説明

抗生物質化合物

ユウバクテリウムStreptomyces種による栄養培地の発酵は構造式(I)の新規な抗菌化合物を産生する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌活性を有している新規な天然産物に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌によって生じる感染症の医学的懸念が高まりつつある。何故なら、これらの病原体の多くが常用の様々な抗生物質に対して耐性を有するからである。このような微生物としては、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)、Staphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌)、Staphylococcus hemolyticus(溶血性ブドウ球菌)、Streptococcus pyogenes(化膿性連鎖球菌)、Streptococcus pneumoniae(肺炎連鎖球菌)、Enterococcus faecalis(エンテロコッカス・フェカーリス)、Enterococcus faecium(エンテロコッカス・フェシウム)、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)、Actinobacter calcoaeticus、Escherichia coli(大腸菌)及びStenotrophomonas maltophiliaなどがある。本発明の抗生物質は、様々な既知の抗生物質に耐性の感染症を治療する治療方法に大きく貢献できる可能性を有している。概説書としては、F.D.Lowy The Journal of Clinical Investigation 2003,111(9),1265を参照するとよい。
【0003】
本発明では、Streptomyces種のユウバクテリア発酵から単離した新規な天然産物を記載する。この化合物は、現在利用されている抗生物質に耐性を有している多くの様々な病原体に対して抗菌活性を示す。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、式I:
【0005】
【化3】

で示される新規な天然産物、及び、抗菌剤としてのその使用、または、細菌感染症の治療に有効な医薬的に許容されるその塩を記載している。
【0006】
本発明はまた、ユウバクテリウムStreptomyces種で発酵させることによって化合物Iを産生させる方法に関する。本発明はまた発酵ブロスから式Iの化合物を単離する方法に関する。
【0007】
本発明は式I:
【0008】
【化4】

の化合物または医薬的に許容されるその塩を記載している。
【0009】
本発明の化合物の医薬的に許容される塩は、無機または有機の無毒性塩基から形成されるような慣用の無毒塩を包含する。このような慣用の無毒塩は、例えばカリウム、ナトリウム、カルシウムまたはマグネシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物のような無機塩基に由来の塩、及び、例えばジベンジルエチレンジアミン、トリメチルアミン、ピペリジン、ピロリジン、ベンジルアミンなどのアミン、または、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの水酸化第四アンモニウムのような有機塩基から製造された塩である。
【0010】
医薬的に許容される塩は慣用の化学的方法によって本発明の化合物から合成できる。一般には、遊離酸を化学量論的量または過剰量の所望の塩形成性無機または有機塩基と共に適当な溶媒または種々の混合溶媒中で反応させることによって塩を製造する。
【0011】
本発明の化合物Iは、細菌感染症の治療に有用な抗生物質活性を示す。該化合物は、既知の多くの抗生物質に耐性を示す種を含むS.aureus、S.pneumoniae、E.faecalis、E.faecium、B.subtilis及びE.coliの様々な菌株、例えば、メチシリン耐性S.aureus(MRSA)、バンコマイシン耐性Enterococcus種(VRE)、多剤耐性E.faecium、マクロライド耐性のS.aureus及びS.epidermidis、リネゾライド耐性のS.aureus及びE.faeciumに対して抗菌活性を示す。
【0012】
化合物Iを医薬的に許容される担体と組合せることによって本発明の化合物を医薬組成物として配合し得る。このような担体の例は後述する。
【0013】
化合物は粉末または結晶質形態、液体溶液または懸濁液として使用し得る。化合物は種々の手段で投与でき、主な投与手段には局所投与、経口投与、及び、注射(静脈内または筋肉内)による非経口投与がある。
【0014】
1つの送達経路である注射用の組成物は、単一用量アンプルの形態または多用量容器に入った形態で調製し得る。注射用組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルションのような形態にするとよく、様々な配合剤を含有し得る。あるいは、有効成分が、送達時点で滅菌水のような適当なビヒクルで復元できる粉末(凍結乾燥または非凍結乾燥)の形態であってもよい。注射用組成物の担体は典型的には滅菌水、生理食塩水または別の注射可能液体、例えば、筋肉内注射用のピーナツ油から成る。また、種々の緩衝剤、保存剤なども含有させ得る。
【0015】
局所投与には、軟膏、クリーム、ローションを形成する疎水性もしくは親水性の塩基、塗布剤を形成する水性、油性もしくはアルコール性の液体、または、粉末を形成する無水希釈剤のような担体を配合し得る。
【0016】
経口組成物は、錠剤、カプセル剤、経口懸濁液及び経口溶液の形態を有し得る。経口組成物は、慣用の配合剤のような担体を利用でき、徐放性であってもよく、また、即効性の送達形態でもよい。
【0017】
投与すべき薬用量は、治療対象者の容態及び体格、投与の経路及び頻度、化合物に対する病原体の感受性、感染菌力及びその他の要因に大きく左右される。しかしながらこれらの事柄は、抗菌分野で公知の治療方針に従う医師の手慣れた裁量に委ねられる。
【0018】
単位薬用量の形態でヒトに投与される組成物は、液体であるか固体であるかにかかわりなく、約0.01%から約99%という高い割合までの化合物Iを含有でき、この範囲の一例は約10−60%である。組成物は一般に約15mg−約2.5gの化合物Iを含有し、この範囲の一例は約250mg−1000mgである。非経口投与では、単位薬用量の形態が、滅菌水中の純粋な化合物Iの溶液、または、溶液にして用いる可溶性粉末の形態であろう。これらの溶液は中性pH及び等張性に調整できる。
【0019】
本文に記載された本発明はまた、感染治療に有効な量の化合物Iを哺乳動物に投与する段階を含む、治療を要する哺乳動物の細菌感染の治療方法を含む。
【0020】
化合物Iの投与方法の1つの実施形態は、経口及び非経口方法、例えば、静脈内注入、静脈内ボーラス(i.v.bolus)及び筋肉注射を含む。
【0021】
成人用には、体重1kgあたり約5−50mgの化合物Iを1日に1−4回投与するのが好ましい。好ましい用法は、250mg−1000mgの抗菌剤の1日に1−4回の投与である。より特定的に、軽度の感染症に対しては、約250mgを1日に2回または3回投与する用法が望ましい。高度に感受性のグラム陽性生物による中程度の感染症に対しては、約500mgを1日に2回または3回投与する用法が望ましい。抗生物質に対する感受性の限界が最も高い生物による生命に危険な重度の感染症に対しては、約1000−2000mgを1日に3回または4回投与する用法が望ましい。
【0022】
小児用には、体重1kgあたり約5−25mgを1日に2、3または4回投与する用法が好ましい。典型的には10mg/kgの用量が望ましい。
【0023】
本発明の別の態様は、適当な栄養培地でStreptomyces種微生物を培養し、次いで発酵ブロスから本発明の化合物を回収する段階を含む、化合物Iの製造方法である。後述の生物分類学試験でユウバクテリウムStreptomyces種として同定されたStreptomyces種の微生物ATCC#PTA−5942は、Merck Culture CollectionにMA7339として寄託されている。
【0024】
この微生物は引き続きAmercian Type Culture Collection(ATCC),12301 Parklawn Drive,Rockville,Maryland,20852に永久寄託され、受託番号ATCC#PTA−5942(Merck#MA7339)に指定された。
【0025】
この微生物へのパブリックアクセスに関するいかなる制限も特許が発行されたときに排除される。本発明に関してはこれらの特定種の使用を記載しているが、化合物Iを産生できる上記生物の他の種及び突然変異体の存在は可能であり、本発明方法の実施にはそれらの使用も企画される。
【0026】
構造式Iの化合物は、ユウバクテリウムStreptomyces種の培養物を接種した調節条件下の適当な培地の好気性発酵によって産生される。適当な培地は好ましくは水性であり、同化性の炭素源、窒素源及び無機塩を含有している。
【0027】
Streptomyces種による発酵に使用される培地は主として公知のDifcoトリプチックダイズブロスであり、単独で使用されるかまたは当業者に常用の栄養素を添加して使用される。
【0028】
本文中に記載の栄養培地が使用可能な多様な培地の単なる代表例であり、本発明の範囲が記載の培地に全く限定されないことに留意されたい。
【0029】
発酵は約10℃−約40℃の範囲の温度で行う。しかしながら、最適結果を得るためには、発酵を約28℃で行うのが好ましい。発酵中の栄養培地のpHは約5.5−約7.5にするとよい。
【0030】
本発明の化合物を発酵産生させる場合、本発明がATCC受託番号ATCC#PTA−5942(Merck#MA7339)の特定Streptomyces種の使用に限定されないことを理解されたい。記載の培養物から産生または誘導された他の天然もしくは人工突然変異体、または、Streptomyces属の他の変異体もしくは他の種の使用も、それらが本発明の化合物を産生できるならば本発明の範囲に含まれることが望ましくまた含ませる予定である。ATCC#PTA−5942(Merck#MA7339)のStreptomycesの突然変異種または菌株の人工産生は、慣用の物理的または化学的な突然変異誘発、例えば、記載の培養物の紫外線照射、ニトロソグアニジン処理などによって行うことができる。プロトプラスト融合法、プラスミド組込み、染色体フラグメント組込みなどのような組換えDNA技術も有用であろう。
【実施例1】
【0031】
化合物Iの産生
【0032】
【表1】

【0033】
Streptomyces種ATCC#PTA−5942(MA7339)の凍結懸濁液(1.3mL)を、50mLのシード培地を収容している250mL容のフラスコに接種した。フラスコを220RPMで撹拌しながら28.0℃で48時間インキュベートした。第一期シードの3%接種物を、50mLのシード培地を収容している250mL容の振盪フラスコに移すことによって第二期シードを増殖させた。フラスコを220RPMで撹拌しながら28.0℃で24時間インキュベートした。第二期シードの5%接種物を250mL中の30mlのYME−TEに移し、220RPMで撹拌しながら32.0℃で12日間インキュベートした。
【0034】
化合物Iの単離:
2リットルの発酵ブロスに2リットルのアセトンを添加し、シェーカーで2時間振盪し、濾過した。減圧下で濾液を濃縮してアセトンをほぼ除去し、75mL容のアンバークロム(Amberchrome)(CG161s)カラムに充填した。カラムを90%水から100%メタノールまでの勾配で溶出させると、化合物がブロードゾーンに溶出したので、これを濃縮し凍結乾燥すると、170mgの半精製画分が得られた。この画分の80mgの部分量を、0.1%トリフルオロ酢酸を含有している20−98%の水性アセトニトリル勾配で分取HPLC(Zorbax Rx C8 21.4×250mm)によって精製すると、1.1mgの化合物Iが得られた。構造を分光分析によって解明した(下記参照)。
【0035】
化合物Iの物理的データ:
【0036】
【化5】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】


【0039】
培養物のキャラクタリゼーション
化合物Iを産生する培養物MA−7339について概説する。
【0040】
増殖、全般的な培養特性及び炭素源の利用に関する観察は、Shirling and Gottliebの方法(Int.J.Syst.Bacteriol.(1966)16:313−340)に従って行った。培養物の変色は、Methuen Handbook of Colour(A.Komerup and J.H.Wauscher,Third Edition,1978)に所収の色標準との比較によって決定した。
【0041】
細胞の化学組成は、Lechevalier and Lechevalier(1980)の方法を使用して決定した。
【0042】
脂肪酸組成は、修正サンプル調製(Sasser,1990)を使用して決定した。脂肪酸メチルエステル(FAME)の分析は、フェニルメチルシリコーンカラム(0.2mm×25m)を備えたHewlett Packard Model 6890Nガスクロマトグラフ/Microbial Identification Systemソフトウェア(MIDI,Inc.,Newark,Del)を使用するキャピラリーガスクロマトグラフィーによって行った。個々の脂肪酸の同定は、Microbial Identification Systemソフトウェアによって決定した。
【0043】
プライマー27f及び1525r(Lane,1991)を使用して得られた1500bpのPCRフラグメントから16S rDNAの完全配列を決定した。PCR産物はABI PRISMTM Dye Terminator Cycle配列決定キット(Perkin Elmer)を使用する配列決定反応の鋳型として使用した。GCG Fragment Assembly System(Wisconsin Package,version 8)を使用して部分配列を構成し、これらの配列をCLUSTALWプログラム(Intelligenetics,Inc.)に位置合せした。位置合せした配列の系統発生分析は、Phylogeny Using Parsimony Analysis(PAUP)プログラムのバージョン4.0.(Swofford,1993)の分枝限定アルゴリズムによる最大節約分析を使用して行った。
【0044】
ソース
菌株MA7339は、スペインのバレアレス諸島に属するマジョルカ島で採取した土壌から得られた。1%(w/v)のクロラミンTで前処理後の土壌から菌株を単離し、20μg/mlのナリジキシン酸を補充したフミン酸基材の寒天で平板培養した。酵母麦芽エキス寒天上で精製後、FabF SPAR Cスクリーン中で寒天プラグとして試験すると単離物が活性で検出された。
【0045】
全般的な増殖特性
菌株MA7339は、酵母麦芽エキス、オートミール、グリセロールアスパラギン、無機塩デンプン及びトリプチケースダイズのような一連の寒天培地で、28℃で良好に増殖する。肉眼的コロニー形態はストレプトミセス科細菌の典型であり、胞子集団、色、基底菌糸体の色素沈着及び種々の色素の産生などを含むその増殖特性を種々の寒天培地中で記録した(表1)。
【0046】
コロニー形態(酵母麦芽エキス寒天上、ISP2):最初は黄白色の基底菌糸体が21日間のインキュベーション後に黄褐色(5D7)に変色する。最初は白色の気生菌糸体は21日のインキュベーション後も増殖を続け、灰白色(5El/5E2)に変色し、茶褐色の湿潤浸出液滴を生じる。
【0047】
微細形態:胞子鎖形態は倍率400×及び1000×の光学顕微鏡によってプレート上で直接観察した。観察は、酵母麦芽エキス寒天上で7、14及び21日間の培養後に行った。広範囲に枝分かれした基底菌糸から気生菌糸体が生じている。疎らに枝分かれした気生菌糸は最初は不規則にきつく巻かれた短いらせん状胞子鎖に分化する。10−20未満の胞子によって担胞子体が形成され、これらは時間の経過に伴って合着し、古い培養物では暗色の粘液性胞子集団となる。大抵の他の試験培地でも同様の形態が観察されたが、合着の程度は様々に異なっていた。グリセロールアスパラギン寒天中では逆に、菌株が不稔性の発育菌糸体として増殖する。
【0048】
化学分類学的分析
細胞壁組成の分析は、菌株MA7339が全生物加水分解物中にStreptomycesに特徴的なLL−A2pmを含有し、また、細胞壁の主要な糖としてグルコース及びリボースを含有することを示す。菌株は、飽和した直鎖状及びイソ−及びアンテイソ−脂肪酸に富み、全細胞のメタノール分解物は、優位脂肪酸15:0アンテイソ(12.43%)及び16:0イソ(17.94%)を含有し、これもStreptomycesに典型的である。しかしながら主要成分は脂肪酸種15:0イソ(20.43%)である。完全な脂肪酸組成を表2に示す。これらの化学分類学的分析はいずれも、この菌株がStreptomyces属の一員に相当することを示す。
【0049】
生理学的特性
菌株MA7339は以下の炭素利用パターンを有している(表3):スクロース、D−キシロース、D−フルクトース及びラフィノースは高度の利用;D−グルコース、I−イノシトール及びD−マンニトールは中程度の利用;L−アラビノース、セルロース及びラムノースは非利用。
【0050】
16S rDNAの配列及び系統発生学的分析
菌株MA−7339の16S rDNAの完全配列を決定した(図1)。配列をGenbank(AB045882)から得られたStreptomycesヌクレオチド配列及びS.platensis菌株MA7327及びMA7331に位置合せした。これらの16S rDNA配列に基づく系統樹を最大節約法を使用して作成した。各グループで得られたブートストラップ反復を統計的信頼性の尺度として使用した。ブートストラップ反復の95%に見出されたグループを統計的に有意であるとした。
【0051】
菌株MA7339は菌株Streptomyces platensisのATCC13865及び菌株MA7327及びMA7331に関連がある。この緊密な関係はブートストラップ値によって十分に裏付けられており(97%)、この単離物をStreptomyces platensis種の別の菌株として同定できることを示唆する(図2)。
【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

【0054】
【表6】

【0055】
以下の化合物を単一炭素源として増殖させる;
観察は28℃で7、14及び21日目に行った;
増殖レベル:3=高度利用;2=中程度利用;1=低度利用;0=非利用。
【0056】
【化6】


【0057】
化合物Iの抗菌活性を定量するために使用したプロトコルを以下に記載する。
材料:
カチオン調節ミュラー−ヒントンブロス(MH;BBL)
50%溶解ウマ血液(LHB;BBL)(冷凍保存液)
RPMI 1640(BioWhittaker)
ヒト血清(Pel−Freez)
RPMI 1640(BioWhittaker)
ヘモフィルス試験培地(HTM、Remel)
トリプチケースダイズブロス(TSB、5mL/管;BBL)
0.9%塩化ナトリウム(生理食塩水;Baxter)
トリプチケースダイズ+5%ヒツジ血液寒天プレート(TSA;BBL)
サブローデキストロース寒天プレート(BBL)
チョコレート寒天プレート(BBL)
2×脱脂乳(Remel)
Microbankビーズ(Kramer Scientific)
MIC 2000マイクロタイタープレート接種器
2×トリプチケースダイズブロス(TSB、BBL)+15%グリセロール/50%ウマ血清
96−ウェルマイクロタイタープレート、蓋、接種物トレー(Dynex Laboratories)
8−チャンネルFinnマルチチャンネルピペット器、0.5−10μL容。
【0058】
方法:
培地調製
カチオン調節ミュラー−ヒントンブロス(BBL):製造業者の指示に従って調製した(22gmを1000mLの水に溶解;22分間のオートクレーブ処理)。冷蔵保存した。使用前にCorning 0.45 Tm酢酸セルロースフィルターを使用してフィルター滅菌した。
【0059】
50%溶解ウマ血液:線維素除去したウマ血液を滅菌蒸留水で1:1に希釈する;凍結し、解凍し、再凍結し(少なくとも7回)、次いで遠心分離する。−20℃で冷凍保存する。
【0060】
カチオン調節ミュラー−ヒントン+2.5%溶解ウマ血液:100mLのカチオン調節ミュラー−ヒントンブロスに5mLの50%溶解ウマ血液を無菌的に添加する。使用前にCorning 0.45 Tm酢酸セルロースフィルターを使用してフィルター滅菌する。
【0061】
カチオン調節ミュラー−ヒントン+50%ヒト血清:2×50mLのカチオン調節ミュラー−ヒントンブロスに50mLのヒト血清を無菌的に添加する。使用前にCorning 0.45 Tm酢酸セルロースフィルターを使用してフィルター滅菌する。
【0062】
ヘモフィルス試験培地(Remel):調製済みの製品を製造業者から入手。使用前にCorning 0.45 Tm酢酸セルロースフィルターを使用してフィルター滅菌する。
【0063】
0.9%塩化ナトリウム(生理食塩水;Abbott Labs):調製済みの製品を製造業者から入手。
【0064】
2×脱脂乳(Remel):調製済みの製品を製造業者から入手。
【0065】
寒天プレートはいずれも調製済みの製品を製造業者から入手した。
【0066】
【表7】

【0067】
試験した抗生物質の最高濃度=64μg/mL(50%DMSO中の1mg/mL溶液から開始したとき)
ウェルあたりのDMSOの最終濃度=3.2%
【0068】
単離物の選択及び維持
使用した菌株は、Merck Culture CollectionまたはClinical Trialsから得られた単離物である。Haemophilus influenzaeの菌株は、Merckでin vivo試験に使用したマウス病原体である。Escherichia coliの菌株は細胞壁透過性の菌株である。Candida albicansの菌株を対照として使用する。これらの培養物は、a.)Microbankビーズ;b.)2×脱脂乳;またはc.)2×トリプチケースダイズブロス+15%グリセロール/50%ウマ血清(Haemophilus及びStreptococcus pneumoniae)中、−80℃の冷凍予製液として保存する。
【0069】
接種物の調製
選択した単離物を、チョコレート寒天プレート(Haemophilus influenzae)、トリプチケースダイズ+5%ヒツジ血液寒天プレート(Streptococcus pneumoniae、Staphylococcus aureus、Escherichia coli、Enterococcus、Bacillus)またはサブローデキストロース寒天(Candida)で継代培養し、35℃でインキュベートする。Haemophilus及びStreptococcus pneumoniaeは5%CO中でインキュベートする。他の単離物はすべて周囲空気中でインキュベートする。アッセイ前に単離物を2×継代培養する。
【0070】
プレートからコロニーを選択し、トリプチケースダイズブロス中の0.5 McFarland標準に等価の接種物を調製するために使用する。Streptococcus pneumoniaeの場合には1.0 McFarland標準に等価の密度をもつ接種物を調製する。全部の培養物の接種物密度はTSB中で〜10CFU/mLである。このTSB接種物を滅菌生理食塩水で1:10に希釈し(4mLの接種物+36mLの生理食塩水;〜10CFU/mLに等価)、マイクロタイタープレートに接種するために使用するまで氷上に維持する。
【0071】
無作為に選択した単離物のコロニー数をカウントしてCFU/ウェルを確認する(TSB接種物をTSA II+5%SBまたはチョコレート寒天プレートで10−5、10−6に平板培養し、35℃、CO中で一夜インキュベートした)。
【0072】
プレート充填
96ウェルマイクロタイタープレート(Dynex)の全部のウェルに100TLの培地を充填する。ヘモフィルス試験培地プレートはHaemophilus influenzaeを試験するために準備する;カチオン調節ミュラー−ヒントン+5%溶解ウマ血液プレートはStreptococcus pneumoniaeを試験するために準備する;カチオン調節ミュラー−ヒントンブロスプレートは、Enterococcus、Staphylococcus aureus、Escherichia col及びBacillus subtilisを試験するために準備する。RPMI 1640はCandidaを試験するために使用する。血清中の何らかの成分によって化合物が失活するか否かを判断するために、S.aureus Smithに対するMICをカチオン調節ミュラー−ヒントン及びカチオン調節ミュラー−ヒントン+50%ヒト血清中で測定する。充填プレートをプラスチックバッグに包装し(蒸発をできるだけ抑えるため)、冷凍保存し、使用前に解凍する。
【0073】
化合物の調製
化合物は重量基準で調製する。100%DMSO中で2mg/mLとなるように化合物を調製し、次いで,DMSO/2×CAMHBの1:1希釈物で1mg/mLに希釈する(最終濃度=50%DMSO/50%CAMHB)。BD Biosciences Deep Well Polypropylene 96ウェルプレートを使用し、50%DMSO/50%CAMHB中で化合物を1:1に系列希釈する(初期濃度1mg/mL)。
【0074】
マイクロブロス希釈アッセイ
Finn全自動マルチチャンネルピペット(0.5−10μL容)を使用し、6.4TLの抗菌処理用溶液を充填マイクロタイタープレートのウェルに加える(第一ウェルの抗菌剤の濃度=64μg/mL;DMSOの濃度=3.2%)。各ウェルのDMSOの量を一定に維持しこのようにして抗菌剤を加える(化合物を溶解状態に維持し、DMSOによる非特異的殺菌の可能性を考慮に入れる)。最終列は3.2%DMSOの増殖対照を含む。
【0075】
各アッセイで対照も試験する。対照は、化合物と同様にして調製したペニシリンG及びクロラムフェニコールである。血清タンパク質結合アッセイの対照としてエルタペネム(Ertapenem)を使用する。
【0076】
プレート接種
ウェルあたり1.5TLの接種物を送り出す全自動プレート接種デバイスであるMIC2000システムを使用してマイクロタイタープレートの全部のウェルに(生理食塩水で希釈した)培養物を接種する。プレートを周囲空気中、35℃でインキュベートする。無菌性の検証のために非接種プレートもインキュベートする。22−24時間のインキュベーション後に結果を記録する。プレートが増殖ゼロになるまで読取りを行った。MICは、22−24時間のインキュベーション後の増殖をゼロにする抗菌剤の最も低いレベルであると定義される。
【0077】
化合物Iは、S.aureus、S.pneumoniae、E.faecalis、E.faecium、B.subtilis及びE.coliの種々の菌株に対して抗菌活性を示す。化合物Iはまた、メチシリン耐性S.aureus(MRSA)、バンコマイシン耐性Enterococcus種(VRE)、多剤耐性E.faecium、マクロライド耐性のS.aureus及びS.epidermidis、リネゾライド耐性のS.aureus及びE.faeciumのような公知の多くの抗生物質に耐性の様々な種に対して抗菌活性を示す。これらの試験菌株に対する最小阻害濃度(MIC)の値は、0.5−32ug/mLの範囲である。MICはNCCLS指針に従って得られる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】CN中の化合物Iの13C NMRスペクトルである。
【図2】CN中の化合物IのH NMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式I:
【化1】

の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項2】
ATCC#PTA−5942(MA7338)のStreptomyces種またはその天然もしくは人工突然変異体を栄養培地で培養する段階と発酵ブロスから化合物Iを回収する段階とを含む、構造式I:
【化2】

の化合物の製造方法。
【請求項3】
発酵を約10℃から約40℃の範囲の温度で行う請求項2に記載の方法。
【請求項4】
発酵を約28℃の温度で行う請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ATCC受託番号ATCC#PTA−5942(MA7338)のStreptomyces種。
【請求項6】
医薬的に許容される担体と有効量の請求項1に記載の構造Iの化合物とを含む医薬組成物。
【請求項7】
有効量の請求項1に記載の式Iの化合物の投与を含む、治療を要する宿主の細菌感染症の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−500343(P2008−500343A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515205(P2007−515205)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/017832
【国際公開番号】WO2005/115400
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【出願人】(504225703)
【Fターム(参考)】