説明

抗疲労剤およびそれを含む飲食品

【課 題】 ヨモギの有機溶媒抽出物の新規かつ有用な用途の提供。
【解決手段】ヨモギの有機溶媒抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗疲労剤、およびそれを含む飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨモギの有機溶媒抽出物含有の抗疲労剤およびそれを含んでなる飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
疲労とは、精神的または肉体的に活動した後に続く、仕事量の減少、遂行の非能率化などを特徴とする状態を指す。通常、倦怠感、眠気、怒りっぽいことなどを伴う。様々な原因によりエネルギー消費量が再生過程を上回った場合にも起こることがあり、単一の器官に限定されることがある。
長時間におよぶ運動や労働により、エネルギー枯渇や興奮収縮連関不全に起因した末梢性疲労やセロトニン代謝の低下に起因した中枢性疲労を引き起こす。疲労を軽減するためには休息や睡眠をとることが有効な手段として挙げられるが、日常生活を送る上で疲労から回復するための十分な休息及び睡眠をとることは困難である。ところが、抗疲労効果を有する成分を含有した飲食品及び医薬品の摂取は、随時、簡便、継続的に実施できるため、連日の運動や労働による疲労を予防する、あるいは疲労からの回復を促進させる方法として有効である。
【0003】
ヨモギは、キク科の多年草であり、海岸から高山に至るまで各地で広く分布している。ヨモギは、草餅に使われるのでモチグサや、灸に使われるのでモグサ又はキュウグサなどの別名がある。ヨモギの種類は多く、日本に30種ほどあり、世界中に250種〜400種ほどあるといわれている。ヨモギは、その種類によって、虫さされによる痒み防止、切り傷の治療又は止血等を目的とする塗布剤に用いられたり、神経痛、リュウマチ又は胃病等の治療を目的とする飲料に用いられたり、草餅又はヨモギ餅などの一般食品に用いられたりしている。
【0004】
化粧料、洗浄剤組成物、口腔用組成物又は食品にヨモギを用いることにより、その化粧料等が、創傷治癒、肌荒れ防止、肌荒れ改善、皮膚の痒みの改善、又は体臭或いは口臭の防止等の効果を奏することが知られている(特許文献1)。また、ヨモギを焙煎処理又は遠赤外線焙煎処理して、ふりかけ等の食品又はシャンプ−、リンス、ハミガキ、入浴剤、デオドラント剤、スキンロ−ションなどの化粧品に用いると、その食品又は化粧品に抗菌活性、消臭活性、抗酸化活性又はアミラ−ゼ阻害活性等を付与できることが知られている(特許文献2および3)。また、遠赤外線焙煎処理したヨモギから得られる熱水抽出物に運動能力を向上させる効果があることが非特許文献1に記載されており、その研究報告が第49回 日本栄養・食糧学会大会において平成7年5月21日に発表されている。また、この発表において、未焙煎ヨモギからの抽出物には効果が認められないことが報告されている。さらに、ヨモギの薬効として、腹痛、腰痛、吐瀉、子宮出血、発熱、動脈硬化症、ゼンソク、痔、下痢に対する作用が知られており(特許文献4や特許文献5)、ヨモギの乾燥粉末が防腐作用を有することも知られている(特許文献6)。
しかしながら、ヨモギの作用・効果について、その詳細まで判明しておらず、またヨモギのさらなる作用・効果が知見され、ヨモギの新規且つ有用な用途の開発が期待されている。
【0005】
【特許文献1】特開平05−000962号公報
【特許文献2】特開平07−033636号公報
【特許文献3】特開平6−245983号公報
【特許文献4】特開平8−70829号公報
【特許文献5】特開平8−89219号公報
【特許文献6】特開2003−259834号公報
【非特許文献1】第49回 日本栄養・食糧学会大会 講演要旨集、平成7年4月10日発行、220頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ヨモギの有機溶媒抽出物の新規かつ有用な用途を提供することを目的とする。また、本発明は、新規な抗疲労剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、驚くべきことに、ヨモギの処理物のうち、ヨモギの水抽出物ではなく、ヨモギの有機溶媒抽出物が優れた抗疲労作用を有することを知見し、ヨモギの有機溶媒抽出物が抗疲労剤として有用であることを見出した。
また、本発明者らは、かかる種々の知見を得た後、さらに検討を重ねて、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1] ヨモギの有機溶媒抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗疲労剤、
[2] 疲労からの回復促進剤である前記[1]記載の抗疲労剤、
[3] 疲労予防剤である前記[1]記載の抗疲労剤、
[4] ヨモギの有機溶媒抽出物がヨモギの低級アルコール抽出物である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の抗疲労剤、
[5] ヨモギの低級アルコール抽出物がヨモギのエタノール抽出物である前記[4]記載の抗疲労剤、
[6] ヨモギの有機溶媒抽出物がヨモギの有機溶媒抽出濃縮物である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の抗疲労剤、
[7] ヨモギの有機溶媒抽出物を乾燥重量換算で0.05〜5g含有する単位投与量形態である前記[1]〜[6]のいずれかに記載の抗疲労剤、および
[8] 前記[1]〜[7]のいずれかに記載の抗疲労剤を含んでなる飲食品、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の抗疲労剤およびそれを含んでなる飲食品は、優れた抗疲労効果を奏し、健康の維持、増進に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で使用されるヨモギの有機溶媒抽出物は、ヨモギを有機溶媒で抽出したものであれば特に限定されず、このような例としては、ヨモギの全草、根、葉、茎もしくは種子またはその乾燥物、その乾燥物の粉砕物を、有機溶媒(例えばメタノール又はエタノール等のアルコール、エーテル又はケトン等)で浸漬抽出し、残渣を濾別して得られた抽出液(エキス)、このエキスを濃縮して得られた有機溶媒抽出濃縮物(濃縮エキス)、エキスや濃縮エキスから溶媒を除去したもの、これらの微粉末、又はこれらを適当な溶媒で溶解、分散又は希釈したもの等が挙げられる。本発明においては、上記ヨモギの有機溶媒抽出物が、ヨモギのアルコール抽出物であるのが好ましく、ヨモギの低級アルコール抽出物であるのがより好ましく、ヨモギのエタノール抽出物であるのが最も好ましい。また、上記ヨモギの有機溶媒抽出物が、ヨモギの有機溶媒抽出濃縮物であるのも好ましく、ヨモギの低級アルコール抽出濃縮物であるのがより好ましく、ヨモギのエタノール抽出濃縮物であるのが最も好ましい。
【0011】
上記ヨモギは、産地等特に限定されず、日本産ヨモギであってもよいし、中国産ヨモギであってもよい。あらゆる国に分布するヨモギであってよい。ヨモギの種類としては、例えばヨモギ属(Artemisia)、ムカシヨモギ属(Erigeron)、又はヒキヨモギ属(Siphonostegia)などが挙げられる。
【0012】
ヨモギ属の植物としては、例えば、アサギリソウ(Artemisia schmidtiana Maxim.)、イヌヨモギ(Artemisia keiskeana Miq.)、イワヨモギ(Artemisia iwayomogi Kitam.)、エストラゴン(Artemisia dracunculus L.)、エゾハハコヨモギ(Artemisia trifurcata var. pedunculosa)、エゾヨモギ{Artemisia Montana (NAKAI) PAMP.、Artemisia vulgaris L.var.vulgatissima BESS.}、エトロフヨモギ(Artemisia insularis Kitam.)、オオワタヨモギ(Artemisia koidzumii Nakai)、オトコヨモギ(Artemisia japonica Thunb.)、オニオトコヨモギ(Artemisia congesta Kitam.)、ガイヨウ(Artemisia lavandulaefolia DC.)、カズザキヨモギ(Artemisia princeps PAMP.、Artemisia vulgaris L.indica MAXIM)、カワラニンジン(Artemisia apiacea Hance)、カワラヨモギ(Artemisia capillaris Thunb.)、キタダケヨモギ(Artemisia kitadakensis)、クソニンジン(Artemisia annua Linn.)、クラムヨモギ(Artemisia kurramensis)、ケショウヨモギ(Artemisia dubia Wall. ex DC.)、サマニヨモギ(Artemisia arctica Less. subsp. sachalinensis Hulten)、シコタンヨモギ(Artemisia laciniata Willd.)、シナ(Artemisia cina Berg.)、シロサマニヨモギ(Artemisia arctica Less. subsp. sachalinensis Hulten f. villosa (Koidz.) Kitam.)、シロヨモギ(Artemisia stelleriana Besser)、タカネヨモギ(Artemisia sinanensis Yabe)、タカヨモギ(Artemisia selengensis Turcz.)、チシマヨモギ(Artemisia unalaskensis Rydberg)、チョウセンヨモギ(Artemisia argyi LEVL. et VANT.)、ニイタカヨモギ(Artemisia campestris Linn.)、ニガヨモギ(Artemisia absinthium Linn.)、ニシヨモギ(Artemisia indica Willd.)、ハイイロヨモギ(Artemisia sieversiana Willd.)、ハハコヨモギ(Artemisia glomerata Ledeb.)、ハマオトコヨモギ(Artemisia japonica Thunb. var. littoricola (Kitam.) Kitam.)、ハマヨモギ(Artemisia fukudo Makino)、ヒトツバヨモギ(Artemisia monophylla Kitam.)、ヒメヨモギ(Artemisia feddei Leveil. et Vaniot)、ヒロハノヒトツバヨモギ(Artemisia stolonifera (Maxim.) Komar.)、ホクチヨモギ(Artemisia igniaria Maxim.)、ミブヨモギ(Artemisia maritima Linn.)、ミヤマオトコヨモギ(Artemisia pedunculosa Miq.)、ヤブヨモギ(Artemisia rubripes Nakai)、ユキヨモギ(Artemisia momiyamae Kitam.)、ヨモギナ(Artemisia lactiflora Wall. ex DC.)、又はワタヨモギナ(Artemisia gilvescens Miq.)などが挙げられる。
【0013】
ムカシヨモギ属の植物としては、例えば、アズマギク(Erigeron thunbergii A. Gray)、アポイアズマギク(Erigeron thunbergii A. Gray var. angustifolius)、アレチノギク(Erigeron bonariensis Linn.)、エゾムカシヨモギ(Erigeron acer Linn.)、オオアレチノギク(Erigeron sumatrensis Retz.)、ケナシヒメムカシヨモギ(Erigeron pusillus Nutt.)、ハルジオン(Erigeron philadelphicus Linn.)、ヒメムカシヨモギ(Erigeron canadensis Linn.)、ヒロハムカシヨモギ(Erigeron acer Linn. var. amplifolius Kitam.)、ペラペラヨメナ(Erigeron karvinskianus DC.)、ホソバムカシヨモギ(Erigeron acer Linn. var. linearifolius (Koidz.) Kitam.)、ミヤマアズマギク(Erigeron thunbergii A. Gray subsp. glabratus (A. Gray) Hara)、ミヤマノギク(Erigeron miyabeanus Tatew. et Kitam.)、ムカシヨモギ(Erigeron acer Linn. var. kamtschaticus (DC.) Herder)又はヤナギバヒメジョン(Erigeron pseudo-annuus Makino)などが挙げられる。
【0014】
ヒキヨモギ属の植物としては、例えばオオヒキヨモギ(Siphonostegia laeta S. Moore)、又はヒキヨモギ(Siphonostegia chinensis Benth.)などが挙げられる。
本発明においては、上記ヨモギが、日本産ヨモギ又は中国産ヨモギであるのが好ましい。
【0015】
本発明によれば、上記ヨモギの有機溶媒抽出物がヨモギ(乾燥物)の低級アルコール抽出物である場合、低級アルコールと上記ヨモギとの配合割合は、低級アルコール1Lに対して上記ヨモギ約10〜200gであるのが好ましく、約10〜100gであるのがより好ましい。
また、本発明によれば、上記ヨモギの有機溶媒抽出物が、ヨモギ(乾燥物)の低級アルコール抽出濃縮物である場合、濃縮後の低級アルコールと上記ヨモギとの配合割合は、低級アルコール1mLに対して上記ヨモギ約0.01〜50gであるのが好ましく、約0.1〜20gであるのがより好ましい。
【0016】
本発明の抗疲労剤は、上記ヨモギの有機溶媒抽出物および所望により添加剤等を用いて、常法に従い製造される。
【0017】
上記添加剤としては、例えば、賦形剤、pH調整剤、清涼化剤、懸濁化剤、消泡剤、粘稠剤、溶解補助剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤又は香料などが挙げられる。
【0018】
上記賦形剤としては、例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール或いはキシリトールなどの糖アルコール、ブドウ糖、白糖、乳糖或いは果糖などの糖類、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、りん酸水素カルシウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、βーシクロデキストリン、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0019】
上記pH調整剤としては、例えばクエン酸、リンゴ酸、リン酸水素ナトリウム又はリン酸二カリウムなどが挙げられる。
【0020】
上記清涼化剤としては、例えばl−メントール又はハッカ水などが挙げられる。
【0021】
上記懸濁化剤としては、例えば、カオリン、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、メチルセルロース又はトラガントなどが挙げられる。
【0022】
上記消泡剤としては、例えばジメチルポリシロキサン又はシリコン消泡剤などが挙げられる。
【0023】
上記粘稠剤としては、例えばキサンタンガム、トラガント、メチルセルロース又はデキストリンなどが挙げられる。
【0024】
上記溶解補助剤としては、例えばエタノール、ショ糖脂肪酸エステル又はマクロゴールなどが挙げられる。
【0025】
上記崩壊剤としては、例えば低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ又は部分アルファー化デンプンなどが挙げられる。
【0026】
上記結合剤としては、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニールピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、プルラン、アルファー化デンプン、カンテン、トラガント、アルギン酸ナトリウム又はアルギン酸プロピレングリコールエステルなどが挙げられる。
【0027】
上記滑沢剤としては、例えばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル、セタノール、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ジメチルポリシロキサン、ミツロウ又はサラシミツロウなどが挙げられる。
【0028】
上記抗酸化剤としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール又はクエン酸などが挙げられる。
【0029】
上記コーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メタアクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタートジエチルアミノアセテート又はセラックなどが挙げられる。
【0030】
上記着色剤としては、例えばウコン抽出液、リボフラビン、酸化チタン又はカロチン液などが挙げられる。
【0031】
上記矯味矯臭剤としては、例えばクエン酸、アジピン酸、アスコルビン酸又はメントールなどが挙げられる。
【0032】
上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリソルベート類、ラウリル硫酸ナトリウム、マクロゴール類又はショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0033】
上記可塑剤としては、例えばクエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、トリアセチン又はセタノールなどが挙げられる。
【0034】
上記香料としては、例えば、動物性香料或いは植物性香料等の天然香料、又は単離香料或いは純合成香料等の合成香料などが挙げられる。
【0035】
剤型は投与形態又は使用形態等に応じて適宜に選択され、公知の手段でもって、例えば散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、座剤又は軟膏剤等の固形剤型、例えば溶液又は懸濁剤等の液状剤型、ゲル剤、ゾル剤などに加工され得る。投与形態は、経口投与が一般的であるが、これに限定されない。
【0036】
本発明の抗疲労剤は、ヨモギの有機溶媒抽出物を乾燥重量換算で0.05〜5g、好ましくは0.1〜1.5g含有する単位投与量形態であるのが好ましい。本明細書及び特許請求の範囲で使用する「単位投与量形態」とは物理的に分けた単位を意味し、各単位には所望の抗疲労効果が得られるように計算した予め定められた量の有効成分を添加剤と共に含んでいる。
【0037】
また、本発明の抗疲労剤は、疲労からの回復促進剤であっても、疲労予防剤であっても、ヒトに適用される場合には、その有効成分であるヨモギの有機溶媒抽出物の1日当たりの摂取量が原料であるヨモギの乾燥重量換算で2.5〜50g/日であるのが好ましく、より好ましくは5〜25g/日である。
【0038】
ヨモギの葉は古くから食品に用いられており、その用途としては草餅、草団子、和え物などが挙げられる。しかし、その使用量は少なく、例えば草餅1個(50g)に含まれるヨモギは、乾燥重量で0.25g程度である。上記したように、本発明の抗疲労剤がヒトに適用される場合、その有効成分であるヨモギの有機溶媒抽出物の1日当たりの摂取量が原料であるヨモギの乾燥重量換算で2.5〜50g/日であるのが好ましく、より好ましくは5〜25g/日である。そのため、草餅摂食により抗疲労効果を奏するには、草餅を10〜200個/日摂食する必要があるが、このように多量の草餅を摂取した場合には、草餅の食べ過ぎによる健康障害などの恐れがあり、現実的には実施困難である。しかし、ヨモギの有機溶媒抽出濃縮物を用いることにより、容易に上記有効成分の摂取量を満たすことができるため、ヨモギの有機溶媒抽出濃縮物は抗疲労剤の有効成分として有用である。
【0039】
本発明の飲食品は、上記ヨモギの有機溶媒抽出物または上記抗疲労剤を用いて常法に従い製造される。例えば、ヨモギの有機溶媒抽出物または上記抗疲労剤を飲食品、その食材又はその飲食品中間素材に添加するなどの公知の手段でもって製造される。例えば、ヨモギのエタノール抽出物を用いた場合、ヨモギをエタノールで抽出したのち、濃縮し、得られたヨモギのエタノール抽出濃縮物を飲食品材料に添加し、次いで常法により飲食品とすることにより製造される。
【0040】
上記飲食品としては、例えば、菓子類(例えばポテトチップスをはじめとするスナック菓子、ビスケット又はクッキーなどの焼菓子、チョコレート、ガム、又はキャンディ等)、デザート類(例えばプリン、ゼリー、ヨーグルト又はアイスクリーム等)のような嗜好食品の他、麺類(例えば、そば、うどん、ラーメン又はパスタ等)、シリアルフーズ(例えばコーンフレーク又はオートミール等)のような主食に準ずるもの、調味食品(例えばスープ、カレー又はシチュー等)、農産加工品(例えばジャム等)、乳油食品(例えばスプレッド類又はチーズ等)、健康食品(例えばプロテイン又はファイバー等)、カロリー調整食品、ノンアルコール飲料(例えば大豆焙煎茶飲料、穀物茶、コーヒー飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、麦茶飲料、抹茶飲料、野菜汁飲料、オレンジジュース、グレープフルーツジュース、清涼飲料等)、又はアルコール飲料(例えばビール、ワイン、清酒、発泡酒、梅酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ウォッカ、ラム、ジン、リキュール類又はカクテル類等)などが挙げられる。
【0041】
また、上記飲食品の摂取量は、副作用の心配がないことから、原料のヨモギの重量換算で、上記した抗疲労剤の摂取量と同等の量であってよい。
上記飲食品は、疲労からの回復促進または疲労予防用途に用いられ、特に、健康食品、特定保健用食品、医療用食品として好適に用いられる。
【0042】
さらに、上記抗疲労剤、およびそれを含む飲食品には、炭水化物、タンパク質、脂質、ミネラル類又はビタミン類などが適宜に配合されていてもよい。
【0043】
上記炭水化物としては、例えば、澱粉或いはコーンスターチなどの多糖類、デキストリン、シュークロース、グルコース又はフラクトースなどのその他の糖類などが挙げられる。
【0044】
上記タンパク質としては、例えば、動物性タンパク質と植物性タンパク質を合せたものなどが挙げられ、より具体的には、乳タンパク質、大豆タンパク質又は卵タンパク質などが挙げられる。
【0045】
上記脂質としては、例えば、炭素数14〜22の飽和脂肪酸(例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸など)又はその塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩);炭素数16〜22の高級アルコール(例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコールなど);脂肪酸グリセリンエステルである、上記脂肪酸とのモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド(例えば、1−モノステアリン、1−モノパルミチンなど);油脂類(例えば、ヒマシ油、綿実油、大豆油、菜種油、牛脂などの硬化油);ロウ類(例えば、蜜ロウ、カルナバロウ、鯨ロウなど);炭化水素類(例えば、パラフィン、マイクロクリスタリンワックスなど)、ホスホリピッド(例えば、水添レシチン等)などが挙げられる。
【0046】
上記ミネラル類としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、ナトリウム、カリウム、亜鉛、銅、クロム、セレン、マンガン又はモリブデンなどが挙げられる。
【0047】
上記ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン、パントテン酸又は葉酸などが挙げられる。
【0048】
上記アミノ酸としては、例えば、グルタミン、ロイシン、イソロイシン、バリン、トリプトファン、フェニルアラニン、リジン、スレオニン、メチオニン、ヒスチジン、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、アルギニン、シスチン、システイン、チロシン、プロリン又はヒドロキシプロリンなどが挙げられる。
【0049】
人を含む哺乳動物が本発明の抗疲労剤、およびそれを含む飲食品を摂取すると、疲労しにくくなり、疲労からの回復が促進される。
【実施例】
【0050】
[実施例1:ヨモギのエタノール抽出物の抗疲労効果について]
(ヨモギエタノールエキスの作製)
ヨモギの乾燥葉部120gをサンプル瓶に入れ、99.5%エタノール1.8Lを添加し、5℃で3日間抽出した。抽出したヨモギエタノールエキスを濾紙No.2にて濾過、減圧濃縮器にて14.4mlに濃縮してヨモギエタノール濃縮エキス(原料ヨモギ重量換算:120g)を作製した。
【0051】
(ヨモギエタノールエキス含有食の作製)
上記ヨモギエタノール濃縮エキス9.9ml(原料ヨモギ重量換算:82.5g)を市販の粉末飼料CE−2(日本クレア(株))1650gに加え均一になるように混合して5%ヨモギエタノールエキス含有食(原料ヨモギ重量換算:82.5g)を作製した。
【0052】
(試験群)
マウス(BALB/c、雄、6週齢、N=37)に市販の固形飼料CE−2(日本クレア(株))と水を自由摂取させて13日間予備飼育した後、下記の方法で遊泳馴化を行い、遊泳馴化後、固形CE−2を粉末CE−2に変えて4日間飼育後、下記の方法で、対照群および5%ヨモギエタノールエキス含有食群の2つの群に分けた。対照群(N=8)には粉末CE−2と水、5%ヨモギエタノールエキス含有食群(N=7)には5%ヨモギエタノールエキス含有食と水を自由摂取させ、自由摂取から3日後に下記遊泳試験を行った。
【0053】
(遊泳馴化)
マウスの尾に体重の3%の重さに相当するワッシャーを通して抜けないようにビニルテープで止め、50%エタノールを浸漬させた脱脂綿で頭部以外の体表を清拭し、脱気処理を施した水温30℃の水を高さ約360mmになるまで注入した2Lメスシリンダー(胴径φ84×高さ517mm)に入れ、1日おきに計3回、各5分間遊泳馴化させた。
【0054】
(群分け)
遊泳馴化最終日の3日後から群分け試験を開始した。マウスの尾に体重の3%の重さに相当するワッシャーを通して抜けないようにビニルテープで止め、50%エタノールを浸漬させた脱脂綿で頭部以外の体表を清拭し、脱気処理を施した水温30℃の水を高さ360mmになるまで注入した2Lメスシリンダー(胴径φ84×高さ517mm)に入れ、1日おきに計3回、マウスが水中に沈み、鼻先が7秒間以上上がってこなくなるまでの時間を測定した。測定した3回の遊泳時間を用いて、個体内平均遊泳時間及び標準偏差を算出し、標準偏差の小さいマウスを選抜し、群内平均時間がほぼ同じになるように対照群と5%ヨモギエタノールエキス含有食群とに分けた。
【0055】
(遊泳試験)
群分け試験最終日の3日後から遊泳試験を開始した。マウスの尾に体重の3%の重さに相当するワッシャーを通して抜けないようにビニルテープで止め、50%エタノールを浸漬させた脱脂綿で頭部以外の体表を清拭し、脱気処理を施した水温30℃の水を高さ360mmになるまで注入した2Lメスシリンダー(胴径φ84×高さ517mm)に入れ、毎日、計4回、マウスが水中に沈み、鼻先が7秒間以上上がってこなくなるまでの時間を測定した。測定した4回の遊泳時間は、3回目の群分け試験の遊泳時間に対するパーセントに換算し、遊泳試験1〜4日目の推移を調べた。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示すように、対照群は連日遊泳により遊泳持久力が低下し、遊泳4日目には64.0±15.8%まで低下することが分かった。これは、連日の遊泳による疲労の蓄積に対して、通常の摂食並びに休息、睡眠だけでは完全には体力が回復しないことを示している。一方、5%ヨモギエタノールエキス含有食群は連日遊泳4日目に至っても96.2±28.9%であり、遊泳能力の低下がほとんど見られなかった。これは、対照群との条件の差異が給餌飼料だけであるため、ヨモギエタノールエキス中の成分が遊泳持久力の低下を抑制したことを示している。よって、ヨモギエタノールエキスには連日の運動ストレス負荷による疲労に起因した持久力の低下を抑制する作用、すなわち、抗疲労効果があることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明により、疲労しにくくなり、疲労からの回復が促進される抗疲労剤およびそれを含んでなる飲食品が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨモギの有機溶媒抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗疲労剤。
【請求項2】
疲労からの回復促進剤である請求項1記載の抗疲労剤。
【請求項3】
疲労予防剤である請求項1記載の抗疲労剤。
【請求項4】
ヨモギの有機溶媒抽出物がヨモギの低級アルコール抽出物である請求項1〜3のいずれかに記載の抗疲労剤。
【請求項5】
ヨモギの低級アルコール抽出物がヨモギのエタノール抽出物である請求項4記載の抗疲労剤。
【請求項6】
ヨモギの有機溶媒抽出物がヨモギの有機溶媒抽出濃縮物である請求項1〜3のいずれかに記載の抗疲労剤。
【請求項7】
ヨモギの有機溶媒抽出物を乾燥重量換算で0.05〜5g含有する単位投与量形態である請求項1〜6のいずれかに記載の抗疲労剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の抗疲労剤を含んでなる飲食品。

【公開番号】特開2006−45082(P2006−45082A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225672(P2004−225672)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000238511)武田食品工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】