説明

抗疣贅医薬組成物及び疣贅を処置するための方法

【課題】抗疣贅医薬組成物及び疣贅を処置するための方法を提供すること。
【解決手段】本明細書において、ソラマージン及びソラソニンを含む、ナス属の植物からの水溶性抽出物を含む抗疣贅医薬組成物を開示する。また、水溶性抽出物を、そのような処置を必要とする対象に適用することを含む、疣贅を処置するための方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年5月4日出願の台湾出願第100115591号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、ナス(Solanum)属の植物からの水溶性抽出物を含有する抗疣贅医薬組成物、及び水溶性抽出物を用いて疣贅を処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
疣贅は、ヒト又は動物対象の皮膚又は粘膜上に生じる一種の皮膚疾患であり、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって引き起こされる良性の表皮性過形成である。一般的に、疣贅が形成する部位に基づいて、疣贅を、皮膚疣贅と粘膜疣贅とに分けることができる。HPVに罹患している皮膚又は粘膜の表皮細胞は良性の増殖及び角質増殖を受けており、それによって皮膚又は粘膜上に粗面化した表面を有する丘疹又は小結節の形成がもたらされる。
【0004】
臨床診断において、疣贅はその症状にしたがって4つのタイプに分けられる:(1)尋常性疣贅(Verruca vulgaris)、通常、手又は指上に生じる、落屑状で粗面の丘疹(単数若しくは複数)又は小結節(単数若しくは複数);(2)扁平疣贅(Verruca plana juvenilis)、通常顔、手、及び下腿に生じる、わずかに盛り上がり、上部が平らな丘疹(単数若しくは複数);(3)足底疣贅(Verruca plantaris)、通常、足底及び足指の圧点に生じ、丘疹が圧迫されると患者に痛みを引き起こす、厚く、角化した丘疹;並びに(4)陰部疣贅(Condyloma acuminatum)、高度に伝染性であり、性感染症(STD)である、生殖器及び肛門の皮膚又は粘膜上に形成するカリフラワー様の塊。
【0005】
今日、疣贅は、そのタイプ、サイズ、数、及び病変部位に基づき以下の治療法を用いて処置されている:
(1)局所療法、例えば、陰部疣贅を処置するための、ポドフィリン(商品名:Wartec(登録商標))及びイミキモド(商品名:Aldara(登録商標))、陰部疣贅及び皮膚疣贅を処置するための5−フルオロウラシル、並びに足底疣贅及び掌上に形成した疣贅を処置するためのブレオマイシン(商品名:Bleocin(登録商標));
(2)特に、足底疣贅及び掌上に形成した疣贅を処置するためのレーザー処置、例えば、パルス色素レーザー及び二酸化炭素レーザー;並びに
(3)液体窒素を用い、ほとんどの疣贅を処置するのに適し、掌上、足底、及び足指に形成した疣贅にあまり効果のない、寒冷療法。
【0006】
前述の治療法は各々、全てのタイプの疣贅というよりむしろ、特定のタイプの疣贅のみに適する。さらに、臨床診断において、前述の治療法には、効果が劣るという問題及び副作用の欠点が存在する。例えば、長期間用いられる局所治療は疣贅の再発を引き起こし、その処置効果は満足できるものではない。レーザー処置及び寒冷療法は、疼痛、潰瘍化、及び瘢痕化などの重い副作用を引き起こす。ある患者、特に小児は、耐え難い重い副作用のため、処置を拒絶する可能性がある。
【0007】
前述の欠点を克服するため、研究者たちは、疣贅を処置するのに有効であり、望ましくない副作用のない薬物を開発するために、伝統的な中医学又は漢方薬から有効成分を見出すことに集中してきた。
【0008】
ソラナム・インカナムL(Solanum incanum L)(ソラナム・インカナムルイズ及びパブ(Solanum incanum Ruiz.&Pav.)、トゲハリナスビ(Solanum undatum)、ラテン語でソラナム・コアグランス・フォルスカル(Solanum coagulans Forsskal)、及び英語でビターアップルとしても知られる)は、抗癌活性を示すステロイド性糖アルカロイドを含有していることが知られている。さらに、例えば、ソラナム・インディクム(Solanum indicum)、中国語でロンクイ(Long kui)及び英語でブラック・ナイトシェード(black nightshade)として知られているイヌホオズキ(Solanum nigrum)、ソラナム・カプシカストルム(Solanum capsicastrum)(英語でフォールス・エルサレム・チェリー(false jerusalem cherry)として知られている)、ソラナム・キサントカルパム(Solanum xanthocarpum)、ナス(Solanum melongena)、ソラナム・コアグランス(Solanum coagulans)、バレイショ(Solanum tuberosum)、ソラナム・ソドメウム(Solanum sodomeum)、ソラナム・ツブロサム(Solanum tubburosum)、ソラナム・アキュレアストルム(Solanum aculeastrum)、ロベイラ(Solanum lycocarpum)、ソラナム・カシナム(Solanum khasianum)、ソラナム・スアベオレンズ(Solanum suaveolens)、ソラナム・ウポロ(Solanum uporo)、ソラナム・アブチロイデス(Solanum abutiloides)、ソラナム・コキネウム(Solanum coccineum)、ソラナム・ウングイクラタム(Solanum unguiculatum)、ソラナム・ロブスツム(Solanum robustum)、ソラナム・アングイヴィ(Solanum anguivi)、ソラナム・プラタニフォリウム(Solanum platanifolium)、ツノナス(Solanum mammosum)などを含めた、ナス属の植物の多くはステロイド性糖アルカロイドを含有することが報告されている。ナス属の植物中に含まれている共通のステロイド性糖アルカロイドにはソラマージン及びソラソニンが含まれる。
【0009】
本発明の発明者らに発行された米国特許第7,078,063B2号は、ナス属の植物、特にソラナム・インカナムLからの水溶性抽出物、及びそれを調製するためのプロセスを開示している。水溶性抽出物は、少なくとも60重量%のソラマージン及びソラソニンから本質的になる。この特許はその全文が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0010】
前述の米国特許において、本発明者らは、水溶性抽出物は腫瘍/癌細胞の増殖、特に肝臓腫瘍細胞、肺癌細胞、及び乳癌細胞の阻害を示すことを見出した。本発明において、本発明者らは、意外にも、この水溶性抽出物が疣贅を処置するのに有効であることを見出した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、第1の態様によると、本発明は、ソラマージン及びソラソニンを含む、ナス属の植物からの水溶性抽出物を含む抗疣贅医薬組成物を提供する。
【0012】
第2の態様において、本発明は、抗疣贅を処置するための方法であって、ソラマージン及びソラソニンを含む、ナス属の植物からの水溶性抽出物をこのような処置を必要とする対象に適用することを含む方法を提供する。
【0013】
第3の態様において、本発明は、ソラマージン及びソラソニンを含む、ナス属の植物からの水溶性抽出物の、抗疣贅を処置するための薬物の製造における使用に関する。
【0014】
本発明の、上記及び他の目的、特徴、及び利点は、添付の図面と組み合わせて理解される、以下の詳しい記載及び好ましい実施形態に関して明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】試験対象者Cの病変(矢印によって示す)をソラナム・インカナムLゲルで処置することによって、対象者の病変が徐々に軽減することを示す写真である。
【図2】試験対象者Dの病変(矢印によって示す)をソラナム・インカナムLゲルで処置することによって、対象者の病変が徐々に軽減することを示す写真である。
【図3】試験対象者Eの病変(矢印によって示す)をソラナム・インカナムLゲルで処置することによって、対象者の病変が徐々に軽減することを示す写真である。
【図4】試験対象者Fの病変(矢印によって示す)をソラナム・インカナムLゲルで処置することによって、対象者の病変が徐々に軽減することを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
あらゆる先行技術の出版物を本明細書に参照する場合、このような参照は、台湾又はあらゆる他国において、出版物が当技術分野における共通の一般知識の一部分を形成することを承認することにならないことを理解されたい。
【0017】
本明細書の目的では、「含む(comprising)」の語は「それだけには限定されないが含む(including)」ことを意味し、「含む(comprises)」、「含有する(contain)」の語、及びこれらの変形は対応する意味を有することが明らかに理解されよう。
【0018】
別段の規定がなければ、本明細書で用いる技術用語及び科学用語は全て、本発明が属する技術分野における技術者が通常理解する意味を有する。当業者であれば、本発明を実践する上で用いることができる、本明細書に記載するものに類似し、又は同等である多くの方法及び材料を認識されよう。実際、本発明は、記載する方法及び材料に決して限定されない。明確にするために、本明細書において以下の定義を用いる。
【0019】
本発明は、ナス属の植物からの水溶性抽出物を含む、抗疣贅医薬組成物を提供する。水溶性抽出物はソラマージン及びソラソニンを含む。水溶性抽出物がソラマージン及びソラソニンを少なくとも60重量%含むのが好ましく、ソラマージン及びソラソニンを60重量%〜90重量%含むのがより好ましい。
【0020】
水溶性抽出物を調製するためのプロセスは、米国特許第7,078,063B2号において開示されており、
(a)水溶液が得られるように、ナス属の植物の植物材料を、pH値3〜5の酸性水溶液を用いた抽出処理にかけるステップと、
(b)沈澱物が形成するように、ステップ(a)において得られた水溶液のpH値を塩基でpH8〜10に調節するステップと、
(c)乾燥生成物が得られるように、ステップ(b)において形成した沈澱物を水で洗浄し、引き続き乾燥するステップと、
(d)クロロホルム−アルコール混合液が形成するように、ステップ(c)において得た乾燥生成物をクロロホルムと混合し、引き続き適切な量の100%アルコールを加えるステップと、
(e)クロロホルムベースの層と非クロロホルムベースの層とを含有する混合液が得られるように、ステップ(d)において形成したクロロホルム−アルコール混合液を、予め決定された水:アルコール比を有する水/アルコール溶液と混合するステップと、
(f)ステップ(e)において得た混合液からクロロホルムベースの層を除去し、引き続き適切な量の水を加えるステップと、
(g)ステップ(f)の得られた混合液から上清を得、引き続き上清を乾燥するステップ(得られた乾燥生成物を水中に直接溶解して黄色がかった澄明で透明な水溶液を形成することができる)とを含む。
【0021】
好ましくは、ステップ(a)において、ナス属の植物の植物材料は予備処理において刻まれている。
【0022】
好ましくは、ステップ(a)において、植物材料はナス属の植物の果実、根、茎、及び葉の少なくとも1つである。本発明の好ましい一実施形態において、ステップ(a)において用いる植物材料は、ナス属の植物の果実である。
【0023】
本発明者らは、ある種の因子が前述のプロセスを用いて得た水溶性抽出物におけるソラソニン及びソラマージンの含量及び比率に影響を及ぼし得ることを見出した。これらの因子には、ナス属の植物の種、及び抽出プロセスにおいて用いる植物の部分(単数又は複数)、並びに用いるアルコール及び塩基のタイプが含まれる。したがって、当業者であれば、好適な操作条件と組み合わせて、ナス属の植物の適切な種を選択し、植物の適切な部分又は複数の部分を用いることによって、所望の水溶性抽出物を調製することができる。
【0024】
水溶性抽出物が、ソラナム・インカナムL、ソラナム・インディクム、イヌホオズキ、ソラナム・カプシカストルム、ソラナム・キサントカルパム、ナス、ソラナム・コアグランス、バレイショ、ソラナム・ソドメウム、ソラナム・ツブロサム、ソラナム・アキュレアストルム、ロベイラ、ソラナム・カシナム、ソラナム・スアベオレンズ、ソラナム・ウポロ、ソラナム・アブチロイデス、ソラナム・コキネウム、ソラナム・ウングイクラタム、ソラナム・ロブスツム、ソラナム・アングイヴィ、ソラナム・プラタニフォリウム、及びツノナスからなる群から選択されるナス属の植物から得られるのが好ましい。本発明の好ましい一実施形態において、水溶性抽出物はソラナム・インカナムLから得られる。
【0025】
本発明者らが行ったヒトの予備試験において、その結果は、水溶性抽出物が、潰瘍化又は紅斑などの望ましくない副作用なしで、皮膚疣贅及び粘膜疣贅を含めた疣贅を処置又は軽減するのに有効であることを示している。したがって、本発明は、水溶性抽出物を、そのような処置を必要とする対象に適用することを含む、疣贅を処置するための方法を提供する。
【0026】
本発明の抗疣贅医薬組成物によって処置することができる疣贅には、尋常性疣贅、扁平疣贅、足底疣贅、及び陰部疣贅が含まれる。
【0027】
本発明の抗疣贅医薬組成物は、例えば、非経口の、経粘膜の、経皮の、又は局所の経路によって投与することができる。
【0028】
非経口の経路には、皮下注射、表皮内注射、皮内注射、及び病巣内注射が含まれる。
【0029】
非経口の経路に対して、本発明の抗疣贅医薬組成物は、当業者には知られている技術を用いて、無菌の水溶液剤又は分散剤などの注射用製品に調合することができる。
【0030】
本発明において、注射用製品は、水溶性抽出物を、製薬技術において広く用いられている薬学的に許容される担体と混合することによって調製することができる。
【0031】
薬学的に許容される担体は、例えば、水、食塩水、バッファー溶液(リン酸緩衝食塩水(PBS)、リンゲル溶液、又はハンクス溶液)、乳化剤、懸濁化剤、分解剤、pH調節剤、安定化剤、キレート化剤、保存剤、希釈剤、吸収遅延剤、リポソームなどを含めた1つ又は複数の試薬を含む。これら薬学的に許容される担体の選択及び量は、当業者の専門知識の範囲内である。
【0032】
さらに、本発明の抗疣贅医薬組成物は、局所経路、例えば、皮膚の、頬側の、生殖器の、膣内の、肛門の、及び直腸の経路によって投与することができる。本発明の一実施形態において、本発明の抗疣贅医薬組成物は皮膚の経路によって投与される。本発明の別の一実施形態において、本発明の抗疣贅医薬組成物は生殖器の経路によって投与される。
【0033】
本発明による医薬組成物を、当業者にはよく知られている技術を用いて、それだけには限定されないが、外用剤、発泡錠剤、坐剤などを含む、局所投与に適する剤形に調合することができる。
【0034】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明による水溶性抽出物を、当技術分野においてよく知られており、一般的に用いられている基剤と混合することによって、抗疣贅医薬組成物を外用剤に調合する。
【0035】
本発明において、外用の調製物には、それだけには限定されないが、乳剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、パッチ剤、リニメント剤、散剤、エアロゾル剤、噴霧剤、ローション剤、セラム剤、パスタ剤、泡沫剤、滴剤、懸濁剤、及びチンキ剤が含まれる。本発明の一実施形態において、抗疣贅医薬組成物はゲルの形態である。
【0036】
例えば、本発明による外用調製物を生成するのに適切な基剤は、1つ又は複数の以下の添加剤:水、アルコール、グリコール、炭化水素(例えば、ワセリン及び白色ワセリン)、ロウ(例えば、パラフィン及び黄ロウ)、保存剤、抗酸化剤、界面活性剤、吸収増強剤、安定化剤、ゲル化剤(例えば、carbopol(登録商標)974P、微結晶性セルロース、及びカルボキシメチルセルロース)、活性化剤、湿潤剤、匂い吸収剤、芳香剤、pH調節剤、キレート化剤、乳化剤、密封剤、軟化剤、増粘剤、可溶化剤、浸透増強剤、抗刺激剤、着色剤、並びに噴射剤を含むことができる。これらの添加剤の選択及び量は、当業者の専門知識の範囲内である。
【0037】
本発明は、水溶性抽出物又は抗疣贅医薬組成物を、そのような処置を必要とする対象に適用することを含む、疣贅を処置するための方法も提供する。
【0038】
本発明による抗疣贅医薬組成物を投与する投与量及び頻度は以下の因子:処置する疾患の重症度、投与経路、並びに処置する対象の体重、年齢、身体状態、及び反応に応じて変化させることができる。例えば、本発明による医薬組成物の1日量は、病変面積1cmあたり10から20mg、1日あたり1回から6回であってよい。
【0039】
本発明を以下の実施例によってさらに記載する。しかし、以下の実施例は、例示の目的を意図するにすぎず、実践上本発明を限定するものと解釈してはならないことを理解されたい。
【実施例】
【0040】
(例1)
水溶性抽出物の調製
米国特許第7,078,063B2号の例1において開示されている手順に基づいて水溶性抽出物を調製した。詳しくは、ソラナム・インカナムLの熟した果実500gをすりつぶし、引き続き純水1000mlを加えた。得られた混合水溶液に、99.5%酢酸を滴下添加してpH値を4.0に調節し、引き続き室温で12時間振盪した。4500rpmで12時間混合水溶液を遠心分離することによって上清を得、それに33%NHOH塩基性溶液を滴下添加して上清のpH値を9.0に調節し、沈澱物を形成した。4500rpmで10分間遠心分離を行うことによって(Beckman Coulter、Avanti J−25、JA−14 Rotor)沈澱物を得、沈澱物を水で洗浄し、引き続き4500rpmで遠心分離することによってその中に存在する残余の塩基性溶液を除去した。このようにして得た沈澱物を蒸留水中に懸濁し、凍結乾燥にかけて(Virtis、Freezemobile 12ES)乾燥粉末5gを得た。
【0041】
乾燥粉末2gを、試薬用クロロホルム50ml中に溶解し、引き続き100%メタノール40mlを加え、振盪して均一な懸濁液を形成した。4500rpmで遠心分離することによって上清を得た。メタノール:水(1:1)溶液70mlを上清に加え、十分に混和した。得られた混合液を12000rpmで10分間遠心分離した。得られた上清を取り出し、それに蒸留水120mlを加え、十分に振盪した。上清を12000rpmで10分間さらに遠心分離して沈澱物を除去した。得られた上清を55℃減圧下で濃縮してメタノールを除去し、引き続き凍結乾燥して水溶性抽出物の乾燥粉末を得た。
【0042】
(例2)
ヒトの皮膚疣贅及び粘膜疣贅を処置する上での水溶性抽出物の治療効果及び安全性
上記の例1において調製した水溶性抽出物の、皮膚疣贅及び粘膜疣贅を処置する上での治療効果及び安全性を調べるために、以下の試験を行った。
【0043】
A.水溶性抽出物を含有するゲルの調製
ゲル化剤として用いられたものであり、Lubrizol Advanced Material,Inc.、KY40258、米国から市販されているcarbopol(登録商標)974P 4gを純水50g中に溶解し、引き続きプロピレングリコール30g、及び例1から得た水溶性抽出物の乾燥粉末7gを逐次的に添加し、十分に混和した。混合液を50℃から60℃の温度の加熱容器中20分間加熱し、引き続き室温で冷却した。冷却した混合液にトリエタノールアミンを加えてpHを7.0±0.5に調節した。引き続き混合液の全重量が100gに到達するまで水を加え、それによって水溶性抽出物7%(w/w)を含有するゲル(以降、ソラナム・インカナムLゲルと呼ぶ)を得た。
【0044】
B.試験対象及び対象の臨床情報
以下の試験に参加する試験対象者6人(試験対象者AからF)を、台湾、国立成功大学病院(National Cheng Kung University Hospital)外来診察部から登録した。試験対象者A及びBは粘膜疣贅に罹患しており、試験対象者CからFは皮膚疣贅に罹患していた。性別、年齢、疣贅のタイプ、及び病変部位を含めた試験対象者6人の臨床情報を、表1に概略する。
【表1】

【0045】
C.予備臨床試験
試験の開始前(即ち、0週)に、登録した各試験対象者上の選択された病変を写真撮影した。例2のセクションAにおいて調製したソラナム・インカナムLゲルを、選択された病変及び選択された病変周囲の正常皮膚領域に適用した。各正常皮膚領域には、内側及び外側の周辺部があり、各正常皮膚領域の内側周辺部と外側周辺部との間の距離は0.5cmを超えなかった。処置した投与量は1日2回、10〜20mg/cmであった。各試験対象者の選択された病変を、予め決定した評価時間に(即ち、1、2、3、4、7、8、13、20、及び29週の終わりに、表2を参照されたい)写真撮影し、ソラナム・インカナムLゲルの治療効果及び安全性に対する評価を、下記のセクションD及びEにおいて記載する手順にしたがって行った。各試験対象者の病変が完全に治癒し、病変皮膚の外観が正常状態に回復した場合に試験を完了した。
【表2】

【0046】
D.治療効果の評価
0週(即ち、ソラナム・インカナムLゲルの適用前)に得た、及び評価時に得た、試験対象者の選択された病変の写真を、皮膚科医によって比較して、ソラナム・インカナムLゲルで処置した病変の改善を決定した。
【0047】
E.安全性の評価
安全性の評価は、予め決定された評価時に研究者によって行われた。試験対象者に、あらゆる皮膚の有害反応(潰瘍化、刺激、及び紅斑を含む)の出現に関して研究者が質問した。
【0048】
結果
A.ソラナム・インカナムLゲルの治療効果の評価
0週及び他の予め決定された評価時に得た各試験対象者A及びBの選択された病変の写真を比較すると、ソラナム・インカナムLゲルで処置した各試験対象者A及びBの選択された病変は、1週の終わり後に著しく改善した(データは示さず)。
【0049】
図1から4はそれぞれ、異なる評価時に得た試験対象者CからFの選択された病変の写真を示す。写真は、ソラナム・インカナムLゲルで処置した各試験対象者CからFの病変は、時間とともに大幅に改善したことを実証している。試験が完了した後、試験対象者CからFに、6カ月から2年間追跡調査をさらに受けさせて、ソラナム・インカナムLゲルによってすでに治癒した病変領域が再発したか否かを決定した。追跡調査の結果に基づくと、全ての試験対象者で疣贅の再発が見出されなかった(データは示さず)。
【0050】
上記の結果は、本発明のソラナム・インカナムLゲルは、皮膚疣贅及び粘膜疣贅を処置するのに効果的に用いられ得ることを示している。
【0051】
B.水溶性抽出物を含有するゲルの安全性の評価
安全性の試験において、ほんの少数の試験対象者が、刺激又は紅斑を含む一時的で軽度の皮膚の有害反応を経験したが、有害反応によって試験の完了が停止されることはなかった(データは示さず)。
【0052】
前述を鑑みて、本発明者らは、本発明によるナス属の植物からの水溶性抽出物は、有害な副作用なく疣贅を処置するのに長期間使用するための抗疣贅薬に開発できると考察する。
【0053】
本明細書において引用される全ての特許及び参考文献、並びにそれらに記載されている参照は、その全文が参照によって本明細書に組み入れられる。抵触の場合には、本明細書が、定義を含めて優勢であろう。
【0054】
本発明を、最も実際的で好ましい実施形態とみなされるものに関連して記載してきたが、本発明は開示する実施形態に限定されず、最も幅広い解釈及び同等の取決めの精神及び範囲内に含まれる様々な取決めを網羅するものと理解される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソラマージン及びソラソニンを含む、ナス(solanum)属の植物からの水溶性抽出物を特徴とする抗疣贅医薬組成物。
【請求項2】
前記水溶性抽出物が少なくとも60重量%のソラマージン及びソラソニンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記水溶性抽出物が60重量%〜90重量%のソラマージン及びソラソニンを含むことを特徴とする、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
尋常性疣贅、扁平疣贅、足底疣贅、又は陰部疣贅を処置するために用いられる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
局所剤形において適用される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
水、アルコール、グリコール、炭水化物、ロウ、保存剤、抗酸化剤、界面活性剤、吸収増強剤、安定化剤、ゲル化剤、活性化剤、湿潤剤、匂い吸収剤、芳香剤、pH調節剤、キレート化剤、乳化剤、密封剤、軟化剤、増粘剤、可溶化剤、浸透増強剤、抗刺激剤、着色剤、噴射剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される基剤をさらに特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
基剤が、ゲル化剤及びグリコールを含むことを特徴とする、請求項6に記載の医薬組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−232969(P2012−232969A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−30063(P2012−30063)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【出願人】(503315263)徳英生物科技股▲分▼有限公司 (3)
【Fターム(参考)】