説明

抗接着高温層

【課題】コーティングを備えた支持体を開示し、これは、a)窒化ホウ素を除く、分離剤の固体粒子、及び、b)表面改質ナノスケール固体粒子を含む、結合剤、を含むコーティング組成物の適用により得られ得る。該結合剤は、好ましくはナノコンポジットを含む。層は抗接着及び高温安定である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
a)窒化ホウ素を除く離型剤(release agent)の固体粒子、及び、b)表面改質ナノスケール固体粒子を含む結合剤を含むコーティング組成物に基づく抗接着コーティングを備えた支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱抗接着コーティングは、工業上の応用においてかなり重要である。このような抗接着特性を有する材料は、先行技術において知られている。これらは、非常に頻繁に、はっきりしたシート構造及び特定の電子特性(グラファイトのような)を有する材料、ならびに、硫化タングステンまたは硫化モリブデンのようなある種の硫化物である。しかし、これらの物質の表面への適用は、例えばグラファイトは、可能であっても、著しい困難さを伴ってのみ表面に堆積され得るために、特に難しい。一つの解決策は、例えば、堅固な接着様式においてグラファイト粒子を表面に結合できる結合剤の使用にある。グラファイトの抗接着特性のために、これは一般的であるが、しかしながら高温安定ではない有機ポリマーを伴ってのみ、可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それゆえ、本発明の目的は、高温においてさえ安定な抗接着コーティングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、表面改質ナノスケール固体粒子を含む結合剤によって驚くべきことに達成される。従って、本発明は、コーティング組成物を支持体に適用すること及び硬化により得られ得る、抗接着コーティングを備えた支持体に関し、前記コーティング組成物は、
a)窒化ホウ素を除く離型剤の固体粒子、及び
b)表面改質ナノスケール固体粒子を含む結合剤、
を含む。
【0005】
驚くべき効果は、表面改質ナノスケール固体粒子(ナノスケール固体粒子はまた、以下でナノ粒子とも言及される)が、非常に無極性の表面(例えばグラファイトの表面)と極性表面(例えば支持体)の両方に対する接着作用を発生できることである。これらは顕著な二官能特性を示す。
【0006】
この二官能特性のために、このように、有機溶媒だけでなく水性システムにおいて、グラファイトまたは他の離型剤粒子の懸濁液を調製すること、及び、それらを金属、ガラス及びセラミックのような様々な支持体材料上のコーティング組成物として使用することが可能である。プラスチックのコーティングは等しく可能であるが、高温使用は、もちろん、支持体の通常制限されている熱安定性の範囲内にある場合にのみ可能である。
【0007】
該離型剤の抗接着作用がこのようなコーティング(すなわち、周囲環境に向けられた離型剤の部分(例えばグラファイト)は、結合剤によって完全には囲まれない)において維持されることも、また、驚くべきことである。
【0008】
本発明を以下で詳細に説明する。
【0009】
本発明に従い使用するコーティング組成物は、窒化ホウ素を除く離型剤の固体粒子を含む(また、以下で離型剤粒子としても言及する)。もちろん、異なる離型剤粒子の混合物を使用することもまた可能である。離型剤は、隣接する表面との間の接着力を減少でき得る物質である。固体離型剤はしばしば、粒子または粉末の形態で使用される。この目的のために使用する材料は、当業者によく知られている。離型剤は、時折また潤滑剤としても言及される。一般的な概略は、Rompp, Chemielexikon, 9th edition, GeorgThieme Verlag, 1992, p. 4690-4691及びUllmans Encyklopadie dertechnischen Chemie, 4th edition, Verlag Chemie1981, vol. 20, pages 457-672に見出され得る。
【0010】
離型剤粒子は好ましくは無機粒子であるが、メタルフリーのフタロシアニンまたはインダンスレン染料のような有機離型剤もまた好適である。有利には、シート格子構造(sheet lattice structure)を備えた材料が使用されるが、ホウ砂または酸化鉛−酸化亜鉛のような他の離型剤もまた好適である。
【0011】
シート格子構造を備えた好適な離型剤の例は、例えば、グラファイト、フッ化グラファイトのようなグラファイト化合物、雲母、タルク、硫化物、セレン化物、テルル化物、塩化カドミウム、ヨウ化鉛、塩化コバルト及び硫酸銀である。特に好ましくは、グラファイト、グラファイト化合物及び重金属硫化物、セレン化物及びテルル化物、例えば、MoS,WS,WSe,NbS,NbSe,TaS,TaSe,AsSbSまたはAsAsSが挙げられる。
【0012】
該離型剤粒子は、通常、100μmより小さい、好ましくは30μmより小さい及びさらに好ましくは10μmより小さい平均粒径を有する。該平均粒径は、ここで、後述のデータにおいてのように、測定された体積平均に関し、分布は、1から2000μmの粒度範囲においてレーザー回折法(Mieに従う評価)、及び、3.5nmから3μmの範囲においてUPA(超微粒子アナライザー、Leeds Northrup(laser optics))を使用することにより測定される。1〜3μmのフラクション範囲において、参考文献はここでUPAを用いた測定に参照される。
【0013】
硬化後のコーティング(最終生産物)の全重量に基づく、離型剤粒子のフラクションは、通常、5から95重量%、好ましくは20から80重量%、そしてさらに好ましくは30から70重量%である。該離型剤粒子は溶媒の懸濁液の形態で使用され、または粉末として結合剤に添加される。
【0014】
コーティング組成物は、結合剤成分として、表面改質ナノスケール固体粒子を含む。該離型剤粒子は、この結合剤を用いる永久の及び熱的に安定な様式において、表面に結合され得ることが見出された。有利な実施形態において、特にゾルの形態で、ナノ粒子を含む表面改質ナノコンポジットは、結合剤として使用される。ナノコンポジットまたはナノコンポジットゾルは、ナノスケールの固体粒子と、ゾル−ゲルプロセスにより調製される好ましくは無機的にまたは有機的に改質された無機重縮合物またはそれらの前駆物質との混合物からなる。コーティング組成物において、ナノ粒子またはナノコンポジットより構成される結合剤は、通常、ゾルまたは分散物の形態で存在する。硬化した層において、それはマトリックス形成剤を構成する。
【0015】
ナノコンポジットは、表面改質ナノスケール固体粒子と、重縮合物または前駆物質を単に混合することによって得られ得、これは好ましくはゾル−ゲルプロセスにより加水分解性の出発化合物から得られる。しかし、該重縮合物またはゾル−ゲルプロセスによる加水分解性の出発化合物からの該前駆物質の形成は、好ましくはナノ粒子存在下で行われ得、そして、これは該ナノ粒子がまた加水分解性の出発化合物により表面改質されるためである。本プロセスにおいて、表面改質が重縮合物のまたは前駆物質の形成の間に進むため、非表面改質ナノ粒子が通常使用されるが、すでに表面改質されているナノ粒子を使用することもまた可能である。
【0016】
結合剤は、表面改質ナノ粒子を含む。ナノ粒子は好ましくは無機である。該ナノ粒子は、金属合金、金属化合物または半導体性化合物を含む金属から作製され得るが、カーボンブラックまたは活性炭のようなカーボン改質物(carbon modification)もまた考えられる。さらに好ましくは、該ナノ粒子は、酸化物またはカーボンブラックである。一つの型のナノスケール固体粒子または異なるナノスケール固体粒子の混合物を使用することが可能である。
【0017】
該ナノ粒子は、任意の金属化合物から作製され得、ここで金属はケイ素及びホウ素を含む。例は、ZuO、CdO、SiO、GeO、TiO、ZrO、CeO、SnO、Al(特にベーマイト、水酸化アルミニウムとしてまたAlO(OH))、B、In、La、Y、酸化鉄(例えば、Fe、Fe)、CuO、Ta、Nb、V、MoOまたはWOのような(必要に応じて水和された)酸化物;さらにカルコゲニド、例えば硫化物(例えば、CdS、ZnS、PbS及びAgS)、セレン化物(例えば、GaSe、CdSe及びZnSe)及びテルル化物(例えば、ZnTeまたはCdTe);AgCl、AgBr,Agl,CuCl,CuBr,CdI及びPbIのようなハロゲン化物;CdCまたはSiCのような炭化物;AlAs、GaAs及びGeAsような砒化物;InSbのようなアンチモン化物;AlN、Si及びTiのような窒化物;GaP、InP、Zn及びCdのような燐化物;ホスフェート、シリケート、ジルコネート、アルミナート、スタネート及び対応する混合酸化物(例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、アンチモンスズ酸化物(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)のような金属スズ酸化物、ZnドープAl、Y−またはEu−含有化合物を含む発光顔料、スピネル、フェライトまたはBaTiO及びPbTiOのようなペロブスカイト構造を有する混合酸化物)である。
【0018】
ナノスケール無機固体粒子は、好ましくはSi、Ge,Al、B、Zn、Cd、Ti、Zr、Y、Ce、Sn、In、La、Fe、Cu、Ta、Nb、V、MoまたはWの、さらに好ましくはSi、Al、Y、Ti及びZrの酸化物またはオキシドヒドレートである。特に好ましくは、酸化物またはオキシドヒドレートを使用することが挙げられる。好ましいナノスケール無機固体粒子は、SiO、TiO、ZrO、Al、AlOOH、Ta、Y、CeO、ZnO、SnO、酸化鉄であり、好ましくはSiO、TiO、ZrO、Al、AlOOH、特に好ましくはSiOが挙げられる。
【0019】
ナノ粒子の含有量は、通常、熱硬化後の組成物(最終生産物)の全重量を基準に、90重量%より低く、好ましくは70重量%より低く、そしてさらに好ましくは60重量%より低く、そして特別の場合には、10重量%より低くさえあり得る。離型剤の含有量は大きく変化し得るため、ナノ粒子の含有量もまた変化する。コーティング組成物において、ナノ粒子含有量は、離型剤粒子を除いた固形分を基準に、例えば、少なくとも5重量%であり得る。
【0020】
これらのナノスケール粒子は、慣用的な方法、例えば、フレーム熱分解、プラズマ法、コロイド技術、ゾル−ゲルプロセス、制御核生成及び成長プロセス、MOCVD法及びエマルジョン法により生産され得る。これらの方法は文献に総合的に記載されている。該ゾル−ゲルプロセスは、以下にさらに詳細に記載する。
【0021】
ZrOまたはAlに基づく粒子は、例えば、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウム塩または複合ジルコニウム化合物のようなジルコニウム酸化物前駆物質、あるいは、アルミニウム塩及びアルミニウムアルコキシドから生産され得る。商業的に利用可能なコロイド状ZrO粒子(非安定化または安定化)あるいはゾルまたは粉末の形態にあるナノスケールAlまたはAlOOH粒子を使用することもまた可能である。
【0022】
同様に、SiO粒子は、加水分解性シラン(例えば上記の式(I))から生産され得る。商業的に利用可能な分散物の例は、Bayer AG(Levasile(登録商標))の水性シリカゾル及びNissan Chemicalsからのコロイド状ゾル(IPA−ST、MA−ST、MEK−ST、MIBK−ST)である。利用可能な粉末の例は、Degussaからの熱分解法シリカ(Aerosil Prosucts)を含む。
【0023】
ナノスケール固体粒子は、一般に500nm未満、通常300nm以下、好ましくは100nm以下、そして特に50nm以下の平均粒径を有する。この材料は粉末の形態で使用され得るが、好ましくはゾルの、または、懸濁液の形態で使用される。
【0024】
ナノスケール固体粒子の表面改質は、本出願人により、例えばWO 93/21127(DE 4212633)またはWO 96/31572に記載されるように、公知の方法である。表面改質ナノスケール無機固体粒子の生産は、原理的に、2つの異なる経路によって(第1は、既に生産されたナノスケール無機固体粒子の表面改質によって、そして、第2に、適切な官能性部分を有する1以上の化合物を使用するこれらの無機ナノスケール固体粒子の製造によって)行われ得る。これらの二つの経路は、上述の特許出願において詳細に説明されている。
【0025】
特に既存のナノスケール粒子の表面改質のために、適した表面改質剤は、無機または有機酸だけでなく、好ましくは、該固体粒子の表面に存在する基と反応及び/または(少なくとも)相互作用する少なくとも一つの非加水分解性基を備えた、低分子量有機化合物または低分子量加水分解性シランである。例えば、ナノ粒子上に配置する表面基は、例えば金属酸化物の場合におけるヒドロキシル基、または、例えば金属硫化物の場合におけるチオール基及びチオ基、または、例えば窒化物の場合におけるアミノ、アミド及びイミド基のような残余原子価として反応性基を含む。
【0026】
ナノスケール粒子の表面改質は、例えば、必要に応じて溶媒中で及び触媒存在下で、ナノスケール粒子と、以下で説明する好適な表面改質剤を混合することにより遂行し得る。表面改質剤としてシランの場合、改質は、例えば、室温で数時間ナノスケール粒子と撹拌することで十分である。ZrOの場合、好ましくは、Y−安定化ZrO(Y−ZrO)を使用することが挙げられる。もちろん、温度、量比、反応時間などのような適切な条件は、特に特定の反応物及び望ましい被覆の程度に依存する。
【0027】
該表面改質剤は、例えば、該ナノスケール粒子の表面との共有、またはイオン(塩のような)、または配位結合を形成し得、しかし、純粋な相互作用の間で、例は、双極子−双極子相互関係、水素結合及びファンデルワールス相互作用を含む。好ましくは、共有、イオン及び/または配位結合の形成が挙げられる。配位結合は、錯体形成を意味すると理解される。表面改質剤と該粒子の間で、例えば、ブレンステッドまたはルイス酸/塩基反応、錯体形成またはエステル化を生じることも可能である。
【0028】
本発明に従うと、該表面改質剤は比較的低分子量を有することもまた好ましい。例えば、該分子量は1500より小さく、特に1000未満、そして好ましくは500未満または400未満または300未満でさえあり得る。もちろん、これは、明らかにより大きい分子量の化合物(例えば2000まで、またはそれ以上)を除外しない。
【0029】
該ナノ粒子への結合のための該表面改質剤の好適な官能基の例は、カルボン酸基、無水物基、アミド基、(第一級、第二級、第三級及び第四級)アミノ基、SiOH基、シランの加水分解性基(式(I)において以下に記載のSiX基)及びC−H−酸性部分、例えば、β−ジカルボニル化合物である。多数のこれらの基が、一つの分子に同時に存在すること(ベタイン、アミノ酸、EDTA、など)もまた可能である。
【0030】
表面改質のために使用される化合物の例は、必要に応じて置換(例えばヒドロキシル基によって)、1から24の炭素原子を有する飽和または不飽和のモノ−及びポリカルボン酸(好ましくはモノカルボン酸)(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、クエン酸、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、シュウ酸、マレイン酸及びフマル酸)、ならびにエーテル結合を伴う1から24の炭素原子を有するモノカルボン酸(例えば、メトキシ酢酸、ジオキサヘプタン酸及び3,6,9−トリオキサデカン酸)、ならびにそれらの無水物、エステル(好ましくはC−C−アルキルエステル)及びアミド、例えばメタクリル酸メチルである。
【0031】
さらに適した表面改質剤の例は、式NR4+の第四級アンモニウム塩であり、
ここで、RからRは、それぞれ同じでも異なってもよく、好ましくは1から12、特に1から8の炭素原子を有する脂肪族、芳香族または環式脂肪族基、例えば1から12、特に1から8、そしてさらに好ましくは1から6の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−およびi−プロピル、ブチルまたはヘキシル)であり、そして、Xは無機または有機アニオン、例えばアセテート、OH、Cl、BrまたはI;モノ及びポリアミン、特に一般式R3−nNHn’のそれら(ここで、n=0、1または2、及び、R基はそれぞれ独立して、1から12、特に1から8、そしてさらに好ましくは1から6の炭素原子を有するアルキル基である(例えば、メチル、エチル、n−及びi−プロピル、ブチルまたはヘキシル))及びエチレンポリアミン(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなど);アミノ酸;イミン;4から12、特に5から8の炭素原子を有するβ−ジカルボニル化合物、例えば、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、アセト酢酸及びエチルアセトアセテートのようなC−C−アルキルアセトアセテート;及びシラン、例えば以下の一般式(I)(ここで、R基の一つ以上はまた、例えば(メト)アクリロイル、エポキシ(グリシジルまたはグリシジルオキシを含む)、チオール、カルボキシル、カルボン酸無水物またはアミノ基を、備えた官能基により置換され得る)の少なくとも一つの非加水分解性基を有する加水分解性シランである。
【0032】
好ましく使用される純粋な有機表面改質剤は、1から24の炭素原子を有するモノカルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、メタクリル酸、クエン酸、ステアリン酸、メトキシ酢酸、ジオキサヘプタン酸及び3,6,9−トリオキサデカン酸、ならびに対応する酸水素化物及びアミド及び4から12、特に5から8の炭素原子を有するβ−ジカルボニル化合物、例えばアセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、アセト酢酸のようなジケトン、及びエチルアセトアセテートのようなC−C−アルキルアセトアセテートである。
【0033】
重合可能な/重縮合可能な表面基を備えたナノケール無機固体粒子のin situでの生産に関して、WO 98/51747(DE 19746885)が参照される。
【0034】
上記記載に関して、結合剤は、有利な具体例において、重縮合物またはそれらの前駆物質にナノ粒子を含むナノコンポジットを含み、該縮合物は、該ナノ粒子存在下で好ましく調製され、その結果、該縮合物のための加水分解性の出発化合物もまた、該ナノ粒子を表面改質する。
【0035】
無機的にまたは有機的に改質された無機重縮合物またはそれらの前駆物質は、ゾル−ゲルプロセスによって、加水分解性の出発化合物(特に、以下の式(I)の加水分解性シラン)の加水分解及び縮合によって、好ましく生産される。前駆物質は、特に、該加水分解性の出発化合物を低い程度の縮合でのプレ加水分解物及び/またはプレ縮合物を意味すると理解される。ゾル−ゲルプロセスにおいて、加水分解性の化合物は、水で、必要に応じて熱または酸または塩基触媒で加水分解され、部分的に縮合される。化学量論量の水を使用することが可能であるが、より少量またはより多量もまた使用され得る。形成したゾルは、適切なパラメーター(例えば、縮合度、溶媒またはpH)により組成物に関して望ましい粘度に調整され得る。ゾル−ゲルプロセスのさらなる詳細は、例えば、C.J. Brinker, G.W. Scherer: “Sol-Gel Science - The Physics and Chemistry of Sol-Gel-Processing”, Academic Press, Boston, San Diego, New York, Sydney (1990)に記載される。
【0036】
重縮合物またはそれらの前駆物質は、ナノ粒子存在下で好ましく生産される。従って、ナノスケール固体粒子を含むナノコンポジットは、好ましくはゾル−ゲルプロセスによって、ナノスケール固体粒子と一般式:
SiA(4−x) (I)
(ここで、A基は同じでも異なってもよく、そしてヒドロキシル基または加水分解性基であり、R基は同じでも異なってもよく、そして非加水分解性基であり、ならびに、xは0、1、2、3であり、ここで、好ましくは、シランの少なくとも50%量がx≧1である)の一つ以上のシランが反応することによって得られ得る。該ナノスケール固体粒子は、特にシランとの反応によって表面改質される。x=0である式(I)のシランのみが使用されるとき、純粋な無機ナノコンポジットが得られ、別の方法で、好ましい有機−無機ナノコンポジットが得られる。
【0037】
一般式(I)において、加水分解性A基(これは互いに同じでも異なってもよい)は、例えば、水素、ヒドロキシルまたはハロゲン(F、Cl、BrまたはI)、アルコキシ(好ましくはC1−6−アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ及びブトキシ)、アリールオキシ(好ましくはC6−10−アリールオキシ、例えばフェノキシ)、アルカリールオキシ(alkaryloxy)(例えばベンジルオキシ)、アシルオキシ(好ましくはC1−6−アシルオキシ、例えばアセトキシまたはプロピオニルオキシ)、アルキルカルボニル(好ましくは、C2−7−アルキルカルボニル、例えばアセチル)、アミノ、好ましくは1から12、特に1から6の炭素原子を有するモノアルキルアミノまたはジアルキルアミノである。好ましい加水分解性基は、ハロゲン、アルコキシ基及びアシルオキシ基である。特に好ましい加水分解性基は、C2−4−アルコキシ基、特にエトキシである。記載した加水分解性A基は、必要に応じて、一つ以上の典型的な置換基(例えばハロゲン原子またはアルコキシ基)を保有し得る。
【0038】
式(I)の非加水分解性R基は、例えばアルキル(例えば、C1−20−アルキル、特に、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルのようなC1−4−アルキル)、アルケニル(例えば、C2−20−アルケニル、特に、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル及びブテニルのようなC2−4−アルケニル)、アルキニル(例えば、C2−20−アルキニル、特に、アセチレニルまたはプロパルギルのようなC2−4−アルキニル)、アリール(特に、フェニルまたはナフチルのようなC6−10−アリール)及び対応するアラルキル及びアルカリール基(トリル及びベンジルのような)及び環式プロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシルのような環式C3−12−アルキル及び−アルケニル基である。該R基は、必要に応じて、一つ以上の慣用的な置換基(例えばハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、(メト)アクリロイル((meth)acryloyl)及びエポキシ基)を有する。
【0039】
特に好ましいR基は、必要に応じて置換されたC1−4−アルキル基、特にメチル及びエチル、そして、必要に応じて置換されたC6−10−アリール基、特にフェニル基である。
【0040】
上記式(I)におけるxは0、1または2、そしてさらに好ましくは0または1であることがまた好ましい。さらに、好ましくは少なくとも60%、そして特に少なくとも70%量が、値x=1を有し、残りのものは、好ましくはx=0である式(I)のシランからなる。
【0041】
好ましく使用されるシランは、メチルトリエトキシシラン(MTEOS)、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン(PTEOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)またはテトラメトキシシランのようなアルキル−及びアリールトリアルコキシシラン及び/またはテトラアルコキシシランである。本発明の重縮合物は、例えば、純粋なメチルトリエトキシシラン(MTEOS)から、または、MTEOSとテトラエトキシシラン(TEOS)またはMTEOSとフェニルトリエトキシシラン(PTEOS)とTEOSの混合物から調製され得る。
【0042】
本発明に従い使用される一般式(I)のシランは、単独で、または、他の加水分解性化合物との混合物において、完全にまたは部分的にプレ縮合物、例えば、式(I)のシランの部分的な加水分解により形成された化合物の形態で使用され得る。好ましくは反応混合物に溶解するこのようなオリゴマーは、直鎖状または環状の、例えば約2から100、特に2−6の縮合度を有する低分子量の部分縮合物であり得る。
【0043】
一つの具体例において、ナノコンポジットゾルを形成するために、該加水分解性シランは、加水分解性基に基づき、サブ化学量論量の水で加水分解及び縮合され得る。該加水分解及び縮合のために使用する水の量は、存在する加水分解性基のモルあたり、好ましくは0.1から0.9、そしてさらに好ましくは0.25から0.8molの水である。サブ化学量論量の水の添加の場合、結合剤は、ある期間にわたって安定した方法で保存され得、そして、必要に応じて、離型剤の添加前にまたは支持体への塗布前に、さらなる水の添加により活性化され得る。
【0044】
シランの加水分解及び縮合は、好ましくは1と7の間、より好ましくは1と3の間のpHで、ゾル−ゲル条件下、例えば、酸性縮合触媒(例えば塩酸)存在下、で行われる。
【0045】
加水分解において形成される溶媒とは別に、好ましくは、さらなる溶媒を使用しないことが挙げられるが、望むのであれば、水、アルコール性溶媒(例えば、エタノール)、または他の極性、プロトン性及び非プロトン性溶媒(テトラヒドロフラン、ジオキサン)を使用することが可能である。他の溶媒が使用される必要がある場合、好ましくは、エタノール及び1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール及びこれらの誘導体(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)が挙げられる。
【0046】
結合剤は、重縮合物またはこれらの前駆物質を含む時、結合剤における重縮合物のフラクションは、硬化後のコーティング(最終生成物)の全重量を基準として、通常95重量%以下、好ましくは80重量%以下、そしてさらに好ましくは70重量%以下である。
【0047】
既に上で説明したように、重縮合物は好ましくはナノ粒子存在下で調製され、その結果、該ナノ粒子は、表面改質形態で該重縮合物に埋め込まれる。シランの加水分解及び縮合において、このように、シランの一部は該ナノ粒子の表面の反応基と反応し、そして、該ナノ粒子の表面改質を導き、これはまた、重縮合物マトリックス内での該ナノ粒子のより強力な結合を導く。
【0048】
コーティング組成物は、目的及び望ましい特性に依存する典型的な工業において添加される、さらなる添加物を含み得る。特定の例は充填剤、チキソトロープ剤、上述の溶媒、他のマトックス形成組成物、有機性分散剤及びポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロースまたはセルロース誘導体、ポリオール、有機性及び無機有彩顔料(ナノスケールの範囲に含まれる)、金属コロイド(例えば、光学官能基(optical function)のキャリアとして)、染料、UV吸収剤、ガラス形成成分(例えば、ホウ酸、ホウ酸エステル(boric esters)、ナトリウムエトキシド、酢酸カリウム、アルミニウムsec−ブトキシド)、防食剤(例えばタンニン酸)、潤滑剤、均展剤(leveling agents)、湿潤剤(wetting agents)、接着促進剤及び触媒(例えば、金属塩及び金属アルコキシドのような硬化触媒)である。
【0049】
好適な充填剤は、例えば、ナノ粒子について上に特定してきたものと同じ材料であり得る無機充填剤粒子である。例えば、SiO、Al、ZrO、TiO、ムライト、ベーマイト、Si、SiC及びAlNである。平均粒径は、通常、100μmより小さく、特に10μmより小さく、好ましくは5μmより小さく、そしてさらに好ましくは1μmより小さい。
【0050】
充填剤は、必要に応じて任意の時に添加され得る。例えば、これらの充填剤は、離型剤粒子懸濁液の調製の過程において混合され得るが、これらはまた、粉末または懸濁液の形態で結合剤に添加され得る。
【0051】
固体粒子を結合剤に分散させるために、慣用的な撹拌ユニット(溶解槽、統制ジェットミキサー(directed jet mixers))、超音波処理、ニーダー、スクリュー式押出機、ロールミル、振動ミル、遊星ミル、モルタルミル及び、特に粉砕(attritor)ミルを使用することが可能である。ナノスケール粉末の分散に関して、好ましくは、小型粉砕ボディーを備えた、通常2mmより小さい、好ましくは1mmより小さい、そしてさらに好ましくは0.5mmより小さい直径を備えた、粉砕ミルが挙げられる。
【0052】
該離型剤粒子懸濁液を調製するために、好ましくは、Ultra−Turraxまたは遠心ホモジナイザーのような、ローター/ステーターシステムを備えた高速分散ユニットで分散することが挙げられる。特に好ましくは、多段ローター/ステーターシステム(Cavitron 高性能遠心ホモジナイザー(high−performance centrifugal homogenizer))を備えたユニットが挙げられる。
【0053】
該離型剤粒子は、分離した離型剤懸濁液と結合剤ゾルを混合することによって添加され得るが、それらはまた、該離型剤粒子の該結合剤ゾルへの混合/分散により添加され得る。好ましくは、撹拌しながら、分離した離型剤懸濁液と分離した結合剤ゾルを混合することにより調製することが挙げられる。
【0054】
幾つかの場合において、コーティング組成物の支持体への塗布前に、結合剤の及び/またはサイズ(結合剤+離型剤)のpHを調製することが有利である。この目的において、通常、塩基が使用され、好ましくはアルコール溶媒中の塩基、そしてさらに好ましくはエタノール性ナトリウムエトキシド溶液である。該pHは、通常1と7の間、好ましくは2.5と5の間、そしてさらに好ましくは3と4の間に調整される。反応過程中に形成された塩は、沈降及び/または遠心分離により除去され得る。該サイズの完成後、幾つかの場合、塗布前にさらに該サイズをホモジナイズすることが有利である。これは、通常一晩、通常該サイズを撹拌することによって行われる。
【0055】
幾つかの場合、正確な量の水を添加することによって、完成したサイズ(結合剤ゾル+離型剤)中で、明確な加水分解/縮合反応を可能にする利点もまたある;通常、これは、(使用される全量の)加水分解性基のモルあたり、1モルの水より少ない全含水量で確立される。
【0056】
コーティングまたはモールド離型層に適した支持体は、全ての従来の支持体である。好適な支持体の例は、金属、半導体、ガラス、セラミック、ガラス−セラミック、プラスチックまたは無機−有機コンポジット材料から作製された支持体またはモールド表面である。高温用途のために、熱安定性の支持体がふさわしく使用され、例えば金属、半導体、ガラス、セラミック、ガラス−セラミックまたは熱耐性プラスチックである。これらは、好ましくは無機支持体である。
【0057】
特に適した支持体材料は、鉄、クロミウム、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、スズ及び亜鉛のような金属ならびにそれらの合金(鋳鉄、鋳鋼、鋼鉄、例えば純粋の、低合金の、高合金の鋼鉄、青銅、真鍮)、そしてまた、セラミックス、耐熱性の(refractory)材料及びガラスのような無機非金属であり、全ての支持体は、フォイル、織物(fabrics)、シート/プレート及び成形物(moldings)の形態で存在する。
【0058】
半導体の例は、例えばウエハーの形態にあるシリコン、及び、ガラス上のインジウムスズ酸化物層(ITO層)である。使用される該ガラスは、全て従来のガラスのタイプであり得、例えば、シリカガラス、ホウ珪酸ガラスまたはソーダ石灰珪酸ガラスであり得る。プラスチック支持体の例は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタラートである。
【0059】
該支持体は、例えばクリーニングのために、コロナ処理によって、または、予備的なコーティング(例えばラッカーまたは金属化表面)で、前処理され得る。
【0060】
離型剤含有コーティングゾルは、ナイフコーティング、浸漬、フローコーティング、スピニング、吹付け、ブラッシング及びペインティングのような一般的なコーティング方法によって、該支持体/モールド表面に塗布され得る。接着を改良するために、幾つかの場合には、希釈した、または、希釈していない結合剤ゾルまたはそれらの前駆物質または他のプライマーとの接触前に、該支持体を処理することが有利であるということが分かり得る。
【0061】
本発明のモールド離型剤は、例えば、好ましくは、部分的に溶けた、または、溶けた金属と接触する流し込み型の全ての表面を被覆する。
【0062】
該サイズの固形分(離型剤プラス結合剤ゾルの固形分)は、溶媒及び/または水を添加することによる選択的なコーティング方法に依存して調整され得る。スプレーコーティングにおいて、2と70重量%の間、好ましくは5と50重量%の間、そしてさらに好ましくは10と30重量%の間の固形分が、通常確立される。他のコーティングプロセスにおいて、他の固形分を確立することも、もちろん、また可能である。チキソトロープ剤または標準化剤、例えばセルロース誘導体、を添加することは等しく可能である。
【0063】
最終の硬化前、新たに適用される剥離層のアイソスタチック圧縮は、パッキング密度をさらに増加し得、そして、同様に、該層の強度及び寿命を明らかに高め得る。この目的で、さらなる、実質的な結合剤フリー離型剤剥離層の適用が推奨され、これは、アイソスタチック圧縮において周囲のメディウムとまだ硬化していない層の接着を防止する。
【0064】
最終的な硬化は、室温で、または、わずかに高い温度での一つ以上の乾燥段階に、例えば強制空気乾燥キャビネットにおいて、及び/または、例えばモールドそれ自身の、加熱/熱処理に先行され得る。酸化感受性支持体の場合、該乾燥及び/または続いて起こる硬化は、保護ガス雰囲気下(N,Ar)または減圧下で遂行し得る。一般的に、硬化は加熱により遂行される。
【0065】
熱感受性を考慮すると、熱硬化は、50℃より高い、好ましくは200℃より高い、そしてさらに好ましくは300℃より高い温度での熱処理により、好ましく遂行される。該層はまた、より高い温度で、好ましくは500から700℃の温度で、該支持体がこれらの温度で、例えば酸化またはスケール形成に対して、十分に安定である時に、焼き付けられる。該熱処理は、結果として有機成分の焼失を生じ得る。
【0066】
しかし、層それら自体は、不活性雰囲気において1000℃以上の温度に耐えさえする;該不活性雰囲気は、支持体の、または、そうでなければ生じる離型剤の、酸化のために必要である。該結合剤それら自体は、通常の雰囲気中において1000℃でさえ安定である。
【0067】
該コーティングの(例えばモールド離型層として)熱処理は、例えばオーブンの中で、ホットガスによって、該表面の直接的なガス火炎によって、直接または間接的なIR加熱、さもなければ、in situで、該剥離層を液体(溶けた、または、部分的に溶けた)キャストメタル(cast metal)と接触させることによって、遂行し得る。
【0068】
生産されたコートされた支持体は、該層の熱安定性のために抗接着高温層として、該支持体の適切な選択の場合に、適している。特定の適用は、例えば、特に金属の鋳造のために、モールド剥離層、ならびに、良好な滑動特性のために減摩層である。
【0069】
以下の実施例は本発明のさらなる説明を提供する。
【実施例】
【0070】
実施例
1. ケイ酸結合剤ゾル(silicatic binder sols)の合成
1.1. MTKS;ROR 0.4
65.5gのMTEOS及び19.1gのTEOSを混合する。該混合物の半分を、勢いよく撹拌しながら、14.2gのシリカゾル(LEVASIL 300/30)及び0.4mlの濃塩酸と反応させる。5分後、シラン混合物の第2の半分を、もう5分間さらに撹拌した該混合物に添加する。一晩静置した後、該混合物を、エタノール性ナトリウムエトキシド溶液でpH3に調整する。反応過程で形成される塩は、遠心分離により除去する。
【0071】
1.2. MTKS−PT;ROR 0.4
65.5gのMTEOS及び19.1gのTEOSを混合し、そして、勢いよく撹拌しながら、28.4gのシリカゾル(LEVASIL 300/30)及び0.8mlの濃塩酸と反応させる。5分後、88.3gのフェニルトリエトキシシラン(PTEOS)及び19.1gのTEOSからなるさらなるシラン混合物を、もう5分間さらに撹拌した混合物に添加する。一晩静置した後、混合物をエタノール性ナトリウムエトキシド溶液でpH3に調整する。反応過程で形成される塩は、遠心分離により除去する。
【0072】
2. ケイ酸性(silicatically)結合層の生産
2.1. エタノール性MoS懸濁液の調製
333gの硫化モリブデン粉末(Molyduval、submicron MoS)を、16.8gのポリビニルブチラール(Hoechst:Mowital(登録商標)B30T)が溶解した649.2gの無水、変性エタノール(MEK)に撹拌する。該懸濁液を冷却可能な(coolable)撹拌容器に充填し、次いで、高速Ultra−Turrax T 25で、30分の持続時間、24000min−1の回転速度で、分散させる。
【0073】
2.2. エタノール性グラファイト懸濁液の調製
333gのグラファイト粉末(Lonza、HSAG 100)を、66gのポリアクリル酸50000(Polyscience;25% in HO)が溶解した600gの無水、変性エタノール(MEK)に撹拌する。該懸濁液を冷却可能な撹拌容器に充填し、次いで、高速Ultra−Turrax T 25で、30分の持続時間、24000min−1の回転速度で、分散させる
2.3. MoS/MTKS−PT層の調製;MoS:SiO=2:1
30gのMTKS−PT ROR 0.4(約10gのSiOに一致)を1.5gの脱ミネラル水で活性化し、1時間撹拌する。その後、結合剤を、約33重量%の固形分を備えた60gの上記エタノール性離型剤懸濁液(約20gのMoSと一致)と、撹拌しながら混合する。コーティングシステムの固形分(熱硬化後の全量のコーティングに基づく)は、約33重量%である。
【0074】
このコーティングシステムは、一般的なコーティングプロセスにより適用され得る;固形分は、使用される塗布工程に依存して調整される。
【0075】
2.4. グラファイト/MTKS−PT層の調製;グラファイト:SiO=1:1
30重量%の固形分を備えた50gの上記エタノール性グラファイト懸濁液を、撹拌しながら、50gのMTKS−PT ROR 0.4と混合する。該サイズの固形分(離型剤に基づく)は、15重量%である;1日の撹拌時間後、該懸濁液は加工でき得る(N.B.:加水分解に要する水は、既にグラファイト懸濁液中に存在する)。
【0076】
このコーティングシステムは、一般的なコーティングプロセスにより塗布され得る;固形分は、使用される塗布プロセスに依存して調整される。
【0077】
3. Al/ZrO結合剤相の調製
3.1. nAnZ結合剤(1:1)
酢酸を添加することにより一定のpH3が確立されている過程において、100gのベーマイト(Disperal(登録商標)、Sasol Hamburgから)を900gの水に撹拌する。該懸濁液は24時間撹拌し、そして、粗凝集物を、沈降分離(48h)によって続いて除去した。
【0078】
11.6gのナノ分散化、Y−安定化、表面改質ZrO粉末(比表面積200g/cm、16重量%のトリオキサデカン酸)を、128.37gの上記ベーマイトゾル(10gのAlに一致)中に撹拌し、次いで、30分の期間中、超音波処理(Branson Sonifier type)により分散させる。
【0079】
結合剤相を調製するために、35gの上記コランダム懸濁液(7gのAlに一致)を、70gのnAnZ結合剤ゾルに最初に滴下する。
【0080】
4. Al/ZrO結合層の生産
4.1. 水性MoS懸濁液の調製
250gのMoS粉末(Molyduval、van Laar GmbH、サブミクロン微細粉末MoS)を、6.25gのポリビニルアルコール(Hoechst:PVA 4/88)を溶解した743.75gの脱イオン水に撹拌する。該懸濁液を冷却可能な撹拌容器に充填し、そして、高速Ultra−Turrax T 25で、30分の期間、分散させる。
【0081】
4.2. 水性グラファイト懸濁液の調製
250kgのグラファイト粉末(Timcal、TIMREX KS 4)を、6.25gの界面活性剤(ICI:Tween 80)を溶解した743.75gの脱イオン水に撹拌する。該懸濁液は冷却可能な撹拌容器に充填し、そして、高速Ultra−Turrax T 25で、30分の期間、分散させる。
【0082】
4.3. MoS−AnAnZ層の生産
PE粉砕カップ(+ローター)中に330gの粉砕ボール(Al;直径4−5mm)を備えた粉砕ミル(PE 075 Netzschから)中で、700rpmで、2時間の期間、80gのAl(TM−DAR、TAI MEIから)を318gのHO及び2gの酢酸に分散させる。
【0083】
70gのnAnZゾル(10gの固体に一致)を、35gの上記Al懸濁液(7gのAlに一致)と混合し、そして、撹拌しながら、12gの水性MoS懸濁液(3gの固体に一致)と混合する。
【0084】
より良好な加工のために、約5−6の範囲のpHが、水性アンモニアを添加することにより確立され、そして、該サイズは、コーティングのための一般的なプロセスにより適用され得る。
【0085】
4.4. グラファイトAnAnZ層の生産
PE粉砕カップ(+ローター)中に330gの粉砕ボール(Al;直径4−5mm)を備えた粉砕ミル(PE 075 Netzschから)中で、700rpmで、2時間の期間、80gのAl(TM−DAR、TAI MEIから)を318gのHO及び2gの酢酸に分散させる。
【0086】
70gのnAnZゾル(10gの固体に一致)を、35gの上記Al懸濁液(7gのAlに一致)と混合し、そして、撹拌しながら、12gの水性グラファイト懸濁液(3gの固体に一致)と混合する。
【0087】
より良好な加工のために、約5−6の範囲のpHが、水性アンモニアを添加することにより確立され、そして、該サイズは、コーティングのための一般的なプロセスにより適用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物を支持体に適用し及び硬化することにより得ることができ、該コーティング組成物が、
a)窒化ホウ素を除く離型剤の固体粒子、及び、
b)表面改質ナノスケール固体粒子を含む結合剤
を含む、抗接着コーティングを備えた支持体。
【請求項2】
該離型剤粒子がシート格子構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の支持体。
【請求項3】
該離型剤粒子がグラファイト、グラファイト化合物、金属硫化物、金属セレン化物及び/または金属テルル化物から選択されることを特徴とする、請求項1及び2のうちの一つに記載の支持体。
【請求項4】
該金属硫化物、金属セレン化物または金属テルル化物が、MoS、WS、WSe、NbS、NbSe、TaS、TaSe,AsSbS及びAsAsSから選択されることを特徴とする、請求項3に記載の支持体。
【請求項5】
該離型剤粒子がグラファイト、フッ素化グラファイト、MoS及びWSから選択されることを特徴とする、請求項3または4に記載の支持体。
【請求項6】
該結合剤が、有機的に改質された無機重縮合物またはそれらの前駆物質にナノスケール固体粒子から構成されるナノコンポジットを含むことを特徴とする、請求項1から5のうちの一つに記載の支持体。
【請求項7】
有機的に改質された無機重縮合物またはそれらの前駆物質が、有機的に改質された無機ポリシロキサンまたはそれらの前駆物質であることを特徴とする、請求項6に記載の支持体。
【請求項8】
該ナノスケール固体粒子が金属酸化物粒子またはカーボンブラックであることを特徴とする、請求項1から7のうちの一つに記載の支持体。
【請求項9】
ナノスケール固体粒子が、SiO、TiO、ZrO、Al、AlOOH、Y,CeO、SnO、酸化鉄及び/またはTaから選択されることを特徴とする、請求項8に記載の支持体。
【請求項10】
該ナノスケール固体粒子が、1500より小さい分子量を有する表面改質剤で表面改質されていることを特徴とする、請求項1から9のうちの一つに記載の支持体。
【請求項11】
該ナノスケール固体粒子が、無水物基、アミド基、アミノ基、SiOH基、シランの加水分解性基及び/またはβ−ジカルボニル基を含む表面改質剤で改質されていることを特徴とする、請求項1から10のうちの一つに記載の支持体。
【請求項12】
該ナノコンポジットが、ナノスケール固体粒子を、一般式:
SiA(4−x) (I)
(ここで、A基は同じでも異なってもよく、そして、ヒドロキシル基または加水分解性基であり、R基は同じでも異なってもよく、そして、非加水分解性基であり、そしてxは0、1、2または3(シランの量の少なくとも50%においてx≧1である)である)
の一つ以上のシランと反応させることによるゾル−ゲルプロセスによって得られ得ることを特徴とする、請求項6から11のうちの一つに記載の支持体。
【請求項13】
該コーティング組成物がまた無機充填剤を含むことを特徴とする、請求項1から12のうちの一つに記載の支持体。
【請求項14】
抗接着性、高温耐性層としての、請求項1から13のうちの一つに記載の支持体の使用。
【請求項15】
特に金属の鋳造のための、モールド離型剤としての、または、減摩層(tribological layer)としての、請求項1から13のうちの一つに記載の支持体の使用。

【公表番号】特表2007−526834(P2007−526834A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515902(P2006−515902)
【出願日】平成16年6月11日(2004.6.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006326
【国際公開番号】WO2004/110671
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(500449008)ライプニッツ−インスティトゥート フィア ノイエ マテリアーリエン ゲマインニュッツィゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクタ ハフトゥンク (22)
【Fターム(参考)】