説明

抗炎症成分を含有する皮膚外用剤

【課題】 水系乃至は乳化系に於いても、優れた、抗炎症成分の経皮吸収促進作用を示す、経皮吸収促進手段を提供する。
【解決手段】 1)水酸化リン脂質と、2)抗炎症成分とを、皮膚外用剤に含有させる。前記水酸化リン脂質は、水酸化レシチンが好ましく、前記抗炎症成分は、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸のエステル、グリチルリチン酸、ベツリン、ベツリン酸、ウルソール酸、ウルソール酸のエステル及びこれらの塩から選択されるものが好ましく、更に、N−アシルアミノ酸のエステルを含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関し、更に詳細には、抗炎症成分を含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現代は化学物質氾濫の時代であり、これを反映して種々の皮膚の炎症に悩む人が増加している。特に低濃度で、低レベルの刺激物質に長時間被曝することは、生体の炎症因子の急激な活性化につながるため、化学物質過敏症やアトピー性皮膚炎、全身性エリテマトーデスなどの疾患発症の引き金にもなりかねない。これを防ぐためには、ごく初期の微弱な炎症を有効に抑制し、炎症性サイトカインの暴走を防ぐことであると言われている。この為には、炎症の存する局所に限局して投与する、皮膚外用剤に抗炎症成分を含有させ、これを塗布することが好ましいと言われている。これは抗炎症成分の全身投与によって起こるであろう副作用を最小限に抑えられることが大きな理由である。しかしながら、皮膚そのものは、外部より異物が生体に侵入するのを防ぐ防御器官であり、この為、抗炎症剤の経皮投与は思ったほどの成果を見ないのが現状であった。
【0003】
一方、インドメタシンなどの抗炎症剤の経皮吸収の促進手段としては、ホスファチジルコリンなどのリン脂質を利用することが既に知られている。(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)この様なリン脂質は、ベヒクルとしてアルコール類を用いた場合には極めて良好な経皮吸収促進作用を示すが、水系乃至は乳化系のベヒクルでは、この効果は著しく低下してしまう欠点を有していた。これは、リン脂質そのものが水の存在下では経皮吸収されにくく為と解される。この為、リポソームなどの形態を取り、リン脂質そのものが皮膚に接触する様な形態での経皮吸収の促進が検討されたが、この様なリポソーム形態では薬剤担持量が著しく低下し、有効量の経皮吸収が達成しにくい欠点が存した。
【0004】
他方、水酸化リン脂質は、レシチン、ホスファチジルグリセロールなどのリン脂質の、脂質部分に存する二重結合を酸化し、2つの水酸基を導入した化合物であるが、このものについて、リポソーム形成剤或いは可溶化剤としての化粧料での使用は知られている。(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9を参照)しかし、かかる成分が、水系乃至は乳化系でも、抗炎症成分に対して、優れた経皮吸収促進を示すことは全く知られていなかった。又、1)水酸化リン脂質と、2)抗炎症成分とを含有する皮膚外用剤も全く知られていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平8−3069号公報
【特許文献2】特開平7−126190号公報
【特許文献3】特開2005−008591号公報
【特許文献4】特開2005−008590号公報
【特許文献5】特開2003−146872号公報
【特許文献6】特開2002−161017号公報
【特許文献7】特開平08−026964号公報
【特許文献8】特開平06−116116号公報
【特許文献9】特表2003−533491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、水系乃至は乳化系に於いても、優れた、抗炎症成分の経皮吸収促進作用を示す、経皮吸収促進手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、この様な状況に鑑みて、水系乃至は乳化系に於いても、優れた、抗炎症成分の経皮吸収促進作用を示す、経皮吸収促進手段を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、水酸化リン脂質にその様な作用が存することを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
(1)1)水酸化リン脂質と、2)抗炎症成分とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
(2)前記水酸化リン脂質は、水酸化レシチンであることを特徴とする、(1)に記載の皮膚外用剤。
(3)前記抗炎症成分は、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸のエステル、グリチルリチン酸、ベツリン、ベツリン酸、ウルソール酸、ウルソール酸のエステル及びこれらの塩から選択されるものであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の皮膚外用剤。
(4)更に、N−アシルアミノ酸のエステルを含有することを特徴とする、(1)〜(3)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(5)前記N−アシルアミノ酸のエステルは、N−カプリロイルグリシンのエステルであることを特徴とする、(4)に記載の皮膚外用剤。
(6)乳化剤形であることを特徴とする、(1)〜(5)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水系乃至は乳化系に於いても、優れた、抗炎症成分の経皮吸収促進作用を示す、経皮吸収促進手段を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(1)本発明の化粧料の必須成分である水酸化リン脂質
本発明の皮膚外用剤は水酸化リン脂質を必須成分として含有することを特徴とする。本発明に言う水酸化リン脂質とは、リン脂質のアシル基に存する不飽和結合を酸化してジヒドロキシ体としたもので、基体となるリン脂質は、通常化粧料等で使用されるものであれば特段の限定はなく、例えば、レシチン、フォスファチジン酸、フォスファチジルグリセロール、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン或いはこれらのリゾ体が好ましく例示できる。かかるリン脂質のアシル基の二重結合を過酸化ベンゾイルなどの酸化剤を用いてエポキシドとなし、次いで水を付加させてジヒドロキシ体へ導いたものを水酸化リン脂質と定義する。この様な水酸化リン脂質には既に市販されているものが存し、かかる市販品を購入して用いることも出来る。好ましい市販品としては、例えば、ダイズを基源とする、水酸化レシチンとグリセリンの等量混合物である、「NIKKOL レシノール SH50」(日本サーファクタント工業株式会社製)等が好ましく例示できる。これらの水酸化リン脂質は、唯一種を含有することも出来るし、二種以上を組み合わせて含有させることも出来る。かかる成分は、水系や乳化系に於いて、後記抗炎症成分の経皮吸収を促進する作用を有する。この様な経皮吸収促進作用は、水酸化リン脂質単独でも得られるが、後記の好ましい成分である、N−アシルアミノ酸のエステルが共存すると特に著しい。この様なN−アシルアミノ酸のエステルとともに皮膚外用剤に配合される形態が、水酸化リン脂質の含有においては特に好ましい。この様な作用を奏するためには、かかるリン脂質は、総量で化粧料全量に対し、0.01〜2質量%含有することが好ましく、0.05〜1質量%含有することがより好ましい。
【0010】
(2)本発明の皮膚外用剤の必須成分である抗炎症成分
本発明の皮膚外用剤は、経皮吸収を促進されるべき抗炎症成分を含有することを特徴とする。本発明に言う、抗炎症成分とは、医薬などにおいて抗炎症作用を有することが認められている「抗炎症剤」よりも広い概念を示し、抗炎症作用を示す生薬の抽出物、該抽出物の有効成分を包含した概念を意味する。特に前記抽出物の有効成分として知られている、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、ベツリン、ベツリン酸、ウルソール酸等のトリテルペン類、及び、エステルなどのトリテルペンの誘導体は、その溶解性の悪さなどのためにその有効性がこれまで著しく減じられており、本発明の効果がその分如実であり、本発明の抗炎症成分の対象としては特に好ましい。具体的には、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸のエステル、グリチルリチン酸、ベツリン、ベツリン酸、ウルソール酸、ウルソール酸のエステル及びこれらの塩から選択されるものが好ましく例示できる。又、エステルとしては、炭素数1〜30、より好ましくは6〜22のアルキルエステル、アルケニルエステル、芳香族基を有するエステルが好ましく例示でき、具体的には、ベンジルエステル、ステアリルエステルが特に好ましく例示できる。又、これらの成分を含有する生薬抽出物、ウルソール酸であればシソ科ローズマリー、ベツリン、ベツリン酸であればカバノキ科シラカバの抽出物もかかる抗炎症成分に含まれる。勿論、本発明の効果は、インドメタシン、サリチル酸メチル、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、ブフェキサマック、イブプロフェン、ザルトプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、フェンブフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、アンピロキシカム、テノキシカム、フェルビナク、トコレチナート、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、トリアムシロノン、トリアムシロノンアセトニド、フルメタゾン、フルオシノニド、ベクロメタゾン、フルオシノロン、フルオキシコルチド、モメタゾン、クロベタゾン或いはクロベタゾール等の抗炎症剤に対しても同様の効果を奏するので、この様な抗炎症剤を用いることも本発明の技術的範囲に属する。本発明の皮膚外用剤において、かかる抗炎症成分は、有効成分(化学物質)に換算して、それぞれ0.005〜5質量%含有することが好ましく、0.01〜2質量%含有することがより好ましい。
【0011】
(3)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、前記成分を必須成分として含有し、水系乃至は乳化剤形であることが好ましく。前記乳化剤形としては、水中油乳化剤形、油中水乳化剤形、これらの複合化した多層乳化剤形などが好ましく例示でき、水中油乳化剤形がこれらの中では特に好ましい。これは本発明の効果が、水中油乳化剤形では特に如実にあらわれるからである。ここで、本発明における、皮膚外用剤とは、皮膚に外用に投与される形態の組成物の総称を意味し、化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨等が含まれ、前記化粧料には、医薬部外品を包含する。
【0012】
本発明の皮膚外用剤には、前記の如く、N−アシルアミノ酸のエステルを含有することが好ましい。N−アシルアミノ酸のエステルを構成するアシル基としては、炭素数8〜30の不飽和結合を有していても良い、脂肪族のアシル基が好適に例示でき、例えば、カプリロイル基、2−エチルヘキサノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘノイル基、イソステアロイル基、オレオイル基などがより好適に例示できる。特に好ましいものはラウロイル基である。又、アシル化されるアミノ酸としては、アスパラギン酸やグルタミン酸などの酸性アミノ酸、グリシンやアラニンなどの中性アミノ酸、リシンやアルギニンなどの塩基性アミノ酸が例示でき、中でも、グルタミン酸とグリシンが好ましく、特にグリシンが好ましい。又、エステルを構成する炭化水素基は、コレステリル基、ベヘニル基、オクチルデシル基などが好適に例示できる。かかるN−アシルアミノ酸のエステルは酸性アミノ酸であればジエステルが好ましく、塩基性アミノ酸であればN,N’−ジアシルアミノ酸のエステルが好ましい。かかるN−アシルアミノ酸のエステルは、アミノ酸にアシルクロリドをアルカリ条件下で反応させ、N−アシルアミノ酸に誘導し、しかる後にアルカリ存在下アルキルハライド乃至はアルケニルはライドを反応させれば得ることが出来る。具体的な化合物例としては、N−アシルグリシンのエステルとしては、N−カプリロイルグリシンのベヘニルエステル、N−カプリロイルグリシンのオクチルドデシルエステルが例示でき、N−アシルグルタミン酸のエステルであれば、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)等が好適に例示できる。これらの中では、N−カプリロイルグリシンオクチルドデシルエステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)が特に好適に例示できる。N−アシルアミノ酸のエステルは、この様に合成したものを使用することも出来るが、既に化粧料原料などとして市販されているものも存し、この様な市販品を購入し利用することも出来る。特に好ましい市販品としては味の素株式会社より販売されている「エルデュウPS203」(N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルデシル))、「エルデュウCL−301」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル))、「エルデュウCL−202」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル))、「エルデュウPS−304」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル))などが例示でき、中でも、「エルデュウPS203」が特に好ましい。が例示できる。かかる成分は唯一種含有させることも出来るし、二種以上を組み合わせて含有させることも出来る。好ましい含有量は、総量で、皮膚外用剤全量に対し、0.005〜5質量%であり、より好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5質量%である。かかる成分は、前記水酸化リン脂質の抗炎症成分の経皮吸収促進作用を増強させる作用を有する。
【0013】
本発明の化粧料に於いては、これまで述べてきた成分以外に、通常化粧料で使用される任意成分を、本発明の効果を妨げない範囲で含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、硬化されていないナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;パルミチン酸セチル、ステアリン酸セチル、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。これらの成分の内、特に好ましいものは、肌の柔軟化に好適な、コラーゲンの弾性消失の原因である、炎症を抑える、有効成分、或いは、線維芽細胞のコラーゲンの産生能を高める作用を有する、有効成分等であり、具体的には、オトギリソウ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、クジン抽出物、ソウハクヒ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、ツボクサ抽出物、イガイ抽出物、真珠抽出物、ダイズ抽出物、チョウジ抽出物、バクモンドウ抽出物、マルバハギ抽出物、コウキ抽出物、セージ抽出物、ジンセン抽出物、セイヨウトチノキ抽出物、油溶性カンゾウ抽出物、ビタミンE並びにその誘導体、アルブチン、ビタミンC並びにその誘導体及びベニバナ抽出物から選択されるものである。オトギリソウの抽出物はファレロールを少なくとも100μM含有する形で含有させることが好ましい。ローヤルゼリー抽出物は1)ローヤルゼリー中のタンパク質の非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳永動において単一バンドを形成する、2)還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定される分子量が約57キロダルトンである、蛋白を(例えば、特許文献6を参照)、総蛋白に対して少なくとも9質量%含有するものを0.001〜0.1質量%含有することが好ましい。クジン抽出物は、ソフォラフラバノンGを少なくとも100μM 含有するものを少なくとも0.001質量%含有することが好ましい。セイヨウノコギリソウはセンタウレイジンを少なくとも100μM含有するものを0.01〜1質量%含有することが好ましい。ダイズ抽出物としては、大豆蛋白を酵素加水分解したもの、ダイズイソフラボンが好ましく、かかる成分の好ましい含有量は、総量で0.01〜0.2質量%である。イガイ抽出物は、イガイの貝柱乃至はヒモのグリコーゲンを抽出したものが好ましく、その含有量は0.001〜0.2質量%が好ましい。チョウジ抽出物はオイゲノールを0.1〜1質量%含有するものが好ましく、かかる抽出物を0.01〜0.3質量%含有することが好ましい。バクモンドウはオフィオポゴナノンBを0.01〜0.1質量%含有するものを0.01〜0.2質量%含有することが好ましい。セイヨウトチノキ抽出物は、果実の抽出物が好ましく、中でもエスシンを0.01〜1質量%含有するものを0.01〜1質量%含有することが好ましい。油溶性カンゾウは、グラブリジンを0.01〜1質量%含有するものを0.01〜0.1質量%含有することが好ましい。ベニバナ抽出物は、カーサミンを含有すれば良く、カーサミン含有量に換算して、0.01〜0.2質量%含有することが好ましい。ビタミンCは1〜5質量%含有することが好ましく、アルブチン乃至はその塩は1〜10質量%含有することが好ましい。更に、化粧料の使用後感を向上させ、肌の柔軟性の向上を使用者に認識させるためには、パルミチン酸セチルを0.1〜1質量%含有させることが好ましい。
【0014】
更に好ましいものとしては、硬化菜種油が例示できる。ここで、前記硬化菜種油とは、ナノハナ科ナノハナの種子より、抽出或いは圧搾などにより得られる菜種油を触媒の存在下水素添加し得られたものであり、沃素価が45〜15、より好ましくは40〜20のものである。これは沃素価が下限値を下回っても、上回っても、前記リン脂質との相互作用による、肌の柔軟化作用が減じ、効果が充分でない場合が存するためである。この様な硬化菜種油としては、既に市販されているものが存し、この様な市販品を購入し、利用することが出来る。好ましい市販品としては、例えば、「菜種硬化油HR−35」(横関油脂工業株式会社製)等が例示できる。かかる成分は、前記リン脂質、N−アシルアミノ酸のエステルとともに働いて、乳化剤形の化粧料に於いて、かかる化粧料を使用することにより、その使用後、肌の柔軟性を向上させる作用を有する。この肌の柔軟性を向上せしめる作用は、AXIOM社製の「ヴィーナストロン」(Venustron)による計測値として把握することが出来る。この測定機器は、プローブからある一定の周波数(Hz)を出し、物体に接触した時の周波数の差Δfで柔らかさを評価する。具体的には、柔らかいものに触れると周波数が低くなるのでΔfがマイナスに、硬いもの触れると周波数が高くなるのでΔfがプラスになる。即ち、処置後の測定値から処置前の測定値を減じた値が負の値であって、その絶対値が大きいほど、肌の柔軟性が向上したと鑑別できる。この様な効果の閾値としては、−3が好ましく、より好ましくは、−3.5が例示できる。この様な効果を奏するためには、本発明の化粧料に於いては、前記硬化菜種油は、化粧料全量に対して、1〜10質量%含有させることが好ましく、より好ましくは、2〜8質量%である。これは少なすぎると前記効果を奏さない場合が存し、多すぎても効果が頭打ちになり、処方の自由度を損なう場合が存するためである。かかる成分を前記N−アシルアミノ酸のエステル、水酸化リン脂質とともに用いることにより、硬化菜種油を角層内に移行させて、柔軟性付与効果を持続させることが出来る皮膚外用剤とすることも出来る。
【0015】
本発明の皮膚外用剤は、前記の成分を常法に従って処理することにより、製造することが出来る。斯くして得られた、本発明の皮膚外用剤は、耐塩性に優れた乳化剤形をとる。耐塩性に優れるために、皮膚へ投与した後の有効成分の経皮吸収性にも優れる。
【0016】
以下に、実施例を挙げて、本発明について、更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0017】
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である、乳液1(水中油乳化剤形化粧料)を製造した。即ち、イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘの成分をそれぞれ80℃に加熱し、溶解状態のイとロとを良く混合し、均一にさせた後、一度冷却し、しかる後に再度加熱溶解させた。これにハを加えて希釈し、これを一様に攪拌し、これをニに加え、油相を作製した。油相を、80℃に保ったまま、攪拌しながら、徐々にホを加え乳化し、ホモジナイザーで乳化粒子を整えた後に、攪拌下、徐々にヘを加え、中和し、増粘させた。これを攪拌冷却し、本発明の化粧料である、乳液1を得た。同様に操作して、「レシノール SH50」を通常のダイズレシチンに置換した比較例1、水に置換した比較例2も作製した。
【0018】
【表1】

【0019】
<試験例1>
前腕内側部に2cm×3cmの部位を3つ設け、それぞれに乳液1、比較例1及び比較例2をガラス棒を用いて40μL塗布し、1時間20℃で静置した後、ガラス棒と皮膚をテトラヒドロフラン(THF)を含浸させた脱脂綿で拭き取り、この脱脂綿を100mlのTHFで3回抽出し、抽出物中のグリチルレチン酸ステアリルの回収量を高速液体クロマトグラフィーで定量した。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は、ODS4.6×150mmのカラムで、移動相は20%→80%THF水溶液で、検知は電気化学検出器を用い、カラム温度は40℃で流速は1ml/分であった。回収量を百分率として表2に示す。これより、乳液1は回収率が有意に低く、経皮吸収が促進されていることがわかる。
【0020】
【表2】

【実施例2】
【0021】
乳液1と同様に、下記の処方に従って、本発明の化粧料である、乳液2を作製した。このものを試験例1を改変した方法(電気化学的検知を紫外部220nmの吸収による検知に変更)に従って評価したところ、ウルソール酸ベンジルの回収率は47%であった。乳液2の「レシノール SH50」を通常のダイズレシチンに置換した比較例3は63%であり、ここでも本発明の効果は確かめられた。
【0022】
【表3】

【実施例3】
【0023】
乳液1と同様に、下記の処方に従って、本発明の化粧料である、乳液3を作製した。このものを試験例1の方法に従って評価したところ、ベツリン酸の回収率は55%であった。乳液2の「レシノール SH50」を通常のダイズレシチンに置換した比較例4は71%であり、ここでも本発明の効果は確かめられた。
【0024】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、化粧料などの皮膚外用剤に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)水酸化リン脂質と、2)抗炎症成分とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【請求項2】
前記水酸化リン脂質は、水酸化レシチンであることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記抗炎症成分は、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸のエステル、グリチルリチン酸、ベツリン、ベツリン酸、ウルソール酸、ウルソール酸のエステル及びこれらの塩から選択されるものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
更に、N−アシルアミノ酸のエステルを含有することを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
前記N−アシルアミノ酸のエステルは、N−カプリロイルグリシンのエステルであることを特徴とする、請求項4に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
乳化剤形であることを特徴とする、請求項1〜5何れか1項に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2008−115109(P2008−115109A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299871(P2006−299871)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】