説明

抗炎症性因子、単離の方法、および使用

【課題】本発明は、抗炎症性因子、実質的に純粋なまたは高い純度の形態でのその生産のためのプロセス、および炎症の処置におけるその使用方法を提出すること。
【解決手段】本発明は、乳から単離された抗炎症性因子、実質的にまたは高度に精製された調製物をもたらすようにこの抗炎症性因子を精製する方法、ならびに、内皮細胞から接着好中球を除去するため、血管系から細胞の移入を妨げるため、および外来抗原に対するリンパ球の応答を抑制するための、この因子の使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、抗炎症性因子、実質的に純粋なまたは高い純度の形態でのその生産のためのプロセス、および炎症の処置におけるその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
Dorland's Medical Dictionaryに明記されているように、炎症とは、「組織の傷害または破壊により誘導される局所的な保護応答であり、傷害性因子および傷害組織の両方を破壊し、減弱し、または遮断する」ことを供することである。微小血管系の開窓(fenestration)、血液要素の間質空間への漏洩、および炎症組織への白血球の遊走により特徴付けられる。肉眼で見えるレベルにおいて、炎症には、通常、紅斑、水腫、圧痛(tenderness)(痛覚過敏)、および痛みの、よく知られた臨床的徴候が付随する。これらの複雑な応答の間に、ヒスタミン、5-ヒドロキシトリプタミン、種々の走化性因子、ブラジキニン、ロイコトリエン、およびプロスタグランジンのような化学的メディエーターが、局所的に遊離する。食細胞がこの領域に移入し、そして細胞性リソソーム膜は破壊され、溶解酵素が放出され得る。これらのすべての事象は、炎症応答に寄与し得る。
【0003】
慢性関節リウマチを患う患者の炎症には、おそらく抗体(リウマチ様因子)を伴う抗原(γグロブリン)および白血球を誘因する走化性因子の局所的な放出をもたらす補体との組み合わせが関与する。白血球は、抗原-抗体および補体との複合体を貪食し、そしてこれらのリソソーム内に含まれる多くの酵素もまた放出する。次いで、これらのリソソーム酵素は、軟骨および他の組織に対する傷害を引き起こし、そしてこれは、炎症の程度を促進する。細胞媒介免疫反応もまた伴い得る。プロスタグランジンはまた、このプロセスの間に放出される。
【0004】
炎症中に生じると思われるプロスタグランジンは、紅斑をもたらし、そして局所の血流を増加させる。プロスタグランジンの2つの重要な血管効果は、長時間持続性の血管拡張作用ならびにノルエピネフリンおよびアンジオテンシンのような物質の血管収縮効果を打ち消す能力であり、一般的に他の炎症メディエーターにより共有されない。
【0005】
多くの炎症メディエーターは、後毛細血管および集合小静脈での血管透過性(漏洩)を増加する。さらに、白血球の炎症領域への遊走は、炎症プロセスの重要な局面である。
【0006】
アルツス反応(Arthus reaction)は、抗原がその抗原に対する抗体と抗原複合体を形成する皮下部位で免疫複合体の形成により引き起こされる炎症応答である。好中球は、それらが消化酵素を放出する皮下注射部位で形成する免疫グロブリン複合体のFc部分に特徴的に付着し、目で見える急性炎症をもたらす。従って、この反応は、主に好中球で媒介され、そしてこの反応の進展を引き起こす薬剤は、これらの細胞における効果を介して進展する。
【0007】
薬剤が血管から炎症部位への好中球遊走を妨害し得る経路はいくつか存在する。そのような1つの経路は、辺縁趨向血管壁内皮細胞裏打ちへの、炎症細胞の可逆的な「粘着」である。通常状態において、約50%の好中球は、可逆的に接着するが、急性炎症応答の間では、接着はかなり強くなり、そして好中球遊走のプロセスにおける重要な段階である。プロスタグランジンは、直接的には走化性応答に関与しないようであるが、アラキドン酸の別の代謝産物であるロイコトリエンは、かなり強力な走化性物質である。
【0008】
抗炎症応答は、上記の炎症により特徴づけられる任意の応答である。炎症応答が、異なる疾病および傷害に関係している多くの肉体的不快感(すなわち、痛み、機能喪失)をもたらすことは、医療分野の当業者において周知である。従って通常の医学的実施では、炎症応答を中和する効果を有する薬理学的薬剤を投与する。これらの性質を有する薬剤は、抗炎症剤として分類される。抗炎症剤は、幅広いスペクトルの障害の処置のために使用され、そして同じ薬物が、異なる疾病の処置にしばしば用いられる。抗炎症剤は、疾患のためではなく、症状(すなわち炎症)の処置のために最も頻繁に使用される。
【0009】
抗炎症、鎮痛、および解熱薬は、しばしば化学的に関連しない異種の化合物群であるが、それにもかかわらず、特定の治療作用および副作用を共有する。コルチコステロイドは、抗炎症応答の処置のための最も広く用いられるクラスの化合物である。タンパク質分解酵素は、抗炎症作用を有すると考えられる別のクラスの化合物である。直接的または間接的に、副腎皮質にステロイドを産生させ、そして分泌させるホルモンは、抗炎症化合物の別のクラスである。多くの非ホルモン抗炎症性剤が記載されている。これらのうち、最も広く用いられるのは、サリチレートである。アセチルサリチル酸、またはアスピリンは、最も広く処方される鎮痛解熱剤および抗炎症性剤である。ステロイドおよび非ステロイド抗炎症剤の例としては、Physician's Desk Reference, 1987(そのような調製物の索引のための207および208頁を参照のこと)が挙げられる。
【0010】
天然のおよび合成のコルチコステロイド調製物は、血圧上昇、塩および水分の保持、ならびにカリウムおよびカルシウム排泄の増加を包含する、多くの重篤な副作用をもたらす。さらにコルチコステロイドは、感染の徴候をマスクし、そして感染性微生物の蔓延を増強し得る。これらのホルモンは、妊婦においての使用が安全であるとは考えられず、そして長期間のコルチコステロイドの処置は、胃酸過多(gastric hyperactivity)および/または消化性潰瘍に関連している。これらの化合物での処置はまた、糖尿病を悪化させ得、より高い用量のインスリンを必要とし、そして精神病性の障害を生じ得る。間接的に内在性のコルチコステロイドの産生を増加させるホルモン性の抗炎症性剤は、有害な副作用について同じ可能性を有する。
【0011】
この非ホルモン性抗炎症性剤は、高用量で幅広いスペクトルの所望されない副作用を伴う毒性があり得る合成生物化学化合物である。例えば、サリチレートは、このクラスの化合物による毒性を特徴づける重篤な酸-塩基平衡の不均衡に寄与する。サリチレートは、直接的および間接的に呼吸を刺激する。サリチレートの毒性用量は、中枢呼吸性麻痺(centralrespiratory paralysis)ならびに血管運動抑制に対する二次的な循環虚脱をもたらす。サリチレートの摂取は、上胃部窮迫(epigastricdistress)、悪心、および嘔吐をもたらし得る。サリチレート誘導胃出血はよく知られている。サリチレートは、肝傷害を生じ得、そして凝固時間の延長を誘導し得る。従って、アスピリンは、重篤な肝障害、低プロトロンビン血症、ビタミンK欠乏症、または血友病を患う患者において避けられるべきである。なぜなら、サリチレートによる血小板止血の阻害は、出血を生じ得るからである。サリチレート中毒はよく起こり、そして10,000症例にわたる重篤なサリチレート中毒が、毎年米国で見られ、これらのいくつかは致命的であり、そして多くは小児において生じている。GoodmanおよびGilmanのThePharmacological Basis of Therapeutics, 第7版, 1985を参照のこと。従って、現在、多くの抗炎症性剤が利用可能であるにもかかわらず、未だ、副作用および有害反応のない安全で、効果的な抗炎症産物の必要性とされている。
【0012】
例えば、抗炎症効果を有する乳由来の産物のような天然食物産物が得られ得る場合、それは容易に投与可能であり、難なく入手可能でり、安全な治療組成物である。
【0013】
先行技術において、種々の治療効果を有する乳を生産することは公知である。例えば、Beckは、Streptococcusmutansに対する抗体を含み、う食阻害効果を有する乳を開示している(米国特許第4,324,782号)。この乳は、2つの段階でウシをS. mutans抗原で免疫することにより得られ、それから治療用乳が得られる。
【0014】
Stolleらは、過免疫状態を維持されているウシから回収された乳を動物に投与する工程を包含する、動物での喫煙に関連した血管障害または肺障害を処置するための方法を開示している(米国特許第4,636,384号)。Beckは、抗炎症性因子産生状態を維持されるウシから回収された抗炎症有効量の乳を動物に投与する工程を包含する、動物での炎症を処置する方法を開示している(米国特許第4,284,623号)。Heinbach、米国特許第3,128,230号は、抗原混合物をウシに接種することによりα、β、およびγグロブリン成分を含む乳を記載している。Petersonら(米国特許第3,376,198号)、Holm(米国特許出願(刊行済)第628,987号)、Tunnahら(英国特許第1,211,876号)、およびBiokemaS.A.(英国特許第1,442,283号)はまた、抗体含有乳を記載している。
【0015】
しかし、上記の参考資料のいずれも、所望の治療効果を生じる治療用乳の成分または複数の成分の同定を開示していない。例えば、Beckの米国特許第4,284,623号において、治療手段として用いられる乳産物は、流動性全乳、流動性脱脂ホエー、または全粉乳のいずれかからなる。これらの各々の乳産物は抗炎症特性を有しているが、実際に治療の利益を提供する因子または複数の因子は、なお分離または同定、または均一に精製されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
高度に精製された乳抗炎症性因子(MAIF)(単数または複数)の調製物を得ることにおける特有の困難さは、現在用いられている精製手順により、MAIFから強く結合した塩を除去することが不可能なことである。本発明に記載の問題の1つは、とりわけ、MAIF調製物からの強く結合した塩を除去し、それにより高度に精製されたMAIFがもたらされる工程を包含するMAIFの大量スケール調製である。さらに、問題は、大量の出発物質(例えば、90リットルのスキム乳)から始める場合、高い純度のMAIFの分離スケール調製物を得ることによって、まず生じる。本発明は、これらの問題に対する解決策を提供する
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の要旨
本発明は、乳中に存在する抗炎症性因子および乳中に存在する抗炎症性因子の使用に関与する種々の方法に関する。特に、本発明は、乳から脂肪を除去する工程;乳を濾過して分子量約10,000ダルトンよりも大きい分子を除去する工程;イオン交換により小さな分子量の分子を含む濾液を分画する工程;さらにゲル濾過により因子中のイオン交換画分を濃縮する工程、そしてさらに共平面に隣接するシスヒドロキシ基に対する親和性を有するクロマトグラフィー媒体を用いて、アフィニティクロマトグラフィーによりゲル濾過画分を濃縮する工程、により乳から生産される抗炎症性因子に関する。
【0018】
本発明はさらに、とりわけHPLCサイズ排除クロマトグラフィーおよび有機分配抽出プロトコルを使用する乳抗炎症性因子のさらなる精製のための方法に関する。
【0019】
本発明はさらに、好中球の小静脈内皮への接着を防止する、または小静脈壁内皮細胞裏打ちへすでに接着している好中球を引き離すために乳抗炎症性因子を使用するための方法に関する。この方法において、この因子を用いて、炎症応答に関連する組織損傷を軽減させる。
【0020】
本発明はまた、CD18細胞表面抗原と他の分子との間での相互作用を防止するために乳抗炎症性因子を使用するための方法に関する。このような相互作用は血管系からの細胞の退出のために必要であり、そしてこのような血管外遊出は、炎症応答の間の動物における炎症損傷の増加を誘導することが知られている。CD18抗原はまた、外来抗原に対する宿主生物の免疫応答に重要であることが知られている。
【0021】
哺乳動物における抗炎症性因子の使用により血管系からの細胞の血管外遊出を防止し、そして外来抗原に対するリンパ球の分裂促進的な応答を抑制することもまた、本発明により包含される。
【0022】
したがって、本発明は以下を提供する。
1.脱脂乳から抗炎症性因子を精製する方法ための方法であって:
(i) 該乳を10,000ダルトンの分子量カットオフを有するフィルターを通して限外濾過する工程;
(ii) 工程(i)由来の10,000未満の濾液を回収する工程;
(iii) 該濾液を第1のイオン交換カラムにかけ、そして該カラムを脱イオン水で洗浄する工程;および
(iv) 工程(iii)由来の溶出液を回収する工程;
2.項目1における工程(iv)由来の該溶出液を分取用サイズ排除HPLCクロマトグラフィーカラム上で分離し、そして該溶出液を回収する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
3.さらに、該分取用サイズ排除HPLCクロマトグラフィー由来の該溶出液を有機分配抽出し、そして該抽出由来の水抽出物を得る工程、を包含する、項目2に記載の方法。
4.前記水抽出物の弱アニオン交換クロマトグラフィーをさらに包含する、項目1に記載の方法。
5.前記第1のイオン交換カラムが、ジエチルアミノエチル(DEAE)-Sepharoseファーストフローイオン交換樹脂である、項目2に記載の方法。
6.前記分取用サイズ排除HPLCカラムが、TSK G2500PWサイズ排除カラムである、項目5に記載の方法。
7.前記有機分配抽出がさらに:
(i) ヘキサンおよびNH4OHで抽出する工程;
(ii) 工程(i)由来の水相を酢酸エチルで再抽出する工程;および
(iii) 該酢酸エチル抽出液を回収する工程、
を包含する、項目6に記載の方法。
8.項目7に記載の方法であって、さらに:
(i) 前記酢酸エチル抽出液を弱アニオン交換カラムにかける工程;
および
(ii) 3部溶出システムを用いて該カラムを展開する工程、
を包含する、方法。
9.抗炎症性因子であって、
(i) 乳を10,000ダルトンの分子量カットオフを有するフィルターに通して限外濾過する工程;
(ii) 工程(i)由来の10,000未満の濾液を回収する工程;
(iii) 該濾液をイオン交換カラムにかけ、該カラムを脱イオン水で洗浄し、そして溶出液を回収する工程;
(iv) 工程(iii)由来の該溶出液を分取用サイズ排除HPLCクロマトグラフィーカラム上で分離する工程;
(v) 工程(iv)由来のサンプルをヘキサンおよびNH4OHで抽出する工程;
(vi) 工程(v)由来の水相を酢酸エチルで再抽出し、そして水相を得る工程;および
(vii) 該カラム由来の該抽出液を回収する工程、
を包含する方法によって調製された、高度に精製された形態の抗炎症性因子。
10.アミノプロピルHPLCカラムを用いた弱いアニオン交換クロマトグラフィーをさらに含むプロセスによって得られる請求項9に記載の抗炎症性因子。
11.図44Bのものと類似するが必ずしも同等ではないアミノプロピルHPLCカラムの分析によって得られる溶出プロファイルを有する請求項9に記載の抗炎症性因子。
12.図44Aのものの肩Aを実質的に欠如するアミノプロピルHPLCカラムの分析によって得られる溶出プロファイルを有する請求項9に記載の抗炎症性因子。
13.項目1〜8のいずれか1項に記載の方法によって調製された、実質的にあるいは高度に精製された形態の抗炎症性因子。
14.抗炎症性因子の精製方法であって、該因子が項目1〜8のいずれか1項に記載の方法により実質的にあるいは高度に精製された形態で得られ、前記限外濾過工程が約90リットル〜約225リットルの脱脂乳で始められ、そして前記イオン交換工程が約60リットル〜約150リットルの濾液で始められる、精製方法。
15.抗炎症性因子の精製方法であって、該因子が項目14に記載の方法により実質的にあるいは高度に精製された形態で得られ、前記HPLCサイズ排除クロマトグラフィーをDEAEイオン交換工程由来の100mgのMAIFを用いて始める、
精製方法。
16.好中球遊走を阻害するための方法であって、項目1〜8、項目14あるいは項目15のいずれか1項に記載の方法により得られた前記MAIFを、該好中球遊走を阻害するのに十分な用量で、動物に投与する工程を包含する、方法。
17.炎症性応答を阻害するための方法であって、項目1〜8、項目14あるいは項目15のいずれか1項に記載の方法により得られた前記MAIFを、該炎症性応答を阻害するのに十分な用量で、動物に投与する工程を包含する、方法。
18.哺乳動物での好中球の内皮細胞への接着を阻害するための方法であって、該方法が、項目1〜8、項目14あるいは項目15のいずれか1項に記載の方法により得られた前記MAIFを、該接着を阻害するのに十分な用量で該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
19.哺乳動物中の内皮細胞に接着した好中球を剥離するための方法であって、該方法が、項目1〜8、項目14あるいは項目15のいずれか1項に記載の方法により得られた前記MAIFを、該剥離を引き起こすのに十分な用量で該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
20.前記好中球が血小板活性化因子に応答して前記内皮細胞に接着する、項目19に記載の方法。
21.哺乳動物中に存在するCD18細胞表面抗原と該抗原に結合し得る分子との間の相互作用を阻害するための方法であって、該方法が項目1〜8、項目14あるいは項目15のいずれか1項に記載の方法により得られた前記MAIFを、該相互作用を阻害するのに十分な用量で該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
22.哺乳動物の静脈系由来の白血球の血管外遊出を阻害する方法であって、該方法が、項目1〜8、項目14あるいは項目15のいずれか1項に記載の方法により得られた前記MAIFを、該血管外遊出を阻害するのに十分な用量で該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
23.前記白血球が好中球である、項目22に記載の方法。
24.外来抗原に対する宿主哺乳動物中のリンパ球の分裂促進的な応答を抑制するための方法であって、該方法が項目1〜8、項目14あるいは項目15のいずれか1項に記載の方法により得られた前記MAIFを、該分裂応答を抑制するのに十分な用量で該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
25.前記抗原が細胞表面上に存在する、項目24に記載の方法。
26.前記細胞が白血球である、項目25に記載の方法。
27.前記細胞がリンパ球である、項目26に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
好適な実施態様の詳細な説明
本発明は、乳由来の抗炎症性因子の単離および精製、ならびに炎症性疾患を処置する目的のためのこの因子の動物への投与を包含する。他に示さない限り、以下の定義を適用する:
用語「乳抗炎症性因子」は、過免疫乳または正常な牛乳のいずれかから得られた因子を意図する。用語「実質的に純粋な乳抗炎症性因子」は、本発明の目的のために、高分子量物質(>10,000ダルトン)を除去し、かつイオン交換クロマトグラフィーによって低分子量の負荷電種を単離した後に、HPLCクロマトグラフィー上の単一の主要な対称性ピークとして溶出する抗炎症性因子を意図する。用語「高度に精製された」あるいは「高度に純粋な」は、図44Bの溶出パターンと必ずしも同一ではないが、アミノプロピル弱アニオン交換カラム上で類似の溶出パターンを有する抗炎症性因子を意図する。このような溶出プロフィールの特別の特性は、図44Bのシフトしたプロフィールに見られるような肩A(図44Aに見られるように)の有意な喪失である。普通の乳および過免疫乳は、本明細書中に記載の抗炎症性因子を得るための方法により処理され得る。
【0024】
用語「過免疫乳」は、本発明の目的のために、過免疫状態で維持された乳生産動物から得られた乳を意図する。過免疫の詳細は、以下に詳細に記載される。
【0025】
用語「ホエー」は、本発明の目的のために、乳脂肪を除去した乳を意図する。
【0026】
用語「普通の乳」は、本発明の目的のために、従来の手段および酪農行為により乳生産動物から得られる乳を意図する。
【0027】
用語「乳生産動物」は、本発明の目的のために、商業的に実施可能な量で、乳を生産する哺乳動物、好ましくは、ウシ、ヒツジ、およびヤギ、より好ましくは、Bos属(ウシ科の)の乳牛、特にホルスタインのような最大収率の乳を与える品種を意図する。
【0028】
用語「細菌抗原」は、本発明の目的のために、熱で死滅させた細菌細胞の凍結乾燥調製物を意図する。
【0029】
用語「微小カプセル化形態」は、本発明の目的のために、乳生産動物に投与するための1またはそれ以上の細菌抗原をカプセル化するポリマー微小粒子を意図する。
【0030】
用語「炎症」は、本発明の目的のために、組織の傷害または破壊により誘導される局所的な保護応答であり、傷害性因子および傷害組織の両方を破壊し、減弱し、または遮断することを意図し、それは痛み、発熱、紅潮、腫脹、機能の喪失の典型的な続発、ならびに透過性そして血流の増大を伴う小動脈、毛細血管、および小静脈の拡張、血漿タンパク質を含む液体の滲出、および白血球の炎症病巣への遊走を包含する組織学的に複雑な一連の事象による急性の形態により特徴付けられる。
【0031】
用語「処置」は、本発明の目的のために、障害の徴候および/または障害の病因が緩和されるかまたは完全に取り除かれることを意図する。
【0032】
用語「投与する」は、本発明の目的のために、物質で被験体を処置するあらゆる方法(例えば、経口的に、鼻内に、非経口的に(静脈内に、筋肉内に、あるいは皮下内にまたは直腸に))を意図する。用語「動物」は、本発明の目的のために、ヒト、農場動物、家畜、あるいは動物園の動物を包含する炎症の対象となるあらゆる生きている動物を意図する。
【0033】
本発明の単離精製された乳産物により処置され得る炎症症状の例として、急性および亜急性の滑膜包炎、急性非特異性腱炎、全身性紅斑性狼瘡、全身性皮膚炎、急性リウマチ性心臓炎、天疱瘡、水疱性皮膚炎、ヘルペス状の(herpeteformis)重症紅斑、多形剥脱性皮膚炎、硬変、季節性再発性鼻炎、気管支喘息、異所性皮膚炎、血清病、角膜炎、眼性虹彩炎、び漫性ウレイチス(diffuseureitis)、声帯炎、視神経炎、神経性眼炎、症候性サルコイドーシス、レフラー症候群、ベリリウム症、溶血性貧血、乳腺炎、乳突炎、接触皮膚炎、アレルギー性結膜炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、急性痛風性関節炎、および帯状ヘルペスからなる群選択される症状が挙げられる。さらに、この単離精製された乳産物を用いて、潜在的な炎症性因子に曝される個体を処置し得る。
【0034】
本発明は、部分的には、ウシのような乳生産動物を過免疫の特定の状態に仕向ける場合に、この動物が、普通以上のレベルの高度に有益な抗炎症性因子を有する乳を生産するという発見に基づいている。この因子はヒトおよび他の動物における炎症の徴候を抑制するばかりでなく、レシピエント中の炎症性因子の存在を予防することにおいて予防的薬剤でもある。用語「普通以上のレベル」は、非過免疫動物由来の乳において見出されたレベルを超えるレベルを意図する。免疫感受性のみの誘導は、乳中MAIFの普通以上のレベルの出現を引き起こすには不十分である。これは、普通の牛乳は、ウシがウシの疾患に対する通常の免疫の間およびその環境への通常の曝露の間に種々の抗原に対して感作する場合でさえ、これらの普通以上のレベルを含まないという事実により示されている。乳が所望の普通以上のレベルを有するのは特定の過免疫状態においてのみである。
【0035】
この特定の状態は、最初の免疫投与に続く、十分に高い用量の特異的な抗原を用いる周期的な追加免疫により達成され得る。追加免疫の好適な用量はウシの一次免疫を生ずるのに必要な用量の50%に等しいかまたはそれを越えるべきである。それゆえ、追加免疫用量の閾値が存在する。この用量以下では、ウシが通常免疫状態と呼ばれる場合でさえ、乳においてその特性が生じない。要求される過免疫状態を達成するためには、最初の一連の追加免疫投与後に過免疫乳を試験することが必須である。もしも有益な因子が乳に存在しないならば、高い用量の付加的な追加免疫が乳においてその特性が出現するまで投与される。
【0036】
普通以上のレベルの抗炎症性因子を含有する過免疫乳を生産するプロセスは、同時係属中の1990年9月11日に出願された米国特許出願第580,382号、およびまた1989年5月22日に出願された米国特許出願第355,786号(1987年7月2日に出願された包袋継続出願の米国特許出願第069,139号で、現在は米国特許第5,106,618号である)、および1986年9月17日に出願された米国特許出願第910,297号(1983年2月1日に出願された包袋継続出願の米国特許出願第576,001号で、現在は米国特許第4,919,929号である)に開示される(これらの全ては全体として本明細書中で参考として援用される)。要約すると、普通以上のレベルの抗炎症性因子を含有する過免疫乳を生産する1つのプロセスは、以下の工程を包含する:(1)抗
験する工程;(6)過免疫ウシから乳を回収する工程;および(7)乳を処理してMAIFを単離する工程。
【0037】
工程1:あらゆる抗原あるいは抗原の組合わせが用いられ得る。抗原は、細菌性、ウイルス性、原生動物性、真菌性、細胞性、あるいは乳生産動物の免疫系が応答するあらゆる他の物質であり得る。本工程で重要な点は、抗原が乳生産動物において免疫状態および過免疫状態を誘発し得るばかりでなく、乳において普通以上のレベルの抗炎症性因子を生成し得ねばならないことである。あらゆる抗原が、普通以上のレベルの因子を生成するために使用され得る。1つの好適なワクチンは、以下の実施例1Aに詳細に記載されるシリーズ100ワクチンと呼ばれる多価細菌抗原の混合物である。
【0038】
工程2:抗原(単数または複数)は、感作を引き起こすあらゆる方法で投与され得る。1つの方法において、ワクチンは1×106〜1×1020、好ましくは108〜1010、最も好ましくは2×108の熱で死滅させた細菌由来の抗原から構成されたワクチンが筋肉内注射により投与される。しかし静脈内注射、腹腔内注射、直腸座剤、あるいは経口投与のような他の方法が使用され得る。
【0039】
工程3:乳生産動物が、抗原に対して感受性になったか否かを決定する必要がある。感受性を試験するための免疫学の多数の方法が当業者に公知である(Methods in Immunology and Immunochemistry, William,C.A.,およびChase,W.M.,Academic Press, New York, 第1〜5巻(1975))。好適な方法は、抗原として多数の細菌種を含む多価ワクチンを使用すること、およびワクチンの投与前後における動物の血清中の凝集抗体の存在を試験することである。ワクチンを用いる免疫後の乳抗体の出現は感受性を示し;この時点で、工程4に進むことが可能である。
【0040】
工程4:本工程は、感作された動物中の過免疫状態の誘発および維持を包含する。これは、一次感作を達成するために用いられた同じ多価ワクチンの一定時間間隔での繰り返しの追加免疫投与により達成される。2週間間隔の追加免疫が多価細菌抗原に対しては最適である。しかし、動物が抗原に対して過免疫状態から免疫寛容状態に移行しないことを確保することが必要である。
【0041】
好適な実施態様において、ウシの過免疫は、以下の実施例1Bに詳細に記載されるように調製された微小カプセル化ワクチンの単回投与により達成され得る。過免疫の制御された放出形態の利点は、抗原への定常の曝露が動物を過免疫状態のままにすることを保証することである。
【0042】
他の実施態様において、異なる免疫手順(例えば、微小カプセル化抗原および液体抗原の同時投与、あるいは一次免疫用の筋肉内注射、および微小カプセル化手段による経口投与または非経口投与による追加免疫投与)を組み合わせることが可能である。一次免疫および過免疫の多くの異なった組合わせが当業者には公知である。
【0043】
工程5:抗炎症性活性レベルについて、乳を試験する必要がある。これは、過免疫乳あるいは炎症時に過免疫乳由来の産物のいずれかの効果を試験する任意の研究技術により達成され得る。ラットの足の化学誘発性炎症が抗炎症性薬剤の標準アッセイである。
【0044】
工程6:本工程は、乳の回収および処理を包含する。乳は従来の方法により回収され得る。乳を処理して抗炎症性因子を単離する工程を以下に記載する。
【0045】
抗炎症性因子を単離、精製、そして試験するための最も簡潔なプロセスは、以下の工程を包含する:
1. 過免疫乳を脱脂して脱脂乳を生産する工程;
2. 脱脂乳からカゼインを除去してホエーを生じる工程;
3. このホエーから約10,000ダルトンより大きな分子量の巨大分子を限外濾過により除去する工程;
4. イオン交換樹脂カラムを用いて工程3由来の産物を分画して、約10,000ダルトンより小さな分子量の負に荷電した抗炎症性種を単離する工程;
5.工程4由来の負に荷電した種を分子ふるいクロマトグラフィーにより分離する工程;および
6. 工程5由来の抗炎症性因子調製物の生物学的アッセイ。
【0046】
他の好適な実施態様において、分子ふるいクロマトグラフィー由来の生物学的活性を有する画分は、約5000ダルトンより大きな分子量の巨大分子を保留する膜を通す濾過によりさらに精製される。
【0047】
別の好適な実施態様はさらに、HPLCサイズ排除クロマトグラフィーおよび有機分配抽出によるMAIFのさらなる精製を包含する。
【0048】
7. 乳因子の抗炎症作用は、ラットの足へのカラゲニン溶液の注射により引き起こされる水腫において試験される。ラット足試験は抗炎症薬剤のための標準的な動物試験である。Winter,C.A., Risley,G.A., Nuss,A.W.,「抗炎症薬剤用アッセイとしてのラット後肢におけるカラゲニン誘発水腫」Proc.Soc. Exper. Biol. Med. 3:544(1967)。あるいは、実施例24に記載のように胸膜好中球遊走阻害アッセイを使用し得る。Vinegarら、「ラットにおけるカラゲニン誘発胸膜炎のいくつかの定量的特性」、Proc.Soc. Exp. Biol. Med. 143:711〜714(1973);Ammendola,G.ら、「ラットカラゲニン性胸膜炎における白血球遊走およびリソソーム酵素の放出」、Agentsand Actions 5:250〜255(1975);Vinegar,R.ら、「急性カラゲニン性炎症の経路の定量的研究」、Fed. Proc.35:2447〜2456(1976)。種々の他の試験が使用され得る。Wetnick,A.S.、およびSabin,C.、「ラットのアジュバント誘発関節炎および実験的アレルギー性脳脊髄炎におけるクロニキシン(Clonixin)およびベタウレタゾン(Bethaurethasone)の効果」、Jap.J. Pharm. 22:741(1972)。しかし、ラット足試験が、最も簡単で直接利用できる試験であり、そしてあらゆる抗炎症薬剤を満たすことが示されている。この試験は、Beckの米国特許第4,284,623号に詳細に記載されている。この特許は、ラット足試験を記載する範囲まで、本明細書中に参考として援用される。簡潔に記載すると、この試験は、成体白色ラットの足蹠に少量のカラゲニンを注射することを含む。これは、炎症性応答を誘発することが知られている。得られる腫脹の程度は定量化され得る。抗炎症性因子を含有する試料が、適切な経路、好ましくは腹腔内注射により、ラットに投与され、そして炎症プロセスの妨害あるいは緩和が、容量測定法または重量測定法のいずれかにより定量化される。
【0049】
要約すると、抗炎症性因子が、乳を脱脂し、カゼインを除去し、10,000ダルトンより大きい巨大分子を除去し、そしてイオン交換クロマトグラフィーおよび分子ふるいクロマトグラフィーを用いて継続するプロセスに従うことにより過免疫乳から単離され得る。抗炎症性因子の適切な調製物の生物学的活性は、本明細書中に記載されるように、ラットにおいて用量−応答実験を実施することにより試験され得る。
【0050】
本発明のさらなる好適な実施態様において、過免疫乳中に存在する抗炎症性因子が以下を包む工程の組み合わせを用いて精製される:分子をその分子量に基づいて分離し得る膜での濾過;イオン交換クロマトグラフィー;分子ふるいクロマトグラフィー;およびアフィニティークロマトグラフィー(実施例15)。好適な第1工程は、上記のように生産した過免疫脱脂乳を、約10,000ダルトンまたはそれ以上の分子量を有する分子を保留する膜を通して濾過する工程を含む。膜を通過した物質(すなわち濾液または透過液)を、回収し、そしてさらなる精製工程において使用する。そのような濾過を実施するための装置および膜は、当該分野では周知である。
【0051】
濾過に引き続く好適な工程は、アニオン交換体上のイオン交換クロマトグラフィーである。ジエチルアミノエチル基を有する交換体は、良好な分離を遂げることが見出されたが、他のアニオン交換体も同様に使用され得ることが予想される。イオン交換体の固体支持体は、高い流速を維持し得ることが好ましい。Sepharoseがこの目的には適していることが見出された。
【0052】
イオン交換クロマトグラフィー後の好適な工程はゲル濾過クロマトグラフィーである。この工程のためのカラムパッキングは、10,000ダルトンより小さい分子量を有する分子を分画し得るよう選択されるべきである。好適なパッキングはToyopearlHW-40(Rohm and Haas)であるが、当該分野で周知の他のパッキングも同様に使用され得る。使用され得、そして市販されている他のパッキングの例としては、ポリマー性炭水化物ベースのパッキング(例えば、SephadexG-10またはG-25(Pharmacia))、あるいはポリアクリルアミドベースのパッキング(例えば、バイオゲル(biogel) P-2、P-4、P-6、P-10、またはP-30(Bio-Rad))が挙げられる。
【0053】
ゲル濾過クロマトグラフィー後の好適な工程は、ボロネートアフィニティー支持体上のアフィニティークロマトグラフィーである。これらの支持体は、シス-ジオール基を有する低分子量の化合物を分画する際に有効であることが見出された。好適な支持体はAffiGel 601(Bio-Rad)である。これは、ポリアクリルアミドゲル濾過支持体Bio-GelP-6(またBio-Radにより販売)のボロネート誘導体である。
【0054】
イオン交換、ゲル濾過、またはアフィニティークロマトグラフィー工程後の調製物のための好適な貯蔵様式は凍結乾燥粉末である。第1の精製工程で回収した濾液は、使用するまで冷蔵し得る。精製により得られた抗炎症性因子の活性は上記のラット足試験を用いて測定され得る。
【0055】
本発明の別の好適な実施態様において、過免疫乳中に存在する抗炎症性因子は分析的に、または調製用に以下を包含する工程の組合わせを用いて精製される:10,000ダルトンの分子量カットオフを有する膜を用いる限外濾過、イオン交換クロマトグラフィー、分取用HPLCカラム上でのサイズ排除クロマトグラフィー、および有機分配抽出。
【0056】
好適な第1工程において、大容量(例えば、90リットル)の脱脂乳を、10,000ダルトンカットオフを有する限外濾過膜を通過させる。得られた透過液(<10K透過液)をさらなる精製工程のために回収する。
【0057】
上記の限外濾過後の好適な工程は、前工程由来の大容量(例えば、60リットル)の透過液を、イオン交換カラムにかける工程である。次いで、溶出液は凍結乾燥され得る。ジエチル-アミノエチル(DEAE)-Sepharoseファーストフロー(FastFlow)交換樹脂が良好な分離を遂げることが見出された。
【0058】
上記イオン交換クロマトグラフィー後の好適な工程は、分取用HPLCカラムに、大量(例えば、100mg)のイオン交換カラム由来の精製調製物を置く工程である。より大量のものでさえも、多数の試料をHPLCカラム上で100mg毎に分離すること、および同じセットのチューブにそれらを回収することによって得られ得る。次いで、チューブをプールし得、そしてその内容物を凍結乾燥し得る。
【0059】
次の好適な工程は、50〜100mgの凍結乾燥されたHPLCカラム試料の取得、中性脂質を除去するためのn-ヘキサンでの抽出、酸性化、そして次の酢酸エチルでの再抽出を伴う有機分配抽出である。有機分配抽出前後の調製物のアミノプロピル弱アニオン交換カラム上の分析を図44に示す。
【0060】
実施例16に記載の実験結果は、抗炎症性因子の調製物を用いた動物の前処置が、血小板活性化因子(PAF)で刺激された好中球の、小静脈に沿って並ぶ内皮細胞への接着を引き下げ、そして好中球が小静脈から血管外遊出する速度を引き下げることを示す。さらに、動物をPAFで処置した後のこの因子の調製物の投与が、内皮細胞に接着する好中球の数を減少させることが見出された。患者または動物がこれらの効果から利益を得る程度まで、本発明は抗炎症性因子の調製物の使用を包含する。このことは、係る特定の疾患とは関係せずにあてはまる。同様に、実施例16中のデータは、抗炎症性因子が、細胞表面CD18抗原と直接相互作用することおよび他の分子がこの糖タンパク質複合体との相互作用を妨ぐことにより、接着および血管外遊出におけるその効果を引き起こすことを示す。本発明はまた、この目的のための、抗炎症性因子の調製物の使用を包含する。
【0061】
実施例18に示したように、抗炎症性因子の調製物の動物への投与は、移植片対ヒト反応ではなく、ヒト対移植片反応を抑制し、そして脾臓の重量および脾臓リンパ球の数の増加を引き起こす。コンカナバリンAに対するリンパ球応答はまた、この調製物により無効にされること見出された。これらのデータは、抗炎症性因子が、組織の破壊的感染プロセスの阻害、およびリンパ球機能の抑制が所望される場合に有用であることを示している。
【0062】
図43に示したように、MAIF(有機分配抽出から得られた)の脱塩は、10,000倍ほどの低い用量のMAIFがラット胸膜白血球の同じ程度の遊走阻害を得るために要求されることにより示されるように、精製において顕著な増大をもたらす。
【0063】
本発明の組成物は、抗炎症活性を提供するあらゆる手段により投与され得る。例えば、投与は非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、あるいは経口であり得る。
【0064】
経口投与の固体投与形態として、カプセル、錠剤、丸薬、散剤、および顆粒剤が挙げられる。そのような固体投与形態において、活性化合物は少なくとも1つの不活性な希釈剤(例えば、スクロース、ラクトース、またはデンプン)と混ぜ合わされる。そのような投与形態はまた、通常の実施であるように、不活性な希釈剤以外の付加的な物質を含み得る。カプセル、錠剤、および丸薬の場合、投与形態はまた緩衝剤を含み得る。錠剤および丸薬はさらに腸溶剤皮で調製され得る。
【0065】
経口投与のための液状投与形態は、薬学分野において一般的に使用される不活性の希釈液を含む薬学的に受容可能なエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルを含む。不活性の希釈液以外に、そのような組成物はまた、アジュバント(例えば、湿潤剤、乳化剤、および懸濁剤、ならびに甘味剤)を含み得る。
【0066】
非経口投与のための本発明の調製物は、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液またはエマルジョンを含む。非水溶媒またはビヒクルの例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物性油、およびオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルが挙げられる。
【0067】
本発明の組成物中の活性成分の用量は変化し得る;しかし、活性成分の量は、適切な投与形態が得られるようにする必要がある。選択された投与形態は、所望の治療効果、投与経路、および治療期間に依存する。
【0068】
投与量および投与頻度は患者の年齢および健康状態に依存し、副作用の可能性が考慮される。投与はまた、他の薬剤との併用処置および投与された薬剤の患者の耐性に依存する。
【実施例1】
【0069】
以上、本発明を一般的用語で説明した。本発明はさらに、説明のみの目的のために本明細書中に提供されるある特定の実施例を参照して説明される。これらの実施例は、他に明記しない限り、本発明を限定することが意図されない。
【0070】
実施例1A
S-100ワクチンの調製
アメリンカン・タイプ・カルチャー・コレクションから得た下記表1に示す細菌のスペクトルを含有する細菌培養を15mlの培地で再構成し、37℃で一晩インキュベートした。良好な生育が得られたら、その細菌懸濁液の約半分を用いて1lの培養液に接種し、その接種物を37℃でインキュベートした。残りの懸濁液を滅菌グリコール管に移し、6ヶ月まで−20℃で保存した。
【0071】
培養中に良好な生育が認められた後、その懸濁液を20分間遠心分離して培地を除去することにより細菌細胞を収集した。得られた細菌ペレットを滅菌生理食塩水溶液に再懸濁し、その細菌試料を3回遠心分離することにより細胞から培地を洗い落とした。3回目の滅菌生理食塩水洗浄の後、遠心分離で得た細菌ペレットを少量の2回蒸留水に再懸濁した。
【0072】
培地を含まないその細菌懸濁液をガラスフラスコに入れ80℃の水浴中に一晩放置することにより、該懸濁液を熱で死滅させた。熱で死滅させた細菌の少量を用いてその液体培養の生存能を試験した。熱で死滅させた細菌を培養液に接種して37℃で5日間インキュベートし、毎日生育について調べた。ワクチンに使用するには細菌が死滅している必要があるからである。
【0073】
熱で死滅させた細菌を乾燥状態まで凍結乾燥した。次にその乾燥細菌を2.2×10細菌細胞/ml生理食塩水溶液の濃度(660nmで1.0の光学密度読み)になるよう滅菌生理食塩水溶液と混合した。
【0074】
【表1】

【0075】
この多価液体ワクチンの試料5mlをウシに毎日注射した。多価抗原に対するウシ抗体の酵素結合免疫アッセイを用いることにより、注射した畜牛の抗体(IgG)力価レベルを定期的に測定した。
【0076】
実施例1B
免疫感作法
熱で死滅させた細菌を上述の方法で調製した。得られた多価抗原試料(S-100)を従来の相分離法によってマイクロカプセル化して、多価抗原含有微粒子産物を調製した。一般に、抗原を含有する成形マトリックス材料は生体適合性材料のポリマー、好ましくは生物分解性または生物腐食性材料、好ましくはポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸のコポリマー、ポリカプトラクトン、コポリオキサレート、コラーゲンなどのタンパク質、グリセロールの脂肪酸エステルおよびセルロースエステルから作られる。これらのポリマーは当該技術分野で周知であり、例えば、U.S.3,773,919; U.S. 3,887,699; U.S. 4,118,470; U.S. 4,076,798; (これらはすべて参考として本明細書に援用される)に記述されている。使用したポリマーマトリックス材料は生物分解性のラクチド−グリコリド・コポリマーである。
【0077】
熱で死滅させた細菌抗原を上述のようなマトリックス材料中に、好ましくは直径1〜500ミクロン(好ましくは10〜250ミクロン)の微小球としてカプセル化する。カプセル化法は従来通りで、相分離法、界面反応および物理的方法を含む。微小粒子から宿主体内に細菌抗原が放出される速度を最適化するため、マトリックスと多くの濃度の取り揃えた抗原との多くの組み合わせを使用し得る。これらの組み合わせは過度の実験を要することなく当業者により決定され得る。
【0078】
本実施例の微粒子の直径は250ミクロン未満であった。次に、22%(16.5mg)の多価抗原を含有する約750mgの微粒子を約3ccのビヒクル(水中1重量%Tween20および2重量%カルボキシメチルセルロース)に懸濁した。
【0079】
畜牛の大きな集団から畜牛の小さい群を選択した。これらの無作為に選択した畜牛の5頭を対照として選択した。4頭の畜牛に多価抗原を含有する微粒子を筋肉内注射した。微粒子試料は2.0mRadのガンマ照射で滅菌した。接種したウシと対照ウシから得られる牛乳の試料から抗体(IgG)力価レベルを定期的に測定した。
【0080】
実施例2
過免疫感作乳からのMAIF因子の単離
工程1:乳ろ液調製
過免疫感作したウシの新鮮な乳20リットルをクリーム分離器(DeLavalモデル102)に通して脂肪を除去した。
【0081】
中空糸ダイアフィルトレーション/濃縮器(Amicon DL-10L)を用いて、得られた脱脂乳16リットルを限外濾過することにより高分子量種(10,000ダルトン以上)を除去した。この濃縮器には2つの10,000ダルトン分子量カットオフカートリッジ(AmiconHP10-43)が装着されている。計器上80のポンプ速度、それぞれ30psiおよび25の入口圧および出口圧で脱脂乳を流した。
【0082】
毎時4リットルの流速でカートリッジから排出されるろ液(<10,000ダルトン)12リットルを、貯蔵およびさらなる精製のために凍結または凍結乾燥した。
【0083】
工程2:イオン交換クロマトグラフィー
アニオン交換クロマトグラフィーカラムによって、まずろ液中の乳抗炎症性因子を単離した。
【0084】
この操作では、DEAE-Sepharose CL-6Bゲル(Pharmacia)を用いて5×10cmガラスカラムを充填し、それを滅菌2回蒸留水(pH7.0)で平衡化した。
【0085】
1リットルのろ液(<10,000)をこのカラムにのせ、毎時160mlの流速の滅菌2回蒸留水(pH7.0)で溶出させた。10mlの画分を集め、LKBUvicord 4700吸光光度計を用い、接続した記録計(Pharmacia REC-482)に光学密度をプリントアウトして280nmでモニターした。
【0086】
正電荷および中性電荷を持つ抗炎症性因子以外の物質はこのDEAE-Sepharoseゲルに結合されない。それらは通過ピーク(最初のピーク)に溶出する。負電荷を持つ抗炎症性因子はゲルに保持される。
【0087】
上記因子を溶出するために、滅菌生理学的生理食塩水(pH7.0)を用いる段階的勾配でカラムを溶出した。代表的な分析図を図1に示す。個々の画分のバイオアッセイにより第2番目のピークが上記因子を含有することがわかった。第2番目のピークとそのショルダーを含む画分をさらなる精製に用いる。回収率試験は、この方法によって8.8gの乾燥粉末が得られたことを示す。
【0088】
工程3:ゲル濾過クロマトグラフィー
段階2で得た第2番目のピークは抗炎症性因子と他の負荷電分子を含有する。したがって追加の精製段階が必要であった。さらなる精製を達成するには、ゲル濾過カラムを用いて様々な成分を分子量に基づいて分離することが便利である。
【0089】
この操作ではSephadex G-10樹脂(Pharmacia)を2.5×80cmガラスカラムに充填し、滅菌2回蒸留水(pH7.0)で平衡化した。段階2の第2番目の画分2gを滅菌2回蒸留水に再溶解し、それをカラムの上端にのせた。このカラムを毎時30mlの流速で溶出した。画分(3.3ml)を集め、接続した記録計(PharmaciaREC-482)で光学密度をプリントアウトしながら、254nmと280nmでモニターした(Pharmacia Duo Optical Unit)。
【0090】
代表的には、図2に例示するように溶出図中に3つのピークが現れた。第1番目のピークと第2番目のピークが抗炎症活性を含有した。
【0091】
第1番目のピークは活性な因子を含有するG-10カラム上で形成する凝集体である。
【0092】
第2番目のピークは非凝集形態の上記因子を含有する。凝集形態(ピーク1)と非凝集形態(ピーク2)はラット・バイオアッセイにおいて共に生物学的に活性である。
【0093】
実施例3
乳抗炎症性因子の特徴付け
上述の方法で調製した非凝集形態因子の分子量は10,000ダルトン未満であることがわかった。これはホエーからこの因子を単離する第1段階が10,000ダルトンを超える分子量種の通過を許さない膜を用いる限外濾過によったという事実から推論された。
【0094】
この因子は負電荷を持つ。これは乳限外ろ液をDEAEcelluloseイオン交換カラムにかけたことから決定された。抗炎症活性は水ではこのカラムから溶出しなかった。溶出媒体を塩化ナトリウム(0.9%pH)に変えることによっていくつかのピークの溶出が起こった(図1)。中性荷電種と正荷電種はこのイオン交換樹脂に付着せず、負荷電種は塩濃度の増大によって溶出する。分子量10,000ダルトン未満の透過物をDEAEカラムにかけると、中性塩と糖は水で溶出された(ピーク1、図1)。緩衝液を生理食塩水に変えると3つの異なるピークが溶出した(ピーク2〜4)。第2番目のピークとそのショルダーはラット・アッセイで抗炎症性の生物学的活性を含有していた。したがってこの因子は負電荷を持つと結論づけられる。
【0095】
この因子のもう一つの化学的特徴は、塩を除去する操作の間に凝集体を形成するということである。この特性は分子量10,000ダルトン未満の透過物を2回蒸留水で平衡化したSephadex G-10カラムに通し、pH7の水で溶出したときに明らかになった(図2)。3つのピークがG-10カラムから溶出した。第1番目のピークは空隙容量と共に溶出し10,000ダルトン以上の分子量が示唆された。10,000ダルトンを超える分子は限外濾過によって既にこの試料から除去されているので、これは予想外であった。第2番目のピークは抗炎症性因子について予期される位置に溶出した。第1番目のピークと第2番目のピークは共に抗炎症性の生物学的活性をラット足アッセイで発揮したが、第3番目のピークは活性を欠いていた。第1番目のピークと第2番目のピークの両方が抗炎症性の生物学的活性を持つことは意外であった。G-10カラム(段階3)の第1番目のピークから回収された物質を凍結乾燥し、G-100カラムにかけたところ、単一のピークが間隙容量に溶出し、100,000ダルトン以上の分子量が示唆された。段階3のG-10カラムは異なる分子量種を分離すると同時に塩を除去する。したがってG-10カラムを通過し、結果として塩が除去される間に、抗炎症性因子が高分子量凝集体を形成したと結論づけられる。凝集の程度は塩濃度に伴って変化した。
【0096】
この凝集特性は、抗炎症性因子の存在に起因して抗炎症性の生物学的活性を持つ広いスペクトルの異なる分子量種が形成され得る可能性を示唆している。この特性の発見は、最終産物の凝集の程度に応じて広いスペクトルの異なる生化学的特性を持つ乳抗炎症性因子を製造する可能性を示唆している。例えば、より大きいあるいはより小さい分子量の凝集体(分子量分布は操作中の塩濃度によって制御される)を用いることによって、より長いあるいはより短い半減期を持つ製剤を製造し得る。本明細書に記述したカラムクロマトグラフィー法は、生物学的活性を有する得られた最も小さい分子量種をもたらす(すなわち段階3 G-10カラムのピーク2)。この観察は凝集体を形成するために他の方法を用いることも示唆する。例えば、水での希釈は凝集を引き起こす。塩、とりわけカルシウムを結合する化学試薬は凝集体の形成を引き起こし得る。この発見をなしたことから、凝集体を形成しこの因子を分離する他の方法は当業者に明かであり得る。
【0097】
実施例4
生物学的活性のアッセイ
カラゲニンの溶液をラットの足蹠に注射することによって引き起こされる水腫に対して、精製した抗炎症性因子の抗炎症作用を試験した。乳抗炎症性因子調製物の凍結乾燥試料を適切なビヒクルに溶解し、実験ラットに腹腔内投与した。次いで後足足蹠の各々に1%生理食塩水溶液0.1mlの量で、ラットにカラゲニンを投与した。注射をする前と注射の2.5時間後に厚さゲージを用いて足蹠を測定した。その結果を表2と表3に例示する。これらの表において、MAIFという略号は、上述の実施例1および2に記述した方法を用いて得られた乳抗炎症性因子の調製物を意味する。
【0098】
対照乳と過免疫乳から得た非凝集形態因子(G-10カラムのピーク2)は、1mgから0.25mgの間の用量でラット足の炎症の減少を引き起こした(表2)。過免疫乳と普通の乳の両方が活性を示したが、過免疫材料の方が強力であった。このことから本発明者らは、過免疫ウシから得られる乳には抗炎症性因子がより高濃度に存在すると結論づけた。
【0099】
DEAEカラム由来の第2番目のピークは過免疫乳と普通の乳のいずれから単離した場合にも活性を示した。その活性は過免疫乳において実質的により強かった(表3)。
【0100】
G-10カラム由来の第1番目のピーク(これは凝集形態因子である)はラット足試験で活性を示した(表2)。しかし凝集形態は等重量を基礎にすると非凝集形態ほど強力ではない。
【0101】
これらの研究から抗炎症性因子が牛乳中に天然に存在すると結論づけられる。ウシの過免疫感作は乳中の因子濃度の増大をもたらす。この因子は小さい負荷電分子で、様々な方法で乳から分離され得る。この因子は、乳中に天然には存在しないが加工中に形成される高分子量凝集体を形成し得る。
【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
実施例5
抗炎症性因子の化学分析
抗炎症性因子試料を化学的に分析した。X線回折研究により決定したところ、この因子は結晶構造ではない。MAIF調製物は炭水化物組成に合致する元素分析を与えた。そのC、H、O比はいくつかのカルビノール基がカルボキシルに酸化されている多量体または低重合体物質と合致した。Clイオンに対する等量を若干超えるCaは、部分的にカルボン酸塩として説明できる。残りはナトリウム塩またはカリウム塩であり得る。しかし融解性(あるいはむしろ非融解性)は塩様組成物および/または高分子量組成物を示唆するものであった。純度の現在の状態にある材料は明らかに様々な量のカルシウムとクロライドの塩(おそらくはCaCl)を含有する。
【0105】
いずれの調製物も有意な量の窒素を含有せず、このことはその組成中の一切のペプチド成分を排除する。同様に有意な窒素が存在しないことから、主成分としてのアミノ糖および他の窒素含有物質(様々な複合脂質など)の存在を除外し得る。
【0106】
熱分解マススペクトルは18炭素脂肪酸の有意な痕跡を示した。この事実は痕跡量のNおよびPと共に、調製物中に複合脂質が存在することを示唆している。
【0107】
赤外分光分析はカルビノール官能基およびカルボン酸官能基に合致する吸収を示した。紫外、可視および蛍光分光分析は赤外によって示されたものの他に有意な量の発色団を示さなかった。
【0108】
これらの化学的試験は、カルボニル官能基(アルデヒドまたはケトン)がサブユニット結合中に結び付けられているようなオリゴマー炭水化物に合致する。このオリゴマー炭水化物はまたカルボン酸塩への側鎖酸化物もいくらか含んでいる。
【0109】
このMAIF調製物は実質上純粋であるが、完全に純粋なわけではない。
【0110】
実施例6
ラット足水腫試験:経口投与
ラット・カラゲニン足蹠アッセイを用いて、抗炎症性因子のインビボ抗炎症剤としての有効性を試験した。30匹の成熟した白ラットを1群あたり10匹のラットからなる3つの群に無作為に分けた。これらの群に5日連続の処置で、過免疫感作動物からの脱脂乳粉末10mg、非免疫動物からの脱脂乳粉末10mgを与えるか、または処置しなかった(日あたり20mlの水のみ)。水20ml中の粉末を経口投与した。第5日に各ラットの右足に生理食塩水中の1%カラゲニン0.1mlを注射した。この操作は急性の炎症(水腫)を引き起こすことが知られている。注射の24時間後、ラットを犠牲にし、その足を切断し、左足(対照)と右足(水腫)の重量を比較した。このアッセイの結果を表4(重量としてgで表す)と図3(対照足の平均重量の百分率として表す)に示す。
【0111】
【表4】

【0112】
カラゲニン注射に対する炎症性応答は、非免疫乳群および水対照群と比較して、免疫乳処置ラットにおいて著しく減少した。ラットの一般的健康に対する副作用または有害作用の証拠は検出されなかった。これらのデータから、過免疫感作動物からの脱脂乳粉末を毎日消費することにより、カラゲニン注射によってラットの足蹠に誘発される炎症性応答がほとんど完全にブロックされたと結論づられ得る。
【0113】
実施例7
定量的ラット足水腫試験
一連の実験を過免疫乳画分に対して行った。これらの実験は、乳抗炎症性因子を腹腔内投与した場合の抗炎症活性を確認すると共に、用量応答曲線を確立し、他の投与経路を探索し、さらなる研究の基礎を形成しうる投与法を研究するために計画したものである。
【0114】
Stolle Milk Biologics Internationalによって供給されるG-10カラム由来のピークIは特許第4,956,349号に記載の方法に従って調製された。商業的供給源から入手したラクトースをプラセボとして用いた。アスピリンをポジティブコントロールとして用いた。アスピリンを水に溶解し、胃管栄養法によりキログラムあたり200mgの比率(このアッセイで活性であることがわかっている用量)で経口投与した。カッパカラゲニン(SigmaC-1263)の2%溶液は最も再現性のある結果をもたらすことがわかっているので、これをこれらの実験に用いた。同位体で標識したヒト血清アルブミン(125I-HSA)(これは滲出液の体積に直接比例してカラゲニンが誘発する病巣に局在化する)を用いることにより、足蹠アッセイを改変した。足蹠中の総放射活性カウントを測定し、これを注射した動物から得られる既知体積の血漿中のカウントと比較することにより、水腫の直接的な測定値が血漿等価物のマイクロリットル数として得られる。125I-HSAをラット1匹あたり1.0マイクロキュリーの用量で静脈内注射した。メスのDarkAgoutiラットを用いた。ラットは体重160g〜200gの約12週齢で、同系交配集団から得た。
【0115】
カラゲニン足蹠アッセイを実行するため、麻酔したラットの後足蹠の各々に0.1mlの2%カラゲニンを皮下注射した。この注射後ただちに、生理食塩水0.5ml中の125I-HSA 1.0マイクロキュリーを尾静脈中に注射した。4時間後、各ラットの体重を測定し、血液試料を採取し、そしてラットを安楽死させた。次に両方の後足を切断し、各足中の放射活性と200μl血漿標準中の放射活性レベルを自動ガンマカウンターで測定した。これらの測定から各足の水腫の体積を計算し、マイクロリットルで表現した。
【0116】
実験1:腹腔内用量応答
図4はMAIFの精製調製物の腹腔内投与の効果を、ラクトース(CON)、アスピリンおよび非処置(NoRx)と比較して図示する。すべての処置(ラクトース、アスピリン、MAIF)をカラゲニン注射の30分前に行った。
【0117】
カラゲニン注射は平均250μlの水腫をもたらした(No Rx)。水腫はアスピリンとすべての用量のMAIF調製物によって阻害されたが、ラクトースでは阻害されなかった。これらのデータを平均対照(非処置)水腫の百分率として表すことにより導かれるMAIF調製物についての腹腔内用量応答曲線を図5に示す。
【0118】
実験2:様々なMAIF投与経路の効果
図6は、ラクトースと精製したMAIFの調製物を、経口(ORAL)、筋肉内(IM)、皮下(SUBQ)および静脈内(IV)投与した場合の足蹠水腫に対する効果を図示する。陽性対照(アスピリン)と非処置対照(No Rx)をも示す。
【0119】
カラゲニン抗原投与に先立ち、以下の手順に従って調製物を投与した。アスピリン:経口、30分前;皮下MAIF:1時間前;経口MAIF:24、16、および1時間前;筋肉内MAIF:30分前;静脈内MAIF:抗原投与時(同位体もまた注射した)。
【0120】
それぞれ独立したアッセイにおける平均対照水腫の百分率として表すと、この結果は、すべての投与経路で該抗炎症性因子が水腫形成を阻害したことを示す。静脈内投与した40mgのMAIF調製物はカラゲニンに対する炎症性応答をほとんど完全に排除した。これらの結果はMAIFの抗炎症活性を立証するものであり、上記実験1の結果から見て、異なる投与経路の有効性の順序がIV>IP>IM>SUB Q>ORALであることを示唆している。
【0121】
実験3:静脈内投与および延長経口投与の水腫に対する効果:用量応答
図7は抗炎症性因子の精製調製物のIVおよび経口投与のラットにおける足蹠水腫に対する効果を表している。MAIF経口処置(ラット1匹あたり毎日40mg)を、毎日6日間かつカラゲニン抗原投与の1時間前に行った(PO)。静脈内処置(5、10、20mg)をカラゲニン抗原投与時に行った(IV)。ポジティブコントロール(アスピリン)とネガティブコントロール(非処置)も示してある。
【0122】
図7に示した結果は、3種類の用量のMAIF調製物がすべてこのアッセイにおけるアスピリンの活性さえ超える抗炎症活性をもたらし、その一方、延長経口投与は著しいが制限された活性をもたらすことを示している。
【0123】
そこで研究を拡張して、さらに少ない静脈内用量の抗炎症性因子の効果を調べた。ラクトースプラセボの静脈内用量を対照として含めた。これらの研究の結果を図8に示す。2.5および1mgの静脈内用量のMAIF調製物(IV)は、アスピリンによって誘発される活性の範囲内の抗炎症活性を誘発した。10mlの静脈内ラクトースプラセボ(10mgPLAC IV)は上記範囲内の活性を誘発しなかった。
【0124】
実験2と3の結果を合わせ、それぞれ独立のアッセイにおける平均対照水腫(非処置)に対する百分率としてこれらの結果を表すことにより、静脈内用量応答曲線を導いた。その曲線を図9に示す。
【0125】
この定量的ラット足水腫試験から導かれ得る結論は次の通りである:特許第4,956,349号に記載の如く抽出精製されたG-10カラム由来の乳画分ピークIは、ラット足水腫モデルで試験した場合、一貫して抗炎症活性を示す。ラット1匹あたり4mgの用量のMAIF調製物をカラゲニン抗原投与時に静脈内投与すれば水腫を強烈に阻害するに十分なので、さらなる実験において他の調製物を比較する場合の標準としてこれを選択した。
実施例8
一卵性双子ウシから得られる過免疫乳の調製物の抗炎症特性
一卵性双子ウシから得られる様々な乳画分の生物学的活性を試験することにより、乳の抗炎症活性に対するワクチン注射の効果を調べた。特許第4,956,349号に記載の抽出法に基づき、限外濾過を利用する抽出計画を案出した。その操作手順は下記の通りであった。
【0126】
【表4A】

【0127】
免疫感作した双子ウシ、非免疫感作コントロール双子ウシおよび免疫感作したウシから先に調製した再構成脱脂乳粉末から乳試料を調製した。この試料群は45組の一卵性双子ウシから構成された。各双子組の1頭にStolle S-100混合細菌ワクチン(bacterin)(特許第4,956,349号に記載)を隔週にワクチン注射した。上述のラット・カラゲニン足蹠アッセイを用い、静脈内注射によって様々な画分の生物学的活性を試験した。
【0128】
試験されるべき仮説は次の通りであった:(a)過免疫感作は上述の抗炎症活性に寄与する;(b)MAIFは限外濾過によって工業的規模で抽出され得る;および(c)透過液の希釈は抗炎症性因子の凝集を引き起こし得、該因子が30,000分子量限外濾過膜によって保持されることになる。
【0129】
図10は、非ワクチン注射コントロール双子の乳と免疫感作ウシの再構成乳粉末から得られる様々な画分の生物学的活性を試験するために計画された双子群限外濾過実験の結果を図示する。試験した画分は次の通りである:ピークI、G-10カラム調製物、4ml(OHIO MAIF STD);非ワクチン注射双子ウシから得られるR最終保持物(CONTROLTWIN R);再構成乳粉末から得られるP最終透過液(RECON S100 P);非ワクチン注射双子から得られる透析したR最終保持物(CONDIALYZED R);再構成乳粉末から得られる透析した最終保持物(S100 DIALYZED R)。
【0130】
非免疫感作ウシから調製されたR最終保持物画分には、透析後でさえ抗炎症活性が検出され得なかった。再構成乳粉末から調製された最終透過液P画分には抗炎症活性が検出されなかった。再構成乳粉末保持物R画分は透析後にMAIF標準の活性の範囲内の抗炎症活性を示した。
【0131】
図11はワクチン注射双子ウシ、非ワクチン注射双子ウシおよび免疫感作ウシから得られる再構成乳粉末から調製した様々な乳画分の生物学的活性を試験するよう計画された双子群限外濾過実験の結果を図示する。試験した画分は次の通りである:ピークI、G-10カラム調製物、4ml(OHIOMAIF STD);非ワクチン注射双子から得られる透析した最終保持物R(CON DIALYZED R);再構成乳粉末から得られる最終保持物R(RECONS100 R);ワクチン注射双子から得られれる最終保持物R(IMMUNE TWIN R);再構成乳粉末から得られる最初の保持物R、:1に希釈したもの(S100DILUTED R)。
【0132】
非ワクチン注射コントロール双子から得られる透析した保持物Rまたはワクチン注射双子から得られる非透析保持物Rにはほとんど抗炎症活性が検出されなかった。散布図によりいくらかの活性が検出できる。免疫感作ウシから得た再構成Stolle乳粉末から透析しないで調製されたR保持物は強く抗炎症性であった。しかし、乳から作成したホエーの希釈よりはむしろ限外濾過前の再構成乳の希釈によって作成した調製物はわずかに活性であるに過ぎなかった。この結果は抗炎症活性がホエー画分から、より効率よく抽出されることを示している。
【0133】
図12は、ワクチン注射した双子ウシから得られる透析した保持物の生物学的活性を試験するために計画された双子群限外濾過実験の結果を図示する。試験した画分は次の通りである:ピークI、G-10カラム調製物(OHIOMAIF STD);ワクチン注射双子から得られる透析した最終保持物R(IMM DIALYZED R);G-10調製物から得られる透析した最終保持物(DIALYZEDOHIO MAIF)。この結果は、免疫感作双子から得られる透析後のR画分に抗炎症活性が存在したことを示している。透析したMAIFは透析しないMAIF標準よりもこのアッセイにおいて活性であった。この結果は、透析が抗炎症活性に寄与する乳因子のさらなる濃縮に効果的な手段であることを示唆している。
【0134】
上記の図10〜12に示した結果は次の結論を支持する:(1)希釈した透過液の限外濾過によって、免疫感作ウシから得た再構成乳から抗炎症活性を抽出し得る;(2)非免疫感作ウシの乳から作成した上記調製物中には抗炎症活性は認められなかった;(3)免疫感作ウシの乳から調製した希釈透過液の限外濾過後の最終保持物Rに抗炎症活性が認められたが、活性を示すために透析が必要であった。
【0135】
実施例9
MAIFの安定性、MAIFの熱処理およびプロテイナーゼ処理
乳抗炎症性因子が化学的にタンパク質やペプチドでないという上述の証拠は、主として、窒素のほとんど完全な不在を一貫して示した化学分析に基づくものであった。この抗炎症性因子をさらに特徴づけるため、標準として4mgのピークI,G-10カラム調製物を静脈内に用いるラット足水腫アッセイでいくつかの調製物を試験した。次の処理を行った:6時間のプロテイナーゼ(プロナーゼ)処理;6時間の非プロテイナーゼ処理コントロール;非処理陽性コントロール;100℃で30分間の加熱。
【0136】
このアッセイの結果を図13に図示する。この研究から導かれる結論は、抗炎症活性がタンパク質またはペプチドによるものではなく、しかも抗炎症性因子が煮沸によって不活化されないということであった。プロナーゼ処理の有効性を、平行して行ったプロナーゼ処理によって乳タンパク質が完全に変性したという知見によって確かめた。
【0137】
実施例10
免疫感作ウシから得られるさらに精製されたMAIFと
ホエータンパク質濃縮物の抗炎症活性
ラット足水腫アッセイにおいて静脈内投与を用いることにより、Amicon YM5膜を用いる限外濾過で得た保持物と透過液を生物学的活性について試験した。この操作では、特許第4,956,349号に従って調製したG-10カラムのピークI中のMAIFをAmiconYM5膜上での限外濾過によってさらに精製した。この膜は分子量5000以上の分子を保持する。ホエータンパク質濃縮物(WPC)をまた、免疫感作した動物の乳から調製し、YM5膜を通して濾過した。標準として4mgのピークI,G-10カラム調製物を静脈内に用い、次の試料を上記アッセイで試験した:AmiconYM5限外濾過の透過液; Amicon YM5限外濾過の保持物;免疫感作したウシからのWPC、ラット1匹あたり30mg;市販製品からのWPC(非免疫感作ウシ)、ラット1匹あたり30mg。
【0138】
このアッセイの結果を図14に図示する。これらの結果から、YM5フィルターにかけた画分の総重量の約0.5%を含有した保持物中に活性のすべてがあることは明らかである。この実験で見られた水腫の減少は20〜25マイクログラムの物質の投与後に達成された。
【0139】
WPCの活性については、過免疫感作した動物から作成したWPCが予想通り抗炎症活性を明らかに示した。興味深いことに、非免疫感作動物から作成したWPCもまた抗炎症活性を示した。免疫感作しないウシの乳中に抗炎症活性が存在することは、それが天然の物質にちがいないから、驚くべきことではない。その検出はバイオアッセイの感度を反映する。
【0140】
実施例11
カラゲニンが誘発する足蹠水腫の連続的モニタリング
カラゲニン注射時に静脈内投与した4mgのMAIF調製物によって足蹠中の水腫の蓄積が40%〜50%の間まで減少することが立証された。これらの結果はこの物質が抗炎症性部分を含有していたという証拠を提出したが、MAIFの作用部位または薬学的特性の指標はほとんどなかった。このようなデータを得るためには、カラゲニンに対する応答の間中、足蹠水腫の連続的なモニタリングを可能にする方法を確立する必要があった。これは、ラットの足を、取り外したガンマ線放射検出器内に保持することによって達成された。この手法では動物を4時間までの間麻酔することを必要とする。麻酔は炎症性応答を抑制することが知られているので、まずカラゲニンが誘発する水腫に対する麻酔の効果を測定することが必要であった。そこでラットで麻酔を誘発するために通常使用される5種類の薬剤を評価した;これらは、エーテル、抱水クロラール、イノバール-ベット(Innovar-vet)、ネンブタールおよびウレタンであった。これらの結果を図15に示す。
【0141】
これらの結果から、炎症性応答をこの技術により評価すべき場合、エーテルが選り抜きの麻酔薬であることは明らかであった。エーテルを用いた時に得られる曲線の形は二段階応答を示した。この応答をより詳細に描写するため、水腫の体積を5時間にわたって12の時点で測定する実験をさらに行った。この結果は2段階応答を確認するものであった。初期応答は抗原投与の0〜1時間の間に起こり、後期応答は1.5〜2時間の間に起こった(図16)。
【0142】
他の研究者によってもまた観測されているこの2相は、それぞれ、非食細胞炎症性応答(NPIR)および食細胞炎症性応答(PIR)と呼ばれている。
【0143】
NPIRは、傷害に応答して、ヒスタミンやブラジキニンなどの可溶性媒介物質によって開始され、その一方、PIRは好中球の参加に依存する。したがって、プロトコルは、MAIFを投与し、そしてこの薬剤の抗炎症特性が初期の非細胞相(NPIR)または後期の細胞相(PIR)に対する効果の結果であるかどうかを決定するために水腫の蓄積を連続的にモニターするものであった。ラット1匹あたり5mgまたは40mgのMAIF調製物をカラゲニン抗原投与時に静脈内投与し、そして4時間にわたって規則的な間隔で水腫の蓄積をモニターした。どちらの用量もいずれの相の間に水腫の蓄積に影響を与えない(図17)。
【0144】
カラゲニンが誘発する水腫に対するMAIFの精製調製物の効果を、抗原投与の4時間後に決定した先の多くの分析はこの画分中にかなりの抗炎症活性を示していたので、この結果は意外であった。したがって、エーテルに対する連続的な曝露が、MAIFの活性な抗炎症性成分をインビボで抑制するか、あるいは不活化したと考えられた。
【0145】
先の研究は、エーテルに対する短時間の曝露が抗炎症性因子の活性に影響を与えないことを示した。したがって、進行する水腫蓄積に対するMAIFの効果を4時点(0、1、3および4時間)でのみ測定し、それによりエーテルに対する動物の曝露を制限するように実験を行った。1時間の時点は、初期の非食細胞炎症性応答に対する影響を評価するために選択し、その一方3時間および4時間目の測定は後期の食細胞炎症性応答に対する効果を定量するために選択した。この実験では、40mgで投与したMAIF調製物は、第2番目の食細胞媒介相の間に水腫の蓄積を減少させたが、初期の可溶性媒介物質駆動相に対しては有意な効果を持たなかった(図18)。
【0146】
この一連の実験から次の結論を引き出し得る:
1.エーテルは、カラゲニンに対する炎症性応答を連続的にモニターすべき実験で用いるには好適な麻酔薬である。
2.連続的なエーテル麻酔はカラゲニン足蹠アッセイにおいて抗炎症性因子のインビボ抗炎症活性を阻害する。
3.MAIFはカラゲニンに対する炎症性応答の後期食細胞媒介相を阻害することによって炎症を改善する。
【0147】
実施例12
カラゲニンが誘発する足蹠水腫に対するMAIFの効果の時間経過
抗原投与時ではなくカラゲニンの注射前または注射後の選択した時点で薬物を投与するさらなる一連の実験を行った。この研究の目的は、
(a)炎症性刺激との関連で最も効果的なMAIF投与時間、
(b)抗炎症性部分の生物学的な半減期、
(c) MAIFによって影響される進展する炎症性応答における時点、
に関する情報を提供することであった。
この研究は3つの部分で行った。カラゲニンの注射前150分から注射後150分までの範囲の11時点の一つで、MAIFの調製物を4mg/ラットの用量で静脈内投与した。この実験の結果を図19と表5に示す。
【0148】
【表5】

【0149】
試験したすべての時点で水腫の有意な阻害が観測されたが、阻害のレベルは両端(±150分)で低かった。抗原投与時のより近くで処置された群において、MAIF投与に対する興味深い周期的応答が認められた。抗原投与の30分後に投与すると抗原投与の15分後に投与した場合よりMAIFが効果的であったという事実は、応答の第2番目の食細胞媒介相がこの薬物によって阻害されるという概念を支持している。抗原投与の15分前または抗原投与時に投与するとMAIFの調製物はカラゲニンに対する応答を強く阻害した。さらに、この薬物が血清中で比較的長い半減期(1〜2時間)を持つこと、ならびにその有効性が抗原投与の時間と炎症性応答の動的特性に関係していることは明らかである。
【0150】
したがって、この抗炎症効果は炎症性細胞(おそらくは好中球)に対する効果によるものであると要約される。
【0151】
実施例13
逆受動的アルツス反応に対するMAIFの効果
逆受動的アルツス反応(RPA)を調節する物質の能力を評価することによって、この抗炎症性因子が好中球関与に影響し得る可能性を調査した。この免疫複合体誘発応答は主として好中球媒介性で、その反応の進展に影響を与える薬物はこれらの細胞に対する効果によってその影響を発揮する。RPAを誘発するため、ラットに卵白アルブミンに対するウサギ抗体を皮下注射し、そして天然の卵白アルブミンを静脈内注射した。皮膚血管壁中とその周辺に卵白アルブミン/卵白アルブミン抗体免疫複合体が生成し、宿主好中球がこの抗体のFc部分に結合し、そして強い炎症性反応が開始する。この応答は免疫複合体によって開始されるが、それは宿主の免疫系とは独立に起こるということに注意すべきである。
【0152】
RPAを定量するために3つの変数が用いられる。これらは:(1)水腫−125I-HSAの蓄積を用いて測定される、(2)出血−59Feによるインビボプレ標識RBCにより評価される、および(3)好中球蓄積−好中球特異的酵素ミエロペルオキシダーゼ(MPO)の組織レベルを決定することによって測定される。これらのアッセイは当業者に公知である。
【0153】
18匹のラットを6匹の3群に分けた。ウサギ抗卵白アルブミン(40μl)を各動物の背中の4部位に皮下注射し、そしてその直後に2mgの卵白アルブミンを静脈内注射した。1つの動物群には他の処置をせず、これをコントロールとした。第2の群には20mgのラクトース調製物を静脈内注射し、最後の群にはMAIFの精製調製物の20mgを静脈内注射した。ラクトース調製物とMAIF調製物はどちらも卵白アルブミンと共に投与した。抗原投与の3.5時間後に反応の重篤度を評価した。RPA応答の開始前にMAIF調製物を20mg/ラットの用量で静脈内投与した場合、応答を測定するために用いた3つの変数に高度に有意な阻害があった(表6、図20)。コントロール物質のラクトースもまた、好中球の蓄積と出血に大きくないか、わずかに有意な抑制をもたらした。このことは、普通の乳中に少量の抗炎症活性があることを示している。
【0154】
【表6】

【0155】
好中球はRPAの一次的媒介物質であるから、これらの結果は、MAIFが好中球機能に対する効果によって炎症性応答を阻害し得るというさらなる証拠を与えた。
【0156】
実施例14
好中球遊走に対するMAIFの効果
炎症性応答に効果的に関与するために、まず好中球は脈管構造から炎症の部位へ遊走しなければならない。抗炎症性因子が好中球の遊走を妨害するかどうかを決定するため、滅菌ポリウレタンスポンジの皮下移植を使用する炎症モデルを用いた。移植後に間隔をおいてスポンジを取り出し、そしてこのスポンジの重量を測定し、次いで、浸潤液中の細胞を抽出して計数することにより、応答の体液相と細胞相の両方を定量し得る。移植の24時間後、スポンジ内に見出される細胞の95%より多くが好中球である。
【0157】
2つの実験を行った。最初の実験では、スポンジ移植時に5、10、20または40mgの精製MAIF調製物のいずれかで動物を処置した。移植の24時間後にスポンジを取り出した。各群は5〜8匹のラットからなり、各動物に2つのスポンジを移植した。この結果を図21に示す。
【0158】
スポンジ移植時に静脈内投与した20または40mgのMAIF調製物は、炎症性細胞の遊走能に対して著しい効果を有していた。それほど著しくはないが同様に有意な体液蓄積の阻害もまた見られた。これより低い二つのMAIF用量はこの炎症モデルにおいて示しうる効果を持たなかった。
【0159】
炎症性抗原投与(スポンジ移植)とMAIF投与との間の時間的関係を正確に叙述するよう計画された第2番目の実験を行った。この研究では、スポンジ移植の30、60または120分後に20mgのMAIF調製物を静脈内投与した。第4の対照群は処置せずにおいた。各群には5匹の動物がいた。2つのスポンジを各動物に移植し、これらを24時間後に取り出した。この結果を図22に図示する。このグラフには20mgのMAIF調製物を移植時に投与されたラットの試料群から得られた結果(図21を参照のこと)が含まれている。
【0160】
カラゲニンが誘発する足蹠水腫に対するMAIFの効果の時間経過から得られる結果は、抗原投与の60分以降に投与された場合、MAIFが比較して有効ではないことを示している。スポンジ移植に伴う炎症を抑制するには20mgのMAIF調製物が必要であったのに対して、カラゲニンが誘発する水腫を阻害するには4mgで十分であったことは注目に値する。この違いは上記2つの刺激物によって宿主に与えられる刺激のレベルが異なることに関係しているのであろうが、この解釈に執着するつもりはない。スポンジ移植物は遅い炎症性応答を誘発する比較的温和な刺激物であり、移植の8〜16時間の間で大量の細胞が蓄積する(図23)。一方、カラゲニンの皮下注射は比較的短い期間にそれ相応に強い応答を誘発する極めて強い刺激物である(図16)。
【0161】
実施例15
乳から抗炎症性因子を精製する別法(調製物「AIF」)
以下の実施例は、乳から抗炎症性因子を最も低分子量の非凝集形態で精製する方法を記載する。実施例2に記載の手順を用いて得られる調製物と区別するために、ここに記載する精製工程によってもたらされる調製物を「AIF」と命名した。本実施例およびこれに続く実施例(すなわち実施例16)では、調製物内の活性因子を単に「抗炎症性因子」という。すべての精製段階は考えうる細菌または発熱物質による汚染を最小限にするように行った。溶液の調製には滅菌水を使用し、すべてのガラス器具を発熱原除去処理した。
【0162】
工程1:<10,00分子量(「MW」)限外濾過
新鮮なS100免疫脱脂乳(免疫乳を得る際に使用する方法の記述については実施例1を参照のこと)を30psiの圧力で10000MWカットオフ限外濾過膜(Filtron)にポンプで通した。その透過液を氷上に維持した発熱原除去処理したビンに回集した。透過液を滅菌濾過し、使用するまで冷蔵した。この<10000MW透過液は、乳抗炎症性因子ならびに低分子量ペプチド、オリゴ糖類、および大量のラクトースを含有する。この透過液中の抗炎症活性は低分子量の非凝集形態で存在する。
【0163】
工程2:DEAE-Sepharoseクロマトグラフィー
抗炎症活性の最初の分画をDEAE-Sepharoseで行った。1リットルのDEAE-Sepharoseを含有する5×50cmカラムを透過緩衝液で平衡化した。透過緩衝液は内毒素を含まない滅菌溶液で、バルク乳中に見出される拡散性イオンを適当な濃度で含有する。透過緩衝液はCaCl、MgCl、NaCl、クエン酸NaおよびNaHPOを含有する。典型的には、約8リットルの<10000MW透過液を1時間あたり約500mlの流速でDEAE-Sepharoseカラムにポンプでのせた。カラム溶出液を280nmでモニターした。カラムを蒸留水で280吸光度がベースラインに戻るまで洗浄した(典型的には約6〜8リットルの蒸留水が必要であった)。抗炎症活性はカラムに結合し、約4リットルの0.5M酢酸アンモニウム(水中、pH7.4)で溶出した。その溶出液を乾燥状態まで凍結乾燥し、重量を測定した。8リットルの透過液から得られる回収物質の重量は、典型的には15〜20グラムであった。酢酸アンモニウムは凍結乾燥中に完全に揮発するので、残存重量は結合した物質の重量を意味する。抗炎症活性をマウス好中球遊走阻害アッセイで検定した。
【0164】
工程3:H-40クロマトグラフィー
抗炎症活性に寄与する因子を他の低分子量成分から分離するため、DEAE-Sepharoseカラムから溶出した物質を、サイズ分画カラムでさらに分画した。8gのDEAE試料を蒸留水50mlに溶解し、水中に平衡化した736mlのToyopearlHW-40(Rohm and Haas)を含有する2.5×150cmカラムにのせた。そのカラムを毎時40mlの流速で蒸留水に展開し、そして溶出液を280nmでモニターした。画分を回集し、マウス好中球遊走阻害アッセイにおける抗炎症性活性について検定した。活性および280nmにおいて最小限の吸光度を示した画分を貯蔵し、凍結乾燥した。抗炎症活性を含有する約80mgの物質を8リットルの透過液から回収した。
【0165】
工程4:AffiGel 601クロマトグラフィー
最終精製工程は同一平面隣接cisヒドロキシル基に対して親和性を有するポリアクリルアミドホウ酸誘導体ベースの媒体(AffiGel601, BioRad)で充填したカラムにおける活性因子のアフィニティークロマトグラフィーを含む。低分子量HW-40由来物質40ミリグラムを0.25M酢酸アンモニウム(pH7.0)10ml中で平衡化し、そして0.25酢酸アンモニウムで平衡化しておいたAffiGelカラムにのせた。溶出液を280nmでモニターした。このカラムを毎時50mlの流量の0.25M酢酸アンモニウム400mlで280nm吸光度がバックグラウンドに減少するまで洗浄した。次にこのAffiGelカラムを0.1Mギ酸(pH2.8)1600mlで溶出させた。溶出液をマウス好中球遊走阻害アッセイでの活性について試験し、乾燥状態に凍結乾燥した。抗炎症性活性を含有する約8〜10mgの結合物質を8リットルの透過液から回収した。
【0166】
この方法で得た調製物を「AIF」と命名する。この調製物は抗炎症性因子に関して実質的に精製されていたが、均一ではない。この調製物はマウス好中球遊走阻害アッセイ、ラット足水腫アッセイ、ラット耳腫脹アッセイにおいて抗炎症活性を示し、そしてラット小静脈内皮(生体内顕微鏡で可視化した)への好中球結合を遮断する。マウス好中球遊走阻害アッセイにおける比較分析に基づくと、AIFは元の脱脂乳<10,000MW透過液より約55,000倍精製されている。
【0167】
実施例16
内皮細胞への好中球の接着および脈管構造からの好中球の
遊走における抗炎症性因子調製物の効果
内皮細胞への好中球の接着および脈管構造からの好中球の遊走における抗炎症性因子の効果を試験した。二つの異なる抗炎症性因子調製物を用いた。1つの調製物は実施例2に記述の精製手順を用いて作製した。本実施例ではこの調製物を単に「MAIF」という。もう1つの抗炎症性因子調製物は実施例15に記載の精製法を用いて調製し、その実施例および本実施例ではこれを「AIF」という。MAIFおよびAIFは両方とも精製状態の異なる抗炎症性因子をその中に含有していると理解すべきである。
【0168】
化学物質:
ヒト血清アルブミン、トリプシン、血小板活性化因子(PAF)、ホルボールミリスチン酸酢酸(PMA)、ヨウ化プロピジウム、およびヒストパークはSigmaChemical Co.(ミズーリ州セントルイス)から入手した。ヒト好中球エラスターゼはCalbiochemから購入した。ネガティブコントロール抗体として用いたマウス抗ヒトCD18モノクローナル抗体(IgG-サブクラス;FITC複合体)およびマウス抗キーホールリムペットヘモシアニン(IgG-サブクラス;FITC複合体)はBectonDickinson Systems Inc.(カリフォルニア州マウンテインヴュー)から購入した。Simply CellularTMマイクロビーズはFlowCytometry Standards Corp.(ノースカロライナ州リサーチトライアングルパーク)から購入した。他の試薬は最高グレードの市販品で、さらに精製することなく使用した。
【0169】
インビボ法:
「生体内顕微鏡実験」 24匹の雄ウィスターラット(180〜250g)を精製した研究用飼料で維持し、外科手術前の24時間絶食させた。これらの動物をまずペントバルビタール(12mg/100g体重)で麻酔した。全身動脈圧測定(StathamP23A圧変換器およびGrass生理学記録計)および薬物投与を測定するため、右頸動脈および頸静脈にそれぞれカニューレを挿入した。中線腹部切開を施し、動物を仰臥位に置いた。腹部切開を通して中空腸の一部を体外に出し、組織の脱水を最小限にするために曝露されたすべての組織を生理食塩水浸漬ガーゼで覆った。組織の2cm切片のトランスイルミネーションを可能にする光学的に透明な観察台上に腸間膜を注意深く置いた。定温循環器(FisherScientific, モデル80)で台の温度を37℃に維持した。直腸および腸間膜温度を電子温度計を用いてモニターした。腸間膜を、温めた重炭酸緩衝生理食塩水(pH7.4)で満たした。×25対物レンズ(LeitzWetzlar L25/0.35,ドイツ)と×10接眼レンズを有する生体内顕微鏡(Nikon Optiphot-2,日本)を用いて腸間膜微小循環を観察した。この顕微鏡に装着したビデオカメラでカラーモニターに画像を投影し、その画像をビデオカセットレコーダーによる再生分析のために記録した。25〜40μmとの間の範囲の直径を有する単一の分枝していない小静脈を研究用に選択した。小静脈の直径をビデオ側径器を用いてオンラインで測定した。遊走した接着性の好中球の数をビデオ撮影した画像の再生中にオフライン決定した。好中球が30秒以上静止した場合、それは小静脈内皮に接着したとみなした。回転好中球を同じ血管内の赤血球より遅い速度で遊走する白血球と定義した。白血球が小静脈の長さに沿って一定の距離を通り抜けるのに必要な時間によって白血球回転速度を決定した。
【0170】
「実験プロトコル」 すべての血行力学的変数が定常状態になった後、腸間膜の画像を5分間記録した。次いで、腸間膜を、40または5mg/ラットのMAIF調製物の存在下(iv.)で100nMPAFで60分間灌流した。PAF灌流の30分および60分の時点で上述のパラメータの測定を再び行った。2つの実験群では、腸間膜調製物を再び上述のようにPAFにさらしたが、30分の時点でそれらに40または5mg/ラットのMAIF調製物を与えた。3つのさらなる実験では、前処理または後処理としてAIF調製物を与えた。
【0171】
インビトロ法:
「好中球の単離」 健康なドナーから得た好中球を、デキストラン沈降分離とそれに続く低張圧分解およびヒストパーク遠心分離によって精製した。室温で行ったデキストラン沈降分離段階を除いて、この単離操作中細胞を4℃に維持した。細胞調製物は95%の好中球を含み、トリパン・ブルーを用いて決定したところ、その99%以上が生存能を持っていた。単離後、好中球をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に2×10細胞/mlの最終濃度で再懸濁した。次いで細胞の一部を様々な濃度のMAIFまたはAIF調製物のいずれかと共に37℃で20分間インキュベートした。洗浄後、好中球を飽和濃度のフルオレセイン結合ネズミ抗ヒトCD18、ヒトCD11b、IGG被覆マイクロビーズ(SimplyCellularTMマイクロビーズ)、またはネズミネガティブコントロール抗体と共に暗所で4℃にて30分間インキュベートした。
【0172】
「免疫蛍光染色およびFACS分析」 CD18表面発現の尺度としての直接免疫蛍光を、10000細胞の平均蛍光強度を表すチャンネル数(対数目盛り)を用いるFACScan(BectonDickinson Systems Inc.,カリフォルニア州マウンテインヴュー)での分析によって決定した。対数チャンネル数を、当該技術分野で周知の方法を用いて線形値に変換した。CD18抗体によって染色された細胞に関する比平均蛍光強度をネガティブコントロール抗体にさらした細胞の平均蛍光強度を差し引いた後に計算した。非生存細胞をヨウ化プロピジウムを用いて除外した。
【0173】
「スーパーオキシドアッセイ」 単離した好中球からのスーパーオキシド生成を種々の濃度のMAIF存在下でPMAおよびN-ホルミル-Met-Leu-Phe(「fMLP」)刺激後に測定した。活性化された好中球によるチトクロムCの減少を分光光度計(HitachiU2000)を用いて550nmで測定した。簡単に述べると、試料を2つのキュベットに加え、そして1つのキュベットを参照として使用した。後者はスーパーオキシドジスムターゼ(スーパーオキシド捕捉剤)を含有した。好中球を種々の濃度のMAIF存在下37℃で5分間平衡化させ、次いで、細胞をPMAまたはfMLPで刺激した。スーパーオキシド生成を3分間測定した。
【0174】
「プロテアーゼ放出」 125I-標識アルブミンをウェル上にコートし、終夜乾燥させた。未結合のアルブミンを洗浄し、次いで、PMAで刺激された好中球を、該ウェル内で種々の濃度のMAIFの存在下または非存在下で1時間インキュベートした。ウェルの上清内の遊離の放射活性を各ウェル内の総放射活性で割ることにより、タンパク質加水分解のレベルを評価した。
【0175】
結果:
結果を図24〜30および表7〜9に要約する。図24は、PAF灌流後毛細管の小静脈に対する好中球の接着を60分間で約6倍増大させたことを示している。40mg/ラットのMAIF調製物は、PAFが誘発する好中球接着を30分時点で90%以上、60分時点で80%以上減少させた。興味深いことに、MAIF前処理は、PAFの曝露前に接着性好中球の数を減少させるようにも思われた。より低い濃度のMAIF(ラット1匹あたり5mg)は効果が低く、白血球接着を60分時点で50%減少させる。ラット1匹あたり0.01mgの濃度のAIF調製物は、白血球接着を60分時点で約50%減少させることがわかった。10倍高い濃度のAIFでは、白血球接着に極めて大きな増大が観察された(データは示していない)。接着はあまりにも劇的でビデオテープを分析できなかった。図25は、好中球遊走に対するMAIFおよびAIFの効果を示している。ラット1匹あたり40mgおよびラット1匹あたり5mgの濃度のMAIFならびにラット1匹あたり0.01mgの濃度のAIFはPAF曝露の時間に伴う好中球遊走の増大を完全に防止することがわかった。好中球流束は、非処置群に比べてMAIF処置群において有意に変化するようには見えなかった(図26)。AIFを与えると、まず通常より多い好中球回転を観測したが、時間とともにその数は減少した。
【0176】
第2シリーズの実験では、好中球が既に接着した後に様々な抗炎症剤を投与した(図27)。このシリーズの実験では、40mg/ラットのMAIF用量によって白血球接着が逆転したが、5mg/ラットの用量では逆転しなかった。ラット1匹あたり0.01mgの用量のAIFは、好中球接着を約25%逆転させた。高濃度のMAIF(40mg/ラット)の効果をさらに評価するため、記録操作の開始時における接着性好中球の数と5分以上の各期間で接着した新しい好中球の数を調べた。図27aは、MAIF投与の10分後に好中球接着が減少していることを明らかにしており、抗炎症性因子が接着性好中球を実際に「はぎ取った」ことを示す。さらに、図27bは、MAIFが新しい好中球-内皮細胞接着を遮断したことを明らかに立証している。好中球が小静脈の長さに沿って回転する速度は、AIFが好中球回転速度を増大し得るという例外を除いて、群間で、あるいは時間とともに、変化しなかった(図28)。この効果は、赤血球速度が不変のままであったという事実に照らしあわせてかなり興味深い(図29)。この結果は流体力学的力の単純な増大では好中球回転速度の増大を説明し得ないということを示唆している。好中球流束もまた、MAIFによって影響されなかったが、AIFによってはやはり減少した(図30)。
【0177】
インビトロデータは、抗炎症性因子が好中球の活性化それ自体には干渉しないということを示している。スーパーオキシドラジカル捕捉剤スーパーオキシドジスムターゼは、PMAおよびfMLPで刺激された好中球によるチトクロムcの減少を完全に遮断し、これがスーパーオキシド媒介過程であることを示唆した。極めて高濃度のMAIFはチトクロムcの減少に最小限の影響しか与えず、MAIFがスーパーオキシドを直接捕捉しないことを示唆した(表7)。プロテアーゼ放出は、MAIFによって影響されなかった(データは示していない)。
【0178】
抗CD18モノクローナル抗体の結合がMAIFまたはAIFによって減少し得ることを思い出した(表8)。これはCD11b抗体では起こらなかった。IgG被覆マイクロビーズへのCD18抗体の結合もまたMAIFまたはAIF調製物によって影響されず、抗炎症性因子が抗CD18モノクローナル抗体の基質に結合する能力に影響を与えているのではなく、おそらくは、リガンドCD18に作用しているのであろうことを示唆した。同様のパターンを刺激された好中球で観測した(表9)。各日異なる細胞を使用したので、CD18に対する結合が日によって異なっていることに注意すべきである。したがって、表8の結果と表9の結果とを直接比較することはできない。
【0179】
【表7】

【0180】
【表8】

【0181】
【表9】

【0182】
考察:
上記実施例のデータは、抗炎症性因子が好中球の接着および小静脈中の遊走を用量依存的様式で防止することを示唆している。しかしより重要なことに、抗炎症性因子は短時間(10分)の内にこれらの血管への好中球接着を逆転させ得た。このような効率で接着性好中球の内皮における保持を放出させる他の唯一の薬剤は、好中球上のCD11/CD18糖タンパク質複合体に対して指向するモノクローナル抗体である。MAIFが個々の血管を通る血流または全身血圧に対して何らかの効果を持つようには見えず、剪断応力のような血行力学的因子では白血球接着の逆転を説明し得ないことを示唆した。白血球回転は白血球接着にとって前提条件であるように見えるが、MAIFは白血球回転速度または白血球流束に影響しなかった。後者の結果は、抗炎症性因子が血管を通って回転する好中球の数に影響を与えず、それゆえに接着性白血球の減少が内皮と相互作用する白血球の減少の結果ではなかったことを示唆している。白血球回転速度と白血球流束が不変であったという事実は、白血球回転に寄与する好中球と内皮上の接着分子(1L-セレクチン、P-セレクチン)がMAIF調製物中の抗炎症性因子によって影響されなかったということを示唆している。
【0183】
白血球は、スーパーオキシドならびにプロテアーゼを放出することにより自分自身の接着を調節するという報告がなされている。したがって、MAIFおよびAIFの存在下での白血球の接着の欠如は、スーパーオキシドまたはプロテアーゼ放出を遮断するこれら調製物の能力に起因すると考えられた。この可能性は、MAIFがスーパーオキシドまたはプロテアーゼの放出に対してほとんど効果を有さず、そして放出されたプロテアーゼと相互作用もしなかったし、放出されたスーパーオキシドを捕捉もしなかったという事実に照らしあわせると擁護し得ない。さらに、ヨウ化プロピジウムで評価したところ、MAIFが好中球の生存能に影響を与えるようには見えなかったので、好中球に対する抗炎症性因子の直接的細胞毒性効果は考えられなくなった。
【0184】
好中球が接着および遊走するには、インタクトなCD11/CD18糖タンパク質複合体を有しなければならない。接着複合体の免疫中和は、内皮に永続的に接着し周辺の組織に遊走する好中球の能力を完全に障害する。好中球の接着と遊走は、多数の炎症状態に関連する組織傷害における律速段階であるので、これらの過程に干渉する薬剤はまた、炎症性応答を遮断するようである。本研究では、MAIFおよびAIFの両方が共に好中球の接着を劇的に逆転させ、PAFにより誘発される好中球の遊走を遮断した。AIFモノクローナル抗体、MAIFモノクローナル抗体および抗CD18モノクローナル抗体が誘発する好中球接着の逆転の類似性のために、AIFおよびMAIF内の抗炎症性因子はCD18糖タンパク質複合体と直接的に相互作用することによってその効果を発揮すると思われた。上述のインビトロデータは、AIFおよびMAIFの両方がCD18糖タンパク質複合体に結合する抗CD18抗体の能力を遮断したという点でこの見解を支持している。対照的に、AIFおよびMAIFのどちらもCD11bの各々のモノクローナル抗体への結合に影響を与えなかった。最後に、AIF調製物およびMAIF調製物はIgG被覆マイクロビーズに結合する抗CD18モノクローナル抗体の能力を妨害しなかった。したがって、抗炎症性因子はCD18複合体と直接的に相互作用し、そしてCD18が内皮細胞接着分子を含む種々のリガンドに結合するのを防止すると結論づけることができる。
【0185】
実施例17
循環白血球におけるMAIFの効果
いくつかの医薬は好中球の遊走を阻害し得る。いくつか(例えば、シクロホスファミド)は細胞減少性であり、そして骨髄における造血を阻害することによって作用し、他の薬剤(例えば、ステロイドおよび非ステロイド系抗炎症剤)は特異的な作用部位を持っていて、白血球増加症をもたらさない。したがって循環白血球の数および比率における抗炎症性因子の効果を決定することは重要であった。
【0186】
2つの実験を行った。第1の実験では、MAIF調製物を40mg/ラットの用量で6匹の動物からなる1群に静脈内投与し、コントロール群には食塩水を注射した。ベースライン、処置の1、4、および24時間後に血液サンプルを得た。その結果を図31に要約する。
【0187】
MAIF投与は循環好中球数の増大(4時間で最大)および末梢血液リンパ球数の対応する減少をもたらした。さらなる用量応答研究を実施した。ここではラット群に、食塩水、5、10、または20mgのMAIF調製物を静脈内注射した。各ラットの血液を7日前に採取しておいてベースライン値とし、そしてMAIF注射の4時間後に再び採取した。その結果を図32に示す。MAIF調製物40mgの投与後4時間で採取したサンプルから得た結果(図31を参照のこと)がこのグラフに含まれている。
【0188】
全ての用量のMAIFが、循環好中球数の増大およびリンパ球数の減少をもたらした。リンパ球における効果は用量と直線的に関連したが、好中球数の増大は曲線型であり、10mgを与えた動物において最大の効果を観察した。
【0189】
これらの結果は、抗炎症性因子が内皮細胞への好中球の接着に影響を与えることによって炎症を調節するという概念を支持する。
【0190】
ラット中の循環白血球における他の3つの細胞標的抗炎症/免疫調節剤の効果に関するデータも得た。ステロイド系薬物メチルプレドニソロンは、MAIFの場合と同様にリンパ球/好中球比の変化をもたらす。薬物投与と効果との間の時間的関連性はいくらか異なる。抗拒絶/抗炎症剤シクロスポリンAもまた、循環好中球の数の増大を引き起こすが、リンパ球数は用量に依存して増大するか、または影響を受けないかのいずれかである。対照的に、細胞毒性剤シクロホスファミドは、循環リンパ球および好中球の両方を消耗する。抗炎症性因子の効果は、メチルプレドニソロンの作用と密接に相似しているようである。
【0191】
実施例18
リンパ球機能における抗炎症性因子の効果
循環リンパ球の数に可逆的な減少を誘発する抗炎症性因子の能力(実施例17)は、リンパ球機能に対するこの因子の効果のさらなる研究を促した。移植片対宿主(GvH)および宿主対移植片(HvG)分析を用いてTリンパ球機能におけるこの因子の効果を決定した。
【0192】
HvG分析では、親のDark Agoutiラット(「DA」)の足蹠中にそのF1ハイブリッド子孫(DA×HoodedOxfordラット)から得たリンパ球を注射する48、24、および3時間前に、その親ラットに20mgのMAIF調製物を静脈内注射した。このようにしてF1リンパ球の外来組織適合性抗原に対して応答するインタクトな宿主(DA)由来のTリンパ球の能力における抗炎症性因子の効果を測定した。このプロトコルは応答に高度に有意な減少(30%)(これは膝窩のリンパ節重量の減少によって証明される)をもたらした(図33A)。
【0193】
GvH反応では、親(DA)のリンパ球を、MAIF処置した親のラット(DA)から入手し、そしてそのF1(DA×HoodedOxford)子孫の足蹠に注射した。このアッセイは、評価される宿主(すなわちMAIF処置したラット)から取り出したTリンパ球のインビボでの応答性を測定するものであった。MAIF処置は、このGvH応答に対して効果を有しなかった(図33B)。
【0194】
先の実験の間中、MAIF処置した動物内の脾臓リンパ球の数の明らかな増大が注意を引いた。さらなる実験は、脾臓重量および脾臓細胞数の両方に顕著な増大を示した(図33Cおよび33D)。脾臓細胞数の増大は、以前に報告された循環細胞数の減少とほぼ同じであった。
【0195】
最後に、分裂促進因子コンカナバリンAに応答する単離された脾臓リンパ球の能力に対する抗炎症性因子の効果を決定した。MAIF調製物の投与はこのレクチンに対する培養リンパ球の有糸分裂促進性応答をほとんど完全に排除することが明らかになった(図33E)。
【0196】
実施例19
抗炎症性因子による感染誘発性炎症の抑制
急性期反応物(APR)の血清レベルの変化を用いて抗炎症性因子の抗炎症活性を定量するのに用いられ得るかどうかを決定するために実験を行った。APRは炎症性刺激に応答して合成されるタンパク質群である。これらの内1つのα2マクログロブリンはヒトおよびラットの両方に共通であり、そしてこの炎症性成分を測定する方法論が利用可能である。2回のMAIF調製物静脈内注射(0および24時間)はα2マクログロブリンのピーク応答(48時間)を減少させなかった。この結果は、この因子が後期の炎症性応答に影響を与えないことを示している。
【0197】
実施例20
乳由来の抗炎症性因子のインビトロおよびインビボ評価
(ウシ乳房マクロファージアッセイ、マウスにおける感染モデル)
ウシ乳房マクロファージを超免疫乳画分と共にインキュベートすると、食作用の程度は検出し得るほどに増大しなかったが、食菌されたStaphylococcus aureusを死滅するマクロファージの能力が増大した。1キログラムあたり10mgのMAIF調製物を腹腔内注射されたマウスは、致死量のStaphylococcusaureusによる腹腔抗原投与に対して増大した耐性を示した。
【0198】
乳房内Staphylococcus aureus乳腺炎抗原投与モデルでは、MAIF注射されたマウスはまた、顕著に少ない乳房炎症および退縮、ならびに感染生物の増大したクリアランスを示した。MAIF処置マウス由来の乳房組織の定量的な組織学的分析は、コントロールマウスと比べて、顕著に多い管腔、少ない腺胞間結合組織、および少ない白血球浸潤を示した。処置マウスの乳房腺はまた、コントロールマウスより少ないコロニー形成単位を含有した。抗炎症性因子は、白血球機能の調節によって非特異的防御系においてその効果を発揮するようである。
【0199】
実施例21
実験的感染の病原に対する抗炎症性因子の効果
ヒトが遭遇する最も一般的な炎症原は微生物であり、感染に対する宿主防御を調節する任意の因子の効果を決定することは重要である。多くの感染性疾患に伴う組織損傷は、実際のところ、侵入する生物によるよりむしろ感染に対する宿主応答によって引き起こされる。感染に対する炎症性応答を調節する能力は有用な臨床的技術であり得るが、感染中の宿主応答の阻害は不都合であり得るということが認識されなければならない。これは好中球阻害の場合には特に当てはまる。感染の初期において、好中球の参入を制御する薬剤での研究は、炎症および組織損傷は最初は抑制され得るが、減少した細胞応答の結果として起こる細菌負荷の増大が結果として組織損傷の悪化をもたらすことを示してきた。したがって(1)その薬剤は感染が誘発する組織損傷を減少させ得るか否かを決定し、(2)観察される宿主応答の抑制が感染の重篤度の増大を伴うか否かを評価するために、乳抗炎症性因子の感染を調節する能力を評価することが重要である。
【0200】
E. coli 075の皮内注射後の水腫形成に対する抗炎症性因子の効果を決定した。8匹の動物の2つの群を用いた。1つの群を処置せずコントロールとし、第2の群中の個体には生理食塩水0.5mlに含まれるMAIF調製物40mgを静脈内注射した。MAIFの投与直後に、E.coli 075の終夜培養物100μlをラットの剃毛した背中の2ヶ所に皮内注射し、次いでさらに2ヶ所に生理食塩水100μlを皮内注射した。感染した皮膚中の水腫体積の評価を可能にするために、0.1μCiの125I-HSAを抗原投与時に静脈内注射した。6時間後に、動物を麻酔し、血液サンプルを得、背中の皮膚を除去し、感染部位および生理食塩水注射部位をくり抜いた。上記のように組織カウントを血漿カウントと関連付けることにより、水腫の体積を計算した。E.coli が存在する結果として蓄積する水腫の体積を得るために、生理食塩水注射部位の水腫/血漿体積を差し引いた。その結果を図34に示す。
【0201】
MAIF投与は水腫形成の48%阻害をもたらした。この実験により、この抗炎症性因子が感染に対する局部的炎症性応答を調節し得ることが確立された。
【0202】
抗炎症性因子投与、細菌複製、体液の蓄積および炎症性細胞浸潤の間の関係を研究するために、別の感染モデルを使用した。上記のように調製され移植されるポリウレタンスポンジを定量したE. coli 075サンプルで移植時に感染させた。計測した間隔でスポンジを取り出し、体液滲出物の体積を決定するために重量を測定し、次いで培地中に絞り出してスポンジから細菌および細胞を遊離させた。当業者に周知の技術を用いて細菌および細胞の数を推定した。以下の実験は、このモデルを用いて行った。90匹の動物を45匹の2群に分けた。1つのこれらの群を処置せず、コントロールとした。第2の群にはMAIF調製物40mgを静脈内注射した。次いで、スポンジを皮内移植し、そしてその移植時に10のE.coli 075を各スポンジに接種した。その後、6〜8匹の動物の群を定期的に殺し、そしてスポンジ中の細菌学的状態および炎症性浸潤物の大きさを決定した。その結果を図35〜図37に例示する。
【0203】
細菌の複製速度はコントロール中よりもMAIF処置動物での方がはるかに大きく、そして4、8および16時間の細菌数にはそれぞれ10、1000および10000倍の相違があった。その後細菌数は低下したが、96時間でもまだ大きな相違があった(図35)。
【0204】
感染に対する初期応答は、感染症状の発現の結果において重要な決定因子である。この実験では、MAIFを与えた動物中の2、4および8時間における細胞性浸潤物がコントロール浸潤物のそれぞれ27%、35%および46%であった(図36B)。抗原投与後の最初の24時間に蓄積する細胞は90%より多くが好中球であり、そしてこの期間中にこの細胞成分が抑制されることが細菌数の急速な増大の原因であり得る。2時間での体液の蓄積はMAIFの投与によって影響されなかったが、抗原投与後の4、8および16時間は有意に減少した。このことは、この抗炎症性因子がカラゲニン足蹠モデルにおける水腫形成の第1の非細胞期を抑制しなかったという以前の知見と合致する。以前の研究では、免疫調節剤シクロスポリンAおよびメチルプレドニゾロンを用いて、急性細胞性炎症性浸潤物の抑制と細菌複製の促進との間の同様の関係が示された。しかしこれらの実験では、増大した細菌負荷が抗原投与後24時間から48時間の間に宿主応答を促進し、そこでは好中球の大量の流入が起こった。組織を関与させると、増大した炎症性応答が組織損傷の著しい悪化および瘢痕の形成をもたらした。興味深いことに、MAIFの投与は初期の炎症性応答を抑制し、そして細菌数の10,000倍の増加を伴ったが、抗原投与後24〜48時間に好中球の大量の流入はなかった。
【0205】
実施例22
実験的腎盂腎炎に対する抗炎症性因子の効果
組織損傷の増大という後遺症を引き起こすことなく感染時に炎症を抑制し得る薬剤は、かなりの能力を有し得る。臨床的に関連した感染性疾患のモデルはそのような能力を確立するための実験的基礎を提供し得る。
【0206】
腎盂腎炎は、主要な組織学的特徴として局部的炎症、組織破壊および瘢痕形成を示す感染性疾患である。よく特徴付けられた疾患モデルを利用し得、これはヒトにおける疾患の主要な病理学的特徴を再現する。外科的に曝露された腎臓に所定の数のE. coli 075を直接接種することにより、ラットに腎盂腎炎が誘発される。抗原投与後、細菌数が急激に増大し、そして3日〜4日後にピークに達する。正常な動物では、感染のレベルがその後の5日間または6日間にわたって減少し、そして抗原投与後約10日には安定水準に達する。21日目までに損傷が消散し、窪んだ瘢痕組織の病巣領域として存在する。この感染モデルに対する抗炎症性因子の効果を評価するため、26匹の動物の両腎臓に腎盂腎炎を誘発させた。これらの動物の半分を、抗原投与時およびさらにその48時間後に40mg/ラットの投与量のMAIF調製物で静脈内で処置した。各群の7匹を腎盂腎炎誘発の4日後に殺し、6匹の残りの2群を21日目に殺した。腎臓を無菌的に取り出し、重量を測定して体液滲出物の相対的体積を決定した。表面損傷サイズの程度を直接視覚化して推定し、腎臓をホモジナイズして細菌数の計数を可能にした。その結果を図38に示す。
【0207】
抗原投与の4日後、炎症性応答は、体液蓄積の阻害および腎臓表面上の損傷のサイズによって証明されるように、MAIFの投与によって抑制された。感染した皮内移植スポンジを含む研究で以前に観察されたように、炎症の初期の抑制はMAIF処置動物において細菌数の対数的増大をもたらした。腎臓重量、細菌数または腎臓表面損傷サイズで測定されるように、21日目まで疾患の病状に相違がなかった。従って、MAIFによる初期炎症性応答の抑制は腎盂腎炎の慢性(21日)期における組織破壊の減少をもたらさなかったが、他の抗炎症性剤および免疫調節剤がもたらしたような病的損傷の進展も促進しなかった。
【0208】
実施例23
実験データの要旨
カラゲニンを注射した足蹠における水腫の蓄積を連続的にモニターすることを可能にする方法を開発した。
【0209】
炎症性応答の初期の非食細胞期は抗炎症性因子による影響を受けなかったが、反応後期の細胞遊走期は有意に阻害された。MAIFをカラゲニン注射の前または後に間隔をおいて投与するさらなる実験により、MAIFが第2の好中球媒介の炎症性応答を調節することによってその抗炎症性効果を発揮するという追加の証拠が提供された。
【0210】
この抗炎症性因子は静脈注射後1〜2時間の半減期を有し、そして因子を抗原投与の30分後に投与した場合、炎症の進展が抑制されることを示した。この結果は、抗炎症性因子の潜在的な治療目的の使用に関連している。
【0211】
好中球は、急性炎症性応答に関与する主な細胞である。アルツス反応の間、好中球蓄積において80%より多くの減少がMAIF投与後に認められ、これは次いで炎症性反応の第2の特徴(すなわち水腫および出血)の高度で有意な阻害に関連した。この結果は、好中球がMAIFが誘発する炎症の抑制における標的であることをさらに意味した。
【0212】
炎症の進展において鍵となる段階の1つは、好中球の脈管構造から組織への遊走である。抗炎症性因子の静脈内投与は、好中球遊走の絶大かつ投与量依存的な阻害をもたらすことを示した。末梢血白血球に対する抗炎症性因子の効果を調べたところ、循環好中球数の著しい増大とそれに伴うリンパ球数の対応する減少が観察された。この効果はまた、投与量依存的であったが、好中球数の増大の場合には線形でなかった。
【0213】
乳抗炎症性因子の投与により、内皮に対する好中球の接着の阻止および投与時において接着しているホース(hose)好中球の解離の促進がともに見出された。この効果は、おそらく、細胞表面CD18抗原と他の分子との間の相互作用を阻止する抗炎症性因子の能力に起因する。本因子によるCD18結合の阻害は、因子が細胞に対する抗CD18モノクローナル抗体の結合を防止するが、抗CD11bモノクローナル抗体の結合を同様には防止しないという点で特異的であると考えられる。
【0214】
CD18細胞表面抗原が関与する分子間相互作用の阻止はまた、本因子が外来組織適合性抗原に応答する宿主リンパ球の能力を阻害し得たという観察を説明し得る。他の実験では、抗炎症性因子がリンパ球においてコンカナバリン誘発性有糸分裂促進応答を阻止することが見出された。
【0215】
最後に、本因子は感染に対する初期細胞性応答を著しく抑制し、その効果は皮内感染のモデルにおいて細菌数の対数的増大をもたらした。この感染の悪化は、感染における急性炎症を抑制する他の薬剤で見られるような炎症性応答の反動をもたらさなかった。臨床的に関連する感染(腎盂腎炎)モデルを用いる第2の実験はまた、細菌数の増大に関与する炎症の抑制効果を示した。ここでも反動効果は観察されず、そしてMAIF処置群およびコントロール群に生じた組織損傷の程度に相違はなかった。
【0216】
この一連の実験から次の結論を導くことができる:
1. 静脈内に投与された抗炎症性因子は、カラゲニンが誘発する炎症性応答の第2の好中球媒介期を抑制する。
2. カラゲニン足蹠アッセイで評価した場合、抗炎症性因子は1〜2時間の生物学的半減期を有し、炎症が誘発された後に投与される場合でも有効である。これに続く実験は、その有効半減期が投与量および使用した炎症性刺激物の両方に依存することを示す。
3. 抗炎症性因子は、インビボでの好中球の遊走を阻害する。
4. 抗炎症性因子の投与は、循環好中球数の増大およびリンパ球数の対応する減少をもたらす。
5. 抗炎症性因子は、おそらく好中球遊走に対する効果を介して、感染に対する宿主防御を抑制する。
6. 抗炎症性因子は、細胞表面CD18抗原と他の分子との間の相互作用を阻止する。
7. 抗炎症性因子は、内皮細胞に対する好中球の接着を阻止する。
8. 抗炎症性因子は、接着好中球の内皮細胞からの解離を促進する。
9. 抗炎症性因子は、外来組織適合性抗原に応答する宿主リンパ球の能力を阻止する。
10. 抗炎症性因子は、リンパ球の有糸分裂促進性応答を阻止する。
【0217】
これらの研究で得られた実験データは、乳抗炎症性因子が好中球およびリンパ球の両方に対して著しい効果を有することを明確に示す。観察された効果は、細胞それ自体に対する抗炎症性因子の直接的効果の結果であるか、または細胞の生物学的活性を間接的に改変するいくつかの他の細胞性もしくは可溶性メディエーターの抑制(または刺激)の結果であり得る。ほとんどの薬剤が複数の作用を有することも広く受け入れられており、そして抗炎症性因子がいくつかの他のまだ同定されていない生物学的プロセスに影響を与えることが見出され得る。
【0218】
実施例24
高度に精製されたMAIFを得る方法
本出願で先に記載される方法に類似する標準的なMAIF調製方法は、特定の精製度のMAIFを脱脂乳から産生する。しかし、以下のプロトコルは、以前に入手可能であったものよりも高度に精製されたMAIF調製物を生じる。
【0219】
材料。化学薬品はすべて試薬グレードのものとした。大規模の調製手順で使用した水は注射用の滅菌水とした。
【0220】
標準化したMAIF調製物。過免疫ウシまたはコントロールウシからの異なるバッチの乳中のMAIF活性を比較するために、限外濾過およびイオン交換クロマトグラフィーを含む標準化された方法を採用して、部分精製された高度に活性なサンプルを調製した。新鮮で冷却した脱脂乳の適当量(3〜100リットル)を、集めたろ液の容量が最初の乳容量の2/3に等しくなるまで、30psiでMinisetteユニット(Omega膜)を通す限外濾過にアプライした。標準化した10,000ダルトン未満(10Kダルトン未満)の透過物の適当量(250ml、500mlなど)を、その透過液容量の26.7%であるDEAEカラムにアプライした。そのカラムを透過液の2倍の容量の脱イオン水で洗浄し、そして透過液容量の58.3%に等しい容量の0.15MNaClで溶出した。標準化したDEAE調製物中のMAIF活性を好中球遊走阻害アッセイ(下記を参照のこと)で決定し、そして3mg/120〜150gラット投与量で誘発される好中球遊走の阻害率として定義した。
【0221】
高度に精製されたMAIF調製物
限外濾過。過免疫ウシからの新鮮で、冷却された(4℃)、非低温滅菌脱脂乳90リットルを25℃のインライン加温槽にポンプで通し、次いで10Kダルトン未満の分子量カットオフを有するOmega(モデル#OS010C01)膜を含むMinisette(Filtron)限外濾過カセットを通過させた。注入口圧を30psiに維持した。得られた透過液(10K未満の透過液)を、60リットルの容量に蓄積するまで氷上で回収した。この10K未満の透過液をイオン交換クロマトグラフィーによるさらなる精製に直ちに使用するか、または凍結して−20℃で保存するか、あるいは凍結乾燥した。
【0222】
イオン交換クロマトグラフィー。新鮮で冷却された10K未満の透過液60リットルを、ジエチルアミノエチル(DEAE)-SepharoseFast Flowイオン交換樹脂(Pharmacia #17-0709-05)16リットルを含有する37cm×15cmカラム(Pharmacia,ModelKS 370/15)に、低圧ペリスタリックポンプを用いて4.8リットル/時間の流速で直接アプライした。カラム溶出液を、Pharmacia Dual PathUVモニター(Model 19-24217-01)を用いて280nmおよび254nmでモニターした。積載されたカラムを滅菌脱イオン水120リットルで洗浄して、溶出液の280nm吸光度がベースラインに戻るまで未結合の物質を溶出した。結合成分を35リットルの0.15MNaClで溶出した。カラム溶出液を凍結乾燥し、そして褐色ガラスバイアル中で暗所に保存した。カラム溶出液中のMAIF活性を好中球遊走阻害アッセイ(下記を参照のこと)で決定した。
【0223】
サイズ排除クロマトグラフィー。MAIFの部分精製DEAE調製物を、自動注入器およびダイオードアレイ検出器を装備するHewlett-PackardModel 1090 HPLCの0.15M NH4OAcで平衡化した調製TSK G2500PW(21.5×600mm)サイズ排除HPLCクロマトグラフィーカラム(TosoHaas,Montgomeryville,PA)で分離した。凍結乾燥したDEAE-MAIF(100mg)を0.25mlの0.15M NH4OAcに溶解し、そしてカラムに注入した。そのカラムを5ml/分の流速で0.15MNH4OAcで溶出した。溶出液を220nmおよび280nmでモニターしたが、190〜600nmの間のすべての波長についてのダイオードアレイデータを保存した。画分(9ml)をLKBウルトロラック・フラクション・コレクターで収集した。大量のMAIFを調製するために、複数サンプルの各100mgをTSKカラムで分離し、そして同じ組の試験管に収集した。活性因子を含む試験管をプールし、凍結乾燥し、そして重量を測定した。
【0224】
有機分配抽出。有機分配抽出法によって、MAIFを、結合した塩から選択的に単離した。ここでは部分精製TSK-MAIFサンプルを蒸留水に溶解し、アルカリ化し、n-ヘキサンで抽出して中性脂質を除去し、酸性化し、そして次いで酢酸エチルで抽出した。風袋重量を測定した抽出容器中で50〜100mgのTSK-MAIFを2mlの脱イオン水に溶解した。溶液のpHを4滴の0.02NNH4OHで8.0に調整した。2mlのn-ヘキサンを加え、そしてその混合物を激しく振とうした。ヘキサンからなる上層を取り出し、乾燥し、そして重量を測定した。残留する水溶液を100滴のクエン酸でpH3.5に酸性化した。5mlの酢酸エチルを添加し、その混合物を激しく振とうし、そして層分離のために1000rpmで遠心分離した。風袋重量を測定した容器に酢酸エチル層を移した。2回目の5mlの容量の酢酸エチルを用いて抽出を繰り返した。酢酸エチル層を合わせ、窒素下で乾燥し、そして重量を測定した。
【0225】
弱アニオン交換クロマトグラフィー。アミノプロピルSupelcosil(Supelco)HPLCカラムを用いて、結合した塩を含まない、弱く陰イオンに荷電したMAIF成分を、酢酸エチル抽出手順により分離した。水性緩衝液で弱アニオン交換剤として作用するアミノ結合カラムを78%ACN/HOで平衡化した。50mgのTSK-MAIFサンプルを25% ACN/3mM NH4OAcに溶解し、そしてカラムにアプライした。そのカラムを、0〜15分は78%ACN/H2O〜69% ACN /3mM NH4OAc 、15〜30分は69% ACN /3mM NH4OAc〜65%ACN /3mM NH4OAc(流速1ml/分)で構成する3部分溶出系で展開した。そのカラム溶出液を220nmおよび280nmでモニターした。選択した画分を好中球遊走阻害アッセイ(下記を参照のこと)におけるMAIF活性について試験した。
【0226】
好中球遊走阻害アッセイ。MAIF抗炎症活性を胸膜好中球遊走阻害アッセイで決定した。120g〜150gの雌の白色実験用ラットに1%κカラゲニンを含むPBS 1.0mlを胸膜内注射して胸腔への好中球遊走を誘発した。そのラットに直ちにMAIFサンプルを含むPBS 0.5mlの投与量を腹腔内注射した。PBSをコントロールとして用いた。4時間後、ラットを屠殺し、胸膜滲出物を収集し、そして遊走した好中球を計数した。
【0227】
結果
調製方法の標準化。限外濾過およびDEAEカラム手順ならびにラット好中球遊走阻害アッセイでの比較し得るサンプルの分析を包含する再現性のある方法を、高度に活性なMAIF調製物の産生のために確立した。標準化した精製法の採用は、特定の乳製品および大規模生産バッチ中のMAIF活性の定量を可能にした。標準化した方法を評価するために、過免疫乳、非免疫ウシから得られるコントロール乳および市販の粉乳からMAIFを調製し、好中球遊走阻害アッセイにおいて盲検した。MAIFサンプルを0.5、1.5、3、5および8mg/120〜150gラットの投与量で、炎症部位への好中球の遊走を阻害する能力について試験した(図39)。過免疫乳からのMAIFは、3mg投与量で70%を超える最大好中球阻害をもたらした。新鮮なコントロール乳および市販のコントロール乳はそれぞれ、3mg投与量で18%の阻害しかもたらさなかった。過免疫乳から調製された標準化MAIFの活性を、抗炎症活性を有すると考えられている乳の既知成分であるシアル酸およびオロチン酸(図40)ならびに2つの抗炎症薬(図41)と比較した。シアル酸およびオロチン酸はいずれも試験した投与量でラット好中球の遊走に対する阻害活性を一切示さなかった。インドメタシンは0.5mg/120〜150gラットの投与量で35%阻害活性を示したが、その阻害は3mg/120〜150gラットで30%に低下し、そしてより高い投与量では着実に減衰した。ヒト投与量と等価であるラット投与量のアスピリンは10%未満の阻害を示し、そしてヒト等価ラット投与量のほぼ100倍の投与量でのみ高い阻害範囲に達した。
【0228】
分取用HPLCによるMAIFの精製。MAIFを調製するためのDEAEイオン交換クロマトグラフィーの使用により、10K未満の透過物に対して25倍の抗炎症活性の精製結果を得た。サイズ排除HPLCによるDEAE由来のMAIFの組成物の分析は(図42)、17分および25分の2つの主要成分の存在ならびに30分と60分との間に溶出する6つ以上の微量成分の存在を示した。好中球遊走阻害アッセイにおいてプールした画分の分析により、MAIF活性の主要な濃縮が25分のピークで生じることが示された。これらの結果は、分取用サイズ分離工程がより高度に精製されたMAIF調製物の調整を可能にすることを示した。分取用液体クロマトグラフィー手段において比較し得る結果を達成するための試みは、適当な分離を提供しなかった。0.15MNH4OAcで溶出した分取用HPLC TSK2500PWカラムは、25分MAIFピークの良好な分離を提供した。DEAE-MAIFを100mgずつこのHPLCカラムで分離し、そしてプールされた25分のピークを凍結乾燥した。凍結乾燥の間に単離したMAIFサンプルからすべての緩衝塩を完全に除去したことから、0.15MNH4OAc溶出緩衝液を選択した。しかし、DEAE-MAIFを繰り返し100mgずつ分取用HPLCで分画した場合、25分のピークの回収重量は10%の重量減しか示さなかった。MAIFピークの元素分析により、そのピークの重量は、重量の40%を超える塩に起因し得ることが示された。塩化ナトリウム、酢酸ナトリウムおよび塩化マグネシウムを含むいくつかの塩を試験して、TSK2500PWカラムにおけるそれらの溶出位置を決定した。各塩は35分と40分との間に溶出した。この結果により、塩が25分に溶出するMAIF化合物によって特異的に結合されることが示された。
【0229】
混入する塩の除去。結合した塩からMAIF化合物を遊離するために、有機分配抽出方法を用いた。ここでは、HPLCで精製したMAIF調製物をアルカリ化して負に荷電した基を露呈し、そしてヘキサンで抽出してヘキサン可溶性混入物を除去した。次いで、水相を酸性化して負電荷をプロトン化し、酢酸エチル中に抽出し、そして重量を測定した。抽出残渣は96%を超える重量の減少を示した。好中球遊走阻害アッセイにおける乾燥酢酸エチル画分の分析は強いMAIF活性を示し、そして有機分配抽出の前に得られたMAIFと同じレベルの好中球遊走阻害を得るには、10,000倍少ない投与量の高度に精製されたMAIFを必要とした(図43)。抽出前後のアミノプロピル弱アニオン交換カラムによるMAIF化合物の分析は、残りの化合物の溶出位置の有意なシフトおよび分析図中のショルダーの喪失を示した(図44)。これらの結果は、分配抽出方法が混入している結合した塩の除去をもたらし、そして以前に得られたものより高度に精製されたMAIF調製物の調製を可能にすることを示した。
【0230】
標準化したMAIF方法は、高度に活性で部分精製された形態のMAIFを、組成と構造の研究を行えるほど十分な量で産生する。この方法によって産生されたMAIFは、コントロール乳からのMAIFまたは推定もしくは既知の抗炎症薬と比較して高い活性を示す。MAIFの分画のために分取用TSKHPLCを使用することは、より精製されたMAIFを産生する際に有効であるが、予想されない様式で、塩はMAIF化合物に結合したまま残る。MAIF化合物の酢酸エチルへの有機分配抽出は混入する塩の除去を可能にし、それゆえに高度に精製されたMAIFの大規模調製を可能にする。
【0231】
本明細書で引用された文献はすべて参考として本開示中で完全に援用される。
【0232】
これまで本発明を一般的に記載してきたが、多くの変化および改変が本発明の精神または範囲に影響することなくなされ得ることが当業者に容易に理解される。このような変化および改変はまた、本発明の局面であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0233】
添付した図面に関して考慮される場合、以下の詳細な説明を参照することによりよりよく理解されるように、本発明のより完全な評価および多くの付随するその利点が容易に得られる。ここで:
【図1】図1。DEAE-celluloseのカラムにおけるイオン交換クロマトグラフィーによる抗炎症性因子の分離。
【図2】図2。Sephadex G-10分子ふるいカラム上のDEAE-celluloseクロマトグラフィー(図1)からのピーク(第2)を含む抗炎症性因子の分画。
【図3】図3。ラットにおけるカラゲニン誘導水腫に対する免疫乳の効果(足重量、%コントロール足、平均±sem、n=10)。
【図4】図4。ラットにおける足蹠水腫における抗炎症性因子の腹腔内投与の効果(μL、平均±SD、n=6)。
【図5】図5。ラット足水腫試験における抗炎症性因子についての腹腔内用量応答曲線(%コントロール、平均±SD、n=6)。
【図6】図6。ラットにおける足蹠水腫に対する過免疫乳因子対プラセボ(ラクトース)の効果(%コントロール、平均±SD、n=6)。
【図7】図7。ラットにおける足蹠水腫に対する静脈内および経口MAIFの効果(%コントロール、平均±SD、n=6)。
【図8】図8。ラットにおける足蹠水腫に対する静脈内低用量のMAIFの効果(%コントロール、平均±SD、n=6)。
【図9】図9。ラット足水腫試験におけるMAIFについての静脈内用量応答曲線(%コントロール、平均±SD、n=6)。
【図10】図10。Run 1、twin herd/限外濾過実験(%平均コントロール水腫、平均±SD、n=6)。
【図11】図11。Run 2、twin herd/限外濾過実験(%平均コントロール水腫、平均±SD、n=6)。
【図12】図12。Run 3、twin herd/限外濾過実験(%平均コントロール水腫、平均±SD、n=6)。
【図13】図13。ラットにおける足蹠水腫の阻害に対するMAIFの種々の処置の効果(μL足蹠水腫、平均±SD、n=6)。
【図14】図14。ラットにおける足蹠水腫の阻害に対するMAIF画分の効果および免疫WPCの効果(μL足蹠水腫、平均±SD、n=6)。
【図15】図15。ラット足蹠におけるカラゲニンに対する応答に対する、5つの異なる麻酔薬の効果。水腫の蓄積を同じ動物において選択した間隔でモニターした。各データの点はn=6。
【図16】図16。ラット足蹠におけるカラゲニンに対する応答の2相性(biphasic)特質の証明。各データの点はn=5。エーテルを麻酔薬として使用した。
【図17】図17(A-B)。ラットあたり5mg(A)またはラットあたり40mg(B)のいずれかのMAIFの投与は、エーテルで麻酔したラットにおけるカラゲニンに対する炎症応答を阻害しない。すべてのデータ点はn=4。
【図18】図18。カラゲニン投与(時間0)の時点で40mgのMAIF静脈内注射による、第2の食細胞媒介性応答の間のカラゲニン誘導水腫蓄積の抑制。コントロール群における各データ点はn=12であり、そしてMAIF処置群における各データ点はn=10である。
【図19】図19。ラット足蹠におけるカラゲニンに対する応答において、異なる時間でのラットあたり4mgで静脈内に与えMAIFの効果。水腫は、全ての場合での投与の4時間後に評価した。各データ点はn=12。
【図20】図20。逆受動アルツス(Arthus)反応に対する静脈内注射した20mgのMAIFの効果。=p<0.01;**=p<0.05。
【図21】図21。血管系から皮下に移植された無菌スポンジに好中球が血管外遊出する能力に対するMAIFの減少用量の効果。=p<0.01。
【図22】図22。MAIFが移植の時点または移植後120分までに投与された場合、皮下に移植されたスポンジ中に蓄積する炎症細胞の能力を阻害するための、ラットあたり20mgの用量で投与されたMAIFの効果。=p<0.01。
【図23】図23。正常動物における皮下に移植されたスポンジへの細胞の炎症性浸潤のタイムコース。
【図24】図24。好中球の小静脈への接着を誘導する血小板活性化因子(PAF)に対する抗炎症性因子調製物の効果。
【図25】図25。PAF誘導好中球血管外遊出に対する抗炎症性因子調製物の効果。
【図26】図26。小静脈を介して好中球のPAF誘導流動に対する抗炎症性因子の調製物の効果。
【図27】図27。抗炎症性因子の調製物による好中球接着の反転。
【図27A】27Aは、PAFに対する応答において小静脈へ接着する好中球の数を減少させることにおけるMAIF調製物(40mg/ラット)の効果を示す。
【図27B】27Bは、新生好中球-内皮細胞接着に対するMAIF調製物(40mg/ラット)の効果を示す。
【図28】図28。小静脈内の好中球の速度に対する抗炎症性因子の調製物の効果。
【図29】図29。小静脈内の赤血球の速度に対する抗炎症性因子の調製物の効果。
【図30】図30。小静脈内の白血球流動に対する抗炎症性因子の効果。
【図31】図31。注射後24時間内での循環好中球およびリンパ球の数に対する静脈内投与された40mgのMAIF調製物の効果。
【図32】図32。MAIF調製物の静脈内投与と循環白血球数との間の用量応答関係(p<0.01)。
【図33】図33(A-E)。リンパ球機能の種々の局面に対する抗炎症性因子の効果。33aは、外来組織適合性抗原に対する宿主Tリンパ球の応答に対する因子の前投与の効果を示す。33bは、MAIF処置ラット由来のリンパ球を未処置ラットへ注射する場合に得られた結果を示す。33Cおよび33Dは、ラットにおける脾臓重量および脾臓細胞数に対するMAIF処置の効果を示す。33Eは、リンパ球のコンカナバリンA刺激分裂促進応答に対するMAIF処置の効果を示す。
【図34】図34。静脈注射される40mgのMAIFによる感染誘導水腫の抑制。2つの群の平均値は、以下の通りである:コントロール、87±22μL;MAIF、45±17μL;p<0.01。
【図35】図35。細菌複製および皮下に移植されたE. coli感染スポンジに対するラットあたり40mgを静脈内に与えたMAIFの効果。
【図36】図36(A-B)。MAIF(ラットあたり40mg、静脈内)による感染スポンジへの炎症細胞浸潤の阻害。
【図37】図37。E.coli感染スポンジ中の炎症流体蓄積の中間相(4〜16時間)の抑制に対するMAIF(ラットあたり40mg、静脈内)の効果。
【図38】図38。実験的な腎盂腎炎の病原に対する、投与時および48時間後に静脈内に与えた40mgのMAIFの効果。左側のグラフにおける点線は、平均バックグランド腎重量を示す。=p<0.01;**=p<0.02。
【図39】図39。標準化過免疫とコントロールMAIFとの比較。標準化方法により調製されたMAIFを、炎症部位への好中球の遊走を阻害するそれらの能力について、0.5、1.5、3、5、および8mg/120〜150gm雌ラットの用量で試験した。「市販」は、在庫があってすぐに購入できる粉末脱脂乳をいう。
【図40】図40。MAIFと他の乳成分との比較。過免疫乳から調製された標準化MAIFの活性を、抗炎症活性を有すると考えられる乳の既知の成分であるシアル酸およびオロト酸と比較した。
【図41】図41。過免疫乳由来の標準化MAIFおよび抗炎症薬物(インドメタシンおよびアスピリン)の比較。
【図42】図42。サイズ排除HPLCによるDEAE由来MAIFの組成物の分析。
【図43】図43。強いMAIF活性を示す好中球遊走阻害アッセイでの乾燥酢酸エチル画分の分析。
【図44A】図44(A-B).抽出前および抽出後のアミノプロピル弱アニオン交換カラムにおけるMAIF化合物の分析。「前」(図44A)および「後」(図44B)は、有機分配クロマトグラフィー前および後の調製物を示す。図44Bのシフトした溶出パターンでの肩「A」の顕著な消失に注意されたい。
【図44B】図44(A-B).抽出前および抽出後のアミノプロピル弱アニオン交換カラムにおけるMAIF化合物の分析。「前」(図44A)および「後」(図44B)は、有機分配クロマトグラフィー前および後の調製物を示す。図44Bのシフトした溶出パターンでの肩「A」の顕著な消失に注意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図27A】
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【図27B】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44A】
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【図44B】
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【公開番号】特開2008−133299(P2008−133299A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32481(P2008−32481)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【分割の表示】特願平8−511797の分割
【原出願日】平成7年9月8日(1995.9.8)
【出願人】(508045022)ストール ミルク バイオロジックス, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】