説明

抗疲労剤

【課題】 茶の花部の抽出物は、抗アレルギー作用、中性脂肪吸収抑制作用、糖吸収抑制作用、胃粘膜保護作用等の機能が知られている。本発明の課題は、これら以外の、疲労軽減に有効である、茶の花部の抽出物を有効成分として用いる抗疲労剤の提供にある。
【解決手段】 茶の花部の抽出物を有効成分とする抗疲労剤。なお本発明における疲労とは、生体がある機能を発揮した結果、その機能が低下する現象をいう。本発明でいう抗疲労効果とは、上記のような疲労状態を軽減させる作用、疲労状態を回復させる作用、あるいは疲労状態を予防する作用などがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶の花部の抽出物を有効成分とする抗疲労剤に関する。
【背景技術】
【0002】
茶の花部の抽出物は、抗アレルギー作用(特許文献1)、中性脂肪吸収抑制作用、糖吸収抑制作用、胃粘膜保護作用(特許文献2)等の機能が知られている。
しかしながら、茶の花部の抽出物が、下記で説明する抗疲労作用を有することは知られていない。
【特許文献1】特開2008−24654号公報
【特許文献2】特開2006−70018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、優れた抗疲労作用を有する抗疲労剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、茶の花部の抽出物を有効成分とする抗疲労剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、優れた抗疲労作用を有する抗疲労剤を提供することできる。なお、本発明における疲労とは、生体がある機能を発揮した結果、その機能が低下する現象をいう。例えば、「水泳をした後の肉体疲労」「長時間にわたり、知的労働をした後の精神疲労」「毎日の通常生活においても蓄積する肉体的および精神的な複合的疲労」等を挙げることができる。
本発明でいう抗疲労効果とは、上記のような疲労状態を軽減させる作用、疲労状態を回復させる作用、あるいは疲労状態を予防する作用などがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0007】
本発明で用いられる茶の花部は、ツバキ科ツバキ属に属する茶の花部であればとくに制限されないが、好ましくは、チャ(Camellia sinensis(L.)O.Kuntze)またはアッサムチャ(C. sinensis var. assamica)である。また、花部とは、花弁、萼、おしべ、めしべ、芽、蕾等を指す。
【0008】
茶の花部の抽出物を調製する方法について説明する。
茶の花部の抽出物を調製する前段階として、茶の花部は、好ましくは、乾燥し、粉砕するのがよい。
続いて茶の花部は、溶剤と接触させ抽出物を得る。
【0009】
用いる溶剤としては、例えば、水、有機溶剤、水と有機溶媒との混合液等が使用できる。有機溶媒としては例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノールに代表される低級アルコール類、、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルに代表されるエーテル類、クロロホルム、四塩化炭素等に代表されるハロゲン化炭化水素、アセトニトリル、酢酸エチル、アセトン等が挙げられる。中でも、水、エタノール水溶液、ブタノール、酢酸エチルが好ましい。
【0010】
得られた抽出物は、さらに精製することもできる。精製方法としては、前述の特許文献1および2に記載されている。例えば、前記抽出物を水および水と非混和性有機溶媒(例えば酢酸エチル)を用いる分配抽出に単回または複数回付し、有機溶媒可溶画分と水溶性画分として分離し、得られる水溶性画分を、さらに水および水と非混和性有機溶媒(例えばn−ブタノール)を用いる分配抽出に付し、有機溶媒可溶画分と水溶性画分として分離することができる。特許文献1は、上記画分のいずれかに特定のサポニン成分が含有されてなることを開示している。本発明において、抗疲労効果の原理は明らかにされていないが、当該特定のサポニン成分が影響を及ぼしている可能性がある。
なお、精製方法として、上記の溶媒による分配抽出以外に、当業者に公知の各種クロマトグラフ法を単独で、または組み合わせて採用することができる。
【0011】
抽出時間は、抽出原料から十分に可溶性成分が抽出される時間であればよく、抽出温度などに応じて適宜設定すればよい。好ましくは30分〜48時間である。例えば、抽出温度が50℃未満の場合は、6時間〜48時間、50℃以上の場合は、30分〜24時間が適当である。。
【0012】
上記とは別に、茶の花部から抽出物を得る方法として、超臨界流体抽出法が挙げられる。
超臨界流体抽出法は、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)などが用いられ、二酸化炭素が好適である。
【0013】
超臨界流体抽出法は、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程および目的成分と超臨界流体とを分離する分離工程からなる。分離工程は、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、または吸着剤、吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
【0014】
抽出物は、必要に応じて濃縮して濃縮物としたり、凍結乾燥を行なって粉末化することもできる。
【0015】
茶の花部の抽出物の投与量は、患者の年令、体重、適応症状などによって異なるが、例えば、凍結乾燥粉末として、成人1日1〜数回、1日あたり約1mg〜1g、好ましくは30mg〜800mg程度投与するのがよい。
【0016】
本発明の抗疲労剤は、錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤等の固形または溶液の形態(以下、製剤ともいう)に公知の方法により適宜調製することができる。即ち、本発明に有用な固形製剤または液状製剤は、従来充分に確立された公知の製剤製法を用いることにより製造される。添加剤としては、例えば賦形剤、pH調整剤、清涼化剤、懸濁化剤、希釈剤、消泡剤、粘稠剤、溶解補助剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤または香料などが挙げられる。
【0017】
また本発明の抗疲労剤は、各種健康食品および機能性食品として摂取可能である。これらの例としては、各種のものをあげることができるが、健康食品および機能性食品の製造に関しては、通常用いられる、食品素材、食品添加物に加え、賦形剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、分散剤、保存剤、湿潤化剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化材、カプセル基剤等の補助剤を用いた飲食品製剤形態で利用することができる。該補助剤の具体的な例示をすれば、乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはその塩、アラビアガム、ポリエチレングルコール、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウム、プルラン、カラギーナン、デキストリン、還元パラチノース、ソルビトール、キシリトール、ステビア、合成甘味料、クエン酸、アスコルビン酸、酸味料、重曹、ショ糖エステル、植物硬化油脂、塩化カリウム、サフラワー油、ミツロウ、大豆レシチン、香料等が配合できる。このような健康食品、機能性食品の製造に関しては、医薬品製剤の参考書、例えば「日本薬局方解説書(製剤総則)」(廣川書店)等を参考にすることができる。
【0018】
上記以外にも本発明の抗疲労剤は飲食品として摂取することができる。具体的には、納豆、厚揚げ、豆腐、こんにゃく、団子、漬物、佃煮、コロッケ、サンドイッチ、ピザ、ハンバーガー、餃子、シューマイ、サラダ等の各種総菜や、各種粉末(ビーフ、ポーク、チキン等畜産物、海老、帆立、蜆、昆布等水産物、野菜・果実類、植物、酵母、藻類等)や、プリン、クッキー、クラッカー、パン、ケーキ、チョコレート、ポテトチップス、ビスケット、ドーナツ、ゼリーなどの洋菓子、煎餅、羊羹、大福、おはぎ、その他の饅頭、カステラなどの和菓子、冷菓(飴等)、チューインガム等のパン・菓子類や、うどん、そば、きしめん等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、ハム、ソーセージ、ハンバーグ、コーンビーフ等の畜肉製品や、塩、胡椒、みそ、しょう油、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、甘味料、辛味料等の調味類や、明石焼き、たこ焼き、もんじゃ焼き、お好み焼き、焼きそば、焼きうどん等の鉄板焼き食品や、チーズ、ハードタイプのヨーグルト等の乳製品や、油脂類・香料類(バニラ、柑橘類、かつお等)を粉末固形化したものや、粉末飲食品(インスタントコーヒー、インスタント紅茶、インスタントミルク、インスタントスープ、味噌汁等)等の各種食品が挙げることができるが、これらに特に制限されない。
【0019】
さらに本発明においては、例えば、ローヤルゼリー、プロポリス、ビタミン類(A、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸、ビオチン、これらの誘導体等)、ミネラル(鉄、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等)、セレン、レシチン、カロテノイド(リコピン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン等)、サポニン(ギムネマ酸、大豆サポニン、人参サポニン等)、脂肪酸、タンパク質(コラーゲン、エラスチン等)、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、環状オリゴ糖等)、リン脂質及びその誘導体(フォスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、セラミド等)、含硫化合物(アリイン、セパエン、タウリン、グルタチオン、メチルスルホニルメタン等)、糖アルコール、リグナン類(セサミン等)、これらを含有する動植物抽出物、根菜類(ウコン、ショウガ等)、などを併用することもできる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
実施例1
乾燥した茶(Camellia sinensis(L.)O.Kuntze)の花部1 kgを粉砕し、これに約10倍量の60%エタノール水溶液(10リットル)を加え、加熱還流下5時間抽出し、濾過し、濾液を採取した。濾液を濃縮し、さらに凍結乾燥し、茶の花部の抽出物の凍結乾燥の粉末1を得た。
【0022】
STD DDY 雄性マウス(5週齢:各群n=3〜4)に対し、上記粉末1を経口摂取させた。摂取量は、10mg/kg体重である。摂取は、純水に粉末1を溶解させた溶液を用いて行なった。なお、コントロール群のマウスには、純水のみを摂取させて試験を行った。
【0023】
摂取から30分後に、マウスを深さ80センチの水槽に入れて、無動に至るまでの時間を計測した。各試験群のマウス(各群n=3〜4)の無動に至るまでの時間の平均値として、コントロール群は約100秒であったのに対し、粉末1投与群は、約400秒であった。
以上から、粉末1に高い抗疲労効果が確認された。
【0024】
実施例2
ボランティア男性12名(年齢34〜37歳)を、試験食群(実施例)とプラセボ群(比較例)に群分けした。試験食群(実施例)は、粉末1をオリーブ油を基剤としたソフトカプセルに加工し、毎日該粉末1を100mg摂取する群である。プラセボ群(比較例)は粉末1を含まないオリーブ油が入ったソフトカプセルを毎日摂取する群である。
摂取を開始してから5週間後と9週間後に、自転車エルゴメータを用いる運動をボランティア男性に課した。該運動は、最大心拍数の80%負荷の運動強度で30分間継続するというものである。
ボランティア男性の運動直前及び運動直後の血中乳酸値を、市販の簡易血中乳酸測定器 で測定し、血中乳酸値の上昇量を調べた。
その結果、摂取を開始してから5週間後の該上昇量は、比較例が約6ミリモル/lであったのに対し、実施例では約5.4ミリモル/lであった。
摂取を開始してから9週間後の該上昇量は、比較例が約6ミリモル/lであったのに対し、実施例では約4.8ミリモル/lであった。
以上から、粉末1の抗疲労作用が明らかとなった。
【0025】
なお、上記各例において、実施例1の粉末1の調製の際に、エタノール水溶液を用いずに、熱水を用いて抽出物を調製した場合においても、上記と同様の結果を得た。また、実施例1の粉末1の調製の際に、原料としてアッサムチャ(C. sinensis var. assamica)の花部を使用した場合においても、上記と同様の結果を得た。
【0026】
以下に本発明の抗疲労用剤の配合例を示す。
キャンディー
砂糖 50.0wt%
水飴 33.0
水 14.4
有機酸 2.0
香料 0.2
本発明の抗疲労剤 残量
合計100.0wt%
【0027】
ヨーグルト
牛乳 41.5wt%
脱脂粉乳 5.8
砂糖 8.0
寒天 0.15
ゼラチン 0.1
乳酸菌 0.005
本発明の抗疲労剤 0.4
香料 微量
水 残余
合計100.0wt%
【0028】
清涼飲料
果糖ブドウ糖液糖 30.0wt%
乳化剤 0.5
本発明の抗疲労剤 0.3
香料 適量
水 残余
合計100.0wt%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶の花部の抽出物を有効成分とする抗疲労剤。

【公開番号】特開2009−155330(P2009−155330A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2008−319601(P2008−319601)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(707000691)辻堂化学株式会社 (104)
【Fターム(参考)】