説明

抗生物質用即効型投薬形

本発明は、水性媒体に難湿潤性であるか及び(又は) 水性媒体に難溶性である、少なくとも1種の抗生物質、及びカラギーナン及びリン酸三カルシウムの組み合わせ、及び場合により少なくとも1種のショ糖エステルを含有する、多微粒子状医薬投薬形、及び場合により輸送液体と共に単回投与用可動バリヤ装置(mobile barrier device)を有する飲用ストロー 中に配置された、この投薬形を含む投薬システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性媒体に難湿潤性であるか及び(又は) 水性媒体に難溶性である、少なくとも1種の抗生物質、及びカラギーナン及びリン酸三カルシウムの組み合わせ、及び場合により少なくとも1種のショ糖エステルを含有する、好ましくは押出ペレットの形にある、多微粒子状医薬投薬形、及び好ましくは単回投与のための飲用ストロー 中に配置された、この投薬形を含む投薬システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの病原菌に対する抗生物質は開発されたが, その使用にあたりしばしば問題が起こる可能性がある。
【0003】
たとえば、多数の抗生物質は水性媒体中で低い溶解性を示す。すなわちこれらはその最高薬用量で、37℃でpH 1 〜7.5の水性媒体中で, 特に≦250 mlの対応する標準緩衝液中でほんの僅かしか溶解しないか又は全く溶解しない。 この際、この低い溶解性が小腸の環境の生理学的pH値に相当するpH値で生じる場合特に好ましくない。抗生物質は実際、小腸で出来るだけ速く利用されねばならない。というのはそこで抗生物質の吸収が主に行われるからである。したがって、多くの抗生物質は、可能な限り高いバイオアベイラビリティを得るために、溶液として又は懸濁液として投与されるのが好ましい。
【0004】
更に, 多数の抗生物質は格別苦い風味をしばしば有し、このことが、風味付けされているにも拘わらず、このような溶液又は懸濁液を患者、特に子供に嫌々ながらしか摂取されないことになる。
【0005】
その結果として, 通常数日にわたって持続する抗生物質による治療で, 治療を最後まで行うように患者をその気にさせるがますます困難になる。 したがって患者が医薬品の摂取に気が進まないことは、治療の時期尚早な終了をしばしばもたらす。このことは抗生物質に対して特に有害な影響、たとえば耐性の発生という結果を生じる。
【0006】
これらの投与形態のその他の欠点は、既成溶液又は懸濁液に比べて製造、輸送及び貯蔵を容易にするために、抗生物質が懸濁液用粉末として通常販売されることである。乾燥物質が、最初に投与される直前に懸濁液に変える。しかし, 調製された懸濁液は、しばしば冷蔵庫中に保存され、そして上述のように, 数日間にわたって摂取されねばならない。
【0007】
これは患者に対する別の不快感を意味する。というのは調製された懸濁液の貯蔵の間、フレーバーの段階的劣化が生じるうるか又は懸濁されたフラクションがより長い期間放置された場合懸濁されたフラクションが塊状になりうるからである。それによって不可欠な再懸濁及びそれと同時に投薬量精度に悪影響を与える。更に, しばしば懸濁液の不可欠な冷却は、抗生物質の問題のない摂取も制限する。
【0008】
これらの欠点を回避するために、発泡錠を懸濁液の調製に使用することもできる。この際、通常1個の錠剤は個々の薬用量に相当する。それにも拘わらずこのように新たに調製される溶液又は懸濁液は患者に苦い風味を与える。
【0009】
小袋(sachet)中に包装された顆粒, ペレット又はミイクロタブレット(これらは液体の助けをかりて通常嚥下されねばならない)の形にある乾燥抗生物質の摂取も問題がある。特に子供は、このような投薬形を摂取するのに問題がある。風味がニュートラル化されていない投薬形の場合, 抗生物質のうちの一部はすでに短時間以内に口中に放出され、そして不愉快な風味を引き起こす。
【0010】
乾燥調製物をこのような摂取において, 必要な薬用量全部を嚥下することも保証されないか又はあまりにも急速な嚥下によって、場合により 一時的なフレーバーマスキングだけ十分に有効であることも保証されない。
【0011】
このような問題を回避するために、 抗生物質が、輸送液体の助けをかりて患者に摂取される、好ましくは多微粒子状形態で飲用ストロー中に配置される、投薬形が開発された。この方法で、多微粒子状投薬形が800 μm以上でない粒子サイズを有する丸い, 球形ペレットの形で存在するのが特に有利である。というのはこのような粒子が患者の輸送液体の吸い込みによって苦もなく輸送され、それによって完全に摂取されうるからである。
【0012】
好ましくは子供の嚥下挙動の考慮下, 粒子の量及び質量は可能なかぎり小さく保つことに注意しなければならない。このことは多微粒子状投薬形の高い有効成分積載を不可欠なものにする。周知のように, 高い有効成分積載は、特に押出ペレットを用いて得られ、このペレットは更に所望の滑らかな, 好ましくは球形形状を可能にする。しかし、 この種の投薬形の1つの欠点は、通常の製造方法で必ず併用される助剤によって、投薬形が常に極めて小型構造を有し、したがって水又は水性媒体中で崩壊しないか、あるいは投薬形がせいぜい極めて徐々に崩壊するか又は一部しか崩壊しないことである。周知のように, これは、特に水性媒体に難湿潤性である 及び(又は) 水性媒体に難溶性である抗生物質の場合、有効成分の遅延された放出を引き起こす。これは、 この難湿潤性又は難溶解性が上述のように上部小腸の環境の生理学的pH値で生じる場合、特に当てはまる。結果として, 抗生物質の放出は、腸の下部に到達して初めてかなりの程度で生じることができる。
【0013】
しかし, 多くの抗生物質の場合, これは満足なバイオアベイラビリティを阻害する。というのはその吸収が小腸上部で主に生じるからである。投薬形のこの低い溶出速度及び同時に有効成分の遅延された放出は、公知の球形化剤, たとえば微結晶性セルロース, 低-置換されたヒドロキシプロピルセルロース, ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた場合,特に観察される。 この球形化剤は, 確かに所望の,すなわち球形の形にある、そして平滑な表面を有するペレット及び細い粒子サイズ分布を生じさせるが,有効成分の遅延された, 拡散-調節された放出を引き起こす。これは、特に抗生物質が水性媒体中で難溶性及び(又は) 難湿潤性である場合である。
【0014】
これは更に大きい程度で、上記の球形化剤を用いて製造された押出ペレットにおいても存在するコーティング(これは好ましくは耐唾液性及び(又は)耐胃液性であることができ、そして好ましくはフェレーバーニュートラル化に用いられる。)の溶解後に認められる。 コーティングのpH-依存溶解後でさえ, ペレットは前膨潤又は崩壊剤添加にかかわらず崩壊しないか又は極めて徐々に崩壊する。それによって抗生物質の放出は遅延され、そしてバイオアベイラビリティを制限する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の課題は、 水性媒体に難湿潤性であるか及び(又は) 水性媒体に難溶性である抗生物質の固形、多微粒子状投薬形であって、これは、特に小腸の生理学的pH値に相当する pH値を有する水性媒体中で速い溶出速度を示し、それゆえにいわゆる吸収窓(absorption window)で抗生物質の急速なバイオアベイラビリティを引き起こす、上記投薬形を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は、水性媒体に難湿潤性であるか及び(又は) 水性媒体に難溶性である、少なくとも1種の抗生物質、及びカラギーナン及びリン酸三カルシウムの組み合わせ、及び場合により少なくとも1種のショ糖エステルを含有する、好ましくは押出ペレットの形の,本発明による多微粒子状医薬投薬形の供給によって解決される。この際、上記投薬形は、pH値 6-7で 30 分以内に少なくとも85% の抗生物質を放出する。
【0017】
有効成分のこの速い溶出速度及び同時に実際上遅延されない放出は、"Guidance for Industry, Waiver of In Vivo Bioavailability and Bioequivalence Studies for Immediate-release Solid Oral Dosage based on a Biopharmaceutics Classification System, pages 1-3 / 7, published by U.S. Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research (CDER), August 2000, BP"に開示される、後記方法にしたがって測定される。
【0018】
微結晶性セルロースを用いて製造された公知の押出ペレット を 耐胃液性するか及び(又は) フレーバーニュートラルに仕上げる場合、この高い溶出速度は特に達成されない。というのは, フィルムコーティングが溶解するやいなや, このような投薬形の更なる遅延された崩壊が観察されるからである。 それによって小腸での放出は対応する非コーティングペレットに比べてさらに遅れ、その結果としてそのバイオアベイラビリティは損なわれる。
【0019】
したがって、本発明の投薬形が, たとえばフレーバーニュートラル化のために 、耐胃液性コーティング仕上げされていたとしても,小腸の生理学的pH値6-7でこのようなコーティングが溶解した後に速い溶解を示し、そして同時に水性媒体に難湿潤性であるか 及び(又は) 水性媒体に難溶性である抗生物質の少なくとも85%の放出を30分以内に生じさせることにますます驚かされる。
【0020】
したがって、本発明により仕上げられた投薬形は、特に、球形化された丸いペレットに変えることできる押出物として、製造することができる。したがって、可能な限り高い有効成分積載, 懸濁液に比べて少ないフレーバーニュートラル化の要求及び多少のコーティングの溶解後の pH値6-7での速い溶出速度の故に, 押出によって得られる、カラギーナン及びリン酸三カルシウムを含有する多微粒子状投薬形は本発明の投薬形として特に適する。
【0021】
本発明の投薬形は、投薬形の全重量に対して5 〜30 重量%のカラギーナン, 好ましくはカッパ-カラギーナンを含有するのが好ましい。
【0022】
本発明の投薬形中でリン酸三カルシウムとカラギーナンの重量比が、好ましくは1:1 〜1:10, 特に好ましくは 1:2〜1:6である。
【0023】
本発明の組成を有する投薬形は、好ましくは水性媒体に難湿潤性であるか及び(又は) 水性媒体に難溶性である抗生物質に適する。その難溶解性は上記刊行物 "Guidance for Industry"にしたがって定義され、そして分類される。この投薬形は、ペニシリン類, セファロスポリン類及びマクロライド類, 特に好ましくは アモキシリン, クラリスロマイシン, アズスロマイシン (一又は二水和物), セフィキシム, セフポドキシム 及び(又は) セフポドキシム プロキセチルを含む群からなる抗生物質に最適である。
【0024】
カラギーナン及びリン酸三カルシウムの組み合わせに加えて, 本発明の投薬形はさらに好ましくは助剤として、好ましくはHLB値10-16, 特に好ましくは13-15を有する、少なくとも1種のショ糖エステルを含有することができる。更に、本発明の投薬形は、助剤として増量剤, 結合剤, 滑剤, 染料又は保存剤を有する。
【0025】
押出ペレットのような本発明の投薬形は, 微結晶性セルロースを含有しないか又は別の球形化助剤、たとえば低-置換されたヒドロキシプロピルセルロース, ヒドロキシプロピルメチルセルロース, ヒドロキシプロピルセルロース , 粉末セルロース , カルボキシメチルセルロースナトリウム , ポリビニルピロリドンを含有する。但し、上記投薬形がまだコーティングを施されていない、すなわち押出ペレットのような非コーティング粒子中に上記助剤が存在しない場合である。
【0026】
好ましい実施態様において, 本発明の投薬形は少なくとも1種のコーティング, 特に好ましくは 耐胃液性及び(又は)フレーバーニュートラル化コーティングが施される。このコーティングは、コアをコーティングから隔てる保護コーティング上に好ましくは再度塗布されるものである。
【0027】
これらのコーティングは、コーティングの種類及び機能に応じて、投薬形の全重量に対して1〜50 重量%の量で塗布される。
【0028】
耐胃液性コーティングの材料として、好ましくは メタアクリル酸/アルキル(メタ)アクリレート コポリマー, 特に好ましくは 1:1 〜1:2 の比率を有するメタアクリル酸/メチルメタアクリレートのコポリマー、たとえばEudragit L(登録商標) 又はEudragit S(登録商標), 特に好ましくはメタアクリル酸/アクリル酸エチル1:1 のコポリマー、たとえばEudragit L55(登録商標),Eudragit L30D-55(登録商標)が適し、これらはpH値≧5.5で急速に溶解する。更に、当業者に周知であるセルロース又はシェラックを主体とするコーティングは, 耐胃液性コーティングとして施すことができる。 コーティングを有機又は水性媒体中で適当な溶液又は懸濁液を用いて施すことができ、この際水性媒体が好ましい。適する耐唾液性コーティングは、Eudragit E 又はEudragit EP0を主体とするコーティングであるのが好ましい。
【0029】
当業者にとって、公知の被覆材料に, 慣用の可塑剤、染料, 滑剤, たとえばタルク, ステアリン酸マグネシウム 及び(又は)モノステアリン酸グリセロールを添加すべきか又は添加することができることは周知である。
【0030】
本発明によれば, "胃液" とは胃液の本来の組成及び当業者に周知の人工胃液に類似する調製物(pH 1.2 -2)を意味する。同様に, "小腸で放出"とは、該当する薬局方に定義されているようにpH値 6-7, 好ましくはpH 6.4-6.8で、本来の小腸液中での放出も、小腸液に類似する調製物での放出も意味する。
【0031】
本発明の投薬形は、これらが高い溶出速度を示し、そして抗生物質の85%が場合により存在するコーティングが前もって溶解した後30分以内に放出される点で優れている 。この高い溶出速度は pH値6.4-6.8で生じるのが好ましい。
【0032】
このようなコーティングのpH-依存溶解期間は、適当な標準緩衝液中での簡単な予備試験によって測定することができる。
【0033】
本発明の投薬形は、出発物質を混合し, 粒状化し, 押出, 細分化し、ついで場合により成形し、 好ましくは球形化し, 場合により分級され、そして耐唾液性及び(又は) 耐胃液性又はフレーバーニュートラル化コーティングを場合により施すことによって製造される。
【0034】
しばしば低いpH値で改善された溶解性を示す抗生物質は、耐胃液性コーティングでコーティングされるのが好ましい。 というのはこのコーティングがフレーバーマスキングを投薬形の摂取の際に、たとえばコーラ又はフルーツジュースのような、好ましい飲料と共に飲用ストロー中で最適に保護するからである。
【0035】
当業者にとって、成分を同時に又は連続して混合物に添加することができることは周知である。同様に、混合は混合, 造粒及び押出を場合により同時に行うことができるような公知のミキサー又はグラニュレーターで行われる。造粒を湿式造粒(wet granulation)によって、 好ましくは水又は水性溶剤を用いて行う。適する溶剤は当業者に周知である。
【0036】
球形化, 押出及びコーティングを、それぞれ当業者に周知の装置中で行うことができる。流動床装置を好ましくはコーティングのために使用することができる。
【0037】
特に好ましい本発明の投薬形で, 多微粒子状投薬形は球形状押出ペレットの形で存在する。 国際特許公開(WO)第 03/079957号パンフレット, 国際特許公開(WO)第 2004/000202号パンフレット, 国際特許公開(WO)第2004/000264号パンフレットに記載されているような、好ましい可動バリヤ装置(mobile barrier device)を有する飲用ストローを含む投与システムにしたがって, この投薬形は好ましくは単回投与としてそのシステム中に配置され、そして患者に輸送液体と共に投与することができる。
【0038】
上記刊行物中の投与システムの記載は、参考としてこの明細書に援用され、そして本発明の一部であるとみなされる。
【0039】
本発明は、本発明の投薬形を含む、好ましくは単回投与としての投与システムも提供する。 上記システムは輸送液体を用いてヒト患者に投与するための少なくとも1個の、 好ましくは可動バリヤ装置を有する飲用ストローに配置されている。
【0040】
適する輸送液体は、粒子不含飲料, 好ましくは水性液体, たとえば水, 好ましくはミネラルウオーター, お茶, フルーツジュース, コカコーラ, 炭酸飲料のような水性液体であってこの場合たとえば押出ペレットのような 耐胃液性コーティングされた多微粒子状投薬形を使用したときに酸性pH値を有する輸送液体が好ましい。
【0041】
本発明の投薬形の有効成分放出又はその溶出速度は、"Guidance for Industry, Waiver of In Vivo Bioavailability and Bioequivalence Studies for Immediate-Release Solid Oral Dosage based on a Biopharmaceutics Classification System, pages 1-3 / 7, published by U.S. Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research (CDER), August 2000, BP"からの方法及び分類を用いて測定される。
【0042】
米国薬局方にしたがって、パドル攪拌器を有する放出装置をこのために使用し、そして放出媒体の37℃の温度で及び例に示した時間及び例に示された放出媒体中の回転速度100 min-1 で放出を測定する。それぞれの時点で放出される有効成分の特定量を、HPLC又はUV 光度測定によって測定する。上記刊行物の分類にしたがって、投薬形中に存在する有効成分の少なくとも85% が15 〜30分以内に 、特定pH値を有する予備測定された緩衝液に溶解される場合、即効型固形投薬形は高い溶出速度の投薬形であるとみなされる。
【実施例】
【0043】
非コーティング粒状物 (Uncoated granules)
例 1
下記の組成の押出ペレットを
【0044】
【表1】

【0045】
(上記及び下記の表中の“Ph.Eur.”は欧州薬局方を意味する。)
高速ミキサー中で出発物質を混合し、ついで湿式造粒(wet granulating)し、 湿性粒状物(moist granules)を押出金型0.5×0.5 mmの押出機によって 35℃以下の押出温度で押出ことによって製造する。押出物を適当な球形化機中で球形化し、得られたペレットを流動床乾燥器中で10%以下の残存水分含有量になるまで乾燥させる。乾燥したペレットをスクリーンニング法によって分級し、すべての篩い分けフラクション250〜710 μmを一緒にする。
【0046】
これらの非コーティングペレットからの放出を、まず900 ml のリン酸緩衝液 (pH 6.4)中で37℃で 、上記方法にしたがって100 分-1 の回転速度で60分間測定する。次の値は、3つのパラレル測定の対応する放出プロフィールを示す。
【0047】
クラリスロマイシンの放出
【0048】
【表2】

【0049】
比較例 1
例1におけると同様に, 下記組成の押出ペレットを製造する:
【0050】
【表3】

【0051】
非コーティングペレットからの有効成分の放出を、 上記方法にしたがって900 mlの緩衝液中でpH 6.4で測定し、その結果を下記に示す:
【0052】
【表4】

【0053】
上記値は、微結晶性セルロースを用いて湿式押出及び球形化することによって製造されたペレットが崩壊せず、そして有効成分を十分に速く放出しないことを示す。
【0054】
比較例 4-11
例1におけると同様に, 押出ペレットを250 mgのクラリスロマイシン 及び表1に示した助剤を用いて製造する。上記方法に従う、900 mlの 緩衝液中で pH 6.8で及び1分あたり150回転でクラリスロマイシンの放出を、同様に表1に示す。 上記値は、カラギーナン NF (Gelcarin GP-911)単独での使用によっても、これとその他の球形化助剤の混合によっても、十分に速く崩壊し、そして有効成分を十分に速く放出するペレットは得られないことをを示す。
【0055】
本発明のカラギーナン及びリン酸三カルシウムの組み合わせが使用される場合のみ、難溶性又は難湿潤性抗生物質にとって必須の急速放出を有するペレットが得られる。
【0056】
【表5】

【0057】
例 2
例1におけると同様に, 下記組成を有する押出ペレットを製造する:
【0058】
【表6】

【0059】
非コーティングペレットからの有効成分の放出を、 上記方法にしたがって900 mlの緩衝液中で pH 6.8で測定し、その結果を下記に示す:
【0060】
【表7】

【0061】
例 3
コーティングされた粒状物 (Coated granules)
例 1 からのペレットの一部を、それぞれ下記組成の水性分散液を用いてコーティングする:
それぞれのコーティングに対する分散液組成
【0062】
【表8】

【0063】
ペレットをまず11 重量%固体含有量及びついで 15 重量% 固体含有量を有する水性分散液を用いて、流動床装置中で45℃の生成物温度で、ペレットの重量に対して10 重量%の重量増加になるまで保護コーティングとしてコーティングし、ついで耐胃液性フィルムコーティングを得るために, 熱い空気の供給下で, 30℃ の生成物温度で、ペレット及び保護コーティングの重量に対して30 重量%の重量増加になるまでコーティングし、熱い空気の供給の減少下に, 40℃の生成物温度及び残存水分含有量<10%が得られるまで乾燥させる。
【0064】
コーティングされたペレットから有効成分の放出を、上記方法にしたがって回転速度100 分-1で、まず30分間300 ml の緩衝液中で pH 2で 、ついで 60分間1000 mlのリン酸緩衝液 中で pH 6.8で測定する。
【0065】
下記の放出値が得られる:
コーティングされたペレットからの放出
【0066】
【表9】

【0067】
比較例 2
例1におけると同様に, 下記組成を有する押出ペレットを製造する:
【0068】
【表10】

【0069】
得られた押出ペレットを下記組成の水性分散液を用いてコーティングする:
コーティング用水性分散液の組成
【0070】
【表11】

【0071】
コーティングによる重量増加(ペレットの重量に対する)は、18 重量%であった。
【0072】
コーティングされたペレットの一部からの有効成分の放出を、上記方法にしたがって900 ml の緩衝液中でpH 6.4で測定し、その結果を下記に示す:
【0073】
【表12】

【0074】
pH 6.4でコーティングの急速な溶解にもかかわらず, ペレットからの放出は極めて徐々にしか行われない。というのはペレットの観察されうる崩壊がないからである。
【0075】
コーティングされたペレットの一部からの有効成分の放出を、上記方法にしたがってまず300 ml中で pH 2で30分間、ついで100 ml中で pH 6.8で測定し, その結果を下記に示す:
【0076】
【表13】

【0077】
ペレットは胃液中で膨張するが, コーティングはpH 2で溶解しなかった。しかし, 水に浸透性であるにも拘わらず, pH 6.8でその完全な溶解後でさえ, 放出は非コーティングペレットに比べて明らかに遅れ、ペレットは崩壊しなかった。
【0078】
例 4
例1におけると同様に, 下記組成を有する押出ペレットを製造する:
【0079】
【表14】

【0080】
粒子サイズ 250 〜710μmを有する、一緒にされたスクリーンニングフラクションを用いて, 非コーティングペレットからの有効成分の放出を、上記方法にしたがって900 mlのリン酸緩衝液(pH 6.8)中で 30 分間測定し、その結果を下記表に示す:
【0081】
【表15】

【0082】
例3におけると同様に, 押出ペレットの一部をさらに下記組成の水性分散液を用いてペレットの重量に対して2 重量%の重量増加になるまでコーティングする:
水性コーティング分散液の組成
【0083】
【表16】

【0084】
上記方法にしたがってpH 6.8で 900 ml の緩衝液中で10 分間、放出の測定によって、下記の値が得られる:
【0085】
【表17】

【0086】
放出値は、実質上同一の放出プロフィールを、 コーティングされた及びコーティングされていないアモキシリンペレットに関して示した。これはフレーバーマスキングを提供するためにただ役立つコーティングでないことを明確にするが、本発明の投薬形の組成は、小腸の環境で極めて急速な放出を可能にし、同時に急速なバイオアベイラビリティを可能にする。
【0087】
比較例 3
例1におけると同様に, 下記組成を有する押出ペレットを製造する:
【0088】
【表18】

【0089】
これらの押出ペレットからの有効成分の放出を、900 ml の緩衝液中でpH 6.8で上記方法にしたがって測定し、その結果を下記に示す:
【0090】
【表19】

【0091】
例3におけると同様に, 押出ペレットの一部を、さらに下記の組成を有する水性分散液を用いてペレットの重量に対して 2 重量%の重量増加になるまでコーティングする:
水性コーティング懸濁液の組成
【0092】
【表20】

【0093】
上記方法にしたがって pH1. 2で 900 mlの緩衝液中で90 分間、放出を測定することによって, 下記の値が得られる:
【0094】
【表21】

【0095】
例 5
例1におけると同様に, 下記組成を有する押出ペレットを製造する:
【0096】
【表22】

【0097】
粒子サイズ250〜710 μmの、一緒にされたスクリーンニングフラクションに、例 3 に示したように下記コーティング分散液を用いてコーティングする:
水性コーティング分散液の組成
【0098】
【表23】

【0099】
コーティングされたペレットの有効成分放出を、900 mlのリン酸緩衝液(pH 6.4)中で 37℃で上述の方法にしたがって測定し、その結果を以下に示す:
【0100】
【表24】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体に難湿潤性であるか及び(又は) 水性媒体に難溶性である、少なくとも1種の抗生物質、及びカラギーナン及びリン酸三カルシウムの組み合わせ、及び場合により少なくとも1種のショ糖エステルを含有する、多微粒子状医薬投薬形。
【請求項2】
押出ペレットの形, 好ましくは球形で存在する、請求項1記載の投薬形。
【請求項3】
ショ糖エステルが10-16, 好ましくは13-15のHLBを示す、請求項1又は2記載の投薬形。
【請求項4】
投薬形の全重量に対して 5〜50 重量%, 好ましくは 20-30 重量%のカラギーナン, 好ましくはカッパ-カラギーナンを含有する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の投薬形。
【請求項5】
リン酸三カルシウムとカラギーナンの重量比が、1:1 〜1:10, 好ましくは1:2〜1:6である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の投薬形。
【請求項6】
リン酸三カルシウムが粒子サイズ< 50μmの、微分散された粉末として存在する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の投薬形。
【請求項7】
ショ糖エステルが投薬形の全重量に対して1-10 重量%, 好ましくは4-6 重量%の量で存在する、請求項1〜6のいずれか1つに記載の投薬形。
【請求項8】
ペニシリン類, セファロスポリン類及びマクロライド類より成る群から選ばれた少なくとも1種の抗生物質を含有する、請求項1〜7のいずれか1つに記載の投薬形。
【請求項9】
抗生物質がアモキシリン, クラリスロマイシン, アズスロマイシン (一又は二水和物)又はセフィキシム, セフポドキシム 及び(又は) セフポドキシム プロキセチルである、請求項1〜8のいずれか1つに記載の投薬形。
【請求項10】
投薬形が、 耐胃液性及び(又は) 耐唾液性のフェレーバーニュートラルなコーティング(flavour-neutral coating)を有する、請求項1〜9のいずれか1つに記載の投薬形。
【請求項11】
粒子が< 800 μmの大きさを有する、請求項1〜10のいずれか1つに記載の投薬形。
【請求項12】
高い溶出速度をpH値 6-7で示す、請求項1〜11のいずれか1つに記載の投薬形。
【請求項13】
抗生物質が、pH値 6-7で、30分以内に少なくとも85% の量で放出される、請求項12記載の投薬形。
【請求項14】
投薬形がアモキシリンを含有し、そしてフェレーバーニュートラルなコーティングを有する、請求項1〜13のいずれか1つに記載の投薬形。
【請求項15】
投薬形がクラリスロマイシンを含有し、そしてフェレーバーニュートラルなコーティングを有する、請求項1〜13のいずれか1つに記載の投薬形。
【請求項16】
出発物質を混合し, 粒状化し, 押出し、細分化し, 球形化し, 場合により分級し、ついで場合により耐唾液性 及び(又は) 耐胃液性及び(又は)フェレーバーニュートラルなコーティングを付与する、請求項1〜15のいずれか1つに記載の投薬形の製造方法。
【請求項17】
出発混合物が湿式粒状化される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1個の、好ましくは単回投与用可動バリヤ装置(mobile barrier device)を有する飲用ストロー 中に配置された、請求項1〜15のいずれか1つに記載の、好ましくは丸い押出ペレットの形にある投薬形を包含する、請求項1〜15のいずれか1つに記載の投薬システム。
【請求項19】
請求項18記載の投薬システム及びpH≦6の生理学的に許容し得る液体を有するキット。

【公表番号】特表2008−525367(P2008−525367A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547462(P2007−547462)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056795
【国際公開番号】WO2006/069920
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(390035404)グリュネンタール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (127)
【Fターム(参考)】