説明

抗微生物性ポリマーおよびその製造方法

【課題】抗微生物用途に適した水性ミセル混合物を生成する生分解性カチオン性ブロックコポリマーを提供する。
【解決手段】開環重合により第1の環式カルボニルモノマーから得られる第一繰り返し単位を含む親水性ブロックであり、当該第1の繰り返し単位が第四級アミン基を含む側鎖部分を有する、親水性ブロックと;開環重合により第2の環式カルボニルモノマーから得られる第2の繰り返し単位を含む疎水性ブロックと;任意のエンドキャップ基と;開環重合の開始剤から得られる鎖フラグメントとを含む、生分解性カチオン性ブロックコポリマーが開示される。カチオン性ブロックコポリマーは、抗微生物用途に適した水性ミセル混合物を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗微生物性ポリマーに関し、より具体的には、開環重合により調製される生分解性カチオン性ブロックコポリマーおよび抗微生物用途でのその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の抗生物質に対する細菌の抵抗性が増加しているため、ペプチドベースの高分子抗微生物物質が高い注目を受けている。従来のほとんどの抗生物質(例えばシプロフロキサシン、ドキシサイクリンおよびセフタジジム)は、細胞壁を物理的に損傷しないが、標的微生物に侵入し、特定の標的に作用する。抗生物質は、例えば、DNAジャイレースの阻害により二本鎖DNAの切断を生じさせ、細胞分裂をブロックし、または内因性自己消化酵素をトリガーしうる。結果として細菌形態が保存され、細菌が容易に抵抗性を獲得しうる。対照的に、ほとんどのカチオン性ペプチド(例えばマゲイニン、セクロピン、プロテグリンおよびデフェンシン)は、微生物中の特定の標的を持たない。その代わりに、それらは静電的相互作用に基づいて微生物膜と相互作用し、これにより微生物膜に修復困難な損傷を引き起こす。高分子カチオン性抗微生物性ペプチドが、細菌抵抗性を克服しうることが証明されている。細胞膜の崩壊は、最終的に細胞死につながる。
【0003】
この20年にわたり様々な構造を有するペプチドを設計する努力がなされているが、これらの材料は臨床試験である程度しか成功していない。現在までに、四つのカチオン性ペプチドだけが、癒傷の第III相臨床試験に入ることができている。これは主に、ペプチドのカチオン性により生じる細胞毒性(例えば溶血)、in vivoでの短い半減期(プロテアーゼに対して不安定)、および高い製造原価に起因する。
【0004】
ペプチドと比較して調製がより容易にでき、合成がより容易にスケールアップできることから、ペプチドの表面の両親媒性の構造および抗微生物性機能を模倣するいくつかのカチオン性ブロックコポリマーが提唱されている。例えば、抗微生物性ポリノルボルネンおよびポリアクリレート誘導体、ポリ(アリールアミド)、ポリ(ベータ―ラクタム)、およびピリジニウムコポリマーが合成された。しかし、これらの抗微生物性ポリマーは生分解性でなく、in vivoの用途が制限されうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
故に、細胞毒性が低く、CMCの低いナノサイズのミセルを形成する、抗微生物用途に適した生分解性カチオン性ブロックコポリマーの必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、水中でカチオン性ミセルに自己組織化する、両親媒性生分解性ブロックコポリマーが開示される。ブロックコポリマーは、カチオン性親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含む。細胞表面との接触前の水溶液中におけるナノ構造の形成により、カチオン性電荷およびポリマー物質の局所濃度が増加し、負に荷電した細胞壁との相互作用の増強、ひいてはより強い抗微生物活性がもたらされると考えられる。
【0007】
一実施形態においては、生分解性カチオン性ブロックコポリマーは、
開環重合により第1の環式カルボニルモノマーから得られる第1の繰り返し単位を含む親水性ブロックであり、当該第1の繰り返し単位の0%超が、第四級アミン基を含む側鎖部分を有する、親水性ブロックと;
開環重合により第2の環式カルボニルモノマーから得られる第2の繰り返し単位を含む疎水性ブロックと;
任意のエンドキャップ基と;
一般式(10):
【0008】
【化1】

【0009】
の双求核開始剤から得られる鎖フラグメントであり、式中、各X′および各W′は、独立して、単結合または―(CR′―、―O―、―S―、―NR′―、および―NR′(CR′―からなる群より選択される二価の基であり;各cは、独立して、1〜5の整数であり;R′は、水素、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より選択される一価の基であり;各Y′は、独立して、単結合または―CO―(カルボニル)、―NR′CO―(アミノカルボニル)、―OCO―(オキシカルボニル)、―SCO―(チオカルボニル)からなる群より選択される二価の基であり;各T′は、―OH、―SH、―NH、および―NRHからなる群より独立して選択される一価の求核剤であり、Rは、水素、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より選択される一価の基であり;各Z′は、ハライド、1〜20の炭素を含むアルキル基、1〜20の炭素を含むアルコキシ基、および6〜20の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基であり;各bは、独立して、1〜20の整数であり;各dは、独立して、0または1〜4の整数である、鎖フラグメントと;
を含み、
当該カチオン性ブロックコポリマーは、ASTM D6400に従い180日以内に60%生分解する。
【0010】
別の実施形態では、生分解性カチオン性ブロックコポリマーを形成する方法が開示され、当該方法は、
有機触媒と、促進剤と、任意の溶媒と、一般式(10)の双求核開始剤とを含む反応混合物を形成するステップであり、
【0011】
【化2】

【0012】
式中、各X′および各W′は、独立して、単結合または―(CR′―、―O―、―S―、―NR′―、および―NR′(CR′―からなる群より選択される二価の基であり、各cは、独立して、1〜5の整数であり、R′は、水素、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より選択される一価の基であり、各Y′は、独立して、単結合または―CO―(カルボニル)、―NR′CO―(アミノカルボニル)、―OCO―(オキシカルボニル)、―SCO―(チオカルボニル)からなる群より選択される二価の基であり、各T′は、―OH、―SH、―NH、および―NRHからなる群より独立して選択される一価の求核剤であり、Rは、水素、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より選択される一価の基であり、各Z′は、ハライド、1〜20の炭素を含むアルキル基、1〜20の炭素を含むアルコキシ基、および6〜20の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基であり、各bは、独立して、1〜20の整数であり、各dは、独立して、0または1〜4の整数である、ステップと;
第1の環式カルボニルモノマーの後、第2の環式カルボニルモノマーを、反応混合物に順次加え、開環重合により反応させ、これにより第1のブロックコポリマーを形成するステップであり、当該第1の環式カルボニルモノマーが、第三級アミンと反応して第四級アミンを形成できる一価の脱離基を含み、当該第2の環式カルボニルモノマーは、第三級アミンと反応して第四級アミンを形成することができず、当該第1のブロックコポリマーが、双求核開始剤から得られる二つ以上の主鎖芳香環を含む鎖フラグメントを含む、ステップと;
当該第1のブロックコポリマーを任意にエンドキャップし、これにより前駆体ブロックコポリマーを形成するステップと;
当該前駆体ブロックコポリマーを第三級アミンで処理し、カチオン性ブロックコポリマーを形成するステップと;
を含み、当該カチオン性ブロックコポリマーは、第1の環式カルボニルモノマーから得られる第1の繰り返し単位を含み、当該第1の繰り返し単位の0%超が、第四級アミンを含む側鎖部分を有し、当該カチオン性ブロックコポリマーは、ASTM D6400に従い180日以内に60%生分解する。
【0013】
別の実施形態では、約5〜500マイクログラム/mLの生分解性カチオン性ブロックコポリマーを含む、水性ミセル混合物が開示され、
当該カチオン性ブロックコポリマーが、
開環重合により第1の環式カルボニルモノマーから得られる第1の繰り返し単位を含む親水性ブロックであり、当該第1の繰り返し単位の0%超が、第四級アミン基を含む側鎖部分を有する、親水性ブロックと;
開環重合により第2の環式カルボニルモノマーから得られる第2の繰り返し単位を含む疎水性ブロックと;
開環重合の開始剤から得られる鎖フラグメントと、
任意のエンドキャップ基と;
を含み、当該水性ミセル混合物は、微生物細胞膜の溶解を引き起こし、当該カチオン性ブロックコポリマーは、ASTM D6400に従い180日以内に60%生分解する。
【0014】
水性ミセル混合物を形成する方法が開示され、当該方法は、
生分解性カチオン性ブロックコポリマーを、5.0〜8.0のpH、および5〜500マイクログラム/mL以上の濃度で、溶液中で撹拌しながら混合し、これにより水性ミセル混合物を形成するステップを含み;
当該水性ミセルは、10〜500nmの平均粒径を有し、当該カチオン性ブロックコポリマーが、開環重合により第1の環式カルボニルモノマーから得られる第1の繰り返し単位を含む親水性ブロックであって、当該第1の繰り返し単位の0%超が、第四級アミン基を含む側鎖部分を有する、親水性ブロックと、開環重合により第2の環式カルボニルモノマーから得られる第2の繰り返し単位を含む疎水性ブロックと、開環重合の開始剤から得られる鎖フラグメントと、任意のエンドキャップ基とを含み;
当該水性ミセル混合物は、微生物細胞膜の溶解を引き起こし、当該カチオン性ブロックコポリマーは、ASTM D6400に従い180日以内に60%生分解する。
【0015】
微生物を処理する方法が開示され、当該方法は、
微生物の細胞膜を、5.0〜8.0のpHおよび細胞膜の溶解を引き起こすのに有効な濃度で、生分解性カチオン性ブロックコポリマーを含む水性ミセル混合物と接触させるステップを含み;
当該ブロックコポリマーが、開環重合により第1の環式カルボニルモノマーから得られる第1の繰り返し単位を含む親水性ブロックであり、当該第1の繰り返し単位の0%超が、第四級アミン基を含む側鎖部分を有する、親水性ブロックと;開環重合により第2の環式カルボニルモノマーから得られる第2の繰り返し単位を含む疎水性ブロックと;開環重合の開始剤から得られる鎖フラグメントと、任意のエンドキャップ基とを含み;当該カチオン性ブロックコポリマーは、ASTM D6400に従い180日以内に60%生分解する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1のAは、脱イオン水における実施例1のカチオン性ブロックコポリマーのCMCの測定に用いられる、I337/I334比をポリマー濃度の対数(lg濃度、mg/L)の関数としてプロットしたグラフである。図1のBは、トリプティック・ソイ・ブロス(菌の増殖培地)における実施例1のカチオン性ブロックコポリマーのCMCの測定に用いられる、I337/I334比をポリマー濃度の対数(lg濃度、mg/L)の関数としてプロットしたグラフである。
【図2】図2のAは脱イオン水おける実施例2のカチオン性ブロックコポリマーのCMCの測定に用いられる、I337/I334比をポリマー濃度の対数(lg濃度、mg/L)の関数としてプロットしたグラフである。図2のBは、トリプティック・ソイ・ブロス(菌の増殖培地)における実施例2のカチオン性ブロックコポリマーのCMCの測定に用いられる、I337/I334比をポリマー濃度の対数(lg濃度、mg/L)の関数としてプロットしたグラフである。
【図3】図3のAは、脱イオン水における実施例3のカチオン性ブロックコポリマーのCMCの測定に用いられる、I337/I334比をポリマー濃度の対数(lg濃度、mg/L)の関数としてプロットしたグラフである。図3のBはトリプティック・ソイ・ブロス(菌の増殖培地)における実施例3のカチオン性ブロックコポリマーのCMCの測定に用いられる、I337/I334比をポリマー濃度の対数(lg濃度、mg/L)の関数としてプロットしたグラフである。
【図4】脱イオン水中で実施例3により形成されたミセルの透過電子顕微鏡写真(TEM)画像である。
【図5】図5のAは、実施例1から形成されたミセルにより処理されたときのグラム陽性菌Bacillus subtilis(枯草菌)の生存度を示した棒グラフである。図5のBは、実施例1から形成されたミセルにより処理されたときのグラム陽性菌Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)の生存度を示した棒グラフである。
【図6】実施例1から形成されたミセルにより処理されたときのグラム陽性菌、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)の生存度を示した棒グラフである。
【図7】実施例1から形成されたミセルにより処理されたときのグラム陽性菌Enterococcus faecalis(腸球菌)の生存度を示した棒グラフである。
【図8】実施例1から形成されたミセルにより処理されたときの真菌Cryptococcus neoformans(クリプトコッカス−ネオフォルマンス)の生存度を示した棒グラフである。
【図9】図9のAは実施例3から形成されたミセルにより処理されたときのグラム陽性菌Bacillus subtilisの生存度を示した棒グラフである。図9のBは、実施例3から形成されたミセルにより処理されたときのグラム陽性菌Staphylococcus aureusの生存度を示した棒グラフである。
【図10】実施例3から形成されたミセルにより処理されたときのグラム陽性菌、メチシリン耐性Staphylococcus aureusの生存度を示した棒グラフである。
【図11】実施例3から形成されたミセルにより処理されたときの真菌Cryptococcus neoformansの生存度を示した棒グラフである。
【図12】実施例3から形成されたミセルにより処理されたときのグラム陽性菌Enterococcus faecalisの生存度を示した棒グラフである。
【図13】実施例2から形成されたミセルにより処理されたときのグラム陽性菌Bacillus subtilisの生存度を示した棒グラフである。
【図14】実施例1および実施例3の濃度の関数としての溶血率のグラフであり、それぞれの全濃度で溶血率が10%未満であったことを示す。
【図15】Enterococcus faecalis(A1、A2、およびA3と表示されたTEM画像)およびCryptococcus neoformans(B1、B2およびB3と表示されたもの)の形態学的変化を3時間たどった一連のTEM画像である。A1およびB1と表示されたTEM画像は、インキュベーション前である。A2およびB2と表示されたTEM画像は、致死量(1000mg/L)の実施例1でのインキュベーション後である。A3およびB3と表示されたTEM画像は、致死量(1000mg/L)の実施例3でのインキュベーション後である。図15のA2およびA3と表示されたTEM画像に示されるように、ミセルによる処理後に、微生物の細胞壁および膜が破壊され、細胞溶解が観察された。ミセルによる処理後に、図15のB2およびB3と表示されたTEM画像に示されるように、微生物の損傷した細胞壁および膜から細胞質の破裂も観察された。
【図16】水中で3000mg/Lの濃度で(HPUBT開始剤から得られる)実施例4により形成されたミセルのTEM画像である。ミセルは、水中でロッド様構造を有する。
【図17】水中で3000mg/Lの濃度で(HPUPT開始剤から得られる)実施例5により形成されたミセルのTEM画像である。ミセルは、球状構造を有する。
【図18】実施例4から形成された様々な濃度のミセルで処理されたときの、グラム陽性菌Bacillus subtilisの生存度を示した棒グラフである。
【図19】実施例5から形成された様々な濃度のミセルで処理されたときの、グラム陽性菌Bacillus subtilisの生存度を示した棒グラフである。
【図20】実施例4および実施例5の濃度を関数とする溶血率のグラフであり、3000mg/Lの濃度まで溶血率が10%未満だったことを示し、これは実施例4および実施例5の各々で62.5mg/LのMIC(最小阻止濃度)よりもはるかに高い。
【発明を実施するための形態】
【0017】
有用な抗微生物性を有する安定なナノサイズのミセルを形成する、生分解性カチオン性ブロックポリマーが開示される。カチオン性ブロックコポリマーは、第三級アミンと反応して第四級アミンを含む部分を形成できる、ハロゲン化アルキルまたはスルホン酸エステル等の脱離基を有する環式カルボニルモノマーの開環重合(ROP:ring−opening polymerization)により得られる。この希釈剤として、疎水性を提供し、これによりブロックポリマーの両親媒性を調節するために、他の環式カルボニルモノマーが、選択される。カチオン性ブロックポリマーは高密度に帯電し、したがって水に容易に溶解し得るか、または水溶液中でナノ粒子のミセルを形成するのに適した両親媒性を有しうる。ミセルは、開環重合の開始剤の剛直性または形状持続性に応じて、球状またはロッド様でありうる。開始剤は、開始剤の求核部位と同じ数のROP鎖の末端に結合する鎖フラグメントになる。開環法は、カチオン性ブロックコポリマーの分子量の正確な制御を可能にし、狭い多分散性を達成し、様々な官能基に適している。第四級アミンを含む部分を形成する第三級アミンとの反応は、開環重合の前または後、特に重合の後に行われうる。四級化は、あったとしてもわずかであるが、カチオン性ブロックコポリマーの架橋または平均分子量の変化を伴う。環式カルボニルモノマーの例には、環状カーボネートモノマーおよびラクチドを含むラクトンが含まれ、環が開くと、それぞれカーボネートおよびエステルの繰り返し単位を含むポリマーが形成され第四級アミンはポリマー側鎖上に位置し、必要に応じてポリマー主鎖に直接連結されうる。正に荷電した第四級アミン基は、負に荷電した微生物表面に対する結合強度をもたらす。ポリマーは、ミセルと微生物表面との相互作用もしくはミセルの細胞膜への浸透またはその両方を促進するために用いられうる、第二級アミン基、シトラコンアミド基、エステル基、およびイミン基等の他の官能基を含みうる。カチオン性ブロックコポリマーは、線状または分岐であり得、ペンダント官能基の電荷もしくは緩衝強度またはその両方を調整するために、側鎖および末端基を容易に修飾されうる。ミセルは、約10nm〜約500nmの平均粒径を有する。
【0018】
「生分解性」という用語は、アメリカ材料試験協会により、材料の化学構造の有意な変化をもたらす、生物活性、特に酵素の作用により生じる分解として定義される。本明細書では、ASTM D6400に従い180日以内に60%生分解される場合に、材料は生分解性となる。
【0019】
カチオン性ブロックコポリマーから調製されるミセルは、単独で抗微生物処理のために使用されうる。あるいは、ミセルには、生物活性材料(本明細書では「荷物(cargo)」とも称される)が載荷されうる。生物活性材料は、非共有結合によりナノサイズのミセルに封入させることができ、カチオン性ブロックコポリマーの抗微生物機能(すなわち微生物細胞膜の溶解)を妨げない。生物活性材料は、血流中で循環しながら載荷ミセルから放出され、これによって、生物活性材料がカチオン性ブロックコポリマーに伴われずに細胞自体に侵入して生物学的機能を侵すことが可能となりうる。生物活性材料には、生体分子(例えばDNA、遺伝子、ペプチド、タンパク質、酵素、脂質、リン脂質、およびヌクレオチド)、天然または合成有機化合物(例えば薬物、染料、合成ポリマー、オリゴマー、およびアミノ酸)、無機材料(例えば金属および金属酸化物)、前述の放射性変異体、および以上の組み合わせが含まれる。「生物活性の」とは、その物質が、細胞の化学構造もしくは活性またはその両方を望ましい態様で変えうること、または細胞型の化学構造もしくは活性またはその両方を別の細胞型に対して選択的に望ましい態様で変えうることを意味する。例えば、化学構造の一つの望ましい変化は、遺伝子の細胞への取込みでありうる。活性の望ましい変化は、移入遺伝子の発現でありうる。細胞活性の別の変化は、所望のホルモンまたは酵素の生産の誘発でありうる。あるいは、活性の望ましい変化は、一つの細胞型の別の細胞型に対する選択的死でありうる。すなわち、生物活性材料およびカチオン性ブロックコポリマーは、異なる機序により異なる細胞型に細胞死を引き起こしうる。変化が望ましく有用であり、カチオン性ブロックコポリマーの抗微生物性が悪影響を受けないのであれば、生物活性材料により生じる細胞活性の相対的変化に制限はない。さらに、いわゆる荷物にも、荷物がミセルより放出される時に有用な細胞反応を引き起こすのであれば、制限はない。特に、生物活性材料は負に荷電していない。一実施形態においては、生物活性材料は、ペプチド、薬物、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0020】
以下の環式カルボニルモノマーの一般式の記載において、「第1の環式カルボニルモノマー」は、第三級アミンと反応して第四級アミンを含む部分を形成できる官能脱離基を含む第1のカテゴリの環式カルボニルモノマーをさす。「第2の環式カルボニルモノマー」という用語は、第三級アミンと反応して何らかの第四級アミンを含む部分を形成することができる脱離基を含まない、第2のカテゴリの環式カルボニルモノマーをさす。その他の点では、第1のおよび第2の環式カルボニルモノマーは、以下に記載される式のいずれかより選択される構造を有しうる。
【0021】
ミセルを形成する以下に記載のブロックコポリマーは、一般式(1)にしたがって命名され、
A′―[P(モノマー1,...)] (1)
式中、A′は、wの求核部位を有する開始剤を表し、[P(モノマー1,...)]は、一つ以上の環式カルボニルモノマーの開環重合により形成されるROPポリマーを表す。「P()」は、括弧内に含まれる一つ以上の環式カルボニルモノマーの開環重合を示す。[P(モノマー1,...)]は、単一の環式カルボニルモノマーから形成されるホモポリマー、二つ以上の環式カルボニルモノマーから形成されるランダムコポリマー(式(1)では「―r―」を挟んでモノマー名を示す)、二つ以上の環式カルボニルモノマーから形成されるブロックコポリマー(「―b―」を挟んで二つ以上の環式カルボニルモノマーを示す)、またはその混合物を含む、ポリマー鎖を含みうる。すなわち、[P(モノマー1,...)]自体が、これらのポリマー鎖タイプのいずれか一つまたは混合物を含みうる。
【0022】
例えば、モノマージオールBnMPAにより開始され、MTCOPrClおよびTMCから調製されるブロックコポリマーは、BnMPA―[P(MTCOPrCl)―b―P(TMC)]と表される。以下に示すように、ポリマーはエンドキャップされない。以下の反応において、mおよびnは、MTCOPrClおよびTMCのモル数をそれぞれ表す。
【0023】
【化3】

【0024】
環式カルボニルモノマーは、一般式(2)の化合物より独立して選択されうる。
【0025】
【化4】

【0026】
式中、tは0〜6の整数であり、tが0であるとき、4および6と表示された炭素は単結合により連結される。各Yは、
【0027】
【化5】

【0028】
より独立して選択される二価の基であり、式中ダッシュ「―」は結合点を示す。最後の二つの基は本明細書において、―N(Q)―および―C(Q―とも表される。各Qは、水素、カルボキシ基、ハライド、1〜30の炭素を含むアルキル基、6〜30の炭素原子を含むアリール基、および
【0029】
【化6】

【0030】
の構造を有する基からなる群より独立して選択される一価の基であり、式中、Mは、―R、―OR、―NHR、―NR、または―SRより選択される一価の基であり、ダッシュは結合点を示す。各Rは、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基である。一つ以上のQ基は、第三級アミンと反応して第四級アミン(すなわち四つの炭素に結合された正に荷電した第四級アンモニウムイオン)を含む部分を形成できる一価の脱離基をさらに含みうる。一価の脱離基の非限定的な例には、ハロゲン化アルキルの形のハライド(例えば塩化アルキル、臭化アルキル、またはヨウ化アルキル)、スルホン酸エステル(例えばトシレートまたはメシレートエステル)、およびエポキシドが含まれる。各Q基は、独立して、分岐または非分岐でありうる。各Q基は、独立して、追加的官能基も含みうる。これはケトン基、アルデヒド基、アルケン基、アルキン基、3〜10の炭素を含む脂環式環、2〜10の炭素を含む複素環、エーテル基、アミド基、エステル基、および前述の追加的官能基の組み合わせからなる群より選択される。複素環は、酸素、硫黄もしくは窒素またはその組み合わせを含みうる。二つ以上のQ基が、一緒になって環を形成しうる。式(2)の第1の環式カルボニルモノマーは、第三級アミンと反応して何らかの第四級アミンを含む部分を形成することができる一価の脱離基を含むQ基を含む。式(2)の第2の環式カルボニルモノマーは、第三級アミンと反応して何らかの第四級アミンを含む部分を形成することができる官能基を含まない。
【0031】
開環重合が可能なより具体的な環式カルボニルモノマーは、一般式(3)を有し、
【0032】
【化7】

【0033】
式中、Qは、水素、ハライド、カルボキシ基、1〜30の炭素を含むアルキル基、6〜30の炭素原子を含むアリール基、および
【0034】
【化8】

【0035】
の構造を有する基からなる群より独立して選択される一価の基であり、式中、Mは、―R、―OR、―NHR、―NR、および―SRからなる群より選択される一価の基であり、ダッシュは結合点を示す。各Rは、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基であり;Rは、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基であり;Qは、水素、1〜30の炭素を有するアルキル基、および6〜30の炭素を有するアリール基からなる群より選択される一価の基である。一実施形態では、各Qは水素であり、Qはメチルまたはエチル基であり、Rは1〜30の炭素を含むアルキル基である。式(3)の第1の環式カルボニルモノマーは、第三級アミンと反応して第四級アミンを含む部分を形成できる一価の脱離基を含むR基を含む。式(3)の第2の環式カルボニルモノマーは、第三級アミンと反応して第四級アミンを含む部分を形成できる官能基を含まない。
【0036】
別のより具体的な環式カルボニルモノマーは、一般式(4)を有し、
【0037】
【化9】

【0038】
式中、uは1〜8の整数であり、各Qは水素、ハライド、カルボキシ基、1〜30の炭素を含むアルキル基、6〜30の炭素原子を含むアリール基、および
【0039】
【化10】

【0040】
の構造を有する基からなる群より独立して選択される一価の基であり、式中、Mは、―R、―OR、―NHR、―NR、または―SRからなる群より選択される一価の基であり、ダッシュは結合点を示す。各Rは、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基である。ラクトン環は、炭素―炭素二重結合を任意に含みうる。すなわち任意に、式(4)の
【0041】
【化11】

【0042】
は、独立して、
【0043】
【化12】

【0044】
を表しうる。ラクトン環は、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子またはその組み合わせも含みうる。すなわち任意に、式(4)の
【0045】
【化13】

【0046】
は、独立して、―O―、―S―、―NHR、または―NR基を表し得、式中ダッシュは結合点を示し、各Rは、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基である。式(4)の第1の環式カルボニルモノマーは、第三級アミンと反応して第四級アミンを含む部分を形成できる一価の脱離基を含むQ基を含む。式(4)の第2の環式カルボニルモノマーは、第三級アミンと反応して第四級アミンを含む部分を形成できる官能基を含まない。一実施形態では、uは1〜6の整数であり、各Qは水素である。
【0047】
別のより具体的な環式カルボニルモノマーは、一般式(5)のジオキサンジカルボニルであり、
【0048】
【化14】

【0049】
式中、各vは、独立して、1〜6の整数であり;各Qは、水素、ハライド、カルボキシ基、1〜30の炭素を含むアルキル基、6〜30の炭素原子を含むアリール基、および
【0050】
【化15】

【0051】
の構造を有する基からなる群より独立して選択される一価の基であり、式中、Mは、―R、―OR、―NHR、―NR、または―SRより選択される一価の基であり、ダッシュは結合点を示す。各Rは、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基であり;各Qは、水素、1〜30の炭素を有するアルキル基、および6〜30の炭素を有するアリール基からなる群より独立して選択される一価の基である。式(5)の第1の環式カルボニルモノマーは、第三級アミンと反応して第四級アミンを含む部分を形成できる一価の脱離基を含むQ基もしくはQ基またはその両方を含む。式(5)の第2の環式カルボニルモノマーは、第三級アミンと反応して第四級アミンを含む部分を形成できる官能基を含まない。一実施形態においては、各vは1であり、各Qは水素であり、各Qは1〜6の炭素を含むアルキル基である。
【0052】
環式カルボニル化合物は、R―異性体またはS―異性体のような異性体に富んだ形で存在しうる、一つ以上の不斉炭素中心を有しうる。さらに、各不斉炭素中心は、独立して、80%以上、より具体的には90%以上の鏡像体過剰率で存在しうる。
【0053】
ハロゲン化アルキルの形の一価の脱離基を有する式(2)または(3)の環式カルボニルモノマーの例には、表1の環式モノマーが含まれる。
【0054】
【表1】

【0055】
式(3)の環式カルボニルモノマーのさらなる例には、表2の化合物が含まれる。これらは、例えば、表1のハライドモノマーの開環重合のコモノマーとして用いられ、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーが形成されうる。
【0056】
【表2】

【0057】
式(4)の環式カルボニルモノマーの例には、表3の化合物が含まれる。
【0058】
【表3】

【0059】
式(5)の環式カルボニルモノマーの例には、表4の化合物が含まれる。
【0060】
【表4】

【0061】
カチオン性ブロックコポリマーは、必要に応じて約pH5でカルボン酸に変換されうる保護されたペンダントカルボン酸を含みうる。潜在性カルボン酸基の例は、アセタールで保護されたカルボン酸基であり、本明細書においてアセタールエステル基とも称される。アセタールエステル基は、一般式(6)を有し、
【0062】
【化16】

【0063】
式中、は環式カルボニル部分に対する結合を表し、RおよびRは、独立して1〜20の炭素を含む一価のアルキル基である。一実施形態においては、Rはメチルであり、Rはエチルである。潜在性カルボン酸基を有する環式カルボニル化合物のより具体的な例は、MTCOEEである。
【0064】
【化17】

【0065】
カチオン性ブロックコポリマーに共重合されたとき、MTCOEEから得られる繰り返し単位は、弱酸性条件下で容易に脱保護される側鎖アセタールエステルを含む。このように、カチオン性ブロックポリマーの疎水性が、特定のpH環境のために調整されうる。
【0066】
カチオン性ブロックコポリマーと、例えば生物活性荷物との非共有結合性相互作用を調節するための戦略は、フッ素化第三級アルコール基を含む環式カルボニルモノマーを使用することである。フッ素化第三級アルコール基は、ホスホネートおよび関連の構造に結合することが知られているが、相互作用エネルギーが静電的相互作用より低いため、より容易に解放される。
【0067】
上述のモノマーは、酢酸エチル等の溶媒からの再結晶により、または他の周知の精製方法により、モノマーからできるだけ多くの水を除去することに特に注意しながら精製されうる。モノマーの含水量は、モノマーの重量で1〜10,000ppm、1〜1,000ppm、1〜500ppm、最も具体的には1〜100ppmでありうる。
【0068】
上述の環式カルボニルモノマーは、その少なくとも一つが第三級アミンと反応できる脱離基を含み、開環重合を経て第1のポリマーを形成する。第1のポリマーは、同じまたは異なる環式カルボニルモノマーもしくは環式カルボニルモノマーの混合物と鎖成長を開始してブロックコポリマーを形成できるリビングポリマーである。第1のポリマーは、さらなる鎖成長を防ぎ、反応性末端基を安定させるために、エンドキャップ剤で任意に処理されうる。結果として得られた前駆体ブロックコポリマーが、次に第三級アミンで処理されて、カチオン性ブロックコポリマーが形成される。第1のポリマー、前駆体ブロックコポリマー、およびカチオン性ブロックコポリマーは、アタクチック、シンジオタクチック、またはアイソタクチック形で生産されうる。具体的な立体規則性は、環式モノマー(類)、異性体純度、および反応条件に依存する。
【0069】
あるいは、第四級アミン基を含む環式カルボニルモノマーの開環重合により、カチオン性ブロックコポリマーを得ることができる。しかし、これらのモノマーは調製がより困難であり、安定性がより低く、対応するポリマーがより多分散である傾向がある。したがって、開環重合の後に四級化反応が行われるのが好ましい。
【0070】
第1のポリマーは、第1の環式カルボニルモノマーと、触媒と、促進剤と、開始剤と、任意の溶媒とを含む反応混合物から調製されるホモポリマーでありうる。第1の環式モノマーは、第三級アミンと反応して第四級アミンを含む部分を形成できる脱離基を含む。開環重合は一般に反応器において、窒素またはアルゴン等の不活性雰囲気下で実施される。重合は、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n―ヘキサン、ジオキサン、クロロホルムおよびジクロロエタン等の不活性溶媒中での溶液重合により、または塊状重合により、行われうる。ROP反応温度は、約周囲温度から250℃でありうる。一般に、反応混合物が0.5〜72時間大気圧で加熱されると重合が生じ、第1のポリマーを含む第2の混合物が形成される。開始剤から得られる鎖フラグメントが、第1のポリマーの一端に結合される。開始剤が開環重合の双求核開始剤である場合には、開始剤から得られる鎖フラグメントが二つのROP鎖のそれぞれの一端に結合される、等となる。それから、第1のポリマーが任意にエンドキャップされて、前駆体ブロックコポリマーが形成される。そして、前駆体ブロックコポリマーが第三級アミンで処理されて、カチオン性ブロックコポリマーが形成され、第1のカルボニルモノマーから得られる繰り返し単位の0%超が、第四級アミンを含む部分を有する。
【0071】
第1のポリマーは、例えば、第1の環式カルボニルモノマーおよび第2の環式カルボニルモノマーの共重合により形成されるランダムコポリマーでもありうる。ランダム第1のポリマーが任意にエンドキャップされて、ランダム前駆体コポリマーが形成される。この場合は、開始剤から得られる鎖フラグメントが、第1のまたは第2の環式カルボニルモノマーから得られる繰り返し単位に連結されうる。それから、ランダム前駆体コポリマーが第三級アミンで処理されてランダムカチオン性コポリマーが形成され、第1の環式カルボニルモノマーから得られる繰り返し単位の0%超が、第四級アミンを含む部分を有する。第2の環式カルボニルモノマーから得られる繰り返し単位は、第三級アミンと反応して第四級アミンを形成することはない。反応混合物は、必要に応じて第1のカテゴリまたは第2のカテゴリの追加的環式カルボニルモノマーを含みうると理解される。
【0072】
特に、第1のポリマーは、例えば、第1のブロックコポリマーを形成するための第1の環式カルボニルモノマーおよび第2の環式カルボニルモノマーの順次開環重合により形成される、ブロックコポリマーである。それから、第1のブロックコポリマーが任意にエンドキャップされて、前駆体ブロックコポリマーが形成される。そして、前駆体ブロックコポリマーが第三級アミンで処理されて、カチオン性ブロックコポリマーが形成され、第1の環式カルボニルモノマーから得られる繰り返し単位の0%超が、第四級アミンを含む部分を有する。前述のように、第2の環式カルボニルモノマーから得られる繰り返し単位は、第三級アミンと反応しない。開環重合の順序に応じて、開始剤から得られる鎖フラグメントが、カチオン性ブロックコポリマーのいずれかのブロックに結合されうる。一つの例においては、第1の環式カルボニルモノマーが最初に重合されてブロックコポリマーの第1のブロックが形成され、第2の環式カルボニルモノマーが次に重合されてブロックコポリマーの第2のブロックが形成される。この例では、カチオン性ブロックコポリマーは、開始剤から得られる鎖フラグメントに結合された第1の環式カルボニルモノマーから得られる親水性ブロックと、親水性ブロックおよびエンドキャップ基に連結された第2のカルボニルモノマーから得られる疎水性ブロックとを含む。別の例では、第2の環式カルボニルモノマーが最初に重合され、第1の環式カルボニルモノマーが次に重合される。この例では、カチオン性ブロックコポリマーは、開始剤から得られる鎖フラグメントに結合された疎水性ブロックと、疎水性ブロックおよびエンドキャップ基に連結された親水性ブロックとを含む。いずれかのカテゴリの追加的環式カルボニルモノマーまたはその組み合わせを順次重合することにより、エンドキャップの前に必要に応じて追加のブロックが形成されうる。特に、ブロックコポリマーは両親媒性であり、水溶液中で自己組織化されたナノサイズのミセルを形成する。
【0073】
ROP重合の典型的な触媒には、テトラメトキシジルコニウム、テトラ―イソ―プロポキシジルコニウム、テトラ―イソ―ブトキシジルコニウム、テトラ―n―ブトキシジルコニウム、テトラ―t―ブトキシジルコニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ―n―プロポキシアルミニウム、トリ―イソ―プロポキシアルミニウム、トリ―n―ブトキシアルミニウム、トリ―イソ―ブトキシアルミニウム、トリ―sec―ブトキシアルミニウム、モノ―sec―ブトキシ―ジ―イソ―プロポキシアルミニウム、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ―n―プロポキシチタン、テトラ―n―ブトキシチタン、テトラ―sec―ブトキシチタン、テトラ―t―ブトキシチタン、トリ―イソ―プロポキシガリウム、トリ―イソ―プロポキシアンチモン、トリ―イソ―ブトキシアンチモン、トリメトキシボロン、トリエトキシボロン、トリ―イソ―プロポキシボロン、トリ―n―プロポキシボロン、トリ―イソ―ブトキシボロン、トリ―n―ブトキシボロン、トリ―sec―ブトキシボロン、トリ―t―ブトキシボロン、トリ―イソ―プロポキシガリウム、テトラメトキシゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラ―イソ―プロポキシゲルマニウム、テトラ―n―プロポキシゲルマニウム、テトラ―イソ―ブトキシゲルマニウム、テトラ―n―ブトキシゲルマニウム、テトラ―sec―ブトキシゲルマニウムおよびテトラ―t―ブトキシゲルマニウム等の金属酸化物;五塩化アンチモン、塩化亜鉛、臭化リチウム、塩化スズ(IV)、塩化カドミウムおよび三フッ化ホウ素ジエチルエーテル等のハロゲン化化合物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリドおよびトリ―イソ―ブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛およびジイソプロピル亜鉛等のアルキル亜鉛;トリアリルアミン、トリエチルアミン、トリ―n―オクチルアミンおよびベンジルジメチルアミン等の第三級アミン;リンタングステン酸、リンモリブデン酸、珪タングステン酸およびそのアルカリ金属塩等のヘテロポリ酸;ジルコニウム酸塩化物、オクタノン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウムおよび硝酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物が含まれる。特に、触媒は、オクタノン酸ジルコニウム、テトラアルコキシジルコニウムまたはトリアルコキシアルミニウム化合物である。
【0074】
他のROP触媒には、制御された予測可能な分子量および狭い多分散性(polydispersities)を有する、ポリマーへのプラットフォームを提供できる無金属有機触媒が含まれる。環状エステル、カーボネートおよびシロキサンのROPの有機触媒の例は、4―ジメチルアミノピリジン、ホスフィン、N―複素環式カルベン(NHC)、二官能性アミノチオウレア、ホスファゼン、アミジン、およびグアニジンである。一実施形態においては、触媒はN―(3,5―トリフルオロメチル)フェニル―N′―シクロヘキシル―チオウレア(TU)である。
【0075】
【化18】

【0076】
別の実施形態においては、触媒および促進剤は、1,8―ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ―7―エン(DBU)等の同じ化合物である。
【0077】
別の無金属ROP触媒には、少なくとも一つの1,1,1,3,3,3―ヘキサフルオロプロパン―2―オル―2―イル(HFP)基が含まれる。単供与水素結合触媒は、式(7)を有する。
―C(CFOH (7)
は、水素または1〜20の炭素を有する一価の基、例えばアルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、置換ヘテロシクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、またはその組み合わせを表す。例示的な単供与水素結合触媒(singly-donating hydrogen bonding catalysts)が表5に列挙されている。
【0078】
【表5】

【0079】
二重供与水素結合触媒(doubly-donating hydrogenbonding catalysts)は、二つのHFP基を有し、これは一般式(8)により表され、
【0080】
【化19】

【0081】
式中、Rは、アルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキレン基、置換シクロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、置換ヘテロシクロアルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基、およびその組み合わせ等の、1〜20の炭素を含む二価の基架橋基である。式(8)の代表的な二重水素結合触媒には、表6に列挙されるものが含まれる。具体的実施形態においては、Rは、アリーレンまたは置換アリーレン基であり、HFP基が芳香環上で互いに対してメタ位を占める。
【0082】
【表6】

【0083】
一実施形態においては、触媒は、4―HFA―St、4―HFA―Tol、HFTB、NFTB、HPIP、3,5―HFA―MA、3,5―HFA―St、1,3―HFAB、1,4―HFAB、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0084】
担体に結合されたHFP含有基を含む触媒も企図される。一実施形態においては、担体は、ポリマー、架橋ポリマー・ビーズ、無機粒子、または金属粒子を含む。HFP含有ポリマーは、HFP含有モノマーの直接重合(例えばメタクリレートモノマー3,5―HFA―MAまたはスチリルモノマー3,5―HFA―St)を含む周知の方法により形成されうる。直接重合(またはコモノマーとの重合)が行われうるHFP含有モノマーの官能基には、アクリレート、メタクリレート、α,α,α―トリフルオロメタクリレート、α―ハロメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ノルボルネン、ビニル、ビニルエーテル、および従来技術において公知のその他の基が含まれる。このような重合可能なHFP含有モノマーの典型例は、Ito et al.,Polym.Adv.Technol.2006,17(2),104‐115、Ito et al.,Adv.Polym.Sci.2005,172,37‐245、Ito et al.,米国特許出願公開第20060292485号、Maeda et al.国際公開第2005098541号、Allen et al.米国特許出願公開第20070254235号、およびMiyazawa et al.国際公開第2005005370号に見られる。あるいは、予め形成されたポリマーおよび他の固体担体表面が、連結基を介してHFP含有基をポリマーまたは担体に化学的に結合することにより修飾されうる。このようなポリマーまたは担体の例は、M.R.Buchmeiser,ed.“Polymeric Materials in Organic Synthesis and Catalysis,”Wiley‐VCH,2003、M.Delgado and K.D.Janda“Polymeric Supports for Solid Phase Organic Synthesis,”Curr.Org.Chem.2002,6(12),1031‐1043、A.R.Vaino and K.D.Janda“Solid Phase Organic Synthesis:A Critical Understanding of the Resin”,J.Comb.Chem.2000,2(6),579‐596、D.C.Sherrington“Polymer‐supported Reagents,Catalysts,and Sorbents:Evolution and Exploitation‐A Personalized View,”J.Polym.Sci.A.Polym.Chem.2001,39(14),2364‐2377、およびT.J.Dickerson et al.“Soluble Polymers as Scaffold for Recoverable Catalysts and Reagents,”Chem.Rev.2002,102(10),3325‐3343において言及されている。連結基の例には、C―C12アルキル、C―C12ヘテロアルキル、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、エステル基、アミド基、またはその組み合わせが含まれる。ポリマーまたは担体表面の逆に荷電した部位に対してイオン結合により結合された荷電したHFP含有基を含む触媒も企図される。
【0085】
ROP反応混合物は、少なくとも一つの触媒を含み、適切な場合にはいくつかの触媒を一緒に含む。ROP触媒は、環式カルボニルモノマーに対して1/20〜1/40,000モル、好ましくは1/1,000〜1/20,000モルの比率で加えられる。一実施形態においては、触媒は有機触媒である。
【0086】
開環重合は、促進剤、特に窒素塩基の存在下で実施される。例示的な窒素塩基促進剤が以下に列挙され、表7に示されるピリジン(Py)、N,N―ジメチルアミノシクロヘキサン(MeNCy)、4―N,N―ジメチルアミノピリジン(DMAP)、trans1,2―ビス(ジメチルアミノ)シクロヘキサン(TMCHD)、1,8―ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ―7―エン(DBU)、1,5,7―トリアザビシクロ[4.4.0]デカ―5―エン(TBD)、7―メチル―1,5,7―トリアザビシクロ[4.4.0]デカ―5―エン(MTBD)、(−)―スパルテイン(Sp)、1,3―ビス(2―プロピル)―4,5―ジメチルイミダゾール―2―イリデン(Im―1)、1,3―ビス(2,4,6―トリメチルフェニル)イミダゾール―2―イリデン(Im―2)、1,3―ビス(2,6―ジ―i―プロピルフェニル)イミダゾール―2―イリデン(Im―3)、1,3―ビス(1―アダマンチル)イミダゾール―2―イリデン(Im―4)、1,3―ジ―i―プロピルイミダゾール―2―イリデン(Im―5)、1,3―ジ―t―ブチルイミダゾール―2―イリデン(Im―6)、1,3―ビス(2,4,6―トリメチルフェニル)―4,5―ジヒドロイミダゾール―2―イリデン(Im―7)、1,3―ビス(2,6―ジ―i―プロピルフェニル)―4,5―ジヒドロイミダゾール―2―イリデン、1,3―ビス(2,6―ジ―i―プロピルフェニル)―4,5―ジヒドロイミダゾール―2―イリデン(Im―8)、またはその組み合わせが含まれる。
【0087】
【表7】

【0088】
一実施形態においては、促進剤は、例えば(−)―スパルテインの構造のように、各々がルイス塩基として参与できる二つまたは三つの窒素を有する。一般に塩基性が強いほど重合速度が改善される。
【0089】
ROP反応混合物は、開始剤も含む。開始剤は一般に、アルコール、アミンおよびチオール等の求核剤を含む。一般に、抗微生物性カチオン性ブロックコポリマーは、単官能性、二官能性または多官能性の樹枝状、ポリマー状または関連のアーキテクチャ等の開始剤を使用して形成されうる。単官能性開始剤は、チオール、アミン、酸およびアルコールを含む保護された官能基を伴う求核剤を含みうる。アルコール開始剤は、アルコールの選択が重合収率、ポリマー分子量、ナノ粒子の安定なミセルの形成、生物活性材料との錯体形成、もしくは生成ポリマーの望ましい機械的特性もしくは物理的特性またはそのいずれにも悪影響を与えないという条件で、モノアルコール、ジオール、トリオール、または他のポリオールを含む任意の適切なアルコールでありうる。アルコールは、一つ以上のヒドロキシル基に加えて、ハライド、エーテル基、エステル基、アミド基、または他の官能基を含む多官能アルコールでもありうる。例示的なアルコールには、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、アミルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコールおよび他の脂肪族飽和アルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノールおよび他の脂肪族環状アルコール;フェノール、置換フェノール、ベンジルアルコール、置換ベンジルアルコール、ベンゼンジメタノール、トリメチロールプロパン、サッカライド、ポリ(エチレングリコール)、プロピレングリコール、オリゴマーアルコールから得られるアルコール官能化ブロックコポリマー、もしくは分岐アルコールから得られるアルコール官能化分岐ポリマー、またはその組み合わせが含まれる。
【0090】
特に、ROP開始剤は双求核開始剤であり、各求核基が開環重合を開始して、カチオン性ブロックコポリマーのポリマー鎖を形成する。カチオン性ブロックコポリマーは、開始剤の求核基と同じ数のポリマー鎖を含みうる。すなわち、カチオン性ブロックコポリマーは、それぞれが開始剤の求核基に連結された二つ以上のブロックコポリマー鎖を含みうる。各ポリマー鎖は、開環重合により形成されるホモポリマーまたはランダムコポリマーを含むブロックを含みうる。一実施形態においては、双求核開始剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、およびその混合物からなる群より選択されるモノマーアルキレンジオールである。より具体的なアルキレンジオール開始剤は、環状カーボネートモノマーの調製において使用される前駆体であるBnMPAである。
【0091】
【化20】

【0092】
特に、ROP反応混合物は、カチオン性ブロックコポリマーの剛直性または半剛直性の鎖フラグメントを形成する、屈曲もしくはねじれまたはその両方に関して拘束された双求核開始剤を含む。いわゆる剛直性開始剤は、モノマー性、オリゴマー性、またはポリマー性でありうる。剛直性開始剤は、鎖フラグメントの主鎖芳香環になる二つ以上の芳香環を含み、鎖フラグメントに屈曲剛直性を与える。剛直性双求核開始剤は、一般式(9)を有し、
T′―[CH―L′―[CH―T′ (9)
式中、下付き記号aおよびbは、1〜20より独立して選択される整数であり、L′は、屈曲もしくはねじれまたはその両方に関して拘束された二価の基であり、各T′は、―OH、―SH、―NH、および―NRHからなる群より独立して選択される求核基を含む一価の基であり、ダッシュは式(9)のメチレン基に対する結合点を示す(すなわちダッシュは、―OH、―SH、―NH、および―NRHにおいて炭素と理解されてはならない)。Rは、水素、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より選択される一価の基である。L′は、カチオン性ブロックコポリマーの主鎖単位になる、一つ以上、二つ以上、特に三つ以上の芳香環を含みうる。主鎖単位になる一つ以上の芳香環の効果は、L′に、同様の長さの炭化水素鎖と比較して屈曲もしくはねじれまたはその両方に関する剛直性を引き起こすことである。したがってL′は長さを有し、L′は炭化水素鎖と比較して長さ方向に曲がりまたは折れにくい。L′は、平面芳香族基を含む平坦なリボン様の構造を有し得、またはL′は、例えばDNA螺旋等のように水素結合と立体相互作用の組み合わせにより短範囲の屈曲およびねじれ剛直性を有するコイル状構造を有しうる。一実施形態においては、L′は、カチオン性ブロックコポリマーの主鎖単位になる三つ以上の芳香環を含む。別の実施形態においては、剛直性双求核開始剤から得られるカチオン性ブロックコポリマーにより形成されるミセルは、ナノ粒子のロッド様構造を有する。別の実施形態においては、剛直性双求核開始剤から得られるカチオン性ブロックコポリマーにより形成されるミセルは、球状ミセルを形成しない。
【0093】
より具体的には、剛直性双求核開始剤は、一般式(10)を有し、
【0094】
【化21】

【0095】
式中、各X′および各W′は、独立して、単結合または―(CR′―、―O―、―S―、―NR′―、および―NR′(CR′―からなる群より選択される二価の基であり、ダッシュは結合点を示し、各cは、独立して、1〜5の整数であり、R′は、水素、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より選択される一価の基である。各Y′は、単結合または―CO―(カルボニル)、―NR′CO―(アミノカルボニル)、―OCO―(オキシカルボニル)、―SCO―(チオカルボニル)からなる群より選択される二価の基であり得、ダッシュは結合点を示す。各T′は、―OH、―SH、―NH、および―NRHからなる群より独立して選択される一価の求核基であり、式中、ダッシュは結合点を示し、Rは、水素、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より選択される一価の基である。各Z′は、ハライド、1〜20の炭素を含むアルキル基、1〜20の炭素を含むアルコキシ基、および6〜20の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基である。各下付き記号bは、独立して、1〜20の整数であり;各下付き記号dは、独立して、0または1〜4の整数である。dがゼロであるとき、芳香環は、芳香環に結合された四つの水素を有すると理解される。
【0096】
剛直性双求核開始剤の例には、以下のジオール、HPUBTおよびHPUPTが含まれる。
【0097】
【化22】

【0098】
開環重合反応は、溶媒を用いてまたは用いずに行われうる。任意の溶媒には、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゾトリフルオリド、石油エーテル、アセトニトリル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2,2,4―トリメチルペンタン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、t―ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、または前述の溶媒の一つを含む組み合わせが含まれる。溶媒が存在するとき、適切なモノマー濃度は1リットルあたり約0.1〜5モル、特に1リットルあたり約0.2〜4モルである。具体的実施形態においては、開環重合のための反応混合物は、溶媒を含まない。
【0099】
開環重合は、約周囲温度またはそれより高い温度、より具体的には15℃〜200℃の温度、より具体的には20℃〜200℃で行われうる。反応が塊状で実施されるときには、50℃以上、特に100℃〜200℃の温度で重合が行われる。反応時間は溶媒、温度、撹拌速度、圧力、および装置により変動するが、一般に重合は1〜100時間以内に終了する。
【0100】
溶液重合でも塊状重合でも、重合は不活性(すなわち乾燥)雰囲気中で、100〜500MPa(1〜5atm)の圧力で、より典型的には100〜200MPa(1〜2atm)の圧力で実施される。反応終了時には、減圧を使用して溶媒が除去されうる。
【0101】
触媒は、環式カルボニルモノマーの合計モル数に基づいて、約0.2〜20モル%、0.5〜10モル%、1〜5モル%、または1〜2.5モル%の量で存在する。
【0102】
窒素塩基促進剤は、環式カルボニルモノマーの合計モル数に基づいて、0.1〜5.0モル%、0.1〜2.5モル%、0.1〜1.0モル%、または0.2〜0.5モル%の量で存在する。
【0103】
開始剤の量は、開始剤中の求核基あたりの当量分子量に基づいて計算される。例えば、ヒドロキシル基は、環式カルボニルモノマーの合計モル数に基づいて、0.001〜10.0モル%、0.1〜2.5モル%、0.1〜1.0モル%、および0.2〜0.5モル%の量で存在しうる。開始剤の分子量が100g/モルであり、開始剤が二つのヒドロキシル基を有する場合には、ヒドロキシル基あたりの当量分子量は50g/モルである。重合にモノマー1モルあたり5モル%のヒドロキシル基を要する場合、開始剤の量はモノマー1モルあたり0.05×50=2.5gである。
【0104】
具体的実施形態においては、触媒は、約0.2〜20モル%の量で存在し、窒素塩基促進剤は0.1〜5.0モル%の量で存在し、開始剤のヒドロキシル基は、開始剤のヒドロキシル基あたりの当量分子量に基づいて0.1〜5.0モル%の量で存在する。
【0105】
先述のように、第1のポリマーはリビングポリマーである。第1のポリマーは、末端ヒドロキシル基、末端チオール基、または末端アミン基を含み、その各々がROP鎖成長を開始しうる。第1のポリマーは、さらなる鎖成長を防ぎ、もしくは他の点で主鎖を安定させるために、またはその両方のために、任意にエンドキャップされうる。エンドキャップ材料および技術は、ポリマー化学で十分に確立されている。これには、例えばカルボン酸無水物、カルボン酸塩化物、または反応性エステル(例えばp―ニトロフェニルエステル)等の、末端ヒドロキシル基をエステルに変換するための材料が含まれる。一実施形態においては、第1のポリマーが、無水酢酸で処理されてアセチル基により鎖がエンドキャップされ、前駆体ブロックコポリマーが形成される。
【0106】
第1のポリマーもしくは前駆体ブロックコポリマーまたはその両方は、少なくとも1000g/モル、より具体的には4000g/モル〜150000g/モル、さらに具体的には10000g/モル〜50000g/モルの、サイズ排除クロマトグラフィにより測定される数平均分子量Mを有しうる。一実施形態においては、第1のポリマーもしくは前駆体ブロックコポリマーまたはその両方は、10000〜20000g/モルの数平均分子量Mを有する。第1のポリマーもしくは前駆体ブロックコポリマーまたはその両方は、一般に1.01〜1.35、特に1.10〜1.30、特に1.10〜1.25の狭い多分散性指数(PDI)も有する。カチオン性ブロックコポリマーの親水性ブロックおよび疎水性ブロックは、独立して、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、およびその組み合わせからなる群より選択される主鎖を含みうる。
【0107】
触媒は、選択的沈殿により、または固体担体触媒の場合には単に濾過により、除去されうる。第1のポリマーは、第1のポリマーおよび残留触媒の全重量に基づいて、0wt.%(重量パーセント)を上回る量の残留触媒を含みうる。残留触媒の量は、第1のポリマーおよび残留触媒の全重量に基づいて、20wt.%未満、15wt.%未満、10wt.%未満、5wt.%未満、1wt.%未満、または最も具体的には0.5wt.%未満でもありうる。同様に、前駆体ブロックコポリマーは、前駆体ブロックコポリマーおよび残留触媒の全重量に基づいて、0wt.%を上回る量の残留触媒を含みうる。残留触媒の量は、前駆体ブロックコポリマーおよび残留触媒の全重量に基づいて、20wt.%未満、15wt.%未満、10wt.%未満、5wt.%未満、1wt.%未満、または最も具体的には0.5wt.%未満でもありうる。
【0108】
前駆体ブロックコポリマーには、第1の環式カルボニルモノマーから得られる第1の繰り返し単位が含まれる。反応性の一価の脱離基を含む側鎖部分を含む第1の繰り返し単位は、第三級アミンで処理されると、第四級アミンを含む部分を含むカチオン性ブロックコポリマーを生じる。第三級アミンが一価の脱離基の0%超と、特に第1の繰り返し単位の一価の脱離基の10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、または特に80%以上と反応して第四級アミンを含む側鎖部分を形成できるという条件で、第三級アミンの構造には制限がない。
【0109】
第三級アミンは、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンなどを含むがこれに限られないトリアルキルアミン等、単一の窒素を含みうる。第三級アミンは、追加的官能基、特にカルボン酸基、例えば3―(N,N―ジメチルアミノ)プロピオン酸をさらに含みうる。この例では、カチオン性ブロックコポリマーは、第四級アミンとカルボン酸基とを含む側鎖部分を含む第1の繰り返し単位を含む。
【0110】
第三級アミンは、トリメチルアミン―14C、トリメチルアミン―15N、トリメチルアミン―15N、トリメチル―13―アミン、トリメチル―d―アミン、およびトリメチル―d―アミン―15N等、第三級アミンの同位体的に富化された形も含みうる。第三級アミンは、癌細胞等の特定の細胞型の標的化に適した放射性部分も含みうる。放射性部分は、重金属放射性同位元素を含みうる。
【0111】
第三級アミンは、一般式(11)のビス―第三級アミンであり得、
【0112】
【化23】

【0113】
式中、L″は、2〜30の炭素を含む二価の連結基であり、各一価のR基は、1〜30の炭素を含むアルキル基または6〜30の炭素を含むアリール基より独立して選択される。各R基は、独立して、分岐または非分岐でありうる。各R基は、独立して、ケトン基、アルデヒド基、ヒドロキシル基、アルケン基、アルキン基、3〜10の炭素を含む脂環式環、2〜10の炭素を含む複素環、エーテル基、アミド基、エステル基等の追加的官能基、および前述の追加的官能基の組み合わせを含みうる。複素環は、酸素、硫黄、もしくは窒素またはその組み合わせを含みうる。二つ以上のR基が、一緒になって環を形成することもできる。代表的なL″基には、―(CHe´―(式中、e′は2〜30の整数である)、―(CHCHO)e″CHCH―(式中e″が1〜10の整数である)、―CHCHSCHCH―、―CHCHSSCHCH―、―CHCHSOCHCH―、およびCHCHSOCHCH―を含む。L″は、3〜20の炭素を含む一価または二価の脂環式環、6〜20の炭素を含む一価または二価の芳香環、ケトン基、アルデヒド基、ヒドロキシル基、アルケン基、アルキン基、2〜10の炭素を含む複素環、エーテル基、アミド基、エステル基、および前述の官能基の組み合わせをさらに含みうる。複素環は、酸素、硫黄、もしくは窒素またはその組み合わせを含みうる。ビス―第三級アミンは、そのジウテリウム、炭素―13、もしくは窒素―15またはその組み合わせが富化された形等、ビス―第三級アミンの同位体的に富化された形も含みうる。
【0114】
より具体的なビス―第三級アミンには、N,N,N′,N′―テトラメチル―1,2―エタンジアミン(TMEDA)、N,N,N′,N′―テトラメチル―1,3―プロパンジアミン(TMPDA)、Ν,Ν,Ν′,Ν′―テトラメチル―1,4―ブタンジアミン(TMBDA)、Ν,Ν,Ν′,Ν′―テトラエチル―1,2―エタンジアミン(TEEDA)、N,N,N′,N′―テトラエチル―1,3―プロパンジアミン(TEPDA)、1,4―ビス(ジメチルアミノ)シクロヘキサン、1,4―ビス(ジメチルアミノベンゼン)、Ν,Ν,Ν′,Ν′―テトラエチル―1,4―ブタンジアミン(TEBDA)、4―ジメチルアミノピリジン(DMAP)、4,4―ジピリジル―1,4―ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、4―ピロリジノピリジン、1―メチルベンズイミダゾール、およびその組み合わせが含まれる。一実施形態においては、ビス―第三級アミンは、TMEDAである。
【0115】
カチオン性ブロックコポリマーは、テトラヒドロフラン等の有機溶媒中の一回以上の沈殿後に濾過および真空乾燥することにより単離される。第1の繰り返し単位の0%超が、第四級アミン基を含む側鎖部分を有する。前駆体ブロックコポリマーがビス―第三級アミンで処理される場合には、第1の繰り返し単位の0%超が、第四級アミン基と第三級アミン基とを含む側鎖部分を有する。前駆体ブロックコポリマーがカルボン酸基を含む第三級アミンで処理される場合には、第1の環式カルボニルモノマーから得られる第1の繰り返し単位の0%超が、第四級アミン基とカルボン酸基とを含む側鎖部分を有する。第四級アミン基は、第1の環式カルボニルモノマーから得られる側鎖の一価の脱離基の0%超の量でカチオン性ブロックコポリマーに存在する。特に、第四級アミン基は、第1の環式カルボニルモノマーから得られる側鎖の一価の脱離基の10〜100%、20〜100%、30〜100%、40〜100%、50〜100%、60〜100%、70〜100%、または80〜100%の量でカチオン性ブロックコポリマーに存在する。前駆体ブロックコポリマーがビス―第三級アミンで処理される場合には、第三級アミン基は、前駆体ブロックコポリマーの第1の繰り返し単位の一価の脱離基の0%超、特に前駆体ブロックコポリマーの第1の繰り返し単位の一価の脱離基の10〜100%、20〜100%、30〜100%、40〜100%、50〜100%、60〜100%、70〜100%、または80〜100%の量でカチオン性ブロックコポリマーに存在しうる。
【0116】
カチオン性ブロックコポリマーは、少なくとも1000g/モル、より具体的には4000g/モル〜150000g/モル、さらに具体的には10000g/モル〜50000g/モルの、サイズ排除クロマトグラフィにより測定される数平均分子量Mを有しうる。一実施形態においては、カチオン性ブロックコポリマーは、10000〜20000g/モルの数平均分子量Mを有する。カチオン性ブロックコポリマーは、一般に1.01〜1.35、特に1.10〜1.30、特に1.10〜1.25の値の、狭い多分散性指数(PDI)も有する。
【0117】
特に、カチオン性ブロックコポリマーは、ジオール開始剤から得られる鎖フラグメントに連結された二つ以上のブロックコポリマー鎖を含む両親媒性ブロックコポリマーである。二つ以上のブロックコポリマー鎖の各々は、疎水性ブロックおよび親水性ブロックを含み、二つ以上のブロックコポリマー鎖の各々は、任意にエンドキャップされうる。一実施形態においては、二つ以上のブロックコポリマー鎖の各々の親水性ブロックは、剛直性ジオール開始剤から得られる鎖フラグメントに連結され、疎水性ブロックは、親水性ブロックと任意のエンドキャップ基とに連結される。別の実施形態においては、二つ以上のブロックコポリマー鎖の各々の疎水性ブロックは、剛直性ジオール開始剤から得られる鎖フラグメントに連結され、親水性ブロックは、疎水性ブロックと任意のエンドキャップ基とに連結される。一実施形態においては、ジオール開始剤は、HPUBT、HPUPT、およびBnMPAからなる群より選択される。
【0118】
カチオン性ブロックコポリマーを調製する方法は、触媒と、促進剤と、ジオール開始剤と、任意の溶媒とを含む反応混合物を形成するステップと;第三級アミンと反応できる脱離基を含む第1の環式カルボニルモノマーと、第三級アミンと反応できない第2の環式カルボニルモノマーとを反応混合物に順次加え、開環重合により反応させて、第1のブロックコポリマーを形成するステップであり、当該第1のブロックコポリマーが、開環重合により第1の環式カルボニルモノマーから得られる第1の繰り返し単位と、開環重合により第2の環式カルボニルモノマーから得られる第2の繰り返し単位とを含む、ステップと;当該第1のブロックコポリマーを任意にエンドキャップして、前駆体ブロックコポリマーを形成するステップと;当該前駆体ブロックコポリマーを第三級アミンで処理して、カチオン性ブロックコポリマーを形成するステップとを含み、当該第1の環式モノマーから得られる当該第1の繰り返し単位の0%以上が、第四級アミンを含む側鎖部分を含む。一実施形態においては、第1の環式モノマーから得られる第1の繰り返し単位の70%以上が、第四級アミンを含む部分を含む。一実施形態においては、ジオール開始剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、およびその混合物からなる群より選択されるモノマーアルキレンジオール開始剤である。特に、モノマーアルキレンジオール開始剤は、BnMPAである。
【0119】
生分解性カチオン性ブロックコポリマーを形成する別の方法は、
(i)有機触媒と、促進剤と、任意の溶媒と、一般式(10)の双求核開始剤とを含む反応混合物を形成するステップであり、
【0120】
【化24】

【0121】
式中、各X′および各W′は、独立して、単結合または―(CR′―、―O―、―S―、―NR′―、および―NR′(CR′―からなる群より選択される二価の基であり、各cは、独立して、1〜5の整数であり、R′は、水素、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より選択される一価の基であり、各Y′は、単結合または―CO―(カルボニル)、―NR′CO―(アミノカルボニル)、―OCO―(オキシカルボニル)、―SCO―(チオカルボニル)からなる群より選択される二価の基であり、各T′は、―OH、―SH、―NH、および―NRHからなる群より独立して選択される一価の求核剤であり、Rは、水素、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より選択される一価の基であり、各Z′は、ハライド、1〜20の炭素を含むアルキル基、1〜20の炭素を含むアルコキシ基、および6〜20の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基であり、各bは、独立して、1〜20の整数であり、各下付き記号dは、独立して、0または1〜4の整数である、ステップと;
(ii)第1の環式カルボニルモノマーの後、第2の環式カルボニルモノマーを、反応混合物に順次加え、開環重合により反応させ、これにより第1のブロックコポリマーを形成するステップであり、当該第1の環式カルボニルモノマーが、第三級アミンと反応して第四級アミンを形成できる一価の脱離基を含み、当該第2の環式カルボニルモノマーは、第三級アミンと反応して第四級アミンを形成できず、当該第1のブロックコポリマーが、双求核開始剤から得られる二つ以上の主鎖芳香環を含む鎖フラグメントを含む、ステップと;
(iii)当該第1のブロックコポリマーを任意にエンドキャップし、これにより前駆体ブロックコポリマーを形成するステップと;
(iv)当該前駆体ブロックコポリマーを第三級アミンで処理して、カチオン性ブロックコポリマーを形成するステップであり、当該カチオン性ブロックコポリマーが、第1の環式カルボニルモノマーから得られる第1の繰り返し単位を含み、当該第1の繰り返し単位の0%超が、第四級アミンを含む側鎖部分を有する、ステップと
を含み、当該カチオン性ブロックコポリマーは、ASTM D6400に従い180日以内に60%生分解する。一実施形態においては、第1のブロックコポリマーを形成するために順次反応が逆の順序で実行される。別の実施形態においては、第1のブロックコポリマーが、カルボン酸無水物を用いてエンドキャップされ、これにより末端エステル基が形成される。親水性ブロックおよび疎水性ブロックは、独立して、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、およびその組み合わせからなる群より選択される主鎖を含みうる。第2の繰り返し単位は、側鎖アセタールエステル基等、潜在性カルボン酸基を含みうる。一価の脱離基は、ハライド、スルホン酸エステル、およびエポキシドからなる群より選択されうる。一実施形態においては、第三級アミンはトリメチルアミンである。別の実施形態においては、第三級アミンはビス―第三級アミンであり、側鎖部分は第四級アミンと第三級アミンとを含む。別の実施形態においては、ビス―第三級アミンは、N,N,N′,N′―テトラメチル―1,2―エタンジアミン(TMEDA)、N,N,N′,N′―テトラメチル―1,3―プロパンジアミン(TMPDA)、Ν,Ν,Ν′,Ν′―テトラメチル―1,4―ブタンジアミン(TMBDA)、Ν,Ν,Ν′,Ν′―テトラエチル―1,2―エタンジアミン(TEEDA)、N,N,N′,N′―テトラエチル―1,3―プロパンジアミン(TEPDA)、1,4―ビス(ジメチルアミノ)シクロヘキサン、1,4―ビス(ジメチルアミノベンゼン)、Ν,Ν,Ν′,Ν′―テトラエチル―1,4―ブタンジアミン(TEBDA)、4―ジメチルアミノピリジン(DMAP)、4,4―ジピリジル―1,4―ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、4―ピロリジノピリジン、1―メチルベンズイミダゾール、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0122】
上述のように、開環重合により得られるカチオン性ブロックコポリマーは、開始剤の開始部位と同じ数の鎖分岐を含む。さらに、連続した開環重合が異なる環式カルボニルモノマー組成で行われるという理解の下、カチオン性ブロックコポリマーは、エンドキャップ前の順次開環重合の数と同じ数の鎖あたりのブロックを含む。
【0123】
カチオン性ブロックコポリマーは、脱イオン水中でナノ粒子ミセルに自己組織化する。カチオン性ブロックコポリマーは、0マイクログラム/mL超〜約300マイクログラム/mLの臨界ミセル濃度(CMC)を有する。より具体的には、カチオン性ブロックコポリマーは、1マイクログラム/mL〜90マイクログラム/mL、1マイクログラムmL〜80マイクログラム/mL、1マイクログラム/mL〜70マイクログラム/mL、1マイクログラム/mL〜60マイクログラム/mL、1マイクログラムmL〜50マイクログラム/mL、1マイクログラム/mL〜40マイクログラム/mL、1マイクログラム/mL〜30マイクログラム/mL、1マイクログラム/mL〜20マイクログラム/mL、1マイクログラム/mL〜10マイクログラム/mL、または特に1マイクログラム/mL〜6マイクログラム/mLのCMCを有する。一実施形態においては、カチオン性ブロックコポリマーは、約15マイクログラム/mL〜約71マイクログラム/mLのCMCを有する。
【0124】
ナノ粒子ミセルは、例えば0nm超の平均粒径を有する。特に、ミセルは、10nm〜500nm、10nm〜250nm、10nm〜200nm、10nm〜150nm、10nm〜120nm、10nm〜100nm、10nm〜90nm、10nm〜80nm、10nm〜70nm、10nm〜60nm、10nm〜50nm、10nm〜40nm、10nm〜30nm、または10nm〜20nmの平均粒径を有する。一実施形態においては、ミセルは、50nm〜100nmの平均粒径を有する。別の実施形態においては、ミセルの平均粒径は、約20nm〜約402nmである。粒径は、He‐Neレーザ・ビームを備えた動的光散乱式粒度分析計(Brookhaven Instrument Corp.,Holtsville,NY,U.S.A.)により658nmで測定される(散乱角:90°)。粒径測定は、各サンプルにつき5行程繰り返され、5つの記録の平均として粒径が報告される。上述の粒径では、水溶液は5.0〜8.0のpHを有しうる。粒径は、水中のミセルの平均流体力学直径である。
【0125】
脱イオン水中1リットルあたり3000mgのカチオン性ブロックコポリマー濃度のミセルのゼータ電位は、約20mV〜約80mV、特に45mV〜約69mVである。
【0126】
ミセルは、0マイクロモル/L超〜約100マイクロモル/Lの、微生物増殖の最小阻止濃度(MIC)を有する。特に、ミセルは、1マイクロモル/L〜80マイクロモル/L、1マイクロモル/L〜70マイクロモル/L、1マイクロモル/L〜60マイクロモル/L、1マイクロモル/L〜50マイクロモル/L、1マイクロモル/L〜40マイクロモル/L、1マイクロモル/L〜30マイクロモル/L、1マイクロモル/L〜20マイクロモル/L、1マイクロモル/L〜10マイクロモル/L、または特に1マイクロモル/L〜6マイクロモル/LのMICを有する。一実施形態においては、ミセルは、約4マイクロモル/L〜約66マイクロモル/LのMICを有し、マイクロモルはカチオン性ブロックコポリマーのMに基づく。
【0127】
一実施形態においては、5〜500マイクログラム/mLの生分解性カチオン性ブロックコポリマーを含む、水性ミセル混合物が開示される。生分解性カチオン性ブロックコポリマーは、開環重合により第1の環式カルボニルモノマーから得られる第1の繰り返し単位を含む親水性ブロックであり、当該第1の繰り返し単位の0%超が第四級アミン基を含む側鎖部分を有する、親水性ブロックと;開環重合により第2の環式カルボニルモノマーから得られる第2の繰り返し単位を含む疎水性ブロックと;開環重合の双求核開始剤から得られる鎖フラグメントと;任意のエンドキャップ基とを含む。水性ミセル混合物は、微生物細胞膜の溶解を引き起こすことにより微生物増殖を阻害し、カチオン性ブロックコポリマーは、ASTM D6400にしたがって180日以内に60%生分解する。鎖フラグメントは、双求核開始剤から得られる二つ以上の主鎖芳香環を含みうる。一実施形態においては、鎖フラグメントは、HPUBTまたはHPUPT等、式(10)を有する双求核開始剤から得られる。別の実施形態においては、鎖フラグメントは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、およびその混合物からなる群より選択されるモノマーアルキレンジオール開始剤から得られる。より具体的には、モノマーアルキレンジオール開始剤は、BnMPAである。さらに別の実施形態では、水性ミセルの第四級アミンは、トリメチルアミンから得られる。水性ミセルは、ロッド様構造または球状構造を有しうる。水性ミセルは、負に荷電していない生物活性材料を含む、載荷ミセルでありうる。
【0128】
生物活性材料は、ペプチド、薬物、またはその組み合わせでありうる。抗微生物性薬物の非限定的な例には、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、およびトブラマイシン等のアミノグリコシド;バシトラシン、クリンダマイシン、ダプトマイシン、リンコマイシン、リネゾリド、メトロニド、ポリミキシン、リファキシミン、バンコマイシン等の抗生物質;セファゾリン等のセファロスポリン;エリスロマイシン、アジスロマイシンなど等のマクロライド抗生物質;ペニシリン等のβ―ラクタム抗生物質;シプロフロキサシン等のキノロン;スルファジアジン等のスルホンアミド;ミノサイクリンおよびテトラサイクリン;ならびにメトロニダゾール、リファンピン、トリクロサンおよびクロルヘキシジン等の他の抗生物質が含まれるがこれに限られない。一実施形態においては、生物活性材料は、ミセルの抗微生物活性のスペクトルを増強または拡大する抗微生物性薬物である。第1の環式カルボニルモノマーは、式(2)、式(3)、式(4)、または式(5)の化合物でありうる。
【0129】
水性ミセル混合物を形成する方法は、生分解性カチオン性ブロックコポリマーを、5.0〜8.0のpH、および5〜500マイクログラム/mL以上の濃度で、水溶液中で撹拌しながら混合し、これにより水性ミセル混合物を形成するステップを含み;当該ミセルは、10〜500nmの平均粒径を有し、当該ブロックコポリマーは、開環重合により第1の環式カルボニルモノマーから得られる第1の繰り返し単位を含む親水性ブロックであり、当該第1の繰り返し単位の0%超が第四級アミン基を含む側鎖部分を有する、親水性ブロックと、開環重合により第2の環式カルボニルモノマーから得られる第2の繰り返し単位を含む疎水性ブロックと、開環重合の双求核開始剤から得られる鎖フラグメントと、任意のエンドキャップ基とを含む。当該方法は、当該第1の水性混合物を、生物活性材料を含む第2の水性混合物と接触させるステップをさらに含んでもよく、当該生物活性材料は負に荷電していない。水性ミセル混合物は、0〜15%の溶血を引き起こし、特に溶血を全く引き起こさず、0〜20%の細胞毒性を有し、または特に細胞毒性を全く有さない。
【0130】
微生物を処理する方法がさらに開示され、当該方法には、5.0〜8.0のpH、および細胞膜の溶解を引き起こすのに有効な濃度で生分解性カチオン性ブロックコポリマーを含む水性ミセル混合物と、微生物の細胞膜を接触させるステップを含み;当該ブロックコポリマーは、開環重合により第1の環式カルボニルモノマーから得られる第1の繰り返し単位を含む親水性ブロックであり、当該第1の繰り返し単位の0%超が、第四級アミン基を含む側鎖部分を有する、親水性ブロックと;開環重合により第2の環式カルボニルモノマーから得られる第2の繰り返し単位を含む疎水性ブロックと;開環重合の双求核開始剤から得られる鎖フラグメントと、任意のエンドキャップ基と;を含み、当該カチオン性ブロックコポリマーは、ASTM D6400に従い180日以内に60%生分解する。一実施形態においては、鎖フラグメントは、双求核開始剤から得られる二つ以上の主鎖芳香環を含む。別の実施形態においては、双求核開始剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、およびその混合物からなる群より選択されるモノマーアルキレンジオールである。別の実施形態においては、ミセルは、ミセルの抗微生物活性のスペクトルを増強または拡大する生物活性材料を含む、載荷ミセルである。生物活性材料は、負に荷電していない。微生物が、in vitro、ex vivoおよび動物中、またはin vivo(例えば動物またはヒト)で、ミセルまたは載荷ミセルに曝露されうる。
【0131】
以下の実施例は、有機触媒開環重合により生産される生分解性ポリカーボネートおよびポリ(エステルカーボネート)ブロックコポリマーが、有効な抗微生物物質であることを実証する。生分解性ハロゲン含有カーボネートとアミンの四級化反応との組み合わせは、抗微生物用途の多様な機能を有するカチオン性ブロックコポリマーの形成に幅広い経路を提供する。前駆体ブロックコポリマー上のハライドは、標的構造および用途のタイプに応じて変動しうる。カチオン性ポリカーボネートは、疎水性コアと正に荷電した表面とを有するミセルのナノ粒子に自己組織化しうる。ミセルの抗微生物活性のスペクトルを増強または拡大するために、生物活性材料が疎水性コアに載荷されうる。
【実施例】
【0132】
ポリマー合成のための材料。
溶媒乾燥システム(Innovative)により、反応に使用するTHF、DMF、およびメチレンクロリドを得た。N―(3,5―トリフルオロメチル)フェニル―N′―シクロフェニル―チオウレア(TU)を、R.C.Pratt,B.G.G.Lohmeijer,D.A.Long,P.N.P.Lundberg,A.Dove,H.Li,C.G.Wade,R.M.Waymouth,and J.L.Hedrick,Macro molecules,2006,39(23),7863‐7871により報告されるように調製し、CaH上乾燥THF中で撹拌し、濾過し、真空下で溶媒を除去して乾燥した。ビスMPAベンジルエステル(BnMPA)を後述のように調製し、乾燥THFを中に溶解し、CaHとともに撹拌し、濾過し、真空で溶媒を除去することによりさらに乾燥した。DMSO、1,8―ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ―7―エン(DBU)、および(−)―スパルテインを、CaH上で撹拌し、真空蒸留してから、モレキュラーシーブ(3Å)上に保存した。L―ラクチド(LLA)およびD―ラクチド(DLA)(Purac,99%)を、使用前に乾燥トルエンから3回再結晶した。トリメチレンカーボネート(TMC)を、使用前にトルエンから共沸乾燥した。他の試薬は入手時の形で用いた。
【0133】
ポリマーの物理化学的および生物学的特性評価のための材料。
ATCCからBacillus subtiliusおよびStaphylococcus aureusを入手し、トリプティック・ソイ・ブロスにおいて37℃で増殖させた。Department of Infectious Diseases,The First Affiliated Hospital,College of Medicine,Zhejiang University,P.R.ChinaのY.S.Yuより、患者の痰から抽出したメチシリン耐性Staphylococcus aureus、Enterococcus faecalisおよびCryptococcus neoformansの提供を受けた。臨床サンプルを、ミュラー‐ヒントン・ブロスにおいて37℃で増殖させた。
【0134】
I.モノマーアルキレンジオール開始剤から得られるカチオン性ブロックコポリマー。
機能的生分解性モノマーの特に有用なシントンは、2,2―ビス(メチロール)プロピオン酸(ビスMPA)から得られる、環状カーボネートモノマーのいわゆるMTCファミリーである。スキーム1に示されるように、ビスMPAは、5―メチル―5―カルボキシル―1,3―ジオキサン―2―オン(MTCOH)およびその誘導体への容易な経路を提供する。
【0135】
【化25】

【0136】
このアプローチは、(メタ)アクリレート誘導体化のものと同様であり、開環重合が可能な多様な官能性モノマーを作製することが示されている。2,2―ビス(メチロール)プロピオン酸(ビスMPA)を、まず(i)ベンジルエステルBnMPA(本明細書において重合の開始剤としても使用される)に変換した後、(ii)BnMPAのトリホスゲンとの反応により環式カルボニルモノマー、MTCOBnを形成する。MTCOBnを脱ベンジル化して(iii)環式カルボニルカルボン酸、MTCOHを生産する。MTCOHからエステルを形成するための二つの経路を示す。第1の経路(iv)では、MTCOHをジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等の適切なカルボキシ活性化剤で処理し、これがROHと反応して単一のステップでMTCORを形成する。あるいは、MTCOHをまず(v)酸塩化物MTCClに変換した後、(vi)MTCClをROHで塩基の存在下で処理してMTCORを形成する。両経路とも例示的であり、限定を意図するものではない。以下の条件は、スキーム1に示される反応に典型的なものである:(i)ベンジルブロミド(BnBr)、KOH、DMF、100℃、15時間、ビス―MPAのベンジルエステルの62%の収率;(ii)トリホスゲン、ピリジン、CHCl、−78℃〜0℃、MTCOBnの95%の収率;(iii)Pd/C(10%)、H2(3atm)、EtOAc、室温、24時間、MTCOHの99%の収率;(iv)ROH、DCC、THF、室温、1〜24時間;(v)(COCl)、THF、室温、1時間、MTCC1の99%の収率;(vi)ROH、NEt、RT、3時間でMTCORを産出。
【0137】
上述のスキームを用いて、MTCClを3―ブロモプロパノール、3―クロロプロパノール、2―ヨードエタノール、およびエタノールと反応させて、対応するMTCOPrBr、MTCOPrCl、MTCOEtI、およびMTCOEtを形成した。ハロゲノエステルを、再結晶またはフラッシュ・クロマトグラフィ(酢酸エチル/ヘキサン)により高収率(>85%)で精製した。MTCOEtを非官能性対応物として希釈効果のため、および自己組織化のためにポリマーに疎水性ブロックを導入するために用いた。
【0138】
モノマー調製。
5―メチル―5―(3―クロロプロピル)オキシカルボキシル―1,3―ジオキサン―2―オン、(MTCOPrCl)、MW236.65の調製。
【0139】
【化26】

【0140】
MTCOH(8.82g、55mmol)を、塩化オキサリルによる標準的方法を用いて、MTCOClに変換した。形成された中間体を、撹拌子を備えた乾燥250mL丸底フラスコにおいて、150mLの乾燥メチレンクロリドに溶解した。窒素流下で滴下漏斗を取り付け、これに3―クロロプロパノール(4.94g、4.36mL、52.25mmol)、ピリジン(3.95g、4.04mL、55mmol)、および50mLの乾燥メチレンクロリドを充填した。氷浴を用いてフラスコを0℃に冷却し、top溶液を30分間滴下して加えた。形成された溶液をもう30分間撹拌した後、氷浴を除去し、溶液を窒素下でもう16時間撹拌した。粗生成物MTCOPrClを、シリカ・ゲル・カラム上に直接適用し、100%のメチレンクロリドで溶出して生成物を分離した。生成物画分を除去し、溶媒を蒸発し、オフホワイトの油として生成物が産出され、静置すると結晶した。収率11g(85%)。H―NMR(CDCl)δ:4.63(d,2H,CH),4.32(t,2H,CH),4.16(d,2H,CH),3.55(t,2H,CH),2.09(m,2H,CH),1.25(s,3H,CH)。
【0141】
5―メチル―5―(3―ブロモプロピル)オキシカルボキシル―1,3―ジオキサ―2―オン、(MTCOPrBr)、MW281.10の調製。
【0142】
【化27】

【0143】
3―ブロモ―1―プロパノールをアルコールとして用いて45mmolスケールで、MTCOPrClの手順により、MTCOPrBrを調製した。生成物をカラムクロマトグラフィで精製し、その後再結晶して白色の結晶を産出した(6.3g、49%)。H NMR(400MHz,CDCl):δ4.69(d,2H;CHOCOO),4.37(t,2Η;OCH),4.21(d,2Η;CHOCOO),3.45(t,2Η;CHBr),2.23(m,2Η;CH),1.33(s,3Η;CH)。13C NMR(100MHz,CDCl):δ171.0,147.3,72.9,63.9,40.2,31.0,28.9,17.3。
【0144】
モノマー3。5―メチル―5―(2―ヨードエチル)オキシカルボキシル―1,3―ジオキサ―2―オン、(MTCOEtI)、MW314.08の調製。
【0145】
【化28】

【0146】
2―ヨードエタノールをアルコールとして用いて45mmolスケールで、MTCOPrClの手順により、MTCOEtIを調製し、カラムクロマトグラフィとその後の再結晶により精製して、黄色がかった結晶を産出した(7.7g、54%)。H NMR(400MHz,CDCl):δ4.73(d,2H;CHOCOO),4.45(t,2Η;OCH),4.22(d,2Η;CHOCOO),3.34(t,2Η;CHI),1.38(s,3Η;CH)。13C NMR(100MHz,CDCl):δ170.5,147.3,72.8,65.6,40.3,17.5,−0.3。
【0147】
有機触媒開環重合。一般的手順。
有機触媒、N―(3,5―トリフルオロメチル)フェニル―N′―シクロヘキシル―チオウレア(TU)および1,8―ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ―7―エン(DBU)の存在下で、メチレンクロリドにおいて室温で開環重合を実施して(1〜2時間)、供給比率([M]/[I])と一貫した分子量、狭い多分散性(1.1〜1.2)、および末端基忠実度を有するペンダント3―ハロプロピルエステルを含む第1のポリマーを産出した。末端ヒドロキシル基を無水酢酸で24時間〜48時間処理することにより、第1のポリマーのエンドキャップを達成した。これにより、四級化反応の間にアミンの存在下で末端ヒドロキシル基から生じるバックバイティングによるポリマー鎖の切断を防ぐことができる。
【0148】
以下で調製するROPポリマーは、一般式(12)を有し、
【0149】
【化29】

【0150】
式中、I′は開始剤から得られるサブ単位であり、wはI′上の開始基の数であり、Mは環式カルボニルモノマーであり、Mは別の環式モノマーであり、E′は任意のエンドキャップ基であり、a:bはM:Mモル比である。ブロックコポリマーの調製においては、Mがまず加えられた後、Mが加えられる。ランダムコポリマーでは、モノマーMまたはMが開始剤I′に結合されうると理解される。実施例1〜3はBnMPA、すなわちジオールにより開始され、したがってw=2であり、開始剤から得られる鎖フラグメントにより連結される二つのポリマー鎖が形成される。スキーム2は、BnMPAを使用して実施例1〜3を作製するために用いられるステップを示す。
【0151】
【化30】

【0152】
実施例1〜3。BnMPA開始カチオン性ブロックコポリマーの調製。
MTCOPrClおよびトリメチレンカーボネート(TMC)を、ルイス酸1―(3,5―ビス(トリフルオロメチル)―フェニル)―3―シクロヘキシル―2―チオウレア(TU)と触媒としてのルイス塩基1,8―ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ―7―エン(DBU)(1:1モル)の混合物を用いて共重合した。グローブボックス中で93mg(0.422mmol)のBnMPA開始剤、1.0g(4.22mmol)のMTCOPrCl(DP10)、および1.29g(12.66mmol)のTMCを、撹拌子を備えた20mLのガラスバイアルに充填した。ジクロロメタンを加え、濃度を2Mに調節した。この透明な溶液に、80mg(0.211mmol)のチオウレア触媒および32mg(0.211mmol)のDBUを加えて重合を開始した。5時間後に、51mg(0.422mmol)の安息香酸を加えて重合をクエンチし、その後、粗製ランダムコポリマーをグローブボックスから取り出し、冷メタノール中で沈殿した。沈殿物を堆積させ、上清をデカントした。集めたポリマーを、恒量に達するまで真空オーブンで乾燥した。収率約2.1g(約92%)、GPC:M約6811g/モル、M約5890g/モル、PDI約1.15、H―NMR(CDCl)δ:7.41―7.35(m,5H,開始剤),5.19(s,2H,開始剤),4.40―4.30(m,6H,MTC―ポリマー),4.30―4.18(t,4H,TMC―ポリマー),3.76(t,4H,末端基),3.61(t,2H,MTC―ポリマー),2.18―2.12(m,2H,MTC―ポリマー),2.12―2.00(m,4H,TMC―ポリマー),1.92(m,4H,末端基),1.28(s,3H,MTC―ポリマー)。
【0153】
クロリド官能性前駆体ブロックコポリマー(2.0g、約0.4mmol)を、アセトニトリル(50mL)に溶解し、溶液を、撹拌子を備えた100mL圧力安全Schlenk管に(窒素下で)移した。窒素下で溶液をドライアイスで冷却し、その後トリメチルアミン(約0.5g)をSchlenk管に凝縮してから密封した。溶液を50℃に加熱し、撹拌下で48時間保った。反応後に溶液を周囲温度に冷却し、窒素を泡立たせて過剰のトリメチルアミンを除去した。回転蒸発により溶媒を除去し、得られた生成物を、恒量に達するまで真空オーブンで乾燥した。H―NMR(DMSO―d)δ:7.41―7.35(m,5H,開始剤),5.19(s,2H,開始剤),4.40―4.20(m,6H,MTC―ポリマー),4.20―4.10(t,4H,TMCポリマー),3.50(t,4H,末端基),3.50―3.40(t,2H,MTC―ポリマー),3.10―3.0(s,9H,MTC―ポリマー),2.10―2.0(m,2H,MTC―ポリマー),2.0―1.90(m,4H,TMC―ポリマー),1.85(m,4H,末端基),1.22(s,3H,MTC―ポリマー)。
【0154】
実施例1〜3は、MTCOPrClおよびTMCのモル比が異なった。表8は、上述の手順により調製される実施例1〜3の特性を列挙している。実施例2はTMC(疎水性)ブロックの長さが実施例1よりも長いが、実施例3はカチオン性(親水性)ブロックの長さがより長い。
【0155】
【表8】

【0156】
臨界ミセル濃度(CMC)の測定。CMCは重要なパラメータであり、この上で両親媒性巨大分子がコア/シェル構造のナノ粒子(すなわちミセル)を形成する。DI水および菌の増殖に使用するトリプティック・ソイ・ブロス中のポリマーのCMC値を、ピレンをプローブとして用いた蛍光分光学法により推定した。蛍光スペクトルを、LS50B発光分光器(Perkin Elmer,U.S.A.)で、室温で記録した。アセトン溶液中のピレンのアリコート(6.16×10−5M、10マイクロリットル)を容器に加え、アセトンを蒸発させた。様々な濃度のポリマー溶液(1mL)を容器に加え、24時間平衡化させた。各サンプル中の最終ピレン濃度は、6.16×10−7Mだった。395nmの放出波長で、300〜360nmの励起スペクトルを走査した。励起および放出帯域幅の両方を2.5nmにセットした。励起スペクトルからのI337/I334の強度(ピーク高さ)比を、ポリマー濃度の関数として分析した。屈曲部の曲線に対するタンジェントと低濃度ポイントのタンジェントとの間の交点からCMCをとった。
【0157】
ポリカーボネート実施例1〜3は、ブロックコポリマーを水中で溶解することにより、カチオン性ミセルを形成し、脱イオン(DI)水中で35.5、15.8および70.8マイクログラム/mLの臨界ミセル濃度(CMC)を有する。図1A、2A、および3Aは、脱イオン水中の実施例1、2および3のそれぞれのCMCの測定に使用する、ポリマー濃度の対数(lg濃度、mg/L)の関数としてのI337/I334比のプロットにおける交点を示すグラフである。本研究で使用する菌の増殖に用いるトリプティック・ソイ・ブロスにおいては、実施例1〜3は有意に低いCMC値を有し、それぞれ17.8、11.2および28.2マイクログラム/mLである。図1B、2B、および3Bは、トリプティック・ソイ・ブロス中の実施例1、2および3のそれぞれのCMCの測定に使用する、ポリマー濃度の対数(lg濃度、mg/L)の関数としてのI337/I334比のプロットにおける交点を示すグラフである。実施例2は実施例1より低いCMCを有するが、これは実施例2の疎水性ブロックの長さが相対的に長いことに起因し、これにより実施例2の鎖の間により強い疎水性相互作用が提供され、より低濃度でのミセル形成がもたらされると考えられる。実施例3は実施例1より高いCMCを有するが、これは実施例3の親水性ブロックの長さが相対的に長いことに起因し、これにより、より長い親水性ブロックの鎖の間の反発力の増加が提供され、安定ミセルを形成するためにより多くのポリマー鎖が一緒になることが必要になると考えられる。実施例1および3の自己組織化ミセルの平均直径は、200nm未満である(表8)。実施例2は、疎水性ブロックの長さが最も長く、402nmの平均直径を有する大きな凝集体を形成する。実施例1、2および3の自己組織化ミセルは、それぞれ47、65および60mVのゼータ電位の正に荷電した表面を有する。
【0158】
加えて、水溶液中のポリカーボネートのミセル形成をさらに研究するために、粗粒シミュレーションを行った。粗粒シミュレーションにより、熱力学的性質の顕微鏡的理解および自己組織化ミセルの詳細な分子模型が提供された。シミュレーション結果は、カチオン性および親水性ブロックが球状ミセルのシェルを形成する一方で、疎水性ブロックが球状ミセルのコアに組織化されたことを示す。図4に示すように、DI水中の実施例3のTEM画像は、ミセルが球状であることをさらに証明する。正に荷電した自己組織化ミセルは、負に荷電した微生物表面と静電的相互作用を介して相互作用し、微生物に容易に取り込まれる。
【0159】
最小阻止濃度(MIC)の測定。ブロス微量希釈法を用いて、ポリマーのMICを測定した。約1.0〜500.0マイクロモル/L(より具体的には、図5A〜5B、図6〜8、図9A〜9B、および図10〜12に示すように、15.6、31.3、62.5、125、250、および500マイクロモル/L)の濃度の50マイクロリットルのポリマー溶液を、96ウェル・プレートの各ウェルに入れた。単位マイクロモルは、ポリマーのMに基づいた。各ウェルに50マイクロリットルの微生物溶液を、600nmで約0.1〜0.2の光学濃度表示となる濃度で加えた。微生物溶液の光学濃度表示は、時間の関数として測定した。微生物の増殖相に肉眼およびマイクロ・プレート・リーダ(Bio‐Teck Instruments,Inc)で増殖が観察されない濃度で、MICをとった。細胞だけを含むブロスを対照として用いた。試験を少なくとも三回繰り返した。
【0160】
図5A〜5Bおよび図6〜8は、実施例1から形成されたミセルで処理したときの、グラム陽性菌Bacillus subtilis、Staphylococcus aureus、メチシリン耐性Staphylococcus aureusおよびEnterococcus faecalis、ならびに真菌Cryptococcus neoformansの生存度をそれぞれ示す棒グラフである。図9A〜9Bおよび図10〜12は、実施例3から形成されたミセルで処理したときの、グラム陽性菌Bacillus subtilis、Staphylococcus aureusおよびメチシリン耐性Staphylococcus aureus、ならびに真菌Cryptococcus neoformans、ならびにグラム陽性菌Enterococcus faecalisの生存度をそれぞれ示した棒グラフである。図13は、実施例2から形成されたミセルで処理したときの、グラム陽性菌Bacillus subtilisの生存度を示した棒グラフである。実施例2は、菌の増殖に対する強い阻害効果を示さず、Bacillus subtilisに対して66.4マイクロモル/Lより高いMICを有する(図13)。これは、増殖バッファーとの接触時に沈殿する最も長い疎水性ブロックのポリマーに起因する。全く逆に、実施例1および実施例3は、真菌だけでなくグラム陽性および薬剤耐性グラム陽性菌の増殖に対して強い阻害作用を有する。これらのMICは、細胞型に依存した。実施例1は、Bacillus subtilis、Staphylococcus aureus、メチシリン耐性Staphylococcus aureus、Enterococcus faecalis、およびCryptococcus neoformansに対してそれぞれ12.9、8.6、6.8、21.3および21.3マイクロモル/LのMICを有する(それぞれ図5A〜5Bおよび図6〜8)。これらの微生物に対する実施例3のMICはそれぞれ、4.5、6.7、7.2、11.2および11.2マイクロモル/Lであり(それぞれ図9A〜9Bおよび図10〜12)、これらは一般に、恐らく実施例3のカチオン性ブロックがより長いために、実施例1のものよりも低い。したがって、実施例1および3のMICは、4.5〜21.3マイクロモル/Lであり、実施例2のMIC(>66.4マイクロモル/L)のおよそ7%超〜32%であった。試験した全ての微生物タイプに対する実施例1および3のMICは、バッファー中のそのCMCより高い(すなわち、実施例1のCMCは17.8マイクログラム/mLであり、3.8マイクロモル/Lに等しく、実施例3のCMCは28.2マイクログラム/mLであり、3.2マイクロモル/Lに等しい)。したがって、CMC以下の濃度では、ポリマーは菌の増殖に対して強力でない。ミセルの形成は、カチオン電荷およびポリマー質量の局所濃度を増加させ、ミセルと細胞壁/細胞膜との間のより強い相互作用をもたらし、有効な抗微生物活性につながる。コポリマーのいずれかのブロックの疎水性を調節することにより、抗微生物活性を有意に増強できる。例えば疎水性モノマーをカチオン性親水性ブロックに共重合して、抗微生物活性をさらに増強しうる。あるいは、より疎水性のアルキル基を第三級アミン基に組み込んで、抗微生物活性を増強しうる。
【0161】
溶血アッセイ。新鮮なマウス赤血球を、PBSで3回洗浄した。PBS中の100マイクロリットルの赤血球懸濁液(体積4%)を、96ウェル・プレートの各ウェルに入れ、100マイクロリットルのポリマー溶液を各ウェルに加えた。プレートを37℃で1時間インキュベートした。細胞懸濁液を取り出し、1000gで5分間遠心分離した。上清のアリコート(100マイクロリットル)を96ウェル・プレートへ移し、マイクロ・プレート・リーダ(Bio―Teck Instruments,Inc)を使用して576nmでヘモグロビン放出をモニタした。PBS中の赤血球懸濁液を陰性対照として用いた。0.5%トリトンX―100で溶解した赤血球のウェルの吸光指数を、100%溶血としてとった。以下の式を用いて溶血率を計算した:溶血(%)=[(ナノ粒子溶液中O.D.576nm−PBS中O.D.576nm)/(0.5%トリトンX―100中O.D.576nm−PBS中O.D.576nm)]×100。
【0162】
図14は、実施例1および実施例3の濃度の関数としての溶血率のグラフである。ポリマーは、そのMICよりはるかに高い500マイクログラム/mLの濃度(実施例1および3でそれぞれ108および56マイクロモル/L)でも有意な溶血作用を示さない。グラム陽性菌および真菌の表面は、赤血球の表面よりもずっと強く負に荷電している。したがって、菌/真菌の表面とカチオン性ミセルとの間の静電的相互作用は、赤血球の表面とカチオン性ミセルとの間のものよりずっと強く、優れた抗微生物活性をもたらしながらも、溶血活性はわずかに保たれる。
【0163】
透過電子顕微鏡検査(TEM)。ミセルによる処理の前後の微生物の形態を、JEM―1230透過電子顕微鏡(JEOL,Japan)下で80keVの加速電圧を用いて観察した。微生物溶液(1.5mL)を、0.5mLのミセル溶液(1000mg/L)で3時間インキュベートした。溶液を5000rpmで10分間遠心分離し、上清を除去した。リン酸バッファー(pH7.0、1.5mL)を微生物と混合してから5000rpmで10分間遠心分離して、リン酸バッファーを除去した。2.5%グルタルアルデヒドを含むリン酸バッファー(pH7.0、0.5mL)を微生物に加え、4℃で一晩固定のためインキュベートした。サンプルをリン酸バッファーで3回(各15分)洗浄してから、リン酸バッファー(pH7.0)中1%のOsO4で1時間、後固定した。固定したサンプルをリン酸バッファーで3回(各15分)洗浄した後、段階的エタノール系で脱水した。サンプルを、アセトンおよびSpurr樹脂の混合物(体積1:1)と室温で1時間インキュベートしてから、これをアセトンおよびSpurr樹脂の1:3混合物へ3時間、そしてSpurr樹脂に一晩移した。Reichert‐Jung Ultracut Eウルトラ・ミクロトームを使用して超薄切片(70〜90nm)を切り、TEM観察前にそれぞれ15分間酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛で後染色した。200keVの加速電圧のFEI Tecnai G2 F20電顕を使用して、ミセルのTEM画像を得た。TEMサンプルを調製するために、数滴のミセル溶液をフォルムバール/カーボン被覆された200メッシュ銅グリッド上に置き、室温下で乾燥させた。
【0164】
上述の手順を用いて、ミセルの抗微生物作用の機序をTEMにより研究した。図15は、Enterococcus faecalis(A1、A2、およびA3と表示されたTEM画像)およびCryptococcus neoformans(B1、B2、およびB3と表示されたTEM画像)の形態学的変化を3時間たどった一連のTEM画像である。A1およびB1と表示されたTEM画像は、インキュベーション前である。A2およびB2と表示されたTEM画像は、致死量(1000mg/L)の実施例1でのインキュベーション後である。A3およびB3と表示されたTEM画像は、致死量(1000mg/L)の実施例3でのインキュベーション後である。図15の画像A2およびA3に示すように、ミセルによる処理後に、微生物の細胞壁および膜が破壊され、細胞溶解が観察された。ミセルによる処理後に、図15のB2およびB3と表示されたTEM画像に示されるように、微生物の損傷した細胞壁および膜から細胞質の破裂も観察された。したがって、実施例1および3から形成されるカチオン性ミセルは、負に荷電する細胞壁と静電的相互作用を介して容易に相互作用する。細胞壁のミセル塊により与えられる立体障害およびカチオン性ミセルと細胞壁との間の静電的相互作用により、細胞壁合成が阻害され、もしくは細胞壁が損傷され、またはその両方がもたらされ、細胞溶解が生じる。加えて、ミセルは比較的大きな体積で存在することにより、ミセルが微生物の細胞膜に容易に浸透でき、したがってエレクトロポレーションもしくは沈むいかだモデル(sinking raft model)またはその両方に基づいて膜を不安定化し、細胞死をもたらす。
【0165】
II.形状持続性部分を有する抗微生物性ポリマー。
【0166】
【化31】

【0167】
ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)剥片(1.92g、3mm×3mm;リサイクルPET飲物ボトルから入手)、p―アミノベンジルアミン(3.5mL、30.8mmol)、1,5,7―トリアザビシクロ[4.4.0]デカ―5―エン(TBD:147mg、1.1mmol)、および撹拌子を、schlenk管に配置した。不均質な混合物を、窒素雰囲気下で、20時間120℃で加熱し、室温に冷却させた。未反応の過剰のアミンを、酢酸エチルおよびTHFで数回粗生成物から洗浄した。残留物を真空で乾燥して、次のステップで使用するのに十分に純粋なBAMTを産出した(2.57g、69%)。H NMR(400MHz,DMSO―d):δ8.97(t,2H;NH),7.93(s,4H;Ph),6.99(d,2H;Ph),6.51(d,2H;Ph),4.97(s,4H;NH),4.30(d,4H;CH)。13C NMR(125MHz,DMSO―d):δ165.4,147.6,136.7,128.4,127.3,126.4,113.8,42.5。
【0168】
【化32】

【0169】
PET剥片(1.96g)、p―フェニレンジアミン(3.42g、33.5mmol)、TBD(143mg、1.0mmol)、および撹拌子を、schlenk管に配置した。不均質な混合物を、窒素雰囲気下で、160℃で66時間加熱し、室温に冷却させた。未反応の過剰なアミンを、酢酸エチルおよびTHFで数回、粗生成物から洗浄した。残留物を真空で乾燥して、次のステップで使用するのに十分に純粋なBAPT(2.42g、68%)を産出した。H NMR(400MHz,DMSO―d):δ10.0(s,2H;NH),8.02(s,4H;Ph),7.39(d,2H;Ph),6.55(d,2H;Ph),5.00(s,4H;NH)。13C NMR(125MHz,DMSO―d):δ164.0,145.4,137.4,127.9,127.4,122.3,113.7。
【0170】
【化33】

【0171】
ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネート(1.0g、2.53mmol)のDMF溶液(4mL)に、DMF(4mL)中のBAMT(0.37g、1.0mmol)の溶液を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、5―アミノ―1―ペンタノール(0.45mL、4.15mmol)を加え、混合物をさらに2時間撹拌し続けた。メタノール(200mL)を混合物に加えて3時間撹拌し、生成物だけを沈殿した。それから沈殿物を濾過し、真空で80℃で乾燥して、黄色がかった固体としてHPUBTを得た(0.56g、89%)。H NMR(400MHz,DMSO―d):δ9.09(t,2H;PhNH),8.37(s,2Η;PhCONH),7.95(s,4Η;Ph),7.32(d,4Η;Ph),7.17(d,4Η;Ph),6.08(t,2Η;NHCH),4.43―4.34(m,6H;PhCHNHおよびOH),3.38(q,4H;CHOH),3.05(q,4H;NHCHCH),1.47―1.35(m,8H;CH),1.34―1.23(m,4Η;CH)。13C NMR(125MHz,DMSO―d):δ165.4,155.1,139.3,136.6,131.8,127.7,127.2,117.4,60.6,42.3,32.2,29.6,22.9
【0172】
【化34】

【0173】
この化合物は、BAMTの代わりにBAPTを使用して、HPUBTに用いたのと同じ手順で得た。生成物は、灰色の固体として産出された(0.44g、72%)。H NMR(400MHz,DMSO―d):δ10.3(s,2H;PhNH),8.39(s,2Η;PhCONH),8.06(s,4Η;Ph),7.63(d,4Η;Ph),7.37(d,4Η;Ph),6.10(t,2Η;NHCH),4.38(t,2H;OH),3.40(q,4H;CHOH),3.07(q,4H;CHNH),1.50―1.36(m,8H;CH),1.36―1.25(m,4H;CH)。13C NMR(125MHz,DMSO―d):δ164.3,155.2,137.4,136.8,132.4,127.5,121.1,117.7,60.6,32.2,29.7,22.9。
【0174】
【化35】

【0175】
グローブボックスにおいて、HPUBT(63mg、0.10mmol)および1,8―ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ―7―エン(DBU;1.7mg、0.01mmol)を乾燥DMSO(1.0mL)中に溶解し、わずかに加熱して均質化させた。L―ラクチド(302mg、2.1mmol)およびN―(3,5―ビス(トリフルオロメチル)フェニル)―N′―シクロヘキシルチオウレア(TU;37mg、0.1mmol)の溶液(1.0mL)を、開始剤/触媒溶液と合わせ、混合物を室温で5時間撹拌し([LA]/[HPUBT]=21、約80%変換)、安息香酸(11.6mg、0.09mmol)を加えてクエンチし、2―プロパノール(240mg、66%)中で沈殿させた。GPC(THF、PS標準):M=6100、PDI=1.09。H NMR(400MHz,DMSO―d):δ9.08(t,2H;PhNH),8.37(s,2Η;CONH),7.95(s,4Η;Ph),7.32(d,4Η;Ph),7.17(d,4Η;Ph),6.09(t,2Η;NHCH),5.26―5.05(m,約40H;CHPLA),4.39(d,4Η;NHCH),4.20(q,2H;CHPLA末端基),4.14―4.02(m,4H;CHO),3.05(q,4H;NHCH),1.66―1.53(m,4Η;CH),1.53―1.35(m,約124H;CH3PLAおよびCH)、1.36―1.23(m,10H;CHおよびCH3PLA末端基)。
【0176】
【化36】

【0177】
HPUBTの代わりにHPUPTを用いて、HPUBT―P(LLA)につき記載されるのと同じ手順でROPを実行した(約90%変換、237mg、65%)。GPC(THF、PS標準):M=5900、PDI=1.22。H NMR(400MHz,DMSO―d):δ10.3(s,2H;PhNH),8.39(s,2Η;CONH),8.06(s,4Η;Ph),7.62(d,4Η;Ph),7.37(d,4Η;Ph),6.12(s,2Η;NHCH),5.21―5.19(m,約40H;CHPLA),4.26―4.02(m,6Η;CHPLA末端基およびCHO),3.07(q,4H;NHCH),1.67―1.55(m,4H;CH),1.54―1.37(m,約124H;CH3PLAおよびCH),1.37―1.23(m,10H;CHおよびCH3PLA末端基)。
【0178】
【化37】

【0179】
HPUBT―[P(LLA)]を用いて2―(3―ブロモプロピル)オキシカルボニル―2―メチルトリメチレンカーボネート(MTCOPrBr)のROPを開始することにより、第1のブロックコポリマーを形成した。第1のブロックコポリマーを、アセチル基でエンドキャップした。したがってHPUBT―[P(LLA)](155mg、[OH]=0.08mmol)、MTCOPrBr(282mg、1.0mmol)、TU(10.5mg、0.03mmol)を乾燥メチレンクロリド(2.0mL)に溶解し、DBU(3.8mg、0.02mmol)を含むバイアルに移して、グローブボックスにおいて室温で2.5時間ROPを実施した([MTCOPrBr]/[OH]=12)。反応物をクエンチするため、および末端ヒドロキシル基をキャップするために、無水酢酸(59mg、0.6mmol)を混合物に加えた(約90%変換)。混合物を60時間撹拌し、冷メタノールにおいて沈殿し、単離し、20時間真空で乾燥して、上述の前駆体ブロックコポリマーHPUBT―[P(LLA)―b―P(MTCOPrBr)Ac]を産出した(390mg、89%)。GPC(THF、PS標準):M=9400、PDI=1.23。H NMR(400MHz,DMSO―d):δ9.08(t,2H;PhNH),8.39(s,2Η;CONH),7.95(s,4Η;Ph),7.32(d,4Η;Ph),7.16(d,4Η;Ph),6.12(s,2Η;NHCH),5.26―5.02(m,約40H;CHPLA),4.39(d,4Η;NHCH),4.33―4.00(m,約144Η;CHPCBPおよびCHO),3.58―3.49(m,約45H;CHBrPCBP),3.05(q,4H;NHCH),2.16―2.04(m,約49Η;CH2PCBPおよびCH3末端基),1.64―1.53(m,4H;CH),1.52―1.35(m,約130H;CH3PLAおよびCH),1.36―1.26(m,4H;CH),1.23―1.13(s,約70H;CH3PCBP)。
【0180】
【化38】

【0181】
HPUPT―[P(LLA)]から2―(3―ブロモプロピル)オキシカルボニル―2―メチルトリメチレンカーボネート(MTCOPrBr)のROPを開始することにより、第1のブロックコポリマーを形成した。この前駆体ブロックコポリマーを、アセチル基でエンドキャップする。HPUBT―[P(LLA)―b―P(MTCOPrBr)Ac]につき上述したのと同じ手順でHPUPT―[P(LLA)]をHPUBT―[P(LLA)]の代わりに開始剤として用いてROPを実行した(約88%変換、324mg、74%)。GPC(THF、PS標準):M=9900、PDI=1.26。H NMR(400MHz,DMSO―d):δ10.2(s,2H;PhNH),8.44(s,2Η;CONH),8.06(s,4Η;Ph),7.62(d,4Η;Ph),7.37(d,4Η;Ph),6.17(s,2Η;NHCH),5.25―5.00(m,約40H;CHPLA),4.35―4.03(m,約151Η;CHPCBPおよびCHO),3.58―3.47(m,約49H;CHBrPCBP),3.07(q,4H;NHCH),2.16―2.04(m,約48Η;CH2PCBPおよびCH3末端基),1.67―1.55(m,4H;CH),1.52―1.36(m,約128H;CH3PLAおよびCH),1.36―1.28(m,4H;CH),1.23―1.12(s,約75H;CH3PCBP)。
【0182】
実施例4。HPUBT―[P(LLA)―b―P(MTCOPrBr)Ac]の四級化。
【0183】
【化39】

【0184】
トリメチルアミンガス(274mg、4.6mmol)を、ドライアイス/アセトン浴に浸したアセトニトリルおよびDMF(4+2mL)のHPUBT―[P(LLA)n/2―b―P(MTCOPrBr)m/2Ac](390mg、[Br]=0.9mmol)の混合溶液に充填した。それから溶液を室温に温まらせ、18時間撹拌し続けた後、アセトニトリルおよび過剰のガスを真空下で除去した。濃縮された残留物をTHF中で沈殿し、単離し、真空中で乾燥して、以下で実施例4と称するカチオン性ブロックコポリマーHPUBT―[P(LLA)n/2―b―P(MTCOPrBrm/2NMe)Ac]を得た(324mg、73%)。上述の式においてn=10、m=12である。式中のMTCOPrBrの後の「」は、NMeがMTCOPrBrにより形成される繰り返し単位を含むハライドと第四級塩を形成することを示す。H NMR(400MHz,DMSO―d):δ9.09(s,2H;PhNH),8.43(s,2Η;CONH),7.95(s,4Η;Ph),7.32(d,4H;Ph),7.16(d,4H;Ph),6.16(s,2H;NHCH),5.27―5.02(m,約40H;CHPLA),4.44―4.00(m,約166Η;NHCH,CHPCPABおよびCHO),3.52―3.38(m,約52H;CHPCPAB),3.22―2.99(m,約234H;NCH3PCPABおよびNHCH),2.14―1.96(m,約51Η;CH2PCPABおよびCH3末端基)、1.66―1.53(m,4H;CH),1.53―1.35(m,約117H;CH3PLAおよびCH),1.33―1.25(m,4H;CH),1.26―1.14(s,約80H;CH3PCPAB)。97%四級化;M=12,000g/モル(NMR)。
【0185】
実施例5。HPUPT―[P(LLA)―b―P(MTCOPrBr)Ac]の四級化。
【0186】
【化40】

【0187】
トリメチルアミンガス(246mg、4.2mmol)を、ドライアイス/アセトン浴に浸したアセトニトリルおよびDMF(4+2mL)のHPUPT―[P(LLA)―b―P(MTCOPrBr)Ac](324mg、[Br]=0.8mmol)の混合溶液に充填した。それから溶液を室温に温まらせ、18時間撹拌し続けた後、アセトニトリルおよび過剰のガスを真空下で除去した。濃縮した残留物をTHF中で沈殿し、単離し、真空中で乾燥して、以下で実施例5と称するカチオン性ブロックコポリマーHPUPT―[P(LLA)―b―P(MTCOPrNMeBr)Ac]を得た(314mg、85%)。上述の式においてn=10、m=12である。H NMR(400MHz,DMSO―d):δ10.3(s,2H;PhNH),8.46(s,2Η;CONH),8.07(s,4Η;Ph),7.63(d,4Η;Ph),7.37(d,4Η;Ph),6.19(s,2Η;NHCH),5.35―5.01(m,約40H;CHPLA),4.56―4.00(m,約137Η;CHPCPABおよびCHO),3.59―3.43(m,約59H;CHPCPAB),3.28―3.02(m,約208H;NCH3PCPABおよびNHCH),2.16―1.99(m,約52H;CH2PCPABおよびCH3末端基),1.66―1.55(m,4H;CH),1.55―1.37(m,約114H;CH3PLAおよびCH),1.36―1.15(m,約79H;CHおよびCH3PCBAB)。93%四級化;M=11800g/モル(NMR)。
【0188】
カチオン性ブロックコポリマー実施例4および5の特性が表9に示されている。
【0189】
【表9】

【0190】
実施例4および5の抗微生物性カチオン性ブロックコポリマーは、それぞれHPUBTおよびHPUPT開始剤から得られる形状持続性部分を含む。実施例4は、より剛直性でないHPUBT開始剤から得られ、図16のTEMに示されるように水中でロッド様のナノ構造を形成する。実施例5は、より拘束されたHPUPT開始剤から得られ、図17のTEMに示されるように水への直接溶解により球状ミセルを形成する。
【0191】
実施例4および5およびナノ構造の物理化学的および生物学的特性評価(すなわち溶血およびTEM分析)を、上述の実施例1〜3に用いたのと同じ方法を用いて行った。
【0192】
動的光散乱から測定された実施例4のミセルの粒径は、1000および3000mg/Lの濃度でそれぞれ97nmおよび209nmであり、実施例5の球状ミセルのものは1000mg/Lで20nmである。実施例4のミセルのゼータ電位は、1000および3000mg/Lでそれぞれ67および57mVであり、実施例5の球状ミセルのものは1000mg/Lで69mVである。
【0193】
実施例4(図18)および実施例5(図19)は、Bacillus subtilisを効率的に殺し、それらのMIC値は同じであり、62.5mg/Lである。重要なことにこれらは、MICよりはるかに高い3000mg/Lの濃度まで溶血を生じさせない(図20)。したがって、形状持続性部分を含むこれらのカチオン性ブロックポリマーは、その非毒性および強い抗微生物活性により、有望な抗微生物物質となりうる。
【0194】
カチオン性ブロックコポリマー実施例1〜5で形成されたミセルは、約20nm〜約402nmの平均粒径を有し、約4マイクロモル/L〜約66マイクロモル/LのMICを有し、ここでモル数はカチオン性ブロックコポリマーのMに基づく。実施例1〜3のCMCは、約15マイクログラム/mL〜約70.8マイクログラム/mLである。
【0195】
他の前駆体およびカチオン性ポリマー
実施例6。MTCOPrClの重合。
【0196】
【化41】

【0197】
MTCOPrCl(501mg、2.1mmol)、BnMPA(4.7mg、0.02mmol、開始剤)、およびTU(37.2mg、0.1mmol)をメチレンクロリド(1mL)に溶解し、この溶液を、DBU(15.2mg、0.1mmol)が入ったバイアルへ移して、室温で重合を開始した([M]/[I]=100)。2時間後に、無水酢酸(72.4mg、0.71mmol)を混合物に加え、混合物を48時間撹拌した(変換約95%)。それから溶液を冷メタノールに2回沈殿し、沈殿物を遠心分離し、真空で乾燥した。収率:466mg(93%)、GPC(THF):M 12200g/モル、PDI 1.17、H NMR(400MHz,CDCl):δ7.39―7.29(m,5H;Ph),5.16(s,2H;PhCH),4.38―4.19(br,約350Η;CHOCOO,OCHポリマー),3.64―3.55(m,約117Η;CHC1ポリマー),2.15―2.07(m,約114Η;CHポリマー),2.06(s,6Η;OCHアセチル末端),1.27(br,約169Η;CHポリマー)。
【0198】
実施例7。MTCOPrBrの重合。
【0199】
【化42】

【0200】
MTCOPrBr(280mg、1.0mmol)、BnMPA(4.5mg、0.02mmol、開始剤)、およびTU(9.8mg、0.026mmol)をメチレンクロリド(1mL)に溶解し、この溶液を、DBU(3.9mg、0.026mmol)が入ったバイアルへ移して室温で重合を開始した([M]/[I]=50)。1時間後に、無水酢酸(19.2mg、0.18mmol)を混合物に加え、75時間撹拌した(変換94%)。それから溶液を冷メタノールに二回沈殿し、沈殿物を遠心分離し、真空で乾燥した。収率:233mg(82%)、GPC(THF):M 11700g/モル、PDI 1.11、H NMR(400MHz,CDCl):δ7.41―7.28(m,5H;Ph),5.17(s,2H;PhCH),4.41―4.14(m,約313Η;CHOCOO,OCH2ポリマー),3.55―3.36(m,約98Η;CHBrポリマー),2.26―2.12(m,約97Η;CH2ポリマー),2.06(s,6Η;OCH3末端基),1.36―1.17(m,約152Η;CH3ポリマー)。
【0201】
実施例8。MTCOEtIの重合。
【0202】
【化43】

【0203】
MTCOEtI(312mg、1.0mmol)、BnMPA(4.4mg、0.02mmol、開始剤)、およびTU(9.4mg、0.03mmol)をメチレンクロリド(1mL)に溶解し、この溶液を、DBU(3.3mg、0.02mmol)が入ったバイアルへ移して、室温で重合を開始した([M]/[I]=51)。2時間後に、無水酢酸(107.2mg、1.05mmol)を混合物に加え、2晩撹拌した(変換94%)。それから溶液を冷メタノールに二回沈殿し、沈殿物を遠心分離し、真空で乾燥した。収率:268mg(86%)、GPC(THF):M 10500g/モル、PDI 1.22、H NMR(400MHz,CDCl):δ7.37―7.31(m,5H;Ph),5.17(s,2H;PhCH),4.44―4.36(m,約92H;OCHポリマー),4.36―4.24(m,約178Η;CHOCOOポリマー),3.35―3.27(m,約89Η;CHIポリマー),2.07(s,6Η;OCHアセチル末端),1.34―1.24(br,約144Η;CHポリマー)。
【0204】
実施例9。TMCおよびMTCOPrClのブロック重合。
【0205】
【化44】

【0206】
TMC(108mg、1.0mmol、Mと指定)、BnMPA(11mg、0.05mmol)、およびTU(17.5mg、0.05mmol)をメチレンクロリド(1mL)に溶解し、この溶液を、DBU(7.3mg、0.05mmol)が入ったバイアルへ移して、室温で重合を開始した([M/[I]=20)。第1のモノマー(M)の消費完了をNMRにより確認した後(3時間、変換97%)、反応混合物を、第2の重合のためMTCOPrCl(603mg、2.55mmol)、第2のモノマーMが入ったバイアルへ移し([M/[I]=50)、さらに18時間撹拌した(変換96%)。それから無水酢酸(117mg、1.15mmol)を混合物に加え、2晩撹拌した。それから溶液を冷メタノールに二回沈殿し、沈殿物を遠心分離し、真空で乾燥した。収率:640mg(90%)、GPC(THF):M 12000g/モル、PDI 1.19、H NMR(400MHz,CDCl):δ7.38―7.30(m,5H;Ph),5.17(s,2H;PhCH),4.33―4.26(m,約208Η;CHOCOO,OCH2P(MTCprCl)),4.26―4.20(m,約70Η,CHOCOOPTMC),3.63―3.56(m,約73Η;CHC1P(MTCprCl)),2.15―2.00(m,約111Η;CH2P(MTCprCl),CH2PTMC,OCHアセチル末端),1.27(br,約107Η,CH3P(MTCprCl))。
【0207】
ポリエステル―ポリカーボネートブロックコポリマー。
実施例10。LLAおよびMTCOPrBrのブロック重合。
以下の調製において、L―ラクチド(LLA)の立体化学は示されない。
【0208】
【化45】

【0209】
L―ラクチド(146mg、1.0mmol)(LLA)、BnMPA(12mg、0.05mmol)、およびTU(9.0mg、0.024mmol)をメチレンクロリド(1mL)に溶解し、この溶液を、(−)―スパルテイン(3.0mg、0.013mmol)の入ったバイアルへ移して、室温で重合を開始した([M/[I]=20)。第1のモノマーの消費完了をNMRで確認した後(1.5時間、変換96%)、ポリエステルを含む反応混合物を、MTCOPrBr(427mg、1.52mmol)が入ったバイアルへ移し、これをさらに第2の重合のためTU(9.7mg、0.026mmol)およびDBU(4.1mg、0.027mmol)が入ったバイアルへ移した([M/[I]=29)。第2の反応混合物を、もう1時間撹拌した(変換97%)。それから無水酢酸(205mg、2.01mmol)を混合物に加え、2晩撹拌した。それから溶液を冷メタノールに二回沈殿し、沈殿物を遠心分離し、真空で乾燥して、ポリエステル―ポリカーボネートブロックコポリマーを得た。収率:524mg(90%)、GPC(THF):M 12200g/モル、PDI 1.14、H NMR(400MHz,CDCl):δ7.38―7.28(m,5H;Ph),5.22―5.09(m,約35H;PhCH,CHPLA),4.38―4.19(m,約158Η;CHOCOO,OCH2P(MTCprBr)),3.48―3.41(m,約56Η,CHBr),2.23―2.14(m,約55Η;CH),2.06(s,6Η;OCHアセチル末端),1.61―1.52(m,約106Η;CH3PLA),1.32―1.27(br,約86Η,CH3P(MTCprBr))。
【0210】
実施例11。DLAおよびMTCOPrBrのブロック重合。
このポリマーは、第1のモノマーとしてL―ラクチド(LLA)の代わりにD―ラクチド(DLA)を加えて、実施例10と同じ手順により調製した。収率:503mg(87%)、GPC(THF):M 12400g/モル、PDI 1.13。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.38―7.28(m,5H;Ph),5.22―5.09(m,約39H;PhCH,CHPLA),4.38―4.19(m,約195Η;CHOCOO,OCH2P(MTCprBr)),3.48―3.41(m,約63Η,CHBr),2.23―2.14(m,約62Η;CH),2.06(s,6Η;OCHアセチル末端),1.61―1.52(m,約119Η;CH3PLA),1.32―1.27(br,約97Η,CH3P(MTCprBr)
【0211】
ランダムポリカーボネートコポリマー。
実施例12。MTCOEtおよびMTCOPrBrのランダム重合。
【0212】
【化46】

【0213】
上記の構造における垂直のブラケットは、MTCOPrBrまたはMTCOEtから得られる繰り返し単位のいずれかが、アセチル基だけでなく開始剤から得られるサブ単位に結合されうることを示す。
【0214】
MTCOPrBr(282mg、1.0mmol)、MTCOEt(188mg、1.0mmol)、BnMPA(9.0mg、0.04mmol)、およびTU(18.7mg、0.05mmol)をメチレンクロリド(1mL)に溶解し、この溶液を、DBU(7.8mg、0.05mmol)が入ったバイアルへ移して、室温で重合を開始した([M]/[I]=50)。2時間後に無水酢酸(194mg、1.90mmol)を混合物に加え、2晩撹拌した(変換93%)。それから溶液を冷メタノールに二回沈殿し、沈殿物を遠心分離し、真空で乾燥した。収率:370mg(77%)、GPC(THF):M 11400g/モル、PDI 1.20、H NMR(400MHz,CDCl):δ7.37―7.31(m,5H;Ph),5.16(s,2H;PhCH),4.35―4.24(m,約247H;CHOCOO,OCH2PMTC(prBr)),4.23―4.14(m,約56Η;OCH2PMTC(Et)),3.48―3.41(m,約47Η;CHBr),2.23―2.14(m,約47Η;CH2PMTC(prBr)),2.06(s,6Η;OCHアセチル末端),1.30―1.20(m,約227Η;CH,CHCH3PMTC(Et))。
【0215】
カチオン性ポリマーの調製。
前カチオン性ハロ官能性ポリマー(すなわち第1のまたは初期ROPポリマー)を、DMSO中でΝ,Ν,Ν′,Ν′―テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)と反応させて、対応するカチオン性ポリマーを得た。いくつかのビス―アミンを調べたが、第1および第2のアミンはポリカーボネート主鎖の有意な減少をもたらしたため、第三級アミンだけを実行可能な試薬に選んだ。式のTMEDAまたはNMeの前の「」は、第三級アミンが繰り返し単位を含むハライドと第四級塩を形成することを示す。
【0216】
実施例13。
【0217】
【化47】

【0218】
実施例6のホモポリマー(427mg、[Cl]=1.77mmol)をDMSO(8mL)に溶解し、TMEDA(1.1mL、7.22mmol)と混合し、90℃で6時間撹拌した。それから混合物をTHFに二回沈殿し、沈殿物を遠心分離により収集し、真空で乾燥した。収率:546mg(86%)、GPC(DMF):M 11300g/モル、PDI 1.27、H NMR(400MHz,MeOH―d):δ7.42―7.32(br,5H;Ph),5.19(s,2H;PhCH),4.45―4.17(m,約252Η;CHOCOO,OCHポリマー),3.63―3.44(br,約149Η;CHポリマー),3.27―3.18(br,約210Η;NCHポリマー),2.85―2.76(br,約73Η;CHNポリマー),2.36―2.30(br,約213Η;NCHポリマー),2.28―2.17(br,約70Η;CHポリマー),2.06(s,3Η;OCHアセチル末端),1.34―1.25(br,約119Η;CHポリマー),1.22(s,3Η;CH末端基)。85%四級化;M=13,900g/モル(NMR)。
【0219】
実施例14。BnMPA―[P(MTCOPrBrn/2TMEDA)Ac]
【0220】
【化48】

【0221】
TMEDA(0.38mL、2.5mmol)を、実施例7で形成されたポリマー(177mg、[Br]=0.62mmol)のDMSO溶液(3mL)に加えた。溶液を室温で一晩撹拌し、THFに二回沈殿し、沈殿物を遠心分離し、真空で乾燥した。収率:220mg(88%)、H NMR(400MHz,MeOH―d):δ7.42―7.30(br,5H;Ph),5.20(s,2H;PhCH),4.46―4.13(m,約266Η,CHOCOO,OCHポリマー),3.66―3.42(br,約168Η;CHポリマー),3.28―3.17(br,約243Η;NCHポリマー),2.87―2.75(br,約84Η;NCHポリマー),2.37―2.29(br,約251Η;NCHポリマー),2.30―2.16(br,約85Η;CHポリマー),2.07(s,6Η;OCHアセチル末端),1.37―1.23(br,約133Η;CHポリマー)。93%四級化;M=17,500g/モル(NMR)。
【0222】
実施例15。BnMPA―[P(MTCOEtIn/2TMEDA)Ac]
【0223】
【化49】

【0224】
このカチオン性ポリマーは、実施例8で調製したポリマーを用いたことを除き、実施例14で前述したものと同じ手順を用いて201mgスケールで調製した。収率:21lmg(77%)、H NMR(400MHz,DO):δ7.49―7.31(m,5H;Ph),5.22(s,2H;PhCH),4.69―4.56(br,約68Η;OCH),4.47―4.23(m,約176Η;OCOCH),3.90―3.76(br,約74Η;NCH),3.66―3.51(br,約78Η;OCHCH2N),3.29―3.15(br,約220Η;NCH),2.93―2.82(br,約76Η;NCH),2.33―2.23(br,約222Η;NCH),2.07(s,6Η;CHアセチル),1.38―1.20(br,約124Η;CH)。90%四級化;M=17,400g/モル(NMR)。
【0225】
実施例16。BnMPA―[P(TMC)n/2―b―P(MTCOPrClm/2TMEDA)Ac]
【0226】
【化50】

【0227】
実施例9で形成されたポリマー(578mg、[CI]=1.93mmol)のDMSO溶液(10mL)に、TMEDA(1.27mL、8.5mmol)を加えた。反応混合物を90℃で6時間撹拌し、THFに二回沈殿した。沈殿物を遠心分離し、真空で乾燥した。収率:735mg(92%)、GPC(DMF):M 15700g/モル、PDI 1.27、H NMR(400MHz,MeOH―d):δ7.41―7.32(br,5H;Ph),5.19(br,2H;PhCH),4.48―4.13(br,約388Η;CHOCOO,OCHポリマー),3.65―3.45(br,約179Η;CHポリマー),3.28―3.18(br,約270Η;NCHポリマー),2.87―2.77(br,約88Η;NCHポリマー),2.38―2.30(br,約272Η;NCHポリマー),2.28―2.16(br,約88Η;CHポリマー),2.08―1.98(m,約44Η;CHポリマー,OCHアセチル末端),1.35―1.25(br,約149Η,CHポリマー)。91%四級化;M=18,100g/モル。(NMR)。
【0228】
実施例17。BnMPA―[P(LLA)n/2―b―P(MTCOPrBrm/2TMEDA)Ac]
【0229】
【化51】

【0230】
実施例10で形成されたポリマー(406mg、[Br]=1.07mmol)およびTMEDA(0.65mL、4.3mmol)を、DMSO(4.0mL)中で混合し、室温で一晩撹拌し、THFに二回沈殿した。沈殿物を遠心分離し、真空で乾燥した。収率:515mg(97%)、H NMR(400MHz,MeOH―d):δ7.42―7.30(br,5H;Ph開始剤),5.29―5.11(m,約42H;PhCH開始剤,CHPLA),4.49―4.15(br,約204Η,CHOCOO,OCHポリマー),3.67―3.43(br,約123Η,CHポリマー),3.29―3.15(br,約177Η、NCHポリマー),2.85―2.74(br,約61Η,NCHポリマー),2.37―2.28(br,約189Η,NCHポリマー),2.29―2.15(br,約62Η,CHポリマー),2.06(s,6Η,OCHアセチル末端),1.60―1.50(m,約128Η;CH3PLA),1.35―1.24(br,約103Η,CH)。90%四級化;M=16,500g/モル(NMR)。
【0231】
実施例18。BnMPA―[P(DLA)n/2―b―P(MTCOPrBrm/2TMEDA)Ac]
実施例11からのこのポリマーを、実施例16で用いた手順にしたがってTMEDAで処理してカチオン性ポリマーを得たが、LLAではなくDLAからサブ単位を得たことが異なる。収率:497mg(96%)、H NMR(400MHz,MeOH―d):δ7.42―7.31(br,5H;Ph開始剤),5.24―5.13(m,約41H;PhCH開始剤,CHPLA),4.46―4.18(m,約206Η,CHOCOO,OCHポリマー),3.66―3.45(br,約124Η,CHポリマー),3.28―3.18(br,約173Η,NCHポリマー),2.84―2.75(br,約57Η,NCHポリマー),2.35―2.28(br,約175Η,NCHポリマー),2.28―2.16(br,約59Η,CHポリマー),2.06(s,6Η,OCHアセチル末端),1.59―1.52(m,約121Η;CH3PLA),1.35―1.25(br,約110Η,CH)。85%四級化;M=16,100g/モル(NMR)。
【0232】
実施例19。BnMPA―[P(MTCOEta/2―r―MTCOPrBrb/2TMEDA)Ac]
【0233】
【化52】

【0234】
TMEDA(0.40mL、2.69mmol)を、実施例12からのポリマー(342mg、[Br]=0.67mmol)のDMSO溶液(3mL)に加えた。溶液を室温で一晩撹拌し、THF/ヘキサン(3:1)の混合物に二回沈殿し、沈殿物を遠心分離し、真空で乾燥した。収率:377mg(90%)、H NMR(400MHz,MeOH―d):δ7.41―7.35(br,5H;Ph),5.19(s,2H;PhCH),4.42―4.23(m,約253Η,CHOCOO,OCH2PMTC(prBr―N)),4.28―4.13(m,約56Η;OCH2PMTC(Et)),3.64―3.49(br,約96Η;CH),3.28―3.19(br,約142Η;NCH),2.84―2.75(br,約52Η;NCH),2.35―2.28(br,約145Η;NCH),2.29―2.17(br,約49Η;CH2PMTC(prBr―N)),2.06(s,6Η;OCHアセチル末端),1.35―1.19(m,約234Η;CHポリマー)。100%四級化;M=15,300g/モル(NMR)。
【0235】
実施例20。BnMPA―[P(MTCOPrBrn/2NMe)Ac]
【0236】
【化53】

【0237】
トリメチルアミンガス(907mg、15.3mmol)を、ドライアイス/アセトン浴に浸した実施例7からのBnMPA―[P(MTCOPrBrn/2)Ac](203mg、[Br]=0.71mmol)のアセトニトリル溶液(5mL)に充填した。それから溶液を室温に温まらせ、19時間撹拌を続けた後、アセトニトリルおよび過剰のガスを真空下で除去した。濃縮された残留物を、真空で乾燥した。収率:207mg(84%)、H NMR(400MHz,MeOH―d):δ7.45―7.31(m,5H;Ph),5.21(s,2H;PhCH),4.45―4.20(m,約347Η;CHOCOOおよびCHポリマー),3.66―3.48(b,約113Η;NCH2ポリマー),3.29―3.17(m,約502Η;NCH3ポリマー),2.29―2.17(b,約109Η;CH2ポリマー),2.07(s,6Η;OCH3末端基),1.36―1.25(m,約170Η;CH3ポリマー)。約97%四級化;M=14,800g/モル(NMR)。
【0238】
実施例21。エンドキャップなしでMTCOEtおよびMTCOPrBrのROPを繰り返す。
【0239】
【化54】

【0240】
MTCOEt(50mg、0.27mmol)、MTCOPrBr(213mg、0.76mmol)、BnMPA(4.5mg、0.02mmol)、およびTU(18.6mg、0.05mmol)をメチレンクロリド(1.1mL)に溶解し、この溶液を、DBU(8.2mg、0.05mmol)が入ったバイアルへ移して、室温で重合を開始した([M]/[I]=51)。2時間後に、反応混合物を冷メタノールに沈殿し、沈殿物を遠心分離し、真空で乾燥した(変換約99%)。収率:242mg(91%)、GPC(THF):M 10900g/モル、PDI 1.21、H NMR(400MHz,アセトン―d):δ7.46―7.33(m,5H;Ph),5.20(s,2H;PhCH),4.39―4.25(m,約269Η;CHOCOOポリマー,OCH2PMTC(BP)),4.22―4.13(m,約32Η;OCH2PMTC(Et)),3.74―3.71(m,4Η;CHOH末端基),3.63―3.55(m,約70H;CHBrPMTC(BP)),2.26―2.17(m,約69Η;CH2ポリマー),1.32―1.18(m,約201Η;CHCH3PMTC(Et),CH3ポリマー)。
【0241】
実施例22。BnMPA―[P(MTCOEta/2―r―MTCOPrBrb/2NMe)]
【0242】
【化55】

【0243】
トリメチルアミンガス(199mg、3.37mmol)を、ドライアイス/アセトン浴に浸した実施例21のBnMPA―[P(MTCOEta/2―r―MTCOPrBrb/2)](202mg、[Br]=0.54mmol)のアセトニトリル溶液(4mL)に充填した。それから溶液を室温に温まらせ、18時間撹拌を続けた後、アセトニトリルおよび過剰のガスを真空下で除去した。濃縮された残留物を、真空で乾燥した。収率:182mg(78%)、Η NMR(400MHz,MeOH―d):δ7.44―7.30(m,5H;Ph),5.19(s,2H;PhCH),4.44―4.24(m,約258H;CHOCOOポリマーおよびCHPCPAB),4.23―4.13(m,約31H;CHPCEt),3.69―3.66(m,4Η;CHOH末端基),3.62―3.47(b,約70H;NCH2PCPAB),3.29―3.17(m,約298Η;NCH3PCPAB),2.30―2.16(b,約69Η;CH2PCPAB),1.37―1.16(m,約200Η;CHCH3PMTC(Et),CH3ポリマー)。約97%四級化;M=14,800g/モル(NMR)。
【0244】
【化56】

【0245】
(i)ビスMPA(30.4g、0.227mol)、水酸化カリウム(88%アッセイ;13.5g、0.241mol)の混合物、ならびにDMF(20mL)およびアセトニトリル(180mL)の混合物を、1時間100℃に加熱した。臭化ラウリル(60mL、0.250mol)を温かい溶液に加え、100℃で16時間撹拌を続けた。反応混合物を冷却して塩を濾過し、濾液を真空下で蒸発した。酢酸エチル(200mL)を、残留物に加えた。有機層を取り、水(200mL×3)で洗浄し、MgSOと撹拌し、蒸発して、透明な油としてラウリル2,2―ビス(メチロール)プロピオネートを得、これを数日間静置すると固体になった(62.2g、91%)。H NMR(CDCl中400MHz):δ4.13(t,2H,OCHCH),3.88(d,2H,CHOH),3.69(d,2H,CHOH),3.02(b,2H;OH),1.64(m,2Η,OCHCH),1.46―1.17(m,18Η,CH),1.05(s,3Η,CH),0.86(t,3Η,CHCH)。
【0246】
【化57】

【0247】
ラウリル2,2―ビス(メチロール)プロピオネート(C12MPA)(30.1g、0.100mol)を、CHCl(300mL)およびピリジン(50mL、0.6mol)に溶解し、溶液をN下で−78℃に冷やした。CHCl中のトリホスゲン(15.0g、0.05mol)の溶液を1時間にわたり滴下して加え、その時点で反応混合物を2時間室温に温まらせた。飽和NHCl水溶液(200mL)を加えて反応物をクエンチした後、有機層を1MのHCl水溶液(200mL×3)、飽和NaHCO水溶液(200mL)で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過し、蒸発させて、白色固体としてMTCOC12を得た(28.1g、86%)。酢酸エチルからの再結晶により、重合のための材料を精製した。H NMR(CDCl中400MHz):δ4.68(d,2H,CHOCOO),4.19(d,2Η,CHOCOO),4.18(t,1Η,OCHCH),1.65(m,2H,OCHCH),1.33(s,3Η,CH),1.32―1.21(m,18Η,CH),0.87(t,3Η,CHCH)。13C NMR(CDCl中100MHz):δ171.1,147.4,72.9,66.3,40.1,31.8,29.5,29.4,29.3,29.2,29.1,28.3,25.6,22.6,17.5,14.0。
【0248】
実施例23。BnMPA―[P(TMC)n/2―b―{P(MTCOPrBrb/2―r―MTCOC12a/2
【0249】
【化58】

【0250】
TMC(107mg、1.04mmol)、BnMPA(11.3mg、0.05mmol)、およびTU(10.4mg、0.028mmol)をメチレンクロリド(1.0mL)に溶解し、この溶液を、DBU(4.2mg、0.028mmol)が入ったバイアルへ移して、室温で重合を開始した([TMC]/[I]=21)。3時間後(TMCの変換約97%)、溶液を、MTCOC12(69mmg、0.21mmol)およびMTCOPrBr(291mg、1.03mmol)が入ったバイアルへ移して第2の重合を開始し、室温で1時間撹拌した([MTC]/[I]=25)。それから、無水酢酸(31mg、0.30mmol)を反応混合物に加え、さらに75時間撹拌した後、冷メタノールに沈殿した。沈殿物を遠心分離し、真空で乾燥した(MTC変換約97%)。収率:446mg(93%)、GPC(THF):M 10900g/モル、PDI 1.09、H NMR(400MHz,CDCl):δ7.38―7.29(m,5H;Ph),5.17(s,2H;PhCH),4.36―4.17(m,約254Η;CHOCOOポリマー、OCH2PMTC(BP)),4.14―4.08(m,約10Η;OCH2PMTC(C12)),3.49―3.41(m,約46Η;CHBrPMTC(BP)),2.24―2.14(m,約47Η;CH2PMTC(BP)),2.09―2.00(m,約49Η;CH2PTMCおよびOCH3末端基),1.67―1.58(m,約9Η;CH2PMTC(C12)),1.36―1.21(m,約172Η;CH2PMTC(C12),CH3PMTC),0.91―0.84(m,約13Η;CHCH3PMTC(C12))。
【0251】
実施例24。BnMPA―[P(TMC)n/2―b―{P(MTCOPrBrb/2NMe―r―MTCOC12a/2
【0252】
【化59】

【0253】
トリメチルアミンガス(558mg、9.44mmol)を、ドライアイス/アセトン浴に浸した実施例23からのBnMPA―[P(TMC)n/2―b―{P(MTCOPrBrb/2―r―MTCOC12a/2(407mg、[Br]=0.88mmol)のアセトニトリル溶液(5mL)に充填した。それから溶液を室温に温まらせ、20時間撹拌を続けた後、アセトニトリルおよび過剰のガスを真空下で除去した。濃縮された残留物を、真空で乾燥した。収率:393mg(82%)、H NMR(400MHz,MeOH―d):δ7.41―7.31(m,5H;Ph),5.19(s,2H;PhCH),4.44―4.17(m,約236Η;CHOCOOポリマーおよびCHPCPAB),4.18―4.09(m,約10Η;CHPCC12),3.64―3.46(b,約44Η;NCH2PCPAB),3.30―3.16(m,約189Η;NCH3PCPAB),2.32―2.16(b,約42Η;CH2PCPAB),2.11―1.97(m,約46Η;CH2PTMCおよびOCH3末端基),1.72―1.58(m,約9Η;OCHCH2PCC12),1.45―1.23(m,約152Η;CH2PCC12,CH3ポリマー),0.95―0.86(m,約12Η;CHCH3PCC12)。約98%四級化;M=11000g/モル(NMR)。
【0254】
表10は、実施例20、22、および24の特性を列挙している。
【0255】
【表10】

【0256】
電荷移動ポリマー。
実施例25。ランダムコポリマーBnMPA―[P(MTCOEEa/2―r―MTCOPrBrb/2)Ac]
【0257】
【化60】

【0258】
5―メチル―5―(1―エトキシエチル)オキシカルボキシル―1,3―ジオキサ―2―オン(MTCOEE;62mg、0.27mmol)、MTCOPrBr(212mg、0.75mmol)、BnMPA(4.6mg、0.02mmol)、およびTU(19.4mg、0.05mmol)をメチレンクロリド(1mL)に溶解し、この溶液を、DBU(7.4mg、0.05mmol)が入ったバイアルへ移して、室温で重合を開始した([M]/[I]=50)。2.5時間後、溶液を冷メタノールに沈殿し、沈殿物を遠心分離し、真空で乾燥した。収率:241mg(87%)、GPC(THF):M 11800グラム/モル、PDI 1.19、H NMR(400MHz,アセトン―d):δ7.45―7.32(m,5H;Ph),5.96(q,約12H;CH(OEE)),5.20(s,2Η;PhCH),4.42―4.22(m,約333Η;CHOCOO,OCH2ポリマー),3.75―3.48(m,約128Η;OCH2(OEE),CHBr),2.27―2.16(m,約87Η;CH2(OPrBr)),1.35(d,約44Η;CHCH3(OEE)),1.33―1.23(m,約182Η;CH3ポリマー),1.22―1.08(m,約69Η;CH3(OEE))。a:b=1.0:3.1。
【0259】
実施例26。実施例25の四級化。BnMPA―[P(MTCOEEa/2―r―MTCOPrBrb/2NMe)Ac]
【0260】
【化61】

【0261】
トリメチルアミンガス(394mg、6.7mmol)を、ドライアイス/アセトン浴に浸した実施例25のポリマー(202mg、[Br]=0.56mmol)のアセトニトリル溶液(4mL)に充填した。それから溶液を室温に温まらせ、18時間撹拌を続けた後、アセトニトリルおよび過剰のガスを真空下で除去した。濃縮された残留物を、真空で乾燥した。収率:200mg(85%)、H NMR(400MHz,MeOH―d):δ7.43―7.32(m,5H;Ph),6.02―5.93(m,約6H;CH(OEE)),5.21(s,2Η;PhCH),4.48―4.11(m,約267H;CHOCOOおよびCHOポリマー),3.75―3.64(m,約15Η;OCHCH3(OEE)),3.63―3.45(m,約78H;NCH2(PAB)),2.29―2.15(b,約298Η;NCH3(PAB)),2.32―2.15(b,約68Η;CH2(PAB)),1.41―1.35(d,約19Η;CHCH3(OEE)),1.35―1.23(m,約122Η;CH3ポリマー),1.24―1.10(m,約46Η;CHCH3(OEE))。約90%四級化;M(NMR)=14700g/モル。
【0262】
前駆体ポリマー(実施例6〜12、および25)およびその対応するカチオン性ポリマー(実施例13〜19、および26)のポリマー調製物が表11にまとめられている。
【0263】
【表11】

【0264】
表12は、前駆体ポリマー(実施例6〜12、および25)およびその対応するカチオン性ポリマー(実施例13〜19、および26)につき得られた分析データ(数平均分子量M、多分散性指数(PDI)、収率、ハライドXの第四級アミンへの変換率)をまとめている。
【0265】
【表12】

【0266】
予測可能な分子量を有する狭分散ホモポリマー、ランダムポリマー、およびブロックコポリマーの合成を通じて、有機触媒システム(TU/DBU)の有用性が示された。多分散度は、1.11〜1.22だった。前駆体ポリマーの数平均分子量Mは、10500〜12400だった。カチオン性ポリマーの数平均分子量Mは、13100〜19433だった。ハライドの第四級アミンへの変換は、約84%〜100%であった。
【0267】
前駆体ポリマーのアミンとの反応性は、側鎖上のハライドに依存する。実施例6のポリマー(X=Cl)は、アセトニトリル中トリメチルアミンを用いて室温で容易に第四級アミンを形成できるが、TMEDA([Cl]1当量あたり4当量のTMEDA)を用いて実施例13のカチオン性ポリマーを生産するためにはより多くのDMSO等の極性溶媒および加熱(90℃)が必要だった。比較として、実施例7(X=Br)および実施例8(X=I)の前駆体ポリマーを、DMSOまたはアセトニトリル中のTMEDAを用いて、室温で対応する実施例14および15のカチオン性ポリマーにそれぞれ変換した。ブロミドおよびヨージドの反応性には、TMEDAとの反応速度にほとんど差がなかった。
【0268】
塩素、臭素およびヨウ素の間の反応性の差は、ブロックコポリマー、特にカチオン性ポリカーボネートセグメントを含むミセルを形成する両親媒性ブロックコポリマーの設計において有用でありうる。上述のように、カチオン性ブロックコポリマーは、両末端のカチオン性親水性セグメント(実施例16〜18)および疎水性コアを含んで形成されうる。疎水性コアには、トリメチレンカーボネート(TMC)またはラクチド(LLAまたはDLA)から得られる繰り返し単位が含まれる。しかし、LLAおよびDLAから得られる疎水性コアは、特にクロリド脱離基をもつポリカーボネートサブ単位につき、熱を必要とするTMEDA四級化反応の間に熱的に不安定であることがわかった。したがってこれらのモノマーを、室温でTMEDAと反応できるブロミドまたはヨージド脱離基を有する前駆体ポリマーを形成するために用いた。クロリド脱離基を含む前駆体ポリマーでは、TMCから得られるポリ(トリメチレンカーボネート)を含む疎水性ブロックは、TMEDA四級化反応で用いられる高温で比較的安定していた。
【0269】
ハロゲンの反応性も、荷電ポリマーの安定性に影響しうる。90%程度のハロゲン残留物が変換されるが、全ての側鎖ハライド基を第四級アミンに変換することは、過剰のTMEDAを使用しても、反応平衡、立体障害、および電荷反発のために困難である。未反応ハロゲン化アルキル基は、側鎖の最終端での第三級アミンとの反応の潜在性架橋部位である。ブロミドまたはヨージド含有前駆体ポリマーから得られるカチオン性ポリマーは少量の不溶性物質を含んだが、クロリド含有前駆体ポリマーから得られるカチオン性ポリマーは、反応性が低いために非常に安定していた。しかし、実施例12のランダム前駆体ポリマーから得られる実施例19のカチオン性ポリマーを生産するための反応において、架橋は観察されなかった。実施例19のカチオン性ポリマーは、コモノマーモル比MTCOEt:MTCOPrBrが1:1のとき、良好な水溶解性が見られた。
【0270】
上で調製した両親媒性ポリマー(実施例13〜19)は、水溶液中でミセルのナノ粒子を形成しうる。典型例として、実施例16のカチオン性ポリマーは、20mMの酢酸ナトリウムバッファー(pH6.0)中へのポリマーの直接溶解により、370nmの粒径および34mVのゼータ電位のナノ粒子を形成した。
【0271】
【化62】

【0272】
MTCOPrCl(233mg、0.99mmol)、1―ピレンブタノール(PBOH)(6.5mg、0.024mmol)、およびTU(8.2mg、0.022mmol)をメチレンクロリド(1mL)に溶解し、この溶液を、DBU(2.8mg、0.018mmol)が入ったバイアルへ移して、室温で重合を開始した([M]/[I]=42)。2時間後に、安息香酸(11.6mg、0.10mmol)を混合物に加え、30分間撹拌した(変換約94%)。それから溶液を冷メタノールに二回沈殿し、沈殿物を遠心分離し、真空で乾燥した。収率:203mg(87%)、GPC(THF):M 5800g/モル、PDI 1.31、H NMR(400MHz,CDCl):δ8.29―7.84(m,9H;ピレン),4.49―4.08(m,約281H;CHOCOO,OCH2ポリマーおよびCHO),3.71(s,2Η;CHOH末端基),3.67―3.51(m,約96H;CHClポリマー),3.43―3.36(m,2Η;CHCHO),2.17―2.03(m,約95H;CH2ポリマー),1.32―1.17(m,約144Η;CH3ポリマー)。
【0273】
実施例27。PBOH―[P(MTCOPrCl)TMEDA]。
【0274】
【化63】

【0275】
PBOH―[P(MTCOPrCl)](170mg、[Cl]=0.69mmol)をDMSO(3.5mL)に溶解し、TMEDA(0.43mL、2.87mmol)と混合し、80℃で16時間撹拌した。それから混合物をTHFに二回沈殿し、沈殿物を遠心により収集し、真空で乾燥した(84%四級化)。収率:202mg(81%)、GPC(DMF):M 7800g/モル、PDI 1.11、H NMR(400MHz,MeOH―d):δ8.44―7.92(m,9H;ピレン),4.51―4.12(m,約135H;CHOCOO,OCH2ポリマーおよびCHO),3.69(s,2Η;CHOH末端基),3.64―3.42(m,約89H;CHポリマーおよびCHCHO),3.29―3.14(br,約103H;NCH3ポリマー),2.86―2.74(br,約42Η;CHNポリマー),2.30―2.30(br,約124Η;NCHポリマー),2.28―2.14(br,約49Η;CH2ポリマー),1.38―1.24(br,約70Η;CH3ポリマー)。
【0276】
【化64】

【0277】
TMC(206mg、2.02mmol)、1―ピレンブタノール(22mg、0.08mmol)、およびTU(18.0mg、0.05mmol)をメチレンクロリド(1.0mL)に溶解し、この溶液を、DBU(7.5mg、0.05mmol)が入ったバイアルへ移して、室温で重合を開始した([TMC]/[I]=26)。2.5時間後に、安息香酸(10.5mg、0.09mmol)を混合物に加え、30分間撹拌した(変換約97%)。それから溶液を冷メタノール中の沈殿により単離し、真空で乾燥して、PBOH―[P(TMC)]を得た。収率:220mg(97%)、GPC(THF):M 4000g/モル、PDI 1.06、M(NMR)2800g/モル。それから、ポリマーPBOH―[P(TMC)](182mg、[OH]=0.065mmol)、MTCOPrCl(504mg、2.13mmol)およびTU(31mg、0.08mmol)をメチレンクロリド(2.1mL)に溶解し、この溶液を、(−)―スパルテイン(9.5mg、0.04mmol)の入ったバイアルへ移して、室温で重合を開始した([M]/[I]=33)。24時間の撹拌後に、安息香酸(14.5mg、0.12mmol)を溶液に加え、それからこれを冷メタノールに二回沈殿して単離し、真空で乾燥して、PBOH―[P(TMC)―b―P(MTCOPrCl)]を得た。収率:659mg(96%)、GPC(THF):M 10700g/モル、PDI 1.19、H NMR(400MHz,CDCl):δ8.29―7.83(m,9H;ピレン),4.35―4.17(m,約307H;CHOCOOポリマー,OCH2P(MTC―CP)およびCHO),3.71(s,2Η;CHOH末端基),3.64―3.56(m,約71H;CHClP(MTC―CP)),3.39(t,2Η;CHCHO),2.17―1.98(m,約136H;CH2P(MTC―CP),CH2PTMC),1.98―1.82(m,4Η;CH),1.32―1.19(m,約102Η,CH3P(MTC―CP))。
【0278】
実施例28。PBOH―[(PTMC)―b―P(MTCOPrCl)TMEDA]。
【0279】
【化65】

【0280】
PBOH―[P(TMC)―b―P(MTCOPrCl)](627mg、[Cl]=1.96mmol)のDMSO溶液(5mL)に、TMEDA(1.12mL、7.5mmol)を加えた。反応混合物を80℃で15時間撹拌し、THFに二回沈殿した。沈殿物を遠心分離し、真空で乾燥した(82%四級化)。収率:772mg(83%)、GPC(DMF):M 11500g/モル、PDI 1.15、H NMR(400MHz,MeOH―d):δ8.42―7.89(m,9H;ピレン),4.50―4.11(m,約210H;CHOCOOポリマー,OCH2PCPACおよびCHO),3.69(s,2Η;CHOH末端基),3.65―3.46(br,約85H;CHPCPAC),3.29―3.15(br,約125Η;NCH3PCPAC),2.98―2.80(br,約44Η;NCH2PCPAC),2.49―2.29(br,約124Η;NCH3PCPAC),2.30―2.14(br,約46Η;CH2PCPAC),2.09―1.92(m,約38Η;CH2PTMC),1.92―1.81(m,4Η;CH),1.39―1.16(m,約76Η,CHポリマー)。
【0281】
表13は、本開示のカチオン性ROPポリマーのいくつかの、CMC、ミセル粒径、およびMICをまとめている。
【0282】
【表13】

【0283】
好適なCMCは、脱イオン水中100マイクログラム/mL未満である。好適なミセル粒径は250nm未満であり、MICはカチオン性ROPポリマーのMに基づき100マイクロモル/L未満であるのが好ましい。表13に示すように、ポリカーボネートは、水への直接溶解によりカチオン性ミセルを容易に形成できる。カチオン性ミセルの形成により、カチオン電荷およびポリマー質量の局所濃度が増加し、菌/菌類の増殖に対する阻害効果が増強される。ポリマーの抗微生物活性は、ポリマー組成および細胞型に依存する。長い疎水性ブロックを有する実施例2は、増殖培地との接触時に凝集体を形成する。比較的長めのカチオン性ブロックを有する実施例3は、実施例1と比較して表面が高いゼータ電位を有するミセルを形成し、より高い抗微生物活性を生じる。重要なことに、実施例1および3は、広範囲の濃度にわたり有意な溶血活性を有しない。これらの抗微生物性ポリカーボネートミセルは、様々な感染症を処置するために適用されうる。
【0284】
追加の具体的実施形態。
一つの具体的実施形態においては、生分解性カチオン性ポリマーは、酸素、窒素、および硫黄からなる群より独立して選択される第1の主鎖ヘテロ原子を含むモノマー鎖フラグメントと;第1の末端単位と第2の末端単位とを含む第1のポリマー鎖とを含み、i)第1の主鎖ヘテロ原子が第1の末端単位に連結され、ii)第1のポリマー鎖が親水性第1の繰り返し単位を含み、第1の繰り返し単位が、エステル、カーボネート、カルバメート、尿素、チオカルバメート、チオカーボネート、およびジチオカーボネートからなる群より独立して選択される主鎖官能基を含み、iii)第1のポリマー鎖の第1の繰り返し単位の0%超が、第四級アミン基を含む側鎖部分をさらに含み、iv)任意に、第1のポリマー鎖の第2の末端単位がエンドキャップ基を含み、v)カチオン性ポリマーは、抗微生物物質として適切なミセルを形成できる。追加の実施形態においては、第1のポリマー鎖は疎水性第2の繰り返し単位を含み、第2の繰り返し単位が、エステル、カーボネート、カルバメート、尿素、チオカルバメート、チオカーボネート、およびジチオカーボネートからなる群より独立して選択される主鎖官能基を含む。別の追加の実施形態においては、第1のポリマー鎖は、ブロックコポリマーである。別の追加の実施形態においては、i)カチオン性ポリマーは、それぞれの第1の末端単位とそれぞれの第2の末端単位とを含む第2のポリマー鎖を含み、ii)モノマー鎖フラグメントは、酸素、窒素、および硫黄からなる群より独立して選択される第2の主鎖ヘテロ原子を含み、iii)第2のポリマー鎖の第1の末端単位が、鎖フラグメントの第2の主鎖ヘテロ原子に連結され、iv)第2のポリマー鎖の第2の末端単位が任意にエンドキャップされ、v)第2のポリマー鎖が、エステル、カーボネート、カルバメート、尿素、チオカルバメート、チオカーボネート、およびジチオカーボネートからなる群より独立して選択されるそれぞれの第1の主鎖官能基を含むそれぞれの第1の親水性繰り返し単位を含み、vi)第2のポリマー鎖の第1の繰り返し単位の0%超が、側鎖第四級アミンを含む。別の追加の実施形態においては、第1のポリマー鎖および第2のポリマー鎖は、それぞれの疎水性第2の繰り返し単位を含み、第2の繰り返し単位が、エステル、カーボネート、カルバメート、尿素、チオカルバメート、チオカーボネート、およびジチオカーボネートからなる群より独立して選択される主鎖官能基を含む。別の追加の実施形態においては、第1のポリマー鎖はブロックコポリマーであり、第2のポリマー鎖はブロックコポリマーである。別の追加の実施形態においては、鎖フラグメントは、二つ以上の主鎖芳香環を含む。
【0285】
別の具体的実施形態においては、水性ミセルは、約5〜500マイクログラム/mLの上述のカチオン性ポリマーを含み、当該水性ミセルは、微生物細胞膜を溶解させることができる。
【0286】
別の具体的実施形態においては、水性ミセル混合物を形成する方法は、上述の生分解性両親媒性カチオン性ポリマーを、5.0〜8.0のpHで、5〜500マイクログラム/mL以上の濃度で、水溶液中で撹拌しながら混合し、これにより水性ミセルを形成するステップを含み、当該水性ミセルは、10〜500nmの平均粒径を有する。
【0287】
本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を記載するためだけのものであり、本発明を制限することを目的としない。本明細書において用いられるところの、「一つの(a”、”an”および、「前記(”the”)は、文脈から別の意味が明示されない限り、複数形も含むことを企図する。さらに、「含む(comprise)」もしくは「含んでいる(comprising」という用語またはその両方は、本明細書において使用される場合には、記載の特徴、整数、ステップ、操作、要素、もしくは成分またはその組み合わせの存在を特定するが、一つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、成分、もしくはその群またはその組み合わせの存在または追加を排除しないものと理解される。
【0288】
本発明の記載は、例示および説明の目的で提示されているが、網羅的であることも、本発明を開示された形態に制限することも企図しない。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、多くの修正および変更が、当業者に明らかとなる。実施形態は、本発明の原理およびその実際的適用を最も良く説明するため、また他の当業者による本発明の理解を可能にするために、選択および記載された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開環重合により第1の環式カルボニルモノマーから得られる第1の繰り返し単位を含む親水性ブロックであり、前記第1の繰り返し単位が、第四級アミン基を含む側鎖部分を有する、親水性ブロックと;
開環重合により第2の環式カルボニルモノマーから得られる第2の繰り返し単位を含む疎水性ブロックと;
任意のエンドキャップ基と;
一般式(10):
【化1】

の双求核開始剤から得られる鎖フラグメントであり、式中、各X′および各W′は、独立して、単結合または―(CR′―、―O―、―S―、―NR′―、および―NR′(CR′―からなる群より選択される二価の基であり;各cは、独立して、1〜5の整数であり;R′は、水素、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より選択される一価の基であり;各Y′は、独立して、単結合または―CO―(カルボニル)、―NR′CO―(アミノカルボニル)、―OCO―(オキシカルボニル)、―SCO―(チオカルボニル)からなる群より選択される二価の基であり;各T′は、―OH、―SH、―NH、および―NRHからなる群より独立して選択される一価の求核剤であり、Rは、水素、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より選択される一価の基であり;各Z′は、ハライド、1〜20の炭素を含むアルキル基、1〜20の炭素を含むアルコキシ基、および6〜20の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基であり;各bは、独立して、1〜20の整数であり;各dは、独立して、0または1〜4の整数である、鎖フラグメントと;
を含む、カチオン性ブロックコポリマーであり、
前記カチオン性ブロックコポリマーは、ASTM D6400に従い180日以内に60%生分解する、
生分解性カチオン性ブロックコポリマー。
【請求項2】
前記鎖フラグメントが、構造:
【化2】

を有する双求核開始剤から得られる、請求項1に記載のカチオン性ブロックコポリマー。
【請求項3】
前記鎖フラグメントが、構造:
【化3】

を有する双求核開始剤から得られる、請求項1に記載のカチオン性ブロックコポリマー。
【請求項4】
生分解性カチオン性ブロックコポリマーを形成する方法であって、
有機触媒と、促進剤と、任意の溶媒と、一般式(10):
【化4】

の双求核開始剤とを含む、反応混合物を形成するステップであり、式中、各X′および各W′は、独立して、単結合または―(CR′―、―O―、―S―、―NR′―、および―NR′(CR′―からなる群より選択される二価の基であり、各cは、独立して、1〜5の整数であり、R′は、水素、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より選択される一価の基であり、各Y′は、独立して、単結合または―CO―(カルボニル)、―NR′CO―(アミノカルボニル)、―OCO―(オキシカルボニル)、―SCO―(チオカルボニル)からなる群より選択される二価の基であり、各T′は、―OH、―SH、―NH、および―NRHからなる群より独立して選択される一価の求核剤であり、Rは、水素、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より選択される一価の基であり、各Z′は、ハライド、1〜20の炭素を含むアルキル基、1〜20の炭素を含むアルコキシ基、および6〜20の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基であり、各bは、独立して、1〜20の整数であり、各dは、独立して、0または1〜4の整数である、ステップと;
第1の環式カルボニルモノマーの後、第2の環式カルボニルモノマーを、前記反応混合物に順次加え、開環重合により反応させ、これにより第1のブロックコポリマーを形成するステップであり、前記第1の環式カルボニルモノマーが、第三級アミンと反応して第四級アミンを形成できる一価の脱離基を含み、前記第2の環式カルボニルモノマーが、前記第三級アミンと反応して第四級アミンを形成できず、前記第1のブロックコポリマーが、前記双求核開始剤から得られる二つ以上の主鎖芳香環を含む鎖フラグメントを含む、ステップと;
前記第1のブロックコポリマーを任意にエンドキャップし、これにより前駆体ブロックコポリマーを形成するステップと;
前記前駆体ブロックコポリマーを第三級アミンで処理して、前記カチオン性ブロックコポリマーを形成するステップと;
を含み、
前記カチオン性ブロックコポリマーが、前記第1の環式カルボニルモノマーから得られる第1の繰り返し単位を含み、前記第1の繰り返し単位が、前記第四級アミンを含む側鎖部分を有し、前記カチオン性ブロックコポリマーが、ASTM D6400に従い180日以内に60%生分解する、
方法。
【請求項5】
前記順次反応が、逆の順序で実行されて、前記第1のブロックコポリマーが形成される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記鎖フラグメントが、構造:
【化5】

を有する開始剤から得られる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記鎖フラグメントが、構造:
【化6】

を有する開始剤から得られる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のブロックコポリマーが、カルボン酸無水物を用いてエンドキャップされ、これにより末端エステル基が形成される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記親水性ブロックおよび前記疎水性ブロックが、独立して、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、およびその組み合わせからなる群より選択される主鎖を含む、請求項1に記載のカチオン性ブロックコポリマー。
【請求項10】
約5〜500マイクログラム/mLの生分解性カチオン性ブロックコポリマーを含む、水性ミセル混合物であって、
前記カチオン性ブロックコポリマーが、
開環重合により第1の環式カルボニルモノマーから得られる第1の繰り返し単位を含む親水性ブロックであり、前記第1の繰り返し単位が、第四級アミン基を含む側鎖部分を有する、親水性ブロックと;
開環重合により第2の環式カルボニルモノマーから得られる第2の繰り返し単位を含む疎水性ブロックと;
前記開環重合の開始剤から得られる鎖フラグメントと、
任意のエンドキャップ基と;
を含み、
前記水性ミセル混合物が、微生物細胞膜の溶解を引き起こし、前記カチオン性ブロックコポリマーが、ASTM D6400に従い180日以内に60%生分解する、
水性ミセル混合物。
【請求項11】
前記鎖フラグメントが、単求核開始剤から得られる、請求項10に記載の水性ミセル混合物。
【請求項12】
前記開始剤が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、およびその混合物からなる群より選択されるモノマーアルキレンジオール開始剤である、請求項10に記載の水性ミセル混合物。
【請求項13】
前記モノマーアルキレンジオール開始剤が、BnMPAである、請求項12に記載の水性ミセル混合物。
【請求項14】
前記鎖フラグメントが、式(10):
【化7】

を有する双求核開始剤から得られ、式中、各X′および各W′は、独立して、単結合または―(CR′―、―O―、―S―、―NR′―、および―NR′(CR′―からなる群より選択される二価の基であり;各cは、独立して、1〜5の整数であり;R′は、水素、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より選択される一価の基であり;各Y′は、独立して、単結合または―CO―(カルボニル)、―NR′CO―(アミノカルボニル)、―OCO―(オキシカルボニル)、―SCO―(チオカルボニル)からなる群より選択される二価の基であり;各T′は、―OH、―SH、―NH、および―NRHからなる群より独立して選択される一価の求核剤であり、Rは、水素、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より選択される一価の基であり;各Z′は、ハライド、1〜20の炭素を含むアルキル基、1〜20の炭素を含むアルコキシ基、および6〜20の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基であり;各bは、独立して、1〜20の整数であり;各dは、独立して、0または1〜4の整数である、
請求項10に記載の水性ミセル混合物。
【請求項15】
前記鎖フラグメントが、構造:
【化8】

を有する双求核開始剤から得られる、請求項10に記載の水性ミセル混合物。
【請求項16】
前記鎖フラグメントが、構造:
【化9】

を有する双求核開始剤から得られる、請求項10に記載の水性ミセル混合物。
【請求項17】
前記第四級アミンが、トリメチルアミンから得られる、請求項10に記載の水性ミセル混合物。
【請求項18】
前記水性ミセルが、5.0〜8.0のpHで10nm〜500nmの平均粒径を有する、請求項10に記載の水性ミセル混合物。
【請求項19】
前記水性ミセルが、球状構造を有する、請求項10に記載の水性ミセル混合物。
【請求項20】
前記水性ミセルが、ロッド様構造を有する、請求項10に記載の水性ミセル混合物。
【請求項21】
前記水性ミセル混合物が、0%〜15%の溶血を引き起こす、請求項10に記載の水性ミセル混合物。
【請求項22】
前記水性ミセル混合物が、0%〜20%の細胞毒性を有する、請求項10に記載の水性ミセル混合物。
【請求項23】
前記水性ミセルが、生物活性材料を含む、載荷ミセルである、請求項10に記載の水性ミセル混合物。
【請求項24】
前記生物活性材料が、負に荷電していない、請求項23に記載の水性ミセル混合物。
【請求項25】
前記生物活性材料が、ペプチド、薬物、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項23に記載の水性ミセル混合物。
【請求項26】
前記第1の環式カルボニルモノマーが、式(2):
【化10】

の化合物であり、式中、
tは、0〜6の整数であり;
各Yは、
【化11】

からなる群より独立して選択される二価の基であり;
各Qは、水素、ハライド、カルボキシ基、1〜30の炭素を含むアルキル基、6〜30の炭素原子を含むアリール基、および構造
【化12】

を有する基からなる群より独立して選択される一価の基であり、式中、Mは、―R、―OR、―NHR、―NR、および―SRからなる群より選択される一価の基であり;各Rは、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基であり;前記第1の環式カルボニルモノマーの前記Q基の一つ以上が、第三級アミンと反応して第四級アミンを形成できる一価の脱離基を含む、
請求項10に記載の水性ミセル混合物。
【請求項27】
前記第1の環式カルボニルモノマーが、式(3):
【化13】

の化合物であり、式中、
各Qは、水素、ハライド、カルボキシ基、1〜30の炭素を含むアルキル基、6〜30の炭素原子を含むアリール基、および構造
【化14】

を有する基からなる群より独立して選択される一価の基であり、式中、Mは、―R、―OR、―NHR、―NR、または―SRからなる群より選択される一価の基であり、各Rは、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基であり;
は、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基であり;
は、水素、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素原子を含むアリール基からなる群より選択される一価の基であり;
前記第1の環式カルボニルモノマーの前記R基が、第三級アミンと反応して第四級アミンを形成できる一価の脱離基を含む、
請求項10に記載の水性ミセル混合物。
【請求項28】
前記第1の環式カルボニルモノマーが、式(4):
【化15】

の化合物であり、式中、
uは、1〜8の整数であり;
各Qは、水素、ハライド、カルボキシ基、1〜30の炭素を含むアルキル基、6〜30の炭素原子を含むアリール基、および構造
【化16】

を有する基からなる群より独立して選択される一価の基であり、式中、Mは、―R、―OR、―NHR、―NR、または―SRからなる群より選択される一価の基であり;各Rは、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基であり;
任意に、式(4)の
【化17】

は、独立して、―O―、―S―、―NHR、または―NRを表し;
任意に、式(4)の
【化18】

は、独立して、
【化19】

を表し;
前記第1の環式カルボニルモノマーの前記Q基の一つ以上が、第三級アミンと反応して第四級アミンを形成できる一価の脱離基を含む、
請求項10に記載の水性ミセル混合物。
【請求項29】
前記第1の環式カルボニルモノマーが、式(5):
【化20】

の化合物であり、式中、
各vは、独立して、1〜6の整数を表し;
各Qは、水素、ハライド、カルボキシ基、1〜30の炭素を含むアルキル基、6〜30の炭素原子を含むアリール基、および構造
【化21】

を有する基からなる群より独立して選択される一価の基であり、式中、Mは、―R、―OR、―NHR、―NR、または―SRより選択される一価の基であり;
各Rは、1〜30の炭素を含むアルキル基、および6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基であり;
各Qは、水素、1〜30の炭素を含むアルキル基、6〜30の炭素を含むアリール基からなる群より独立して選択される一価の基であり;
前記第1の環式カルボニルモノマーの前記QもしくはQ基またはその両方の一つ以上が、第三級アミンと反応して第四級アミンを形成できる一価の脱離基を含む、
請求項10に記載の水性ミセル混合物。
【請求項30】
水性ミセル混合物を形成する方法であり、
5.0〜8.0のpH、および5〜500マイクログラム/mL以上の濃度で、生分解性カチオン性ブロックコポリマーを、水溶液中で撹拌しながら混合し、これにより水性ミセル混合物を形成するステップを含み;
前記水性ミセルが、10〜500nmの平均粒径を有し、前記カチオン性ブロックコポリマーが、開環重合により第1の環式カルボニルモノマーから得られる第1の繰り返し単位を含む親水性ブロックであり、前記第1の繰り返し単位が、第四級アミン基を含む側鎖部分を有する、親水性ブロックと、開環重合により第2の環式カルボニルモノマーから得られる第2の繰り返し単位を含む疎水性ブロックと、前記開環重合の開始剤から得られる鎖フラグメントと、任意のエンドキャップ基とを含み;
前記水性ミセル混合物が、微生物細胞膜の溶解を引き起こし、前記カチオン性ブロックコポリマーが、ASTM D6400に従い180日以内に60%生分解する、
方法。
【請求項31】
前記鎖フラグメントが、双求核開始剤から得られる二つ以上の主鎖芳香環を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記開始剤が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、およびその混合物からなる群より選択されるモノマーアルキレンジオールである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の水性ミセル混合物を、生物活性材料を含む第2の水性混合物と接触させるステップをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
微生物を処理する方法であり、
前記微生物を、5.0〜8.0のpH、および前記微生物の細胞膜の溶解を引き起こすのに有効な濃度で、生分解性カチオン性ブロックコポリマーを含む水性ミセル混合物と接触させるステップを含み;
前記ブロックコポリマーが、開環重合により第1の環式カルボニルモノマーから得られる第1の繰り返し単位を含む親水性ブロックであり、前記第1の繰り返し単位が、第四級アミン基を含む側鎖部分を有する、親水性ブロックと;開環重合により第2の環式カルボニルモノマーから得られる第2の繰り返し単位を含む疎水性ブロックと;前記開環重合の開始剤から得られる鎖フラグメントと、任意のエンドキャップ基とを含み;
前記カチオン性ブロックコポリマーが、ASTM D6400に従い180日以内に60%生分解する、
方法。
【請求項35】
前記鎖フラグメントが、双求核開始剤から得られる二つ以上の主鎖芳香環を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記開始剤が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、およびその混合物からなる群より選択されるモノマーアルキレンジオールである、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
酸素、窒素、および硫黄からなる群より独立して選択される第1の主鎖ヘテロ原子を含むモノマー鎖フラグメントと;
第1の末端単位と第2の末端単位とを含む第1のポリマー鎖と;
を含む、生分解性カチオン性ポリマーであり、
i)前記第1の主鎖ヘテロ原子が、前記第1の末端単位に連結され、ii)前記第1のポリマー鎖が、親水性第1の繰り返し単位を含み、前記第1の繰り返し単位が、エステル、カーボネート、カルバメート、尿素、チオカルバメート、チオカーボネート、およびジチオカーボネートからなる群より独立して選択される主鎖官能基を含み、iii)前記第1のポリマー鎖の前記第1の繰り返し単位が、第四級アミン基を含む側鎖部分をさらに含み、iv)任意に、前記第1のポリマー鎖の前記第2の末端単位が、エンドキャップ基を含み、v)前記カチオン性ポリマーが、抗微生物物質として適切なミセルを形成できる、
生分解性カチオン性ポリマー。
【請求項38】
前記第1のポリマー鎖が、疎水性第2の繰り返し単位を含み、前記第2の繰り返し単位が、エステル、カーボネート、カルバメート、尿素、チオカルバメート、チオカーボネート、およびジチオカーボネートからなる群より独立して選択される主鎖官能基を含む、請求項37に記載のカチオン性ポリマー。
【請求項39】
前記第1のポリマー鎖が、ブロックコポリマーである、請求項38に記載のカチオン性ポリマー。
【請求項40】
i)前記カチオン性ポリマーが、それぞれの第1の末端単位とそれぞれの第2の末端単位とを含む第2のポリマー鎖を含み、ii)前記モノマー鎖フラグメントが、酸素、窒素、および硫黄からなる群より独立して選択される第2の主鎖ヘテロ原子を含み、iii)前記第2のポリマー鎖の前記第1の末端単位が、前記鎖フラグメントの前記第2の主鎖ヘテロ原子に連結され、iv)前記第2のポリマー鎖の前記第2の末端単位が、任意にエンドキャップされ、v)前記第2のポリマー鎖が、エステル、カーボネート、カルバメート、尿素、チオカルバメート、チオカーボネート、およびジチオカーボネートからなる群より独立して選択されるそれぞれの第1の主鎖官能基を含むそれぞれの第1の親水性繰り返し単位を含み、vi)前記第2のポリマー鎖の前記第1の繰り返し単位が、側鎖第四級アミンを含む、請求項37に記載のカチオン性ポリマー。
【請求項41】
前記第1のポリマー鎖および前記第2のポリマー鎖が、それぞれの疎水性の第2の繰り返し単位を含み、前記第2の繰り返し単位が、エステル、カーボネート、カルバメート、尿素、チオカルバメート、チオカーボネート、およびジチオカーボネートからなる群より独立して選択される主鎖官能基を含む、請求項40に記載のカチオン性ポリマー。
【請求項42】
前記第1のポリマー鎖がブロックコポリマーであり、前記第2のポリマー鎖がブロックコポリマーである、請求項41に記載のカチオン性ポリマー。
【請求項43】
前記鎖フラグメントが、二つ以上の主鎖芳香環を含む、請求項42に記載のカチオン性ポリマー。
【請求項44】
請求項42に記載のカチオン性ポリマーを約5〜500マイクログラム/mLの含む水性ミセルであり、微生物細胞膜を溶解できる、水性ミセル。
【請求項45】
水性ミセル混合物を形成する方法であり、
生分解性両親媒性の請求項42に記載のカチオン性ポリマーを、5.0〜8.0のpH、および5〜500マイクログラム/mL以上の濃度で、水溶液中で撹拌しながら混合し、これにより水性ミセルを形成するステップを含み、
前記水性ミセルが、10〜500nmの平均粒径を有する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2013−515815(P2013−515815A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545911(P2012−545911)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/SG2010/000486
【国際公開番号】WO2011/078804
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】