説明

抗溶血性効果を有するプラスチック組成物

【発明の詳細な説明】
発明の背景 本発明は一般に可撓性プラスチック組成物およびこの種のプラスチック組成物を製造かつ使用するための方法ならびにこの種プラスチック組成物から成る容器であって、ここにおいてそのプラスチックが該プラスチック組成物から調製された容器内に貯蔵された赤血球の溶血現象を抑制し得るものに関する。
現在、最も広く用いられている血液および血液成分用容器は、他の場合には脆いポリ塩化ビニル(PVC)を柔軟にするために添加された充分な量の可塑剤を伴うPVCである。フタレートエステル、特にジ−2−エチルヘキシルフタレート(DEHP)のグループからの可塑剤は屡々PVC樹脂との組合せにおいて使用されて来た。DEHP可塑剤を伴うプラスチック血液用バッグの使用は一般的に満足に機能するが、或る種の欠陥を伴わないという訳ではない。
上述したように、PVCの硬質性はそれを可塑剤によって柔軟なものとすることを要する。しかし、少量の可塑剤が可塑化バッグ内に貯蔵された赤血球中に浸出することが判明している。DEHP可塑化容器から血液を受ける患者中に生理的な悪影響は検出されていないが、それにも拘らず身体中に通常は見出されることの無い化合物、たとえばDEHPに対する患者の暴露を最小にすることは望ましい。
他方、先行技術においてDEHPの存在はDEHPで可塑化された容器内に貯蔵される赤血球に対して有益な効果を有することが知られている。特に、DEHPそして多分他の可塑剤、たとえばトリエチルヘキシルトリメリテート(TEHTM)により可塑化された容器内に貯蔵された赤血球は可塑剤を含まない容器内に貯蔵された赤血球よりも遥かに程度の低い溶血現象レベルを示すものである。
DEHPのこれら知られた効果は、血液の貯蔵および処理において現在用いられている集合的バッグシステムの製造に際して利用されて来た。集合的バッグシステムは通常2個以上のバッグを包含し、ここにおいて遠心分離機にかけ、かつ分離することによって各バッグは最終的には異なった血液成分、たとえば赤血球、血小板および血漿を含有することになる。溶血現象は赤血球破壊の尺度なので、赤血球用容器は溶血現象を減少させるために可塑剤を含んでいてもよいが、同時に他の血液成分、たとえば血漿または血小板を含んでいるバッグはDEHPに対する不必要な暴露を減少させるために可塑剤を含まないものとすべきである。この種の集合的バッグシステムは明白な利点を有いているが、異なった材料から調製される容器についてのニーズが高められた品質制御成果を求めており、そしてそれはより不経済な製造費をもたらすものである。
その結果、先行技術は血液(および各種血液成分)を貯蔵し、かつDEHP可塑化ポリ塩化ビニルの抗溶血性効果を明らかにするのに適したプラスチック材料を開発するための幾らかの成果を開示している。たとえば、米国特許第4,300,599号を参照されたい。
米国特許第4,301,800号中に記載されたこ種成果の一つは可塑剤を含まない外側バッグを可塑化インサートと組み合わせるというものである。他の先行技術には、米国特許第4,507,387号があり、これは可塑剤の組合せを説明しており、その内の1種類であるDEHPは浸出するが、その他のものは浸出しなかったというものである。更に、米国特許第4,140,162号は可塑剤を含まないポリオレフィンについて説明しており、これは適切で、可撓性の、オートクレーブ処理可能な、塩素を含まない材料であって、血液および様々な血液成分を貯蔵するための優れた気体(O2およびCO2)透過特性を有するものであるが、可塑剤の不存在下では赤血球の溶血現象が好ましい程度より相対的に高い侭であると云われている。
先行技術はまた、血液移動および貯蔵用バッグ中で使用されているPVCと適合性があると云われている可塑剤を更に説明している。たとえば、米国特許第4,710,532号および第4,711,922号はPVC用の可塑剤として使用されるくえん酸エステルはDEHPの場合よりも身体によって一層容易に代謝されることを示唆している。
これらの成果にも拘らず、先行技術はDEHPに付随する欠点を伴うこと無しに、血液用バッグとして使用するのに適し、かつバッグ内に貯蔵された赤血球の溶血現象を抑制することが可能な可撓性で、塩素を含まない組成物を提供することは不可能であった。
従って、本発明の一般的な目的は上記した欠点を招来することの無いプラスチック組成物を提供することである。
発明の要約 本発明は一般的に可撓性で、赤血球の溶血現象を抑制することが出来るプラスチック組成物、この種の組成物を使用する容器およびこの種容器の製造方法ならびに赤血球の溶血現象を抑制するためにこの種容器を使用する方法を指向している。
血液用バッグの製造および使用に際して利用されるように、可撓性で、オートクレーブ処理可能なプラスチック組成物は、非PVCプラスチックと、トリエチルヘキシルトリメリテート(TEHTM)およびくえん酸エステルの何れかから成る群から選択される物質とを含んで構成される。このプラスチック組成物は更にポリプロピレンを含んでいてもよい。
好ましい実施態様において、非PVCプラスチックはエチレンおよびブチレン単位から成る中央ブロックとポリスチレンの末端ブロックとを含有するポリオレフィンコポリマーから構成される。適切なポリオレフィンコポリマーはここに参考として引用するものとする米国特許第4,140,162号中に記載されている。ポリオレフィンコポリマーと共に、ジ−2−エチルヘキシルフタレートもまた溶血現象抑制剤として使用することが出来る。
更に、好ましい実施態様によれば本発明は式:

(式中、R1、R2およびR3=CH3乃至C18H37R4=CH3乃至C7H15である)で表されるくえん酸エステルを意図している。
より詳細に、くえん酸エステルはくえん酸アセチルトリ−n−ヘキシル、くえん酸アセチルトリ−n−(ヘキシル/オクチル/デシル)、くえん酸アセチルトリ−n−(オクチル/デシル)の何れか、あるいは最も好ましくはくえん酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシルである。これらのくえん酸エステルは赤血球の溶血現象を抑制するために、血液中への抑制されたくえん酸エステルの浸出を提供するものである。好ましい実施態様において、このプラスチック組成物はポリオレフィンコポリマー55重量%乃至65重量%、くえん酸エステル15重量%乃至25重量%およびポリプロピレン20重量%乃至30重量%を含有している。
本発明のプラスチック組成物は、プラスチック容器の内表面の少なくとも一部を形成するために使用すればよい。或いは、この容器壁を上記したプラスチック組成物から単独で調製してもよい。バッグが複数の層から構成される場合、最内層の少なくとも一部はこのプラスチック組成物から成っていればよいのに対し、外層は異なった物質から調製してもよく、あるいはこのプラスチック組成物をエマルジョンとしてバッグに対し適用してもよい。
上記した容器は独立に使用しても、あるいは集合的容器システムの部分として使用してもよく、この場合少なくとも1個、しかし好ましくは全ての容器が本発明のプラスチック組成物から調製されるものとする。
本発明の他の目的は赤血球を貯蔵し、かつ赤血球の溶血現象を抑制することの出来る可撓性、プラスチック容器の製造方法を提供することである。この方法は、上記したタイプの非PVCプラスチックを提供することと、このコポリマーをトリエチルヘキシルトリメリテートまたは好ましくはくえん酸エステルと混合することとを包含している。次いで、得られた物質をフィルムに押出し、そして容器に形成する。好ましい実施態様において、非PVCプラスチックはポリオレフィンコポリマーである。更に、好ましい実施態様においてその方法は他のポリオレフィン、たとえばポリプロピレンを添加することを包含する。
最後に、本発明はまた赤血球の溶血現象を抑制するための方法を提供する。この方法は可撓性で、オートクレーブ処理可能なプラスチック容器を提供することを含むものであるが、この容器は非PVCプラスチックと、トリエチルヘキシルトリメリテートおよびくえん酸エステルから成る群から選択される第二の物質とを含んで構成されるプラスチック組成物から形成される内表面の少なくとも一部を備えるものであり、この場合第二物質の量は容器内の赤血球の溶血現象を抑制し得るものとする。この方法は更に、容器内に或る量の赤血球を導入することおよび容器内でその量の赤血球を選択された期間に亘って維持することを包含する。
更に、本発明の特徴は実施態様についての以下の説明および添付の請求の範囲からより一層充分に明らかとなるであろう。
図面の説明 第1図は集合的バッグシステムの平面図である。
第2図は本発明の別の実施態様を示すために一部を省略した、本発明によって調製された血液用バッグ40の平面図である。
第3図は本発明の別の実施態様を示すために一部を省略した、血液用バッグの側面図である。
さて第1図を参照すると、血液バッグシステム10は一般的にドナーバッグ12、移送チュービング20ならびに2個の移送用バッグ30および32を含んでいる。
ドナーバッグ12は本発明による可撓性で、オートクレーブ処理可能なプラスチック組成物から調製され、これは該ドナーバッグ12内に貯蔵された赤血球の溶血現象を抑制することが出来るものである。一般的に血液はドナーチューブ16を経由してドナーバッグ12内に収集され、そこにおいて血液は血液防腐剤と混合される。貯蔵の間、ドナーバッグ12の容器壁を構成するプラスチック組成物中の可塑剤の存在が赤血球溶血現象の速度を抑制する。通常の利用に際して、収集された血液は遠心分離され、それによって赤血球はドナーバッグ12の底部に沈降し、そして血小板に富んだ血漿およびその他の成分は移送チュービング20を経由して移送バッグ30内へ出されて、ここにおいてそれは更に遠心分離される。血小板に富んだ血漿は移送バッグ30の底部に沈降するのに対し、血小板に乏しい血漿は移送バッグ32に出される。次いで、赤血球を含有するドナーバッグ12は集合的バッグシステム10から分離され、そしてシールされる。
移送用バッグ30および32はまた、本発明のプラスチック組成物から構成してもよいし、あるいは可塑剤を含まないポリオレフィンまたはその他の物質と共にその他の添加剤であって、本発明のプラスチック組成物と類似の、血小板に関する改良された気体透過特性を示すものとから構成してもよい。
第3図に示された血液バッグ40は周知の方法によって周縁44において互いにシールされたプラスチックシート42および43から構成され、かつ血液収集チューブ45を備える容器壁を表している。血液バッグ40は上記したように、ドナーバッグまたは移送バッグとして利用することが出来る。本発明の一実施態様において、バッグの壁を形成する両プラスチックシート42および43はもっぱら本発明のプラスチック組成物から構成されていてもよい。第3図はまた、本発明の代替的実施態様を示している。この実施態様において、血液バッグ40は少なくとも2層から構成され、その場合最内層52は本発明によるプラスチック組成物から構成されるのに対し、外層53は異なった物質から調製されるが、これを本発明の組成物と同時押出ししてもよい。或いは容器壁の外部は第一物質から構成してもよいが、これに対しバッグ45の最内層は第2図R>図に示したようにエマルジョン化層の形状で適用した本発明のプラスチック組成物から構成されるものとする。
最後に、移送チュービング20およびドナーチューブ16もまた、本発明によるプラスチック組成物から構成されていてもよい。
プラスチック 本発明のプラスチック組成物は血液用バッグとして使用するのに適した非PVCプラスチックまたはその他の塩素を含まないプラスチックを含んで構成される。好ましい実施態様においては、この非PVCプラスチックはポリオレフィンコポリマーである。
一般に、ポリオレフィンコポリマーは、ポリスチレンの末端ブロックと共に少なくとも2個のポリオレフィンの中央ブロックを含んで構成される。
より好ましい実施態様においては、このポリオレフィンコポリマーは、シェル・ケミカル・カンパニーから商標名「クレートン(KRATON)G」で市販されているポリオレフィンコポリマーであり、等比率のエチレンおよびブチレン単位のコポリマー分子からなる中央ブロックとポリスチレンからなる末端ブロックとからなり、その組成は、中央ブロックが50乃至85重量%含まれて構成されるものである。このポリオレフィンコポリマーおよびその特性は更に米国特許第4,140,162号において説明されている。
エステル 本発明のプラスチック組成物は好ましくは、たとえばエステルのような第二の物質15乃至25%を含んで構成されている。エステル、たとえばジ−2−エチル−ヘキシルフタレート、トリエチルヘキシルメリテート(TEHTM)またはくえん酸エステルはポリオレフィンコポリマーと化合させてもよい。好ましいくえん酸エステルはDEHPまたはTEHTMのいずれよりも身体によってより容易に代謝されるという利点を有しており、そしてそれらが好ましい。
好ましい実施態様において、プラスチック組成物は式:

(式中、R1、R2およびR3=CH3乃至C18H37R4=CH3乃至C7H15である)で表されるくえん酸エステルを含んでいる。
このエステルの使用は、この種の物質から調製された容器内の赤血球の溶血現象を抑制するために、そのプラスチック組成物からの制御された浸出をもたらすことが出来る。制御された浸出はたとえば、くえん酸エステルの量を変化させるか、あるいは炭素鎖の所望分子量または長さを有する特定のエステルを選択することによって得られる。より高分子量およびより長い炭素鎖はより少ない浸出量をもたらすものと考えられる。これらおよびその他の変数から選択を行うことによって、浸出量、そして延いては得られる溶血レベルを制御することが出来る。
具体的に、使用されるくえん酸エステルは、くえん酸アセチルトリ−n−ヘキシル、くえん酸アセチルトリ−n−(ヘキシル/オクチル/デシル)、そして最も好ましいのはくえん酸n−ブチリルトリ−n−(ヘキシル)である。この種のエステルはノースカロライナ州、グリーンズバロのモーフレックス・ケミカル・カンパニー(Morflex Chemical Company)から市販されている。上述のくえん酸エステルの物理的および化学的特性はここに参考として引用するものとする米国特許4,710,532号および第4,711,922号中に一層充分に説明されている。
ポリオレフィンコポリマーおよびエステルの他に、本発明のプラスチック組成物はまた、ポリプロピレン、すなわち本質的にプロピレン単位から成っているポリオレフィンを含んでいてもよい。ポリプロピレンは剛性および一般的に熱に対し、そして具体的にオートクレーブ処理に関し抵抗性をもたらす。このプラスチック組成物はポリプロピレン20乃至30重量%を含んで構成されればよい。このポリプロピレンは、エステルが略吸収された後、ポリオレフィン−エステル混合物に対し添加すればよい。
別の添加剤には、エチル酢酸ビニルおよび酸化防止剤を含んでいてもよい。基本的に、プラスチック組成物は大量のオレフィンコポリマーおよび少量のエステルを含んで構成される。エステル約15乃至25重量%を使用することが好ましく、これが溶血現象の所望の抑制をもたらし、かつ適切な取扱い適性を有する組成物を提供する。15%未満のエステルを使用することは出来るが、溶血現象の抑制は減少する可能性がある。エステル25%超過を使用することもできるが、溶血減少の抑制は顕著に改良されることはなく、そしてプラスチックの機械的特性は影響を受ける。
一般的に云えば、組成物の残りはポリオレフィンコポリマーであればよい。しかし、優れた機械的特性、すなわちより大きい剛性および耐久性を有するプラスチック組成物を生成させるために、ポリプロピレン約20乃至30重量%およびオレフィンコポリマー55乃至65重量%を使用することが好ましい。付加的な剛性を所望する場合には、ポリプロピレン30%超過を使用すればよい。
このプラスチック組成物の製造方法は、ポリオレフィンコポリマー55乃至65重量%を緩慢に混合(約1000RPM)する当初工程を含んでいる。このコポリマーは温度約140゜F(60℃)に混合し、この時点で該コポリマー物質にエステル15乃至25重量%を添加する。これら2種類の反応体はそのエステルが実質的に吸収されるまで混合される。
血液用バッグの製造に際して使用される場合、上記のプラスチック組成物は更にペレット化され、そして厚さ約0.011″(0.028cm)乃至0.012″(0.030cm)のフィルムのシートに押し出される。次いで、そのフィルムを当業者に知られた方法によって容器に形成する。このフィルムは高周波(R.F.)または誘導加熱シール可能であり、そして口およびチュービング・アタッチメントの目的に関して溶剤接着可能である。このプラスチック組成物は良好な低温および気体(O2およびCO2)透過特性を示す。プラスチック組成物から調製されたバッグは水蒸気、酸化エチレンまたはγ線により滅菌することが出来る。
血液用バッグ製造において使用される場合、プラスチック組成物はその容器壁または該バッグの内表面の部分のみを構成してもよい。或いは、プラスチック組成物を第二の物質と同時押出しさせることが可能であり、この場合本発明のプラスチック組成物は多層バッグの最内層を構成するのに対し、該バッグの外層は異なったプラスチック物質から調製されるものとする。
次に完成し、かつ滅菌されたバッグを赤血球および血液防腐剤で実質的に充填する。次いで、(内容物と共に)バッグを一定期間に亘って貯蔵すればよい。
下記の実施例は例示目的のみに関するものであって、以下の請求の範囲において定義される本願の発明を限定する目的に関するものではない。
実施例 1 「クレーンG」コポリマー55重量%、n−ブチリルトリ−n−ヘキシルくえん酸エステル15重量%およびポリプロピレン30重量%からプラスチック組成物を調製した。このプラスチック組成物を15分未満混合し、ペレット化し、そして厚さ約0.011″(0.028cm)のフィルムに押し出した。次いで、その材料を透明、可撓性、コラプシブル・バッグに好結果をもって二次加工した。このバッグはオートクレーブ処理され、血液を充填し、そして数週間の期間貯蔵された。デキストロース・モノフォスフェート2.2g/dl、アデニン0.027g/dl、マンニトール0.75g/dlおよびNaCl0.9g/dlから成る(その商品名「アドソル(ADSOL)」により知られ、かつイリノイ州、ディアフィールドのバクスター・インターナショナル(BAXTER International)から入手可能な)凝固防止剤もまたバッグに添加された。第1表は上記した方法によって調製されたバッグ内に貯蔵された血液の物理的性質を要約するものである。第2表は本実施例中に記載された方法によって調製された血液用バッグ内で見出される溶血現象および血漿ヘモグロビンレベルを、DEHP可塑剤を伴うPVCから調製された対照バッグと比較するものである。全ての値は平均値として表されている。




実施例 2 「クレートンG」コポリマー55重量%、くえん酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル20重量%およびポリプロピレン25重量%からプラスチック組成物を調製した。このプラスチック組成物はオートクレーブ処理可能であり、かつ押出し可能であったが、オートクレーブ処理の間フィルムの堆積に関して互いに粘着するという若干の問題に遭遇した。
実施例 3 「クレートンG」コポリマー60重量%、くえん酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル15重量%およびポリプロピレン25重量%からプラスチック組成物を調製した。プラスチック組成物のペレット化に際して若干の困難に遭遇したが、このプラスチック組成物は好結果をもってフィルムに押し出し、そしてオートクレーブ処理することが出来た。
実施例 4 「クレートンG」コポリマー65重量%、くえん酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル15重量%およびポリプロピレン20重量%からプラスチック組成物を調製した。実施例3におけるように、このプラスチック組成物はペレット化するのに困難であったが、好結果をもって押し出し、そしてまたオートクレーブ処理することが出来た。
実施例 5 「クレートンG」コポリマー50重量%、n−ブチリルトリ−n−ヘキシルくえん酸エステル10重量%、ポリプロピレン20重量%およびエチル酢酸ビニル20重量%からプラスチック組成物を調製した。このプラスチック組成物を混合し、ペレット化し、そして厚さ0.013″(0.033cm)±0.002″(0.005cm)のフィルムに押し出した。このフィルムをバッグに形成し、かつオートクレーブ処理した。
実施例 6 「クレートンG」70重量%およびn−ブチリルトリ−n−ヘキシルくえん酸エステル30%からプラスチック組成物を調製した。この組成物は粘着性であり、そして不十分な溶融および引っ張り強さを示した。この組成物は廃棄し、そしてこの特定組成物に対してこれ以上の作業を行わなかった。
実施例 7 「クレートンG」55重量%、くえん酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル15%、エチル酢酸ビニル10%およびポリプロピレン20%からプラスチック組成物を調製した。このプラスチック組成物をペレット化し、押し出し、バッグに形成し、かつオートクレーブ処理した。オートクレーブ処理の結果は艶消し剤またはワックスを添加することにより改良し得ることが観察された。
実施例 8 「クレートンG」コポリマー45%、くえん酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル15%、エチル酢酸ビニル20%およびポリプロピレン20%からプラスチック組成物を調製した。この組成物をペレット化し、押し出し、バッグに形成し、かつオートクレーブ処理した。フィルムが幾分粘着性であったが、それらの結果は一般的に満足すべきものであった。
この説明は例示目的のみに関して提供されたものであって、以下の請求の範囲において定義される本願発明の限定を意図するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】ポリオレフィンコポリマーを含む非PVCプラスチックと、赤血球の溶血現象を抑制するにためのくえん酸エステルと、からなり、前記ポリオレフィンコポリマーが、熱可塑性ゴム特性を有し、(1)エチレンおよびブチレンを単位とするゴム状オレフィンポリマーのコポリマー分子を含んで成る中央ブロックと、(2)ポリスチレンの末端ブロックとを含んで構成される、可撓性プラスチック組成物。
【請求項2】前記オレフィンポリマーのコポリマー分子を50乃至85重量%含んで構成される請求項1記載の可撓性プラスチック組成物。
【請求項3】前記くえん酸エステルが、くえん酸アセチルトリ−n−ヘキシル、くえん酸ブチリルトリ−n−ヘキシル、くえん酸アセチルトリ−n−(ヘキシル/オクチル/デシル)およびくえん酸アセチルトリ−n−(オクチル/デシル)から成るグループから選択されたくえん酸エステルである請求項1記載の可撓性プラスチック組成物。
【請求項4】前記くえん酸エステルが、くえん酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシルである請求項1記載の可撓性プラスチック組成物。
【請求項5】前記くえん酸エステルを15乃至25重量%を含んで構成される請求項1記載の可撓性プラスチック組成物。
【請求項6】前記プラスチック組成物が更に、プロピレンを単位とするポリオレフィンから構成される請求項1記載の可撓性プラスチック組成物。
【請求項7】前記ポリオレフィンを20乃至30重量%含んで構成される請求項6記載の可撓性プラスチック組成物。
【請求項8】前記可撓性プラスチック組成物が、前記ポリオレフィンコポリマー55乃至65重量%と、前記くえん酸エステル15乃至25重量%と、前記プロピレンを単位とする前記ポリオレフィン20乃至30重量%とを含んで構成される請求項6記載の可撓性プラスチック組成物。
【請求項9】熱可塑性ゴム特性を有し、(1)エチレンおよびブチレンを単位とするゴム状オレフィンポリマーのコポリマー分子を含んで成る中央ブロックと、(2)ポリスチレンの末端ブロックと、から成るポリオレフィンコポリマー55重量%と、n−ブチリルトリ−n−ヘキシルくえん酸エステル15重量%と、プロピレンを単位とするポリオレフィン30重量%とを含んで構成され、前記ポリオレフィンコポリマーにおける前記コポリマー分子の重量構成比が50乃至85重量%である、可撓性プラスチック組成物。
【請求項10】ポリオレフィンコポリマーを含む非PVCコポリマーと、トリエチルヘキシルトリメリテートおよびくえん酸エステルから成るグループから選択される物質とを含んで構成される組成物を、その内側表面の少なくとも一部に有している可撓性プラスチック容器であって、前記ポリオレフィンコポリマーが、熱可塑性ゴム特性を有し、(1)エチレンおよびブチレンを単位とするゴム状オレフィンポリマーのコポリマー分子を含んで成る中央ブロックと、(2)ポリスチレンの末端ブロックとを含んで構成される、可撓性プラスチック容器。
【請求項11】前記オレフィンポリマーのコポリマー分子を50乃至85重量%含んで構成される請求項10記載の可撓性プラスチック容器。
【請求項12】前記くえん酸エステルが、くえん酸アセチルトリ−n−ヘキシル、くえん酸ブチリルトリ−n−ヘキシル、くえん酸アセチルトリ−n−(ヘキシル/オクチル/デシル)およびくえん酸アセチルトリ−n−(オクチル/デシル)から成るグループから選択されたくえん酸エステルである請求項10記載の可撓性プラスチック容器。
【請求項13】前記くえん酸エステルがくえん酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシルである請求項10記載の可撓性プラスチック容器。
【請求項14】前記組成物が更に、プロピレンを単位とするポリオレフィンから構成される請求項10記載の可撓性プラスチック容器。
【請求項15】前記ポリオレフィンを20乃至30重量%含んで構成される請求項14記載の可撓性プラスチック容器。
【請求項16】前記組成物が、前記ポリオレフィンコポリマー55乃至65重量%と、前記くえん酸エステル15乃至25重量%と、前記プロピレンを単位とする前記ポリオレフィン20乃至30重量%とを含んで構成される請求項14記載の可撓性プラスチック容器。
【請求項17】前記可撓性プラスチック容器が複数の層から構成され、その最内層が前記組成物から成っている請求項10記載の可撓性プラスチック容器。
【請求項18】前記最内層がエマルジョンである請求項17記載の可撓性プラスチック容器。
【請求項19】前記容器が容器壁を形成する手段を備え、前記容器壁が前記組成物のみからなる請求項10記載の可撓性プラスチック容器。
【請求項20】少なくとも2個の可撓性容器と、前記容器間にシールされた流通状態を提供する導管手段と、前記容器の少なくとも1個に赤血球を受けるための導管手段とを含んで構成され、前記少なくとも1個の容器の全体若しくは内側表面の少なくとも一部が、ポリオレフィンコポリマーからなる非PVCプラスチックと、溶血現象が抑制するためのトリエチルヘキシルトリメリテートおよびくえん酸エステルから成るグループから選択される物質とを含み、前記ポリオレフィンコポリマーが、熱可塑性ゴム特性を有し、(1)エチレンおよびブチレンを単位とするゴム状オレフィンポリマーのコポリマー分子を含んで成る中央ブロックと、(2)ポリスチレンの末端ブロックとを含む、集合バック。
【請求項21】前記オレフィンポリマーのコポリマー分子を50乃至85重量%含んで構成される請求項20記載の集合バック。
【請求項22】前記くえん酸エステルが、くえん酸アセチルトリ−n−ヘキシル、くえん酸ブチルトリ−n−ヘキシル、くえん酸アセチルトリ−n−(ヘキシル/オクチル/デシル)およびくえん酸アセチルトリ−n−(オクチル/デシル)から成るグループから選択される請求項20記載の集合バック。
【請求項23】前記くえん酸エステルがくえん酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシルである請求項20記載の集合バック。
【請求項24】くえん酸エステルの量が乾重量で15乃至25%である請求項20記載の集合バック。
【請求項25】前記組成物が更に、プロピレンを単位とするポリオレフィンから構成される請求項20記載の集合バック。
【請求項26】前記ポリオレフィンを20乃至30重量%を含んで構成される請求項25記載の集合バック。
【請求項27】少なくとも1個の前記容器が、前記ポリオレフィンコポリマー55乃至65重量%と、前記くえん酸エステル15乃至25重量%と、前記プロピレンを単位とするポリオレフィン20乃至30重量%とを含んで構成される請求項25記載の集合バック。
【請求項28】ポリオレフィンコポリマーからなる非PVCプラスチックを提供し、前記非PVCプラスチックと、トリエチルヘキシルトリメリテートおよびくえん酸エステルから成るグループから選択される物質とを混合し、得られた材料を一定の厚さを有するフィルムに押し出し、前記フィルムを所定の容器形状に形成する過程からなり、前記ポリオレフィンコポリマーが、熱可塑性ゴム特性を有し、(1)エチレンおよびブチレンを単位とするゴム状オレフィンポリマーのコポリマー分子を含んで成る中央ブロックと、(2)ポリスチレンの末端ブロックとを含んで構成される、赤血球貯蔵用の可撓性プラスチック容器を製造する方法。
【請求項29】前記オレフィンポリマーのコポリマーが分子50乃至85重量%含まれる請求項28記載の赤血球貯蔵用の可撓性プラスチック容器を製造する方法。
【請求項30】前記くえん酸エステルが、くえん酸アセチルトリ−n−ヘキシル、くえん酸ブチリルトリ−n−ヘキシル、くえん酸アセチルトリ−n−(ヘキシル/オクチル/デシル)およびくえん酸アセチルトリ−n−(オクチル/デシル)から成るグループから選択されるくえん酸エステルである請求項28記載の赤血球貯蔵用の可撓性プラスチック容器を製造する方法。
【請求項31】前記くえん酸エステルがくえん酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシルである請求項28記載の赤血球貯蔵用の可撓性プラスチック容器を製造する方法。
【請求項32】くえん酸エステルの量が乾重量で15乃至25%である請求項28記載の赤血球貯蔵用の可撓性プラスチック容器を製造する方法。
【請求項33】前記方法が更に、前記ポリオレフィンコポリマーを、プロピレンを単位とするポリオレフィンと混合させる工程を含んで構成される請求項28記載の赤血球貯蔵用の可撓性プラスチック容器を製造する方法。
【請求項34】前記得られた物質が、プロピレンを単位とするポリオレフィン20乃至30重量%を含んで構成される請求項33記載の赤血球貯蔵用の可撓性プラスチック容器を製造する方法。
【請求項35】前記得られた物質が、前記ポリオレフィンコポリマー55乃至65重量%と、前記くえん酸エステル15乃至25重量%と、前記プロピレンを単位とするポリオレフィン20乃至30重量%とを含んで構成される請求項33記載の赤血球貯蔵用の可撓性プラスチック容器を製造する方法。
【請求項36】前記得られた物質が、前記ポリオレフィンコポリマー55重量%と、前記くえん酸エステルとしてくえん酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル15重量%と、前記プロピレンを単位とする前記ポリオレフィン30重量%とを含んで構成される請求項33記載の赤血球貯蔵用の可撓性プラスチック容器を製造する方法。
【請求項37】ポリオレフィンコポリマーを含む非PVCプラスチックと、溶血現象を抑制するためのトリエチルヘキシルトリメリテートおよびくえん酸エステルから成るグループから選択される物質とを含んで成る組成物を、その内側表面の少なくとも一部に有している可撓性、かつオートクレーブ処理可能なプラスチック容器を提供し、赤血球を前記容器内に導入し、前記容器内の前記量の赤血球を一定の時間に亘って維持し、前記ポリオレフィンコポリマーが、熱可塑性ゴム特性を有し、(1)エチレンおよびブチレンを単位とするゴム状オレフィンポリマーのコポリマー分子を含んで成る中央ブロックと、(2)ポリスチレンの末端ブロックとを含んで構成される、赤血球の溶血現象を抑制するための方法。
【請求項38】前記オレフィンポリマーのコポリマー分子を50乃至85重量%含む請求項37記載の赤血球の溶血現象を抑制するための方法。
【請求項39】前記くえん酸エステルが、くえん酸アセチルトリ−n−ヘキシル、くえん酸ブチリルトリ−n−ヘキシル、くえん酸アセチルトリ−n−(ヘキシル/オクチル/デシル)およびくえん酸アセチルトリ−n−(オクチル/デシル)から成るグループから選択される請求項37記載の赤血球の溶血現象を抑制するための方法。
【請求項40】前記くえん酸エステルがくえん酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシルである請求項37記載の赤血球の溶血現象を抑制するための方法。
【請求項41】組成物がくえん酸エステル15乃至25%を含む請求項37記載の赤血球の溶血現象を抑制するための方法。
【請求項42】前記方法が更に、プロピレンを単位とするポリオレフィンを添加する工程を含んで構成される請求項37記載の赤血球の溶血現象を抑制するための方法。
【請求項43】前記組成物が、前記プロピレンを単位とする前記ポリオレフィン20乃至30重量%を含んで構成される請求項42記載の赤血球の溶血現象を抑制するための方法。
【請求項44】前記組成物が、前記ポリオレフィンコポリマー55乃至65重量%と、くえん酸エステル15乃至25重量%と、プロピレン単位から成るポリオレフィン20乃至30重量%とを含んで構成される請求項42記載の赤血球の溶血現象を抑制するための方法。
【請求項45】前記容器の内側表面の少なくとも一部が、前記ポリオレフィンコポリマー55重量%と、前記くえん酸エステルとしてくえん酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル15重量%と、前記プロピレンを単位とする前記ポリオレフィン30重量%とを含んで構成される請求項42記載の赤血球の溶血現象を抑制するための方法。。
【請求項46】前記時間が少なくとも21日間である請求項37記載の赤血球の溶血現象を抑制するための方法。
【請求項47】前記ポリオレフィンコポリマー55重量%と、前記くえん酸エステルとしてくえん酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル15重量%と、前記プロピレンを単位とするポリオレフィン30重量%とを含んで構成される請求項14記載の可撓性プラスチック容器
【請求項48】前記プラスチック組成物が、前記ポリオレフィンコポリマー55重量%と、前記くえん酸エステルとしてくえん酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル15重量%と、プロピレンを単位とするポリオレフィン30重量%とを含んで構成される請求項25記載の集合バック。
【請求項49】容器の全体若しくはその内側表面の少なくとも一部が、ポリオレフィンコポリマーと、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、トリエチルヘキシルトリメリテートおよびくえん酸エステルから成るグループから選択される物質とを含んで成る組成物によって形成され、前記ポリオレフィンコポリマーが、熱可塑性ゴム特性を有し、(1)エチレンおよびブチレンを単位とするゴム状オレフィンポリマーのコポリマー分子を含んで成る中央ブロックと、(2)ポリスチレンの末端ブロックとを含んで構成される、可撓性プラスチック容器。

【第1図】
image rotate


【第2図】
image rotate


【第3図】
image rotate


【特許番号】第2527651号
【登録日】平成8年(1996)6月14日
【発行日】平成8年(1996)8月28日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−500389
【出願日】平成1年(1989)11月6日
【公表番号】特表平3−502298
【公表日】平成3年(1991)5月30日
【国際出願番号】PCT/US89/05020
【国際公開番号】WO90/05496
【国際公開日】平成2年(1990)5月31日
【出願人】(999999999)バクスター インターナショナル インコーポレーテッド