説明

抗生物質化合物

本発明は、式(I)の新規の精製化合物に関する。本発明は、式(I)の化合物の全ての立体異性体、及び全ての互変異性体、及び薬理学的に許容される塩、及び誘導体を含む。本発明は、さらに、ストレプトミセス種(PM0626271/MTCC 5447)に属する微生物の発酵による前記新規抗菌化合物の生成のための方法、有効成分として前記新規化合物の1つ以上を含有する医薬組成物、並びに、細菌感染を原因とする疾病の治療及び予防のための医学分野での前記新規抗菌化合物及び前記医薬組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、抗菌活性を有する式Iの新規化合物に関する。前記化合物は、ストレプトミセス種(PM0626271/MTCC 5447)に属する微生物の発酵により得られうる。また、本発明は、式Iの化合物の全ての立体異性体及び全ての互変異性体、並びにそれらの薬理学的に許容される塩及び誘導体も含む。本発明はさらに、前記新規抗菌化合物の生成方法、並びに前記新規化合物の1つ以上を有効成分として含有する医薬組成物、並びに細菌感染を原因とする疾病の治療及び予防のための医学分野における前記医薬組成物の使用に関する。
[発明の背景]
現在、細菌の中で抗生物質耐性の劇的な増加が世界中で公衆衛生への深刻な脅威となっている。なかでも、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(メチシリン耐性スタフィロコッカス−アウレウス)(MRSA),ペニシリン耐性肺炎球菌(ペニシリン耐性ストレプトコッカス−ニューモニエ)(PRSP),バンコマイシン耐性腸球菌(バンコマイシン耐性エンテロコッカス)(VRE)(Clin.Microbiol.Infect.,2005,11,Supplement 3:22−28)及び多剤耐性(MDR)結核菌(マイコバクテリウム−ツベルクローシス)(Eur.Respir.J.,2002,Supplement 36,66S−77S)による感染症が特に懸念されている。
【0002】
ストレプトミセス−アズレウスから単離された抗生物質であるチオストレプトンは、ペニシリンと同一の一般的な抗生スペクトルを有する効果的な抗感染薬であることが報告されており、グラム陽性球菌感染症に対して使用されている(米国特許第2,982,689号)。
【0003】
ストレプトミセス−シオヤエンシスから単離された硫黄含有ペプチド抗生物質であるシオマイシンは、グラム陽性細菌及びマイコバクテリアに対して活性であり、グラム陰性菌に対する活性はほとんど又は全くないことが報告されている(The Journal Of Antibiotics,1969,364−368)。
【0004】
細菌、特に例えばMRSA、VRE、及び結核菌等の多剤耐性細菌に感染する危険性のある患者又は感染している患者の治療薬として使用可能な新しい化合物を発見する必要性がある。
[発明の概要]
本発明は、式Iの新規化合物に関する。
【0005】
また、本発明は、前記ストレプトミセス種(PM0626271/MTCC 5447)に属する微生物の発酵ブロスから単離された、式Iの新規精製化合物に関する。
また、本発明は、式Iの化合物の全ての立体異性体及び全ての互変異性体、並びに、それらの薬理学的に許容される塩及びそれらの誘導体に関する。
【0006】
式Iの化合物、及び式Iの化合物の異性体、それらの薬理学的に許容される塩及びそれらの誘導体は、抗菌活性を有し、細菌、具体的にはMRSA、VRE及び結核菌等の多剤耐性細菌を原因とする疾病の治療又は予防に有用である。
【0007】
本発明は、さらに、式Iの新規化合物、式Iの新規化合物の異性体、それらの薬理学的に許容される塩、又はそれらの誘導体の1つ以上を、細菌、具体的にはMRSA、VRE、及び結核菌などの多剤耐性細菌を原因とする疾病の治療のための有効成分として含む医薬組成物に関する。
【0008】
本発明は、さらに、ストレプトミセス種(PM0626271/MTCC 5447)に属する微生物からの式Iの化合物及び/又は式Iの化合物の異性体の生成方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】CDCl3:CD3OD(4:1)での式I(a)の化合物の1H NMRスペクトル(500MHz;機器 Bruker社)を示している。
【図2】CDCl3:CD3OD(4:1)での式I(a)の化合物の13C NMRスペクトル(75MHz;機器 Bruker社)を示している。
【図3】CDCl3:CD3OD(4:1)での式I(b)の化合物の1H NMRスペクトル(500MHz;機器 Bruker社)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔発明の詳細な説明〕
本発明を詳細に説明する前に、本発明は特定の実施形態に限定されないことを理解すべきである。また、本明細書中で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明することを目的とし、制限されることを意図しないことを理解すべきである。
【0011】
本明細書及び本特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈から明らかに単数形でないことが示されていなければ、複数のものを含む。
特に定めのない限り、本明細書で使用する全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する当業者によって一般的に理解されているものと同一の意味を有する。
【0012】
本明細書及び本特許請求の範囲で使用される場合、「誘導体」という用語は、例えば1つの原子を別の原子又は原子団に置き換える場合に、類似化合物から誘導される化合物、又は、別の化合物から生じることが想像できる化合物を意味する。
【0013】
本明細書及び本特許請求の範囲で使用される場合、「立体異性体」という用語は、原子の空間的な配向のみが異なる個々の化合物の全ての異性体を意味する。「立体異性体」は、鏡像異性体(光学異性体)、鏡像異性体の混合物(ラセミ化合物、ラセミ混合物)、幾何学的(シス/トランス又はシン/アンチ又はE/Z)異性体、及び相互に鏡像ではない2つ以上のキラル中心を有する化合物の異性体(ジアステレオ異性体)が挙げられる。本発明の化合物は、非対称中心を有してもよく、ラセミ化合物、ラセミ混合物、個々のジアステレオ異性体、又は光学異性体として生じてもよく、又は、幾何学的異性体として存在してもよい。それらの化合物の全ての異性体型は本発明に包含される。
【0014】
本明細書及び本特許請求の範囲で使用される場合、「互変異性体」という用語は、1つ(又はそれ以上)の可動原子の位置と電子分布のみが互いに異なる2つ(又はそれ以上)の化合物の共存、例えばケト−エノール互変異性体やイミン−エナミン互変異性体を意味する。
【0015】
本明細書及び本特許請求の範囲で使用される場合、「発酵ブロス」という用語は、微生物の生育する間に微生物によって生成される化合物、及び消費されていない栄養素も含有する栄養培地中において微生物培養の懸濁液を意味する。
【0016】
本明細書及び本特許請求の範囲で使用される場合、「突然変異体」という用語は、野生型の代替的表現型である突然変異を保有する有機体又は細胞を意味する。
本明細書及び本特許請求の範囲で使用される場合、「異型」という用語は、当該種の任意の標準型と異なることがすぐ分かる個々の有機体を意味する。
【0017】
式Iの新規化合物は、構造に関して次式で表される。
【0018】
【化1】

【0019】
式I(a)の新規化合物の分子式は、C718319185(分子量1649.5)である。式I(b)の新規化合物の分子式は、C718519185(分子量1651.5)である。式I(a)及び式I(b)の新規化合物は、本明細書中において以下に説明する例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量スペクトル(MS)、赤外線(IR)及び核磁気共鳴(NMR)の分光学的データなどの物理化学的及びスペクトル的性質の任意の1つ以上によって特徴づけられ得る。
【0020】
式I(a)及び式I(b)の新規化合物の構造の解明、及び、式I(a)及び式I(b)の完全な特徴づけは、HPLC、高解像度MS(HRMS)、IR及びNMR分光学的データによって行われる。式I(a)及び式I(b)の化合物は、例えばMRSA、VRE、及び結核菌などの細菌、具体的には多剤耐性細菌に対して有効な新規抗生物質である。式I(a)及び式I(b)の化合物は、これまで報告されてこなかった構造を有する。
【0021】
式I(a)及びI(b)の化合物の生成のために使用され得る微生物は、南極区のシルマッヒャー・オアシス(Schirmacher Oasis)から収集した土壌サンプルから単離された、ストレプトミセス種(PM0626271/MTCC 5447)の菌株であり、本明細書では以下、培養物No.PM0626271と呼ぶ)。
【0022】
本発明は、さらに、培養物No.PM0626271から式I(a)及び式I(b)の化合物の生成のための方法を提供する。培養物No.PM0626271から式I(a)及び式I(b)の化合物の生成のための方法は、1つ以上の炭素源及び1つ以上の窒素源及び所望により栄養無機塩及び/又は微量元素を含有する栄養培地中において、液内好気条件下で培養物No.PM0626271を培養する工程と、前記発酵ブロスから式I(a)及び式I(b)の化合物を単離する工程と、関連技術で一般的に使用される精製手順を使用して式I(a)及び式I(b)の化合物を精製する工程と、を含む。
【0023】
式I(a)及び式I(b)の化合物の産生株である培養物No.PM0626271の予備的確認は、コロニー形態、湿式マウント観察、及びグラム染色反応の試験によって行われた。単離した培養物No.PM0626271の菌株の顕微鏡調査は、寒天1.5%を含有する放線菌単離用寒天(AS−AIA;実施例にて詳述する)上で実行され、観察は、1、2及び3日間、25℃でインキュベーションして行われた。
【0024】
寒天1.5%を含有するAS−AIA上での生育は、白色の胞子形成、薄黄色の基底菌糸、わずかに上昇した外観、拡散性色素の不在、及び裏側の暗い淡黄色を伴って直径1mmのコロニーとして発現する。位相差光学顕微鏡検査で、胞子形成された先端に薄い菌糸の波形の絡みが400倍の倍率で観察される。コロニーはグラム陽性である。遊離胞子は非運動性である。観察された形態により、この有機体はストレプトミセス属の1つに分類される。
【0025】
培養物No.PM0626271は、世界知的所有権機関(WIPO)が承認した国際寄託当局(International Depository Authority(IDA))である、インドのセクター 39−A,チャンディガル−160036(Sector 39−A,Chandigarh−160036)に所在する微生物工学研究所(Institute of Microbial Technology)の微生物タイプ培養物コレクション(Microbial Type Culture Collection(MTCC))に寄託され、受託番号MTCC 5447が与えられた。
【0026】
本明細書に記載された特定の微生物に加えて、例えばX線、紫外線等を含む化学的又は物理的突然変異誘発物質を使用することにより生成されるような突然変異体や、分子生物学技術により遺伝子構造が変形された有機体を培養して、式I(a)及び式I(b)の化合物を生成するために培養し得ることも理解すべきである。
【0027】
本発明の化合物を生成可能な好適な突然変異体及び異型のスクリーニングは、HPLC及び/又は発酵ブロス中に蓄積された活性化合物の生物活性の決定により、例えば化合物の抗菌活性を試験することにより、確認することができる。
【0028】
式I(a)及び式I(b)の化合物を生成する培養物No.PM0626271の単離及び培養に使用される培地及び/又は培養液は、好ましくは、炭素源、窒素源、及び栄養無機塩を含有する。前記炭素源は、例えば、デンプン、グルコース、ショ糖、デキストリン、果糖、糖蜜、グリセロール、乳糖、又はガラクトースの1つ以上である。好ましい炭素源は、可溶性デンプン及びグルコースである。前記窒素源は、例えば、大豆ミール、落花生ミール、酵母エキス、牛肉エキス、ペプトン、麦芽エキス、コーンスティープリカー、ゼラチン、又はカザミノ酸の1つ以上である。好ましい窒素源はペプトン及び酵母エキスである。前記栄養無機塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化第二鉄、塩化ストロンチウム、塩化コバルト、臭化カリウム、フッ化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硫酸第一鉄、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、クエン酸第二鉄、ホウ酸、又は微量食塩水の1つ以上である。これらのうちで、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、及び塩化マグネシウムが好ましい。
【0029】
培養物No.PM0626271の培養の維持は、温度22℃〜36℃及びpH約7.5〜8.0で行われ得る。典型的には、培養物No.PM0626271は、25℃〜27℃及びpH約7.4〜7.8で維持される。十分に生育した培養液は、冷蔵庫内で4℃〜8℃で保存され得る。
【0030】
培養物No.PM0626271の種培養は、温度25℃〜36℃及びpH約7.5〜8.0で66時間〜75時間、200rpm(毎分回転数)〜280rpmで行われ得る。典型的には、培養物No.PM0626271の種を29℃〜31℃及びpH約7.4〜7.8で72時間、230rpm〜250rpmで培養する。
【0031】
式I(a)及び式I(b)の化合物の生成は、温度26℃〜36℃及びpH約6.5〜8.5で24時間〜96時間、60rpm〜140rpm、及び100lpm(リットル/分)〜200lpmの通気での発酵によって、培養物No.PM0626271を培養することにより行われ得る。典型的には、培養物No.PM0626271は、30℃〜32℃及びpH7.4〜7.8で40時間〜96時間、90rpm及び通気110lpmで培養される。
【0032】
式I(a)及び式I(b)の化合物の生成を、好ましくは液内好気条件下で、例えば振盪フラスコ内、並びに実験室用発酵槽内において、本明細書に記載された条件下の好適な栄養培地(nutrient broth)中で、培養物No.PM0626271を培養することにより実施することができる。式I(a)及び式I(b)の化合物の発酵及び生成の進行を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、及び周知の微生物寒天平板希釈アッセイ法に従ってブドウ球菌種及び/又は腸球菌種に対する発酵ブロスの生物活性を測定することによって、検出することができる。好ましい培養物は、文献にて報告されているβ−ラクタム抗生物質であるメチシリンに耐性の菌株である黄色ブドウ球菌 E710(スタフィロコッカス−アウレウスE710)と、バンコマイシンに耐性の発酵乳酸球菌R2(エンテロコッカス・ヘシュウムR2)(VRE)である。得られた発酵ブロスにおいて、式I(a)及び式I(b)の化合物は、培養物濾液中及び細胞集団中に存在し、溶媒抽出及びカラムクロマトグラフィーのような周知の分離技術を使用して単離することができる。従って、式I(a)及び式I(b)の化合物は、石油エーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、ジエチルエーテル、又はブタノールなどの水不混和性溶媒を用いたpH約5〜9での抽出により、又は「ダイヤイオンHP−20(登録商標)」(日本の三菱化学株式会社製)、「Amberlite XAD(登録商標)」(米国のローム&ハース社(Rohm&Haas Industries U.S.A.)製)、活性炭などのポリマー樹脂を使用した疎水性相互作用クロマトグラフィーにより、又はpH5〜9でのイオン交換クロマトグラフィーにより、培養物濾液から回収することができる。活性物質は、メタノール、アセトン、アセトニトリル、n−プロパノール、もしくはイソプロパノールなどの水混和性溶媒、又は石油エーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチルもしくはブタノールなどの水不混和性溶媒を用いた抽出により、細胞集団から回収することができる。1つのその他のオプションとして、石油エーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、メタノール、アセトン、アセトニトリル、n−プロパノール、イソプロパノール、又はブタノールから選択される溶媒を用いてブロス全体を抽出する。典型的には、活性物質は、ブロス全体から酢酸エチルを用いて抽出される。前記抽出物の濃縮及び凍結乾燥により、活性原料が得られる。
【0033】
本発明の式I(a)及び式I(b)の化合物は、次の技術のいずれかを使用した分画により前記活性原料から回収することができる:順相クロマトグラフィー(固定相としてアルミナ又はシリカゲルを使用;石油エーテル、酢酸エチル、ジクロロメタン、アセトン、クロロホルム、メタノール、又はこれらの組み合わせなどの溶出液);逆相クロマトグラフィー(固定相としてジメチルオクタデシルシリルシリカゲル(RP−18)又はジメチルオクチルシリルシリカゲル(RP−8)などの逆相シリカゲルを使用;水、緩衝剤[例えば、リン酸、アセテート、クエン酸(pH2〜8)]、及び有機溶媒(例えば、メタノール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、又はこれらの溶媒の組み合わせ)などの溶出液);ゲル透過クロマトグラフィー(メタノール、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、又はこれらの組み合わせなどの溶媒中のSephadex LH−20(登録商標)(ファルマシア化学工業(Pharmacia Chemical Industries),スウェーデン)、TSKgel(登録商標)トヨパールHW(TosoHaas,東ソー株式会社,日本)、又は水中のSephadex(登録商標)G−10及びG−25などの樹脂を使用);又は向流クロマトグラフィー(水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、石油エーテル、ベンゼン、及びトルエンなどの2種以上の溶媒からなる2相溶出システムを使用)。これらの技術は、繰り返し使用され得るし、単独で又は組み合わせて使用され得る。典型的な方法は、シリカゲルを使用した順相のクロマトグラフィーである。
【0034】
式I(a)及び式I(b)の化合物及び式I(a)及び式I(b)の立体異性体は、本発明によって考えられる全てのそれらの薬理学的に許容される塩及び誘導体に変換することができる。
【0035】
式I(a)及び式I(b)化合物の塩は、当業者に周知の標準的な手順により調製することができる。例えば、塩酸塩や硫酸塩のような塩は、式I(a)及び式I(b)の化合物及び式I(a)及び式I(b)の化合物の異性体を、例えば塩酸や硫酸のような好適な酸で処理することにより調製することができる。
【0036】
式I(a)及び式I(b)の化合物は、幅広いバクテリア菌株に対して抗菌活性を有する。また、式I(a)及び式I(b)の化合物は、結核菌H37RvなどのMDR結核菌株;S(ストレプトマイシン)、H(イソニアジドヒドラジン又はイソニコチニルヒドラジン)、R(リファンピシン)及びE(エタンブトール)に耐性の結核菌臨床単離株;及びS、H、R及びEに過敏の結核菌臨床分離株に対して、抗ミコバクテリア活性も有する。
【0037】
式I(a)及び式I(b)の化合物、式I(a)及び式I(b)の化合物の立体異性体及びそれらの薬学的に許容可能な塩の1つ以上を、単独で又は一緒に、薬剤として、及び医薬組成物の形態で、ヒトを含む哺乳類などの動物に投与することができる。式I(a)及び式I(b)の化合物、式I(a)及び式I(b)の化合物の立体異性体及びそれらの薬学的に許容可能な塩の1つ以上を、単独で又は一緒に、細菌感染の危険性がある患者に予防的に投与することができる。患者は、病院内などの医療環境又は細菌が存在し得るその他の環境で細菌にさらされ得る人であってもよい。
【0038】
従って、本発明は、薬剤として使用のための式I(a)及び式I(b)の化合物、式I(a)及び式I(b)の化合物の立体異性体、及びそれらの薬理学的に許容される塩、並びに抗菌活性を有する薬剤の生成のための、式I(a)及び式I(b)の化合物、式I(a)及び式I(b)の化合物の立体異性体、及びそれらの薬理学的に許容される塩の使用にも関する。
【0039】
本発明は、さらに、式I(a)及び式I(b)の化合物及び/又は式I(a)及び式I(b)の化合物の立体異性体及び/又はそれらの1つ以上の薬理学的に許容される塩及び/又はそれらの誘導体の1つ以上の有効量を、細菌感染の予防又は治療に有用な少なくとも1つの薬理学的に許容される賦形剤又は担体とともに含有する医薬組成物に関する。
【0040】
薬剤における有効成分としての式I(a)及び式I(b)の化合物、又は式I(a)及び式I(b)の化合物の立体異性体、又は当該薬理学的に許容される塩あるいは当該誘導体の有効量は、通常、約0.01mg〜1000mgである。
【0041】
また、本発明は、式I(a)及び式I(b)の化合物及び/又は式I(a)及び式I(b)の化合物の立体異性体及び/又は1つ以上のそれらの薬学的に許容可能な塩の1つ以上の有効量を、それを必要とする哺乳類に投与することを含む細菌感染を治療又は予防する方法に関する。
【0042】
また、本発明は、細菌感染を原因とする疾病を治療又は予防するために、式I(a)及び式I(b)の化合物及び/又は式I(a)及び式I(b)の化合物の立体異性体及び/又は1つ以上のそれらの薬学的に許容可能な塩の1つ以上を含有する薬剤の生成方法に関する。
【0043】
本発明の化合物は、抗菌剤として特に有用である。従って、本発明は、細菌感染を原因とする疾病を予防又は治療する薬剤の生成のために、式I(a)及び式I(b)の化合物及び/又は式I(a)及び式I(b)の化合物の立体異性体及び/又は1つ以上のそれらの薬理学的に許容される塩及び/又はそれらの誘導体の1つ以上の使用に関する。
【0044】
治療のために本発明の化合物が使用される細菌感染は、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、腸球菌種、バチルス種、又はミコバクテリア種に属する細菌によって引き起こされ得る。ブドウ球菌種に属する細菌は、メチシリン耐性又はバンコマイシン耐性であってもよい。腸球菌種に属する細菌は、バンコマイシン耐性であってもよい。ミコバクテリア種に属する細菌は、多剤耐性であってもよい。
【0045】
「ブドウ球菌種」という用語は、顕微鏡で観察したときにブドウ状クラスターの外観を呈し、血液寒天平板で生育したときに大きな円形の明るい黄色のコロニーに見え、多くの場合β−溶血性を示す、グラム陽性細菌を意味する。ブドウ球菌種としては、スタフィロコッカス−アウレウスが挙げられる。
【0046】
「連鎖球菌種」という用語は、球状のグラム陽性細菌属であり、ファーミキューテス門の1つであることを意味する。連鎖球菌は乳酸菌である。連鎖球菌種としては、S.ヘモリティクス(S.hemolyticus)、S.ミティス(S.mitis)、S.サリバリウス(S.salivarius)、S.ニューモニエ(S.pneumoniae)などの細菌が挙げられる。連鎖球菌種は、髄膜炎、細菌性肺炎、心内膜炎、丹毒及び壊疽性筋膜炎(「肉食性」細菌感染)などの感染症に関与している。
【0047】
「腸球菌種」という用語は、ファーミキューテス門の乳酸菌属を意味する。腸球菌種は、多くの場合、対で生じるグラム陽性球菌(例えば肺炎双球菌などの双球菌)である。腸球菌は、通性嫌気性有機体である。
【0048】
「バチルス種」という用語は、周毛性鞭毛により運動性を有し、B.アントラシス(B.anthracis)、B.サブチリス(B.subtilis)など好気性であるか、又はクロストリジウム属の一種(Clostridium spp.)、例えば、C.ディフィシル(C.difficile)などの嫌気性である、多数の多様な棒状のグラム陽性細菌を意味する。これらのバチルス種は、ファーミキューテス門に属する。
【0049】
「ミコバクテリア種」という用語は、放線菌(actinomyces)と関係のあるグラム陽性で非運動性の多形性桿菌を意味する。ヒトにおける結核は、結核菌によって引き起こされる。MDR−TB(多剤耐性結核)とは、少なくとも2つの第一選択のTB薬物であるイソニアジド及びリファンピシンに対して耐性のある結核の菌株を表す。
【0050】
本発明の化合物は、経口的に、経鼻的に、局所的に、皮下など非経口的に、筋肉内に、静脈内に、又はその他の投与形態により、投与することができる。
式I(a)及び式I(b)の化合物又は式I(a)及び式I(b)の化合物の立体異性体又はそれらの薬理学的に許容される塩又はそれらの誘導体の1つ以上を含有する医薬組成物は、その他の薬理学的に許容される賦形剤又は担体を任意に含むとともに、例えば湿潤剤、界面活性剤などの可溶化剤、溶媒、等張化剤、充填剤、着色剤、マスキング香料、潤滑剤、崩壊剤、希釈剤、結合剤、可塑剤、乳化剤、軟膏基剤、皮膚軟化剤、増粘剤、ポリマー、脂質、油、共溶媒、錯化剤、又は緩衝物質などの薬理学的に許容される賦形剤及び/又は担体の1つ以上を活性化合物と混合し、及びこの混合物を好適な薬剤形態、例えば錠剤、コーティングされた錠剤、カプセル剤、粒剤、散剤、クリーム、軟膏、ゲル、シロップ剤、エマルジョン、懸濁液、又は非経口的投与に使用される注射に好適な溶液に変換することにより、調製することができる。
【0051】
記述され得る賦形剤及び/又は担体の例は、クロモフォア、ポロキサマー、塩化ベンザルコニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ブドウ糖、グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、デンプン、デキストリン、乳糖、セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、タルク、寒天、鉱油、動物油、植物油、有機ワックス及び無機質ワックス、パラフィン、ゲル、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、ジメチルアセトアミド、エタノール、ポリグリコール、tween 80、solutol HS 15、水及び生理食塩水である。また、溶媒又は希釈剤を用いることなく、好適な形態で、例えばカプセル剤で、活性物質を投与することも可能である。
【0052】
慣習に従い、ある特定の場合に最適な生薬製剤及び投与方法並びに用量範囲は、治療する種や、それぞれの条件又は病気の状態に依存し、当該技術分野において周知の方法を用いて最適化することができる。平均して、患者一人の活性化合物の1日の投与量は、1kg当たり0.0005mg〜50mg、典型的には1kg当たり0.001mg〜20mgである。
【0053】
以下は、本発明の例示的実施例として提供するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
(実施例1)
南極区から収集した土壌からの培養物No.PM0626271の単離
a)単離培地の組成:
変更された人工海水寒天:ペプトン1.5g、酵母エキス0.5g、塩化第二鉄0.007g、1.0L水(750mL人工海水+250mL脱塩水)、寒天粉末15.0g、最終pH(25℃)7.4〜7.8。
【0054】
変更された人工海水の組成:塩化ナトリウム24.6g、塩化カリウム0.67g、塩化カルシウム・2H2O 1.36g、硫酸マグネシウム・7H2O 6.29g、塩化マグネシウム・6H2O 4.66g、炭酸水素ナトリウム0.18g、脱塩水1.0L、最終pH(25℃)7.8〜8.2。
【0055】
b)手順:
南極大陸のシルマッヒャー・オアシス(Schirmacher Oasis)地域から、表面レベルの土壌を収集し、ピラマル・ライフ・サイエンシーズ・リミテッド(Piramal Life Sciences Limited)ゴレガオン(Goregaon),ムンバイ(Mumbai),インドまでの旅程中、−20℃で保存した。土壌サンプルを−20℃〜−22℃で保存し、その後微生物を単離するために室温(25±2℃)まで解凍した。100mL滅菌フラスコ内で、土壌サンプル(約1g)を無菌の1%ペプトン水25mL中に懸濁した。このフラスコを30秒間ボルテックスした。10-5までの段階的な希釈液を無菌の1%ペプトン水で調製した。10-5希釈液の100μLを変更された人工海水寒天の表面に広げた。このプレートをコロニーが観察されるまで室温(25±2℃)でインキュベートした。1ヶ月半インキュベートした後、この培地上に現れたコロニーを、75%人工海水中で調製した放線菌単離用寒天[Hi Media]を含有するペトリ皿に画線した[Accumix(商標)](AS−AIA)。この単離株を精製し、培養物IDNo.PM0626271が提供された。このようにして、生育中の微生物の中から単一の単離株として、培養物No.PM0626271を単離した。
【0056】
(実施例2)
培養物No.PM0626271の精製
a)精製培地(寒天1.5%で寒天化した放線菌単離用寒天)の組成:
グリセロール5.0mL、カゼイン酸ナトリウム2.0g、L−アスパラギン0.1g、プロピオン酸ナトリウム4.0g、リン酸二カリウム0.5g、硫酸マグネシウム0.1g、硫酸第一鉄0.001g、1.0L水(750mL人工海水+250mL脱塩水)、寒天粉末15.0g、最終pH(25℃)7.4〜7.8。
【0057】
人工海水の組成:塩化ナトリウム24.6g、塩化カリウム0.67g、塩化カルシウム・2H2O 1.36g、硫酸マグネシウム・7H2O 6.29g、塩化マグネシウム・6H2O 4.66g、炭酸水素ナトリウム0.18g、脱塩水1.0L、最終pH(25℃)7.8〜8.2。
【0058】
b)手順:
放線菌単離用寒天(人工海水塩75%を含有)のペトリ皿上に培養物No.PM0626271を画線した。このペトリ皿を10日間25℃でインキュベートした。このペトリ皿から単離したコロニーの1つを、75%人工海水中で調製した放線菌単離用寒天の新鮮なスラントに移した。このスラントを10日間25℃でインキュベートした。
【0059】
(実施例3)
生産株−培養物No.PM0626271の維持
a)培地(放線菌単離用寒天)の組成:
グリセロール5.0mL、カゼイン酸ナトリウム2.0g、L−アスパラギン0.1g、プロピオン酸ナトリウム4.0g、リン酸二カリウム0.5g、硫酸マグネシウム0.1g、硫酸第一鉄0.001g、1.0L水(750mL人工海水+250mL脱塩水)、寒天粉末15.0g、最終pH(25℃)7.4〜7.8。
【0060】
人工海水の組成:塩化ナトリウム24.6g、塩化カリウム0.67g、塩化カルシウム・2H2O 1.36g、硫酸マグネシウム・7H2O 6.29g、塩化マグネシウム・6H2O 4.66g、炭酸水素ナトリウム0.18g、脱塩水1.0L、最終pH(25℃)7.8〜8.2。
【0061】
b)加熱により培地及び人口海水の成分を完全に溶解させた後、得られた溶液を試験管に分注し、121℃で30分間滅菌した。この試験管を冷却し、傾斜位置で固化させた。ワイヤーループを使って寒天スラントに生育した培養物No.PM0626271を画線し、良好な生育が観察されるまで27℃〜29℃でインキュベートした。十分に生育した培養物を冷蔵庫内で4℃〜8℃で保存した。
【0062】
(実施例4)
振盪フラスコ内での培養物No.PM0626271の発酵
a)種培地[AS−274(1)]の組成:
グルコース15g、コーンスティープリカー5g、ペプトン7.5g、酵母エキス7.5g、炭酸カルシウム2.0g、塩化ナトリウム5.0g、750mL人工海水及び250mL脱塩水で容積を形成。
【0063】
b)上記の培地を500mL容量の三角フラスコ内に40mLの量で分注し、121℃で30分間オートクレーブした。これらのフラスコを室温(25±2℃)まで冷却し、スラントで十分に生育した生産株(培養物No.PM0626271)の1ループ分を各フラスコに接種し、回転式振盪器上で72時間230rpm〜250rpm及び30℃(±1℃)で振盪させ、種培養物を得た。
【0064】
c)生産培地[AS36P(1)]の組成:
可溶性デンプン20g、グルコース15g、酵母エキス2g、ペプトン3g、炭酸カルシウム2g、硫酸アンモニウム0.5g、コーンスティープリカー2g、塩化ナトリウム2g、リン酸マグネシウム5g、1g/Lの原液(stock)から塩化コバルト1mL/L、微量食塩水1mL/L、75%人工海水及び25%脱塩水を使用して1Lの容積を形成。
【0065】
d)500mL容量の三角フラスコ中の生産培地40mLを、121℃で30分間オートクレーブし、29℃〜30℃まで冷却し、実施例4bに記載した種培養物の5%(v/v)を接種した。
【0066】
e)発酵パラメーター:
生産フラスコを振盪器上で29℃及び220rpmにて96時間インキュベートした。生産フラスコを回収し、29℃で1時間の振盪条件下で等容積のメタノールで各培地フラスコから全ブロスを抽出し、3500rpmで30分間遠心分離にかけた。その上清は活性のモニタリングのために、抗菌寒天ウェル拡散アッセイに使用された。
【0067】
前記抗菌寒天ウェル拡散法を使用してスタフィロコッカス−アウレウスE710(MRSA菌株)及び/又はエンテロコッカス・ヘシュウムR2(VRE)に対する生物活性を試験することにより、発酵ブロス内の式I(a)及び式I(b)の化合物の生成を決定した。前記発酵ブロスの回収pHは7.0〜8.0であった。前記発酵ブロスを回収し、全ブロスは、式I(a)及び式I(b)の化合物の単離及び精製に使用された。
【0068】
(実施例5)
発酵のための振盪フラスコ内での種培養物の調製
a)培地[AS−274(1)]の組成:
グルコース15g、コーンスティープリカー5g、ペプトン7.5g、酵母エキス7.5g、炭酸カルシウム2.0g、塩化ナトリウム5.0g、人工海水750mL及び脱塩水250mLで容積を形成。
【0069】
b)上記培地を200mLずつ1000mL三角フラスコに分注し、121℃で30分間オートクレーブした。このフラスコを室温(25±2℃)まで冷却し、各フラスコにスラント上の1ループ分のウェル成長生産株(PM0626271)を接種し、種培養物を得るために回転式振盪器で230rpm〜250rpm、70時間〜74時間、29℃〜30℃の振盪条件で振盪した。
【0070】
(実施例6)
発酵槽内での培養物No.PM0626271の培養
a)生産培地の組成:
人工海水(人工海水塩28.32g)(75%)、可溶性デンプン20g、グルコース15g、酵母エキス2g、ペプトン3g、炭酸カルシウム2g、硫酸アンモニウム0.05g、コーンスティープリカー2g、塩化ナトリウム2g、リン酸マグネシウム5g、塩化コバルト(塩化コバルト1g、脱塩水1.0L)1mL/L、微量食塩水(硫酸銅7g、硫酸第一鉄1g、塩化マンガン8g、硫酸亜鉛2g、脱塩水1.0L)1mL/L、脱塩水1.0L、pH6.5〜7.5(滅菌前)。
【0071】
b)150L発酵槽内の100Lの生産培地を消泡剤としてのデスモフェン30mLとともにインサイチュ(そのままの状態)で30分間、121℃で滅菌し、29℃〜30℃まで冷却し、上記(実施例5)から得られた種培養物2.5L〜3.5Lを接種した。
【0072】
c)発酵パラメーター:発酵は、温度29℃〜30℃、攪拌100rpm、通気60lpmで行われ、70時間〜74時間で回収した。前記寒天ウェル拡散法を使用してスタフィロコッカス−アウレウスE710(MRSA菌株)及び/又はエンテロコッカス・ヘシュウムR2(VRE)に対する生物活性を試験することにより、発酵ブロス内の式I(a)及び式I(b)の化合物の生成を定性的に検出した。前記発酵ブロスの回収pHは7.5〜8.0であった。回収後、全ブロスを溶媒抽出した。
【0073】
(実施例7)
式I(a)及び式I(b)の化合物の単離及び精製
全ブロス(10Lバッチ)を酢酸エチルで抽出した(1:1)。有機層と水層を分離した。有機層を処理して溶媒を蒸発させ、粗酢酸エチル抽出物(1.5g)を得た。この粗抽出物をさらにフラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル、30g、溶媒:メタノール/クロロホルム段階勾配、流量:15mL/分)で処理した。クロロホルム中メタノール1%〜メタノール5%を用いて溶出した活性化合物を濃縮し、半純粋(semipure)化合物(250mg)を得た。順相の分取HPLCを繰り返すことによりさらに精製を行った。
【0074】
分取HPLC条件:
カラム:Eurospherシリカ(10μ、20×250mm)
溶出液:メタノール:クロロホルム(5:95)
流速:20mL/分
検出(UV):245nm
保持時間:式I(a)の化合物(5〜6分)、
式I(b)の化合物(8〜10分)
E.ヘシュウムR2及び/又はS.アウレウス3066に対するバイオアッセイ及び/又は分析的HPLCを用い、各フラクションの純度を調べた。式I(a)及び式I(b)の化合物を含有する溶出液を減圧下にて貯留及び濃縮し、溶媒を除去して式I(a)の化合物(40mg)及び式I(b)の化合物(3mg)を得た。
【0075】
分析的HPLCの条件:
カラム:Eurospher RP−18、(3μ、4.6×125mm)
溶媒系:勾配(水に対して15分でアセトニトリル0%から100%、続いて5分間アセトニトリル100%)
流速:1mL/分
検出(UV):245nm
保持時間:式I(a)の化合物(12〜13分)、
及び、式I(b)の化合物(11〜12分)
A.式I(a)の化合物の物理的及びスペクトル的性質:
外観:白色粉末
融点:240℃(分解)
溶解度:クロロホルム、酢酸エチル、メタノールに可溶性及び水に不溶性
MS[HR−ESI(+)MS)]m/z:1650.4858(M+H)
分子量:1649.5
分子式:C718319185
IR(KBr):3386,2927,1648,1507,1206,756,666cm-1
1H NMR:表1及び図1を参照
13C NMR:表2及び図2を参照
B.式I(b)の化合物の物理的&スペクトル的性質:
外観:白色粉末
溶解度:クロロホルム、酢酸エチル、メタノールに可溶性、及び水に不溶性
MS[HR−ESI(+)MS)]m/z:1674.4787(M+Na)
分子量:1651.50
分子式:C718519185
1H NMR:表3及び図3を参照
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
式I(a)及び式I(b)の化合物の生物学的評価
インビトロ・アッセイ
(実施例8)
米国臨床検査標準化委員会(National Committee for Clinical Laboratory Standards)(2000)の指針「好気的に生長する細菌のための抗菌剤感受性試験希釈法−第5版:認定標準M7−A5.NCCLS,Wayne,ペンシルベニア州、米国(Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria that Grow Aerobically−Fifth Edition:Approved Standard M7−A5.NCCLS,Wayne,PA,USA)」に従ったマクロ−ブロス希釈法を使用して、バクテリア菌株に対する式I(a)及び式I(b)の化合物の最小阻止濃度(MIC)の決定により、インビトロ効力を設定した。特に特定のない限り、ミューラー−ヒントン(Mueller−Hinton)ブロスを抗菌剤感受性試験希釈法のための培養液として使用した。全てのインビトロ実験において、PM181104(PCT公開第WO2007119201号)を周知の基準として使用した。原液を調製するため、式I(a)及び式I(b)の化合物をクロロホルム(必要総容量の5%)中に溶解し、メタノール(必要総容量の95%)を使用して希釈した。
【0080】
結果:得られた結果は、表4及び表5に示されており、式I(a)及び式I(b)の化合物は細菌感染の治療において有用性を有することを実証している。
【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
表4及び表5で使用した略称
S:スタフィロコッカス
E:エンテロコッカス
(実施例9)
抗ミコバクテリア活性の評価
評価は、J.Clin.Microbiol.1999,37,1144に報告されているように行われた。
【0084】
マクファーランドNo.2標準(>5X107CFU/mLに対応)(Remel,Lenexa,Kan.)と同等の50μLの細胞(表6に記載)懸濁液を、式I(a)及び式I(b)の化合物(0.5μg/mL、5μg/mL及び10μg/mLで試験)を含む400μLのG7H9、及び、式I(a)及び式I(b)の化合物を含まない400μLのG7H9に添加し、37℃で72時間インキュベートした。インキュベート後、50μLの高力価のルシフェラーゼレポーターファージ(phAE129)及び40μLの0.1M塩化カルシウム(CaCl2)を全てのバイアル瓶に加え、これらを37℃で4時間インキュベートした。インキュベート後、100μLの混合物を各バイアル瓶から照度計キュベットに取り、同量の作動D−ルシフェリン溶液(クエン酸ナトリウム緩衝液0.05M中0.3mM、pH4.5)を加えた。ルミノメーター(Monolight 2010)内で10秒間の積分後、相対発光量(RLU)を測定した。
【0085】
サンプル毎に2回分の読取値を記録し、平均値を計算した。RLUの減少率を試験サンプル毎に計算し、対照と比較した。対照の平均RLUが1000未満の場合、この実験を繰り返した。活性の判定基準は、化合物の存在下でのRLU減少率が化合物不在の対照と比較して50パーセントで表される抗ミコバクテリア活性である。
【0086】
【表6】

【0087】
結論:式I(a)及び式I(b)の化合物は、TB(H37RV)の標準株及びMDR結核菌株[4つの標準抗生物質:S(ストレプトマイシン)、H(イソニアジド又はイソニコチニルヒドラジン)、R(リファンピシン)及びE(エタンブトール)に耐性]に対して活性である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I(a)又は式I(b)の化合物:
【化1】

あるいは、式I(a)又は式I(b)の化合物の立体異性体、あるいは、式I(a)又は式I(b)の化合物の互変異性体、あるいは、それらの薬理学的に許容される塩。
【請求項2】
前記化合物は、ストレプトミセス種(PM0626271/MTCC 5447)に属する微生物の発酵ブロスから単離された請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式I(a)の化合物、あるいは、式I(b)の化合物、あるいは、式I(a)又は式I(b)の化合物の立体異性体、あるいは、式I(a)又は式I(b)の化合物の互変異性体、あるいは、それらの薬理学的に許容される塩であって、
(i)式I(a)の化合物は、
(a)分子量1649.5、
(b)分子式C718319185
(c)図1に示す1H NMRスペクトル、及び
(d)図2に示す13C NMRスペクトル、
を特徴とし、
(ii)式I(b)の化合物は、
(a)分子量1651.5、
(b)分子式C718519185、及び
(c)図3に示す1H NMRスペクトル、
を特徴とする、式I(a)の化合物、あるいは、式I(b)の化合物、あるいは、式I(a)又は式I(b)の化合物の立体異性体、あるいは、式I(a)又は式I(b)の化合物の互変異性体、あるいは、それらの薬理学的に許容される塩。
【請求項4】
前記式I(a)及び式I(b)の化合物を前記発酵ブロス中で生成するために、前記微生物ストレプトミセス種(PM0626271/MTCC 5447)、又はその異型もしくは突然変異体の1つを、炭素源及び窒素源を含有する培養液中で、液内好気条件下で培養することを含む、請求項1又は請求項3に記載の式I(a)及び式I(b)の化合物を生成する方法。
【請求項5】
(a)前記微生物ストレプトミセス種(PM0626271/MTCC 5447)、又はその異型もしくはその突然変異体の1つを培養した後に得られる前記発酵ブロスから、前記式I(a)及び前記式I(b)の化合物の1つ以上を単離すること、及び
(b)前記式I(a)及び前記式I(b)の化合物の1つ以上を精製することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記式I(a)の化合物、あるいは、前記式I(b)の化合物、あるいは、前記式I(a)及び前記式I(b)の両方の化合物の1つ以上を、該薬理学的に許容される塩に変換する工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の化合物の1つ以上の有効量を、少なくとも1つの薬理学的に許容される賦形剤又は担体とともに含む、医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物は、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、粒剤、散剤、クリーム、軟膏、ゲル、エマルション、懸濁液、又は注射液の形態である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
細菌感染の予防又は治療のための請求項7又は請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記細菌感染は、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、腸球菌種、バチルス種、又はミコバクテリア種に属する細菌を原因とする、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記ブドウ球菌種に属する細菌は、メチシリン耐性、あるいは、バンコマイシン耐性、あるいは、メチシリン耐性及びバイコマイシン耐性の両方である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記腸球菌種に属する細菌は、バンコマイシン耐性である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記ミコバクテリア種に属する細菌は、多剤耐性である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
細菌感染の予防又は治療のための、請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の化合物の任意の1つ以上の使用。
【請求項15】
前記細菌感染は、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、腸球菌種、バチルス種、又はミコバクテリア種に属する細菌を原因とする、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記ブドウ球菌種に属する細菌は、メチシリン耐性、あるいは、バンコマイシン耐性、あるいは、メチシリン耐性及びバンコマイシン耐性の両方である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記腸球菌種に属する細菌は、バンコマイシン耐性である、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
前記ミコバクテリア種に属する細菌は、多剤耐性である、請求項15に記載の使用。
【請求項19】
細菌感染を原因とする疾病の予防又は治療のための薬剤の製造のための、請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の化合物の任意の1つ以上の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2013−503624(P2013−503624A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527433(P2012−527433)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053897
【国際公開番号】WO2011/027290
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(502435661)ピラマル・ライフ・サイエンシーズ・リミテッド (15)
【Fターム(参考)】