説明

抗新生物薬剤、特にテモゾロミドの薬学的処方物、その同一物の製造方法および使用方法

【課題】テモゾロミドのような抗新生物薬剤を含む処方物であって、水溶性であり、凍結乾燥、長期の保存および凍結乾燥された処方物の水溶液への再構成に対して安定および/または適している処方物を提供すること。
【解決手段】少なくとも1つの抗新生物薬剤またはその薬学的に受容可能な塩、少なくとも1つの水性希釈剤、およびこの抗新生物薬剤を十分に溶解させるために十分な少なくとも1つの溶解促進剤を含む薬学的処方物であって、溶解促進剤が尿素、L−ヒスチジン、L−スレオニン、L−アスパラギン、L−セリン、L−グルタミン、またはそれらの混合物である、薬学的処方物によって、上記課題は解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2002年2月22日に提出された米国仮特許出願、シリアル番号60/359,198からの優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明はテモゾロミド(Temozolomide)のような抗新生物薬剤、および溶解促進剤を含む薬学的処方物に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
抗新生物薬剤は、幅広い癌および他の疾患に対する癌処置において有用である。テモゾロミドはそのような抗新生物薬剤の1つである。特許文献1は、テモゾロミドを含む様々な抗新生物薬剤を記載しており、その開示は本明細書中で参考として援用される。
【0004】
テモゾロミドはその抗腫瘍効果のために知られている。例えば、ある研究は、進行した黒色腫を有する患者の17%において臨床的な応答が達成されたことを示した(非特許文献1)。別の研究では、進行した黒色腫を有する患者の21%において臨床的な応答が達成された(非特許文献2)。テモゾロミドによる成人における神経膠腫の処置も知られている(非特許文献3)。テモゾロミドによる成人における次の癌の処置もまた開示されている:転移性の黒色腫;悪性の黒色腫、高度の神経膠腫、グリア芽腫および他の脳癌;肺癌;乳癌;精巣癌;結腸および直腸の癌;腺癌;肉腫;リンパ腫;白血病;未分化星状細胞腫;ならびに菌状息肉腫。
【0005】
テモゾロミドは水不溶性化合物である。特許文献2で開示されているように、テモゾロミドは微細化された懸濁液として患者に投与されている。しかし、静脈の詰まりを導き得るため、懸濁液処方物は望ましくない。
【0006】
薬学的および生物学的薬剤、特に抗新生物薬剤を凍結した溶液として保存することは、その中の活性成分が急速に劣化する原因となり得る。
【0007】
フリーズドライとしても知られている凍結乾燥は、凍らせた後で組成物から水を昇華させる工程である。この工程において、水溶液中では一定期間をこえると相対的に不安定である薬学的および生物学的薬剤は、容易に処理される液体の状態で投薬用容器に入れられ、損傷を与える熱を使用することなく乾燥され、そして長期間乾燥した状態で保存され得る。抗新生物薬剤を含む、ほとんどの薬学的および生物学的薬剤は、凍結乾燥の間、活性成分を保護するために、さらなる成分を必要とする。さらに、凍結乾燥された抗新生物薬剤を水溶液に再構成することは困難で有り得る。
【0008】
したがって、テモゾロミドのような抗新生物薬剤を含む処方物であって、水溶性であり、凍結乾燥、長期の保存および凍結乾燥された処方物の水溶液への再構成に対して安定および/または適している処方物の大きな必要性がある。
【0009】
さらに、テモゾロミドのような抗新生物薬剤を水溶性で安定な処方物として患者に投与する大きな必要性がある。
【特許文献1】米国特許第6,096,759号明細書
【特許文献2】米国特許第6,251,886号明細書
【非特許文献1】Newlands ESら Br J Cancer(1992)65(2)287−2981
【非特許文献2】Journal of Clinical Oncology、(1995)13(4) 910−913
【非特許文献3】Eur.J.Cancer(1993)29A 940
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、少なくとも1つの抗新生物薬剤を含む薬学的処方物、その製造プロセス、この薬学的処方物の凍結乾燥プロセス、その凍結乾燥粉末およびその製品、少なくとも1つの水性希釈剤中に再構成された凍結乾燥粉末を含む薬学的処方物、ならびに必要とする動物に薬学的処方物を投与する工程を包含する疾患を処置または予防する工程に関する。
【0011】
本発明の1つの局面は、少なくとも1つの抗新生物薬剤またはその薬学的に受容可能な塩、少なくとも1つの水性希釈剤、およびこの抗新生物薬剤を溶解させるのに十分な少なくとも1つの溶解促進剤を含む薬学的処方物であって、この溶解促進剤が尿素、L−ヒスチジン、L−スレオニン、L−アスパラギン、L−セリン、L−グルタミン、またはそれらの混合物である薬学的処方物に関する。
【0012】
本発明の別の局面は、本発明の薬学的組成物を製造するプロセスに関する。本プロセスは、少なくとも1つの溶解促進剤を少なくとも1つの水性希釈剤に溶解させる工程、および少なくとも1つの抗新生物薬剤またはその薬学的に受容可能な塩を加える工程を包含する。
【0013】
本発明の別の局面は、本発明の薬学的処方物の凍結乾燥により製造された凍結乾燥粉末に関する。
【0014】
本発明の別の局面は、本発明の凍結乾燥粉末を含む容器を含む製品に関する。
【0015】
本発明の別の局面は、患者への投与に適切な薬学的処方物であって、本発明の凍結乾燥粉末をある容量の水または他の水性希釈剤に再構成(再溶解)させることにより処方物が調製される薬学的処方物に関する。
【0016】
本発明の別の局面は、必要としている患者に本発明の薬学的処方物の治療的有効量を投与する工程を包含する疾患を処置または予防するプロセスに関する。
【0017】
本発明の別の局面は、テモゾロミドの薬学的処方物、その製造プロセス、この処方物の凍結乾燥粉末およびその製品、水または他の水性希釈剤中で再構成された凍結乾燥粉末を含む薬学的処方物、ならびに必要としている患者にこの薬学的処方物を投与する工程を包含する、疾患(例えば、癌)を処置または予防するプロセスに関し、それを開示する。
したがって、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
少なくとも1つの抗新生物薬剤またはその薬学的に受容可能な塩、少なくとも1つの水性希釈剤、およびこの抗新生物薬剤を十分に溶解させるために十分な少なくとも1つの溶解促進剤を含む薬学的処方物であって、溶解促進剤が尿素、L−ヒスチジン、L−スレオニン、L−アスパラギン、L−セリン、L−グルタミン、またはそれらの混合物である、薬学的処方物。
(項目2)
項目1に記載の薬学的処方物であって、上記抗新生物薬剤が、テモゾロミド(Temozolomide)、ウラシルマスタード、クロロメチン(Chlormethine)、シクロホスファミド、イフォスファミド(Ifosfamide)、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスフォルアミン(Triethylenethiophosphoramine)、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、フルダラビンホスフェート(Fludarabine phosphate)、ペントスタチン(Pentostatine)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン(Epirubicin)、イダルビシン(Idarubicin)、パクリタキセル、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン−C、L−アスパラギナーゼ、インターフェロン、エトポシド、テニポシド(Teniposide)、17.α.−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、メゲストロールアセテート(Megestrolacetate)、タモキシフェン、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン(Hydroxyprogesterone)、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン(Toremifene)、ゴセレリン(Goserelin)、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、アムサクリン(Amsacrine)、プロカルバジン、ミトーテン、ミトザントロン、レバミゾール、ナベルベン(Navelbene)、アナストラゾール(Anastrazole)、レトラゾール(Letrazole)、カペシタビン(Capecitabine)、レロキサフィン(Reloxafine)、ドロロキサフィン(Droloxafine)、ヘキサメチルメラミン、またはそれらの混合物である、薬学的処方物。
(項目3)
上記抗新生物薬が、テモゾロミドである、項目2に記載の薬学的処方物。
(項目4)
ポリソルベート、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはそれらの混合物から選択された賦形剤をさらに含有する、項目1に記載の薬学的処方物。
(項目5)
上記賦形剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート80、またはそれらの混合物である、項目4に記載の薬学的処方物。
(項目6)
少なくとも1つの充填剤をさらに含有する、項目1に記載の薬学的処方物。
(項目7)
上記充填剤が、マンニトール、ラクト−ス、スクロース、塩化ナトリウム、トレハロース、デキストロース、デンプン、ヘタスターチ(hetastarch)、セルロース、シクロデキストリン、グリシン、またはそれらの混合物である、項目6に記載の薬学的処方物。
(項目8)
上記充填剤が、マンニトールである、項目7に記載の薬学的処方物。
(項目9)
少なくとも1つの緩衝剤をさらに含有する、項目1に記載の薬学的処方物。
(項目10)
項目9に記載の薬学的処方物であって、上記緩衝剤が、クエン酸リチウム一水和物、クエン酸ナトリウム一水和物、クエン酸カリウム一水和物、クエン酸カルシウム一水和物、クエン酸リチウム二水和物、クエン酸ナトリウム二水和物、クエン酸カリウム二水和物、クエン酸カルシウム二水和物、クエン酸リチウム三水和物、クエン酸ナトリウム三水和物、クエン酸カリウム三水和物、クエン酸カルシウム三水和物、クエン酸リチウム四水和物、クエン酸ナトリウム四水和物、クエン酸カリウム四水和物、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸リチウム五水和物、クエン酸ナトリウム五水和物、クエン酸カリウム五水和物、クエン酸カルシウム五水和物、クエン酸リチウム六水和物、クエン酸ナトリウム六水和物、クエン酸カリウム六水和物、クエン酸カルシウム六水和物、クエン酸リチウム七水和物、クエン酸ナトリウム七水和物、クエン酸カリウム七水和物、クエン酸カルシウム七水和物、乳酸リチウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、マレイン酸リチウム、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸カリウム、マレイン酸カルシウム、酒石酸リチウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カルシウム、コハク酸リチウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸カルシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、またはそれらの混合物である、薬学的処方物。
(項目11)
項目10に記載の薬学的処方物であって、上記緩衝剤が、クエン酸リチウム一水和物、クエン酸ナトリウム一水和物、クエン酸カリウム一水和物、クエン酸カルシウム一水和物、クエン酸リチウム二水和物、クエン酸ナトリウム二水和物、クエン酸カリウム二水和物、クエン酸カルシウム二水和物、クエン酸リチウム三水和物、クエン酸ナトリウム三水和物、クエン酸カリウム三水和物、クエン酸カルシウム三水和物、クエン酸リチウム四水和物、クエン酸ナトリウム四水和物、クエン酸カリウム四水和物、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸リチウム五水和物、クエン酸ナトリウム五水和物、クエン酸カリウム五水和物、クエン酸カルシウム五水和物、クエン酸リチウム六水和物、クエン酸ナトリウム六水和物、クエン酸カリウム六水和物、クエン酸カルシウム六水和物、クエン酸リチウム七水和物、クエン酸ナトリウム七水和物、クエン酸カリウム七水和物、クエン酸カルシウム七水和物、またはそれらの混合物である、薬学的処方物。
(項目12)
pH調整剤をさらに含有する、項目1に記載の薬学的処方物。
(項目13)
上記pH調整剤が、塩酸、水酸化ナトリウム、クエン酸、リン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、またはそれらの混合物である、項目12に記載の薬学的処方物。
(項目14)
上記pH調整剤が、塩酸である、項目13に記載の薬学的処方物。
(項目15)
上記処方物のpHが、約2.5〜約6.0の範囲である、項目1に記載の薬学的処方物。
(項目16)
上記処方物のpHが、約3.0〜約4.5の範囲である、項目15に記載の薬学的処方物。
(項目17)
上記処方物のpHが、約3.8〜約4.2である、項目16に記載の薬学的処方物。
(項目18)
上記水性希釈剤が、水、普通の生理食塩水、5%デキストロース溶液、またはそれらの混合物である、項目1に記載の薬学的処方物。
(項目19)
上記溶解促進剤が尿素であり、そして上記薬学的処方物が、塩酸、少なくとも1つのクエン酸緩衝剤およびマンニトールをさらに含有する、項目3に記載の薬学的処方物。
(項目20)
項目18に記載の薬学的処方物であって、上記抗新生物薬剤が、約1重量%〜約50重量%の範囲の量で存在し、上記塩酸が、約1重量%〜約20重量%の範囲の量で存在し、上記クエン酸緩衝剤が、約5重量%〜約60重量%の範囲の量で存在し、上記尿素が、約4重量%〜約60重量%の範囲の量で存在し、そして上記マンニトールが、約10重量%〜約85重量%の範囲の量で存在する、薬学的処方物。
(項目21)
上記溶解促進剤が、L−ヒスチジン、L−スレオニン、L−アスパラギン、L−セリン、L−グルタミン、またはそれらの混合物であり、そして上記薬学的処方物が、ポリソルベート、塩酸、少なくとも1つのクエン酸緩衝剤、マンニトール、および水をさらに含有する、項目3に記載の薬学的処方物。
(項目22)
項目21に記載の薬学的処方物であって、上記テモゾロミドが、約1重量%〜約50重量%の範囲の量で存在し、上記塩酸が、約1重量%〜約20重量%の範囲の量で存在し、上記クエン酸緩衝剤が、約5重量%〜約60重量%の範囲の量で存在し、上記ポリソルベートが、約1重量%〜約50重量%の範囲の量で存在し、上記L−ヒスチジン、L−スレオニン、L−アスパラギン、L−セリン、L−グルタミン、またはそれらの混合物が、約2重量%〜約60重量%の範囲の量で存在し、そして上記マンニトールが、約15重量%〜約85重量%の範囲の量で存在する、薬学的処方物。
(項目23)
薬学的処方物を製造するプロセスであって、以下の工程:
(i)少なくとも1つの水性希釈剤中に、少なくとも1つの溶解促進剤を溶解させる工程であって、この溶解促進剤が、尿素、L−ヒスチジン、L−スレオニン、L−アスパラギン、L−セリン、L−グルタミン、またはそれらの混合物である、工程;および
(ii)少なくとも1つの抗新生物薬剤もしくはその薬学的に受容可能な塩を加える工程、
を包含する、プロセス。
(項目24)
項目23に記載のプロセスであって、さらに以下:
a)少なくとも1つの充填剤を加える工程;
b)少なくとも1つの緩衝剤を加える工程;
c)少なくとも1つのpH調整剤を加えて、溶液を形成する工程;および
d)この溶液を濾過する工程、
を包含する、プロセス。
(項目25)
工程(d)からの上記溶液を凍結乾燥させて凍結乾燥粉末を形成する工程をさらに包含する、項目24に記載のプロセス。
(項目26)
項目25のプロセスによって製造された、凍結乾燥粉末。
(項目27)
項目26の凍結乾燥粉末を含む容器を備える、製品。
(項目28)
上記容器が注射器もしくはバイアルである、項目27に記載の製品。
(項目29)
上記凍結乾燥粉末を再構成するのに適した容量の、少なくとも1つの水性希釈剤をさらに含む、項目27に記載の製品。
(項目30)
患者への投与に適した薬学的処方物であって、ある容量の少なくとも1つの水性希釈剤中で項目26に記載の凍結乾燥粉末を再構成することによって調製される、処方物。
(項目31)
患者における疾患を処置もしくは予防するためのプロセスであって、このプロセスは、この疾患の処置もしくは予防を必要とする患者に、治療有効量の項目1に記載の薬学的処方物を投与する工程を包含する、プロセス。
(項目32)
上記疾患が、癌腫、肉腫、黒色腫、神経膠腫、神経膠芽細胞腫、脳癌、肺癌、甲状腺濾胞状癌、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、脊髄形成異常症、前立腺癌、精巣癌、未分化星状細胞腫、結腸および直腸の癌、リンパ腫、白血病、または菌状息肉腫である、項目31に記載の疾患を処置もしくは予防するためのプロセス。
(項目33)
上記患者が動物である、項目31に記載の疾患を処置もしくは予防するためのプロセス。
(項目34)
上記患者が哺乳動物である、項目31に記載の疾患を処置もしくは予防するためのプロセス。
(項目35)
上記患者がヒトである、項目31に記載の疾患を処置もしくは予防するためのプロセス。
(項目36)
患者における疾患を処置もしくは予防するためのプロセスであって、このプロセスは、この疾患の処置もしくは予防を必要とする患者に、治療有効量の項目30に記載の薬学的処方物を投与する工程を包含する、プロセス。
(項目37)
上記疾患が、癌腫、肉腫、黒色腫、神経膠腫、神経膠芽細胞腫、脳癌、肺癌、甲状腺濾胞状癌、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、脊髄形成異常症、前立腺癌、精巣癌、未分化星状細胞腫、結腸および直腸の癌、リンパ腫、白血病、または菌状息肉腫である、項目36に記載の疾患を処置もしくは予防するためのプロセス。
(項目38)
上記患者が動物である、項目36に記載の疾患を処置もしくは予防するためのプロセス。
(項目39)
上記患者が哺乳動物である、項目36に記載の疾患を処置もしくは予防するためのプロセス。
(項目40)
上記患者がヒトである、項目36に記載の疾患を処置もしくは予防するためのプロセス。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(詳細な説明)
本発明の薬学的処方物は、少なくとも1つの抗新生物薬剤またはその薬学的に受容可能な塩、少なくとも1つの水性希釈剤、および十分に抗新生物薬剤を水性希釈剤に溶解させるのに十分な少なくとも1つの溶解促進剤を含む。薬学的処方物中に溶解された抗新生物薬剤のパーセントは約50%〜約100%の範囲、好ましくは約75%〜約100%の範囲、更に好ましくは約100%であり得る。
【0019】
溶解促進剤は、尿素、L−ヒスチジン、L−スレオニン、L−アスパラギン、L−セリン、L−グルタミン、またはそれらの混合物である。溶解促進剤は、抗新生物薬剤が水性希釈剤に溶解する速度を増加させる。25mgバイアル中の少なくとも1つの水性希釈剤において、溶解剤の存在下で、少なくとも1つの抗新生物薬剤が完全に溶解するのに要する時間は約30秒〜約90秒の範囲、好ましくは約30秒〜約60秒の範囲、更に好ましくは約30秒であり得る。
【0020】
薬学的処方物中で溶解促進剤として尿素が使用される場合、薬学的処方物中のその重量パーセント(wt%)は約4wt%〜約60wt%の範囲、好ましくは約8wt%〜約30wt%の範囲、更に好ましくは約12wt%〜約22wt%の範囲であり得る。
【0021】
薬学的処方物中で、溶解促進剤としてL−ヒスチジン、L−スレオニン、L−アスパラギン、L−セリン、L−グルタミン、またはそれらの混合物が使用される場合、薬学的処方物中のそのwt%は約2wt%〜約60wt%の範囲、好ましくは約4wt%〜約40wt%の範囲、更に好ましくは約8wt%〜約20wt%の範囲であり得る。
【0022】
L−ヒスチジンが、薬学的処方物で溶解促進剤として使用される唯一のアミノ酸である場合、薬学的処方物中のその重量パーセントは好ましいのは約1wt%〜約30wt%の範囲、更に好ましくは約2wt%〜約20wt%の範囲、最も好ましくは約4wt〜約10wt%の範囲であり得る。
【0023】
有用な抗新生物薬剤の非限定的な例としては、テモゾロミド(Schering−Plough Corporation、Kenilworth、New Jerseyから商標TEMODAR(登録商標)で市販されている)、ウラシルマスタード、クロロメチン(Chlormethine)、シクロホスファミド、イフォスファミド(Ifosfamide)、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスフォルアミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、メトトレキサート、5−フルロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、フルダラビンホスフェート(Fludarabine phosphate)、ペントスタチン(Pentostatine)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン(Epirubicin)、イダルビシン(Idarubicin)、パクリタキセル、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、ミトマイシン−C、L−アスパラギナーゼ、インターフェロン、エトポシド、テニポシド(Teniposide)、17α−エチニルエストラジオール(17α−Ethinylestradiol)、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニソン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、タモキシフェン、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン(Hydroxyprogesterone)、アミノグルテチミド、エストラムスチン、メドロキシプロゲステロンアセテート(Medroxyprogesteroneacetate)、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン(Toremifene)、ゴセレリン(Goserelin)、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、アムサクリン(Amsacrine)、プロカルバジン、ミトーテン、ミトザントロン、レバミゾール、ナベルベン(Navelbene)、アナストラゾール(Anastrazole)、レトラゾール(Letrazole)、カペシタビン(Capecitabine)、レロキサフィン(Reloxafine)、ドロロキサフィン(Droloxafine)、ヘキサメチルメラミン、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0024】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの抗新生物薬剤はテモゾロミドである。
【0025】
別の好ましい実施形態において、抗新生物薬剤はテモゾロミドの治療的有効量である。
【0026】
薬学的処方物中の抗新生物薬剤のwt%は、約1wt%〜約50wt%の範囲、好ましくは約2wt%〜約30wt%の範囲、更に好ましくは約4wt%〜約16wt%の範囲であり得る。
【0027】
別の実施形態では、薬学的処方物は、少なくとも1つの賦形剤をさらに含む。適切な賦形剤の非限定的な例としては、ポリソルベート、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、ポリソルベートまたはそれらの適切な混合物が挙げられる。賦形剤は、抗新生物薬剤の可溶性を増加させるために使用される。
【0028】
ポリソルベートの平均分子量は約500g/mole〜約1900g/moleの範囲、好ましくは約800g/mole〜約1600g/moleの範囲、更に好ましくは約1000g/mole〜約1400g/moleの範囲であり得る。ポリソルベートの非限定的な例としては、ポリソルベート20、ポリソルベート21、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート61、ポリソルベート65、ポリソルベート81、ポリソルベート85、およびポリソルベート120が挙げられる。好ましいポリソルベートとしては、ポリソルベート20、ポリソルベート80、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0029】
PEGの平均分子量は、約200g/mole〜約600g/moleの範囲、好ましくは約200g/mole〜約500g/moleの範囲、更に好ましくは約200g/mole〜約400g/moleの範囲であり得る。PEGの非限定的な例としては、PEG200、PEG300、PEG400、PEG540、およびPEG600が挙げられる。
【0030】
プロピレングリコールは、約76.1g/moleの分子量を有する小さな分子である。
【0031】
賦形剤が薬学的処方物において使用される場合、薬学的処方物中におけるそのwt%は約1wt%〜約50wt%の範囲、好ましくは約2wt%〜約30wt%の範囲、更に好ましくは約4wt%〜約16wt%の範囲であり得る。
【0032】
別の実施形態では、薬学的処方物は、少なくとも1つ以上の充填剤をさらに含む。薬学的処方物中に含まれ得る適切な充填剤の非限定的な例としては、マンニトール、ラクト−ス、スクロース、塩化ナトリウム、トレハロース、デキストロース、デンプン、ハイドロキシエチルデンプン(ヘタスターチ)、セルロース、シクロデキストリン、グリシン、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0033】
好ましい実施形態では、薬学的処方物中の充填剤はマンニトールである。
【0034】
薬学的処方物中に充填剤が使用される場合、薬学的処方物中のそのwt%は約20wt%〜約80wt%、好ましくは約35wt%〜約65wt%、さらに好ましくは約40wt%〜約56wt%の範囲であり得る。
【0035】
別の実施形態では、薬学的処方物はさらに少なくとも1つの緩衝剤を含む。
【0036】
薬学的処方物中に含まれ得る適切な緩衝剤の非限定的な例としては、クエン酸緩衝剤、乳酸リチウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、マレイン酸リチウム、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸カリウム、マレイン酸カルシウム、酒石酸リチウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カルシウム、コハク酸リチウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸カルシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0037】
好ましくは、薬学的処方物に使用される緩衝剤が少なくとも1つのクエン酸緩衝剤である。適切なクエン酸緩衝剤の非限定的な例としては、クエン酸リチウム一水和物、クエン酸ナトリウム一水和物、クエン酸カリウム一水和物、クエン酸カルシウム一水和物、クエン酸リチウム二水和物、クエン酸ナトリウム二水和物、クエン酸カリウム二水和物、クエン酸カルシウム二水和物、クエン酸リチウム三水和物、クエン酸ナトリウム三水和物、クエン酸カリウム三水和物、クエン酸カルシウム三水和物、クエン酸リチウム四水和物、クエン酸ナトリウム四水和物、クエン酸カリウム四水和物、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸リチウム五水和物、クエン酸ナトリウム五水和物、クエン酸カリウム五水和物、クエン酸カルシウム五水和物、クエン酸リチウム六水和物、クエン酸ナトリウム六水和物、クエン酸カリウム六水和物、クエン酸カルシウム六水和物、クエン酸リチウム七水和物、クエン酸ナトリウム七水和物、クエン酸カリウム七水和物、またはクエン酸カルシウム七水和物が挙げられる。
【0038】
薬学的処方物に緩衝剤が使用される場合、薬学的処方物中のそのwt%は約5wt%〜約60wt%、好ましくは約10wt%〜約40wt%、更に好ましくは約15wt%〜約28wt%の範囲であり得る。
【0039】
他の実施形態において、薬学的処方物は更にpH調整剤を含む。薬学的処方物中に含まれ得る適切なpH調整剤の非限定的な例としては、塩酸、水酸化ナトリウム、クエン酸、リン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、またはその混合物が挙げられる。
【0040】
薬学的処方物にとって好ましいpH調整剤は塩酸である。
【0041】
pH調整剤が薬学的処方物に使用される場合、薬学的処方物中のそのwt%は約1wt%〜約20wt%、好ましくは約2wt%〜約12wt%、さらに好ましくは約4wt%〜約8wt%の範囲であり得る。
【0042】
薬学的処方物のpHは、好ましくは、約2.5〜約6.0、更に好ましくは約3.0〜約4.5、最も好ましくは約3.8〜約4.2の範囲である。
【0043】
薬学的処方物およびその凍結乾燥粉末は、プラスチック容器または標準的USP I型のホウケイ酸ガラス容器のようなガラス容器を含み得る、製薬業界で一般に使用されている容器中で保存され得る。例えば,使用される容器は注射器またはバイアルであり得る。
【0044】
本発明の別の局面は、本発明の薬学的処方物を製造するプロセスに関する。本プロセスは、少なくとも1つの水性希釈剤に少なくとも1つの溶解促進剤を溶解させる工程、少なくとも1つの抗新生物薬剤またはその薬学的に受容可能な塩を加える工程を、好ましくはこの順序で包含する。理想的な実施形態において、溶解促進剤が完全に溶解した後で抗新生物薬剤が加えられる。溶解促進剤は尿素、L−ヒスチジン、L−スレオニン、L−アスパラギン、L−セリン、L−グルタミン、またはその混合物であり得る。水性希釈剤の量が好ましくは少なくとも全容積の80%を構成する。
【0045】
別の実施形態では、プロセスはさらに溶液を形成するために、少なくとも1つの充填剤を加える工程;少なくとも1つの緩衝剤を加える工程;および少なくとも1つのpH調整剤を加える工程を包含し、その順序で行うことが好ましい。ならびに、その溶液を濾過する工程も包含する。
【0046】
別の実施形態では、プロセスはさらに濾過された溶液を凍結乾燥用容器に充填する工程、および凍結乾燥粉末を製造するために凍結乾燥用容器中に含まれる溶液を凍結乾燥する工程を包含する。本発明の目的のための「凍結乾燥粉末」は凍結乾燥されたケーキを含む全ての凍結乾燥された形態を含むことを意味する。
【0047】
凍結乾燥粉末の水分含量は約0.1%〜約3%、好ましくは約0.2%〜約0.8%、さらに好ましくは約0.2%〜約0.6%の範囲であり得る。水分含量は水分分析器によって測定され得る;多くの適切な水分分析器が市販されている。
【0048】
凍結乾燥とは、処方物を凍結させた後で、この処方物から水分を昇華させるプロセスである。この工程において、水溶液中で一定期間以上は相対的に不安定である薬学的および生物学的薬剤は容易に処理される液体の状態で投薬用容器に入れられ得、傷害を与える熱を使用することなく乾燥され得、そして乾燥した状態で長期間保存され得る。
【0049】
本発明の他の局面は、本発明の薬学的処方物の凍結乾燥により製造される凍結乾燥粉末に関する。
【0050】
本発明の他の局面は、本発明の薬学的処方物の凍結乾燥により製造された凍結乾燥粉末を含む容器を含む製品に関する。適切な容器は上で議論された。好ましい実施形態では、製品は凍結乾燥粉末中に治療的有効量の抗新生物薬剤を含む。
【0051】
別の実施形態では、製品は、更に凍結乾燥粉末を再構成するための少なくとも1つの希釈剤をある量で含む。再構成に要する時間は一般的に約30秒〜約60秒である。
【0052】
本発明の他の局面は、患者に投与するのに適した薬学的処方物に関し、該処方物は本発明の凍結乾燥粉末をある量の少なくとも1つの水性希釈剤中に再構成(再溶解)することによって調製される。
【0053】
薬学的処方物の凍結乾燥された処方物は投与する前に、最終濃度にするために適切な水性希釈剤によって希釈または再構成され得る。例えば,約0.5mg/ml〜約5mg/ml、好ましくは約1mg/ml〜約3mg/ml、およびさらに好ましくは約2mg/ml〜約3mg/mlの濃度が、テモゾロミドのような抗新生物薬剤を必要とする患者によって使用される輸液用バッグへの移転に適している。
【0054】
本発明の他の局面は、必要とする患者に治療的有効量の本発明の薬学的処方物を投与する工程を包含する、患者の疾患を処置または予防するプロセスに関する。本発明のこの局面での薬学的処方物とは水または他の水性希釈剤によって再構成された凍結乾燥粉末である処方物、あるいは凍結乾燥粉末を再構成することにより調製されたのではない処方物であり得る。処置または防止され得る疾患の非限定的な例としては、癌、肉腫、黒色腫、神経膠腫、グリオブラストーマ、脳癌、肺癌、甲状腺濾胞状癌、膵臓癌、乳癌、未分化星状細胞腫、膀胱癌、脊髄形成異常症、前立腺癌、精巣癌、結腸および直腸の癌、リンパ腫、白血病、または菌状息肉腫が挙げられる。
【0055】
本発明の薬学的処方物を使用した投薬による処置法は様々な因子への考慮に基づいて選択される。因子には、患者の種、年齢、体重、性別、および医学的状態;処置すべき特殊な疾患、処置すべき状態の重篤度;投与する経路;患者の腎臓および肝臓の機能;および使用される特定の活性成分またはその塩がある。通常の熟練した医者は疾患の状態を予防するか、逆らうか、または進行を止めるのに要する抗新生物薬剤の効果量を容易に決定し、処方し得る。例えば,成人に対するテモゾロミドの成人用投薬量は一般に体の表面積について約150mg/mである。
【0056】
本発明の薬学的処方物は、腺癌、肉腫、黒色腫、神経膠腫、グリオ芽腫、脳癌、肺癌、甲状腺小胞癌、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、脊髄形成異常症、未分化星状細胞種、前立腺癌、精巣癌、未分化星状細胞種、結腸および直腸の癌、リンパ腫、白血病、および菌状息肉腫のような疾患の1つ以上を処置または予防するために用いられ得る。
【0057】
薬学的処方物、その凍結乾燥粉末、および凍結乾燥粉末を少なくとも1つの水性希釈剤によって再構成することで形成された薬学的処方物は、増強された化学的安定性を与え得る。薬学的処方物の増強された化学的安定性とは、薬学的処方物が少なくとも60時間は室温(約25℃)および周辺光がある状態で溶液中で安定であることを意味する。凍結乾燥粉末の増強された化学的安定性とは、凍結乾燥粉末が好ましくは約12ヶ月かそれ以上、約4℃〜約40℃での保存に適していることを意味する。凍結乾燥粉末を水または他の水性希釈剤で再構成することにより形成される薬学的処方物の増強された化学的安定性とは、再構成された凍結乾燥粉末が約48時間かそれ以上、室温および周辺光がある状態で溶液中で安定であることを意味する。凍結乾燥粉末の安定性の1つの利点は延長された薬学的製品の有効期限である。延長された薬学的有効期限は重要な経済的利点を提供する。
【0058】
また他の実施形態では、本発明はテモゾロミドおよび少なくとも1つの水性希釈剤に実質的にテモゾロミドを溶解させるのに十分な少なくとも1つの溶解促進剤を含む安定な薬学的処方物について開示している。溶解促進剤は尿素、L−ヒスチジン、L−スレオニン、L−アスパラギン、L−セリン、L−グルタミン、またはそれらの混合物であり得る。テモドロミドを含む薬学的処方物は少なくとも1つの他の成分を含み得る。それは、例えば充填剤、緩衝剤またはpH調節剤のようなものであり、それらの性質および量については両方とも上で議論した。そのような薬学的処方物は前に議論したように安定性を有し得る。加えて、本発明はそのような安定な薬学的処方物を調製するプロセスも記述している。
【0059】
更なる実施形態では、テモゾロミドを含む上述の処方物は、凍結乾燥され凍結乾燥粉末にされ、先に議論したように処置の必要がある患者に投与するために、後で適当な時に水または他の希釈剤中で再構成されるのに適した状態で、適した容器またはそのような製品に保存され得る。凍結乾燥粉末は上で議論したように長期保存の安定性を有し得る。
【0060】
テモゾロミドを含む安定な薬学的処方物および凍結乾燥された形態は以下の実施例の節においてより詳細に記述される。
【0061】
従って、本発明は抗新生物薬剤を含む安定な水溶液が形成されることを可能にする点で有利である。他の利点には凍結乾燥され、水溶液であってそれを必要としている患者に投与されるのに適している溶液として再構成されるのに適した凍結乾燥粉末として保存される薬学的処方物の能力が含まれる。
【0062】
用語「無菌性の」とは、微生物の汚染を防止することを意味する。
【0063】
用語「水性希釈剤」とは、患者に注入するのに適した水性流体を意味する。水性希釈剤の非限定的な例としては、水、通常の食塩水、5%ブドウ糖溶液、および患者への注入に適した、好ましくは患者への静脈注入に適した他の流体が挙げられる。
【0064】
酸付加塩および第4級塩のアニオンを提供する塩として適切な薬学的に受容可能な塩として、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、マレイン酸、クエン酸、酢酸、酒石酸、コハク酸、シュウ酸、リンゴ酸、グルタミン酸、パーモイックなど、およびJournal of Pharmaceutical Science、66、2(1977)に記載されている薬学的に受容可能な塩に関する他の酸のような酸から調製されるものが挙げられる。
【0065】
用語「治療的有効量」とは、研究者または臨床医によって観察されている組織、系、または動物の生物学的応答または医学的応答を引き起こす活性成分の量を意味する。
【0066】
用語「延長された薬学的有効期間」とは、約12カ月〜約18カ月の薬学的製品の有効期間を意味することが意図され、推奨される保存条件で保存した場合、活性薬剤の10%より低い損失が存在する。本発明についての活性薬剤とは、抗新生物薬剤を意味することが意図される。
【0067】
用語「患者」とは、動物、哺乳動物、ヒト、サル、げっ歯類、家畜(domestic
and farm animals)を意味ことが意図される。
【0068】
用語「処置的有効量」とは、投与した者(例えば、研究者、医師、または獣医師)によって観察されている組織、系、動物、または哺乳動物に対する抗新生物効果を有する、テモゾロミドまたは上記の他の抗新生物薬剤のような組成物の処置的薬剤の量を意味することが意図される。ここで抗新生物効果とは、処置されている状態または疾患の症状の緩和および予防、新生物の状態の進行の遅延または停止を含む。
【0069】
用語「重量パーセント(wt%)」とは、本発明の目的では薬学的処方物の総重量に基づいて計算される。
【0070】
用語「テモゾロミド」とは、以下の式を有する化合物を意味することが意図される。
【0071】
【化1】

テモゾロミドの合成は周知である。例えば、本明細書中で参考文献として援用されるStevensら、J.Med.Chem、27、196−201(1984)およびWangら、J.Chem.Soc.、Chem.Commun.、1687−1688(1994)を参照のこと。
【実施例】
【0072】
以下の実施例は、技術者へのガイドとして以下に示されており、どのような場合も本発明の範囲を制限することを意味していない。
【0073】
(実施例1:)
本発明の薬学的処方物を、一般に以下の手順によって調製する:
1.少なくとも1つの水性希釈剤中に、充填剤であるポリソルベートおよび緩衝剤とともに尿素またはアミノ酸を充填し、そして溶解する。ここでアミノ酸は、L−ヒスチジン、L−スレオニン、L−アスパラギン、L−セリン、L−グルタミン、またはそれらの混合物である。
2.抗新生物薬剤を工程1の溶液に充填し、そして溶解する。抗新生物薬剤の溶解を、混合することで完了する。
3.水を、工程2の溶液に加え、バッチを所望の溶液濃度を有する容量にする。
4.工程3の溶液を、無菌的に濾過する。
【0074】
(実施例2:)
実施例2〜5のバッチA〜Dについて、充填されるテモゾロミドの実際の量を、薬物物質のバッチの純度に従って、次式を使用して調整する。
テモゾロミド(g)=2.50×100/純度(%)
(サンプルの計算:)
テモゾロミドの薬物物質=純度97.0%
1Lのバッチに充填されるテモゾロミドは、2.50×100/97.0 = 2.58gである。
**実施例2〜5のバッチA〜Dについて、充填される濃塩酸(HCl)(g)を次のように計算する。
濃HCl(g)=100×(必要とされるHCl(g))/濃HClの%w/w
(サンプルの計算)
濃HCl=38.0%w/w
濃塩酸は、100×1.48/38.0=3.895gである。
1LのバッチAを、以下に記述する手順によって調製した。
【0075】
【表1】

(凍結乾燥の前に、1LのバッチAを製造する工程)
1.L−スレオニン4.00g、ポリソルベート80 3.00g、マンニトール15g、クエン酸ナトリウム二水和物 5.88g、および塩酸 1.48gをこの順序で、攪拌しながら水に入れ、溶解させた。水の量は総容量(バッチの容量)の約80%であった。
2.テモゾロミド2.58gを、工程1の溶液に攪拌しながら充填し、溶解した。テモゾロミドの完全な溶解には2時間までの混合が必要であり得る。
3.**水を、このバッチが、25℃にて1.008±0.002g/mLの溶液濃度を有する最終容量になるように加えた。この溶液を、少なくとも15分間混合した。
4.洗浄し、その完全性について試験した、滅菌された0.22μmフィルター(Millipore、GVWP、Durapore)を通して、滅菌されたステンレス鋼製の圧力容器中またはそれと同等の物にこの溶液を無菌的に濾過した。10L以下のバッチにおいては、293mm膜フィルターまたはそれと同等の物を使用した。10Lより大きいバッチのサイズにおいては、0.22μmカートリッジフィルター(MCGL40S Millidisk、Durapore GVWP)を使用した。
【0076】
混合したバッチを、密閉され、滅菌されたステンレス鋼製の圧力容器中で8時間まで室温(19〜25℃)で保存し得、保存後に、再度濾過し得る。
5.工程4の溶液を、10.7±0.2mLのアリコートで、無菌的に20mLの1型フリントガラスバイアルに充填した。このバイアルを、充填前に洗浄し、滅菌した。
6.洗浄し、シリコン化し、そして滅菌した20mm Daikyo D−713 リオシェイプ(lyo−shape)ゴムストッパーを、凍結乾燥位置において、工程5のガラスバイアルに無菌的に挿入した。
【0077】
(実施例3:)
1LのバッチBを、工程1で4.00gのL−スレオニンのかわりに2gのL−ヒスチジンを使用し、1.48gの塩酸のかわりに2.08gの塩酸を使用したという点を除いて、上に記述した手順によって調製した。
【0078】
【表2】

(実施例4:)
1LのバッチCを、工程1で4.00gのL−スレオニンのかわりに4gのL−アスパラギンを使用したという点を除いて、上に記載した手順によって調製した。
【0079】
【表3】

(実施例5:)
1LのバッチDを、工程1で4.00gのL−スレオニンと3.00gのポリソルベート80のかわりに5gの尿素を使用したという点を除いて、上に記載した手順によって調製した。
【0080】
【表4】

バッチA〜Dの凍結乾燥後、得られた粉末を、1週間、4週間、8週間、および12週間の期間にわたって保存し、分析用水によってそれらのサンプルを再構成した。その結果を、以下の表1に示す。
【0081】
【表5】

これらの結果は、バッチA〜Dのテモゾロミドが1週間、4週間、8週間、および12週間にわたって安定であったことを示している。
【0082】
(実施例6:)
(凍結乾燥の手順)
バッチA〜Dのうちの1つの溶液を充填した、実施例2〜5の20mLガラスバイアルを、凍結乾燥の前にトレイに配置した。次いで、以下の手順で凍結乾燥を行った。FTSシステムによって製造されているリオスターリオフィライザーを凍結乾燥に使用した。
1.リオフィライザーの棚を−50±5℃に冷却した。
2.充填したバイアルのトレイを、無菌的にリオフィライザーの棚に載せた。
3.リオフィライザーの棚を4.5時間の間、約50±5℃の温度で保持した。
4.リオフィライザーの棚を1.5時間で約−22±2℃まで温め、その生成物を少なくとも6時間、約−22±2℃の温度で維持した。
5.棚を3時間で約−50℃まで冷却し、3時間の間、−50±5℃で保持した。
6.コンデンサーの温度を約−45℃以下に低下し、次いでチャンバーを、約100μmHgになるまで排気させた。
7.一旦チャンバーが約100μmHgの圧力に到達すると、完全な真空状態(50〜70μmHg)を適用し、約2時間の間、約−50±5℃の棚温度で保持した。
8.圧力を約150μmHgに変化させ、30分間の間保持した。
9.棚を1時間45分で約5℃まで加熱した。次いで、約6時間の間、約150μmHgの圧力下で、棚の温度を約5℃で維持した。
10.棚を約3時間で−2℃まで冷却し、32時間の間、約150μmHgの圧力下で、棚の温度を約−2±2℃で維持した。
11.棚を8時間で約45℃まで加熱し、約5時間の間、約150μmHgの圧力下で、約45±2℃の温度で維持した。次いで、その生成物の温度は−10℃より上に保った。12.棚を約150μmのチャンバーの圧力下で約4℃まで冷却し、最低約1時間、約4℃に維持した。
13.チャンバーを、滅菌濾過された窒素によって、約933mBarまでガス抜きした。
14.リオフィライザーの内側でバイアルに栓をした。
15.チャンバーを滅菌濾過された窒素によって、大気圧までガス抜きした。
16.バイアルをリオフィライザーから取り外し、20−mmアルミニウムシールで封をした。
17.検査が完了するまで、バイアルを約2℃〜約8℃で保存した。
【0083】
上記の実施形態に対して、その幅広い発明上の概念から離れることなく、変化(化学的変化、立体化学的変化を含む)がなされ得るということが、当業者によって理解される。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲によって規定されるように、本発明の精神および範囲中にある改変を包含することを意図することが、理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の薬学的処方物。

【公開番号】特開2008−31186(P2008−31186A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274513(P2007−274513)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【分割の表示】特願2003−570828(P2003−570828)の分割
【原出願日】平成15年2月20日(2003.2.20)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】