説明

抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強作用組成物の製造方法

【課題】人間及び動物に対して抗疲労作用及び持久力増強作用を有する組成物の効率的な製造方法及びこれらを含む飲食品又は医薬品を提供すること。
【解決手段】ヒラタケ属担子菌を、−30℃以下で、細胞の大きさ以下、好ましくは0.1μm〜30μm、より好ましくは1μm〜25μmの微粒子に粉砕することにより、抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強作用組成物を劣化させること無く、人間及び動物に効率よく吸収できる抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強作用組成物を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間及び動物に対して抗疲労作用及び持久力増強作用を有する組成物の効率的な製造方法及びこれらを含む飲食品又は医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
健康志向が高まっている現在、スポーツと栄養又はスポーツと生理機能との関係についての認識が深まっている。このような中で、エネルギー補給、疲労回復、さらに瞬発力や持久力の増強、身体作りなど様々な場面でスポーツフーズが利用されている。スポーツフーズの中でも、抗疲労作用及び持久力増強作用を目的とするものは、スポーツ選手の成績向上のためのみならず、一般の人が仕事をする上でも持久力維持や、活力あふれる生活を送るためのものとして多く利用されている。
これらの抗疲労剤及び持久力増強剤の多くは、ビタミン類と生薬から成り、動物実験等の科学的根拠がないまま、古くからの伝承により効果を謳っているものが多い。また、これらの抗疲労剤等はカフェインやエチルアルコールを含有し、興奮、不眠、感覚鈍麻を伴う等の副作用が多いため、就寝前や自動車運転中等には服用することが好ましくなかった。このような実情において、抗疲労剤及び持久力増強剤には、明確な有効性の確認と、科学的根拠が求められている。
これら抗疲労作用及び持久力増強作用を有するものとして、担子菌に着目した研究が進められ、冬虫夏草(Cordyceps sinensis)の培養菌糸体による強心作用及び抗疲労作用(特許文献1)や、霊芝の子実体による滋養強壮効果(特許文献2)、ウスヒラタケ菌子体による抗疲労作用及び持久力増強作用(特許文献3)が報告されている。
抗疲労作用及び持久力増強作用を有する健康食品素材を製剤化する方法としては、菌糸体からエキス成分を抽出する方法やクロマトグラフィー法等で精製する方法が報告されている。これらの方法で抽出された有効成分は、体内への吸収効率は良いが、生産時間が長い、方法が複雑である、収率が低い、安価に大量に生産できない等の問題があった。
一方、担子菌を微粉化し、それを健康食品素材として使用する場合、簡単に短時間で、安価に大量に生産することができるものの、単に微粉化するのみでは体内への吸収効率が悪い問題点があった。しかも、粉砕時に発生する熱により、有効成分の劣化や香気成分の逸脱等も問題であった。
【特許文献1】国際公開第96/00580号パンフレット
【特許文献2】特開2003−63981号公報
【特許文献3】特願2004−353099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、人間及び動物に対して抗疲労作用及び持久力増強作用を有する組成物の効率的な製造方法及びこれらを含む飲食品又は医薬品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ヒラタケ属担子菌由来成分及びその抽出物の粒径をより細かくして超微粒子にしたもの(超微粒子化体)を調製し、例えば、その粒子の平均粒径を0.1μm〜30μm、より好ましくは1μm〜25μmにすることにより、細胞内の抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強組成物成分が外に出ており、そのため、抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強組成物の小腸粘膜からの吸収効率が向上し、その結果、抗疲労効果を増大できることを見出した。さらに、−30℃以下で微粒子化を行うことにより、熱劣化による抗疲労効果の損失や香気成分の逸脱等防止できることも見出した。
すなわち、本発明は、以下の構成を有する。
(1)ヒラタケ属担子菌(Pleurotus)を粉砕して細胞の大きさ以下である粒子を調製することを特徴とする抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強作用組成物の製造方法。
(2)細胞の大きさ以下である粒子が、平均粒径が0.1μm〜30μmの粒子である上記(1)に記載の製造方法。
(3)細胞の大きさ以下である粒子が、平均粒径が1μm〜25μmの粒子である上記(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)粉砕を、−30℃以下で行う上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)粉砕を、−50℃以下で行う上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(6)粉砕を、液体窒素中で行う上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(7)ヒラタケ属担子菌(Pleurotus)が、ウスヒラタケ(Pleurotus pulmonarius)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、エリンギ(Pleurotus eryngii)、タモギタケ(Pleurotus cornucopiae)のいずれかである上記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)ウスヒラタケ(Pleurotus pulmonarius)が、Pleurotus pulmonarius S82株(FERM P−20222)である上記(7)に記載の製造方法。
(9)ヒラタケ属担子菌(Pleurotus)が、培養菌糸体である上記(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法により製造される抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強作用組成物 。
(11)上記(10)に記載の抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強作用組成物を含有し、抗疲労作用及び/又は持久力増強作用を有するものである旨の表示を付した飲食品。
(12)上記(10)に記載の抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強作用組成物を含有する医薬品。
(13)ヒラタケ属担子菌(Pleurotus)を−30℃以下の冷却条件下で粉砕して得られる、平均粒径30μm以下のヒラタケ属担子菌(Pleurotus)の微粒子。
(14)ヒラタケ属担子菌(Pleurotus)が、あらかじめ凍結乾燥された乾燥物である、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、ヒトや動物の疲労を軽減させることができる抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強作用組成物及びそれを含有する飲食品又は医薬品等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明について、以下に具体的に説明する。
本発明に関わるヒラタケ属担子菌としては、ヒラタケ属に分類される担子菌で有れば特に制限されないが、例えば、好ましくは、ウスヒラタケ(Pleurotus pulmonarius)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、エリンギ(Pleurotus eryngii)、タモギタケ(Pleurotus cornucopiae)等が挙げられる。さらに好ましくは、ウスヒラタケ(Pleurotus pulmonarius)が挙げられる。
【0007】
本発明に関わるウスヒラタケとしては、ウスヒラタケ(Pleurotus pulmonarius)種に属し、抗疲労作用及び/又は持久力増強作用を有するものであれば、いかなるものでもよい。ウスヒラタケ(Pleurotus pulmonarius)は、政令で品種登録制度の対象となっているキノコであり、また、ヒジリタケ、クロアワビタケという名称でも市場に流通している。
本発明のウスヒラタケの一例として、Pleurotus pulmonarius S82株が挙げられる。S82株は自然界より単離された株であり、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−20222として寄託(受理日平成16年9月14日)されている。
【0008】
また、本発明に関わるヒラタケとしては、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)種に属し、抗疲労作用及び/又は持久力増強作用を有するものであれば、いかなるものでもよい。ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)は、政令で品種登録制度の対象となっているキノコであり、また、アワビタケ, カタヒラナバ, カンタケという名称でも市場に流通している。
本発明のヒラタケの一例としてPleurotus ostreatusが挙げられる。これは、自然界より単離された株であり、菌じん研究所から分譲されたものである。
【0009】
本発明のウスヒラタケ及びヒラタケには、さらに、これらの種の株に変異処理及び遺伝子操作を加え、目的成分の含有量や副生物の生成量を変化させた、変異体又は遺伝子組み換え体も含まれる。
ウスヒラタケ(のPleurotus pulmonarius S82株)及びヒラタケ(Pleurotus ostreatus)の菌学的性質は以下のとおりである。
【0010】
Pleurotus pulmonarius S82株(FERM P−20222)の菌学的性質
(a)培養的・形態的性質
観察方法
1.形態の巨視的観察(コロニー形状)
以下の3種類のプレートにPleurotus pulmonarius S82株を接種し、25℃で最長2週間の培養を実施した。培養1週間目からのコロニーの巨視的特徴について、肉眼及び実体顕微鏡SZH10(オリンパス社製)を用いて観察した。コロニー色調に関する記載はKornerup and Wanscher(1978)に従った。
(1)ポテト・デキストロース寒天培地(商品名「ダイゴ」(日水製薬製))(PDAプレート)
(2)2%麦芽エキス寒天培地(Becton Dickinson,WD,USA)−1.5%寒天(MEAプレート)
(3)オートミール寒天培地(Becton Dickinson,WD,USA)1.5%寒天(OAプレート)
【0011】
2.生育温度試験
検体をPDAプレートに接種し、20℃、25℃、27℃、30℃、37℃の各温度条件下で1週間培養し、巨視的観察を行った。
【0012】
3.形態の微視的観察
菌体の微視的特徴の観察は、上記PDAプレートを用い25℃で培養した菌体を直接採取してプレパラートを作成し、微分干渉顕微鏡BX50F4(オリンパス社製)で観察した。
【0013】
観察結果
1.形態の巨視的観察結果
各種類の培養プレートにおける1週間培養後の菌体について巨視的観察を行い、コロニーの直径、色調(コロニー表面及び裏面)、表面性状に関して記録を行った。観察の結果、下記のような特徴が認められた。
(1)PDAプレート:コロニー直径は40〜50mm、色調はWhite(1A−1)、表面性状は羊毛状。その他にコロニー表面上にYellowwish orange(4A−7)の浸出液の産生が認められた。
(2)MEAプレート:コロニー直径は40〜45mm、色調はWhite(1A−1)、表面性状は羊毛状。
(3)OAプレート:コロニー直径は60〜70mm、色調はWhite(1A−1)、表面性状は羊毛状。
上記の( )内の数値は、Kornerup and Wanscher(1978)で用いられている色のコード番号を示す。
【0014】
2.生育温度試験結果
Pleurotus pulmonarius S82株をPDAプレートに接種し、各温度条件下で培養した結果は下記の通りであった。
培養温度20℃:コロニー直径は12〜17mm。
培養温度25℃:コロニー直径は40〜45mm。
培養温度27℃:コロニー直径は30〜34mm。
培養温度30℃:コロニー直径は30〜35mm。
培養温度37℃:生育は認められなかった。
【0015】
3.形態の微視的観察結果
栄養菌糸(vegetative hyphae)は、寒天表面上もしくは寒天内に形成され、無色で(hyaline)、隔壁を有し、かすがい連結(clamp connection)の形成が認められたが、厚壁胞子(chlamydospore)の形成は認められなかった。生殖器官(reproductive organ)については、1週間以上培養した平板において分生子(conidium)等の生殖器官構造の形成は認められなかった。
【0016】
(b)生理学的・化学分類学的性質
(1)最適生育条件 pH 5〜6、温度 25℃
(2)生育の範囲 温度 5〜35℃
(3)フェノールオキシダーゼ反応 陽性
【0017】
Pleurotus ostreatusの菌学的性質
(a)培養的・形態的性質
観察方法
1.形態の巨視的観察(コロニー形状)
ポテト・デキストロース寒天培地(商品名「ダイゴ」(日水製薬製))(PDA)プレートにPleurotus ostreatusを接種し、25℃で最長2週間の培養を実施した。培養1週間目からのコロニーの巨視的特徴について、肉眼及び実体顕微鏡SZH10(オリンパス社製)を用いて観察した。コロニー色調に関する記載はKornerup and Wanscher(1978)に従った。
【0018】
2.生育温度試験
検体をPDAプレートに接種し、20℃、25℃、27℃、30℃、37℃の各温度条件下で1週間培養し、巨視的観察を行った。
【0019】
観察結果
1.形態の巨視的観察結果
PDAプレートにおける1週間培養後の菌体について巨視的観察を行い、コロニーの直径、色調(コロニー表面及び裏面)、表面性状に関して記録を行った。観察の結果、下記のような特徴が認められた。
コロニー直径は60〜70mm、色調は白色(1A−1)、表面性状は綿毛状。
上記の( )内の数値は、Kornerup and Wanscher(1978)で用いられている色のコード番号を示す。
【0020】
2.生育温度試験結果
Pleurotus ostreatusをPDAプレートに接種し、各温度条件下で培養した結果は下記の通りであった。
培養温度20℃:コロニー直径は50〜60mm。
培養温度25℃:コロニー直径は60〜70mm。
培養温度30℃:コロニー直径は40〜50mm。
培養温度37℃:生育は認められなかった。
【0021】
(b)生理学的・化学分類学的性質
(1)最適生育条件 pH 5〜6、温度 25℃
(2)生育の範囲 温度 10〜35℃
【0022】
本発明に用いる担子菌培養法は、液体培養、固体培養のいずれでもよく、培養条件の厳密なコントロールが可能な菌糸体の培養が望ましい。また、天然物及びポット培養等における子実体の栽培も同様に行うことができる。
【0023】
本発明に用いる担子菌の培養法に使用する炭素源としては、ヒラタケ属担子菌が成長できる炭素源であれば何ら制限はないが、好ましくは、コーンスターチ、グルコース、マルトース、スクロース、ラクトース、澱粉、可溶性澱粉、セルロース、パルプ、マルツエキス、ビートモラセス、ケインモラセス、バレイショデンプン、キャッサバデンプン、ホエー、大豆油、オリーブ油、コーン油、綿実油、亜麻仁油等が挙げられ、好ましくは、コーンスターチ、グルコースが挙げられる。また、これら炭素源を併用して使用することもできる。
【0024】
本発明の担子菌の培養に用いる窒素源としては、ヒラタケ属担子菌が成長できる窒素源であれば何ら制限はないが、好ましくは、大豆粉、ファーマメディア、小麦ふすま、トウモロコシふすま、CSL、ピーナッツミール、屠殺場廃棄物、魚粉、カツオエキス、肉エキス、カゼイン由来のペプトン、ポリペプトン、酵母エキス等の有機体窒素、ソイトン、カザミノ酸等のタンパク質分解物、硝酸カリウム、硝酸カルシウム等の硝酸体窒素、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム体窒素、好ましくは、大豆粉、ファーマメディア、酵母エキス、CSLが挙げられる。また、これら窒素源を併用して使用することもできる。
【0025】
本発明の担子菌の培養に用いるミネラル源としては、ヒラタケ属担子菌が成長できるミネラル源であれば何ら制限はないが、カリウム、マグネシウム、リン、硫黄、カルシウム、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ナトリウム、クロライド等が挙げられ、好ましくはカリウム、マグネシウム、リン、硫黄、カルシウム、鉄、コバルト、銅、亜鉛、さらに好ましくはカリウム、マグネシウム、リン、硫黄、カルシウムが良い。
【0026】
本発明の担子菌の培養に関わるpHとしては、ヒラタケ属担子菌が成長できる範囲であれば何ら制限はないが、好ましくは、pH2.5〜8.5、さらに好ましくはpH3.5〜7.5、さらに好ましくはpH4.5〜6.5が良い。液体培地のpHはpH2.5よりも低い場合、又はpH8.5よりも高い場合、菌糸体の成長に著しく悪い影響を与える。
【0027】
本発明の担子菌の培養に関わる温度としては、ヒラタケ属担子菌が成長できる範囲であれば何ら制限はないが、好ましくは、15〜35℃、さらに好ましくは15〜30℃、さらに好ましくは20〜30℃が良い。
【0028】
本発明の担子菌を超微粒子化する粉砕方法は、所望の粒径を得ることができ、しかも、粉砕時の被処理物の温度が高温にならない限り、特に限定されるものではなく、公知の粉砕方法、例えば、ハンマーミル粉砕法、カッターミル粉砕法、ピンミル粉砕法、ジェットミル粉砕法、サイクロン粉砕法、又は、ボールミル粉砕法などを挙げることができる。
【0029】
本発明で使用したサイクロン粉砕機は、図1に示すように、一対の対向する第1ローター5、第2ローター6を回転自在に支持する粉砕機本体9と、それら第1ローター5、第2と第2ローター6をそれぞれ個別に高速回転させる第1、第2高速回転機構1,2とから主になる。粉砕機本体9には、導入口7と排出口8が設けられている。第1ローター5、第2ローター6は、粉砕機本体9内に同軸上で対向し、間隔を任意の長さに設定し得るように設計されている。第1ローター5は第1高速回転モーター1によって、また、第2ローター6は第2高速回転モーター2によって正逆回転し得ると共に回転速度を調節し得るように構成されている。
【0030】
サイクロン粉砕機は、例えば第1ローター5及び第2ローター6を逆方向に高速で回転させることにより、導入口7から導入された導入物の粒子同士の衝突による圧縮、衝撃、せん断力と、空気等の流体などの媒体を介した衝撃、せん断力とによって、所定の大きさに粉砕するように構成されている。また、粉砕粒径及び粒径分布は、第1ローター5及び第2ローター6の回転数や間隔を任意に可変させることによりを調節することができる。
【0031】
このサイクロン粉砕機は、液体窒素(−196℃)で冷却した超低温状態の担子菌も粉砕させることができ、吸い込み空気や粉砕機本体の外周部を冷却することにより、簡単に冷却粉砕ができる。具体的には、液体窒素で冷却した導入口7から液体窒素で冷却した担子菌を入れ、凍結粉砕を行う。この粉砕法では、ローターの回転によって発生した熱による抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強組成物の劣化や香気成分の逸脱を防ぐことができる。
【0032】
以上の粉砕方法を用いれば、超低温状態で、抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強組成物を含有する担子菌の細胞壁を破砕することができる。その結果、抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強組成物が、劣化することなく細胞外に出て、体内で効率よく吸収されやすくなる。
【0033】
本発明の担子菌の超微粒子化によって粉砕された粉砕品の平均粒径は、生体の細胞の大きさ(細胞サイズ)以下であれば特に制限しないが、好ましくは0.1μm〜30μmで、特に好ましくは1μm〜25μmである。その粉砕品の80%は、平均粒径の3倍以下であることが好ましく、より好ましくは2.5倍以下である。前記粒径を有する粉砕物では、有用成分の溶出及び体内への吸収が向上する。すなわち、本発明の超微粒子化した担子菌は、細胞の大きさ以下に粉砕されているため、細胞内の成分が外に出ており、そのため、抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強組成物の吸収効率が向上するものと考えられる。
【0034】
本発明の担子菌の超微粒子化を行う際の温度は、熱劣化による抗疲労効果の損失や香気成分の逸脱等が起こらない限り、特に限定されるものではいが、−30℃以下で行うことが好ましく、より好ましくは−50℃以下である。また、液体窒素中や液体酸素中で粉砕しても良い。この凍結粉砕方法では、粉砕時に高温となることがないため、抗疲労効果の損失や香気成分の逸脱することがない。
【0035】
本発明において、担子菌の超微粒子の測定方法については、通常の粒子、特に分散化状態にある粒子の測定方法を利用して行うことができる。例えば、粒径分布計を使用して、レーザー回折・錯乱式粒径分布測定法により測定することができる。
【0036】
本発明で用いるヒラタケ属担子菌(Pleurotus)抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強組成物は、その子実体、菌糸体、培養物をそのまま、あるいはその乾燥体、もしくはその乾燥体を粉砕した粉末から得ることができる。このうちでも乾燥体が好ましく用いられる。
さらに、子実体、菌糸体、培養物から溶媒で抽出して得ることもできる。
なお、アルコール等の抽出成分には、水に不要な固形物もあり、これらも本発明の粉砕の対象として用いることができる。
【0037】
本発明の抽出は、水抽出、熱水抽出、酸性下での抽出、アルカリ性下での抽出、メタノール、エタノール、プロパノール、ヘキサン、酢酸又は酢酸エチル等の有機溶媒抽出、超臨界水、超臨界二酸化炭素等の超臨界溶媒抽出等が挙げられる。さらに、培地中に有効成分が放出される際には培養物が液体の場合は、培養液を濃縮して用いることもでき、また、培養液を上記の方法で抽出することによっても用いることができる。抽出物は、単一成分でも、複数成分含んでいるものでも良い。さらに、子実体、菌糸体、培養液等の各種分画操作を経て作用の強い画分のみを抽出した抽出物を用いることもできる。
【0038】
本発明の超微粒子化した担子菌の場合、細胞粉砕によって抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強組成物が細胞外に出ているため、また、比表面積が増加するために、溶媒等による抽出が効率的となる。
【0039】
本発明における「疲労」とは、生体がある機能を発揮した結果、その機能が低下する現象をいう。これらに限定されるものではないが例えば、「水泳をした後の肉体疲労」「長時間にわたり、知的労働をした後の精神疲労」「毎日の通常生活においても蓄積する肉体的及び精神的な複合疲労」等を挙げることができる。
「抗疲労作用」とは本発明の組成物等を飲食服用することにより、そのような「疲労」状態を軽減させる作用及び「疲労」状態よりの回復を促進する作用、あるいは「疲労」を予防し、疲れにくくする作用などをいう。
「持久力」とは、ある一定の運動状態を継続して行うことができる能力をいい、「持久力増強作用」とは、その継続してできる能力が増強される作用、例えば、具体的には継続時間が延びることにより確認することができる。
【0040】
本発明における抗疲労作用及び持久力増強作用の評価方法は、抗疲労作用及び持久力増強作用を評価できる方法で有れば特に制限はないが、強制水泳法、京大松元式運動量測定法、自発運動測定法、限界走行時間法、水浸拘束ストレス負荷等が挙げられる。特に、強制水泳法は、動物個体における総合的な反応の変化による抗疲労作用及び持久力増強作用を評価するために常用される試験である。水を投与したコントロール群とサンプルを投与した試験群を比較した時、試験群の遊泳時間が延長した場合は、サンプルが抗疲労作用及び持久力増強作用を有すること示す。
【0041】
上記の方法で得られたヒラタケ属担子菌(Pleurotus)の抗疲労作用及び/又は持久力増強作用を持つ組成物は、飲食品としてあるいは医薬品として用いることができる。医薬品としては、抗疲労剤又は持久力増強剤がこれに相当する。
【0042】
医薬品としては、組成物それ自体で、あるいは常法に従って公知の医薬用無毒性担体と組み合わせることもでき、種々の製剤化が可能である。例えば、経口投与剤としては錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、凍結乾燥製剤等が挙げられ、非経口投与剤としては、注射剤のほか、坐剤、噴霧剤、経皮吸収剤等が挙げられ、これらの製剤は製剤上の常套手段により調整することができる。
【0043】
上記の医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、アルブミン、水、生理食塩水等が挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤等の慣用の添加剤を適宜添加することができる。
【0044】
本発明に関わる抗疲労組成物及び持久力増強組成物を含有する医薬品の形態におけるヒラタケ属担子菌(Pleurotus)の粉末もしくは抽出物の投与量は、患者の年齢、体重、症状、疾患の程度、投与スケジュール、製剤形態などにより、適宜選択・決定されるが、例えば、一日あたり乾燥粉末等価量として0.01〜10g/kg体重程度とされ、一日数回に分けて投与してもよい。
【0045】
動物においても人間用と同様に製剤化すればよい。動物の年齢、体重、症状、疾患の程度、投与スケジュール、製剤形態などにより、適宜選択・決定されるが、例えば、一日あたり0.01〜10g/kg体重程度とされ、一日数回に分けて投与してもよい。
【0046】
本発明の食品としては、例えば、ヒラタケ属担子菌(Pleurotus)の粉末に適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル剤、ペースト状等に形成したものを用いることができる。この機能性食品は、そのまま食用に供してもよく、また種々の食品(例えばハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、パン、バター、粉乳、菓子など)に添加して使用しても、水、酒類、果汁、牛乳、清涼飲料水等の飲物に添加して使用してもよい。
【0047】
かかる食品の形態における本発明のヒラタケ属担子菌(Pleurotus)の粉末もしくは抽出物の摂取量は、対象の年齢、体重、症状、摂取スケジュール、製剤形態などにより、適宜選択、決定されるが、例えば、一日あたり乾燥粉末等価量として0.01〜10g/kg体重程度とされる。
【0048】
動物においても同様にヒラタケ属担子菌(Pleurotus)に適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル剤、ペースト状等に形成したものを用いることができる。また、飼料及びペットフードに添加して使用しても、水などの飲料水に添加してもよい。
【0049】
かかる食品の形態における本発明のヒラタケ属担子菌(Pleurotus)の粉末もしくは抽出物の摂取量は、動物の年齢、体重、症状、摂取スケジュール、製剤形態などにより、適宜選択、決定されるが、例えば、一日あたり乾燥粉末等価量として0.01〜10g/kg体重程度とされる。
【実施例】
【0050】
以下に本発明をより詳細に説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
〔製造例1〕
乾燥ウスヒラタケ(Pleurotus pulmonarius S82株)菌糸体の製造
(種菌の調製)
保存していたウスヒラタケの斜面培地培養菌糸体をマルツエキス2.0%、酵母エキス0.2%、寒天1.5%の培地組成で作製した寒天培地に接種し、28℃において7日間平面培養した。これを種菌として用いた。
(フラスコシード培養のための液体培地の調製)
次に液体培地を作る。マルツエキス2.0%、酵母エキス0.2%の培地組成で液体培地を作製し、500mL三角フラスコに200mLずつ分注した後オートクレーブ滅菌した。
(フラスコシード培養)
上記のフラスコシード培養のための液体培地を室温まで放冷した後、種菌を内径4mmのコルクボーラーで打ち抜き、そのディスク片6つを1.5mL容ポリプロピレン製チューブに移し、ホモジナイザーペッスルでホモジナイズ後に接種した。接種後は温度28℃、暗条件下で5日間振とう培養(120rpm)を行った。これをフラスコシード培養の培養液をした。
(30Lジャーシード培養のための液体培地の調製)
次に、30Lジャーシード培養のための液体培地を作る。グルコース2.5%、コーンスターチ0.5%、大豆粉1.0%、リン酸二水素カリウム0.1%、硫酸マグネシウム七水和物0.1%の培地組成で液体培地を作製し、30Lジャーファーメンターに15L仕込んだ後121℃で30分間蒸気滅菌した。
(30Lジャーシード培養)
上記の30Lジャーシード培養のための液体培地を室温まで冷却した後、フラスコシード培養の培養液を5.0%になるように移植した。移植後は温度28℃、攪拌120〜265rpm、通気0.2vvm、暗条件下で3日間培養を行った。培養中は液体培地のpHがpH5.5で一定になるように、アルカリとして20%のNaOH水溶液、酸として1NのHCl水溶液を使用して自動制御を行った。
(200Lジャーシード培養のための液体培地の調製)
次に、200Lジャーシード培養のための液体培地を作る。グルコース2.5%、コーンスターチ0.5%、大豆粉1.0%、リン酸二水素カリウム0.1%、硫酸マグネシウム七水和物0.1%の培地組成で液体培地を作製し、200Lジャーファーメンターに120L仕込んだ後121℃で30分間蒸気滅菌した。
(200Lタンクシード培養)
上記の200Lジャーシード培養のための液体培地を室温まで冷却した後、30Lジャーシード培養の培養液を5.0%になるように移植した。移植後は温度28℃、攪拌60〜180rpm、通気0.2〜0.4vvm、暗条件下で3日間培養を行った。培養中は液体培地のpHがpH5.5で一定になるように、アルカリとして20%のNaOH水溶液、酸として1NのHCl水溶液を使用して自動制御を行った。
(5kLタンク本培養のための液体培地の調製)
次に、5kLタンク本培養のための液体培地を作る。グルコース2.5%、コーンスターチ0.5%、大豆粉1.0%、リン酸二水素カリウム0.1%、硫酸マグネシウム七水和物0.1%の培地組成で液体培地を作製し、5kLタンクに3kL仕込んだ後121℃で30分間蒸気滅菌した。
(5kLタンク本培養)
上記の5kLタンク本培養のための液体培地を室温まで冷却した後、200Lタンクシード培養の培養液を4.0%になるように移植した。移植後は温度28℃、攪拌60〜130rpm、通気0.2〜0.5vvm、暗条件下で5日間培養を行った。培養中は液体培地のpHがpH5.5で一定になるように、アルカリとして20%のNaOH水溶液、酸として1NのHCl水溶液を使用して自動制御を行い、培養開始3日目にはpHを一度pH7.2まで上げた。
(集菌と乾燥)
培養を始めてから5日後に、菌糸体をろ過してから集菌し、そのケーキ部分を回収した。解砕したウスヒラタケ菌糸体のブロック(含水率94.0%W.B.)3kg を専用トレー(500mm ×700mm)に充填し、−30 ℃で24時間予備凍結した。なお、「W.B.」は湿潤重量(wet base)を意味する。予備凍結したウスヒラタケ菌糸体を減圧条件下で凍結乾燥し、凍結乾燥品0.18kg を得た。凍結乾燥時のウスヒラタケ菌糸体の最高温度は35 ℃であり、凍結乾燥を完了するまで30 時間を要した。凍結乾燥品の含水率は2.78%W.B.であった。
【0051】
〔実施例1〕
(ウスヒラタケの超微粒子化)
上記の乾燥ウスヒラタケ菌糸体の製造工程に従って得られた乾燥ウスヒラタケ菌子体5.0kgをサイクロン粉砕機で粉砕した。図1に示す同体摩擦粉砕機の第1ローター、第2ローターを6000rpm(粒子速度:257m/秒)で回転させ、全体を液体窒素(LN、−196℃)で冷却し、排出口の温度が−50℃に保持されるように導入口から液体窒素(LN、−196℃)を導入した。そこに液体窒素で冷却した乾燥ウスヒラタケ菌子体5.0kgを入れ、10分間粉砕を行った。得られた粉砕品の粒径分布を図2に示す。平均粒径は23.7μmであり、全粒子の80%は、39.4μm以下であることが判った。粉砕後の乾燥ウスヒラタケ菌子体の臭いは、粉砕後のウスヒラタケ菌子体の臭いと同じであった。このようにして得られた粉砕品を後述する抗疲労効果の測定試験に用いた。
【0052】
〔比較例1〕
図1に示す同体摩擦粉砕機の第1ローター、第2ローターを5500rpmで回転させた以外、実施例1と同様の方法で粉砕を行った。その結果、平均粒径は39.5μmであり、全粒子の80%は、66.2μm以下であることが判った。粉砕後の乾燥ウスヒラタケ菌子体の臭いは、粉砕後のウスヒラタケ菌子体の臭いと同じであった。このようにして得られた粉砕品を抗疲労効果の測定試験に用いた。
【0053】
(抗疲労効果の測定試験)
5週齢の雄性ddYマウスを用い、6日間の予備飼育後、1群10匹で3群に分けた。群構成は、水を投与する対照群、実施例1で得られた乾燥ウスヒラタケ菌子体400mg/kgを投与する群、比較例1で得られた乾燥ウスヒラタケ菌子体400mg/kgを投与する群とし、3週間連続経口投与を行った。投与後にマウスに体重の8.5%の重りを付加して強制水泳させ、疲労困憊し頭部が完全に7秒間水中に沈むまでの時間を測定した。その結果を表1に示す。
表の数値は、平均値(秒)±標準誤差を示した。表中、*はそれぞれ危険率5%で、**はそれぞれ危険率1%で試験投与群が対照群に対して有意差があることを示す(Student test)。
【0054】
これらの結果より、平均粒径が30μm以下の乾燥ウスヒラタケ菌子体を投与したマウス(実施例1)の遊泳時間が、30μm以上の乾燥ウスヒラタケ菌子体を投与したマウス(比較例1)の遊泳時間より、有意に延長されることが判った。粒径の小さい乾燥ウスヒラタケ菌子体の場合、菌子体が体内に吸収される効率、及び、菌子体中の抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強作用組成物が体液に溶け出し、それら組成物が体内に吸収される効率が向上したものと考えられる。
【0055】
〔比較例2〕
サイクロン粉砕機及び乾燥ウスヒラタケ菌子体を液体窒素で冷却しない以外は、実施例1と同様の製造方法で粉砕を行った。その結果、平均粒径は29.6μmであり、全粒子の80%は、45.3μm以下であることが判った。粉砕後の乾燥ウスヒラタケ菌子体の臭いは、粉砕前の乾燥ウスヒラタケ菌子体の臭いと異なっていた。このようにして得られた粉砕品を抗疲労効果の測定試験に用いた。
抗疲労効果の測定は、群構成を、水を投与する対照群、実施例1で得られた乾燥ウスヒラタケ菌糸体400mg/kgを投与する群及び比較例2で得られた乾燥ウスヒラタケ菌糸体400mg/kgを投与する群とし、上述した実施例1と同様の方法により行った。
その結果を表2に示す。
【0056】
これらの結果より、液体窒素(−196℃)で冷却しながら粉砕した乾燥ウスヒラタケ菌子体を投与したマウス(実施例1)の遊泳時間が、冷却しないで粉砕した乾燥ウスヒラタケ菌子体を投与したマウス(比較例2)の遊泳時間より、顕著に延長されることが判った。冷却しない場合、ローターの回転のために粉砕機本体内の温度が110℃以上の高温となり、ウスヒラタケ菌子体中の抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強組成物が熱劣化したものと考えられる。
【0057】
〔製造例2〕
乾燥ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)菌糸体の製造
(種菌の調製)
保存していたヒラタケの斜面培地培養菌糸体をマルツエキス2.0%、酵母エキス0.2%、寒天1.5%の培地組成で作製した寒天培地に接種し、28℃において7日間平面培養した。これを種菌として用いた。
(フラスコシード培養)
上記のフラスコシード培養のための液体培地を室温まで放冷した後、種菌を内径4mmのコルクボーラーで打ち抜き、そのディスク片6つを1.5mL容ポリプロピレン製チューブに移し、ホモジナイザーペッスルでホモジナイズ後に接種した。接種後は温度28℃、暗条件下で5日間振とう培養(120rpm)を行った。これをフラスコシード培養の培養液をした。
(30Lジャーシード培養のための液体培地の調製)
次に、30Lジャーシード培養のための液体培地を作る。MY液体培地に移して7日間の撹拌培養を行った。培養槽は10L容のものを用い、MY液体培地を作製し、30Lジャーファーメンターに15L仕込んだ後121℃で30分間蒸気滅菌した。
(30Lジャーシード培養)
上記の30Lジャーシード培養のための液体培地を室温まで冷却した後、フラスコシード培養の培養液を5.0%になるように移植した。移植後は温度25℃、攪拌120〜265rpm、通気0.2vvm、暗条件下で3日間培養を行った。培養中は液体培地のpHがpH5.5で一定になるように、アルカリとして20%のNaOH水溶液、酸として1NのHCl水溶液を使用して自動制御を行った。
(200Lジャーシード培養のための液体培地の調製)
次に、200Lジャーシード培養のための液体培地を作る。MY液体培地を作製し、200Lジャーファーメンターに120L仕込んだ後121℃で30分間蒸気滅菌した。
(200Lタンクシード培養)
上記の200Lジャーシード培養のための液体培地を室温まで冷却した後、30Lジャーシード培養の培養液を5.0%になるように移植した。移植後は温度25℃、攪拌60〜180rpm、通気0.2〜0.4vvm、暗条件下で3日間培養を行った。培養中は液体培地のpHがpH5.5で一定になるように、アルカリとして20%のNaOH水溶液、酸として1NのHCl水溶液を使用して自動制御を行った。
(5kLタンク本培養のための液体培地の調製)
次に5kLタンク本培養のための液体培地を作る。MY液体培地を作製し、5kLタンクに3kL仕込んだ後121℃で30分間蒸気滅菌した。
(5kLタンク本培養)
上記の5kLタンク本培養のための液体培地を室温まで冷却した後、200Lタンクシード培養の培養液を4.0%になるように移植した。移植後は温度25℃、攪拌60〜130rpm、通気0.2〜0.5vvm、暗条件下で5日間培養を行った。培養中は液体培地のpHがpH5.5で一定になるように、アルカリとして20%のNaOH水溶液、酸として1NのHCl水溶液を使用して自動制御を行った。
(集菌と乾燥)
培養を始めてから5日後に、菌糸体をろ過してから集菌し、そのケーキ部分を回収した。解砕したヒラタケ菌糸体のブロック(含水率94.0%W.B.)3kg を専用トレー(500mm ×700mm)に充填し、−30 ℃で24時間予備凍結した。なお、「W.B.」は湿潤重量(wet base)を意味する。予備凍結したヒラタケ菌糸体を減圧条件下で凍結乾燥し、凍結乾燥品0.18kg を得た。凍結乾燥時のヒラタケ菌糸体の最高温度は35 ℃であり、凍結乾燥を完了するまで30 時間を要した。凍結乾燥品の含水率は2.78%W.B.であった。
【0058】
〔実施例2〕
(ヒラタケの超微粒子化)
実施例1と同様の方法で、ヒラタケの超微粒子化を行った。得られた粉砕品の粒径分布を図3に示す。平均粒径は23.3μmであり、全粒子の80%は、34.2μm以下であることが判った。粉砕後の乾燥ヒラタケ菌子体の臭いは、粉砕前の乾燥ヒラタケ菌子体の臭いと同じであった。このサンプルを実施例1と同様の方法で、抗疲労効果測定試験を行った。その結果を表3に示す。
【0059】
〔比較例3〕
製造例1の乾燥ヒラタケ菌子体を比較例1と同様の方法で粉砕を行った。その結果、平均粒径は38.5μmであり、全粒子の80%は、64.5μm以下であることが判った。このサンプルを実施例1と同様の方法で、抗疲労効果測定試験を行った。その結果を表3に示す。
【0060】
これらの結果より、平均粒径が30μm以下の乾燥ヒラタケ菌子体を投与したマウス(実施例2)の遊泳時間が、30μm以上の乾燥ヒラタケ菌子体を投与したマウス(比較例3)の遊泳時間より、有意に延長されることが判った。粒径の小さい乾燥ヒラタケ菌子体の場合、菌子体が体内に吸収される効率、及び、菌子体中の抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強作用組成物が体液に溶け出し、それら組成物が体内に吸収される効率が向上したものと考えられる。
【0061】
【表1】

【表2】

【表3】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】サイクロン粉砕機の一例を示す構成図である。
【図2】乾燥ウスヒラタケ菌子体をサイクロン粉砕機で粉砕した粒径分布を示す図である。
【図3】乾燥ヒラタケ菌子体をサイクロン粉砕機で粉砕した粒径分布を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 第1高速回転モーター
2 第2高速回転モーター
3 第1回転軸
4 第2回転軸
5 第1ローター
6 第2ローター
7 導入口
8 排出口
9 粉砕機本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒラタケ属担子菌(Pleurotus)を粉砕して細胞の大きさ以下である粒子を調製することを特徴とする抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強作用組成物の製造方法。
【請求項2】
細胞の大きさ以下である粒子が、平均粒径が0.1μm〜30μmの粒子である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
細胞の大きさ以下である粒子が、平均粒径が1μm〜25μmの粒子である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
粉砕を、−30℃以下で行う請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
粉砕を、−50℃以下で行う請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
粉砕を、液体窒素中で行う請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
ヒラタケ属担子菌(Pleurotus)が、ウスヒラタケ(Pleurotus pulmonarius)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、エリンギ(Pleurotus eryngii)、タモギタケ(Pleurotus cornucopiae)のいずれかである請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
ウスヒラタケ(Pleurotus pulmonarius)が、Pleurotus pulmonarius S82株(FERM P−20222)である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
ヒラタケ属担子菌(Pleurotus)が、培養菌糸体である請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法により製造される抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強作用組成物 。
【請求項11】
請求項10に記載の抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強作用組成物を含有し、抗疲労作用及び/又は持久力増強作用を有するものである旨の表示を付した飲食品。
【請求項12】
請求項10に記載の抗疲労作用組成物及び/又は持久力増強作用組成物を含有する医薬品。
【請求項13】
ヒラタケ属担子菌(Pleurotus)を−30℃以下の冷却条件下で粉砕して得られる、平均粒径30μm以下のヒラタケ属担子菌(Pleurotus)の微粒子。
【請求項14】
ヒラタケ属担子菌(Pleurotus)が、あらかじめ凍結乾燥された乾燥物である、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−277138(P2007−277138A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104455(P2006−104455)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】