説明

抗生物質およびコルチコステロイドを含む組成物

本発明は、抗生物質(一般にキノロンまたはナフチリジノン)、コルチコステロイドおよび有機酸(一般に脂肪酸)を含む組成物(例えば耳用組成物)に関する。本発明はまた、このような組成物を用いる治療方法、薬剤を製造するためのこのような組成物の使用、およびこのような組成物を含む治療キットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗生物質(一般にキノロンまたはナフチリジノン)、コルチコステロイドおよび有機酸(一般に脂肪酸)を含む組成物に関する。本発明はまた、このような組成物を用いる治療方法、薬剤を製造するためのこのような組成物の使用、およびこのような組成物を含む治療キットに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2006/0122159号は動物の感染、特に耳の感染を治療するのに有用な医薬製剤について論じている。本組成物は、一般に、コルチコステロイド、抗生物質およびトリアゾールを含むと記載されている。これらは、例えば、フランカルボン酸モメタゾン一水和物、オルビフロキサシンおよびポサコナゾールを含む懸濁液を含む。米国特許出願公開第2006/0122159号に例示されている具体的な配合物を表1に示す。
【0003】
【表1】

【0004】
上記の配合物が室温で保存される場合、出願人は、少なくとも1種のモメタゾン分解産物の増加を経時的に観測した。出願人はさらに、配合物中のオルビフロキサシンが分解産物の形成を加速することを観測した。分解産物の形成は、一般により低い温度(例えば5℃)で配合物を保存することにより最小限に抑えることができる。しかしながら、より高い温度(例えば室温)で安定化できる配合物が必要である。本発明はこのような配合物を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0122159号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(発明の要旨)
手短に言えば、本発明は一般に、コルチコステロイドおよび抗生物質を含む組成物(例えば懸濁液)を対象とする。これらの組成物は一般に、長時間(例えば5か月)にわたり室温またはより高温(例えば50℃)で安定である。このような安定な組成物の利点は、例えば、典型的には、冷蔵に関連する費用および人的資源の排除、冷蔵の失敗による製品の損失のリスクの排除、および冷蔵しない不注意な保存の後に投与される分解生成物のリスクの排除を含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、ひとつには、医薬品組成物を対象とする。組成物はコルチコステロイド、抗生物質および有機酸を含む。有機酸は、一般に、約3から約18個の炭素原子を含み、約60℃以下の融点を有する脂肪酸を含む。いくつかの実施形態において、抗生物質はキノロン(特にフルオロキノロン、フルオロキノロンの塩、またはフルオロキノロンもしくはこの塩の溶媒和物)を含む。他の実施形態において、抗生物質はナフチリジノン(特にフルオロナフチリジノン、フルオロナフチリジノンの塩、またはフルオロナフチリジノンもしくはこの塩の溶媒和物)を含む。
【0008】
本発明は、またひとつには、上記組成物を動物に投与することによって動物の感染を治療する方法を対象とする。
【0009】
本発明は、またひとつには、動物の感染の治療のための薬剤を調製する、上記組成物の使用を対象とする。
【0010】
本発明は、またひとつには、治療キットを対象とする。キットは上記組成物および追加の要素を含む。追加の要素は、例えば診断ツール、耳清浄液、耳を浄化するための機器、動物に組成物を投与するための説明書、または動物に組成物を投与するためのデバイスであってよい。
【0011】
本出願人の発明のさらなる便益はこの明細書を読むことから当業者には明白である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましい実施形態のこの詳細な説明は、具体的使用の要件に最もよく適合できるよう当業者が本発明を各種形態で改変し、適用することができるように、当業者に本出願人の発明、この原理およびこの実際の適用を理解させるためだけに意図されている。本発明の好ましい実施形態を示しているが、この詳細な説明および特定の実施例は単に例示の目的のために意図されている。したがって、本発明は本明細書中に記載されている好ましい実施形態に限定されず、様々に改変され得る。
【0013】
I.組成物
本発明の医薬品組成物は、一般に、コルチコステロイド、抗生物質および有機酸を含む。最初に、この成分リストが完全ではないことが認識されなければならない。したがって、組成物は追加の成分を含んでいてもよい(通常、含む)。これらの追加の成分は例えば、1種または複数の追加のコルチコステロイド、抗生物質および/または有機酸を含むことができる。また、より詳細に以下に論じられるように、追加の成分は1種または複数の他の有効成分を含むことができる。また以下に論じられるように、追加の成分は1種または複数の賦形剤を含むことができる(通常、含む)。
【0014】
一般に、組成物は様々な形態、特に非固体の形態であってもよい。例えば、組成物は、懸濁液、溶液、乳濁液、軟膏などの形態をしていてもよい。いくつかの実施形態において、組成物は、懸濁液の形態をしている。
【0015】
A.コルチコステロイド
コルチコステロイドは、視床下部の下垂体前葉副腎皮質の軸(脳下垂体としても知られている。)によって分泌されるホルモンの、通常、天然および合成類似体である。コルチコステロイド(特にグルココルチコイド)は、通常、強力な抗炎症剤であると知られている。これらはまた、通常、かゆみ止めおよび血管収縮作用を示す。様々なコルチコステロイドは、例えば、乾癬およびアトピー性皮膚炎などのコルチコステロイド反応性皮膚病を治療するために局所に用いられる。
【0016】
コルチコステロイドの例は、表2(化合物の塩、ならびに化合物および塩の溶媒和物とともに)に示されている化合物を含む。
【0017】
【表2】





いくつかの実施形態において、組成物中のコルチコステロイドは、表2の化合物、これらの塩、ならびに化合物およびこれらの塩の溶媒和物からなる群から選択されるコルチコステロイドを含む。
【0018】
他の実施形態において、コルチコステロイドは、モメタゾン、モメタゾンの塩またはモメタゾンもしくはモメタゾン塩の溶媒和物を含む。モメタゾンは合成グルココルチコイドであり、構造は
【0019】
【化1】

に対応する。
【0020】
他の実施形態において、コルチコステロイドは、モメタゾンエステル、モメタゾンエステルの塩、またはモメタゾンエステルもしくはモメタゾンエステル塩の溶媒和物を含む。いくつかのこのような実施形態において、モメタゾンエステルはフランカルボン酸モメタゾンを含む。フランカルボン酸モメタゾンの構造は
【0021】
【化2】

に対応する。この化学名は9,21−ジクロロ−11(ベータ),17−ジヒドロキシ−16(アルファ)−メチルプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン17−(2フロエート)である。フランカルボン酸モメタゾンは、例えばElocon(登録商標)ローション、クリームおよび軟膏の有効成分であり、Schering−Plough Corporation(Kenilworth、NJ)から市販で入手可能である。
【0022】
コルチコステロイドは様々な対掌体の形態で存在することができる。また、これらは様々な結晶形で存在することができる。例えば、上記に示されるように、フランカルボン酸モメタゾンの溶媒和物が用いられることができる。いくつかの実施形態において、例えば、溶媒和物は水和物を含む。この水和物は例えば一水和物であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、コルチコステロイドはモメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン、またはモメタゾンもしくはフランカルボン酸モメタゾン(例えばフランカルボン酸モメタゾン一水和物)の溶媒和物を含む。
【0024】
一般に、組成物中のコルチコステロイド合計濃度は、組成物が投与される用量でコルチコステロイドが治療上効果的であるのに十分な濃度である。いくつかの実施形態において、組成物の中のコルチコステロイド(例えばモメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン、および/またはモメタゾンもしくはフランカルボン酸モメタゾンの溶媒和物)の合計濃度は、少なくとも約0.01重量%である。いくつかのこのような実施形態において、例えば、合計濃度は約0.01から約1.0重量%である。
【0025】
B.抗生物質
いくつかの実施形態において、抗生物質はキノロンを含む。一般に、キノロンは、フルオロキノロン、フルオロキノロンの塩、またはフルオロキノロンもしくはこの塩の溶媒和物を含む。フルオロキノロン抗生物質は、例えば、6−フルオロキノリン−4(1H)−オン、6−フルオロキノリン−4(1H)−オンの塩、ならびに6−フルオロキノリン−4(1H)−オンおよびこれらの塩の溶媒和物を含む。6−フルオロキノリン−4(1H)−オンの例は、表3に示されているものを含む。
【0026】
【表3】







6−フルオロキノリン−4(1H)−オンの他の例は表4に示されているものを含む。
【0027】
【表4】


Chuら、「ミニ総説:Structure−Activity Relationships of the Fluoroquinolones」、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、33(2)、pp.131−135(1989年2月)を参照されたい。
【0028】
いくつかの実施形態において、抗生物質は、表3に示されている6−フルオロキノリン−4(1H)−オン、このような6−フルオロキノリン−4(1H)−オンの塩、ならびにこのような6−フルオロキノリン−4(1H)−オンおよびこれらの塩の溶媒和物からなる群から選択される抗生物質を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、抗生物質は、アミフロキサシン、バロフロキサシン、シプロフロキサシン、クリナフロキサシン、フレロキサシン、ガレノキサシン、ガチフロキサシン、グレパフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、ペフロキサシン、プラドフロキサシン、シタフロキサシン、スパルフロキサシンおよびテマフロキサシン;このような6−フルオロキノリン−4(1H)−オンの塩;ならびにこのような6−フルオロキノリン−4(1H)−オンおよびこれらの塩の溶媒和物からなる群から選択される抗生物質を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、抗生物質は、ダノフロキサシン、ジフロキサシン、エンロフロキサシンおよびサラフロキサシン;このような6−フルオロキノリン−4(1H)−オンの塩;ならびにこのような6−フルオロキノリン−4(1H)−オンおよびこれらの塩の溶媒和物からなる群から選択される抗生物質を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、抗生物質は、表4に示されている6−フルオロキノリン−4(1H)−オン、このような6−フルオロキノリン−4(1H)−オンの塩、ならびにこのような6−フルオロキノリン−4(1H)−オンおよびこれらの塩の溶媒和物からなる群から選択される抗生物質を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、抗生物質は、オルビフロキサシン、オルビフロキサシンの塩またはオルビフロキサシンもしくはオルビフロキサシン塩の溶媒和物を含む。オルビフロキサシンは、特にイヌおよびネコの疾患の管理に安全で効果的である、既知の強力で広域スペクトルの合成抗菌薬である。
【0033】
いくつかの実施形態において、抗生物質は、一緒に縮合した3個の環を含む6−フルオロキノリン−4(1H)−オンを含む。いくつかのこのような実施形態において、例えば、抗生物質は、フルメキン、イバフロキサシン、レボフロキサシン、ナジフロキサシン、オフロキサシン、パズフロキサシン、プルリフロキサシンおよびルフロキサシン;このような6−フルオロキノリン−4(1H)−オンの塩;ならびにこのような6−フルオロキノリン−4(1H)−オンおよびこれらの塩の溶媒和物からなる群から選択される抗生物質を含む。他の実施形態において、抗生物質はマルボフロキサシン、マルボフロキサシンの塩、またはマルボフロキサシンもしくはマルボフロキサシン塩の溶媒和物を含む。
【0034】
他の実施形態において、抗生物質はナフチリジノンを含む。ナフチリジノンは、一般に、フルオロナフチリジノン、フルオロナフチリジノンの塩、またはフルオロナフチリジノンもしくはこの塩の溶媒和物を含む。フルオロナフチリジノン抗生物質は、例えば、6−フルオロ−1,8−ナフチリジン−4(1H)−オン、6−フルオロ−1,8−ナフチリジン−4(1H)−オンの塩、ならびに6−フルオロ−1,8−ナフチリジン−4(1H)−オンおよびこれらの塩の溶媒和物を含む。6−フルオロ−1,8−ナフチリジン−4(1H)−オンの例は、表5に示されているものを含む。
【0035】
【表5】


【0036】
いくつかの実施形態において、抗生物質は、表5に示されている6−フルオロ−1,8−ナフチリジン−4(1H)−オン、このような6−フルオロ−1,8−ナフチリジン−4(1H)−オンの塩、ならびにこのような6−フルオロ−1,8−ナフチリジン−4(1H)−オンおよびこれらの塩の溶媒和物からなる群から選択される抗生物質を含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、抗生物質は、エノキサシン、ゲミフロキサシン、トスフロキサシンおよびトロバフロキサシン;このような6−フルオロ−1,8−ナフチリジン−4(1H)−オンの塩;ならびにこのような6−フルオロ−1,8−ナフチリジン−4(1H)−オンおよびこれらの塩の溶媒和物からなる群から選択される抗生物質を含む。
【0038】
6−フルオロ−1,8−ナフチリジン−4(1H)−オンの他の例は
【0039】
【化3】

を含む。Chuら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、p.132を参照されたい。いくつかの実施形態において、抗生物質は、この化合物、この化合物の塩、またはこの化合物もしくはこの化合物の塩の溶媒和物を含む。
【0040】
一般に、組成物中の抗生物質濃度は、組成物が投与される用量で抗生物質が治療上効果的であるのに十分な濃度である。いくつかの実施形態において、組成物中の抗生物質濃度(すなわち、組成物中のすべての抗生物質の濃度の合計)は少なくとも約0.01重量%である。いくつかの実施形態において、濃度は、約0.01から約30重量%、約0.1から約10重量%、または約0.5から約5重量%である。
【0041】
C.有機酸
有機酸は、通常、脂肪酸を含む。脂肪酸は、好ましくは少なくとも約3個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、例えば、脂肪酸は約3から約18個の炭素原子を含む。他の実施形態において、脂肪酸は約4から約18個の炭素原子を含む。さらに別の実施形態において、脂肪酸は約7から約18個の炭素原子を含む。
【0042】
脂肪酸は、天然脂肪酸または合成の酸であってよい。また、これは、飽和または不飽和であってよい。いくつかの実施形態において、脂肪酸は、少なくとも約4個の炭素原子を含み、飽和または不飽和である非分枝脂肪族鎖を含む。好ましくは、脂肪酸は約60℃以下の融点を有する。
【0043】
脂肪酸は、好ましくは、組成物が用いられる温度で、組成物中に存在する媒体に、溶けるまたは混和する。脂肪酸はまた、好ましくは、組成物が保存される温度で組成物中に存在する媒体に、溶けるまたは混和する。したがって例えば、組成物が鉱油媒体を含む懸濁液であるいくつかの実施形態において、脂肪酸は、室温(すなわち、約20から約25℃)で鉱油に混和する。このような実施形態において、脂肪酸は、また、組成物が使用または保存されてよい、より低温またはより暖かい温度で鉱油に混和することが好ましい。
【0044】
いくつかの実施形態において、脂肪酸は3個の炭素原子を有するプロピオン酸を含む。他の実施形態において、脂肪酸は14個の炭素原子を有するミリスチン酸を含む。他の実施形態において、脂肪酸は14個の炭素原子を有するラウリン酸を含む。さらに別の実施形態において、脂肪酸は18個の炭素原子を有するオレイン酸を含む。組成物は、複数のタイプの脂肪酸を含むことができることが認識されるべきである。例えば、いくつかのこのような実施形態において、組成物はオレイン酸およびラウリン酸の両方を含む。
【0045】
一般に、組成物中の脂肪酸濃度は、少なくとも15℃、少なくとも20℃、少なくとも25℃、少なくとも40℃、または少なくとも50℃の温度で、低密度ポリエチレン(「LDPE」)蓋付きの高密度ポリエチレン(「HDPE」)プラスチックボトルに保存される間の少なくとも1か月、少なくとも2か月または少なくとも5か月にわたって、少なくとも1種のコルチコステロイド(例えばモメタゾンまたはフランカルボン酸モメタゾン)分解産物の生成を効果的に減少させる(好ましくは実質的にまたは完全に阻止する。)ために十分な濃度である。いくつかの実施形態において、脂肪酸濃度は少なくとも約0.01重量%である。いくつかのこのような実施形態において、例えば、濃度は約0.01から約5.0重量%である。他の実施形態において、濃度は約0.1から約2.0重量%である。いくつかの実施形態において、組成物はオレイン酸を含み、組成物中のオレイン酸濃度は約0.1から約2.0重量%である。他の実施形態において、組成物はラウリン酸を含み、ラウリン酸濃度は約0.1から約1.0重量%である。
【0046】
D.組成物中の追加成分
上に述べたように、本発明の組成物は他の成分を含むことができる(通常、含む)。これらの成分は、例えば、1種または複数の他の有効成分および/または1種または複数の賦形剤であってよい。
【0047】
i 他の有効成分
コルチコステロイドおよび抗生物質に加えて、様々な有効成分が本発明の組成物に組み入れられてよいことが企図される。いかなるこのような有効成分も、組成物が用いられている状況に対して好適であり、コルチコステロイドおよび抗生物質の活性に著しく有害でないことが好ましい。
【0048】
いくつかの実施形態において、組成物は抗真菌剤を含む。いくつかのこのような実施形態において、例えば、抗真菌剤はイミダゾール、イミダゾールの塩、またはイミダゾールもしくはこの塩の溶媒和物を含む。イミダゾールは、例えば、表6に示されているものを含む。
【0049】
【表6】



いくつかの実施形態において、抗真菌剤は、表6に示されているイミダゾール、このようなイミダゾールの塩、ならびにこのようなイミダゾールおよびそれらの塩の溶媒和物からなる群から選択される抗真菌剤を含む。
【0050】
他の実施形態において、抗真菌剤は、トリアゾール、トリアゾールの塩、またはトリアゾールもしくはこの塩の溶媒和物を含む。トリアゾールは、例えば、表7に示されているものを含む。
【0051】
【表7】


いくつかの実施形態において、抗真菌剤は、表7に示されているトリアゾール、このようなトリアゾールの塩、ならびにこのようなトリアゾールおよびそれらの塩の溶媒和物からなる群から選択される抗真菌剤を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、抗真菌剤はポサコナゾール、ポサコナゾールの塩、またはポサコナゾールもしくはこの塩の溶媒和物を含む。いくつかのこのような実施形態において、例えば、抗生物質はポサコナゾールを含む。ポサコナゾールは、アスペルギリス(Aspergillis)、カンジダ(Candida)、クリプトコックス(Cryptococcus)、フザリウム(Fusarium)および他の日和見真菌を含めた広範囲の菌類に対する抗真菌活性を有すると知られている。ポサコナゾールに関する検討は、例えば米国特許第5,661,151号、第5,834,472号および第5,846,971号に見出すことができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、抗真菌剤はナイスタチン、ナイスタチンの塩またはナイスタチンもしくはナイスタチン塩の溶媒和物を含む。ナイスタチンは、構造が
【0054】
【化4】

に対応する。
【0055】
一般に、組成物中の抗真菌薬の濃度は、組成物が投与される用量で抗真菌薬が治療上効果的であるのに十分な濃度である。複数の抗真菌薬が組成物中に存在する場合、すべての抗真菌薬の濃度の合計は、組み合わせた抗真菌薬が、組成物が投与される用量で治療上効果的であるのに十分な濃度である。いくつかの実施形態において、組成物(すなわち組成物中のすべての抗真菌薬の濃度の合計)中の抗真菌薬の濃度は、少なくとも約0.01重量%である。いくつかのこのような実施形態において、例えば、濃度は約0.01から約1.0重量%である。
【0056】
いくつかの実施形態において、組成物は1種または複数の抗生物質(キノロンまたはナフチリジノン抗生物質(複数可)に加えて)を含む。このような抗生物質は、例えば、以下の抗生物質(これらの塩、これらの溶媒和物およびこれらの塩の溶媒和物とともに)を含むことができる。
A.クロラムフェニコール、チアンフェニコールおよびクロラムフェニコールおよびチアンフェニコール(例えばフロルフェニコールまたはD−(スレオ)−1−p−メチルスルホニルフェニル−2−ジフルオロアセトアミド−3−フルオロ−1−プロパノール)のフッ素含有類似体。
B.クロロテトラサイクリンおよびオキシテトラサイクリンなどのテトラサイクリン。
C.単独でまたはクラブラン酸、クラブラン酸カリウム、スルバクタムロドペニシラン酸、6−ブロモペニシラン酸、オリバン酸およびタゾバクタムなどのβラクタマーゼ阻害剤と組み合わせて、アモキシシリン、アンピシリン、アンピシリン三水和物、アンピシリンナトリウム、アパルシリン、アスポキシシリン、アズロシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、カルベニシリンナトリウム、カルフェシリン、カリンダシリン、シクラシリン、クロキサシリンナトリウム、クロキサシリンベンザチン、ジクロキサシリン、ジクロキサシリンナトリウム、フルクロキサシリン、ヘタシリン、レナムピシリン、メシリナム、メタンピシリン、メチシリン、メズロシリン、ナフシリン、ナフシリンナトリウム、オキサシリン、ペニシリン酸、ペニシリンG、ペニシリンGベンザチン、ペニシリンGカリウム、ペニシリンGナトリウム、ペニシリンV、フェネチシリン、フェネチシリンカリウム、ピペラシリン、ピペラシリンナトリウム、ピバンピシリン、スルベニシリン、スルタミシリン、タランピシリン、チカルシリン、セファクロル、セファドロキシル、セファドロキシル一水和物、セファマンドール、セファマンドールリチウム、セファマンドールナンフェート、セファマンドールナトリウム、セファザフルール、セファゼドン、セファゾリン、セファゾリンナトリウム、セフクリジン、セフジニル、セフェピム、セフェタメト、セフィキシム、セフルプレナム、セフメノキシム、セフメタゾールナトリウム、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォペラゾンナトリウム、セフォラニド、セフォセリス、セフォタキシム、セフォタキシムナトリウム、セフォチアム、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピミゾールナトリウム、セフピラミド、セフピロム、セフポドキシム、セフプロジル、セフキノム、セフロキサジン、セフスロジン、セフスロジンナトリウム水和物、セフタジジム、セフタジジム五水和物、セフテゾール、セフチブテン、セフチオレン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフトリアキソンジナトリウム塩、セフトリアキソンナトリウム、セフロキシム、セフゾナム、セファセトリル、セファレキシン、セファロリジン、セファロスポリンC、セファロチン、セファロチンナトリウム、セファピリン、セファピリンナトリウム、セフラジン、ロラカルベフ、セフブペラゾン、セホキシチン、セフォキシチンナトリウム、セフミノックス、セフメタゾール、セフォテタン。
D.アジスロマイシン、ブレフェルジン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、エリスロマイシンエストレート、エチルコハク酸エリスロマイシン、ステアリン酸エリスロマイシン、ジョサマイシン、キタサマイシン、ツラスロマイシンおよびチルミコシンなどのマクロライド抗生物質。
【0057】
いくつかの実施形態において、組成物はコルチコステロイド(複数可)に加えて1種または複数の抗炎症成分を含む。このような抗炎症成分は例えば、1種または複数の非ステロイドの抗炎症薬(「NSAID」)を含むことができる。NSAIDは例えば、サリチレート、アリールアルカン酸、2−アリールプロピオン酸(または「プロフェン」)、N−アリールアントラニル酸、ピラゾリジン誘導体、オキシカム、COX−2阻害剤、スルフォンアニリドおよびリコフェロンを含む。いくつかの実施形態において、NSAIDはアスピリン、イブプロフェンまたはナプロキセンを含む。抗炎症成分はまた、例えば、抗ヒスタミン剤を含むことができる。抗ヒスタミン剤は、例えば、H−受容体作動薬、H−受容体作動薬、H−受容体作動薬、H−受容体作動薬、肥満細胞安定化薬およびビタミンCを含む。
【0058】
ii.賦形剤
本発明の組成物中の企図される賦形剤は、例えば、液状媒体、粘度上昇剤、界面活性剤、防腐剤、安定剤、樹脂、充填剤、結合剤、潤滑油、流動促進剤、崩壊剤、共溶媒、および製薬グレードの染料または顔料を含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、懸濁液の形態をしている。このような組成物は、通常、水、石油、動物油、植物油、鉱油または合成油などの液状ビヒクル(または「担体」)を含む。生理食塩液またはグリコール(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコール)も含有することができる。いくつかの実施形態において、液状媒体は鉱油を含む。
【0060】
本発明の組成物は、通常、1種または複数の粘度上昇剤(または「増粘剤」)を含む。組成物中の粘度上昇剤の濃度は、通常、少なくとも約0.1重量%である。例えば、いくつかの実施形態において、濃度は約0.1から約15重量%である。いくつかのこのような実施形態において、例えば、濃度は約0.1から約5%である。他の実施形態において、濃度は、約2から約10重量%または約4から約8重量%である。いくつかの実施形態において、粘度上昇剤はポリエチレンを含む。ポリエチレンは、高分子量および高融点を有する不活性炭化水素である。これは、例えば鉱油ビヒクルの粘度を増加させるために、増粘剤として使用することができる。いくつかの実施形態において、ポリエチレンは、Plastibase(登録商標)50W(Bristol−Myers Squibbから市販)の形態で組成物に導入される。Plastibase(登録商標)50Wは95%の鉱油に5%のポリエチレンを含む。他の企図された粘度上昇剤も(代替として)使用することができる。いくつかの実施形態において、例えば、粘度上昇剤は、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、カルボマー、ポビドン、アラビアゴム、グアーゴム、キサンタンガムまたはトラガカントを含む。他の実施形態において、粘度上昇剤は、メチルセルロース、カルボマー、キサンタンガム、グアーゴム、ポビドン、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはケイ酸アルミニウムマグネシウムを含む。他の実施形態において、粘度上昇剤はカルボキシビニルポリマー;カラゲーニン;ヒドロキシエチルセルロース;ラポナイト;ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウムなどのセルロースエーテルの水溶性塩を含む。さらに別の実施形態において、粘度上昇剤は、カラヤガム、キサンタンガム、アラビアゴムおよびトラガカントゴムなどの天然ゴムを含む。さらになお他の実施形態において、粘度上昇剤は、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウムまたは細かく分割されたシリカを含み、これらは増粘剤の一部として使用することができ、さらにきめを向上させる。さらなる実施形態において、粘度上昇剤は、ペンタエリトリトールのアルキルエーテルまたはスクロースのアルキルエーテルで架橋したアクリル酸のホモポリマー、すなわちカルボマーを含む。カルボマーはCarbopol(登録商標)シリーズとしてB.F.Goodrichから市販で入手可能である。いくつかの実施形態において、カルボマーはCarbopol(登録商標)934、940、941、956、またはこれらの混合物である。ラクチドおよびグリコリドのモノマーのコポリマーは、特にコポリマーが数平均で約1,000から約120,000の範囲の分子量を有する場合には、有効成分の送達に有用であり得る。これらのポリマーは米国特許第5,198,220号、第5,242,910号および第4,443,430号に記載されている。
【0061】
企図される界面活性剤は例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル;スクロースモノエステル;ラノリンエステルおよびエーテル;アルキル硫酸塩;および脂肪酸のナトリウム、カリウムおよびアンモニウム塩を含む。
【0062】
企図される防腐剤は例えば、フェノール;パラヒドロキシ安息香酸(例えばp−ヒドロキシ安息香酸メチル(または「メチルパラベン」)およびp−ヒドロキシ安息香酸プロピル(または「プロピルパラベン」))のアルキルエステル;ソルビン酸;o−フェニルフェノール安息香酸およびこの塩;クロロブタノール;ベンジルアルコール;チメロサール;酢酸フェニル水銀および硝酸塩;ニトロメルソール、塩化ベンザルコニウム;および塩化セチルピリジウムを含む。特に企図される防腐剤はソルビン酸である。本発明の組成物が防腐剤を含む範囲については、組成物中の防腐剤濃度は、通常約5重量%以下である。いくつかの実施形態において、例えば、防腐剤の濃度は約0.01から約5重量%である。
【0063】
企図される安定剤は、例えば、エデト酸ナトリウムなどのキレート剤を含む。企図される安定剤はまた、例えば、ブチルヒドロキシアニソールおよびモノチオグリセロールナトリウムなどの抗酸化剤を含む。
【0064】
企図される結合剤は、例えば、ゼラチン、アラビアゴムおよびカルボキシメチルセルロースを含む。
【0065】
企図される潤滑油は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびタルクを含む。
【0066】
企図される崩壊剤は、例えば、コーンスターチおよびアルギン酸を含む。
【0067】
通常、所望に応じて、他の不活性成分が組成物に加えられてもよい。例えば、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、第三リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、カオリン、圧縮性糖、デンプン、硫酸カルシウム、右旋性または微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、微結晶性セルロース、トラガカント、ヒドロキシプロピルセルロース、予備ゼラチン化デンプン、ポビドン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびメチルセルロースを、これらが含有することができるように企図される。
【0068】
E.塩
上に述べたように、本発明の組成物中に存在する多くの化合物が塩の形態をしていてよい。例えば、上記抗生物質、コルチコステロイドおよび抗真菌剤の多くは、塩の形態をしていてよい。温度および湿度の差における製薬の安定性;結晶性;および/または水、油もしくは他の溶媒への望ましい溶解性などの1種または複数の物理的性質により、塩は有利であり得る。酸および塩基の塩は、当業界で既知の様々な方法を使用することによって、例えば、化合物を酸または塩基とそれぞれ混合して、通常形成することができる。一般に、本発明の組成物が治療の恩恵のためにインビボ(すなわち動物に対して)投与されるように意図される場合、組成物中のすべての塩は薬学的に許容できることが好ましい。
【0069】
酸付加塩は、遊離塩基化合物をおよそ化学量論量の無機または有機酸と反応させることにより、通常調製することができる。薬学的に許容できる塩の製造にしばしば適切な無機酸の例は、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、およびリン酸を含む。薬学的に許容できる塩の製造にしばしば適切な有機酸の例は、通常例えば、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族、複素環式、カルボン酸およびスルホン酸の種類の有機酸を含む。しばしば適切な有機酸の具体的な例はコール酸、ソルビン酸、ラウリン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、ジグルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アリールカルボン酸(例えば、安息香酸)、アントラニル酸、メシル酸、ステアリン酸、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、アルキルスルホン酸(例えば、エタンスルホン酸)、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸)、パントテン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、β−ヒドロキシ酪酸、ガラクタル酸、ガラクツロン酸、アジピン酸、アルギン酸、酪酸、ショウノウ酸、ショウノウスルホン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ドデシル硫酸、グリコヘプタン酸(glycoheptanoic)、グリセロフォスフィック酸(glycerophosphic)、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ニコチン酸、2−ナフタレスルホン酸(2−naphthalesulfonic)、シュウ酸、パルモイン酸、ペクチニン酸、3−フェニルプルピオン酸、ピクリン酸、ピバル酸、チオシアン酸、トシル酸およびウンデカン酸を含む。
【0070】
一般に、塩基付加塩は、遊離酸性化合物をおよそ化学量論量の無機または有機塩基と反応させることにより、調製することができる。塩基付加塩の例は例えば、金属塩および有機塩を含むことができる。金属塩は例えば、アルカリ金属(Ia族)塩、アルカリ土類金属(IIa族)塩および他の生理学上許容できる金属塩を含む。このような塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛から製造することができる。例えば、遊離の酸性化合物は水酸化ナトリウムと混合してこのような塩基付加塩を形成する。有機塩は、トリメチルアミン、ジエチルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)およびプロカインなどのアミンから製造することができる。塩基性窒素含有基はC−Cアルキルハロゲン化物(例えばメチル、エチル、プロピル、塩化ブチル、ブロミド、ヨウ化物)、硫酸ジアルキル(例えばジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミル硫酸塩)、長鎖ハロゲン化物(例えばデシル、ラウリル、ミリスチル、ステアリルクロリド、ブロミド、ヨウ化物)、アリールアルキルハロゲン化物(例えばベンジルおよびフェネチルブロミド)、他などの薬剤を用いて四級化することができる。
【0071】
II.本発明の組成物の調製
本発明の組成物は、一般に、例えば、当業界で周知の技術を使用して調製することができる。通常、組成物(またはこのような媒体(複数可)の一部)中で使用される任意の媒体(複数可)、続いて、残りの賦形剤、有効成分および脂肪酸を調剤容器に加える。一般に、成分が容器に加えられる順序は重要ではない。
【0072】
III.本発明の組成物を使用する治療方法
本発明の組成物は、一般に、動物の感染を治療するために使用することができる。本組成物は、ある範囲の動物(特に哺乳動物)を治療するために使用され得ることが企図される。このような哺乳動物は例えば、ヒトを含む。他の哺乳動物は、例えば、農場すなわち家畜哺乳動物(例えばブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギなど)、実験哺乳動物(例えばマウス、ラット、スナネズミなど)、伴侶哺乳動物(例えばイヌ、ネコ、ウマなど)ならびに野生および動物園の哺乳動物(例えばスイギュウ、シカなど)を含む。いくつかの実施形態において、組成物はイヌ科の動物(例えばイヌ)を治療するために使用される。他の実施形態において、組成物はネコ科の動物(例えば家ネコ)を治療するために使用される。組成物はまた、鳥(例えばシチメンチョウ、ニワトリなど)および魚(例えばサケ、マス、コイなど)などの非哺乳動物を治療するのに適切であることが企図される。
【0073】
一般に、本発明の組成物は、治療上効果的な量の組成物(特に有効成分)を感染部位に与える剤形で投与される。ある抗炎症剤(例えば、フランカルボン酸モメタゾン一水和物などのコルチコステロイド)について、「治療上効果的な量」は標的炎症を寛解する、抑制するもしくは根絶する、または標的組織中のかゆみ止めもしくは血管収縮作用を遂げるのに十分な量である。ある抗感染剤(例えば抗生物質または抗真菌剤)について、「治療上効果的な量」は標的病原体感染を寛解する、抑制するまたは根絶するのに十分な量である。いくつかの実施形態において、十分な量の組成物が、標的病原体の抗生物質のMIC90レベル(最小阻止濃度、すなわち標的病原体の90%の成長を阻止する濃度)と少なくとも等しい抗生物質濃度を達成するために投与される。組成物が、所望の標的組織または病原体について併用効果を有する複数の有効成分を含む範囲に対して、「治療上効果的な量」を構成する各成分の量は、他の有効成分と組み合わせたとき、標的組織または病原体に対して所望の影響を引き起こす量である。
【0074】
本発明の組成物は、直腸、膣から、吸入(例えばミストまたはエアロゾルによって)によって、経皮的に(例えば経皮貼布によって)、非経口的に(例えば皮下注射、静脈注射、筋肉注射など)投与され得ることが企図される。また、組成物は経口的に投与され得ることが企図される。例えば、組成物は、意図した動物レシピエントの飼料に直接もしくは前もって混合物の一部として、または個別の剤形として加えてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は耳感染を治療するために使用される。いくつかのこのような実施形態において、耳感染はイヌにある。他の実施形態において、耳感染はネコにある。耳感染を治療するために使用される場合、本発明の組成物は動物の感染した耳(複数可)に、通常、投与される。本組成物は、一日1回の投与が好ましいが、一日複数回、投与され得ることが企図される。多くの場合において、特に、組成物が例えば、フランカルボン酸モメタゾン一水和物、オルビフロキサシンおよびポサコナゾールを含む場合、1回分は感染を治療するのに十分である。しかし、いくつかの状況において、完全に動物を治療(または、治療が完結していることを確認)するためには、第1の服用の、例えば48時間後に第2の服用を行うのが望ましい(または必要な)ことがある。他の場合において、組成物は、7日間まで(またはより多く)毎日投与してもよい。
【0076】
適切な用量の判断は、通常、当技術の内にある。正確な用量は様々な因子に依存するものである。これらの因子は例えば、意図されるレシピエントのタイプ(例えば種および血統)、年齢、サイズ、性別、食物、活動性および条件;投与される具体的な組成物の活性、有効性、薬物動態学および毒物学プロファイルなどの薬理学的な考慮事項;および、組成物が、1種または複数の有効成分を用いる併用療法の一部として投与されるかどうかを含むことができる。例えば、イヌの耳感染を治療するために、本発明の組成物が使用されるいくつかの実施形態において、用量は約1から約10滴である。イヌの耳感染を治療するために、本発明の組成物が使用される他の実施形態において、用量は約25から約500mgである。いくつかのこのような実施形態において、例えば、用量は約25から約250mgである。
【0077】
IV.治療キット
本発明はまた、上に記載された治療方法を実行する際に、例えば、使用に適するキットを対象とする。一般に、このようなキットは、治療上効果的な量の本発明の組成物および追加の要素(複数可)を含む。追加の要素(複数可)は、例えば、1種または複数の、診断ツール、組成物を投与するための説明書または組成物を投与するための機器(例えば注射器またはスクィーズボトル)であってよい。耳の治療のためのいくつかの実施形態において、キットは、例えば、耳を浄化するための機器および/または耳清浄液と組み合わせた本発明の組成物を含むことができる。耳を浄化するための企図された機器の例は、浄化布(例えば乾燥した布またはアルコールパッド)または動力付き耳浄化機(Schering−Plough Corpによって販売されているAuriflush(登録商標)Systemなどの)を含む。企図された耳清浄液の例は、Virbac Animal Health’s Cerulytic(登録商標)Solution(ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、ベンジルアルコール、香料およびブチルヒドロキシトルエンを含む。)、Pfizer社のOti−Clens(登録商標)Solution(プロピレングリコールリンゴ酸、安息香酸およびサリチル酸を含む。)、Vet Solutions Ear Cleaning Solution(プロピレングリコール、アロエベラゲル、Sdアルコール40−2、乳酸、グリセリン、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、サリチル酸、香料、安息香酸およびベンジルアルコールを含む。)、およびIVX Animal Health’s OtiRinse(登録商標)Solution(ジオクチルソジウムスルホサクシネート、サリチル酸、乳酸、安息香酸およびアロエベラを含む。)を含む。
【0078】
(実施例)
以下の実施例は単に例示であり、本開示の残りを決して限定するものではない。
【実施例1】
【0079】
オレイン酸またはラウリン酸を使用する懸濁液の安定化
この実験の目的は、オルビフロキサシンと組み合わせたフランカルボン酸モメタゾン一水和物を含む懸濁液中の少なくとも1種のモメタゾン分解産物の形成を、オレイン酸またはラウリン酸が減少させることができることを実証することであった。この実験において、懸濁液は表8に示されている組成物を有していた。
【0080】
【表8】

この懸濁液を副ロットに分割した。各副ロットは、オレイン酸と混ぜ合わせて特定のオレイン酸濃度(0.1%、0.2%、0.5%、1.0%または2.0%)とし、ラウリン酸と混ぜ合わせて、特定のラウリン酸濃度(0.1%、0.2%、0.5%、または1.0%)とし、またはオレイン酸もしくはラウリン酸を合わせなかった(すなわち対照)。副ロットをLDPE蓋付き7.5gHDPEプラスチックボトルに詰め、次いで、安定性保管所に直立させて置いた。ラベルからいかなる汚染物質も取り込まないようにするために、パッケージは市販ラベルを含まなかった。以下の条件の組、(a)40℃の温度、および75%の相対湿度、または(b)周囲条件下で50℃、のうちの1つに各ボトルを保存した。
【0081】
モメタゾン分解産物の濃度を決定するために、試料は、実験の開始時、次いで1か月、2か月および5か月後の時点でHPLCを評価した。モメタゾン分解産物の観測した濃度を、表9に示す。
【0082】
【表9】

表9において、「ND」は、検出されなかったことを意味する。表からわかるように、すべての試験したレベルで両方の酸の存在は、40℃相対湿度75%の、および50℃周囲条件下において、モメタゾン分解産物の形成を5か月までの間阻止した。本出願人はまた、試料の物理的な外観の変化を観測せず、オレイン酸またはラウリン酸が加えられた結果として、新たな分解産物を検出しなかった。
【実施例2】
【0083】
オレイン酸を含む例示の耳用配合物
以下の表10は、オレイン酸を含む本発明の組成物を例示する。
【0084】
【表10】

【実施例3】
【0085】
ラウリン酸を含む例示の耳用配合物
【0086】
以下の表11は、ラウリン酸を含む本発明の組成物を例示する。
【0087】
【表11】

【0088】
「含む」という単語は、排他的ではなく包括的に解釈されるべきである。この解釈は、これらの単語が米国特許法の下に与えられている解釈と同じであると意図される。
【0089】
「薬学的に許容できる」という用語は、修飾名詞が医薬製品に使用するのに適切であることを意味するために形容詞的に使用される。この用語が、例えば塩または賦形剤を記載するために使用される場合、これは、組成物の他の成分と適合し、有害作用(複数可)が塩または賦形剤の便益(複数可)より上回る程度に、意図するレシピエント動物に有害ではないと、塩または賦形剤を特徴付ける。
【0090】
この特許に引用されたすべての参考文献は参照により本特許に組み込む。
【0091】
好ましい実施形態の上記の詳細な説明は、具体的使用の要件に最もよく適合できるよう当業者が本発明を各種形態で改変し、適用することができるように、当業者に本発明、この原理およびこの実際の適用を理解させるためだけに意図されている。したがって、本発明は上記の実施形態に限定されず、様々に変更され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コルチコステロイド、
抗生物質、および
脂肪酸
を含み、
抗生物質が、
フルオロキノロン、フルオロキノロンの塩、またはフルオロキノロンもしくはこの塩の溶媒和物、または
フルオロナフチリジノン、フルオロナフチリジノンの塩、またはフルオロナフチリジノンもしくはこの塩の溶媒和物を含み、
脂肪酸が、
約3から約18個の炭素原子を含み、
約60℃以下の融点を有する、
医薬品組成物。
【請求項2】
懸濁液の形態をしている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
コルチコステロイドがモメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン、またはモメタゾンもしくはフランカルボン酸モメタゾンの溶媒和物を含む、請求項1から2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
コルチコステロイドがフランカルボン酸モメタゾン一水和物を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
抗生物質が6−フルオロキノリン−4(1H)−オン、6−フルオロキノリン−4(1H)−オンの塩、または6−フルオロキノリン−4(1H)−オンもしくはこの塩の溶媒和物を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
6−フルオロキノリン−4(1H)−オンが、アミフロキサシン、バロフロキサシン、シプロフロキサシン、クリナフロキサシン、フレロキサシン、ガレノキサシン、ガチフロキサシン、グレパフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、ペフロキサシン、プラドフロキサシン、シタフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、ダノフロキサシン、ジフロキサシン、エンロフロキサシン、サラフロキサシン、フルメキン、イバフロキサシン、レボフロキサシン、ナジフロキサシン、オフロキサシン、パズフロキサシン、プルリフロキサシン、ルフロキサシン、およびマルボフロキサシンからなる群から選択される6−フルオロキノリン−4(1H)−オンを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
6−フルオロキノリン−4(1H)−オンがオルビフロキサシンを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
抗真菌薬をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
抗真菌薬がトリアゾール、トリアゾールの塩またはトリアゾールもしくはこの塩の溶媒和物を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
トリアゾールがフルコナゾール、イトラコナゾール、サペルコナゾール、テルコナゾールおよびボリコナゾールからなる群から選択されるトリアゾールを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
トリアゾールがポサコナゾールを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
脂肪酸がラウリン酸を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
脂肪酸がオレイン酸を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
鉱油をさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記述された組成物を動物に投与することを含む、動物の感染を治療する方法。
【請求項16】
感染がイヌの耳感染を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
動物の感染の治療用の薬剤を調製するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項18】
請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物、および
追加の要素を含み、追加の要素が、
診断ツール、
耳清浄液、
耳を浄化するための機器、
動物に組成物を投与するための説明書、および
動物に組成物を投与するためのデバイスからなる群から選択される追加の要素を含む
治療キット。

【公表番号】特表2011−521999(P2011−521999A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512100(P2011−512100)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056751
【国際公開番号】WO2009/147144
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【Fターム(参考)】