【0112】
以下のPCRパラメータを使用して、Pfuポリメラーゼ(Fermentas)を用いた標準PCR反応において、ファージP2の精製されたゲノムDNAを、P2gp09のオープンリーディングフレーム(ORF)の増幅のための鋳型として使用した。

【0113】
PCRに関して、標準5’プライマー

および標準3’プライマー

を使用した。P2gp09をコードするORFの5’末端を、ポリカチオン性9-merのペプチドLys-Arg-Lys-Lys-Arg-Lys-Lys-Arg-Lys(SEQ ID NO:11)をコードする遺伝子断片を伴って伸長させるため、伸長5’プライマー

およびSEQ ID NO:55の標準3’プライマーを用いて、テールPCR(上の標準PCRと同一パラメータを用いた)を適用した。元の未改変P2gp09のPCR断片および伸長された断片の双方を、製造者のTAクローニングプロトコールに従って、pEXP5CT/TOPO(登録商標)発現ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)にライゲーションした。
【0114】
対数増殖中の大腸菌BL21(λDE3)pLysS細胞(Invitrogen)において、1 mM IPTG(イソプロピルチオガラクトシド)を用いて誘導後、37℃で4時間に渡ってSEQ ID NO:9のP2gp09、およびSEQ ID NO:57のPKP2gp09の組換え発現を行う。pEXP5CT/TOPO(登録商標)発現ベクターによりコードされるC末端の6×His-タグを使用して、Ni2+親和性クロマトグラフィー(Akta FPLC、GE Healthcare)によって双方のタンパク質を精製した。以下の4つの段階で、Ni2+親和性クロマトグラフィーを全て室温で行う:
1.流速0.5 ml/分で、10カラム容量の洗浄緩衝剤(60 mMイミダゾール、0.5 mM NaClおよび20 mM NaH2PO4-NaOH pH 7.4)を用いた、Histrap HP 1 mlカラム(GE Healthcare)の平衡化。
2.流速0.5 ml/分で、Histrap HP 1 mlカラムへの全溶解物(所望のエンドリシンを含む)のローディング。
3.流速1 ml/分で、15カラム容量の洗浄緩衝剤を用いたカラムの洗浄。
4.流速0.5 ml/分で、10カラム容量の溶出緩衝剤(500 mMイミダゾール、5 mM NaClおよび20 mM NaH2PO4-NaOH pH 7.4)を用いた、カラムからの結合エンドリシンの溶出。
【0115】
大腸菌の発現培養液1リットル当たりの、双方の精製組換えタンパク質の全収率を表7に示す。280 nmの波長でのタンパク質濃度の分光光度学的測定、および精製された貯蔵溶液の全容量によって、値を決定した。溶出緩衝剤(20 mM NaH2PO4-NaOH pH 7.4;0.5 M NaCl;500 mMイミダゾール)中の、各々P2gp09およびPKP2gp09からなる精製された貯蔵溶液は、SDS-PAGEゲル上で可視的に決定される際、少なくとも95%純粋であった。
【0116】
(表7)大腸菌の発現培養液1リットル当たりの、精製された組換えP2gp09エンドリシンおよびそのPK改変された変異体、PKP2gp09の収率

【0117】
SEQ ID NO:57のPK2gp09エンドリシンの抗グラム陰性スペクトラムを決定するため、1.315μM PK2gp09エンドリシンおよび0.5 mM EDTAの組み合わせを、臨床分離のP. エルジノーサ株PAO1pおよびBr667、ならびに大腸菌WK6に対して試験した(表9を参照のこと)。対数増殖中の細菌細胞(0.6のOD600nm)を、約106/mlの最終密度に100倍希釈し、各々の株を、各々0.5 mM EDTAを含まない、かつ含む組み合わせにおいて、未改変エンドリシンP2gp09(SEQ ID NO:9)および改変されたエンドリシンPKP2gp09(SEQ ID NO:57)と共に、撹拌せず室温で30分間に渡って保温した。保温に関して、緩衝剤(20 mM NaH2PO4-NaOH pH 7.4;0.5 M NaCl;0.5 Mイミダゾール)中で各々のエンドリシンを使用し、1.315μMのエンドリシン最終濃度で保温を行った。対照として、0.5 mM EDTAを含む(上に概要されたものと同一の緩衝剤中で)が、エンドリシンを含まない場合も、各株を30分間保温した。保温後、細胞懸濁液を3回希釈し(各々105-104-103細胞/ml)、100μlの各希釈液をLB培地上にプレーティングした。37℃で一晩保温後、残留コロニーを計数した。計数された細胞数に基づいて、対数ユニットでの相対的な不活性化として(=log10N0/Ni、N0=未処置細胞の数、およびNi=処置された細胞数、双方とも保温後に計数)、抗菌活性を算出した(表8)。
【0118】
(表8)異なる対数増殖中のグラム陰性種に対する、EDTA-Na2を含むかつ含まない場合の、未改変エンドリシン(P2gp09)ならびにその改変されたエンドリシン変異体(P2gp09)の抗菌活性

【0119】
全ての試料を3回反復した。平均値+/-標準偏差を表す。観察された最大の減少は、10細胞/mlの検出レベルおよび初期細胞密度に依存する。
【0120】
(表9)使用されたグラム陰性株のリスト

*Pirnay JP et al. (2003).Molecular epidemiology of Pseudomonas aeruginosa colonization in a burn unit: persistence of a multidrug-resistant clone and a silver sulfadiazine-resistant clone. J Clin Microbiol., 41(3);1192-1202.
【0121】
実施例7:シュードモナス・プチダのファージOBPの改変されたエンドリシン変異体
SEQ ID NO:7のOBPgpLYSは、シュードモナス・プチダのファージOBPに由来する328アミノ酸残基のモジュラーエンドリシンであり、推定上N末端のペプチドグリカン結合ドメイン、およびC末端の触媒キチナーゼドメインを含む。BLASTpおよびPfam解析によって予測されるように、OBPgpLYSエンドリシンは、アミノ酸残基約126位〜アミノ酸残基約292位の範囲にその触媒ドメインを含み、かつアミノ酸残基約7位〜96位の範囲に、N末端のペプチドグリカン結合ドメインを含む。
【0122】
以下のPCRパラメータを使用して、Pfuポリメラーゼ(Fermentas、Ontario、Canada)を用いた標準PCR反応において、ファージOBPの精製されたゲノムDNAを、OBPgpLYSのオープンリーディングフレーム(ORF)の増幅のための鋳型として使用した。

【0123】
したがって、標準5’プライマー

および標準3’プライマー

を使用した。OBPgpLYSをコードするORFの5’末端を、ポリカチオン性9-merのペプチドLys-Arg-Lys-Lys-Arg-Lys-Lys-Arg-Lys(SEQ ID NO:11)をコードする遺伝子断片を伴って伸長させるため、伸長5’プライマー

およびSEQ ID NO:59の標準3’プライマーを用いるテールPCR(上の標準PCRと同一パラメータを用いた)を適用した。元の未改変OBPgpLYSのPCR断片および伸長された断片の双方を、製造者のTAクローニングプロトコールに従って、pEXP5CT/TOPO(登録商標)発現ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)にライゲーションした。
【0124】
対数増殖中の大腸菌BL21(λDE3)pLysS細胞(Invitrogen)において、1 mM IPTG(イソプロピルチオガラクトシド)を用いて誘導後、37℃で4時間に渡ってSEQ ID NO:7のOBPgpLYS、およびSEQ ID NO:61のPKOBPgpLYSの組換え発現を行う。pEXP5CT/TOPO(登録商標)発現ベクターによりコードされるC末端の6×His-タグを使用して、Ni2+親和性クロマトグラフィー(Akta FPLC、GE Healthcare)によって双方のタンパク質を精製した。以下の4つの段階で、Ni2+親和性クロマトグラフィーを全て室温で行う:
1.流速0.5 ml/分で、10カラム容量の洗浄緩衝剤(60 mMイミダゾール、0.5 mM NaClおよび20 mM NaH2PO4-NaOH pH 7.4)を用いた、Histrap HP 1 mlカラム(GE Healthcare)の平衡化。
2.流速0.5 ml/分で、Histrap HP 1 mlカラムへの全溶解物(所望のエンドリシンを含む)のローディング。
3.流速1 ml/分で、15カラム容量の洗浄緩衝剤を用いたカラムの洗浄。
4.流速0.5 ml/分で、10カラム容量の溶出緩衝剤(500 mMイミダゾール、5 mM NaClおよび20 mM NaH2PO4-NaOH pH 7.4)を用いた、カラムからの結合エンドリシンの溶出。
【0125】
大腸菌の発現培養液1リットル当たりの、双方の精製組換えタンパク質の全収率を表10に示す。280 nmの波長でのタンパク質濃度の分光光度学的測定、および精製された貯蔵溶液の全容量によって、値を決定した。溶出緩衝剤(20 mM NaH2PO4-NaOH pH 7.4;0.5 M NaCl;500 mMイミダゾール)中の、各々OBPgpLYSおよびPKOBPgpLYSからなる精製された貯蔵溶液は、SDS-PAGEゲル上で可視的に決定される際、少なくとも90%純粋であった。
【0126】
(表10)大腸菌の発現培養液1リットル当たりの、精製された組換えOBPgpLYSエンドリシンおよびそのPK改変された誘導体PKOBPgpLYSの収率

【0127】
SEQ ID NO:61のPKOBPgpLYSエンドリシンの抗グラム陰性スペクトラムを決定するため、1.313μM PKOBPgpLYSエンドリシンおよび0.5 mM EDTAの組み合わせを、臨床分離の多剤耐性P. エルジノーサ株Br667、シュードモナス・プチダG1(ファージOBPの宿主)、ならびに他の様々なグラム陰性病原菌(大腸菌WK6、サルモネラ・チフィムリウムLT2およびバークホルデリア・シュードマレイ)に対して試験した(表12を参照のこと)。対数増殖中の細菌細胞(0.6のOD600nm)を、約106/mlの最終密度に100倍希釈し、各々の株を、各々0.5 mM EDTAを含まないかつ含む組み合わせにおいて、未改変エンドリシンOBPgpLYS(SEQ ID NO:7)および改変されたエンドリシンPKOBPgpLYS(SEQ ID NO:61)と共に、撹拌せず室温で30分間に渡って保温した。保温に関して、緩衝剤(20 mM NaH2PO4-NaOH pH 7.4;0.5 M NaCl;0.5 Mイミダゾール)中で各々のエンドリシンを使用し、1.313μMのエンドリシン最終濃度で保温を行った。対照として、0.5 mM EDTAを含む(上に概要されたものと同一の緩衝剤中で)が、エンドリシンを含まない場合も、各株を30分間保温した。保温後、細胞懸濁液を3回希釈し(各々105-104-103細胞/ml)、100μlの各希釈液をLB培地上にプレーティングした。37℃で一晩保温後、残留コロニーを計数した。計数された細胞数に基づいて、対数ユニットでの相対的な不活性化として(=log10N0/Ni、N0=未処置細胞の数、およびNi=処置された細胞数、双方とも保温後に計数)、抗菌活性を算出した(表11)。全ての試料を3回反復した。平均値+/-標準偏差を表す。観察された最大の減少は、10細胞/mlの検出レベルおよび初期細胞密度に依存する。
【0128】
(表11)異なる対数増殖中のグラム陰性種に対する、EDTA-Na2を含むかつ含まない場合での、未改変エンドリシン(OBPgpLYS)ならびにその改変されたエンドリシン変異体、(PKOBPgpLYS)の抗菌活性

【0129】
(表12)使用されたグラム陰性株のリスト

*Pirnay JP, De Vos D, Cochez C, Bilocq F, Pirson J, Struelens M, Duinslaeger L, Cornelis P, Zizi M, Vanderkelen A. (2003).Molecular epidemiology of Pseudomonas aeruginosa colonization in a burn unit: persistence of a multidrug-resistant clone and a silver sulfadiazine-resistant clone. J Clin Microbiol., 41(3);1192-1202.
【0130】
OBPgpLYS処置の全体の効率が種依存的である一方、表11の結果は、全ての試験された細菌種に関して、0.5 mM EDTAの存在下および非存在下の双方において、未改変OBPgpLYSと比較したPKOBPgpLYSの付加された効果を示す。シュードモナス種およびバークホルデリア種に関しては、PKOBPgpLYS活性に対するEDTAとの明確な相乗効果が観察される。
【0131】
実施例8:OBPgpLYSおよびPKOBPgpLYSの抗菌活性に対する異なるEDTA濃度の効果
未改変および改変されたエンドリシンの抗菌活性に対するEDTAの影響を判定するため、未改変OBPgpLYSエンドリシン(SEQ ID NO:7)、およびPKOBPgpLYSエンドリシン(SEQ ID NO:61)の抗菌活性を、異なる濃度のEDTAおよびエンドリシンを使用して、シュードモナス・エルジノーサPAO1p細胞に対して試験した(Pirnay JP et al. (2003), J Clin Microbiol., 41(3): 1192-1202(2003))。対数増殖中の細菌細胞(0.6のOD600nm)を、約106/mlの最終密度に100倍希釈し、未改変エンドリシンOBPgpLYS(SEQ ID NO:7)および改変されたエンドリシンPKOBPgpLYS(SEQ ID NO:61)と共に、撹拌せず室温で30分間に渡って保温した。保温に関して、0.013μM、0.131μMおよび1.315μMのエンドリシン最終濃度で、緩衝剤(20 mM NaH2PO4-NaOH pH 7.4;0.5 M NaCl;0.5 Mイミダゾール)中で各々のエンドリシンを使用した。それによって以下、0 mM、0.05 mM、0.5 mM、および10 mMの異なるEDTA濃度を使用した。対照として、一つの試料に、エンドリシンを含まず、代わりに緩衝剤(20 mM NaH2PO4-NaOH pH 7.4;0.5 M NaCl;0.5 Mイミダゾール)を添加して、30分間保温した。保温後、細胞懸濁液を3回希釈し(各々105-104-103細胞/ml)、100μlの各希釈液をLB培地上にプレーティングした。37℃で一晩保温後、残留コロニーを計数した。計数された細胞数に基づいて、対数ユニットでの相対的な不活性化として(=log10N0/Ni、N0=未処置細胞の数、およびNi=処置された細胞数、双方とも保温後に計数)、抗菌活性を算出した(表13)。全ての試料を3回反復した。平均値+/-標準偏差を表す。観察された最大の減少(5.69対数ユニット)は、10細胞/mlの検出レベル、および初期細胞密度に依存する。「Δ」は、各々OBPgpLYSとPKOBPgpLYS試料との活性の相違を示す。
【0132】
(表13)対数増殖中のシュードモナス・エルジノーサPAO1p細胞に対して、異なるEDTA濃度との組み合わせにおける、未改変エンドリシン(OBPgpLYS)およびその改変されたエンドリシン変異体(PKOBPgpLYS)の抗菌活性

【0133】
表13に示されるように、陰性対照と比較して、未改変エンドリシンOBPgpLYSは、1.315μMでは2.5対数ユニットを超えて、かつ0.013μMでは+/-1対数ユニット分、細胞数を有意に減少させる。改変されたエンドリシンPKOBPgpLYSは、対数増殖中のPAO1p細胞に関して、さらに0.5対数ユニットの減少をもたらす。PKOBPgpLYSを外膜透過剤であるEDTA-Na2と、0.5 mMおよび10 mMのEDTA濃度で組み合わせることによって、観察される抗菌効果を5.69対数ユニットの減少までにも(検出レベルより下に)増加させることができる。未改変OBPgpLYSとPK改変されたOBPgpLYSとの活性の相違は、添加するエンドリシンの量を上昇させる(0.013〜1.315μMエンドリシン)ことによって、増加する。
【0134】
実施例9:異なるグラム陰性細菌に対する、改変されたphiKZgp144変異体の抗菌活性
phiKZgp144および他のエンドリシンのポリカチオン性ペプチド変異体の潜在能力を試験しかつ比較するため、タンパク質のN末端にポリカチオン性ペプチドを有するコード遺伝子を合成した。
【0135】
異なる産物をpET32b発現ベクターにクローニングした(Novagen, Darmstadt, Germany)。大腸菌宿主に対するポリカチオン性ペプチドの潜在的毒性を減少させるため、pET32bを使用した。ベクターにコードされる融合タンパク質(チオレドキシン)はポリカチオン性ペプチドを遮蔽し、かつ精製プロセスの間に除去され得る。
【0136】
smi01(YP_001712536)およびKRK9_smi01(SEQ ID NO:75)をコードする遺伝子を完全長合成し(Entelechon, Regensburg, Germany)、pET32bにクローニングした。
【0137】
したがって、OD600nm=0.6の光学密度に達するまで、以下の改変されたエンドリシン変異体:smi01(YP_001712536)、KRK9_smi01(SEQ ID NO:75)、phiKZgp144(SEQ ID NO:1)、pKKZ144pET32b(SEQ ID NO:43)およびPOLYKZ144(SEQ ID NO:35)を、大腸菌BL21(DE3)細胞において37℃で発現させた。1 mM IPTG(最終濃度)でタンパク質発現を誘導し、4時間に渡って発現を行った。続いて、6000gで20分間にわたる遠心分離によって大腸菌細胞を収集し、S-Tag(商標)rEK精製キット(Novagen, Darmstadt, Germany)を使用して、細胞破壊およびタンパク質精製を行った。pET32bベクターの使用は、発現されたタンパク質は宿主に対して毒性でなく、産生されたタンパク質の高い収率をもたらした。精製された貯蔵溶液は、高い純度を示した。
【0138】
試験に関して、かつ比較のための参照として、実施例1に記載されるように、phiKZgp144およびPOLYgp144を合成し、精製した。
【0139】
対数増殖中の(約106/ml)P. エルジノーサPAO1p細胞(熱傷創傷単離株、Queen Astrid Hospital, Brussels;Pirnay JP et al. (2003), J Clin Microbiol., 41(3): 1192-1202)、アシネトバクター・バウマニ(DSMZ 30007)またはバークホルデリア・ソラナセラム(C. Michiels教授により提供された単離株)を100倍希釈し(最終密度は約106/ml)、緩衝剤(20 mM NaH2PO4-NaOH pH7.4;0.5 M NaCl;0.5 Mイミダゾール)中で100μg/mlの最終濃度で、上に列挙された10μgの各々の未透析のタンパク質と共に室温で保温した。1時間後、細胞懸濁液を1:100に希釈し、LB上にプレーティングした。さらに、緩衝剤(20 mM NaH2PO4-NaOH pH7.4;0.5 M NaCl;0.5 Mイミダゾール)を使用して、陰性対照をプレーティングした。37℃で一晩保温後、残留コロニーを計数した。計数された細胞数に基づいて、相対的な不活性化(%)(=100-(Ni/N0)*100、N0=未処置細胞の数、およびNi=処置された細胞数)として、抗菌活性を算出した(表3)。全ての試料を少なくとも4回反復した。
【0140】
(表14)異なる細菌種に対する、異なる改変されたエンドリシン変異体(括弧内はNCBI符番)の抗菌作用

【0141】
陰性対照と比較して、未改変エンドリシンphiKZgp144およびsmi01(YP_001712536)は、細胞数を有意に減少させない。この知見もまた、グラム陰性細菌の細胞壁を分解するエンドリシンの障壁としての、外膜の効力を示す。対照的に、表14に示されるように、改変されたエンドリシンKRK9_smi01、pKKZ144pET32bおよびPOLY-gp144との保温は、アシネトバクター・バウマニ(KRK9_smi01に関して50%;pKKZ144pET32bに関して99.9%)、シュードモナス・エルジノーサ(pKKZ144pET32bに関して90-99.9%)、およびバークホルデリア・ソラナセラム(POLYKZ144に関して90-99.9%)に対して、有意な細菌細胞数の減少をもたらす。
【0142】
これらの実験は、他のエンドリシンに関する、カチオン/ポリカチオンの融合アプローチの適用性を実証する。さらに該実験は、改変されたエンドリシンが、様々な細菌に対して活性であることを実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LPS破壊活性を有するカチオン性ペプチドストレッチが融合されたエンドリシンを含むエンドリシン変異体であって、
該カチオン性ペプチドストレッチが、5〜100個のアミノ酸残基を含み、該ペプチドストレッチ中に含まれる少なくとも70%のアミノ酸残基が、アルギニン、および/またはリジンであり、かつ0%〜30%がセリン、および/またはグリシンである、前記エンドリシン変異体。
【請求項2】
ペプチドストレッチが、5個〜50個のアミノ酸残基を含む、請求項1記載のエンドリシン変異体。
【請求項3】
ペプチドストレッチが、5個〜30個のアミノ酸残基を含む、請求項1または2記載のエンドリシン変異体。
【請求項4】
ペプチドストレッチが、エンドリシンのN末端および/またはC末端に融合される、請求項1〜3のいずれか一項記載のエンドリシン変異体。
【請求項5】
ペプチドストレッチが、エンドリシンのN末端に融合される、請求項1〜4のいずれか一項記載のエンドリシン変異体。
【請求項6】
エンドリシンが、以下からなる群より選択されるグラム陰性細菌の細胞壁を分解する活性を有する、請求項1〜5のいずれか一項記載のエンドリシン変異体:
腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)、ナイセリア属(Neisseria)、モラクセラ属(Moraxella)、ビブリオ属(Vibrio)、アエロモナス属(Aeromonas)、ブルセラ属(Brucella)、フランシセラ属(Francisella)、ボルデテラ属(Bordetella)、レジオネラ属(Legionella)、バルトネラ属(Bartonella)、コクシエラ属(Coxiella)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、パスツレラ属(Pasteurella)、マンヘミア属(Mannheimia)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ガードネレラ属(Gardnerella)、 スピロヘータ科(Spirochaetaceae)、レプトスピラ科(Leptospiraceae)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、スピリルム属(Spirillum)、ストレプトバシラス属(Streptobacillus)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、およびアシネトバクター属(Acinetobacter)。
【請求項7】
腸内細菌科(Enterobacteriaceae)が、エシェリキア属(Escherichia)、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、シトロバクター属(Citrobacter)、エドワージエラ属(Edwardsiella)、エンテロバクター属(Enterobacter)、ハフニア属(Hafnia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、モルガネラ属(Morganella)、プロテウス属(Proteus)、プロビデンシア属(Providencia)、セラチア属(Serratia)、およびエルシニア属(Yersinia)からなる群から選択される、請求項6記載のエンドリシン変異体。
【請求項8】
シュードモナス科(Pseudomonadaceae)が、シュードモナス属(Pseudomonas)、バークホルデリア属(Burkholderia)、ステノトロホモナス属(Stenotrophomonas)、シュワネラ属(Shewanella)、スフィンゴモナス属(Sphingomonas)、およびコマモナス属(Comamonas)からなる群から選択される、請求項6記載のエンドリシン変異体。
【請求項9】
スピロヘータ科(Spirochaetaceae)が、トレポネーマ属(Treponema)およびボレリア属(Borrelia)からなる群から選択される、請求項6記載のエンドリシン変異体。
【請求項10】
バクテロイデス科(Bacteroidaceae)が、バクテロイデス属(Bacteroides)、フゾバクテリウム属(Fusobacterium)、プレボテラ属(Prevotella)、およびポルフィロモナス属(Porphyromonas)からなる群から選択される、請求項6記載のエンドリシン変異体。
【請求項11】
アシネトバクター属(Acinetobacter)が、A. バウマニ(A. baumanii)である、請求項6記載のエンドリシン変異体。
【請求項12】
エンドリシンが、SEQ ID NO:1のphiKZgp144、SEQ ID NO:2のELgp188、SEQ ID NO:3のサルモネラのエンドリシン、SEQ ID NO:4の腸内細菌ファージT4のエンドリシン、SEQ ID NO:5のアシネトバクター・バウマニのエンドリシン、SEQ ID NO:6の大腸菌ファージK1Fのエンドリシン、SEQ ID NO:8のPSP3サルモネラのエンドリシン、およびSEQ ID NO:9の大腸菌ファージP2のエンドリシンからなる群より選択される、請求項1〜11のいずれか一項記載のエンドリシン変異体。
【請求項13】
ペプチドストレッチが、少なくとも一つのKRKモチーフを含む、請求項1〜12のいずれか一項記載のエンドリシン変異体。
【請求項14】
ペプチドストレッチが、SEQ ID NO:10〜30からなる群より選択される配列からなる、請求項1〜13のいずれか一項記載のエンドリシン変異体。
【請求項15】
SEQ ID NO:35〜49、53、57、62〜64、および66〜78からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜14のいずれか一項記載のエンドリシン変異体。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項記載のエンドリシン変異体をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項17】
請求項16記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項18】
請求項16記載の核酸分子もしくは請求項17記載のベクターを含む宿主細胞であって、該宿主細胞が、細菌細胞または酵母細胞である、前記宿主細胞。
【請求項19】
請求項18記載の宿主細胞におけるエンドリシン変異体の発現を含む、請求項1〜15のいずれか一項記載のエンドリシン変異体を産生する方法。
【請求項20】
医用薬剤としての使用のための、請求項1〜15のいずれか一項記載のエンドリシン変異体。
【請求項21】
グラム陰性細菌感染症の処置用の医用薬剤としての使用のための、請求項1〜15のいずれか一項記載のエンドリシン変異体。
【請求項22】
殺菌剤または美容用物質としての、請求項1〜15のいずれか一項記載のエンドリシン変異体の使用。
【請求項23】
食材の、食品加工器具の、食品加工設備の、食材と接触する表面の、医療装置の、病院および手術室の表面の、グラム陰性細菌の汚染の除去、減少ならびに/または予防のための、請求項1〜15のいずれか一項記載のエンドリシン変異体の使用。
【請求項24】
医薬、食品、または飼料、もしくは環境診断における診断手段としての、請求項1〜15のいずれか一項記載のエンドリシン変異体の使用。
【請求項25】
抗生物質、ランチビオティクス、またはバクテリオシンと組み合わせて使用される、請求項20もしくは21に記載の使用または請求項23に記載の使用のためのエンドリシン変異体。
【請求項26】
請求項1〜15のいずれか一項記載のエンドリシン変異体を含む、診断剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図7D】
image rotate

【図7E】
image rotate

【図7F】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図9D】
image rotate

【図9E】
image rotate

【図9F】
image rotate


【公開番号】特開2013−81465(P2013−81465A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−265070(P2012−265070)
【出願日】平成24年12月4日(2012.12.4)
【分割の表示】特願2011−524360(P2011−524360)の分割
【原出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(511051351)カトリック ユニバーシテイト ルーベン ケイ.ユー. ルーベン アール アンド ディー (4)
【Fターム(参考)】