説明

抗毒性材料層でエラストマー材料をコーティングする方法

本発明は、抗毒剤を含有するエラストマーポリマーコーティングの薄層でコーティングされるエラストマー製品に関し、特に、デマンド型ヨウ素化樹脂殺菌剤に関する。抗菌性コーティングを適用したカテーテルは、液体のエラストマーポリマー溶液に抗毒剤を加え、次いで、浸漬または噴霧の処理を通してエラストマー製品表面をコーティングすることにより調製される。抗菌性コーティングは手袋およびカテーテル等の様々な異なるエラストマー製品に適用することができ、微生物および他の汚染物質から高度に保護することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年4月22日に出願された米国特許仮出願第61/214,312号の優先権およびその利益を主張し、参照によってその全体を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
エラストマー材料は、多くのヘルスケアおよび医薬の用途において非常に価値があると判明した。数種のエラストマーポリマーはそのような用途にとって理想的な特性を有する。例えば、ラテックスは、柔軟、高引張強さおよび優れたフィルムを形成する特性を兼ね備えている。また、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ニトリルゴム、ネオプレンおよびスチレンブロックコポリマーには有用な特性がある。エラストマーの選択は、所望の用途、ならびに製造コストを含む他の要因に依存する。
【0003】
エラストマーの使い捨て手袋はヘルスケアに関連する多くの用途で使用される。これらの手袋は有害な微生物または汚染された生体液を含む汚染物質から着用者を保護するために使用される。使い捨て手袋は、天然ゴムラテックス、ニトリルゴム、PVCまたはポリウレタンから通常作られる。市販の使い捨ての手袋に関する重要な1つの問題は、多くの場合使用中に露出面に接して、潜在的に表面が汚染されるということである。これは特に、医者または歯科医によって使用される手袋が危険な微生物に露出される、手術、診察及び歯科的処置において問題である。表面の汚染に加えて、他の患者との相互汚染、および手袋を着用している医者または歯科医の汚染の可能性がある。
【0004】
手袋が感染性の病原体または他の危険な汚染物質と接触するような環境の中で使用される場合、抗菌材料を含むコーティングを追加することは感染性の病原体への曝露のリスクを減らす。しかし、そのような抗菌コーティングを適用した手袋の開発は困難である。特に微生物の効率的な殺滅を可能にするほど高い濃度の場合、エラストマー対象上をコーティングした抗菌剤は手袋の表面からはがれ落ちる傾向がある。さらに、抗菌剤の存在は手袋を使用不可能にする場合がある。例えば、コーティングは、手袋の耐久性または伸縮性を損なう場合がある。
【0005】
エラストマーの手袋に加えて、避妊用具(例えばコンドーム)およびカテーテル等の他のエラストマー材料も抗菌コーティングの利益を享受する。呼吸器カテーテル、静脈および/または動脈カテーテルおよび泌尿器カテーテルの広く普及した使用は、カテーテル表面への病原体の付着およびコロニー形成に起因する危険な感染病をもたらした。さらに、コロニーが形成されたカテーテルは、抵抗菌の蓄積を生じる場合がある。カテーテルに関連する尿路感染症は現在最も一般的なタイプの院内感染である。また、カテーテル関連の血流感染および呼吸器感染は非常に一般的で、多くの場合病的状態をもたらす。現在市販の抗菌カテーテルは危険な微生物からある程度保護することが示された。これらのカテーテルは、イオンの銀、クロルヘキシジンおよび抗生物質等の様々活性剤を使用する。しかし、市販の抗菌カテーテルは活用範囲が狭く、望ましくない副作用をもたらす可能性を含む相当な欠点がある。さらに、これらの活性剤に対する菌耐性の発生は非常に一般的であり、活性剤の効果をなくしてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,639,452号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Jansen B. et al. ”In- vitro efficacy of a central venous catheter complexed with iodine to prevent bacterial colonization” Journal of Antimicrobial Chemotherapy, 30:135-139, 1992
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、多くの微生物に対して有効で、無毒でかつ安価に製造できる、手袋およびカテーテル等の新しい抗菌製品を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
抗菌剤でコーティングされた手袋およびカテーテルを製造する新しい方法が、本明細書に記載される。この方法はエラストマーマトリックス内に安定して分散した抗菌剤を含む薄層でエラストマーの手袋またはカテーテルをコーティングするステップを含む。好ましい実施形態において、抗菌剤はデマンド型ヨウ素化樹脂殺菌剤である。
【0010】
コーティング工程は熱の適用なしに(または最小の適用で)行われ、それによって抗菌剤の非活性化を回避し、しかも手袋またはカテーテルへのコーティングの安定した付着を達成する。さらに、抗菌剤としてヨウ素化樹脂を含む非常に薄いコーティングが、製品の性能特性(例えば可撓性と強さ)に悪影響を与えずに、優れた抗菌特性を達成するのに十分であることが判明している。エラストマーの手袋またはカテーテルは、エラストマーコーティングと同じまたは異なるエラストマーから作られてもよい(例えば、この製品および/またはコーティングは、各々または別個にラテックス、ニトリルゴム、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ネオプレン、スチレン、シリコーン、スチレンブロックコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))、ナイロン等を含んでよい)。いくつかの実施形態において、製品基材およびコーティングは、好都合に同じエラストマーからできている。ヨウ素化樹脂は、手袋またはカテーテルが接触する危険な微生物が、接触されたあらゆる表面または液体へ広がることを予防するか非常に抑制する抗菌剤として役立つ。
【0011】
本発明は、抗毒剤、特に、デマンド型ヨウ素化樹脂殺菌剤を含有するエラストマーポリマーコーティングの薄層でコーティングされるエラストマー製品に関する。抗菌性コーティングを適用したカテーテルは、液体のエラストマーポリマー溶液に抗毒剤を加え、次いで、浸漬または噴霧の処理を通してエラストマー製品表面をコーティングすることにより調製される。抗菌性コーティングは、手袋、カテーテル、避妊用具およびエラストマーフィルム等の様々な異なるエラストマー製品に適用することができ、微生物および他の汚染物質から高度に保護することができる。
【0012】
一実施態様において、本発明は強化された抗菌特性を備えたエラストマー製品に関し、この製品は、エラストマー材料を含む基材と、エラストマーマトリックス内に安定して分散したヨウ素化樹脂粒子を含む、基材上に適用されたコーティングとを含む。いくつかの実施形態において、コーティングのエラストマーマトリックスは天然ラテックス、合成ラテックス、ニトリルゴム(ニトリルブタジエンゴム、NBR)および/またはポリウレタンを含む。ある実施形態において、製品は手袋、カテーテルまたは避妊用具(例えばコンドーム)である。
【0013】
いくつかの実施形態において、コーティングおよび/または基材はラテックスを含む。コーティングは、例えば、好都合に5μm〜250μm、20μm〜100μm、50μm〜80μm、または65μm〜75μmの範囲の厚さを有していてもよく、コーティングがラテックスを含む場合には、これは特に有利であり得る。製品は、例えば、好都合に、1g/m2〜50g/m2、2g/m2〜20g/m2、3g/m2〜10g/m2、または5g/m2〜7g/m2の範囲の表面ヨウ素化樹脂濃度を有していてもよく、コーティングがラテックスを含む場合には、これは特に有利であり得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、コーティングおよび/または基材はニトリルゴムを含む。例えば、コーティングは、好都合に、5μm〜80μm、10μm〜80μm、15μm〜50μm、または20μm〜30μmの範囲の厚さを有していてもよく、コーティングがニトリルゴムを含む場合には、これは特に有利であり得る。製品は、例えば、好都合に、1g/m2〜50g/m2、2g/m2〜10g/m2、2g/m2〜6g/m2、または3g/m2〜4g/m2の範囲の表面ヨウ素化樹脂濃度を有していてもよく、コーティングがニトリルゴムを含む場合には、これは特に有利であり得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、好都合に、ヨウ素化樹脂粒子は1μm〜20μmの範囲、または4μm〜10μmの範囲内の平均サイズを有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、コーティングはシリコーン、ポリ塩化ビニル、ネオプレン、スチレン、スチレンブロックコポリマー、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))および/またはナイロンを含む。
【0017】
別の態様において、本発明は、強化された抗菌特性を備えたコーティングされた製品を調製する方法に関し、この方法は、(a)エラストマー材料を含む、製品の基材形態を提供するステップと、(b)任意に、基材に溶剤を適用して基材の既存のコーティングを取り除き、かつ/または、二次処理のために表面を下処理するステップと、(c)液体のエラストマーマトリックス内に安定して分散された、ヨウ素化樹脂粒子を含むコーティング混合物を調製するステップと、(d)基材にコーティング混合物を適用し、コーティング混合物を乾燥させるステップであって、全て、コーティング混合物を加熱しないかまたはコーティングを約20分間以下、約160℃未満の温度で加熱するステップとを含む。いくつかの実施形態において、コーティングは、150℃、130℃、100℃または90℃超に加熱されない。いくつかの実施形態において、コーティングは15分、10分または5分超加熱されない。いくつかの実施形態において、コーティングされた製品は、手袋、カテーテルまたは避妊用具(例えばコンドーム)である。
【0018】
いくつかの実施形態において、ステップ(d)は基材上にコーティング混合物を噴霧するステップを含む。いくつかの実施形態において、ステップ(d)は基材をコーティング混合物に浸漬するステップを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、基材がニトリルゴムを含む場合には、コーティング混合物はニトリルゴムを含む。コーティングは10μm〜80μmの範囲の厚さを有する。ヨウ素化樹脂粒子は、4μm〜20μmの範囲内の平均サイズを有する。コーティングは、2重量%〜25重量%の範囲のヨウ素化樹脂濃度を有する。いくつかの実施形態において、基材がラテックスを含む場合には、コーティング混合物はラテックスを含む。コーティングは20μm〜100μmの範囲の厚さを有する。ヨウ素化樹脂粒子は、4μm〜20μmの範囲内の平均サイズを有する。コーティングは、2重量%〜25重量%の範囲のヨウ素化樹脂濃度を有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、コーティング混合物中のヨウ素化樹脂粒子の濃度は、2重量%〜25重量%の範囲、5重量%〜15重量%の範囲、または7重量%〜13重量%の範囲である。
【0021】
別の態様において、本発明は、抗菌特性が強化された、エラストマーマトリックス内に安定して分散したヨウ素化樹脂粒子を含むエラストマーフィルムに関する。エラストマーマトリックスは天然ラテックス、合成ラテックス、ニトリルゴム、ポリウレタン、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ネオプレン、スチレン、スチレンブロックコポリマー、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンおよび/またはナイロンを含んでもよい。フィルムは、好都合に5μm〜250μm、20μm〜100μm、または50μm〜80μmの範囲の厚さを有していてもよい。ヨウ素化樹脂粒子は1μm〜20μm、または4μm〜10μmの範囲内の平均サイズを有していてもよい。フィルム中のヨウ素化樹脂粒子の濃度は、2重量%〜25重量%、または5重量%〜15重量%の範囲であってもよい。
【0022】
さらに別の態様において、本発明は、ヨウ素化樹脂微粒子含有のエラストマーポリマーの薄層でコーティングされるエラストマーポリマーから作られた医療用手袋またはカテーテルに関する。コーティングは、幅広い殺生剤および他の汚染物質から顕著に保護する。
【0023】
本発明の別の態様は、ラテックス、ニトリルゴムおよびポリウレタンからなる群から選択されるエラストマーポリマーと、エラストマーポリマーに組み入れられた複数のヨウ素化樹脂粒子とを含むエラストマー製品のための抗菌コーティングに関し、コーティングの厚さは、約20μm〜約100μmの範囲である。
【0024】
さらに別の態様において、本発明は、抗毒剤を含むエラストマーポリマーの薄層でコーティングされた、手袋および/またはカテーテルを製造する新しい方法を提供する。この方法は、手袋またはカテーテルと同じタイプまたは異なるタイプのエラストマーポリマー溶液内に安定して分散したデマンド型ウ素化樹脂殺菌剤を含むコーティング液で、エラストマーポリマー(例えばラテックスまたはニトリルゴム)から作られた手袋またはカテーテルをコーティングするステップを含む。
【0025】
本発明の所与の態様に関して記述された実施形態の要素は、本発明の別の態様の様々な実施形態の中で使用されてもよい(例えば、従属クレームの内容は1つを超える独立クレームに適用されてもよい)。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】液体ラテックス/ヨウ素化樹脂をコーティングした本発明のラテックスエラストマーの、チャレンジ微生物である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対する生物学上の性能を示すグラフである。
【図2】液体ラテックス/ヨウ素化樹脂をコーティングした本発明のラテックスエラストマーの、チャレンジ微生物であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus、MRSA)に対する生物学上の性能を示すグラフである。
【図3】液体ラテックス/ヨウ素化樹脂をコーティングしたラテックスエラストマーの、緑膿菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌およびインフルエンザA型(Influenza A)(H1N1)を含む様々なチャレンジ微生物に対する生物学上の性能を示すグラフである。
【図4】液体ラテックス/ヨウ素化樹脂をコーティングした本発明のラテックスエラストマーの、チャレンジ微生物である緑膿菌に対する生物学的な性能を示すグラフである。
【図5】先行技術の抗菌カテーテルと比較した、本発明の抗菌コーティングを適用したカテーテルの生物学上の性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下のセクションは、本発明の代表的な実施形態について記述する。本明細書における本発明の記載された実施形態は、例示のためにのみ示されたものであり、単に実例であって、限定を意図しないことが当業者に明白である。
【0028】
説明全体にわたって、項目が1つまたは複数の特定成分が有する、含有する、含むと記載された場合、またはプロセスと方法が特定の1ステップまたは複数のステップを有する、含有する、含むと記載された場合、本発明の項目はさらに、1つまたは複数の列挙された構成要素から実質的に構成されるか、または1つまたは複数の列挙された構成要素のみから構成される項目があり、本発明によるプロセスおよび方法は、1つまたは複数の列挙された処理ステップから実質的に構成されるか、または1つまたは複数の列挙された処理ステップから構成される項目があると考えられる。
【0029】
本発明が依然として実施可能である限りは、ステップの順序またはある行動を行うための順序が重要でないことを理解されたい。さらに、2つ以上のステップまたは行動が同時に行われてもよい。本明細書において開示された、システム、プロセス、ユニットおよび/または方法のスケールアップおよび/またはスケールダウンは、当業者によって実行され得る。本明細書において記述されたプロセスは、バッチ操作、連続操作または半連続操作を構成する。
【0030】
本発明は、一般に、抗毒性材料が取り入れられたエラストマー材料の層でコーティングされた医療用手袋、カテーテル、避妊用具およびエラストマーフィルム等のエラストマー製品に関し、かつその製造方法に関する。抗毒剤は、好ましくは、抗菌剤、抗ウイルス剤、バイオ化学薬剤または還元剤である。活性剤は、好ましくは、種々の配列の微生物および他の病原体および環境毒素に毒作用を及ぼす一方、ユーザには有毒でない。抗毒剤は、好ましくは、ヨウ素化樹脂粒子を含む。ヨウ素化樹脂に加えて、また他の実施形態においてはヨウ素化樹脂の代わりに使用されてもよい他の活性剤としては、トリクロサン、二原子のハロゲン、銀、銅、抗菌剤が付加されたゼオライト、ハロゲン化樹脂、例えば、活性炭、他の金属および他の化合物を含む微生物/毒素の活力を奪うかまたは非活性化が可能な当技術分野で知られている作用物質があるが、これらに限定されない。抗毒剤の目的は、ヘルスケアおよび非ヘルスケア環境の両方において、感染性の病原体への曝露のリスクを減らす一方で、エラストマー物への強化されたバリア保護を提供することである。
【0031】
デマンド型ヨウ素/樹脂消毒剤は当技術分野で知られている。例えば、全内容が参照によって本明細書に援用される、Messierによる米国特許第5,639,452号(以下「'452特許」と略す)は、陰イオン交換樹脂からヨウ素デマンド型消毒剤樹脂を調製する過程を記載している。'452特許に記載のデマンド型消毒剤ヨウ素化樹脂は、粉砕して粉末状にしてもよい。1つの好ましいデマンド型消毒剤ヨウ素化樹脂は、Triosyn Corporation of Vermont, USAの1部門であるTriosyn Research Inc.によって製造されたTriosyn(登録商標)ブランドのヨウ素化樹脂粉末である。粉末の粒径は約1マイクロメートル〜約150マイクロメートルの範囲である。好ましくは、粒径は約4マイクロメートル〜約10マイクロメートルの範囲である。
【0032】
本発明に従って使用されるTriosyn(登録商標)ヨウ素化樹脂粉末は、Triosyn(登録商標)T-50ヨウ素化樹脂粉末、Triosyn(登録商標)T-45ヨウ素化樹脂粉末、Triosyn(登録商標)T-40ヨウ素化樹脂粉末またはTriosyn(登録商標)T-35ヨウ素化樹脂粉末を表す。そのようなヨウ素化樹脂を製造するために使用されるベースポリマーはAmberlite(登録商標)402 OH(Rohm&Haas)である。これらの樹脂剤は第四級アンモニウム交換基を含んでおり、スチレンジビニルベンゼンポリマー鎖に結合される。他のベースポリマーを使用してもよい。数は、樹脂に対するヨウ素のおよその重量割合を表す。ヨウ素の他の重量割合を有する粉末も本発明で使用してよい。ヨウ素化樹脂粉末中のヨウ素の異なる割合は、特に、異なるレベルの殺菌活動において粉末に異なる特性を与える。使用される特定の樹脂は、所望の用途に基づく。他の起源からのヨウ素化樹脂も使用できることに注目することは重要である。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、Triosyn(登録商標)ヨウ素化樹脂粉末は、液状ポリマーへ粉末を組み込むのに十分な時間、液体ラテックス、液状ニトリルゴムまたは液体のポリウレタン等の液体エラストマーポリマーと混合される。液体エラストマーポリマー中のTriosyn(登録商標)ヨウ素化樹脂粉末の濃度は、約2重量%〜約25重量%の間で変動してもよく、好ましくは約10重量%〜約15重量%の範囲である。完全に組み込まれた時、結果として生じた溶液は、エラストマー材料の表面上に噴霧することができる。あるいは、エラストマーコーティングはエラストマー材料を液状ポリマー溶液に浸漬することにより適用されてもよい。乾燥後、エラストマー材料は、組み込まれたTriosyn(登録商標)ヨウ素化樹脂粉末を備えたエラストマーポリマーの均質なコーティングを含む。
【0034】
本発明の一実施形態において、前段に述べられていた方法は、エラストマーの手袋のコーティングに適用される。下地となるコーティングされる手袋は任意の適切なエラストマー材料から作られてもよい。好ましくは、手袋は合成か天然ラテックスから作られる。手袋は、ニトリルゴム、ネオプレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルまたはスチレンブロックコポリマー等の他のエラストマーのポリマーから作られてもよいが、これらに限定されない。下地となる手袋は当該技術において公知の従来の方法から作られてもよい。例えば、下地となる手袋は、液体ラテックス溶液中へ凝固剤を手でコーティングした形で浸すことにより形成されてもよい。結果として生じたラテックス手袋は、溶液から取り出され、乾燥され、加硫化される。様々な厚さを得るのにこのプロセスが適応できることに注目することは重要である。あるいは、コーティングされる下地の手袋は任意の市販のエラストマーの手袋でもよい。この場合、そのようなコーティングが下地のエラストマー表面への抗菌のコーティングの付着を減少させ得るので、手袋上のいかなる先在するコーティングも取り除くことが一般に好ましい。
【0035】
本発明に従って作製された抗菌性コーティングは、噴霧または浸漬処理により手袋に適用することができ、下地のエラストマー手袋表面への抗菌性コーティングの付着をもたらす。下地となる製品基材はコーティングと同じエラストマー材料を含んでもよい。あるいは、製品基材はコーティングとは異なっているエラストマー材料で作られていてもよい。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、抗菌コーティングは、液体ラテックスに組み入れられた、Triosyn(登録商標)ヨウ素化樹脂粉末を含む。しかし、液状ニトリルゴムまたは液体ポリウレタン等の液体ラテックスの代わりに他の液体エラストマー材料が、使用されてもよい。下記の実施例で検討されるように、Triosyn(登録商標)ヨウ素化樹脂粉末はエラストマーマトリックス内に完全に分散するまで撹拌することにより液体エラストマーポリマーへ組み込まれる。Triosyn(登録商標)ヨウ素化樹脂粉末は、1〜20μmの範囲の、好ましくは4〜10μmの範囲の平均粒子サイズを有してよい。次いで、抗菌溶液は下地のエラストマーに噴霧され、乾燥されてもよい。あるいは、下地エラストマー材料は抗菌溶液に浸漬され、次いで、乾燥されてもよい。両方の技術は、Triosyn(登録商標)ヨウ素化樹脂粉末がエラストマーのマトリックス内に埋め込まれている、薄いエラストマーコーティング(例えばラテックスコーティング)を備えた製品を生成する。ヨウ素化樹脂は、エラストマーコーティングの間隙孔に組み込まれてもよいし、かつ/または化学的にそれに接着されてもよい。
【0037】
抗菌性ヨウ素化樹脂含有の液体ラテックスコーティングは、5μm〜250μmの範囲、好ましくは20μm〜100μmの範囲、より好ましくは50μm〜80μmの範囲および最も好ましくは65μm〜75μmの範囲の厚さを好ましくは有する。ラテックスコーティングの適用による手袋の重量パーセント増加は、約10%〜約70%の範囲である。好ましい実施形態において、コーティングのヨウ素化樹脂濃度は、約1g/m2〜約50g/m2の範囲、好ましくは約3g/m2〜約10g/m2、最も好ましくは約5g/m2〜約7g/m2の範囲内で選択される。液状ニトリルゴムコーティング含有の抗菌性ヨウ素化樹脂は、10μm〜150μmの範囲、より好ましくは15μm〜50μmの範囲、最も好ましくは20μm〜30μmの範囲の厚さを有する。コーティングの適用による手袋の重量パーセント増加は、約10%〜約70%の範囲である。ニトリルコーティングのヨウ素化樹脂濃度は、約2g/m2〜約6g/m2、および好ましくは約3g/m2〜約4g/m2の範囲である。
【0038】
一般に、下地のエラストマー材料へのコーティングの強い付着を確保するために、コーティングされた材料は噴霧か浸漬処置に続いて加熱される。しかし、抗菌剤の存在下で、そのような加熱は、抗菌剤の浸出および/または抗菌剤の劣化をもたらす場合がある。本発明者らは、抗菌の/液体のラテックス溶液が下地のラテックス手袋上に噴霧される場合、結果として生ずる抗菌コーティングを適用した手袋を室温で乾燥することができ、さらに、下地ラテックス表面に非常に強く付着することができることを発見した。2つのラテックス層間の強い付着は恐らく層間の強い分子間相互作用の結果である。プロセスの結果、Triosyn(登録商標)ヨウ素化樹脂粉末は長期間安定性を有しており、認め得るほどは浸出せず化学的に劣化しない。
【0039】
本発明の別の実施形態において、わずかな加熱が下地のエラストマー表面とエラストマーコーティングとの間の付着を保証するために適用されてもよい。例えば、エラストマーコーティングおよび下地のエラストマー材料が異なる材料で作られている場合、加熱は層間の強い結合を確保するために必要とされ得る。
【0040】
前段に述べられていた方法は、下地のラテックス材料へのコーティングの非常に強い付着を可能にする。したがって、手袋は単一の連続層で外観を構成してもよい。抗菌のコート層が比較的薄いので、コーティングは手袋の伸縮性や耐久性を損なわない。さらに、結果として生ずる抗菌手袋はその触覚の感触を保持し、優れた把持特性がある。
【0041】
本発明の別の実施形態において、ヨウ素化樹脂粉末含有抗菌溶液は、カテーテル表面に適用することができる。コーティングされる下地カテーテル表面は、ラテックス、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、Teflon(登録商標)、ナイロンまたはその混合物で好ましくは構成される。手袋の実施形態と同様に、液状ポリマーのヨウ素化樹脂溶液は下地カテーテル表面上に噴霧される。あるいは、カテーテルは、液状ポリマーにヨウ素化樹脂を含有する抗菌溶液に浸漬することができる。好ましいコーティングはラテックスとニトリルゴムを含む。ヨウ素化樹脂の厚さおよび濃度を含むコーティングの特性は、エラストマー手袋について上述されたものと同様である。上述されたコーティング付きの手袋のように、下地のカテーテルは、コーティングに使用したポリマー材料と同じでも異なる材料でも構成されてもよい。本発明の抗菌カテーテルは、ヨウ素化樹脂の追加の抗菌の特性によりカテーテル表面上の病原体の付着およびコロニー形成を防ぐ。したがって、本発明のカテーテルは、意図した使用のためのカテーテルの性能を損なわずに、カテーテルに関連する尿路、呼吸器および血液循環の感染症の発生を著しく減じる。
【0042】
背景技術のセクションで検討されたように、抗菌剤がコーティングされたエラストマーの手袋およびカテーテルが多くの場合直面する特別の問題は、殺菌性材料がエラストマー製品の表面から浸出する場合があることである。したがって、抗菌の効能は経時的に著しく減少する。さらに、特にエラストマー製品が医学または歯科用途で使用される場合、そのような浸出は著しい問題を引き起こす場合がある。本発明の重要な利点は、コーティングに組み入れられた、ヨウ素化樹脂粉末が手袋表面からはがれ落ちる傾向がないということである。例えば、Triosyn(登録商標)ヨウ素化樹脂粉末は、水、70%のアルコールゲルまたは白いセルロース紙への曝露後の浸出が観察されなかった。
【0043】
本発明の別の重要な利点は、広範囲の病原体に重要な毒作用を及ぼすために適用されることが必要な抗菌剤が比較的少量でよい点である。抗菌剤が下地のエラストマー材料へ直接組み込まれる先行技術中の方法と異なり、本発明は比較的薄い外側被覆層へのみ抗菌剤を組み込むステップを含む。よって、毒作用を及ぼすために必要とされる抗菌剤の量は著しく減少する。明らかに、この方法は、コストと製造の両方の観点から有利である。
【0044】
効力に関して、本発明のエラストマー材料はいくつかのチャレンジ有機体上で試験されており、著しい活性を示す(下記の結果セクションを参照)。例えば、本発明の抗菌のコーティングを適用したエラストマー材料は、グラム陽性およびグラム陰性の(緑膿菌)に対して、たった2分の接触曝露時間で99.9999%を超える減少を示す。Triosyn(登録商標)ヨウ素化樹脂粉末で得られた結果は一貫して用量依存的な抗菌作用を示唆する。
【0045】
抗菌のコーティングを適用した手袋およびカテーテルを生産することについて上述された方法は、避妊用具、ステントおよび管材料等の多数の他の物品をコーティングするのに用いられてもよい。
【0046】
以下の実施例は、本発明の種々の態様および実施形態を示す。それらはいかなる方法でも請求項を限定するように解釈されるべきではない。
手袋をコーティングする方法
(コーティングする手袋の準備)
1) セラミック型を準備し、ラテックス溶液がその上に直接噴霧されるのを防ぐためにペーパータオル(または他の材料)で型の底部を包む。
2) 粉末フリーで塩素殺菌された市販のラテックス手袋をセラミック型上に置く。
3) トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、または別のタイプの有機溶媒をペーパータオル(または他の材料)上に噴霧し、手袋、特に指と指の間を注意深く拭き、いかなる既存のコーティングも手袋から取り除く。これにより、手袋基材上に新しいラテックスコーティングの付着を増加させる。
4) 室温で換気フードにおいて手袋表面のトルエンを蒸発させる。
(コーティング処方の調製)
1) プラスチック上皿天秤で、注意深く所望の濃度および特定の全溶液サイズに必要とされる適正量、3μmのTriosyn(登録商標)T50粉末を量る。例えば、10μmのTriosyn(登録商標)粒子も使用し得る。
i. 例えば、紫のラテックス中に15%w/wのTriosyn(登録商標)T50含有のラテックス溶液75gとして、11.25gの粉末を量らなければならない。
2) ステンレス鋼コンテナーにおいて、撹拌棒を加えて、任意の色の液体のラテックスの適正量を注意深く量る。
i. 例えば、15%w/wのTriosyn(登録商標)T-50粉末を含有する全溶液サイズ75gとして、63.75gのラテックスを量らなければならない。
3) 撹拌プレートに液体ラテックスを入れたステンレス鋼コンテナーを置き、中央で良好な渦を見ることができるまで、ラテックスを撹拌し始める(600rpm-中速)。
4) 溶液が中央で良好な渦を常に有することを確かめながら、液体ラテックスへTriosyn(登録商標)ヨウ素化樹脂粉末をゆっくり入れ始める。撹拌の毎分回転数がおよそ1000〜1100rpmに達するまで、徐々に増加する。
5) Triosyn(登録商標)ヨウ素化樹脂粉末の全量が加えられたとき、溶液を1000〜1100rpmで10分間撹拌する。
(手袋にコーティングを噴霧すること)
1) 既に清浄にしたスプレーガンのノズルを準備し、気圧を約75psiにセットし、確実に一様なコーティングを行う。
2) スプレーガンの良好な作動状態を確保するために、水で満たされたビーカーにフィードチューブを浸漬し、若干の水をスプレーし、システムを妨げるものがないことを確認する。
3) 可能な限り広い噴霧を実行するためにノズル正面の左側でセッティングを調節する。
4) 水の入ったビーカーからスプレーガンを取り出して、システムに残存する水を噴霧する。
5) スプレーガンのノズルにステンレス鋼コンテナーを取り付け、両方の部品が互いに取り付けられていることを念入りに確認する。
6) 少量のラテックス溶液を噴霧して、システムに粒子状物質がないことをもう一度確認する。
7) 清潔な手袋の入った型を準備し、一様なコーティングを確保するために、あらゆる方向から指に優しく噴霧を始める。
8) 指の全てまたは大部分をコーティングするために、手のひら、手の甲、さらに腕回りもコーティングを始める。
9) 様々な部位に噴霧を行い、十分な厚さの均一なコーティングを適用する。
10) 室温でコーティングを乾燥させる。乾燥は送風機の使用により促進することができる。
11) 乾燥された時、約2分間温水で手袋の外面および内部を洗浄し、次いで、余分な水を流れ落とし、室温で手袋を乾燥させる。
カテーテルのコーティング方法
(コーティングするカテーテルの準備)
1) 市販のカテーテルを準備し、これをSU100シリコーンリムーバーに約5時間浸漬し、基材のポリマー材料上の追加コーティングの完全除去を確実にする。
2) 水でカテーテルをすすぎ、SU100溶液を全て除去し、室温で完全に乾燥させる。
3) 乾燥させられたとき、基材のポリマー材料に到達するまで追加コーティングを除去し、カテーテル表面に粒子状物質がないことを確実にする。
4) カテーテルの中に、線材(金属またはプラスチック)を置き、噴霧塗装中より高い剛性を可能にする。
【0047】
コーティングされるカテーテルの準備に続いて、コーティング溶液を調製し、手袋に関して上述された同一の方法をカテーテル表面に適用する。
【0048】
実験結果
以下の結果は、上述されたプロセスを使用して製造されたコーティングを適用した抗菌手袋を用いて得られた微生物学上のデータを示す。
【0049】
A. 異なるチャレンジ有機体に対する生物学試験
異なるチャレンジ微生物に対する本発明の抗菌手袋の抗菌の効能を試験するために下記方法を使用した。試験は、液体の接種原AATCC 100試験方法(繊維材料上の抗菌性仕上げの評価)を使用して行った。試験において、本発明によって製造された1インチ×1インチサイズの材料見本の手袋またはカテーテル(すなわちTriosyn処理サンプル)をコーティングしたTriosyn(登録商標)ヨウ素化樹脂を、1、2または5分の接触時間、液体の微生物の懸濁液のサンプルに曝露した。次いで、生存可能な微生物を回収するためにサンプルを中和流体に入れ、生存可能な微生物が数えられた。実施例1〜5は、様々な生物学試験の結果を示す。
(実施例1)
【0050】
ヨウ素化樹脂粉末(Triosyn(登録商標)T50粉末)(4マイクロメートル)含有液体ラテックス溶液でコーティングされたラテックス手袋(Kimberley Clark Latex glove (Product code: SP 2330))を、上述の方法を使用して準備した。液体ラテックス中のTriosyn(登録商標)T-50ヨウ素化樹脂粉末の濃度は5〜10重量%の間で変動した。チャレンジ有機体は緑膿菌だった。0分〜5分の間の結果を表1に表示し、図1にグラフで示す。抗菌のコーティング材料は、ヨウ素化樹脂のある濃度についてわずか2分の接触曝露時間で緑膿菌の99.9999%を超える減少を示す。
【0051】
【表1】

(実施例2)
【0052】
実施例1に記載の実験をメチシリン耐性黄色ブドウ球菌であるチャレンジ有機体で繰り返した。液体ラテックス中のTriosyn(登録商標)T-50ヨウ素化樹脂粉末濃度は、5〜15重量%の間で変動した。サンプルは2分間後に試験された。結果を表2に表示し、図2にグラフで示す。本発明の抗菌コーティングされたエラストマー材料は、わずか2分の接触曝露時間でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の99.99995%を超える減少を示す。
【0053】
【表2】

(実施例3)
【0054】
実施例1および2に記載の実験を、異なる色彩コーティング添加剤で繰り返した。表3は、緑膿菌であるチャレンジ有機体を備えた生物学的な性能に対する異なる色彩コーティング添加剤の影響を示す。これらの試験でのヨウ素化樹脂の濃度は液体ラテックス中の15重量%で、接触時間は2分だった。表3から分かるように、コーティング添加剤の存在はあまり生物学上の性能に影響しなかった。
【0055】
【表3】

(実施例4)
【0056】
上述の実験で得られた優れた結果に続いて、本発明の抗菌の手袋をいくつかのチャレンジ有機体上で試験した。したがって、AATCC試験方法をチャレンジ有機体に対する手袋の効能を示すために使用した。これらの実験において、ラテックス手袋を、液体ラテックス中でTriosyn(登録商標)T-50粉末(4マイクロメートル)の15%溶液でコーティングした。表4〜表6に示されるように、99.999%を超える減少が、Triosynで処理されたラテックス手袋にわずか30秒の接触時間曝露された、グラム陽性(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)(表5)およびグラム陰性菌(緑膿菌)(表4)、並びにインフルエンザウイルス(表6)に対して示された。表4〜表6の結果を、図3にグラフで示す。
【0057】
【表4】

【0058】
【表5】

【0059】
【表6】

(実施例5)
【0060】
上述された試験を、チャレンジ有機体緑膿菌上で、但し液状ニトリルゴム中のTriosyn(登録商標)T-50粉末(4マイクロメートル)15%溶液でコーティングされた、ニトリルゴム手袋(Cardinal Health Nitrile powder free exam gloves (Product code: 8812N medium))で繰り返した。結果を、下記の表7に示す。表7に示されるように、99.999%の減少が、ヨウ素化樹脂処理した手袋に接触時間わずか30秒曝露したグラム陰性菌(緑膿菌)で示された。これらの結果を、図4にグラフで示す。
【0061】
【表7】

【0062】
B. 別の方法で形成された抗菌コーティングを適用されたエラストマーの生物学試験
抗菌性能を、本発明の2つの異なる製造プロセス、すなわち浸漬および噴霧で評価した。これらの研究で使用したチャレンジ微生物は緑膿菌であった。ヨウ素化樹脂含有ラテックスコーティングを、2つの研究で使用した。したがって、この方法はヨウ素化樹脂/液体ラテックス溶液を噴霧するか、ラテックス手袋をヨウ素化樹脂/液体ラテックス溶液に浸漬するかのどちらかを含んでいた。噴霧されたおよび浸漬されたサンプルの生物学上の性能を、表8および表9にそれぞれ示す。一貫した抗菌性能が2つの製造工程(噴霧対浸漬)で示された。
【0063】
【表8】

【0064】
【表9】

【0065】
C. 阻害ゾーンの研究-ヨウ素化樹脂コーティングのカテーテル
本発明のヨウ素化樹脂コーティングのカテーテル(ラテックス)の抗菌効能は、細菌のチャレンジ、黄色ブドウ球菌ATCC 6538を使用して決定した。少数のヨウ素化樹脂コーティングのカテーテルあるいは対照カテーテル(ヨウ素化樹脂なし)は、チャレンジ有機体を含む寒天プレート中のダクトテープの1cm2見本上に配置した。必要とされたインキュベーション時間の後、抗菌剤含有物品を取り巻く細菌ローンの中にクリアゾーンによって示された阻害ゾーンが容易に得られた。阻害ゾーンは細菌が増殖を止めた寒天プレートの部位である。微生物が試験物質に敏感であるほど、阻害ゾーンは大きい。2つの研究において、対照カテーテルは、阻害ゾーンを表出しなかった。一方、ヨウ素化樹脂をコーティングしたカテーテルは、3mmの阻害ゾーンを表出した。
【0066】
D. ヨウ素化樹脂をコーティングしたカテーテルの抗菌特性
本発明の抗菌カテーテルの抗菌効能は細菌付着アッセイ(Jansen B. et al. "In- vitro efficacy of a central venous catheter complexed with iodine to prevent bacterial colonization" Journal of Antimicrobial Chemotherapy, 30:135-139, 1992)を使用して決定した。したがって、ヨウ素化樹脂をコーティングしたカテーテル(ラテックス)部分を、24、48、72または96時間の接触時間で緑膿菌の細菌懸濁液の中でインキュベートし、続いてコロニー計数法を使用して、カテーテル上の付着細菌の計数を行った。ヨウ素化樹脂をコーティングしたカテーテルは全て、液体ラテックス中でTriosyn(登録商標)T-50粉末(4マイクロメートル)の15%のTriosyn溶液でコーティングされた。対照実験は、未処理の(ブランク)カテーテルまたは市販の銀で処理されたラテックスカテーテル(Bardex I.C. with Bard hydrogel and Bacti-Guard silver alloy coating)のいずれかで実行された。これらの実験結果を表10および表11に示し、図5にグラフで示す。
【0067】
研究の結果は、ヨウ素化樹脂をコーティングした(Triosyn(登録商標)T50を備えた)カテーテルが試験期間中細菌の付着を防止したことを示す。一方、銀処理カテーテルは細菌付着の妨害作用をほとんど示さなかった。
【0068】
【表10】

【0069】
【表11】

【0070】
等価物
本発明は特定の好ましい実施形態に関して特に示され記述されているが、形式上および細部の様々な変更が、添付の請求項によって定義された本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われてもよいことは当業者に理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー材料を含む基材と、
前記基材上に適用された、エラストマーマトリックス内に安定して分散されたヨウ素化樹脂粒子を含むコーティングと
を含む、強化された抗菌特性を備えたエラストマー製品。
【請求項2】
前記コーティングのエラストマーマトリックスが、天然ラテックス、合成ラテックス、ニトリルゴム(ニトリルブタジエンゴム、NBR)およびポリウレタンからなる群から選択される部材を含む、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記コーティングがラテックスを含む、請求項2に記載の製品。
【請求項4】
前記基材がラテックスを含む、請求項3に記載の製品。
【請求項5】
前記コーティングが、5μm〜250μmの範囲の厚さを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の製品。
【請求項6】
前記コーティングが、50μm〜80μmの範囲の厚さを有する、請求項5に記載の製品。
【請求項7】
前記コーティングが、65μm〜75μmの範囲の厚さを有する、請求項6に記載の製品。
【請求項8】
1g/m2〜50g/m2の範囲の表面ヨウ素化樹脂濃度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の製品。
【請求項9】
5g/m2〜7g/m2の範囲の表面ヨウ素化樹脂濃度を有する、請求項8に記載の製品。
【請求項10】
前記コーティングがニトリルゴムを含む、請求項2に記載の製品。
【請求項11】
前記基材がニトリルゴムを含む、請求項10に記載の製品。
【請求項12】
前記コーティングが、5μm〜80μmの範囲の厚さを有する、請求項1、10、または11のいずれか一項に記載の製品。
【請求項13】
前記コーティングが、15μm〜50μmの範囲の厚さを有する、請求項12に記載の製品。
【請求項14】
前記コーティングが、20μm〜30μmの範囲の厚さを有する、請求項13に記載の製品。
【請求項15】
1g/m2〜50g/m2の範囲の表面ヨウ素化樹脂濃度を有する、請求項1、10、または11のいずれか一項に記載の製品。
【請求項16】
3g/m2〜4g/m2の範囲の表面ヨウ素化樹脂濃度を有する、請求項15に記載の製品。
【請求項17】
手袋である、請求項1から16のいずれか一項に記載の製品。
【請求項18】
カテーテルである、請求項1から17のいずれか一項に記載の製品。
【請求項19】
前記ヨウ素化樹脂粒子が、1μm〜20μmの範囲の平均サイズを有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の製品。
【請求項20】
前記ヨウ素化樹脂粒子が、4μm〜10μmの範囲の平均サイズを有する、請求項1から19のいずれか一項に記載の製品。
【請求項21】
前記コーティングが、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ネオプレン、スチレン、スチレンブロックコポリマー、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))およびナイロンからなる群から選択される部材を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の製品。
【請求項22】
(a) エラストマー材料を含む、製品の基材形態を提供するステップと、
(b) 任意に、基材に溶剤を適用して基材の既存のコーティングを取り除き、かつ/または、二次処理のために表面を下処理するステップと、
(c) 液体のエラストマーマトリックス内に安定して分散された、ヨウ素化樹脂粒子を含むコーティング混合物を調製するステップと、
(d) 基材にコーティング混合物を適用し、コーティング混合物を乾燥させるステップであって、全て、コーティング混合物を加熱しないか、またはコーティングを約20分間以下、約160℃未満の温度で加熱するステップと
を含む、強化された抗菌特性を備えたコーティングされた製品を調製する方法。
【請求項23】
ステップ(d)が、前記基材上に前記コーティング混合物を噴霧するステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(d)が、前記基材を前記コーティング混合物に浸漬するステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記コーティングされた製品が手袋である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記コーティングされた製品がカテーテルである、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記基材がニトリルゴムを含み、前記コーティング混合物がニトリルゴムを含み、前記コーティングが10μm〜80μmの範囲の厚さを有し、前記ヨウ素化樹脂粒子が4μm〜20μmの範囲内の平均サイズを有し、前記コーティングが2重量%〜25重量%の範囲のヨウ素化樹脂濃度を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記基材がラテックスを含み、前記コーティング混合物がラテックスを含み、前記コーティングが20μm〜100μmの範囲の厚さを有し、前記ヨウ素化樹脂粒子が4μm〜20μmの範囲内の平均サイズを有し、前記コーティングが2重量%〜25重量%の範囲のヨウ素化樹脂濃度を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記コーティング混合物中のヨウ素化樹脂粒子の濃度が、2重量%〜25重量%の範囲である、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記コーティング混合物中のヨウ素化樹脂粒子の濃度が、5重量%〜15重量%の範囲である、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
避妊用具である、請求項1から16のいずれか一項に記載の製品。
【請求項32】
エラストマーマトリックス内に安定して分散されたヨウ素化樹脂粒子を含む、強化された抗菌特性を備えたエラストマーフィルム。
【請求項33】
前記エラストマーマトリックスが、天然ラテックス、合成ラテックス、ニトリルゴム、ポリウレタン、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ネオプレン、スチレン、スチレンブロックコポリマー、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンおよびナイロンからなる群から選択される部材を含む、請求項32に記載のフィルム。
【請求項34】
5μm〜250μmの範囲の厚さを有する、請求項32または33に記載のフィルム。
【請求項35】
20μm〜100μmの範囲の厚さを有する、請求項34に記載のフィルム。
【請求項36】
前記ヨウ素化樹脂粒子が、1μm〜20μmの範囲内の平均サイズを有する、請求項33から35のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項37】
前記ヨウ素化樹脂粒子が、4μm〜10μmの範囲内の平均サイズを有する、請求項36に記載のフィルム。
【請求項38】
フィルム中の前記ヨウ素化樹脂粒子の濃度が、2重量%〜25重量%の範囲である、請求項32から37のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項39】
フィルム中の前記ヨウ素化樹脂粒子の濃度が、5重量%〜15重量%の範囲である、請求項38に記載のフィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−527493(P2012−527493A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507396(P2012−507396)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/032112
【国際公開番号】WO2010/124130
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511257090)トリオメッド・イノヴェーションズ・コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】