説明

抗炎症剤としてのグルココルチコイド受容体モジュレーター

本発明は、式(I)の化合物(式中、A、X、R1、R2およびR3は、本明細書で定義されたとおりである)およびその薬学的に許容しうる塩に関する。本発明は、また、式Iの化合物の使用方法および式Iの化合物を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシムおよびプロピオンアミド化合物、ならびに関連組成物および治療剤としての使用方法に関する。
【0002】
グルココルチコイド類は、喘息および慢性関節リューマチ等の炎症性疾患の有効な処置を提供する。しかしながら、深刻な全身性副作用のために、投与できる用量および長期間の有用性が制限されている。副作用には、視床下部・下垂体・副腎(HPA)軸の抑制、骨粗鬆症、若年期での骨成長減少、行動変化および脂質およびグルコース代謝における異常が含まれる。
【0003】
グルココルチコイド受容体(GR)は、核ホルモン受容体として公知の遺伝子ファミリーの一員である。それらの同系のリガンドを結合後、これらの受容体は活性化され、プラス方向とマイナス方向の双方に転写を制御しうる。この制御の詳細な機構は、完全には分っていないが、次第に明らかになってきている。グルココルチコイド類は、それらが細胞質内に存在するGRに結合する細胞内に、原形質膜を通って自由に拡散することができる。一旦結合されると、受容体におけるコンフォメーションの変化が、いくつかのシャペロンタンパク質の放出を引き起こし、GR/リガンド複合体が核に転位し、二量体化し、制御された遺伝子のプロモーター内の回帰性DNA配列に特異的かつ強固に結合するようにする。次いで、ホルモン結合受容体は、共活性化剤複合体として公知の一群のタンパク質を集める。この複合体は、転写を開始するのに必要であり、細胞の転写用の機構およびプロモーターの近傍でのクロマチンの開口に関与するヒストンアセチルトランスフェラーゼの双方を集めることにより作動する。それらのプロモーター中のGRE(グルココルチコイド応答要素)を含む多数の遺伝子の転写は、GRにより活性化される。これらは、糖新生に関与する遺伝子、中間的代謝、およびストレス応答を包含する。
【0004】
GREでのGRにより発揮される転写調節に加えて、多数の遺伝子、特に炎症性応答に関与するものは、これらの遺伝子のプロモーター中にはGREが見出されないので、別の機構を介して調節される必要がある。多数の炎症促進性遺伝子のプロモーターは、まさに転写因子NF−kBおよびAP−1の結合部位を含んでいる。GR/リガンド複合体は、NFkBまたはAP−1と直接相互作用することにより、また転写因子による転写上方制御を防ぐことにより、炎症促進性遺伝子の転写を抑制する。DNA結合が不可能なGR変異体でのインビトロの研究から、GRが介在する転写抑制は、遺伝子的に、トランス活性化と分離しうることが実証された。この分離は、野生型GRが同様のDNA結合性領域変異体で置き換えられたノックイン遺伝子組み換えマウスを発生させる研究により、さらに裏付けられている。これらのマウスは、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)等のGRE依存性GR標的遺伝子またはプロ−オピオメラノコルチン(POMC)等の負のGREとの相互作用を介してマイナス方向に制御する遺伝子を制御することができなかった。対照的に、これらのマウスは、NFkBまたはAP−1により活性化された遺伝子を転写抑制することができる。そこで、炎症のコルチコステロイド調節について現在認容されているモデルは、GR、NFkBおよびAP−1が複合体制御性ネットワークにおいて相互作用してサイトカイン発現の抑制をもたらすことを予測している。このモデルに従えば、転写抑制活性を保持し、かつ転写促進活性を失っているグルココルチコイドモジュレーターは、より少ない副腎抑制、行動変化、および糖新生に関連する副作用を有している。
【0005】
本発明は、式I:
【0006】
【化2】

【0007】
[式中、
Aは、CH2またはC=Oであり;
1は、HまたはC1〜C6アルキルであり;
2およびR3は、各々独立に、H、CF3、NO2、または場合により置換されている5員のヘテロアリール環であるか;あるいは
2およびR3は、一緒になって、C1〜C6アルキルおよびオキソよりなる群から選択される0〜2個の置換基で置換されている6員のヘテロシクリル環を形成するが、ただし、R2およびR3が一緒になって、オキサゾリニル環を形成する場合には、AはCH2であり;
Xは、OまたはN−OR4(ここで、R4は、HまたはC1〜C6アルキルである)である]
の化合物およびその薬学的に許容しうる塩に関する。
【0008】
本発明の他の態様は、グルココルチコイド受容体の調節を介しての炎症性疾患の処置方法であって、式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩を、それを必要とする被験対象に投与することを含む方法に関する。
【0009】
本発明の他の態様は、有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩;および薬学的に許容しうる賦形剤を含む医薬組成物である。
【0010】
この開示に記載のすべての刊行物は、それらの全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0011】
特記しない限り、明細書と特許請求の範囲を含むこの出願において使用される以下の用語は、以下の定義を有する。なお、明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「一つの、ある(a)、(an)」、「その(the)」は、文脈から明白に示される場合を除いて、複数の対象物を包含するものである。
【0012】
「アルキル」は、炭素原子および水素原子のみからなり、1〜12個の炭素原子を有する、1価の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素部分を意味する。「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子のアルキル基、すなわち、C1〜C6アルキルをいう。アルキル基の例は、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、オクチル、ドデシル等を包含する。
【0013】
「アリール」は、単環式、二環式または三環式芳香環よりなる、1価の環状芳香族炭化水素部分を意味する。アリール基は、場合により、本明細書中で定義したように置換されていてもよい。アリール基の例は、限定されるものではないが、場合により置換されている、フェニル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、インデニル、ペンタレニル、アズレニル、オキシジフェニル、ビフェニル、メチレンジフェニル、アミノジフェニル、ジフェニルスルフィジル、ジフェニルスルホニル、ジフェニルイソプロピリデニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフラニル、ベンゾジオキシリル、ベンゾピラニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサジノニル、ベンゾピペラジニル(benzopiperadinyl)、ベンゾピペラジニル(benzopiperazinyl)、ベンゾピロリジニル、ベンゾモルホリニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニル等を含み、これらの部分水素化誘導体を包含する。
【0014】
互換的に使用される、「ハロ」、「ハロゲン」、または「ハライド」は、置換基、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードをいう。
【0015】
「ハロアルキル」は、1以上の水素が同一または異なるハロゲンで置き換えられた、本明細書中で定義されたとおりであるアルキルを意味する。ハロアルキルの例は、−CH2Cl、−CH2CF3、−CH2CCl3、ペルフルオロアルキル(例えば、−CF3)等を包含する。
【0016】
「ヘテロアリール」は、N、OおよびSから選択される1、2または3個の環ヘテロ原子を含む少なくとも1個の芳香環を有し、残りの環原子が炭素である、5〜12個の環原子の、単環式または二環式基を意味し、ヘテロアリール基の結合点は、芳香環上であると理解される。ヘテロアリール環は、場合により、本明細書中で定義したように置換されていてもよい。ヘテロアリール部分の例は、限定されるものではないが、場合により置換されている、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピラジニル、チエニル、ベンゾチエニル、チオフェニル、フラニル、ピラニル、ピリジル、ピロリル、ピラゾリル、ピリミジル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチオピラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾピラニル、インドリル、イソインドリル、トリアゾリル、トリアジニル、キノキサリニル、プリニル、キナゾリニル、キノリジニル、ナフチリジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アゼピニル、ジアゼピニル、アクリジニル等を含み、これらの部分水素化誘導体を包含する。
【0017】
「ヘテロシクリル」は、1〜3個の環からなり、1、2または3または4個のヘテロ原子(窒素、酸素または硫黄から選択される)を組込んだ1価の飽和基である。ヘテロシクリル環は、場合により、本明細書中で定義したように置換されていてもよい。ヘテロシクリル部分の例は、限定されるものではないが、場合により置換されている、ピペリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼピニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キヌクリジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、チアジアゾリジニル、ベンゾチアゾリジニル、ベンゾアゾリリジニル、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、ジヒドロキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル等を包含する。
【0018】
「アリール」、「フェニル」、「ヘテロアリール」、「シクロヘキシル」、または「ヘテロシクリル」に関連して使用される、「場合により置換されている」は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ、ニトロ、オキソ、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、−COR(ここで、Rは、水素、アルキル、フェニル、またはフェニルアルキルである)、−(CR’R”)n−COOR(ここで、nは0〜5の整数であり、R’およびR”は、独立に、水素またはアルキルであり、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル、またはフェニルアルキルである)、または−(CR’R”)n−CONRab(ここで、nは0〜5の整数であり、R’およびR”は、独立に、水素またはアルキルであり、RaおよびRbは、互いに独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル、またはフェニルアルキルである)から選択される、1〜4個の置換基、好ましくは、1または2個の置換基で、独立して、場合により置換されている、アリール、フェニル、ヘテロアリール、シクロヘキシル、またはヘテロシクリルを意味する。
【0019】
「薬学的に許容しうる」は、一般的に安全で、非毒性であり、生物学的にも、または他の意味でも好ましくないものではない、医薬組成物の製造に有用であることを意味し、獣医学的、その外、ヒト医薬用途に受け入れられることを含む。
【0020】
ある化合物の「薬学的に許容しうる塩」は、本明細書中で定義されたとおりに、薬学的に許容しうるとともに、親化合物の望ましい薬理学的活性を有する塩を意味する。そのような塩は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等とで形成される酸付加塩;または有機酸、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸等とで形成される酸付加塩;あるいは
親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンにより置き換えられるか;または有機もしくは無機塩基と配位する場合に形成される塩を包含する。許容しうる有機塩基は、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミン等を包含する。許容しうる無機塩基は、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを包含する。
【0021】
好ましい薬学的に許容しうる塩は、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、酒石酸、クエン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛およびマグネシウムから形成される塩である。
【0022】
薬学的に許容しうる塩への言及は、すべて、同じ酸付加塩の、本明細書中で定義される、溶媒付加形態(溶媒和物)または結晶形態(多形)を含むものと理解されるべきである。
【0023】
用語「調節する(モジュレート)」は、例えば、標的分子の機能的な応答に結合し、それを刺激または阻害することにより、標的分子の機能を改変する分子の能力を意味する。「モジュレーター」は、標的分子と相互作用し、調節する分子を意味する。相互作用は、限定されるものではないが、本明細書中で定義された、アゴニスト、アンタゴニスト等を包含する。
【0024】
「アゴニスト」は、標的分子の機能と相互作用し、それを増強または増大させる分子を意味する。したがって、アゴニストは、部分的アゴニストおよび完全アゴニストを包含する。
【0025】
「アンタゴニスト」は、標的分子の機能を直接的にまたは間接的に阻害または抑制する化合物を意味する。したがって、アンタゴニストは、部分的アンタゴニストおよび完全アンタゴニストを包含する。
【0026】
「疾患」および「疾患状態」は、すべての、疾患、状態、症状、障害、または徴候を意味する。
【0027】
「炎症性疾患」は、炎症、アレルギー、および/または増殖性過程を伴う疾患状態または徴候を意味し、以下を包含しうる:
(i)肺疾患:あらゆる起源の慢性、閉塞性肺疾患、特に気管支喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD);成人呼吸窮迫症候群(ARDS);気管支拡張症;種々の起源の気管支炎;すべての形態の拘束性肺疾患、特にアレルギー性肺胞炎;すべての形態の肺浮腫、特に中毒性肺浮腫;すべての形態の、すべての起源の間質性肺疾患、例えば放射線間質性肺炎;ならびにサルコイドーシスおよび肉芽腫、特にベック病。
(ii)リューマチ疾患または自己免疫疾患または関節疾患:すべての形態のリューマチ疾患、特に慢性関節リューマチ、急性リューマチ熱、およびリウマチ性多発筋痛;反応性関節炎;リューマチ性軟組織疾患;他の起源の炎症性軟組織疾患;変形性関節疾患における関節炎症状(arthroses);外傷性関節炎;すべての起源の膠原病、例えば全身性エリテマトーデス、強皮症、多発筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、スティル疾患、およびフェルティ症候群;
(iii)アレルギー疾患:すべての形態のアレルギー反応、例えば血管神経性浮腫、花粉症、虫刺され、薬物へのアレルギー反応、血液製剤、造影剤等、アナフィラキシーショック(アナフィラキシー)、蕁麻疹、血管神経性浮腫、および接触性皮膚炎;
(iv)血管炎疾患:結節性汎動脈炎、結節性多発動脈炎、一時性動脈炎(arteritis temporalis)、ウェグナー肉芽腫、巨細胞性動脈炎、および結節性紅斑;
(v)皮膚疾患:アトピー性皮膚炎、特に幼児期のもの;乾癬;毛孔性紅色粃糠疹;種々の病毒、例えば光線、化学品、放浪(bum)等が引き金となる紅斑疾患;水疱症;苔癬様複合症の疾患;掻痒(例えば、アレルギー起源のもの);脂漏性皮膚炎;酒さ;尋常性天疱瘡;多形滲出性紅斑;亀頭炎;外陰炎;脱毛症、例えば円形脱毛症;および皮膚T細胞性リンパ腫;
(vi)腎臓疾患:ネフローゼ症候群、およびすべての種類の腎炎、例えば糸球体腎炎;
(vii)肝臓疾患:急性肝細胞崩壊;種々の起源の急性肝炎、例えばウイルス性、中毒性、薬物誘起のもの;ならびに慢性的な侵襲性肝炎および/または慢性的な間欠性肝炎;
(viii)胃腸疾患:炎症性腸疾患、例えば限局性腸炎(クローン病)、潰瘍性大腸炎;胃炎;消化性食道炎(還流性食道炎);および他の起源の胃腸炎、例えば非熱帯性スプルー;
(ix)直腸疾患:肛門湿疹;裂肛;痔疾;および突発性直腸炎;
(x)眼疾患:アレルギー性角膜炎、ブドウ膜炎、または虹彩炎;結膜炎;眼瞼炎;眼神経炎;脈絡膜炎;および交感性眼炎;
(xi)耳、鼻、咽喉(ENT)領域の疾患:アレルギー性鼻炎または花粉症;外耳炎、例えば接触性湿疹、感染等により引き起こされたもの;および中耳炎;
(xii)神経疾患:脳浮腫、特に腫瘍関連脳浮腫;多発性硬化症;急性脳脊髄炎;髄膜炎;急性脊髄損傷;脳卒中;および種々の形態の発作、例えば点頭痙攣;
(xiii)血液疾患:後天性溶血性貧血;および特発性血小板減少症;
(xiv)腫瘍疾患:急性リンパ性白血病;悪性リンパ腫;リンパ肉芽腫症;リンパ肉腫;広範囲転移、特に乳癌、気管支癌、および前立腺癌におけるもの;
(xv)内分泌疾患:内分泌性眼病;内分泌性眼窩病;甲状腺クリーゼ;ケルバイン甲状腺炎(Thyroiditis de Quervain);橋本甲状腺炎;バセドー病;肉芽腫性甲状腺炎;リンパ腫性甲状腺腫;およびグラーベ病;
(xvi)臓器および組織移植ならびに移植片対宿主疾患;
(xvii)重篤なショック状態、例えば敗血症性ショック、アナフィラキシーショック、および全身性炎症反応症候群(SIRS);
(xviii)以下における置換療法:先天性原発性副腎不全、例えば副腎性器症候群;後天性原発性副腎不全、例えばアジソン病、自己免疫副腎炎、感染後、腫瘍性、転移性等のもの;先天性続発性副腎不全、例えば先天性下垂体機能低下症;および後天性続発性副腎不全、例えば感染後、腫瘍性、転移性等のもの;
(xix)炎症起源の疼痛、例えば腰痛;ならびに
(xx)I型糖尿病(インスリン依存性糖尿病)、変形性関節症、ギラン・バレン症候群、経皮的径管冠動脈造影後の再狭窄、アルツハイマー病、急性および慢性疼痛、アテローム性動脈硬化症、再還流損傷、骨再吸収疾患、鬱血性心不全、心筋梗塞、熱傷、外傷に続発した多臓器損傷、急性化膿性髄膜炎、血液透析に伴う壊死性腸炎および症候群、リューコフェレシス(leukopheresis)、および顆粒球輸血を包含する種々の他の疾患状態または症状。
【0028】
「被験対象」は、哺乳動物および非哺乳動物を意味する。哺乳動物は、限定されるものではないが、ヒト;非ヒト霊長目、例えば、チンパンジーおよび他の類人猿およびサル種;家畜動物、例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、およびブタ;家庭動物、例えば、ウサギ、イヌ、およびネコ;実験動物、例えば、ラット、マウスおよびモルモット等の齧歯類などを含む哺乳綱区分のすべてのメンバーを意味する。非哺乳動物の例は、限定されるものではないが、鳥類などを含む。用語「被験対象」は、特定の年齢または性を示さない。
【0029】
疾患状態を「処置すること」または疾患状態の「処置」は、
(i)疾患状態を予防すること、すなわち、疾患状態にさらされうるか、または疾患状態の素因を有するが、まだ疾患状態を経験していないか、または症状を示していない被験対象に、疾患状態の臨床的症状を引き起こさないこと、
(ii)疾患状態を抑制すること、すなわち、疾患状態またはその臨床的症状の進行を抑えること、または
(iii)疾患状態を緩和すること、すなわち、疾患状態またはその臨床的症状を、一時的または永久的に退行させること
を包含する。
【0030】
化学反応に関しての用語、「処理する」、「接触する」および「反応させる」は、適切な条件下に、2種以上の反応剤を添加または混合して、指示されたおよび/または所望の生成物を製造することを意味する。指示されたおよび/または所望の生成物を製造する反応は、必ずしも、最初に添加した2種の反応剤の組合せから直接得られるものではなく、すなわち、最終的には、指示されたおよび/または所望の生成物の生成に導く、混合物中で製造される1以上の中間体が存在していてもよいと認識されるべきである。
【0031】
一つの実施態様において、本発明は、AがCH2である、式Iの化合物およびその薬学的に許容しうる塩を提供する。他の実施態様において、本発明は、AがC=Oである、式Iの化合物およびその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0032】
一つの実施態様において、本発明は、R1がHである、式Iの化合物およびその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0033】
一つの実施態様において、本発明は、R2がHであり、R3がCF3、NO2または場合により置換されている5員のヘテロアリール環である、式Iの化合物およびその薬学的に許容しうる塩を提供する。他の実施態様において、R2がHであり、R3が場合により置換されている5員のヘテロアリール環である、式Iの化合物およびその薬学的に許容しうる塩を提供する。さらに他の実施態様において、R2がHであり、R3が、パラ位にある、場合により置換されている5員のヘテロアリール環である、式Iの化合物およびその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0034】
一つの実施態様において、本発明は、R2およびR3が、一緒になって、C1〜C6アルキルおよびオキソよりなる群から選択される2個の置換基で置換されている6員のヘテロシクリル環を形成しており、ただし、R2およびR3が一緒になって、オキサゾリニル環を形成する場合には、AはCH2である、式Iの化合物およびその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0035】
一つの実施態様において、本発明は、Xが、OまたはN−OR4(ここで、R4は、HまたはC1〜C6アルキルである)である、式Iの化合物およびその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0036】
AがCH2である、式(I)の化合物は、スキーム1に記載の方法により製造しうる。
【0037】
【化3】

【0038】
中間体、式(II)の1−ブロモ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンは、出発原料、1−ブロモ−2−トリフルオロメチルベンゼンおよび1−シクロブチリデン−プロパン−2−オンを用いて製造することができる。ジイソプロピルエチルアミンとジメチルホルムアミドの溶液中での式(II)の中間体化合物と式(III)の置換されているフェニルアミンとの反応は、式(I)の2−オキソ−プロピルアミン化合物をもたらす。(アルキル置換基を有するか有しない)ヒドロキシルアミンとのさらなる反応は、式(I)のプロパノンオキシム化合物をもたらす。
【0039】
スキーム2は、上記のようなAがC=Oである、式(I)の化合物を得るのに使用されるアプローチを記載している。
【0040】
【化4】

【0041】
2−トリフルオロメチル−フェニルアセトニトリルは、1,2−ジブロモプロパンと混合すると、シクロブタンカルボニトリル化合物を生成し、それは、次いで、トルエン中で水素化ジイソブチルアルミニウムと反応させると、式(IV)のシクロブタンカルバルデヒド中間体をもたらす。その後、この中間体は、ジエトキシ−ホスホリル−エトキシ−酢酸エチルエステルと混合し、続いて2つの加水分解工程により、式(V)の2−オキソ−3−[1−2−(トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル−プロピオン酸を生成する。最後に、塩化チオニルとジメチルアセトアミドの存在下に、式(III)のフェニルアミンとの反応は、式(I)のプロピオンアミド化合物をもたらす。
【0042】
一般的に、本願で使用する命名法は、IUPAC系統的命名法の生成のためのBeilstein Instituteコンピュータ化方式AUTONOM(商標)v.4.0に基づく。
【0043】
本明細書中に示す化学構造は、ISIS(登録商標)バージョン2.2を用いて作成した。本明細書中の構造における炭素、酸素および窒素原子上のすべての空いている結合価、水素原子の存在を意味する。
【0044】
本発明は、少なくとも1種の本発明の化合物、あるいは個々の異性体、異性体のラセミもしくは非ラセミ混合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物を、少なくとも1種の薬学的に許容しうる担体、および場合により他の治療的および/または予防的成分と一緒になって含む医薬組成物を包含する。
【0045】
一般的に、本発明の化合物は、治療上有効量で、類似の用途に使用できる薬剤を投与する妥当な様式のいずれかで投与される。適切な投与量の範囲は、多くのファクター、例えば処置すべき疾患の重篤度、被験対象の年齢および相対的な健康状態、使用する化合物の効力、投与の経路および形態、投与が目的とする徴候、関与する医師の選択および経験に応じて、典型的には1〜500mg/日、好ましくは1〜100mg/日、最も好ましくは1〜30mg/日である。そのような疾患を処置する分野の当業者であれば、過度の実験をせずに、個人の知識および本願の開示により、特定の疾患に対する本発明の化合物の治療上有効量を確定することができる。
【0046】
一般的に、本発明の化合物は、経口(口腔および舌下を含む)、直腸内、経鼻、局所的、経肺、経膣、もしくは非経口的(筋肉内、動脈内、脊髄内、皮下および静脈内を含む)投与に好適なものを包含する医薬製剤として、または吸入もしくは通気による投与に好適な形態で投与する。好ましい投与様式は、一般に、苦痛の度合いに応じて調節できる、便利な一日投薬計画を使用する経口投与である。
【0047】
本発明の化合物は、1種以上の慣用の助剤、担体、または希釈剤と一緒になって、医薬組成物の形態および単位投薬形態にすることができる。医薬組成物および単位投薬形態は、他の活性化合物または活性成分を含むか、または含まずに、慣用の成分を慣用の比率で含んでなり、単位投薬形態は、採用された意図された1日当たりの用量範囲に応じた、任意の適切な有効量の活性成分を含みうる。医薬組成物は、固形剤、例えば、錠剤もしくは充填カプセル剤、半固形剤、散剤、徐放性製剤、または液剤、例えば液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤もしくは経口用の充填カプセル剤;あるいは直腸または膣内投与用の坐剤の形態で;または非経口的に使用するための無菌注射溶液の形態で使用できる。したがって、1錠あたり、約1ミリグラム、またはより広く、約0.01〜約100ミリグラムの活性成分を含む調合物が適切な代表的単位投薬形態である。
【0048】
本発明の化合物は、多種多様な経口投与剤形で調合し得る。医薬組成物および投薬形態は、本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を活性成分として含み得る。薬学的に許容され得る担体は、固体でも液体でもよい。固体形態の製剤は、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤および分散性顆粒剤を包含する。固体担体は、希釈剤、着香剤、可溶化剤、滑剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤またはカプセル封入材料としても作用し得る1種以上の物質であり得る。散剤では、担体は一般に細かく分割した固体であり、それは細かく分割した活性成分との混合物である。錠剤では、活性成分は一般に、必要な結合能力を有する担体と適切な比率で混合され、所望の形状および大きさに圧縮される。散剤および錠剤は、好ましくは約1〜約70%の活性化合物を含む。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバター等を含むが、これらに限定されない。用語「製剤」は、活性化合物と担体としてのカプセル封入材料との剤形を包含するものであり、活性成分が、担体を伴うかまたは伴わずに、それに関連する担体により取り囲まれているカプセル剤を与える。同様に、カシェ剤およびトローチ剤(lozenges)も包含される。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、およびトローチ剤は、固体形態として、経口投与に適切である。
【0049】
経口投与に適切な他の形態は、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水性液剤、水性懸濁剤を包含する液体形態製剤、または使用の直前に液体形態製剤に変換する固体形態製剤を含む。乳剤は、溶液中で、例えばプロピレングリコール水溶液中で調製されてもよく、また乳化剤、例えばレシチン、ソルビタンモノオレエートまたはアカシアを含んでいてもよい。水性溶液剤は、活性成分を水に溶解させ、適切な着色剤、香料、安定化剤および増粘剤を加えることにより調製することができる。水性懸濁剤は、細かく分割した活性成分を水中に、粘性物質、例えば天然または合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、その他の周知の懸濁化剤を用いて分散させることにより、調製することができる。固体形態製剤は、液剤、懸濁剤、および乳剤を含み、活性成分に加えて、着色剤、香料、安定化剤、緩衝剤、人工または天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含んでいてもよい。
【0050】
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注射による、例えばボーラス注射または持続注入)用に調合してもよく、アンプル剤、予め充填した注射器、小容量注入剤中の単位投薬形態で、または保存剤を加えた繰り返し投薬用容器として提供し得る。組成物は、油性または水性ビヒクル中の、懸濁剤、液剤、または乳剤、例えば、水性ポリエチレングリコール中の液剤のような形態を取ってもよい。油性または非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えばオリーブ油)、および注射用有機エステル(例えばオレイン酸エチル)が挙げられ、製剤用助剤、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤または懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤を含んでいてもよい。あるいは、活性成分は、使用前に適切なビヒクル、例えば発熱物質を含まない滅菌水で構成するための、滅菌固体の無菌的単離によりまたは溶液から凍結乾燥により得られる粉末形態であってもよい。
【0051】
本発明の化合物は、表皮への局所投与用に、軟膏剤、クリーム剤またはローション剤として、または経皮パッチ剤として調合してもよい。軟膏剤およびクリーム剤は、例えば適切な増粘剤および/またはゲル化剤を加えた水性または油性基剤で調合してもよい。ローション剤は、水性または油性基剤で調合してもよく、一般的に1種以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤または着色剤をも含む。口腔への局所投与に適切な製剤は、着香した基剤、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に活性剤を含むトローチ剤;不活性基剤、例えばゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア中に活性成分を含む香錠;ならびに適切な液体担体中に活性成分を含むマウスウォッシュ剤を含む。
【0052】
本発明の化合物は、坐剤として投与されるように処方してもよい。低融点ワックス、例えば脂肪酸グリセリドまたはココアバターの混合物をまず融解させ、活性成分を例えば攪拌により均質に分散させる。次いで、溶融した均質な混合物を慣用の大きさの型に流し込み、冷却させ、固化させる。
【0053】
本発明の化合物は、膣内投与用に処方してもよい。活性成分に加えてそのような担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤またはスプレー剤がこの分野で適切であることが知られている。
【0054】
本発明の化合物は、鼻内投与用に処方してもよい。慣用の手段、例えばドロッパー、ピペットまたはスプレーにより、溶液剤または懸濁剤を鼻腔に直接適用する。製剤は、単回または複数回投薬形態で提供されてもよい。後者のドロッパーまたはピペットの場合、患者が、適切な所定量の液剤または懸濁剤を投与することにより達成される。スプレー剤の場合、これは、例えば計量噴霧スプレーポンプにより達成することができる。
【0055】
本発明の化合物は、鼻内投与を含む、エアゾール投与用、特に呼吸器投与用に処方してもよい。化合物は一般的に、例えば5ミクロン以下のオーダーの小さな粒子径を有する。そのような粒子径は、この分野で公知の手段、例えば微粉化により得てもよい。活性成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタンもしくはジクロロテトラフルオロエタン、または二酸化炭素あるいは他の適切なガスなどの適切な噴射剤を有する加圧パックで提供される。エアゾールは、レシチンなどの界面活性剤をも好適に含みうる。投薬量は、計量バルブにより制御してもよい。あるいは、活性成分は、乾燥散剤、例えば適切な粉末基剤、例えばラクトース、デンプン、デンプン誘導体(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース)、およびポリビニルピロリドン(PVP)中の化合物の粉末混合物の形態で提供しうる。粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成する。粉末組成物は、単位投薬形態、例えばゼラチンのカプセルもしくはカートリッジまたはブリスターパックで存在してもよく、そこから粉末を吸入器により投与してもよい。
【0056】
所望の場合、製剤は、活性成分を、徐放または制御放出投与に適した腸溶コーティングを使用して製造することができる。例えば、本発明の化合物は、経皮または皮下薬物送達デバイスに処方することができる。これらの送達システムは、化合物の徐放が必要な場合および処置計画での患者のコンプライアンスが極めて重要な場合に有利である。経皮送達システム中の化合物は、しばしば皮膚に接着する固体支持体に付着される。目的の化合物は、浸透促進剤、例えば、エイゾン(Azone、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)と組み合わせることもできる。徐放送達システムは、手術または注入により皮下層中に皮下挿入される。皮下インプラントでは、脂溶性の膜、例えば、シリコーンゴムまたは生物分解性ポリマー、例えばポリ乳酸中に本化合物を封入する。
【0057】
医薬製剤は、単位投薬形態であることが好ましい。そのような形態では、製剤は、適量の活性成分を含む単位投薬量に再分割されている。単位投薬形態は、包装された製剤であることができ、その包装は、個別量の製剤、例えばパック化錠剤、カプセル剤、およびバイアルまたはアンプル中の粉末を含む。また、単位投薬形態は、それ自体が、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、またはトローチ剤であることができ、あるいは包装形態にある適当数のこれらのいずれかであることができる。
【0058】
他の適切な薬学的担体およびそれらの製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995、E.W. Martin編、Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Pennsylvaniaに記載されている。本発明の化合物を含む代表的な薬学的製剤を、下記の実施例に記載する。
【0059】
実施例
下記の調製例および実施例は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施できるために示されている。これらは、本発明の範囲を制限すると考えられるべきではなく、本発明の例示および代表例としてのみ考えられるべきである。以下の略語を実施例中で使用する:EtOAc:酢酸エチル;THF:テトラヒドロフラン;RT:室温。
【0060】
実施例1:4−メチル−6−{2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピルアミノ}−ベンゾ[d][1,2]オキサジン−1−オン
【0061】
前駆体
1−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オン
臭化2−トリフルオロメチル−フェニルマグネシウムの溶液は、窒素雰囲気下に、THF中で、マグネシウム(1.02g、43mmol)と1−ブロモ−2−トリフルオロメチル−ベンゼン(10.31g、46mmol)から調製し、−5℃に冷却した。ヨウ化第一銅(3.53g、18.5mmol)を加え、得られた混合物を、−5℃で5分間撹拌し、その後、−70℃に急速に冷却した。1−シクロブチリデン−プロパン−2−オン(1.2g、11mmol)をシリンジで混合物に滴下し、次いで、−70℃で1時間撹拌し、RTにまで温めた。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、THFを真空中でエバポレートした。得られた残渣を塩化メチレンで抽出した。合わせた有機抽出物を、真空中でエバポレートして濃縮した。残渣を、溶離液の濃度を徐々に増加させながら(2%〜10%、エーテル−ヘキサン)シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで精製して、生成物5.56gを得た。
【0062】
【表1】

【0063】
1−ブロモ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オン
MeOH(15ml)中の1−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オン(2.56g、10mmol)の氷冷溶液に、Br2(0.5ml、10mmol)をシリンジでゆっくり加えた。反応混合物を0℃で15分間、次いで、RTで30分間撹拌した。反応混合物に、H2O(15ml)を加え、混合物をRTで15分間撹拌した。反応をTLCでモニターしたところ、TLCは、H2O添加の15分後に、出発原料を示さなかった。得られた溶液を、EtOAc中25%n−ヘキサンで2回抽出した。合わせた有機抽出物を、飽和NaHCO3水溶液で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中でエバポレートして濃縮した。残渣を、2%エーテル−ヘキサンでのシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで精製して、生成物1.97gを得た。
【0064】
【表2】

【0065】
4−メチル−6−{2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピルアミノ}−ベンゾ[d][1,2]オキサジン−1−オン
【0066】
【化5】

【0067】
DMF10ml中の1−ブロモ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オン0.35g(1.04mmol)、6−アミノ−4−メチル−ベンゾ[d][1,2]オキサジン−1−オン0.184g(1.04mmol)およびジイソプロピルエチルアミン0.2ml(1.1mmol)の溶液を、80℃で一晩撹拌した。反応混合物をEtOAcとH2Oの間で分配した。有機層を分離し、H2Oで2回洗浄し、乾燥し、真空中でエバポレートして濃縮した。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(EtOAc−ヘキサン10%および20%)で精製して、生成物26mgを得た。
【0068】
【表3】

【0069】
実施例2:1−(4−メチル−1−オキソ−1H−ベンゾ[d][1,2]オキサジン−6−イルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンオキシム
【0070】
【化6】

【0071】
EtOH(8ml)中の4−メチル−6−{2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピルアミノ}−ベンゾ[d][1,2]オキサジン−1−オン29mgの溶液を、H2OおよびNaOAc(15mg)中の50%NH2OH・HCl溶液1mlで処理した。溶液を還流下に2時間加熱し、エバポレートした。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(10%〜40%のEtOAc−ヘキサン)で精製して、生成物2mgを得た。
【0072】
【表4】

【0073】
実施例3:1−(3−オキサゾール−5−イルフェニルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンオキシム
【0074】
前駆体
4−ニトロ−N−(3−オキサゾール−5−イルフェニル)ベンゼンスルホンアミド
ピリジン(20ml)中の3−オキサゾール−5−イルフェニルアミン(0.5g,3.1mmol)および4−ニトロ−ベンゼンスルホニルクロリド(0.91g,4.1mmol)の溶液を、RTで週末の間撹拌した。残渣を、EtOAcとH2Oの間で分配した。有機層を分離し、H2Oで2回、飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄し、乾燥し、真空中でエバポレートして濃縮した。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(5%〜15%のEtOAc−ヘキサン)で精製して、生成物0.63gを得た。
【0075】
【表5】

【0076】
1−メタンスルホニル−4−ニトロ−ベンゼン−1−(3−オキサゾール−5−イルフェニルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オン
DMF2ml中の4−ニトロ−N−(3−オキサゾール−5−イルフェニル)ベンゼンスルホンアミド0.14g(0.41mmol)の溶液を、窒素下に、NaH(60%油懸濁物15mg、0.39mmol)と、RTで2時間撹拌した。1−ブロモ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オン0.15g(0.045mmol)を加えた。混合物をRTで一晩撹拌した。反応混合物を、EtOAcとH2Oの間で分配した。有機層を分離し、H2Oで2回洗浄し、乾燥し、エバポレートして濃縮した。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(5%〜20%のEtOAc−ヘキサン)で精製して、生成物162mgを白色固体として得た。
【0077】
【表6】

【0078】
1−(3−オキサゾール−5−イルフェニルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オン
1−メタンスルホニル−4−ニトロ−ベンゼン−1−(3−オキサゾール−5−イルフェニルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オン(160mg,0.27mmol)、PhSH(0.082ml、0.8mmol)、K2CO3(149mg、1.08mmol)、MeCN(10ml)およびDMSO(0.25ml)の混合物を、30分間加熱還流した。反応混合物を、EtOAcとH2Oの間で分配した。有機層を分離し、H2Oで2回洗浄し、乾燥し、エバポレートして濃縮した。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(5%〜15%のEtOAc−ヘキサン)で精製して、生成物43.7mgを得た。
【0079】
【表7】

【0080】
1−(3−オキサゾール−5−イルフェニルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンオキシム
【0081】
【化7】

【0082】
は、実施例1と同様にして、1−(3−オキサゾール−5−イルフェニルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンから得た。
【0083】
【表8】

【0084】
実施例4:1−(4−オキサゾール−5−イルフェニルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンオキシム
【0085】
前駆体
4−ニトロ−N−(4−オキサゾール−5−イルフェニル)ベンゼンスルホンアミドは、4−ニトロ−N−(3−オキサゾール−5−イルフェニル)ベンゼンスルホンアミドと同様にして、4−オキサゾール−5−イルフェニルアミンおよび4−ニトロ−ベンゼンスルホニルクロリドを用いて得た。
MS(ei):M(+)+1=346
【0086】
1−メタンスルホニル−4−ニトロ−ベンゼン−1−(4−オキサゾール−5−イルフェニルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンは、1−メタンスルホニル−4−ニトロ−ベンゼン−1−(3−オキサゾール−5−イルフェニルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンと同様にして、4−ニトロ−N−(4−オキサゾール−5−イルフェニル)ベンゼンスルホンアミドおよび1−ブロモ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンを用いて得た。
【0087】
【表9】

【0088】
1−(4−オキサゾール−5−イルフェニルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンは、1−(3−オキサゾール−5−イルフェニルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンと同様にして得た。
【0089】
【表10】

【0090】
1−(4−オキサゾール−5−イルフェニルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンオキシム
【0091】
【化8】

【0092】
は、1−(3−オキサゾール−5−イルフェニルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンオキシムと同様にして得た。
【0093】
【表11】

【0094】
実施例5:N−(4−オキサゾール−5−イルフェニル)−2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオンアミド
【0095】
前駆体
1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブタンカルボニトリル
エーテル36ml中の(2−トリフルオロメチル−フェニル)−アセトニトリル12.6gおよび1,2−ジブロモプロパン7.6mlの溶液を、滴下ロートを通して、DMSO85ml中の水素化ナトリウム3.62gの懸濁液に、0℃でゆっくり加えた。添加後、氷水浴をRTまでゆっくり温め、反応混合物をRTで一晩撹拌した。反応を、イソプロピルとH2Oで注意深くクエンチした。懸濁液は、透明になった。有機層を分離し、水層をエーテルで2回抽出した。合わせた有機抽出物を一緒にし、乾燥し、真空中でエバポレートして濃縮した。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(EtOAc−ヘキサン2%〜4%)で精製して、生成物8.5gを白色固体として得た。
【0096】
【表12】

【0097】
1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブタンカルバルデヒド
水素化ジイソブチルアルミニウム50.7mlを、2時間かけて、トルエン85ml中の1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブタンカルボニトリル8.5gの溶液に、0℃で滴下した。添加後、氷水浴をRTまでゆっくり温め、反応混合物をRTで一晩撹拌した。反応混合物を、氷水中の5%硫酸200mlに注ぎ、10分間撹拌した。混合物を、エーテルで4回抽出した。合わせたエーテル抽出物を乾燥し、真空中でエバポレートして濃縮した。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(EtOAc−ヘキサン5%)で精製して、生成物6.2gを得た。
【0098】
【表13】

【0099】
2−エトキシ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−アクリル酸エチルエステル
n−ブチルリチウム4.4ml(11mmol)を、THF25ml中のジイソプロピルアミン1.28ml(9.2mmol)の溶液に0℃で滴下し、0℃で30分以上撹拌した。次いで、ホスホネート、(ジエトキシ−ホスホリル)−エトキシ−酢酸エチルエステル1.97g(7.4mmol)を滴下し、0℃で20分以上撹拌した。THF5ml中の1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブタンカルバルデヒド1.4g(6.1mmol)を、0℃で滴下した。氷水浴をRTまでゆっくり温め、反応混合物をRTで週末の間撹拌した。反応を、飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチした。得られた混合物をEtOAcで抽出した。EtOAc溶液を、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥し、真空中でエバポレートして濃縮した。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(EtOAc−ヘキサン3%)で精製して、生成物0.61gを得た。
【0100】
【表14】

【0101】
2−エトキシ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−アクリル酸
2−エトキシ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−アクリル酸エチルエステル4.6g、水酸化ナトリウム4.3g、EtOH100ml、水50ml(エタノール−水 2:1)を混合し、RTで2時間撹拌した。溶媒を真空中でエバポレートし、残渣を水とEtOAcの間で分配し、水溶液を1N塩酸で酸性化し、EtOAcで抽出した。EtOAc抽出物を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥し、真空中でエバポレートして濃縮した。生成物4.3gが得られ、さらに精製することなく、次の反応に使用した。
【0102】
【表15】

【0103】
2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオン酸
2−エトキシ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−アクリル酸4.6gを、1M硫酸100mlおよび濃酢酸15ml中、100℃で一晩撹拌した。水を加え、EtOAcで抽出し、EtOAc溶液を乾燥し、真空中でエバポレートして濃縮した。生成物(4.1g)が、褐色油状体として得られた。
【0104】
【表16】

【0105】
N−(4−オキサゾール−5−イルフェニル)−2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオンアミド
【0106】
【化9】

【0107】
塩化チオニル0.052mlを、ジメチルアセトアミド2ml中の2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオン酸0.1gの溶液に−5℃で加え、−5℃で30分間撹拌した。次いで、4−オキサゾール−5−イル−フェニルアミン56mgを固体状態で加え、RTで1時間撹拌した。炭酸カリウムを加え、RTで一晩撹拌した。反応を水でクエンチし、EtOAcで抽出した。合わせたEtOAc抽出物を水で2回洗浄し、乾燥し、エバポレートして濃縮した。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(EtOAc−ヘキサン10%〜20%)で精製して、生成物63mgを得た。
【0108】
【表17】

【0109】
実施例6:N−(3−イソオキサゾール−5−イルフェニル)−2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオンアミド
【0110】
【化10】

【0111】
は、N−(4−オキサゾール−5−イルフェニル)−2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオンアミドと同様にして、2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオン酸および3−イソオキサゾール−5−イル−フェニルアミンを用いて得た。
【0112】
【表18】

【0113】
実施例7:調合物
【0114】
種々の経路で送達される医薬製剤は、下記の表で示されるように処方される。表中で使用される「活性成分」または「活性化合物」は、一つ以上の式Iの化合物を意味する。
【0115】
経口投与用組成物
【表19】

【0116】
成分を混合し、それぞれ約100mgを含有するカプセルに調剤する。1カプセルが1日用量のほぼ全てとなる。
【0117】
経口投与用組成物
【表20】

【0118】
成分を合わせ、メタノールのような溶媒を使用して造粒する。次に処方物を乾燥させ、適切な打錠機を用いて錠剤(活性化合物約20mg含有)を形成する。
【0119】
経口投与用組成物
【表21】

【0120】
成分を混合して、経口投与用の懸濁剤を形成する。
【0121】
非経口製剤
【表22】

【0122】
活性成分を注射用水の一部に溶解する。次いで、塩化ナトリウムの十分な量を撹拌しながら加えて、溶液を等張にする。注射用水の残りで溶液の重量にして、0.2ミクロン膜フィルターを通して濾過し、滅菌条件下で包装する。
【0123】
坐剤製剤
【表23】

【0124】
成分を一緒に溶融し、蒸気浴で混合し、全重量2.5gを含有する型に注ぐ。
【0125】
局所用製剤
【表24】

【0126】
水以外の全ての成分を合わせ、撹拌しながら約60℃に加熱する。次いで、十分な量の水を激しく撹拌しながら約60℃で加え、成分を乳化し、次に、100gにするのに十分な量の水を加える。
【0127】
鼻内スプレー製剤
約0.025〜0.5%の活性化合物を含有するいくつかの水性懸濁液を、鼻内スプレー製剤として調製した。場合により、製剤は、例えば、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストロース等の非活性成分を含有する。pHを調整するために、塩酸または水酸化ナトリウムを加えてもよい。鼻内スプレー製剤を、1回当り約50〜100μLの製剤を送出する鼻内スプレー計量ポンプを介して送出してもよい。典型的な投与計画は、4〜12時間毎に2〜4回のスプレーである。
【0128】
実施例8:グルココルチコイド受容体結合アッセイ
グルココルチコイド受容体に対するグルココルチコイド受容体アンタゴニストの親和性を、アンタゴニストがトリチウム化デキサメタゾンと競合する能力により、競合的結合アッセイで決定する。
【0129】
すべてのアッセイ工程は、96穴プレート中、氷上で行った。結合バッファーは、10mM リン酸カリウムpH7.4、20mM Na2Mo4、100μM EDTA、2%DMSO、および5mM DTTを含んでいた。ヒト組み換え精製グルココルチコイド受容体は、1nMで使用した。試験した化合物は、2%までのDMSO最終濃度であった。非特異的結合条件は、1μMデキサメタゾンであった。競合アッセイに使用した放射性リガンドは、2nM 3H−デキサメタゾン(83Ci/mmol原液)であった。バッファー、化合物またはビヒクル、GR、および放射性リガンドは、4℃で一晩インキュベートした。ユニフィルターGF/B96穴フィルタープレートは、インキュベーション後に、0.5%PEIで処理した。試料を、細胞収集器により、フィルタープレートに移した。フィルタープレートは、50mM トリスpH7.5および5mM EDTA洗浄バッファーで5回洗浄した。試料を65℃で約1時間乾燥した。シンチレーション液を50μL/穴でフィルタープレートに加え、3HcpmをTopCountシンチレーションカウンターで測定した。本発明のいくつかの化合物の結合アッセイの結果を、表1に示す。
【0130】
【表25】

【0131】
実施例9:転写抑制活性:LPS刺激ヒト末梢血単核細胞でのサイトカイン産生の阻害
血液を、健康なヒト志願者から、静脈穿刺によりヘパリン添加管に採取した。血液を、ダルベッコのリン酸緩衝食塩水(PBS)で1:1に希釈し、50ml遠心管中のヒストパーク(Histopaque)−1.077上に重層した。管を、RTで800xgで25分間遠心分離した。血漿/ヒストパーク界面の単核細胞を収集し、PBSで3回洗浄し、10%ウシ胎児血清(FBS)と100単位/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシンを補足したRPMI1640培地中に1x106細胞/mlで再懸濁した。この細胞懸濁物のアリコート(250μl)を、殺菌ポリプロピレンプレート中の種々の希釈度(最終DMSO濃度は0.5%)の化合物と共に、37℃、5%CO2で30分間プレインキュベートした。LPSを1ng/mlに加え、プレートをさらに3時間、インキュベーターに戻した。培地のアリコートを取り、−80℃に凍結した。これらの試料のサイトカインレベル(TNFα、IL6およびIL8)を、BD-Pharmingen OptEIAキットを用いて、製造者の指示に従って、測定した。IC50は、1ng/mlLPSに応答してのサイトカイン産生を、本発明の化合物なしの対照穴中のサイトカイン産生の50%まで減少させる化合物の濃度として定義した。
【0132】
実施例10:転写促進活性:ラット肝細胞でのチロシンアミノトランスエラーゼ活性
H4IIEラットヘパトーマ細胞を、10%FBSを補足したcDMEMに蒔き(24穴プレート中、4x105細胞/ml)、37℃、5%CO2下で24時間インキュベートした。種々の希釈度(最終DMSO濃度は0.5%)の化合物を加え、プレートをさらに24時間インキュベートした。培地を取り除き、細胞単層を、注意深くPBSで1回洗浄し、0.2ml細胞溶解バッファー(10mM トリスpH7.5、10mM EDTA、0.25M スクロース)を加えた。プレートは、−70℃で保存できた。細胞を、3回凍結融解することにより溶解し;溶解物を5分間遠心分離して透明化した。標準としての40μl/穴のp−ヒドロキシベンズアルデヒド、バッファー対照、または溶解物のアリコートを、透明96穴プレートに加えた。20μl/穴TATバッファー(50mM KH2PO4 pH7.6、5mg/ml BSA、1mM EDTA、0.1mM DTT)を加え、続いて、140μl/穴アッセイミックス(8.2mM チロシン溶液、0.125M KH2PO4、20mM α−ケトグルタレート、0.3mM ピリドキサール5−リン酸)を加えた。反応物を、37℃で15分間インキュベートし、20μl/穴の7N KOHを加えて停止させ、続いて、37℃で30分間、暗所でインキュベートした。生成物の生成は、340nmでの吸光度でモニターし、p−ヒドロキシベンズアルデヒド標準曲線から算出された、nmol/分/mgタンパク質で表した。各化合物に対するEC50は、その化合物についての最大TAT誘導の50%をもたらす化合物の濃度として定義した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


[式中、
Aは、CH2またはC=Oであり;
1は、HまたはC1〜C6アルキルであり;
2およびR3は、各々独立に、H、CF3、NO2、または場合により置換されている5員のヘテロアリール環であるか;あるいは
2およびR3は、一緒になって、C1〜C6アルキルおよびオキソよりなる群から選択される0〜2個の置換基で置換されている6員のヘテロシクリル環を形成するが、ただし、R2およびR3が一緒になってオキサゾリニル環を形成する場合には、AはCH2であり;
Xは、OまたはN−OR4(ここで、R4は、HまたはC1〜C6アルキルである)である]
の化合物およびその薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
AがCH2であり、R1がHである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
2が、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリルおよびテトラゾリルよりなる群から選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
2およびR3が、一緒になって、C1〜C6アルキルおよびオキソよりなる群から選択される0〜2個の置換基で置換されているオキサゾリニル環を形成する、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
6−{2−ヒドロキシイミノ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピルアミノ}−4−メチル−ベンゾ[d][1,2]オキサジン−1−オン;
4−メチル−6−{2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピルアミノ}−ベンゾ[d][1,2]オキサジン−1−オン;
1−(4−イソオキサゾール−5−イル−フェニルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンオキシム;
1−(3−イソオキサゾール−5−イル−フェニルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンオキシム;
1−(3−オキサゾール−5−イル−フェニルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンオキシム;
1−[3−(1H−テトラゾール−5−イル)−フェニルアミノ]−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンオキシム;
1−(4−オキサゾール−5−イル−フェニルアミノ)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロパン−2−オンオキシム;
2−エトキシイミノ−N−(4−オキサゾール−5−イル−フェニル)−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオンアミド;
N−(4−イソオキサゾール−5−イル−フェニル)−2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオンアミド;
N−(3−イソオキサゾール−5−イル−フェニル)−2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオンアミド;および
N−(4−オキサゾール−5−イル−フェニル)−2−オキソ−3−[1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−シクロブチル]−プロピオンアミド
よりなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
グルココルチコイド受容体の調節を介しての炎症性疾患の処置方法であって、請求項1記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩を、それを必要とする被験対象に投与することを含む方法。
【請求項7】
有効量の請求項1記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩;および薬学的に許容しうる賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項8】
グルココルチコイド受容体の調節を介する炎症性疾患処置用の医薬を製造するための、請求項1記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩の使用。
【請求項9】
本明細書に記載の発明。

【公表番号】特表2009−518353(P2009−518353A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543781(P2008−543781)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069059
【国際公開番号】WO2007/065828
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】