説明

抗微生物及び放射線防御化合物

【課題】微生物感染の治療及び/又は予防のための化合物、放射線ダメージから被験体を防御するための化合物、及び癌放射線治療するための化合物およびその使用方法の提供。
【解決手段】式Iの化合物(式中、XとYは同一又は異なって、ヘテロ原子から選択され;は、ヘテロ原子XとYに依存して二重又は単結合であり;R〜Rは同一又は異なって、水素又は非有害置換基から選択され;そして、RとRは同一又は異なって、水素及び非有害置換基から選択されるか、又は、二重結合が存在するとき、RとRの一方は存在しない)、その医薬として許容できる塩又は誘導体、プロドラッグ、互変異性体及び/又は異性体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗微生物及び放射線防御活性を有する化合物に関する。特に、本発明は、細菌、真菌、プロトゾアを含む広いスペクトルの生物に対する活性を有する、置換ニトロスチレン化合物に関する。本発明の化合物はまた、放射線ダメージからの防御を提供する能力を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本明細書で引用するいずれの特許又は特許出願も含む全ての参考文献は、引用により本明細書に含まれるものとする。いずれの参考文献も従来技術を構成することは是認しない。参考文献の考察はそれらの著者の主張することを述べてあり、本出願人は、引用文献の正確さと妥当性に挑戦する権利を有する。多数の従来技術刊行物が本明細書で引用されるが、これらの文献のいずれも、オーストラリア又は他の如何なる国において、当業分野で共通の一般知識の一部を形成するということは、この引用からは認められないことが、明瞭に理解されよう。
【0003】
細菌、真菌、プロトゾア病原体は、軽度の呼吸器の病気から激症全身感染や慢性疾患の範囲の非常に様々な種類の感染の原因である。Salmonella又はCampylobacterなどの生物によって引き起こされる食中毒は一般的であり、集中的畜産技術を用いて生じる家畜又は家禽の風土性感染としばしば関連する。
【0004】
抗生物質の広範な利用可能性にもかかわらず、感染の制御は困難であり、多数の生物は、耐性を生じる能力を有する。病院での多剤耐性Staphylococcus aureus感染、薬剤耐性Enterococcus感染、HIV患者の細菌、真菌、プロトゾア感染、結核、ならびに発展途上国でのマラリアおよび他の風土性感染などの非常に扱いにくいことが今までに分かっている問題を多数の微生物は引き起こす。
【0005】
現在、細菌、真菌及びプロトゾア起源の病原体に対する広いスペクトルの活性を有する薬剤はほんの少ししかない。抗生物質は、病原性微生物に対する闘いで最も広範に使用される薬剤である。しかし、大部分の抗生物質は、狭い特異性しか有さない。広いスペクトルの抗細菌性抗生物質でさえ、真菌やプロトゾアにはあまり有効ではない。大部分の抗生物質は、制限された範囲の化合物クラスに属する。これらの改良された半合成誘導体が開発されたが、ほんの少しの新規抗生物質化合物クラスが、最近20年間に利用可能になっただけである。
【0006】
放射線照射に対する生物の防御用薬剤の選択も、非常に限定されている。放射線防御剤の中で、最も有効なものは、硫黄含有化合物である(Kuna,1989)。例えば、シスタミンは、放射線防御剤としての使用を承認されている(Vladimirovら,1989)。この製剤の防御指数は1.45を超えず、下痢を起こす不利点を有する。別の公知の放射線防御製剤は、メルカミン(β−メルカプトエチルアミン)である(Mashkovskiy,1986)。
これは、低い治療係数、短い作用時間(0.5〜1時間)、放射線防御活性の短い持続(15〜30分)を有する。
【0007】
β−ニトロスチレンとその誘導体の幾つかは、生物学的活性と部分的に殺真菌活性を示すことが知られている(Foyer,1973)。アリールニトロアルケンのある誘導体は、抗微生物、抗真菌、抗プロトゾア活性を有し、放射線ダメージからの防御を提供できることをロシア特許第2145215号は示した。これらの化合物は、以下の式
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R’は、H又はCHであり;そして
’とR’は同一又は異なって、H、OCH、OH、NO、(CHNから選択される)を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの化合物の活性は満足いくものであるが、広いスペクトルの抗微生物活性を有する低コストで低毒性の薬剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ここで、特定の置換ニトロスチレン化合物が、細菌、真菌、プロトゾアを含む非常に広いスペクトルの生物に対し優れた活性を有し、また放射線ダメージからの防御を提供する能力を有することを、本発明者らは見出した。
【0012】
発明の要旨
本発明は、 微生物感染の治療及び/又は予防の方法であって、式I:
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、
XとYは同一又は異なって、ヘテロ原子から選択され;
【0015】
【化3】

【0016】
は、ヘテロ原子XとYに依存して二重又は単結合であり;
〜Rは同一又は異なって、水素又は非有害置換基から選択され;そして
とRは同一又は異なって、水素及び非有害置換基から選択されるか、又は、二重結合が存在するとき、RとRの一方は存在しない)の化合物、その医薬として許容できる塩又は誘導体、プロドラッグ、互変異性体及び/又は異性体の有効量を投与する工程を含む方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、微生物感染の治療及び/又は予防用の医薬の製造における式Iの化合物の使用を提供する。
本発明は更に、微生物感染の治療及び/又は予防のための式Iの化合物の使用を提供する。
本発明はまた更に、放射線ダメージから被験体を防御する方法であって、その必要のある被験体に式Iの化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
別の局面では、本発明は、癌放射線治療の方法であって、このような治療の必要のある被験体に、式Iの化合物の有効量を投与すること、被験体の腫瘍個所を放射線源に曝すことを含む方法を提供する。
更なる局面では、本発明は、抗微生物剤又は放射線防御剤としての式Iの化合物の使用を提供する。
【0018】
好ましくは、XとYは同一又は異なって、O及びNから選択され、より好ましくは、XとYは両方とも酸素である。
好ましくは、RとRは同一又は異なって、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、又は置換されていてもよいC1−6アルキルから選択される。
〜Rは、好ましくは、同一又は異なって、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、C1−6アルコキシ、又は置換されていてもよいC1−6アルキルから選択される。
好ましくは、ハロゲンは、塩素又は臭素である。
式Iの化合物のE異性体が好ましい。
【0019】
X、Y、
【0020】
【化4】

【0021】
、Rは上で定義した通りであり;RとRは同一又は異なって、水素、ヒドロキシ、Cl、Br、及びC1−4アルキルから選択され;R〜Rは同一又は異なって、水素、ヒドロキシ、Cl、Br、ニトロ、C1−4アルコキシ、又はC1−4アルキルから選択されている、式Iの化合物が特に好適である。
【0022】
本発明の化合物の具体例は以下の通りである。
(1)XとYはOであり、Rはメチルであり、RとRは水素である
(3,4−メチレンジオキシ−β−メチル−β−ニトロスチレン)
【0023】
【化5】

【0024】
(2)XとYはOであり、R〜Rは水素である
(3,4−メチレンジオキシ−β−ニトロスチレン)
【0025】
【化6】

【0026】
(3)XはNであり、YはNHであり、Rはメチルであり、RとRは水素である
(ベンズイミダゾール−5−β−ニトロプロピレン)
【0027】
【化7】

【0028】
(4)XはNであり、YはNHであり、Rは水素であり、Rはメチルであり、Rは存在しない
(2−メチルベンズイミダゾール−5−β−ニトロエチレン)
【0029】
【化8】

【0030】
(5)XはOであり、YはNであり、RとRは水素であり、Rは存在しない
(ベンズオキサゾール−5−β−ニトロエチレン)
【0031】
【化9】

【0032】
(6)XはNであり、YはOであり、RとRはメチルであり、Rは存在しない
(2−メチルベンズオキサゾール−5−β−ニトロプロピレン)
【0033】
【化10】

【0034】
式Iの化合物の幾つかは、それ自体新規である。
従って、本発明は、式Ia:
【0035】
【化11】

【0036】
(式中、
X、Y、
【0037】
【化12】

【0038】
〜Rは、上記式Iで定義した通りである、
但し、XとYの両方がOであり、R〜Rが水素であるとき、Rは、水素、C1−4アルキル、又はCOEtではなく、又はXとYの両方がOであるとき、R〜Rは水素ではない)
の化合物を提供する。
【0039】
本発明はまた、上で定義した式Iaの化合物の製造方法であって、式II:
【0040】
【化13】

【0041】
(式中、
X、Y、
【0042】
【化14】

【0043】
〜Rは上記式Iaで定義した記載の通りである)の化合物を、式III:
CHNO
III
(式中、RとRは上記式Iaで定義した通りである)の化合物と縮合させることを含む方法を提供する。
【0044】
本発明は更に、上で定義した式Iaの化合物の製造方法であって、式IV:
【0045】
【化15】

【0046】
(式中、
X、Y、
【0047】
【化16】

【0048】
〜Rは上記式Iaで定義した通りである)の化合物を、C(NOと反応させることを含む方法を提供する。
【0049】
これらの方法は好ましくは、アミン又は水酸化アルカリ金属(例えば、NaOH又はKOH)などの触媒の存在下で行う。
【0050】
更なる局面では、本発明は、医薬として又は獣医学的に許容できる担体と一緒に、上で定義した式Iaの化合物を含む、医薬又は獣医学用組成物を提供する。
好ましくは、医薬又は獣医学用組成物は、局所、経口、又は非経口組成物である。
医薬として又は獣医学的に許容できる担体は、好ましくは、アセトン、ベンゼン、アセトニトリル、DMSO、又はアルコール、例えば、メタノール又はエタノールなどの有機溶媒である。本発明の化合物は、低い水溶性を示すが、水を有機溶媒と一緒にすると、安定な混合物が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、実施例9のCandida albicansに関する生存菌数の対数対時間(時間)のグラフである。
【図2】図2は、実施例26における、寄生されている血液細胞%対培養時間のグラフである(T=Trophozoites、R=Rings、T/S=Trophozoites又はSchizonts)。
【発明を実施するための形態】
【0052】
発明の詳細な説明
本明細書のために、語「含む(含有する)(comprising)」は、「含むが、それに限定されない」を意味し、語「含む(含有する)(comprises)」は同様の意味を有する。
用語「ヘテロ原子」は、O、N、又はSを示す。
用語「非有害置換基」は、その最も広い意味で本明細書で使用し、化合物の抗微生物又は放射線防御特性に有害効果を有さない置換基を指す。例として、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、ベンジルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアリールオキシ、ニトロ、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロアリール、ニトロヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ベンジルアミノ、ジベンジルアミノ、アシル、アルケニルアシル、アルキニルアシル、アリールアシル、アシルアミノ、ジアシルアミノ、アシルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、アリールスルフェニルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクルオキシ、ヘテロシクルアミノ、ハロヘテロシクリル、アルキルスルフェニル、アリールスルフェニル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、アシルチオ、リン含有化合物が挙げられる。
【0053】
特に適切な非有害置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、ニトロ、ニトロアルキル、ニトアルケニル、ニトロアルキニルである。
好適な実施態様では、非有害置換基は、C1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、ニトロである。
【0054】
用語「置換されていてもよい」は、基が、例えば、非有害置換基の定義の下に上で特定した基で更に置換されていても、置換されていなくてもよいことを意味する。
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、好ましくは、塩素、臭素を指す。
用語「アルコキシ」は、その最も広い意味で本明細書で使用し、アルキル部分、好ましくは、C1−6アルキル、より好ましくはC1−4アルキルを各々が有する、直鎖、分岐鎖、又は環状のオキシ含有基を指す。このようなアルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシである。
単独で、又は「置換されていてもよいC1−4又はC1−6アルキル」などの複合語で使用される用語「C1−4アルキル」又は「C1−6アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有する、直鎖、分岐鎖、又は環状の炭化水素基を指す。このようなアルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシルである。
【0055】
式I又はIaの化合物の塩は好ましくは、医薬として許容できるものであるが、非医薬として許容できる塩も、本発明の範囲内であることが理解されよう。これらは、医薬として許容できる塩の製造での中間体として有用であるからである。医薬として許容できる塩の例は、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、アルキルアンモニウムなどの、医薬として許容できるカチオンの塩;塩酸、オルトリン酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、臭化水素酸などの、医薬として許容できる無機酸の酸付加塩;又は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トリメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリル酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸、吉草酸などの、医薬として許容できる有機酸の塩;が挙げられる。
【0056】
更に、本発明の化合物の幾つかは、水又は普通の有機溶媒と溶媒和物を形成してもよい。このような溶媒和物は、本発明の範囲に包含される。
「医薬として許容できる誘導体」とは、任意の医薬として許容できる塩、水和物、又は被験体に投与すると、式IもしくはIaの化合物、又はその抗微生物性もしくは放射線防御性の活性代謝物もしくは残基を提供(直接的又は間接的)できる任意の他の化合物を意味する。
用語「プロドラッグ」は、インビボで式I又はIaの化合物に変換される化合物を含むように、本明細書ではその最も広い意味で使用される。
用語「互変異性体」は、2つの異性体形態の間の平衡状態で存在できる式I又はIaの化合物を含むように、本明細書ではその最も広い意味で使用される。このような化合物は、化合物中の、2つの原子もしくは基を連結する結合、及びこれらの原子もしくは基の位置が異なりうる。
用語「異性体」は、本明細書ではその最も広い意味で使用され、構造、幾何、立体異性体を含む。式I又はIaの化合物は、1個以上のキラル中心を有しうるので、それは、エナンチオマー形態で存在できる。
【0057】
用語「微生物感染」は、本明細書ではその最も広い意味で使用され、微生物によって引き起こされる任意の感染を指し、細菌感染、真菌感染、酵母感染、プロトゾア感染を含む。
用語「微生物」は、藻類、細菌、真菌、酵母、プロトゾアなどのカテゴリー内の、任意の顕微鏡的生物、又は分類的に関連する肉眼で見える生物を含む。
【0058】
細菌感染として、Bacillus cereus、Bacillus anthracis、Clostridium botulinum、Clostridium difficile、Clostridium tetani、Clostridium perfringens、Corynebacteria diphtheriae、Enterococcus (Streptococcus D)、Listeria monocytogenes、肺炎球菌感染(Streptococcus pneumoniae)、ブドウ球菌感染及び連鎖球菌感染; Bacteroides、Bordetella pertussis、Brucella、カンピロバクター感染、腸管出血性Escherichia coli (EHEC/E. coli 0157 : H7)、腸管侵入性Escherichia coli (EIEC)、腸内毒素原性Escherichia coli (ETEC)、Haemophilus influenzae、Helicobacter pylori、Klebsiella pneumoniae、Legionella spp.、Moraxella catarrhalis、Neisseria gonnorrhoeae、Neisseria meningitidis、Proteus spp.、Pseudomonas aeruginosa、Salmonella spp.、Shigella spp.、Vibrio cholera及びYersiniaを含むグラム陰性細菌; Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium avium−intracellulare、Myobacterium johnei、Mycobacterium leprae、異型細菌、Chlamydia、Mycoplasma、Rickettsia、Spirochetes、Treponema pallidum、Borrelia recurrentis、Borrelia burgdorfii及びLeptospira icterohemorrhagiaeを含む抗酸細菌; 並びに、Actinomyces及びNocardiaを含む他の種々の細菌;によって引き起こされる感染が挙げられるが、それらに限定されない。
【0059】
真菌感染として、Alternaria alternata、Aspergillus flavus、Aspergillus fumigatus、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus versicolor、Blastomyces dermatiditis、Candida albicans、Candida dubliensis、Candida krusei、Candida parapsilosis、Candida tropicalis、Candida glabrata、Coccidioides immitis、Cryptococcus neoformans、Epidermophyton floccosum、Histoplasma capsulatum、Malassezia furfur、Microsporum canis、Mucor
spp.、Paracoccidioides brasiliensis、Penicillium marneffei、Pityrosporum ovale、Pneumocystis carinii、Sporothrix schenkii、Trichophyton rubrum、Trichophyton interdigitale、Trichosporon beigelii及びRhodotorula spp.によって引き起こされる感染が挙げられるが、それらに限定されない。
【0060】
酵母感染として、Brettanomyces clausenii、Brettanomyces custerii、Brettanomyces anomalous、Brettanomyces naardenensis、Candida himilis、Candida intermedia、Candida saki、Candida solani、Candida tropicalis、Candida versatilis、Candida bechii、Candida famata、Candida lipolytica、Candida stellata、Candida vini、Debaromyces hansenii、Dekkera intermedia、Dekkera bruxellensis、Geotrichium sandidum、Hansenula fabiani、Hanseniaspora
uvarum、Hansenula anomala、Hanseniaspora guillermondii、Hanseniaspora vinae、Kluyveromyces lactis、Kloekera apiculata、Kluveromyces marxianus、Kluyveromyces fragilis、Metschikowia pulcherrima、Pichia guilliermodii、Pichia orientalis、Pichia fermentans、Pichia memranefaciens、Rhodotorula Saccharomyces bayanus、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces dairiensis、Saccharomyces exigus、Saccharomyces uinsporus、Saccharomyces uvarum、Saccharomyces oleaginosus、Saccharomyces boulardii、Saccharomycodies
ludwigii、Schizosaccharomyces pombe、Torulaspora delbruekii、Torulopsis stellata、Zygoaccharomyces bailli及びZygosaccharomyces rouxiiによって引き起こされる感染が挙げられるが、それらに限定されない。
【0061】
プロトゾア感染として、Leishmania、Toxoplasma、Plasmodia、Theileria、Anaplasma、Giardia、Trichomonas、Trypanosoma、Coccidia及びBabesiaによって引き起こされる感染が挙げられるが、それらに限定されない。具体例として、Trypanosoma cruzi、Eimeria tenella、Plasmodium falciparum、Plasmodium vivax又はPlasmodium ovaleが挙げられる。
【0062】
好ましくは、微生物感染は、グラム陽性又はグラム陰性細菌、例えば、Staphylococcus aureus、Enterococcus fecalis、Klebsiella pneumonia、Salmonella typhimurium又はpseudotuberculosis、Acinetobacter、Pseudomonas aeruginosa、Clostridium perfringens、Clostridium difficile、Campylobacter jejuni、又はBacteroides fragilis;真菌又は酵母感染、例えば、Trichophyton interdigitale;Aspergillus fumigatus、又はCandida albicans;あるいは、プロトゾア感染、例えば、Plasmodium falciparum又はTrichomonas vaginalis;によって引き起こされる感染である。
【0063】
微生物感染の例として、細菌又は真菌の創傷感染、粘膜感染、腸管感染、敗血状態、肺炎、トラコーマ、オルニトーシス、トリコモナス症、真菌感染及びサルモネラ症(特に、獣医学的実施において)が挙げられる。本発明の化合物はまた、耐性微生物種の治療のた
めに、又は、物質の殺菌処理もしくは消毒、例えば、表面消毒、が必要な種々の分野で使用されうる。
【0064】
本明細書で使用する用語「被験体」は、医薬活性な薬剤での治療を必要とする疾患又は状態を有する任意の動物を指す。被験体は、哺乳動物、好ましくは、ヒトでありうるか、又は家畜もしくはペット動物(companion animal)でありうる。本発明の化合物は、ヒトの医学的治療での使用に適切であると特に考えられるが、イヌやネコなどのペット動物、ウマ、ポニー、ロバ、ラバ、ラマ、アルパカ、ブタ、ウシ、ヒツジなどの家畜、又は、霊長類、ネコ科動物、イヌ科動物、ウシ科動物、有蹄類などの動物園の動物の治療を含む獣医学的治療に適用できる。
【0065】
適切な哺乳動物として、霊長目、げっ歯目、ウサギ目、クジラ目、食肉目、奇蹄目、偶蹄目のメンバーが挙げられる。奇蹄目と偶蹄目のメンバーが、同様の生物学と経済的重要性のため、特に好適である。
例えば、偶蹄目は、9つの科に分布する約150の生物種を含む:ブタ(Suidae)、ペッカリー(Tayassuidae)、カバ(Hippopotamidae)、ラクダ(Camelidae)、マメジカ(Tragulidae)、キリン及びオカピ(Giraffidae)、シカ(Cervidae)、プロングホーン(Antilocapridae)、並びに、ウシ、ヒツジ、ヤギ及びアンテロープ(Bovidae)。これらの動物の多くは、種々の国で飼料動物(feed animal)として使用される。より重要には、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ブタなどの経済的に重要な動物の多くは、非常に類似の生物学を有し、高度のゲノム相同性を共有する。
奇蹄目は、ウマやロバを含み、それらは、両方とも経済的に重要で、密接に関連する。実際、ウマとロバが交雑することは周知である。
【0066】
本明細書で使用するとき、用語「有効量」は、所望の抗微生物又は放射線防御活性を生じるのに有効な本発明の化合物の量を意味する。
具体的「有効量」は、治療される特定の状態、被験体の物理的状態、治療される被験体のタイプ、治療期間、併用療法(もしあれば)の種類、使用する具体的製剤、化合物もしくはその誘導体の構造などの因子によって、明らかに変わろう。
【0067】
用語「放射線ダメージ」は、本明細書ではその最も広い意味で使用され、イオン化放射線などの放射線源への暴露から生じるダメージを指す。本明細書で使用する用語「イオン化放射線」は、放射性原子核からのα、β、γ線やX線などの結合をイオン化するのに十分なエネルギーを有する光子を指す。
【0068】
用語「癌放射線療法」は、本明細書ではその最も広い意味で使用され、良性又は悪性でありうる腫瘍を含めた、放射線療法を含む。
本発明の放射線防御剤の主な適用は、癌放射線療法においてである。皮膚、口腔粘膜、食道粘膜、直腸粘膜、膣粘膜、膀胱上皮などの、放射線療法で問題である正常組織の多くは、本発明の放射線防御剤によって防御できる。
癌放射線療法の状況外で、本発明の放射線防御剤は、高リスク放射能状況で予防的に使用できよう。
【0069】
本発明の化合物は、有効な組合せを提供するために他の医薬と更に組合せてもよい。組合せが、式I又はIaの化合物の活性を無くさない限り、医薬活性な薬剤の任意の化学的適合性の組合せを含むことが意図される。本発明の化合物と他の医薬は、別々に、逐次に、又は同時に投与してもよいことが理解されよう。
微生物感染を治療するとき使用されうる他の医薬として、抗生物質などの他の抗感染性薬剤が挙げられる。
【0070】
化合物を放射線防御剤として使用するときには、他の医薬としては、化学療法剤、例えば、DNAに生じた傷がイオン化放射線から生じるものと同様であるようにしてDNAを損傷する細胞障害性薬剤である放射線様薬剤が挙げられうる。DNA鎖切断を引き起こす放射線様薬剤の例として、ブレオマイシン、ドキソルビシン、アドリアマイシン、5FU、ネオカルシノスタチン、アルキル化剤、及びDNA付加物を産生する他の薬剤が挙げられる。本発明の放射線防御剤は、イオン化放射線の影響に対し防御するのと同様に、これらの薬剤の一部によるダメージからDNAを防御することが予想される。臨床適用で、本放射線防御剤は、化学療法剤と一緒に全身的に投与されることはありそうもない。これは、腫瘍に対するこの薬剤の作用を弱め得るからである。しかし、問題の組織への局所適用が利点がありうる状況がある。例えば、口腔粘膜炎は、ドキソルビシンなどの細胞障害性薬剤の問題の副作用であり、化学療法剤の投与前の口腔洗浄剤としての本発明の放射線防御剤の投与は、口腔内にはない腫瘍に対するこの薬剤の作用を弱めずにこの副作用を改善できよう。同様に、消化管は、経口投与によって防御でき、肺はエアロゾル吸入によって、膀胱は膀胱内送達によって、例えば、本放射線防御剤のカテーテルを介して、防御できよう。従って、本発明の好適方法では、放射線様薬剤などの他の医薬と組合せて式I又はIaの化合物を用いる。
【0071】
本発明の化合物は、例えば、相互作用基を介して、薬剤とコンジュゲートしてもよく、それは、それらを所望の腫瘍部位に特異的に送達しよう。適切な薬剤として、抗生物質又は蛋白質、増殖因子、例えば、全身照射と骨髄移植の状況下で造血幹細胞の優先的放射線防御が起こるのを可能とするであろう造血増殖因子が挙げられうる。
【0072】
骨髄移植の状況下で本発明の化合物のコンジュゲートのエキソビボ適用もある。骨髄移植は一般的に、状態の悪化の予期において被験体から骨髄サンプルを得て、保存することを含む。次いで、化学療法のかなり猛烈な形態(即ち、高投与量)が投与される。この化学療法は、正常幹細胞の破壊故に通常致死的であるようであるが、被験体は、自身の造血幹細胞の投与によって救済されるようなものである。この方法の問題点は、幹細胞の最初のサンプルは、腫瘍細胞が夾雑する可能性があるということであり、従って、骨髄調製物から腫瘍細胞を取り除くために種々の方法が使用される。造血増殖因子とコンジュゲートされた放射線防御剤は、骨髄細胞の懸濁液に加えることによって、この状況で使用できよう。次いで、腫瘍細胞ではなく、正常骨髄細胞は、放射線の殺細胞効果から優先的に防御されようと予想して、その懸濁液を照射できよう。
【0073】
本明細書で使用するとき、「医薬担体」は、式I又はIaの化合物を患者に送達するための医薬として許容できる溶媒、懸濁剤、又はビヒクルである。担体は、液体又は固体でありえ、投与の計画された方法に従い選択される。各担体は、組成物の他の成分と適合性があり、被験体に無害であるという意味で医薬として「許容でき」なければならない。
【0074】
式I又はIaの化合物は、通常の非毒性の医薬として許容できる担体、アジュバント、ビヒクルを含有する投与単位製剤として、経口、局所、又は非経口で投与されうる。本明細書で使用する用語、非経口として、皮下注射、肺もしくは鼻腔への投与のためのエアロゾル、静脈内、筋肉内、クモ膜下内、頭蓋内、注射又は注入技術が挙げられる。
【0075】
本発明はまた、本発明の治療の新規方法で使用するために適切な局所、経口、非経口医薬製剤を提供する。本発明の化合物は、錠剤、水性もしくは油性懸濁剤、ロゼンジ、トローチ、粉末、顆粒、エマルジョン、カプセル、シロップ又はエリキシルとして経口投与されうる。経口使用のための組成物は、医薬としてエレガントで口当たりのよい製剤を製造するために、甘味剤、矯味剤、着色剤、及び保存剤の群から選択される1つ以上の剤を含有しうる。適切な甘味剤として、ショ糖、ラクトース、グルコース、アスパルテーム又は
サッカリンが挙げられる。適切な崩壊剤として、コーンスターチ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸又は寒天が挙げられる。適切な矯味剤として、ペパーミント油、ウィンターグリーン油、チェリー、オレンジもしくはラズベリーフレーバーが挙げられる。適切な保存剤として、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン又は亜硫酸水素ナトリウムが挙げられる。適切な滑沢剤として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム又はタルクが挙げられる。適切な時間遅延剤として、グリセリル モノステアレート又はグリセリル ジステアレートが挙げられる。錠剤は、錠剤の製造に適切である非毒性の医薬として許容できる賦形剤と混合して活性成分を含有する。
【0076】
これらの賦形剤は、例えば、(1)炭酸カルシウム、ラクトース、リン酸カルシウム、又はリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;(2)コーンスターチ又はアルギン酸などの顆粒化及び崩壊剤;(3)澱粉、ゼラチン又はアカシアなどの結合剤;及び、(4)ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクなどの滑沢剤;でありうる。これらの錠剤は、非被覆でありうるか、又は、消化管での崩壊と吸収を遅延させ、それによって、長期間にわたる持続作用を得るために、公知の技術によって被覆されうる。例えば、グリセリル モノステアレート又はグリセリル ジステアレートなどの時間遅延物質を使用しうる。被覆はまた、米国特許第4,256,108号;同第4,160,452号;同第4,265,874号に記載の技術を用いて行い得、制御放出用の浸透圧治療錠剤を形成しうる。
【0077】
本発明の方法で有用な式I又はIaの化合物並びに医薬活性剤は、インビボ適用のために、独立に、又は一緒に、注射によって、又は長時間にわたる緩やかな灌流によって、非経口で投与できる。投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮、又は例えば、浸透圧ポンプによる注入によってでありうる。インビトロ研究のために、本薬剤は、適当な生物学的に許容できる溶媒又は緩衝液に加え得、又は溶解し得、細胞又は組織に加え得る。
【0078】
非経口投与用製剤として、滅菌水性又は非水性溶液、懸濁剤及びエマルジョンが挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体として、生理食塩水及び緩衝化媒体を含む、水、アルコール/水溶液、エマルジョン、又は懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルとして、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウムが挙げられる。乳酸化リンゲル静脈内ビヒクルとしては、補液及び栄養素補給物、電解質補給物(リンゲルデキストロースに基くものなど)などが挙げられる。例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、増殖因子、不活性気体などの保存剤や添加剤も存在しうる。
【0079】
一般的に、用語「治療(treating、treatmentなど)」は、所望の薬理効果及び/又は生理効果を得るために、被験体、組織、又は細胞に影響を与えることを意味するように、本明細書では使用される。効果は、疾患又はその徴候もしくは症状を完全又は部分的に予防する点で予防的であり得、及び/又は疾患の部分的又は完全な治癒の点で治療的でありうる。本明細書で使用する「治療(treating)」は、脊椎動物、哺乳動物、特にヒトの疾患の任意の治療又は予防を包含し、(a)疾患に罹り易いかもしれないが、まだ疾患であるとは診断されていない被験体に疾患が起こるのを予防すること;(b)疾患を阻害すること、即ち、その発症を抑止すること;又は(c)疾患の影響を軽減すること又は改善すること、即ち、疾患の影響の軽減を引き起こすこと;を含む。
【0080】
本発明は、疾患の改善に有用な種々の医薬組成物を含む。本発明の1実施態様による医
薬組成物は、担体、賦形剤、添加剤又は助剤を用いて、式I又はIaの化合物、そのアナログ、誘導体又は塩、あるいは、式I又はIaの化合物と1種以上の医薬活性な薬剤の組合せを、被験体への投与に適した形態にすることによって製造される。しばしば使用される担体又は助剤として、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトールや他の糖、タルク、ミルク蛋白質、ゼラチン、澱粉、ビタミン、セルロースやその誘導体、動物油や植物油、ポリエチレングリコール、及び滅菌水、アルコール、グリセロール及び多価アルコールなどの溶媒が挙げられる。静脈内ビヒクルとして、補液及び栄養素補給物が挙げられる。保存剤として、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性気体が挙げられる。他の医薬として許容できる担体として、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th ed. Williams & Williams (2000)、the British National
Formulary, 43rd edition (British Medical Association and Royal Pharmaceutical Society of Great Britain, 2000)(これらの内容は、引用により本明細書に含まれるものとする)に記載のように、水溶液、塩を含む非毒性賦形剤、保存剤、緩衝剤などが挙げられる。医薬組成物のpH及び種々の成分の正確な濃度は、当該分野の慣用的技術に基づき調整される。Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis for Therapeutics (7th ed., 1985)参照。
【0081】
医薬組成物は好ましくは、投与単位で製造され、投与される。固体投与単位は、錠剤、カプセル、座薬でありうる。被験体の治療のために、化合物の活性、投与方法、疾患の性質と程度、被験体の年齢と体重に依存して、異なる1日投与量を使用できる。しかし、特定の状況下、より高い又はより低い1日投与量が適切でありうる。1日投与量の投与は、個々の投与量単位もしくは幾つかのより小さい投与量単位の形態で単回投与、また、特定の間隔で分割投与量の多回投与、の両方によって行うことができる。
【0082】
本発明の医薬組成物は、治療有効投与量で局所的又は全身的に投与されうる。この使用に有効な量は、勿論、疾患の程度及び被験体の体重や全般的状態に依存しよう。典型的には、インビトロで使用される投与量は、医薬組成物のin situ投与に有用な量の有用なガイダンスを提供し得、微生物感染の治療に有効な投与量を決定するために、動物モデルが使用されうる。種々の検討材料は、例えば、Langer, Science, 249: 1527, (1990)に記載されている。経口使用のための製剤は、活性成分が、不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセルの形態でありうる。これらはまた、活性成分が、水、又はピーナッツ油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油などの油性媒体と混合されている軟ゼラチンカプセルの形態でありうる。
【0083】
水性懸濁剤は通常、水性懸濁剤の製造に適した賦形剤と混合された活性物質を含有する。このような賦形剤は、(1)カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、及びアカシアゴムなどの懸濁剤;(2)以下のものでありうる分散剤又は湿潤剤:(a)レシチンなどの天然のホスファチド;(b)アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合産物、例えば、ポリオキシエチレン ステアレート;(c)エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合産物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール;(d)エチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルとの縮合産物、例えば、ポリオキシエチレン ソルビトール モノオレエートなど;又は、(e)エチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合産物、例えば、ポリオキシエチレン ソルビタン モノオレエート;でありうる。
【0084】
医薬組成物は、滅菌の注射可能な水性又は油性の懸濁剤の形態でありうる。上記の適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて、公知の方法に基づき、この懸濁剤は処方されうる。滅菌の注射可能な製剤はまた、非毒性の、非経口的に許容できる希釈剤又は溶媒(例えば、1,3−ブタンジオールの溶液のように)中の滅菌の注射可能な溶液又は懸濁液でありうる。使用されうる許容できるビヒクルと溶媒には、水、リンゲル溶液、等張性塩化ナトリウム溶液がある。更に、滅菌の固定油は、通常、溶媒又は懸濁媒体として使用される。この目的のために、合成モノもしくはジグリセリドを含む任意の無刺激性の固定油が使用されうる。更に、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の製造における使用を見出している。
【0085】
式I又はIaの化合物はまた、リポソーム送達システム(小さな単層ベシクル、大きな単層ベシクル、及び多層ベシクルなど)の形態で投与されうる。リポソームは、種々のリン脂質(コレステロール、ステアリルアミン、又はホスファチジルコリンなど)から形成できる。
【0086】
式I又はIaの化合物はまた、獣医学用組成物の形態で使用されるために提示されることもあり、それは、例えば、当該分野で通常の方法によって製造されうる。このような獣医学用組成物の例として、以下のものに適合したものが挙げられる:
(a)経口投与、外用、例えば、ドレンチ(例えば、水性もしくは非水性溶液又は懸濁剤);錠剤又はボーラス;飼料と混合されるための、粉末、顆粒、又はペレット;舌に適用するためのペースト;
(b)非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、又は静脈内注射による、例えば、滅菌溶液又は懸濁剤として;又は、(適当な場合)懸濁剤又は溶液が、乳頭を介し乳房に導入される乳房内注射によって;
(c)局所適用、例えば、皮膚に適用されるクリーム、軟膏、又はスプレーとして;又は(d)膣内、例えば、ペッサリー、クリーム、又は泡状物として。
【0087】
本発明の式I又はIaの化合物の投与量レベルは、体重1kg当たり約1gまでのオーダーでありうる。単一投与量を生じさせるのに、担体物質と組合せうる活性成分の量は、治療される宿主と投与の特定の様式に依存して変わろう。例えば、ヒトへの経口投与を意図した製剤は、組成物全体の約5〜約95%まで変わりうる担体物質の適当で便利な量と共に、活性化合物を約1gまで含有しうる。投与単位形態は一般的に、活性成分を約5mg〜約500mg含有しよう。
【0088】
場合によっては、本発明の化合物は、スケジュールにおいて全体で少なくとも2回投与が行われるように、分割投与スケジュールで投与される。好ましくは、4時間以上までの間少なくとも2時間毎投与する。例えば、化合物は、1時間毎又は30分毎に投与されうる。1好適実施態様では、血液中の活性薬剤の有効含量が維持されるように、分割投与レジメンは、血液中の活性化合物のレベルが、第1投与後到達した最大血漿レベルの約5〜30%に減少するのに十分長い第1投与からの間隔後の本発明の化合物の第2投与を含む。場合によっては、各々の先行投与からの対応する間隔で、1回以上の次の投与が行われうる。好ましくは、血漿レベルが、直前の先行する最大値の約10〜50%に減少したときである。
【0089】
しかし、任意の特定の患者に特異的な投与量レベルは、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全般的健康、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、薬剤の組合せ、治療を受ける特定の疾患の程度を含む種々の因子に依存することが理解されよう。
【実施例】
【0090】
実施例
以下の非限定的実施例と図面のみ言及して、ここで本発明を詳細に説明する。
【0091】
実施例1 全般的合成方法
ベンズジオキソールは文献(Perekalkin,1982a)に記載されている。ベンゾイミダゾールとベンゾオキサゾールの合成はまた、下記の標準的縮合方法1及び2(Perekalkin,1966,1982b)を用いて行われうる。
方法1
【0092】
【化17】

【0093】
方法2
【0094】
【化18】

【0095】
(式中、X、Y、
【0096】
【化19】

【0097】
及びR〜Rは、上記式Iで定義した通りである。)
【0098】
方法2で、等モル量のベンズアルデヒドとニトロアルカンを、三角フラスコ中で混合し、等容量のアルコールに溶解した。触媒量(通常、アルデヒドとニトロアルカンに対し1:10)で新鮮な蒸留エチレンジアミンを、得られた溶液に加え、室温で数日間(3〜10日まで)暗所に置いた。この間に化合物は結晶化した。約0℃まで冷却後、結晶を濾過し、冷アルコールで洗浄し、次いで乾燥した。収量が低いときには、母液を一緒にして、ロータリーエバポレーターで蒸発させることができる。冷却後、更なる量の不純な生成物を得る。生成物を、最小量の沸騰アルコールに溶解することによって精製した。次いで、それを、活性炭で処理し、熱濾過し、冷却が進行している間に微細な黄色針状結晶が結晶化した。収率は約80〜85%であり、該化合物はクロマトグラフィー的に均一であった。
得られた化合物の赤外スペクトルは、文献(Hamlin and Weston, 1949; Knoevenagel and Walter, 1904 ; Burton and Duffield, 1949)に記載のものと一致する。
化合物は、エタノール、アセトン、ベンゼン、メタノール、アセトニトリル、クロロホルム、DMSOなどの有機溶媒に可溶であったが、水には非常に低い溶解性を示した(0.1%)。アルコール溶液を水に加えたとき、安定なコロイド性混合物が形成された。
【0099】
実施例2 化合物(1)(3,4−メチレンジオキシ−β−メチル−β−ニトロスチレン)の製造方法
上記実施例1に記載の方法1を用いて、化合物(1)を製造した。反応スキームを下に示す。
【0100】
【化20】

【0101】
テトラニトロメタン(1mole)9.8gとアセトン10cmの混合物を氷冷し、アセトン20cmに溶解した蒸留イソサフロール(1mole)8.1gとピリジン(1.2mole)4.8gに滴下した。正に最初の滴下によって、反応混合物は黒ずみ、テトラニトロメタンを全部加えたとき、液体は不透明で、暗赤色になった。テトラニトロメタンの臭いは急速に消失し、約2時間で、透明になった暗赤色溶液を、ストッパーのついた瓶中の水100cmに注いだ。混合物を徹底的に振盪し、エーテル層で覆い、苛性カリウム(1.03mole)の33%溶液6.7cmと水50cmの混合物を、少しずつ加えた。各添加後、混合物を振盪し、アルカリの全量を加えるたら、暗赤色油として存在するピリジンとニトロホルムの全塩が消失するまで、振盪を続けた。次いで、水層を分離し、エーテルで再び抽出した。一緒にしたエーテル抽出物を水で最初に濯ぎ、次いで、硫酸で酸性化した水で濯ぎ、最後に再び純水で濯いだ。エーテルの真空蒸留後、β−ニトロイソサフロールの沈殿物が黄色針状結晶の形態で見出すことができ、それを、アルコール約65cmから再結晶した。融点98℃、収量7gで、化合物(1)が得られた。溶媒を蒸発させると、別の0.5gの化合物(1)が得られた。全生成物は、理論収量の72.5%に達した。
【0102】
実施例3 化合物(1)(3,4−メチレンジオキシ−β−メチル−β−ニトロスチレン)の別の製造方法
上記実施例1に記載の方法2を用いて、化合物(1)を製造した。反応スキームを下に示す。
【0103】
【化21】

【0104】
900gmピペロナールを1000ccアルコールに、一定の振盪を行いながら溶解し、450mlニトロエタンをゆっくりと、次いで10mlエチルジアミンを加えた。
17時間撹拌後、混合物を、室温で5〜7日間、暗所に置いた。生じた黄色結晶を、乾燥するまでブフナー漏斗で濾過し、次いで、150mlアルコールで2回洗浄した。これにより、融点95℃の化合物(1)1200gmが得られた。エタノールからの更なる結晶化後、融点98℃の明黄色結晶1000gmが得られた(収率約80%)。
【0105】
分子式10NO、分子量−207.05
物理的及び化学的特徴
状態の形態 黄色結晶
溶解性プロフィール <エタノール、アセトン、ベンゼン、メタノール、
アセトニトリル、クロロホルム、DMSOに可溶
−水に殆ど不溶
融点 94〜98℃(50%エタノールから結晶化した
とき、生成物は、96〜98℃を有した)
pH(50%v/vエタノール中) ほぼ中性
比旋光度 光学的に不活性だが、2種の立体異性体を有する
安定性 200℃超で黒ずみ始める
純度 MSは、主要不純物である分子量303.4と
331.4の不純物を示す。
【0106】
IRスペクトル
1.芳香環−3000超の波数及び付随の芳香族1470〜1630領域
2.β−メチルスチレン−スチレン上の更なる基1442脂肪族−C−+900〜1000ピーク
3.低波数のニトロ基、例えば、747、673及びβ−ニトロスチレンは1520を有する。
4.芳香族エーテル基−1312、(1258)、1138、1030
それにもかかわらず、この化合物のフィンガープリントは、IRスペクトル(q.v.)によって提供される。これは、夾雑物によるピークを減少させるために、再結晶化物質で行われた。
IRスペクトル
分子量303.4及び331.4の不純物
主要種の分子量の確認 207.1
【0107】
NMRスペクトル
−水素NMR(200MHz)は以下を示す:
3個の残存Hを有する芳香環、CHの一部として3H、側鎖に結合した別のもの、及び別の環の一部として2H;
−炭素NMR(50MHz)は以下を示す:
−CH、CH−、−CH(メチレンジオキシとして)
−化学シフトの値は、与えられた構造と、使用した合成に好まれる、Z−立体異性体よりもE−立体異性体の可能性を支持する。強い求引基(NO)が示される。
UV/可視スペクトル
再結晶化物質は、250〜270mmと360〜370mmでピーク(幅広)を有し、210mm未満で高い吸収を有する。
【0108】
実施例4 化合物(2)の製造方法
上記実施例1に記載の方法2を用いて、化合物(2)を製造した。反応スキームを下に示す。
【0109】
【化22】

【0110】
新鮮蒸留のエチレンジアミンNH−CH−CH−NHを触媒として用い、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒドをニトロメタンと縮合させた。反応は、アルコール中、暗所、室温で5日間行った。生じた結晶を濾過で分離し、冷アルコールで洗浄した。風乾後、収率は80%、融点158〜159℃、及び再結晶後、融点は162〜163℃であった。化合物(2)は非水溶性で、アセトン、アルコール、酢酸、及び有機溶媒の大部分に可溶であった。
【0111】
実施例5 抗細菌活性
本明細書記載の実験では、「軍医学アカデミー微生物部門博物館(the museum of the Microbiology chair of the Military Medical Academy)」から得た病原体の博物館株(指標「M」と命名)、及び患者から採取し、たった3回の実験室継代を行った、病理学材料から選択された株(指標「B」と命名)を使用した。病原体の各タイプに関し、対応する最適な栄養培地を用いた。含浸法(impregnation method)に関し、化合物(1)と(2)を、0.03〜2.0%の用量で固体栄養培地に加えた。抗生物質への感受性を測定する標準的方法と類似した寒天拡散アッセイを用いた。
【0112】
寒天拡散アッセイは、以下のように行った。
肉ペプトン寒天を調製し、0.01〜2.0%の濃度で試験化合物を含ませた。培地をペトリ皿に注ぎ、固まらせた。10mm径の寒天プラグを切り出し、調べる微生物を植菌した直後、同じ培地を含むペトリ皿の表面に置いた(1培養当たり少なくとも6個のプラグ)。37℃のインキュベーション1日後、プラグの周りの培養物発育阻止ゾーンの直径を測定した。結果は、抗生物質に対する感受性の試験の公式標準に従って評価した。20mm以下の直径は、安定培養に対応し、21〜28mmは中程度安定、29mm以上は感受性に対応した。
これと並行して、15種の抗生物質への病原体の感受性を、新規医薬物質及び医薬技術の導入のためのロシア管理機関の公式プロトコルに従い試験した(ディスク法)。
【0113】
性能の可能性のある全体幅を評価するために、幾つかの病原体のタイプと株を用いて、試験物質に対する株とタイプの感受性の限界を示した。
下記の表1は、濃度1.0%の化合物(1)での実験の結果(ここでは、化合物(1)は、5×10〜5×10生物/mLの増殖を抑制した)、及び以下の15種の抗生物質を用いた感受性実験の比較結果を示す。
1−ペニシリン、
2−アンピシリン、
3−ゲンタマイシン、
4−カルベニシリン、
5−カナマイシン、
6−リンコマイシン、
7−リボミセチン、
8−オキサシリン、
9−ポリミキシン、
10−リファンピシン、
11−リストマイシン、
12−ストレプトマイシン、
13−テトラサイクリン、
14−エリスロマイシン、
15−セファロスポリン。
【0114】
【表1−1】

【0115】
【表1−2】

【0116】
【表1−3】

【0117】
注:
+ 感受性株
± 中程度に感受性の株
− 安定株
【0118】
下記の表2は、上記寒天拡散法を用いた、化合物(1)に対する幾つかの微生物の感受
性に関する実験の結果を示す。
【0119】
【表2】

【0120】
注:
♯ 感受性
+ 中程度に感受性
− 安定
【0121】
表3は、化合物(1)に対する病原性真菌の感受性の実験の結果を示す。
【0122】
【表3】

【0123】
実施例6 抗微生物試験
寒天拡散法を用いて、化合物(1)の抗微生物活性を試験した。
化合物の非常に低い溶解性のために、研究は、液相で行うことはできなかった。このために、試験化合物0.5%を含有する最初の母含有物(impregnate)を、肉ペプトン寒天上で調製した。水浴中で液体状態で再生されたこの母含有物から、二段階希釈物を、寒天基剤の添加によって調製した。このようにして得られた、0.5%、0.25%、0.12%、0.06%、0.03%、0.015%の濃度の化合物を含む希釈物をペトリ皿中に注ぎ、その上に6種の細菌と2種の真菌の試験培養物を植菌した。
【0124】
以下の試験培養物を用いた:
1)Staphylococcus aureus株674、患者から単離され、ゲンタミシン、オキサシリン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、セファロスポリンに感受性、ストレプトマイシンに僅かに感受性。
2)Enterococcus faecalis博物館株、アンピシリン、リファンピシン、ストレプトマイシンに感受性。
3)Klebsiella pneumoniae株312、患者から単離され、ゲンタマイシンとポリミキシンに感受性。
4)Salmonella typhimurium博物館株727、アンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、カナミシリン、ポリミキシン、セファロチンに感受性。5)Acinetobacter株681、患者から単離され、ポリミキシンに僅かに感受性。
6)Pseudonomas aeruginosa株328、患者から単離され、ポリミキシンに僅かに感受性。
7)Trichophyton interdigitale
8)Candida albicans
【0125】
8種の試験培養物の各々を、ペトリ皿中の滅菌肉ペプトン寒天に播き、次いで、濃度0.5%で9種の化合物の1つを含ませた寒天の標準プラグを、寒天表面上に置いた。37℃で24時間と48時間の生育後、プラグの周りの阻止ゾーンを測定した。真菌培養物に関しては、30℃でインキュベーション7〜10日後、結果を評価した。
含有寒天上の化合物の作用の結果を表4に要約する。
【0126】
【表4】

【0127】
下記の表5は、寒天拡散実験の結果を示す。
【0128】
【表5】

【0129】
等濃度で、化合物(1)は、アンピシリン耐性Staphylococcusの増殖と、この抗生物質に感受性であるEnterococcusの増殖を阻止する。他の病原体と他の製剤では、同様の差異が観察できる。
【0130】
化合物(1)の抗TB効果
10%正常ウマ血清を含む合成液体培地(SOTON)中で、二段階希釈の標準的方法によって、抗TB効果を調べた。溶液は、ツウィーン80中で調製した。
試験培養物は、抗TB薬剤に感受性のMycobact tub. H. 37RVであった。
マイコバクテリア懸濁液(密度5×10細胞/ml)を、特殊な液体培地(Vischnevsky, B. I.)上に播種した。
結果は、37℃での10〜14日インキュベーションで計算した。MIC(M. tuberculosisの完全阻害)。
結果を、下記の表6に示す。
【0131】
【表6】

【0132】
化合物(1)のみが、エタンブトール/イソニアジドのMICに近いMICを有した。
【0133】
実施例7 抗プロトゾア活性
トリコモナスに対する化合物(1)と(2)の効果も調べた。患者から単離したTrichomonas vaginalisを用いた。トリコモナスは、5.0%ネイティブウシ胎仔血清、炭水化物、付随するフローラを抑制する抗生物質を含有する培地199で、pH5.8〜6.5、37℃で培養した。培養管中の培地表面にワセリンを塗布した。実験標本は、濃度0.3%で試験化合物を含んでいた。
1.0cm中5〜8細胞の量で、運動性形態の該寄生虫を含む7個の標本を調べた。対照では、寄生虫は、3〜4継代で培養するのが成功した(各継代5〜6日)。対照的に、試験化合物を含む培地での運動性形態の培養は、全ての場合に不成功であった。試験化合物の存在下での唯一の継代後、運動性形態は増殖しなかった。
【0134】
実施例8 インビボの抗細菌活性
該物質の治療及び予防効果を、Corynebacterium paratuberculosisで腹腔内又は鼻腔内感染させたマウスのインビボ実験で測定した。
感染日から異なる期間で、即ち、感染前2日と1日(スケジュール2、1)、感染日(スケジュール0)、感染後1日、2日、3日など(スケジュール+1、+2、+3など)で、<20%LD50/0.2の投与量で、化合物(1)と(2)を、腹腔内、筋肉内、経口で投与した。
毎日の死亡率を測定し、累積の偏差を計算し、これに基づき、製剤の性能の結果を式
AI=[(B−A):B]×100
(式中、AI=製剤の活性指標(%)、A=実験群での累積死亡率、B=対照群での累積死亡率)
によって決定した。
【0135】
結果は、下記の表7に示され、試験した化合物(1)と(2)は、Corynebacterium paratuberculosisを感染させたマウスで治療及び予防活性を示したことを示している。
筋肉内投与に関し、動物の減少死亡率の形態での臨床的予防性能は、52.53%であった。サルモネラ症の臨床性能は、50.0〜20.0%の限界内で変動した。pseudotuberculosisに関し、予防性能は、50.0%であった。
【0136】
【表7】

【0137】
実施例9 放射線保護活性
調べた化合物(1)及び(2)の放射線保護性能を、体重18〜20gの雄性白マウスで試験した。
投与量:2,4,6,8,10,15,20Gr(1hR=100レントゲン)
観察期間=25日間
報告手段:動的死亡率、累積死亡率及び投与量実質変化(FCD)
導入スケジュール:50mg/kgを0.2mLで、マウスに。
群1:対照
群2:放射まで1及び2日
表8は調べた化合物の放射性能に対する実験の結果を示す。
【0138】
【表8】

【0139】
注:
1hR=100レントゲン
【0140】
結果は、すべての放射量に対し、試験化合物の予防的投与は対照群と比較して放射を受けた動物の死亡率をかなり下げた。FCD(LD50対照)=1.39〜1.43、これは示した化合物の高い放射線保護効果を示しており、その性能は今までに報告されている媒体に劣らない。
【0141】
実施例10 感染した創傷の治療
Streptococcus及びStaphylococcusによって感染した皮膚創傷を患っているヒトボランティアを、ワセリン、ヒツジ脂及びスルホキシドの軟膏ベース中0.1%の化合物(1)及び(2)で治療した。0.1%軟膏を3日間塗布すると、創傷は膿が完全になくなり、次いで創傷は治癒した。
3症例で真菌感染によって引き起こされた皮膚の広範囲損傷を治療した。真菌の種類は特定しなかった。損傷した領域に0.1%軟膏を、1日2回塗りつけた。皮膚は1週間以内に真菌増殖がなくなった。
【0142】
実施例11 薬物動態学
本発明の化合物の薬物動態学は詳細には調べられていないが、腹腔内に及び胃内に化合物(1)及び(2)を投与したマウスで行った実験において、化合物は24時間超血液中にて生物学的に活性な濃度のままであることが証明された。
【0143】
実施例12 毒物学
胃内に投与した場合のマウスの平均的致死用量は1500mg/kg体重であり、腹腔内に投与した場合の平均致死用量は575mg/kg体重であった。よって、本発明の化合物は毒性が低い。
【0144】
実施例13 化合物(1)の抗微生物活性及び溶解度
化合物(1)は水に比較的不溶であるが、1mg/mL(0.1%)で10%DMSOに、2mg/mLで10%エタノールに及び2mg/mLで10%アセトンに可溶である。
検査可能な一番高い濃度は5%溶媒の512μg/mL、又は2.5%溶媒の256μg/mLである。特別な化学中和は必要なく、希釈は殺微生物試験において残りの活性を中和させるのに十分である。
試験株に対し一番毒性が低いので、DMSOを試験のための溶媒として選んだ。
エタノール中に処方すると、化合物(1)はE.coliに対して少なくとも8倍活性が大きく、>512μg/mL(2.5%DMSO)と比較して128μg/mL(0.06%ETOH)のMICを示した。エタノールはE.coliに対し2.5%より高い濃度で有毒である。
【0145】
実施例14 化合物(1)の抗細菌活性
NCCLS−USA標準方法−ブロス微量希釈法(又は多量希釈)(ミュラー−ヒントン)
播種1〜4×10cfu(又は−4×10cfu)
シプロフロキサシン試験対照。クロルヘキシジン値を殺菌及び消毒活性比較のために加えた。
35℃、24時間、好気性における3ログ減少(99.9%殺菌)としての最小阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)は(他に記載がない場合)。48時間力価は有意には異ならなかった。
結果を表9に示す。
【0146】
結果のまとめ
化合物(1)は、グラム陽性及びグラム陰性細菌の代表的な選択物に対しインビトロで許容できる濃度範囲内の殺菌活性を有する、比較的広いスペクトルの抗菌剤である。化合物(1)は、好気性グラム陽性及びグラム陰性球菌並びに臨床的に重要なグラム陽性桿菌に対して広く効果がある。
【0147】
耐性グラム陽性球菌での感染
S.aureus及びE.faecalisの臨床単離物(多剤耐性)は標準株と同じくらい感受性があった。現在の治療薬と比較すると、低濃度では活性ではないが、現在の選択薬に反応しない多剤耐性のブドウ球菌及び腸球菌の治療として化合物(1)を利用できる可能性はありうる。
【0148】
嫌気性感染
化合物(1)は臨床的に重要な嫌気性菌、Clostridium perfringens、Clostridium difficile及びBacteroides fragilisに対して活性がある。C.difficileは入院患者に全腸炎をもたらし、選択薬として現在バンコマイシンで治療されている。耐性の誘発が、バンコマイシンの潜在的な問題である。バンコマイシンの代替品として、C.difficile全腸炎のための経口薬剤の需要がありうる。
嫌気性感染は一般的に、1つ以上の通性菌を伴った嫌気性菌(通常は腸のグラム陰性桿菌)の混合感染である。もっとも一般的な嫌気性病原体はClostridium difficile及びBacteroides fragilisである。その他の抗細菌
薬と組み合わせたメトロニダゾールでの現在の治療は一般的に有効である。化合物(1)の好気性及び嫌気性細菌両方に対する広いスペクトルを考慮すると、これは、これらの感染を治療することができる可能性がある。
【0149】
腸感染
化合物(1)はCampylobacter jejuniに対して非常に活性である。Campylobacter現在世界中で腸感染の最も大きな原因であり、一部の患者の重症度や、感染がギラン・バレー症候群(重度のCNS疾患)を生じさせやすくさせる傾向のためにしばしば治療されている。
腸グラム陰性細菌の相対耐性は、溶解性及び化合物(1)の細胞へ浸透力の関数でありうる。動物における困難な腸管感染の治療の成功及びSalmonella感染の治療の成功が示されている。
【0150】
外陰膣炎
化合物(1)はNeisseria gonorrhoeaeに対して活性である。外陰膣炎は、Candida albicans、N.gonorrhoeae、Chlamydia trachomatis及びTrichomonas vaginalisによって引き起こされる(個々にであって、同時感染ではない)。化合物(1)はこれらの剤の2つに対して活性である。
化合物(1)の溶解性をより大きくすると(そして、それによっておそらく吸収も大きくなる)、インビボでのその活性と分布の両方が改善されるであろう。
【0151】
【表9】

【0152】
実施例15 化合物(1)の抗真菌活性
NCCLS−USAブロス多量希釈法(RPMI培地)。
播種約5×10菌糸断片/mL(血球計算器)。ミコナゾール対照。
最小阻止濃度(MIC)及び最小殺真菌濃度(MFC、2ログ減少−99%殺菌)、30℃、好気性、酵母菌は2、7及び10日並びに糸状菌は4、7及び14日。
結果を表10に示す。
【0153】
結果のまとめ
化合物(1)は、臨床的に重要な酵母及び糸状菌の幅広い範囲に対して比較的低濃度にて殺真菌性である(表10)。
【0154】
皮膚糸状菌感染
化合物(1)は、ヒトや動物における皮膚、髪及び爪の感染の3つの主な原因に対して優れた活性を示す。表層の真菌感染は、世界中でもっとも一般的な真菌感染である。治療
は長く、何ヶ月もかかる(爪の感染だと何年もかかる)。抗真菌ローション及びクリームによる表層治療は部分的にしか有効ではない。コストは一般的に低いが、現在の治療は効率が悪く、再発する可能性もしばしばある。経口全身性薬剤(テルビナフィン及びイトラコナゾール)は易感染性患者の表層感染及び爪の感染に好ましい。
【0155】
全身性感染
易感染性患者における重度の真菌感染が、罹患率の点でも重症度の点でも世界中で増加している。真菌感染は一般的に、高い治療失敗率、頻繁な再発及び真菌による耐性力の発生を伴い、長期にわたるものである。カンジダ症(Candida albicans)及びアスペルギルス症(Aspergillis fumigatus)は主要な真菌感染である。重度の侵入性感染は、高い死亡率である。有効な薬剤はほとんどない(抗細菌薬剤と比較して)。長期治療が、安全性と、耐性を誘発する不具合を重要な事柄にしている。アムホテリシンBはたくさんの重度の真菌症にとって主な選択薬である。それは殺真菌性だが、溶解性及びバイオアベイラビリティーが低く、毒性と送達の問題、並びに高い治療失敗率によって制限されている。アゾール類及びトリアゾール類は低い毒性と優れた薬物動態学的性質を有する静真菌剤であるが、長期の治療では耐性が生じるためしばしば効果がない。
化合物(1)は広いスペクトルを有し、殺真菌性で、C.albicans及びA.fumigatusにて耐性を誘発しなかった。(以下、参照)
【0156】
【表10】

【0157】
実施例16 化合物(1)の殺胞子活性
Bacillus subtilis内生胞子
Asoergillus fumigatus無性外生胞子
水+ツイーン20中の化合物(1)を24時間まで殺胞子活性について試験した。
化合物(1)512μg/mLはB.subtilis内生胞子を24時間以内に殺さなかった。
化合物(1)512μg/mLはA.fumigatus無性外生胞子を24時間で殺したが、6時間では殺さなかった。
Aspergillus胞子の吸引が、主な伝染機構である。胞子に対する活性は、易感染性個体の予防に有意である可能性がある。しかしながら、胞子は感染するためには発芽しなければならないため、最終的には有効性を決めるのは真菌の栄養型に対する活性である。
【0158】
実施例17 化合物(1)の耐性の発生
細菌及び真菌株を、12週間連続で亜阻止濃度にて化合物(1)にさらし、耐性機構の発生を示すMICにおける上昇をモニターした。重く可変の接種株を週ごとの継代培養に使用し、各週の阻止濃度が変わるようにする。標準化したMICを暴露の前と後で測定する。標準化MICの4倍より大きな変化は、耐性の増大を示すか、又は週ごとのMICの上昇傾向を示している。選択された属は、多くの抗生物質に対し容易に耐性を発生させ、主な臨床上の問題となっていることで知られている。
たくさんの現在の薬剤に耐性を発生することが知られている、細菌種及びC.albicansは、12週間連続で暴露した後でも化合物(1)に対して耐性を生じなかった(表11)。異常な顕微鏡的、肉眼的変化について株を調べた。Proteus vulgarisは群がる能力を失い、これは鞭毛に対する影響を示している。その他の株は正常に見えた。R.rubraと3つのかびについてはまだ試験は終わっていない。これらの株における耐性の発生がなかったということは、化合物(1)の有意な特性である。
【0159】
【表11】

【0160】
実施例18 血液存在下での化合物(1)の抗細菌活性
化合物(1)及びシプロフロキサシンの活性を、血漿及び全血(ウマ)の存在下で、ミュラー・ヒントンブロスにおける48時間までの多量希釈法によって測定した。
化合物(1)は、10%血漿の存在には比較的影響を受けず、5%全血存在下ではより活性であるように見えた。血液存在下におけるわずかな阻止活性の改善は、時々抗細菌剤で生じ、おそらく血液中に存在する自然の抗細菌因子によるものである。表13に示したように、さらに血漿及び血液の濃度を増やすと、化合物(1)のS.aureusに対する殺細菌活性は減少した。シプロフロキサシンはそれぞれ10%血漿及び全血の存在下で、S aureusに対する活性を4倍、及び2倍の減少を示した。
【0161】
【表12】

【0162】
実施例19 血漿タンパクに結合する化合物(1)
化合物(1)のMICを増加濃度の血漿において測定した。化合物(1)はヒト血清アルブミン及びアガロースに結合することが示された。血清に結合することは、薬剤の分布及びバイオアベイラビリティーにおいて重要である。
化合物(1)のMICは、血漿濃度の上昇にともない著しく上昇する。殺細菌活性は阻止活性よりはるかに大きく影響を受ける。
化合物(1)のバイオアベイラビリティーは、血漿タンパク存在下で著しく減少する(表13)。化合物(1)は可逆的にタンパク質と結合する。
【0163】
【表13】

【0164】
実施例20 殺菌率
試験株を化合物(1)の水溶液中に播種し、即刻、並びに1、2、4、6及び9時間でサンプリングした。生存菌をMHA(35℃、48時間)での生存可能数で概算した。
殺菌の測定:ログ減少因数として表した生存可能数(ログ)の減少は。(例えば、Iログ減少=90%殺菌、2ログ=99%殺菌、3ログ=99.99%殺菌など)
化合物(1)はCandida albicansに対してのみ迅速な殺菌を示し、図1に示したように、512μg/mLで2時間以内及び256μg/mLで4時間以内に、99.999%超の減少であった。
殺菌率は細菌に対して、ずっとよりゆっくりであった。512μg/mLでの殺菌率はB.subtilisに対し2時間以内で99.99%、S.aureusに対し9時間以内で99.99%であった。
シプロフロキサシンは、試験しなかった。
【0165】
【表14】

【0166】
実施例21 ラットにおける化合物(1)の投与範囲試験
この実施例の目的は、1回量を経口で投与した後のラットにおける化合物(1)の吸収と血中レベルを明らかにすることであった。
【0167】
試験プロトコール
Sprague−Dawleyラット(6週齢、2001年1月30日生)を動物施設にて標準化環境条件(22℃±3℃、相対湿度30〜70%、人工灯、12時間明/12時間暗)下で6日間馴化させた。ラットには従来の研究用の食餌と水を随意に与え、1つのケージに5匹ずつ入れた。
【0168】
試験物質
化合物(1)を滅菌LPW中の水性懸濁液として調製した。高濃度にて懸濁液に超音波をかけ、栄養補給針を十分に通過できるよう粒子サイズを小さくした。
化合物(1)を、1250、1000、500及び100mg/kgにて試験した。
【0169】
試験方法
ラットをランダムに治療群に割り当て、尻尾に番号を打って識別できるようにした。投与量は一番低いものから順に試験した。
群 A 100mg/kg 5/2/01
B 500 8/2/01(絶食してない)
C 500 12/2/01(絶食した)
D 1000 14/2/01
E 1250 21/2/01
化合物(1)懸濁液及び水対照を約100mL/kg体重で、単回投与した。1つの対照と5つの治療のラットはそれぞれの投与の直前に体重を量り、投与容量を計算し、投与を強制飼養により行った(22ゲージステンレス鋼、シリンジに滑らかな丸い先端がつけられたもの)。
約100〜200μLの血液(微量遠心管)を、4時間と8時間で尾から取った。尾は熱ランプを用いて事前に暖め、大きなメスで先端を切り取った。血液を微量遠心管へ入れた。24時間血液サンプルは、傷ついた尾を切り取るのは難しく、さらにラットへ苦痛を引き起こすため、行わなかった。
血液を凝固させ、微量遠心管にて3分間遠心分離にかけ(スピード14)、血清を分離して−20℃で保存した。
動物を7日間、1日に2回観察し、個々の動物に対して個別に全ての観察を記録した。動物の体重は最初の測定後は量っていない。7日後に供死し、検死を行った。
動物は二酸化炭素で安楽死させた。
全体の症状を記録し、心臓、肺、肝臓、腎臓、胃、脾臓、十二指腸及び結腸のサンプルを組織学のため取り出した(10%ホルマリン)。
【0170】
実施例22 化合物(1)の血中レベル
バイオアッセイ
化合物(1)の血中レベルのためのバイオアッセイは、化合物(1)が血液タンパク質及び寒天に強く結合するのが障害となり、不可能であった。
【0171】
寒天拡散法
化合物(1)の寒天拡散アッセイは、化合物(1)が寒天に強く結合し、S.aureus又はStreptococcus pyogenesの感受性株Deha1〜512μg/mLの間のどの濃度においても阻害ゾーンが形成されなかったため、不可能であった。ウェル拡散及びディスク拡散アッセイの両方を試みた。
【0172】
ブロス希釈
MHBへの血清の希釈及びS.pyogenesでの低播種量での試験(MHB中の化合物(1)、1μg/mLにおいて阻害)は、高濃度での血漿への強い結合が大きなプロゾーンを引き起こしたために不可能であった。
【0173】
UV分光法によるアッセイ
個々のラットサンプルのアッセイのための血清は不足していた。
よって治療群及び対照のためのサンプルをプールし、それぞれの治療群のについて化合物(1)の平均レベルを測定した。
【0174】
試験方法
化合物(1)をトルエンによって血清から抽出し(2回)、吸光度を370nmで測定した(日立U2000)。50%メタノール/水(V/V)中の100μg/mLの化合物(1)を用いスパイクした対照及び未処理の対照もアッセイした。
【0175】
血中レベル
消化管からの化合物(1)の吸収は非常に低く、血中に達するのは経口投与量の約2%である。血中レベルは投与レベルに伴い上昇した。8時間でのレベルは概して4時間でのレベルより高かった。4時間と8時間の差が小さいということは、吸収が遅いということを示している。
【0176】
【表15】

【0177】
実施例23 化合物(1)の抗細菌活性スペクトル
抗真菌活性
糸状菌
NCCLS−USAブロス多量希釈法(RPMI培地)−ドラフト。播種量1〜4×10cfu。ミコナゾール対照。この試験を初期活性スペクトル評価のために用いた。
前にNCCLS−USAブロス多量希釈法で試験した糸状菌のMIC及びMFCを、糸状菌M38−P NCCLS−USAを試験するために新しく提案された標準微量希釈法を用いて繰り返した。
結果は異なる日における2又は3回の重複測定のものである。
結果は、以前試験された全ての糸状菌の古い方法によって得られた結果と大して変わら
なかった。アムホテリシンBをいくつかの試験の対照として、ミコナゾールの代わりに用いた。
【0178】
酵母
酵母のブロス多量希釈抗真菌感受性試験のためのNCCLS−M27−A法、認可された標準法。
糸状菌のためのM38−P微量希釈法も用いた。
35℃、48時間における最小阻止濃度(MIC)及び最小殺真菌濃度(MFC−2ログ減少−99%殺菌)。それぞれの方法の異なる日における2又は3回の重複測定から結果をとった。結果は2つの方法では大した差はなかった。M38Pは酵母及び糸状菌についてのみ報告した。
【0179】
【表16】

【0180】
細菌
方法
NCCLS−M7−A5標準方法−ブロス微量希釈法(ミュラー−ヒントン)。播種量1〜4×10cfu。シプロフロキサシン試験対照。殺菌及び消毒活性比較のためクロルヘキシジン及びセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)。
NCCLS−M7−A5標準方法−多量希釈法(ミュラー−ヒントン±特定の濃縮)も用いた。35℃、24時間、好気的で、最小阻止濃度(MIC)及び3ログ減少(99.9%殺菌)としての最小殺細菌濃度(MBC)。48時間力価は大した変化なく、報告していない。微量及び多量希釈法では顕著に異なるMIC/MMCは得られなかった。
【0181】
【表17】

【0182】
カンピロバクター
化合物(1)をヒトから分離したCampylobacter spp.の様々な臨床株について試験した。
【0183】
【表18】

【0184】
カンピロバクターは世界中でもっとも一般的な胃腸炎感染の原因である(血液を伴った下痢、腹痛、嘔吐、頭痛、熱、約1週間続く)。続発症は関節炎及びギラン・バレー症候群(0.1%)である。主に鶏肉を食べることで感染する。発生はアメリカ合衆国において年間約250万人である。C.jejuniがその99%を占める。症状の重さは亜臨床的なものから易感染性患者における重度のものまでさまざまでありうる。補液以外の治
療は一般的になされないが、病気が重度で生命を脅かす場合には抗生物質を使う(エリスロマイシン、テトラサイクリン及びフルオロキノロン)。
【0185】
【表19】

【0186】
上記は重要なヒト病原菌で、これらすべてにおいて抗生物質による治療レジメンが成功している。N.gonorrhoeaeは女性の膣炎の原因となる。したがって、化合物(1)は低い濃度で2つの原因、Candida albicans及びN.gonorrhoeaeに対して活性がある。
【0187】
Trichomonas vaginalis
方法
Trichomonas vaginalisの臨床単離物のMICを、Garcia,L.によって記されたようにKlassで改変したDiamond完全培地(改変TYM)において、多量ブロス希釈法により測定した。培養物を5mLグラス(空気のスペースのないスクリューキャップしたビン)に入れた。ログ2希釈物5mL容量(改変TYM中、5%DMSO中における512μg/mLの化合物(1)から0.002%DMSO中における0.25μg/mLの化合物(1)まで)に、対数増殖期の細胞5mLを播種し、最終播種濃度を1×10から3×10細胞/mLにした。運動性の顕微鏡観察の前に、ビンを37℃にて24時間好気培養した。MICを、運動性を示さない最も低い濃度として測定した。運動性を示さない全ての管からの0.5mLのアリコートをさらに5mL容量の改変TYMに継代培養し、37℃にて5日間まで好気培養し、非生存を確認した。
試験はTYM(2.5%DMSOを含む改変TYM及び5%DMSOを含む改変TYM)において増殖コントロールによって確認した。
試験は異なった日において3回の重複測定で行った。
結果
【0188】
【表20】

【0189】
実施例24 化合物(1)に対する耐性の発生
12週間の耐性試験より選択された耐性株を、新しい微量希釈法を用いて親株と同時に再試験した。
【0190】
【表21】

【0191】
真菌は4倍までのMICにおける差を反復試験にて示す。MICにおける有意な増加は8倍以上である。
試験した糸状かび株による耐性の有意な発生はない。
【0192】
実施例25 エタノール中の製剤が活性に及ぼす影響
DMSO及びエタノール中の製剤が化合物(1)のMICに及ぼす影響について、多量希釈法及び微量希釈法の両方を用いてCandida albicans、Salmonella Typhimurium及びEscherichia coliで比較した。
エタノールのストック溶液は使用の前に48時間置いて、溶解度を高めた。化合物(1)はDMSOに溶けるほどにはエタノールには溶けない。エタノール及びDMSOの濃度を2%で一定に保ち、ストック溶液の通常希釈における溶液の減少濃度と比較した。2つの試験法の間に差はなかった。DMSOの一定の、及び減少したレベルの間に、MICにおける差はなかった。E.coliだけが一定の2%エタノールの存在下で、エタノールに対し感受性増大を示した。
【0193】
【表22】

【0194】
エタノールのE.coliに対する相乗的な効果は、薬剤に適した溶媒を選ぶために溶媒を試験した時に既に言及した。エタノールはStaphylococcus、Salmonella又はCandidaには増大効果は示さない。DMSOはインビトロ試験に
おいてこの薬剤により適した溶媒である。エタノールは動物研究に用いられる。
【0195】
実施例26 保存の際の化合物(1)の安定性
水+5%DMSO中、512μg/mLの化合物(1)のストック溶液を、室温(RT約18〜21℃)、4℃及び−20℃で12週間まで保存し、2週間ごとにBacillus subtilisに対するMICを測定することによって効能を試験した。
【0196】
【表23】

【0197】
1 溶液は8週後に明黄色から暗黄色に変化した。
2 溶液は2週後に明黄色から暗黄色に変化した。
【0198】
化合物(1)は非常に安定で、希釈溶液で、4℃及び−20℃で12週間保存しても効能を維持する。室温で6週後の効能の2倍の損失は、これも抗生物質の作業溶液と比較すると非常に低い。細菌に対するMIC測定に関しても許容できる変化の範囲であった(2倍)。対照抗真菌薬については試験しなかった。
【0199】
実施例27 インビトロのヒト赤血球における、ヒトマラリア原虫(Plasmodium falciparum)の成長に及ぼす化合物(1)の効果
この実施例の目的は、インビトロのヒト赤血球におけるヒトマラリア原虫(Plasmodium falciparum)の進入及び成長に対する化合物(1)の効果を数値で表すことであった。
【0200】
方法
マラリア原虫
3D7は、これらの実験で用いたP.falciparumの、よく特徴付けられたインビトロ培養適合した系列である。この寄生虫はヒト赤血球の中で成長と複製のサイクルを繰り返す。それぞれの完全なサイクルの期間は48時間で、若い環状段階から始まり、サイクルの始めの24時間中に有色栄養体を経てセグメント化された分裂体になり、急速に赤血球に侵入する感染性の分裂小体を放出する。新しく侵入した分裂小体は環状形態になり、サイクルを繰り返す。
【0201】
寄生虫培養と成長阻止アッセイ
P.falciparumを、よく確立されている技術を使って、新鮮に集められたヒ
ト赤血球細胞中の同調インビトロ培養で維持した。侵入アッセイでは、段階同調的に成熟した有色栄養体を含む赤血球を精製し、新鮮なヒト赤血球に再懸濁し、100赤血球毎に約2個寄生させた(2%感染血液)。新鮮な培養培地を加え、最終赤血球濃度を2×10赤血球/mlにした。
試験化合物、ビヒクルのみ(この場合エタノール)又はPBS(対照)のどちらかを含む赤血球懸濁液のアリコートを、37℃で酸素を減じた環境(1%酸素、3%二酸化炭素、96%窒素)でインキュベートした。薄い血液塗付を即座に行い(時間=0)、次いでそれ以降、培養の24時間、48時間及び72時間後に行った。それぞれの塗付にて、感染血液及び寄生虫の成長段階を、pH7.2にてギムザで染色した後の顕微鏡観察によって定量した。これによって、侵入、寄生虫の発達及びそれに続く再侵入を数値で表すことができた。それぞれのサンプリング時点にて、すべてのサンプルにおける培養培地(±化合物/ビヒクル)を新鮮な培地と完全に取り替えた。
化合物(1)を、それぞれ10%エタノールを含む100、400及び1000μg/mlの水溶液として試験した。ストック溶液は必要になるまで4℃で保存した。アッセイでは、それぞれの溶液をさらに完全寄生虫培養培地中に1:40で所望の作業濃度に希釈し(5、10及び25μg/ml)、次いで寄生した赤血球懸濁液に加える前に滅菌濾過した(0.22μm)。ストック溶液はアッセイの間中4℃で保存し、必要なときに寄生虫培養培地に適切に希釈した。1000μg/mlでは37℃に暖め、激しくボルテックスした後でさえ、化合物が完全には溶解しなかったことを留意すべきである。したがって、25μg/mlの推定濃度にて行った試験は、実際には、より低い有効濃度において行えたかもしれない。
【0202】
結果
寄生虫成長に対する化合物(1)の効果を、5、10及び25μg/mlの最終濃度で試験した。結果を図2に図解する。寄生虫の成長及び複製に対する濃度依存性の阻害効果が、試験したすべての薬剤濃度で見られ、培養72時間後の試験した最高濃度(25μg/ml)で一番大きかった。最終濃度0.25%のエタノール単独では、寄生虫の成長に対する有意な効果はなかった。全ての濃度の試験した化合物は、赤血球形態に検出可能な悪影響を全く示さなかった。
25μg/mLでは寄生虫は観察されず、10μg/mLではほんの微量しか見つからなかった。これは化合物が実際に寄生虫を殺していることを示している。
【0203】
明瞭さと理解のために本発明をいくらか詳細に記載してきたが、本明細書にて開示した発明概念の範疇を外れることなく、ここで述べた実施態様や方法に様々な修飾や改変を施してもよいことは、当業者にとっては明らかである。
【0204】
本明細書で引用した参考文献を以下のページに載せる。この参照により、これらは本明細書に含まれる。
【0205】
参考文献
Burton, H.、 Duffield, G.、J. Chem. Soc.、1949、78
Denisenko P. P.、 Tarasenko A. A.、ロシア特許第2145215号、 「Substances having antimicrobial, antifungal, antiprotozoal activity」、2000年2月10日発行
Foyer, G.、 Chemistry of nitro and nitroso groups、モスクワ、1973, Pt. 2, pp. 194−195
Garcia, L.、Parasite culture: Trichomonas
vaginalis、Clinical Microbiology Procedures Handbook、 H. D. Isenberg (編)、2巻、 American Society for Microbiology、ワシントン、アメリカ合衆国 7.9.3.1〜7.9.3.6.
Hamlin, K.、 Weston, A.、 J. Am. Chem. Soc. 71、2210 (1949)
Knoevenagel, E.、 Walter, L.、 Ber.、 37、4502 (1904)
Kuna P.、 Chemical radiation protection、モスクワ、1989、 pp. 25〜28
Mashkovskiy M. D.、 Clinical agents、 Pt. 2、 モスクワ、 1986、p. 189
Perekalkin V. V.、 Unlimited nitrocompounds、レニングラード、1982、 pp.55,59,61,71,73,88,89,91,95
Perekalkin V. V.、 Unlimited nitrocompounds、 レニングラード、 1982、p. 67
Perekalkin V. V.、 Unlimited nitrocompounds、 モスクワ、1966、 p. 119
Vladimirov V. G.ら、 Radiation protectors,
structure and operation、キエフ、1989、 p. 139

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物感染の治療及び/又は予防の方法であって、式I:
【化1】

(式中、
XとYは同一又は異なって、ヘテロ原子から選択され;
【化2】

は、ヘテロ原子XとYに依存して二重又は単結合であり;
〜Rは同一又は異なって、水素又は非有害置換基から選択され;そして
とRは同一又は異なって、水素及び非有害置換基から選択されるか、又は、二重結合が存在するとき、RとRの一方は存在しない)
の化合物、その医薬として許容できる塩又は誘導体、プロドラッグ、互変異性体及び/又は異性体の有効量を投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
微生物感染が、細菌感染、真菌感染、酵母感染、プロトゾア感染、又はウイルス感染である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細菌感染が、グラム陽性又はグラム陰性細菌によって引き起こされる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
グラム陽性又はグラム陰性細菌が、Staphylococcus aureus、Enterococcus fecalis、Klebsiella pneumonia、Salmonella typhimurium又はpseudotuberculosis、Acinetobacteria、Pseudomonas aeruginosa、Clostridium perfringens、Clostridium difficile、Campylobacter jejuni、或いはBacteroides fragilisである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
真菌又は酵母感染が、Trichophyton interdigitale、Aspergillus fumigatus、又はCandida albicansである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
プロトゾア感染が、Plasmodium falciparum又はTrichomonas vaginalisである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
微生物感染が、細菌又は真菌の創傷感染、粘膜感染、腸管感染、敗血状態、肺炎、トラコーマ、オルニトーシス、トリコモナス症、又はサルモネラ症である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
XとYが同一又は異なって、O及びNから選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
XとYが両方ともOである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
とRが同一又は異なって、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、又は置換されていてもよいC1−6アルキルから選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
〜Rが同一又は異なって、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、C1−6アルコキシ、又は置換されていてもよいC1−6アルキルから選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ハロゲンが、塩素又は臭素である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
式Iの化合物が、E異性体の形態である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
X、Y、
【化3】

、Rが請求項1に記載の通りであり;RとRは同一又は異なって、水素、ヒドロキシ、Cl、Br、及びC1−4アルキルから選択され;R〜Rは同一又は異なって、水素、ヒドロキシ、Cl、Br、ニトロ、C1−4アルコキシ、又はC1−4アルキルから選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
XとYがO、Rがメチル、RとRが水素
(3,4−メチレンジオキシ−β−メチル−β−ニトロスチレン)
【化4】

XとYがO、R〜Rが水素
(3,4−メチレンジオキシ−β−ニトロスチレン)
【化5】

XがN、YがNH、Rがメチル、RとRが水素
(ベンズイミダゾール−5−β−ニトロプロピレン)
【化6】

XがN、YがNH、Rが水素、Rがメチル、Rが存在しない
(2−メチルベンズイミダゾール−5−β−ニトロエチレン)
【化7】

XがO、YがN、RとRが水素、Rが存在しない
(ベンズオキサゾール−5−β−ニトロエチレン)
【化8】

XがN、YがO、RとRがメチル、Rが存在しない
(2−メチルベンズオキサゾール−5−β−ニトロプロピレン)
【化9】

である、請求項2〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
微生物感染の治療及び/又は予防用の医薬の製造における請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項17】
微生物感染の治療及び/又は予防のための請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項18】
放射線ダメージから被験体を防御する方法であって、その必要のある被験体に請求項1に記載の式Iの化合物の有効量を投与することを含む、方法。
【請求項19】
放射線がイオン化放射線である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
癌放射線治療の方法であって、このような治療の必要のある被験体に、請求項1に記載の式Iの化合物の有効量を投与すること、被験体の腫瘍個所を放射線源に曝すことを含む、方法。
【請求項21】
抗微生物剤又は放射線防御剤としての請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項22】
式Ia:
【化10】

(式中、
X、Y、
【化11】

〜Rは、上記式Iに記載の通りである、
但し、XとYの両方がOであり、R〜Rが水素であるとき、Rは、水素、C1−4アルキル、又はCOEtではないか、又はXとYの両方がOであるとき、R〜Rは水素ではない)
の化合物。
【請求項23】
上記式Iaの化合物の製造方法であって、式II:
【化12】

(式中、
X、Y、
【化13】



〜Rは請求項22の式Iaに記載の通りである)
の化合物を、式III:
CHNO
III
(式中、RとRは請求項22の式Iaに記載の通りである)
の化合物と縮合させることを含む、方法。
【請求項24】
請求項22に記載の式Iaの化合物の製造方法であって、式IV:
【化14】

(式中、
X、Y、
【化15】

〜Rは請求項22の式Iaに記載の通りである)
の化合物を、C(NOと反応させることを含む、方法。
【請求項25】
触媒の存在下で行う、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
医薬として又は獣医学的に許容できる担体と一緒に、請求項22に記載の式Iaの化合物を含む、医薬又は獣医学用組成物。
【請求項27】
局所、経口、又は非経口の組成物である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
医薬として又は獣医学的に許容できる担体が、有機溶媒である、請求項26又は27に記載の組成物。
【請求項29】
有機溶媒が、アセトン、ベンゼン、アセトニトリル、DMSO、又はアルコールである、請求項28に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−82719(P2013−82719A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−271814(P2012−271814)
【出願日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【分割の表示】特願2009−139677(P2009−139677)の分割
【原出願日】平成14年6月14日(2002.6.14)
【出願人】(503466004)バイオディエム リミティッド (3)
【Fターム(参考)】