説明

抗炎症剤としての生体適合性両親媒性ポリマーの使用

【課題】生体吸収性および生体適合性ポリマーは、薬剤送達ビヒクル、細胞送達ビヒクル、増殖構成体、創傷閉鎖、縫合糸、および癒着防止バリアとしての使用を目的とした用具の製造において使用されているが、これらのポリマーがサイトカイン産生または炎症反応に対する抑制作用を有することは、認識されていない。
【解決手段】本発明は、抗炎症剤としての、生体吸収性および生体適合性両親媒性ポリマーの使用に関する。特に、本発明は、多塩基酸またはその誘導体、モノグリセリドおよびポリエーテルから製造される両親媒性ポリマーを用いることによる、炎症疾患の治療法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、抗炎症剤としての、生体吸収性および生体適合性両親媒性ポリマーの使用に関する。特に、本発明は、炎症疾患の治療法、および、組織移植において発生する炎症の防止または軽減法を提供する。
【0002】
〔発明の背景〕
炎症反応の開始時には、3種類の主要な事象が発生する。即ち、罹患部への血液供給が増加し、毛細血管透過性が増加し、可溶性免疫メディエーターを炎症部位に到達させ、白血球が細静脈から周辺組織に遊走する。
【0003】
好中球は、一般に、急性炎症反応の一環として、炎症部位に到達する最初の細胞である。好中球は、血中白血球の過半数を占め、食作用を司る。好中球は、腫瘍壊死因子α(TNFα)およびインターロイキン1(IL-1)などの炎症サイトカインを放出する。腫瘍壊死因子α(TNFα)およびインターロイキン1(IL-1)の両方とも、他の白血球と同様に、より多くの好中球を誘引する。これらに、T-細胞がある。
【0004】
T-細胞は、B-リンパ球発達および抗体産生のコントロール、抗原提示細胞との相互作用、また、食作用さえも含めて、広範囲な活性を有する。T-細胞サブセットのT-ヘルパー(TH)細胞は、好中球などの抗原提示細胞と相互作用し、上記のようなサイトカインが放出される。
【0005】
サイトカインは、細胞間のシグナリングに関与する分子の大きなグループを包含する用語で、インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子、ケモカインを含む。TH細胞との相互作用によって特異的に放出されるサイトカインは、インターフェロンγ(IFNγ)、TNFβ、IL-2、IL-3およびTNFαを含む。これらの炎症誘発性サイトカインの放出によって、炎症反応が、持続的に保持される。
【0006】
炎症疾患の治療において、これらのサイトカインが標的となり、それらの疾患に伴う症状を緩和するには、その産生が鈍化される。例えば、Remicade(登録商標)(インフリキシマブ、Centocor, Inc.)は、可溶型および膜貫通型ヒトTNFαに特異的に結合し、TNFαのそのレセプターへの結合能を抑制するモノクロナール抗体である。この抑制は、炎症反応の誘発を防止し、現在、慢性関節リウマチおよびクローン病の治療に使用されている。別の例としては、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)が介在する炎症反応の鈍化に対して、COX-2の阻害剤としてアスピリンが使用されている。
【0007】
抗糖尿病薬として現在使用され、チアゾリジンジオン(TZD)として知られている化合物クラスの一員であるトログリタゾンは、抗炎症剤としての能力について評価中である。トログリタゾンは、ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプターγ(PPARγ、核内レセプター)に結合し、PPARγとレチノイド x レセプター(RXR)のへテロダイマーを形成する。当該へテロダイマーは、脂肪細胞分化、脂質代謝およびグルコース恒常性の調節を含めた様々な細胞作用を仲介し、それによって、2型糖尿病患者のインスリン感受性を高める。PPARγは、脂肪組織、骨格筋、副腎、結腸上皮、心臓、膵臓、肝臓、血管平滑筋細胞およびマクロファージ上で発現する。TZDは、PPARγアゴニスト(作用薬)として働き、炎症性サイトカインの産生を抑制することが立証されている。他のPPARγアゴニストは、15デオキシ-Δ12,14プロスタグランジンJ2および酸化リン脂質/リポプロテインを含む。
【0008】
炎症反応の抑制または減少へのPPARγアゴニストの使用は、文献に記述されている。PPARγアゴニストは、CD4+T細胞中のIL-4の産生を抑制すること (Chung et al., Mol. Pharmacol. 64(5): 1169-79, 2003)、および、THP-1細胞中(単球細胞系)およびヒト慢性関節リウマチ滑膜細胞中のTNF-αおよびIL-1βの産生を抑制すること(Ji et al., J. Autoimmun. 17(3): 215-21, 2001)が立証されている。PPARγアゴニストは、IL-2およびIFNγの産生を抑制することも立証されている(Clark et al., J. Immunol. 164(3): 1364-71, 2000; Cunard et al., J. Immunol. 168: 2795-2802, 2002)。Jiangら(Nature 391: 79-82, 1998)も、PPARγアゴニストによるIL-1β、IL-6およびTNF-α産生抑制を報告している。PPARγアゴニストは、サイトカイン産生の抑制に加えて、炎症反応に関与する他の分子、例えば、COX-2、プロスタグランジンE2および誘導性一酸化窒素シンターゼの産生を減少させることを認められている(Mendez et al., Hypertension. 42(4): 844-50, 2003; Cuzzocrea et al., Eur. J. Pharmacol. 483 (1): 79-93, 2004)。
【0009】
Yuら(Biochim Biophys Acta. 1581(3): 89-99, 2002)は、共役リノール酸が PPARγアゴニストの作用と同様な方法によってマクロファージ中の炎症誘発産物の産生を減少させることができる、と報告した。Kreyらは、PPARγアゴニストとしての脂肪酸の使用を提言した(Mol. Endocrinol. 11(6): 779-91, 1997)。
【0010】
生体吸収性および生体適合性ポリマーは、とりわけ、薬剤送達ビヒクル(vehicle、賦形剤、媒介物)、細胞送達ビヒクル、増殖構成体(growth construct)、創傷閉鎖、縫合糸、および癒着防止バリアとしての使用を目的とした用具の製造において使用されている。例えば、米国公開出願第2001/0053778A1号、米国特許第6,521,736 B2号、欧州特許第1 369 136 A1号、欧州特許第1 270 024 A1号、および欧州特許第1 348 451 A1号を参照されたい。しかし、これらのポリマーがサイトカイン産生または炎症反応に対する抑制作用を有することは、認識されていない。事実、あるポリマーの体内への導入および/または加水分解による分解が、サイトカイン合成を誘発し、炎症反応を引き起こしている。例えば、Taira らによるJ.Oral Rehabil. 30(1): 106-9, 2003、Sung らによるBiomaterials 25(26): 5735-42, 2004、Fournier らによるBiomaterials 24(19): 3311-31, 2003を参照されたい。
【0011】
米国特許第6,689,350 B2号は、ポリマーの主鎖が特定の生体活性化合物を組み込んでいるポリエステルおよびポリアミドの形成を記述している。当該生体活性化合物は、当該ポリマーの加水分解時に放出される。米国特許第6,685,928 B2号は、医療用具への芳香族ポリアンヒドリド(aromatic polyanhydride)の使用を記述しており、これは、分解時にサリチル酸などの特定の生体活性物質を生じる。
【0012】
〔発明の概要〕
本発明は、多塩基酸またはその誘導体、モノグリセリドおよびポリエーテルから製造される両親媒性ポリマーを投与することによる、対象の炎症病態の治療法を提供する。
【0013】
本発明に従って治療可能な炎症病態は、各種形態の関節炎および他の変性骨および関節疾患および外傷;リウマチ疾患、アレルギー性疾患、喘息、急性呼吸窮迫症候群、慢性閉鎖性肺疾患、アレルギー性鼻炎、皮膚疾患、多発性硬化症、クローン病および潰瘍性大腸炎などの消化器疾患、連鎖球菌感染後(poststreptococcal)および自己免疫腎不全(autiommune renal failure)、敗血症ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、および毒物注入などの炎症性免疫障害を含む。治療可能な別の疾患は、糖尿病、高脂血症、冠動脈心疾患、癌または増殖性疾患を含む。本方法は、血管障害、アテローム動脈硬化症、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、急性呼吸窮迫症候群などの全身性または局所性疾患の軽減または防止、また、外傷および外科処置後に起こる腫脹の軽減または防止にも使用できる。
【0014】
本方法は、例えば膵島移植などの組織または細胞移植中または移植後の炎症反応の防止または抑制、それによる、移植後の細胞生存および増殖の改善に特に有用である。
【0015】
本方法での使用に好ましいポリマーは、IL-1、IL-6、IL-12およびTNF-αなどの炎症誘発サイトカインの産生を抑制できるポリマーである。特に好ましいポリマーは、PPARγアゴニストとして作用することによって、炎症誘発サイトカインの産生を抑制するポリマーである。
【0016】
前記ポリマーは、治療すべき疾患または病態に応じて、対象への投与に適した各種形態、例えば注射用微分散、あるいは、フィラメント、フィルムまたは成型品などの形態の医療用具または手術用具に、あるいは、当該用具のコーティング剤として、調製および加工できる。
【0017】
本発明の特定の具体的実施態様では、前記ポリマーは、1種類以上の他の生体活性剤と併用して使用され、その場合、前記ポリマーは、抗炎症剤としても、生体活性剤送達ビヒクルとしても働く。前記ポリマーとの併用での使用を意図された生体活性剤は、移植用に調製された組織または細胞、および炎症に伴う疾患または障害の治療に有用な他の抗炎症化合物を含む。
【0018】
具体的実施態様では、細胞、好ましくは膵島またはインスリンを産生するように遺伝子組換えを受けた細胞を適切な移植部位に運ぶマトリックスまたは足場が前記ポリマーを使って調製される。
【0019】
なおも別の実施態様では、別の生分解性、生体吸収性マトリックスまたは足場のコーティングにポリエーテルアルキドポリマーが使用され、独自の抗炎症性をマトリックスまたは足場に提供する。
【0020】
ポリマーは、特定の治療すべき病態および当該ポリマーの剤型に応じて、適切な経路を経て対象に投与できる。
【0021】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、生体吸収性および生体適合性両親媒性ポリマー、特に多塩基酸またはその誘導体、モノグリセリドおよびポリエーテルから成るポリマーが、炎症誘発メディエーターの産生を抑制し、そのため、炎症反応を抑制する、とした独自の認識に基づいている。従って、本発明は、炎症疾患治療用、および、炎症反応の防止または抑制用に両親媒性ポリマーを用いた治療法を提供する。本発明の方法は、組織または細胞移植、例えば膵島移植、に伴う炎症反応の防止または抑制に特に有用である。
【0022】
薬剤または細胞送達用具または増殖構成体の製造での使用について、各種の生体吸収性および生体適合性ポリマーが記述されている。しかし、炎症反応は、体内への異物の導入とともに発生すると予想される。事実、ある種のポリマーは、サイトカイン合成を誘発し、炎症反応を惹起する、と報告されている。
【0023】
本発明人は、多塩基酸またはその誘導体、モノグリセリドおよびポリエーテルから成る生体吸収性および生体適合性両親媒性ポリマーが、抗炎症作用を有し、そのため、望ましくない炎症反応に伴う障害および病態の治療に有用であることを、予想外にも確認した。
【0024】
特別な理論に拘束されることを意図せずに、両親媒性ポリマーの抗炎症作用は、モノグリセリドの脂肪酸成分に起因し得ると考えられる。さらに、当該両親媒性ポリマーの抗炎症作用は、PPARγが介在する、即ち、当該ポリマーまたはその加水分解物がPPARγアゴニストとして作用し、炎症誘発メディエーター、特に炎症誘発性サイトカインの産生を抑制する、と考えられる。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「サイトカイン」は、細胞によって産生され、他の細胞の挙動に影響を与える蛋白質を指す。例えば、インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子、およびケモカインである。炎症誘発性サイトカイン、即ち、炎症反応に介在、または、関与するサイトカインは、とりわけ、IFNγ、IL-1、IL-2、IL-3、IL-6、TNFα、TNFβを含む。
【0026】
本発明に従って、抗炎症作用を有する生体適合性および生体吸収性両親媒性ポリマーは、多塩基酸またはその誘導体、モノグリセリドおよびポリエーテル、の反応生成物である。当該ポリマーは、ポリエーテルアルキドとして分類できる。これらのポリマーの組成および製造は、欧州特許第1 369 136 A1号に記述されている。当該特許は、参照することによって本明細書に組み入れられている。当該ポリマーは、ペンダント脂肪酸エステル基保有脂肪族ポリエーテル/ポリエステル主鎖(backbone)を有する。アルキドブロック中のエステル結合は、加水分解に不安定であり、その場合、当該ポリマーは、湿った体組織に曝露されると、小断片に容易に分解する。これらのポリマーの加水分解は、すべてが生体適合性を示す、グリセロール、水溶性ポリエーテルの、ジカルボン酸および脂肪酸を生じると予想される。この点で、ポリエーテルアルキドの形成に、多塩基酸とジオールの反応混合物に共反応体を取り込むことができるが、反応混合物は、その後に調製されたポリマーを非吸収性にすると思われる、ある濃度のいずれの共反応体も含有しないのが好ましい。
【0027】
本発明での使用に適したポリマーの調製に使用可能なモノグリセリドは、制約なしに、モノステアロイルグリセロール(monostearoyl glycerol)、モノパルミトイルグリセロール(monopalmitoyl glycerol)、モノミリシトイルグリセロール(monomyrisitoyl glycerol)、モノカプロイルグリセロール(monocaproyl glycerol)、モノデカノイルグリセロール(monodecanoyl glycerol)、モノラウロイルグリセロール(monolauroyl glycerol)、モノリノレオイルグリセロール(monolinoleoyl glycerol)、モノオレオイルグリセロール(monooleoyl glycerol)、およびそれらの組み合わせを含む。好ましいモノグリセリドは、モノオレオイルグリセロール、モノパルミトレオイルグリセロールおよびモノリノレオイルグリセロールを含む。長鎖飽和脂肪酸とのモノグリセリドの使用は、ポリマーワックスであるポリマー、即ち、25℃〜70℃の低融点を有する固体物質を生じる。別法として、短鎖または不飽和脂肪酸とのモノグリセリドの使用は、液体ポリマー、即ち、室温で液体であり、約25℃以下の融点を有するポリマーを生じる。
【0028】
本発明での使用に適したポリマーの調製に使用可能な多塩基酸は、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、およびセバシン酸などの天然多官能性カルボン酸(natural multifunctional carboxylic acids);ジグリコール酸、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸などのヒドロキシ酸;およびフマル酸およびマレイン酸などの不飽和酸を含む。多塩基酸誘導体は、無水コハク酸、ジグリコール酸無水物、グルタール酸無水物、無水マレイン酸などの無水物、混合無水物、エステル、活性化エステルおよび酸ハロゲン化物を含む。
【0029】
本発明での使用に適したポリマーの調製に使用可能なポリエーテルは、技術上周知の、一般に使用される水溶性直鎖または枝分れアルキレンオキサイドで、好ましくは、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(プロピレンオキサイド)またはポリ(テトラメチレンオキサイド)である。各種配合物中にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドまたはテトラメチレンオキサイド単位を含有するポリ(アルキレンオキサイド)ブロックも、前記ポリマーの調製に使用できる。
【0030】
ポリエーテルアルキドの重合は、好ましくは、高温で、有機金属触媒の存在下、溶融重縮合条件下で実施される。当該有機金属触媒は、好ましくは、錫系触媒、例えば2−エチルヘキサン酸スズ(2+)塩(stannous octoate)である。好ましくは、当該触媒は、約15,000/1〜80,000/1の範囲のポリオールおよびポリカルボン酸対触媒モル比で混合物中に存在する。反応は、典型的には、約120℃よりも低くない温度で実施される。より高い重合温度が、より高分子量のポリエーテルアルキドを生じさせ、これは、多数の用途に望ましい。当業者は、例えば、所望のポリエーテルアルキドポリマーの化学的および機械的特性、反応混合物の粘度、および、ポリマー基質の溶融温度を含めた多数の要因を考慮して、温度、時間および圧力などの特定の反応条件を選択できる。一般に、反応混合物を、約180℃で維持する。重合反応は、ポリエーテルアルキド生成物に対して所望の分子量および変換%を達成するまで、この温度で進行させることができ、当該反応に約15分〜24時間をかけることができる。反応温度を高めると、一般に、特定分子量の達成に要する反応時間が短縮される。
【0031】
多官能性モノマーは、架橋ポリマー網の生成に使用できる。ペンダント水酸基を有するポリマーは、合成にリンゴ酸または酒石酸などのヒドロキシ酸を使って合成できる。ペンダントアミン、カルボキシル基または他の官能基を有するポリマーも合成できる。別法として、少なくとも1個の二重結合を含有するモノグリセリドまたはジアシド(二塩基酸、diacids)を使用し、光架橋することによって、二重結合を導入できる。この方法を使って、当該ポリマーが十分な水溶性または膨潤性であるという条件付きで、ヒドロゲルを調製できる。様々な生体活性化合物を、既知カップリング反応によってこれらの機能性ポリマーに共有結合させ、当該生体活性化合物の持続放出を生じることができる。
【0032】
末端キャッピング(endcapping)反応は、前記ポリマーに新規官能性を付与できる。末端キャッピング反応は、末端およびペンダント水酸基ならびに末端カルボキシル基を他種化学成分に変換する。典型的末端キャッピング反応は、アルキル、アルケニル、またはアルキニルハロゲン化物およびスルフォネート、酸塩化物、無水物、混合無水物、アルキルおよびアリールイソシアネートならびにアルキルおよびアリールイソチオシアネートなどの常用試薬を使ったアルキル化およびアシル化反応を含むが、それらに制約されない。例えば、塩化アクリロイル(acryloyl chloride)またはメタクリロイル(methacryloyl chloride)を使って、これらのポリマーを末端キャッピングする場合、アクリル酸またはメタクリル酸エステル基が、それぞれ、生成され、その後、重合し、架橋網を形成できる。
【0033】
ジアシド、各種モノアルカノイルグリセリドおよび各種ポリエーテルの混合物を使ってコポリマーを調製し、所望の性質を得ることができる。同様に、2種類以上のポリエーテルアルキドを調製し、各種用途に性質を合わせることができる。
【0034】
本明細書の開示内容の恩恵を受ける当業者は、特定の目的で必要とするポリマーの特殊な性質を確認し、当該性質を提供するポリマーを容易に調製できる。
【0035】
前記ポリマーは、いったん調製すると、各種試験管内試験で検討し、抗炎症活性を確認できる。例えば、1種類以上の炎症誘発サイトカインを放出できる培養細胞にポリマーを添加し、サイトカインの放出に対する当該ポリマーの作用を容易に測定できる。当該ポリマーを、脂質生成アッセイで検討し、そのPPARγ活性増強能を測定することもできる。
【0036】
本発明に従って、好ましいポリマーは、炎症誘発サイトカイン、特にIL-1、IL-6、IL-12およびTNFα、の産生を抑制するポリマーである。特に好ましいポリマーは、PPARγアゴニストとして作用することによって炎症誘発サイトカインの産生を抑制するポリマーである。
【0037】
両親媒性ポリエーテルアルキドポリマーの抗炎症作用という独自の認識に基づいて、本発明は、当該両親媒性ポリエーテルアルキドポリマーを用いることによって、対象の炎症疾患または炎症病態の治療法を提供する。
【0038】
「対象」とは、いかなる哺乳類対象を、特にヒト対象を含むことを意味する。
【0039】
「治療する」は、全身性または局所性炎症の発症または進行を軽減、抑制、防止し、または、鈍化させ、それによって、疾患の症状または重症度を改善することを意味する。
【0040】
上記のポリマーを用いることによって治療可能な疾患は、慢性関節リウマチ、骨関節炎、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、全身性紅斑性狼瘡、若年性関節炎を含むが、それらに制約されない関節炎および他の変性骨および関節疾患および外傷;腱炎、靭帯炎(ligamentitis)および外傷性関節損傷を含む。上記のポリマーを用いることによって治療可能な別の疾患は、リウマチ疾患、アレルギー性疾患、喘息、急性呼吸窮迫症候群、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、皮膚疾患、多発性硬化症、クローン病および潰瘍性大腸炎などの消化器疾患、連鎖球菌感染後および自己免疫腎不全、敗血症ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、および毒物注入を含むが、それらに制約されない炎症性免疫障害を含む。治療可能な別の疾患は、糖尿病、高脂血症、冠動脈心疾患、癌または増殖性疾患を含む。
【0041】
本両親媒性ポリエーテルアルキドは、血管障害、アテローム動脈硬化症、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、急性呼吸窮迫症候群などの疾患における全身性または局所性炎症の軽減または防止;外傷および外科処置後に起こる腫脹の軽減または防止に用いることもできる。
【0042】
本発明に従って、本両親媒性ポリエーテルアルキドは、組織または細胞移植、例えば、膵島移植、に伴う炎症反応を防止または抑制し、それによって、細胞の生存を改善するのに特に有用である。移植された膵島は、移植片の微小環境の活性化が引き金となる早期の非特異的炎症性損傷に曝される可能性がある。定住膵島マクロファージも、膵島細胞の生存および機能に有害な炎症誘発サイトカインを放出する。よって、本両媒性ポリエーテルアルキドは、炎症誘発サイトカインの産生を抑制し、移植された膵島細胞の生存および機能を改善することができる。
【0043】
ポリエーテルアルキドを、治療すべき疾患または病態に応じて、対象への投与に様々な形態で提供できる。
【0044】
ある実施態様では、前記ポリエーテルアルキドは、液体ポリマーまたはポリマーワックスから形成された、ミクロエマルジョンまたはミセルを含めて、注射用微分散として提供される。
【0045】
別の実施態様では、前記ポリマーは、溶融処理され、対象に用具の形態で提供される。
【0046】
例えば、前記ポリマーを、射出成形、または、圧縮成形して植込み型医療または手術用具、特に手術用クリップ、ステープルおよび縫合糸などの創傷縫合用具とすることができる。
【0047】
別法として、前記ポリエーテルアルキドは、押出によってフィラメントを調製することができる。そのようにして生成されたフィラメントは、縫合糸または結紮糸に加工し、既知技術によって、手術針につなぎ、包装し、滅菌することができる。本発明のポリマーは、紡いでモノフィラメントまたはマルチフィラメント糸とし、織り、または、編んでスポンジまたはガーゼを形成し、あるいは、当該構造が高い引張強さと所望レベルの容積弾性係数(compliance)および/または延性を有するのが望ましいヒトなどの哺乳類の体内の人工器官として他の成形圧縮構造との併用で使用することができる。不織布も調製し、上記のように使用できる。有用な実施態様は、動脈、静脈または腸の修復、神経接合(nerve splicing)、腱接合(tendon splicing)用の分岐チューブを含むチューブ、負傷表面の擦過傷、特に重症擦過傷、または、皮膚および基礎組織が損傷を受けている、または、外科的に除去された領域のテーピングおよび支持用のシートを含む。
【0048】
さらに、前記ポリマーは、成型し、滅菌時に接着防止バリアとして有用なフィルムを形成することができる。本発明のポリマー用の別の代替加工技術は、特に、薬剤送達マトリックスが求められる用途のための溶媒キャスティング(solvent casting)を含む。
【0049】
本発明に従って、前記ポリマーのフィラメント、フィルムおよび成型品の手術および医療への使用は、ニット製品、織布または不織布、および成型品を含むが、それらに制約されず、当該成型品は、火傷治療包帯、ヘルニアパッチ、メッシュ、薬布、代用筋膜、ガーゼ、繊維、シート、肝臓止血用フェルトまたはスポンジ、ガーゼ包帯、動脈移植片または代用品、皮膚表面用包帯、縫合糸結紮クリップ、整形外科用ピン、鉗子、ネジ、プレート、例えば大静脈用のクリップ、ステープル、フック、ボタン、スナップ、例えば人工下顎骨などの代用骨、例えば殺精子用具などの子宮内用具、排液または検査用チューブまたは毛細管、手術用具、血管インプラントまたは支持体、例えばステントまたは移植片、またはその組み合わせ、椎間板、腎臓および人工心肺用体外チューブ、人工皮膚、組織工学応用の細胞支持体を含むが、それらに制約されない。
【0050】
別の実施態様では、前記ポリエーテルアルキドポリマーを使用して、医療用具の表面をコートし、独自の抗炎症作用を提供し、あるいは、当該医療用具またはそれに含有される生体活性剤の抗炎症作用を強化する。当該ポリマーは、従来の技術を使ってコーティング剤として塗布できる。例えば、当該ポリマーは、アセトン、メタノール、酢酸エチルまたはトルエンなどの揮発性有機溶媒の希薄溶液中に可溶化することができ、その後、手術用品を、当該溶液に浸漬し、その表面をコートすることができる。いったん表面がコートされると、手術用品を当該溶液から取り出し、それを、当該溶媒およびいずれの残留反応体が除去されるまで、高温で乾燥することができる。
【0051】
本両親媒性ポリマーは、独自の抗炎症活性を有するが、他の生体活性剤と併用してさらに有効な治療を達成できる。
【0052】
「他の生体活性剤」は、両親媒性ポリマーとは別の生物学的活性を有する化合物または材料を意味し、移植用組織または細胞、および、炎症に伴う疾患または障害の治療用の他の抗炎症化合物を含む。本発明の両親媒性ポリマーとの併用に適する抗炎症化合物は、COX-2阻害剤、テトラサイクリン化合物、非ステロイド抗炎症剤(NSAID)、コルチコステロイド、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、局所麻酔剤、グルコサミン、コンドロイチン硫酸およびコラーゲン加水分解物を含む。例えば、米国特許第6,677,321号および第6,245,797号を参照されたい。両親媒性ポリマーを1種類以上の他の生体活性剤と併用する場合、当該両親媒性ポリマーは、抗炎症剤として、および送達ビヒクルとしての両方の機能を果たすことができる。例えば、液体ポリマーまたはポリマーワックスから調製されるミクロエマルジョンまたはミセルは、低生物学的利用率を有する低可溶性生体活性剤の送達に望ましい。フィラメント、フィルム、および、成型品の形態で調製されるポリマーは、損傷または腫脹を治療する他の生体活性化合物の利用を容易にする基質として働くことができる。
【0053】
具体的実施態様では、前記ポリマーおよびそのブレンド品は、組織工学応用分野で使用される。この実施態様では、前記ポリマーは、所望の抗炎症作用を提供し、炎症反応を防止または軽減するだけでなく、細胞送達および増殖用のビヒクルまたは足場としても働く。
【0054】
当然ながら、本ポリエーテルアルキドポリマーの独自の抗炎症活性を認識することによって、細胞の低生存率を生じる炎症反応に伴う炎症疾患または病態の治療に関連する細胞送達ビヒクルとして、これらのポリマーの選択的使用が可能になる。特に、本発明のポリマーを使って、膵島移植などの移植によって起こる組織の拒絶反応を防止できると思われる。
【0055】
好ましい実施態様では、ポリエーテルアルキドポリマーは、細胞、好ましくは膵島、または、組換え技術によってインスリンを産生する細胞、の適切な移植部位への運搬に用いるマトリックスまたは足場の調製に使用される。
【0056】
別の好ましい実施態様では、ポリエーテルアルキドポリマーを使って、別の生分解性、生体吸収性マトリックスまたは足場をコートし、独自の抗炎症性を当該マトリックスまたは足場を提供する。
【0057】
適当な組織足場構造およびそれらの製造は、技術上周知である。例えば、人工関節軟骨について記述している米国特許第5,306,311号;多孔質生分解性足場について記述しているWO 94/25079号;血管形成前インプラントについて記述しているWO 93/08850号を参照されたい。これらの特許は、すべて、参照することによって本明細書に組み入れられている。
【0058】
組織足場構造への細胞の接種および/または培養法も、技術上周知である。例えば、欧州特許第422 209 B1号、WO 88/03785号、WO 90/12604号およびWO 95/33821号を参照されたい。これらの特許は、すべて、参照することによって本明細書に組み入れられている。
【0059】
前記ポリマーは、提供するのが単独でも、1種類以上の他の生体活性剤との併用であっても、薬学的に受容可能なキャリアと配合できる。薬学的に受容可能なキャリアとは、溶媒、分散媒、コーティング剤、包帯、パッチ、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、吸収遅延または促進剤、運搬ポリペプチドおよび脂質などのいずれかまたはすべてを含めた標準キャリアのいずれかを意味する。いずれかの普通の媒介物または物質が活性成分と不溶性である場合を除いて、その使用が考えられる。
【0060】
前記ポリマーは、治療すべき疾患または病態、および、前記ポリマーを提供する剤型を考慮して、どの標準経路によっても対象に投与できる。一般的に言えば、前記ポリマーは、経口、非経口、肺、頬、鼻、眼内、局所および膣経路から、あるいは、坐薬として投与できる。生体内分解性粒子、軟膏、ゲル、クリーム、および、上記経路からの投与に適合させた類似軟質剤型も調合できる。例えば経皮などの他の投与形態、および、組成物の形態、例えば剛性を高めた経皮的形態などのも、本発明の範囲内である。特定の炎症部位への送達に対して、例えば関節内、関節周囲または骨内注入などによる組成物の投与に、他の手段を使用できる。組織工学または移植が関与する箇所では、前記ポリマーまたは前記ポリマーを含有する用具を、選択部位に埋め込む、または、注射することができる。
【0061】
以下の実施例によって、制約なしに、本発明をさらに詳細に説明する。
【0062】
〔実施例1〕
MGSAポリマーは、単球からのサイトカイン放出を抑制した。
ヒト全血の新鮮収集バフィーコート調製液から、ヒト単球を単離した。手短に言えば、全血を滅菌リン酸緩衝液(PBS)で1:1.33希釈し、Histopaque上に層を重ね、次に、これを、室温、1500 rpmで30分間遠心分離した。界面を採取し、PBSで洗浄した後、1500 rpmで別に10分間遠心分離した。10%ウシ胎仔血清(FBS)を含むRPMI 1640で最終洗浄を実施した。血球計算器(hemacytometer)を使って細胞をカウントし、48穴組織培養液処理プレートに、細胞2.4 x 106個/300μLで接種した。細胞を37℃、5%CO2で1時間インキュベートし、非付着細胞をPBS洗浄で取り出した。10%FBSを含有する300μLのRPMI 1640を当該細胞に各種試験条件に従って再添加した;即ち、培地単独中細胞、DMSO (オカダ酸およびトログリタゾンの溶解に使用するビヒクル)添加、オカダ酸(OA、50 nM)添加、OAおよびトログリタゾン(30 μm)添加、OAおよび無水コハク酸と共重合したモノステアリルグリセリド(MGSA)−液体(3305-15、50%)添加、および、OAおよびMGSA−固体(2804-60、50%)添加。37℃、5%CO2で一晩インキュベートした後、上清を収集し、その後、TNF-αについて、ELISAで分析した。
【0063】
表1および図1に示した結果は、トログリタゾンが、OAの存在下で、単球が放出するTNF-α量を有意に減少させ(p<0.01)、MGSA−液体(3305-15)がトログリタゾンと同じ作用を有することを実証している。MGSA−固体(2804-60)は、サイトカイン産生の抑制に作用を示さなかった。
【表1】

【0064】
〔実施例2〕
脂質生成を促進するためのMGSAポリマーの使用
PPARγは、脂質生成に重要な役割を果たす。MGSAポリマーがPPARγアゴニストとして作用できるか否かを決定するため、MGSAポリマーを脂質生成アッセイで評価した。
【0065】
10%ウシ胎仔血清、100単位/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンを補充したDulbecco変法Eagle培地(DMEM)から成る培養培地中で、3T3-L1細胞(ATCC、CL-173)を融合する(confluency)まで増殖させた。融合(0日)から2日後、当該培養培地に、1.7μMインスリン、0.5μMデキサメサゾン、0.5 mMイソブチルメチルキサンチン(総称IDX)を添加した(鑑別培地)。37℃、5%CO2での2日間の培養後、培地を、1.7μMインスリン単独補充の培養培地に交換した(維持培地)。7日目、細胞を10%ホルマリンで固定し、オイルレッドOを使って、脂質蓄積用として染色した。対照群を、上記のプロトコルを使って鑑別した。被験群は、同一プロトコルに従ったが、鑑別培地中でIDXの代わりに合成(チアゾリジンジオン)または天然(15デオキシΔ12,14プロスタグランジンJ2)PPARγアゴニストを5μMで、または、MGSAを使用し、維持培地への培地交換は行わなかった。
【0066】
〔実施の態様〕
(1) 対象の炎症病態を治療する方法において、
前記対象への両親媒性ポリマーの投与のステップを含み、
前記ポリマーが多塩基酸またはその誘導体、モノグリセリド、およびポリエーテルの反応生成物である、
方法。
(2) 実施態様1に記載の方法において、
前記の炎症病態が、慢性関節リウマチ、骨関節炎、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、喘息、急性呼吸窮迫症候群、慢性閉塞性肺疾患、および多発性硬化症から成る群から選択される、
方法。
(3) 実施態様1に記載の方法において、
前記炎症病態が、血管障害、アテローム動脈硬化症、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、急性呼吸窮迫症候群、または外傷に併発し、あるいは、外科処置中または外科処置後に発症した、
方法。
(4) 実施態様1に記載の方法において、
前記炎症病態が、組織または細胞移植中または移植後に発症した、
方法。
(5) 実施態様1に記載の方法において、
前記ポリマーが、IL-1、IL-6、IL-12およびTNFαから成る群から選択される炎症誘発サイトカインの産生を抑制する、
方法。
(6) 実施態様1に記載の方法において、
前記ポリマーが液体またはワックスポリマーであり、投与用に注射用微分散として調製される、
方法。
(7) 実施態様1に記載の方法において、
前記ポリマーが、投与用として、用具またはそのコーティング剤の形態で提供される、
方法。
(8) 実施態様7に記載の方法において、
前記用具が、縫合糸、ステント、血管移植片、ステント‐移植片組み合わせ品、メッシュ、組織足場、ピン、クリップ、ステープル、フィルム、シート、フォーム、アンカー、ネジおよびプレートから成る群から選択される、
方法。
(9) 実施態様1に記載の方法において、
前記ポリマーと同時に、または、別個に生体活性剤を投与することをさらに含む、
方法。
(10) 実施態様9に記載の方法において、
前記生体活性剤が、COX-2阻害剤、テトラサイクリン化合物、非ステロイド抗炎症剤(NSAID)、コルチコステロイド、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、局所麻酔剤、グルコサミン、コンドロイチン硫酸およびコラーゲン加水分解物から成る群から選択される抗炎症化合物である、
方法。
(11) 実施態様9に記載の方法において、
前記生体活性剤が細胞を含み、
前記ポリマーが、前記対象の体内部位に前記細胞を送達するための用具または用具コーティング剤に加工される、
方法。
(12) 実施態様11に記載の方法において、
前記細胞が、前記対象体内の前記部位でインスリンを産生できる、
方法。
(13) 実施態様1に記載の方法において、
前記モノグリセリドが、モノステアロイルグリセロール(monostearoyl glycerol)、モノパルミトイルグリセロール(monopalmitoyl glycerol)、モノミリシトイルグリセロール(monomyrisitoyl glycerol)、モノカプロイルグリセロール(monocaproyl glycerol)、モノデカノイルグリセロール(monodecanoyl glycerol)、モノラウロイルグリセロール(monolauroyl glycerol)、モノリノレオイルグリセロール(monolinoleoyl glycerol)、モノオレオイルグリセロール(monooleoyl glycerol)、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、
方法。
(14) 実施態様1に記載の方法において、
前記多塩基酸が、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ジグリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸およびマレイン酸、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、
方法。
(15) 実施態様1に記載の方法において、
前記の多塩基酸誘導体が、無水物、エステル、酸ハロゲン化物、およびそれらの組み合わせから選択される、
方法。
(16) 実施態様1に記載の方法において、
前記ポリエーテルが、水溶性直鎖または枝分れアルキレンオキサイドで、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(テトラメチレンオキサイド)、エチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドもしくはテトラメチレンオキサイド単位の配合物を含むポリマー、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、
方法。
(17) 実施態様1に記載の方法において、
前記ポリマーがコポリマーである、
方法。
(18) 実施態様1に記載の方法において、
前記ポリマーが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アクリレート、メタクリレート、アミン、イソシアネートおよびイソチオシアネートから成る群から選択される末端キャッピング部分を含む、
方法。
(19) 対象への細胞または組織移植中または移植後の炎症反応を抑制または軽減する方法において、
前記細胞または組織を、多塩基酸またはその誘導体、モノグリセリドおよびポリエーテルの反応生成物であるポリマーと混合するステップと、
前記混合物を前記対象に埋め込むステップと、
を含む、方法。
(20) 実施態様19に記載の方法において、
前記細胞が、移植時にインスリンを産生できる細胞を含む、
方法。
(21) 実施態様19に記載の方法において、
前記ポリマーが、前記細胞または組織の接種および送達に適した足場または足場コーティング剤として製造される、
方法。
(22) 対象の糖尿病を治療する方法において、
ポリマーから成る、または、ポリマーでコートされた足場を提供するステップであって、前記ポリマーが多塩基酸またはその誘導体、モノグリセリドおよびポリエーテルの反応生成物である、ステップと、
細胞を前記足場に接種するステップであって、前記細胞が移植時にインスリンを産生できるステップと、
前記足場を前記対象に埋め込むステップと、
を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、トログリタゾンおよびMGSAポリマーによる、単球からのTNF-α放出の抑制を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の炎症病態を治療する方法において、
前記対象への両親媒性ポリマーの投与のステップを含み、
前記ポリマーが多塩基酸またはその誘導体、モノグリセリド、およびポリエーテルの反応生成物である、
方法。
【請求項2】
対象への細胞または組織移植中または移植後の炎症反応を抑制または軽減する方法において、
前記細胞または組織を、多塩基酸またはその誘導体、モノグリセリドおよびポリエーテルの反応生成物であるポリマーと混合するステップと、
前記混合物を前記対象に埋め込むステップと、
を含む、方法。
【請求項3】
対象の糖尿病を治療する方法において、
ポリマーから成る、または、ポリマーでコートされた足場を提供するステップであって、前記ポリマーが多塩基酸またはその誘導体、モノグリセリドおよびポリエーテルの反応生成物である、ステップと、
細胞を前記足場に接種するステップであって、前記細胞が移植時にインスリンを産生できる、ステップと、
前記足場を前記対象に埋め込むステップと、
を含む、方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−8949(P2007−8949A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−178632(P2006−178632)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America
【Fターム(参考)】