説明

抗潰瘍薬草配合物

本発明は、急性および慢性の胃潰瘍を治療するための、薬草による相助作用を有する新規な製剤を提供する。製剤は、錠剤、カプセル、および懸濁可能な粉末をはじめとする経口剤形に成形するための従来の添加剤とともに、植物エキスを含有している。ウトレリア属サリシフォリアの他に、腸の不快感の治療において、また、催乳薬として、従来の添加剤とともに用いられている、シャタバリ、フェンネル、およびウドンゲのような伝統的に使用されている植物が、添加されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗潰瘍薬草配合物の開発と、潰瘍を治療するための薬草製剤を調剤するのに役立つエキスを調合するプロセスとに関する。
【背景技術】
【0002】
消化性潰瘍は、罹患率と死亡率の両観点から、健康上の大きな問題となっている。ここ10年間における研究の進歩から、潰瘍を誘発する攻撃因子としての酸やペプシンを弱化させるのではなく、粘膜の防御系を強化することを目指した手段によって、胃潰瘍および十二指腸潰瘍形成の治療と予防における新たな洞察が得られるようになった。胃液酸度上昇およびペプシン活性化は、通常は胃液分泌を調節するひとつまたは複数のメカニズムに影響を与える生理的傷害の兆候である。胃腺による塩酸やペプシンの分泌を直接刺激する神経伝達物質またはホルモンには、アセチルコリン、ガストリン、およびヒスタミンがある。さらに、消化性潰瘍の発現に重要な役割を果たす成因は他にも存在している。胃液分泌細胞の活動は、カフェイン、アルコール、塩酸、塩化ナトリウム、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)およびストレスによって刺激されることが明らかとなっている3,4,5
【0003】
現代の日常生活は、ストレス時代と呼ばれているように、生活環境のめまぐるしい変化や人間関係の複雑さの増大によって、ストレスを受ける機会がますます増えてきている。さらに、自然界には存在しない、多くの仮想現実を体験する機会も増えてきた
【0004】
したがって、このような成因によって胃潰瘍、十二指腸潰瘍などを患う患者の数は増加し、さまざまな抗潰瘍剤が開発され、現在実際に使用されている。今までに使用されてきた抗潰瘍剤は、主として消化能抑制剤、胃液分泌抑制剤、粘膜保護組織修復剤などに分類され、投与経路も経口投与または皮下投与がある。ただし、これらの調剤法には、単剤と合成剤とがあるが、各薬剤ともそれぞれに副作用があるので、適用可能な対象患者や使用量に関する制限事項が厳しくなってきており、効能があり且つ安全であるような抗潰瘍剤はまだ開発されておらず、当然使用されてもいない
【0005】
このように、これらの従来の抗潰瘍剤は、安全性の観点から常用することは不可能であるため、初発予防または再発予防のために利用することはできない。
【0006】
その一方で、潰瘍予防剤として、腸疾患用薬剤および胃液のみの分泌抑制効果を示す薬剤が使用されているので、これらは、本当の意味での潰瘍予防剤とはいえない。現在、人体に対する薬剤の副作用が問題となっているので、天然成分からなり、副作用のない、初発予防薬や再発予防薬として常用した場合でも十分に安全であるような、抗潰瘍効果のある薬剤の開発が求められている1,2
【0007】
ケララ州のマラサル族およびカダル族の昔からの言い伝えのみにおいて、疝痛などの腸疾患や胃の出血の治療に、ウトレリア属サリシフォリア(Utleria salicifolia)が使用されている。従来の合成剤は、酸の分泌を抑制するか、潰瘍を治癒させる役割を果たす。しかし、現在使用されている合成剤を長期間投与すると、通常では胃の消化機能を担う胃酸およびペプシンの分泌が完全に抑制され、がんを発症させる。胃の攻撃因子である酸およびペプシンならびに防御因子であるムチンは、胃の機能における必要不可欠な役割を果たす。ヘリコバクタピロリ(Helicobactor Pylori)菌、攻撃因子である酸およびペプシン、ならびに熱い食物の摂取は、細胞の連続性を破壊し、潰瘍や胃がんを誘発する。しかし、これらの完全な治療法は存在しない。したがって、急性胃潰瘍/十二指腸潰瘍やヘリコバクタピロリ菌の治療のために新規な薬草製剤が求められている。それに伴い、急性胃潰瘍/十二指腸潰瘍を治療するための、また、内出血を治療するための、経口摂取用添加剤6,7とともに漢方薬材を含有する経口製剤を開発することを目指した研究が行われてきた。
【特許文献1】米国特許第6,187,313号明細書、2001年2月、Segelman
【特許文献2】米国特許第5,728,384号明細書、1998年3月、Tokuyama
【非特許文献1】Sairam et al., J.Ethnopharmacology.82, pp.1-9, 2002
【非特許文献2】Sairam et al., Phytomedicine, 86(6), pp.423-430, 2001
【非特許文献3】Raw et al., Indian J.Physiol.Pharmacol, 44(4), pp.435-441, 2000
【非特許文献4】Remington, The science and practice of pharmacy, 19th edition, Vol. II, pp.1635, 1995
【非特許文献5】Anonymous, Indian Pharmacopoeia.Govt of India, 1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主たる目的は、急性および慢性の胃潰瘍および十二指腸潰瘍の治療に役立つ新規な抗潰瘍薬草製剤を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、過剰な酸を中和することにより、胃の活性を即座に緩和させる薬草製剤を調剤することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、下痢および腸の不快感の治療ならびに抗菌に使用されている植物を組み合わせた薬草製剤を調剤することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、急性胃潰瘍および慢性胃潰瘍の治療に役立つ薬草製剤を提供する。この薬草製剤は、上記の目的で、背景技術の項で述べたように、ケララ州のマラサル族およびカダル族によって使用されてきたウトレリア属サリシフォリアを活性成分として含有している。この植物の他に、腸の不快感の治療において、また、催乳薬として、従来の添加剤とともに用いられている、シャタバリ(Asparagus racemosus)、フェンネル(Foeniculum vulgare)、ウドンゲ(Ficus glomerata)のような伝統的に使用されている植物が添加される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
したがって、本発明は、急性および慢性の胃潰瘍および十二指腸潰瘍の治療に効き目のある新規な抗潰瘍薬草の相助作用を有する製剤を提供する。この製剤は、
a) 錠剤、カプセル、粉末および液体からなる群から選択された経口投与剤形中に、2〜5wt%のウトレリア属サリシフォリア、1〜3wt%のシャタバリ、2〜4%のフェンネル、および3〜5wt%のウドンゲを含む植物の50%アルコール水溶液エキス、を含有する。
【0013】
本研究の新規なものは、(1)胃潰瘍および十二指腸潰瘍を治療するための薬草製剤であって、(2)この薬草製剤は、胃の過剰な酸を中和し、(3)この薬草製剤は、潰瘍の治癒と治療に効果があり、(4)現在製品化されている抗潰瘍薬とは異なり、内出血の有無も確認する。
【0014】
一実施形態では、植物エキスとして、ウトレリア属サリシフォリアと、シャタバリと、フェンネルと、ウドンゲとを使用することができる。
【0015】
他の実施形態では、この製剤は、錠剤、カプセル、あるいは懸濁可能な粉末のいずれかの剤形に調剤できる。
【0016】
さらに他の実施形態では、結合剤として、スターチ、またはアラビアゴム、またはカルボキシメチルセルロースのいずれかを使用できる。
【0017】
さらに他の実施形態では、この剤形を完成させる希釈剤として、ラクトースを使用できる。
【0018】
さらに他の実施形態では、使用される植物エキスは、50%アルコール水溶液エキスである。
【0019】
さらに他の実施形態では、アルコールとして、エタノールを使用する。
【0020】
さらに他の実施形態では、薬草製剤は、胃の不快感、胃がん、胃痛、腸の不快感、胃潰瘍および十二指腸潰瘍を治療する。
【0021】
さらに他の実施形態では、これらの植物エキスは、経口固形剤形を成形するための従来の添加剤とともに、ウトレリア属サリシフォリアを2〜5wt%、シャタバリを1〜3wt%、フェンネルを2〜4wt%、ウドンゲを3〜5wt%の割合で混合される。
【0022】
さらに他の実施形態では、この薬草製剤の総重量比は、製剤全体の約8〜17%wtである。
【0023】
さらに他の実施形態では、ウトレリア属サリシフォリアは、根茎エキスである。
【0024】
さらに他の実施形態では、これらの植物エキスは、葉、根茎、および空中部位から選択された植物部位から得られる。
【0025】
さらに他の実施形態では、滑剤としてスターチおよびラクトースから選んで使用できる。
【0026】
さらに他の実施形態では、この製剤は、下痢や腸の不快感の治療に使用されるとともに、抗菌剤でもある。
【0027】
さらに他の実施形態では、この製剤は、過剰な酸を中和することによって胃の活性を即座に緩和する。
【0028】
さらに他の実施形態では、寒冷拘束ストレスから誘発される潰瘍において、100〜200mg/kgの用量でこの製剤を投与した場合、潰瘍指数は、11.2±3.1〜4.2±1.0の範囲である。
【0029】
さらに他の実施形態では、寒冷拘束ストレスから誘発される潰瘍において、100〜200mg/kgの用量でこの製剤を投与した場合、治癒率は、83.59〜56.25%の範囲である。
【0030】
さらに他の実施形態では、幽門部結紮誘発潰瘍において、100〜200mg/kgの用量でこの製剤を投与した場合、潰瘍指数は、6.1±0.8〜4.8±1.2の範囲である。
【0031】
さらに他の実施形態では、幽門部結紮誘発潰瘍において、100〜200mg/kgの用量でこの製剤を投与した場合、治癒率は、57.93〜66.90%の範囲である。
【0032】
さらに他の実施形態では、100〜200mg/kgの用量でこの製剤を投与した場合、ラットの胃粘膜における脂質過酸化のキャパシティは、0.1±0.01〜0.21±0.01の範囲である。
【0033】
さらに他の実施形態では、ラットのエタノール誘発胃潰瘍変化において、100〜200mg/kgの用量でこの製剤を投与した場合、64.94〜86.75%胃壁粘膜の防護作用が示され、有意に向上した。
【0034】
さらに他の実施形態では、ラットのアスピリン誘発胃潰瘍変化において、100〜200mg/kgの用量でこの製剤を投与した場合、潰瘍指数が7.1±2.2〜6.2±1.3の範囲で、治癒率が61.41〜66.30%の範囲であった。
【0035】
さらに他の実施形態では、ラットの酢酸誘発(潰瘍治癒)慢性潰瘍において、100〜200mg/kgの用量でこの製剤を投与した場合、穿孔発症率が2.1〜0.0%の範囲で、対照群では31.2%であった。
【0036】
前記目的を達成するために、本発明者らによって実施された集中的研究の結果として、天然成分由来の漢方薬類を採用し、結合剤および希釈剤にこれらを取り込んで経口剤形を形成した、経口摂取用の新しい製剤が開発された。
【0037】
したがって、本研究では、経口剤形の製剤を取り扱う。各製剤について、調剤法とともに成分の精製法を提示しながら、詳細に説明していく。これらの例は、例証することだけを目的としており、本発明の対象範囲を制限するとの解釈をすべきではない。
【0038】
これらの製剤の調剤における第一のステップでは、錠剤またはカプセルに処方するのに適した植物材料を製造する。植物の特定部位を採集し、室温で(25〜35℃)72時間かけて、あるいは材料が乾燥するまで、日陰で乾燥させる。次に、前記材料を微粉末に粉砕する。次に、特定量の前記粉末材料を室温(25〜35℃)で50%のアルコール水溶液を用いて完全に抽出する。抽出処理は、4〜7日間かけて特定の溶剤(1:8〜1:15の割合)の中に、特定量の前記植物材料を浸漬させた、蓋を閉じた容器内で実施する。このステップの終わりには、溶剤を注ぎ出し、必要に応じて濾過して、植物の堆積物を除去する。次に、40〜60℃かまたはこれより低い温度および真空の両条件下で、前記溶剤を蒸発させて濃縮する。次に、この濃縮液を凍結乾燥し、粉末剤形の最終製品を得る。次に、この最終製品を錠剤やカプセルを製造するための成分として使用することにより、経口剤形として製剤する。スターチなどの好適な結合剤やラクトースのような好適な希釈剤を添加して、前述した製剤を調剤する。
【実施例】
【0039】
例−1
ウトレリア属サリシフォリア 3wt%
シャタバリ 2wt%
フェンネル 3wt%
ウドンゲ 3wt%
スターチペースト 15wt%
タルク 1wt%
ラクトース 100%にするための必要量
【0040】
ウトレリア属サリシフォリア、シャタバリ、フェンネル、およびウドンゲを採集し、日陰で乾燥させる。次に、乾燥させた材料(1kg)を粉末にし、5日間かけて、50%アルコール水溶液(3L)を用いてエキスを抽出する。このステップの終わりには、溶剤を注ぎ出し、必要に応じて濾過して植物の堆積物を除去する。次に、50℃より低い温度および真空の両条件下で、このエキスを濃縮する。次に、このエキスを凍結乾燥して、粉末剤形のエキスを得る。
【0041】
15gのスターチを水と混合し、ペースト状になるまで加熱する。次に、重み付けされた量の植物エキスをスターチペーストと混合した後、100gにするのに十分な量だけラクトースを添加する。次に、前記成分をスターチペーストと適切に混ぜ合わせて、塊を形成する。次に、前記塊を造粒機内で顆粒状にした後、104°Fで乾燥させ、16メッシュの篩いにかける。前記乾燥顆粒にタルクを添加した後、打錠機でこれらを打錠して、均一な錠剤に成形する。
【0042】
この製剤は、急性および慢性の胃潰瘍および十二指腸潰瘍、さらには内出血の治療に効果がある。
【0043】
例−2
ウトレリア属サリシフォリア 2wt%
シャタバリ 1wt%
フェンネル 4wt%
ウドンゲ 4wt%
ラクトース 100%にするための必要量
【0044】
ウトレリア属サリシフォリア、シャタバリ、フェンネル、およびウドンゲを採集し、日陰で乾燥させる。次に、乾燥させた材料(1kg)を粉末にし、5日間かけて、50%アルコール水溶液(3L)を用いてエキスを抽出する。このステップの終わりには、溶剤を注ぎ出し、必要に応じて濾過して植物の堆積物を除去する。次に、50℃より低い温度および真空の両条件下で、このエキスを濃縮する。次に、このエキスを凍結乾燥して、粉末剤形のエキスを得る。重み付けされた量の植物エキス希釈剤としてのラクトースと混合した後に、硬ゼラチンカプセル内に充填し、分配する。
【0045】
この製剤は、急性および慢性の胃潰瘍および十二指腸潰瘍、さらには内出血の治療に効果がある。
【0046】
抗潰瘍活動の審査に使用した手順は、以下のとおりである。
1.エタノール誘発潰瘍(Ethanol induced ulcers):エタノール(1ml/200g、1時間)を投与してラットに胃潰瘍を発症させてから頚部脱臼によって犠牲にし、大弯に沿って胃を切開して潰瘍の有無を調べた。
2.アスピリン誘発潰瘍(Aspirin induced ulcers):200mg/kgの用量のアスピリンを実験動物に投与したところ、4時間後に潰瘍の発生が認められた。この動物の胃を摘出してから大弯に沿って切開したところ、実験プロトコルを知らない人物によって、胃腺部の潰瘍が発見された。
3.寒冷拘束ストレス誘発潰瘍(Cold restraint stress - induced ulcers):ラットを動けないように木板上に拘束し、4〜6℃で2時間放置する。次に、この実験動物を頚部脱臼によって犠牲にし、切開した胃に潰瘍の発生が認められた。
4.幽門部結紮誘発潰瘍(Pylorus ligated induced ulcers):ペントバルビタール(pentobarbitione)(35mg/kg、i.p.)を用いて実験動物に麻酔を施してから腹部を切開し、血液供給を阻害せずに、幽門部結紮術を行った。細心の注意を払って胃を元に戻し、2層の腹壁を結節縫合によって閉じた。この動物に対しては、術後期間において水を与えなかった。4時間後に胃を切開して臓器を収集し、潰瘍指数を算出した。
5.酢酸誘発潰瘍(Acetic acid induced ulcers):ペントバルビタール(pentobarbitone)(35mg/kg、i.p.)を用いて実験動物に麻酔を施した。そして、開腹して、胃を観察した。径6mmの円筒形ガラス管を、幽門部端から1cm離れた胃腺部の前漿膜面にしっかりと差し込んだ。50%の酢酸(動物1匹当たり0.06ml)をガラス管に吹き込み、胃壁に60%が付着したままになるようにした。この酸溶液を除去した後に、腹壁2層を閉じ、動物をかごに入れ、通常どおりに餌を与えた。実験後第6日目または11日目のどちらかに最期の治療薬を動物に投与してから犠牲にし、潰瘍の大きさによる治癒度を評価した。潰瘍の長さと幅の積(ラット1匹当たりmm)に基づいて潰瘍指数を算出した。
6.システアミン誘発十二指腸潰瘍(Cysteamine induced duodenal ulcers):400mg/kgの用量2回分のシステアミンを4時間の間隔で投与して、十二指腸潰瘍を誘発させた。薬物投与治療後にこの動物を犠牲にし、潰瘍の有無を観察した。
【0047】
【表1】

【0048】
HCの効果は、用量依存的であり、有意な(P:<0.05〜P:<0.001)潰瘍防御効果は、56.25〜83.59%の範囲であった。Hレセプターブロッカーのラニチジンは、CRS誘発潰瘍と幽門部結紮誘発潰瘍で有意な防御作用と防御率の向上(64.82および79.68%)を示した。
【0049】
例−3
ウトレリア属サリシフォリア 4wt%
シャタバリ 2wt%
フェンネル 3wt%
ウドンゲ 3wt%
重炭酸ナトリウム 0.5wt%
クエン酸 0.5wt%
ラクトース 100%にするための必要量
【0050】
ウトレリア属サリシフォリア、シャタバリ、フェンネル、およびウドンゲを採集し、日陰で乾燥させる。次に、乾燥させた材料(1kg)を粉末にし、5日間かけて、50%アルコール水溶液(3L)を用いてエキスを抽出する。このステップの終わりには、溶剤を注ぎ出し、必要に応じて濾過して植物の堆積物を除去する。次に、50℃より低い温度および真空の両条件下で、このエキスを濃縮する。次に、このエキスを凍結乾燥して、粉末剤形のエキスを得る。植物エキスを重炭酸ナトリウム、さらにはクエン酸と混合する。次に、この混合物を乾燥造粒し、篩いにかけた後に打錠して発泡錠を成形する。
【0051】
この製剤は、急性および慢性の胃潰瘍および十二指腸潰瘍、さらには内出血の治療に効果がある。
【0052】
例−4
シャタバリ 2wt%
フェンネル 4wt%
ウドンゲ 4wt%
スターチペースト 15wt%
タルク 1.5wt%
ラクトース 100%にするための必要量
【0053】
シャタバリ、フェンネル、およびウドンゲを採集し、日陰で乾燥させる。次に、乾燥させた材料(1kg)を粉末にし、5日間かけて、50%アルコール水溶液(3L)を用いてエキスを抽出する。このステップの終わりには、溶剤を注ぎ出し、必要に応じて濾過して植物の堆積物を除去する。次に、50℃より低い温度および真空の両条件下で、このエキスを濃縮する。次に、このエキスを凍結乾燥して、粉末剤形のエキスを得る。
【0054】
15gのスターチを水と混合し、ペースト状になるまで加熱する。次に、重み付けされた量の植物エキスをスターチペーストと混合した後、100gにするのに十分な量だけラクトースを添加する。次に、これらの成分をスターチペーストと適切に混ぜ合わせて、塊を形成する。次に、塊を造粒機内で顆粒状にした後、104°Fで乾燥させ、16メッシュの篩いにかける。この乾燥顆粒にタルクを添加した後、打錠機でこれらを打錠して、均一な錠剤を成形する。
【0055】
この製剤は、急性潰瘍の治療に効果がある。
【0056】
(ウトレリア属サリシフォリアを含有しない)HC製剤の場合、200mg/kgの用量で、幽門部結紮誘発潰瘍に限り、有意な(p<0.05)潰瘍防御作用が認められた。
【0057】
利点
1.胃の過剰な酸を中和する。
2.急性および慢性の胃潰瘍および十二指腸潰瘍に対して使用できる。
3.潰瘍の治癒と治療に使用できる。
4.内出血の治療に効果がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)2〜5wt/wt%のウトレリア属サリシフォリア(Utleria salicifolia)エキスと、
b)1〜3wt/wt%のシャタバリ(Asparagus recemosus)エキスと、
c)2〜4wt/wt%のフェンネル(Foeniculum vulgare)エキスと、
d)3〜5wt/wt%のウドンゲ(Ficus glomerata)エキスと、
e)83〜92wt/wt%の許容可能な医薬品賦形剤と、
を成分として有する抗潰瘍薬草製剤。
【請求項2】
錠剤、カプセル、粉末、または液体のいずれかの剤形として経口投与可能な、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
使用する植物エキスは、50%アルコール水溶液を用いて抽出することにより得られる、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
使用するアルコールは、エタノールである、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
使用する植物エキスの総重量比は、製剤全体の8〜17wt%の範囲内である、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
ウトレリア属サリシフォリアエキスは、根茎エキスである、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
使用する植物エキスは、葉、根茎または空中部位から選択された植物部位である、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
使用する賦形剤は、結合剤、希釈剤、滑剤、流動化剤、錠剤分解物質、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
希釈剤は、ラクトース、スターチ、マニトール、ソルビトール、キシリトール、デキシトロース、サクロースなどの糖類、微結晶性セルロース、塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、およびそれらの混合物である、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
使用する結合剤は、スターチペースト、ソルビトール、アルギン酸塩、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ピドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース誘導体、ゼラチン化スターチ、またはそれらの混合物である、請求項8に記載の製剤。
【請求項11】
使用する流動化剤は、シリカ誘導体、タルク、スターチ、およびこれらの混合物である、請求項8に記載の製剤。
【請求項12】
使用する滑剤は、金属ステアリン酸塩、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどの可溶性塩類、拭き付け乾燥ラウリル酸マグネシウム、ホウ酸、スターチ、ラクトース、またはそれらの混合物である、請求項8に記載の製剤。
【請求項13】
請求項1に記載の製剤を調剤するための方法であって、
a)薬用植物の必要な部位を採集するステップと、
b)ステップa)で採集した植物材料を日陰で乾燥させるステップと、
c)ステップb)で乾燥させた植物材料を粉砕し、粗植物粉末を得るステップと、
d)4〜7日の期間にわたって25〜35℃の温度範囲条件下で、ステップc)で粉末化した植物材料のエキスを、エタノール水溶液を用いて抽出してアルコール水溶液エキス得るステップと、
e)40〜60℃の温度範囲と減圧の両条件下で、ステップd)で得たエキスを濃縮するステップと、
f)ステップe)で濃縮したエキスを凍結乾燥して溶媒を除去して、必要な植物エキスを得るステップと、
g)ステップf)で得た植物エキスを、許容可能な医薬品賦形剤と混合して調剤し、必要な製剤を得るステップと、
を有する方法。
【請求項14】
ステップa)で、薬用植物は、ウトレリア属サリシフォリア、シャタバリ、フェンネル、およびウドンゲから使用される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
使用する薬用植物の部位は、葉、根茎または空中部位から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップd)で使用するエタノール水溶液は、6:4〜1:1の比率で水とエタノールとを含有する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
ステップd)で、植物と使用するエタノール水溶液との比率は、1:8〜1:15の範囲である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
使用する全植物エキスの総重量比は、製剤全体の8〜17wt%の範囲に相当する、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
賦形剤は、結合剤、希釈剤、滑剤、流動化剤、錠剤分解物質、またはそれらの混合物から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
希釈剤は、ラクトース、スターチ、マニトール、ソルビトール、キシリトール、デキシトロース、サクロースなどの糖類、微結晶性セルロース、塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、およびそれらの混合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
使用する結合剤は、スターチペースト、ソルビトール、アルギン酸塩、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ピドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース誘導体、ゼラチン化スターチ、またはそれらの混合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
使用する流動化剤は、シリカ誘導体、タルク、スターチ、およびこれらの混合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
使用する滑剤は、金属ステアリン酸塩、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどの可溶性塩類、拭き付け乾燥ラウリル酸マグネシウム、ホウ酸、スターチ、ラクトース、またはそれらの混合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
過剰な酸を中和することによって、胃の活性を緩和させるための、請求項1に記載の製剤の使用。
【請求項25】
胃の不快感、胃がん、胃痛、腸の不快感、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、および下痢を治療するための、請求項1に記載の製剤の使用。
【請求項26】
抗菌剤としての、請求項1に記載の製剤の使用。
【請求項27】
寒冷拘束ストレス誘発潰瘍において、100〜200mg/kgの用量で、潰瘍指数が11.2±3.1〜4.2±1.0の範囲内である、請求項1に記載の製剤の使用。
【請求項28】
寒冷拘束ストレス誘発潰瘍において、100〜200mg/kgの用量で、治癒率が83.59:56.25%である、請求項1に記載の製剤の使用。
【請求項29】
幽門部結紮誘発潰瘍において、100〜200mg/kgの用量で、潰瘍指数が6.1±0.8〜4.8±1.2の範囲内である、請求項1に記載の製剤の使用。
【請求項30】
幽門部結紮誘発潰瘍において、100〜200mg/kgの用量で、治癒率が57.93:66.90%である、請求項1に記載の製剤の使用。
【請求項31】
100〜200mg/kgの用量で、ラットの胃粘膜における脂質過酸化のキャパシティが0.1±0.01〜0.21±0.01の範囲である、請求項1に記載の製剤の使用。
【請求項32】
エタノール誘発胃潰瘍において、100〜200mg/kgの用量で、ラットの胃壁粘膜の防御が64.94〜86.75%の範囲であり、有意な向上を示す、請求項1に記載の製剤の使用。
【請求項33】
ラットのアスピリン誘発胃潰瘍において、100〜200mg/kgの用量で、潰瘍指数が7.1±2.2〜6.2±1.3で、治癒率が61.41〜66.30%である、請求項1に記載の製剤の使用。
【請求項34】
ラットにおける酢酸誘発性の慢性潰瘍治癒において、100〜200mg/kgの用量で、穿孔発生率が、対照群の31.2%に比べ、0.0〜2.1%である、請求項1に記載の製剤の使用。
【請求項35】
ラットのシステアミン誘発十二指腸潰瘍において、100〜200mg/kgの用量で、潰瘍発生率が、対照群の80%に比べ、0〜20%である、請求項1に記載の製剤の使用。

【公表番号】特表2006−512354(P2006−512354A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−561703(P2004−561703)
【出願日】平成14年12月19日(2002.12.19)
【国際出願番号】PCT/IB2002/005518
【国際公開番号】WO2004/056381
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(595023873)カウンシル・オブ・サイエンティフィック・アンド・インダストリアル・リサーチ (69)
【Fターム(参考)】